JP7002205B2 - シミュレータ用擬似体液及び医療用シミュレータ - Google Patents
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Description
[1] 生体モデルに接触される医療用液体組成物であって、水と、水溶性多価アルコールと、脂肪酸及び脂肪酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、を含有する、医療用液体組成物。
[2] 前記生体モデルが血管モデルである、上記[1]の医療用液体組成物。
[3] 前記生体モデルが、ポリウレタン製又はシリコーンゴム製である、上記[1]又は[2]の医療用液体組成物。
[4] 生体モデルを備え、上記[1]~[3]のいずれかの医療用液体組成物が前記生体モデルに接触されている、医療用シミュレータ。
[5] 前記生体モデルとして血管モデルを備える、上記[4]の医療用シミュレータ。
本開示の医療用液体組成物は、水と、水溶性多価アルコールと、脂肪酸及び脂肪酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「化合物A」ともいう。)と、を含有する。医療用液体組成物の調製に使用する水は、特に限定されず、蒸留水、精製水、滅菌精製水、注射用水等が挙げられる。
本開示の医療用シミュレータは、生体モデルを用いて実際の生体システムの挙動を再現した模擬装置である。医療用シミュレータは、生体モデルと医療用液体組成物とを有している。医療用シミュレータは、主に医療現場や教育現場等において、医療手技の練習用、訓練用あるいは医療用デバイスの操作確認等のために使用される。医療用シミュレータは、生体モデルの内表面及び外表面の少なくともいずれかに本開示の医療用液体組成物が接触されている。これにより、生体モデル表面に、人体に近いリアルな感触が作り出されている。医療用シミュレータは、好ましくは、生体モデルとして血管モデルを備える血液循環型シミュレータである。
1.擬似血液の調製
グリセリンを蒸留水に溶解し、擬似血液を調製した。なお、ここでは、グリセリン濃度が異なる8種類のサンプル(0.2質量%、1質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%及び45質量%)を調製した。擬似血液の配合処方を下記表1に示した。
縦1cm×横1cm、厚さ5mmのポリウレタン製の試験片を用意し、この試験片と、上記1.で調製した擬似血液10mlとを15mlの遠沈管へ入れ、試験片を擬似血液中に浸漬した。擬似血液としては、上記1.で調製した8種類のサンプル(0.2質量%、1質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%及び45質量%)を使用した。浸漬してから5分後、30分後、12時間後及び24時間後に試験片をそれぞれ引き上げ、試験片の表面を指で左右に軽く擦ったときの滑りやすさにより基材の表面潤滑性を確認した。基材の表面潤滑性が高いほど、試験片と同じ材料により形成された擬似血管を用いてカテーテルの挿入試験を行ったときに擬似血管とカテーテルとの間の動摩擦係数が小さく、カテーテルの挿入性に優れているといえる。評価は4段階評価とし、指を非常に滑らかに動かすことができた場合を表面潤滑性「優良(◎)」、指を適度に滑らかに動かすことができた場合を「良好(○)」、指を動かす際に力がやや必要であった場合を「可(△)」、指を動かす際に力がかなり必要であった場合を「不良(×)」とした。評価結果は下記表2に示した。なお、触感による表面潤滑性の評価結果は、浸漬時間に関わらず同じであったことが確認された。
上記2.において、擬似血液中に試験片を浸漬してから24時間経過後に試験片の厚みを計測し、浸漬前後の厚みの増加量ΔDに基づき、擬似血液が試験片を膨潤させにくいかどうか(これを「膨潤抑制性」という。)を評価した。試験片が膨潤しにくいほど、その試験片と同じ材料により形成された擬似血管内に擬似血液を循環させたときに擬似血管が膨潤しにくく、手技中の擬似血管の物性変化や表面形状の変化を小さくでき優れているといえる。評価は、ΔDが0.3mm未満であった場合に膨潤抑制性「優良(◎)」、ΔDが0.3mm以上0.8未満であった場合に「良好(○)」、ΔDが0.8mm以上1.2mm未満であった場合に「可(△)」、ΔDが1.2mm以上であった場合に「不良(×)」とした。評価結果は下記表2に示した。
上記1.で調製された8種類のグリセリン水溶液、ポリウレタン試験片、ガイドワイヤ(グッドマン社製、0.035 inch)、及びガイディングカテーテル(グッドマン社製、7 Fr)を用いて使用感を評価した。具体的には、8種類のグリセリン水溶液に、ポリウレタン試験片、ガイドワイヤ及びガイディングカテーテルをそれぞれ浸漬させた。30秒浸漬させた後、ポリウレタン試験片、ガイドワイヤ及びガイディングカテーテルを引き上げた。引き上げたポリウレタン試験片については、ポリウレタン試験片を空気中で30秒ほど手で擦った後、水溶液の乾燥によって生じる試験片のべたつき感を確認した。また、引き上げたガイディングカテーテル及びガイドワイヤを用い、ガイディングカテーテル内へのガイドワイヤの挿入抵抗を確認した。評価は、試験片の表面にべたつきが生じず、且つガイドワイヤのガイディングカテーテル内への挿入抵抗が無い場合を使用感「良好(◎)」、試験片の表面にべたつきは生じなかったが、ガイドワイヤのガイディングカテーテル内への挿入抵抗が僅かでも有った場合を使用感「可1(○○)」、試験片表面にややべたつきが生じた場合を「可2(○)」、試験片表面のべたつきが顕著であった場合を「不良(×)」とした。評価結果は下記表2に示した。
ポリウレタン試験片に替えてシリコーンゴム製の試験片を用いて「2.表面潤滑性の評価(ポリウレタン試験片)」と同様にして表面潤滑性を評価した。その結果を下記表2に示した。
ポリウレタン試験片に替えて、同じ大きさのシリコーンゴム製の試験片を用いて「3.膨潤抑制性の評価(ポリウレタン試験片)」と同様にして膨潤抑制性を評価した。但し、シリコーンゴム試験片の評価では、上記1.で得られた8種類のうち、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%、45質量%の6種類の擬似血液を用いた。評価結果は下記表2に示した。
ポリウレタン試験片に替えてシリコーンゴム製の試験片を用いて「4.使用感の評価(ポリウレタン試験片)」と同様にして使用感を評価した。但し、シリコーンゴム試験片の評価では、上記1.で得られた8種類のうち、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%、45質量%の6種類の擬似血液を用いた。その結果を下記表2に示した。
蒸留水を擬似血液として用い、比較例1と同様にして、ポリウレタン試験片及びシリコーンゴム試験片について表面潤滑性、膨潤抑制性及び使用感の評価を行った。それらの結果を下記表2に示した。
1.擬似血液の調製
オクタン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、擬似血液を調製した。ここでは、オクタン酸ナトリウム濃度がそれぞれ0.01質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.6質量%、1.0質量%、5.0質量%、10質量%、及び25質量%の8種類のサンプルを調製した。擬似血液の配合処方を下記表1に示した。
2.各種特性の評価(ポリウレタン試験片、シリコーン試験片)
上記1.で調製した8種類の擬似血液を用い、ポリウレタン試験片及びシリコーンゴム試験片のそれぞれについて比較例1と同様にして表面潤滑性、膨潤抑制性及び使用感を評価した。それらの結果を下記表2に示した。
1.擬似血液の調製
グリセリンとオクタン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、擬似血液を調製した。なお、グリセリン濃度は20質量%とし、オクタン酸ナトリウム濃度は0.01質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.6質量%、1.0質量%、5.0質量%、10質量%及び25質量%として、合計8種類のサンプルを調製した。擬似血液の配合処方を下記表1に示した。
2.各種特性の評価(ポリウレタン試験片、シリコーン試験片)
上記1.で調製した8種類の擬似血液を用い、ポリウレタン試験片及びシリコーンゴム試験片のそれぞれについて比較例1と同様にして表面潤滑性、膨潤抑制性及び使用感を評価した。それらの結果を下記表2に示した。
使用する脂肪酸塩の種類及び配合量を下記表1のとおり変更した点以外は実施例1と同じ条件で、実施例2~4の擬似血液を調製した。また、調製した擬似血液を用いて、比較例1と同様にして表面湿潤性、膨潤抑制性及び使用感の評価を行った。それらの結果を下記表2に示した。なお、表1中の各数値は、擬似血液中の各成分の濃度(質量%)を表す。
1.擬似血液の調製
グリセリンとラウリン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、グリセリン濃度が20質量%、ラウリン酸ナトリウム濃度が0.6質量%の擬似血液を調製した。
2.表面潤滑性の評価
縦1cm×横1cm、厚さ5mmのポリウレタン製の試験片を用意し、この試験片と、上記1.で調製した擬似血液10mlとを15mlの遠沈管へ入れ、試験片を擬似血液中に浸漬した。浸漬してから24時間経過後に試験片を引き上げ、比較例1と同様にして試験片の表面潤滑性を確認した。その結果、実施例5では「優良(◎)」の評価であり、表面潤滑性に優れていた。
3.膨潤抑制性の評価
ポリウレタン製の試験片を擬似血液中に24時間浸漬した後、試験片の厚みを計測することにより、擬似血液による試験片の膨潤しにくさ(膨潤抑制性)を評価した。評価は比較例1と同様にして行った。その結果、実施例5では「優良(◎)」の評価であった。
4.使用感の評価
ポリウレタン製の試験片を用い、比較例1と同様にして使用感の評価を行った。その結果、実施例5では「優良(◎)」の評価であった。
擬似血液中におけるラウリン酸ナトリウム及びグリセリンの濃度を下記表3のとおり変更した点以外は実施例5と同様にして擬似血液を調製した。また、調製した擬似血液を用いて、実施例5と同様に表面潤滑性、膨潤抑制性及び使用感の評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。なお、表3中の各数値は、擬似血液中の各成分の濃度(質量%)を表す。
[実施例10]
下記表4に示す配合処方で調製した擬似血液について、図1に示す動静脈循環型カテーテルシミュレータによりカテーテル挿入抵抗の評価を行った。使用した動静脈循環型カテーテルシミュレータは、心臓モデルと、動静脈血管モデルと、循環ポンプとして左心・右心ポンプとを備え、人体の血行動態を再現する模擬装置である。心臓モデルとしてはウレタン製の3D心臓モデルを用い、動静脈血管モデルとしてはシリコーンゴム製の血管サーキットを用いた。医療機器としては、血管挿入用シース(グッドマン社製、6Fr / 7Fr / 8Fr)、ガイドワイヤ(グッドマン社製、0.035 inch / 0.014 inch)、ガイディングカテーテル(グッドマン社製、6Fr / 7Fr, JL / JR)、Yコネクタ(グッドマン社製)、バルーンカテーテル(グッドマン社製、NSE α:φ2.75 x 13 mm / φ4.00 x 13 mm, Powered 3 NC:φ2.75 x 12 mm / φ5.00 x 12 mm, Powered 2:φ2.75 x 12 mm / φ4.50 x 12 mm)を用いた。血管モデル内に擬似血液を循環させ、左心・右心ポンプを駆動させることにより、人体と同程度の血流速度で擬似血液を循環させた。図1のカテーテルシミュレータを用いたカテーテル挿入抵抗評価は6名で実施した。評価は、比較例6(表3参照)の擬似血液を基準サンプルとし、基準サンプルとの比較により行った。なお、表4中の各数値は、擬似血液中の各成分の濃度(質量%)を表す。評価用の擬似血液としては、下記表4に示すように、脂肪酸塩の濃度が異なる擬似血液を調製して使用した。
Claims (4)
- 生体モデルを用いたシミュレートを行う際に前記生体モデルに接触させて用いるシミュレート用の疑似体液であって、
水と、水溶性多価アルコールと、脂肪酸及び脂肪酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、を含有し、
前記シミュレート用疑似体液中における前記水溶性多価アルコールの含有割合は、5~30質量%である、シミュレート用疑似体液。 - 前記生体モデルと、前記生体モデルに接触されている請求項1に記載のシミュレート用疑似体液とを備える、医療用シミュレータ。
- 前記生体モデルは血管モデルである、請求項2に記載の医療用シミュレータ。
- 前記生体モデルは、ポリウレタン製又はシリコーンゴム製である、請求項2又は3に記載の医療用シミュレータ。
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