JP6997017B2 - 太陽電池アレイの支持構造 - Google Patents
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Description
特許文献1には、複数の太陽電池アレイを配置した太陽電池アレイ群の後面や側面に防風体を設けることが提案されている。しかしながら、建物屋上に太陽電池アレイを設置する場合、建物にどのように防風体を取り付けるのか不明であった。
特許文献2には、建物の屋根面にソーラーパネルを固定するソーラーパネル用取付架台が示されている。このソーラーパネル用取付架台は、ソーラーパネルの上下両面を一対の挟持部で挟み込むことで、サイズや形状の異なる種々のソーラーパネルに適用可能である。しかしながら、特許文献2には、屋上設置型のソーラーパネルに作用する風荷重を低減させることで、ソーラーパネル用取付架台の縮小化や構造安全性を高める技術的思想は示されていない。
その際、一部の太陽電池アレイが建物屋上の周縁部に設置されることになる。すると、建物の外壁面に吹き付ける風が、外壁面に沿って上昇し、この屋上周縁部に設置された太陽電池アレイの下面に当たるので、この太陽電池アレイの下面には、太陽電池アレイを上向きに持ち上げようとする正圧が生じることになる。さらに、この建物屋上の周縁部に設置される太陽電池アレイには、太陽電池アレイの下面側に加わる上向き力に加えて、太陽電池アレイの上方側を通り抜ける風によって、太陽電池アレイを上面側に押し上げる風力が作用することが多い。よって、太陽電池アレイやこの太陽電池アレイの支持架台が構造安定性を確保できないおそれがあった(図4(b)を参照)。
第1の発明の太陽電池アレイの支持構造(例えば、後述の太陽電池アレイの支持構造1)は、建物(例えば、後述の建物10)の屋上に設置された太陽電池アレイ(例えば、後述の太陽電池アレイ30)の支持構造であって、前記建物の屋上面(例えば、後述の屋上面12)に設けられた支持架台(例えば、後述の支持架台20)と、当該支持架台に支持された太陽電池アレイと、前記太陽電池アレイに作用する風力を低減する風力低減機構(例えば、後述の風力低減機構40)と、を備え、当該風力低減機構は、平面視で当該建物の外壁面(例えば、後述の外壁面11)から離れて配置されかつ前記太陽電池アレイの上面の高さ位置から前記屋上面よりも下方まで延びる板状の第1の風力低減材(例えば、後述のメッシュ膜50)、および、前記建物の外壁面から外側に向かって略水平に延びる第2の風力低減材(例えば、後述のグレーチング60)のうち、少なくとも一方を備えることを特徴とする。
また、地表面上に設置された外周柱および外周梁で構成される外周柱梁架構に第1の風力低減材を取り付けた。この外周柱梁架構により奥行きを有する立体架構体が形成されるため、風力や地震荷重に対する太陽電池アレイの支持構造の耐震安全性能を高めることができる。
本発明の第1実施形態は、建物の外壁面の外側まで太陽電池アレイの支持架台を延長するとともに、建物の外壁面から外側に一定の距離をあけて、建物屋上から所定高さまで第1の風力低減材(例えば、メッシュ膜)を垂下させ、かつ、第1の風力低減材と建物外壁面との間に略水平に延びる第2の風力低減材(例えば、グレーチング)を設置した、太陽電池アレイの支持構造である(図1~3)。
また、第2実施形態は、第1実施形態に設けられた第1、2の風力低減材に加えて、建物の外壁面から外側まで延設された太陽電池アレイの直下に第3の風力低減材を設置した太陽電池アレイの支持構造である(図A)。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池アレイの支持構造1が適用された建物10の屋上平面図である。図2は、建物10のA-A断面図である。図3は、建物10のB-B矢視図(外観図)である。
太陽電池アレイの支持構造1は、建物10の屋上に設置された太陽電池アレイ30を支持するものである。この建物10は、鉄筋コンクリート造の3階建ての建物である。
太陽電池アレイの支持構造1は、建物10の外側および屋上面12に設けられた支持架台20と、支持架台20の上面に支持された複数の太陽電池パネルからなる太陽電池アレイ30と、太陽電池アレイ30に作用する風力を低減する風力低減機構40と、を備える。風力低減機構40は、支持架台20に支持された第1の風力低減材としてのメッシュ膜50と、第2の風力低減材としてのグレーチング60と、を備える。
外周梁22は、建物10の2階床レベル、3階床レベル、屋上階床レベル、および外周柱21の上端レベルに設けられている。
連結梁23は、建物10の2階床レベル、3階床レベル、屋上階床レベルに設けられている。
外周梁22同士の間で、外周梁22の近傍、建物10の窓13の上端の高さ位置、および窓13の下端の高さ位置には、メッシュ膜50を支持するための膜固定部材26が設けられている。
よって、メッシュ膜50は、支持架台20の外面に沿って設けられており、平面視で建物10の外壁面11から離れて配置され、かつ、太陽電池アレイ30の上面の高さ位置から屋上面12よりも下方まで鉛直方向に延びる板状となっている。
具体的には、メッシュ膜50は、各階の床レベルに設置されるグレーチング60を上下から挟むように配置される。つまり、建物途中階において、各メッシュ膜50の上端は、腰壁上端の高さに設けられた膜固定部材26に固定され、メッシュ膜50の下端は、垂れ壁下端の高さに設けられた膜固定部材26に固定されている。よって、各階の窓13の高さ位置には、メッシュ膜50は設置されておらず、窓13からの眺望が確保されている。
太陽電池アレイ用支持物設計標準(JIS C 8955)には、太陽電池アレイ用の設計支持物の設計用荷重の算出方法が示されている。この太陽電池アレイ用支持物設計標準では、陸屋根の場合、屋根端部から辺長の10%以内の範囲は、適用外とされている。したがって、太陽電池アレイを建物屋上に設置する場合、現行の太陽電池アレイ用支持物設計標準のみに従って設置すると、設置面積が狭くなる。
これに対し、図4(b)に示すように、太陽電池アレイを建物屋上の周縁部にも設置した場合、図4(b)中の矢印のように風が流れるので、周縁部の太陽電池アレイには、上面に大きな負圧が生じ、下面に正圧(面を押す力)が生じる。よって、この太陽電池アレイの上面および下面に作用する圧力の差が大きくなるので、太陽電池アレイに作用する風力は大きくなる。したがって、本願発明のような風力低減機構を設けない場合、太陽電池アレイの支持架台を大型化して強固な構造とする必要があった。
また、図5(b)に示すように、建物の屋上近くの外壁面に側方から風が当たると、この風は外壁面に沿って上昇する気流と、外壁面に沿って下降する気流とに分かれる。これら2つの気流の境界は停留点と呼ばれている。外壁面に沿って上昇する気流を少しでも弱めるため、上述のメッシュ膜はこの停留点よりも下方まで延びていることが好ましい。
上述のように、太陽電池アレイの設置面積を広く確保するため、屋上周縁部にも太陽電池アレイを設置する必要がある。そこで、太陽電池アレイが建物の外壁面よりも外側に張り出した場合に、太陽電池アレイに作用する風荷重を把握するため、以下のように風洞実験を行った。風洞実験では、建物縮小模型に風力低減手段を設置した場合(実施例1、実施例2)と、建物縮小模型に風力低減手段を設置しなかった場合(比較例)と、について実験を行った。
風洞実験には、図6(a)~(c)に示すような寸法の建物縮小模型を用いて、図6(a)中白抜き矢印の方向から風を当てて、所定の測定点でピーク風力係数を測定した。具体的には、建物縮小模型を、直方体(建物)と、この直方体の上面に設けた板材(太陽電池アレイ)と、直方体の側面の外側に上下に延びる板材(第1の風力低減材)とで構成した。
実施例2は、実施例1と同様に太陽電池アレイの周囲にメッシュ膜を設けたが、非常用進入口として、一部のメッシュ膜を撤去した場合であり、実際の太陽電池アレイの設置方法に近い。
また、比較例1は、メッシュ膜を設けなかった場合である。
風洞実験の結果、図7に示す風力低減手段が設けられていない比較例のピーク風力係数の最大値は、風洞実験の風が当たる外壁面でかつ当該外壁面より外側の位置において、-6.05であった。また、図8に示す建物外壁面より外側に第1の風力低減材(メッシュ膜)を設けた実施例1のピーク風力係数の最大値は、図7に示す風力低減手段が設けられていない比較例で最大値を示した建物外壁面の外側位置とは異なり、風洞実験の風が当たる外壁面に隣接する外壁面でかつ当該外壁面の外側の位置において、-4.55であった。さらに、図9に示す実施例2のピーク風力係数の最大値は、実施例1のピーク風力係数の最大値が得られた位置と同様の位置において、-4.50であった。したがって、メッシュ膜を設けることで、ピーク風力係数の最大値は、図9に示す実施例2では、図7に示す比較例に対して、約25%低減された。よって、本発明の第1の風力低減材によってピーク風力を低減できることが判った。
W=qH×Cf
ここで、W:風荷重(N/m2)
qH:設計速度圧(N/m2)
Cf:ピーク風力係数
例えば、計算条件を以下のように設定する。
場所:神奈川県横浜市
地表面粗度区分:III
建物高さH:15m
すると、設計速度圧qHは、以下の式(2)で求められる。
qH=0.6×{1.7×(H/ZG)α×VO}2
=0.6×{1.7×(15/450)0.2×34}2
=514(N/m2)
よって、メッシュ膜を設けなかった場合、太陽電池アレイに作用する風荷重Wの最大値は、6.05×514=3109.7(N/m2)となる。一方、メッシュ膜を設けた場合、太陽電池アレイに作用する風荷重Wの最大値は、4.55×514=2338.7(N/m2)となる。
低層建物用の一般的な太陽電池アレイの耐荷重は2400N/m2であり、高層建物用の太陽電池アレイの耐荷重は5400N/m2である。よって、高さ15mの屋根上に太陽電池アレイを設置する場合、メッシュ膜を設けない場合には、高層建物用の太陽電池アレイを用いる必要があるため、設置コストが上昇するが、メッシュ膜を設けることで、低層建物用の一般的な太陽電池アレイを用いることができ、設置コストを抑制できることが判る。
(1)太陽電池アレイ30の上面の高さ位置から建物10の屋上面12よりも下方まで延びるメッシュ膜50を設けた。よって、建物10の外壁面11に吹き付ける風がメッシュ膜50で遮られるから、建物10の外壁面11に沿って上昇する風量を低減して、屋上周縁部に設置された太陽電池アレイ30の下面に生じる正圧を低減できる。これにより、太陽電池アレイ30やその支持架台20の構造安定性を確保できる。
(3)太陽電池アレイ30を支持する支持架台20を、建物10の外壁面11の外側まで延長した。よって、建物10の屋上の平面積(建物10の建築面積)を増加させることなく、太陽電池アレイ30の設置面積を拡大できる。
また、地表面上に設置された外周柱21、外周梁22、および連結梁23で構成される外周柱梁架構にメッシュ膜50を取り付けた。これら外周柱21、外周梁、および連結梁23からなる外周柱梁架構が奥行きを有する立体架構体を形成するので、風力や地震荷重に対する太陽電池アレイの支持構造1の耐震安全性能を高めることができる。
図10は、本発明の第2実施形態に係る太陽電池アレイの支持構造1Aの部分拡大図である。
本実施形態では、風力第1風力低減材としてのメッシュ膜50および第2の風力低減材としてのグレーチング60に加えて、第3の風力低減材としてのメッシュ膜70を設けた点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、第3の風力低減材であるメッシュ膜70は、建物10の外壁面11よりも外側まで延設された太陽電池アレイ30Aの下面を覆うように設けられている。具体的には、太陽電池アレイ30Aは、束柱31により屋上梁25の上方に設置されている。また、メッシュ膜70は、最上段の外周梁22および屋上梁25に支持されている。このとき、例えば、屋上梁25の上フランジの上面に図示しないボルトを溶接し、このボルトをメッシュ膜70に貫通させてナットを締め付けることで、メッシュ膜70を屋上梁25に固定する。
なお、本実施形態では、第3の風力低減材としてメッシュ膜70を用いたが、これに限らず、第3の風力低減材として、パンチングメタル、有孔板(例えば、カルシウム板、フレキシブル板)などを用いてもよい。
また本実施形態では、メッシュ膜70を、外周梁22および屋上梁25に取り付けたが、これに限らず、メッシュ膜70を太陽電池アレイ30Aの下面部に留め金具等で固定してもよい。
(4)建物10の外壁面11から外側に延出する太陽電池アレイ30Aの下面に第3の風力低減材であるメッシュ膜70を設けたので、建物10の外壁面11とこの外壁面11から離れた位置に設けられたメッシュ膜50との間を上昇してきた風が、太陽電池アレイ30Aの下面に当たることはなく、太陽電池アレイ30Aに作用する風量や風圧を低減でき、太陽電池アレイ30Aの構造安全性を高めることができる。
例えば、上述の各実施形態では、第1の風力低減材であるメッシュ膜50および第2の風力低減材であるグレーチング60を各階に設けたが、これに限らず、メッシュ膜50およびグレーチング60を建物10の上層階のみに設けてもよい。具体的には、メッシュ膜50およびグレーチング60を、屋上階から図5に示す停留点が位置する階の垂れ壁の下端まで設置してもよい。
また、上述の各実施形態では、第1の風力低減材であるメッシュ膜50、第2の風力低減材であるグレーチング60、および第3の風力低減材であるメッシュ膜70を、建物10の外壁面11の全面に設けたが、これに限らない。すなわち、建物10に接近して他の建物が配置されており、建物10の屋上付近に強風が作用しない場合は、メッシュ膜50、グレーチング60、およびメッシュ膜70を、外壁面11の全面ではなく、外壁面11の一部のみに設けてもよい。
10…建物 11…外壁面 12…屋上面 13…窓
20…支持架台 21…外周柱 22…外周梁 23…連結梁 24…屋上柱
25…屋上梁 26…膜固定部材 30、30A…太陽電池アレイ 31…束柱
40…風力低減機構 50…メッシュ膜(第1の風力低減材)
60…グレーチング(第2の風力低減材) 70…メッシュ膜(第3の風力低減材)
Claims (3)
- 建物の屋上に設置された太陽電池アレイの支持構造であって、
前記建物の屋上面に設けられた支持架台と、
当該支持架台に支持された太陽電池アレイと、
前記太陽電池アレイに作用する風力を低減する風力低減機構と、を備え、
当該風力低減機構は、平面視で当該建物の外壁面から離れて配置されかつ前記太陽電池アレイの上面の高さ位置から前記屋上面よりも下方まで延びる第1の風力低減材、および、前記建物の外壁面から外側に向かって略水平に延びる第2の風力低減材のうち、少なくとも一方を備えることを特徴とする太陽電池アレイの支持構造。 - 前記太陽電池アレイは、前記建物の外壁面の外側に設けられ、
前記風力低減機構は、当該太陽電池アレイまたは前記支持架台に支持されて当該太陽電池アレイの下面を覆う第3の風力低減材を備えることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池アレイの支持構造。 - 前記支持架台は、前記建物の外壁面の外側まで延長して設けられており、前記建物の外側の地表面に設けられた外周柱と、当該外周柱同士を連結する外周梁と、を備え、
前記第1の風力低減材は、前記外周柱および前記外周梁に支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池アレイの支持構造。
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