JP7000055B2 - カロテノイド増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、家禽体内のカロテノイド含有量を増強するためのカロテノイド増強剤、および当該増強剤を含む家禽用飼料を家禽に給餌することを含む、家禽体内におけるカロテノイドの増強方法または家禽肉の製造方法に関する。
カロテノイドは、微生物、藻類、細菌、植物および動物の組織および器官など天然に広く存在する色素である。カロテノイドは食品、飲料の着色剤としての食品分野、サケ、マス、マダイ、エビなどの魚介類の肉あるいは表皮、ニワトリなどの家禽類の肉、表皮、卵黄の色調改善などを目的とした飼料分野での用途が拡大している(特許文献1)。
例えば、カロテノイドの一つであるアスタキサンチンについては、ブロイラーにアスタキサンチン含有ファフィア酵母乾燥菌体を給餌することにより、肉の色調を変化させることや、肉中にアスタキサンチンが蓄積されることが報告されている(特許文献2)。
また、カロテノイドは抗酸化作用を有することも知られており、例えば、アスタキサンチンは、ビタミンEの約110倍以上の抗酸化活性を有することが知られている(非特許文献1および非特許文献2)。
また、家禽が暑熱ストレスを受けると、体内での活性酸素種の産生が増加し、活性酸素種の除去作用を有するビタミンE、ビタミンAおよびビタミンCなどの抗酸化物質の消化管からの吸収が低下する。その結果、家禽肉の生産性の低下を招くことが懸念されている。このような暑熱ストレス誘発性の家禽肉の生産性低下を軽減するために、抗酸化物質の飼料添加が行われている(非特許文献3)。しかしながら、カロテノイドの飼料添加による効果は報告されていない。
特開平9-308481号公報 特開1995-303454号公報
Kurashige M, et al., Inhibition of oxidative injury of biological membranes by astaxanthin. Physiol Chem Phys Med NMR 22, 27-38. 1990. Naguib YM. Antioxidant activities of astaxanthin and related carotenoids. The Journal of Agricultural and Food Chemistry. 48, 1150-1154. 2000. Sahin K, et al., Role of dietary zinc in heat stressed poultry: Areview. Poultry Science. 88, 2176-2183. 2009.
このような状況において、家禽体内中のカロテノイド含有量を増加させるカロテノイド増強剤や増強方法が求められていた。
本発明の発明者は、鋭意研究を行った結果、パラコッカス属細菌を含む飼料で家禽を飼育すると、パラコッカス属細菌に含まれるカロテノイドが増加するだけでなく、パラコッカス属細菌に含まれないカロテノイドも増加し、家禽体内中の総カロテノイド量が顕著に増加することを見出した。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] カロテノイドを産生する微生物を含む、カロテノイド増強剤。
[2] 前記微生物がパラコッカス属細菌である、[1]に記載のカロテノイド増強剤。
[3] [1]に記載のカロテノイド増強剤を含む、家禽用飼料。
[4] カロテノイド増強剤を0.025~3質量%含む、[3]に記載の家禽用飼料。
[5] カロテノイドを0.0002~1質量%含む、[3]に記載の家禽用飼料。
[6] アスタキサンチンを0.0005~0.06質量%含む、[3]に記載の家禽用飼料。
[7] カロテノイドを産生する微生物を含む家禽用飼料を給餌することにより、家禽体内におけるカロテノイドの含有量を増加させることを含み、
当該増加したカロテノイドが、前記微生物が産生しないカロテノイドを含む、
家禽体内におけるカロテノイドの増強方法。
[8] カロテノイドを産生する微生物を含む家禽用飼料を給餌することにより、家禽体内におけるカロテノイドの含有量を増加させることを含み、
当該増加したカロテノイドが、前記微生物が産生しないカロテノイドを含む、
カロテノイドの含有量が増加した家禽肉の製造方法。
[9] 前記微生物がパラコッカス属細菌である、[7]または[8]に記載の方法。
[10] 前記家禽用飼料が、前記微生物を0.025~3質量%含む、[7]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記家禽用飼料が、カロテノイドを0.0002~1質量%含む、[7]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 前記家禽用飼料が、アスタキサンチンを0.0005~0.06質量%含む、[7]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 家禽体内のカロテノイド含有量が、前記微生物を含まない飼料で飼育された対照家禽におけるカロテノイド含有量と比較して増加する、[7]~[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] 家禽の肉において増加したカロテノイドが、35μg/g~80μg/g以下のルテインを含む、[7]~[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15] 家禽の肉において増加したカロテノイドが、10μg/g~80μg/gのアドニキサンチンを含む、[7]~[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16] 家禽の肉において増加したカロテノイドが、10μg/g~80μg/gのアドニルビンを含む、[7]~[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17] 家禽の肉において増加したカロテノイドが、10μg/g~100μg/gのアスタキサンチンを含む、[7]~[16]のいずれか1項に記載の方法。
[18] 家禽が鶏である、[7]~[17]のいずれか1項に記載の方法。
本発明により、カロテノイドを産生する微生物を含むカロテノイド増強剤を提供することができる。本発明のカロテノイド増強剤は、家禽体内中の総カロテノイド量を顕著に増加させることができる。本発明の一態様において、本発明のカロテノイド増強剤により、家禽の肉(大腿部の骨格筋、浅胸筋を含む)、血液(血漿を含む)、皮または脂肪におけるカロテノイド量を増加させることができる。また、本発明は、カロテノイドを産生する微生物を含む家禽用飼料を家禽に給餌することを含む、家禽体内におけるカロテノイドの増強方法または家禽肉の製造方法を提供することができる。
また、本発明の一態様において、本発明のカロテノイド増強剤は、家禽体内において、カロテノイドを産生する微生物に含まれるカロテノイドの含有量を増加させるだけでなく、前記微生物が産生しないカロテノイドの含有量も増加させることができる。
本発明の別の態様において、前記微生物が産生しないカロテノイドは、家禽用の基本飼料由来のカロテノイドである。
また、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤によってカロテノイドが家禽体中に高含量で蓄積されるため、肉色の赤色度および黄色度が増大し、その結果、自然かつ食欲を喚起する肉色を実現することが可能である。
また、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤により、家禽体内にカロテノイドが高含量で蓄積されるため、家禽体内の酸化ストレスを低減させることが可能である。
さらに、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤により、家禽体内にカロテノイドが高含量で蓄積されるため、肉の保管時や調理時の酸化劣化を抑制することが可能である。
血漿、浅胸筋および大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度を示す図である。実施例1および実施例2では、それぞれ比較例1および比較例2に比べて、パラコッカス属細菌に含まれるアスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンが増加しただけでなく、家禽飼料中のトウモロコシ等に由来するルテイン等のカロテノイドも増加し、総カロテノイド量が顕著に増加したことを示す。 浅胸筋中の脂質過酸化度を評価するために行ったTBARS検査(チオバルビツール酸反応性物質検査)の結果を示す図である。適温環境下および暑熱環境下のそれぞれで、Panaferd-P含有飼料を給餌することにより(実施例1および実施例2)、脂質過酸化度(MDA含量)が比較例1および比較例2に比べて有意に低下することを示す。図中の「a」、「b」および「c」は、多重比較の条件間での有意差を示し、同じアルファベットがつけられている値間には有意差がないことを表す。 浅胸筋中のα-トコフェロール(ビタミンE)量の測定結果を示す図である。適温環境下でPanaferd-Pを給餌した実施例1は、比較例1に比べてα-トコフェロール量の増加傾向が見られ、暑熱環境下でPanaferd-Pを給餌した実施例2は、比較例2に比べてα-トコフェロール量が有意に増加したことを示す。図中の「a」、「b」、「ab」および「c」は、多重比較の条件間での有意差を示し、同じアルファベットがつけられている値間には有意差がないことを表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、カロテノイドを産生する微生物を含む、カロテノイドの増強剤、および当該増強剤を含む家禽用飼料を家禽に給餌することを含む、家禽体内におけるカロテノイドの増強方法または家禽肉の製造方法に関する。また、本発明は、カロテノイド増強剤として使用するためのカロテノイドを産生する微生物にも関する。
本発明のカロテノイド増強剤を含む家禽用飼料を家禽に給餌して飼育すると、家禽体内、おけるカロテノイド含有量が、対照家禽と比較して顕著に増大する。本明細書において、家禽体内とは、家禽全体または家禽の部分を意味し、例えば家禽の肉、血液、脂肪または皮を挙げることができる。
さらに驚くべきことに、本発明において含有量が増大するカロテノイドは、前記微生物が産生するカロテノイドだけでなく、前記微生物の産生しないカロテノイド、あるいは、前記微生物に含まれないカロテノイド、例えば、家禽用の基本飼料に由来するカロテノイドを含む。家禽用の基本飼料に由来するカロテノイドは、家禽用の基本飼料に含まれるカロテノイド、家禽用の基本飼料に配合されたカロテノイド、および家禽の体内で代謝、分解等されることによりそれらのカロテノイドから生じるカロテノイドが含まれる。
カロテノイドは抗酸化作用を有することが知られている。したがって、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の方法により、カロテノイドが家禽体内に高含量で蓄積されると、家禽の酸化ストレスを低減させることが可能である。実際、本発明のカロテノイド増強剤を混合した家禽用飼料で飼育された家禽において、脂質過酸化度が低減し、抗酸化物質であるα-トコフェロール等のビタミンEが増量することが確認されている。
また、暑熱条件下で飼育される家禽、例えばブロイラーの飼育において、酸化ストレスが問題とされる場合があり、家禽の酸化ストレスを低減することは、ブロイラー等の肉を高い品質でかつ高効率で生産するのに有効である。よって、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の方法は、カロテノイドを家禽体内に高含量で蓄積させることから、家禽体内の酸化ストレスを低減することが可能であるため、高品質かつ高効率で家禽肉を生産するに有用である。
また、アスタキサンチンを含有する家禽用飼料を給餌した家禽肉は赤色を呈するが、ときに赤色度が強すぎることがあり、消費者に人工的な印象を与えることが懸念される。すなわち、天然志向の消費者等に受け入れられやすいという点において、黄色度とのバランスが求められる場合がある。本発明のカロテノイド増強剤によって、肉色の赤色度だけでなく黄色度が増大し、その結果、自然かつ食欲を喚起する肉色を実現することが可能である。
本発明において、カロテノイドを産生する微生物は、カロテノイドを産生する微生物であれば特に限定されず、緑藻類Haematococcus pluvialis、赤色酵母Phaffia rhodozyma、Paracoccus属に属する細菌(以下、「パラコッカス属細菌」ともいう)、Brevundimonas属に属する細菌、Erythrobacter属に属する細菌等が挙げられる。本発明においては、好ましくはParacoccus属に属する細菌、Brevundimonas属に属する細菌又はErythrobacter属に属する細菌が用いられ、より好ましくはParacoccus属に属する細菌が用いられる。Paracoccus属、Erythrobacter属及びBrevundimonas属は、いずれもProteobacteria門、Alphaproteobacteria鋼に分類され、細菌分類学上の共通性があるため、これらの属に属する細菌を使用することが可能である。
本発明において、パラコッカス属細菌は、Paracoccus carotinifaciens、Paracoccus marcusii、Paracoccus haeundaensis及びParacoccus zeaxanthinifaciensが好ましく用いられ、特にParacoccus carotinifaciensが好ましく用いられる。Paracoccus属に属する細菌の具体的な菌株の例として、Paracoccus carotinifaciens E-396株(FERM BP-4283)及びParacoccus属細菌A-581-1株(FERM BP-4671)が挙げられ、これらの変異株も本発明に好ましく用いられる。Erythrobacter属に属するカロテノイド産生細菌としては、例えばErythrobacter JPCC M種(特開2008-259452)、Erythrobacter JPCC O種(特開2008-259449)などが挙げられる。Brevundimonas属に属するカロテノイド産生細菌としては、例えばBrevundimonas SD212株(特開2009-27995)、Brevundimonas FERM P-20515, 20516株(特開2006-340676)、Brevundimonas vesicularis(Gene, Vol.379, p.101-108, 1 Sep 2006)などが挙げられる。
本発明において、カロテノイドを産生する細菌は、好ましくは16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が配列番号1で示されるE-396株の塩基配列と実質的に同一である細菌が用いられる。ここで、「実質的に同一」とは、DNAの塩基配列決定の際のエラー頻度等を考慮し、塩基配列が好ましくは90%以上、95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上相同であることを意味する。同一性・相同性は、例えば、遺伝子解析ソフトClustal Wにより決定することができる。
この16SリボソームRNAの塩基配列の同一性・相同性に基づいた微生物の分類法は、近年主流になっている。従来の微生物の分類法は、従来の運動性、栄養要求性、糖の資化性など菌学的性質に基づいているため、自然突然変異による形質の変化等が生じた場合に、微生物を誤って分類する場合があった。これに対し、16SリボソームRNAの塩基配列は遺伝的に安定であるので、その同一性・相同性に基づく分類法は従来の分類法に比べて分類の信頼度が格段に向上する。
Paracoccus carotinifaciens E-396株の16SリボソームRNAの塩基配列と、他のカロテノイド産生細菌である、Paracoccus marcusii DSM 11574株、Paracoccus属細菌N-81106株、Paracoccus haeundaensis BC 74171株、Paracoccus属細菌A-581-1株、Paracoccus zeaxanthinifaciens ATCC 21588株、及びParacoccus sp. PC-1株の16SリボソームRNAの塩基配列との相同性は、それぞれ99.7%、99.7%、99.6%、99.4%、95.7%、及び95.4%であり、これらは分類学上極めて近縁な菌株であることが分かる。よって、これらの菌株はカロテノイドを産生する細菌として一つのグループを形成しているといえる。このため、これらの菌株は本発明に好ましく用いられ、カロテノイドを効率的に増強することができる。
本発明の実施例において使用したカロテノイド増強剤は、パラコッカス属細菌の乾燥菌体であるが、その他のカロテノイド産生微生物、例えば、カロテノイドを産生する酵母や藻類も、本発明の目的に対して同様に有効であることが期待される。
本発明の実施例において使用した乾燥菌体は、カロテノイドを含む細菌を乾燥した粉末を含み、例えば、本発明において、乾燥菌体は、カロテノイドを生成する細菌を培養して得られる培養物を乾燥し、粉末化することにより得ることができる。本発明において、カロテノイドを産生する微生物は、微生物の培養物を含む。培養物は、当該微生物の培養液、培養菌体そのもの(乾燥菌体を含む)、微生物の分解物または微生物の破砕物を含む。本発明において、カロテノイドを産生する微生物は、微生物の培養物からアスタキサンチン等のカロテノイドを抽出したもの、あるいは抽出後にさらに分離精製して純度を高くしたカロテノイドでもよい。
微生物の培養方法は、カロテノイドを産生する条件であればいずれの方法でもよく、当業者であれば、公知の方法から適宜選択、変更することができる。
例えば、培養培地には、産生菌が生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩および必要に応じてビタミン、アミノ酸、核酸塩基等の物質を含み得る。培地のpHは、好ましくは6~10に調整し、培養条件は、15~80℃、好ましくは20~35℃であり、通常、1~20日間、好ましくは2~12日間、好気条件で培養を行う。好気条件としては、例えば、振盪培養あるいは攪拌培養が挙げられる。
また、培養物の乾燥方法は、特に限定されないが、たとえば、噴霧乾燥、流動乾燥、噴霧造粒乾燥、噴霧造粒流動乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。
本発明において、カロテノイドを産生する微生物は、粉末、ペレット状、ペースト状またはフレーク状に成形して用いてもよい。
本発明において、カロテノイドを産生する微生物の乾燥菌体は、市販品を使用することもできる。そのような市販品としては、例えば、Panaferd-PまたはPanaferd-AX(JXTGエネルギー、東京)を挙げることができる。Panaferd-Pは、鶏卵の色調改善を目的とした鶏卵用色揚げ剤として販売されている。
本発明において、カロテノイドを産生する微生物に含まれるカロテノイドの種類は、アスタキサンチンを含む限り特に限定されず、アドニルビン、アドニキサンチン等を含んでいてもよい。また、本発明のカロテノイドを産生する微生物に含まれるカロテノイドの量は特に限定されない。例えば、アスタキサンチンの含有量は、微生物中、0.005~20質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。また、アドニルビンの微生物中の含有量は、例えば0.001~7質量%、好ましくは0.03~4質量%、より好ましくは0.3~2質量%であり、アドニキサンチンの微生物中の含有量は、例えば0.0001~2質量%、好ましくは0.001~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。さらに例えば、乾燥菌体中のアスタキサンチンの含有量は、0.05~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%、最も好ましくは1~3質量%である。また、アドニルビンの乾燥菌体中の含有量は、例えば0.01~7質量%、好ましくは0.03~4質量%、より好ましくは0.2~3質量%であり、最も好ましくは0.5~2質量%であり、アドニキサンチンの乾燥菌体中の含有量は、例えば0.005~2質量%、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%であり、最も好ましくは0.1~0.3質量%である。Panaferd-Pに含まれるカロテノイドをHPLCにて測定した結果を表1に示す。
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本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤を含む家禽用飼料を家禽に給餌することを含む、カロテノイドの増強方法または家禽肉の製造方法が提供される。
本発明のカロテノイドを産生する微生物は、家禽用の基本飼料と混合して使用することができる。すなわち、本発明の別の態様において、本発明のカロテノイド増強剤を含む、家禽用飼料が提供される。本発明において、カロテノイドを産生する微生物と混合する家禽用の基本飼料は、家禽の飼育に通常使用されるものであれば、特に限定されない。
本発明において、カロテノイドを産生する微生物と混合する家禽用の基本飼料は、家禽の飼育に通常使用されるものであれば、特に限定されず、当業者であれば、家禽の種類や成長段階等に応じて、適宜選択することができる。例えば、動物性飼料原料(魚粉など)、植物性油粕(大豆油粕、ナタネ油粕など)、穀類(トウモロコシなど)、糟糠類(フスマ、ヌカなど)、炭酸カルシウムおよびカキガラ等の家禽に給餌される任意の飼料原料を主成分として含む配合飼料を用いてもよい。本発明において使用される家禽用の基本飼料は、カロテノイドを含有する。飼料中のカロテノイドは、飼料を有機溶媒で抽出し、HPLCにて測定することで確認することができる。基本飼料に含まれるカロテノイドは、例えば、ゼアキサンチン、ルテイン、t-カプサンチン等を挙げることができるが、これらに限定されない。あるいは、別の態様において、基本飼料に含まれるカロテノイドは、ゼアキサンチン、ルテイン、アドニキザンチン、アドニルビン、t-カプサンチンおよびアスタキサンチンを挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の一態様において、本発明の家禽用飼料はカロテノイドを産生する微生物を、例えば、0.01~10質量%(終濃度、すなわち、当該微生物と家禽用の基本飼料との混合時の濃度)または0.01~5質量%(終濃度)、好ましくは0.025~3質量%(終濃度)、さらに好ましくは0.05~1質量%、最も好ましくは0.075~0.75質量%、例えば0.15質量%含む。また、本発明の家禽用飼料はアスタキサンチンを0.0001~0.1質量%(終濃度)、好ましくは0.0005~0.06質量%(終濃度)、より好ましくは0.001~0.05質量%(終濃度)、さらに好ましくは0.005~0.03質量%(終濃度)、例えば0.03質量%含む。本発明の家禽用飼料は、カロテノイドを、0.0002~1質量%、好ましくは0.0002~0.5質量%、最も好ましくは0.0005~0.3質量%含む。
本発明の家禽用飼料は、任意の形状であってよく、対象となる家禽の種類や成長段階等に応じて適宜選択することができる。家禽用飼料の形状としては、例えば、粉末、ペレット状、フレーク状、ペースト状などが挙げられるがこれに限定されない。
本発明において、家禽は、ニワトリ、ホロホロチョウ、シチメンチョウ、ウズラ、カモ、ガチョウ、アヒル、チャボおよびハトからなる群から選択することができる。本発明における家禽は、好ましくはニワトリである。
本発明において、ニワトリは、例えば、肉用鶏、採卵鶏が挙げられる。本発明におけるニワトリは、好ましくは肉用鶏、特にブロイラーが好ましい。
本発明における家禽の飼育方法は特に限定されないが、例えば、通常成体で与える飼料を給餌可能となった時点以降の全期間で本発明の飼料を使用すること、幼体から継続して本発明の飼料を使用すること、本飼料を部分的に使用して他の期間は別の飼料で飼育すること等を挙げることができる。当業者であれば給水、室温、飼育環境は通常の家禽の飼育に適した条件を適宜設定することができる。
本発明のカロテノイド増強剤または本発明の家禽用飼料を家禽に給餌することは、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の家禽用飼料を家禽に摂取させること、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の混合飼料の存在下で家禽を飼育させること、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の混合飼料を家禽に投与することなどを含む。
本発明の細菌乾燥粉末または本発明の飼料で家禽を飼育することにより、家禽におけるカロテノイドの含有量が増加する。詳しくは、本発明の細菌乾燥粉末または本発明の飼料を家禽に給餌することにより、家禽におけるカロテノイドの含有量を増加が対照の家禽と比較して増加する。「カロテノイドの増強」とは、家禽におけるカロテノイドの含有量を増加させること、詳しくは、家禽におけるカロテノイドの含有量を対照家禽の含有量に比べて増加させることを意味する。
本発明において、対照家禽とは、本発明のカロテノイド増強剤またはカロテノイドを産生する微生物を含まない家禽用の基本飼料を給餌された家禽、本発明のカロテノイド増強剤またはカロテノイドを産生する微生物を含む本発明の家禽用飼料で飼育される前の家禽等を含む。
本発明において含有量が増強されるカロテノイドは、特に限定されないが、例えば、ゼアキサンチン、ルテイン、アドニキザンチン、アドニルビン、t-カプサンチンおよびアスタキサンチンが挙げられる。
本発明において含有量が増大するカロテノイドは、カロテノイドを産生する微生物に含まれるカロテノイドだけでなく、カロテノイドを産生する微生物が産生しないカロテノイド、例えば、カロテノイドを産生する微生物を混合する家禽用の基本飼料に由来するカロテノイドを含む。
本発明において、カロテノイドの含有量は、家禽体内で増大し、例えば、肉、例えば腿肉、胸肉、血液、例えば血漿、皮、脂肪で増大する。したがって、本発明は、カロテノイドの含有量が増加した家禽、好ましくは家禽肉の製造方法を関する。本明細書において「肉」とは、ヒトが通常食する家禽の肉を意味し、生鮮肉および加工肉を含む。
本発明の方法により製造される家禽の肉(例えば、胸肉または腿肉)は、ゼアキサンチン、ルテイン、アドニキザンチン、アドニルビン、t-カプサンチンおよびアスタキサンチンを含み得る。
家禽に含まれるカロテノイド量は、有機溶媒、例えばアセトン、エーテル:ヘキサン(2:8)により抽出したカロテノイドを乾燥および/または濃縮し、HPLCにより測定することにより定量化することができる。
本発明の方法により製造される家禽の肉は、例えば:
・10μg/g以上、20μg/g以上、30μg/g以上、40μg/g以上または45μg/g以上のアスタキサンチン;
・10μg/g以上、20μg/g以上または25μg/g以上のアドニルビン;
・10μg/g以上、20μg/g以上、30μg/g以上または35μg/g以上のアドニキサンチン;
・25μg/g以上、30μg/g以上、35μg/gまたは40μg/g以上のルテイン;または
・30μg/g以上のゼアキサンチンを含み得る。
本発明の方法により製造される家禽の肉は、例えば:
・100μg/g以下、90μg/g以下または80μg/g以下のアスタキサンチン;
・80μg/g以下、70μg/g以下または60μg/g以下のアドニルビン;
・80μg/g以下、70μg/g以下または60μg/g以下のアドニキサンチン;
・80μg/g以下、70μg/g以下または60μg/g以下のルテイン;または
・110μg/g以下、100μg/g以下または90μg/g以下のゼアキサンチンを含み得る。
本発明の方法により製造される家禽の肉は、例えば、35μg/g~80μg/g以下のルテイン;10μg/g~80μg/gのアドニキサンチン;10μg/g~80μg/gのアドニルビンまたは10μg/g~100μg/gのアスタキサンチンを含み得る。
また、家禽の肉色は、色彩色差計や分光速度計を用いて測定することにより、L*a*b*表色系で数値化することができる。ここで、L*は明度、a*は赤色度、b*は黄色度を示す。本発明の方法により生産された家禽の肉色は、通常の飼料で飼育された家禽に比較して高い赤色度および黄色度を示し、その結果、より自然な肉色を呈する。
さらに、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の方法によりカロテノイド量が増大した家禽において、抗酸化活性が増大する。抗酸化活性は、脂質過酸化度またはビタミンE含量によって測定することができる。脂質過酸化度が低いほど抗酸化活性が高いことを示す。したがって、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の方法により、脂質過酸化度は、対照家禽における脂質過酸化度に比べて低減する。また、ビタミンE含量が高いほど抗酸化活性が高いことを示す。したがって、ビタミンE含量は、対照家禽におけるビタミンE含量に比べて増大する。脂質過酸化度は、例えば、比色定量法により試料中のマロンジアノレデヒド(MDA)含量を測定することで求めることができる(Azada MAK, et al., Molecular and Integrative Physiology 155, 401-406. 2010.)。当業者であれば、公知の方法に基づき、適宜脂質過酸化度を測定することができる。ビタミンEの量も、公知の方法(例えば、Faustmanら(1989)の方法)により定量することができる。本明細書において、ビタミンEには、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロールおよびδ-トコフェロール並びにα-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールが含まれ、ビタミンE含量は、これらの1以上の含量を測定することにより求めることもできる。
<実施例>
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
1.動物実験
1日齢のチャンキー(Ross308)系ブロイラー雄ヒナ100羽を入手し、育雛用飼料(パワーチキンP、日和産業、神戸)を用いて、12日間群飼育で育雛した。12日齢時点で個別ケージに移し、12日齢から15日齢までを予備飼育期間とし、育雛用飼料を与えた。15日齢時点で体重が均等になるように8羽ずつ4区に分けた。
2.カロテノイドの測定方法
試料中に含まれるカロテノイド量は、Nishino, et al., 2015の方法を用いて分析した。以下にその概要を示す。
<浅胸筋、大腿部の骨格筋>
浅胸筋(胸肉)または大腿部の骨格筋(腿肉)を細かく切り刻みアセトンで抽出した。アセトン抽出液を濾過後分液漏斗に移し、エーテル:ヘキサン(2:8)溶液と水を加え分配した。エーテル:ヘキサン(2:8)層を水洗したのち、エーテル:ヘキサン(2:8)を採取し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮物をアセトン:ヘキサン(2:8)に溶解し、その一定量をHPLCで分析した。試料の量に応じて、使用した抽出液の量は適宜変更した。
<血漿>
採血後の血液から得られた血漿1mLにエタノール2mLを加え、ボルテックスで振とうした。これに5mLエーテル:ヘキサン(2:8)を加えボルテックスで10分間振とうした。続いて2500rpmで10分間遠心分離して上清を得た。上清をミリポアのフィールターでろ過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮物をアセトン:ヘキサン(2:8)に溶解し、その一定量をHPLCで分析した。
<HPLC条件>
Hitachi L-6000 ポンプ、L-4250 検出器(日立)
カラム Cosmosil 5SL-II (250×4.6 mm i.d.) (ナカライテスク)
移動相 アセトン:ヘキサン(2:8)
流速 1.0 mL/min
検出 450 nm
定量は標品の検量線による。
3.色調
浅胸筋(右側)、腹腔内脂肪、大腿部の骨格筋、および浅胸筋付近の皮の色調は、色彩色差計(CR-400、コニカミノルタ、東京)によってL*a*b*値(L*=明るさ、a*=赤色度、b*=黄色度)を測定することで求めた。
4.浅胸筋中の脂質過酸化度
浅胸筋中の脂質過酸化度を評価するため、比色定量法により浅胸筋中のマロンジアノレデヒド(MDA)含量を分析した(Azada MAK, et al., Molecular and Integrative Physiology 155, 401-406. 2010.)。0.3 gの浅胸筋片(左側。採取した後、分析まで-80℃で保存した。)をl mLの154 mM KCL中でホモジナイズし、40μLのホモジェネートを別の遠心用プラスチックチューブに移した。40μLの8.1%SDS、300μLの20%酢酸緩衝液(pH3.5)、および0.8%のチオバルビツール酸溶液を加えた。95℃で1時間静置後、氷冷し、200μLの精製水、800μLのn-ブタノール:ピリジン混液を加えた。攪拌、遠心後に上層の吸光度(532 nm)を測定した。試料のチオバルビツール酸反応物量は、試料中のタンパク質含量によって補正し、MDA等量として示した。
5.浅胸筋中のα-トコフェロール含量
浅胸筋中のα-トコフェロール含量は、Faustmanら(1989)の方法により定量した。0.1 gの浅胸筋片(左側。採取した後、分析まで-80℃で保存した。)を1.0 mLのTris-HCI緩衝液(pH 7.4)中でホモジナイズし、500μLのホモジェネートを2.0 mL容量の遠心用プラスチックチューブに移した。1 mLのヘキサン・2-プロパノール混液(ヘキサン:2-プロパノール比3:2)に攪拌し、遠心分離した後、上層をナシ型フラスコに分取した。ロータリーエバポレーターを用いて減圧乾固した後、直ちにBHT入りエタノール0.5 mlを加えて溶解し、試料溶液とした。LC-2000Plus HPLC system(日本分光株式会社、東京)を用いてα-トコフェロール含量を測定した。
6.統計分析
得られたデータは、統計処理システムSAS(Statistical Analysis System)のGLMプロンジャーを用いて一元配置分散分析を行い、さらに区間の平均値をTukeyの多重検定法により比較した。
15日齢時点で体重が均等になるように8羽ずつ4区に分けたチャンキー系ブロイラーの1区につき、適温(Thermo-neutral temperature)環境(25℃)でパラコッカス乾燥菌体Panaferd-P(JXTGエネルギー、東京)を家禽用の基本飼料に終濃度0.15質量%で添加した混合飼料(アスタキサンチン30ppm、アドニルビン11ppm、アドニキサンチン3ppm相当)を与えた。家禽用の基本飼料の組成は、表2に示した。
Figure 0007000055000002
家禽用の基本飼料には、ルテイン1.4 ppm、ゼアキサンチン1.6 ppmが含まれていた。家禽用の基本飼料に含まれるカロテノイド量は、飼料を粉砕後、テトラヒドロフラン(THF):メタノール(20:1)混合液で抽出し、移動相(n-ヘキサン/THF/メタノール混合液(40:20:1))にて適当に希釈した抽出液20μLをHPLCに注入し、波長470 nmで検出して定量した。HPLCには、カラム:Wakosil-II 5 SIL-100、φ4.6×250mm(和光純薬社製製)を2本連結して用いた。
チャンキー系ブロイラーは、水と飼料は自由摂取とし、試験期間中は体重、飼料摂取量を1日おきに測定し、飼料効率を算出した。試験開始から14日後の28日齢時点で、採血した後に、浅胸筋、大腿部の骨格筋および腹腔内脂肪を採取し、それぞれの組織中のカロテノイド濃度および色調を測定した。血漿中のカロテノイド濃度の結果を表3に、浅胸筋中のカロテノイド濃度の結果を表4に、大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度の結果を表5に、各組織(浅胸筋付近の皮も含む)の色調変化の結果を表6に示す。また、浅胸筋中の脂質過酸化度の測定結果を図2Aおよび表7に、浅胸筋中のビタミンE量を図2Bおよび表8に示す。
[比較例1]
15日齢時点で体重が均等になるように8羽ずつ4区に分けたチャンキー系ブロイラーの1区につき、適温環境(25℃)で家禽用の基本飼料を与えた以外は実施例1と同様にし、それぞれの組織中のカロテノイド濃度および色調を測定した。血漿中のカロテノイド濃度の結果を表3に、浅胸筋中のカロテノイド濃度の結果を表4に、大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度の結果を表5に、各組織の色調変化の結果を表6に示す。また、浅胸筋中の脂質過酸化度の測定結果を図2Aおよび表7に、浅胸筋中のビタミンE量を図2Bおよび表8に示す。
15日齢時点で体重が均等になるように8羽ずつ4区に分けたチャンキー系ブロイラーの1区につき、暑熱(High ambient temperature)環境(1日あたり35℃での暑熱曝露を6時間)とした以外は実施例1と同様にし、それぞれの組織中のカロテノイド濃度および色調を測定した。血漿中のカロテノイド濃度の結果を表3に、浅胸筋中のカロテノイド濃度の結果を表4に、大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度の結果を表5に、各組織の色調変化の結果を表6に示す。また、浅胸筋中の脂質過酸化度の測定結果を図2Aおよび表7に、浅胸筋中のビタミンE量を図2Bおよび表8に示す。
[比較例2]
15日齢時点で体重が均等になるように8羽ずつ4区に分けたチャンキー系ブロイラーの1区につき、暑熱環境(1日あたり35℃での暑熱曝露を6時間)とした以外は比較例1と同様にし、それぞれの組織中のカロテノイド濃度および色調を測定した。血漿中のカロテノイド濃度の結果を表3に、浅胸筋中のカロテノイド濃度の結果を表4に、大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度の結果を表5に、各組織の色調変化の結果を表6に示す。また、浅胸筋中の脂質過酸化度の測定結果を図2Aおよび表7に、浅胸筋中のビタミンE量を図2Bおよび表8に示す。
[結果]
1.血漿、浅胸筋、大腿部の骨格筋中のカロテノイド濃度
血漿中並びに浅胸筋および大腿部の骨格筋中のカロテノイド量の測定結果を図1および表3~5に示す。
Figure 0007000055000003
Figure 0007000055000004
Figure 0007000055000005
適温環境および暑熱環境でPanaferd-Pを給餌した実施例のいずれにおいても(実施例1および実施例2)、それぞれ比較例1および比較例2に比べて総カロテノイド量が約3~7倍に増加した。また、実施例1および実施例2では、Panaferd-Pに含まれるパラコッカス属細菌由来のアドニキサンチン、アドニルビンおよびアスタキサンチンの濃度が増加した。また、適温環境および暑熱環境のいずれにおいても、実施例では、Panaferd-Pに含まれないゼアキサンチンやルテインの濃度が増加した。
本実施例より、パラコッカス属細菌を含む飼料を与えることにより、血漿中および肉中の総カロテノイド量を顕著に増加させることが示された。さらに、本実施例より、パラコッカス属細菌を含む飼料を与えることにより、パラコッカス属細菌に含まれるアドニキサンチン、アスタキサンチン、アドニルビン等のカロテノイドの増加だけでなく、基本飼料中のトウモロコシ等に由来するゼアキサンチン、ルテイン等のカロテノイドも増加させ得ることが示された。したがって、本実施例により、本発明のカロテノイド増強剤により、家禽中のカロテノイド量を増強させ得ることが示された。
このような家禽体内におけるカロテノイド量の増加は、パラコッカス属細菌等のカロテノイドを産生する微生物に含まれるアスタキサンチン等のカロテノイドにより家禽体内の酸化ストレスが低減し、上記微生物に由来するカロテノイドの分解だけでなく、摂取した他のカロテノイドの分解が抑制されたことに起因すると考えられる。
2.浅胸筋、腹腔内脂肪、大腿部の骨格筋、皮中の色調変化
浅胸筋、腹腔内脂肪、大腿部の骨格筋および皮の色調を測定した結果を表6に示す。a*=赤色度、b*=黄色度を示す。表中のデータの「a」、「b」、「ab」および「c」は、多重比較の条件間での有意差を示し、同じアルファベットがつけられている値間には差がないことを表す。
Figure 0007000055000006
適温環境下でパラコッカス属細菌を含む飼料を給餌することにより(実施例1)、浅胸筋、大腿部の骨格筋、腹腔内脂肪および皮で、比較例1に対してa*値およびb*値が増加し、赤色度および黄色度が向上した。特に、実施例1では、浅胸筋の黄色度、腹腔内脂肪の赤色度、大腿部の骨格筋の赤色度、皮の赤色度と黄色度が有意に増加した。また、浅胸筋の赤色度、腹腔内脂肪の黄色度、大腿部の骨格筋の黄色度に増加傾向が見られた。
暑熱環境下においても、パラコッカス属細菌を含む飼料を給餌することにより(実施例2)、浅胸筋、腹腔内脂肪、大腿部の骨格筋および皮で、比較例2に対してa*値およびb*値が増加し、赤色度および黄色度が向上した。特に、実施例2では、浅胸筋の黄色度、腹腔内脂肪の赤色度、腹腔内脂肪の黄色度、大腿部の骨格筋の赤色度、大腿部の骨格筋の黄色度、皮の赤色度と黄色度が有意に増加した。また、浅胸筋の赤色度に増加傾向が見られた。
なお、アドニキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチンは赤色色素であり、ゼアキサンチンは橙~黄色色素であり、ルテインは黄色色素である。
本発明のカロテノイド増強剤によって、肉色の赤色度だけでなく黄色度も増大し、その結果、自然かつ食欲を喚起する肉色を実現することが可能であることが示された。
3.鶏体内の酸化ストレス低減
脂質過酸化度およびα-トコフェロール量を測定することにより、鶏体内の酸化ストレスを検討した。
浅胸筋中の脂質過酸化度の測定結果を図2Aおよび表7に示す。脂質過酸化度の値が小さいほど、酸化ストレスが少ない状態を意味する。適温および暑熱環境下のいずれにおいても、実施例1および2における脂質過酸化度の値がそれぞれ比較例1および2に比べて有意に小さかった。
Figure 0007000055000007
浅胸筋中のビタミンE量を図2Bおよび表8に示す。抗酸化物質であるビタミンEの量が多いほど、酸化ストレスが少ない状態を意味する。適温条件下では、実施例1におけるビタミンEの増加傾向が示され、特に実施例2では、α-トコフェロールが比較例2に対して有意に増加した。
Figure 0007000055000008
本実施例により、本発明のカロテノイド増強剤または本発明の方法により、家禽の酸化ストレスが低減されることが示された。

Claims (15)

  1. カロテノイドを産生する微生物を含む、家禽用のカロテノイド増強剤であって、
    前記カロテノイド増強剤は、前記微生物が産生しないカロテノイドの含有量を家禽体内で増加させ、前記微生物が産生しないカロテノイドが、ゼアキサンチンおよびルテインら選択される少なくとも1つであることを特徴とする、カロテノイド増強剤。
  2. 前記微生物がパラコッカス属細菌である、請求項1に記載のカロテノイド増強剤。
  3. 請求項1に記載のカロテノイド増強剤を含む、家禽用飼料。
  4. カロテノイド増強剤を0.025~3質量%含む、請求項3に記載の家禽用飼料。
  5. カロテノイドを0.0002~1質量%含む、請求項3に記載の家禽用飼料。
  6. アスタキサンチンを0.0005~0.06質量%含む、請求項3に記載の家禽用飼料。
  7. カロテノイドを産生する微生物を含む家禽用飼料を給餌することにより、家禽体内におけるカロテノイドの含有量を増加させることを含み、
    当該増加したカロテノイドが、前記微生物が産生しないカロテノイドを含み、前記微生物が産生しないカロテノイドが、ゼアキサンチンおよびルテインら選択される少なくとも1つである、
    家禽体内におけるカロテノイドの増強方法。
  8. カロテノイドを産生する微生物を含む家禽用飼料を給餌することにより、家禽体内におけるカロテノイドの含有量を増加させることを含み、
    当該増加したカロテノイドが、前記微生物が産生しないカロテノイドを含み、前記微生物が産生しないカロテノイドが、ゼアキサンチンおよびルテインら選択される少なくとも1つである、
    カロテノイドの含有量が増加した家禽肉の製造方法。
  9. 前記微生物がパラコッカス属細菌である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記家禽用飼料が、前記微生物を0.025~3質量%含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記家禽用飼料が、カロテノイドを0.0002~1質量%含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記家禽用飼料が、アスタキサンチンを0.0005~0.06質量%含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
  13. 家禽体内のカロテノイド含有量が、前記微生物を含まない飼料で飼育された対照家禽におけるカロテノイド含有量と比較して増加する、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 家禽の肉において増加したカロテノイドがルテイン、アドニキサンチン、アドニルビンまたはアスタキサンチンを含む、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 家禽が鶏である、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
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