以下、本発明の実施形態に係る試験装置、ケーブル特性試験システム及びケーブル特性試験方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、ケーブル特性試験システム1は、開閉動作を行う開閉装置20と、ケーブル特性を試験する試験装置30と、を備える。ケーブル特性試験システム1は、測定対象の芯線ペアの一端を開放して電気的なケーブル特性を測定する動作と、芯線ペアの一端を互いに短絡して電気的なケーブル特性を測定する動作とを周期的に行う。
特性試験の対象であるケーブル10は、2本の芯線11、12を有する2芯ケーブルである。2本の芯線11、12は、測定対象の芯線ペアである。なお、特性試験の対象は、ケーブル10のような2芯ケーブルに限らず、芯線が1本のシールドケーブル又は同軸ケーブルであってもよい。この場合、1本の内部導体である芯線と外部導体であるシールド線とが測定対象の芯線ペアである。このように、ケーブル内に芯線、芯線以外の導体等の2本の配線があれば特性試験の対象となり得る。
開閉装置20は、2つの接続用端子21a、21bと、接続用端子21a、21b間を短絡又は開放するリレースイッチ21と、リレースイッチ21を周期的にオンオフ制御するスイッチ駆動部22と、を備える。開閉装置20は、持ち運び可能とするために内蔵電池によって電源供給されてもよいし、アダプタを介して商用電源によって電源供給されてもよい。
開閉装置20の接続用端子21a、21bには、試験対象のケーブル10内の芯線11、12の一端(以下、遠端)11a、12aが接続される。なお、この接続を容易にするために、先端にクリップを有する接続用配線を接続用端子21a、21bに取り付けて、芯線の遠端11a、12aにクリップ留めするようにしてもよい。
試験装置30の接続端子31a、31bには、ケーブル10内の芯線11、12の他端(以下、近端)11b、12bが接続される。なお、試験装置30は、接続端子31a、31bと芯線11、12の近端11b、12bとを接続するための測定用コードを備えていてもよい。試験装置30は、例えば、抵抗値、電圧値、容量値、各種波形等を測定する機能を有するマルチメータ、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)測定装置等を備える。なお、TDR測定とは、パルス信号やステップ信号を配線に注入し、その反射波形を観測する手法である。
試験装置30は、試験対象の配線に流す電流を生成する電流生成部40と、開閉装置20の開閉を検知して開閉制御信号を出力する制御部50と、制御部50からの開閉制御信号に応じて開閉する3つのスイッチSW3、SW4、SW5と、電圧を計測する電圧計90と、電圧計90が計測した電圧に基づいて試験対象の抵抗を算出するマイコン100と、図示せぬ電源装置と、を備える。
電源装置は、直流の電源電圧Vccを生成する電源回路であって、試験装置30内の各部に電源電圧Vccを供給する。電源装置の電源電圧Vccの負極側は、筐体接地される。
電流生成部40は、試験対象の導通抵抗を計測するための電流を生成する定電流源CC1と、試験対象の絶縁抵抗を計測するための電流を生成する定電流源CC2と、定電流源CC1と定電流源CC2との一方を選択して接続端子31aに接続するための2つのスイッチSW1、SW2とを備える。なお、定電流源CC1と定電流源CC2とは、生成する電流値が異なる。
制御部50は、開閉制御信号を出力して、試験装置30内のスイッチSW1~SW5の開閉を制御するスイッチ制御回路60と、開閉装置20の開閉動作を検知する開閉検知回路70と、信号を反転させるインバータIV14とを備える。
開閉検知回路70は、接続端子31a、31b間の電圧に基づいて開閉装置20の開閉動作を検知する。スイッチ制御回路60は、開閉検知回路70の出力信号に基づいて試験装置30内のスイッチSW1~SW5の開閉を制御する。
電圧計90は、計装アンプ、ゲイン設定用の可変抵抗等を備える。電圧計90は、接続端子31a、31b間の電圧を計測し、計測した電圧を示すアナログ信号をマイコン100に出力する。
マイコン100は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、電圧計90が計測した電圧値から抵抗値を算出する算出部と、開閉検知回路70から入力される異常検知信号に基づいて異常の有無を判別する判別部と、算出部の算出結果と判別部の判別結果とを試験結果として表示する表示装置とを備える。異常検知信号については後述する。
マイコン100は、電圧計90から入力されたアナログ信号をA/Dコンバータによってデジタル信号に変換して取り込む。これにより、電圧計90が計測した電圧値をデジタル信号として取得する。マイコン100の算出部は、その電圧値を電流生成部40が流す定電流の電流値で除算して抵抗値を算出する。このように、電流生成部40と電圧計90とマイコン100とは、抵抗を計測する計測手段を構成する。マイコン100の表示装置は、算出部が算出した算出結果である抵抗値と、判別部が異常検知信号に基づいて判別した判別結果とを表示する。
スイッチ制御回路60は、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4のそれぞれの開閉制御端子と、インバータIV14の入力端とに接続される。インバータIV14の出力端は、スイッチSW5の開閉制御端子に接続される。開閉検知回路70は、スイッチ制御回路60と、スイッチSW3、SW4の他端と、マイコン100とに接続される。
定電流源CC1は、一端が電源回路に接続され、他端がスイッチSW1の一端に接続される。定電流源CC2は、一端が電源回路に接続され、他端がスイッチSW2の一端に接続される。定電流源CC1、CC2は、矢印で示すように、一端から他端に向かう向きに電流を流す。
スイッチSW1、SW2の他端は接続端子31aに接続される。スイッチSW3、SW4は、一端が接続端子31aに接続され、他端が開閉検知回路70に接続される。スイッチSW5は、一端が接続端子31aに接続され、他端が電圧計90の正極端子に接続される。
電圧計90の負極端子と接続端子31bとは接地されている。ここで、接地とは、大地との接地ではなく、いわゆる筐体接地を意味する。以下の説明においても同じである。
次に、図2を参照しながら、制御部50を構成する回路の一例を説明する。
図示するように、制御部50は、スイッチング周期を決定するタイマIC(Integrated Circuit)110と、リセット信号を出力するリセット回路111と、異常検知信号を出力するウォッチドッグタイマ112と、RS型のフリップフロップFF1、FF2とを備える。
タイマIC110は、例えば、555シリーズの汎用タイマICを備える。
電源電圧Vccを供給する電源回路は、プルアップ抵抗としての抵抗R1の一端と、抵抗R7の一端と、タイマIC110のVCC端子(8)と、電流制限抵抗としての抵抗R10の一端とに接続される。
抵抗R7の他端は、コンデンサC5の一端と、タイマIC110のTH端子(6)及びDSC端子(7)とに接続される。コンデンサC5の他端は、接地される。なお、TH端子(6)のTHは、THRESHOLDの略であり、DSC端子(7)のDSCはDISCHARGEの略である。
タイマIC110のGND端子(1)は、接地される。タイマIC110のTRG端子(2)はAND回路AND1の出力端に接続される。なお、TRG端子のTRGは、TRIGGERの略である。
タイマIC110は、TRG端子(2)の印加電圧がハイレベルの期間は、DSC端子(7)を接地状態に維持し、TRG端子(2)の印加電圧がローレベルに立ち下がると、DSC端子(7)をハイインピーダンス状態とする。このため、TRG端子(2)の印加電圧の立ち下がりタイミングからコンデンサC5が抵抗R7を介して充電される。タイマIC110は、コンデンサC5の充電電圧をTH端子(6)で監視し、充電電圧が、予め設定されている閾値電圧に達したことを検出すると、DSC端子(7)を接地して、コンデンサC5の電荷を放電させる。本実施形態では、閾値電圧を2/3Vccとする。
タイマIC110は、TRG端子(2)の印加電圧の立ち下がりから、TH端子(6)の印加電圧が閾値電圧に達するまでの間、ハイレベルの電圧をOUT端子(3)に出力する。OUT端子(3)は、電流制限抵抗としての抵抗R8の一端に接続される。タイマIC110のRST端子(4)は、リセット回路111の正極側に接続され、ローアクティブのリセット信号が入力される。なお、OUT端子(3)のOUTは、OUTPUTの略であり、RST端子(4)のRSTはRESETの略である。なお、NPN型バイポーラトランジスタQ1は、OUT端子(3)の出力電圧がハイレベルのときにオンし、ローレベルのときにオフする。
リセット回路111は、ローアクティブのリセット信号を出力する回路である。リセット信号は、タイマIC110のリセット状態とリセット状態を解除した状態とを切り替えるための信号である。リセット信号は、試験装置30において試験開始を指示する試験開始スイッチ(不図示)がユーザによって押下されるまでは、タイマIC110をリセット状態に保持するためにローレベルの信号であり、試験装置30の試験開始スイッチが押下されると、リセット状態を解除するハイレベルの信号となる。
電流制限抵抗としての抵抗R8の他端は、バイアス抵抗としての抵抗R9の一端と、NPN型のバイポーラトランジスタQ1のベースとに接続される。抵抗R9の他端は、バイポーラトランジスタQ1のエミッタに接続される。バイポーラトランジスタQ1のコレクタは、電流制限抵抗としての抵抗R10の他端に接続され、エミッタは接地されている。
ウォッチドッグタイマ112の入力端子WDIは、タイマIC110のTRG端子に接続され、そのローアクティブの#RST端子は、マイコン100に接続される。
ウォッチドッグタイマ112は、予め設定された時間内に、入力端子WDIにハイレベルの信号が供給されない場合に、即ち、タイマIC110のTRG端子(7)にハイレベルの信号が印加されない場合に、ローレベルの異常検知信号をマイコン100に供給する。ウォッチドッグタイマ112に予め設定される時間は、計測時間以上の時間である。
この異常検知信号は、試験対象である芯線11、12に異常があるか否かを示す信号である。予め設定された時間内にTRG端子(7)にパルス波形が印加された場合には、異常検知信号は、異常なしを示すハイレベルの信号である。一方、予め設定された時間内にTRG端子(7)にパルス波形が印加されない場合には、異常検知信号は、異常ありを示すローレベルの信号を含む。
なお、ここでいう芯線11、12に異常がある場合とは、開閉装置20の開閉状態に依らず、芯線11、12間に短絡箇所がある場合又は芯線11、12に断線箇所がある場合を意味する。
スイッチSW3の他端は、フリップフロップFF1のS端子と、抵抗R2の一端とに接続される。抵抗R2の他端は接地されている。インバータIV1の出力端は、フリップフロップFF1のR端子に接続される。インバータIV1の入力端は、プルアップ抵抗R1の他端と、スイッチSW4の他端とに接続される。
フリップフロップFF1のQ端子は、インバータIV2の入力端に接続される。インバータIV2の出力端は、抵抗R3の一端に接続される。抵抗R3の他端は、コンデンサC1の一端と、インバータIV3の入力端とに接続される。コンデンサC1の他端は接地される。これらのインバータIV2、IV3、抵抗R3、コンデンサC1は、入力信号を遅延して出力する遅延回路を構成する。
フリップフロップFF1のQC端子は、インバータIV4の入力端に接続される。インバータIV4の出力端は、抵抗R4の一端に接続される。抵抗R4の他端は、コンデンサC2の一端と、インバータIV5の入力端とに接続される。コンデンサC2の他端は、接地される。これらのインバータIV4、IV5、抵抗R4、コンデンサC2は、遅延回路を構成する。
インバータIV3の出力端は、インバータIV6、IV7の入力端に接続される。インバータIV7の出力端は、抵抗R5の一端に接続される。抵抗R5の他端は、コンデンサC3の一端と、インバータIV8の入力端とに接続される。コンデンサC3の他端は、接地される。これらのインバータIV6、IV7、抵抗R5、コンデンサC3は、入力信号を遅延して出力する遅延回路を構成する。
インバータIV6の出力端は、OR回路OR1の入力端の一方に接続され、インバータIV8の出力端は、OR回路OR1の入力端の他方に接続される。これらのインバータIV6、IV7、IV8、抵抗R5、コンデンサC3、OR回路OR1は、ローパルス信号を生成するエッジ生成回路を構成する。
インバータIV5の出力端は、インバータIV9、IV10の入力端に接続される。インバータIV10の出力端は、抵抗R6の一端に接続される。抵抗R6の他端は、コンデンサC4の一端と、インバータIV11の入力端とに接続される。コンデンサC4の他端は、接地される。これらのインバータIV10、IV11、抵抗R6、コンデンサC4は、入力信号を遅延して出力する遅延回路を構成する。
インバータIV9の出力端は、OR回路OR2の入力端の一方に接続され、インバータIV11の出力端は、OR回路OR1の入力端の他方に接続される。これらのインバータIV9、IV10、IV11、抵抗R6、コンデンサC4、OR回路OR2は、ローパルス信号を生成するエッジ生成回路を構成する。
4つの遅延回路の遅延時間は、開閉装置20のリレースイッチ21のオンオフ周期の1/20に設定されている。
OR回路OR1の出力端は、AND回路AND1の入力端の一方と、インバータIV13の入力端とに接続される。OR回路OR2の出力端は、AND回路AND1の入力端の他方と、インバータIV12の入力端とに接続される。
インバータIV12の出力端は、フリップフロップFF2のS端子に接続される。インバータIV13の出力端は、フリップフロップFF2のR端子に接続される。フリップフロップFF2のQ端子は、NOR回路NOR1の入力端の一方に接続される。フリップフロップFF2のQC端子は、NOR回路NOR2の入力端の一方に接続される。NOR回路NOR1の入力端の他方と、NOR回路NOR2の入力端の他方と、スイッチSW3、SW4の開閉制御端子と、インバータIV14の入力端とは、抵抗R10の他端に接続される。
インバータIV14の出力端は、スイッチSW5の開閉制御端子に接続される。NOR回路NOR1の出力端は、スイッチSW2の開閉制御端子に接続される。NOR回路NOR2の出力端は、スイッチSW1の開閉制御端子に接続される。
ここで、図1の開閉検知回路70は、図2では、抵抗R1と、抵抗R2と、インバータIV1と、フリップフロップFF1とによって構成される回路部分に相当する。図1のスイッチ制御回路60は、図2において、抵抗R1、R2、インバータIV1、IV14、フリップフロップFF1を除いた回路部分に相当する。
抵抗計測値の誤差を小さくするために、抵抗R1、R2は、数Ω程度の芯線11、12の導通抵抗より十分大きな値にする必要がある。また、スイッチSW3、SW4が開状態になった場合であっても、フリップフロップFF1が一つ前の状態を保持することを確保する必要がある。そこで、本実施形態では、抵抗R1=1kΩ、抵抗R2=100kΩとする。
以下、上記構成を有するケーブル特性試験システム1の動作を説明する。
なお、理解を容易にするため、試験対象となる芯線11、12に異常がなく、開閉装置20のリレースイッチ21が閉状態のときに、試験装置30の試験開始スイッチが押下された場合(動作パターン1)、リレースイッチ21が開状態のときに、試験開始スイッチが押下された場合(動作パターン2)、試験対象である芯線11、12の間に短絡箇所がある場合(動作パターン3)、試験対象である芯線11、12のいずれか一方又は両方に断線箇所がある場合(動作パターン4)の4つの場面に分けて説明する。
図3~図6は、ケーブル特性試験システム1の各部において生成される各種信号を示すタイミングチャートである。図3は動作パターン1の一例、図4は動作パターン2の一例、図5は動作パターン3の一例、図6は動作パターン4の一例を示している。
これらのタイミングチャートでは、縦軸が電圧を示しており、横軸が時間軸を示している。時間軸は基準軸をt0として、その基準軸に対する経過時間に応じて時刻t1~t40の目盛を示している。1つ分の目盛を時間Tとする。以下、これらのタイミングチャートに示される各種信号を説明する。
(A)開閉装置20の開閉状態は、開閉装置20のリレースイッチ21が開状態であるか閉状態であるかを示している。開閉装置20のスイッチ駆動部22がリレースイッチ21を予め定められた開閉周期でオンオフ制御することにより、開閉装置20の開閉状態は開状態と閉状態とを交互に繰り返す。この例では、開閉装置20の開閉周期が20Tに設定された場合を示している。
(B)リセット信号は、先に述べたように、リセット回路111から出力される信号である。(C)接続端子31aの電位は、接続端子31bの電位を基準とした接続端子31aの電位である。接続端子31bは接地されるため、接続端子31bの電位はGNDレベルである。接続端子31aの電位は、ケーブル10の芯線11、12の近端11b、12b間の電圧すなわち近端電圧と考えてもよい。
ケーブル10に異常がない場合、芯線11、12の近端11b、12b間の抵抗は、開閉装置20のリレースイッチ21が閉状態での導通抵抗であれば数Ω程度であり、リレースイッチ21が開状態での絶縁抵抗であれば数MΩ程度である。そのため、芯線11、12の近端11b、12b間に電流生成部40によって生成された定電流が流れた場合、リレースイッチ21が閉状態での接続端子31aの電位はおよそゼロすなわちGNDレベルとなるのに対し、リレースイッチ21が開状態での接続端子31aの電位はおよそ電源電圧Vccとなる。
(D)OR1出力信号は、図2のOR回路OR1の出力端の電位である。(E)OR2出力信号は、図2のOR回路OR2の出力端の電位である。(F)TRG信号は、図2のタイマIC110のTRG端子に入力される信号である。(G)TH端子電位は、図2のタイマIC110のTH端子の電位である。
(H)開検知信号は、絶縁抵抗を計測する場合にスイッチSW2を閉状態にする開閉制御信号である。開検知信号は、開閉装置20の開状態を検知してから予め定められた時間内においてハイレベルであり、その時間内だけスイッチSW2を閉状態にする。一方、開検知信号は、それ以外の時間ではローレベルであり、スイッチSW2を開状態にする。
(I)閉検知信号は、導通抵抗を計測する場合にスイッチSW1を閉状態にする開閉制御信号である。閉検知信号は、開閉装置20の閉状態を検知してから予め定められた時間内においてハイレベルであり、その時間内だけスイッチSW1を閉状態にする。一方、開検知信号は、それ以外の時間ではローレベルであり、スイッチSW1を開状態にする。
(J)入力制御信号は、スイッチ制御回路60からスイッチSW3、SW4に入力される開閉制御信号である。また、入力制御信号は、インバータIV14によって反転された状態でスイッチSW5に入力される開閉制御信号でもある。換言すると、入力制御信号は、スイッチSW3、SW4とスイッチSW5とのいずれか一方を開状態にして他方を閉状態にする信号である。
これは、近端電圧を開閉検知回路70に入力するか電圧計90に入力するかを切り替えることを意味する。入力制御信号は、試験装置30を開閉検知状態にする場合にハイレベルとなって、スイッチSW3、SW4を閉状態、スイッチSW5を開状態にする。入力制御信号は、試験装置30を計測状態にする場合にローレベルとなって、スイッチSW3、SW4を開状態、スイッチSW5を閉状態にする。なお、開閉検知状態と計測状態とについては後述する。
(K)異常検知信号は、先に述べたように、ウォッチドッグタイマ112からマイコン100に出力される信号である。
ここで、図3のタイミングチャートを参照しながら、動作パターン1におけるケーブル特性試験システム1の動作を説明する。
なお、初期状態では、タイマIC110の出力はローレベルであり、NPNトランジスタQ1はオフしており、入力制御信号は図3(J)に示すようにハイレベルである。このため、図3(H)、(I)に示すように、NOR回路NOR1から出力される開検知信号及びNOR回路NOR2から出力される閉検知信号はローレベルである。
図3(A)では時刻t0から時刻t10までの期間、開閉装置20のリレースイッチ21は閉状態である。この時間のうち、時刻t4のタイミングで試験装置30の試験開始スイッチが押下されたとする。試験開始スイッチの押下に応答して、リセット回路111は、図3(B)に示すように、リセット信号を、ローレベルからハイレベルとし、タイマIC110のリセット状態を解除する。また、試験開始スイッチの押下に応答して、ウォッチドッグタイマ112は、監視動作を開始する。
タイマIC110のリセット状態が解除されると、試験装置30は、開閉検知状態となる。開閉検知状態とは、開閉検知回路70が開閉装置20の開閉動作すなわち開閉状態の切り替わりを検知する状態である。
図3(H)、(I)に示すように、リセット状態の期間と開閉検知状態の期間においては、開検知信号及び閉検知信号は、共にローレベルである。そのため、図1においてスイッチSW1、SW2は時刻t0から時刻t11までの時間において開状態である。
一方、図3(J)に示すように、入力制御信号は時刻t0から時刻t11までの時間においてハイレベルであるため、図1においてスイッチSW3、SW4は閉状態である。そのため、図1、図2において、接続端子31aには、スイッチSW4と抵抗R1とを介して電源電圧Vccが印加された状態であり、接続端子31bは接地された状態である。
開閉装置20が閉状態である時刻t0から時刻t10までの時間において、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12の導通抵抗の並列回路の合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの分圧に応じた値になる。抵抗R1の抵抗値が1kΩであるのに対し、抵抗R2及び芯線11、12の導通抵抗の並列回路の合成抵抗は数Ωである。そのため、接続端子31aの電位は、図3(C)に示すようにほぼゼロのローレベルである。なお、芯線11、12の導通抵抗とは、芯線11と芯線12の直列抵抗を意味する。
ここで、図3(A)に示すように、時刻t10のタイミングで開閉装置20が開状態に切り替わる。そうすると、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12間の絶縁抵抗の並列回路との合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの印加電圧の分圧に応じた値になる。抵抗R1の抵抗値が1kΩであるのに対し、抵抗R2及び芯線11、12間の絶縁抵抗の並列回路の合成抵抗は数百kΩ~数MΩである。そのため、接続端子31aの電位は、図3(C)に示すように電源電圧Vccよりわずかに小さいハイレベルとなる。
このハイレベルの接続端子31aの電位はフリップフロップFF1のS端子に入力される。また、このハイレベルの接続端子31aの電位はインバータIV1によって反転されて、フリップフロップFF1のR端子にも入力される。ハイレベルの信号を1、ローレベルの信号を0として説明すると、この場合、フリップフロップFF1には、S=1、R=0が入力されるため、フリップフロップFF1はQ=0→1(立ち上がり信号)、QC=1→0(立ち下がり信号)を出力する。
フリップフロップFF1のQ出力は、インバータIV2、IV3、抵抗R3、コンデンサC1によって時間Tだけ遅延される。この遅延されたQ出力は、インバータIV6、IV7に入力される。インバータIV6によって反転された出力と、インバータIV7、IV8、抵抗R5、コンデンサC3によって遅延された出力とは、OR回路OR1によって論理和となって出力される。その結果、図3(D)に示すようにOR1出力信号は、開閉制御信号が切り替わる時刻t10より時間Tだけ遅延したタイミングである時刻t11から時刻t12までの時間までローパルス波形となる。
OR1出力信号がローパルス波形である場合、AND回路AND1を介して出力されるTRG信号は、図3(F)に示すようにローパルス波形となる。上述したように、タイマIC110はTRG信号のローパルス波形の立ち下がりタイミングからコンデンサC5を充電する。これにより、TH端子電位は、図3(G)に示すように、抵抗R7とコンデンサC5の時定数で決まるカーブで閾値電圧2/3Vccまで上昇する。
TH端子電位が閾値電圧2/3Vccに達すると、タイマIC110は直ちにコンデンサC5に貯まった電荷を放電させる。本実施形態では、充電時間がおよそ5Tであり、放電時間をおよそゼロとしている。なお、充電時間と放電時間は変更してもよいが、充電開始から放電終了までの時間が抵抗計測に必要な計測時間より大きく、開閉状態の次の切り替わりが発生する時刻までに終了可能な時間に設定しなければならない。
この充電開始から放電終了までの時間(t11~t16)において、開検知信号は、図3(H)に示すようにハイレベルとなる。この開検知信号がハイレベルとなる時間において、図3(A)に示すように開閉装置20は開状態であり、スイッチSW2が閉状態となる。そのため、定電流源CC2から絶縁抵抗計測電流が流れて試験装置30は芯線11、12間の絶縁抵抗を計測する計測状態となる。図3(C)の接続端子31aの電位の時刻t11から時刻t16までの「アナログ電圧」とは、芯線11、12間の絶縁抵抗に応じた電圧値を意味する。
ここで、図3(A)に示すように、時刻t20のタイミングで開閉装置20が閉状態に切り替わる。そうすると、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12間の絶縁抵抗の並列回路との合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの分圧に応じた値になるため、図3(C)に示すようにGNDよりわずかに大きいローレベルとなる。
このローレベルの接続端子31aの電位はフリップフロップFF1のS端子に入力される。また、このローレベルの接続端子31aの電位はインバータIV1によって反転されて、フリップフロップFF1のR端子にも入力される。この場合、フリップフロップFF1には、S=0、R=1が入力されるため、フリップフロップFF1はQ=1→0(立ち下がり信号)、QC=0→1(立ち上がり信号)を出力する。
フリップフロップFF1のQC出力は、インバータIV4、IV5、抵抗R4、コンデンサC2によって時間Tだけ遅延される。この遅延されたQC出力は、インバータIV9、IV10に入力される。インバータIV9によって反転された出力と、インバータIV10、IV11、抵抗R6、コンデンサC4によって遅延された出力とは、OR回路OR2によって論理和となって出力される。その結果、図3(E)に示すようにOR2出力信号は、次に開閉装置20の開閉状態が切り替わる時刻t20よりT時間遅延したタイミングである時刻t21から時刻t22までの時間までローパルス波形となる。
OR2出力信号がローパルス波形である場合、AND回路AND1を介して出力されるTRG信号は、図3(F)に示すように、ローパルス波形となる。上述したように、タイマIC110はTRG信号のローパルス波形の立ち下がりタイミングからコンデンサC5を充電する。これにより、TH端子電位は、図3(G)に示すように、抵抗R7とコンデンサC5の時定数で決まるカーブで閾値電圧2/3Vccまで上昇する。TH端子電位が閾値電圧2/3Vccに達すると、タイマIC110は直ちにコンデンサC5に貯まった電荷を放電させる。
この充電開始から放電終了までの時間(t21~t26)において、閉検知信号は、図3(I)に示すようにハイレベルとなり、この閉検知信号がハイレベルとなる時間において、図3(A)に示すように開閉装置20は閉状態であり、スイッチSW1が閉状態となる。そのため、定電流源CC1から導通抵抗計測電流が流れて試験装置30は芯線11、12の導通抵抗を計測する計測状態となる。図3(C)の接続端子31aの電位の時刻t21から時刻t26までの「アナログ電圧」とは、芯線11と芯線12との導通抵抗に応じた電圧値を意味する。
ここで、図3(J)に示すように、入力制御信号は、試験装置30が計測状態となる時間(時刻t11~t16、t21~t26、t31~t36)において、ローレベルとなっている。入力制御信号がローレベルとなっているのは、試験装置30が計測状態となる時間においてタイマIC110のOUT端子からローレベルの信号が出力され、バイポーラトランジスタQ1がオフとなっているからである。入力制御信号がローレベルである時間では、スイッチSW3、SW4は開状態、スイッチSW5は閉状態である。一方、それ以外の時間では、入力制御信号がハイレベルであるため、スイッチSW3、SW4は閉状態、スイッチSW5は開状態である。
そのため、電流生成部40の定電流源CC1又は定電流源CC2からの電流は、試験装置30が計測状態となる時間では、開閉検知回路70に流れず、試験装置30が開閉検知状態となる時間では、開閉検知回路70に流れる。したがって、開閉検知回路70に流れる電流が絶縁抵抗又は導通抵抗の計測値に影響を与えることはない。
ここで、図3(K)に示すように、異常検知信号は、常にハイレベルとなっている。これは、図3(F)に示すようにTRG信号にパルス波形が繰り返し発生しているからである。この場合、マイコン100はケーブル10の芯線11、12に異常なしと判別する。
以上、動作パターン1におけるケーブル特性試験システム1の動作を説明した。なお、時刻t30以降の動作は、時刻t10から時刻t30までの動作の繰り返しである。
ここで、図4のタイミングチャートを参照しながら、動作パターン2におけるケーブル特性試験システム1の動作を説明する。動作パターン2におけるケーブル特性試験システム1の動作は、絶縁抵抗の計測時間と導通抵抗の計測時間の順序が代わるだけであり、基本的には、動作パターン1と同じである。
まず、図4(A)に示すように、開閉制御信号は時刻t0から時刻t10までの時間においてローレベルの状態である。すなわち、この時間において開閉装置20のリレースイッチ21は開状態である。この時間のうち、時刻t4のタイミングで試験装置30の試験開始スイッチが押下されたとする。そうすると、図4(B)に示すように、リセット回路111のリセット信号は、ローレベルからハイレベルに変化して、タイマIC110のリセット状態を解除する。
タイマIC110のリセット状態が解除されると、試験装置30は、開閉検知状態となる。図4(H)、(I)に示すように、リセット状態の時間と開閉検知状態の時間において、開検知信号及び閉検知信号は、ローレベルである。そのため、図1においてスイッチSW1、SW2は時刻t0から時刻t11までの時間において開状態である。
一方、図4(J)に示すように、入力制御信号は時刻t0から時刻t11までの時間においてハイレベルであるため、図1においてスイッチSW3、SW4は閉状態である。そのため、図1、図2において、接続端子31aには、スイッチSW4と抵抗R1とを介して電源電圧Vccが印加された状態であり、接続端子31bは接地された状態である。
開閉装置20が開状態である時刻t0から時刻t10までの時間において、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12間の絶縁抵抗の並列回路の合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの分圧である。そのため、接続端子31aの電位は、図4(C)に示すようにVccよりわずかに小さいハイレベルである。
ここで、図4(A)に示すように、時刻t10のタイミングで開閉制御信号がローレベルからハイレベルに切り替わって、開閉装置20が閉状態になったとする。そうすると、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12の導通抵抗の並列回路との合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの分圧であるため、図4(C)に示すようにほぼゼロに近いローレベルとなる。
このローレベルの接続端子31aの電位は、フリップフロップFF1のS端子に入力される。また、このローレベルの接続端子31aの電位は、インバータIV1によって反転されて、フリップフロップFF1のR端子にも入力される。この場合、フリップフロップFF1には、S=0、R=1が入力されるため、フリップフロップFF1はQ=1→0(立ち下がり信号)、QC=0→1(立ち上がり信号)を出力する。
フリップフロップFF1のQC出力は、インバータIV4、IV5、抵抗R4、コンデンサC2によって遅延される。この遅延されたQC出力は、インバータIV9、IV10に入力される。インバータIV9によって反転された出力と、インバータIV10、IV11、抵抗R6、コンデンサC4によって遅延された出力とは、OR回路OR2によって論理和となって出力される。その結果、図4(E)に示すようにOR2出力信号は、開閉制御信号が切り替わる時刻t10より時間Tだけ遅延したタイミングである時刻t11から時刻t12までの時間までローパルス波形となる。
OR2出力信号がローパルス波形である場合、図4(F)に示すように、TRG信号もローパルス波形となる。このTRG信号のローパルス波形の立ち下がりタイミングからコンデンサC5の充電が始まり、TH端子電位は、図4(G)に示すように閾値電圧2/3Vccまで上昇する。TH端子電位が閾値電圧2/3Vccに達すると、タイマIC110は直ちにコンデンサC5に貯まった電荷を放電させる。
この充電開始から放電終了までの時間(t11~t16)において、閉検知信号は、図4(I)に示すようにハイレベルとなり、スイッチSW1が閉状態となる。そのため、定電流源CC1から導通抵抗計測電流が流れて、試験装置30は芯線11、12の導通抵抗を計測する計測状態となる。図4(C)の接続端子31aの電位の時刻t11から時刻t16までの「アナログ電圧」とは、芯線11、12の導通抵抗に応じた電圧値を意味する。
ここで、図4(A)に示すように、時刻t20のタイミングで開閉制御信号がローレベルからハイレベルに切り替わって、開閉装置20が開状態になったとする。そうすると、接続端子31aの電位は、抵抗R1と、抵抗R2及び芯線11、12間の絶縁抵抗の並列回路との合成抵抗とによって決まる電源電圧Vccの分圧であるため、図4(C)に示すようにハイレベルとなる。
このハイレベルの接続端子31aの電位は、フリップフロップFF1のS端子に入力される。また、このハイレベルの接続端子31aの電位は、インバータIV1によって反転されて、フリップフロップFF1のR端子にも入力される。この場合、フリップフロップFF1には、S=1、R=0が入力されるため、フリップフロップFF1はQ=0→1(立ち上がり信号)、QC=1→0(立ち下がり信号)を出力する。
フリップフロップFF1のQC出力は、インバータIV4、IV5、抵抗R4、コンデンサC2によって遅延される。この遅延されたQC出力は、インバータIV9、IV10に入力される。インバータIV9によって反転された出力と、インバータIV10、IV11、抵抗R6、コンデンサC4によって遅延された出力とは、OR回路OR2によって論理和となって出力される。その結果、図4(D)に示すようにOR1出力信号は、次に開閉制御信号が切り替わる時刻t20よりT時間遅延したタイミングである時刻t21から時刻t22までの時間までローパルス波形となる。
OR1出力信号がローパルス波形である場合、図4(F)に示すように、TRG信号もローパルス波形となる。上述したように、タイマIC110はTRG信号のローパルス波形の立ち下がりタイミングからコンデンサC5を充電する。これにより、TH端子電位は、図4(G)に示すように、抵抗R7とコンデンサC5の時定数で決まるカーブで閾値電圧2/3Vccまで上昇する。TH端子電位が閾値電圧2/3Vccに達すると、タイマIC110は直ちにコンデンサC5に貯まった電荷を放電させる。
この充電開始から放電終了までの時間(t21~t26)において、開検知信号は、図4(H)に示すようにハイレベルとなり、この開検知信号がハイレベルとなる時間において、図4(A)に示すように開閉装置20は開状態であり、スイッチSW2が閉状態となる。そのため、定電流源CC1から絶縁抵抗計測電流が流れて試験装置30は芯線11、12間の絶縁抵抗を計測する計測状態となる。図4(C)の近端電圧の時刻t21から時刻t26までの「アナログ電圧」とは、芯線11と芯線12との絶縁抵抗に応じた電圧値を意味する。
ここで、図4(J)に示すように、入力制御信号は、動作パターン1の場合と同様になる。そのため、開閉検知回路70に流れる電流が絶縁抵抗又は導通抵抗の計測値に影響を与えることはない。また、図4(K)に示すように、異常検知信号は、動作パターン1の場合と同様に常にハイレベルとなっている。そのため、マイコン100はケーブル10の芯線11、12に異常なしと判別する。なお、時刻t30以降の動作は、時刻t10から時刻t30までの動作の繰り返しである。
以上、動作パターン2におけるケーブル特性試験システム1の動作を説明した。以下、動作パターン3、4におけるケーブル特性試験システム1の動作を説明する。
まず、図5を参照しながら、動作パターン3の場合を説明する。時刻t4のタイミングで試験装置30の電源スイッチが押下されたとする。そうすると、図5(B)に示すように、リセット回路111のリセット信号は、ローレベルからハイレベルに変化して、タイマIC110のリセット状態を解除する。リセット状態が解除されると、試験装置30は開閉検知状態となる。
しかし、動作パターン3では、開閉装置20の開閉状態によらず、芯線11、12間が常に短絡している状態である。そのため、図5(C)に示すように、接続端子31aの電位は常にゼロに近いローレベルとなる。この場合、図5(F)に示すように、TRG信号にパルス波形が発生しない。
この状態は、リセット信号によるリセット状態が時刻t4のタイミングで解除された場合に、ウォッチドッグタイマ112の予め定められた時間(時刻t4~t22)を過ぎても維持される。その結果、図5(K)に示すように、異常検知信号は、パルス波形を含む波形となる。この場合、マイコン100は、入力された異常検知信号に基づいて、ケーブル10の芯線11、12に異常ありと判別する。
次に、図6を参照しながら、動作パターン4の場合を説明する。時刻t4のタイミングで試験装置30の試験開始スイッチが押下されたとする。そうすると、図6(B)に示すように、リセット信号は、ローレベルからハイレベルに変化して、タイマIC110のリセット状態を解除する。リセット状態が解除されると、試験装置30は開閉検知状態となる。
しかし、動作パターン4では、開閉装置20の開閉状態によらず、芯線11、12間が常に絶縁状態である。そのため、図6(C)に示すように、接続端子31aの電位は常に電源電圧Vccに近いハイレベルとなる。この場合、図6(F)に示すように、TRG信号にパルス波形が発生しない。
この状態は、リセット信号が時刻t4のタイミングで解除された場合に、ウォッチドッグタイマ112の予め定められた時間(時刻t4~t22)を過ぎても維持される。その結果、図6(K)に示すように、異常検知信号は、パルス波形を含む波形となる。この場合、マイコン100は、入力された異常検知信号に基づいて、ケーブル10の芯線11、12に異常ありと判別する。
ここまでで、ケーブル特性試験システム1の動作を説明した。次に、このような動作を行う開閉装置20と試験装置30とを使用して、ケーブル10の特性を試験する方法を説明する。
まず、計測実施者は、ケーブル10内の芯線11、12の遠端11a、12aを、開閉装置20の接続用端子21a、21bにそれぞれ接続し、開閉装置20の電源スイッチをオンにする。これにより、開閉装置20のリレースイッチ21は、周期的にオンとオフを繰り返す状態になる。
次に計測実施者は、ケーブル10の近端側に移動し、ケーブル10内の芯線11、12の近端11b、12bを計測装置30に接続する。そして、計測実施者が試験装置30の試験開始スイッチをオンにすると、図7に示す試験装置30の制御処理が開始する。
まず、試験装置30は、リセット状態を解除する(ステップS101)。これにより、試験装置30は開閉検知状態となる(ステップS102)。この開閉検知状態において、予め定められた時間内に試験装置30のTRG端子電位にパルス波形が発生した場合(ステップS103;Yes)、試験装置30は、第1の計測状態となる(ステップS104)。第1の計測状態とは、図3に示す動作パターン1の場合には、絶縁抵抗の計測状態であり、図4に示す動作パターン2の場合には、導通抵抗の計測状態である。
第1の計測状態は、コンデンサC5の充電及び放電が完了するまで継続する。コンデンサC5の放電が終了すると、試験装置30は再び開閉検知状態となる(ステップS105)。この状態において、試験装置30のTRG端子電位にパルス波形が発生したことを契機に試験装置30は、第2の計測状態となる(ステップS106)。第2の計測状態とは、図3に示す動作パターン1の場合には、導通抵抗の計測状態であり、図4に示す動作パターン2の場合には、絶縁抵抗の計測状態である。なお、第2の計測状態は、第1の計測状態とは異なる計測状態ともいえる。例えば、第1の計測状態が導通抵抗の計測状態であれば、第2の計測状態は絶縁抵抗の計測状態である。
第2の計測状態は、コンデンサC5の充電及び放電が完了するまで継続する。コンデンサC5の放電が終了すると、試験装置30は再び開閉検知状態となる(ステップS107)。以後は、ステップS104~S107の繰り返しとなる。
一方、ステップS102の開閉検知状態において、予め定められた時間内に試験装置30のTRG端子電位にパルス波形が発生しない場合(ステップS103;No)、試験装置30の開閉検知回路70は、試験装置30のマイコン100に、パルス波形を含む異常検知信号を出力する(ステップS108)。試験装置30のマイコン100は、その異常検知信号に基づいて、異常があることを表示装置に表示させる(ステップS109)。この場合、試験装置30の制御処理が終了となる。
以上説明したように、試験装置30の開閉検知回路70は、ケーブル10の芯線11、12の遠端11a、12a間で開閉を行う開閉装置20の開閉動作を、接続端子31aの電位に基づいて検知する。接続端子31aの電位は、ケーブル10の芯線11、12の近端11a、12a間の導通状態を示す近端電圧である。すなわち、試験装置30はケーブル10の芯線11、12の近端11a、12a間の導通状態に基づいて開閉装置20の開閉動作を検知している。そのため、試験装置30は、開閉装置20と試験装置30との間で通信を行う場合に比べて、より直接的に開閉装置20の開閉動作を検知することができる。
また、試験装置30のスイッチ制御回路60は、開閉検知回路70の開閉検知状態と、芯線11、12の遠端11a、12aの導通抵抗の計測状態と、芯線11、12の遠端11a、12a間の絶縁抵抗の計測状態とのいずれか1つを選択するようにスイッチ制御を行う。そのため、開閉装置20が開状態である場合の計測データと、開閉装置20が閉状態である場合の計測データとが混在することによる計測不良を防止しつつ、ケーブルの特性を試験することが可能となる。
(変形例)
以下、図8~図12を参照しながら、変形例に係る制御部80について説明する。この制御部80は、試験装置30において制御部50に代えて使用することができる。なお、制御部80において、上記実施形態の制御部50と共通する構成要素については、上記実施形態と同一の符号を付す。また、上記実施形態及び以下の変形例は、特に明示する場合を除き、任意に組み合わせ可能なものとする。
図8に示すように、制御部80では、図2に示す制御部50の4つの遅延回路部分が、シフトレジスタ113、114、115、116に変更されている。制御部80では、制御部50のタイマIC110と、コンデンサC5と、抵抗R7と、抵抗R8とによって構成されるタイマ回路部分が、タイマ回路120に変更されている。制御部80では、制御部50のバイポーラトランジスタQ1と、抵抗R9とによって構成されるスイッチング回路部分が、Pチャネル型のMOS-FETであるM1、M2に変更されている。
制御部80は、制御部50の内部でクロック信号を生成するタイプのウォッチドッグタイマ112の代わりに、クロック信号が外部から入力されるタイプのウォッチドッグタイマ117を備えている。さらに、制御部80は、シフトレジスタ113、114、115、116とタイマ回路120とウォッチドッグタイマ117と、にクロック信号を供給するための発振回路118及び分周回路119を備える。
制御部80は、アナログ回路を含む制御部50とは異なり、アナログ回路を含まないデジタル回路によって構成されている。制御部50と制御部80とを比較すると、制御部50は、特殊な部品を含まず、汎用されている素子、ディスクリート部品のみによって構成できる点で有利である。制御部80は、アナログ回路を含まないために基板面積を縮小できる点で有利である。
制御部80の動作は、基本的には制御部50と同じである。そのため、制御部80の構成のうち、制御部50と相違する点だけ説明する。
まず、シフトレジスタ113の構成例を説明する。なお、シフトレジスタ114、115、116は、シフトレジスタ113と同じ構成を有する。
シフトレジスタ113は、図9に示すようにD型のフリップフロップFF3、FF4、FF5を備える。シフトレジスタ113のCLK入力端子にはクリック信号CLKが入力される。このクリック信号CLKは、フリップフロップFF3、FF4、FF5のそれぞれのT端子に入力される。シフトレジスタ113は、入力端子から入力された入力信号(IN)を遅延して出力端子から出力信号(OUT)として出力する。
図10は、シフトレジスタ113の動作の一例を示すタイミングチャートである。入力信号が、図10(A)に示すように、ハイパルス信号であるとする。このハイパルス信号は、図10(C)に示す出力信号では、入力信号よりも時間Tdだけ遅延している。フリップフロップFF3は、入力信号に変化があった場合、次のクリック信号CLKの立ち上がりタイミングでその変化を出力信号に反映させる。フリップフロップFF4、FF5も同様に動作する。そのため、この例における遅延時間Tdは、入力信号のハイパルス信号の立ち上がりタイミングから、図10(B)に示すクロック信号のクロックパルスの3つ目の立ち上がりタイミングまでの時間に相当する。
なお、図9に示すシフトレジスタ113は、3つのフリップフロップFF3、FF4、FF5を備えている。しかし、シフトレジスタ113が備えるフリップフロップは、所望の遅延時間とクロック周期とに応じた個数であればよい。
次に、タイマ回路120の構成例を説明する。図11に示すように、タイマ回路120は、論理回路から構成されるカウンタ回路130と、RS型のフリップフロップFF6とを備える。
タイマ回路120のCLK入力端子にはクリック信号CLKが入力される。タイマ回路120のTRG端子にはTRG信号が入力される。タイマ回路120のRST端子にはリセット信号が入力される。フリップフロップFF6のQ端子からの出力信号は、タイマ回路120の出力端子から出力信号(OUT)として出力される。
図12は、タイマ回路120の動作の一例を示すタイミングチャートである。図12(A)に示すように、リセット信号がローレベルからハイレベルになると、図12(C)に示すように、予め定められた時間経過後にTRG信号がローパルス信号となる。このローパルス信号の立ち下がりタイミングを契機にカウンタ回路130は、クロック信号CLKのクロックパルスのカウントを開始する。カウント回路130は、予め定められた数だけクロックパルスをカウントするとカウントを終了する。カウント回路130がカウントしている時間において、タイマ回路120は、図12(D)に示すようにハイパルス信号を出力する。
以上、変形例に係る制御部80について説明した。なお、本発明は、上記実施形態、上記変形例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。以下、さらなる変形例について説明する。
上記実施形態では、ケーブル特性試験システム1は、2本の芯線11、12を有するケーブル10のケーブル特性を測定する例について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、3本以上の芯線を有するケーブルのケーブル特性を試験できるように拡張することもできる。この場合、開閉装置20は、リレースイッチ21に代えて、3つ以上のスイッチを備える。これらの3つ以上のスイッチは、接続されたすべての芯線ペア(配線ペア)が、それぞれ異なるタイミングで短絡又は開放させる。
上記実施形態において、リレースイッチ21、スイッチSW1~SW4は、半導体スイッチに変更してもよい。
上記実施形態において、マイコン100は、表示装置を備え、異常検知信号に基づく異常の有無の判別結果を表示装置に表示させている。しかし、本発明はこれに限られない。例えば、マイコン100は音声出力装置を備え、音声出力装置に異常の有無の判別結果を出力させてもよい。また、電圧計90は異常の有無を外部装置に出力してもよい。
上記実施の形態においては、定電流源CC1、CC2を配置したが、これらは共通でもよい。また、芯線11、12の抵抗あるいは導通状態を検出する計測手段の構成は、上記構成に限定されず、その物理的特性を計測できるならば、任意である。例えば、芯線11、12の近端間に定電圧を印加し、芯線11、12に流れる電流を測定することにより、抵抗あるいは導通状態を検出してもよい。また、電源電圧Vccを例示したが、これらは電源電圧から生成された任意の基準電圧に置換してもよい。
また、上記実施形態では、試験装置30は、ケーブル10の異常の有無を検知する構成としているが、異常の内容を検知する構成であってもよい。例えば、異常検知信号にパルス波形が含まれ、かつ接続端子31aの電位がハイレベルの状態であれば、試験装置30は、異常が断線であることを示す判別結果を出力してもよい。異常検知信号にパルス波形が含まれ、かつ接続端子31aの電位がローレベルの状態であれば、試験装置30は、異常が短絡であることを示す判別結果を出力してもよい。
ただし、通常、ユーザは、ケーブル10に異常の有無だけわかれば、ケーブル10を交換すべきかどうかを判断できる。すなわち、異常が短絡であるか断線であるかに関わらずケーブル10に異常があれば、ユーザはケーブル10を交換する。そのため、異常の内容まで検知して出力する構成は必須ではない。また、試験装置30にそのような構成がなくても、接続端子31aの電位、即ちケーブル10の芯線11、12の近端11a、12a間の近端電圧を他の装置によって計測すれば、ユーザは異常の内容を分析することができる。