以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る車両用灯具制御装置の第1実施形態を示す。
コントロールユニット1は、車両に搭載され、車両用灯具である前照灯2及び車幅灯3を自動的に点消灯させる制御を行う車両用灯具制御装置である。以下、説明の便宜上、車両用灯具の代表例を前照灯2とする。コントロールユニット1は、照度センサ4及び自動点消灯設定スイッチ5と電気的に接続されている。
照度センサ4は、車外の照度を検出する照度検出手段であり、例えばフォトトランジスタ又はフォトダイオード等を備えて構成されている。照度センサ4は、検出した照度に相当する照度検出信号をコントロールユニット1へ出力する。
自動点消灯設定スイッチ5は、コントロールユニット1により前照灯2を自動的に点消灯させる自動点消灯モードに設定する際に、運転者が自動点消灯モードの設定に必要な操作をできるように構成されたスイッチである。自動点消灯設定スイッチ5の操作により自動点消灯モードを設定しなかった場合には、運転者が手動で前照灯2を点消灯させる手動点消灯モードが設定される。自動点消灯設定スイッチ5は、運転者が自動点消灯モードを選択する操作を行ったとき、自動点消灯設定信号をコントロールユニット1へ出力する。
また、コントロールユニット1は、地上高度約20000kmの所定の地球周回軌道上を周回する複数のGPS(Global Positioning System)衛星6から発信されたGPS信号を受信するように構成された受信部11を有している。GPS衛星6から発信されたGPS信号には、これを発信したGPS衛星6を識別するためのC/Aコード、及び、当該GPS衛星6が周回する所定軌道上の位置を示す航法メッセージが含まれている。コントロールユニット1の受信部11は、GPS衛星6からGPS信号を受信し、かかるGPS信号に基づいてGPS衛星6の識別情報及び位置情報を取得する。
コントロールユニット1は、基本的には、照度値と予め格納された照度閾値L0との比較結果に基づいて、前照灯2の点消灯を制御する。このため、コントロールユニット1は、照度値演算部12、点消灯制御部13及び記憶保持部14を有している。
照度値演算部12は、照度センサ4から出力された照度検出信号に基づいて照度値を演算する。点消灯制御部13は、基本的には、照度値演算部12で演算された照度値と記憶保持部14から読み出された照度閾値L0との比較結果に基づいて前照灯2の点消灯を制御する。記憶保持部14は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、照度閾値L0を格納している。
記憶保持部14に格納されている照度閾値L0は、例えば、日没時刻又は日出時刻における平均的な照度値であり、後述する各照度閾値と比較して最も小さい照度値である。照度閾値L0には、前照灯2を点灯させるときの照度値の基準として設定される点灯時照度閾値Lon0と、前照灯2を消灯させるときの照度値の基準として設定される消灯時照度閾値Loff0と、があり、点灯時照度閾値Lon0は消灯時照度閾値Loff0よりも僅かに小さい値として設定されている。このように照度閾値L0を点灯時用と消灯時用とに分けることで、照度閾値L0を共通にしたときに照度値が照度閾値L0を前後して点消灯を繰り返すというハンチングを抑制している。
また、コントロールユニット1は、交通事故防止の観点から、日没時刻前あるいは日出時刻後の薄暗い照度状況で前照灯2を自動的に点灯状態にすべく、自車位置における日没時刻及び日出時刻に応じて照度閾値L0を補正する。しかし、自車位置の緯度及び経度から理論上の日没時刻(以下「理論日没時刻」という)及び理論上の日出時刻(以下「理論日出時刻」という)を算出しても、山間部における稜線等の地形的要因や都市部における構造物等の人工的要因によって自車に対する太陽光線を継続的に遮る遮蔽物が存在する場合には、実質的な日没時刻は理論日没時刻よりも早くなり、実質的な日出時刻は理論日出時刻よりも遅くなることがある。このため、コントロールユニット1は、理論日没時刻及び理論日出時刻(以下、纏めて「理論時刻」という場合がある)をそれぞれGPS信号に基づいて補正して補正後の日没時刻(以下「補正日没時刻」という)及び補正後の日出時刻(以下「補正日出時刻」という)を演算し、補正日没時刻及び補正日出時刻(以下、纏めて「補正時刻」という場合がある)に応じて照度閾値L0を補正すべく、自車位置演算部15、理論時刻演算部16、受信可能衛星特定部17、実受信衛星特定部18、補正時刻演算部19及び閾値補正部20を有している。
自車位置演算部15は、受信部11で取得された複数のGPS衛星6の位置情報と記憶保持部14に予め格納された地図情報とに基づいて現在の自車位置(具体的には経度及び緯度)を演算する。理論時刻演算部16は、自車位置演算部15で演算された現在の自車位置と暦日とに基づいて理論時刻を演算する。受信可能衛星特定部17は、自車位置演算部15で演算された現在の自車位置と、記憶保持部14においてGPS衛星6が周回する地球周回軌道に関して予め格納された軌道情報と、に基づいて、理論上、現在の自車位置においてGPS信号を受信できる受信可能GPS衛星を特定する。実受信衛星特定部18は、受信部11で取得されたGPS衛星6の識別情報に基づいて、GPS信号が実際に受信された実受信GPS衛星を特定する。
補正時刻演算部19は、受信可能衛星特定部17で特定された受信可能GPS衛星から実際にGPS信号を受信したか否かに基づいて理論時刻を補正し、これにより補正時刻を演算する。具体的には、補正時刻演算部19は、受信可能GPS衛星の個数と実受信GPS衛星の個数との個数差を演算し、この個数差に基づいて理論時刻を補正する。
ここで、図2(a)に示すように、コントロールユニット1を搭載した自車Vの位置において、受信可能GPS衛星6a,6b,6c,6dの個数は4であり、コントロールユニット1によって実際にGPS信号が受信された実受信GPS衛星6a,6b,6c,6dの個数は4であり、個数差が零となっている。このように個数差が零ないし比較的小さい値である場合には、補正時刻演算部19は、自車Vの周囲に地形的要因あるいは人工的要因による太陽光線の遮蔽物が存在しないものと推認する。
一方、図2(b)に示すように、コントロールユニット1を搭載した自車Vの周囲に存在する遮蔽物BによってGPS衛星6a,6dからのGPS信号が遮られて、コントロールユニット1によって実際にGPS信号が受信されたのがGPS衛星6b,6cとなっている。このため、受信可能GPS衛星6a,6b,6c,6dの個数は4であり、実受信GPS衛星6b,6cの個数は2であり、個数差が2となっている。このように個数差が比較的大きい所定値(例えば2)以上となった場合には、補正時刻演算部19は、自車Vの周囲に地形的要因あるいは人工的要因によって太陽光線を継続的に遮る遮蔽物が存在していると推認し、個数差に応じて理論時刻を補正し、これにより補正時刻を演算する。
閾値補正部20は、補正時刻演算部19で演算された補正時刻と現在時刻との比較結果に基づいて、記憶保持部14から読み出された照度閾値L0(点灯時照度閾値Lon0及び消灯時照度閾値Loff0)を補正する。点消灯制御部13は、照度値演算部12で演算された照度値と閾値補正部20で補正された照度閾値L0との比較結果に基づいて、前照灯2の点消灯を制御する。これにより、補正日没時刻前あるいは補正日出時刻後の薄暗い照度状況において、前照灯2の点灯状態を促進するようにしている。
さらに、コントロールユニット1は、交通事故防止の観点から、悪天候時の薄暗い照度状況で前照灯2を自動的に点灯状態にすべく、自車位置において推定される天候状態に応じて照度閾値L0を補正する。このため、コントロールユニット1は、照度値学習部21及び天候推定部22を有している。
照度値学習部21は、照度値演算部12で演算された照度値の履歴から照度値の学習データを作成する。天候推定部22は、記憶保持部14に予め格納された日中照度の参照データと照度値学習部21で作成された照度値の学習データと現在時刻とに基づいて、現在の自車位置における天候状態を推定する。閾値補正部20は、前述のように補正時刻に基づいて照度閾値L0を補正する他、天候推定部22で推定された天候状態に基づいて照度閾値L0を補正する。点消灯制御部13は、照度値演算部12で演算された照度値と閾値補正部20で補正された照度閾値との比較結果に基づいて、前照灯2の点消灯を制御する。これにより、悪天候時の薄暗い照度状況において、前照灯2の点灯状態を促進するようにしている。
要するに、コントロールユニット1は、閾値補正部20で照度閾値L0が補正されなかった場合には、記憶保持部14から読み出された照度閾値L0と照度値演算部12で演算された照度値との比較結果に基づいて、あるいは、閾値補正部20で照度閾値L0が補正された場合には補正された照度閾値と照度値演算部12で演算された照度値との比較結果に基づいて、前照灯2の点消灯を制御する点消灯制御処理を行う。
ただし、コントロールユニット1は、点消灯制御処理と並行して夜間強制点灯処理を実行することで、現在時刻が、理論日没時刻から理論日出時刻までの夜間における時刻である場合には、点消灯制御処理における照度値と照度閾値との比較結果にかかわらず、強制的に前照灯2を点灯させる。これにより、夜間に人工照明等によって比較的照度値が大きくなる場所でも、前照灯2の点灯状態を維持するようにしている。
なお、コントロールユニット1の各部は、記憶保持部14あるいはこれとは別のROM(Read Only Memory)等に予め記憶されたプログラムを読み込んで動作するコンピュータによって実現されるものとして説明する。ただし、これに限らず、ハードウェアの構成によってコントロールユニット1の各部を部分的又は全体的に実現することも可能である。
図3は、車両におけるイグニッションスイッチのオン操作によりコントロールユニット1に電源供給が開始されたことを契機として、コントロールユニット1において繰り返し実行される点消灯制御処理の一例を示す。
ステップS1(図中では「S1」と略記する。以下同様。)では、点消灯制御部13は、自動点消灯設定信号に基づいて、自動点消灯モードが設定されているか否かを判定する。そして、点消灯制御部13において、自動点消灯モードが設定されていると判定した場合には(YES)、処理はステップS2へと進む一方、自動点消灯モードが設定されていないと判定した場合には(NO)、点消灯制御処理は終了する。
ステップS2では、照度値演算部12は、照度センサ4から出力された照度検出信号に基づいて、照度値を演算する。ステップS3では、推定した天候状態に基づいて照度閾値L0を補正する第1照度閾値補正を実行する。第1照度閾値補正の詳細については後述する。ステップS4では、GPS信号に基づいて照度閾値L0を補正する第2照度閾値補正を実行する。第2照度閾値補正の詳細については後述する。
ステップS5では、点消灯制御部13は、ステップS2で演算された照度値が点灯時照度閾値未満であるか否かを判定する。ステップS5で用いる点灯時照度閾値は、ステップS3及びS4で点灯時照度閾値Lon0を補正した場合には補正後の点灯時照度閾値Lon1,Lon2であり、ステップS3及びS4で点灯時照度閾値Lon0を補正しなかった場合には記憶保持部14から読み出された点灯時照度閾値Lon0である。そして、点消灯制御部13において、照度値が点灯時照度閾値未満であると判定した場合には(YES)、処理はステップS6へと進む一方、照度値が点灯時照度閾値以上であると判定した場合には(NO)、ステップS6を省略して、処理はステップS7へと進む。
ステップS6では、点消灯制御部13は、前照灯2が消灯している場合にはこれを点灯させる。
ステップS7では、点消灯制御部13は、ステップS2で演算された照度値が消灯時照度閾値以上であるか否かを判定する。ステップS7で用いる消灯時照度閾値は、ステップS3及びS4で消灯時照度閾値Loff0を補正した場合には補正後の消灯時照度閾値Loff1,Loff2であり、ステップS3及びS4で消灯時照度閾値を補正しなかった場合には記憶保持部14から読み出された消灯時照度閾値Loff0である。そして、点消灯制御部13において、照度値が消灯時照度閾値以上であると判定した場合には(YES)、処理はステップS8へと進む一方、照度値が消灯時照度閾値未満であると判定した場合には(NO)、ステップS8を省略して点消灯制御処理は終了する。
ステップS8では、点消灯制御部13は、前照灯2が点灯している場合にはこれを消灯させる。
図4は、コントロールユニット1が実行する点消灯制御処理における第1照度閾値補正のサブルーチンの一例を示す。第1照度閾値補正は、前述のように、推定した天候状態に基づく照度閾値の補正である。
ステップS11では、照度値学習部21は、前述のように、照度値演算部12で演算された照度値の履歴から照度値の学習データを作成する。学習データとしては、照度値の最大値、最小値、平均値及び変化速度等が含まれる。
ステップS12では、天候推定部22は、ステップS11で作成された学習データと現在時刻と記憶保持部14に予め格納された日中照度の参照データとに基づいて、現在の自車位置における天候状態を推定する。具体的には、天候推定部22は、学習データと現在時刻と日中照度の参照データとに基づいて、照度値が比較的小さい値となるような照度状況が継続しているか否かを判定し、継続していると判定した場合に、現在の自車位置における天候状態は悪天候状態であると推定する。なお、天候推定部22が悪天候状態と推定しなかった場合であっても、照度値が点灯時照度閾値Lon0未満である場合には前述のステップS5,S6によって前照灯2が点灯する。
ステップS13では、閾値補正部20は、ステップS12で推定された天候状態に基づいて、記憶保持部14から読み出した照度閾値L0(点灯時照度閾値Lon0及び消灯時照度閾値Loff0)を補正する。具体的には、ステップS12で天候状態が悪天候状態と推定した場合には照度閾値L0をL1(>L0)に増大補正する。すなわち、点灯時照度閾値Lon0を点灯時照度閾値Lon1(>Lon0)に増大補正し、消灯時照度閾値Loff0を消灯時照度閾値Loff1(>Loff0)に増大補正する。これにより、悪天候時の薄暗い照度状況において、前照灯2の自動点灯を促進している。一方、ステップ12で天候状態が悪天候状態でないと推定した場合には照度閾値L0の増大補正を行わない。
図5は、コンロトールユニット1が実行する点消灯制御処理における第2照度閾値補正のサブルーチンの一例を示す。第2照度閾値補正は、前述のように、GPS信号に基づく照度閾値の補正である。
ステップS21では、自車位置演算部15は、受信部11で取得された複数のGPS衛星6の位置情報と記憶保持部14に予め記憶された地図情報とに基づいて、現在の自車位置(経度及び緯度)を演算する。
ステップS22では、理論時刻演算部16は、ステップS21で演算した現在の自車位置と暦日とに基づいて理論時刻を演算する。理論時刻は、公知の理論式によって演算可能であるが、緯度及び経度と理論時刻とを対応させた理論時刻テーブルを参照することで取得してもよい。
ステップS23では、受信可能衛星特定部17は、ステップS21で演算した現在の自車位置と記憶保持部14に予め記憶された軌道情報とに基づいて、受信可能GPS衛星の個数Nidealを特定する。また、ステップS24では、実受信衛星特定部18は、受信部11で取得された識別情報に基づいて実受信GPS衛星の個数Nreal(≦Nideal)を特定する。
ステップS25では、補正時刻演算部19は、受信可能GPS衛星の個数Nidealと実受信GPS衛星の個数Nrealとの個数差(Nideal-Nreal)が所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、地形的要因あるいは人工的要因によって自車に対する太陽光線を継続的に遮る遮蔽物が存在していると推認できるような値であり、実験・シミュレーション等によって予め設定されて記憶保持部14等に格納されている。そして、補正時刻演算部19において、個数差(Nideal-Nreal)が所定値以上であると判定した場合には(YES)、処理はステップS26へと進む一方、個数差(Nideal-Nreal)が所定値未満であると判定した場合には(NO)、ステップS26を省略して、処理はステップS27へと進む。
ステップS26では、補正時刻演算部19は、個数差(Nideal-Nreal)に応じて理論時刻を補正し、これにより補正時刻を演算する。具体的には、補正時刻演算部19は、所定値以上の個数差(Nideal-Nreal)が大きくなるに従って、遮蔽物の存在確率が高まるので、理論日没時刻に対する補正日没時刻の繰り上げ時間を大きくするとともに、理論日出時刻に対する補正日出時刻の繰り下げ時間を大きくする。
ステップS27では、閾値補正部20は、現在時刻が、ステップS26で演算された補正時刻(ステップS26で理論時刻を補正しなかった場合には理論時刻)の所定時間前に達しているか否かを判定する。所定時間については、補正日没時刻(理論日没時刻)に対する所定時間前の時刻以降において、あるいは、補正日出時刻(理論日出時刻)に対する所定時間後の時刻以前において、前照灯2を点灯状態に維持することが望ましい薄暗い照度状況となることが必要である。所定時間は、天候状態及び暦日の少なくとも一方による照度値変化の相異を考慮して、変更可能に設定できる。例えば、天候状態が悪くなるに従って所定時間を長く設定したり、夏季と比較して冬季における所定時間を長く設定したりしてもよい。
ステップS27の結果、閾値補正部20において、現在時刻が補正時刻(あるいは理論時刻)の所定時間前に達していると判定した場合には(YES)、処理はステップS28へと進む一方、現在時刻が補正時刻(あるいは理論時刻)の所定時間前に達していないと判定した場合には(NO)、ステップS28を省略して、第2照度閾値補正のサブルーチンは終了する。
ステップS28では、閾値補正部20は、記憶保持部14に格納されている照度閾値L0(点灯時照度閾値Lon0及び消灯時照度閾値Loff0)を補正する。具体的には、閾値補正部20は、照度閾値L0をL2(>L0)に増大補正する。すなわち、点灯時照度閾値Lon0を点灯時照度閾値Lon2(>Lon0)に増大補正し、消灯時照度閾値Loff0を消灯時照度閾値Loff2(>Loff0)に増大補正する。これにより、日没時刻前あるいは日出時刻後の薄暗い照度状況において、前照灯2の自動点灯を促進している。
照度閾値L1,L2は、いずれも前照灯2を点灯することが望ましい照度状況の照度値範囲を画する閾値であるので、照度閾値L2は前述の照度閾値L1と同じ値に設定してもよい。すなわち、点灯時照度閾値Lon2を点灯時照度閾値Lon1と同じ値に設定し、消灯時照度閾値Loff2を消灯時照度閾値Loff1と同じ値に設定することができる。
図6は、車両におけるイグニッションスイッチのオン操作によりコントロールユニット1に電源供給が開始されたことを契機として、コントロールユニット1において繰り返し実行される夜間強制点灯処理の一例を示す。
ステップS31では、点消灯制御部13は、ステップS1と同様に、自動点消灯モードが設定されているか否かを判定する。そして、点消灯制御部13において、自動点消灯モードが設定されていると判定した場合には(YES)、処理はステップS32へと進む一方、自動点消灯モードが設定されていないと判定した場合には(NO)、夜間強制点灯処理は終了する。
ステップS32では、自車位置演算部15は、ステップS21と同様に、受信部11で取得された複数のGPS衛星6の位置情報と記憶保持部14に予め記憶された地図情報とに基づいて、現在の自車位置(経度及び緯度)を演算する。ステップS33では、理論時刻演算部16は、ステップS22と同様に、ステップS32で演算した現在の自車位置と暦日とに基づいて、現在の自車位置における理論時刻を演算する。
ステップS34では、点消灯制御部13は、理論時刻演算部16で演算した理論時刻に基づいて、現在時刻が理論日没時刻から理論日出時刻の間であるか否かを判定する。そして、点消灯制御部13において、現在時刻が理論日没時刻から理論日出時刻の間であると判定した場合には(YES)、処理はステップS35へと進む一方、現在時刻が理論日没時刻から理論日出時刻の間ではないと判定した場合には(NO)、ステップS35を省略して、夜間強制点灯処理は終了する。
ステップS35では、点消灯制御部13は、前照灯2が消灯している場合には、点消灯制御処理における照度値と照度閾値との比較結果にかかわらず、強制的に前照灯2を点灯させる。
このようにコントロールユニット1では、地形的要因や人工的要因に起因する太陽光線の遮蔽物によって、実質的な日没時刻が理論日没時刻よりも早くなり、実質的な日出時刻が理論日出時刻よりも遅くなることを考慮して、GPS信号に基づいて理論時刻を補正して、これにより補正時刻を演算している。そして、コントロールユニット1は、補正日没時刻に応じて早期に照度閾値を増大補正することで点灯タイミングを早め、あるいは、補正日出時刻に応じて遅延して照度閾値を減少補正することで消灯タイミングを遅くしている。したがって、コントロールユニット1によれば、前照灯2の点消灯タイミングを、日没時刻前及び日出時刻後における実際の照度状況に応じて向上させることができる。
また、コントロールユニット1によれば、天候状態に基づいて照度閾値を補正しているので、悪天候時の薄暗い照度状況においても、前照灯2の点消灯タイミングを向上させることができる。
さらに、コントロールユニット1によれば、基本的には、照度センサ4で検出された照度値と照度閾値L0との比較結果に基づいて前照灯2の点消灯を制御しているので、照度センサを用いない従来技術と比較すると、自車がトンネル等の一時的な遮蔽物の下を通過する際に、前照灯2の点消灯タイミングを実際の照度状況に応じて向上させることができる。照度センサを用いない従来技術とは、自車Vが一定距離を走行したときに、受信可能GPS衛星の個数と実受信GPS衛星の個数との個数差が変動しないことに基づいて、強制的に前照灯の点消灯を行う点消灯制御である。ここで、図11及び図7を用いて、照度センサを用いない従来技術とコントロールユニット1による点消灯制御とを、点消灯タイミングについて比較する。
先ず、図11は、自車Vが一時的な遮蔽物としてのトンネルTを通過するときに、照度センサを用いない従来技術によって前照灯を点消灯させる場合の点消灯タイミングを示す。図11(a)に示すように、自車VがトンネルTの入口に接近したときに、受信可能GPS衛星6a~6dの個数Nidealと実受信可能GPS衛星6c,6dの個数Nrealとの個数差(Nideal-Nreal)は2であるものとする。そして、図11(b)に示すように、自車VがトンネルT内に進入したときに、受信可能GPS衛星6a~6dの個数Nidealと実受信可能GPS衛星の個数Nrealとの個数差(Nideal-Nreal)は4であるとする。しかし、自車VがトンネルT内を走行中であるにもかかわらず(照度値が点灯時照度閾値Lon0未満であるにもかかわらず)、図11(c)に示すように、個数差(Nideal-Nreal)が4のまま、自車Vが一定距離を走行しなければ前照灯が点灯しない。また、図11(d)に示すように、自車VがトンネルTの出口を通過した後に、受信可能GPS衛星6a~6dの個数Nidealと実受信可能GPS衛星6a~6dの個数Nrealとの個数差(Nideal-Nreal)が零のまま、自車Vが一定距離を走行しなければ前照灯が消灯しない。
一方、図7は、照度センサ4及びコントロールユニット1を搭載した自車Vが一時的な遮蔽物としてのトンネルTを通過するときに、コントロールユニット1の点消灯制御によって前照灯2を点消灯させる場合の点消灯タイミングの一例を示す。図7(a)に示すように自車VがトンネルTの入口に接近したときに、図7(d)に示すように、照度センサ4から検出される照度値が点灯時照度閾値Lon0を下回っていなければ、前照灯2は点灯しない。しかし、図7(b)に示すように自車VがトンネルT内に進入して、図7(d)に示すように照度値が点灯時照度閾値Lon0を下回ったときに、前照灯2が点灯する。そして、図7(c)に示すように自車VがトンネルTの出口付近に到達して、図7(d)に示すように照度値が消灯時照度閾値Loff0以上となったときに、前照灯2が消灯する。したがって、コントロールユニット1によれば、図11に示される点消灯制御と比較すると、自車がトンネル等の一時的な遮蔽物の下を通過する際に、前照灯2の点消灯タイミングを実際の照度状況に応じて向上させることができる。
[第2実施形態]
図8は、本発明に係る車両用灯具制御装置の第2実施形態を示す。以下、第1実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
コントロールユニット100は、自車が一時的な遮蔽物の下を通過する際の点消灯タイミングを実際の照度状況に応じて一層向上させるべく、前述の点消灯制御処理及び夜間強制点灯処理と並行して、対遮蔽物強制点消灯処理をさらに実行するように構成されている。このため、コントロールユニット100は、コントロールユニット1(図1参照)と比較すると、さらに第1領域フィルタ部23及び第2領域フィルタ部24を備えている。
第1領域フィルタ部23は、受信可能衛星特定部17で個数Nidealが特定された受信可能GPS衛星のうち、自車を基準とした所定領域R内に存在する受信可能GPS衛星を有効として、その個数を有効個数NAidealとして特定する。所定領域Rとしては、自車の進行方向側の空間領域とすることができる。
第2領域フィルタ部24は、実受信衛星特定部18で個数Nrealが特定された実受信GPS衛星のうち、上記の所定領域R内に存在する実受信GPS衛星を有効として、その個数を有効個数NAreal(≦NAideal)として特定する。
そして、点消灯制御部13は、対遮蔽物強制点消灯処理として、第1領域フィルタ部23で特定された有効個数NAidealと第2領域フィルタ部24で特定された有効個数NArealとの個数差(NAideal-NAreal)に基づいて、前照灯2を強制的に点消灯させる。
具体的には、点消灯制御部13は、個数差(NAideal-NAreal)が、前照灯2を点灯させるときの個数差(NAideal-NAreal)として設定された点灯用所定値となったときに、前照灯2を強制的に点灯させる。一方、点消灯制御部13は、個数差(NAideal-NAreal)が、前照灯2を消灯させるときの個数差(NAideal-NAreal)として設定された消灯用所定値(<点灯用所定値)となったときに、前照灯2を強制的に消灯させる。点灯用所定値と消灯用所定値とを区別することで、点灯用所定値及び消灯用所定値を共通の閾値としたときに、個数差(NAideal-NAreal)が共通の閾値を前後して点消灯を繰り返すというハンチングを抑制している。
図9は、コントロールユニット100を搭載した自車Vが一時的な遮蔽物としてのトンネルTを通過するときに、コントロールユニット100が対遮蔽物点消灯処理を実行することで前照灯2を点消灯させる場合の点消灯タイミングの一例を示す。
図9(a)に示すように、自車VがトンネルTの入口に接近したときに、所定領域R内に存在する受信可能GPS衛星6b,6cの有効個数NAidealは2であり、所定領域R内に存在する実受信GPS衛星6b,6cの有効個数NArealも2であるので、個数差(NAideal-NAreal)は零である。
図9(b)に示すように、自車VがトンネルTに進入するときには、所定領域R内に存在する受信可能GPS衛星6b,6c,6dの有効個数NAidealは3であり、所定領域R内に存在する実受信GPS衛星6bの有効個数NArealは1であるので、個数差(NAideal-NAreal)は2である。
図9(c)に示すように、自車VがトンネルTの出口に接近したときに、所定領域R内に存在する受信可能GPS衛星6c,6dの有効個数NAidealは2であり、所定領域R内に存在する実受信GPS衛星6dの有効個数NArealは1であるので、個数差(NAideal-NAreal)は1である。
図9(d)に示すように、自車VがトンネルTを脱出したときには、所定領域R内に存在する受信可能GPS衛星6c,6dの有効個数NAidealは2であり、所定領域R内に存在する実受信GPS衛星6c,6dの有効個数NArealも2であるので、個数差(NAideal-NAreal)は零である。
コントロールユニット100が実行する対遮蔽物点消灯処理では、図9の例において、自車VがトンネルTに進入するとき(図9(b)参照)に前照灯2が点灯するように、点灯用所定値は2に設定される一方、自車VがトンネルTを脱出したとき(図9(d)参照)に前照灯2が消灯するように、消灯用所定値は零に設定されている。複数のGPS衛星6はトンネルTに対して必ずしも図9の例のような位置にあるとはならないが、複数のGPS衛星6の軌道情報に基づいて、極力、自車VがトンネルTに進入するときに前照灯2が点灯し、かつ、自車VがトンネルTを脱出したときに前照灯2が消灯するように、点灯用所定値及び消灯用所定値が設定される。
図10は、車両におけるイグニッションスイッチのオン操作によりコントロールユニット100に電源供給が開始されたことを契機として、コントロールユニット100において繰り返し実行される対遮蔽物強制点消灯処理の一例を示す。
ステップS41では、自車位置演算部15は、ステップS21と同様に、現在の自車位置(経度及び緯度)を演算する。ステップS42では、受信可能衛星特定部17は、ステップS23と同様に、受信可能GPS衛星の個数Nidealを特定する。ステップS43では、実受信衛星特定部18は、ステップS24と同様に、実受信GPS衛星の個数Nreal(≦Nideal)を特定する。
ステップS44では、第1領域フィルタ部23は、ステップS42で個数Nidealが特定された受信可能GPS衛星のうち、自車を基準とした所定領域R内に属する受信可能GPS衛星を有効として、その個数を有効個数NAidealとして特定する。
ステップS45では、第2領域フィルタ部24は、ステップS43で個数Nrealが特定された実受信GPS衛星のうち、自車を基準とした所定領域R内に属する実受信GPS衛星を有効として、その個数を有効個数NAreal(≦NAideal)として特定する。
ステップS46では、点消灯制御部13は、ステップS44により特定した有効個数NAidealとステップS45により特定した有効個数NArealとの個数差(NAideal-NAreal)が点灯用所定値以上であるか否かを判定する。そして、点消灯制御部13において、個数差(NAideal-NAreal)が点灯用所定値以上であると判定した場合には(YES)、処理はステップS47へと進む一方、個数差(NAideal-NAreal)が点灯用所定値未満であると判定した場合には(NO)、ステップS47を省略して、処理はステップS48へと進む。
ステップS47では、点消灯制御部13は、照度値と照度閾値との比較結果にかかわらず、前照灯2が消灯している場合にはこれを強制的に点灯させる。
ステップS48では、点消灯制御部13は、有効個数NAidealと有効個数NArealとの個数差(NAideal-NAreal)が消灯用所定値以下であるか否かを判定する。そして、点消灯制御部13において、個数差(NAideal-NAreal)が消灯用所定値以下であると判定した場合には(YES)、処理はステップS49へと進む一方、個数差(NAideal-NAreal)が点灯用所定値よりも大きいと判定した場合には(NO)、ステップS49を省略して、対遮蔽物強制点消灯処理は終了する。
ステップS49では、点消灯制御部13は、前照灯2が点灯している場合には前照灯2を強制的に消灯させる。ただし、点消灯制御処理において点灯時照度閾値Lon0を補正して得られた点灯時照度閾値Lon1又はLon2と照度値との比較結果に基づいて前照灯2を点灯する場合、あるいは、夜間強制点灯処理(図6参照)による強制点灯を行う場合には、これらの点灯状態を優先させる。
このようにコントロールユニット100では、コントロールユニット1のように点消灯制御処理を実行することで、前照灯2の点消灯タイミングを、日没時刻前及び日出時刻後や悪天候時の薄暗い照度状況に応じて向上させることができるだけでなく、以下のような効果を奏することができる。
すなわち、コントロールユニット100によれば、対遮蔽物強制点消灯処理を実行することで、図9に示すように、自車VがトンネルTに進入するときに前照灯2を点灯させるようにし、かつ、自車VがトンネルTを脱出したときに前照灯2を消灯させるようにしている。一方、コントロールユニット1では、点消灯制御処理を実行することで、図7に示すように、自車VがトンネルTに進入してから前照灯2を点灯させ、かつ、自車VがトンネルTを脱出する前に前照灯2を消灯させる傾向にある。したがって、トンネルT等の一時的な遮蔽物によって自車周囲の照度値が急激に変化する状況であっても、コントロールユニット1によって点消灯制御処理を実行した場合と比較すると、運転者の視覚を変化後の照度状況に順応させやすくなる。
なお、第1及び第2実施形態において、コントロールユニット1,100は、受信可能GPS衛星の個数Nidealと実受信GPS衛星の個数Nrealとの個数差(Nideal-Nreal)に基づいて理論時刻を補正していたが、これに代えて以下のようにしてもよい。すなわち、記憶保持部14に予め地形(高度)情報を格納しておき、自車位置演算部15で演算された自車位置における地形(高度)情報に基づいて、自車位置において太陽光線が実際に遮蔽物によって継続的に遮られるか否かを判断することで、理論時刻を補正するようにしてもよい。これにより補正精度を向上させることが可能となる。なお、個数差(Nideal-Nreal)及び地形(高度)情報を組み合わせて、理論時刻を補正してもよい。
また、理論時刻の演算に関し、日没時刻前や日出時刻後では、太陽光線は自車位置における地表面に対して比較的低角度で入射するため、受信可能GPS衛星の個数Nideal及び実受信GPS衛星の個数Nrealをカウントする際に、GPS衛星6と自車とを結ぶ直線と自車位置における地表面とがなす角度に応じて、重み付けを行ってもよい。例えば、図2において、自車VからGPS衛星6a,6dまでの直線と自車Vの位置における地表面とがなす角度は比較的小さいため、それぞれの個数を2とカウントする一方、自車VからGPS衛星6b,6cまでの直線と自車Vの位置における地表面とがなす角度は比較的大きいため、それぞれの個数を0.5とカウントする。これにより、日没時刻前及び日出時刻後における太陽光線の入射角度を考慮できるので、理論時刻の補正精度を向上させることができる。
第1及び第2実施形態において、コントロールユニット1,100を搭載した車両に、例えば衝突被害軽減制動装置における画像取得手段として、可視光カメラも搭載されている場合、照度センサ4に代えて可視光カメラを照度検出手段として代用してもよい。この場合、照度値として可視光カメラのEV(Exposure Value)値を用いることができる。
第1及び第2実施形態では、コントロールユニット1,100は、照度値の学習データ等に基づいて自車位置における天候状態を推定していたが、これに代えて、自車と車外ネットワークとの間における無線通信を介して、任意の情報サービスによる天気情報を受信することで、自車位置における天候状態を推定するようにしてもよい。
第1実施形態において、コントロールユニット1が、自車位置演算部15で演算された自車位置と記憶保持部14に予め格納された地図情報とに基づいて、自車がトンネル等の一時的な遮蔽物の下を通過していることを認識できるように構成されている場合には、自車が遮蔽物に進入する直前から自車が遮蔽物を通過した直後までの間、前照灯2が点灯するように、照度閾値L0を増大補正するようにしてもよい。これにより、第2実施形態のコントロールユニット100で対遮蔽物強制点消灯処理を実行したときと同様の効果を得ることができる。
第1及び第2実施形態において、前照灯2を車両用灯具の代表例として説明したが、「前照灯2」という用語を、「車幅灯3」あるいは「前照灯2及び車幅灯3」としても本発明を適用可能である。前照灯2及び車幅灯3の点消灯を制御する場合には、それぞれの点消灯タイミングをずらすようにすることができる。例えば、照度閾値L0,L1,L2について、それぞれ、前照灯2の点消灯用の閾値と車幅灯3の点消灯用の照度閾値を設定し、点灯する際には、車幅灯3、前照灯2の順で点灯させ、消灯する際には、前照灯2、車幅灯3の順で消灯させるようにしてもよい。
第1及び第2実施形態では、コントロールユニット1,100における自車位置の演算等のためにGPS衛星6を用いたが、これに限らず、複数の航法衛星がその識別情報及び位置情報を含む航法信号を地上の広範囲に向けて電波送信するような人工衛星であれば、その種類を問わない。
第2実施形態のコントロールユニット100による対遮蔽物強制点消灯処理は、必ずしも点消灯制御処理及び夜間強制点灯処理と並行で実行する必要はなく、単独で実行することもできる。したがって、コントロールユニット100は、受信部11、点消灯制御部13、記憶保持部14、自車位置演算部15、受信可能衛星特定部17、実受信衛星特定部18、第1領域フィルタ部23及び第2領域フィルタ部24によって構成されてもよい。