(本開示に至る経緯)
加齢に伴い、咀嚼機能及び嚥下機能(以下、咀嚼嚥下機能)が低下することが知られている。咀嚼嚥下機能が著しく低下すると、飲食ができないことによる栄養状態の低下、食べる楽しみを失うことによるQOL(Quality Of Life)の低下、飲食物が気道に入ることによる誤嚥性肺炎の発症等の問題が生じる。特に、誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めており、高齢者の咀嚼嚥下機能を高めることは、喫緊の課題となっている。
咀嚼嚥下機能の低い高齢者に対して、食べやすいからという理由で、軟らかい食品を提供すると、高齢者は一次的にはスムーズに当該食品を摂取できる。しかし、高齢者に対し当該食品を提供することを継続すると、高齢者の咀嚼嚥下機能はますます低下するおそれがある。
逆に、高齢者に対して、食べ応えのある食品を与えると、多くの咀嚼回数、及び長い嚥下周期を要し、高齢者は一時的にはスムーズに当該食品を摂取できない。しかし、高齢者に対し当該食品を提供することを継続すると、高齢者の咀嚼嚥下機能は改善していくことが期待できる。これにより、同じ食品に対する咀嚼回数が減少し、嚥下周期が短くなる。
上述の特許文献1では、トレーニング器具をユーザの口腔内に挿入し、実際の嚥下動作に近い態様でトレーニングが行われる。しかしながら、特許文献1の技術は、ユーザに擬似的に嚥下動作を行わせるものに過ぎず、ユーザに実際の食品を咀嚼させ、実際の嚥下動作を行わせるものではない。
特許文献2には、3Dプリンタにより製造された食品を高齢者の咀嚼嚥下機能を向上させるために利用することについては、記載も示唆もされていない。
これらの知見に基づき、本発明者らは、適切な硬度の食品の提供を通じて、ユーザの咀嚼嚥下機能を向上させることができるフードプリンタの制御方法を見出した。
本開示の一態様に係る制御方法は、ネットワークを介して、ユーザに備え付けられたセンシングデバイスから前記ユーザが前記第1プリント食品を食べる際の前記ユーザの咀嚼に関わる咀嚼嚥下情報を取得し、前記咀嚼嚥下情報に基づき前記ユーザの嚥下周期における咀嚼回数を判断し、前記第1硬度及び前記咀嚼回数に基づき前記フードプリンタにより生成される第2プリント食品の第2硬度を決定し、ネットワークを介して、前記決定された前記第2硬度の前記第2プリント食品を前記フードプリンタに生成させるための印刷制御情報を前記フードプリンタに送信する。
この構成によれば、センシングデバイスからネットワークを介してユーザが第1硬度を有する第1プリント食品を食べる際のユーザの咀嚼に関わる咀嚼嚥下情報が取得される。咀嚼嚥下情報に基づいてユーザの嚥下周期における咀嚼回数が判断される。判断された咀嚼回数及び第1硬度に基づいて第2硬度が決定される。決定された第2硬度を有する第2プリント食品をフードプリンタに生成させるための印刷制御情報がネットワークを介してフードプリンタに送信される。
これにより、第1硬度を有する第1プリント食品を食べたときの嚥下周期における咀嚼回数を基準にしてユーザの咀嚼嚥下機能を高めるために適切な第2硬度を決定し、その第2硬度を有する第2プリント食品をフードプリンタに生成させ、生成された第2プリント食品をユーザに食べさせることが可能となる。その結果、ユーザの咀嚼嚥下機能を向上させることが可能となる。
上記制御方法において、嚥下周期は、前記ユーザが前記第1プリント食品の一口を噛み始めてから飲み込むまでに相当する期間であってもよい。
この構成によれば、嚥下周期の開始タイミングと終了タイミングとを明確に定義することが可能となる。
上記制御方法において、前記印刷制御情報は、前記ユーザの咀嚼回数が所定回数よりも少ない場合、より硬い前記第2硬度の前記第2プリント食品を生成する印刷条件を含んでもよい。
ある食品の嚥下周期における咀嚼回数が多いほどユーザの咀嚼嚥下機能は低下している可能性がある。咀嚼嚥下機能が低下したユーザに軟らかい食材ばかり食べさせていると、ユーザの咀嚼嚥下機能は向上しない。この構成によれば、嚥下周期における咀嚼回数が所定回数よりも少ない場合、より硬い第2硬度が決定されるため、その食品を飲み込むまでにより多くの咀嚼を必要とし、ユーザの咀嚼嚥下機能を高めることができる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、加速度センサーであり、前記咀嚼嚥下情報は、前記加速度センサーで検出された加速度を示す加速度情報を含んでもよい。
この構成によれば、加速度センサーが検出した加速度情報に基づいて咀嚼回数が判断されるため、咀嚼回数を正確に判断することが可能になる。
上記制御方法において、前記加速度センサーは、前記ユーザの箸、フォーク又はスプーンのいずれか一に備え付けられており、前記嚥下周期の始期は、前記加速度情報に基づいて判断される前記ユーザの箸、フォーク又はスプーンのいずれか一を上げる第1タイミング又は下げる第2タイミングのいずれか一を用いて判断されてもよい。
この構成によれば、ユーザの箸、フォーク、又はスプーンに備え付けられた加速度センサーが検出した加速度情報に基づいてユーザの箸、フォーク、又はスプーンを上げる第1タイミング又は下げる第2タイミングが検出され、第1タイミング又は第2タイミングにより嚥下周期の始期が検出されている。そのため、ユーザの日常生活において、嚥下周期の始期を検出することが可能になる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、筋電位を検知するものであり、前記嚥下周期の終期及び前記咀嚼回数は、前記検知された筋電位に基づき判断されてもよい。
この構成によれば、筋電位を検知するセンサーを用いてユーザの筋電位が検知され、その筋電位に基づいて嚥下周期の終期及び咀嚼回数が判断されているため、嚥下周期の終期及び咀嚼回数を正確に判断することが可能になる。
上記制御方法において、センシングデバイスは、ユーザの眼鏡に備え付けられていてもよい。
この構成によれば、眼鏡を装着するだけで、ユーザの筋電位が検知され、検知された筋電位からユーザの咀嚼回数が判断されるため、ユーザの日常生活において、咀嚼回数を判断することが可能になる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、咀嚼音を検知するものであり、前記嚥下周期の終期及び前記咀嚼回数は、前記検知された咀嚼音に基づき判断されてもよい。
この構成によれば、咀嚼音に基づき嚥下周期の終期及び咀嚼回数が判断されるため、咀嚼回数を正確に判断することが可能になる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、前記ユーザのネックレスに備え付けられたマイクであってもよい。
この構成によれば、咀嚼音を検知するデバイスがユーザのネックレスに設けられているため、ユーザの日常生活において、嚥下周期の終期及び咀嚼回数を判断することが可能になる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、前記ユーザのイヤホン型のマイクであってもよい。
この構成によれば、イヤホン型のマイクをユーザに装着させるだけで、嚥下周期の終期及び咀嚼回数を判断することが可能になる。
上記制御方法において、前記第2プリント食品は、内部に孔を有する立体構造体であり、前記第2硬度は、前記の孔の数を増減することで調整されてもよい。
この構成によれば、第2プリント食品の孔の数を増減させるといったフードプリンタにとって簡単な処理を行うことで、第2プリント食品の第2硬度を変更することができる。
上記制御方法において、前記印刷制御情報は、単位容積当たりの前記孔の数を指定してもよい。
この構成によれば、印刷制御情報は第2プリント食品の単位容積あたりの孔の数を指定する情報であるため、硬度にムラのない第2プリント食品を生成できる。
上記制御方法において、前記第2プリント食品は、複数の層を含む立体構造体であり、前記印刷制御情報は、前記複数の層の中の第1層の第3硬度を、前記複数の層の中の第2層の第4硬度より硬くする印刷条件を含んでもよい。
この構成によれば、第2プリント食品は複数の層で構成されており、複数の層の中の第1層の第3硬度が複数の層の中の第2層の第4硬度よりも硬くされている。そのため、例えば、表面(第1層)が硬く中(第2層)が軟らかな第2プリント食品を生成することが可能になる。これにより、硬い表面を噛み砕くと味のある中身が唾液に混ざって溶け出す食感を有する第2プリント食品を生成することが可能となり、唾液の分泌を誘導して、咀嚼嚥下機能を効率よく高めることが可能になる。
上記制御方法において、前記印刷制御情報は、前記第2プリント食品を焼き固める際の温度を指定してもよい。
この構成によれば、印刷制御情報には第2プリント食品を焼き固める際の温度を指定する情報を含んでいるため、例えば、第2プリント食品を生成する時にレーザ出力部で第2プリント食品の部分ごとに加熱する温度、もしくは生成後に別の調理機器(オーブンなど)で第2プリント食品の全体を加熱する温度を制御もしくは指定することによって、第2プリント食品の硬度を調節できる。
本開示の一態様に係る制御方法は、ペースト状の材料を用いて第1硬度の第1プリント食品を生成するフードプリンタを含む食材提供システムにおける前記フードプリンタの制御方法であって、ネットワークを介して、ユーザに備え付けられたセンシングデバイスから前記ユーザが前記第1プリント食品を食べる際の前記ユーザの嚥下周期における咀嚼回数を示す咀嚼嚥下情報を取得し、前記第1硬度及び前記咀嚼嚥下情報に基づき、前記フードプリンタにより生成される第2プリント食品の第2硬度を決定し、ネットワークを介して、前記決定された前記第2硬度の前記第2プリント食品を前記フードプリンタに生成させるための印刷制御情報を前記フードプリンタに送信する。
この構成によれば、センシングデバイスからネットワークを介してユーザが第1硬度を有する第1プリント食品を食べる際のユーザの嚥下周期における咀嚼回数を示す咀嚼嚥下情報が取得される。第1硬度及び咀嚼嚥下情報に基づいて第2硬度が決定される。決定された第2硬度を有する第2プリント食品をフードプリンタに生成させるための印刷制御情報がネットワークを介してフードプリンタに送信される。
これにより、第1硬度を有する第1プリント食品を食べたときの嚥下周期における咀嚼回数を基準にしてユーザの咀嚼嚥下機能を高めるために適切な第2硬度を決定し、その第2硬度を有する第2プリント食品をフードプリンタに生成させ、生成された第2プリント食品をユーザに食べさせることが可能となる。その結果、ユーザの咀嚼嚥下機能を向上させることが可能となる。特に、本構成は、嚥下周期における咀嚼回数が検出可能なセンシングデバイスで構成されている場合に、有用である。
上記制御方法において、嚥下周期は、前記ユーザが前記第1プリント食品の一口を噛み始めてから飲み込むまでに相当する期間であってもよい。
この構成によれば、嚥下周期の開始タイミングと終了タイミングとを明確に定義することが可能となる。
上記制御方法において、前記印刷制御情報は、前記ユーザの咀嚼回数が所定回数よりも少ない場合、より硬い前記第2硬度の前記第2プリント食品を生成する印刷条件を含んでもよい。
ある食品の嚥下周期における咀嚼回数が多いほどユーザの咀嚼嚥下機能は低下している可能性がある。咀嚼嚥下機能が低下したユーザに軟らかい食材ばかり食べさせていると、ユーザの咀嚼嚥下機能は向上しない。この構成によれば、嚥下周期における咀嚼回数が所定回数よりも少ない場合、より硬い第2硬度が決定されるため、その食品を飲み込むまでにより多くの咀嚼を必要とし、ユーザの咀嚼嚥下機能を高めることができる。
上記制御方法において、前記センシングデバイスは、カメラであり、前記ユーザの嚥下周期の始期及び終期、及び前記嚥下周期における前記咀嚼回数は、前記カメラで得られた画像を用いた画像認識の結果に基づき判断されてもよい。
センシングデバイスは、カメラにより構成されているため、カメラによって得られた画像に画像認識処理を適用することで、嚥下周期の始期及び周期、並びに嚥下周期における咀嚼回数を判断することが可能になる。
本開示は、このような制御方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるプログラム、或いはこのプログラムによって動作する食材提供システムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
(実施の形態)
図1は、本開示の実施の形態に係る情報システムの全体構成の一例を示すブロック図である。情報システムは、情報端末100、センサー200、サーバ300、及びフードプリンタ400を含む。サーバ300及びフードプリンタ400は、食材提供システムの一例である。情報端末100、サーバ300、及びフードプリンタ400はネットワーク500を介して相互に通信可能に構成されている。情報端末100及びセンサー200は、近距離無線通信により相互に通信可能に接続されている。ネットワーク500は、例えば、インターネット通信網及び携帯電話通信網を含む広域通信網で構成されている。近距離無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)又はNFC等が採用される。
情報端末100は、例えばスマートフォン及びタブレット端末等の携帯型の情報処理装置で構成されている。但し、これは一例であり、情報端末100は、据え置き型の情報処理装置で構成されていてもよい。
情報端末100は、食材提供システムによる食材提供サービスが提供されるユーザによって所持される。情報端末100は、プロセッサ101、メモリ102、通信部103、近接通信部104、操作部105、及びディスプレイ106を含む。
プロセッサ101は、例えばCPUで構成されている。プロセッサ101は、情報端末100の全体制御を司る。プロセッサ101は、情報端末100のオペレーティングシステムを実行すると共にセンサー200からセンシングデータを受信してサーバ300に送信するためのセンシングアプリを実行する。
メモリ102は、例えばフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置で構成されている。メモリ102は、例えば前記オペレーティングシステム及び前記センシングアプリを記憶する。通信部103は、情報端末100をネットワーク500に接続するための通信回路で構成されている。通信部103は、センサー200から近距離無線通信を介して送信されたセンシングデータであって近接通信部104が受信したセンシングデータをネットワーク500を介してサーバ300に送信する。近接通信部104は、近距離無線通信の通信規格に準拠した通信回路で構成されている。近接通信部104は、センサー200から送信されるセンシングデータを受信する。
操作部105は、情報端末100が携帯型の情報処理装置で構成されている場合、タッチパネル等の入力装置で構成される。操作部105は、情報端末100が据え置き型の情報処理装置で構成されている場合、キーボード及びマウス等の入力装置で構成される。ディスプレイ106は、有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイ等の表示装置で構成されている。
センサー200は、ユーザに備え付けられたセンシングデバイスで構成されている。センサー200は、近接通信部201、プロセッサ202、メモリ203、及びセンサー部204を含む。近接通信部201は、近距離無線通信の通信規格に準拠する通信回路で構成される。近接通信部201は、センサー部204が検出したセンシングデータを情報端末100に送信する。
プロセッサ202は、例えばCPUで構成され、センサー200の全体制御を司る。メモリ203は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性の書き換え可能な記憶装置で構成されている。メモリ203は、例えばセンサー部204が検出したセンシングデータを一時的に記憶する。センサー部204は、ユーザの咀嚼及び/又は嚥下に関わる情報(以下、咀嚼嚥下情報と呼ぶ)を含むセンシングデータを検出する。
センサー部204は、例えば、加速度センサーで構成される。この場合、加速度センサーは、ユーザが食事をする際に把持する食事道具に取り付けられる。食事道具は、例えば、箸、フォーク、及びスプーン等である。食品を咀嚼する際、ユーザは皿の上の食品を捕捉して口元まで運ぶために食事道具を皿から上げる動作を行い、補足した食品を口の中に入れ終わると、再度、食事道具を皿に向けて下げる動作を行う、食事中はこのような動作が繰り返される。このように、食事道具の上げ下げはユーザの咀嚼動作と連動しているため、食事道具の加速度を示す加速度情報はユーザの咀嚼の特徴を表している。そこで、本実施の形態は、食事道具に取り付けられた加速度センサーにより検出された加速度を示す加速度情報を咀嚼嚥下情報として採用する。これにより、ユーザの日常生活における咀嚼嚥下情報をユーザに過大なストレスを与えることなく取得することができる。
センサー部204は、筋電位を検知する筋電位センサーで構成されていてもよい。ユーザが食品を咀嚼すると、顎関節の周囲の筋肉の筋電位が変化する。そこで、本実施の形態は、筋電位センサーが検出した顎関節の周囲の筋肉の筋電位を示す筋電位情報を咀嚼嚥下情報として採用してもよい。この場合、筋電位センサーは、ユーザが装着する眼鏡の耳当て部に取り付けられる。これにより、ユーザの日常生活における咀嚼嚥下情報をユーザに過大なストレスを与えることなく取得することができる。
センサー部204は、マイクで構成されてもよい。ユーザが食品を咀嚼すると、咀嚼音が生じる。そこで、本実施の形態は、マイクが検出した音を示す音情報を咀嚼嚥下情報として採用してもよい。この場合、マイクは、例えば、ユーザが装着するネックレスに取り付けられる。或いは、マイクは、例えば、イヤホン型のマイクであってもよい。ネックレス又はイヤホンにマイクを取り付けた場合、ユーザの口の近傍にマイクが取り付けられるため、咀嚼音を精度よく検出できる。これにより、ユーザの日常生活における咀嚼嚥下情報をユーザに過大なストレスを与えることなく取得することができる。
センサー200は、例えば所定のサンプリング周期でセンシングデータを検出し、検出したセンシングデータを、所定のサンプリング周期で情報端末100を介してサーバ300に送信すればよい。これにより、サーバ300はリアルタイムでセンシングデータを取得することができる。
サーバ300は、通信部301、プロセッサ302、及びメモリ303を含む。通信部301は、サーバ300をネットワーク500に接続するための通信回路で構成されている。通信部301は、センサー200が検出したセンシングデータであって、情報端末100が送信したセンシングデータを受信する。通信部301は、プロセッサ302が生成した印刷制御情報をフードプリンタ400に送信する。
プロセッサ302は、例えばCPUで構成されている。プロセッサ302は、ネットワーク500を介して、センサー200からユーザが第1プリント食品を食べる際のユーザの咀嚼嚥下情報を取得する。詳細には、プロセッサ302は、通信部301が受信したセンシングデータから咀嚼嚥下情報を取得する。第1プリント食品はペースト状の材料を用いてフードプリンタ400によって生成された第1硬度を有する食品である。
プロセッサ302は、取得した咀嚼嚥下情報に基づきユーザの嚥下周期における咀嚼回数を判断し、第1硬度及び咀嚼回数に基づきフードプリンタ400により生成される第2プリント食品の第2硬度を決定する。プロセッサ302は、第2プリント食品をフードプリンタ400に生成させるための印刷制御情報を生成する。プロセッサ302は、生成した印刷制御情報を、通信部301を用いてフードプリンタ400に送信する。印刷制御情報には、プリント食品の硬度を示す硬度データ、及びプリント食品の形状を示す3次元形状データ等が含まれる。3次元形状データには、例えばプリント食品のどの位置にどの種類のペーストを使用するかといった情報が含まれていてもよい。
メモリ303はハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等の大容量の記憶装置で構成されている。メモリ303は、ユーザの咀嚼嚥下情報を管理する咀嚼データベースなどを記憶する。図2は、咀嚼嚥下情報データベースD1のデータ構成の一例を示す図である。
咀嚼嚥下情報データベースD1の1つのレコードは、1回の食事における咀嚼嚥下情報を記憶する。1回の食事とは、例えば、朝食、昼食、及び夕食等が該当する。咀嚼嚥下情報データベースD1には、ある1人のユーザに関して、朝食及び昼食等の食事毎の咀嚼嚥下情報が記憶されている。図2の例では、このユーザは、毎朝食においてフードプリンタが生成したプリント食品のみを食べることが定められている。咀嚼嚥下情報データベースD1において、記号「-」は該当するデータが取得できなかったことを示す。
咀嚼嚥下情報データベースD1は、食事開始時刻、平均咀嚼回数、嚥下回数、咀嚼回数、食品総量、食材硬度レベル、及び食材構造ID等を対応付けて記憶する。食事開始時刻は1回の食事の開始時刻を示す。例えば、センサー200が加速度センサーで構成される場合、プロセッサ302は、加速度センサーにより食事道具の上げ下げを示す加速度波形が一定時間以上検出されていない状況において、食事道具の上げ下げを示す加速度波形が検出された場合、検出した時刻が食事開始時刻として特定される。或いは、ユーザが食事開始を告げる指令を情報端末100に入力し、その指令をサーバ300が受信した時刻が食事開始時刻として採用されてもよい。
平均咀嚼回数は咀嚼回数/嚥下回数で算出される。嚥下回数は、1回の食事でユーザが食物を飲み込んだ回数である。プロセッサ302は、センサー200から取得した咀嚼嚥下情報を解析して、嚥下動作を特定し、その嚥下動作が何回繰り返されたかをカウントすることで嚥下回数を特定すればよい。平均咀嚼回数は、嚥下周期における咀嚼回数の平均に相当する。
嚥下周期は、ユーザが一口分の食物を噛み始めてから飲み込むまでの期間である。例えば、センサー200が加速度センサーで構成される場合、プロセッサ302は、加速度センサーから取得した加速度情報を解析し、食事道具を上げるタイミング(第1タイミング)又は下げるタイミング(第2タイミング)を検出することで、嚥下周期の始期を特定すればよい。そして、プロセッサ302は、嚥下周期の始期とその次の嚥下周期の始期との時間間隔を嚥下周期と判定すればよい。一口分の食物を飲み込んだ後、しばらく咀嚼が休止されることがある。また、食事が終了した場合、咀嚼は次の食事が開始されるまで行われない。そこで、プロセッサ302は、嚥下周期の始期を検出した後、次の嚥下周期の始期を一定期間以上検出できなかった場合、一定期間が経過した時点を嚥下周期の終期とみなして、嚥下周期を特定してもよい。或いは、プロセッサ302は、食事道具が下げられて停止したタイミングを嚥下周期の終期とみなして、嚥下周期を特定してもよい。なお、食事道具を上げるタイミングまたは下げるタイミングは、例えば、食事道具が上げられたことを示す予め定められた加速度波形又は食事道具が下げられたことを示す予め定められた加速度波形と、加速度センサーから取得した加速度情報とをパターンマッチングすることで検出することが可能である。
センサー200が筋電位センサーで構成されている場合、プロセッサ302は、例えば、筋電位センサーから取得した筋電位情報を解析し、一口分の食物に対する咀嚼の開始タイミングと咀嚼の終了タイミングとを検出し、両タイミングの時間間隔を嚥下周期と判定すればよい。一口分の食物について、咀嚼開始から嚥下までの期間における筋電位は特定のパターンで変動すると推定される。そこで、プロセッサ302は、パターンマッチング等の手法を用いて一口分の食物に対する咀嚼の開始タイミングと嚥下タイミングとを筋電位情報から検出し、両タイミングの期間を嚥下周期として検出すればよい。
センサー200がマイクで構成されている場合、プロセッサ302は、例えば、マイクから取得した音情報を解析し、一口分の食物に対する咀嚼の開始タイミングを示す咀嚼音の発生タイミングと、一口分の食物に対して嚥下が行われた嚥下タイミングとを検出し、両タイミングの時間間隔を嚥下周期として判定すればよい。一口分の食物について、咀嚼が開始された際に咀嚼音が発生し、嚥下が行われると嚥下音が発生する。そこで、プロセッサ302は、この咀嚼音と嚥下音とをパターンマッチング等の手法を用いて音情報から検出すればよい。
咀嚼回数は、1回の食事において、ユーザが食物を咀嚼した回数である。咀嚼回数は嚥下周期と比例関係にある。そこで、センサー200が加速度センサーで構成されている場合、プロセッサ302は、1回の食事において検出された各嚥下周期に所定の係数を乗じ、得られた乗算値を加算することで1回の食事における咀嚼回数を算出すればよい。所定の係数は、嚥下周期を咀嚼回数に変換するための予め定められた係数である。
センサー200が筋電位センサーで構成されている場合、プロセッサ302は、1回の食事における各嚥下周期の筋電位情報から、1回の咀嚼を示す筋電位パターンの出現回数をカウントすることで、各嚥下周期における咀嚼回数を算出する。そして、プロセッサ302は、各嚥下周期における咀嚼回数を加算することで1回の食事における咀嚼回数を算出すればよい。
センサー200がマイクで構成されている場合、プロセッサ302は、1回の食事における各嚥下周期の音情報から、1回の咀嚼音を示す咀嚼音パターンの出現回数をカウントすることで、各嚥下周期における咀嚼回数を算出する。そして、プロセッサ302は、各嚥下周期における咀嚼回数を加算することで1回の食事における咀嚼回数を算出すればよい。
食品総量は、1回の食事においてユーザが摂取した食品の総重量である。ここでは、各朝食においてユーザはプリント食品を食べることが定められている。プリント食品の生成を指示するのはサーバ300であるため、サーバ300は各朝食においてユーザが食べるプリント食品の重量をそのプリント食品の生成に使用したペーストの重量から特定することができる。したがって、プロセッサ302は、朝食に関しては印刷制御情報を生成する際に指示したペーストの重量から総重量を算出すればよい。なお、咀嚼嚥下情報が朝食のものであるか否かは、咀嚼嚥下情報に対応する食事開始時刻から特定可能である。
図2の例では、食品総量は朝食以外特定できなかったため、朝食の以外の咀嚼嚥下情報の食品総量のセルには記号「-」が記載されている。但し、朝食以外の食品総量を検出できた場合は検出された食品総量が咀嚼嚥下情報データベースD1に記載される。例えば、食事を行う際にユーザに料理の画像をカメラで撮影させてサーバ300に送信させる。そして、プロセッサ302は撮影された料理の画像を解析することで食品総量を特定してもよい。或いは、食事道具に重量センサーが取り付けられている場合、プロセッサ302は、その重量センサーが検出した一口分の食物の重量を1回の食事期間にわたって積算することで食品総量を特定してもよい。
食材硬度レベルは、食材に対して、食べる際に要求される、咀嚼力(噛む力)と嚥下力(飲み込む力)との目安を段階的に示した数値である。食材硬度レベルは、例えば「https://www.udf.jp/about_udf/section_01.html」のウェブサイトに記載された食材に対する区分が採用されてもよい。食材硬度レベルが小さいほど食材は硬くなる。図2の例では、プリント食品のみを食べる朝食以外では食材硬度レベルが特定できなかったため、朝食以外の咀嚼嚥下情報における食材硬度レベルには記号「-」が記載されている。但し、料理の画像を解析することで食材硬度レベルが特定できた場合は、特定された食材硬度レベルが咀嚼嚥下情報データベースD1に記載される。
プロセッサ302は、図4で後述するステップS105又はステップS106で設定された硬度が前記区分のいずれに該当するかを判定し、判定した区分を食材硬度レベルのセルに書き込めばよい。
食材構造IDは、フードプリンタ400が生成するプリント食品の3次元形状データの識別子である。この3次元形状データは、例えばCADデータで構成される。図2の例では、プリント食品が食べられる朝食の咀嚼嚥下情報にのみ食材構造IDが記載されている。
図2の例では、咀嚼嚥下情報データベースD1は、1回の食事ごとに咀嚼嚥下情報を記憶しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、咀嚼嚥下情報データベースD1は、1回の嚥下ごとに咀嚼嚥下情報を記憶してもよい。或いは、咀嚼嚥下情報データベースD1は、一口分の食物が嚥下されるごとに咀嚼嚥下情報を記憶してもよい。図2に示す咀嚼嚥下情報データベースD1はある一人のユーザに対する咀嚼嚥下情報を記憶するが、複数のユーザについての咀嚼嚥下情報を記憶してもよい。この場合、咀嚼嚥下情報データベースD1にユーザIDの欄を設けることで、各咀嚼嚥下情報がどのユーザのものであるのかが識別可能となる。
図1に参照を戻す。フードプリンタ400は、ゲル状の食材(ペースト)を吐出しながら積層していくことで、食品を造形する調理器具である。
フードプリンタ400は、通信部401、メモリ402、ペースト吐出部403、制御部404、UI部405、及びレーザ出力部406を含む。通信部401は、フードプリンタ400をネットワーク500に接続するための通信回路で構成されている。通信部401は、サーバ300から印刷制御情報を受信する。メモリ402は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置で構成されている。メモリ402は、サーバ300から送信された印刷制御情報を記憶する。
ペースト吐出部403は、複数のスロットと、複数のスロットに装填されたペーストを吐出するノズルとを有する。各スロットは種類の異なるペーストが装填可能に構成されている。ペーストは、種類別にパッケージに内包された食材であり、ペースト吐出部403に対して交換可能に構成されている。ペースト吐出部403は、印刷制御情報にしたがってノズルを移動させながらペーストを吐出する処理を繰り返す。これにより、ペーストが積層されていき、プリント食品が造形される。
レーザ出力部406は、印刷制御情報にしたがって、ペースト吐出部403が吐出したペーストにレーザ光を照射することにより、ペーストの一部を加熱し、プリント食品に焦げ目を付けたり、プリント食品を造形したりする。レーザ出力部406は、レーザ光のパワーを調整することで、プリント食品を焼き固める温度を調整し、プリント食品の硬度を調整することも可能である。フードプリンタ400は、ペースト吐出部403にペーストを吐出させながらレーザ出力部406にレーザ光を照射させることが可能である。これにより、プリント食品の造形と加熱調理とを同時に行うことが可能である。
ペースト吐出部403のどのスロットにどのペーストが装填されているかは、フードプリンタと通信する情報端末100にインストールされたスマホアプリを用いて設定することが可能である。或いは、この設定は、ペーストのパッケージに取り付けられた電気回路に記憶されたペーストIDを各スロットに取り付けられたリーダーが読み取り、読み取ったペーストIDをスロット番号と対応付けて制御部404に出力することで行われてもよい。
UI部405は、例えばタッチパネル式のディスプレイで構成され、ユーザによって入力される指示を受け付けたり、種々の画面を表示したりする。
制御部404は、CPU又は専用の電気回路で構成され、サーバ300から送信された印刷制御情報にしたがって、ペースト吐出部403及びレーザ出力部406を制御してプリント食品を生成する。
次に、本実施の形態における処理について説明する。図3は、図1に示す情報システムの処理の全体像を示すシーケンス図である。
ステップS1において、情報端末100は、ユーザがサーバ300からのサービスが提供される際に必要となる初期設定情報に関するユーザからの入力を受け付け、その初期設定情報をサーバ300に送信する。初期設定情報には、例えば一口分の食物を咀嚼する際の目標となる咀嚼回数である目標咀嚼回数(所定回数の一例)が含まれる。目標咀嚼回数は例えば30回である。
次に、ステップS2において、情報端末100はプリント食品の調理をフードプリンタ400に開始させるための調理指示のユーザからの入力を受け付け、その調理指示をサーバ300に送信する。
次に、ステップS3において、サーバ300は、フードプリンタ400にペースト残量を確認する確認信号を送信し、フードプリンタ400からの応答を受信する。この確認信号を受信したフードプリンタ400は、例えばペースト吐出部403に残存するペースト残量を検出し、ペースト残量が所定値以上であれば、食品プリントの生成が可能である旨の応答をサーバ300に送信する。一方、フードプリンタ400は、ペースト残量が所定値未満であれば、食品プリントが不可能である旨の応答をサーバ300に送信する。この場合、サーバ300はユーザにペーストの装填を促すメッセージを情報端末100に送信し、フードプリンタ400から食品プリントの生成が可能である旨の応答を受信するまで処理を待機すればよい。
次に、ステップS4において、サーバ300は、印刷制御情報を生成する。印刷制御情報の生成の詳細については図4を用いて後述する。
ステップS5において、サーバ300は、印刷制御情報をフードプリンタ400に送信する。ここでは、プリント食品を食べたユーザのセンシングデータが得られていないため、サーバ300は、例えば、プリント食品のデフォルトの硬度に基づいて印刷制御情報を生成する。このデフォルトの硬度は第1硬度の一例である。
ステップS6において、フードプリンタ400は、受信した印刷制御情報にしたがってプリント食品を生成する。ここで、生成されるプリント食品は第1プリント食品の一例である。ステップS7において、センサー200は、ステップS6で生成されたプリント食品を食べたユーザの咀嚼嚥下情報を含むセンシングデータを情報端末100に送信する。ステップS8において、情報端末100は、ステップS7で送信されたセンシングデータをサーバ300に転送する。
ステップS9において、サーバ300は、送信されたセンシングデータに基づいて、1回の食事に対する咀嚼嚥下情報を生成し、その咀嚼嚥下情報を用いて咀嚼嚥下情報データベースD1を更新する。
ステップS10において、サーバ300は、ステップS9で生成した咀嚼嚥下情報に基づいて咀嚼状況データを生成し、その咀嚼状況データを情報端末100に送信することで、咀嚼状況をユーザにフィードバックする。咀嚼状況データには、例えば、図2に示される平均咀嚼回数、嚥下回数、咀嚼回数、食品総量、食材硬度レベル等が含まれる。咀嚼状況データは、情報端末100のディスプレイ106に表示される。
ステップS11において、情報端末100は、ステップS2で説明した調理指示をサーバ300に送信する。ステップS12において、サーバ300は、ステップS3と同様、フードプリンタ400のペーストの残量確認を行う。
ステップS13において、サーバ300は、ステップS9で生成された咀嚼嚥下情報に含まれる平均咀嚼回数と目標咀嚼回数とを比較し、比較結果に基づいてプリント食品の硬度を決定し、決定した硬度に基づいて印刷制御情報を生成する。この処理の詳細は図4のフローチャートで後述する。ここで決定される硬度は第2硬度の一例である。また、ここで生成される印刷制御情報によって生成されるプリント食品は第2プリント食品の一例である。
ステップS14、S15、S16、S17、S18、S19の処理は、ステップS5、S6、S7、S8、S9、S10と同じである。以降、ステップS11~S19の処理が繰り返され、ユーザの咀嚼嚥下機能が次第に高められていく。
図4は、本実施の形態において、サーバ300の処理の詳細を示すフローチャートである。サーバ300のプロセッサ302は、プリント食品に対する1回の食事分のセンシングデータが通信部301により受信されたか否かを判定する(ステップS101)。例えば、1回の食事の開始タイミング(食事開始時刻)は、所定時間以上、センサー200のセンシングデータの変化が見られない状況下においてセンシングデータに変化が見られたタイミングが該当する。1回の食事の終了タイミング(食事終了時刻)は、例えば、センシングデータの変化が見られなくなって所定時間以上経過した場合において前記変化が見られなくなったタイミングが該当する。図2の例では、毎朝食にプリント食品が食べられるため、プロセッサ302は、食事の開始タイミングが朝食の時間帯に該当する場合、ステップS101で取得された1回の食事分のセンシングデータはプリント食品に対するセンシングデータであると判定すればよい。或いは、印刷制御情報を送信してから直近に取得された1回の食事分のセンシングデータがプリント食品に対するセンシングデータと判定されてもよい。或いは、ユーザが食事開始の指示及び食事終了の指示を情報端末100に入力した場合において取得された一連のセンシングデータが1回の食事分のセンシングデータと判定されてもよい。
ステップS102において、プロセッサ302は、1回の食事分のセンシングデータから嚥下周期における咀嚼回数である平均咀嚼回数を算出する。平均咀嚼回数の算出の詳細については上述したため、ここでは説明を省略する。なお、ステップS102では、平均咀嚼回数の算出と合わせて、嚥下回数、咀嚼回数、及び食品総量等も算出され、算出結果に基づいて、図2に示す咀嚼嚥下情報が生成される。
ステップS103において、プロセッサ302は、ステップS102において算出された咀嚼嚥下情報を用いて咀嚼嚥下情報データベースD1を更新する。
ステップS104において、プロセッサ302は、目標咀嚼回数が平均咀嚼回数以上であるか否かを判定する。目標咀嚼回数が平均咀嚼回数以上の場合(ステップS104でYES)、プロセッサ302は、プリント食品の硬度を前回値に対して維持又は増加させる。前回値とは、ユーザが前回食べたプリント食品の硬度の値である。前回値が示す硬度は第1硬度の一例である。プリント食品の硬度を増やす場合、プロセッサ302は、前回値に、予め定められた硬度の変化量を加算することで、硬度を増加させればよい。
一方、目標咀嚼回数が平均咀嚼回数未満の場合(ステップS104でNO)、プロセッサ302は、プリント食品の硬度を前回値に対して維持又は減少させる(ステップS106)。プリント食品の硬度を減らす場合、プロセッサ302は、前回値から、前記変化量を減じることで硬度を減少すればよい。硬度が維持される場合としては、例えば同じ硬度のプリント食品をユーザに与えた回数が一定回数に満たない場合が挙げられる。
ステップS107において、プロセッサ302は、維持、増加又は減少された硬度に基づいて印刷制御情報を生成し、処理をステップS101に戻す。
以上の処理が繰り返されることにより、目標咀嚼回数が平均咀嚼回数以下のユーザに対しては、プリント食品の硬度が維持又は漸次増大されていく。そのため、咀嚼嚥下機能が低下しているユーザに対しては、最初、軟らか目のプリント食品が与えられ、徐々に硬度が高められたプリント食品が与えられる。その結果、このようなユーザの咀嚼嚥下機能を効率よく高めることができる。
一方、目標咀嚼回数が平均咀嚼回数よりも低いユーザに対しては、プリント食品の硬度が維持又は漸次減少されていく。そのため、必要以上に咀嚼回数の多いユーザに対しては適切な咀嚼回数に咀嚼回数を収束させていくことができる。
次に、印刷制御情報の生成の詳細について説明する。本実施の形態では、プリント食品の硬度は、下記の3つのバリエーションのいずれかを用いて調整されるため、採用されるバリエーションに応じて生成される印刷制御情報は異なる。
1つ目のバリエーションは、プリント食品を複数の孔を有する立体構造体で構成し、この孔の数を増減させることで、プリント食品の硬度を調整するものである。プリント食品は、孔の数が多くなるほど軟らかくなり、孔の数が少なくなるほど硬くなる。そこで、1つ目のバリエーションは、単位容積あたりの孔の数を指定することによってプリント食品の硬度を調整する。このような孔の数の調整は3次元形状データを変更することによって行うことができる。
サーバ300のプロセッサ302は、ステップS105又はステップS106によりプリント食品の硬度を決定すると、その硬度にするために予め定められた単位容積あたりの孔の数を決定する。そして、プロセッサ302は、指定された単位容積あたりの孔の数を有するプリント食品を生成するための3次元形状データを引用又は生成する。
例えば、プロセッサ302は、デフォルトの3次元形状データの単位容積あたりの孔の数が、指定された単位容積あたりの孔の数になるように、デフォルトの3次元形状データを修正すればよい。なお、全ての孔の直径は同じであってもよいし、異なっていてもよい。デフォルトの3次元形状データの基本的な形状は特に限定はされないが、例えば直方体が一例として挙げられる。プロセッサ302により生成された3次元形状データには単位容積あたりの孔の数によって硬度が反映されている。そのため、このバリエーションでは、印刷制御情報は、プロセッサ302により生成された3次元形状データを含み、硬度データを含まなくてもよい。
但し、これは一例である。例えば、フードプリンタ400の制御部404が硬度データからデフォルトの3次元形状データを修正するようにしてもよい。この場合、印刷制御情報には、硬度データとデフォルトの3次元形状データを含ませておけばよい。
2つ目のバリエーションは、プリント食品を複数の層を含む立体構造体で構成し、各層の硬度を増減させることで、プリント食品の硬度を増減させるものである。例えば、煎餅のように表面が硬く中が軟らかい食品は、硬い表面を噛み砕くと味のある中身が唾液に混ざって溶け出す食感をユーザに与えることが可能である。これにより、唾液の分泌が誘導され、咀嚼嚥下機能が効率よく高められる。そこで、このバリエーションでは、例えば、プリント食品は、第3硬度を有する第1層と、第3硬度よりも柔らかい第4硬度を有する第2層とで構成される。そして、プリント食品は、第1層、第2層、第1層の順で積層される。
この場合、サーバ300のプロセッサ302は、ステップS105又はステップS106で設定した硬度に対して予め定められた硬度を第3硬度及び第4硬度として決定する。そして、プロセッサ302は、3次元形状データと、第3硬度と、第4硬度とを含む印刷制御情報を生成すればよい。この場合、3次元形状データはどの領域が第1層に該当し、どの領域が第2層に該当するかを示すデータを含んでもよい。このバリエーションにおいて、第1層及び第2層に対する硬度の調整は1つ目のバリエーションで示した孔の数によって行われてもよい。或いは、硬度の調整は、ペーストの種類を変えることによって行われてもよい。この場合、印刷制御情報は第1層のペーストの種類及び第2層のペーストの種類を指定する情報を含んでいてもよい。
ここでは、プリント食品は、第2層を第1層で挟む構造として説明したが、第1層と第2層とからなる構造を有していてもよい。さらに、プリント食品が第2層を第1層で挟む構造を有する場合、プリント食品は、第1層を硬度の異なる複数のサブ層で構成し、第2層を硬度の異なる複数のサブ層で構成し、表面から中心に向かうにつれて硬度が徐々に軟らかくなる構造を有していてもよい。
3つ目のバリエーションは、プリント食品を焼き固める際の温度を指定することによってプリント食品の硬度を調整するものである。プリント食品は、照射するレーザ光線のパワーを調整することによって焼き固められる際の温度が調整される。この温度によってプリント食品の硬度は変更可能である。この場合、プロセッサ302は、ステップS105又はS106で設定した硬度にするために予め定められた温度を決定し、その温度を示す温度情報を印刷制御情報に含ませればよい。この場合、印刷制御情報は、温度情報と3次元形状データと使用するペーストの種類を示す情報とを含んでいればよい。
印刷制御情報に含まれる各種パラメータは、ユーザの咀嚼回数が所定回数よりも少ない場合、より硬い第2硬度の第2プリント食品を生成するための印刷条件の一例に該当する。
図5は、咀嚼回数の時間的推移を説明する図である。この例では、図4に示すフローチャートが1週間単位で実施され、1週間は毎朝同じ硬度のプリント食品がユーザに提供される。1週目において、ユーザは、毎朝、硬度F1のプリント食品を食べている。これにより、ユーザは、硬度F1のプリント食品に慣れていき、咀嚼嚥下機能が次第に向上し、平均咀嚼回数が次第に減少している。
2週目に入ると、平均咀嚼回数が目標咀嚼回数以上であるか否かが判定される。ここでは、平均咀嚼回数が目標咀嚼回数を超えていないため、硬度F1が所定の変化量で増大された硬度F2を有するプリント食品が毎朝ユーザに与えられる。これにより、暫くは硬度F2のプリント食品を噛み砕くために平均咀嚼回数が増加するが、咀嚼嚥下機能が次第に向上し、平均咀嚼回数が減少している。3週目においても同様にして硬度F2が所定の変化量で増大された硬度F3を有するプリント食品が毎朝ユーザに与えられている。これにより、暫くは硬度F3のプリント食品を噛み砕くために平均咀嚼回数が増加するが、咀嚼嚥下機能が次第に向上し、平均咀嚼回数が減少している。以後、平均咀嚼回数が目標咀嚼回数を超えるまで、硬度が次第に高められたプリント食品がユーザに与えられていき、ユーザの咀嚼嚥下機能が向上していく。
本開示は以下の変形例が採用できる。
(1)図1の例では、センサー200は情報端末100を介してセンシングデータをサーバ300に送信しているが、センサー200はネットワーク500に接続されていてもよい。この場合、センサー200は、情報端末100を経由せずにセンシングデータをサーバ300に送信すればよい。
(2)センサー200は、カメラで構成されていてもよい。この場合、センサー200は、ユーザが食事をとる部屋に設置される。一般的に、カメラ(エッジ端末)は高度な演算機能を有しているため、撮影した画像を解析して、平均咀嚼回数を算出もしくはニューラルネットワークモデルを用いて推論することが可能である。そこで、本変形例において、センサー200のプロセッサ202は、センサー部204が撮影した画像を解析して、平均咀嚼回数を算出する。そして、算出した平均咀嚼回数を示す咀嚼嚥下情報をセンシングデータに含めてサーバ300に送信する。
この場合、サーバ300は、咀嚼嚥下情報に平均咀嚼回数が含まれているため、平均咀嚼回数を算出することなく、平均咀嚼回数が目標咀嚼回数以上であるか否かを判定する処理を行うことができる。その結果、サーバ300の処理負担を軽減することが可能となる。
なお、カメラを用いて咀嚼、嚥下を測定する場合には、上下顎の左右方向の動きも含めて解析して、食物を右側の歯で噛んだ回数、左側の歯で噛んだのか回数をそれぞれ測定することで、ユーザの偏咀嚼を測定することも可能である。左右での咀嚼回数差が所定回数よりも多い場合(つまり偏咀嚼が疑われる場合)には、サーバ300は左右の咀嚼回数を別々に咀嚼嚥下情報データベースD1に登録してもよい。また、その偏咀嚼情報をステップS10、S19の際にユーザに情報端末100を介して通知することによって、ユーザの偏咀嚼を改善する(左右の咀嚼回数が近くになるようにする)よう意識づけ又は誘導してもよい。例えば、右側と左側で噛むバランスを数値や視覚化して示してもよい。このようにして、よく噛む側の顎や咀嚼筋が緊張する一方、反対側の咀嚼筋が緩み、顎がずれる原因となり全身のゆがみにつながる偏咀嚼は、ユーザ本人では気づきにくいが、センサー200にて測定し、適切に情報端末100を通じてユーザにフィードバックすることで予防又は改善する効果が期待できる。
なお、上記の偏咀嚼の状況は、カメラではなく、ユーザの顔の左右の咀嚼筋の筋電位又は運動量を測定することで測定するようにしてもよい。右側か左側の噛み癖がある方の咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の少なくとも1つ)がよく用いられるため、左右の咀嚼筋の筋電位又は運動量を測定することで、そのユーザの偏咀嚼の状況を測定することもできる。
本変形例において、プロセッサ202は、例えばユーザが咀嚼しているか否かを検出するための所定の画像認識処理をセンサー部204が撮影した画像に適用することによって、1回の食事における、嚥下回数及び咀嚼回数等を検出し、平均咀嚼回数を算出すればよい。例えば、プロセッサ202は、ユーザの口の特徴点を検出し、その特徴点を追跡し、追跡した特徴点の挙動が上下顎の開閉を繰り返す動作を示す場合、ユーザの咀嚼動作を行っていると判定すればよい。そして、プロセッサ202は、検出結果から嚥下回数及び咀嚼回数を算出し、これらの値から平均咀嚼回数等を算出すればよい。
本変形例では、センサー部204は、料理を撮影することが可能であるため、プロセッサ202は、料理の画像を解析し、食品総量を算出することが可能である。本変形例では、プロセッサ202は、平均咀嚼回数の他、1回の食事における、嚥下回数、咀嚼回数、食品総量を咀嚼嚥下情報に含めてもよい。