説明される発明概念の実施態様は、従来、平らな平面状の角膜接触面を先端に有するゴールドマン圧平眼圧計(GAT)を使用して実施されている眼の眼圧の測定に付随する問題に対処する。提案される実施形態の使用は、IOP測定の正確さ及び/又は精度を更に助長するものであり、これは、測定結果を角膜の厚さ及び剛性(及び/又は他の説明される眼の特性)の寄与に関して補正することを場合によっては不要にし、同時に、角膜の曲率及び剛性に起因するIOP測定の誤差、並びに測定手続きによって眼球に通常かかっていながら臨床的に且つ先行技術において今まで無視されてきた眼内応力の両方を最小化することによって行われる。そのように有利な効果は、少なくともi)中心湾曲部分と、ii)中心部分を取り巻いていて、曲率の正負が中心部分の曲率の正負と逆である周辺部分と、を含むように構成された(ほぼ軸対称な)角膜接触面を有する眼圧計チップを使用することによって達成される。眼圧計先端面の中心部分と周辺部分は、平面閉曲線に沿って接線方向に(接線に平行に)互いに融合するように構成されている。
直観で分かるものではないが、チップの角膜接触面の曲率の正負が角膜の曲率の正負と同じである本発明の一実施形態では、チップの圧平面を角膜の表面と形状的に一致させて合同にすることは避けなければならず、これは、そのように形状がほぼ完全に一致することで(IOP測定中に)角膜の圧平部分に眼圧計チップから力がかからなくなり、それによって、測定自体の概念そのものが否定され、測定が実質的に無効になる為である。「合同」という用語は、選択された第1及び第2の要素に関して使用される場合には、これらの要素を重ね合わせたときにほぼ全ての箇所が一致することを明示するものである。従って、本発明の方法の一実施形態は、(眼圧計チップの一実施形態の)角膜接触曲面が(角膜の通常の休止状態において)角膜の表面と実質的に合同でない限りは、眼圧計チップのその実施形態から角膜にかかる力を調節することの結果として、角膜接触曲面と角膜との間の接触面の表面積を可逆的に変化させるステップを含んでよい。(当業者であれば容易に理解されるように、眼圧計チップの一実施形態の角膜接触面と角膜とが完全には合同でないか、且つ/又は形状的に一致しないことは、例えば、コンタクトレンズの角膜接触面と角膜とがほぼ完全に合同であるか、且つ/又は形状的に一致することとは、構造的にも機能的にも明確に別である。実際、後者の場合には、ほぼ合同であり形状的に一致することが必要であって、そのようになっており、これはまさに、そうでないと、眼の不十分な視力を光学的に補正するように寸法設計されたコンタクトレンズの意図された光学性能を実現及び/又は発揮できないからである。ちなみに、当業者であれば容易に理解されるように、(例えば、装着されたコンタクトレンズを眼に押し付けた結果として)コンタクトレンズから角膜にかかる力が変化しても、コンタクトレンズと角膜とが物理的に接触している部分の表面積は変化せず、ほぼ一定のままである。更に、コンタクトレンズの角膜接触面の形状に従って寸法設計された表面と角膜とが作動接触しただけでは、角膜のうちの、そのような表面に対応する場所では圧平が全く引き起こされず、或いは全く圧平につながらない。言い換えると、コンタクトレンズの下の角膜の形状は、コンタクトレンズが休止状態にあるか、角膜に対して特に押し付けられているかにかかわらず、ほぼ同じままである。)
直観で分かるものではないが(そして、少なくともIOP測定中の角膜内応力の最小化の観点から(チップが曲面ではなく平面である従来設計の眼圧計部材に比べて)実用上著しく有利なことに)、一特定実施形態のチップの表面の中心部分の曲率の正負が角膜の曲率の正負の逆であることが好ましい。本発明の実施形態によれば、GATプラットフォームとともに使用される、本発明概念に従って構築された角膜接触部材を含む眼科器具に関する方法及び装置が開示される。本発明の実施形態は眼圧計チップを含み、眼圧計チップはバイプリズム収容部及び角膜接触面を含み、角膜接触面の形状は、眼圧測定中の角膜表面の変形及び角膜内応力を最小限に抑えるように構成されている。
本開示及び添付の特許請求項の目的上、且つ、特に断らない限り:
・平面曲線は平面内に画定された曲線である。平面閉曲線は、端点がない曲線であって、ある範囲を完全に囲む曲線である。好ましくは、平面閉曲線は、軸を横切る平面において、即ち、軸に対して横たわっているか、軸を横切って(又は軸に対して横方向に)延びている平面において、そして特殊な場合には軸に対して垂直に延びている平面において、画定される。これにより、角膜接触部材の角膜接触面部分が角膜に押し付けられているときの角膜の変形がより均一になる。
・一般に、被検査ボディのシェルと接触するように構成された光学的に透明な部材(眼圧計チップという具体例では角膜接触部材)であって、本発明概念に従って寸法設計された光学的に透明な部材の表面は、シェルの機械的パラメータ(又は具体的な使用例では角膜の生物力学的パラメータ)、及びシェル上の液体層(即ち、眼が被検査ボディである具体例では涙液層)の存在に対するIOP測定の感度を下げる為に慎重に定義された様式で平らな面からずれているだけでなく、異なる湾曲を有する2つの表面部分(1つは凹状表面部分、1つは凸状表面部分)を含む表面を有する。本開示及び添付の特許請求項の目的上、曲率半径、曲率、曲率の正負等の用語、及び関連する用語は、先行技術において認識されて一般的に使用されているそれぞれの数学的意味基づいて識別される。例えば、所与の曲線の一湾曲箇所における曲率半径は、一般に、そのような箇所における湾曲を最もよく近似する円の半径として定義される。「曲率」という用語は、曲率半径の逆数を意味する。曲率の定義は、曲率が正又は負の値(正又は負の符号が付いた値)をとることを可能にするように拡張されてよい。これは、曲線に沿って単位法線ベクトルを選択し、曲線が選択された法線に向かって曲がっている場合には正の符号を、又は曲線が選択された法線から離れるように曲がっている場合には負の符号を曲線の曲率に割り当てることによって行われる。本開示及び添付の特許請求項の目的上、所与の曲率の符号は、そのような規則に従って規定される。これら及び他の数学用語の定義については更に、数学の標準的な参照テキスト、例えば、I・N・ブロンシュテイン(I.N. Bronstein)、K・A・セメンディアエフ(K.A. Semendyaev)著「基礎数学ハンドブック(Reference on Mathematics for Engineers and University Students)」、サイエンス(Science)、1981年(又は他の任意の版)等を参照されたい。一例では、光学で受け入れられている規則に従うと、曲面の頂点がその曲率中心の左側にある場合には曲率半径及び曲率自体の符号は正であり、頂点が曲率中心の右側にある場合には曲率半径及び曲率自体の符号は負である。
・「表面」という用語は、その技術的且つ化学的な意味に従って、有形要素の2つの媒体又は範囲又は空間限界の間の境界を示す為に使用され、長さと幅はあるが厚さがないもの、ボディの(厚さがゼロの)皮膚であるように理解されたい。
・「圧平(applanation)」、「圧平する(applanate)」、「平らにすること(flattening)」、「平らにする(flatten)」という用語、及び同様の用語は、一般に、プロセス又はアクションの結果として、目前の対象物の表面曲率が減少している、即ち、表面が平らにされているか圧平されている(結果として表面曲率が初期曲率値より少なくとも小さくなった表面になる、且つ/又は具体例では結果として表面がほぼ平ら又は平面になる)プロセス又はアクションを意味する。
全般的考察
以下では、圧平眼圧測定の一具体例を用いて、ボディの内圧の測定の一般的なケースに適用可能な考察を示す。眼のIOPの測定の具体的な分析及び実験に基づいて到達した結果及び結論が、何らかの弾性シェルで囲まれたボディの内圧を、前面をボディのシェルに接触させて押し付ける光学的に透明な部材を使用して眼圧測定のように測定することに用いられるか用いられるように一般化されることを理解されたい。
眼圧測定は、眼圧、即ち、眼の内部の流体圧力を測定する為に眼科医療従事者が実施する非侵襲手続きである。これは、患者の視力障害を引き起こすことが多い病気である緑内障のリスクがある患者を診断する上で重要な検査である。圧平眼圧測定では、眼圧は、角膜の一定の所定面積を平らにする(圧平する)為に必要な力からアンベール・フィック仮説に従って推測されるこの仮説によれば、所与の内圧を有する閉じた球体に平らな面が押し付けられた場合に、球面にかかる力と、平らな面と(今や変形した)球体との間に形成された接触面積にかかる球体の内圧とが釣り合った時点で平衡状態が達成される。言い換えると、可撓であり弾性である(そしておそらくは無限に薄い)球体内の圧力Pは、球体の一部分を平らにする為に必要になった外力fを、平らにされた面積Aで正規化したものにほぼ等しい。即ち、P=f/Aである。従って、平らな接触面を有する透明な圧力部材(例えば、図1Aに示された要素100、例えばGAT先端要素)が眼の角膜に押し付けられ、これは、眼が所定面積(実際には約7.3mm2)にわたって平らにされるように行われる。
式(1)で表されるアンベール・フィックの原理によれば、眼の反力FはIOPPの線形関数である(アンベール・フィックの原理に基づいて、印加された力から圧力への変換は、従来、角膜を圧平することに必要な力にはIOPだけが独自に関与することを前提としている)。反力は又、角膜組織を変形させることに必要な力T、及び眼圧計表面の接触断面積Aに依存する。この検討では、法線IOPP0は16.0mmHgであるとされた。
F(P)=T(δ)+PA(δ) (1)
接触面積は、眼圧計チップによってかけられた圧力の結果として引き起こされる、眼圧計チップの軸方向の、角膜の変位の深さδの関数である。この検討では、モデル化された角膜の球の半径が7.800mm、眼圧計チップの円柱の半径が1.53mmであった。この結果として、最大変位は0.147mm、最大接触面積は7.354mm2であった。角膜の球の半径Rと変位の深さδの関数である接触面積Aの計算を式(2)に示す。
A(δ)=π(2Rδ+δ2) (2)
ゴールドマン圧平眼圧計では、測定されたIOPPGAT(表面が平らな眼圧計チップを使用して測定されるIOP)は反力の線形関数である。測定されたIOPの値は較正反力F(P)にも依存し、これは標準角膜F550(P0)と比較され、550は基準中心角膜厚の550μmを意味し、P0は基準IOPである。これを式(3)に示す。
PGAT=P0(F(P)/F550(P0)) (3)
表面が曲線的な眼圧計チップを使用して実施されるIOP測定の実質を評価する為の仮想モデルがAutodesk Inventor LT 2015でデザインされ、Autodesk Simulation Mechanical 2015(カリフォルニア州サンラフェル)でシミュレーションされた。曲線的な角膜接触面を有するチップの一実施形態を備えた眼圧計で実施されるIOP測定の、角膜の様々な特性に対する感度を決定する為に、幾つかのシミュレーションを実施した。これらの特性として、少なくとも角膜の剛性(ヤング率)、中心角膜厚(CCT)、中心角膜曲率(CCC)、及び涙液層があるかないか、があった。これらのそれぞれは、この分野における他の検討の結果と比較できるようにシミュレーションされた。
IOP測定を実際に実施する前に、圧力部材(即ち眼圧計チップ)が角膜に接触するので、通常は局所麻酔薬(プロキシメタカイン等)が眼の表面に(例えば点眼薬の形で)投入される。測定中、眼には青色光(例えば、青色フィルタを備えたランプから放射される光)が照射される。角膜の表面と圧力部材との間の接触ゾーンでは、接触の結果として、涙液層(これはフルオレセインを含有しており、青色光が照射されると緑黄がかった色合いになる)は押し退けられており、それによって、角膜の平らにされた部分と曲面の部分との間の境界が容易に識別可能である。平らにすることに必要な接触圧力が眼圧の尺度として用いられる。
古典的なゴールドマン眼圧計(図1Bの例114を参照)は、透明なプラスチック圧平GATチップ100を有し、チップ100は形状が円錐台であり、眼圧計の動作時にはその平らな表面を角膜に接触させる。角膜120の表面は、プラスチック圧平チップを通して細隙灯顕微鏡で観察される。装置114は、角膜120の圧平を利用する眼圧測定の現行方式において最も広く使用されているタイプの眼圧計である。チップ100(区別なく圧力部材又は角膜接触部材とも呼ばれる)は、典型的にはバイプリズム(頂点同士が接触している2つのプリズムの組み合わせ)を含み、このバイプリズムは、図2Aを参照すると、角膜120、220の平らにされた表面202の画像の光学的二重化を発生させ、2つの半円画像成分(マイア)210A、210Bを視野全体において一定の距離又は空間だけ隔てる。そのような距離又は空間は、プリズムの頂角に依存する。更に図1Bを参照すると、ゴールドマン眼圧計の角膜接触部材又はチップ100は、レバーアーム又はロッドで眼圧計ボディ116に接続されている。眼圧計ボディ116は可変おもりを含む。
観察者-検査者は、圧平眼圧計(この例ではチップ100)を通って伝搬した光で形成された2つのマイア(図2Bで半円210A、210Bとして示された画像成分)を、光学フィルタ(通常はコバルトブルーフィルタ)を使用して見る。力Fは、眼圧計チップ100によってチップ100の軸224の方向に角膜120、220の表面220に印加されており、装置の可変張力ばねにつながっているダイヤル(ノブ)で、ビューファインダから見える半円210A、210Bの内側エッジ同士が遭遇するか重なるまで調節される(図2Bの挿入図Iを参照)。遭遇していないときは画像(マイア)のうちの互いに空間的に別個であって隔てられている部分の、そのような「エッジ同士の遭遇」(即ち、接触及び/又は重なり)が起こるのは、角膜の直径約3.06mmの範囲が平らにされて、対向する2つの反作用力(第1の反作用力は剛体である角膜の抵抗によって発生し、第2の反作用力は涙液層の張力によって発生する)がほぼ等しくなって互いに打ち消し合うときであり、それによって、角膜に印加された力から眼内圧力を測定することが可能になる。特に、当業者であれば容易に理解されるように、表面が平らなチップ100の平らな角膜接触面による画像形成の光学によって、マイアが形成されて、それらのマイアのエッジ同士の遭遇(即ち、互いに隣接する端部同士の接触及び/又は重なり)が、眼圧計チップ100の平らな表面が角膜の軸と中心合わせされているかどうか(同じ場所にあるかどうか)にかかわらず、(図2Bの挿入図Iに示されるように)画像内で達成されうる。この非侵襲的な眼圧測定方法は本質的に不正確である。
ボディの内圧の測定の誤差の原因の例
あくまで説明の為に圧平眼圧測定を取り上げるが、圧平眼圧測定の理論では、角膜を無限に薄い膜と仮定する。角膜剛性は、角膜厚や角膜曲率という形状特性の作用を大きく受ける。角膜の様々な材料特性、例えば、ヤング率及びせん断弾性係数の両方が、角膜の圧平力に大きく作用する。
具体的には、GAT形状の(表面が平らな)チップを使用して実施される測定において発生する誤差の一部は、角膜厚が(理想の球体と異なり)ゼロではないという事実に起因するものである。即ち、角膜厚が平均的な角膜より薄ければ一般にIOPが過小評価され、角膜厚が平均的な角膜より厚ければIOPが実際より過大評価される可能性がある。角膜のゼロでない剛性を打ち消し、角膜の一部を圧平する為に、とにかくIOPの実値の算出に対してカウントされたり考慮されたりできない追加の力が必要である。この検討から、角膜厚と角膜剛性との間に相関があることが明らかになった。そして明らかなことに、少なくとも角膜の厚さと剛性がゼロでないことがIOPの測定に誤差をもたらす。そこで、IOP測定の誤差を減らす為に、最初に測定された、角膜に印加された力の値を(この例では)角膜厚の第2の測定に基づいて補正しなければならない(第2の測定はパキメータを使用して実施される)。そのような補正の正確さは、角膜の厚さ特性と剛性特性との間の相関の精度に基づくが、これもやはり本質的に不正確である(それは、患者の年齢、角膜の直径、角膜曲率、様々な眼疾患によって引き起こされる作用等の変動要因の影響がある為である)。
当該技術分野において今日まで対処されていない測定誤差の別の原因として、角膜曲率がゼロでないことの寄与がある。IOP測定の精度に対する角膜曲率の影響が、角膜の当該領域が平らにされて押し退けられた眼内流体の体積の違い、及び/又は眼の最初の体積の違い、又はその両方によって説明可能であることが理論化されている(リュウ、ロバーツ(Liu and Roberts)著「眼圧測定に対する角膜の生物力学的特性の影響(Influence of corneal biomechanical properties on intraocular pressure measurement)」、ジャーナル オブ カタラクト アンド リフラクティブ サージェリー(J. Cataract Refract. Surg.)、31巻、p.146-155、2005年1月)。角膜曲率の作用は眼圧とは無関係であるが、その作用によって、眼球から眼球が接触する眼圧計チップに伝わる力の重要な成分が明らかになる。
更に、平らでない角膜の一部に従来の平らなチップの眼圧計(GAT)プリズムを接触させて平らにするというまさにその事実によって、IOP測定における従来の「角膜圧平」手続きは、角膜の表面に一種の空間的「キンク」を引き起こす。この「キンク」は、一部が圧平された角膜の曲率が急に変化している角膜部分を明白に示す。この「キンク」領域は、当然のことながら、角膜の圧平された部分の外周部付近にあって、そのような圧平された部分と、眼圧計の平らなチップと接触していなくて湾曲したままの角膜部分との間の空間的な変わり目を画定する。言い換えると、「キンク」の部分又は領域では、一部が圧平された角膜の形状を表す関数の二次導関数の値が非常に高く、角膜は大きくゆがんでおり、これは角膜内応力を引き起こす(これによって、眼圧計チップにかかっている力及び圧力の新たな成分が発生し、そのような成分はIOPには関係せず、IOPの測定に誤差を加える)。
(同様に且つ類似的に、当業者であれば容易に理解されるように、(乳房インプラントであれ燃料ブラダーであれ他の任意の被検査ボディであれ)何らかの弾性シェルで囲まれたボディの内圧を眼圧測定のように測定することの結果は、シェル曲率、シェル厚、シェル弾性、又はシェル剛性に起因する誤差が必ずしも発生しやすいわけではない。)
更に、測定中に、眼圧計チップと眼の表面との間の粘着力が、涙液層の静水圧表面張力によって引き起こされるが、この粘着力によって、幾らかの非常に変動する誤差が測定結果に更に加わり、この誤差は、角膜と角膜が接触する眼圧計のチップとの間の流体ブリッジからかかる毛細管圧に起因する。しかしながら、この毛細管引力に起因するIOP誤差の臨床的定量化については、本願発明者等の知る限り、今日まで実証も検討も行われていない(容易に理解されるように、眼圧測定のような方法でのボディの内圧の測定は、光学測定システムの光学的に透明な部分が接触するボディのシェルの表面に水分/液体の層が存在する場合にはその層に起因する誤差の影響を受けやすく、且つそのような誤差が発生しやすい)。
特に、今日まで、現時点では、眼圧測定の場合には、角膜の生物力学的特性及び関連因子の大きさに関する決定的且つ一貫したデータが存在しない。IOPの読みの誤り(それに対して必要な補正の正確な量は常に不確かなままである)は、誤診のリスクを発生させ、誤診に寄与して眼疾患の見逃し又は発見遅れにつながる可能性がある。そこで、IOP結果の精度及び正確さを高める測定技術及びシステムが必要とされる。本発明の実施形態を使用することにより、この目標は達成される。即ち、本発明の実施形態を使用することにより、(例えば、一般的なゴールドマン圧平眼圧計システムを使用して実施される)IOPの測定の正確さが向上し、それによって、(例えば)これまで実施されていた角膜厚の補助/補足的な測定の必要性が小さくなるか或いは無くなって、IOP測定の全体コストが下がり、医療の質が高まる。更に、本発明の実施形態を使用することにより、IOP測定手続きへの角膜曲率の寄与、及びそのような手続きによって引き起こされる眼に対する眼内応力の両方が最小化される。
眼圧測定に使用されるように構成された本発明の特定の実施形態に関しては、補正圧平眼圧測定面(CATS)眼圧計チッププリズムのそのような実施形態(後述)が、眼圧計システムの動作において、従来の表面が平らなGAT眼圧計プリズムに取って代わるように考案され、意図されている。従って、力圧力変換を含むCATSプリズムの臨床使用は、GATプリズムの臨床使用のようには変動しないように意図されている。後述のCATSプリズム及び関連する測定方法の実施形態は、「基準」角膜に対してGATプリズムで測定される圧力と同じ圧力の測定を実施するように構成される。「基準」角膜は、平均的な角膜厚、角膜曲率、角膜剛性、及び涙液層を有する角膜として定義され、大まかには、(軸上の点における)曲率半径が約7.8mmであること、中心角膜厚が約550ミクロンであること、幅が約11mmであること、楕円偏心の尺度であるp値が0.82であること、並びに角膜弾性係数の平均が約0.5MPaから約1.5MPaであることを特徴とする。
しかしながら、患者人口の約50%は「基準」角膜ではないことがよく知られている。後述のCATS眼圧計プリズムは、患者間の角膜関連パラメータのばらつきに起因してGAT IOP測定中に存在するものとして識別されている誤差の全てを大きく減らすように設計される。CATSプリズムの実施形態の全ての物理特性、材料、及び性質が(プリズムの圧平面の形状に関すること以外は)典型的なGATプリズムのそれらと実質的に同等或いは同一であり、CATS眼圧計プリズムの実際の使用は、GAT又はパーキンス測定アーマチュア全体の中で意図され、同じ開業医プロトコル及び測定技術で管理されて、計算又は診療時間増加がない。
特に、本発明の実施形態の角膜接触面の形状の考案においては、有限要素法(FEM)モデリングが用いられた。
以下では、図3A、3B、3C、及び5A、5Bを参照して、本発明概念による曲線的な形状の眼圧計チップの非限定的な具体例を説明する。その説明では、図3A、3Bの実施形態だけを参照した場合でも、同様な考察が図5A、5Bの実施形態にも等しく当てはまることを理解されたい。
実験的検証においては、圧平眼圧計システム(例えばゴールドマン圧平眼圧計システム)で実際のIOP測定を実施し、角膜を圧平して指定の平らな表面積が得られるようにしてIOPの値を評価した。
モデリングにおいては、角膜組織の物理挙動についての適切な仮定を行った。角膜の組織は、解剖学的組織及び構造特性が複雑な細胞アセンブリである。シミュレーションでは、組織を材料特性が不均一な連続体として分析した。この検討の目的上、モデルについては、3つの可変材料特性、即ち、(1)角膜基質の弾性係数、(2)コラーゲンの弾性係数、及び(3)相対的なコラーゲン厚さを有するように仮定した。これらの材料を仮想アセンブリの形で特定の物理エンティティに割り当てて、現実世界の挙動に対応するように最適化した。
形状及び構成のモデルは、これまでの検討結果に基づいて選択した。材料特性は、有限要素シミュレーションの分析により決定した。角膜の様々な形状的側面の作用については、これまでの検討において測定及び検討されている。公開されている角膜材料特性はばらつきが大きい為、GAT診断に対する既知の反応に近い特定の特性を選択した。基準角膜の圧平に必要な力を約1.6gに設定した。角膜は、通常条件下でこの圧平力の30%だけに関与することを可能にされており、残りは眼圧に由来する。有限要素メッシュ密度は、圧平部分の周囲長が正確に30μm以内になるものの測定公差はせいぜい0.1gであるように設定した。
実施例I
図3A及び3Bには、(例えば)眼の角膜に接触させるように設計された光学要素(角膜接触部材と呼ばれる)の一実施形態のチップを表す関連部分300が、それぞれ、部分断面図及び正面図で示されている。この実施形態は、区別無くCATS眼圧計チップ又はCATS眼圧計プリズムと呼ばれる。角膜接触面304が中心凹状表面部分304Aを含み、これは一特定実施態様では典型的な眼の角膜の曲率に適応される(典型的な眼の半径はほぼ7.8mm±0.38 mmの範囲にあり、典型的な眼の角膜の典型的な弾性係数及び角膜厚範囲については本出願の別の場所で説明する)。
角膜接触面304の周辺部では、中心凹状表面部分304Aは、曲率の正負が(中心表面部分304Aの曲率の正負と)逆である周辺表面部分304Bに接線に平行に移行し融合する。図3Aの例の断面図に示されるように、表面部分304Bは凸状として特徴付けられてよい。周辺表面部分304Bは、軸306の方向に、軸306を横切る平面に対してループ状の(図示された具体例では環状の)投影を画定してよく、中心部分304Aを囲む環、リングを形成している。中心凹状表面部分304A及び周辺環状部分304Bは、表面304に対して接線方向にあって軸306を横方向に横断して広がっている平面内に画定された閉曲線310に沿って、接線方向に(接線に平行に)シームレスに互いに融合している。言い換えると、(表面部分304A、304Bの間の境界310の一点において中心表面部分304Aに対して接線方向にある)第1の平面と(表面部分304A、304Bによって共有されている境界310の同じ点において周辺表面部分304Bに対して接線方向にある)第2の平面とが互いに重なっており、二面角を形成しない。曲線310上のどの点においても表面304の曲率はほぼゼロである。表面304A及び表面304Bはいずれも、それら2つの表面が融合するどの点においても空間勾配の値が等しい。総じて、所与の表面及び/又は線の相互の空間的な方位に関連して使用される「接線方向に(tangentially)」、「接線に平行に(tangentially - parallel)」という用語、及び同様の用語は、これらの用語の従来の、数学においてよく知られている意味に従って定義される。
動作時には、中心凹状表面部分304Aを角膜表面220に接触させて、周辺部分304Bの最大限の点を含む曲線によって画定される境界の内側に含まれる領域全体にわたって角膜表面を圧平してよい。当業者であれば容易に理解されるように、(IOPの測定中に表面304が角膜に押し付けられた結果として)角膜表面に空間的キンクを形成することなく圧平されることが可能な角膜表面の部分の最大範囲は、表面304内にあって、表面304の複数の頂点(例えば、図3Aに示された頂点i及びii)を含むほぼ軸対称である曲線によって画定される。(従来の表面が平らな眼圧計チップ100を使用して圧平されることが可能な角膜表面の範囲は、当然のことながらそのような限界はなく、表面が平らな眼圧計チップで圧平される角膜表面の部分は、そのようなチップの平らな角膜接触面とほぼ同じ大きさでありうる。)概して、表面304の横方向の境界又は外周部320に沿う眼圧計チップは、いかなる特定の光学的、機械的、又は形状的な要件も満たす必要がなく、それは、この境界が、角膜と接触する範囲の外側にある為である。
装置300の前面304の外周曲線320、及び中心湾曲表面部分304Aと周辺湾曲表面部分304Bとが線上で融合している閉曲線310が両方とも円として図示されているが、表面304は例えばこれらの曲線310、320の少なくとも一方を(所与の2つの点までの距離の和が一定である点の軌跡によって定義される)一般楕円として定義するように構成されてよいことを理解されたい。しかしながら、特定の一例では、表面304は軸306を中心に回転対称である。図3A及び3Bの例は、まさにそのような回転対称面304を示している。
一実施態様では、図3A、3Bを更に参照すると、凹状面部分304Aは、(軸306を含む平面において画定される)球面の曲率半径Rが例えば約-9.0mmであり、(軸306を横切る平面において画定される)軸306の方向のフットプリント又は垂直投影の直径dが例えば約3.06mmである。環状の(即ちリング形状の)周辺表面部分304Bは、(軸306を含む平面において画定される)曲率半径が例えば約3.0mmである。そのような実施態様では、軸306に垂直な平面に対する角膜接触面304のフットプリント又は投影によって画定される円の直径Dが例えば約6.0mmである。角膜接触面304は、ポリマー材料(例えば、屈折率が約1.5のポリカーボネート)又は光学品質のポリッシュ仕上げが施されたガラスで形成されてよい。
従来の平らな眼圧計チップ(実施形態100)と圧平面304を有する眼圧計チップの斜視図の比較が、それぞれ図13B及び13Aによって示されている。
本発明の実施形態の実施態様により達成される、曲線的な表面304、504の設計の目標は、角膜の1つの場所(一例では角膜接触面304、504との間の接触面内の1つの場所)における圧平変形の間に形成される角膜内応力を、従来の表面が平らな眼圧計チップによる(角膜の同じ場所の)圧平変形の間に発生する角膜内応力に比べて最小限に抑えるか、少なくとも低減することであった。一実施形態では、そのような場所は実質的にチップと角膜との接触領域の外周部にある。(眼内応力がそのように小さくなることに対応して、表面304、504の使用に起因する圧平変形の間に発生する角膜表面の輪郭の変化率(二次導関数)は、従来の表面が平らな眼圧計チップの使用に起因する圧平変形の間に発生する角膜表面の輪郭の変化率より小さい。)これを言い換えると、目標は、シミュレーションされたIOPの等圧線を、誤差を発生させる生物力学的パラメータ(例えば、角膜厚、角膜剛性、角膜曲率、涙液層粘着効果等)に対して平らにすることである。一特定実施態様では、結果として得られるCATSチップ表面300の輪郭は、図13Cの曲線1310で表された。従来の平らなチップ表面の輪郭の場合のミーゼス応力と、曲線1310で表される実施形態の場合のミーゼス応力とを、それぞれ図13D及び13Eに示しており、上部のバーが外側表面を表しており、下部のバーが内側表面を表しており、中央の形状が矢状断面(圧平された領域の外周部を含み、その場所は矢印Pで概略的に示されている)を表しており、本発明の一実施形態を使用した場合に応力の数値が(最大で1桁分以上)実質的に減少することが示されている。断面輪郭1310を有する実施形態300は、中心角膜厚に対して約5.0mmHg/mmの(測定の)感度が得られており、これは、従来の表面が平らなチップ100、1320を使用して測定を実施した場合の感度に対する約88.2%の明確に有利な改善である。本発明の実施形態300、1310の曲線的な表面は、組織の中心部分を構造的に支持して測定中の角膜内の応力がより均一に分布するようにして、角膜厚の測定の感度を下げる(図13D、13Eに示された結果を比較されたい)。
以下では、眼圧計での測定に曲線的な形状の角膜接触面300を使用することの別の利点について説明する。
実施例II
図3A、3Bの実施形態300に関連する一実施形態では、角膜接触面304が実施形態300に対して一部変更されており、例えば、異なる方向に異なる範囲を有するように、且つ、大まかには非軸対称のフットプリント又は垂直投影を有するように変更されている。そのような場合、角膜接触面の中心凹状表面部分は、(曲率に関しては)角膜表面にほぼフィットしたままで、二方向に(具体例では互いに垂直な方向に)異なる範囲を有してよい。それに応じて、周辺表面部分も、上述のように中心凹状表面部分に隣接したままで、中心凹状部分を特徴付ける比率と同等或いは等しい比率の横方向の範囲を有する。
図3Cの上面図に示された具体例では、そのように構成された角膜接触面350は、z軸に垂直な平面上の楕円又は長円で画定されるフットプリント352を有する。表面350は、中心のほぼ球面の部分354Aと周辺環状部分354Bとを含み、これらのそれぞれが、対応する楕円形状の投影を(図3Cに示されたローカル座標系のz軸に平行な)軸306に垂直な平面上に有する。図示されるように、中心表面部分354Aの、対応するフットプリントの短軸及び長軸の方向の寸法は、それぞれa及びbである。周辺表面部分354Bの、そのフットプリントの対応する短軸及び長軸の方向の最大寸法は、それぞれA及びBであり、外周320’で示されている。表面部分354A、354Bは、図3A及び3Bを参照して説明された様式と同様の様式で、楕円平面閉曲線310’に沿って接線方向にシームレスに互いに融合している。この特定実施形態では、角膜接触面は軸対称である。一実施態様では、aは約2.13mmであり、bは約3.06mmである。表面350を有する角膜接触部材の内側にあるバイプリズム要素(図示せず)は、例えば、図3Cのフットプリント352の長い範囲Bをほぼ二等分する方向に向けられてよい。
図3Cに示された実施態様は、観察者・検査者が図3A及び3Bの実施形態の対称構造の角膜接触面を適応させることが必ずしも可能でない場合がある眼瞼間特徴を有する患者のIOPの測定を容易にするように適合されている。図3Cで表されるように動作する本発明の実施態様が実際に使用される場合の角膜の圧平される面積は、図3Bの実施形態に対応する面積とほぼ同じであることを理解されたい。フットプリント304Aの直径と比べて、狭い眼瞼裂(部分的に閉じた眼瞼)に適応する354Aに対応する楕円フットプリントの横方向の寸法が小さくなり、(眼瞼方向の)フットプリントの直交寸法は大きくなる。条件によっては、圧平の実施に要する力を小さくできる。
概して、角膜接触部材300の角膜接触面は、第1及び第2の極大値を有する軸対称単調曲線と、そのような曲線の対称軸と一致する1つの最小値とによって(接触部材300の光軸を含む平面内に)画定される断面を有する方位角対称な双曲面を含む構造になっている。そのような軸対称単調曲線は、この曲線の任意の点で定義される二次導関数を有する(従って、この曲線の範囲内で完全に微分可能である)。そのような角膜接触面は、中心凹状部分と、中心凹状部分に外接する周辺凸状部分とを含む。動作時には、角膜接触面の中心凹状部分は、接触する角膜の中心部分にほぼ無視できる圧縮を発生させる。角膜接触面の、そこに沿って周辺凸状部分と中心接触部材とが互いに隣接する領域が角膜のわずかな圧縮を発生させて、角膜からの光の反射の中で半円の形状として観察される周辺リングパターンを形成する。
図3Dでは更に、CATS眼圧計の実施形態の表面304、350、352、354の、(一点鎖線360で示された)GAT眼圧計チップの表面からの空間的なずれを示しており、又、CATS眼圧計チップの角膜接触面の「サグ」364を示しており、これはチップの軸と中心合わせされている。
実施例III
図5A、5Bは、角膜接触部材のチップの関連する一実施形態500をそれぞれ部分断面図及び正面図で概略的に示す。角膜接触面504が中心表面部分504Aを含み、その曲率の正負は角膜の曲率の正負の逆である。角膜接触面504の周辺部では、中心表面部分504Aは、曲率の正負が(中心表面部分504Aの曲率の正負と)逆である周辺表面部分504Bに移行し、接線に平行に融合する。図5Aの断面図に示されるように、表面部分304Aは凸状として特徴付けられてよい。周辺凹状表面部分504Bは、軸506の方向に、軸506を横切る平面に対してループ状の(この具体例では環状の)投影を画定する。中心凸状表面部分504A及び周辺凹状環状部分504Bは、表面504に対して接線方向にあって軸506を横切る平面内に画定された閉曲線510に沿って、接線方向にシームレスに互いに融合している。言い換えると、(表面部分504A、504Bの間の境界510において中心表面部分504Aに対して接線方向にある)第1の平面と(表面部分504A、504Bによって共有されている境界510において周辺表面部分504Bに対して接線方向にある)第2の平面とが互いに重なっており、二面角を形成しない。曲線510上のどの点においても表面504の曲率はほぼゼロである。
動作時には、中心凸状表面部分504Aを角膜表面220に接触させる。概して、表面504の横方向の境界又は外周部520に沿う眼圧計チップは、いかなる特定の光学的、機械的、又は形状的な要件も満たす必要がなく、それは、この境界が、角膜と接触する範囲の外側にある為である。
装置500の前面504の外周曲線520、及び中心湾曲表面部分504Aと周辺湾曲表面部分504Bとが線上で融合している閉曲線510が両方とも円として図示されているが、表面504は例えばこれらの曲線510、520の少なくとも一方を一般楕円として定義するように構成されてよいことを理解されたい。しかしながら、特殊な例では、表面504は軸506を中心に回転対称である。図3A及び3Bの例は、まさにそのような回転対称面504を示している。
一実施態様では、図5A、5Bの実施形態を更に参照すると、凸状面部分504Aは、(軸506を含む平面において画定される)球面の曲率半径Rが約+9.0mmであり、(軸506に垂直な平面において画定される)軸506の方向のフットプリント又は垂直投影の直径dが約3.06mmである。環状の(即ちリング形状の)周辺表面部分504Bは、(軸506を含む平面において画定される)曲率半径が約3.0mmである。そのような実施態様では、軸506に垂直な平面に対する角膜接触面504のフットプリント又は投影によって画定される円の直径Dが約3.06mmである。角膜接触面504は、ポリマー材料(例えば、屈折率が約1.5のポリカーボネート)又はほぼ光学品質のポリッシュ仕上げが施されたガラスで形成されてよい。表面504の横方向の境界又は外周部520は、いかなる特定の光学的、機械的、又は形状的な要件も満たす必要がなくてよく、それは、この境界が、角膜と接触する範囲の外側にある為である。
角膜接触面504を有する、眼圧計チップの関連実施態様600を図6の部分断面図に概略的に示す。図示されるように、環状凹状部分504Bがその最低点(極値)604に達する際の、506に対して画定された半径は1.15mmであり、チップ600の頂点608と周辺エッジ510との間の軸方向の離隔距離は29ミクロンであり、部分504Aの頂点608と部分504Bの底面604との間の軸方向の離隔距離は60ミクロンであり、軸506に垂直な平面において測定されるチップの全体半径は1.505mmである。
実施形態600の表面504の輪郭は、多項式で表される一般表面504を最適化して、例えば、実施形態600を強制的に接触させる角膜の輪郭の二次導関数を最小化することによって決定された。この最適化は、所与の半径において角膜の厚さで平均されたミーゼス応力の弾性率を最小化することによって実施された。
実施形態500の角膜接触面504の多項式最適化を、平均的な基準角膜に対して有限要素法を用いることにより実施した。図7は平均的な角膜Cを部分断面図で示しており、同時に、(角膜の外側表面にある)外側コラーゲン層Eに形成される応力の空間分布、及び(角膜の内側表面にある)内側コラーゲン層Iに形成される応力の空間分布を示している。「平均的な角膜」という用語は、形状的パラメータ及び機械的パラメータが母集団全体にわたるそのような角膜パラメータの既知の統計分布に基づいて平均化された角膜を意味し、即ち、ヒトの角膜の形状特性及び材料特性の統計的平均によって表される形状的パラメータ及び機械的パラメータを有する角膜を意味する。
図8は、平均的な基準角膜を実施形態600の表面504に接触させたときにその角膜の輪郭が変化する程度を多項式フィッティングを用いて示しており、この図では、自立している(いかなる外部ツールにも接触していない)角膜の表面の半径方向の輪郭Pと、器具の実施形態600の表面504の半径方向の輪郭Rと、角膜に接触させた実施形態600による圧平の後の同じ角膜の半径方向の輪郭Sとを同じ空間尺度で比較している。y軸(「円柱高さ」)方向のゼロ値は、角膜曲率の中心に対応する。
実施例IV
一実施形態(図示せず)では、角膜接触面504は、例えば、外周部520及び曲線510の少なくとも一方が一般楕円を定義するように修正されてよい。環状部分504Bは、中心凸状表面部分504Aの周囲の対応する楕円形状リングを定義する形状であってもよい。
本発明概念に従って構成された眼圧計チップの動作上の利点を示す為に、本発明の装置のチップの角膜接触面の形状の評価は、幾つかのパラメータの、IOPの測定で誤差を引き起こす範囲において行われてもよい。そのようなパラメータの中には、角膜曲率(6~9mmが95%区間。6mmは勾配が非常に急な角膜の曲率)、角膜弾性係数(0.1~0.9MPaが95%区間。0.9MPaは剛性が非常に高い角膜の弾性係数)、角膜厚(450~700ミクロンが95%区間)、及び涙液層の厚さ(0~1mmが95%区間)がある。
角膜曲率に起因する測定誤差の低減
図9Aは、角膜曲率が存在する為に考慮しなければならない、有限要素法(FEM)を用いて計算された眼圧補正値を、従来のチップが平らなGAT角膜接触部材100(データ及び線形フィット910)、本発明の実施形態300(データ及び線形フィット920)、及び本発明の実施形態500(データ及び線形フィット930)のそれぞれについて示す。平均的な基準角膜曲率の半径からの、経験的に知られている角膜曲率のずれを吸収する為に、角膜曲率の半径を6.8mmから9.4mmまで変化させた。当業者であれば理解されるように、本発明の一実施形態に従って寸法設計された眼圧計チップ(例えば、CATSチップ300又は実施形態500)で実施されるIOPの測定は、表面が平らな眼圧計チップで実施されるIOPの測定に比べて、角膜にかかる眼内応力が小さく、結果として、実施形態300、500の場合には、測定結果に対する、角膜曲率に起因する誤差の寄与が小さい。例えば(半径が9mmの特定の角膜を考えると)、実施形態300で測定を実施する場合に角膜曲率を考慮する為に導入されるべきIOPに対する補正は、チップが平らな角膜接触部材100を使用する場合に必要な補正よりδ≒1mmHg以上小さい。実施形態500を使用すると更に精密な測定が行われ、この場合、角膜曲率によって引き起こされる誤差は、実施形態100による測定に伴う対応する誤差よりΔ≒2mmHg(又は更にそれ以上)小さい。(標準眼圧が16mmHgであるのに対し)IOPの達成可能な測定精度が約2mmHg(即ち12%超)向上すると、明らかに、ある特定の眼を手術すべきかどうかの判断が実質的に違ってくる。涙液層の存在の影響がIOP測定の結果を多少なりとも左右することが予想されるが、それはこのモデルには含めていない。
GAT眼圧計チップとCATS眼圧計チップとで得られる結果の差を測定し、角膜曲率と相互に関連付けたものを図20に示す。これによれば、設計理論がほぼ裏付けられており、GAT眼圧計チップ100とCATS眼圧計チップ300とを使用して実施された測定の結果の差が平均的な角膜曲率においてはほぼゼロであることがおおむね確認される。平均的な角膜曲率(当業者であれば理解されるように、母集団の平均として測定され、角膜の曲率半径の結果としての屈折力に換算されたもの)は43.6ジオプタ+/-1.6(標準偏差)であった。これらの具体的なデータが明白に示すこととして、CATS眼圧計チップを使用すると、角膜曲率に起因するIOP誤差が、GATチップを使用した場合に対応する誤差値に対して、ヒトの角膜曲率の極端な場合には更に±2mmHg(一般的には少なくとも1mmHg(モジュロ値))だけ小さくなる。これらの発見から、CATSチップを使用すれば、GATの場合の、角膜曲率値の範囲にわたる(先行技術において公開されている)ほぼ±2mmHgの誤差が実質的に補正されることが分かった。角膜曲率の誤差に関連付けられた相関係数は0.20であった。
角膜剛性に起因する測定誤差の低減
眼圧計チップの曲線的な実施形態は又、被験者間の角膜弾性係数のばらつきに対するIOP測定の感度を下げるように構成される。ヤング率又は角膜剛性は個人間で最大1桁ばらつく可能性があり、これまでの研究では、角膜のこの生物力学的パラメータが年齢依存であることが示されている。
角膜の複合材料の弾性係数の、IOP測定誤差に対する影響に対処しながら、その一方で、そのような弾性係数の経験的に知られている範囲が約0.1MPaから約0.9MPaであることを考慮しなければならない。図9Bは、眼圧計チップの角膜接触面が実施形態500の概念に従う構造である場合には(角膜剛性に起因する誤差を補償する為に必要な)IOP測定値の補正が実質的に小さくなることを示すプロットを示す。厚さが545ミクロンの角膜に対して、FEMによる計算を実施した(545ミクロンは、典型的な角膜の角膜厚の実質的に一般的な範囲である約475ミクロンから約640ミクロンまでの間の中間値である)。角膜剛性の知られている個人差に関しては、上述の例の原理に従って構成されることによって最適化された眼圧計チップを使用することにより、(従来の標準である平らなチップに比べて)誤差が2mmHgも小さくなる。
実施形態100及び300についての、弾性係数に対するIOP測定の感度のシミュレーション結果の比較を図9Eに示す。実施形態300の使用を表す曲線の勾配が(実施形態100の使用を表す曲線の勾配に比べて)緩やかであることは、CATS眼圧計チップを使用する測定の感度がこの誤差源に対してより低いことを示している。これらの具体的なデータが明白に示すこととして、(角膜のヤング率又は角膜剛性のばらつきに起因する)IOP測定の誤差の最大値は、実施形態300を使用した場合には約±2mmHgであり、これに対して、従来の表面が平らな実施形態100を使用した場合には約±8mmHgである。しかしながら、大まかには、CATS眼圧計チップを使用することで(角膜剛性に起因する)測定誤差の低減が推進され、従来の表面が平らな眼圧計チップを使用してIOPを測定する場合に存在する同様の測定誤差に比べて、少なくとも2mmHg(モジュロ値)、好ましくは少なくとも3mmHg(モジュロ値)、最も好ましくは少なくとも6mmHg(モジュロ値)だけ測定誤差が小さくなる。
当業者であれば容易に理解されるように、ヤング率(角膜剛性)に対する感度は中心角膜厚(CCT)と多少なりとも相互依存の関係にあり、図9Eに示されたプロットの勾配はCCTにほぼ比例する。従って、角膜剛性(即ち、角膜の耐変形性)は弾性係数及びCCTの両方に依存することになる。よく知られているように、眼圧計によるIOPの測定に対する角膜剛性の影響は、通常、臨床的には補正されないが、それによって引き起こされる誤差は、IOPの測定において角膜厚によって引き起こされる誤差よりも顕著である場合がある。
角膜厚に起因する測定誤差の低減
図9Cのプロットは、眼圧計チップの実施形態100及び500によってIOP測定に引き起こされる誤差のインビボ臨床比較の結果を示す。実施形態500に従って構成された眼圧計チップでIOPの測定が実施される場合には誤差が大幅に低減される明白な傾向を観察することができる。本発明概念に従って構成された眼圧計チップを使用して画定され、従来の表面が平らな眼圧計チップで実施される測定での誤差と比較された、角膜厚がゼロでないことに起因する誤差の実際に観察される低減が最大2mmHgであることは、数学モデル(線形フィット)によってなされた予測と一致する。
更に、図9Dのプロットは、実施形態100及び(300、1310)を使用して実施されたIOP測定の感度を示しており、これは、角膜のヤング率及び曲率が一定値であってIOPが一定であると仮定して計算されている。ここでは、(実施形態100に対応する曲線の場合に比べて)実施形態(300、1310)で実施された測定の結果を表す実験データの線形フィットの勾配がより緩やかであって、対応するIOPの分散の値がより低いことは、測定精度がかなり向上していることを示している。これらの具体的なデータが明白に示すこととして、被験者のCCTのばらつきに起因するIOPの最大測定誤差は、実施形態(300、1310)を使用した場合には約±2mmHgであり、一方、実施形態100を使用した場合には約±5mmHgである。概して、(表面が平らな従来の眼圧計プリズムを使用して実施された測定に存在する誤差と比べると)CATS眼圧計プリズムを使用して実施された測定に存在する(被験者のCCTに起因する誤差の低減は、少なくとも1mmHg(モジュロ値)、好ましくは少なくとも2mmHg(モジュロ値)、最も好ましくは少なくとも3mmHg(モジュロ値)である。
図10は、基準角膜にFEMを使用して作成された等圧線を示しており、これは更に、(ブロック1020内の値として示された)実際のIOPと比較した場合の、IOP測定値(等圧線1010)に対する基準角膜の厚さの影響の評価を容易にする。例えば、典型的なIOPが約16mmHgである場合、IOPの測定値は、誤差が約1.5~2.0mmHgであることによって実際のIOPより大きくなる。
注目すべきは、ゴールドマン圧平眼圧計の測定誤差に最大限に寄与する眼の特性が極端であることの現実的な可能性である。(典型的には角膜が異常であることに関連付けられた)そのような特性として、半径が6mmという、角膜の勾配が非常に急であること、弾性係数が0.9MPaという、角膜の剛性が非常に高いこと、中心角膜厚が700ミクロンであること、涙液層が皆無であること等があってよい。そこで、図11Aは、そのような極端な状況に向けて考案された回転対称な表面304の具体的な一設計のパラメータを示す。図示されるように、環状の周辺凸状部分304Bがその最上点(極大値、頂点)326に達する場所の(軸306に対して画定される)半径方向距離は約1.53mmであり、周辺部分304Bの頂点と表面304の中心(軸306にある表面304の点)との間の、「サグ」と呼ばれる軸方向の離隔距離は約186ミクロンである。従って、軸306からの距離に応じて画定される、この光学部材の具体的な実施形態の前面の半径方向の輪郭、即ち、軸306を含む断面は、約186ミクロンのサグを有する頂点である軸上の中心部分によって特徴付けられる。(同様に、図11Bは、そのような極端な状況に向けて考案された表面504の具体的な一設計のパラメータを示す。)従って、眼圧計チップの角膜接触面の曲線的な/平らでない構成の、そのように慎重に寸法設計された実施形態により、標準的な特性を有する典型的な眼の場合だけでなく、めったにない極端な特性を有する眼の場合でも、眼の生物力学的特性に起因する測定誤差を低減することが可能になる。
上述の議論から理解されるように、最適な眼圧計チップを考案することの鍵は、IOP測定中に圧平変形が起こっている間の角膜内応力の最小化である。図12は、本発明の実施形態300及び500によって実現される利点に向けての更なる指針を、現行のGATの、チップが平らな標準品との比較で示す。図示されているのは、角膜頂点からの所与の圧平された半径方向における平均角膜内応力(ミーゼス応力)である。本発明概念に従って寸法設計された眼圧計チップを使用することにより、眼内応力が低減されており、更に、変形した角膜表面の二次導関数(即ち、角膜曲率の変化率)が低減される。
光学部材と被測定ボディの表面との間の粘着に起因する測定誤差(「涙液層誤差」(TFE))の定量化及び低減
角膜の幾つかの生物力学的パラメータ(角膜剛性等)がゴールドマン圧平眼圧測定で測定されるIOPの過大評価(高めに測定されること)につながるが、これらの誤差の一部は、涙液層粘着の効果で圧平IOP測定の結果が実質的に過小評価されることによって打ち消される。本研究は、ゴールドマン圧平眼圧測定における涙液層粘着力誤差を分離して調べる為に計画された。
図14A、14B、及び14Cは、眼圧計によるIOPの測定の間に涙液層の存在によって引き起こされる粘着作用を概略的に示す。本研究において既にモデル化及び妥当性検証が行われている、涙液層粘着に影響する要因として、i)涙液層メニスカスにまたがる眼圧計チップと角膜との間の接触角度シータ(Θ)(図14B)と、ii)圧平されている涙液層メニスカスの線形円周(図14C)と、iii)涙液層の表面張力とがある。
式(4)を使用して実施された、状況の数学的モデリング(これは圧平全体の間の眼圧計プリズム表面と角膜の涙液層との関係を表す)を図14Dに概略的に示す。
F=π*ρ*σ*(2*SIN(a+Θ)+SIN(α)*(R/r-R/l))
(4)
ここで、F=涙液層粘着力/毛細管力(N)であり、ρ=接触円柱半径(mm)であり、σ=表面張力(N/mm)であり、α=2つのソリッドボディの間の(流体のブリッジにわたる)平均角度(ラジアン)であり、Θ=接触入射角度(ラジアン)であり、R=実効角膜曲率(mm)であり、r=流体ブリッジの曲率半径(mm)であり、l=流体ブリッジの半径(mm)である。このモデルは、GAT眼圧計チップの代わりにCATS眼圧計チップを使用した結果としての、基準角膜と眼圧計チップの圧平面との間の接触角度を、(GAT眼圧計チップの場合の)約5度から(少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、そして図示されるように)(CATS眼圧計チップの曲線的な角膜接触面を慎重に成形した場合の)約25度まで、更に関連する一実施形態において35度まで、更にはもっと大きな角度まで何倍も大きくすることによって引き起こされるTFEのおおよその低減を予測した。そこで、図14Eは、測定に使用される光学的に透明な部材(即ち眼圧計チップ)の前面が平らではなく曲面である性質によって引き起こされる(涙液層メニスカスの領域における角膜と接触プリズムとの間の)平均接触角度の増大の結果として、眼圧計プリズムと角膜との間で涙液層の表面張力によって形成される引力/粘着力の低減を示す。(図示されるように、光学的に透明な部材の湾曲した表面を前から被検査ボディの表面に押し付けるプロセスの間に、ボディのシェルの一部分と湾曲した前面との間に、流体層の存在に起因する毛細管力が形成され、この毛細管力は一般に、シェルの一部分と湾曲した前面との間の上記流体層のメニスカスにわたって平均された場合に約0.0024Nを超えない。特に、本開示及び添付の特許請求項の目的上、光学的に透明な部材が、流体層をその上に保持するシェル部分に押し付けられた場合、且つ、光学的に透明な部材の前面とシェルの一部分との間に或る範囲の接触が確立しているとみられる場合に、微小な量の流体が前面とシェルの一部分の表面との間に存在したままになる可能性があることと、そのような接触が必ずしも「ドライ」でないこととを理解されたい(当業者であれば理解されるように、流体の少なくとも分子層は部材の前面とシェルの一部分との間に存在したままになる可能性が高い)。同時に、そのように押し付けるプロセスの間に、流体の絶対的大部分が、光学的に透明な部材の長手軸の外側に再配置されて、前面とシェルの一部分の表面との間にメニスカスが形成される。)
より具体的には、本研究の結果に基づいて、TFEは、ゴールドマン圧平眼圧測定において0.330~0.415グラムの力であると推定されており、これは、(IOPの真値と比べて)約3.30mmHgから約4.15mmHgだけ小さいIOP測定値として換算される。
模擬角膜及び死体眼を使用して眼圧計での測定を行う間に、眼の表面に流体(涙液)の層が存在することに起因する粘着力の実験的定量化を実施した。
具体的には、涙液層に起因する粘着力の実験的な測定を、図14Bに示されたように人工的な涙液層ブリッジによって互いに粘着している2つのボディ(眼圧計プリズムのボディと模擬角膜のボディ)を分離するのに必要な力を調べることによって行った。この分離力の測定は、較正済みのはかり(WeighMax NJ-100、中国、北京)で、10回の測定のそれぞれの間に容器の重さを量って行った。プリズムと角膜の分離が達成されるまで、眼圧計の圧平力を毎分0.5グラムの割合で減らしていった。プリズムの接触部が角膜表面(アクリル製の模擬角膜、又は死体角膜)から離れた時点でのはかりで測定された分離力を記録した。
この試験は、CATSプリズム及びGATプリズムの両方を使用して、且つ、人口涙液及びフルオレセインの両方を使用して実施した。マイア厚の測定は、フルオレセイン試験においてのみ実施した。10回の個別測定を、アクリル製の模擬角膜のそれぞれに対して、並びに死体眼のそれぞれに対してそれぞれ圧力計で設定された圧力で、実施した(全部で140回の測定)。10回の測定の各組の結果を平均し、標準偏差を示した。アクリル製角膜を使用して得られた結果の統計的有意性を、GLME(一般化線形混合効果)モデリングにより調べた。このモデリングには、CATSプリズム、GATプリズム、マイア厚、人工涙液、フルオレセイン、これらの組み合わせの相互作用等の変数が含まれる。死体眼を使用して得られた結果の統計的有意性には、IOP効果(1次及び2次のIOP効果の両方)及び変量効果も含めた。グループ間の平均の差、並びに2標本の平均差のt検定に相当するp値を調べた。
試験1:アクリル製(PMMA)模擬角膜に関する1組の測定に関しては、図15が、PMMAアクリル製半球粘着力試験の測定に使用される試験装置の一イメージを示す。角膜を模擬する為に半径7.8mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)アクリル製半球1510を使用する卓上調査を実施した。アクリル製の模擬角膜は、GAT眼圧計プリズムとの使用の為に、その頂点表面が切削加工されて直径3.06mmの平らな面になっている。模擬角膜も、CATS涙液層分離測定の為に圧平領域にわたって切削加工されて、CATSプリズム表面の逆形状になっている。これを行ったのは、GATプリズム及びCATSプリズムのそれぞれについて、完全圧平時の分離された涙液層粘着力を模擬する為である。涙液層の流体ブリッジでつながっていたアクリル製模擬角膜と眼圧計プリズムとが引き離された時点で、模擬角膜の表面から眼圧計プリズムを分離する為に必要だった分離力を記録した。
図14Bに示した圧平マイア厚は、顕微鏡(Amscope 12-3、カリフォルニア州アーバイン)を通してマイアを撮像することによって測定した。この顕微鏡画像は更に、涙液層分離力測定の正確さを期すべく、圧平が角膜(アクリル製角膜及び死体角膜の両方)と眼圧計プリズムとの間で中心合わせされて完全に行われることを保証する為に使用した。
試験2:独立した一連の試験を、2つの新鮮な死体眼(ジョージア・アイ・バンク、ジョージア州アトランタ)に対して実施した。そこで図16は、加圧された死体眼とともに使用される装置の一イメージを示しており、これは、アクリル製模擬角膜を利用する測定プロセスと概念的に同じである測定プロセスを実現するものである。(眼球全体が死後24時間以内に出荷され、使用までオプティゾル(Optisol)チャンバに4℃で保管された。角膜は全て、以前に外科手術を受けていない角膜移植品質であった。これらの死体眼は、死後36時間以内の到着当日に使用された。以前の前部眼内手術(白内障を除く)又は角膜異常の病歴又は形跡がある眼は除外された。)角膜を露出させた眼球全体を圧力計で加圧してIOPを測定することに特化して設計された装置に眼球1610を固定した。次に、Yアダプタ付き22ゲージ針(ディッキンソン・アンド・カンパニー、ニュージャージー州フランクリン・レイク)を強膜分離アプローチで前房に挿入した。針IVチューブを、圧力計トランスデューサ(ドワイヤー・インスツルメンツ、インディアナ州 ミシガン・シティ)、等張食塩液点滴ボトル、及びオープンエア基準チューブにつないだ。IOPを圧力計で5、10、及び20mmHgに設定し、これを圧力トランスデューサで確認した。眼内IOPを一定にする為に、全ての測定回において角膜の中心部分における眼球高度を同じに保持した。
GAT眼圧計チップで実施された測定では、模擬PMMA半球角膜1510を使用して試験した場合に、フル圧平時の有意な涙液層粘着力誤差が4.57±0.18mmHgであることが示された。CATS眼圧計プリズムを使用して実施された測定のTFEは、2.74±0.21mmHg、p<0.001において有意に小さくなった。これら2つのプリズムを使用して得られたTFE誤差の差を図17に示す。
(複数の独立変数を考慮する)GLME(一般化線形混合効果)統計モデルを死体眼データに対して使用して得られたデータフィットが、次のように式(5)で表される。
ここでZの値は、測定で使用された眼圧計チップのタイプに対応する(GATチップであればZ=0、CATSチップであればZ=1)。ヒトの死体眼1610での結果についての独立した妥当性検証において、眼内IOPが20、10、及び5mmHgの場合の分離測定からゼロ(0mmHg)での被測定涙液層粘着力を外挿した結果(図18)、CATS眼圧計チップを使用して実施された測定の間に存在する涙液層粘着力誤差は1.40±0.51mmHgであり、これは、GAT眼圧計チップを使用して測定が実施されたときに存在した涙液層粘着力誤差の3.30±0.58mmHg、p=0.002より有意に小さかった。従って、前面が平らな光学的に透明な部材の代わりに前面が湾曲した光学的に透明な部材を使用することにより、光学的に透明な部材と(内圧を測定されている)ボディのシェルの表面との間に流体層が存在することに起因する測定誤差が少なくとも半分に低減される。
(光学的に透明な部材でボディの内圧を眼圧測定のように測定することの一般化されたケースでは、光学的に透明な部材の前面とボディのシェルとの間に液体層が存在することに起因する測定誤差は次式のように表される。
但し、A、B、C、D、Eは実験的に決定された数値係数であり、IPは内圧の値である。)
眼に対する眼圧測定値を再度参照すると、TFEと圧平マイア厚の測定結果(R2=0.09、p=0.04)との間に有意な相関はないと見られる。図19は、涙液層粘着力誤差が(PMMA模擬角膜1510を使用して測定された)圧平マイア厚と実質的に無関係であることを示している。このように無関係であることは、ほとんどの関連技術において、マイアが厚いとGATで測定されるIOPの過大評価が起こりうると理解されている、ゴールドマン圧平手法に関する一般的な教示と異なっている。評価されたように、フルオレセインの場合に発生する涙液層粘着力誤差は、人工涙液の場合より(PMMA半球模擬角膜1510を使用して測定された場合には0.51±0.38mmHg、p<0.001だけ)大きい。フルオレセインを使用した場合と模擬涙液を使用した場合とで存在するTFA誤差の値の差は、0.10±0.48mmHg、p>0.05での死体眼1610のケースでは有意のばらつきはなかった。
圧平眼圧測定ベースのIOPの測定の間に行われた、TFEの理論的評価及び実験的評価によれば、ゴールドマン圧平眼圧測定における涙液層粘着力及び結果としての誤差は、IOP過小評価が約4.57mmHgのところで臨床的に有意である。試験によって実験的に示されたこのIOP過小評価値は、理論的なIOP過小評価値の範囲である4.1mmHg及び3.3mmHgにほぼ近い。涙液層粘着は、本来、角膜剛性に起因する誤差の一部を打ち消すものと考えられるが、角膜剛性及び涙液層誤差に関連する複数の誤差パラメータが個々の患者間でかなりばらつき、これがIOP測定値の臨床的に有意な誤差につながる。
圧平眼圧測定によるIOPの測定においてGAT眼圧計プリズムの代わりにCATS眼圧計プリズムを使用することにより、上述の非限定的な一実施形態において、涙液層粘着に起因する誤差が約41%、実質的に低減された。このように、実験的な試験の結果は数学的モデリングの結果を裏付けるものであり、数学的モデリングでは、(GAT眼圧計プリズムの代わりにCATS眼圧計プリズムを使用した場合に)圧平プリズム面と角膜表面とを分離する涙液層メニスカスにわたって平均化された、圧平プリズム面と角膜との間の接触角度が大きくなった結果として、(涙液層によって形成される毛細管力の低減に伴って)涙液層に起因する誤差が45%低減されると予測していた。
しかしながら、一般的には、関連する実施形態において、GAT眼圧計チップの代わりにCATS眼圧計チップを使用したことに起因する低減(GAT眼圧計チップを使用して実施された典型的な測定における、涙液層粘着に起因する誤差からの低減)は少なくとも10%であり、好ましくは少なくとも20%であり、より好ましくは少なくとも30%である、更により好ましくは少なくとも40%であり、更により好ましくは少なくとも50%である。
死体眼を使用しての実験的試験ではゼロIOPまで外挿したが、CATS眼圧計プリズム及び従来の表面が平らな眼圧計プリズムを使用して測定された涙液層粘着力の低減についても妥当性を検証した。圧力計で流体を充填された死体眼から眼圧計プリズムを分離することで、圧平領域が動的に小さくなる間にプリズム面上で涙液層粘着力及び眼圧(IOP)の両方が同時に測定される。それゆえ、この動的プロセスは、フル圧平時の涙液層分離力だけを直接測定することには適さず、示される分離力が不当に低くなる。この為、PMMA半球1510を有する模擬角膜を使用する静的な涙液層分離条件のほうがより正確である可能性が高い。死体眼1610の0mmHgのIOPまで外挿された平均涙液層粘着力誤差の95%区間は、アクリル製角膜データからの平均層粘着力誤差の95%区間と重ならない。しかしながら、これらの結果によれば、二次曲線フィットは、IOPが0mmHgに近づいたときに、アクリル製角膜の実験で得られた層粘着力誤差値に向かう傾向を示した。
従って、本発明の一実施形態の使用は、圧平眼圧計システムを使用して眼のIOPを測定することの正確さを高める方法を提供する。そのような方法は、接触面が第1及び第2の領域を含むように寸法設計されたCATS眼圧計チップを使用してIOP測定を実施するステップを含む。第1の領域は、眼圧計チップの軸と中心合わせされた凹状部分として構成されており、一方、第2の領域は、第1の領域を取り巻き、第1の領域と接線方向に融合する環状の凸状部分として寸法設計されている。この方法は更に、IOPを表す第1のデータを取得するステップを含み、第1のデータは誤差を含み、この誤差は、CATS眼圧計チップと眼の表面との間の涙液層粘着に起因し、GAT眼圧計チップを使用して取得されたIOPを表す第2のデータに含まれる同様の誤差より少なくとも10%小さい。
光学測定システムの概略
図4の概略図は、光学圧平眼圧測定の具体例においてボディ400を検査するプロセスを示す。ここで、内圧が測定されているボディ400は眼400で表されており、光学的に透明なボディ圧平部材300は、図3A、3Bの実施形態300に従って構成された眼圧計チップで表されている(同様の検査プロセスが実施形態500又は従来のGAT眼圧計チップでも実施されることになる)。内圧(この具体例ではIOP)の測定においては、(表面304又は表面350を有する)部材300をボディのシェルの表面220に接触させる。部材300の前部の湾曲した表面304(又は表面350)は、本発明の対応する実施形態に従って成形されており、内圧測定手続きの間のシェル表面220の変形を最小限に抑えるように(ここではゴールドマン眼圧計システムを使用するIOPの測定の間の角膜表面の変形を最小限に抑えるように)寸法設計されている。IOPの測定の具体例では、当業者であれば理解されるように、角膜の変形を最小限に抑えることは、力の応用測定に対する応答として眼によって画定される力(そしてこれは、角膜表面の、直径が約3.06mmの円形領域を画定する部分を適切に圧平することに必要とされる力である)への角膜剛性の寄与を最小限に抑えることに言い換えられる。角膜の寄与分をそのように低減又は最小化することの実際的な結果として、(上述のように、角膜厚を考慮し、実際には信頼性が低い未知の角膜剛性の補償に使用される)補正因子が実質的に無視できるようになる。従って、IOPの測定の誤差の、計算による補償は実質的に不要になる。同様に、従来の、ゴールドマン眼圧計を使用して実施されるIOP測定に付随する角膜厚関連誤差を補正する為の、コスト及び時間がかかる厚さ測定が実質的に実施不要になり、これによって、測定方法に厚さ測定が含まれなくなる。
図4を更に参照すると、図を簡潔にする為に、圧平眼圧計システム全体のうちの幾つかの構成要素が省略されている。バイプリズムを含む角膜接触部材300を横切って伝搬する光の、光源420から反射要素424への、そして角膜の表面220への(そして反射して観察者430への)経路が矢印440で示されている。角膜表面220に印加される可変圧力が矢印450で示されている。
CATS眼圧計チップと従来の表面が平らな眼圧計チップとの間のバイアスの評価
GAT眼圧計チップ(従来のゴールドマンチップ(実施形態100))とCATS眼圧計チップ(実施形態300)とを使用してのIOP測定値を、全てのIOP値にわたって直接比較して、2つのチップの間のバイアスを調べた。図21に示された結果から、測定値の平均が1:1のIOP相関から有意には外れていないことが確認され、相関係数は約0.78であった。この結果から、GAT測定値とCATS測定値との間の平均バイアスは、少なくとも10~28mmHgの圧力範囲にわたって無視できることが分かった。従って、角膜生物力学的誤差パラメータ、及び/又は涙液層粘着に起因する誤差だけがGATプリズムとCATSプリズムの測定結果の差と有意に相関があるか、その差に有意に作用する。重回帰分析を実施した(Dof=3、95%CI)。3つの角膜生物力学的誤差源(厚さ、剛性、及び曲率)での重回帰相関係数はR2=0.43であった。これは、IOP相関を調べる他の分析と同様である。多重回帰のANOVA分析で生成された有意性F検定の値は0.01未満であった。重回帰の各独立変数の有意性がゼロになる確率は、中心角膜厚についてはp=0.02、角膜耐性因子についてはp=0.14、角膜曲率についてはp=0.19であった。当業者であれば理解されるように、グローバル角膜剛性の一尺度である角膜耐性因子は、(ここではライカートインコーポレイテッド(Reichert, Inc.)製の眼球反応分析器で取得された)角膜ヒステリシスデータに基づいて計算される。繰り返されたIOP測定の分散によれば、最小分散は、CATSプリズムで実施された測定の場合は0.27(標準偏差=0.52mmHg)、従来の表面が平らなGATプリズムで実施された測定の場合は0.19(標準偏差=0.44mmHg)であった。
今までのところ、臨床医はおおむね、(角膜接触面が平面である)従来のGATタイプの実施形態100に従って構成されたチップを備えた圧平眼圧計でIOPを測定する手腕を有しており、大多数の臨床医がそれを最も正確なIOP測定法であると考えている。GAT眼圧計チップを有するゴールドマン圧平眼圧計システムは、FDAが基準眼圧計として使用しており、他の装置によるIOP測定が疑わしい場合の公認プロトコルである。しかしながら、そのように実施されるIOP測定の結果としての測定誤差及び不正確さはほとんどの臨床医によく知られている。現行の臨床実践では、例えば、角膜の剛性、曲率、及び涙液層粘着に起因する誤差は補正されない。これに対し、本開示の発明の一実施形態(即ち、CATS眼圧計チップを備えた圧平眼圧計システム)の使用は、誤差の回避又は低減及び/又は補正を行う能力を説得力をもって示しており、誤差を補正する為の測定、計算、又は判定を追加で行わない1回の誤差補正測定を提供することが可能である。
上述の研究は、圧平眼圧計がCATSチップを備えた場合に(且つ従来の構造のゴールドマン圧平眼圧計を使用して同じ測定を実施した場合と比較して)様々な角膜生物力学的誤差及び涙液層粘着起因誤差に対するIOPの圧平眼圧測定の感度が大幅に低下することを実験的に示した。これらの結果は、GATアーマチュア又はパーキンスアーマチュアによって提供される力-圧力変換を含むCATSプリズム機能が変わらないままであることを裏付ける。この結果は、平均的な角膜生物力学的条件下でのCATSプリズムとGATプリズムのIOP測定値の差がゼロであることによって裏付けられる。又、全てのIOP測定値について平均された、2つのプリズムのIOP測定値を直接比較すると、1:1の相関によって、2つの眼圧計プリズムの間にバイアスがないことが更に裏付けられた、以前に公開された研究に含まれた死体眼が、眼内トランスデューサで測定されたIOPと比較された場合に、2つのプリズムの間のバイアスが無視できることも示した。
データ中のIOP測定値の総合誤差は、角膜の厚さ、剛性、曲率、及び涙液層の範囲のうちの極端の値の患者の場合には、合計±15~19mmHgになる場合がある。最もよく知られている測定誤差は、±7mmHg前後において中心角膜厚(CCT)に起因するものであり、これは潜在的な誤差の全体の一部であって、CCT補正だけを臨床的に不正確にする可能性がある。しかしながら、分かりやすくする為に、緑内障のリスクがある一般母集団における中心角膜厚のばらつきの標準分布において(表面が平らな眼圧計チップで従来どおり実施される測定の場合に)±7mmHgのCCT関連誤差補正だけを考慮すれば、母集団のうちのCCT誤差が±2mmHgを超える割合を算出することが可能である。本研究のCCTの母集団分布を用いると、IOP誤差が±2mmHgを超える人々の割合は、CCT関連の測定誤差だけを考慮した場合には全患者の約46%ということになる。CATS眼圧計プリズム、並びに上述の研究で示されたCCT感度の低下予測を使用すると、誤差が±2mmHgを超える患者の数が約3%まで低減される。CATS眼圧計プリズムを使用すると、CCT誤差補正によって厚さ測定が不要になる可能性が高くなり、同時に、他の潜在的により影響のある誤差も補正される。
特に、本発明の光学系の光学的に透明な部材の前面は、典型的には、ボディのシェルの、内圧の測定時にその部材を接触させる部分に対して傾かずに中心合わせされなければならない(例えば、IOPを正確に測定する為に、圧平眼圧測定装置で使用される眼圧計チップの前面が、典型的には、そのようなチップを接触させる角膜に対して中心合わせされなければならない)。圧平眼圧測定の例を使用する場合、従来の表面が平らなGATチップ100の偏心は測定の妨げにはならないが、当業者であれば容易に理解されるように、そのような偏心は、発見又は認識が容易ではなく(これは圧平されたマイア(図2Bの210A、210Bを参照、図14Cも参照)が、平らなチップ面上の任意の場所で表面が平らなチップを通して撮像される為である)、同時に、測定の品質及び正確さの両方を実質的に低下させる。従来の表面が平らな眼圧計チップとは全く対照的に、例えば、CATS眼圧計チップ300は中心合わせを動作時に自動的に行う。角膜に対するCATSチップの偏心がもしあればただちに認識されることは、チップの表面(304A、304B又は354A、354B)の中心部分が凹状であることに由来しており、このように凹状であれば、単純に、CATSチップが角膜の軸と中心合わせされない限り、そのようなチップを通して得られた半円マイア同士(圧平された角膜の画像の半円部分同士)が交差することが可能にならない。2つの曲面(角膜の曲面とCATS眼圧計チップの曲面)が接触すると、接触領域の中心(両曲面の共通の点)がこれら2つの曲面の曲率中心同士を結ぶ角膜の軸にある場合且つその場合に限り、円(及び円形マイア)が生成される。
従って、画像のそれら2つの部分の互いに隣接する端部同士(CATSチップを透過した光で、角膜の圧平された部分の画像の一部として形成されるマイア同士)が接触するか、且つ/又は重なり合うことが可能になるのは、CATS眼圧計チップの軸と角膜の軸とがほぼ重なった場合だけである。本開示の目的上、第1及び第2の軸がほぼ重なる(ほぼ一致する)と見なされるのは、これらの軸が少なくとも1つの点を共有し(少なくとも1つの共通の点を有し)、同時に、互いに対して15度未満、好ましくは10度未満、より更に好ましくは5度未満、最も好ましくは2度未満傾いている(即ち、角度をなしている)場合である。一具体例では、2つの軸が互いにほぼ重なると見なされるのは、これら2つの軸が少なくとも2つの点を共通で有していて、且つ互いに平行である場合(即ち、これら2つの軸が互いに完全に重なり合っている場合)である。一実際的実験では、CATSチップの中心合わせは、研究中に研究者全員によって容易に行われており、全ての測定が順次繰り返し可能に行われて、従来の形状のチップとCATSチップの両方で繰り返し測定のばらつきが等しく小さいことが示された。(より一般的には、この条件は、第1の軸、即ち、本発明の一実施形態に従って寸法設計された湾曲した前面を有する光学的に透明な部材の長手軸と、第2の軸、即ち、被検査ボディのシェルの軸とがほぼ重なる条件に言い換えられる。)
(同様に、そして、光学的に透明な部材でボディの内圧を測定する一般的なケースに言及すると、光学的に透明な部材をボディのシェルに押し付ける力が変われば力の強度に応じてシェルが変形し、それによって、シェルの変形した部分の画像が変わる。これにより、画像の第1の部分と第2の部分の隣接する端部同士が互いに接触するか、且つ/又は重なり合うまで力を調節することが可能である。画像の第1の部分と第2の部分の隣接する端部同士が互いに接触するか、且つ/又は重なり合う条件は、光学的に透明な部材の長手軸(これに対して、部材の湾曲した前面の軸上部分が中心合わせされる)と、シェル軸(これに対して、シェルの、部材が押し付けられる部分が中心合わせされる)とが実質的に重なることがない場合には満たされなくなる。)
上述の、従来の表面が平らな眼圧計チップとCATS眼圧計チップの表面輪郭の違いに起因する、動作の際立った違いから、圧平眼圧測定に適用されるボディの内圧の測定方法の一特定実施形態が定義される。圧平眼圧測定の場合、この方法は、圧平眼圧計でIOPを測定する方法であり、i)第1の眼圧計チップの曲線的な角膜接触面の軸上部分を眼の角膜に押し付けて、曲線的な表面と角膜との間に第1の接触面を画定し、その第1の領域の外周部に第1の角膜内応力を発生させるステップを含む。(ここで、第1の眼圧計チップは第1の軸を有し、第1の角膜内応力の値は、第2の接触面の外周部で発生する第2の角膜内応力の値より小さい。第2の表面は、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面と、その平らな角膜接触面が角膜に押し付けられた結果として形成された角膜との間の接触面である。)この方法は更に、ii)第1の眼圧計チップを2回透過して角膜から反射した光で第1の接触領域の第1の画像(第1及び第2の半円部分を含む第1の画像)を形成するステップと、iii)第1の眼圧計チップから角膜に印加される力を変化させて、第1及び第2の半円の隣接する端部同士が接触するか、且つ/又は重なり合う条件を達成するステップ(但し、そのような条件が達成されうるのは、第1の眼圧計チップの軸と角膜の軸とがほぼ重なった場合だけである)と、を含む。又、この方法は更に、iv)上記条件が達成されていない場合に角膜に対する曲線的な表面の位置及び方位の少なくとも一方を再調節して上記変更を繰り返すステップを含んでよい。
当然のことながら、図3A、3B、及び4を参照して説明された眼圧測定関連の実施形態の例示の為に選択された特定の数値は、一般に、別の応用に適するように広い範囲にわたって様々であってよい。当業者であれば理解されるように、本明細書に開示の発明概念から逸脱しない限り、例示された実施形態に対する修正や変更が行われてよい。角膜接触面の中心凹状表面部分及び関連付けられた周辺表面部分は両方とも、途切れることなく空間的に連続であってよい(例えば、図3A、3Bの部分304A、304B、又は図3Cの部分354A、354B等)。或いは、中心凹状表面部分及び関連付けられた周辺表面部分の少なくとも一方が(少なくとも角膜接触部材の光軸を横切る一方向において)空間的に不連続であってよく、これは、例えば、角膜接触面のセグメント化されたフットプリントを、角膜接触部材の光軸に垂直な平面への投影として画定する為である。例えば、中心凹状表面部分及び周辺表面部分の少なくとも一方が空間的に途切れてよく、これは、例えば、少なくとも1つの空間軸に対する、そのような途切れた表面部分の対称性を維持する為である。図3A、3Bを参照すると、一具体例として、周辺表面部分304Bはy軸方向に空間的に途切れてよい。そのようなセグメント化された構造は、動作時に角膜に押し付けられると、表面の断続が存在する方向である軸(ここではy軸)に関してほぼ対称に位置する複数の圧平領域を画定する。
総じて、平らな平面状の表面から外れるようにフォーマットされ、上述のように、正負が反対である2つの曲率を有する湾曲した表面を含むように構成された角膜接触面を有する眼圧計チップの使用について示してきたが、これは、IOP測定の正確さを、表面が平らな眼圧計チップを使用する従来使用されてきたGATで実施される場合より高める為であり、中心角膜厚(CCT)、角膜の剛性又はスチフネス、角膜の曲率、及び/又は角膜内応力のうちの少なくとも1つを考慮する為に、測定結果を補正することの必要性又は価値を少なくとも減ずる為である。
・本明細書全体を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)、「関連する一実施形態(a related embodiment)」、又は同様の言い回しへの参照は、「実施形態(embodiment)」への参照に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。従って、本明細書全体を通しての「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」という語句、及び同様の言い回しの出現は、必ずしもそうではないにせよ、全てが同じ実施形態を参照している場合がある。当然のことながら、図面自体に取り上げられて図面と可能な関連があるいずれの開示部分も、本発明の全ての特徴を完全に説明することは意図されていない。本明細書においては、明確且つ簡潔な明細書が書かれることを可能にするように実施形態を説明してきたが、本発明の範囲から外れない限り、実施形態を様々に組み合わせたり分割したりしてよいものとし、そのように理解されたい。特に、当然のことながら、本明細書に記載の全ての特徴は、本発明のあらゆる態様に適用可能である。
・本開示が本発明の特徴を、対応する図面(図面では類似の参照符号は可能な限り同一又は同様の要素を表す)を参照して説明する場合、描かれた構造的要素は一般に正しい縮尺ではなく、強調及び理解の為に特定の構成要素が他の構成要素より拡大されている。当然のことながら、どの1つの図面も本発明の全ての特徴の完全な説明をサポートすることは意図されていない。言い換えると、所与の図面は、一般に本発明の一部の特徴だけを説明するものであり、一般に本発明の全ての特徴を説明するものではない。所与の図面、並びに本開示の、そのような図面を参照する説明を含む関連部分は、一般に、特定の図の全ての要素、又はその図に存在しうる全ての特徴を包含するものではなく、これは、少なくとも、所与の図面及び説明を簡略化する為であり、且つ、その図面で注目すべき特定の要素に説明を向ける為である。当業者であれば理解されるように、本発明は、場合によっては、特定の特徴、要素、構成要素、構造、詳細、又は特性のうちの1つ以上がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等を使用しても実施可能である。従って、本発明の一実施形態の特定の詳細が、そのような実施形態を説明する図面の全てには必ずしも示されていない場合があるが、本明細書の文脈上他の意味に解すべき場合を除き、この特定の詳細が図面に存在することが暗示されていると考えられてよい。他の例では、本発明の一実施形態の議論されている態様が曖昧にならないように、よく知られている構造、詳細、材料、又は動作が所与の図面に示されたり、詳細に記述されたりしなくてよい。更に、本発明の説明された1つの特徴、構造、又は特性を、1つ以上の別の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせてよい。
・更に、概略フローチャート図が含まれる場合、論理フローの描かれている順序及びラベル付けされたステップは、本発明の方法の一実施形態を示す。他のステップ及びステップの順序は、機能、論理、又は効果において、図示された方法の1つ以上のステップ又はそれらの一部と等価であると考えられてよい。一般性を失わない限り、処理ステップ又は特定の方法が実施される順序は、図示された対応するステップの順序に厳密に準拠してもしなくてもよい。
・本開示に添付の特許請求項に記載された発明は、参照された、先行技術に開示の特徴を含む本開示全体を踏まえて評価されるべきものとする。
・本開示及び添付の特許請求項の目的の為に、提示された値、要素、特性、又は特徴の記述子を参照する際に「ほぼ(substantially)」、「およそ(approximately)」、「約(about)」という語句、及び同様の語句を使用することは、参照される値、要素、特性、又は特徴が、必ずしも厳密に言葉どおりというわけではないものの、実際上はやはり、述べられたとおりであると当業者によって見なされることになるということを強調することを意図されたものである。これらの語句は、特定の特性又は品質の記述子に適用される場合には「ほとんど(mostly)」、「主に(mainly)」、「かなり(considerably)」、「全般的に(by and large)」、「本質的に(essentially)」、「大部分又はかなりの程度まで(to great or significant extent)」、「概ね同じだが、必ずしも完全に同じではない(largely but not necessarily wholly the same)」という意味になり、これは、例えば、近似の言い回しを妥当に示し、特定の特性又は記述子を、その範囲が当業者によって理解されるように説明する為である。この語句を、選択された特性又は概念の説明に使用することは、不明確であること、並びに特定の特性又は記述子に数的限定を加えることについて何らかの根拠を意味したり提供したりするものではない。当業者であれば理解されるように、そのような値、要素、又は属性の厳密な値又は特性の、そのように述べられたものからの実際の逸脱は、そのような目的の為に当該技術分野において受け入れられている測定方法を使用する場合に典型的な実験的測定誤差によって画定される範囲内で変動しうる。例えば、基準線又は基準面にほぼ平行なベクトル又は線又は面の参照は、そのようなベクトル又は線が沿って延びる方向又は軸が、基準線又は基準面が沿って延びる方向又は軸と同じであるか非常に近いものとして解釈されるべきである(この場合、当該技術分野において実際に典型的であると見なされる基準方向又は基準軸からの角度変位は、例えば、0~15度、より好ましくは0~10度、更により好ましくは0~5度、最も好ましくは0~2度である)。「ほぼ剛体である(substantially-rigid)」という語句は、注目の機械的工夫を機械的に支持するハウジング又は構造的要素の参照に使用される場合には、一般に、構造的要素の剛性が、そのような構造的要素が支持する機械的工夫の剛性より高い、その構造的要素を識別する。別の例として、「ほぼ平らな(substantially flat)」という語句は、指定された表面の参照に使用される場合には、そのような表面が、提示された特定の状況において当業者によって一般的に理解されるようなサイズ及び表現になっている程度の非平坦性及び/又は粗さを有しうることを暗示する。例えば、「およそ(approximately)」及び「約(about)」という語句は、数値を参照して使用される場合には、特定の値に対して±20%の範囲を表し、より好ましくは特定の値に対して±10%、更に好ましくは±5%、最も好ましくは±2%の範囲を表す。
総じて。本発明の実施態様は、接触式眼圧測定において用いられる一アプローチを用いて、ボディの内圧の光学測定の誤差を低減する課題に対処する。具体的には、ボディのシェルの機械的特性、及びボディの表面上の流体層の存在を表す因子に関連付けられた誤差が、測定時にボディに接触するように寸法設計された光学部材の前面を、従来の平らな前面から特定の湾曲を有する前面へと慎重に再構成した結果として低減される。一般的な内圧測定に関係する実施形態について説明してきたが、圧平眼圧測定での使用に関係する特定実施形態は、限定ではなく、以下を含む。
・接触式眼圧計による眼圧(IOP)の測定方法。本方法は、第1の眼圧計チップの曲線的な角膜接触面の軸上部分を眼の角膜に押し付けて、角膜に力を印加し、曲線的な表面との間に第1の接触面を画定するステップを含む(ここで、第1の眼圧計チップは第1の軸を有し、角膜は角膜軸を有する)。本方法は更に、第1の眼圧計チップを2回透過して角膜から反射した光で第1の接触面の第1の画像(第1及び第2のほぼ半円の部分を含む第1の画像)を形成するステップと、第1の眼圧計チップから角膜に印加される力を調節して、第1及び第2の半円部分の隣接する端部同士が接触するか、重なり合う条件を達成するステップと、を含む。ここで、そのような条件が達成されるか達成されうるのは、第1の眼圧計チップの軸と角膜の軸とがほぼ重なった場合だけである。この条件が達成されない場合、本方法は更に、曲線的な表面を角膜に対して位置合わせし直して、力を調節するステップを繰り返すステップを含む。押し付けるステップは、第1の曲率を有する曲線的な角膜接触面の軸上部分を押し付けるステップを含んでよく、第1の曲率は、曲率の第2の正負と等しい曲率の第1の正負を有する(曲率の第2の正負は角膜の曲率の正負と等しい)。代替又は追加として、本方法は、力を調節することの結果として第1の接触面の表面積を可逆的に変化させるステップ、及び/又は(隣接する端部同士が接触するか重なり合った時点で)第1の誤差が第2の誤差より小さくなるように、第1の画像を使用して第1のIOP値を算出するステップを含んでよい。ここで、第1の誤差は、角膜剛性、角膜厚、角膜曲率、第1の軸と角膜軸との間の位置合わせずれ、及び曲線的な角膜接触面との間に流体層が存在することによって引き起こされる効果のいずれかによって第1の値に寄与する誤差であり、一方、第2の誤差は、第2の眼圧計チップ(角膜接触面が平らな第2の眼圧計チップ)を備えた接触式眼圧計で測定された第2のIOP値に寄与する誤差を表す。一具体例では、押し付けるステップは、第1の接触面において角膜を圧平したことの結果として角膜の或る場所に第1の眼内応力を発生させることを含んでよく、第1の眼内応力の第1の値は、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面により同じ圧力を角膜に印加することによって第2の眼圧計チップで角膜を圧平したことの結果としてその場所に発生する第2の眼内応力の第2の値より小さい。関連する一実施形態では、押し付けるステップは、代替又は追加として、曲線的な角膜接触面と角膜との間の第1の平均接触角度を画定する力を印加することを含んでよく、第1の平均接触角度は第2の平均接触角度の少なくとも2倍の大きさである。ここで、第2の平均接触角度は、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面を角膜に接触させることによって角膜に力を印加したことの結果として形成される接触角度である。
・接触式眼圧測定により眼の眼圧(IOP)を測定するように構成された装置。本装置は第1の眼圧計チップを含み、第1の眼圧計チップは、第1の軸と、中心部分が平らではない前面とを有し、曲率がゼロではなく、眼の角膜に押し付けられたときに角膜を圧平して角膜の圧平された部分を形成するように構成されており、同時に第1の誤差を第2の誤差より小さくするように構成されている(ここで、角膜は角膜軸を有し、第1の誤差は、前面と角膜との間の粘着によって眼の第1のIOP測定値に寄与する誤差であり、第2の誤差は、角膜接触面が平らな第2の眼圧計チップを使用して測定された第2のIOP値に寄与する誤差であり、粘着は、前面と角膜との間に存在する流体層によって引き起こされる)。第1の眼圧計チップは更に、第1の軸をほぼ横切る背面を含む。本装置は更に、第1の眼圧計チップのボディに光学プリズム系を含んでよく、これは、前面及び光学プリズム系を透過した光で角膜の圧平された部分の画像を形成するように配置されている(この画像は、第1の端部を有する第1の半円と、第2の端部を有する第2の半円とを含み、第1及び第2の端部同士が接触するか重なり合うのは第1の軸と角膜軸とがほぼ重なった場合だけである)。代替又は追加として、前面は、角膜に押し付けられたときに角膜を圧平するとともに、第3の誤差を第4の誤差より小さくするように寸法設計されている。ここで、第3の誤差は、角膜曲率、角膜厚、角膜剛性、及び第1の軸と角膜軸との間の位置合わせずれのいずれかによって第1のIOP測定値に寄与する誤差である。第4の誤差は、第2のIOP値に寄与する誤差である。代替又は追加として、ゼロでない曲率の正負は角膜の曲率の正負と同じであってよく、且つ/又は、粘着によって眼の第1のIOP測定値に寄与する第1の誤差の低減は少なくとも10パーセントである。代替又は追加として、前面は、中心部分に外接する環状部分を含む。(ここで、環状部分は、閉曲線に沿って中心部分と接線方向に融合しており、環状部分は、環状部分の複数の頂点を含む軸対称曲線を環状部分の表面内に画定している。軸対称曲線の直径は、角膜に空間的キンクを形成することなく達成可能な角膜の圧平された部分の最大限の範囲を画定する。)後者の実施形態の一特定実施態様では、平面閉曲線は、第1の軸を横切る平面内に画定されている。関連する一実施態様では、前面は、球面の一部分と合同の表面部分を含み、そのような表面部分は表面を貫通する開口部がない。更に別の関連する実施形態では、前面は、第1の軸を含んで軸方向に単調な曲線によって画定される平面に断面を有する方位角対称な双曲面になっており、その軸方向に単調な曲線の全ての点において二次導関数が定義される。いかなる実施態様においても、本装置は、圧平眼圧計として構成されてよく、第1の眼圧計チップのボディに配置された光学プリズムを通って前面に向かう光を放射するように配置された光源を含んでよい。
・接触式眼圧測定により眼の眼圧(IOP)を測定するように構成された装置。そのような装置は、第1の軸と前面とを有する第1の眼圧計チップを含む。前面は、中心部分が平らでなく、曲率がゼロではなく、眼の角膜に押し付けられたときに角膜(角膜軸を有する角膜)を圧平して角膜の圧平された部分を形成するように構成されており、且つ、第1の誤差を第2の誤差より小さくするように構成されている。第1の誤差は、前面と角膜との間の粘着によって眼の第1のIOP値に寄与する誤差であり、第1のIOP値は、上記眼圧計チップを使用して眼圧計で測定されたIOP値である。第2の誤差は、角膜接触面が平らな第2の眼圧計チップを使用して測定された第2のIOP値に寄与する誤差である。粘着は、前面と角膜との間に存在する流体層によって引き起こされる。中心部分は第1の正負の第1の曲率を有し、角膜は曲率が第2の正負であり、第1の正負は第2の正負と等しい。
一実施態様では、前面は、眼の角膜に押し付けられたときに角膜を圧平するとともに、第3の誤差を第4の誤差より小さくするように寸法設計されている。ここで、第3の誤差は、角膜曲率、角膜厚、角膜剛性、及び第1の軸と角膜軸との間の位置合わせずれのいずれかによって第1のIOP測定値に寄与する誤差である。第4の誤差は、角膜接触面が平らな眼圧計チップを使用して測定された第2のIOP値に寄与する誤差である。代替又は追加として、前面は更に環状部分を含み、環状部分は中心部分を取り巻き、平面閉曲線に沿って中心部分と接線方向に融合し、環状部分の曲率は第3の正負であり、第3の正負は第1の正負の反対である。この後者の場合、環状部分は、環状部分の表面に軸対称曲線を含んでよい。(そのような軸対称曲線は環状部分の複数の頂点によって画定され、軸対称曲線の直径は、角膜表面に空間的キンクを形成することなく達成可能な角膜の圧平された部分の最大限の範囲を画定する。)前面は、軸対称であってよく、特定の場合には回転対称であってよい。代替又は追加として、前面は、第1の軸を含んで空間的に単調な曲線によって画定される平面に断面を有する方位角対称な双曲面であってよく、その空間的に単調な曲線の全ての点において二次導関数が定義される。代替又は追加として、本装置は、第1の眼圧計チップのボディに光学プリズム系を含んでよく、これは、前面及び光学プリズム系を透過した光で角膜の圧平された部分の画像を形成するように配置されている。この場合、画像は、第1の端部を有する第1の半円と、第2の端部を有する第2の半円とを含み、第1及び第2の端部同士が接触するか重なり合うのは第1の軸と角膜軸とがほぼ重なった場合だけである。本装置は、接触式眼圧計として構成されてよく、特定の場合には、光学式圧平眼圧計(例えば、ゴールドマン圧平眼圧計の動作原理に従って動作する眼圧計)として構成されてよい。
・接触式眼圧計による眼圧(IOP)の測定方法。本方法は、・第1の眼圧計チップの曲線的な角膜接触面の軸上部分を眼の角膜に接触させることによって角膜に力を印加して、i)曲線的な表面と角膜との間に第1の接触面を画定し、ii)第1の接触面において角膜を圧平したことの結果として角膜の或る場所に第1の眼内応力を発生させるステップと(ここで、第1の眼圧計チップは第1の軸を有し、角膜は角膜軸を有する)、・第1の眼圧計チップを2回透過して角膜から反射した光で第1の接触面の第1の画像を形成するステップと、・第1の画像を使用して第1のIOP値を眼圧計で測定するステップと、を含む(但し、軸上部分の第1の曲率は曲率の第1の正負が角膜の曲率の正負に等しく、第1の角膜内応力の第1の値は、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面により角膜に同じ力を印加することによる、第2の眼圧計チップによる角膜の圧平の結果として上記場所に発生する第2の角膜内応力の第2の値より小さい)。
測定のプロセスは、第1の誤差が第2の誤差より小さい第1の値を測定することを含んでよい。ここで、第1の誤差は、角膜剛性、角膜厚、角膜曲率、第1の軸と角膜軸との間の位置合わせずれ、及び曲線的な角膜接触面と角膜との間に流体層が存在することによって引き起こされる効果のいずれかによって第1の値に寄与する誤差である。同時に、第2の誤差は、第2の眼圧計チップを備えた圧平眼圧計で、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面で角膜に同じ力を印加しながら測定された第2のIOP値に寄与する誤差を表す。代替又は追加として、測定するプロセスは、第1の誤差を有する第1の値を測定することを含んでよく、第1の誤差は、曲線的な角膜接触面と角膜との間に涙液層が存在することだけによってそのような第1の値に寄与する誤差を表す(この後者の特定の場合では、第2の誤差と第1の誤差の差は、涙液層によって形成される毛細管力が、第2の眼圧計チップを使用して、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面を角膜に接触させて角膜に同じ力を印加しながら第2のIOP値を測定するプロセスの間に涙液層によって形成される毛細管力に比べて少なくとも10パーセント低減されることを表す。)代替又は追加として、角膜に印加される力の形成は、第1の眼圧計チップの曲線的な角膜接触面の軸上部分を角膜に接触させて、曲線的な角膜接触面と角膜との間に第1の平均接触角度を画定することによって引き起こされてよい。(ここで、第1の平均接触角度は、第2の平均接触角度の少なくとも2倍の大きさであり、第2の平均接触角度は、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面と角膜との間に形成される平均接触角度であって、上記平らな角膜接触面を角膜に接触させることによって角膜に力を印加したことの結果として形成される平均接触角度である。)
一特定実施形態では、測定するプロセスは、第1の誤差を有する第1の値を測定することを含んでよく、第1の誤差は角膜曲率によって寄与される誤差を表し、第1の誤差の絶対値は第2の誤差の絶対値より少なくとも1mmHg小さく、第2の誤差は、第2の眼圧計チップを使用して、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面を角膜に接触させて角膜に同じ力を印加しながら測定される第2のIOP値に対して角膜曲率によって寄与される誤差を表す。関連する一特定実施形態では、測定するプロセスは、第1の誤差を有する第1の値を測定することを含んでよく、第1の誤差は角膜厚によって寄与される誤差を表す。ここで、第1の誤差の絶対値は第2の誤差の絶対値より少なくとも1mmHg小さく、第2の誤差は、第2の眼圧計チップを使用して、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面を角膜に接触させて角膜に同じ力を印加しながら測定される第2のIOP値に対して角膜厚によって寄与される誤差を表す。更に別の特定実施形態では、測定するプロセスは、第1の誤差を有する第1の値を測定することを含み、第1の誤差は角膜剛性によって寄与される誤差を表し、第1の誤差の絶対値は第2の誤差の絶対値より少なくとも1mmHg小さく、第2の誤差は、第2の眼圧計チップを使用して、第2の眼圧計チップの平らな角膜接触面を角膜に接触させて角膜に同じ力を印加しながら測定される第2のIOP値に対して角膜剛性によって寄与される誤差を表す。
本方法のほぼいかなる実施態様においても、画像を形成するプロセスは、第1及び第2の半円部分を含む第1の画像を形成することと、第1及び第2の半円部分の隣接する端部同士が重なる条件を達成するように力を調節することと、を含んでよく、そのような条件が達成されうるのは、第1の軸と角膜軸とが重なった場合だけである。代替又は追加として、本方法のいかなる実施態様も、角膜に力を印加したことの結果として第1の接触面の表面積を可逆的に変化させるステップを含んでよい。
ここまでの開示では、対応する図面を参照して本発明の特徴を説明した。それらの図面において類似の参照符号は可能な限り同一又は同様の要素を表す。図面では、描かれた構造的要素は一般に正しい縮尺ではなく、強調及び理解の為に特定の構成要素が他の構成要素より拡大されている。当然のことながら、どの1つの図面も本発明の全ての特徴の完全な説明をサポートすることは意図されていない。言い換えると、所与の図面は、一般に本発明の一部の特徴だけを説明するものであり、一般に本発明の全ての特徴を説明するものではない。所与の図面、並びに本開示の、そのような図面を参照する説明を含む関連部分は、一般に、特定の図の全ての要素、又はその図に存在しうる全ての特徴を包含するものではなく、これは、所与の図面及び説明を簡略化する為であり、且つ、その図面で注目すべき特定の要素に説明を向ける為である。当業者であれば理解されるように、本発明は、場合によっては、特定の特徴、要素、構成要素、構造、詳細、又は特性のうちの1つ以上がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等を使用しても実施可能である。従って、本発明の一実施形態の特定の詳細が、そのような実施形態を説明する図面の全てには必ずしも示されていない場合があるが、本明細書の文脈上他の意味に解すべき場合を除き、この詳細が図面に存在することが暗示されていると考えられてよい。他の例では、本発明の一実施形態の議論されている態様が曖昧にならないように、よく知られている構造、詳細、材料、又は動作が所与の図面に示されたり、詳細に記述されたりしなくてよい。更に、本発明の説明された1つの特徴、構造、又は特性を、1つ以上の別の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせてよい。
本開示に添付の特許請求項に記載された発明は、参照された、先行技術に開示の特徴を含む本開示全体を踏まえて評価されるべきものとする。従って、本発明は、開示された実施形態に限定されると見なされるべきではない。
〔付記1〕
ボディの内圧の測定の誤差を低減する光学系の使用であって、前記光学系は、前記測定中に前記ボディの表面に接触させられるように構成され、前記ボディの前記表面との間で光を行き来させるように構成された、湾曲した前面を有する光学的に透明な部材を含み、前記ボディは前記ボディの内部ボリュームを取り囲むシェルを有し、前記誤差は前記シェルの一部分に存在する流体層に起因し、前記測定は、
前記湾曲した前面の軸上部分を前記シェルの前記一部分に押し付けて、前記シェルに力を印加し、前記湾曲した前面と前記シェルの前記一部分との間に第1の接触表面積を画定するとともに、前記湾曲した前面が平らでないことの結果として、前記前面と前記シェルの前記一部分との間の平均接触角度を約20度から約35度の範囲内に保つステップであって、前記軸上部分は前記光学的に透明な部材の長手軸に対して中心合わせされている、前記押し付けるステップと、
前記湾曲した前面を2回横切り、前記第1の接触表面積から反射した光で形成された光学画像に基づいて前記内圧の値を評価するステップと、
を含む、
前記光学系の使用。
〔付記2〕
前記誤差は、前面が平らな別の光学的に透明な部材を使用して実施される、前記ボディの前記内圧の前記測定の対応する誤差のほぼ2倍の小ささである、付記1に記載の光学系の使用。
〔付記3〕
前記シェルの前記一部分と、前記ボディの前記内圧の前記測定中に前記シェルの前記一部分と接触している、光学的に透明な部材の表面との間の前記流体層に起因する平均毛細管力が、前記湾曲した前面を有する前記光学的に透明な部材を使用することの結果として、平らな前面を有する別の光学的に透明な部材を同じ測定条件下で使用する場合と比較して少なくとも約41パーセント低減される、付記1及び2のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記4〕
以下の条件、即ち、
a)前記光学系は更に、前記湾曲した前面を有する前記光学的に透明な部材に関連付けられた光学プリズムの系を含み、前記光学プリズムは、互いに対して空間的に別個である2つの画像部分を含む前記光学画像を形成するように配置されており、前記画像部分の対応する端部同士が接触するか重なり合うのは、前記光学的に透明な部材の軸と前記シェルの前記一部分の軸とが重なった場合だけであること、並びに
b)前記光学的に透明な部材の前記湾曲した前面は、前記光学的に透明な部材の軸に対して回転対称であること
のうちの少なくとも1つが満たされる、
付記1、2、及び3のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記5〕
前記ボディは眼であり、前記光学的に透明な部材は眼圧計チップであり、以下の条件、即ち、
(a)前記光学的に透明な部材の前記長手軸を含む平面内に画定された前記湾曲した前面の断面輪郭のサグが約186ミクロンであること、並びに
(b)前記長手軸を含む平面内に画定された前記湾曲した前面の半径方向輪郭の上限と前記長手軸との間の半径方向距離が約1.53mmであること
のうちの少なくとも1つが満たされる、
付記1~4のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記6〕
前記湾曲した前面は周辺部分を含み、前記周辺部分は、前記軸上部分を円周方向に取り巻き、前記軸上部分と接線方向に融合する、付記1~5のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記7〕
以下の条件、即ち、
(i)前記軸上部分の曲率の正負と前記周辺部分の曲率の正負とが互いに反対であること、並びに
(ii)前記軸上部分の曲率の正負が前記シェルの前記一部分の曲率の正負と同じであること
のうちの少なくとも1つが満たされる、
付記6に記載の光学系の使用。
〔付記8〕
前記方法は更に、
前記押し付けるステップの間に、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間に、前記流体層の存在に起因して毛細管力を形成することを含み、前記毛細管力は、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間の前記流体層のメニスカスにわたって平均された場合に約0.0024Nを超えない、
付記1~7のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記9〕
前記方法は更に、
前記押し付けるステップの間に、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間に、前記流体層の存在に起因して第1の毛細管力を形成することを含み、前記第1の毛細管力は、同じ測定条件下で、別の光学的に透明な部材の平らな前面を前記シェルの前記一部分に押し付けている間に、前記平らな前面と前記シェルの前記一部分との間の前記液体層の存在に起因して形成される第2の力より約30パーセントから約45パーセント小さい、
付記1~7のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記10〕
前記湾曲した前面は前記長手軸に対して回転対称である、付記1~9のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記11〕
ターゲットボディの内部ボリュームを取り囲む弾性変形可能なシェルを有する前記ターゲットボディの内圧を測定する方法であって、
前記方法は、流体層を載せている第1の光学的に透明な部材の前面の軸上部分を前記シェルの一部分に押し付けて、前記シェルに力を印加し、前記前面と前記シェルとの間に第1の接触表面積を画定するステップを含み、
前記第1の光学的に透明な部材は長手方向部材軸を有し、前記シェルの前記一部分はシェル軸を有し、
前記方法は、前記第1の光学的に透明な部材を2回透過して前記シェルから反射した光で前記第1の接触表面積の第1の光学画像を形成するステップであって、前記第1の光学画像は、互いに実質的に切り離されている第1及び第2の画像部分を含む、前記形成するステップを含み、
前記方法は、前記力を調節して、前記第1及び第2の部分の隣接する端部同士が接触するか重なり合う条件を達成するステップを含み、
前記軸上部分は前記長手方向部材軸に対して軸方向に中心合わせされ、前記シェルの前記一部分は前記シェル軸に対して軸方向に中心合わせされ、
前記条件が達成されるのは、前記長手方向部材軸と前記シェル軸とがほぼ重なった場合だけである、
方法。
〔付記12〕
前記シェル軸と前記長手方向部材軸とがほぼ重なった場合だけ前記条件が達成されるという結果が、前記前面が湾曲していて平らでないことによってもたらされる、付記11に記載の方法。
〔付記13〕
上記条件が達成されない場合には、前記前面を前記シェルの前記一部分に対して位置合わせし直して、前記調節するステップを繰り返すステップ
を更に含む、付記11及び12のいずれか一項に記載の方法。
〔付記14〕
前記押し付けるステップは、前記前面の前記軸上部分を前記シェルの前記一部分に押し付けることを含み、前記前面の前記軸上部分は第1の曲率で湾曲しており、前記第1の曲率は曲率の第1の正負を有する、付記11及び13のいずれか一項に記載の方法。
〔付記15〕
曲率の前記第1の正負は第2の正負と等しく、前記第2の正負は、前記シェルの前記一部分の第2の曲率の正負と等しい、付記14に記載の方法。
〔付記16〕
前記前面の半径方向輪郭の上限と前記長手方向部材軸との間の半径方向距離が約1.53mmである、付記14及び15のいずれか一項に記載の方法。
〔付記17〕
前記長手方向部材軸を含む断面内での前記長手方向部材軸からの距離に応じて画定される、前記第1の光学的に透明な部材の前記前面の輪郭が、約186ミクロンのサグを有する頂点である前記軸上部分によって特徴付けられる、付記14、15、及び16のいずれか一項に記載の方法。
〔付記18〕
以下のステップ、即ち、
前記調節するステップの結果として前記第1の接触表面積を可逆的に変化させるステップのうちの少なくとも1つを更に含み、前記シェルの前記一部分は光学的に透明である、
付記11~15のいずれか一項に記載の方法。
〔付記19〕
前記前面が湾曲した前面として寸法設計されていて、前記隣接する端部同士が接触するか重なり合った時点で、前記第1の光学画像を使用して、前記内圧の第1の値を算出するステップであって、前記算出された第1の値は、基準値より小さい第1の誤差を含む、前記算出するステップを更に含み、
前記基準値は、平らな前面を有する第2の光学的に透明な部材を使用して、前記押し付けるステップ、前記形成するステップ、及び前記調節するステップを実施することによって前記内圧が測定される場合に、シェル剛性、シェル厚、シェル曲率、前記長手方向部材軸と前記シェル軸との間の位置合わせずれ、及び前記湾曲した前面と前記シェルの前記一部分との間に流体層が存在することの少なくともいずれかに起因する第2の誤差の値である、
付記11~18のいずれか一項に記載の方法。
〔付記20〕
前記第1の誤差と前記基準値との差の原因が、少なくとも1つには、前記流体層によって引き起こされた毛細管力が、前記湾曲した前面と前記シェルの表面との間に或る接触角度が形成された結果として最大45%低減されることであり、前記接触角度は約20度から約30度の範囲にある、付記19に記載の方法。
〔付記21〕
前記第1の光学部材の前記前面は更に、第3の曲率を有する周辺領域を含み、前記第3の曲率は、曲率の前記第1の正負とは反対の、曲率の第3の正負を有する、付記14に記載の方法。
〔付記22〕
前記周辺領域は、前記軸上領域を円周方向に取り巻き、前記前面に画定された閉曲線に沿って前記軸上領域と接線方向に融合する、付記21に記載の方法。
〔付記23〕
前記ボディは眼であり、前記シェルの前記一部分は角膜であり、前記第1の光学的に透明な部材は、湾曲していて平らでない角膜接触面を有する眼圧計チップである、付記21~22のいずれか一項に記載の方法。
〔付記24〕
湾曲した前面を有する光学的に透明な部材を使用してボディの内圧の測定の誤差を低減する方法であって、前記誤差は、前記ボディの表面に存在する流体層に起因し、前記ボディは、前記ボディの内部ボリュームを取り囲むシェルを有し、前記測定は、
前記湾曲した前面の軸上部分を、前記流体層を保持する、前記シェルの一部分に押し付けて、前記シェルに力を印加し、前記湾曲した前面と前記シェルの前記一部分との間に第1の接触表面積を画定するとともに、前記湾曲した前面が平らでないことの結果として、前記前面と前記シェルの前記一部分との間の平均接触角度を約20度から約35度の範囲内に保つステップであって、前記軸上部分は前記光学的に透明な部材の長手軸に対して中心合わせされている、前記押し付けるステップと、
前記湾曲した前面を2回横切り、前記第1の接触表面積から反射した光で形成された光学画像に基づいて前記内圧の値を評価するステップと、
を含む、
方法。
〔付記25〕
前記内圧の導出された値は前記誤差によって特徴付けられ、前記誤差は、平らな前面を有する別の光学的に透明な部材を使用して実施される、前記ボディの前記内圧の前記測定の対応する誤差のほぼ2倍の小ささである、付記24に記載の方法。
〔付記26〕
前記押し付けるステップの間に、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間に、前記流体層の存在に起因して毛細管力を形成することを更に含み、前記毛細管力は、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間の前記流体層のメニスカスにわたって平均された場合に約0.0024Nを超えない、
付記24及び25のいずれか一項に記載の方法。
〔付記27〕
前記押し付けるステップの間に、前記シェルの前記一部分と前記湾曲した前面との間に、前記流体層の存在に起因して第1の毛細管力を形成することを更に含み、前記第1の毛細管力は、同じ測定条件下で、別の光学的に透明な部材の平らな前面を前記シェルの前記一部分に押し付けている間に、前記平らな前面と前記シェルの前記一部分との間の前記液体層の存在に起因して形成される第2の力より約30パーセントから約45パーセント小さい、
付記24及び25のいずれか一項に記載の方法。
〔付記28〕
前記光学的に透明な部材の前記湾曲した前面は、前記光学的に透明な部材の軸に対して回転対称であり、
前記ボディは眼であり、前記光学的に透明な部材は眼圧計チップであり、前記光学的に透明な部材の前記軸を含む平面内に画定された前記湾曲した前面の断面輪郭のサグが約186ミクロンである、
付記24~27のいずれか一項に記載の方法。
〔付記29〕
眼圧の測定の誤差を低減する光学系の使用であって、前記光学系は、前記測定中に眼の角膜に接触させられるように構成された、長手軸及び湾曲した前面を有する眼圧計チップを含み、前記眼圧計チップは、前記角膜との間で光を行き来させるように構成されており、前記誤差は前記角膜にある涙液層に起因し、前記測定は、
前記湾曲した前面の軸上部分を前記角膜に押し付けて、前記角膜に力を印加し、前記湾曲した前面と前記角膜との間に第1の接触表面積を画定するステップであって、前記軸上部分は前記長手軸に対して中心合わせされている、前記押し付けるステップと、
前記角膜と前記湾曲した前面との間に、前記涙液層の存在に起因して第1の毛細管力を形成するステップであって、前記第1の毛細管力は、同じ測定条件下で、別の光学的に透明な部材の平らな前面を前記角膜に押し付けている間に、前記平らな前面と前記角膜との間の前記涙液層の存在に起因して形成される第2の毛細管力より約30パーセントから約45パーセント小さい、前記形成するステップと、
前記湾曲した前面を2回横切り、前記角膜から反射した光で形成された光学画像に基づいて前記眼圧の値を評価するステップと、
を含む、
前記光学系の使用。
〔付記30〕
前記押し付けるステップは、前記第1の接触表面積を形成するとともに、前記湾曲した前面が平らでないことの結果として、前記前面と前記シェルの前記一部分との間の平均接触角度を約20度から約35度の範囲内に保つステップを含む、付記29に記載の光学系の使用。
〔付記31〕
前記軸上部分は前記長手軸に対して回転対称である、付記29及び30のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記32〕
前記湾曲した前面は周辺部分を更に含み、前記周辺部分は、前記軸上部分を円周方向に取り巻き、前記軸上部分と接線方向に融合する、付記29~31のいずれか一項に記載の光学系の使用。
〔付記33〕
以下の条件、即ち、
(i)前記軸上部分の曲率の正負と前記周辺部分の曲率の正負とが互いに反対であること、並びに
(ii)前記軸上部分の曲率の正負が前記角膜の前記一部分の曲率の正負と同じであること
のうちの少なくとも1つが満たされる、
付記32に記載の光学系の使用。
〔付記34〕
以下の条件、即ち、
(a)前記光学的に透明な部材の前記長手軸を含む平面内に画定された前記湾曲した前面の断面輪郭のサグが約186ミクロンであること、並びに
(b)前記長手軸を含む平面内に画定された前記湾曲した前面の半径方向輪郭の上限と前記長手軸との間の半径方向距離が約1.53mmであること
のうちの少なくとも1つが満たされる、
付記29~33のいずれか一項に記載の光学系の使用。