以下、以下の各実施形態において、本発明の計算方法、光学フィルム、および光学フィルムの製造方法を図面を参照して詳細に説明する。なお、同一または類似した機能を発揮する構成要素には、全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを説明するための概要図である。
すなわち、本実施形態に係る光学フィルム10は、複数の単位領域11が格子状に配置された記録面12を備えている。記録面12は、基材14の表面に相当する。
図2は、単位領域11の構成例を示す概要図である。
すなわち、単位領域11は、多数の単位ブロック20から構成されており、これら単位ブロック20は、位相角記録領域16または位相角非記録領域18の何れかに属する。一例として、単位領域11は、1000×1000個の単位ブロック20からなる正方形状をしており、位相角記録領域16は、単位領域11の右下1/4の領域に相当する500×500の単位ブロック20からなる。単位領域11において、位相角記録領域16に属さない単位ブロック20は、位相角非記録領域18に属する単位ブロック20である。単位ブロック20は例えば、一辺が100〜500nmの正方形状からなる。したがって、単位領域11は、1000×1000個の単位ブロック20からなる場合、一辺が100〜500μmの正方形状となる。
このような単位領域11によって、図1からも明らかなように、記録面12上において、位相角記録領域16と位相角非記録領域18とが規則的に繰り返されるようになる。したがって、単位領域11のサイズが大きい場合、特に目の解像度に対して大きい場合には、単位領域11の形状を視認する事が可能となってしまい、ホログラムの再生像との像の切り分けが困難になる場合がある。よって、単位領域11のサイズは1mm以下、特に500μm以下に設定する事が望ましい。
また、記録面12上には、ホログラム像が再生される各再生点22からの視野角θの上限に基づいて、計算要素区画24がそれぞれ規定される。このように、計算要素区画24は、位相角記録領域16および位相角非記録領域18とは無関係に規定されるので、通常は、位相角記録領域16および位相角非記録領域18と重なり合う。
本実施形態では、1つのホログラム像を再生するために、計算機を用いて、各再生点22からの光の位相成分W(x,y)を、計算要素区画24と位相角記録領域16とが重複する重複領域に含まれる単位ブロック20のみ計算される。つまり、計算要素区画24内の位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20のみについて計算する。したがって、位相角非記録領域18に含まれる単位ブロック20については、位相角非記録領域18が、計算要素区画24に含まれているか否かに関わらず、位相成分の計算は不要である。
計算機はさらに、位相角φから、下記の(1)式および(2)式に従って、位相成分W(x,y)を計算する。計算された位相成分W(x,y)は、対応する単位ブロック20の座標に紐付けて計算機のメモリまたはハードディスクにいったん記憶することができる。
このように、視野角θの上限を規定し、位相角φが計算される領域を、計算要素区画24内の位相角記録領域16に制限することによって、計算時間を短縮する。
ここで、iは虚数、λは再生点にホログラムを再生する際の光の波長、O
n(x,y,z)は再生点22の座標、(Kx,Ky,0)は単位ブロックの座標である。
図3は、位相角φが記録された単位ブロック20の一例を示すSEM画像である。図3に示される単位ブロック20は、一辺の長さがdである正方形をしており、X方向とY方向との両方において配列間隔dで2次元配列されている。
ところで、図1に例示されているように、1つのホログラム像を再生するための再生点22は、複数存在する。従って、これら複数の再生点22の各々に対応している計算要素区画24は、記録面12上に再生点22と同数存在する。なお、これら複数の再生点22は、対応する記録面12と平行な同一平面上に存在する場合も、そうではなく、対応する記録面12と平行な同一平面上に存在しない場合もある。
複数の再生点22は、対応する記録面12と平行な同一平面上に存在する場合、複数の再生点22と記録面12(XY平面)との距離(Z方向)を等しくすることによって、1つの再生点22について位相角φを計算すれば、その計算結果の複製を、他の再生点22についての位相角φの計算結果に流用できるために、計算時間の短縮に寄与する。
このように、複数の再生点22の各々に対応して、記録面12上に複数の計算要素区画24が存在することによって、光学フィルム10を側面から見た図である図4に示すように、1つの再生点22(#1)による計算要素区画24(#1)と、別の再生点22(#2)による計算要素区画24(#2)とが重なり合う場合があり得る。このように、重なり合った領域24(#3)に含まれる位相角記録領域16(図4に図示せず)に含まれる単位ブロック20における光の位相成分W(x,y)は、再生点22(#1)からの光の位相成分と、再生点22(#2)からの光の位相成分との和とする。
ただし、これによって、複数の再生点22(#1)、22(#2)からの光の位相成分の和を計算するという処理が追加されるので、計算時間はその分増加する。また、紐付けられる情報量の増加にもつながる。紐付けられる情報量が多くなると、再生点22において再生されるホログラム像を不鮮明にする要因ともなる。
したがって、記録面12上に計算要素区画24が複数存在する場合には、複数の計算要素区画24が重なり合わないことが好ましい。これを図5を用いて説明する。
図5は、2つの計算要素区画24(#1)、24(#2)がちょうど重なっていない状態を例示する概念図である。例えばこのように計算要素区画24を配置すれば、複数の計算要素区画24が重なることは無い。これによって、記録面12上での計算要素区画24の重なりが無くなり、前述した計算時間の増加も避けられるとともに、鮮明なホログラム像を得ることが可能となる。また、計算要素区画24の重なりを無くすことによって、計算要素区画24毎に異なる色を着色し、複合することによって、再生点22毎に色を変えてホログラム像を再生することも可能となる。
上記を考慮の上、例えば、「ABC」というホログラム像を再生するためには、図6(a)のように、「A」のホログラム像26Aを再生するために、計算機を用いて、各再生点22Aからの光の位相成分を、記録面12Aにおける計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20について計算し、さらに、位相成分から、位相角φを計算する。計算された位相角φを、対応する単位ブロック20の座標に紐付けて計算機のメモリまたはハードディスクにいったん記憶しても良い。
次に、図6(b)のように「B」のホログラム像26Bを再生するためにも、同様に、各再生点22Bからの光の位相成分を、記録面12Bにおける計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20のみについて計算し、位相成分から、位相角φを計算し、計算された位相角φを、対応する単位ブロック20の座標に紐付けて計算機のメモリまたはハードディスクにいったん記憶する。さらに、図6(c)のように「C」のホログラム像26Cを再生するためにも、各再生点22Cからの光の位相成分を、記録面12Cにおける計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20のみについて計算し、位相成分から、位相角φを計算し、計算された位相角φを、対応する単位ブロック20の座標に紐付けて計算機のメモリまたはハードディスクにいったん記憶しても良い。
このように、ホログラム像26A、26B、26Cの何れについても、対応する記録面12A、12B、12Cにおけるすべての単位ブロック20を対象として計算するのではなく、計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20についてのみ計算するので、計算時間が短くて済む。また、前述したように、記録面12A、12B、12Cにおいて、複数の計算要素区画24が重ならないようにすれば、計算時間はさらに短くなる。
その後、このようにしてホログラム像26A、26B、26C毎に計算された位相角φの変調を、記録面12A、12B、12C上の対応する単位ブロック20に記録する。位相角φの変調は、例えば単位ブロック上の凹凸構造として記録することができる。この際に、凹凸構造の高さは、位相角φの線形関数とすることができる。これによって、再生点22では、重複領域に含まれる単位ブロック20に光が当たった場合にのみホログラム像を再生する。したがって、光の当たり方を制御することによって、再生点22における再生をスイッチすることを可能としている。しかも、本実施形態では、位相成分W(x、y)を計算するので、光の位相角φの変調を記録することで、光の振幅は変調せず、輝度を落とすことなく記録面に位相の変調を記録するため、高輝度のホログラム像26を再生できる。
さらにまた、記録面12における重複領域の単位ブロック20の占有率を変化させることによって、ホログラム像の明るさを制御することも可能となる。すなわち、再生点22においてホログラムが再生される際の明るさを、(単位ブロック20の面積)/(計算要素区画の面積)分だけ暗くすることができる。これによって、光の明暗を制御する。重複領域に含まれる単位ブロック20に光が照射された場合にのみ、再生点22にホログラム像が再生されることから、単位ブロック20が大きいほど、明るいホログラム像を再生することができ、小さいほど、暗いホログラム像しか再生されないようになる。
ただし、記録面12における単位ブロック20の面積が大きいほど、計算機による計算量が増加し、小さいほど、計算量はより減少し、また特定のセル中の特定の単位ブロック20の面積が大きいと他の単位ブロック20を小さくする必要があるため、このように、ホログラム像の明るさと、記録面12における単位ブロック20のサイズは、設計条件に応じて最適に選択されるものとする。
このようにして、ホログラム像が再生されるようになるが、図7に示す記録面12A、12B、12Cのように、単純に隣接配置された記録面12における所定の単位ブロックに位相角φを記録するだけでは、従来技術で説明したように、隣接するホログラム間の境界上において像が不整合になる。そこで、本実施形態では、図8に例示するように、ホログラム像26Aのための記録面12Aの位相角記録領域16Aと、隣接して配置されたホログラム像26Bのための記録面12Bの位相角記録領域16Bとがオーバラップしないように、隣接する記録面12A、12Bをオーバラップさせる。同様に、ホログラム像26Bのための記録面12Bの位相角記録領域16Bと、隣接して配置されたホログラム像26Cのための記録面12Cの位相角記録領域16Cとを交互に配置し、隣接する記録面12B、12Cをオーバラップさせる。
これによって、隣接する記録面同士の一部が、オーバラップする(例えば、記録面12Aの一部と、記録面12Bの一部とが物理的にオーバラップする)が、位相角記録領域16同士は重なり合わない(すなわち、位相角記録領域16Aと、位相角記録領域16Bとは重なり合わない)ので、同じ単位ブロック20に、複数の位相角φが書き込まれない。あくまで、オーバラップしているのは、位相角非記録領域18と、隣接する記録面12の位相角記録領域16である。
このように、位相角非記録領域18に含まれる単位ブロック20には、位相角が書き込まれることはない。しかしながら、位相角非記録領域18に含まれる単位ブロック20に、位相角以外の他の情報を記録することは可能である。位相角以外の情報とは、例えば、光の散乱、反射、吸収および回折特性のうちの少なくとも何れかを含む情報である。位相角非記録領域18に記録する位相角以外の情報を、光の散乱、反射、および回折特性のうちの少なくとも何れかにすることによって、異なる光の効果を加えることが可能となり、もって、光の位相成分以外の様々な種類の光を制御し、複雑な目視効果を実現できるようにしている。
このように、隣接する2つの記録面同士をオーバラップさせることによって、隣接するホログラム像間の境界がなくなるので、前述したようなホログラム像間の視域的な不整合が無くなる。すなわち、図8の場合、ホログラム像「A」とホログラム像「B」との間、および、ホログラム像「B」とホログラム像「C」との間に不整合はなく、結合した方向(この場合、X方向)において「ABC」と連続したホログラム像を観察できるようになる。
本実施形態のさらなる利点について説明する。それは、既に計算された計算結果を活用できることである。例えば、ホログラム像「A」の位相角と、ホログラム像「B」の位相角と、ホログラム像「C」の位相角とがすでに計算され、対応する単位ブロック20の座標に紐付けられて計算機のメモリまたはハードディスクに記憶されているとする。これら既に記憶されている位相角φを用いて、例えば、図8に示すような光学フィルム10において、記録面12Aにおける対応する単位ブロック20に、ホログラム像「B」の位相角φを書き込み、記録面12Bにおける対応する単位ブロック20に、ホログラム像「A」の位相角φを書き込み、記録面12Cにおける対応する単位ブロック20、ホログラム像「C」の位相角φを書き込めば、「BAC」というホログラム像を、何ら新たな計算を実行することなく再生できるようになる。
その他にも「AAA」、「BBB」、「CCC」、「BCA」・・・・等、計算機が既に計算し、記憶している計算結果を利用することによって、何ら新たな計算を実行することなく多くのパターンの再生像を再生できることを、当業者であれば容易に理解できるであろう。
また、例えば、数字からなるホログラムであれば、0から9まで10の数字について、位相角の計算を一度実行し、計算結果を記憶しておけば、後は、図8のような記録面12における対応する単位ブロック20に位相角φを記録するだけで、任意の数字を表すホログラム像を、新たな計算をすることなく再生できるようになる。
さらに、本実施形態に係る光学フィルム10は、上記の様に3つのホログラム像を連結させることに限定されず、例えば、記録面12Cの右側にも新たな記録面12をオーバラップさせることを繰り返すことによって、一方向に無限長の記録面12を作成し、それに応じて一方向に無限長のホログラムの再生像を再生することも可能としている。なお、ホログラム像26は、必ずしも図8に示すように、X方向に直線的であることに限定されず、図9のように曲面的であっても良い。
このように一方向の再生像を再生するためには、1つの記録面12は、隣接する1つの記録面12の面積の最大1/2までオーバラップことが可能である。例えば、図8の例では、記録面12A、12B、12Cはそれぞれ同一面積を有し、記録面12Aは、隣接する1つの記録面である記録面12Bの1/2の面積までオーバラップしている。記録面12Bは、隣接する1つの記録面である記録面12Aの1/2の面積までオーバラップしている。また、隣接するもう1つの記録面である記録面12Cの1/2の面積までオーバラップしている。記録面12Cは、隣接する1つの記録面である記録面12Bの1/2の面積までオーバラップしている。
なお、図2に例示する正方形状の単位領域11では、4分割された4つの正方形のうちの1つが位相角記録領域16とされている。しかしながら、位相角記録領域16はこれに限定されるものではなく、図8および図9のようにX方向のみにオーバラップさせる場合であれば、図10のように、Y方向に連続した矩形形状であってもよい。さらに、上述したように1/2の面積までオーバラップできるように、位相角記録領域16と位相角非記録領域18とX方向における長さを等しくする。すなわち、単位領域11における位相角記録領域16の面積占有率を、最大で1/2とすることができる。これによって、記録面12における位相角記録領域16の面積占有率も、最大で1/2となる。
以上説明したように、本実施形態に係る光学フィルムによれば、隣接する2つの記録面同士を部分的にオーバラップさせることによって、隣接するホログラム像間の境界がなくなるので、ホログラム像間の視域的な不整合を無くすることが可能となる。
また、一度計算された位相角φの情報を、再利用することができるので、例えば数字やアルファベットの各々についての位相角φの計算を一度実行して記憶しておけば、位相角φを対応する単位ブロック20に記録するだけで、所望のホログラム像が再生されるようになることから、ホログラムのサイズが大きくなっても、計算機のメモリ領域を増やす必要無しに、描画位置の組み合わせ次第で様々な絵柄を再現する事が可能となる。
特に、数字は、カード毎に固有番号を付与する場合における利用が期待される。しかも、本実施形態によれば、桁数の繰り上がりにも対応可能である。
また、図11(a)のように、複数の再生点22Cで構成された四角の単位ブロック構造を再生像として再生するホログラムおよび記録面12Cと、図11(b)のように、複数の再生点22Dで構成された四角の単位ブロック構造を再生像として再生するホログラムおよび記録面12Dとを組み合わせる事で、図11(c)のような立体像としての絵柄13を表現する事も可能となる。これによって、例えばQRコード(登録商標)の様なその都度情報が変化する様な内容についてもホログラムの組み合わせ方で対応する事が可能となる。
(実施例)
第1の実施形態に係る光学フィルムによって再生されたホログラムの具体例について説明する。
図12は、本実施例における光学フィルムを構成する単位領域11の構成例を示す模式図である。
図12に示す単位領域11は、単位ブロック数(X、Y)=(320、320)pixelの正方形状をしており、図中右下1/4が位相角記録領域16であり、それ以外が位相角非記録領域18となっている。すなわち、位相角記録領域16は、単位ブロック数(x、y)=(160、160)pixelである。
記録面12は、151×151の単位領域11からなる正方形状とし、これによって、記録面12全体のサイズは48320×48320ピクセルとなる。描画解像度は125nmとした。再生点は図13(a)、(b)、(c)の通り数字の「1」、「5」、「8」の3種類とした。「1」は11個の再生点によって再生され、「5」は17個の再生点によって再生され、「8」は17個の再生点によって再生される。
奥行情報は再生点毎に個別に設定することも可能であるが、簡単のために数字の「1」は11個全ての再生点についてZ=3mm、「5」は17個全ての再生点についてZ=5mm、「8」は17個全ての再生点についてZ=8mmとした。
図14は、位相角φが記録された記録面12の一部を示す図である。図14(a)は、「1」に対する記録面12(1)であり、図14(b)は、「5」に対する記録面12(5)であり、図14(c)は、「8」に対する記録面12(8)である。
図14(a)、(b)、(c)の何れにおいても黒く写っている箇所は位相角非記録領域18に相当し、それ以外の領域である位相角記録領域16に、位相角φが記録されている。
これら3種類の記録面12(1)、(5)、(8)を、図15のように3×3のXY平面上に配置した。すなわち、再生点「1」の記録面12(1)の3つの中心座標を(x、y)=(18.02、−1.48)、(24.06、−4.5)、(21.04、−7.52)とし、再生点「5」の記録面12(5)の3つの中心座標を(21.04、−1.48)=(18.02、−4.5)、(25.06、−7.52)とし、再生点「8」の記録面12(8)の3つの中心座標を(x、y)=(24.06、−1.48)、(21.04、−4.5)、(18.02、−7.52)とした。
図16は、図15のように配置された記録面12によって再生された再生点のイメージ図である。図16を見て分かるように、ホログラム像間の視域的な不整合が無く、かつ、奥行き感が表現される再生像が違和感なく表示されることが確認された。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムについて説明する。
図17は、本実施形態に係る光学フィルムの構成例を示す模式図である。ここでは、第1の実施形態と異なる点について説明し、共通する部分の説明は省略する。
すなわち、第1の実施形態に係る光学フィルム10は、図8に示すように、複数の記録面12をX方向に1次元的にオーバラップさせながら配置することによって構成されるが、本実施形態の形態に係る光学フィルム10は、複数の記録面12をXY平面上に2次元的にオーバラップさせながら配置することによって構成される。
図17において、記録面12A1、12B1、12C1は、図8における記録面12A、12B、12Cと同様に、互いにX方向に隣接する記録面とオーバラップしている。記録面12A2、12B2、12C2もまた、図8における記録面12A、12B、12Cと同様に、互いにX方向に隣接する記録面とオーバラップしている。本実施形態ではさらに、記録面12A1が、Y方向において、記録面12A2とオーバラップしている。
この場合も、記録面12A1の位相角記録領域16A1と、記録面12A2の位相角記録領域16A2とが、記録面12A1と記録面12A2とをオーバラップしている領域で交互に配置され、記録面12A1と記録面12A2とをオーバラップさせる。
同様に、記録面12B1の位相角記録領域16B1と、記録面12B2の位相角記録領域16B2とを録面12B1と記録面12B2とをオーバラップしている領域で、交互に配置され、記録面12B1と記録面12B2とをオーバラップさせる。さらには、記録面12C1の位相角記録領域16C1と、記録面12C2の位相角記録領域16C2も記録面12C1と記録面12C2とをオーバラップした領域で交互に、記録面12C1と記録面12C2とをオーバラップさせる。
図17では、一例として6つの記録面12をXY平面上に2×3で配置した構成を示しているが、本実施形態に係る光学フィルム10は、このような構成に限定されるものではなく、一般的に、複数の記録面12をN×M(N,Mはそれぞれ2以上の任意の整数)に配置した構成にすることができる。この場合、記録面12B1の左上1/4は、記録面12A1の右上1/4、記録面12A2の右下1/4、および記録面12B2の左下1/4とそれぞれオーバラップする。このようなオーバラップが可能となるように、各記録面12における単位領域11における位相角記録領域16の面積占有率は、最大で1/4となる。これによって、記録面12における位相角記録領域16の面積占有率も、最大で1/4となる。
図18(a)〜(f)は、単位領域11における位相角記録領域16の面積占有率が1/4になるいくつかの例を示す模式図である。図2と図18(a)とは同一であり、単位領域11における位相角記録領域16は、正方形状である単位領域11の1/2の縮図の正方形状となっている。図18(b)〜(f)に示すように、単位領域11における位相角記録領域16の形状は、単位領域11の縮図に限定されるものではなく、面積占有率が1/4であり、同じ形状を同一方向に配置することによって隙間なく嵌め合わせることが可能な任意の形状であって良い。
図19は、XY平面において格子状に複数の記録面12が隣接配置された場合に、周囲の3つの記録面12の位相角記録領域16によってオーバラップされた記録面12の単位領域11の状態を示す模式図である。図19(a)は、図18(a)に対応しており、同様に、図19(b)、(c)、(d)、(e)、(f)も、図18(b)、(c)、(d)、(e)、(f)にそれぞれ対応している。
この単位領域11を、図17における記録面12B1の左上1/4におけるものとした場合、図19(a)〜(f)において、位相角記録領域16aは、記録面12B1の左上1/4におけるものに相当し、位相角記録領域16bは、記録面12B2の左下1/4におけるものに相当し、位相角記録領域16cは、記録面12A1の右上1/4におけるものに相当し、位相角記録領域16dは、記録面12A2の右下1/4におけるものに相当する。
このように、複数の記録面12をXY平面上に2次元的にオーバラップさせながら配置することによって、X方向およびY方向ともに隣接するホログラム像間の境界がなくなるので、ホログラム像間の視域的な不整合が無くなる。
このようにして、新たな記録面12のオーバラップを繰り返すことによって、理論的にはホログラム像を無制限に平面的に配置することもできる。なお、XY平面をなすホログラム像は、必ずしも図17に示すように平面であることに限定されず、図20のように曲面であっても良い。
以上説したように、本実施形態に係る光学フィルムによれば、ホログラム像を2次元的に配置する場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムについて説明する。
図21は、本実施形態に係る光学フィルムの構成例を示す模式図である。ここでは、第1の実施形態と異なる点について説明し、共通する部分の説明は省略する。
第3の実施形態に係る光学フィルム10は、図21に示すように、ホログラム像「1」を再生し、その上側(図中Z方向側)にホログラム像「5」を再生するために、2つの記録面12(1)、12(5)をオーバラップさせている。
すなわち、記録面12(1)は、ホログラム像「1」を再生するための再生点26(1)からの光の位相角φを記録するためのものであって、記録面12(5)は、ホログラム像「5」を再生するための再生点26(5)からの光の位相角φを記録するためのものである。
本実施形態に係る光学フィルム10では、このように2つの記録面12(1)、12(5)がオーバラップするものの、記録面12(1)における位相角記録領域16(1)と、記録面12(5)における位相角記録領域16(5)とは重ならず、交互に配置される。
図22(a)は、図21における記録面12(1)における1つの単位領域11(1)を示す模式図であり、図22(b)は、図21における記録面12(5)における1つの単位領域11(5)を示す模式図である。図22(c)は、記録面12(1)と記録面12(5)とがオーバラップされた状態における単位領域11を示す模式図である。
図22(a)に図示されているように、記録面12(1)では、単位領域11(1)の右下1/4の部分が位相角記録領域16(1)となっており、それ以外は位相角非記録領域18(1)となっている。一方、図22(b)に図示されているように、記録面12(5)では、単位領域11(5)の右上1/4の部分が位相角記録領域16(5)となっており、それ以外は位相角非記録領域18(5)となっている。
したがって、記録面12(1)と記録面12(5)とがオーバラップしても、図22(c)に示すように、記録面12(1)の位相角記録領域16(1)と、記録面12(5)の位相角記録領域16(5)とは交互に配置される。
このように、Z方向における高さの異なる(奥行が異なる)2つのホログラム像を再生するために2つの記録面12(1)、12(5)を重ね合わせるようにオーバラップさせることによって、異なる奥行が反映されたホログラム像を再生することができる。
なお、図21のように、2層のホログラム像「1」、「5」を再生する場合、図23のように、単位領域11における位相角記録領域16の面積比率を、最大1/2まで高めることが可能である。
図23は、単位領域11における位相角記録領域16の面積比率を、1/2とした場合の一例を示す模式図である。例えば、図23(a)のように、単位領域11(1)における右半分を位相角記録領域16(1)とし、図23(b)のように、単位領域11(5)における右半分を位相角記録領域16(5)とすれば、記録面12(1)と記録面12(5)とがオーバラップした場合、図23(c)のように、記録面12(1)の位相角記録領域16(1)と、記録面12(5)の位相角記録領域16(5)とが交互に配置される。
ところで、図22(c)を見ると、記録面12(1)と記録面12(5)とがオーバラップした場合、単位領域11の左半分には、位相角記録領域16が配置されていない。したがって、この領域を利用して、さらに別の記録面12をオーバラップさせることができる。
図24は、図21に示す状態にさらに、ホログラム像「8」を再生するための再生点26(8)からの光の位相角φを記録するための記録面12(8)をオーバラップさせた状態を示している。
記録面12(8)の単位領域11(8)は、図25(a)に示すように、左上1/4が位相角記録領域16(8)となっており、これによって、図25(b)に示すように、記録面12(1)の位相角記録領域16(1)と、記録面12(5)の位相角記録領域16(5)と、記録面12(8)の位相角記録領域16(8)とがオーバラップすることなく、記録12(1)、12(5)にさらに記録面12(8)をオーバラップすることができる。
さらに、図25(b)における左下1/4の位相角非記録領域18にも、新たな位相角記録領域16を配置することができるので、図示しないが、同様にして、4階層のホログラム像の表示を行うことも可能となる。あるいは、4階層ではなく、3階層に加えて、さらにX方向に新たな記録面12を配置することも可能である。
以上説明したように、本実施形態によれば、一般に、単位領域11における位相角記録領域16の面積占有率を1/N(Nは、2以上の整数)とすれば、N階層のホログラム像を表示することが可能となる。
また、階層方向(Z方向)に限定されるのではなく、第1および第2の実施形態と組み合わせることによって、3次元的にホログラム表示を行うことも可能となる。
なお、XY平面をなす記録面12は、平面であることに限定されず、曲面であっても良い。
(変形例1)
前述した各実施形態では、計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20に、対応する位相角φ、すなわち、数値情報を記録することについて説明した。
本変形例1では、数値情報としての位相角φを記録することに代えて、計算機が、位相角φを、対応する単位ブロック20の凹凸の高さに変換し、位相角φに対応する高さを有する凹凸を、対応する単位ブロック20に形成することによって、位相角φを、対応する単位ブロック20に記録する。
図26は、位相角φの変調を凹凸として記録した光学フィルム10の例を示す断面図である。
位相角φの変調を、凹凸の高さhとして記録する際には、凹凸の高さhを位相角φの線形関数として算出し、その後、電子線描画装置によって、凹凸高さに応じた露光量で、レジスト基材へ描画する。これにより、位相角φに応じた高さに凹凸がブランクス上に記録され、記録されたがブランクスを現像し、さらにブランクスから、電鋳により原版を作成できる。
電子線描画機がマルチレベルの描画に対応できない場合には、同一箇所にパワーの異なる描画を多段階行うことによって、マルチレベルに近い描画を行うようにしても良い。例えば、3回の多重露光によって、8段階のマルチレベルを表現することが可能である。これにより、位相角φに応じた高さに凹凸がブランクス上に記録し、記録されたがブランクスを現像し、さらにブランクスから、電鋳により原版を作成できる。
その原版を用いて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV樹脂等にて、例えば図26(a)に示すように基材14上に設けられた位相角記録層17に対して、凹凸を形成する。このようにして、位相角φに対応する凹凸が形成された光学フィルム10を得る。
また、反射光を観察する場合には、図26(b)のように、位相角記録層17の表面に、金属層36でコーディングしても良い。なお、反射光を観察せず、透過光のみを観察する場合には、図26(a)のように、位相角記録層17の表面に金属層36をコーディングしなくても良い。
以上は、原版を用いて、位相角φに対応する凹凸が形成された光学フィルム10を形成する例について説明したが、他の手法として、ハロゲン化銀露光材料を露光現像し、漂白後現像銀をハロゲン化銀などの銀塩に変えて透明にするようにしても良い。あるいは光によって屈折率や表面の形状が変化するサーモプラスチック等も利用するようにしても良い。
図27は、図26の応用例であり、必要に応じて、基材14に剥離層37を積層し、さらに剥離層37に位相角記録層17を積層し、さらに位相角記録層17に粘着層38を積層し、この粘着層38によって、対象物に貼り付け可能な構成とした光学フィルム10を例示する断面図である。なお、図27(a)および図27(b)は、図26(a)および図26(b)にそれぞれ対応しており、図27(a)は、位相角記録層17に、金属層36がコーティングされていない光学フィルム10の構成例を、図27(b)は、位相角記録層17に、金属層36がコーティングされている光学フィルム10の構成例をそれぞれ例示している断面図である。
図28(a)および図28(b)は、図27(a)および図27(b)にそれぞれ対応しており、粘着層38を介して、対象物44に転写された後に、剥離層37から基材14が剥離された光学フィルム10を含む表示体42の構成例を示す断面図である。
なお、基材14に用いる材料は、ガラス基材のようなリジッドなものでも良いし、フィルム基材でも良い。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)等のプラスチックフィルムを用いることができるが、位相角記録層17を設けた際にかかる熱や圧力等によって変形や変質の少ない材料を用いることが望ましい。なお、用途や目的によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を基材14として用いても良い。
剥離層37には、樹脂および滑剤を用いることができる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好適である。樹脂としては、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂である。また、滑剤としては、ポリエチレンパウダー、パラフィンワックス、シリコーン、カルナバロウ等のワックスが好適である。これらは剥離層37として、基材14にグラビア印刷法やマイクログラビア法等のような公知の塗布方式によって形成される。剥離層37の厚みは、例えば0.1μm及至2μmの範囲内が好ましい。
位相角記録層17には、樹脂を用いることができる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料、電子線硬化性樹脂等が好適である。樹脂として、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートが用いられる。位相角記録層17の厚みは、例えば0.5μm及至5μmの範囲内が好ましい。
金属層36は、例えば、インキを用いて形成する。このインキは、印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ、およびグラビアインキ等を用いることができ、組成の違いに応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキ、および水性インキが挙げられる。また、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキおよび紫外線硬化型インキが挙げられる。
また、金属層36の材料の例として、照明角度または観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用しても良い。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキおよびパールインキが挙げられる。
金属層36の材料として無機化合物も用いられる。無機化合物としては、金属化合物が好適であり、例えば、TiO2、Si2O3、SiO、Fe2O3、ZnSが用いられる。無機化合物は、屈折率が高く反射率を高めやすい。また、金属層36の材料として金属が用いられる。金属は、Al、Ag、Sn、Cr、Ni、Cu、Auを用いることができる。気相堆積法により無機化合物、金属を用いた金属層36を形成することができる。気相堆積法としては蒸着、CVD、スパッタを用いることができる。金属層36の厚みは、40nm以上、1000nm以下とすることができる。金属層36の反射率は、30%以上70%以下が好ましい、30%以上であれば、下地の印刷層があっても、十分な反射が得られる。70%より反射率が高いと下地の印刷層を観察しづらくなる。
図28に示す表示体42は、光学フィルム10が対象物44に貼り付けられてなる。対象物44としては、紙幣、クーポン、スタンプ、カード、サイネージ、ポスター、タグ、シール等である。粘着層38は、対象物44と密着できれば良く、材質は問わず、例えば、接着剤等で良い。
対象物44は、紙、ポリマー等、粘着層38を介して貼り付け可能なものであれば、特に限定されない。
また、擦れ等により、容易に傷がつくと再生像にボケが発生するため、表示体42の表面に保護層(図示せず)を設けてもよい。保護層は、ハードコート性も付与することができる。ハードコート性は、鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4)において、H以上5H以下の硬度であるとすることができる。
表示体42の表面の20°グロス(Gs(20°))は15以上70以下が好ましい。20°グロス(Gs(20°))が15に満たない場合、防眩性が強くなり、再生点22がうまく結像しなくなる。一方、20°グロス(Gs(20°))が70を超えるような場合、防眩性が不十分なため再生像に反射光が映りこみ、再生像の撮像、観察が困難となる。なお、より好ましい20°グロス(Gs(20°))は、20以上60以下の範囲内である。
また、位相角記録層17の透過像鮮明度(C(0.125)+C(0.5)+C(1.0)+C(2.0))の値は、200%以上であることが好ましい。また、位相角記録層17のヘイズ(Hz)は1.0%以上25%以下とすることができる。20°グロスの測定は、光沢度計(BYK−Gardner製micro−TRI−gloss)を用い、JIS−K7105−1981に基づきを測定した。透過鮮明度の測定は、写像測定器(スガ試験機社製、商品名;ICM−1DP)を用い、JIS−K7105−1981に基づき測定した。
防眩性フィルムを透過する光は、移動する光学くしを通して測定した際の最高波長Mおよび最低波長mから、C=(M−m)/(M+m)×100の式に基づく計算により求められる。透過画像鮮明度C(%)は、値が大きいほど、画像が鮮明で、良好であることを表す。測定には4種類の幅の光学くし(0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm)を使用したので、100%×4=400%が最大値となる。
へイズ(Hz)は、ヘイズメータ(日本電色工業製NDH2000)を用いJIS−K7105−1981に準じてヘイズ(Hz)を測定した。
全光線反射率は、JIS−K7105に準じ、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計であるU−4100と、積分球とを用いて行うことができる。
なお、変形例として、剥離層37がなく、基材14に位相角記録層17を直接積層した構成の光学フィルム10も可能である。図29(a)および図29(b)は、そのような光学フィルム10が対象物44へ貼り付けられた表示体42の構成例を示す断面図である。この場合、図29(a)および図29(b)に示すように、剥離層37がないことから、対象物44への貼り付け後も、基材14が残っている。
基材14が印刷層を形成する場合、マット調の用紙を使用するのが好ましい。マット調の用紙としては、上質紙、中質紙、マットコート紙、アート紙等が挙げられる。
また、図30に示すように、対象物44が機能層34を有し、光の散乱、反射、または回折特性を有する特性を事前に持つことも可能である。図30(a)および図30(b)は、対象物44が機能層34を有する場合における表示体42の構成例を示す断面図であり、図28(a)および図28(b)にそれぞれ対応している。
図30(b)に示すような構成の場合、金属層36は透光性のある材料あるいは透光性の無い材料であっても、光が透過する様に薄膜で成膜することが好ましい。それにより、金属層36による光学効果と、機能層34による光学効果とを両方同時に発生させることが可能となる。
対象物44の機能層34には、微細ナノ構造、回折格子構造やマイクロ構造、印刷層などが挙げられる。簡単な例としては、機能層34の部分が印刷層であり、その表面に透明な反射層を持つ機能層を、粘着層38を介して貼り付ける。それにより、機能層34の光学効果と、機能層34の印刷による光学効果との両方を発生させることが可能となる。印刷層は、インキを用いて形成することができる。
インキは、顔料インキ、染料インキを用いることができる。顔料インキは、無機化合物、有機物を用いることができる。無機物の顔料としては、黒鉛、コバルト、チタンが挙げられる。有機物の顔料としては、フタロシアニン化合物、アゾ顔料、有機錯体が挙げられる。また、蛍光性、りん光性の顔料を用いることもできる。顔料を、ポリマーの母材に分散し、印刷し印刷層を形成できる。ポリマーの母材としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン等を用いることができる。顔料の添加量は、0.1%以上、10%以下が好ましい。染料インキとしては、有機物が挙げられる、有機物の染料は、天然染料、合成染料がある。合成染料として、アゾ染料、有機錯体染料等が挙げられる。また、蛍光性、りん光性の染料を用いることもできる。染料を、ポリマーの母材に分散し、印刷し印刷層を形成できる。ポリマーの母材としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン等を用いることができる。染料の添加量は、0.5%以上、30%以下が好ましい。
再生像の識別性を上げるためには、印刷層が低反射であることが好ましい。典型的には、低反射とは、全光線の反射率が1%以上、29%以下であれば良い。マンセル明度において、1〜6であれば、自然な色調となり、対応する全光線反射率は、1%以上、29%以下である。
また、計算要素区画24の配置間隔は、印刷層の網点の間隔との差が3倍以上、10倍以下、または1/3以下、1/10以上であることが好ましい。このようにすれば計算要素区画24と、印刷層の網点とのモアレが発生しない。
また、図30(b)において位相角記録領域16と位相角非記録領域18とを明記した図31に示すように、位相角記録領域16に金属層36を設け、位相角非記録領域18に金属層36を設けない場合には、位相角非記録領域18では光は透過するので、その場合、金属層36の材料、膜厚によらず対象物44の機能層34の光学効果を発現させることが可能となる。
また、図32は、図31の一部を変形した構成をしており、図31において位相角記録層17が配置されていない箇所にも位相角記録層17を配置することによって、位相角記録層17が全面にある場合における構成例を示す断面図である。
図32に示すように、全面に位相角記録層17がある場合であっても、金属層36の有る部分と無い部分とを設けることで、光学効果を発現させることが可能となる。なお、金属層36の有無の製造方法は、金属層36をつけない部分に印刷層を設け、金属層36は、蒸着、スパッタ、印刷等で全面に設け、その後、金属層36をつけない部分に設けた印刷層を剥離することで、金属層36のある部分と無い部分を作製することが可能となる。
また、図33に示すように、対象物44の機能層34が持つ印刷による絵柄(ABCDEF)13と、離間した再生点22とを組み合わせることで、印刷の絵柄13に合わせて、再生点22の再生する奥行きを変えることによって、印刷の絵柄13を引き立たせる効果を持たせることも可能となる。特に、絵柄13のある部分は絵柄13を強調したいため、図33(a)の平面図に対応する断面図である図33(b)に示すように、再生点22を印刷面から離して再生することにより、複数の再生点22の再生像と、印刷による絵柄13とをはっきり分け、観察者に視認し易くすることが可能となる。
逆に、図33(b)に示すように、絵柄13の無い部分では再生点22を印刷面に近づけることで、観察者に明瞭な再生点22とすることが可能となる。また、再生点22の印刷面からの距離を前述と逆にすることでも絵柄13を引き立たせる効果を持たせることが可能である。再生点22を絵柄13のある部分だけ粗とし、絵柄13の無い部分だけ密にする等でもこのような効果を発揮することが可能である。対象物44の機能層34の役割としては、印刷の他に、微細ナノ構造、回折格子構造やマイクロ構造、計算機ホログラム等が挙げられる。
図34に示すように機能層34には、機械読取可能なコードが記録されていてもよい。械読取可能なコードとしては、QRコード(登録商標)、iQRコード、ARコード、電子透かしを含む。
図34に示すように、機能層34に、機械読取可能なコード46を配置した場合であっても、機械読取可能なコード46の配置に合わせて、再生点22の再生する奥行きを変えることによって、機械読取可能なコード46を引き立たせ、機械読取可能なコード46がコードリーダによって読み取れられる。特に、機械読取可能なコード46の配置されている部分は、機械読取可能なコード46の読み取り性を上げるために、図34(a)の平面図に対応する断面図である図34(b)に示すように、再生点22を機械読取可能なコード46から離して再生することにより、複数の再生点22の再生像と、機械読取可能なコード46とをはっきり分け、機械読取可能なコード46がコードリーダによって容易に読み取られるようにすることが可能となる。
また、機械読取可能なコード46は、位相角記録領域16内に設けることが好ましい。機械読取可能なコード46を、通常の印刷物の中に印刷すると、違和感が生じてしまうが、照明や観察角度によって変化する再生像により、変化の乏しい印刷層の機械読取可能なコード46を認知しずらくし、隠蔽することができる。これにより機械読取可能なコードを賦与したことによる意匠の劣化を緩和できる。
機械読取可能なコード46の訂正率は、20%以上、60%以下が好ましい。機械読取可能なコード46としてQRコードを用いた場合に、誤り補正のレベルはH(訂正率30%)が好ましい。従来のQRコードの代わりにiQRコードコードを用いた場合の誤り補正のレベルはH(訂正率30%)または、S(訂正率50%)が好ましい。
また、図35(a)および図35(b)のように、再生点22で機械読取可能なコード46を構成することもできる。これを実現するためには、対象物44の機能層34の絵柄の上に透明な反射層が形成された機械読取可能なコード46が記録された光学フィルムをラミネートする。上記構成では機械読取可能なコード46は、通常の照明条件(拡散照明)では、ボケるため、絵柄のみを観察できる。そのため、絵柄のデザインを阻害しない。一方、スマートフォン等のLED照明(ストロボ照明)のような点光源で照明すると、高輝度の機械読取可能なコード46(例えば、QRコード)が再生されるため、このQRコードにカメラの焦点を合わせることができ、機械読取可能なコード46の内容を読み取ることができる。
機械読取可能なコード46の内容を確実に読み取るためには、機械読取可能なコード46が、対象物44の機能層34から5mmから25mmの間で再生されることが好ましい。これよりも機能層34に近いと、機能層34の絵柄と機械読取可能なコード46との判別性が低下する。一方、これよりも機能層34から離れると、機械読取可能なコード46の再生像がボケやすくなる。
機械読取可能なコード46の訂正率は、20%以上、60%以下が好ましい。機械読取可能なコード46としてQRコードを用いた場合に、誤り補正のレベルはH(訂正率30%)が好ましい。従来のQRコードの代わりにiQRコードコードを用いた場合の誤り補正のレベルは、H(訂正率30%)またはS(訂正率50%)が好ましい。なお、機械読取可能なコード46を、機能層34と、再生点22との双方に記録しても良い。
図36は、所望の再生像を再生するための位相角記録領域16に記録されたデータの一例を示す平面図である。
図37は、蛍光塗料48での絵柄を組み合わされた光学フィルムの一例である。照明を点灯し、光源にて再生した場合には再生点22が再生され、消灯した場合には蛍光塗料48が塗布された部分が発色することで、照明の点灯時と非点灯時との両方に対応させることが可能となる。
図38は、照明光源50と、再生点22との形状の関係を示す斜視図である。図37の様に再生点22を離間することで、再生点22によって再生される再生像のサイズによるボケを無くすことが可能である。このとき、図38(a)に示すように、照明光源50が円状である場合、円状の再生点22を再生することが可能であり、図38(b)に示すように、照明光源50’が星型である場合、星形形状の再生点22’像を再生することが可能となる。
上述したように、本変形例1に係る光学フィルム10によれば、位相角φを、対応する単位ブロック20の凹凸の高さに変換し、位相角φに対応する高さを有する凹凸を、対応する単位ブロック20に形成することによって、再生点22においてホログラム像を再生することが可能となる。
このようにすることによっても、第1乃至3の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
(変形例2)
前述した各実施形態では、計算要素区画24における位相角記録領域16に含まれる単位ブロック20に、対応する位相角φ、すなわち、数値情報を記録することについて説明した。
本変形例2では、数値情報としての位相角φを記録することに代えて、計算機が、位相角φの変化を、記録面12の屈折率からの変化量に変換する。さらに、計算機が、その屈折率の変化量を実現するボイドに変換する。そして、このボイド33を、例えば、図39に示すように、対応する単位ブロック20の場所に相当する基材14に埋め込むことによって、位相角φを単位ブロック20に記録する。
上述したように、本変形例2に係る光学フィルム10によれば、位相角φの変化を、記録面12の屈折率からの変化量に変換し、その変化量を実現するボイド33を、対応する単位ブロック20の場所に相当する基材14に埋め込むことによって、再生点22においてホログラム像を再生することが可能となる。
このようにすることによっても、第1乃至3の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
(変形例3)
前述した各実施形態では、ホログラムの再生像によって、アルファベットや数字を表示する例について説明した。
本変形例3では、位相角記録領域16を、文字や絵柄を表す図形の形状とする。この図形は、特に、個人認証情報として利用することが可能なものである。
図40は、個人認証情報に利用するために、身分証明書等の個人認証媒体40上に、ホログラム像を再生した例を示す図である。
位相角記録領域16を、形状自体に意味のある図形によって形成し、個人認証情報として利用する。例えば、位相角記録領域16を、意味のある形状の図形47(例えば、使用する個人の名前や、顔写真等)によって形成する。正確には、図形47における点線部が、位相角記録領域16に相当し、図形47におけるマークの目と口の部分が、位相角非記録領域18に相当する。そして、それに応じて、身分証明書等の個人認証媒体40における再生点22において、その図形47に応じたホログラム像が再生される。このホログラム像は、視認可能なものとする。
上述したように、本変形例3に係る光学フィルム10によれば、位相角記録領域16を、文字や絵柄を表わす図形47の形状とすることによって、文字や絵柄に3次元的な動的効果を与えることが可能となる。また、図形47を、個人認証情報として利用することも可能である。
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。