JP6992273B2 - セメント用混和組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、沈下ひび割れは、コンクリートにブリーディングが生じ、その影響でコンクリート表面が沈下し、その沈下量の差より発生するひび割れである。沈下ひび割れは、ブリーディングを抑制すれば低減させることが可能である。
収縮ひび割れの発生原因としては、コンクリート自体の自己収縮、乾燥収縮、水和熱がコンクリート構造物内部に蓄積されその後放熱して生じる温度収縮があり、これらが収縮ひび割れを発生させる原因である。
かかる収縮ひび割れは、例えば、強度を高くすると自己収縮が大きくなってしまい、ひび割れの抑制が困難となってしまう問題がある。
温度収縮は、セメントの水和熱によって上昇した構造物内部の温度が下降するときに発生する収縮であり、鉄筋等の拘束により引っ張り応力が発生してひび割れが発生する。
自己収縮は、セメントの水和反応によって生じる相体積変化である化学収縮と毛細管空隙変化を合わせた収縮であり、セメントが反応して固まるときに必ず発生する。特に、急硬材のように急激にセメントが水和して固まる材料の自己収縮は大きく、ひび割れが発生しやすい。
また、急硬性成分であるC12A7を主成分としたクリンカを溶融し、その後これを急冷することによって、非晶質C12A7を得る方法もある。
更に、CAを主成分とするアルミナセメントクリンカは、C12A7を主成分としたクリンカに比べると、急硬性が劣る。
しかし、カルシウムアルミネートと石膏の急硬性成分とを含有するセメント組成物は、低温での十分な急硬性を得ることが難しかった。
更に、低温環境下において、水和反応を促進するとともに、自己収縮による初期収縮ひび割れの発生を有効に抑制することは困難であった。
(セメント用混和組成物)
本発明のセメント用混和組成物は、C12A7系鉱物相を含有するセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、カルシウム塩と炭酸リチウムとを含み、C12A7系鉱物を36~55質量%、硫酸アルカリ化合物(硫酸ナトリウム換算)を0.3~1.7質量%、炭酸リチウム(リチウム換算)を0.01~1.3質量%、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)を1~14質量%含有し、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.5~1.2であり、X線回折で測定したC12A7系鉱物相の結晶子径が150~500nmで格子定数が11.940~11.975Åである、セメント用混和組成物である。
かかるC12A7系鉱物相は、セメント用混和組成物を調製する際に添加配合する、セメント用急硬性添加材由来のものである。
C12A7系鉱物相を含有することにより、好ましくは上記含有量で含むことで、低温においても十分な急硬性や優れた初期強度が得られ、所望する本発明の上記効果を得ることが可能となる。
また、得られたセメント用混和組成物中におけるカルシウムアルミネート相であるC12A7系鉱物相の含有量の測定は、カルシウムアルミネート相であるC12A7系鉱物相の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、下記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
C12A7系鉱物相の結晶子径がかかる範囲であると、低温においても優れた初期強度発現性及び可使時間を確保できる良好な流動性等を得ることができる。
前記結晶子径は、例えば、粉末X線回折にて測定した値であり、X線回折/リートベルト法(装置:ブルカー社製D4 Endeavor、解析ソフト:Topas)を用いて測定した数値である。
管電圧:45kV 管電流:40mA
格子定数をかかる範囲とすることで、所定の流動性を確保するとともに優れた急硬性を有し、上記本発明の効果を奏することができる。
前記格子定数は、例えば、粉末X線回折にて測定した値であり、X線回折/リートベルト法(装置:パナリティカル社製X’Pert MPD、解析ソフト:HighScorePlus)を用いて、測定した値である。
管電圧:45kV 管電流:40mA
かかる石膏は、セメント用混和組成物中、石膏/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.5~1.2、好ましくは0.7~1.1となるような含有量で含まれる。但し、前記石膏含有量は、すべてCaSO4(無水石膏)に換算した合量として算出される量である。
また、得られたセメント用混和組成物中における石膏の含有量の測定は、石膏(無水石膏換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、上記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
かかる硫酸アルカリ化合物の含有量は、硫酸アルカリ化合物の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、JCAS I-04に準じて、Na量やK量を測定して、すべてNa2SO4換算に換算した合量とし、セメント用混和組成物中、0.3~1.7質量%、好ましくは0.5~1.5質量%で含有されることが望ましい。
また、得られたセメント用混和組成物中におけるカルシウム塩(水酸化カルシウム換算)の含有量は、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、上記記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
また、得られたセメント用混和組成物中における炭酸リチウム(リチウム換算)の含有量は、炭酸リチウム(リチウム換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、ICP発光分光分析法を用いて測定することができる。
含有されるF量がかかる範囲であることで、より優れた初期強度発現性を有し、可使時間を十分に確保することが可能となり、上記本発明の効果を更に有効に奏することができる。
X=-0.93(F/Q)-Qa+11.98≧0
上記式中、Fはセメント用混和組成物中のフッ素の含有量(質量%)、Qaはセメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相の格子定数(Å)、Qはセメント用混和組成物中のC12A7鉱物相の含有量(質量%)を表す。
これは、C3Aが増えると、C12A7系鉱物相の含有量が減少するため、十分な初期強度が得られない場合があるからである。かかるセメント用混和組成物中のC3Aは、含有されるセメント用急硬性添加材由来のものである。
本発明のセメント組成物は、C12A7系鉱物相を含有するセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、カルシウム塩と、炭酸リチウムとセメントとを含み、C12A7系鉱物を5~40質量%、硫酸アルカリ化合物(硫酸ナトリウム換算)を0.5~1.0質量%含み、炭酸リチウム(リチウム換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.0005~0.03、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.03~0.4、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.6~1.4であり、X線回折で測定したC12A7系鉱物相の結晶子径が150~500nmで格子定数が11.940~11.975Åである、セメント組成物である。
かかるC12A7系鉱物相は、セメント組成物を調製する際に添加配合する、セメント用急硬性添加材由来のものである。
C12A7系鉱物相を含有することにより、好ましくは上記含有量で含むことで、低温においても十分な急硬性や優れた初期強度が得られ、所望する本発明の上記効果を得ることが可能となる。
なお、本発明のセメント組成物にはアーウィンは含まれない。
また、得られたセメント組成物中におけるカルシウムアルミネート相であるC12A7系鉱物相の含有量の測定は、カルシウムアルミネート相であるC12A7系鉱物相の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、上記したように、例えば、下記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
C12A7系鉱物相の結晶子径がかかる範囲であると、低温においても優れた初期強度発現性及び可使時間を確保できる良好な流動性等を得ることができる。
前記結晶子径は、例えば、粉末X線回折にて測定した値であり、X線回折/リートベルト法(装置:ブルカー社製D4 Endeavor、解析ソフト:Topas)を用いて測定した数値である。
管電圧:45kV 管電流:40mA
格子定数をかかる範囲とすることで、所定の流動性を確保するとともに優れた急硬性を有し、上記本発明の効果を奏することができる。
前記格子定数は、例えば、粉末X線回折にて測定した値であり、X線回折/リートベルト法(装置:パナリティカル社製X’Pert MPD、解析ソフト:HighScorePlus)を用いて、測定した値である。
管電圧:45kV 管電流:40mA
かかる石膏は、セメント組成物中、石膏/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.6~1.4、好ましくは0.8~1.3となるような含有量で含まれる。但し、前記石膏含有量は、すべてCaSO4(無水石膏)に換算した合量として算出される量である。
また、得られたセメント組成物中における石膏の含有量の測定は、石膏(無水石膏換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、上記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
かかる硫酸アルカリ化合物の含有量は、硫酸アルカリ化合物の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、JCAS I-04に準じて、Na量やK量を測定して、すべてNa2SO4換算に換算した合量とし、セメント組成物中、0.5~1.0質量%、好ましくは0.6~1.0質量%で含有されることが望ましい。
かかるカルシウム塩は、セメント組成物中、カルシウム塩/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.03~0.4、好ましくは0.05~0.35となるような含有量で含まれる。但し、カルシウム塩含有量は、すべて水酸化カルシウムに換算した合量として算出される量である。
また、得られたセメント組成物中におけるカルシウム塩(水酸化カルシウム換算)の含有量は、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、上記記X線回折/リートベルト法にて測定することができる。
得られたセメント組成物中における炭酸リチウム(リチウム換算)の含有量は、炭酸リチウム(リチウム換算)の含有量が測定できれば、任意の公知の測定方法を適用することができ、例えば、ICP発光分光分析法を用いて測定することができる。
例えば、原料であるポルトランドセメント中のフッ素含有量はせいぜい0.05質量%であり、セメント用急硬性添加材中に含有されるフッ素含有量(例えば約0.5~3.0質量%)に比べて極めて少ないため、得られるセメント組成物に含有されるフッ素は、セメント用急硬性添加材のものがほとんどとなる。
含有されるF量がかかる範囲であることで、より優れた初期強度発現性を有し、可使時間を十分に確保することが可能となり、上記本発明の効果を更に有効に奏することができる。
上記本発明のセメント用混和組成物を製造する方法は、セメント用急硬性添加材、石膏、硫酸アルカリ化合物、カルシウム塩及び炭酸リチウムを混合して、上記特定の構成を有するように調製する。
その製法は特に限定されないが、具体的には、特定のセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、カルシウム塩と炭酸リチウムとを、C12A7系鉱物が36~55質量%で硫酸アルカリ化合物(硫酸ナトリウム換算)が0.3~1.7質量%、炭酸リチウム(リチウム換算)が0.01~1.3質量%、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)が1~14質量%、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.5~1.2となるように配合し、均一に混合して、上記本発明のセメント用混和組成物を調製する。
なお、得られるセメント用急硬性添加材中に含まれるTiやFeの原料となるもの(例えば、ベンガラ等)は積極的に配合しない。配合するセメント用急硬性添加材中に含まれるTiやFeは、上記配合原料中に不純物として含有されることにより、結果として含まれる場合もあるもので、積極的に含有されるものではない。
C12A7系鉱物相の結晶子径、格子定数をかかる範囲とするセメント用急硬性組成物をセメント用混和組成物に含むことにより、水和活性を促進する一方で、低温環境下における水和活性による収縮を低減でき、低温においても優れた初期強度発現性及び可使時間を確保できる良好な流動性等を得ることができる。
前記結晶子径及び格子定数は、上記と同様の測定方法で測定した値である。
C3Aが5.0質量%を超えると、C12A7系鉱物相の含有量が減少するため、現場での添加による十分な急硬性が得られず、初期強度が低下してしまう場合がある。
実質的に含まれないとは、これらの鉱物相が、原料中に含まれる不純物であるSiO2により生成される場合を妨げないという意味であり、積極的に生成して含有させるものではない。C2SとC2ASの合計含有量は多くとも10質量%、それ以下であることが望ましい。
これは、カルシウムアルミネート相であるC12A7系鉱物相の含有量を上記範囲から減少させないためである。
実質的に含まないとは、Tiが、原料中に含まれる不純物により生成される場合を妨げないという意味であり、積極的に含有させるものではない。
例えば、Tiの含有量をTiO2酸化物換算で1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下とするものである。
すなわち、セメント用急硬性添加材は、一定量の融液相の生成を必要としないため、融液相の生成に関係があるTiを積極的に含む必要がないからである。
TiO2を実質的に含まず、多くとも上記含有量以下とすることにより、低温での急硬性、例えば5℃以下での初期強度発現性(施工後3時間後等)に優れることとなる。
TiO2換算でTiを1.0質量%を超えて含むと、C3Aが5.0質量%を超えて生成してしまい、本発明の効果が得られない。
実質的に含まないとは、Feが、原料中に含まれる不純物により生成される場合を妨げないという意味であり、積極的に含有させるものではない。
例えば、Feの含有量をFe2O3酸化物換算で1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下とするものである。
すなわち、セメント用急硬性添加材は、一定量の融液相の生成を必要としないため、融液相の生成に関係があるFeを積極的に含む必要がないからである。
Fe2O3を上記含有量を超えて含むと、C12A7系鉱物相の格子定数が大きくなり、低温での急硬性、例えば5℃以下での初期強度発現性(施工後3時間後等)が劣ることとなり、少ないほど好ましい。
セメント用急硬性添加材中に含まれるFの含有量を上記範囲とすることで、C12A7系鉱物相が安定に生成し、更にC12A7系鉱物相の格子定数が適正範囲となり水和活性を高めることができ、当該セメント用急硬性添加材をセメントに後添加して得られるセメント組成物が、本発明の上記効果をより有効に発現することが可能となる。
このようにして得られたセメント用急硬性添加材は、一定量の融液相の生成を必要とすることがないため、C12A7系固溶体の水和活性が十分に発現することができるように、Ti、Fe等が実質的に含まれず、多くともこれらの含有量が上記含有量以下のように調整されて、セメントに後添加して、急硬性、特に5℃のような低温での初期強度に優れるものとなる。
C12A7系鉱物相の結晶子径がかかる範囲であると、かかる急硬性添加材等を配合した本発明のセメント用混和組成物をセメント等に添加し、得られるセメントモルタル・コンクリートが、適正な流動性を保ち、低温での良好な初期強度発現性を得ることができる。
また、ブレーン比表面積は、大きくしすぎると流動性に悪影響を及ぼし、粉砕時間を要して生産性が低下しコスト高になるので、5000~7000cm2/gが望ましい。
また、粉砕する際に、粉砕助剤(ジエチレングリコール、トリエタノールアミン等)を添加してもよい。
本発明のセメント組成物を製造する方法は、上記セメント用急硬性添加材、上記石膏、上記硫酸アルカリ化合物、上記カルシウム塩、上記炭酸リチウム及び上記セメントを混合して、上記特定の構成となるように配合することにより調製する。
その製法は特に限定されないが、具体的には、例えば、上記特定のセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、炭酸リチウムと、カルシウム塩と、セメントとを、C12A7系鉱物を5~40質量%、硫酸アルカリ化合物を0.5~1.0質量%含み、炭酸リチウム(リチウム換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.0005~0.03、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.03~0.4、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.6~1.4となるように配合して均一に混合できれば、任意の混合方法を用いて、本発明のセメント組成物が調製される。
本発明のセメント組成物を構成する特定のセメント用急硬性添加材は、上記セメント用混和組成物を構成するセメント用急硬性添加材と同様のものを使用することができる。
また、必要に応じて添加される上記混和剤等は、均一に混合できればセメント等と同時に添加しても、順次添加しても、またモルタル等を調製する際の水と混練する際に添加しても、いずれの添加方法による添加であっても特に限定されない。
上記本発明のセメント用混和組成物と、任意のセメントと、水とを配合させて、または、上記本発明のセメント組成物と、水とを配合して、セメントモルタル・コンクリートを調製することができる。
1)セメント用急硬性添加材の調製
セメント用急硬性添加材の目標化学組成が表1となるよう、CaCO3、SiO2、Al2O3、Fe2O3、MgO、TiO2、CaF2の各試薬を配合して混合粉砕することにより、各セメント用急硬性添加材原料を調製した。
得られた各セメント用急硬性添加材を、蛍光X線分析装置(パナリティカル社製;Axios)を用いて、JIS R 5204に準じて分析して、含有されるTiO2、Fe2O3、F成分等の含有割合を測定した。
これらの結果を、表2に示す。
得られた各セメント用急硬性添加材をX線回折/リートベルト法(装置:パナリティカル社製X’Pert MPD、解析ソフト:HighScorePlus)を用いて、C12A7系及びC3A鉱物の含有割合及びC12A7系鉱物相の結晶の格子定数を測定した。管電圧:45kV 管電流:40mA
その結果を表2に示す。ここで、C12A7系鉱物相の結晶の格子定数はC11A7CaF2の結晶構造を用いて測定した。
その結果を表2に示す。
(実施例1~10、比較例1~11)
次いで、上記各セメント用急硬性添加材をブレーン比表面積が5200±200cm2/g程度に粉砕して、各セメント用急硬性添加材粉末を得た。
得られた各セメント用急硬性添加材粉末、無水石膏(商品名;ノンクレーブ、住友大阪セメント(株)製)、Na2SO4(芒硝、試薬)、消石灰(水酸化カルシウム:試薬)及び炭酸リチウム(試薬)を、下記表3~5に示す配合割合で配合して、各セメント用混和組成物組成物を調製した。
なお、表3~5中、炭酸リチウムはリチウム換算の数値を示す。
上記3)に記載の方法と同様の方法で、各セメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相(Q)の含有量、C12A7系鉱物相の結晶の格子定数及び結晶子径を測定した。
これらの結果を表3~5に示す。
なお、セメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相は、上記セメント用急硬性添加材由来のものである。
上記5)で測定された各セメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相含有量と、表3~5中に示す各セメント用混和組成物中の無水石膏の配合量より、各セメント用混和組成物中の無水石膏/C12A7系鉱物相(質量比)を算出した。
その結果を表3~5に示す。
表2中のC3A、TiO2、Fe2O3量及び表3~5中のセメント用混和組成物中のセメント用急硬性添加材の配合量と表3~5中のセメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相の含有量(質量%)より、C3A/C12A7鉱物相(質量%)、TiO2/C12A7鉱物相(質量%)、Fe2O3/C12A7鉱物相(質量%)を算出した。すべて、C3A/C12A7鉱物相≦7(質量%)で、TiO2/C12A7鉱物相≦1.4(質量%)で、Fe2O3/C12A7鉱物相≦2.0(質量%)を満足するものであった。なお、セメント用混和組成物中のC12A7系鉱物相、C3A鉱物相、TiO2、Fe2O3は、上記セメント用急硬性添加材由来のものである。
早強ポルトランドセメント(PC:住友大阪セメント株式会社製)と、得られた各セメント用混和組成物(実施例1~10、比較例1~11)と、促進剤(水酸化リチウムと炭酸ナトリウム)、水等を、表6に記載の配合割合で配合して各セメントモルタルを調製した。
(実施例11~23、比較例12~22)
上記各セメント用急硬性添加材をブレーン比表面積が5200±200cm2/g程度に粉砕して、各セメント用急硬性添加材粉末を得た。
得られた各セメント用急硬性添加材粉末、無水石膏(商品名;ノンクレーブ、住友大阪セメント(株)製)、芒硝(Na2SO4、試薬)、消石灰(水酸化カルシウム:試薬)、炭酸リチウム(試薬)及び早強ポルトランドセメント(PC:住友大阪セメント株式会社製)を配合して、下記表7~10に示すような含有割合の各セメント組成物を調製した。
なお、表7~10中、炭酸リチウムはリチウム換算の数値を示す。
上記3)に記載の方法と同様の方法で、各セメント組成物中のC12A7系鉱物相(Q)の含有量、C12A7系鉱物相の結晶の格子定数及び結晶子径を測定した。
これらの結果を表7~10に示す。
なお、セメント組成物中のC12A7系鉱物相は、上記セメント用急硬性添加材由来のものである。
上記3)に記載のXRD/リートベルト方法と同様の方法で、各セメント組成物中の石膏及びカルシウム塩の含有量をそれぞれ測定した。但し、二水石膏及び半水石膏は無水石膏換算して、CaSO4量(石膏量)として、カルシウム塩は、水酸化カルシウムに換算して算出した。
その結果を表7~10に示す。
各セメント組成物中の硫酸アルカリ化合物の含有量は、セメントの水溶性成分の分析方法(JCAS I-04)に準じてNa及びK量を測定し、それぞれNa2SO4及びK2SO4としてNa2SO4換算した合量を硫酸アルカリ化合物含有量とした。
その結果を表7~10に示す。
表7~10に示した数値より各セメント組成物中のC12A7系鉱物相の含有量、消石灰の含有量、石膏(無水石膏換算)含有量および炭酸リチウム(リチウム換算)含有量より、消石灰(水酸化カルシウム)/C12A7系鉱物相(質量比:質量%)、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相(質量比)、炭酸リチウム(リチウム換算)/C12A7系鉱物相(質量比:質量%)を算出した。
その結果を表7~10に示す。
実施例11~20及び比較例12~22の各セメント組成物、細骨材(珪砂)、水、促進剤および混和剤(マイティ150:花王(株)製)を下記表11のとおり配合して均一に混練し、各モルタルを得た。
実施例21~23及び対照例の各セメント組成物、細骨材(珪砂)、水、促進剤および混和剤(マイティ150:花王(株)製)を下記表12のとおり配合して均一に混練し、各モルタルを得た。なお、対照例としてのセメント組成物は、早強ポルトランドセメント(PC:住友大阪セメント株式会社製)そのものである。
上記で得られた実施例1~23、比較例1~22及び対照例の各モルタルについて、5℃での3時間強度及び5℃でのフロー値を、JIS R 5201に準じて測定した。
その結果も、上記表3~5及び表7~10に示す。
上記で得られた実施例1~23、比較例1~22及び対照例の各モルタルについて、以下のようにして、5℃でのひび割れ試験を実施した。
JSCE-F506(モルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験用円柱供試体の作り方)に準じてモルタル供試体を作製した。ただし、型枠は図1に示すように、円柱供試体用型枠(φ5×10cm)の上部に穴を空け、ボルトを差し込んで固定したものを使用した。
ひび割れの評価は、混練3時間後の供試体上部表面(ボルト上面)に発生したひび割れの長さを5mm単位(切り上げ)で測定し、5mm以下の状態を合格とした。
これらの結果を表3~5及び表7~10に示す。
Claims (5)
- C12A7鉱物相を含有するセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、カルシウム塩と炭酸リチウムとを含み、C12A7系鉱物を36~47質量%、硫酸アルカリ化合物(硫酸ナトリウム換算)を0.9~1.4質量%、炭酸リチウム(リチウム換算)を0.05~0.28質量%、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)を2.9~6.5質量%含有し、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.57~1.19であり、X線回折で測定したC12A7系鉱物相の結晶子径が150~500nmで格子定数が11.940~11.975Åであることを特徴とする、セメント用混和組成物。
- 請求項1記載のセメント用混和組成物において、前記C12A7系鉱物相はC11A7CaX2(Xはハロゲン)及びC12A7の混合相であることを特徴とする、セメント用混和組成物。
- 請求項1又は2記載のセメント用混和組成物において、上記セメント用急硬性添加材は、C12A7鉱物相を70質量%以上含み、C3Aが5.0質量%以下、TiがTiO2換算で1.0質量%以下、FeがFe2.O3換算で1.5質量%以下であることを特徴とする、セメント用混和組成物。
- X線回折で測定したC12A7系鉱物相の結晶子径が150~500nmで格子定数が11.940~11.975Åであるセメント用急硬性添加材と、石膏と、硫酸アルカリ化合物と、炭酸リチウムと、カルシウム塩とを、C12A7系鉱物が36~47質量%、硫酸アルカリ化合物(硫酸ナトリウム換算)が0.9~1.4質量%、炭酸リチウム(リチウム換算)が0.05~0.28質量%、カルシウム塩(水酸化カルシウム換算)が2.9~6.5質量%含有され、石膏(無水石膏換算)/C12A7系鉱物相の含有量の質量比が0.57~1.19となるように混合することを特徴とする、セメント用混和組成物の製造方法。
- 請求項4記載のセメント用混和組成物の製造方法において、セメント用急硬性添加材は、原料を粉末化および混合して成形し、1250~1400℃で焼成して冷却速度40℃/分以下で冷却することにより、X線回折で測定したC12A7系鉱物相の結晶子径が150~500nmでC12A7系鉱物相の格子定数が11.940~11.975Åとして製造されることを特徴とする、セメント用混和組成物の製造方法。
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