(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る設置部材及び情報提供システムの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施形態では、本発明に係る設置部材を点字ブロック(特に、警告用ブロック)に適用した場合を例示する。本発明に係る設置部材は、道路、床などに埋設したり、又は道路や床の上に貼り付けたり若しくは載置したりすることができる部材である。この実施形態では、設置部材の一例として、警告用ブロックに適用する場合を例示するが、警告用ブロックに限定されるものではなく、誘導用ブロックであってもよいし、床部材などであってもよい。
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)情報提供システムの全体構成
図2は、実施形態に係る情報提供システムの全体構成を示す全体構成図である。
図2において、この実施形態に係る情報提供システム5は、警告用ブロック1、誘導用ブロック4、携帯端末2を有する。
誘導用ブロック4は、歩行者に歩行を誘導するための設置部材である。
警告用ブロック1は、その表面(路面側)に複数の点状突起部11(図1参照)が格子状に配置されている設置部材である。警告用ブロック1は、歩行者の足裏荷重により発電機能及び蓄電機能を有しており、発電電力若しくは蓄電電力を供給して情報処理及び無線通信を行うものである。
警告用ブロック1は、上述したように、歩行者に踏まれることにより発電した電力又は、その余剰電力を蓄電した電力を供給源として、歩行者により踏まれた着足方向(着足方位とも呼ぶ。)を判定する処理と、その着足方向に応じた方位案内情報に対応したコード情報を含む無線信号を無線送信する。なお、警告用ブロック1の詳細な構成については後述する。
この実施形態では、複数の点字ブロック(誘導用ブロック4、警告用ブロック1)のうち警告用ブロック1のみが、着足方向に応じた方位案内情報に対応したコード情報を無線送信する場合を例示する。しかし、誘導用ブロック4も、警告用ブロック1と同等の構造及び構成を備えるようにして、着足方向に応じた上記コード情報を無線送信できるようにしてもよい。
また、この実施形態では、1つの警告用ブロック1のみが、着足方向を判定し、上記コード情報を無線送信する場合を例示するが、複数の警告用ブロック1を隣接するように配置し、複数の警告用ブロック1のそれぞれが着足方向に応じた上記コード情報を無線送信するようにしてもよい。つまり、相互に隣接する複数の警告用ブロック1が着足方向に応じた上記コード情報を無線送信できるようにしてもよい。
携帯端末2は、警告用ブロック1が無線送信した、着足方向に応じたコード情報を含む無線信号を受信し、そのコード情報に対応する方位案内情報を音声出力する。例えば、歩行者が、ある方向に何があるかを知りたい場合に、意図的に、歩行者が知りたい方向に足を向けて、警告用ブロック1を踏むことにより、その方向(着足方向)に関する情報(方位案内情報)が音声出力される。
携帯端末2は、歩行者により所持される端末であり、無線通信機能、情報処理機能、音声出力機能を有する。これら無線通信機能、情報処理機能、音声出力機能を有していれば、専用端末、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、ウェラブル端末等を適用することができる。
なお、携帯端末2は、ネットワークを通じて、図示しないサーバーと通信することができ、必要に応じて、各警告用ブロック1のコード情報に対応する方位案内情報をサーバーから取得できるようにしてもよい。
(A-1-2)警告用ブロック1の構成
図1は、実施形態に係る警告用ブロック1の内部構成を説明する内部構成図である。
図1では、説明を容易にするために、警告用ブロック1の表面(路面側)に格子状に配置される複数の点状突起部11のうち1列目の複数の点状突起部11の下方の内部構成と、各構成要素との接続関係を例示している。
まず、警告用ブロック1の構造について、図1を用いて説明する。図1において、警告用ブロック1は、表面部材50と、基部材52と、前記表面部材50と前記基部材52との間に配置された弾性部材511及びストッパー部材512とを有する。
表面部材50は、その表面に複数の点状突起部11を格子状に配置する板状部材である。表面部材50の材質は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂等の弾性部材としてもよい。また、表面部材50の表面に配置される各点状突起部11は、上から見ると円形であり、横から見ると先端が平坦になっている略山形となっている表面部111と、その表面部111の下方には、後述する圧電素子12に足裏荷重を裏側凸部112とを有している。そのため、歩行者が足裏で点状突起部11を踏むことにより、裏側凸部112が圧電素子12に対して荷重を伝達することができる。裏側凸部112の形状は、圧電素子12に対して足裏荷重を伝達することができる形状であれば、特に限定されるものではなく、例えば円柱形状としてもよい。
基部材52は、表面部材50及び弾性部材51を支持する板状部材である。基部材52の材質は、特に限定されるものではなく、樹脂製、コンクリートなどとしてもよい。なお、基部材52とストッパー部材512との間に、後述する圧電素子12が配置される。
弾性部材511は、表面部材50の各点状突起部11の裏側凸部112の箇所が円形孔となっている板状の弾性部材である。表面部材50が歩行者に踏まれたときに、その点状突起部11の裏側凸部112が圧電素子12に荷重を加え、点状突起部11が歩行者に踏まれていない場合には、裏側凸部112を元の位置に戻すことができるように、すなわち表面部材50を復元させるために弾性部材511を設けている。
ストッパー部材512は、表面部材50が歩行者に踏まれ、圧電素子12に強く荷重が加わってしまい、圧電素子12の破壊を回避するためのものである。
図1において、警告用ブロック1は、複数の点状突起部11のそれぞれの下方に配置された圧電素子12、電圧平滑化部13、蓄電部14、情報処理部15、無線部16、アンテナ部17を有する。
圧電素子12は、各点状突起部11の裏側凸部112の下方に位置しており、歩行者に踏まれた点状突起部11の裏側凸部112から足裏荷重が加わると、その荷重を電気信号(電圧)に変換するものである。
圧電素子12は、圧電素子センシングラインL2を通じて情報処理部15と接続しており、歩行者に踏まれた点状突起部11の位置を検知するため(換言すると着足方向を検知するため)、圧電素子12からの電力を情報処理部15に供給する。また、圧電素子12は、発電した電力を蓄電するため、電圧平滑化部13と接続している。
上記のように、圧電素子12は、歩行者に踏まれた点状突起部11を検知するためのセンサーとしての機能と、発電機能を兼ね備えている。従って、この出願書類では、着足を検知するセンサーとして機能する圧電素子12を「着足検知部」と呼んだり、発電素子として機能する圧電素子12を「発電手段」と呼んだりする。
なお、この実施形態では、物理的な荷重を電気信号に変換する素子として、圧電素子12を利用する場合を例示しているが、圧電素子12に限定されるものではなく、他の発電機構を用いるようにしてもよい。
また、この実施形態では、板状の1個の圧電素子を用いる場合を例示しているが、発電量を確保するために、複数個の圧電素子12を重ねて用いたり、複数個の圧電素子12を並べて配置したりしてもよい。複数個(例えば2個)の圧電素子12を用いる場合、一方の圧電素子12から供給される電力を情報処理用の電力とし、他方の圧電素子12から供給される電力を無線通信用の電力とするなどのように、各圧電素子12からの電力を目的に応じた電力として使い分けするようにしてもよい。
電圧平滑化部13は、各圧電素子12と接続しており、圧電素子12から印加される電圧を平滑化する整流回路であり、蓄電部14に与えるものである。
蓄電部14は、圧電素子電源ラインL1を通じて、電圧平滑化部13と接続しており、複数の圧電素子のそれぞれから供給される電力を蓄電するものである。蓄電部14は、圧電素子電源ラインL1を通じて情報処理部15と接続しており、蓄電電力を情報処理部15に供給する。なお、蓄電部14は、例えば、キャパシタ(スーパーキャパシタ)、二次電池などを適用することができる。
警告用ブロック1は、道路などの屋外に埋設されることが多いため、電源を確保することが大きな課題である。この実施形態では、歩行者が警告用ブロック1の点状を踏むことによる足裏荷重を、圧電素子12が電力に変換することで、圧電素子12で発生した起電力は、回路動作(すなわち、無線処理、情報処理など)のための電力とすることができる。さらに、余った過剰な電力を、蓄電部14が蓄電することができ、その蓄電電力を回路動作に供給することができる。このようにすることで、電源を確保することが難しい場所に警告用ブロック1を埋設する場合でも、電源を確保することができ、又着足方向に応じた方位案内情報を提供することができる。
情報処理部15は、圧電素子12若しくは蓄電部14からの供給電力で動作する回路である。情報処理部15のハードウェア構成は、図示しないが、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インターフェース部等を有する回路装置であり、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを実行することにより、情報処理部15としての機能が実現される。
図3は、実施形態に係る情報処理部15の構成を示す機能ブロック図である。
図3において、情報処理部15は、着足方向検出部151、コード情報検索部152、信号生成部153、コード情報記憶部154を有する。
着足方向検出部151は、センサーとして機能する複数の圧電素子12のそれぞれから発電された電力値を取得し、その電力値と発生タイミングとに基づいて、着足方向を検出するものである。着足方向検出部151による着足方向の推定方法については、動作の項で詳細に説明するが、着足方向検出部151は、歩行者の着足特性に基づいて、各圧電素子12から出力される電力値の変化と、どの順序で圧電素子12から電力が出力されたかの発電順序を監視して着足方向を検出する。
警告用ブロック1には、予め基準方向が定められており、その基準方向に対して、検出された着足方向が「前方(方向)」、「右(方向)」、「左(方向)」、「右斜め前方(方向)」、「左斜め前方(方向)」、「後方(方向)」等のように検出できる。着足方向検出部151により検出可能な方向(方位)は、基準方向に対して、4方位、8方位、16方位などのように、複数の方位を検出できるようにしてよい。
コード情報検索部152は、着足方向検出部151の検出結果に基づいて、検出された着足方向に応じた方位案内情報を示すコード情報を、コード情報記憶部154から検索する。そして、コード情報検索部152は、コード情報を信号生成部153に与える。
信号生成部153は、コード情報検索部152により検索されたコード情報を含む信号を生成して、無線部16に与える。
ここで、図4及び図5を用いて、実施形態に係るコード情報を含む信号のフォーマットを説明する。図4は、実施形態に係るコード情報記憶部154に記憶されるコード情報を説明する構成図である。図5は、実施形態に係るコード情報を含む信号フォーマットである。
図5に示すように、実施形態に係る信号フォーマットは、「データフィールド1」、「データフィールド2」、「データフィールド3」のように複数のデータフィールドを有する。なお、この実施形態では、3つのデータフィールドである場合を例示しているが、データフィールドの数は限定されるものではない。
「データフィールド1」には、着足方向検出部151により検出された方向、若しくは、着足方向を判定することができなかった場合に判定不能を示すコード情報が記載される。「データフィールド2」には、着足方向にある警告物を示すコード情報が記載される。「データフィールド3」には、着足方向にある警告物の特性を示すコード情報が記載される。
例えば、着足方向検出部151が着足方向として「前方(方向)」を検出した場合、コード情報検索部152は、図4のコード情報記憶部154から、データフィールド1:(01)」のコード情報と、その「データフィールド1:(01)」に対応付けられた「データフィールド2:(01)」、「データフィールド3:(01)」のコード情報を検索する。これにより、信号生成部153は、「データフィールド1:(01)」、「データフィールド2:(01)」、「データフィールド3:(01)」を含む信号を生成する。
無線部16は、情報処理部15の信号生成部153により生成された信号を無線送信するものである。無線部16は、少なくとも送信機能を有する無線送信器としてもよい。また、
アンテナ部17は、無線部16からの信号を電波にのせて送出するものである。アンテナ部17は、警告用ブロック1を踏んでいる歩行者(携帯端末2)に電波が届けばよいので、通信範囲は限定的であってもよい。したがって、アンテナ部17の電波送出に係る電力値を微小値にしたり、又は警告用ブロック1の上方を通信範囲としたりするような指向性を有するものとしてもよい。
(A-1-3)携帯端末の構成について
図6は、実施形態に係る携帯端末2の内部構成を示す内部構成図である。
図6において、実施形態に係る携帯端末2は、到来電波を捕捉して電気信号に変換するアンテナ部20、アンテナ部20からの電気信号を受信する受信部21、受信部21からの受信信号に含まれるコード情報を抽出し、コード情報記憶部25を参照して、コード情報に対応する方位案内情報を検索するコード情報解析部22、コード情報解析部22により検索された方位案内情報に係る音声ガイダンスを合成する音声合成部23、音声合成部23により合成された音声ガイダンスを出力する音声出力部24、コード情報と方位案内情報とを対応付けて記憶するコード情報記憶部25を有する。
図7は、実施形態に係る携帯端末2のコード情報記憶部25の構成を示す構成図である。
図7に示すように、携帯端末2のコード情報記憶部25には、予め設定した「データフィールド1」、「データフィールド2」、「データフィールド3」のそれぞれに記載される全てのコード情報と、各コード情報が指し示す情報とを対応付けられたものである。
したがって、コード情報解析部22が、受信信号に含まれている「データフィールド1」、「データフィールド2」、「データフィールド3」のそれぞれに記載されているコード情報を抽出すると、コード情報記憶部25を参照して、各データフィールドに記載されているコード情報に対応する情報を解析する。
より具体的には、例えば、「データフィールド1」に「01」が記載されている場合、コード情報解析部22は、データフィールド1のコード情報「01」に基づいて、コード情報記憶部25を参照して、着足方向が「前方(方向)」であることを解析する。「データフィールド2」、「データフィールド3」についても同様に解析することで、着足方向と、その方向にある警告物や警告物の特性を認識することができる。
さらに、音声合成部23は、コード情報解析部22により解析された、「着足方向」、「警告物」、「警告物の特性」に基づいて、音声ガイダンス情報を合成する。なお、音声合成部23による合成方法は、既存技術を適用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
そして、音声出力部24は、合成された音声ガイダンスを、例えばイヤホンやスピーカーなどの出力部から音声出力する。これにより、例えば「前方には、階段の上りがあります。」などの音声が出力される。
(A-2)実施形態の動作
次に、この実施形態に係る情報提供システム5における情報提供処理の動作を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
以下では、情報提供処理の全体動作を説明した後、警告用ブロック1において着足方向を推定する着足方向検出処理の動作を説明する。
(A-2-1)全体動作
図8は、実施形態に係る情報提供処理の全体動作を示すフローチャートである。
まず、警告用ブロック1の表面に格子状に配置されている複数の点状突起部11のうち、いずれかの点状突起部11が歩行者に踏まれることにより、点状突起部11の裏側凸部112が圧電素子12に対して荷重を加える。そして、圧電素子12は、加わった荷重を電気信号に変換し、圧電素子12により発生した起電力が電圧平滑化部13を通じて情報処理部15及び無線部16に送られ、同時に圧電素子センシングラインL2を通じて情報処理部15に与えられる。なお、情報処理部15及び無線部16による消費電力を超える電力は、電圧平滑化部13を通じて蓄電部14に与えられ、余剰電力は蓄電部14に蓄積される。
図8において、情報処理部15の着足方向検出部151は、各圧電素子12からの電力値と、各圧電素子12の発電タイミングとを観測して、着足方向検出処理を行う(S101)。そして、着足方向検出部151は、検出した結果に基づいて、着足方向を判定する(S102)。
このとき、着足方向を判定することができた場合、コード情報検索部152は、図4のコード情報記憶部154から着足方向に応じたコード情報を検索し、信号生成部153がコード情報を含む信号を生成する(S103)。そして、無線部16が、コード情報を含む信号を無線送信する(S104)。
一方、S102において、着足方向を判定することができない場合(判定不能の場合)、コード情報検索部152は、図4のコード情報記憶部154から着足方向の判定不能を示すコード情報を検索し、信号生成部153が、判定不能を示すコード情報を含む信号を生成する(S105)。そして、無線部16が、判定不能のコード情報を含む信号を無線送信する(S106)。
歩行者が所持する携帯端末2は、警告用ブロック1から無線送信された警報情報を受信し、その警報情報に含まれているコード情報を解析し、そのコード情報に応じた警報情報の音声ガイダンスを合成して、着足方向に応じた方位案内情報を音声出力する。
(A-2-2)着足方向検出処理
次に、警告用ブロック1における情報処理部15における着足方向検出処理を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図9は、格子状に配置された各圧電素子の位置と、各圧電素子からの出力電力特性を説明する説明図である。
図9(A)に示すように、格子状に配置されている複数の圧電素子12は、2次元座標で管理されている。例えば、警告用ブロック1では、X軸とY軸の2次元座標系における基準点(図9(A)では左下)を設け、複数の圧電素子12の位置を管理している。警告用ブロック1において、歩行者に踏まれると、情報処理部15は、電力の供給先の圧電素子12の位置を特定すると共に、各圧電素子12からの電力値の大きさ及び発生タイミングに基づいて、着足方向を検出する。
図9(B)に示すように、通常、歩行者は、踵から着地して、足裏が着地していき、最後につま先が着地する。踵が着地したときに足裏荷重は大きく、つま先が地面を蹴るときに大きな足裏荷重が発生するという傾向がある。つまり、歩行者の足は、踵、足裏、つま先の順で着地し、地面から離れる順番も踵、足裏、つま先の順で、踵とつま先が着地するときに強い荷重がかかるという傾向がある。
そうすると、各圧電素子12からの起電力のピーク値を捉えて、そのピーク値の時刻を記憶し、各圧電素子12のピーク値の時刻を時系列で追っていくことで、各圧電素子12からの出力タイミングが分かる。また、予め各圧電素子12の位置が分かっているので、起電力を発生した圧電素子12の位置の時系列変化を方向と捉えることにより、歩行者の着足方向を判定できる。
つまり、図9(B)に示すように、起電力を発生した圧電素子12の出力タイミングが、歩行者が足裏で踏んだ順番と同じとなり、起電力を発生した圧電素子12の位置の時系列変化(方向)が歩行者の着足方向として判定できる。
情報処理部15の着足方向検出部151は、上記のような圧電素子12からの出力電力値の変化特性(出力タイミングの時系列変化)に基づいて、踵からつま先への直線的な荷重移動を足着方向の判定に使用する。
図10は、実施形態に係る着足方向検出処理の動作を示すフローチャートである。
[S201]まず、格子状に配置されている点状突起部11が歩行者に踏まれることにより、圧電素子12に足裏荷重が加わり、圧電素子12は起電力を発生し、その電力が情報処理部15に与えられる。
情報処理部15では、着足方向検出部151が、最初に起電力が発生した時点で、着足方向検出部151による着足方向の検出中であることを示す検出中フラグ(検出中Flag)を立てると共に、一人の歩行者の着足方向の検出期間を制限するために検出タイマーを起動する。ここで、検出タイマーは、1回の着足方向の検出に要する時間(例えば1秒程度)とする。検出タイマーは、圧電素子12から最初に着足が検出されてから、1回の着足方向検出を判定するための時間とする。
[S202]着足方向検出部151では、検出中フラグが立っているか否かを判定し、検出中フラグが立っているときには、既に最初の着足が検出されており、1回の着足方向の検出中であると判定して、S210に移行する。検出中フラグが立っていない場合、S203に移行する。
[S203及びS204]S202で検出中フラグが立っていない場合、今回の着足が、最初の着足検出時であると判定して、着足方向検出部151は、検出中フラグをセットして(S203)、検出期間を制限するために、検出タイマーを起動する(S204)。
[S205]着足方向検出部151は、圧電素子12を着足センサーとみなし、センサーとして機能する圧電素子12からのセンシング信号を観測する。ここで、起電力(センシング信号)を発生した圧電素子12の位置を「検出Point」と呼び、その圧電素子12の数「検出Point数」と呼ぶ。
着足方向検出部151は、略同時に検出する検出Point数が1個であるか又は複数であるかを判定し、検出Point数が複数の場合には、S206に移行し、検出Point数が1か所の場合には、S207に移行する。
ここで、略同時に、複数の検出Point数がある場合とは、複数の点状突起部11を同時に踏んでいる状態と考えられる。この場合、着足方向を検出するために、どの検出Pointを登録するかが問題となるので、S206に移行して、いずれかの検出Pointを登録できるようにしている。
[S206]着足方向検出部151は、格子状の検出Pointが複数同時に検出した場合、複数の検出Pointからの電力値のうち最も大きいものを検出Pointとして登録する。
より具体的には、圧電素子12の場合、起電力の瞬時値の変動は大きいが、整流回路を通して適当な容量のコンデンサ等に蓄電することで発生タイミングの検出及び発電量の比較が可能となる。
例えば、図9(A)及び図9(B)に示すように、検出Point(X,Y)及び検出Pointの検出タイミングが、(X,Y)=(2,0)(3,0)→(2,1)(3,1)→(3,2)(4,2)→(3,3)(4,3)→(3,4)(4,4)の順序とする。最初の(X,Y)=(2,0)(3,0)は同時に検出されたものとする。このとき、検出Point(2,0)からの電力値と検出Point(3,0)の電力値とを比較して、電力値の大きい方、すなわち検出Point(3,0)を選択して、検出Point(3,0)を登録する。他の検出Pointについても同様に行い、上記の例の場合、(X,Y)=(3,0)→(3,1)→(3,2)→(3,3)→(4,4)を登録する。
[S207及びS208]着足方向検出部151は、検出Pointである圧電素子12の位置を逐次登録していき、登録するたびに、登録数もインクリメントする。
[S209]検出Pointを逐次登録していくと共に、着足方向を検出するため、ある検出Pointから次に遷移する検出Pointを特定する必要がある。そこで、着足方向検出部151は、次に起電力が発生する可能性がある圧電素子の位置(Point)を判定するために、判定Window(以下では、単に「Window」とも呼ぶ。)の設定処理を行う。
このように、次のPointを特定するために判定Windowを選択し、次に判定Window以外に起電力が発生した場合は、判定NGとして足着方向検出を最初からやり直すことができるので、判定の確度向上と判定時間の短縮が行える。
図11は、実施形態に係る判定Windowの設定処理を説明する説明図である。
図11(A)に示すように、基本的には、検出Pointの周囲を判定Windowとする。例えば、図11において、(X,Y)=(2,1)が、今回の検出Pointであるとする。この場合、次の検出Pointを追跡するために、(X,Y)=(2,1)の周辺の(2,0)、(1,0)、(1,1)、(1,2)、(2,2)、(3,2)、(3,1)、(3,0)のいずれか又は全部をWindowとする。そして、Windowに該当するいずれかのPoint(圧電素子12)が着足をセンシングしている場合には、直前の検出Pointと、その直後の検出Pointとは関連するものとみなすことができ、着足方向を追跡することができる。
また、図11(A)の左から2番目以降の図のように、2回目以降の判定Windowを設定するときには、踵からつま先へ向かう一連の検出以外を除外するため、前回の検出Pointから現在の検出Pointの方向に対して、後方と斜め後方をWindowから除外している。
その結果、図11(A)の例の場合、(X,Y)=(2,1)→(3,2)→(3,3)→(4,4)の着足方向を検出できる。
一方、図11(B)に示すように、判定Windowが設定できない場合があるが、このときは着足方向検出処理を完了することにより、無駄な時間が削減でき、効率的な検出が可能となる。
[S210]S202において検出中フラグが立っていると判定されると、着足方向検出部151は、検出タイマーがタイムアウトであるか否かを判定して、タイムアウトの場合には、S212に移行する。タイムアウトでない場合、S211に移行する。
[S211]着足方向検出部151は、着足により次に起電力が発生する圧電素子12の位置(すなわち、検出Point)を判定する判定Windowがあるか否かを判定する。その判定Windowがない場合(すなわち、図11(B)に例示するように、次の検出Pointを判定できない場合)、S212に移行し、判定Windowがある場合、S216に移行する。
[S212]着足方向検出部151は、タイムアウト時間までの間に登録した検出Pointの登録数が、所定値(例えば「3」)以上であるか否かを判定する。
例えば、図12に示すように、登録数が所定値(例えば3個)以上である場合、着足方向の判定可能な状態であると判定する。この場合、S213に移行することになる。
一方、例えば、登録数が所定値未満である場合、例えば図13(A)に例示するように、着足方向を判定することができない状態であると判定(すなわち、「判定結果NG」と判定)し、判定処理を完了する(S215)。
この場合、再度踏み直しの要求するコード情報を無線信号にのせて無線送信する。これにより、再度踏み直しを要求する音声が出力することにより、歩行者に、再度意図する方向に踏み直しをさせることができる。これにより、意図的に歩行者に踏み直してもらうことにより、着足方向を確実に判定することができ、その着足方向の方位案内情報を提供することができる。なお、再度の踏み直しは、歩行者と歩行者以外を区別することにも有効であるため、判定の確度を上げるために、歩行者に2度踏みしてもらうようにしてもよい。
[S213]着足方向検出部151は、登録されている圧電素子12からの電力値の大きさ及び発生タイミングに基づいて着足方向を判定する(S214)。
図14は、実施形態に係る着足方向判定処理を説明する説明図である。
着足方向検出部151は、判定Windowを考慮して、選択された最初の登録座標と最後の登録座標から足着方向を判定する。この場合、起点(X,Y)=(2,1),終点(X,Y)=(4,5)であるとする。この場合、着足方向検出部151は、足着確度θは下記の式で求めることができる。
θ=tan-1(X成分/Y成分)=tan-1((4-2)/(5-1))=26.565度…(1)
よって、この場合は、歩行者が正面から右に26.565度傾いていると判断し、歩行者に警告物のアナウンスを行う。実際のアナウンスでは、角度は理解しやすいように30度刻み程度に丸めて、例えば、「約左30度の方向に、エレベータがあります。」のように告知するようにしてもよい。
[S216]着足方向検出部151は、判定Windowがある場合に、登録数が所定値(例えば、「5」)に到達しているか否かを判定し、登録数が所定値に到達している場合には、S213に移行し、登録数が所定値に到達していない場合には、S217に移行する。
[S217]検出Pointと判定Windowの範囲とを照合して、検出Pointが判定Windowの範囲内にあるか又は範囲外にあるかを判定する(S217)。
これは、例えば図13(B)に示すように、複数の歩行者が踏んだと思われるケースを判定している。すなわち、検出Pointが判定Windowの範囲外にあるときは、複数の歩行者が踏んでいると判断し、S218に移行して判定NGと処理を完了する。一方、検出Pointが判定Windowの範囲内にあるときは、S205に移行する。
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、歩行者が点字ブロックを踏むことにより、歩行者の着足方向に応じた情報(警告物などの情報)を、歩行者に報知することができる。その結果、従来よりも、歩行者の安全性を向上させ、より安心感を与えることができる。
また、実施形態によれば、歩行者が点字ブロックにより、圧電素子が発電したり、その発電した電力を蓄電させたりすることができる。そのため、設置場所によっては電源確保が難しい場所であっても、点字ブロックを有効に設置することができるため、低コストで事故防止及びサービス向上が図れる。
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても、種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態も適用できる。
(B-1)上述した実施形態では、説明を容易にするために、視覚障碍者等のみを対象とした設置部材を意識して説明したが、健常者等にも適用できる。例えば、会社の受付や、展示会の入り口などの床面に、本発明の設置部材を設置し、道路案内を知りたい歩行者が、意識的に、知りたい方向に傾けて設置部材を踏むことにより、方位案内情報を知ることができる。
(B-2)上述した実施形態では、発電機構として圧電素子を用いる場合を例示した。しかし、圧電素子に変えて、物理的な圧力(または運動エネルギー)を電気信号に変換することができる素子又は部材であれば、圧電素子以外の発電機構を広く適用することができる。また、電力発生と足着圧力の検出を別の機構で行うことも考えられる。
本発明の設置部材は、路面等に埋設されるものである。従って、視覚障碍者等だけでなく、多くの歩行者が、本発明の設置部材を踏むことになり、そのたびに、方向に応じた情報を無線送信することになる。
しかし、例えば、発電素子としての圧電素子が微小電力を発電し、微小電力の供給でも無線通信が可能な無線部とすることにより、余剰電力が蓄電部に蓄電されることになる。従って、例えば、315MHz微弱特定小電力の無線部を採用するようにしてもよい。
(B-3)点字ブロックが無線送信する通信範囲を選択的に切り替えるようにしてもよい。点字ブロックの警告物の方向を含む情報はブロックを踏んだ人のみが受け取るのが望ましいので、送信電力と指向性を調整して受信可能領域を限定する制御を行う必要がある。
しかし、一般の人が踏んだ場合や足着方向が不明な場合等は、上記より広範囲で受信できるようにして、近傍の状況や位置情報等を送信ことも考えられる。また、電力に余剰がある場合等は不特定の人向けに、路面の凍結情報等の注意情報をブロードキャスト的に発信してもよい。この場合はスマートフォン等で受信可能なように、無線LANやBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信装置等で送信してもよい。その場合、これらの通信規格に対応した複数のアンテナや無線器及び各種のセンサーを実装することも考えられる。
(B-4)本発明の設置部材の構造については、屋外設置を考慮すると、防水,防塵等が必須なため、完全密閉が望ましい。設置部材に搭載されるICチップなどの記憶部(例えばコード情報記憶部)に、コード情報などを含む情報を書き込む場合、有線接続が困難となることが考えられる。またコストと消費電力削減のため、無線部は送信器のみを搭載することも考えられ、コード情報を設置部材にインストールするために、無線以外の設定方法が必要となることが想定される。
そのため、設置部材に各種情報を設定する方法としては、例えば、特定のブロックパターンを特定のシーケンスで押下した場合、情報書き込みモードに入り、ブロックパターンで情報を書き込む方法を搭載するようにしてもよい。書き込み情報の確認は、確認モードを設定し、無線送信を行う。勿論、書き込みも無線受信器を搭載して、無線で行ってもよい。また、設置部材を設置する場合に、その設置方向も重要となる。方向(注意喚起する対象がある方向)が認識できるように、外観上のマーキングを施しておくことも重要である。
(B-5)圧電素子は電圧を加えると音を発生させることから、ブザー音等で注意喚起を促すことも可能である。
(B-6)本発明の設置部材は、圧電素子が発電し、その発電電力を供給源として、情報処理部が着足方向の判定処理を行ない、無線部が、例えば固定周波数を利用したOOK変調した信号を無線送信する。つまり、マイコン(図1の情報処理部に相当)で格子電圧と方向推定を行った後に、無線送信する必要があり、その発電量の確保が重要となる。
そこで、複数の圧電素子を上下方向に積層させ、積層する一方の圧電素子をブロック共通(例えば、図1の電源ラインL1)、他方の圧電素子を格子個別の電圧(例えば図1のセンシングラインL2)に使用するようにしてもよい。ブロック共通でマイコン動作(このとき、格子個別の電圧値で格子認識する)させ、その後、格子個別の電源を使用して無線送信を行うようにしてもよい。言い換えると、図1において、センシングラインL2を通じて、圧電素子12が起電力を発生し、その電力が情報処理部に供給される。上述した実施形態では、情報処理部は圧電素子からの電力を、センシング信号として検知することを説明した。しかし、圧電素子からの電力値が大きい場合、すなわち、着足方向検知処理で使用する電力値を超えた余剰電力が生じることもあり、その余剰電力については、後段の無線部に供給できるようにしてもよい。つまり、情報処理部でセンシングをしても、なお余剰電力が生じたときには、その余剰電力を無線部に供給できるようにしてもよい。
(B-7)設置部材に搭載するアンテナが、同軸漏洩ケーブル等を用いて送信電力と指向性の調整を行うようにしてもよい。例えば、受信範囲は半径数m程度に設定する。例えば、アレイアンテナ等で指向性を向上させるようにしてもよい。受信範囲を半径数m程度とした場合でも、通常は、不特定多数の人が踏むことになるが、設置部材の踏まれ方で判別して、アナウンスの種類を変更することができる。
意図しない踏み方の場合は近くにある情報を、無線部がブロードキャストするようにしてもよい。例えば、「階段があり」「線路に近い」等の情報を、ブロードキャストすることにより、実際にブロックを踏んでいない場合も、半径数メートルの情報として知ることができるので、有用な情報になります。
意図した踏み方の場合(例えば、踵からつま先にかけてゆっくりと踏み込む場合、又は2回連続して同じ着足方向に踏み込むなどの場合)は、情報処理部が、その着足方向を検出して、着足方向に応じた詳細な情報を提供するようにしてもよい。このように、情報処理部が、着足方向の判定結果に基づいて、意識的に踏み込んだものか、そうでないかを判断し、その結果に基づいて、提供する情報を切り替えるようにしてもよい。
(B-8)上述した実施形態では、携帯端末2のコード情報記憶部25に、コード情報が予め設定されている場合を例示した。
しかし、携帯端末2が、ネットワークを通じて、サーバ(図示しない)と通信可能であり、サーバーから取得した情報を用いて音声ガイダンスを出力できるようにしてもよい。
より具体的には、各設置部材には識別情報(ID)が付与されており、サーバーは設置部材の識別情報と、その設置部材が置かれている場所や環境の方位案内情報とが対応付けられているデータベースを有していて、携帯端末2はサーバーからこれらの情報を取得して内部に情報を記憶する。
その後、上述した実施形態と同様に、ユーザが設置部材を踏む。このとき、設置部材は、判定した着足方向を示すデータと、当該設置部材の識別情報を、携帯端末に送信する。これを受けて、携帯端末が、サーバーから取得した情報を参照して、受信した設置部材の識別情報及びその検知した着足方向に基づいて、対応する方位案内情報を読み出して、音声ガイダンスを出力する。
設置部材が置かれる場所付近の建物や階段等の環境が変わることがあり、上述した実施形態で例示したコード情報の数が増えたり、コード情報の数では足りなくなったりしてしまうことも考えられる。しかし、上記変形実施形態によれば、サーバーが設置部材の環境に応じた方位案内情報を携帯端末に送信することで、現在、設置部材が置かれている環境に応じた最新の方位案内情報をユーザに提供することができる。