JP6991528B2 - 異種酵素とメソポーラスシリカとの複合体 - Google Patents

異種酵素とメソポーラスシリカとの複合体 Download PDF

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Description

本発明は、複数の異種酵素による共役酵素反応(同時にもしくは順次に共役して行われる酵素反応)の促進技術に関する。更に詳しくは、2種類以上の異種酵素とメソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)とを複合体化するための最適な条件を見いだしたことによる、酵素反応効率が高い複合体の形成方法、及び当該複合体を用いることによる、高効率な共役酵素反応技術に関するものである。
生体触媒である酵素を利用した低環境負荷型の物質変換プロセスとして、生成物と酵素の分離、酵素の再利用等に向けた様々な固定化支持体の研究・開発が国内外で精力的に進められている。また、固定化酵素を利用した反応系は、医薬品等の機能性化学品の高効率生産の他、バイオセンサーやバイオ燃料電池等への利用法が提案されている(非特許文献1)。
従来の固定化酵素に関する基礎研究では主に1種類の酵素が使用されてきたが、近年、2種類以上の酵素を用いた複雑な反応経路、すなわち、生体模倣反応を利用した反応システムの構築が、バイオ技術分野における触媒反応等の化学反応プロセスへの応用に期待されている(非特許文献2、3)。
しかし、複数の酵素を同時に利用する場合、酵素間の凝集体形成により酵素が失活し、反応が阻害されることが多い。
そこで、真の生体模倣反応を実現するための技術的ブレーク・スルーとして、本発明者らは、シリカ系ナノ空孔材料(メソポーラスシリカ)の規則性細孔の内部に酵素やタンパク質を格納することで複数の異種酵素・タンパク質の高次構造を安定に保持した状態で高密度に配列化することによって、多段階反応の効率化を図る手法を開発している(特許文献1、非特許文献4,5)。しかし、複数の異種酵素の固定化に適用した場合の反応率の向上が大きな課題であった。
本発明者らは、最近本手法を、巨大なサブユニット構造を有するグルコースオキシダーゼ(二量体、分子量:約190kDa)とカタラーゼ(四量体、分子量:約240kDa)とのグルコースの酸化反応に適用したところ、カタラーゼによる中間副反応物(過酸化水素)の分解効率が高まったことが見いだされ、共役酵素反応における異種酵素の集積効果は確認できた(非特許文献6)。しかし、グルコースオキシダーゼによる最終目的物であるグルコノラクトンの生産収率は、未固定の遊離酵素と比較すると極めて低いものであった。このように、特に巨大なサブユニット構造又は多量体構造をとる2種以上の異種の酵素又はタンパク質の場合、メソポーラスシリカの細孔内部に高密度に安定的に配列化して複数の協調的な共役酵素反応を同時に起こさせることは実用的なレベルに達するまでには至っていない。
一方、異種酵素利用における反応の一つに補酵素(酵素駆動のエネルギー源)の再生系が挙げられ、例えば、カルボニル還元酵素とグルコース脱水素酵素の組み合わせによる光学活性アルコール合成の高効率化の可能性が示唆されている(非特許文献7)。
この補酵素再生系は、医農薬中間体などの高付加価値化学品の高生産プロセスへの応用が検討されているが、共役的な酵素反応における2種類の酵素間の凝集体形成に起因した酵素活性の低下が、補酵素の再生率、更には、目的物質の生産性に影響すること等の課題が残されており、実用化に至っていない。
したがって、複数の異種酵素を用いた共役酵素反応において、異種酵素間の凝集を防止して、固定化支持体に固定化した状態の酵素の活性低下を極力抑制し、高効率で安定的に共役酵素反応を行わせることができる、異種酵素の集積反応場の開発・提供が強く要請されていた。
特許第5164039号公報
Carlsson, N., et al., Adv. Colloid Interface Sci. 205, 339-360(2014) Fu, J., et al., J. Am. Chem. Soc. 134, 5516-5519(2012) Ngo, T. A., et al., J. Am. Chem. Soc. 138, 3012-3021(2016) Matsuura, S., et al., Bioconjugate Chem. 19, 10-14(2008) Matsuura, S., et al., Chem. Commun. 46, 2941-2943(2010) 松浦俊一ら、メソポーラス材料を足場とした異種酵素の集積反応場の構築、第66回日本生物工学会大会講演要旨集(2014年9月9日) Zhou, X., et al., Process Biochem. 50, 1807-1813(2015)
本発明は、本発明者らが以前に開発したメソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)へ複数の異種酵素・タンパク質を複合化させる手法(特許文献1、非特許文献4、5、6)を改良して、メソポーラスシリカの細孔内へ共役酵素反応に関わる複数の異種酵素(酵素A及び酵素Bとも称する。なお、「酵素A」及び「酵素B」には特別な意味はなく、両者が異種酵素であることと共に、本発明の対象の共役酵素反応に関与する2種以上の異種酵素のうちの主要な酵素であることを示す用語として用いている。例えば還元酵素および脱水素酵素。)を安定に配置・集積化し、酵素機能を連動して発現させ共役酵素反応を起こさせることによって、高度な生体模倣反応による新しい反応場・化学反応システムを提供するものである。
具体的には、複数の異種酵素である酵素A及び酵素B(例えばアゾ還元酵素とグルコース脱水素酵素)と、メソポーラスシリカとの複合体を用いた共役酵素反応において、共役酵素反応環境を整えることで、共役酵素反応中に双方の酵素と相互作用する各種反応基質(例えばメチルレッドおよびグルコース)および補酵素(例えば還元型NAD(P)H及び酸化型NAD(P))に影響を与えることなく、異種酵素の非特異的相互作用による凝集体形成等に起因する酵素の活性低下を極力抑制し、かつ高い反応効率を達成できる共役酵素反応システムを提供することにある。あわせて、当該共役酵素反応システムに用いるための改良された異種酵素-メソポーラスシリカ複合体の製造方法も提供する。
また、さらに、酵素周辺における反応基質濃度の至適化を高めた共役酵素反応技術を提供し、高効率で安定な酵素反応場を提供することも本発明の目的とする。
本発明者らは、以前開発した異種タンパク質とメソポーラスシリカとの複合体の製造方法(特許文献1、非特許文献4、5、6)の手法を共役酵素反応に関わる複数の異種酵素に適用し、メソポーラスシリカの細孔内部に近接した状態に固定化し、異種酵素同士の共役酵素反応を効率的に起こさせることを想起した。
しかし、一般に有用な共役酵素反応に関わる異種酵素は、巨大なサブユニット構造又は多量体構造をとっているため、それぞれのサイズが大きく、異種酵素を細孔内に近接した状態に固定化することには困難が予想された。実際に共役的なカスケード反応によりグルコノラクトンを合成する多量体のグルコースオキシダーゼとカタラーゼを順次細孔へ固定化させた非特許文献6では、両酵素の集積化には成功し中間副反応物(過酸化水素)の分解効率は向上できたものの、最終目的物(グルコノラクトン)の生産収率は遊離酵素の場合よりも低い結果となっていた。
そこで、本発明者らは、共役酵素反応に関与する異種酵素を固定化するメソポーラスシリカを最適化することを考え、種々の細孔径を有する各種メソポーラスシリカを成形し、モデル的な共役酵素反応として補酵素再生系においてNADHを利用する共役酵素反応である難分解性化学染料(アゾ染料:メチルレッド)の分解反応に適用することを試みた。
アゾ染料の分解には、物質変換反応を触媒するアゾ還元酵素(AzoR)と本酵素を持続的に駆動させるための補酵素(酵素のエネルギー源)の再生を担うグルコース脱水素酵素(GDH)との組み合わせによる異種酵素の集積反応場を構築し、高効率かつ持続的な分解反応を起こさせることが必要となる。すなわち、メソポーラスシリカの細孔内部に二量体のAzoRと四量体のGDHとを立体構造を保持したまま近接した状態で安定的に固定化することで、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体を形成させなくてはならない。
当該物質変換反応のみならず、本発明が対象とする共役酵素反応に関与する異種酵素は、サブユニット構造などで多量体化したバルキーな酵素が多いので、前記四量体のGDHがメソポーラスシリカ細孔内のAzoRと近接した位置に高次構造を保持したまま安定かつ高密度に固定化できるか否かを検討することは、他の共役酵素反応に関与する異種酵素の安定な固定化の優れたモデルとなると考えられる。
AzoR及びGDHを固定化するメソポーラスシリカとしては、FSM型、SBA型及びC-meso型を選択し、8nm付近の細孔径と共に、3~5nm程度の小さい細孔径も検討した。
小さい細孔径を試すに当たり、二量体のAzoRはともかく、四量体の巨大な酵素であるGDHの場合は、細孔内に立体構造を保持したまま吸着できるか、またGDHが細孔を塞いでAzoRが細孔内部に吸着されるのを妨げるのではないか、仮に細孔内部に吸着できない場合は酵素の凝集失活は抑制できない、などが強く懸念された。しかし、実際には、驚くべきことに、一般的な異種タンパク質の固定に用いるメソポーラスシリカの細孔径(10nm以上)と比較して極めて小さい細孔径のSBA5.4又はC22-meso3.3を用いた場合に、凝集失活は起こらず、96.4%又は100%という高い脱色率(メチルレッドの分解率)を示した。
この結果は、メソポーラスシリカの小さな細孔内の入り口付近にAzoR及びGDHが近接して固定化できたため、反応基質との接触頻度が向上し、かつ異種酵素の凝集失活の抑制効果が維持できたと考えられる。
しかし、得られたAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体を洗浄してしまうと、急激にGDHが除去され、補酵素再生能は失われてしまう結果を得た。
このことから、GDHとメソポーラスシリカとの結合性は十分ではないと考えられたので、さらに最適な細孔径の範囲、及びメソポーラスシリカの種類、及び固定化時の最適pH条件の検討を行った。
その結果、細孔径2~9nmのメソポーラスシリカ、特に細孔径4~9nmのSBA及び細孔径2~6nmのC-mesoを用い、かつ固定化の際のpH条件としてpH5~8を選択することで、洗浄してもGDHによる補酵素再生系能力を保持できることが確認できた。
すなわち、共役酵素反応に関与する異種酵素を固定化するメソポーラスシリカとして、細孔径2~9nmのメソポーラスシリカ、特に細孔径4~9nmのSBA及び細孔径2~6nmのC-mesoを用いることで、また、異種酵素をpH5~8の範囲で固定化することにより、異種酵素間の凝集反応を抑え、かつ反応効率の高い異種酵素-メソポーラスシリカ複合体が提供できた。
以上の知見を得たことで、本発明を完成することができた。
さらに、異種酵素の組み合わせとして、カルボニル還元酵素(RCR)及びソルビトール脱水素酵素(SDH)の組み合わせに適用した場合においても、異種酵素と細孔径2~9nmのメソポーラスシリカ(SBA、FSM)との複合体を用いて共役酵素反応を起こさせたところ、同様に異種酵素の凝集体形成等に起因する酵素活性の低下を抑制し、かつ反応性を増強できることと共に、繰り返し耐久性(再利用性)も高いことが確認できた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち少なくとも酵素A及び酵素Bがメソポーラスシリカに固定化されている複合体であって、
メソポーラスシリカの中心細孔直径が2~9nmであることを特徴とする、
酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔2〕 メソポーラスシリカが、「SBA」、「FSM」及び「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであって、
ここで、「SBA」の中心細孔直径は4~9nmであり、「FSM」の中心細孔直径は2~9nmであり、「C-meso」の中心細孔直径は2~6nmである、
前記〔1〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔3〕 共役酵素反応が、補酵素再生系を利用する酸化還元反応であり、酵素A及び酵素Bが、還元酵素及び脱水素酵素である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔4〕 補酵素再生系がNADH又はNADPHを利用する系であって、
還元酵素がアゾ還元酵素(AzoR)、カルボニル還元酵素(CR)、イミン還元酵素(IR)、エノン還元酵素(ER)、アルドース還元酵素(AR)、キシロース還元酵素(XR)、DT-ジアホラーゼ(DTD)から選択されたいずれか1つの酵素であり、
脱水素酵素がグルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、フルクトース脱水素酵素(FDH)、アルコール脱水素酵素(ADH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、キシリトール脱水素酵素(XDH)から選択されたいずれか1つの酵素である、前記〔3〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔5〕 還元酵素及び脱水素酵素の組み合せがアゾ還元酵素(AzoR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)である、前記〔4〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔6〕 還元酵素及び脱水素酵素の組み合せがカルボニル還元酵素(CR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)又はソルビトール脱水素酵素(SDH)である、前記〔4〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔7〕 共役酵素反応がATP再生系を利用する反応であり、酵素A及び酵素Bの組み合わせが、ATP要求性酵素及びキナーゼであって、
ATP要求性酵素が、リガーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、キナーゼ、ルシフェラーゼから選択されたいずれか1つの酵素であり、
キナーゼが、クレアチンキナーゼ(CK)、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、アデニル酸キナーゼ(AK)から選択されたいずれか1つの酵素である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
〔8〕 共役酵素反応がカスケード反応であり、酵素A及び酵素Bの組み合わせが、以下の(a)~(i)から選択されたいずれか一組の組合せである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体;
(a)ピルビン酸キナーゼ(PK)と乳酸脱水素酵素(LDH)、
(b)アルドース還元酵素(AR)とソルビトール脱水素酵素(SDH)、
(c)グリセロールキナーゼ(GK)とグリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、
(d)ピルビン酸脱炭酸酵素とアルコール脱水素酵素(ADH)、
(e)ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)とリンゴ酸脱水素酵素(MDH)、
(f)キシロース還元酵素(XR)とキシリトール脱水素酵素(XDH)、
(g)乳酸脱水素酵素(LDH)とピルビン酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼから選択されたいずれか1つの酸化酵素、
(h)グルタミナーゼとグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)、
(i)グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)とγ-アミノブチルアルデヒド脱水素酵素(ABALDH)、及び
(j)グルコースオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼから選択されたいずれか1つの酸化酵素とペルオキシダーゼ及びカタラーゼから選択されたいずれか1つのヒドロペルオキシダーゼ。
〔9〕 共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち酵素A及び酵素Bのそれぞれが中心細孔直径2~9nmのメソポーラスシリカに固定化された酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を製造する方法であって、
酵素A及び酵素Bを、pH5~8に調整した緩衝液中でメソポーラスシリカに吸着させる工程を含む、方法。
〔10〕 さらに、固定化終了後のメソポーラスシリカをpH5~8に調整した緩衝液で複数回洗浄する工程を含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕 メソポーラスシリカが、「SBA」、「FSM」及び「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであって、
ここで、「SBA」の中心細孔直径は4~9nmであり、「FSM」の中心細孔直径は2~9nmであり、「C-meso」の中心細孔直径は2~6nmである、
前記〔9〕又は〔10〕に記載の方法。
〔12〕 共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち酵素A及び酵素Bのそれぞれがメソポーラスシリカに固定化された酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を用いた共役酵素反応方法であって、下記(1)及び(2)の工程を含む方法;
(1)酵素A及び酵素BをメソポーラスシリカにpH5~8に調整した緩衝液中で固定化する工程、
(2)工程(1)で得られた酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を含むpH5~8の緩衝液中に、酵素A及び/又は酵素Bの基質を添加するか、又は
工程(1)で得られた酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を、酵素A及び/又は酵素Bの基質を含むpH5~8の緩衝液中に添加して、酵素A及び酵素Bが関わる共役的な酵素反応を行う工程。
〔13〕 共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち酵素A及び酵素Bのそれぞれがメソポーラスシリカに固定化された酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を用いた共役酵素反応方法であって、下記(1)~(3)の工程を含む方法;
(1)酵素A及び酵素BをメソポーラスシリカにpH5~8に調整した緩衝液中で固定化する工程、
(2)工程(1)で得られた酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体をpH5~8の緩衝液で洗浄する工程、
(3)工程(2)で得られた洗浄後の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を、酵素A及び/又は酵素Bの基質を含む反応液中で、酵素A及び酵素Bが関わる共役的な酵素反応を行う工程。
〔14〕 共役酵素反応方法が、反応基質から有用物質を製造する方法である、前記〔12〕又は〔13〕に記載の方法。
〔15〕 共役酵素反応方法が、環境中に存在する反応基質となる環境汚染物質を分解する方法である、前記〔12〕又は〔13〕に記載の方法。
〔16〕 共役酵素反応方法が、被検試料中に存在するか又は存在する可能性のある反応基質を検出又は定量する方法である、前記〔12〕又は〔13〕に記載の方法。
〔17〕 前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を含むことを特徴とする、酵素A及び酵素Bが関わる共役酵素反応用キット、センサー又は装置。
〔18〕 共役酵素反応用キット、センサー又は装置が、反応基質から有用物質を製造するためのものであることを特徴とする、前記〔17〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔19〕 カルボニル還元酵素(CR)と脱水素酵素との共役酵素反応を利用した光学活性アルコールを製造するためのキット又はバイオリアクターである、前記〔18〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔20〕 共役酵素反応用キット、センサー又は装置が、被検試料中に存在する可能性のある反応基質又は共役酵素反応後の産物を検出又は定量するためのものであることを特徴とする、前記〔17〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔21〕 グルコースオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ又はグルタミン酸オキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用した被検試料中のグルコース、ピルビン酸、乳酸、コレステロール、又はグルタミン酸を検出又は定量するための測定キットである、前記〔20〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔22〕 グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、フルクトース脱水素酵素(FDH)、アルコール脱水素酵素(ADH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)又はキシリトール脱水素酵素(XDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)との補酵素再生系の共役酵素反応を利用した、被検試料中のグルコース、グルコース-6-リン酸、フルクトース、アルコール、ギ酸、乳酸、ソルビトール、グリセロールリン酸、リンゴ酸又はキシリトールを検出又は定量するための測定キットである、前記〔20〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔23〕 ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)とリンゴ酸脱水素酵素(MDH)とのカスケード反応を利用して、被検試料中の二酸化炭素濃度を測定するための測定キットである、前記〔20〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔24〕 共役酵素反応用キット又は装置が、環境中に存在する反応基質となる環境汚染物質を分解するためのものであることを特徴とする、前記〔17〕に記載のキット、センサー又は装置。
〔25〕
アゾ還元酵素(AzoR)とグルコース脱水素酵素(GDH)とのNAD又はNADH補酵素再生系を利用した、環境中の難分解性化学染料分解のための装置である、前記〔24〕に記載のキット、センサー又は装置。
本発明では、補酵素再生系などの共役酵素反応に関わる複数の異種酵素をメソポーラスシリカに固定化する際のメソポーラスシリカの細孔径範囲を2~9nmに設定することで、異種酵素の凝集体形成等に起因する酵素の活性低下を抑制し、かつ高い反応効率を達成できた。さらに、その細孔径範囲内であれば、繰り返し耐久性(再利用性)も高いことが確認できた。
特にキット、センサーなどに利用する場合には、反応効率の増大と共に、異種酵素間の凝集失活が抑えられるため酵素投入量を極力抑えることができコストが低減できる。
典型的なメソポーラスシリカ(SBA型、FSM型)及びC-meso型メソポーラスシリカの走査型電子顕微鏡(SEM)の像である。(a)~(c)SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:7.1nm)のSEM像、(a)観察倍率:25万倍(b)観察倍率:15万倍(c)観察倍率:6千倍、(d)FSM型メソポーラスシリカのSEM像(観察倍率:1千倍)、(e)C-meso型メソポーラスシリカのSEM像(観察倍率:2.2千倍)。 メソポーラスシリカ粒子(シリカ系ナノ空孔材料)の規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したアゾ還元酵素(AzoR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)を備えたAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体のうちAzoRと難分解性化学染料(アゾ染料:メチルレッド)が相互作用し、更に、GDHによる補酵素(NADH)の再生系を組み込み酸化型NADから還元型NADHに再生することができるようになった結果、アゾ染料が高効率かつ持続的に分解される様子を模式的に示す説明図である。 AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体による補酵素再生系を利用したアゾ染料(メチルレッド)の還元分解における反応系および評価系を示す説明図である。図中、(a)は、異種酵素(AzoR及びGDH)による反応系の概略を示す図であり、また、(b)は、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体の調製方法、及び、メチルレッドの分解反応の手順を模式的に示す説明図である。 単一酵素(AzoR)、または、異種酵素(AzoRとGDH)における遊離の未固定酵素、また、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.0及び4.2nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1及び5.4nm)、C22-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.3nm)に対して固定化した酵素による反応30分後のメチルレッドの脱色率(反応1回目)、固定化酵素を繰り返し再利用した場合のメチルレッドの脱色率(反応2回目)を評価した結果をまとめた表である。 C-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7、3.3、6.1nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4、8.1、10.6nm)、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6、4.2、8.0nm)、MCM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.1nm)、非多孔質球状シリカ(KE-S100)に対して固定化した異種酵素(AzoRとGDH)の活性におけるメソポーラスシリカの細孔径の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)に対して固定化した異種酵素(AzoRとGDH)の活性における酵素の固定化及び洗浄操作時に用いた緩衝液のpH値(pH:4、6、7.5、9)の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)に対して固定化した単一酵素(AzoR)の活性における酵素の固定化及び洗浄操作時に用いた緩衝液のpH値(pH:4、6、7.5、9)の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)に対して固定化した異種酵素(AzoRとGDH)、または、単一酵素(AzoR)の活性における酵素の固定化及び洗浄操作時に用いた緩衝液のpH値(pH:4、6、7.5、9)の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)に対して固定化した異種酵素(AzoRとGDH)、または、単一酵素(AzoR)の活性における酵素の固定化及び洗浄操作時に用いた緩衝液のpH値(pH:4、6、7.5、9)の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)に対して固定化した異種酵素(AzoRとGDH)、または、単一酵素(AzoR)の活性における酵素の固定化及び洗浄操作時に用いた緩衝液のpH値(pH:4、6、7.5、9)の影響を調べた結果をまとめたグラフである。図中、(a)は、メチルレッド分解反応開始後1~8分における初期反応速度、また、(b)は、反応30分後のメチルレッドの脱色率、である。 メソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)の規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したR体選択的カルボニル還元酵素(RCR)及びソルビトール脱水素酵素(SDH)を備えたRCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体のうちRCRとプロキラルカルボニル化合物(2-ヒドロキシアセトフェノン:2-HAP)が相互作用し、更に、SDHによる補酵素(NADH)の再生系を組み込み酸化型NADから還元型NADHに再生することができるようになった結果、光学活性アルコール((R)-1-フェニル-1,2-エタンジオール:(R)-PED)が高効率かつ持続的に合成される様子を模式的に示す説明図である。 RCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体による補酵素再生系を利用したプロキラルカルボニル化合物(2-HAP)の不斉還元による光学活性アルコール((R)-PED)の合成における反応系および評価系を示す説明図である。図中、(a)は、異種酵素(RCR及びSDH)による反応系の概略を示す図であり、また、(b)は、RCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体の調製方法、(R)-PEDの合成反応、HPLC分析、固定化酵素サンプル回収及び再使用の開始までの手順を模式的に示す説明図である。 FSM型メソポーラスシリカ(FSM8.0,中心細孔直径:8.0nm)、SBA型メソポーラスシリカ(SBA8.1,中心細孔直径:8.1nm)、非多孔質球状シリカ(KE-S100)に対して固定化した単一酵素(RCR)、または、異種酵素(RCRとSDH)による反応30分後の生成物((R)-PED)の生成効率(2-HAPから(R)-PEDへの転化率)を指標として、固定化酵素の活性を評価した結果である。図中、(a)は、単一酵素、または、異種酵素における遊離の未固定酵素、また、FSM8.0、SBA8.1、KE-S100に対して固定化した酵素による反応30分後の(R)-PEDへの転化率(反応1回目)、固定化直後の上清に含まれるRCRの活性(転化率)、また、固定化直後の上清に含まれるSDHの活性(U/L)を評価した結果をまとめた表である。また、(b)は、反応30分後の(R)-PEDへの転化率を指標として、固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)を評価した結果である。 FSM型メソポーラスシリカ(FSM2.6,中心細孔直径:2.6nm)、SBA型メソポーラスシリカ(SBA5.4,中心細孔直径:5.4nm)に対して固定化した異種酵素(RCRとSDH)、又は、pH6の緩衝液を用いて固定化した異種酵素による反応30分後の生成物((R)-PED)の生成効率(2-HAPから(R)-PEDへの転化率)を指標として、固定化酵素の活性を評価した結果である。図中、(a)は、異種酵素(RCRとSDH)における、各種シリカ粒子に対して固定化した酵素による反応30分後の(R)-PEDへの転化率(反応1回目)、固定化直後の上清に含まれるRCRの活性(転化率)、また、固定化直後の上清に含まれるSDHの活性(U/L)を評価した結果をまとめた表である。また、(b)は、反応30分後の(R)-PEDへの転化率を指標として、固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)を評価した結果である。 図13及び14の繰り返し耐久性(反応1~10回)の評価結果について、異種酵素(RCRとSDH)と各種シリカ粒子との複合体を用いた(R)-PEDの合成反応の結果をまとめたグラフ、である。
1.本発明で用いるメソポーラスシリカについて
(1-1)「メソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)」の種類
酵素の固定化用担体として用いられる「メソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)」は、二酸化ケイ素(シリカ)を材質とする、均一な細孔を持つ多孔質材料であって、一般的には、細孔の中心細孔直径が2~50nm(メソ孔:IUPAC)であり、全細孔容積が0.1~3.0mL/gで、比表面積が200~1500m/gである。メソポーラスシリカ内の細孔を規則的に形成させるための一般的合成方法には、(a)液晶の鋳型法と(b)シート変形法の2種類あり、(a)では、界面活性剤をシリカ又はケイ酸ソーダと混和して縮合による自己組織化させ、焼成により界面活性剤を除去するのに対して、(b)では界面活性剤を層状のカネマイト(NaHSi・3HO)に添加してイオン交換によりシート変形を起こさせてハニカム構造を形成させ界面活性剤を焼成除去する方法がある。(a)の方法で得られる典型的なものとして、「MCM(MCM-41など)」、「SBA-15(中心細孔直径:4~30nm)」などがあり、(b)の方法で
得られる典型的なものとして、「FSM-16およびFSM-22など(中心細孔直径:2~12nm)」などがある。両法で得られる「メソポーラスシリカ」は、いずれも通常ハニカム構造の「ヘキサゴナル」型結晶構造を有している。(a)の方法で得られる「MCM」及び「SBA」などでは、「キュービック」型の結晶構造を採ることもある(MCM-48、SBA-16など)。
また、「C16-meso(中心細孔直径:2~3nm)」又は「C22-meso(中心細孔直径:3~12nm)」などの「C-meso」も「FSM」とはシリカ源が異なるが、(b)の方法で製造される。
「FSM」、「SBA」及び「C-meso」などは、その合成過程の温度を調整したり、界面活性剤と共に膨張剤を混和して細孔径を拡大させるなど添加剤の配合量を調整することにより、所望の細孔径のメソポーラスシリカを得ることができる。
本発明において用いられる「メソポーラスシリカ」は、これらの各種の規則的な細孔構造を有する「メソポーラスシリカ」のうちでも、「FSM」型、「SBA」型及び「C-meso」型のメソポーラスシリカが好ましい。
(1-2)本発明のメソポーラスシリカの製造方法
本発明の「メソポーラスシリカ」は特許文献1又は非特許文献4,5等の記載の製造方法により製造することができる。本発明の実施例では、典型的な規則的な細孔構造を有する「メソポーラスシリカ」のうち、上記(b)のタイプの典型的な「FSM」、及び「C-meso」、上記(a)のタイプの典型的な「SBA」を用いたが、これらに限定されるものではない。
具体的には、「SBA」型メソポーラスシリカは、Zhaoらの方法(D. Zhao et al., Science, vol.279, pp.548-552 (1998))の記載に従い、非イオン性界面活性剤を鋳型として用い、オルトケイ酸テトラエチルをシリカ源とした、酸性溶液でのシリカの脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法により得られる。
「SBA」型の細孔径は、非イオン性界面活性剤とオルトケイ酸テトラエチルとの脱水重縮合反応時の温度条件を変化させることで、適宜の細孔径に調整できる。例えば、本発明の製造例1では、合成温度、35℃、100℃、130℃とすることで、中心細孔直径が5.4nm,8.1nm,10.6nmの「SBA」を得ている。
また、本発明の「FSM」型メソポーラスシリカは、稲垣らの方法(S. Inagaki et al., J. Chem. Soc. Chem. Commun., pp.680-682 (1993))、及び卜部らの方法(Y. Urabe et al., ChemBioChem, vol.8, pp.668-674 (2007)を参考にして、合成した。具体的には、カチオン性界面活性剤を鋳型として用い、層状ケイ酸塩であるカネマイトをシリカ源とした、弱アルカリ性溶液でのシリカの脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法により得た。
「FSM」型の細孔径は、鋳型となるカチオン性界面活性剤の炭素鎖の長さを調整するか、適宜膨張剤を配合することで調整できる。例えば、本発明の製造例1では、カチオン性界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド、又はドコシルトリメチルアンモニウムクロライドと1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(膨張剤)を用いたことで、中心細孔直径が2.6nm、4.2nm,8.0nmの「FSM」を得ている。
「C-meso」型メソポーラスシリカは、上記稲垣ら又は卜部らの方法による「FSM」型メソポーラスシリカ製造法において、シリカ源のカネマイトを高アルミニウム含有層状ケイ酸塩(Al-K-LDS)とすることでも製造できるが、本実施例では池田らの方法(T. Ikeda et al., Microporous Mesoporous Mater., vol.191, pp.38-47 (2014))に記載の手法に従って合成した。具体的には、カチオン性界面活性剤を鋳型として用い、弱アルカリ性溶液で高アルミニウム含有層状ケイ酸塩の脱水重縮合反応を行い、焼成により界面活性剤を除去する方法を用いた。
「C-meso」型の細孔径は、鋳型となるカチオン性界面活性剤の炭素鎖の長さを調整するか、適宜膨張剤を配合することで調整できる。例えば、本発明の製造例1では、カチオン性界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド、又はドコシルトリメチルアンモニウムクロライドと1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(膨張剤)を用いたことで、中心細孔直径が2.7nm、3.3nm,6.1nmの「C-meso」を得ている。
本発明の実施の態様(製造例1)の手法では、微粒子の状態の「メソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)」が得られるため、「メソポーラスシリカ粒子」又は「シリカ微粒子粉末」などということもある。
しかし、本発明のメソポーラスシリカは、用途に合わせて膜状、中空糸状又はペレット状など既知の成型法により適宜の形状に成形して用いても、微粒子状のメソポーラスシリカ粒子と同様の効果を発揮できる。メソポーラスシリカの膜状成型法としては片岡らの方法(S. Kataoka et al., Appl. Catal. A-Gen., vol.342, pp.107-112 (2008))など、中空糸状成型法としてはRownaghiらの方法(A. A. Rownaghi et al., ChemSusChem, vol.8, pp.3439-3450 (2015))など、また、ペレット状成型法としてはMaheshwariらの方法(H. Maheshwari et al., J. Mater. Sci., vol.51, pp.4470-4480 (2016) (2016))などが適用できる。
(1-3)メソポーラスシリカの細孔径について
(1-1)で述べたように、一般的なメソポーラスシリカの細孔径は、中心細孔直径で2~50nm(メソ孔)であるが、本発明で用いるメソポーラスシリカの場合は、特に細孔径が小さいもの(中心細孔直径2~9nm、より好ましくは2~8nm)が好ましく、「SBA」型では中心細孔直径が4~9nm、好ましくは4~6nmであり、「FSM」型では中心細孔直径が2~9nm、好ましくは2~5nmであり、「C-meso」型では2~6nm、好ましくは2~4nmである。「SBA」、「FSM」及び「C-meso」細孔径は、(1-2)で述べたように、膨張剤の量や加熱温度を調整することで適宜調整できる。
2.本発明が対象とする複数の異種酵素(酵素Aと酵素B)の組合せ
本発明の共役酵素反応に関わる複数の酵素のうち、少なくとも2種類の異種酵素(酵素Aと酵素B)は、いずれもが細孔径の小さいメソポーラスシリカ(中心細孔直径2~9nm)の細孔内に互いに近接して固定化されており、両酵素の酵素反応が補酵素再生系などにより供給されたエネルギーを利用して協調的かつ持続的に効率の良い共役酵素反応を行う。
特に、本発明の異種酵素-メソポーラスシリカ複合体の場合は、固定化時の最適なpH範囲が中性付近(pH5~8)にあるため、同様な中性付近(pH5~8)のpH範囲に至適pH範囲を有する共役酵素反応に関わる異種酵素の組合せが好ましい。当該異種酵素の場合は、固定化後に遠心分離工程、洗浄工程を経ずにそのまま反応液中に添加することができる。反対に、固定化に用いた緩衝液(pH5~8)中に直接反応基質を添加して、直ちに共役酵素反応を開始することもできる。
なお、異種酵素が関与する共役酵素反応の至適pH範囲がアルカリ側もしくは酸性側に偏る場合には異種酵素-メソポーラスシリカ複合体を固定化に用いた緩衝液と同じpH値(pH5~8)の緩衝液で洗浄する工程を設ければよい。
本発明で用いることができる典型的な異種酵素の組み合わせとしては、補酵素再生系を利用する還元酵素及び脱水素酵素が挙げられる。例えば、補酵素NADHあるいはNADPHを利用した還元酵素(アゾ還元酵素(AzoR)、カルボニル還元酵素(CR)、イミン還元酵素(IR)、エノン還元酵素(ER)、アルドース還元酵素(AR)、キシロース還元酵素(XR)、DT-ジアホラーゼ(DTD)等)及び脱水素酵素(グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、フルクトース脱水素酵素(FDH)、アルコール脱水素酵素(ADH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、キシリトール脱水素酵素(XDH)等)による物質変換反応が挙げられる。
また、前記のDT-ジアホラーゼ(DTD)及び脱水素酵素(グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)等)の利用による、脱水素酵素の反応基質の高感度定量を目的とした測定キット、バイオセンサーおよびバイオ燃料電池のアノード電極への電子供給、等が挙げられる。
その他、ピルビン酸キナーゼ(PK)及び乳酸脱水素酵素(LDH)、アルドース還元酵素(AR)及びソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールキナーゼ(GK)及びグリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、ピルビン酸脱炭酸酵素及びアルコール脱水素酵素(ADH)、又、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)等によるカスケード反応、キシロース還元酵素(XR)及びキシリトール脱水素酵素(XDH)を組み合わせた補酵素再生系によるカスケード反応、また、補酵素ATPを利用したATP要求性酵素(リガーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、キナーゼ、ルシフェラーゼ等)による物質変換反応において、キナーゼ(クレアチンキナーゼ(CK)、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、アデニル酸キナーゼ(AK)等)によるATP再生系を利用する方法等が挙げられる。
なお、本発明が適用可能な異種酵素による共役酵素反応系は、典型的には補酵素再生系と呼ばれる系であるがそれには限られない。2種以上の酵素のそれぞれ関わる反応系が同時にもしくは順次に共役して行われる酵素反応(共役酵素反応)であればよく、グルコースオキシダーゼとカタラーゼによるカスケード反応(非特許文献6)の他、乳酸又はピルビン酸を反応基質として用いる乳酸脱水素酵素(LDH)、ピルビン酸オキシダーゼ(あるいは、乳酸オキシダーゼ)、ペルオキシダーゼの3酵素のカスケード反応による乳酸又はピルビン酸の定量方法や、グルタミンを反応基質として用いるグルタミナーゼ、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)、γ-アミノブチルアルデヒド脱水素酵素(ABALDH)の3酵素のカスケード反応により、茶豆特有の香り成分(2-アセチル-1-プロリン)の原料となる「4-アミノブタナール」の生成反応なども含まれる。
2.異種酵素のメソポーラスシリカ細孔内への固定化
(2-1)異種酵素とメソポーラスシリカとの複合体
本発明は、メソポーラスシリカのうちでも中心細孔直径2~9nmという細孔径の小さなメソポーラスシリカ(好ましくは「SBA」、「FSM」又は「C-meso」)の細孔内部に、共役酵素反応に関わる少なくとも二種類の異種酵素を備えた異種酵素内包複合体(「酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体」ともいう。)であって、両酵素はメソポーラスシリカの細孔内に吸着され、分散した状態で細孔内に安定に固定され、かつ当該各酵素が補酵素再生系などを介した高効率のエネルギーの受け渡しや電子伝達が可能なように近接した状態にあることを特徴とする。
ここで、各酵素について細孔内で近接した状態にあるとは、異種酵素同士の間に介在する補酵素(酸化型及び還元型)などを高効率に受け渡せる程度に近接していることを指し、具体的には1~10nm程度の距離である。
(2-2)基本的な固定化方法
典型的な固定化方法の実験手順の1例を図3(b)に示したが、複数の異種酵素は、同時に固定化してもよいが、逐次的に固定化することもできるので、この手順には限定されない。
異種酵素の混合酵素溶液を、Tris-HClなどの緩衝液で中性付近(pH 5~8)に調整し、予めマイクロチューブに量り取った微粒子粉末状の細孔径の小さなメソポーラスシリカと共に、一定温度(4~40℃)にて一晩(12~18時間)穏やかに混和することで、異種酵素がメソポーラスシリカの細孔内部で近接した状態に安定して固定化できる。なお、逐次的な固定化の場合は、この工程を繰り返せばよい。
また、本発明の対象とする共役酵素反応が、3種類以上の異種酵素が関わるカスケード反応である場合、全ての酵素を同一のメソポーラスシリカに固定化してもよいが、カスケード反応の最初の2工程に関わる酵素のみを同一のメソポーラスシリカに固定化し、続く工程に関与する酵素は遊離状態で系に添加するか、又は別のメソポーラスシリカに固定化することが好ましい。
その他の固定化方法としては、異種酵素と反応基質等を含んだ緩衝液を調製し、メソポーラスシリカと共に一定温度(4~40℃)にて数分間から数時間混和することで、異種酵素をメソポーラスシリカの細孔内に固定化することができる。その際、酵素溶液から補酵素等のその他の反応因子の一部を抜いておくことで反応開始を抑制した状態で酵素の固定化を完了させ、次に、この反応因子を添加することによって反応を開始させる。
(2-3)固定化のための最適化条件
本発明のメソポーラスシリカ(中心細孔直径2~9nm)への異種酵素の固定化に際しては、酵素混合溶液を作成するための緩衝液のpH範囲としては、pH5~8の範囲が好ましく用いられる。特にpH6~7.5の中性付近が好ましい。
pH5~8のpH範囲に調整するためには、MES-NaOH(pH6)又はTris-HCl(pH7~9)緩衝液などを配合することで調整できる。
また、本発明の異種酵素-メソポーラスシリカ複合体の製造においては、固定化条件が中性付近で行われるため、一般には共役酵素反応条件の妨げにならないことが多く、洗浄工程を省略することができる。
しかし、異種酵素が関与する共役酵素反応の至適pH範囲がアルカリ側もしくは酸性側に偏る場合などは異種酵素-メソポーラスシリカ複合体を洗浄する工程が必要となる。
その場合の洗浄液としても、同様に、pH5~8の範囲の洗浄液が好ましく用いられる。特にpH6~7.5の中性付近が好ましい。pH調整方法は、前記酵素混合溶液の場合と同様である。
3.異種酵素の共役酵素反応効率の評価方法
本発明の異種酵素が関わる共役酵素反応が補酵素再生系であれば、補酵素の消費率、再生率を反応溶液中の吸光度の変化を観察することで評価できる。また、本発明で製造されるか、分解される物質の変換効率に着目して、評価することもできる。
本発明の実施態様では、典型的な例として、AzoRとGDHとの補酵素NADH系での分解反応を評価するため、アゾ染料(メチルレッド)の分解効率、又はNADHの消費率及び再生率を、反応溶液中の吸光度(測定波長:430nm、又は340nm)を経時的に測定することで評価した。
また、本発明においては、(R)-体の光学活性アルコールに還元することが可能なNADH依存型カルボニル還元酵素(RCR)とGDH又はSDHとを組み合わせ、2-ヒドロキシアセトフェノンを反応基質として、(R)-1-フェニル-1,2-エタンジオール((R)-PED:フルオキセチン(抗鬱薬)のキラルビルディングブロック)を製造することができるが、その際は、340nmの吸光度変化を経時的に測定する評価法の他、キラルカラムを搭載した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて(R)-PEDの鏡像体過剰率(光学純度)および生産収率を評価できる。なお、本反応系の場合は99%以上、R体が得られるため、ODSカラムを搭載したHPLCにより、直接(R)-PEDの分析が可能である。
4.本発明の異種酵素-メソポーラスシリカ複合体の用途
(4-1)共役酵素反応用のキット、センサー又は装置
本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体は、酵素A及び酵素Bが関与する共役酵素反応の酵素反応用のキット、センサー又は装置を構成する要素として用いることができる。ここで、装置とは、有用物質を合成するためのバッチ式もしくはフロー式の反応装置(バイオリアクター)又は検査、測定用の装置、器具などを含む。また、本発明のメソポーラスシリカは、一般には微粒子粉末状で使用することが好ましい。しかし、特にバイオリアクターなどの装置、器具の一部として用いる場合は、装置、器具またはその部品の形状、規模に合わせ、1.(1-2)で述べた既知の成型法に従い、膜状、中空糸状又はペレット状などに成形して用いることができる。
これら共役酵素反応キット、センサー又は装置の具体的な用途として、主なものは被検試料中の標的物質の検出もしくは測定、有用物質の生産、及び有害物質、汚染物質の無毒化もしくは除去などがある。以下、それぞれに用いられる酵素A及び酵素Bを含む酵素の組合せの典型的な例について述べるが、あくまでも例示であり、本発明はこれら例示された組合せには限定されない。
(4-2)被検試料中に存在する可能性のある標的物質の産物の検出又は定量、又は被検試料中の酵素活性の測定
本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体は、被検試料中に存在する可能性のある標的物質を検出又は定量するために、又は血液など生体由来被検試料中の酵素活性を測定するために用いることができる。そして、その際に被検試料中の標的物質を検出又は定量するための、又は生体由来被検試料中の酵素活性を測定するためのキット、センサー又は装置として用いることができる。
具体的には、例えば各種疾病の診断、血液マーカー値検査など、被験体由来血液などの被検試料中に標的物質が存在するか否か、又はどの程度存在するかを測定し対象疾病への罹患可能性、罹患の有無又は程度を判定、診断するための標的物質検出又は定量用キットとして、本発明のキットを用いることができる。被検試料中に存在する可能性のある標的物質を酵素Aの反応基質とし、測定対象物質前駆体を酵素Bの反応基質として系に存在させれば、共役酵素反応後に産生される酵素Bの反応産物量を検出又は定量することで被検試料中の酵素Aの基質の標的物質量を測定できる。または、酵素Aの基質を反応系に添加して被検血液など生体試料中の酵素A活性を測定することもできる。その際、発光、蛍光物質またはその前駆体が反応基質となる酵素Bを選択して組合せれば、発光、蛍光物質からの発光、蛍光量として、より迅速、簡便かつ正確に測定できる。
これらをキット化する場合は、酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体と共に、酵素希釈用(及び酵素抽出用)緩衝液、酵素A及び/又は酵素Bの反応基質、酵素A及び/又は酵素Bの標準物質、反応測定用容器(ウエル)などを適宜組み合わせてキットとすることができる。
バイオ電池、又はバイオセンサーの場合はさらに、電極上あるいは電極近傍に酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を配置すると共に、キノン類及びフェロセン類など低分子の酸化還元物質(電子伝達メディエーター)を一方の基質に代えて組み合わせる必要がある。
そのような異種酵素の組合せを例示すると、これらに限定されるわけではないが、
(a)グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用して生成Hを測定し被検血漿試料中のグルコースを高感度に定量する血糖値測定用キット、
(b)ピルビン酸オキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用して生成Hを測定し被検血漿試料中のピルビン酸を高感度に定量するための血中のピルビン酸測定用キット、(なおピルビン酸測定用キットは、清酒の熟成度判定のためのキットとして用いることもできる。)
(c)乳酸オキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用して生成Hを測定し被検血漿試料中の乳酸を高感度に定量するための乳酸測定用キット、
(d)コレステロールオキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用して生成Hを測定し被検血液試料中のコレステロールを高感度に定量するためのコレステロール測定用キットなどが挙げられる。また、医療用ではないが、
(e)グルタミン酸オキシダーゼとペルオキシダーゼとの共役酵素反応を利用して生成Hを測定し被検食品試料中のグルタミン酸を検出又は定量するための食品の旨味分析用キットも挙げられる。
また、典型的な蛍光・発色測定キットとしては、各種脱水素酵素とDT-ジアホラーゼ(DTD)と、DTDの基質となる発光物質もしくは蛍光物質又はそれらの前駆体を組み合わせた蛍光・発色測定キットが挙げられる。例えば、発色物質のMTTテトラゾリウム塩は、NADHで還元されると紫色(最大波長565 nm)の還元型に変化するので、発色度を測定すると標的物質量又は標的酵素活性が正確に測定できる。
主として疾患との関連で被験者の血液など体液試料に適用する測定キット、検査キットとしてはこれらに限定されるわけではないが、以下の様なキットが例示できる。
(f)グルコース脱水素酵素(GDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料もしくは食品試料中のグルコースを定量するか、又は血中GDH活性を測定するための測定キット、検査キット、
(g)グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料中のグルコース-6-リン酸を定量するか、又は血中G6PDH活性を測定するための測定キット、検査キット、
(h)アルコール脱水素酵素(ADH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料もしくは食品試料中のアルコールを定量するか、又は血中ADH活性を測定するための測定キット、検査キット、
(i)乳酸脱水素酵素(LDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料もしくは食品試料中の乳酸を定量するか、又は血中LDH活性を測定するための測定キット、検査キット、
(j)ソルビトール脱水素酵素(SDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料もしくは食品試料中のソルビトールを定量するか、又は血中SDH活性を測定するための測定キット、検査キット、
(k)グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料中のグリセロールリン酸を定量するか、又は血中GPDH活性を測定するための測定キット、検査キット
(l)リンゴ酸脱水素酵素(MDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検血液試料もしくは食品試料中のリンゴ酸を定量するか、又は血中MDH活性を測定するための測定キット、検査キットなどが挙げられる。
また、下記の(m)及び(n)は、被検試料中のフルクトース、キシリトールの定量にも用いることができるが、むしろ主としてNAD(P)Hの電気化学酸化を利用した酵素電池(アノード電極)として期待される。酵素電池としては、(f)~(l)を用いることもできる。さらに、(f)~(o)はいずれも脱水素酵素の基質を検出、定量するバイオセンサーとしての用途もある。
(m)フルクトース脱水素酵素(FDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのメソポーラスシリカ複合体を含む系にDTDの基質となるキノン類及びフェロセン類などの電子伝達メディエーターを添加して酵素電池のアノード電極とすることができる。同様に、
(n)キシリトール脱水素酵素(XDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)と前記電子伝達メディエーターとを組み合わせれば、酵素電池のアノード電極とすることができる。
さらに、
(o)ギ酸脱水素酵素(FDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)とのNAD(P)H/NAD(P)再生系共役酵素反応を利用した、被検食品試料中のギ酸を定量するか、又は食品中FDH活性を測定するための測定キット、検査キットとして用いられる。
その他、ホスホエノールピルビン酸の二酸化炭素によるカルボキシル化反応を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)とリンゴ酸脱水素酵素(MDH)とのカスケード反応を利用して、環境試料などの被検試料中の二酸化炭素濃度を測定するための測定キットを提供することができる。
(4-3)酵素Aの反応基質から有用物質を製造するためのキット又はバイオリアクター(装置)
本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体を、有用物質の原料を基質とする酵素Aの酵素反応に適用すれば、酵素Bの酵素反応と共役的に効率よく働かせることができるので、酵素Aの基質から有用物質を大量生産できる。本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体はそのためのキット又はバイオリアクター(装置)の構成要素として用いることができる。
具体的には、これらに限定されるわけではないが、例えばカルボニル還元酵素(CR)と脱水素酵素(グルコース脱水素酵素(GDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)等)の共役酵素反応による光学活性アルコールの高効率合成が可能となる。
典型的には、(R)-体の光学活性アルコールに還元することが可能なNADH依存型カルボニル還元酵素(RCR)とGDH又はSDHとを組み合わせ、2-ヒドロキシアセトフェノンを反応基質とすることで、(R)-1-フェニル-1,2-エタンジオールを製造することができる。(R)-1-フェニル-1,2-エタンジオールは、(R)-PED:フルオキセチン(抗鬱薬)のキラルビルディングブロックとして有用である。
また、グルタミナーゼとグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)との共役酵素反応を利用し、グルタミンを原料としてγ-アミノ酸(GABA)を製造するためのキット又はバイオリアクターが提供できる。GABAは、脳内の抑制性神経伝達物質として機能する物質であり、脳内で不足するとIDDMの発症に繋がり、膵臓では、β細胞でインスリンやソマトスタチンなどの分泌制御に関わっているとされている有用物質であり、化成品原料(ポリアミド4)としての活用も期待されている。
グルタミナーゼ、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)にさらにγ-アミノブチルアルデヒド脱水素酵素(ABALDH)を加えた3種類の酵素のカスケード反応を利用すれば、「4-アミノブタナール」を製造するためのキット又はバイオリアクターが提供できる。
「4-アミノブタナール」は、茶豆特有の香り成分(2-アセチル-1-プロリン)の原料となる。
(4-4)環境中の環境汚染物質や毒性物質を分解するためのキット又はバイオリアクター(装置)
本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体は、環境中に存在する酵素Aの反応基質となる環境汚染物質や毒性物質を効率的に分解することができ、そのためのキット又はバイオリアクター(装置)として用いることができる。
例えば、これらに限定されるわけではないが、産業排水中の難分解性化学染料であるアゾ染料(メチルレッドなど)を、アゾ還元酵素(AzoR)とグルコース脱水素酵素(GDH)とメソポーラスシリカ複合体を緩衝液などと組み合わせてアゾ染料(メチルレッドなど)分解用キットとすることができ、当該メソポーラスシリカ複合体をカラムなどに詰めてアゾ染料分解用バイオリアクターとすることもできる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した先行技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(製造例1)メソポーラスシリカ(シリカ系ナノ空孔材料)の製造
本実施例で用いる、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していて、細孔径の異なる各種メソポーラスシリカ(「C-meso」、「SBA」、及び、「FSM」)を、それぞれ複数種類合成した。
(1-1)C-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7、3.3、6.1nm)の合成
中心細孔直径2.7、3.3、又は6.1nmを有するC-meso型メソポーラスシリカは、池田らの方法(T. Ikeda et al., Microporous Mesoporous Mater., vol.191, pp.38-47 (2014))を参考にして合成した。
具体的には、まずヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(3.2g、東京化成工業社製)、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(4.24g、ライオン・アクゾ社製)、或いは、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(4.24g、ライオン・アクゾ社製)と1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(7mL、アルファエイサー社製)を、それぞれ70℃の水100ミリリットルに添加し、1時間撹拌(700rpm)した。溶解後、前記池田らの方法により合成した高アルミニウム含有層状ケイ酸塩(Al-K-LDS)0.25gを更に添加し、ホットスターラーを用いて70℃に加熱しながら、pH10の状態で、50時間撹拌(700rpm)した。
これを、遠心分離し、上清を除去した後、70℃の熱水250ミリリットルに沈殿物を再分散して洗浄する工程を3回繰り返してから風乾した。これを、60℃で4日間乾燥した後、時間あたり87.5℃の速度で550℃まで昇温させ、更に、これを、550℃で10時間焼成することにより、2.7nm(C16-meso2.7)、3.3nm(C22-meso3.3)、又は、6.1nm(C22-meso6.1)の中心細孔直径を有するC-meso型メソポーラスシリカを得た。
(1-2)SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4、8.1、10.6nm)の合成
中心細孔直径5.4、8.1、又は10.6nmを有するSBA型メソポーラスシリカは、Zhaoらの方法(D. Zhao et al., Science, vol.279, pp.548-552 (1998))を参考にして、合成した。
具体的には、まず、Pluronic P123(ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(BASF社製))(10g)を、水300ミリリットルに添加し、35℃で一晩撹拌し溶解させた後、これに、塩酸21.87g及びオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬工業社製)21.32gを更に添加し、ホットスターラーを用いて35℃に加熱しながら、約20時間撹拌した。これを、異なる合成温度(a:35℃、b:100℃、又は、c:130℃)で24時間静置した。
これを、吸引濾過した後、80℃の熱水400ミリリットルに再分散して濾過する工程を3~4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、時間あたり105℃の速度で550℃まで昇温させ、更に、これを、550℃で10時間焼成することにより、5.4nm(SBA5.4)、8.1nm(SBA8.1)、又は、10.6nm(SBA10.6)の中心細孔直径を有するSBA型メソポーラスシリカを得た。
(1-3)FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6、4.2、8.0nm)の合成
中心細孔直径2.6、又は4.2nmを有するFSM型メソポーラスシリカは、稲垣らの方法(S. Inagaki et al., J. Chem. Soc. Chem. Commun., pp.680-682 (1993))を参考にして、合成した。
具体的には、まずヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(3.2g、東京化成工業社製)、或いは、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(4.24g、ライオン・アクゾ社製)を、70℃の水100ミリリットルに添加し、溶解後、カネマイト(トクヤマシルテック社製)5gを更に添加し、ホットスターラーを用いて70℃に加熱しながら、3時間撹拌した。これに、2規定塩酸を約1時間かけて添加し、pH8.5の状態で、約3時間撹拌した。一方、8.0nmの中心細孔直径を有するFSM型メソポーラスシリカについては、卜部らの方法(Y. Urabe et al., ChemBioChem, vol.8, pp.668-674 (2007))を参考にして、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(10g、ライオン・アクゾ社製)を、70℃の水125ミリリットルに添加し、溶解後、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(7.5g、アルファエイサー社製)を添加し、70℃に加熱しながら、ホモミキサーで30分間撹拌(3000rpm)した。これに、予め、カネマイト(トクヤマシルテック社製)6.67gを溶解した80℃の水131ミリリットルを更に添加し、70℃に加熱しながら、ホモミキサーで2時間撹拌(3000rpm)した。これに、2規定塩酸を約1時間かけて添加し、pH8.5の状態で、約3時間撹拌(3000rpm)した。
これらを、吸引濾過した後、70℃の熱水400ミリリットルに再分散して濾過する工程を3~4回繰り返してから風乾した。これを、45℃で3日間乾燥した後、550℃で6時間焼成することにより、2.6nm(FSM2.6)、4.2nm(FSM4.2)、又は、8.0nm(FSM8.0)の中心細孔直径を有するFSM型メソポーラスシリカを得た。
なお、図1に、典型的なメソポーラスシリカ(SBA型、FSM型)及びC-meso型メソポーラスシリカの走査型電子顕微鏡(SEM)の像を示す。
(実施例1)AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体の製造及び酵素反応
本実施例では、各種メソポーラスシリカに対するアゾ還元酵素(AzoR:配列番号1)及びグルコース脱水素酵素(GDH:Bacillus sp.由来、和光純薬工業社)の固定化と酵素活性の評価を行った。図2に、メソポーラスシリカの規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したAzoR及びGDHを備えたAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体のうちAzoRと難分解性化学染料(アゾ染料:メチルレッド)が相互作用し、更に、GDHによる補酵素(NADH)の再生系を組み込み酸化型NADから還元型NADHに再生することができるようになった結果、アゾ染料が高効率かつ持続的に分解される様子を模式的に表した説明図を示す。
(1-1)AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体の製造
<AzoR及びGDHのメソポーラスシリカへの固定化>
酵素の固定化支持体には、メソポーラスシリカとして、(製造例1)により得られた中心細孔直径の異なる3種類のメソポーラスシリカ:1)C-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7、3.3、6.1nm)、2)FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6、4.2、8.0nm)及び3)SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4、8.1、10.6nm)を使用した。また、比較のためのメソポーラスシリカとして、MCM-41型メソポーラスシリカ(シグマ アルドリッチ社製、中心細孔直径:3.1nm)、又、非多孔質球状シリカとして、シーホスター KE-S100(日本触媒社製、平均粒子径:0.76μm)を使用した。
また、アゾ還元酵素としては、Escherichia coli由来のAzoR(二量体、アミノ酸残基数:201、分子量(単量体):約23kD)を用いた。まず、Escherichia coliの染色体DNAから増幅したAzoR遺伝子(配列番号1)をpET100/D-TOPOベクターに挿入することによって、AzoR発現用の環状プラスミドDNAを作製した。次に、前記環状プラスミドDNAを組換え大腸菌に導入し、大腸菌タンパク発現系を利用してAzoRを製造した。
グルコース脱水素酵素としては、和光純薬工業社から購入したBacillus sp.由来のGDH(四量体、分子量(単量体):約28kD)を用いた。
<AzoR及びGDHのメソポーラスシリカ複合体によるアゾ染料の還元分解反応の実験手順>
アゾ還元酵素(AzoR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)による補酵素再生系を利用したアゾ染料(メチルレッド)の還元分解反応の概略は、図3(a)に示すとおりである。
また、図3(b)に、AzoR及びGDHを固定化したシリカ微粒子(メソポーラスシリカ粒子、あるいは、非多孔質球状シリカ)の製造法、及び、メチルレッドの分解反応の手順の例を示す。
なお、本発明の酵素A-酵素B-メソポーラスシリカ複合体の通常の製造方法及び共役酵素反応の手順は、図3(b)に記載の手順のうちの、遠心操作と洗浄操作を除いた手順が1例となる。
<酵素-メソポーラスシリカ複合体の製造方法>
図3(b)に記載の手順のうち、遠心操作と洗浄操作を除いた手順、すなわち、AzoR(3μg)を含んだ酵素溶液(25mM 酢酸-酢酸ナトリウム(pH 4)、25mM MES-NaOH(pH 6)、25mM Tris-HCl(pH 7.5)、25mM Tris-HCl(pH 9)から選択されたいずれか1つの緩衝液を使用)0.2mLと、予めマイクロチューブに量り取ったシリカ微粒子粉末(C-meso、FSM又はSBA)0.5mgとを、ローテーターを用いて17時間以上4℃で穏やかに混合することによって、AzoR-メソポーラスシリカ複合体(未洗浄)を得た。なお、本発明のAzoR-メソポーラスシリカ複合体としては、未洗浄のままで用いる方が好ましいが、以下の実施例3では、異種酵素、特にサイズの大きい酵素(GDH)の場合のメソポーラスシリカとの結合安定性を評価するために、以下の遠心分離工程と共に洗浄工程を行っている。
具体的には、前記のAzoR-メソポーラスシリカ複合体(未洗浄)の分散液に対して遠心分離(15,000~20,000G、10分間)を行い、上清を全て除去した。続いて、洗浄用緩衝液(固定化時に選択した緩衝液を使用)1mLを添加し、Vortex Mixerを用いて約5秒間室温で攪拌し、前記AzoR-メソポーラスシリカ複合体を再懸濁した後、遠心分離(15,000~20,000G、10分間)を行い、上清を全て除去する洗浄操作を行った。再び、前記洗浄用緩衝液1mLを用いて洗浄操作を繰り返し、さらに25mM Tris-HCl(pH 7.5)0.2mLを用いて再分散させ、最終的に、pH値の異なる緩衝液を用いて固定化したAzoR-メソポーラスシリカ複合体(洗浄済)を得た。以下、「AzoR-C-meso」、「AzoR-FSM」又は「AzoR-SBA」という。
さらに、同様の手順を、AzoR(3μg)及びGDH(3μg)を含んだ酵素溶液(25mM 酢酸-酢酸ナトリウム(pH 4)、25mM MES-NaOH(pH 6)、25mM Tris-HCl(pH 7.5)、25mM Tris-HCl(pH 9)から選択されたいずれか1つの緩衝液を使用)0.2mLと、シリカ微粒子粉末(C-meso、FSM又はSBA)0.5mgとに適用してAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体を得た。以下、「AzoR-GDH-C-meso」、「AzoR-GDH-FSM」又は「AzoR-GDH-SBA」という。
また、比較のためにMCM又は非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いて、同様の手順によりそれぞれの複合体を得た。以下、「AzoR-GDH-MCM」又は「AzoR-GDH-KE-S100」という。
(1-2)メチルレッドの分解活性の評価
(1-1)で得られたAzoR-メソポーラスシリカ複合体及びAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体などの各種複合体それぞれの酵素活性を、反応基質としてのアゾ染料(メチルレッド)及びグルコースを添加して補酵素再生系を働かせ、メチルレッドの分解率(脱色率)により評価した。
具体的には、(図3(b))に示したように、(1-1)で得られた「AzoR-C-meso(FSM、SBA)」及び「AzoR-GDH-C-meso(FSM、SBA)」などの各種複合体それぞれに対して、以下の酵素反応を起こさせ、それぞれのメチルレッドの脱色率を測定した。
酵素反応は、分光光度計用セル内においてあらかじめマイクロ撹拌子を用いて撹拌(250rpm)しながら30℃で10分間の予備加温を行ったメチルレッド、グルコース、また、補酵素を含んだ反応基質(2.8mL)に対して、上記AzoR-シリカ微粒子複合体の分散液0.2mL、又は、上記AzoR-GDH-シリカ微粒子複合体の分散液0.2mLを添加することによって開始した。
その際、最終反応組成が、「25mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.1mM メチルレッド、0.1mM NADH、1μM FMN、10mM グルコース、1μg/mL AzoR、1μg/mL GDH、反応液量:3mL」となるように調整した。
反応条件は、マイクロ撹拌子を用いて撹拌(250rpm)しながら30℃で30分間の加温状態を保持することとした。本反応には、分光光度計(島津製作所社製、UV-2450)を使用し、430nmの吸光度変化を観測することによって、メチルレッド分解反応における反応開始後1~8分における初期反応速度、また、反応30分後のメチルレッドの分解率(脱色率)を評価した。
次いで、固定化酵素サンプルを繰り返し再利用する場合は、反応後の固定化酵素を遠心分離(15,000~20,000G、5~10分間)によって回収し、上清を除去した後、25mM Tris-HCl(pH 7.5)0.2mLを用いて再分散させた液を、新しい反応基質溶液(2.8mL)に添加することによって、反応2回目の酵素活性測定を行った(再利用性評価)。
(実施例2)異種酵素(AzoR及びGDH)の活性評価(固定化後の洗浄操作を行わない場合)
(2-1)シリカ粒子固定化酵素における補酵素再生系の共役効果
単一酵素(AzoR)、又は異種酵素(AzoR及びGDH)を、遊離の状態で反応させた場合、及び各種シリカ粒子に固定化した場合のそれぞれについて、実施例1(1-2)の通り、メチルレッド及びグルコースを反応基質としたメチルレッド分解反応(30℃、30分間)を行い、メチルレッドの脱色率(反応1回目)を評価し、次いで同じ系を繰り返し再利用した場合のメチルレッドの脱色率(反応2回目)を評価した(図4(a))。その際、シリカ粒子としては、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.0nm)、及び、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1nm)を用い、異種酵素を固定化する際には、図3(b)に記載の手順に従い、AzoR及びGDHを同時にシリカ粒子に一晩混和させて吸着させ、洗浄操作は行っていない。
その結果、未固定のAzoRを単独で用いた場合の脱色率(33.8%)と比較して、未固定の異種酵素(AzoR及びGDH)を混和した直後にメチルレッドの分解反応を行った場合には反応30分後の脱色率が100%に達したことより、GDHの補酵素再生活性の発現に伴うメチルレッド分解反応の促進が認められた。しかしながら、異種酵素を混和して一晩放置後に分解反応に用いた場合には、異種酵素間の凝集体形成が引き起こされ、脱色率の大幅な低下が示された(脱色率:36.1%)(図4(a))。
一方、固定化酵素の場合、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.0nm)では、未固定酵素と比較して脱色率が低く、異種酵素(AzoR及びGDH)を用いた共役酵素反応による反応の促進効果も小さかった(脱色率:16.2%(AzoR-FSM)、20.9%(AzoR-GDH-FSM))。ところが、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1nm)では、酵素の固定化操作時に一晩、混和しているにもかかわらず、凝集体形成が抑制された結果、AzoRを単独で固定化した場合(AzoR-SBA)の脱色率(31.5%)が未固定AzоRの脱色率(33.8%)と同等であり、さらに、異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化した場合(AzoR-GDH-SBA)の脱色率(89.6%)が著しく向上した(図4(a))。
また、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1nm)を用いた場合、AzoR及びGDHの両者を固定化した場合、AzoRのみを固定化した場合と比較して3倍近いメチルレッドの脱色率が認められたことは、AzoR及びGDHのいずれもがSBA細孔に近接した状態で固定化されたことで、両者の補酵素再生系の共役酵素反応が効率よく働いたことを示している。
これらの実験結果は、AzoR-GDH-SBAが酵素の凝集体形成を抑制しながら異種酵素を安定的に固定化できるという、酵素の凝集失活の抑制能を有している結果、酵素活性が著しく向上した可能性を示している。
以上より、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体のうち、特にAzoR-GDH-SBAは、SBA細孔に異種酵素を近接した状態で固定化でき、極めて高い補酵素再生系の共役酵素反応活性を発現できることがわかった。
しかし、反応1回目の後に回収した固定化酵素(FSM型、SBA型)を再び反応に使用した結果、AzoRのみを固定化した場合と同等のメチルレッドの脱色率にまで低下してしまった(図4(a))ことからみて、特に、四量体でサイズの大きいGDHが脱離しやすく、2回目の反応のための回収工程で大半のGDHが反応系外に排除されている可能性が示唆された。すなわち、反応2回目における固定化酵素の再利用性に関しては、AzoR-GDH-SBAの場合でも低かった。
(2-2)共役酵素反応におけるメソポーラスシリカの細孔径の影響
(2-1)では、8nm程度の中心細孔直径を有するメソポーラスシリカ(FSM型、SBA型)を適用したが、次に、より小さな細孔径を有するメソポーラスシリカ(FSM型、SBA型及びC22-meso型)を用いた場合の固定化酵素の活性評価を行った。
具体的には、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:4.2nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)、及びC22-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.3nm)に対して固定化した異種酵素(AzoR及びGDH)を用いて、(2-1)と同様の実験を行い、メチルレッドの脱色率(反応1回目)、また、固定化酵素を繰り返し再利用した場合のメチルレッドの脱色率(反応2回目)を評価した(図4(b))。
その結果、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:4.2nm)では、8nmの中心細孔直径を有するFSMの場合と比較して、脱色率(31.0%)が10%程度増大したが、未固定の異種酵素(AzoR及びGDH)を用いた場合の脱色率(36.1%)よりも低く、共役酵素反応による反応の促進効果が小さかった。一方、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)及びC22-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.3nm)では、酵素の固定化操作時に一晩、混和しているにもかかわらず、凝集体形成が抑制された結果、極めて高い脱色率が示された(脱色率:96.4%(SBA型)、100%(C22-meso型))。
以上より、2種類のAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体(FSM型、SBA型)において、より細孔径が小さい場合にメチルレッドの脱色効率の向上が認められ、特に、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いたAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体において、極めて高いメチルレッドの脱色率が認められた。また、これと同等の酵素活性が、C22-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.3nm)を用いた場合にも示された。これは、AzoR-GDH-SBA(又は、C22-meso)では、メソポーラスシリカの細孔内に近接した状態で固定化されたことで、AzoR及びGDHそれぞれの補酵素再生系反応が効率よく働いたことを示している。
これらの実験結果は、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体の細孔径が小さい場合に、より酵素の凝集体形成抑制能も高まり、異種酵素を安定的に固定化できて共役酵素活性を著しく向上できる可能性を示している。
また、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体のうちでも特に、細孔径が小さい(8nm以下)メソポーラスシリカを用いる場合、とりわけ、AzoR-GDH-SBA(5.4)及びAzoR-GDH-C22-meso(3.3)の場合は、極めて異種酵素を細孔内に安定的に近接して固定化でき、高い共役酵素反応効率を達成できることがわかった。
しかし、反応1回目の後で回収操作を行った固定化酵素を再び反応に使用した際には、FSM型のみならず、SBA型、C22-meso型の場合も、メチルレッドの脱色率が著しく低下した。この結果は、特に、回収工程での洗浄操作により、サイズが大きいGDHが脱離しやすく、大半のGDHが反応系外に排除されている可能性が示唆された。
(実施例3)異種酵素(AzoR及びGDH)の活性評価(固定化後の洗浄操作を行った場合)
(実施例2)の結果より、AzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体のうち、SBA型及びC22-meso型では、酵素を遊離状態で反応させた場合と比較して、メチルレッドの脱色率(分解効率)が飛躍的に高いという驚くべき結果が得られた。これは、異種酵素(AzoR及びGDH)のうちの一方のAzoRだけでもメソポーラスシリカ粒子細孔内に結合できたことで、AzoRとGDHとの凝集失活が抑制されたことによるものと考えられる。さらに、その細孔径を小さくする(8nm以下)ことで、さらに異種酵素の共役酵素活性(脱色率)を高めることができる可能性が示唆された。
しかし、当該酵素複合体の再利用性は十分に確保できなかったことから、シリカ粒子の細孔表面に対するGDHの固定化の安定性が十分でなかった可能性が考えられた。
そこで、本実施例では、GDHの固定化の安定性を高め、補酵素再生活性を促進するための最適な固定化条件について検討した。
具体的には、メソポーラスシリカ粒子の細孔径の最適化を試みるとともに、シリカ粒子への異種酵素(AzoR及びGDH)の固定化及び固定化後の洗浄操作時に用いる緩衝液のpH値(pH範囲:4~9)の最適化を図った。
(3-1)共役酵素反応におけるメソポーラスシリカの細孔径の影響
異種酵素(AzoR及びGDH)を各種シリカ粒子に固定化した場合について、実施例1(1-2)の通り、メチルレッド及びグルコースを反応基質としたメチルレッド分解反応(30℃、30分間)を行い、メチルレッド分解反応における反応開始後1~8分における初期反応速度(図5(a))、また、反応30分後のメチルレッドの分解率(脱色率)(図5(b))を評価した。なお、本実施例での酵素反応はpH7.5で行っている。
その際、シリカ粒子としては、C-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7、3.3、6.1nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4、8.1、10.6nm)、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6、4.2、8.0nm)、MCM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:3.1nm)、及び、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた。図中、白四角印は、C-meso型メソポーラスシリカを用いた場合、黒菱形印は、SBA型メソポーラスシリカを用いた場合、黒三角印は、FSM型メソポーラスシリカを用いた場合、黒丸印は、MCM型メソポーラスシリカを用いた場合、また、白丸印は、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた場合、である。
異種酵素を固定化する際には、図3(b)に記載の手順に従い、緩衝液に25mM Tris-HCl(pH 7.5)を用いて、AzoR及びGDHを同時にシリカ粒子に一晩混和させて吸着させ、同緩衝液を用いた洗浄操作を行うことでAzoR-GDH-シリカ微粒子複合体を得た。
その結果、初期反応速度及び脱色率ともに、「AzoR-GDH-MCM」又は「AzoR-GDH-KE-S100」では低い値に留まったものの、「AzoR-GDH-C-meso」、「AzoR-GDH-SBA」及び「AzoR-GDH-FSM」ではより高い値が示され、かつ、それぞれのメソポーラスシリカについて細孔径が小さくなる程、酵素活性が高くなる傾向が認められた。
また、FSMと比較した場合は、C-mesoとSBAでより高い活性が示され、特に、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)及びSBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合に最も高い活性(初期反応速度:約5×10-8moL/min、脱色率:約30%)が認められ、C-mesoでは、6.1nm以上、SBAでは10nm以上の細孔径では活性が極めて低いことが示された。
以上より、3種類のAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体(C-meso型、FSM型、SBA型)において、図4の結果と同様に、より細孔径が小さい場合にメチルレッドの脱色効率の向上が認められ、特に、C-meso型及びSBA型メソポーラスシリカを用いたAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体において、より高いメチルレッドの脱色率が認められた。これは、AzoR-GDH-SBA(又は、C-meso)の場合は、固定化後の十分な洗浄操作によっても、異種酵素の双方共、あるいは、少なくともAzoRは安定にメソポーラスシリカ細孔内に保持され、酵素活性を発揮していることを示している。しかし、最も高い脱色率が30%程度であり、洗浄操作を加えた本反応でのGDHによる補酵素再生活性の寄与の程度については不明と考えられた。
(3-2)異種酵素(AzoR及びGDH)の固定化における緩衝液のpH値の影響
実施例1(1-1)の通り、シリカ粒子への異種酵素(AzoR及びGDH)の固定化の際に洗浄操作を行う過程において、固定化及び固定化後の洗浄操作時に用いる緩衝液のpH値を4条件(pH:4、6、7.5、9)とし、酵素活性に与えるpHの影響について検証した。
異種酵素(AzoR及びGDH)を各種シリカ粒子に固定化した場合について、実施例1(1-2)の通り、メチルレッド及びグルコースを反応基質としたメチルレッド分解反応(30℃、30分間)を行い、メチルレッド分解反応における反応開始後1~8分における初期反応速度(図6(a))、また、反応30分後のメチルレッドの分解率(脱色率)(図6(b))を評価した。その際、シリカ粒子としては、(3-1)の結果を受けて、C-meso型、SBA型、及び、FSM型メソポーラスシリカに限定し、その中でも各々のメソポーラスシリカについてより高い酵素活性を発現した、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)、及び、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を適用した。図中、白四角印は、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)を用いた場合、黒菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合、黒三角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合、である。
異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化する際には、図3(b)に記載の手順に従い、緩衝液に25mM 酢酸-酢酸ナトリウム(pH 4)、25mM MES-NaOH(pH 6)、25mM Tris-HCl(pH 7.5)、25mM Tris-HCl(pH 9)から選択されたいずれか1つの緩衝液を用いて、AzoR及びGDHを同時にシリカ粒子に一晩混和させて吸着させ、同緩衝液を用いた洗浄操作を行うことでAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体を得た。
その結果、いずれのメソポーラスシリカ粒子においても、固定化及び洗浄時に用いた緩衝液のpH値が6の場合に酵素活性(初期反応速度及び脱色率)の最大値が示され、pH6 > 7.5 > 9 > 4の順序で酵素活性が高くなる傾向が認められた。pH4及び9の場合、「AzoR-GDH-FSM」の脱色率(pH4:0%、pH9:約8%)が最も低く、次いで、「AzoR-GDH-SBA」の脱色率(pH4:約5%、pH9:約16%)が低かった。ところが、興味深いことに「AzoR-GDH-C16-meso」の脱色率(pH4:約25%、pH9:約27%)は比較的高く、これは酵素の固定化及び活性発現におけるC16-meso型メソポーラスシリカのpH耐性がより高いことを示している。全体的には「AzoR-GDH-FSM」では低い酵素活性に留まったのに対し、「AzoR-GDH-C16-meso」及び「AzoR-GDH-SBA」ではより高い酵素活性が示され、特に、pH6では、C16-mesoとSBAを用いた場合に最も高い活性(初期反応速度:約6×10-8moL/min、脱色率:約35%)が認められた。
以上より、本発明のAzoR-GDH-メソポーラスシリカ(C16-meso型、SBA型)複合体及びAzoR-GDH-FSMの酵素活性は、固定化及び洗浄用緩衝液のpH値に大きく依存することが判明し、本発明のAzoR-GDH-メソポーラスシリカ(C16-meso型、SBA型)複合体の最適pH範囲は、pH5~8、好ましくはpH6~7.5であることがわかった。とりわけpH6において最大の酵素活性を発現し、最も高いメチルレッドの脱色率(約35%)が認められた。この値は、(3-1)で行ったpH7.5における共役酵素反応実験結果での脱色率(約30%)を5%程度上回ったことからみて、GDHによる補酵素再生活性の寄与が高まったことが示唆された。
このことは、pH範囲を最適化したことで、共役酵素反応に関わる異種酵素の双方をメソポーラスシリカ細孔内で最適密度で集積できる可能性が示された。すなわち、本発明のメソポーラスシリカ複合体は、通常、遠心分離、洗浄工程を経ることなくそのまま共役酵素反応に供されることを考慮すると、(実施例2)の(図4b)などで96%以上の酵素活性を示した細孔径の小さいSBA又はC-meso複合体の場合、固定化時のpHをより最適化することでさらに共役酵素活性が高められる可能性が示されたことになる。また、本発明のメソポーラスシリカ複合体の最適pH範囲が中性付近(pH5~8)であることは、本発明のメソポーラスシリカ複合体が広範な共役酵素反応に適用できることが示されたことでもある。
(3-3)単一酵素(AzoR)の固定化における緩衝液のpH値の影響
実施例1(1-1)の通り、シリカ粒子への単一酵素(AzoR)の固定化の際に洗浄操作を行う過程において、固定化及び固定化後の洗浄操作時に用いる緩衝液のpH値を4条件(pH:4、6、7.5、9)とし、酵素活性に与えるpHの影響について検証した。
単一酵素(AzoR)を各種シリカ粒子に固定化した場合について、実施例1(1-2)の通り、メチルレッド及びグルコースを反応基質としたメチルレッド分解反応(30℃、30分間)を行い、メチルレッド分解反応における反応開始後1~8分における初期反応速度(図7(a))、また、反応30分後のメチルレッドの分解率(脱色率)(図7(b))を評価した。その際、シリカ粒子としては、(3-2)と同様に、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)、及び、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を適用した。図中、白四角印は、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)を用いた場合、黒菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合、黒三角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合、である。
単一酵素(AzoR)を固定化する際には、図3(b)に記載の手順に従い、緩衝液に25mM 酢酸-酢酸ナトリウム(pH 4)、25mM MES-NaOH(pH 6)、25mM Tris-HCl(pH 7.5)、25mM Tris-HCl(pH 9)から選択されたいずれか1つの緩衝液を用いて、AzoRをシリカ粒子に一晩混和させて吸着させ、同緩衝液を用いた洗浄操作を行うことでAzoR-メソポーラスシリカ複合体を得た。
その結果、FSM型メソポーラスシリカにおいては、異種酵素を用いた場合の結果(図6)と同様に、固定化及び洗浄時に用いた緩衝液のpH値が6の場合に酵素活性(初期反応速度及び脱色率)の最大値が示され、pH6 > 7.5 > 9 > 4の順序で酵素活性が高くなる傾向が認められた。一方、C16-meso型及びSBA型メソポーラスシリカにおいては、図6の結果とは異なり、緩衝液のpH値が7.5の場合に酵素活性(初期反応速度及び脱色率)の最大値が示され、pH7.5 > 6 > 9 > 4の順序で酵素活性が高くなる傾向が認められた。pH4及び9の場合、「AzoR-FSM」の脱色率(pH4:4%、pH9:約6%)が最も低く、次いで、「AzoR-SBA」の脱色率(pH4:約4%、pH9:約11%)が低かった。ところが、興味深いことに「AzoR-C16-meso」の脱色率(pH4:約17%、pH9:約19%)は比較的高く、これは酵素の固定化及び活性発現におけるC16-meso型メソポーラスシリカのpH耐性がより高いことを示している。全体的には「AzoR-FSM」では低い酵素活性に留まったものの、「AzoR-C16-meso」及び「AzoR-SBA」ではより高い酵素活性が示された(脱色率:約30%(pH6)、約31%(pH7.5))。
以上より、3種類のAzoR-メソポーラスシリカ複合体(C16-meso型、FSM型、SBA型)の酵素活性は、異種酵素を用いた場合の結果(図6)と同様に、固定化用緩衝液及び洗浄用緩衝液のpH値に大きく依存することが判明した。C16-meso及びSBAの場合にはpH7.5、また、FSMの場合にはpH6において最大の酵素活性を発現した(脱色率:約31%(C16-meso及びSBA)、約23%(FSM))。
また、AzoRを単独で固定化した場合に、洗浄後の脱色率は最大でも30%程度に留まることからみて、(3-2)でのAzoR-GDH-メソポーラスシリカ(C16-meso型、SBA型)複合体の最適pH範囲(pH5~8、好ましくはpH6~7.5)での固定化実験でのGDH反応の共役的な寄与は確実であると考えられる。以下、FSM型メソポーラスシリカも含め、本発明のメソポーラスシリカの種類別の固定化の最適なpH条件を詳細に考察する。
(3-4)細孔に固定化した異種酵素(AzoR及びGDH)と単一酵素(AzoR)の活性の比較
異種酵素(AzoR及びGDH)を用いた場合(図6)及び単一酵素(AzoR)を用いた場合(図7)の活性評価(初期反応速度及び脱色率)の結果について、メソポーラスシリカの種類別に整理した結果を図8~10に示す。
図8は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合であり、図中、黒三角印は、異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化した場合、白三角印は、単一酵素(AzoR)を固定化した場合、である。図9は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合であり、図中、黒菱形印は、異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化した場合、白菱形印は、単一酵素(AzoR)を固定化した場合、である。また、図10は、C16-meso型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.7nm)を用いた場合であり、図中、白四角印は、異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化した場合、黒四角印は、単一酵素(AzoR)を固定化した場合、である。
図8より、FSM型メソポーラスシリカでは、固定化及び洗浄用緩衝液のpH値が7.5と9の場合(中性から弱アルカリ性のpH)に、異種酵素(AzoR及びGDH)の活性が単一酵素(AzoR)の活性を上回った。一方、図9及び10より、SBA型及びC16-meso型メソポーラスシリカでは、緩衝液のpH値が4、6、又は、9の場合(弱酸性から中性、又は、弱アルカリ性のpH)に、異種酵素(AzoR及びGDH)の活性が単一酵素(AzoR)の活性を上回った。
以上より、メソポーラスシリカの種類の違いによって、メチルレッド分解反応における酵素活性(初期反応速度及び脱色率)を向上できる、固定化用緩衝液(及び洗浄用緩衝液)の最適なpH値が異なることが判明した。全体的には、異種酵素(AzoR及びGDH)を固定化した場合の酵素活性(脱色率)の向上率は5~10%程度であり、単一酵素(AzoR)を固定化した場合と比較して顕著な活性向上が認められた。このことから、SBA型及びC-meso型以外のメソポーラスシリカであっても、最適な細孔径の範囲に成形し、かつ固定化の際のpH値を最適化すれば、大きなサイズの異種酵素が関与する補酵素再生活性の寄与を高め異種酵素の共役酵素反応の高効率化を実現できる可能性が示された。
(実施例4)RCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体の製造及び酵素反応
本実施例では、各種メソポーラスシリカに対するR体選択的カルボニル還元酵素(RCR:配列番号2)及びソルビトール脱水素酵素(SDH:配列番号3)の固定化と酵素活性の評価を行った。図11に、メソポーラスシリカの規則性細孔(シリカ細孔)に固定化したRCR及びSDHを備えたRCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体のうちRCRとプロキラルカルボニル化合物(2-ヒドロキシアセトフェノン:2-HAP)が相互作用し、更に、SDHによる補酵素(NADH)の再生系を組み込み酸化型NADから還元型NADHに再生することができるようになった結果、光学活性アルコール((R)-1-フェニル-1,2-エタンジオール:(R)-PED)が高効率かつ持続的に合成される様子を模式的に表した説明図を示す。
(4-1)RCR-SDH-メソポーラスシリカ複合体の製造
<RCR及びSDHのメソポーラスシリカへの固定化>
酵素の固定化支持体には、メソポーラスシリカとして、(製造例1)により得られた中心細孔直径の異なる4種類のメソポーラスシリカ:1)FSM-16(中心細孔直径:2.6nm)、2)FSM-22(中心細孔直径:8.0nm)、3)SBA-15(中心細孔直径:5.4nm)及び4)SBA-15(中心細孔直径:8.1nm)を使用した。また、比較のための非多孔質球状シリカとして、シーホスター KE-S100(日本触媒社製、平均粒子径:0.76μm)を使用した。
また、上記RCR及びSDHを遺伝子組換え大腸菌を利用したタンパク発現系により作製した。
具体的には、R体選択的カルボニル還元酵素としてCandida Parapsilosis由来のRCR(四量体、アミノ酸残基数:336、分子量(単量体):約37kD)の遺伝子(配列番号2)をサーモフィッシャーサイエンティフィック社の人工遺伝子合成サービス「Gene Art」により合成した。
ソルビトール脱水素酵素としては、Rhodobacter sphaeroides Si4由来のSDH(四量体、アミノ酸残基数:256、分子量(単量体):約29kD)の遺伝子(配列番号3)を上記「Gene Art」により合成した。
RCR及びSDHは、前記合成遺伝子を組換え大腸菌に導入し、大腸菌タンパク発現系を利用して製造した。
<RCR及びSDHのメソポーラスシリカ複合体による光学活性アルコールの合成反応の実験手順>
R体選択的カルボニル還元酵素(RCR)及びソルビトール脱水素酵素(SDH)による補酵素再生系を利用したプロキラルカルボニル化合物(2-HAP)の不斉還元による光学活性アルコール((R)-PED)の合成反応の概略は、図12(a)に示すとおりである。
図12(b)の「実験手順」の後段に、得られたRCR及びSDHのメソポーラスシリカ複合体を用いた(R)-PEDの合成反応、HPLC分析、固定化酵素サンプル回収及び再使用の開始までの手順を示す。
<酵素-メソポーラスシリカ複合体の製造方法>
図12(b)記載の酵素固定化による複合体の製造方法として、酵素の固定化及び洗浄のいずれもpH8の緩衝液(25mM Tris-HCl)を用いて行った。また、比較のために、一部の酵素複合体においてpH6の緩衝液(25mM MES-NaOH)を適用した。
具体的には、図12(b)に記載の手順に従い、RCR(2μmol)又はRCR(2μmol)と共にSDH(0.5μmol)を含んだ酵素溶液(25mM Tris-HCl(pH 8))1mLと、予めマイクロチューブに量り取ったシリカ微粒子粉末(FSM-16、FSM-22又はSBA-15)10mgとを、ローテーターを用いて16時間以上4℃で穏やかに混合した後、遠心分離を行い、上清を全て除去することによって、酵素-シリカ微粒子複合体の前駆体を得た。
続いて、洗浄用緩衝液(25mM Tris-HCl(pH 8))1mLを添加し、Vortex Mixerを用いて約5秒間室温で攪拌し、前記酵素-シリカ微粒子複合体の前駆体を再懸濁した後、遠心分離を行い、上清を全て除去する洗浄操作を行った。再び、前記洗浄用緩衝液1mLを用いて洗浄操作を繰り返し、さらに前記洗浄用緩衝液1mLを用いて再懸濁した後、遠心分離を行い、上清を全て除去し、最終的に、「RCR-FSM(SBA)」、並びに、「RCR-SDH-FSM(SBA)」を得た。
比較のために非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いて、同様の手順によりそれぞれの複合体を得た。以下、「RCR-KE-S100」または「RCR-SDH-KE-S100」という。
(4-2)光学活性アルコールの合成活性の評価
(4-1)で得られたRCR-メソポーラスシリカ複合体などの各種複合体それぞれの酵素活性を、反応基質としてのプロキラルカルボニル化合物(2-ヒドロキシアセトフェノン:2-HAP)及びD-ソルビトールを添加して補酵素再生系を働かせ、光学活性アルコール((R)-1-フェニル-1,2-エタンジオール:(R)-PED)の生成効率(2-HAPから(R)-PEDへの転化率)により評価した。
具体的には、図12(b)に示したように、(4-1)で得られた「RCR-FSM(SBA)」などの各種複合体それぞれに対して、以下の酵素反応を起こさせ、それぞれの(R)-PEDへの転化率を測定した。
酵素反応は、(4-1)で得られた、マイクロチューブ内の上記酵素-シリカ微粒子複合体に対して、2-HAP、D-ソルビトール、また、補酵素を含んだ反応基質(1mL)を添加することによって開始した。
その際、最終反応組成が、「25mM Tris-HCl(pH 8)、1mM 2-HAP、0.1mM NADH、10mM D-ソルビトール、2μM RCR、0.5μM SDH、反応液量:1mL」となるように調整した。
反応条件は、定温恒温器内(SANYO社製、MIR-154)においてローテーターを用いて穏やかに混和しながら35℃で30分間の加温状態を保持することとした。
次いで、遠心分離後の上清を回収し、この回収液を80℃で10分間加熱処理し、上清に含まれる生成物((R)-PED)の定量を行った。(R)-PEDの分析には、ODSカラムを搭載した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、LaChrom ELITE)を使用した。
その際、分析条件は、「測定波長:210nm、カラムオーブン設定温度:30℃、流速:0.3mL/min、分析時間:10分間、移動相組成:アセトニトリル/水=60/40(V/V)」とした。
ここで、固定化酵素サンプルの再利用性を評価する場合には、上記の遠心分離後に回収された酵素-シリカ微粒子複合体に対して、洗浄用緩衝液(25mM Tris-HCl(pH 8))1mLを添加し、Vortex Mixerを用いて約5秒間室温で攪拌し、酵素-シリカ微粒子複合体を再懸濁した後、遠心分離を行い、上清を全て除去する洗浄操作を行った。続いて、新しい反応基質溶液を添加することによって、反応2回目の酵素反応を開始した。上述の実験手順に従い、合計10回の酵素反応を繰り返し、固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)の評価も行った。
(実施例5)異種酵素(RCR及びSDH)の活性評価
本実施例では、RCR及びSDHを含む緩衝液を用い、実施例(4-1)の方法に従って、FSM型メソポーラスシリカ(FSM8.0,中心細孔直径:8.0nm)、SBA型メソポーラスシリカ(SBA8.1,中心細孔直径:8.1nm)、及び非多孔質球状シリカ(KE-S100)の各微粒子に対して固定化処理を行い、3種類の「RCR-シリカ微粒子複合体」、又は、3種類の「RCR-SDH-シリカ微粒子複合体」を形成させた。
コントロールとして遊離の未固定「RCR」及び「RCR-SDH」を用い、実施例(4-2)の方法に従って、光学活性アルコール((R)-PED)の合成実験を行い、反応30分後の(R)-PEDへの転化率(反応1回目)、固定化直後の上清に含まれるRCRの活性(転化率)、また、固定化直後の上清に含まれるSDHの活性(U/L)を評価した(図13(a))。なお、未固定の遊離酵素による合成反応は、一晩、混和した後の転化率を測定した。
その結果、3種類のRCR-シリカ微粒子複合体のいずれもが未固定酵素の場合(9.3%)と同等の転化率を示し、3種類のRCR-SDH-シリカ微粒子複合体のいずれもが未固定酵素の場合(77.5%)の1割程度(転化率:平均9.6%)の活性しか示さなかった。しかし、単一酵素(RCR)を固定化した場合と比較して、軽微ではあったが転化率の向上効果(FSM8.0:8.8 → 9.7%,SBA8.1:8.5 → 9.3%,KE-S100:9.5 → 9.9%)が確認できたことから、補酵素再生効率が低いものの、RCRとSDHによる共役酵素反応が構築できていることが判明した。
また、メソポーラスシリカ(FSM8.0及びSBA8.1)の場合は、固定化後の上清において遊離のRCRとSDHの活性が全く認められず、これは、酵素が全量固定化されたことを示唆している。一方、KE-S100では、相当のRCR及びSDH活性が示されたことより、酵素が全量固定化されていないことが判明した。特に、SDHに関しては、ほぼ100%分の酵素が遊離していることが明らかとなった。
次に、前記の酵素複合体を用い、反応30分後の(R)-PEDへの転化率を指標として、反応10回分における固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)を評価した。実験結果をまとめたグラフを図13(b)に示す。図中、白四角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.0nm)を用いた場合、黒菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1nm)を用いた場合、また、白三角印は、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた場合、である。また、図中、左図は、RCRのみを固定化した場合、右図は、RCRとSDHを固定化した場合、である。
その結果、RCR-メソポーラスシリカ(FSM8.0及びSBA8.1)複合体のいずれもが、反応1~10回の繰り返し使用の間に徐々に転化率が低下する傾向が示されたものの、10回の繰り返し使用後もFSM8.0の場合で約1%、SBA8.1の場合で約2%の低減のみでほとんど損なわれなかったことが確認できた(図13(b)左図)。
また、RCR-SDH-メソポーラスシリカ(FSM8.0及びSBA8.1)複合体の場合もRCR-シリカ微粒子複合体の場合と同様であり、特にFSM8.0の場合は繰り返し耐久性(再利用性)が高いことが確認できた。全体的な固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)の傾向は、FSM8.0 > SBA8.1 > KE-S100の順である(図13(b)右図)。
メソポーラスシリカのうちでも細孔径が8nm程度のFSM8.0及びSBA8.1の場合は、KE-S100の場合のようにSDHが全く固定化されていないわけではなく、むしろ全量固定化されている(図13(a))と解されるから、補酵素再生効率が極めて低かったことは、大半の酵素が失活した結果であると推察される。
以上より、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた場合と比較して、メソポーラスシリカ(FSM8.0及びSBA8.1)に異種酵素(RCR及びSDH)を固定化した場合に、光学活性アルコールの合成効率および酵素の繰り返し耐久性(再利用性)がより高かったことより、メソポーラスシリカの細孔径が約8nm以下であれば補酵素再生系を組み込んだ共役酵素反応を可能にする異種酵素の集積組立場として好適である可能性が示唆された。
(実施例6)異種酵素の活性評価(メソポーラスシリカの細孔径及びpHの影響)
本実施例では、(実施例5)で使用したメソポーラスシリカ(FSM8.0及びSBA8.1)よりも細孔径の小さいメソポーラスシリカを用いて、固定化異種酵素を用いた光学活性アルコールの合成活性に与えるメソポーラスシリカの細孔径の影響について検証した。具体的には、(実施例4)で検討した「RCR-SDH」を含む緩衝液を用い、実施例(4-1)の方法に従って、FSM型メソポーラスシリカ(FSM2.6,中心細孔直径:2.6nm)、及びSBA型メソポーラスシリカ(SBA5.4,中心細孔直径:5.4nm)の各微粒子に対して固定化処理を行い、2種類の「RCR-SDH-FSM2.6(SBA5.4)」を形成させた。また、SBA5.4においては、固定化および洗浄用緩衝液として、25mM Tris-HCl(pH 8)の他に、25mM MES-NaOH(pH 6)を適用し、酵素複合体の形成における緩衝液のpHの影響について調べた。
次に、実施例(4-2)の方法に従って、光学活性アルコール((R)-PED)の合成実験を行い、反応30分後の(R)-PEDへの転化率(反応1回目)、固定化直後の上清に含まれるRCRの活性(転化率)、また、固定化直後の上清に含まれるSDHの活性(U/L)を評価した(図14(a))。
その結果、2種類のRCR-SDH-FSM2.6(SBA5.4)のいずれもが、RCR-SDH-FSM8.0(SBA8.1)での結果(実施例5)(FSM8.0:9.7%,SBA8.1:9.3%)と比較して、2~3%の転化率の増大が認められた(FSM2.6:11.4%,SBA8.1:12.1%)(図14(a))。一方、pH6の緩衝液で固定化と洗浄を施したRCR-SDH-SBA5.4では、より低い転化率(7.5%)が示されたことより、酵素の調製時に用いる緩衝液のpHは6よりも8の方が効果的であることが判明した。
また、FSM2.6及びSBA5.4共に、FSM8.0及びSBA8.1での結果(実施例5)と同様に、固定化後の上清において遊離のRCRとSDHの活性がほとんど認められず、これは、酵素がほぼ全量固定化されたことを示唆している。
次に、前記の酵素複合体を用い、反応30分後の(R)-PEDへの転化率を指標として、反応10回分における固定化酵素の繰り返し耐久性(再利用性)を評価した。実験結果をまとめたグラフを図14(b)に示す。図中、黒四角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合、白菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合、また、黒三角印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)においてpH6の緩衝液を用いて酵素の固定化と洗浄を行った場合、である。
その結果、2種類のRCR-SDH-FSM2.6(SBA5.4)の反応1回目の転化率はそれぞれ11.4%、12.1%であって、いずれもが(実施例5)で使用したFSM8.0及びSBA8.1と比較して大幅に向上しており、全量のSDHが固定化されていることが確認できた。また、繰り返し回数が増大するに従い転化率が低下する傾向が示されたものの、反応10回目においても、それぞれ8.3%、7.2%という転化率を示した。
これらのことから、細孔径が小さい場合は、1回目の転化率も向上するとともに、繰り返し使用における残存活性も高くなることが示された。また、SDHの全量が固定化できた点ではFSM2.6、SBA5.4の場合もFSM8.0、SBA8.1の場合も同様であったことからみて、細孔径が小さい前者の場合の繰り返し使用後の転化率が大幅に向上した理由は、固定化状態のSDHの補酵素再生効率が向上したためと推察される。
酵素の調製時に用いる緩衝液のpH値については、SBA5.4で、固定化と洗浄をpH6の緩衝液で行った場合に、pH8の場合と比較して、反応1回目の転化率は12.1%から7.5%に、また反応10回目の転化率が7.2%から2.5%にまで低下した。このことから、緩衝液のpHは6よりも8の方が効果的であることが確認できた。
異種酵素(RCR及びSDH)における前述の実験結果(図13(b)右図、また、図14(b))をまとめたグラフを図15に示す。図中、黒四角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:2.6nm)を用いた場合、白四角印は、FSM型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.0nm)を用いた場合、白菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)を用いた場合、黒菱形印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:8.1nm)を用いた場合、白三角印は、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた場合、また、黒三角印は、SBA型メソポーラスシリカ(中心細孔直径:5.4nm)においてpH6の緩衝液を用いて酵素の固定化と洗浄を行った場合、である。
図15によれば、光学活性アルコール((R)-PED)の合成反応における6種類のRCR-SDH-シリカ微粒子複合体の繰り返し耐久性(再利用性)は、固定化および洗浄用の緩衝液がpH8の場合には、メソポーラスシリカの細孔径に反比例して高くなり、非多孔質球状シリカ(KE-S100)ではより低い活性が示された。全体的には、FSM2.6 > SBA5.4 > FSM8.0 > SBA8.1 > KE-S100の順に固定化酵素の繰り返し耐久性が高くなる傾向が示された。
これに対して、pH6の緩衝液で固定化と洗浄を施したRCR-SDH-SBA5.4では、KE-S100よりも活性が低くなった。
4種類のメソポーラスシリカでは、いずれも異種酵素が全量固定化されているにもかかわらず、メソポーラスシリカの種類と細孔径の違いにより反応活性および再利用性の程度が変化した。メソポーラスシリカの細孔径が小さくなる程、酵素活性が高くなる傾向は、(実施例2)のメチルレッドの分解反応におけるAzoR-GDH-メソポーラスシリカ複合体(FSM型、SBA型)における活性(初期反応速度及び脱色率)の結果 (図4及び5)と類似している。
一方、KE-S100では、異種酵素(RCR及びSDH)の固定化率が低く、特にSDHに関しては全く固定化されておらず、これが反応活性および再利用性の低さの要因と考えられる。
以上より、メソポーラスシリカの種類、細孔径、及び、固定化用緩衝液(及び洗浄用緩衝液)のpH値の最適化によって、光学活性アルコール合成反応における酵素活性を向上でき、異種酵素が関与する補酵素再生活性の寄与を高め異種酵素の共役酵素反応の高効率化を実現できる可能性が示された。
また、非多孔質球状シリカ(KE-S100)を用いた場合と比較して、メソポーラスシリカ(FSM型及びSBA型)の微粒子粉末は繰り返し使用における溶液中での分散性(ハンドリング性)に優れ、さらに固定化した場合の酵素の繰り返し耐久性(再利用性)がより高かったことも勘案すれば、メソポーラスシリカ及びそのシリカ細孔は異種酵素の機能を最大限に発揮させることのできる酵素の集積組立場として好適であるといえる。

Claims (18)

  1. NADH又はNADPH補酵素再生系を利用する酸化還元反応における共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち少なくとも1つの還元酵素A及び1つの脱水素酵素Bがメソポーラスシリカに固定化されている複合体であって、
    メソポーラスシリカが、「SBA」、「FSM」及び「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであり、
    ここで、「SBA」の中心細孔直径は4~6nmであり、「FSM」の中心細孔直径は2~9nmであり、「C-meso」の中心細孔直径は2~6nmであることを特徴とする、
    還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
  2. 元酵素アゾ還元酵素(AzoR)、カルボニル還元酵素(CR)、イミン還元酵素(IR)、エノン還元酵素(ER)、アルドース還元酵素(AR)、キシロース還元酵素(XR)、DT-ジアホラーゼ(DTD)から選択されたいずれか1つの酵素であり、
    脱水素酵素グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、フルクトース脱水素酵素(FDH)、アルコール脱水素酵素(ADH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、キシリトール脱水素酵素(XDH)から選択されたいずれか1つの酵素である、請求項に記載の還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
  3. 還元酵素及び脱水素酵素の組み合せがアゾ還元酵素(AzoR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)である、請求項に記載の還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
  4. 還元酵素及び脱水素酵素の組み合せがカルボニル還元酵素(CR)及びグルコース脱水素酵素(GDH)又はソルビトール脱水素酵素(SDH)である、請求項に記載の還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体。
  5. NADH又はNADPH補酵素再生系を利用する酸化還元反応における共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち少なくとも1つの還元酵素A及び1つの脱水素酵素Bのそれぞれが中心細孔直径2~9nmのメソポーラスシリカに固定化された還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を製造する方法であって、
    ここで、メソポーラスシリカが、中心細孔直径は4~6nmの「SBA」、中心細孔直径は2~9nmの「FSM」及び中心細孔直径は2~6nmの「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであり、
    還元酵素A及び脱水素酵素Bを、pH5~8に調整した緩衝液中でメソポーラスシリカに吸着させる工程を含む、方法。
  6. さらに、固定化終了後のメソポーラスシリカをpH5~8に調整した緩衝液で複数回洗浄する工程を含む、請求項に記載の方法。
  7. NADH又はNADPH補酵素再生系を利用する酸化還元反応における共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち少なくとも1つの還元酵素A及び1つの脱水素酵素Bのそれぞれがメソポーラスシリカに固定化された還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を用いた共役酵素反応方法であって、
    ここで、メソポーラスシリカが、中心細孔直径は4~6nmの「SBA」、中心細孔直径は2~9nmの「FSM」及び中心細孔直径は2~6nmの「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであり、
    下記(1)及び(2)の工程を含む方法;
    (1)還元酵素A及び脱水素酵素BをメソポーラスシリカにpH5~8に調整した緩衝液中で固定化する工程、
    (2)工程(1)で得られた還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を含むpH5~8の緩衝液中に、還元酵素A及び/又は脱水素酵素Bの基質を添加するか、又は
    工程(1)で得られた還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を、還元酵素A及び/又は脱水素酵素Bの基質を含むpH5~8の緩衝液中に添加して、還元酵素A及び脱水素酵素Bが関わる共役的な酵素反応を行う工程。
  8. NADH又はNADPH補酵素再生系を利用する酸化還元反応における共役酵素反応に関わる複数の異種酵素のうち少なくとも1つの還元酵素A及び1つの脱水素酵素Bのそれぞれがメソポーラスシリカに固定化された還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を用いた共役酵素反応方法であって、
    ここで、メソポーラスシリカが、中心細孔直径は4~6nmの「SBA」、中心細孔直径は2~9nmの「FSM」及び中心細孔直径は2~6nmの「C-meso」から選択されたいずれか1種のメソポーラスシリカであり、
    下記(1)~(3)の工程を含む方法;
    (1)還元酵素A及び脱水素酵素BをメソポーラスシリカにpH5~8に調整した緩衝液中で固定化する工程、
    (2)工程(1)で得られた還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体をpH5~8の緩衝液で洗浄する工程、
    (3)工程(2)で得られた洗浄後の還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を、還元酵素A及び/又は脱水素酵素Bの基質を含む反応液中で、還元酵素A及び脱水素酵素Bが関わる共役的な酵素反応を行う工程。
  9. 共役酵素反応方法が、反応基質から有用物質を製造する方法である、請求項又はに記載の方法。
  10. 共役酵素反応方法が、環境中に存在する反応基質となる環境汚染物質を分解する方法である、請求項又はに記載の方法。
  11. 共役酵素反応方法が、被検試料中に存在するか又は存在する可能性のある反応基質を検出又は定量する方法である、請求項又はに記載の方法。
  12. 請求項1~のいずれか一項に記載の還元酵素A-脱水素酵素B-メソポーラスシリカ複合体を含むことを特徴とする、還元酵素A及び脱水素酵素Bが関わる共役酵素反応用キット、センサー又は装置。
  13. 共役酵素反応用キット、センサー又は装置が、反応基質から有用物質を製造するためのものであることを特徴とする、請求項12に記載のキット、センサー又は装置。
  14. カルボニル還元酵素(CR)と脱水素酵素との共役酵素反応を利用した光学活性アルコールを製造するためのキット又はバイオリアクターである、請求項13に記載のキット、センサー又は装置。
  15. 共役酵素反応用キット、センサー又は装置が、被検試料中に存在する可能性のある反応基質又は共役酵素反応後の産物を検出又は定量するためのものであることを特徴とする、請求項12に記載のキット、センサー又は装置。
  16. グルコース脱水素酵素(GDH)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、フルクトース脱水素酵素(FDH)、アルコール脱水素酵素(ADH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、ソルビトール脱水素酵素(SDH)、グリセロールリン酸脱水素酵素(GPDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)又はキシリトール脱水素酵素(XDH)とDT-ジアホラーゼ(DTD)との補酵素再生系の共役酵素反応を利用した、被検試料中のグルコース、グルコース-6-リン酸、フルクトース、アルコール、ギ酸、乳酸、ソルビトール、グリセロールリン酸、リンゴ酸又はキシリトールを検出又は定量するための測定キットである、請求項15に記載のキット、センサー又は装置。
  17. 共役酵素反応用キット又は装置が、環境中に存在する反応基質となる環境汚染物質を分解するためのものであることを特徴とする、請求項12に記載のキット、センサー又は装置。
  18. アゾ還元酵素(AzoR)とグルコース脱水素酵素(GDH)とのNAD又はNADH補酵素再生系を利用した、環境中の難分解性化学染料分解のための装置である、請求項17に記載のキット、センサー又は装置。
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