JP7006696B2 - 熱電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、熱を電力に変換する熱電変換素子に関し、特に、異常ネルンスト効果を利用した熱電変換素子に関する。
持続可能な社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化する中で、熱を電力に変換できる熱電変換素子への期待が高まっている。熱は、体温、太陽光、エンジン、工場排熱など、あらゆる媒体から得ることができる最も効率的なエネルギー源であるためである。熱電変換素子は、例えば、低炭素社会におけるエネルギー利用の高効率化や、ユビキタス端末・センサ等への給電といった用途において、今後ますます重要となることが予想される。
最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(Spin-Seebeck Effect)」の存在が明らかになっている(例えば、特許文献1参照)。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配を印加すると、温度勾配と平行方向にスピン流(電子のスピン角運動量の流れ)が発生する現象である。特許文献1には、強磁性体であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されている。また、非特許文献1,2には、イットリウム鉄ガーネット(YIG,Y3Fe5O12)といった、磁性絶縁体と金属膜との界面におけるスピンゼーベック効果が報告されている。
なお、温度勾配によって発生したスピン流は、「逆スピンホール効果(Inverse Spin-Hall Effect)」により、電流に変換される。逆スピンホール効果とは、物質のスピン軌道相互作用(spin orbit coupling)により、スピン流が電流に変換される現象である。逆スピンホール効果は、スピン軌道相互作用の大きな物質(例えば、4d元素など)において有意に発現する。
スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、スピン流を介して温度勾配を電流に変換することができる。
一方で、スピンゼーベック効果とは別に、Fe,Co,Ni,Mn等を主たる材料とする導電性のある強磁性合金における異常ネルンスト効果(Anomalous Nernst Effect)と呼ばれる熱電効果も知られている(例えば、特許文献2)。異常ネルンスト効果とは、磁化した磁性体に、磁化方向と垂直方向に温度差が生じると、それらの外積方向(磁化の向きおよび熱流の向きのそれぞれと直交する方向)に電圧(電位差)が生じる現象である。なお、異常ネルンスト効果による発電効果は、スピン軌道相互作用の大きな物質を含む、導電性のある磁性体材料において、熱流で発生したスピン流が同材料内の上記物質の逆スピンホール効果によって電流に変換されたものと解釈することもできる。なお、特許文献2に示されるように、現状はスピンゼーベック効果による変換効率よりも異常ネルンスト効果による変換効率の方が優れている。
スピンゼーベック効果による熱電効果と異常ネルンスト効果による熱電効果は、熱起電力の方向に関して、面直方向の温度勾配によって面内方向の起電力を誘起するという対称性をもつことから、これら2つの効果を併用した熱電変換素子の例も報告されている(例えば、非特許文献3,非特許文献4)。
以下、スピンゼーベック効果を利用した熱電変換素子と、異常ネルンスト効果を利用した熱電変換素子とを特に区別せず、単に「熱電変換素子」と表現する場合がある。なお、熱電変換素子は「スピン熱流素子」とも表現される。
また、熱電変換用途ではないが、特許文献3には、磁気ヘッドに用いる磁性体金属の例がいくつか開示されている。
特開2009-130070号公報 特開2014-72256号公報 特開2003-242615号公報
K.Uchida, et al., "Spin Seebeck insulator", Nature Materials, vol.9, 2010, p.894. K.Uchida, et al., "Obserbationb of longitudinal spin-seebeck effect in magnetic insulator", Applied Physics Letters vol.97, 2010, p.172505. B.F.Miao, S.Y.Huang, D.Qu, and C.L.Chien, "Inverse Spin Hall Effect in a Ferromagnetci Metal", Physical Review Letters 111, 2013, p.066602. K.Uchida, et al., "Thermoelectric Generation Based on Spin Seebeck Effects", Proceedings of the IEEE, vol.104, No.10, 2016, p.1946-1973.
しかしながら、現状、熱電変換素子の出力は非常に小さく、実用化には至っていない。例えば、非特許文献4の図16には、スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果を併用した熱電変換素子、より具体的にはMgO基板に異常ネルンスト材料としてFe3O4/Ptを設けた素子の規格化された熱電出力(P.F.(パワーファクタ))が開示されている。同図によれば、該素子の熱電変換効率は、最大で~0.2pW/Kである。
また、特許文献3には、磁気ヘッドに用いる磁性体金属の例が開示されているが、それらの熱電変換素子への転用可能性については考慮されていない。例えば、特許文献3には、熱電変換素子として重要とされる物性、有用な原子、それらの組成比等について何ら開示されていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高出力化を実現する熱電変換素子を提供することを目的とする。
本発明による熱電変換素子は、異常ネルンスト効果を発現する異常ネルンスト材料を備え、異常ネルンスト材料は、逆スピンホール効果を発現する元素を少なくとも含み、かつ逆スピンホール効果を発現する元素がスピン偏極しており、異常ネルンスト材料は、3種以上の元素からなる多元系であって、磁性体金属に属する第1の元素、逆スピンホール効果を発現する元素である第2の元素、および第2の元素をスピン偏極させるもしくは第2の元素のスピン偏極率を向上させる第3の元素を少なくとも含み、異常ネルンスト材料における第1の元素に対する第2の元素の組成比が、0.7以上1.3以下であることを特徴とする。
本発明によれば、熱電変換素子の高出力化が可能となる。
第1の実施形態の熱電変換素子の例を示す概略構成図である。 異常ネルンスト材料の開発に用いた材料開発システムの構成例を示すブロック図である。 材料開発システムが備える情報処理装置のより詳細な構成例を示すブロック図である。 材料開発システムにおける情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。 実験で作成したFePt, CoPt, NiPt薄膜のXRDデータを示すグラフである 図5のXRDデータを用いた各組成に対する結晶構造の解析結果を示すグラフである。 材料計算データの対応パラメータの一覧を示す説明図である。 学習に用いたニューラルネットワークモデルとその学習結果を示す説明図である。 3種の材料のPt原子のスピン偏極率の計算結果を示すグラフである。 実際に作製した材料による熱電効率の測定結果を示すグラフである。 Pt原子のスピン偏極率と異常ネルンスト効果との関係を示すグラフである。 第3の元素(置換型)の探索結果を模式的に示す説明図である。 第3の元素(侵入型)の探索結果を模式的に示す説明図である。 第2の実施形態の熱電変換素子の例を示す概略構成図である。 第3の実施形態の熱電変換素子の例を示す概略構成図である。 第4の実施形態の熱電変換素子の例を示す概略構成図である。 発電構造体の例を示す構成図である。
[実施形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の熱電変換素子の例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の熱電変換素子10は、異常ネルンスト効果を発現する材料である異常ネルンスト材料11を備える。また、異常ネルンスト材料11には、異常ネルンスト材料11において生じた起電力を取り出すための端子12が少なくとも一対備え付けられる。端子12は、例えば、異常ネルンスト材料11の両端(例えば、一方の表面の長手方向の端部)に備え付けられてもよい。異常ネルンスト材料11は、例えば、所定の厚さを有する構造体(薄膜等)として形成される。なお、該構造体は、所定の一方向に伸延する形状(細線形状等)であってもよい。
異常ネルンスト材料11は、例えば、磁性体であって導電性を有する材料である。そのような異常ネルンスト材料11の例としては、強磁性体金属もしくは強磁性体金属化合物を主とする材料が挙げられる。強磁性体金属としては、例えば、Fe,Co,Ni,Mn,Cr,Gdが挙げられる。異常ネルンスト材料11は、強磁性体金属もしくは強磁性体金属化合物を主とする材料に限られず、例えば、半導体や酸化物も含まれうる。
本実施形態において、異常ネルンスト材料11は、所定の一方向(本例では、図中のx方向)に磁化されている。既に説明したように、一方向に磁化された異常ネルンスト材料に対して、磁化方向に直交する方向(本例では、図中のz方向)に熱流を流すと、磁化方向および熱流方向のそれぞれと直交する方向(本例では、図中のy方向)に電場が生じる。これにより、端子12から熱起電力を取り出すことができる。
熱流は、例えば、所望の熱流方向の始点と終点となる二面(本例では、z方向上向きを上面とした場合の底面と上面)に温度勾配を印加することにより、発生させることができる。温度勾配の印加方法は、特に限定されないが、例えば、温度勾配を発生させたい二面それぞれに、温度差のある熱源を接して設けてもよい。
本実施形態の異常ネルンスト材料11は、上記の条件(異常ネルンスト効果を発現するという条件)に加えて、逆スピンホール効果を発現する元素を含み、かつ当該元素がスピン偏極していることを特徴とする。
逆スピンホール効果を発現する元素の例としては、4d元素以外にも、5d元素、4f元素などが挙げられる。ここで、4d元素とは、Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cdである。また、5d元素とは、Hf,Ta,W,Pe,Os,Ir,Pt,Au,Hgである。また、4f元素とは、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Hb,Er,Tm,Yb,Luである。
なお、逆スピンホール効果は、スピンホール角が大きいほど有意に発現することが知られており、スピンホール角の大きさを決める要因の一つに、スピン軌道相互作用が関係していることが分かっている。スピン軌道相互作用はおおよそ原子番号に比例して大きくなることから、上記以外にも、Ti,Pb,Biなど、4d軌道以上に電子を有する元素、すなわち原子番号が39(Y)以上の元素であれば、スピン軌道相互作用が大きいことが予想されるため、異常ネルンスト材料11が含む上記元素として好ましい。
以下、異常ネルンスト材料11のうち、主に強磁性を担う元素を「第1の元素」といい、逆スピンホール効果を発現する元素を「第2の元素」という場合がある。なお、当該表現は性質による分類であり、当該表現により、第1の元素=第2の元素であることが否定されるものではない。
通常、逆スピンホール効果を有意に発現する元素(上記の第2の元素に相当)は、単体ではスピン偏極していない。このため、本実施形態では、逆スピンホール効果を有意に発現する元素と他の元素を組み合わせることにより、逆スピンホール効果を有意に発現する元素をスピン偏極させる。以下、逆スピンホール効果を有意に発現する元素と組み合わせることで、逆スピンホール効果を有意に発現する元素をスピン偏極させるもしくは該元素のスピン偏極率を向上させる元素を「第3の元素」という場合がある。
したがって、本実施形態の異常ネルンスト材料11は、磁性体かつ導電性を有する材料であり、かつ逆スピンホール効果を有意に発現する元素(第2の元素)と、該元素をスピン偏極させるもしくは第2の元素のスピン偏極率を向上させる元素(第3の元素)とを少なくとも含む材料が好ましい。異常ネルンスト材料11は、例えば、3種以上の元素からなる多元系であって、磁性体金属に属する第1の元素、逆スピンホール効果を発現する第2の元素、および第2の元素をスピン偏極させるもしくは第2の元素のスピン偏極率を向上させる第3の元素を少なくとも含む材料であってもよい。
一例として、異常ネルンスト材料11は、第1の元素としてCo,Fe,Ni、Mn,CrもしくはGdの少なくともいずれか1つと、第2の元素として4d元素,5d元素もしくは4f元素の少なくともいずれか1つと、第3の元素として後述する元素のうち少なくともいずれか1つとを含む合金であってもよい。なお、第1の元素と第2の元素と第3の元素の組み合わせは本例に限らず、各々が上述した特性を有し、最終的に異常ネルンスト効果を発現するものであればよい。
とくに、第3の元素は、逆スピンホール効果を発現する第2の元素をスピン偏極させるもしくは第2の元素のスピン偏極率を向上させるものであれば特に限定されない。
本実施形態の異常ネルンスト材料11の特徴の1つである、逆スピンホール効果を発現する元素のスピン偏極率の強さと、当該材料による異常ネルンスト効果の強さ(発電効率の高さ)との関連性は、本発明者らが新規に開発した材料開発システムによって初めて見出された知見である。
以下、該知見を見出した材料開発システムについて概要を述べる。
図2は、本実施形態の異常ネルンスト材料11の開発に利用した材料開発システムの構成例を示すブロック図である。該材料開発システム20は、材料に関するビッグデータを利用して機械学習により材料の物性と効果(発電効率)との関係を解析するシステムである。なお、機械学習の意味は、広義に、例えばAI(Artificial Intelligence)などを含むものとして解釈する。このように、機械学習(AI)を用いて材料を開発する手法は、マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる。
図2に示すように、材料開発システム20は、情報処理装置21と、記憶装置22と、入力装置23と、表示装置24と、外部と通信をする通信装置25とを備える。なお、各装置は相互に接続されている。
記憶装置22は、例えば、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、当該材料開発システム20で用いる各種データを記憶する。
記憶装置22には、例えば、次に示すデータが記憶される。
・情報処理装置21などによる処理動作のためのプログラム
・機械学習用のプログラム
・第一原理計算、分子運動力学等の計算プログラム
・コンビナトリアル法などによって得られた各種材料に関する実験データ(材料実験データ)
・第一原理計算や分子運動力学法などによって得られた各種材料に関する計算データ(材料計算データ)
・機械学習結果(材料解析データ)
ここで、材料実験データは、材料に関するデータであって、該材料に対する実験によって得られたデータである。また、材料計算データは、材料に関するデータであって、計算によって得られたデータである。材料実験データは、例えば、実際の材料に対して実験を行い、その際観察または計測された材料の特性や構造や組成に関するデータであればよい。また、材料計算データは、例えば、所定の原理に従って計算された仮想の材料の特性に関するデータであればよい。
なお、材料に関するデータは、当該材料開発システム20により計算されたものでもよいし、既存の材料データベースや公知論文に記載されているデータでもよい。後者の場合に、材料開発システム20は、通信装置25を介して外部の材料データベースにアクセスし、所望のデータを取得してもよい。またデータの形式としてはスカラー、ベクトル、テンソルなどの数値の形式でもよく、画像、動画、文字列、文章などでもよい。
また、材料開発システム20は、通信装置25を介して実験装置等にアクセスし、アクセス先の装置を制御することにより、材料に関するデータを得てもよい。
入力装置23は、マウスやキーボードなどの入力デバイスであり、ユーザからの指示を受け付ける。また、表示装置24は、ディスプレイ装置などの出力デバイスであり、本システムで得られた情報を表示する。
図3は、材料開発システム20が備える情報処理装置21のより詳細な構成例を示すブロック図である。図3に示すように、情報処理装置21は、結晶構造決定手段211と、計算データ変換手段212と、解析手段213とを含んでいてもよい。
結晶構造決定手段211は、XRD(X-Ray Diffraction)データなどの結晶構造情報から、指定されたデータにおける対象材料の結晶構造(特に比率)を決定する。
計算データ変換手段212は、結晶構造決定手段211により決定された結晶構造を基に、その対象材料に関し、材料計算データと材料実験データとの間の乖離を小さくするように、材料計算データを変換(補正または再構成)する。
解析手段213は、計算データ変換手段212による変換後の材料計算データを含む材料計算データ群と、材料実験データ群とを用いて、機械学習による解析を行う。
図4は、材料開発システム20における情報処理装置21の動作の一例を示すフローチャートである。図4に示す例では、まず結晶構造決定手段211が、材料実験データの対象材料とされた各材料の結晶構造(長距離秩序の種類およびその比率)を決定する(ステップS21)。結晶構造決定手段211は、上述したように、XRDデータを任意の曲線でフィッティングし、各構造ピーク面積やピーク高さの比から求めてもよいし、ハードクラスタリングやソフトクラスタリングなどの教師なし学習から求めてもよい。
次いで、計算データ変換手段212が、ステップS21で得られた結晶構造に基づいて、材料計算データを変換する(ステップS22)。
今、材料実験データの対象材料“M1”の結晶構造が、fcc(面心立方格子)と、bcc(体心立方格子)と、hcp(六方晶最密充填格子)とからなり、それぞれの比率がAfcc、Abcc、Ahcpであると決定されたとする。ただし、Afcc+Abcc+Ahcp=1とする。また、材料計算データは、単一の結晶構造を前提に計算されているとする。さらにその対象材料“M1”の単一結晶構造のデータとして、各種類に応じた第一原理計算により得られた磁気モーメントの値を示す材料計算データがあり、それぞれの値がMfcc、Mbcc、Mhcpであったとする。
このような場合に、計算データ変換手段212は、同一組成の材料計算データと材料実験データとの間の結晶構造の違いによる乖離を小さくするように、材料計算データを再構成する。本例では、計算データ変換手段212は、単一結晶構造を条件として取得された材料計算データのある特性の値を、材料実験データの結晶構造における当該特性の値に近づけるべく、次のような変換を行う。すなわち、比率を重みにして、材料実験データの結晶構造に含まれる結晶格子の各々に対応する単一結晶構造の材料計算データを足し合わせて、複合体の結晶構造に対応した特性値を示す新たな材料計算データを生成(再構成)する。上記の場合、再構成後の磁気モーメントMcは、例えば以下の式で表される。
Mc=AfccMfcc+AbccMbcc+AhcpMhcp ・・・(1)
ただし、上記の方法は単なる一例であって、計算データ変換手段212による変換処理(データ適応処理)の方法はこの限りではない。
次に、解析手段213が、材料計算データと材料実験データとを用いて機械学習を行い、各データのパラメータ間の関係性を解析する(ステップS23)。このとき、解析手段213は、ステップS23で変換元となった材料計算データに変えて、変換後の材料計算データを用いる。機械学習の手法としては教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、強化学習など様々考えられるが、本実施形態では、特に限定されない。
このような材料開発システム20を用いれば、計算では得ることが難しい化合物や複合体などの材料に関する材料実験データと、組成や結晶構造や形状等など比較的簡易な構成を前提とした材料計算データとの間の乖離を小さくした上で、機械学習を行うことができるので、より妥当な学習結果を得ることができる。したがって、本システムを利用して、例えば、膨大なデータを解析することにより、人間では気付くことのできない材料のパラメータ間の関係等の新たな情報を得ることができるなど、より高機能な材料開発に活用できる情報を得ることが可能となる。
なお、上記の例では、材料実験データの対象材料の結晶構造を解析して、材料計算データを変換する例を示したが、解析対象は結晶構造に限定されない。解析対象は、例えば、組成(添加材等を含む原材料の種類や比率)や形状(厚さや幅の条件)や周囲環境条件(例えば、温度、磁場、圧力、真空条件等)であってもよい。また、上記では、材料実験データの対象材料と同じ材料の材料計算データを基に、当該対象材料の材料計算データを再構成する例を示したが、例えば、添加材など一部の原材料が異なる材料データ(計算データでも実験データでも可)を用いて、材料実験データの対象材料と同じ材料を対象材料とする材料計算データを再構成することも可能である。
既に説明したように、本発明では、上記の材料開発システム20を、異常ネルンスト材料の開発に利用した。その結果、異常ネルンスト材料に関し、現状の物理学では説明できてない上記の関連性、より具体的には、『Pt原子のスピン偏極と異常ネルンスト効果による熱電変換効率との間に正の相関がある』という知見を得た。
以下、異常ネルンスト材料の開発における材料開発システム20の利用方法をより具体的に説明する。
まず、記憶装置22に、Si基板上に作成したFe1-xPtx、Co1-xPtx、Ni1-xPtxの組成を持つ3種の合金薄膜に関して、各組成のXRDデータ、実験により得られた各組成の異常ネルンスト効果による変換効率データ、各組成の第一原理計算から得られた各データを記憶させた。ここで、xはプラチナPtの含有比を表し、0以上1未満の任意の数である。
図5に、各組成のXRDデータを示す。ステップS21で、このXRDデータから結晶構造を決定した。ここでは、教師なし学習の一つであるNon-Negative Matrix Factorization (NMF)を用いた。各XRDデータをNMFで解析することによって、Fe1-xPtx, Co1-xPtx, Ni1-xPtxは各々3構造に分けられていること、および構造(結晶構造)の種類としては(fcc, bcc, hcp, L10)の合計4種が存在することが分かった。図6は、XRDデータを用いた各組成に対する結晶構造の解析結果を示すグラフである。このような解析結果から、例えば実験で作成したCo0.81Pt0.19の材料は、結晶構造として、L10構造が約55%、hcp構造が約40%、fcc構造が約5%含まれる材料であることが分かる。
次に、ステップS22で、このようにして得られた各組成の結晶構造における構造の種類および比率を示す構造比率データに基づいて、各組成の材料計算データを変換した。
ここでの材料計算データの対応パラメータおよびその略式表示の一覧を図7に示す。なお、ここでの材料計算データは全て第一原理計算から得た。各々の項目(対応パラメータ)は、各組成の結晶構造をなしている各構造(fcc, bcc, hcp, L10)ごとに計算した。
このような各組成の各構造ごとの材料計算データを式(1)に代入して、各組成の複合体としての材料計算データを再構成した。例えば、材料実験データの対象材料であるCo0.81Pt0.19の構造比は、図6からfcc、bcc、hcp、L10がそれぞれ、5%、0%、40%、55%であることが分かる。また、材料計算データ群に含まれるTotal Energy (TE)を示す、Co0.81Pt0.19の各構造における材料計算データの値を、TEfcc, TEbcc, TEL10, TEhcpとする。その場合、再構成後の材料計算データ(材料実験データと同組成の複合体における材料計算データ)の値であるTotal Energy TECを、式(2)のように計算した。
TEC = 0.05 * TEfcc + 0 * TEbcc +0.4 * TEhcp + 0.55 * TEL10 ・・・(2)
そのほかの第一原理計算から得られたデータも同様に変換した。
次に、ステップS23で、このようにして得られた再構成後の材料計算データと、材料実験データ(実験で得られた異常ネルンスト効果による変換効率データ)とを機械学習により解析した。ここでは、簡単な教師あり学習の一つであるニューラルネットによる回帰を行った。ここでは、図8に示すように、材料計算データを入力ユニット、材料実験データを出力ユニットにセットし、ニューラルネットに学習させた。
学習済みのニューラルネットモデルを可視化したものが図8である。図8において、丸はノードを表す。なお、ノード“I1”~ノード““I11”はそれぞれ入力ユニットを表す。また、ノード“H1”~ノード“H5”は隠れユニットを表す。また、ノード“B1”~ノード“B2”はバイアスユニットを表す。また、ノード“O1”は出力ユニットを表す。また、各ノードを繋ぐパスはそれぞれ、各ノードの結合を表す。これら各ノードおよびその接続関係は、脳の神経細胞の発火を模擬している。なお、パスの線の太さが結合の強さに対応し、線種が結合の符号(実線が正、破線が負)に対応している。
図8に示される学習結果における、各材料計算データの対応パラメータ(入力パラメータ)から異常ネルンスト効果による熱電変換効率(出力パラメータ)へとつながるパスの強弱から、関係性の強弱が分かる。すなわち、これらのパスのうち最も強いものはノード“I11”からノード“H1”を経由してノード“O1”につながるものであり、その符号は正(実線)である。これは、Pt原子のスピン偏極(Spin Polarization:PtSP)と異常ネルンスト効果による熱電変換効率との間に強い正の相関があるということを示している。
既に説明したように、『Pt原子のスピン偏極と異常ネルンスト効果による熱電変換効率との間に正の相関がある』ということは、現状の物性物理学では説明できていない。しかし、本システムによる学習結果により得られたこの相関関係によれば、材料中のPt原子のスピン偏極を高めれば、より高効率な発電効果を有する異常ネルンスト材料が得られることが予想される。
そこで、本発明者らは、得られたこの知見に基づき、実際に異常ネルンスト材料の開発を行った結果、熱電変換効率の高い異常ネルンスト材料11を得た。一例として、Si基板上で、4.0pW/Kの熱電変換効率を有する異常ネルンスト材料11を得た(後述の実施例1参照)。
図9は、3種の材料中のPt原子のスピン偏極率の計算結果を示すグラフである。3種の材料は、具体的には、Co2Pt2,Co2Pt2N0.5およびCo2Pt2N1である。なお、Pt原子のスピン偏極率の計算式は、以下の式(3)を用いた。
Figure 0007006696000001
式(3)において、Pはスピン偏極率である。なお、Pの右下の記号は対象の材料または元素を表す。したがって、PPtは、Ptのスピン偏極率を表す。また、Dは状態密度である。なお、Dの右下の記号は対象の材料または元素を表し、右上の記号(上または下向きの矢印)はフェルミ面上のup spinまたはdown spinを表す。なお、上向きの矢印がup spinである。したがって、DPt は、Pt原子のフェルミ面上のup spinの状態密度を表し、DPt は、Pt原子のフェルミ面上のdown spinの状態密度を表す。
状態密度は、例えば、第一原理計算で導出すればよい。なお、図9に示す例では、状態密度計算に、擬ポテンシャル法と平面波基底を用いた手法(具体的には、PHASEソフトウェア)を用いた。なお、上記手法以外にも、例えば、グリーン関数法とコヒーレントポテンシャルを用いた手法(一例として、AkaiKKRソフトウェア)などを用いてもよい。
なお、上記材料のうち窒素Nを含む材料は、第3の元素とされる窒素NがCo2Pt2合金の結晶構造において原子が並んでいる隙間(より具体的には、fcc構造の真ん中)に侵入した侵入型合金として計算した。なお、元素の組み合わせによっては、第3の元素が第1の元素および第2の元素による合金の結晶構造中の原子の位置に置き換わる置換型合金となる場合も考えられる。そのような場合は置換型合金における第2の元素の状態密度を基にスピン偏極率を計算すればよい。
図9に示すように、窒素Nが含まれていないCo2Pt2ではPt原子のスピン偏極率が0.144程度であるのに対し、窒素Nを含むCo2Pt2N0.5およびCo2Pt2N1ではそれぞれ、0.378、0.392である。これらの計算結果から、CoとPtの合金にNをより多く含むほど、Ptのスピン偏極率がより高くなることが分かる。
また、図10は、実際に作製した4種の材料を用いた熱電変換素子の異常ネルンスト効果による熱起電力の計測結果を示すグラフである。4種の材料は、CoとPtの合金に、Nの量を変えて添加した材料Con1Ptn2N1-n1-n2(ただし、0<n1<1、0<n2<1、0<n1+n2<1)である。より具体的には、M1:Co0.479Pt0.493N0.028,M2:Co0.455Pt0.485N0.060,M3:Co0.456Pt0.477N0.067およびM4:Co0.449Pt0.470N0.081である。ここで、Coは第1の元素に相当し、Ptは第2の元素に相当し、Nは第3の元素に相当する。これらの材料は、CoとPtのスパッタのパワーを1対1で変化させずに、スパッタ中のN2ガスの流量のみを変化させて作製した。上記のCoPtNの組成比はXPS測定によって得られたものである。
図10より、CoPtN中のNの量が大きいほど、異常ネルンスト効果による熱起電力が大きいことが分かる。これらの値は、後述する実施例のサンプルより得られた起電力の値であり、具体的には、M1、M2、M3、M4それぞれ、128.5μV/K、139.9μV/K、155.6μV/K、156.6μV/Kである。これらを1mm×1mmで規格化した値はそれぞれ、21.4μV/K、23.3μV/K、25.9μV/K、26.1μV/Kとなる。ただし、図10の値は、後述するようにSi基板を含むサンプルの上下の間に1Kの温度勾配がかかった際に得られた起電力の値である。なお、M1は、N2ガスの流量を0としたが、試料をスパッタ装置からXPS装置への移動中に空気中のNと反応した結果、微量のNが含まれたものと考えられる。
そこで、XPSにより得られた4種の材料の組成比を基に、各材料におけるPt原子のスピン偏極率を計算した。得られたPt原子のスピン偏極率は、M1、M2、M3、M4それぞれ、0.361、0.364、0.375、0.377であった。なお、これらの値は、コヒーレントポテンシャルを用いた第一原理計算手法(AkaiKKRソフトウェア)によって計算した。図11は、各材料におけるPt原子のスピン偏極率の計算結果と、実験により得られた熱起電力との関係を示すグラフである。図11によれば、CoPtN中のNの量が大きくCoPtN中のPt原子のスピン偏極率が高いほど、異常ネルンスト効果による熱起電力が大きいことが分かる。
図9~図11の結果を受けて、次のことが言える。例えば、Pt原子のスピン偏極率が0.145以上であれば、異常ネルンスト材料11に第3の元素を含ませたことによる第2の元素のスピン偏極率の増加効果が得られたと認められる。なお、Pt原子のスピン偏極率は、0.36以上がより好ましく、0.37以上がさらに好ましい。また、図9と図11の結果を併せれば、熱電変換素子10の異常ネルンスト効果に基づく熱電変換効率として、サンプルサイズを1mm×1mmで規格化したときのボルテージ(以下、規格化されたボルテージという。)が21μV/K以上であれば、異常ネルンスト材料11における第2の元素のスピン偏極率の増加に伴う熱電変換効率の増加効果が得られたと言える。なお、本実施形態の熱電変換素子10により得られる規格化されたボルテージは、23μV/K以上がより好ましく、25μV/K以上がさらに好ましい。ただし、ボルテージを評価する際には、測定条件(例えば、サンプルに用いた基板の熱伝導率、電気伝導率等)の違いによる影響を考慮する。
また、図10に示す結果およびXPSの測定結果より、異常ネルンスト材料11における第3の元素の割合、より具体的には異常ネルンスト材料11の全原子数に対して第3の元素に相当する原子が占める割合(上記Con1Ptn2N1-n1-n2における1-n1-n2に相当)が0.02以上であれば、異常ネルンスト材料11に第3の元素を含ませたことによる第2の元素のスピン偏極率の増加に伴う効果が得られるため、好ましい。なお、異常ネルンスト材料11における第3の元素の組成比は、0.02以上がよく、0.06以上がより好ましく、0.065以上がさらに好ましい。また、M3とM4とでNの含有量変化に対する熱電変換効率(ボルテージ)の増加量がそれほど多くないことから、異常ネルンスト材料11における第3の元素の組成比は、0.1以下や0.08以下でもよい。
材料開発システム20の解析結果は、Pt原子のスピン偏極率と熱電変換効率との間に強い相関を示すものであったが、これは異常ネルンスト効果に関する実験の困難性から、用意できる材料実験データが第2元素としてPtを含む材料に関するデータに限られていたためである。異常ネルンスト効果の物理的な原理を考えれば、Ptだけでなく、他の逆スピンホール効果を有意に発現する元素(第2の元素)についても同様の関係性があると考えられる。すなわち、『逆スピンホール効果を有意に発現する元素(第2の元素)のスピン偏極と異常ネルンスト効果による熱電変換効率とに正の相関がある』と考えられる。
このように、異常ネルンスト材料11に含まれる第2の元素のスピン偏極が強ければ強いほど熱電変換効率が高くなると考えられることから、異常ネルンスト材料11に含まれる第2の元素のスピン偏極は強いほど好ましい。
例えば、図9によれば、CoとPtの合金にNを挿入した材料では、Ptのスピン偏極率が、Nを含まないときの0.144よりも高い数値を示す。したがって、異常ネルンスト材料11の第2の元素のスピン偏極率は、第3の元素を含まない同種の材料よりも高ければよい。例えば、異常ネルンスト材料11における第2の元素のスピン偏極率は、0.15以上が好ましく、0.36以上がより好ましく、0.37以上がより好ましい。
ここで、異常ネルンスト材料に関し、第3の元素を含まない同種の材料とは、当該異常ネルンスト材料11の原材料から該第3の元素を除いた原材料により構成される材料である。上記例では、CoPtNに対してCoPtが相当する。
また、異常ネルンスト材料11における第1の元素に対する第2の元素の組成比、すなわち当該材料における規格化された第1の元素の原子数N1と規格化された第2の元素の原子数N2の比N1/N2は、0.7以上1.3以下がより好ましい。ここで、規格化された原子数N1およびN2は、第1の元素に相当する原子をα、第2の元素に相当する原子をβ、第3の元素に相当する原子をγとし、その組成がαn1βn2γ1-n1-n2で表される場合(ただし、0<n1<1、0<n2<1、0<n1+n2<1)に、αn1βn2γ1-n1-n2内の第1の元素の原子数および第2の元素の原子数である。
組成比N1/N2が0.7未満の場合、第1の元素が少ないために異常ネルンスト材料の磁性が弱くなり、熱電変換効率が低下してしまうからである。一方、組成比N1/N2が1.3より高い場合、スピン軌道相互作用を担う第2の元素が少ないために異常ネルンスト材料の中でスピン流を電流に変換する作用が弱くなり、熱電変換効率が低下してしまうためである。
第3の元素は、既に説明したように、Pt原子などの逆スピンホール効果を発現する元素(第2の元素)のスピン偏極率を向上させる元素であれば特に限定されないが、一つの目安として、図12および図13に第3の元素の探索結果を示す。図12および図13は、第1の元素をCo、第2の元素をPtとする異常ネルンスト材料11(CoPtX)に第3の元素(Xの部分)として種々の元素を添加させた場合の当該材料のPt原子のスピン偏極率の計算結果を模式的に示す説明図である。図12および図13において、周期表の対応する位置に置いた丸およびその下の元素記号が第3の元素の候補とした元素である。丸の網かけ(実際は色付け)が濃いほど、当該元素を含むCoPtXにおけるPt原子のスピン偏極率の計算結果が高いことを示す。なお、Pt原子のスピン偏極率の計算は、上述の式(3)を用いた。図12は、第3の元素の候補を置換型で挿入した場合の計算結果を示し、図13は第3の元素の候補を侵入型で挿入した場合の計算結果を示している。
図12によれば、第3の元素が第1の元素と第2の元素の化合物に対して置換型合金となる場合、第1族~第2族元素(H,Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba)および第8族~第12族元素(Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Hg)が第3の元素として比較的好ましい結果を得た。また、図13によれば、第3の元素が第1の元素と第2の元素の化合物に対して侵入型合金となる場合、第2周期元素(Li,Be,B,C,N,O,F)が第3の元素として比較的好ましい結果を得た。なお、第3周期以降の元素は、原子の大きさから侵入型ではなく置換型になる可能性が高いことから侵入型の良否判定対象から除外した。また、不活性ガスも良否判定対象から除外した。なお、第1の元素がCo以外の場合や第2の元素がPt以外の場合も、同様の元素が第3の元素として有望であると考えられる。
次に、図1を参照して本実施形態の熱電変換素子10の製造方法を説明する。まず、異常ネルンスト材料11を作製する。その方法としては、アトマイズ法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、イオン反応法、乾燥法などにより生成した合成粉末を焼き固めて多結晶体にする方法が挙げられる。なお、各原料を融解させた後に急速冷凍するなどしてアモルファス(アモルファス合金)にする方法でもよい。また、気相法、液相法、固相法などにより各原料を合成した溶質から単結晶体を得る方法でもよい。次に、生成した異常ネルンスト材料11に少なくとも一対の端子12を取り付ける。
このようにして得られた熱電変換素子10の端子12が並ぶ方向(所望の電場方向)を図中のy方向とすると、該熱電変換素子10に対して、x方向に磁場、z方向に温度勾配をそれぞれ印加することで、端子12から熱起電力を取り出すことができる。なお、上記の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されない。
以上のように、本実施形態によれば熱電変換素子のさらなる高出力化が可能となる。
なお、異常ネルンスト材料11から熱起電力を取り出すための構造等(異常ネルンスト材料11の形状や端子の取り付け位置等)は、図1の例に限定されない。例えば、熱電変換素子10は、特許文献2に示されるような、異常ネルンスト材料11からなる複数の細線であって所定の一方向に磁化された複数の細線が電気的に直列に接続される構成であってもよい。
[実施形態2]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図14は、本実施形態の熱電変換素子10Aの例を示す概略構成図である。図14に示すように、本実施形態の熱電変換素子10Aは、第1の実施形態の熱電変換素子10と比べて基板13をさらに備える点が異なる。
すなわち、本実施形態の熱電変換素子10Aは、基板13上に、異常ネルンスト材料11が形成されており、基板13上の異常ネルンスト材料11に少なくとも一対の端子12が備え付けられる。
基板13の材料は特に限定されないが、熱電変換効率を考えた場合、基板13にかかる温度勾配は熱電効果に影響を与えないため、基板13の熱伝導率は、高いほど好ましい。そのような基板13の材料としては、Si,SiCなどが挙げられる。
なお、他の点は第1の実施形態と同様である。
次に、図14を参照して本実施形態の熱電変換素子10Aの製造方法を説明する。本実施形態では、基板13上に異常ネルンスト材料11による膜(異常ネルンスト材料層)を形成する。その方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法などが挙げられる。次に、基板13上に形成された異常ネルンスト材料層に少なくとも一対の端子12を取り付ける。
このようにして得られた熱電変換素子10Aの端子12が並ぶ方向(所望の電場方向)を図中のy方向とすると、該熱電変換素子10Aに対して、x方向に磁場、z方向に温度勾配をそれぞれ印加することで、端子12から熱起電力を取り出すことができる。なお、上記の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されない。
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、熱電変換効率の高い熱電変換素子が得られる。
[実施形態3]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図15は、本実施形態の熱電変換素子10Bの例を示す概略構成図である。図15に示すように、本実施形態の熱電変換素子10Bは、基板13上に、スピンゼーベック材料14を備え、その上に異常ネルンスト材料11を備える。また、異常ネルンスト材料11には少なくとも一対の端子12が備え付けられる。端子12は、例えば、異常ネルンスト材料11の両端(例えば、一方の表面の長手方向の端部)に備え付けられてもよい。異常ネルンスト材料11およびスピンゼーベック材料14は、例えば、所定の厚さを有する構造体(薄膜等)として形成される。なお、該構造体は、所定の一方向に伸延する形状(細線形状等)であってもよい。
スピンゼーベック材料14は、磁性体材料などの、スピンゼーベック効果を発現する材料であれば特に問わない。スピンゼーベック材料14には、例えば、イットリウム鉄ガーネット(YIG, Y3Fe5O12)やBi等の希土類元素をドープしたイットリウム鉄ガーネット(Bi:YIG, BiY2Fe5O12等)、Coフェライト(CoFe2O4)、マグネタイト(Fe3O4)などの酸化物磁性材料、などを使用できる。
本実施形態において、異常ネルンスト材料11とスピンゼーベック材料14は、いずれも面内方向の所定の一方向(例えば、図中のx方向)に磁化している。
このような熱電変換素子10Bに対して、磁化方向に直交する方向(例えば、図中のz方向)に熱流を流すと、スピンゼーベック材料14内で該熱流の方向にスピン流が生じる。そのスピン流が異常ネルンスト材料11に突入して、異常ネルンスト材料11の逆スピンホール効果により、異常ネルンスト材料11の面内方向(図中のy方向)に第1の電場が生じる。本実施形態では、この第1の電場に加えて、異常ネルンスト材料11の異常ネルンスト効果によっても、異常ネルンスト材料11において第1の電場と同じ方向(磁化方向と熱流方向の外積方向)に第2の電場が生じる。その結果、異常ネルンスト材料11の両端に取り付けた端子12から、第1の電場と第2の電場を足し合わせた熱起電力を取り出すことができる。
なお、他の点は第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。
次に、図15を参照して本実施形態の熱電変換素子10Bの製造方法を説明する。本実施形態では、基板13上にスピンゼーベック材料14による膜(スピンゼーベック材料層)を形成する。その方法としては、MOD(Metal OrganicDeposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法、メッキ法、スパッタ法などが挙げられる。次に、形成されたスピンゼーベック材料層の上に、異常ネルンスト材料11による膜(異常ネルンスト材料層)を形成する。その方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法などが挙げられる。次に、形成された異常ネルンスト材料層に少なくとも一対の端子12を取り付ける。
このようにして得られた熱電変換素子10Bの端子12が並ぶ方向(所望の電場方向)を図中のy方向とすると、該熱電変換素子10Bに対して、x方向に磁場、z方向に温度勾配をそれぞれ印加することで、端子12から熱起電力を取り出すことができる。なお、上記の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されない。
以上のように、本実施形態によれば、異常ネルンスト効果による起電力に加え、スピンゼーベック効果に起因する起電力も取り出せるため、さらに効率の高い熱電変換素子を実現できる。
[実施形態4]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図16は、本実施形態の熱電変換素子10Cの例を示す概略構成図である。図16に示すように、本実施形態の熱電変換素子10Cは、基板13上に、異常ネルンスト材料とスピンゼーベック材料のハイブリッド構造である発電構造体15を備える。また、発電構造体15には、少なくとも一対の端子12が備え付けられる。端子12は、例えば、発電構造体15の両端(例えば、一方の表面の長手方向の端部)に備え付けられてもよい。発電構造体15(異常ネルンスト材料とスピンゼーベック材料のハイブリッド構造)は、例えば、所定の厚さを有する構造体(薄膜等)として形成される。なお、発電構造体15は、所定の一方向に伸延する形状でもよい。また、熱電変換素子10Cは、第2の実施形態のように、基板13をさらに備えていてもよい。
図17に、発電構造体15の例を示す。発電構造体15は、異常ネルンスト材料151とスピンゼーベック材料152とが混在する構造体である。例えば、発電構造体15は、図17に示すように、異常ネルンスト材料151に、スピンゼーベック材料152が埋め込まれた構造となっている。なお、発電構造体15は、例えば、異常ネルンスト材料151がコーティングされたスピンゼーベック材料152の微粒子が凝集したものでもよい。
異常ネルンスト材料151は、第1~第3の実施形態の異常ネルンスト材料11と同様、導電性を有する強磁性体であって、逆スピンホール効果を有意に発現する元素(第2の元素)を含み、かつ、その元素がスピン偏極していればよい。異常ネルンスト材料151は、例えば、第2の元素をスピン偏極させるための元素(第3の元素)を含む。
また、スピンゼーベック材料152は、第3の実施形態のスピンゼーベック材料14と同様、磁性体などのスピンゼーベック効果を発現する材料であればよい。
本実施形態においても、発電構造体15内の異常ネルンスト材料151とスピンゼーベック材料152は、いずれも面内方向の所定の一方向(例えば、図中のx方向)に磁化している。
このような熱電変換素子10Cに対して、磁化方向に直交する方向(例えば、図中のz方向)に熱流を流すと、発電構造体15のスピンゼーベック材料152内で該熱流の方向にスピン流が生じる。そのスピン流が異常ネルンスト材料151に突入して、異常ネルンスト材料151の逆スピンホール効果により、発電構造体15の面内方向(図中のy方向)に第1の電場が生じる。本実施形態では、この第1の電場に加えて、異常ネルンスト材料151の異常ネルンスト効果によっても発電構造体15において第1の電場と同じ方向(磁化方向と熱流方向の外積方向)に第2の電場が生じる。その結果、発電構造体15の両端に取り付けた端子12からは、第1の電場と第2の電場を足し合わせた熱起電力を取り出すことができる。
なお、他の点は第1~第3の実施形態と同様である。
次に、図16を参照して本実施形態の熱電変換素子10Cの製造方法を説明する。本実施形態では、まず発電構造体15を作製する。その方法としては、微粒子化したスピンゼーベック材料152の周りにスパッタ法やメッキ法などで異常ネルンスト材料151をコーティングしたものを焼き固める方法や、微粒子化したスピンゼーベック材料152および異常ネルンスト材料151をそのまま焼き固める方法などが挙げられる。次に、作製した発電構造体15に少なくとも一対の端子12を取り付ける。
このようにして得られた熱電変換素子10Cの端子12が並ぶ方向(所望の電場方向)を図中のy方向とすると、該熱電変換素子10Cに対して、x方向に磁場、z方向に温度勾配をそれぞれ印加することで、端子12から熱起電力を取り出すことができる。なお、上記の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されない。
以上のように、本実施形態によれば、第3の実施形態と同様、熱電変換素子のさらなる高出力化が可能となる。
実施例1.
第1の実施例として、図14に示す熱電変換素子10Aを作製した。本例の熱電変換素子10Aに使用した異常ネルンスト材料11は、上記のM1~M4である。また、基板13には、Si基板を用いた。また、端子12材料には、Cuを用いた。
まず、厚さ381μm、x方向の長さ2mm、y方向の長さ8mmのSi基板上に、それぞれスパッタリング法により異常ネルンスト材料を成膜する。本例では、異常ネルンスト材料として、上記のM1~M4のそれぞれを成膜した。具体的には、CoターゲットとPtターゲットをArおよびN2雰囲気下で同時にスパッタすることによって異常ネルンスト材料層を得た。なお、M1を成膜する際には、スパッタ中のN2ガズ流量を0とし、M2~M4を成膜する際には、N2ガスの流量を変化させた。
得られた異常ネルンスト材料層(M1~M4)の組成比は、上述のとおりである。また、各異常ネルンスト材料層の膜厚は10nmである。このようにして得られた4種の異常ネルンスト材料層に、それぞれ電極間距離が6mmとなるように端子(電極)を取り付けた。これにより、4種の熱電変換素子を得た。以下、4種の熱電変換素子を、使用した異常ネルンスト材料11を頭に付して、それぞれM1素子、M2素子、M3素子、M4素子という。
得られた熱電変換素子それぞれに対して、図中のx方向に磁場を印加して磁化させ、かつ磁化と直交する方向である図中のz方向に温度勾配を印加して、端子12間の電圧を測定した。なお、温度勾配は、熱電変換素子をペルチェ素子で挟むことによって印加した。また、磁場は、電磁石を利用して印加した。図10に示す熱起電力は、本例の熱電変換素子の測定結果である。図10に示す熱起電力は、具体的には、異常ネルンスト材料11の上部と基板13の下部の間に1Kの温度勾配がかかった際に得られた値である。
このときのM1素子~M4素子それぞれの電気抵抗は、6mm間の二端子測定の結果、279.9Ω、305.2Ω、335.0Ω、397.7Ωであった。これらの抵抗値および起電力の値からP.F.を計算した。M1素子、M2素子、M3素子、M4素子のP.F.は、それぞれ3.2pW/K、3.5pW/K、4.0pW/K、3.4pW/Kである。ただし、これらの値はサンプルサイズを1mm×1mmに規格化した値である。また、Si基板の熱伝導率は148W/(mK)であった。
本例の熱電変換素子それぞれでy方向に熱起電力を発生させることができたが、図10に示すように、CoPtN中のNの量が大きいほど、異常ネルンスト効果による熱起電力が大きいことが分かる。また、図11に示すように、CoPtN中のPt原子のスピン偏極が高いほど、異常ネルンスト効果による熱起電力が大きいことが分かる。このように、本例によれば、材料開発システム20の予測どおり、異常ネルンスト材料中のPt原子のスピン偏極が強いほど、熱電変換効率が向上することが実証された。なお、さらに、N2ガスの流量を変化させてCoPtN中のNの量を調整することにより、より高効率のスピン熱電素子を得られる。
実施例2.
実施例1により、CoとPtの薄膜合金にNをより多く挿入するほど、異常ネルンスト効果による熱電効率がより大きくなることが示された。そこで、CoとPtのバルク型合金にNを挿入しても、異常ネルンスト効果による熱起電力が大きくなることが期待される。
本例では、図1に示す熱電変換素子10(バルク型スピン熱電素子)を作製する。本例のバルク型スピン熱電素子の異常ネルンスト材料11として、CoPtNを使用する。
本例のバルク型スピン熱電素子は、まずCo微粒子およびPt微粒子を、N2雰囲気下での放電プラズマ焼結法により焼結することにより、異常ネルンスト材料11(構造体)を作製する。そして、作製された異常ネルンスト材料11の両端に一対の端子12を取り付ける。
このように作製されたバルク型スピン熱電素子についても、図中のx方向に磁場を印加して磁化させ、かつ磁化と直交する方向である図中のz方向に温度勾配を印加することにより、図中のy方向に熱起電力を発生させることができるため、端子12から熱起電力を取り出すことができる。なお、第1の実施例と同様、本例でもN2ガスの流量を変化させてCoPtN中のNの量を調整することにより、より高効率のバルク型スピン熱電素子を得られる。
実施例3.
実施例1により、CoとPtの薄膜合金にNをより多く挿入するほど、異常ネルンスト効果による熱電効率がより大きくなることが示された。そこで、さらに、その異常ネルンスト材料にスピンゼーベック材料を組み込むことによって、さらなる熱起電力の向上が期待できる。
本例では、図16に示す熱電変換素子10C(ハイブリッド構造スピン熱電素子)を作製する。本例のハイブリッド構造スピン熱電素子の発電構造体15は、異常ネルンスト材料151として、CoPtNを使用する。また、該発電構造体15は、スピンゼーベック材料152としてBi:YIGを使用する。
まず、微粒子化したBi:YIGに、スパッタ法によりCoPtN膜をコーティングする。具体的には、微粒子化したBi:YIGが載った試料基板に対して、N2雰囲気下でCoとPtを同時にスパッタする。その後、CoPtNがコーティングされたBi:YIGの微粒子を、プラズマ焼結法によって真空化で焼結することによって、異常ネルンスト材料とスピンゼーベック材料のハイブリッド構造である発電構造体15を作製する。そして、作製された発電構造体15の両端に一対の端子12を取り付ける。
このように作製されたハイブリッド構造スピン熱電素子についても、図中のx方向に磁場を印加して磁化させ、かつ磁化と直交する方向である図中のz方向に温度勾配を印加することにより、図中のy方向に熱起電力を発生させることができるため、端子12から熱起電力を取り出すことができる。このとき、得られる熱起電力は、発電構造体15のスピンゼーベック材料152から生じたスピン流によって異常ネルンスト材料151で生じる第1の電場からの起電力と、異常ネルンスト材料151自体の異常ネルンスト効果によって生じる第2の電場からの起電力とがたし合わされたものとなる。なお、第1の実施例と同様、本例でもN2ガスの流量を変化させてCoPtN中のNの量を調整することにより、より高効率のハイブリッド構造スピン熱電素子を得られる。
なお、上記の実施形態は以下の付記のようにも記載できる。
(付記1)異常ネルンスト効果を発現する異常ネルンスト材料を備え、異常ネルンスト材料は、逆スピンホール効果を発現する元素を少なくとも含み、かつ逆スピンホール効果を発現する元素がスピン偏極していることを特徴とする熱電変換素子。
(付記2)異常ネルンスト材料の異常ネルンスト効果によって得られる規格化されたボルテージが21μV/K以上である付記1に記載の熱電変換素子。
(付記3)逆スピンホール効果を発現する元素のスピン偏極率が0.15以上である付記1または付記2に記載の熱電変換素子。
(付記4)逆スピンホール効果を発現する元素が、4d軌道以上に電子を有する元素である付記1から付記3のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記5)逆スピンホール効果を発現する元素がPtである付記4に記載の熱電変換素子。
(付記6)異常ネルンスト材料は、3種以上の元素からなる多元系であって、磁性体金属に属する第1の元素、逆スピンホール効果を発現する元素である第2の元素、および第2の元素をスピン偏極させるもしくは第2の元素のスピン偏極率を向上させる第3の元素を少なくとも含む付記1から付記5のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記7)第3の元素が、第1族~第2族元素および第8~第12族元素のいずれか、または第2周期元素のいずれかである付記6に記載の熱電変換素子。
(付記8)異常ネルンスト材料における第1の元素に対する第2の元素の組成比が、0.7以上1.3以下である付記6または付記7に記載の熱電変換素子。
(付記9)異常ネルンスト材料の全原子数に対して第3の元素に相当する原子が占める割合が、0.02以上である付記6から付記8のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記10)異常ネルンスト材料は、Con1Ptn2N1-n1-n2(ただし、0<n1<1、0<n2<1、0<n1+n2<1)である付記1から付記9のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記11)異常ネルンスト材料は、所定の厚さを有する構造体として形成されており、異常ネルンスト材料の構造体に、少なくとも一対の端子が備え付けられている付記1から付記10のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記12)基板を備え、異常ネルンスト材料が、基板の上に形成されている付記1から付記11のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記13)基板と、スピンゼーベック効果を発現するスピンゼーベック材料とを備え、異常ネルンスト材料は、基板上に形成されたスピンゼーベック材料の上に形成されている付記1から付記11のいずれかに記載の熱電変換素子。
(付記14)異常ネルンスト材料と、スピンゼーベック効果を発現するスピンゼーベック材料とが混在する構造体である発電構造体を備え、発電構造体は、所定の厚さを有し、発電構造体に少なくとも一対の端子が備え付けられている付記1から付記10のいずれかに記載の熱電変換素子。
以上、本実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2017年9月28日に出願された日本特許出願2017-187730を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本発明は、熱から電力を得る目的において、あらゆる用途に適用可能である。
10、10A、10B、10C 熱電変換素子
11、151 異常ネルンスト材料
12 端子
13 基板
14、152 スピンゼーベック材料
15 発電構造体
20 材料開発システム
21 情報処理装置
22 記憶装置
23 入力装置
24 表示装置
25 通信装置
211 結晶構造決定手段
212 計算データ変換手段
213 解析手段

Claims (8)

  1. 異常ネルンスト効果を発現する異常ネルンスト材料を備え、
    前記異常ネルンスト材料は、逆スピンホール効果を発現する元素を少なくとも含み、かつ前記逆スピンホール効果を発現する元素がスピン偏極しており、
    前記異常ネルンスト材料は、3種以上の元素からなる多元系であって、磁性体金属に属する第1の元素、前記逆スピンホール効果を発現する元素である第2の元素、および前記第2の元素をスピン偏極させるもしくは前記第2の元素のスピン偏極率を向上させる第3の元素を少なくとも含み、
    前記異常ネルンスト材料における前記第1の元素に対する前記第2の元素の組成比が、0.7以上1.3以下である
    ことを特徴とする熱電変換素子。
  2. 前記異常ネルンスト材料の異常ネルンスト効果によって得られる規格化されたボルテージが21μV/K以上である
    請求項1に記載の熱電変換素子。
  3. 前記逆スピンホール効果を発現する元素のスピン偏極率が0.15以上である
    請求項1または請求項2に記載の熱電変換素子。
  4. 前記逆スピンホール効果を発現する元素が、4d軌道以上に電子を有する元素である
    請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱電変換素子。
  5. 前記逆スピンホール効果を発現する元素がPtである
    請求項4に記載の熱電変換素子。
  6. 前記第3の元素が、第1族~第2族元素および第8~第12族元素のいずれか、または第2周期元素のいずれかである
    請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱電変換素子。
  7. 前記異常ネルンスト材料の全原子数に対して前記第3の元素に相当する原子が占める割合が、0.02以上である
    請求項1から請求項6のいずれかに記載の熱電変換素子。
  8. 前記異常ネルンスト材料は、Con1Ptn2N1-n1-n2(ただし、0<n1<1、0<n2<1、0<n1+n2<1)である
    請求項1から請求項7のいずれかに記載の熱電変換素子。
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