JP7007719B2 - 電磁波検出方法及び電磁波検出装置 - Google Patents
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Description
EOサンプリング法としては、例えば、上記した周波数帯の電磁波の電界が電気光学結晶に誘起する複屈折を、フェムト秒レーザーを光源とするプローブ光によりサンプリング検出するものが知られている。
EOサンプリング法は、X線透視検査に代わる新たな電磁波検出技術として注目されているものの、上記した従来の電磁波検出方法及び電磁波検出装置では、高速でスキャンしてマッピングすることが困難で、未だその用途の範囲が限定されているという問題がある。
この従来法によるEOサンプリングにおける信号強度(検出光の偏光変調度)σは、前記二方向の偏光成分における円偏光からのずれによる強度差をΔI、前記検出光の総強度をI0とすると、σ=ΔI/I0と表すことができるが、この式は電気光学効果によって誘起される位相変化ΔΓ=ΔI/I0に対応している。
前記係数βの値を小さくするほど信号強度を増強することができる。しかし、前記係数βの値が小さすぎるとノイズが大きくなって却って検出精度を低下させることから、請求項3に示すように、検出光の電界振幅をE0としたときの前記検出光の強度(|E0|2β2)がノイズ強度よりも大きい範囲内で前記係数βの値を決定するとよい。
[本発明の原理]
電気光学結晶11(図7参照)に電磁波(THz波)とプローブ光(通常100fs程度の幅を持つ可視、近赤外域のパルス光)が入射すると、電磁波による電界が電気光学結晶中に非等方的な屈折率変化(複屈折)Δnを誘起する。このとき、電気光学結晶11中の伝搬距離をL、電気光学結晶11から出射される検出光の波長をλとすると、位相差ΔΓは、以下の式で表される。
ここで、縦方向の偏光成分の強度をIv、横方向の偏光成分の強度をIh、偏光を分離する前の検出光の強度をI0とすると、それぞれは以下の式で与えられる。
EOサンプリングの信号強度を高めるには、式6の分母のI0を減衰させればよい。ただし、I0を減衰させればΔIも減衰することになる。そのため、ΔIの減衰率をI0の減衰率よりも小さくして、EOサンプリングの信号強度ΔI/I0を効率よく増強させる必要がある。
このように検出光の偏光状態を制御することで、上記の式7を導出することができれば、EOサンプリングの信号強度を高めることができることになる。
電気光学結晶を透過した直後の検出光の偏光状態の式は、複屈折の長軸,短軸の方向がそれぞれ+45度、-45度であり、それぞれの位相差が+ΔΓ/2、-ΔΓ/2となることから、振幅をEとして以下の式で表すことができる。
E90sin (ΔΓ/2)で、後者の位相が90度遅れて振動する楕円偏光であることを示している。
ここで今、式9の楕円偏光成分のうち、一方の構成部分(以下の例では長軸側である縦方向の偏光成分(添え字0の偏光成分))に係数βを挿入してみる。係数βの挿入により式9は以下のように書き換えることができる。
この式16は、EOサンプリングの信号強度を高めるための式7と比較するとα=1/βであることが分かる。このことから、電気光学結晶から出射された楕円偏光の検出光の偏光状態を表す偏光状態式のうち、一方の偏光成分を表す構成部分に係数βを挿入すれば、EOサンプリング信号の強度を増強できることがわかる。
ここで、EOサンプリング信号の強度を増強するには、係数βを1より小さく(β<1)する必要がある。すなわち式10の例に従えば、係数βを挿入する構成部分に相当するのは長軸側である縦方向の偏光成分であるから、縦方向の偏光成分を減衰させることで、EOサンプリング信号の強度を増強することができる。増強できる大きさは式7及び式15から1/β倍である。
図1は、本発明の電磁波検出装置の具体的な装置構成を示す概略図、図2はその主要部の詳細を説明する概略図である。
図1に示すように、この実施形態の電磁波検出装置は、プローブ光を射出するフェムト秒レーザー装置24とプローブ光の偏光状態を制御する光学系23とを備えたプローブ光照射部と、プローブ光を射出するフェムト秒レーザー装置21(通常24と同一)とエミッタ22とを備えた、30GHzより大きく30THzより小さい周波数の電磁波を照射する電磁波照射部を有する。前記プローブ光照射部から照射されたプローブ光及び電磁波照射部から照射された電磁波(例えばTHz光)は、反射鏡25、凹面鏡27a、凹面鏡27bを経て光変調手段である電気光学結晶11に入射される。
なお、電気光学結晶11に入射される電磁波は、前記プローブ光照射部から照射されたプローブ光と電磁波照射部から照射されたTHz波などの電磁波とが結合されたものである。また電気光学結晶中で電気光学効果による変調をうけ、電気光学結晶11から出射されたプローブ光を、変調前のものと区別するため「検出光」と称するものとする。
この光学フィルタ15を利用して、長軸側の偏光成分の振幅を例えば1/10(係数β=1/10)に減衰させると、式16にしたがって光検出器14で検出されるEOサンプリングの信号の強度は約10倍に増強されることになる。
但し、係数βを小さくしすぎるとプロ―プ光の強度が小さくなりすぎて、ノイズ成分が相対的に大きくなる。すなわち、縦方向の偏光成分を減衰したあとの電磁波の強度|E0|2β2がノイズ強度より小さくなるとSN比が劣化するので、|E0|2β2がノイズ強度以下にならないように係数βを選択するのが好ましい。係数βは1/100~50/100を目安とすることができる。
本発明の効果を実証するべく、本発明の発明者は電気光学結晶11として厚さ1mmの(001)面カットZnTe結晶を用い、周波数帯30GHz~4THz、検出光の強度減衰率β2=5%(β=0.22)として図1の装置で実験を行った。その結果を図3のグラフに示す。
図3(a)は信号強度のプローブ光の遅延時間を変化させたときの変位、すなわちTHz波の時間波形を示すグラフ、(b)はそれをフーリエ変換した信号強度と周波数との関係、すなわちパワースペクトルを示すグラフである。
図3(a)(b)のグラフでは、光学フィルタ15を設ける前を破線で、設けた後を実線で表している。図3(a)のグラフから、信号強度は光学フィルタ15を設ける前後で約2.5倍に増強されていることがわかる(なお、理論から期待される増強率は約4.5倍である)。また、図3(b)のグラフから、実験を行った周波数帯の全範囲で信号の増強が確認できた。
実験で用いた電磁波の周波数帯は30GHz~4THzの範囲であるが、本発明は30THz程度の周波数までは好適に適用することができる。
本発明は、ヘテロダインEOサンプリング検出系にも同様に適用が可能である。
ヘテロダインEOサンプリング法は、THz波等の電磁波とプローブ光の電気光学結晶11内での非線形相互作用により生じた和周波発生(SFG)光および差周波発生(DFG)光が、もとのプローブ光と光波干渉することで検出光の強度変調を直接的に検出する手法である。
電気光学結晶11に入射させるプローブ光は縦偏光からわずかに偏光方向に傾け(傾斜させる角度θとしては0.5~5°程度が目安である)、縦方向の偏光成分E0 cosθ(主たる偏光成分)とごく小さな横方向の偏光成分E0 sinθを持たせるようにする。
ここで、入射検出光の振幅をE0,その強度をI0=| E0|2,電磁波(THz光)とプローブ光の相互作用で発生するSFG光およびDFG光の振幅をESFG/DFGとすると、ヘテロダインEOサンプリング信号は次の式であらわされる。
この実施形態では、式17の右辺の分母にsinθ、分子にcosθを挿入する。これは電気光学結晶に入射するプローブ光を縦偏光からθだけ傾けたことにより、分母のSFG光およびDFG光と干渉するプローブ光の横偏光振幅がcosθ倍、SFG光およびDFG光の振幅がsinθ倍されることに対応する。この結果、式17は、
図4は、本発明の第二の実施形態にかかる電磁波検出装置の具体的な装置構成を示す概略図、図5は図4の装置の主要部の詳細を説明する概略図である。
この実施形態のヘテロダインEOサンプリング検出系では、プローブ光をわずかな角度θだけ傾ける光学フィルタ(例えばλ/2波長板)16を、電気光学結晶11の前に配置する。そして、電気光学結晶11から出射された検出光の偏光成分のうち縦方向の偏光成分をカットする光学フィルタ15を電気光学結晶11の直後に配置する。これにより残った横方向の偏光成分は、SFG光およびDFG光と干渉して変調される。
しかし、θを小さくしすぎると縦偏光成分をカットされたあとのプロ―プ光強度が小さくなりすぎて、相対的にノイズ成分が大きくなる。したがって、縦方向の偏光成分をカットしたあとの検出光の強度|E0|2β2(ただしcosθ≒1のときβ2≒sinθ2であるから、この式は|E0|2sinθ2と等価)がノイズ強度より小さくなると、SN比が劣化するので、θは、 横方向の偏光成分の強度|E0|2sinθ2がノイズ強度と同程度になる値以下には小さくしないことが好ましい。
この第二の実施形態について、実験1と同様に実験を行った。θを2.8°及びθ=0.87°とし、周波数帯30GHz~4THzとして、図4の装置で実験を行った。その結果を図6のグラフに示す。
図6(a)は信号強度のプローブ光の遅延時間を変化させたときの変位、すなわちTHz波の時間波形を示すグラフ、(b)はそれをフーリエ変換した信号強度と周波数との関係、すなわちパワースペクトルを示すグラフである。
図6(a)(b)のグラフでは、光学フィルタ15を設ける前を破線で、設けた後を実線(θ=2.8°)及び一点鎖線(θ=0.87°)で表している。
図6(a)のグラフから、信号強度は光学フィルタ15を設ける前後でそれぞれ約20倍(θ=2.8°)及び66倍(θ=0.87°)に増強されていることがわかる。また、図6(b)のグラフから、実験を行った周波数帯の全範囲で信号の増強が確認できた。
しかし、θ=0.87°(一点鎖線)の場合はSN比が劣化し、実用的な結果は得られなかった。
例えば、上記の説明で偏光制御手段の一例として光学フィルタ15を挙げたが、同様の作用を奏するのであれば他の手段を用いてもよい。
また、検出光の偏光状態を示す偏光状態式(例えば式10)においては、一つの構成部分に係数βを挿入し、他の構成部分には係数「1」を挿入していると解釈することができる。すなわち、係数βは他の構成部分の係数との関係で相対的なものであり、他の構成部分に1以外の係数(τ1,τ2・・・)を挿入することも可能である。例えば、上記の実施形態に従えば、式12の偏光状態式において短軸側の構成部分に係数τ1(>1)を挿入して横方向の偏光成分を増幅すれば、相対的に長軸側の縦方向の偏光成分が減衰されることになり、式17と同じ結果を得ることができる。このように、他の構成部分に別の係数τ1,τ2・・・を挿入する場合は、これら係数τ1,τ2・・・との関係で相対的にβ<1となる係数τ1,τ2・・・及び係数βを選択すればよい。
また、本発明の電磁波検出装置及び電磁波検出方法は、各種センシング装置やイメージング装置などに適用が可能である。
12 λ/4波長板
13 偏光子
14 光検出器
15 光学フィルタ
16 光学フィルタ(λ/2波長板)
21 フェムト秒レーザー装置
22 エミッタ
23 レンズ
24 フェムト秒レーザー装置
25 反射鏡
Claims (4)
- プローブ光を電磁波によって変調し、EOサンプリング法を利用して異なる二つの偏光成分の検出光を検出する電磁波検出方法において、
前記検出光の偏光状態を表す偏光状態式の一部に係数βを挿入することで、前記検出光の信号強度が1/β(β<1)倍となる前記偏光状態式の構成部分を求め、
当該構成部分に相当する前記偏光成分をβ倍に変換するように偏光制御を行うとともに、
前記プローブ光に含まれる直交二方向の偏光成分のうち、長軸側の偏光成分を角度θだけ傾けて減衰させ、電気光学結晶を通過した前記検出光の和周波発生(SFG)成分および差周波発生(DFG)成分を含んだ短軸側の偏光成分について、前記検出光の信号強度が1/β(β=sinθ/cosθ)倍となるように偏光制御を行うこと、
を特徴とする電磁波検出方法。 - 前記偏光制御を、光学フィルタを透過させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載の電磁波検出方法。
- 前記βの値が、前記検出光の電界振幅をE0としたときの前記検出光の強度(|E0|2β2)がノイズ強度よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波検出方法。
- プローブ光を電磁波によって変調し、EOサンプリング法を利用して異なる二つの偏光成分の検出光を検出する請求項1~3のいずれかに記載の電磁波検出方法を用いた電磁波検出装置であって、
前記プローブ光に含まれる直交二方向の偏光成分のうち、長軸方向の偏光成分を角度θだけ傾ける第一の光学フィルタを、電気光学結晶の前に配置し、
前記電気光学結晶から出射された前記検出光の偏光成分のうち前記長軸方向の偏光成分をカットする第二の光学フィルタを前記電気光学結晶の後に配置し、
前記第二の光学フィルタを通過した前記検出光に含まれる偏光成分を、前記検出光の和周波発生(SFG)成分および差周波発生(DFG)成分と干渉させて変調させること、
を特徴とする電磁波検出装置。
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