以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
MRI装置1は、磁石架台100、制御キャビネット300、コンソール400、寝台500、サーチコイル600、及び報知部700を備える。磁石架台100、制御キャビネット300、寝台500、サーチコイル600、及び報知部700は、一般的には、防音設計された検査室に備えられる。検査室は、撮影室とも呼ばれる。コンソール400は、制御室に備えられる。制御室は、操作室とも呼ばれる。
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、及びWB(Whole Body)コイル12を有する。これらの部材は円筒状の筐体に収納されている。寝台500は、寝台本体50及び天板51を有する。
制御キャビネット300は、傾斜磁場用電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF送信器32、RF受信器33、及びシーケンスコントローラ34を備える。
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力回路43を備える。コンソール400は、ホスト計算機として機能する。
磁石架台100の静磁場磁石10は、磁石が円筒形状の磁石構造であるトンネルタイプと、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型(オープン型)とに大別される。ここでは、静磁場磁石10がトンネル型である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体、例えば患者Uが搬送されるボア内に静磁場を発生させる。ボアとは、磁石架台100の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石10は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石10は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石10が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
静磁場磁石10は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は、長時間、例えば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
傾斜磁場コイル11は、静磁場磁石10と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に設置されている。傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場用電源31から供給される電力により傾斜磁場を患者Uに印加する。
ここで、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流がイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル11として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、X軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
WBコイル12は、全身用RF(Radio Frequency)コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル11の内側に患者Uを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル12は、RF送信器32から伝送されるRFパルスを患者Uに向けて送信する。一方、WBコイル12は、原子核の励起によって患者Uから放出される磁気共鳴信号、すなわち、MR(Magnetic Resonance)信号を受信する。
MRI装置1は、WBコイル12の他、図1に示すようにローカルコイル20を備えてもよい。ローカルコイル20は、局所用RFコイルとも呼ばれる。ローカルコイル20は、患者Uの体表面に近接して配置される。ローカルコイル20は、複数のコイル要素を備えてもよい。これら複数のコイル要素は、ローカルコイル20の内部でアレイ状に配列されるため、PAC(Phased Array Coil)と呼ばれることもある。
ローカルコイル20には幾つかの種別がある。例えば、ローカルコイル20には、図1に示すように患者Uの胸部、腹部、又は脚部に設置されるボディコイル(Body Coil)や、患者Uの背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。この他、ローカルコイル20には、患者Uの頭部を撮像するための頭部コイル(Head Coil)や、足を撮像するためのフットコイル(Foot Coil)といった種別もある。また、ローカルコイル20には、手首を撮像するためのリストコイル(Wrist Coil)、膝を撮像するためのニーコイル(Knee Coil)、肩を撮像するためのショルダーコイル(Shoulder Coil)といった種別もある。ローカルコイル20の多くの種別は受信専用のコイルであるが、ローカルコイル20の中には送信と受信を双方行う送受信コイルもある。例えば、ローカルコイル20としての頭部コイル及び膝用コイルの中には、送受信コイルも存在する。
傾斜磁場用電源31は、X軸、Y軸、及びZ軸の傾斜磁場を発生するコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場用電源31x,31y,31zを備える。傾斜磁場用電源31x、31y、31zは、シーケンスコントローラ34の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。それにより、傾斜磁場コイル11は、X軸、Y軸、及びZ軸の方向における傾斜磁場を患者Uに印加することができる。
RF送信器32は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいてRFパルス信号を生成する。RF送信器32は、生成したRFパルス信号をWBコイル12に伝送する。RFパルスの印加によって患者UからMR信号が発生する。このMR信号をローカルコイル20又はWBコイル12が受信する。
ローカルコイル20で受信したMR信号、より具体的には、ローカルコイル20内の各コイル要素で受信したMR信号は、RF受信器33に伝送される。各コイル要素の出力経路や、WBコイル12の出力経路はチャンネルと呼ばれる。このため、各コイル要素やWBコイル12から出力される夫々のMR信号をチャンネル信号と呼ぶこともある。WBコイル12で受信したチャンネル信号もRF受信器33に伝送される。
RF受信器33は、ローカルコイル20やWBコイル12からのチャンネル信号、すなわち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変化されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場用電源31、RF送信器32、及びRF受信器33をそれぞれ駆動することによって患者Uの撮像を行う。撮像によってRF受信器33から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、その生データをコンソール400に送信する。
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
寝台500は、寝台本体50及び天板51を備える。寝台本体50は、天板51を上下方向及び水平方向に移動することができる。撮像前に天板51に配置された患者Uを所定の高さまで移動させる。その後、撮影時には天板51を水平方向に移動させて患者Uをボア内に移動させる。天板51は、ローカルコイル20を接続可能な複数のポート51aを備える。
複数のポート51aの各ポートは、ローカルコイル20の複数種別に対応する。複数のポート51aのうち所定のポートにローカルコイル20が接続される。
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力回路43を備える。
処理回路40は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路40は、記憶回路41に記憶された、又は、処理回路40内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで後述する機能を実現する。
また、処理回路40は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、プログラムを記憶する記憶回路41は、複数の回路の各回路に個別に設けられてもよいし、1個の記憶回路41が複数の回路の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
記憶回路41は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。記憶回路41は、USB(Universal Serial bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。記憶回路41は、処理回路40において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ42への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路43によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。
入力回路43は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイス(マウス等)やキーボード等の入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路43に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路43はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路40に出力する。なお、MRI装置1は、入力デバイスがディスプレイ42と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
サーチコイル600は、可搬型であり、外来ノイズの検知用に設けられる。サーチコイル600は、コイル部と、複数のポート51aのうちいずれかに接続可能なケーブルと、を備える。サーチコイル600は、コイル部に誘導された外来ノイズ(雑音)電流を電圧に変換し、検知信号を発生する。サーチコイル600は、検知信号を、ケーブルと、複数のポート51aのうちいずれかと、を介してRF受信器33に出力する。RF受信器33は、サーチコイル600からの検知信号をAD変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。
報知部700は、検査室に設けられるディスプレイ71及びスピーカ72(ともに図2に図示)のうち少なくとも一方を備える。ディスプレイ71は、ディスプレイ42と同様に、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機ELパネル等の表示デバイスである。ディスプレイ71は、サーチコイル600で発生する検知信号の周波数特性に応じた報知、すなわち、表示を行う。周波数特性とは、検知信号の各周波数に対応する強度、つまり、周波数スペクトルと定義される。
スピーカ72は、電気信号を物理振動に変えて、音声等の音を生成して出力するデバイスである。スピーカ72は、サーチコイル600で発生する検知信号の周波数特性に応じた報知、すなわち、音の発生を行う。また、スピーカ72は、検知信号の周波数をスイープさせる周波数スイープ中に、周波数スイープ中である報知、すなわち、音の発生を行う。
スペクトルアナライザ本体には磁性体が含まれているので、磁場環境である検査室内にスペクトルアナライザを持ち込むことはできない。そのため、スペクトルアナライザでノイズチェック作業を行うためには、サーチコイルを持っている検査室内の操作者は、制御室のスペクトルアナライザのモニタを見る必要がある。そのため、サーチコイルを持っている操作者は、作業中、モニタを見ることができない。ゆえに、従来技術では、サーチコイルを操作する検査室内の者とモニタする制御室内の者との2人がかりで作業を行う必要がある。検査室の報知部700によれば、検査室と制御室とに分かれた2人がかりで作業する必要がなくなる。仮に、1人の者でノイズチェック作業を行うにしても、検査室におけるデータ収集と、制御室におけるデータチェックとを行うために、当該1人の者が検査室と制御室との間を行き来することになり、作業に時間がかかることになる。検査室の報知部700によれば、1人でノイズチェック作業を行う場合にも、検査室と制御室との間の行き来の手間が生じない。
なお、報知部700は、光を発する発光体を備えてもよい。発光体も、サーチコイル600で発生する検知信号の周波数特性に応じた報知、すなわち、光の発生を行うこともできる。
図2は、本実施形態に係るMRI装置1の機能を示すブロック図である。
処理回路40(又はシーケンスコントローラ34の処理回路)がプログラムを実行することによって、MRI装置1は、設定機能401、計測機能402、及び報知制御機能403として機能する。
設定機能401は、ノイズの周波数特性の計測に係る設定を行う機能である。設定機能401は、調査対象のノイズ源におけるノイズの周波数に基づいて、分解能帯域幅(RBW:Resolution Band Width)及びスイープ周波数帯域(スイープスパン)を設定する。
計測機能402は、傾斜磁場コイル11及びRF送信器32への電力の供給が停止された状態、つまり、傾斜磁場及び高周波磁場が印加されていない状態で、シーケンスコントローラ34から検知信号を受信する機能を含む。計測機能402は、傾斜磁場及び高周波磁場が印加されていない状態に加え、傾斜磁場コイル11やRF送受信に関連する回路系への電力の供給が停止された状態、例えば、寝台500への電力の供給が停止された状態で、検知信号を受信することが好適である。また、計測機能402は、検知信号を周波数スイープして取得される検知信号と各発振信号との差の周波数に基づいて、検知信号の周波数特性を計測する機能を含む。ここで、周波数スイープは、スイープ周波数帯域の最初から最後まで行われる周波数スイープの後に再びスイープ周波数帯域の最初に戻って行われる複数の周波数スイープを意味する場合もあり、スイープ周波数帯域の最初から最後まで行われる1回の周波数スイープを意味する場合もある。
具体的には、計測機能402は、高周波信号である検知信号の周波数fsを、信号処理し易いIF(Intermediate Frequency)周波数に落とすために、設定機能401によって設定されたスイープ周波数帯域に従って時間tで変化する発振信号fLO[t]にてダウンコンバージョンする。そして、計測機能402は、取得された差の周波数fLO[t]-fsを、設定機能401によって設定された分解能帯域幅で定まる分解能帯域幅フィルタでフィルタして検波する。
報知制御機能403は、計測機能402によって計測された周波数特性に応じた報知を行うように報知部700を制御する機能を含む。例えば、報知制御機能403は、計測された周波数特性を、検査室のディスプレイ71に逐次表示させる。ディスプレイ71には、横軸が周波数で縦軸が強度となる座標軸上に周波数特性が表示される。例えば、図4(A)、(B)に図示するように、発振信号による検知信号の周波数スイープに伴って、光点が左端(低周波数側)から右端(高周波数側)に移動する。これにより、検査室でサーチコイル600を操作する操作者は、周波数スイープ中に周波数特性を視認できる。また、報知制御機能403は、計測された周波数特性の結果を、記憶回路41に記憶させることもできる。
また、報知制御機能403は、発振信号による検知信号の周波数スイープ中に、周波数スイープ中であることを示す音を検査室のスピーカ72から連続的又は断続的に発生させる。これにより、検査室でサーチコイル600を操作する操作者は、周波数スイープ中であることを認識できる。
なお、MRI装置1が有する機能401~403の具体的な説明は、図3に示すフローチャートを用いて行なう。
図2及び図3を用いて、MRI装置1の動作を具体的に説明する。
図3は、本実施形態に係るMRI装置1の動作を示すフローチャートを示す図である。
MRI装置1の設置時、又は、メンテナンス時、設定機能401は、入力回路43からの入力信号に従って、外来ノイズの調査モードを設定する(ステップST1)。設定機能401は、調査対象のノイズ源におけるノイズの周波数に基づいて、分解能帯域幅及びスイープ周波数帯域を設定する(ステップST2)。操作者によって、検査室のサーチコイル600が、複数のポート51aのうちいずれかに接続される(ステップST3)。なお、ステップST2及びST3の順序は問わない。
計測機能402は、傾斜磁場及び高周波磁場が印加されていない状態で、サーチコイル600による外来ノイズの周波数特性の計測を開始する(ステップST4)。サーチコイル600は、コイル部に誘導されたノイズ電流を電圧に変換し、検知信号としてRF受信器33に出力する。
計測機能402は、傾斜磁場及び高周波磁場が印加されていない状態で、シーケンスコントローラ34から、サーチコイル600によって発生された検知信号を継続的に受信する(ステップST5)。計測機能402は、検知信号の周波数スイープを開始し、検知信号と各発振信号との差の周波数に基づいて、検知信号の周波数特性を計測する(ステップST6)。ステップST6において、計測機能402は、高周波信号である検知信号の周波数fsを、信号処理し易いIF周波数に落とすために、ステップST2によって設定されたスイープ周波数帯域に従って時間tで変化する発振信号fLO[t]にてダウンコンバージョンする。そして、計測機能402は、取得された差の周波数fLO[t]-fsを、設定機能401によって設定された分解能帯域幅で定まる分解能帯域幅フィルタでフィルタリングする。
報知制御機能403は、発振信号による検知信号の周波数スイープ中、すなわち、ステップST6~ST10の間、周波数スイープ中を示す音を検査室のスピーカ72から連続的又は断続的に発生させる(ステップST7)。これにより、検査室でサーチコイル600を操作する操作者は、周波数スイープ中であることを認識できる。周波数スイープ中に絶えず音を発生させる代わりに、周波数スイープの開始タイミング(ステップST6のタイミング)及び終了タイミング(ステップST10のタイミング)等を示す音を検査室のスピーカ72から発生させてもよい。
報知制御機能403は、ステップST6によって計測された外来ノイズの周波数特性の結果を報知する。例えば、報知制御機能403は、ステップST6によって計測された外来ノイズの周波数特性の結果を、検査室のディスプレイ71に逐次表示させる(ステップST8)。操作者は、検査室の中に外来ノイズが侵入していることが疑われる箇所、例えば、天井、内壁、照明、及び出入口の扉付近にサーチコイル600をそれぞれ近づける。これにより、ノイズ源ごとに外来ノイズの周波数特性を計測することができる。
図4(A),(B)は、本実施形態に係るMRI装置1で表示される外来ノイズの周波数特性の結果の一例を示す図である。
図4(A),(B)に示す外来ノイズの周波数特性は、検査室のディスプレイ71に逐次表示される。ディスプレイ71には、横軸が周波数で縦軸が強度となる座標軸上に周波数特性が表示される。例えば、図4(A),(B)に図示するように、発振信号による検知信号の周波数スイープに伴って、光点が左端から右端に移動する。図4(A)は、時間t1における差の周波数fLO[t1]-fsに係る光点P[t1]を示し、図4(B)は、時間t2における差の周波数fLO[t2]-fsに係る光点P[t2]を示す。
分解能帯域幅フィルタの出力が検波されることで、差の周波数fLO[t1]-fsに信号成分が存在することが映像化される。検波の出力電圧を使用して、上下軸(振幅)がドライブされる。共振信号による検知信号の周波数スイープによって、左右軸(周波数)と差の周波数fLO[t]-fsとが同期される。その結果、ディスプレイ71には、検知信号のスペクトル成分の振幅対周波数が表示される。
図4(A),(B)に示す外来ノイズの周波数特性の結果の逐次表示により、検査室でサーチコイル600を操作する操作者は、周波数スイープ中に、外来ノイズの周波数特性の結果を視認できる。
図2及び図3の説明に戻って、報知制御機能403は、ステップST6によって計測された外来ノイズの周波数特性の結果を、記憶回路41に記憶させる(ステップST9)。これにより、ステップST8による外来ノイズの周波数特性の結果の逐次表示に加え、外来ノイズの周波数特性の結果のリプレイを行うことができる。
また、報知制御機能403は、WBコイル12から出力される高周波磁場の周波数帯域が外来ノイズの周波数を含む場合に報知(警告)するように報知部700を制御してもよい。その場合、外来ノイズの周波数特性の結果が記憶されていてもよいし、外来ノイズの周波数の情報が記憶されていてもよい。なお、報知制御機能403は、外来ノイズの周波数を、周波数特性の結果に基づく信号レベルの閾値処理で判断する。さらに、臨床においてWBコイル12から出力される高周波磁場の周波数帯域が経年劣化により変化して、外来ノイズの周波数に近づいてくることも予想される。その場合、後の臨床の場において、高周波磁場の周波数帯域の、外来ノイズとの差が閾値以内となった場合に、診断画像の劣化の可能性があることを操作者に報知(警告)するように報知部700を制御してもよい。
また、報知制御機能403は、外来ノイズが存在していた時に、外来ノイズの存在を示す報知を検査室の報知部700から行うように制御することもできる。例えば、報知制御機能403は、外来ノイズが存在していた時に、外来ノイズの存在を示す画像を検査室のディスプレイ71に表示させるようにディスプレイ71を制御する。また、報知制御機能403は、外来ノイズが存在していた時に、外来ノイズの存在を示す音を検査室のスピーカ72から発生するようにスピーカ72を制御する。なお、報知制御機能403は、外来ノイズの存在を、周波数特性の結果に基づく信号レベルの閾値処理で判断すればよい。
設定機能401は、予め設定された周波数スイープ要素の繰り返し数の完了、又は、手動的な終了操作により、周波数スイープを終了して、外来ノイズの周波数特性の計測を終了する(ステップST10)。設定機能401は、ステップST1によって開始された外来ノイズの調査モードを終了するかを判断する(ステップST11)。ステップST11の判断にてYES、すなわち、外来ノイズの調査モードを終了すると判断される場合、設定機能401は、外来ノイズの調査を終了する。
一方で、ステップST11の判断にてNO、すなわち、外来ノイズの調査モードを終了しないと判断される場合、設定機能401は、分解能帯域幅及びスイープ周波数帯域を設定する(ステップST2)。例えば、初めに広い分解能帯域幅を設定することで(ステップST2)、広範囲の周波数特性を把握した後で(ステップST6)、続けて狭い分解能帯域幅を設定することで(ステップST2)、広範囲のうちクリチカルな部分の周波数特性を計測することができる(ステップST6)。
MRI装置1によれば、検査室内の天井及び内壁等の複数のノイズ源となりうる箇所に順にサーチコイル600を向け、周波数スイープすることで周波数特性を得ることができる。外来ノイズが存在する場合、取得した周波数特性において外来ノイズに対応する成分が現れるため、外来ノイズのノイズ源を特定することができる。外来ノイズのノイズ源を特定することで、操作者は、MRI装置1のメンテナンス時に、特定されたノイズ源に係る部材のネジの緩みや隙間等に対する対策を講じることもできる。
また、MRI装置1によれば、磁気が発生している検査室内に、周波数特性を計測する磁性体を含む専用の機器、例えば、スペクトルアナライザを持ち込む必要がなくなる。さらに、MRI装置1によれば、周波数特性の結果が検査室のディスプレイ71に逐次表示されるので、検査室内でサーチコイル600を操作する操作者による検査室内の外来ノイズの調査が簡便になる。
加えて、MRI装置1によれば、周波数スイープ中や、周波数スイープの開始タイミング及び終了タイミング等を示す音が検査室のスピーカ72から適宜発生されるので、検査室内でサーチコイル600を操作する操作者による検査室内の外来ノイズの調査が簡便になる。
また、スピーカ72は、サーチコイル600の一部に設けられてもよい。その場合、処理回路40の報知制御機能403は、無線通信を介してサーチコイル600のスピーカ72から周波数スイープ中や、周波数スイープの開始タイミング等を示す音を発生させる。
なお、サーチコイル600を用いて外来ノイズの周波数特性を計測するものとして説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、WBコイル12や、ローカルコイル20を用いて外来ノイズの周波数特性を計測することもできる。
なお、サーチコイル600は、外来ノイズの検知用に設けられるものとして説明したが、その場合に限定されるものではない。サーチコイル600は、MRI本体の回路基盤から発生するノイズを検出してもよい。
ここで、サーチコイル600に代替して、WBコイル12や、ローカルコイル20を用いて外来ノイズの周波数特性を計測することもできる。その場合、周波数スイープ中や周波数スイープの開始タイミング等を示す報知を検査室の報知部700から適宜報知させると、検査室内でサーチコイル600を操作する操作者による検査室内の外来ノイズの調査が簡便になる。
また、WBコイル12を用いて、同様な方法によりWBコイル12からの検知信号の周波数特性を計測し、WBコイル12のチューニングが適正であるか否かを判定することもできる。WBコイル12は、WBコイル12の周波数特性を変更するために、静電容量を変更可能な可変コンデンサを含む。共振回路としての可変コンデンサは、特定の共振周波数となるようにチューニング可能である。計測手段402は、WBコイル12のチューニング作業の際、テスト信号をWBコイル12に入力する。WBコイル12の出力である検知信号を周波数スイープして取得される信号と各発振信号との差の周波数に基づいて、検知信号の周波数特性を計測する。報知制御手段403は、WBコイル12のチューニングが適正であるか否かを示す報知を行うように報知部700を制御する。例えば、報知制御機能403は、WBコイル12の周波数が特定の共振周波数から遠い場合の報知方法と、WBコイル12の周波数が特定の共振周波数に近い場合の報知方法と、WBコイル12の周波数が特定の共振周波数にほぼ一致する場合の報知方法とを変えることができる。
さらに、MRI装置1は、その据付時に、WBコイル12からの検知信号を周波数スイープして検知信号の周波数特性を計測し、周波数特性に基づいてWBコイル12のチューニングそのものを行っても良い。具体的には、MRI装置1は、その据付時に、WBコイル12に入射信号を送り、WBコイル12からの検知信号、つまり、反射信号の周波数特性を計測し、WBコイル12のチューニングを行う。従来のMRI装置では、その据付時、別体としてのスペクトルアナライザを用いてWBコイル12のチューニングを行っていた。一方で、MRI装置1は、その据付時、スペクトルアナライザを用いずにWBコイル12のチューニングを行うことができる。
図5は、MRI装置1において、WBコイル12のチューニング方法を説明するための図である。
図5は、RF送信器32、シーケンスコントローラ34、及びWBコイル12を示す。RF送信器32は、送信回路321、方向性結合器(「カプラ」とも呼ばれる)322、受信回路323、及びデータ処理回路324を備える。送信回路321は、シーケンスコントローラ34による制御の下、包絡線情報を発生させ、搬送波と包絡線情報とをミキシングすることで所定の周波数を有するRF信号に変調する。
ここで、送信回路321は、一定の周波数の連続波(CW:Continuous Wave)であるRF信号をアナログ信号として生成してWBコイル12に順に伝送する。送信回路321は、WBコイル12の反射信号を周波数スイープすべく、一定の周波数であって、異なるn(n=2,3,…)個の周波数f1~fnの連続波から成るn種類のRF信号として入射信号Pf1~Pfnを生成する。なお、n種類の入射信号の振幅、即ち、電圧は、ほぼ同一であることが好適である。図6(A)は、MRI装置1において、WBコイル12に順に伝送される8(n=8)種類の入射信号Pf1~Pf8の例を示す図である。
図5の説明に戻って、送信回路321は、変調されたn種類の入射信号をWBコイル12に順に伝送する。伝送されたn種類の入射信号に応じて、WBコイル12は、RFパルスを印加する。WBコイル12は、撮像空間にファントムが配置された状態、又は、ファントムが配置されていない状態、つまり、無負荷の状態でRFパルスを印加する。なお、MR撮像時には送信回路321によって生成されたRFパルス信号を、RF増幅器Cを介して増幅する。しかしながら、据付時のWBコイル12のチューニングの際には、送信回路321によって生成されたRF信号を増幅する必要はなく、RF信号は、直接的にWBコイル12に伝送される。
方向性結合器322は、RF信号の伝送経路上に非接触で配置される。方向性結合器322は、WBコイル12からの反射信号のみを取り出し、n種類の反射信号を受信回路323に順に送る。受信回路323は、シーケンスコントローラ34からのタイミング信号に基づいて、n個の周波数から成るn種類の入射信号の送信タイミングに、方向性結合器322からのn種類の反射信号を順に対応付け、対応付けられたn種類の反射信号を増幅して順に検波する。
データ処理回路324は、受信回路323からのn種類の反射信号を順にデジタル処理する。図6(B)は、MRI装置1において、8(n=8)種類の入射信号Pf1~Pf8に対応する8(n=8)種類の反射信号Qf1~Qf8の例を示す図である。
図5の説明に戻って、データ処理回路324は、n種類の反射信号に対して最大値探査処理を実行する。つまり、データ処理回路324は、n種類の反射信号に基づいてn個の周波数f1~fnにおけるn個の振幅、つまり、電圧を求め、n個の電圧から最大値をもつ電圧を求める。
図7は、MRI装置1において、n種類の反射信号Pf1~Pfnに対応するn個の電圧を、周波数に従って配列した図である。
図7に示すように、反射信号Qf1~Qfnのうち反射信号Qfmの場合に電圧が最小となることが分かる。WBコイル12の入力電圧(つまり入射信号Pf1~Pfnの電圧)が一定の場合、反射信号QfmのときにWBコイル12の出力電圧が最小となるので、WBコイル12からのリターンロスが最小であることを意味し、また、周波数fmがWBコイル12の共鳴周波数に最も近いことを意味する。なお、入射信号Pf1~Pfnの電圧が一定ではない場合は、反射信号の電圧に対する入射信号の電圧の比をとり、その比が最大の場合の周波数fmがWBコイル12の共鳴周波数に最も近いことを意味する。
図5の説明に戻って、シーケンスコントローラ34は、その据付時、共振回路としての可変コンデンサが、特定の周波数となるようにチューニングを行う。具体的には、シーケンスコントローラ34は、その据付時、可変コンデンサが、反射信号の電圧が最小の場合の周波数fmとなるようにWBコイル12のチューニングを行うことができる。
図5~図7を用いて説明したように、MRI装置1によると、その据付時、別体としてのスペクトルアナライザを用いずに、WBコイル12のチューニングを行うことができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態のMRI装置によれば、周波数特性に応じた報知や、サーチコイルを用いた周波数特性の計測を行うことができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。