JP6986129B2 - 処理装置 - Google Patents

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Description

開示の技術は、処理装置に関する。
生体組織から細胞を分離(または単離)するための処理装置に関する技術として以下の技術が知られている。例えば、特表2010−524498号公報には、媒質リザーバと、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、第1ローブ及び第2ローブを備える細胞処理デバイスと、少なくとも1つのポンプと、流体流の向きを変えるかまたは止める少なくとも1つの弁とを備え、それらが互いに連通している細胞分離装置が記載されている。
特表2009−540868号公報には、流体を取入れるための少なくとも1つの取入れポートと、流体を排出するための少なくとも1つの排出ポートと、核酸等の目的の物質を結合するための少なくとも2つの固体担体と、3つ以上の導管の間で流体の移動を制御するための少なくとも1つの回転バルブとを含み、取入れポート、排出ポート、固体担体、及び回転バルブが互いに接続して取入れポートから排出ポートへの回路を作り出す、目的の物質を精製するデバイスが記載されている。また、このデバイスにおいて、導管に残留する流体を除去するために、空気を導管に流すことが記載されている。
生体組織は、細胞と、細胞の周囲に存在する細胞外マトリックスを含んで構成されている。生体組織から細胞を分離(または単離)する分離処理は、生体組織を酵素剤等の処理液を用いて細胞外マトリックスを分解し、細胞を抽出する処理である。分離処理においては、細胞の生存率を高めるために、生体組織及び生体組織から分離した細胞の周囲環境を無菌状態に保つことが重要である。また、細胞への過度な負荷または処理不良による細胞回収率の低下を回避するために、生体組織に添加する処理液の量を精度よく一定量にすることは重要である。
上記の分離処理に用いる処理装置の構成として例えば以下のものが想定される。すなわち、処理装置は、処理対象の生体組織を収容するための第1の容器と、生体組織の処理に用いる処理液を封入するための第2の容器と、第1の容器と第2の容器とを接続する流路と、複数の第2の容器から第1の容器への処理液の移送を行う処理液移送手段と、を含んで構成され得る。上記の構成を有する処理装置において、流路内に処理液が残留すると、生体組織に添加される処理液の量が不足し、処理不良が発生するおそれがある。
上記の特許文献2(特表2009−540868号公報)には、導管に残留する流体を除去するために、空気を導管に流すことが記載されている。しかしながら、導管に流した空気には、細菌及びウイルス等の汚染源を含んでいるおそれがあり、生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるおそれがある。
開示の技術は、生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるリスクを抑制しつつ、流路内における処理液の残留を抑制することを目的とする。
開示の技術に係る処理装置は、処理対象の生体組織を収容するための第1の容器と、生体組織の処理に用いる処理液を封入するための複数の第2の容器と、第1の容器と複数の第2の容器の各々とを接続する流路と、複数の第2の容器の各々から第1の容器への処理液の移送を行う処理液移送手段と、流路の少なくとも一部を経由して第1の容器に無菌状態の気体を移送する気体移送手段と、を含む。第1の容器に無菌状態の気体が移送されている間、第1の容器に移送された処理液は、第1の容器内に保持される。
開示の技術に係る処理装置によれば、気体移送手段が、流路を経由して第1の容器に無菌状態の気体を移送するので、生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるリスクを抑制しつつ、流路内における処理液の残留を抑制することが可能となる。
流路は、複数の第2の容器の各々に個別に接続された複数の個別流路と、複数の個別流路の各々と第1の容器とを接続する共通流路と、を含んでいてもよい。この態様によれば、全ての流路を個別流路とする場合と比較して、流路の全長を短くすることができる。
無菌状態の気体は、複数の第2の容器の各々に処理液と共に封入されていてもよく、この場合、気体移送手段は、第2の容器に封入された無菌状態の気体を、当該第2の容器に接続された個別流路及び共通流路を経由して第1の容器に移送してもよい。この態様によれば、第2の容器の各々に封入された無菌状態の気体によって、流路内に残留する処理液を第1の容器に移送することができる。更に、共通流路に残留する処理液のみならず、個別流路に残留する処理液をも第1の容器に移送することが可能となる。
複数の第2の容器の各々に封入されている無菌状態の気体の体積は、複数の第2の容器の個々の第2容器から第1の容器までの流路における共通流路区間の体積の総和よりも大きいことが好ましい。これにより、個別流路及び共通流路内に残留する処理液の処理容器への移送を、より確実に行うことができる。
開示の技術に係る処理装置は、無菌状態の気体が封入され、且つ共通流路と個別流路との接続部に接続された密閉容器を更に含んでいてもよく、この場合、気体移送手段は、密閉容器に封入された無菌状態の気体を、共通流路を経由して第1の容器に移送してもよい。この態様によれば、密閉容器に封入された無菌状態の気体によって、流路内に残留する処理液を第1の容器に移送することができる。
密閉容器に封入されている無菌状態の気体の体積は、無菌状態の気体の第1の容器への移送において無菌状態の気体が通過する流路区間の体積よりも大きいことが好ましい。これにより、共通流路内に残留する処理液の処理容器への移送を、より確実に行うことができる。
開示の技術に係る処理装置は、個別流路の各々に設けられたバルブを更に含み得る。この態様によれば、複数の第2の容器の各々に封入された処理液の第1の容器への移送タイミングが制御可能となる。
気体移送手段は、複数の第2の容器のうちの少なくとも1つから第1の容器への処理液の移送が行われる度に、第1の容器に無菌状態の気体を移送してもよい。この態様によれば、処理液の移送が行われる度に、流路に残留する当該処理液を第1の容器に移送することができる。
開示の技術に係る処理装置は、第1の容器に振動を加える加振機構を更に含み得る。この態様によれば、第1の容器に収容されている処理液を撹拌することができ、当該処理液による生体組織に対する処理を促進させることができる。
開示の技術に係る処理装置は、第1の容器の周囲温度を制御する温度制御手段を更に含み得る。この態様によれば、第1の容器に収容されている生体組織及び生体組織から分離した細胞の温度環境を最適化することができる。
開示の技術によれば、生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるリスクを抑制しつつ、流路内における処理液の残留を抑制することが可能となる。
開示の技術の第1の実施形態に係る処理装置の構成の一例を示す正面図である。 開示の技術の実施形態に係る処理容器の構成の一例を示す図である。 開示の技術の実施形態に係る処理装置の構成の一例を示す側面図である。 開示の技術の実施形態に係る処理装置における流通系統の構成の一例を示す図である。 開示の技術の実施形態に係る処理装置の本体の構成の一例を示す斜視図である。 開示の技術の実施形態に係る制御部が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。 開示の技術の第2の実施形態に係る処理装置の構成の一例を示す正面図である。 開示の技術の第3の実施形態に係る処理装置の構成の一例を示す正面図である。 開示の技術の実施形態に係る処理液及び気体が封入された処理液封入容器を示す図である。 開示の技術の実施形態に係る処理装置における流路形態の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
[第1の実施形態]
図1は、開示の技術の第1の実施形態に係る処理装置1の構成の一例を示す正面図である。処理装置1は、処理対象の生体組織を収容するための処理容器20と、生体組織の分離処理に用いる処理液を封入するための複数の処理液封入容器10と、を有する。また、処理装置1は、処理容器20と複数の処理液封入容器10の各々とを接続する流路として、個別流路31及び共通流路32を有する。また、処理装置1は、処理液封入容器10から処理容器20への処理液の移送を行う処理液移送手段として送液ポンプ51を有する。処理装置1は、処理液封入容器10に封入された処理液を、処理容器20に収容された生体組織に添加することで、生体組織を構成する細胞外マトリックスを分解し、生体組織から細胞を分離する分離処理を自動で行う。
分離処理においては、例えば、生体組織を消毒する消毒液、消毒液を洗い流す洗浄液、生体組織を分解する少なくとも1種類の酵素液、及び酵素液を洗い流す酵素洗浄液が、処理液として使用される。なお、本実施形態においては酵素洗浄液として培養液を用いた。消毒液、洗浄液、酵素液、酵素洗浄液は、互いに異なる処理液封入容器10に封入される。換言すれば、複数の処理液封入容器10には、互いに異なる種類の処理液が封入される。複数の処理液封入容器10に封入された、互いに異なる種類の処理液は、所定の順序で処理容器20に移送される。互いに異なる種類の処理液は、処理液封入容器10、処理容器20及び流路内において、混合されないことが好ましい。
処理液封入容器10の各々は、外部からの細菌及びウイルス等の汚染源による汚染のリスクを抑制するために、使い捨ての密閉容器であることが好ましい。また、容積が可変であるシリンジまたはバッグを処理液封入容器10として好適に用いることができる。図1には、処理液封入容器10としてシリンジを使用する場合が例示されている。
複数の個別流路31の各々は、複数の処理液封入容器10の各々に対応して設けられている。個別流路31の各々は、一端が対応する処理液封入容器10に接続され、他端が共通流路32に接続されている。
個別流路31の各々と共通流路32との各接続部には、それぞれ、継手35が設けられている。なお、本明細書において、個別流路31とは、処理液封入容器10から継手35までの流路区間を意味する。また、本明細書において、共通流路32とは、各継手35から処理容器20までの流路区間を意味する。従って、互いに隣接する継手35と継手35との間の流路区間は、共通流路32に属する。処理容器20は、共通流路32の一端に接続されている。
個別流路31の各々の途中には、送液バルブ41が設けられている。すなわち、複数の送液バルブ41の各々は、複数の処理液封入容器10の各々に対応して設けられている。送液バルブ41の各々は、処理液封入容器10から処理容器20への処理液の移送を選択的に行うために使用される。すなわち、選択された送液バルブ41が開状態となり、且つ送液ポンプ51が動作することで、当該送液バルブ41に対応する処理液封入容器10に封入された処理液が、対応する個別流路31及び共通流路32を経由して処理容器20に移送される。送液バルブ41としてピンチバルブを好適に用いることができる。送液バルブ41としてピンチバルブを用いることで、個別流路31を通過する流体に接触することなく流路の開閉を行うことが可能となる。
個別流路31及び共通流路32は、管状部材によって構成されている。個別流路31及び共通流路32を構成する管状部材は、滅菌処理が可能であり、溶出物が少なく、且つ処理液に対する耐食性を有していることが好ましい。また、個別流路31及び共通流路32を構成する管状部材は、熱可塑性を有していることが好ましい。管状部材が熱可塑性を有することで、使用後に管状部材を熱溶着により密閉することができ、これにより、例えば生体組織または細胞が細胞及びウイルス等の汚染源に感染している場合に、汚染源が外部に流出するリスクを抑制することができる。個別流路31及び共通流路32を構成する管状部材として、例えば、シリコン製のチューブを用いることが可能である。
継手35は、処理液に対する耐食性を有することが好ましい。継手35の材料として、例えば、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、またはポリフッ化ビニリデンを用いることが可能である。また、継手35は、加熱滅菌処理及びガンマ線滅菌処理が可能であることが好ましく、継手35の材料としてポリフッ化ビニリデンが好適である。
送液ポンプ51は、共通流路32の途中に設けられている。送液ポンプ51としてチューブポンプを好適に用いることができる。送液ポンプ51としてチューブポンプを用いることで、共通流路32を通過する流体に接触することなく流体の移送を行うことが可能となる。
図2は、処理容器20の構成の一例を示す図である。処理容器20は、フィルタ23によって互いに隔てられた第1の気室21及び第2の気室22を有する。また、処理容器20は、第1の気室21にそれぞれ連通する第1の流通口24及び第2の流通口25と、第2の気室22に管路27を介して連通する第3の流通口26とを有する。管路27は、一端が第3の流通口26に接続され、第1の気室21及びフィルタ23を貫通し、他端が第2の気室22に達している。
第1の流通口24は、共通流路32の一端に接続されている。すなわち、処理液封入容器10の各々に封入された処理液は、第1の流通口24から処理容器20の第1の気室21内に流入する。第1の気室21は、処理対象の生体組織及び分離処理によって生体組織から分離された細胞が収容される空間である。第2の気室22は、使用済みの処理液が収容される空間である。
フィルタ23は、例えば、生体組織から分離される細胞のサイズよりも小さいサイズのフィルタ孔を有する。第1の気室21の気圧が、第2の気室22の気圧よりも低い状態を維持することで、処理容器20に流入した処理液を、第1の気室21に留めることが可能である。一方、第2の気室22の気圧を、第1の気室21の気圧よりも低くすることで、第1の気室21から第2の気室22に処理液を移送することが可能である。
第2の流通口25には、排気流路33の一端が接続されている。排気流路33の途中には排気バルブ42が設けられている。排気バルブ42は、処理容器20に処理液を移送する場合に開状態とされる。これにより、処理容器20に処理液を移送している間、処理容器20内の気体が排気流路33を経由して排出され、第1の気室21の気圧が大気圧に維持される。一方、フィルタ23を介して第1の気室21から第2の気室22へとわずかに漏出する処理液により、第2の気室22の気圧は大気圧よりも高い状態となる。そのため、第1の気室21の気圧は第2の気室22の気圧よりも低い状態が維持される。なお、排気流路33の他端は、大気開放とすることが可能であるが、処理容器20内に収容された生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるリスクを抑制するための措置をとることが好ましい。例えば、排気流路33の他端に無菌フィルタを取り付けてもよい。また、排気流路33の他端に、処理容器20から排出された気体を流入させるバッグ等の密閉容器を接続してもよい。
第3の流通口26には、排液流路34の一端が接続されている。排液流路34の他端には、廃液タンク60が接続されている。排液流路34の途中には、排液ポンプ52及び排液バルブ43が設けられている。排液バルブ43が開状態となり、且つ排液ポンプ52が動作することで、第1の気室21と第2の気室22とは第1の気室21に滞留している処理液により空気に対して非連通状態とされているので、第2の気室の気圧が第1の気室の気圧に対して低くなることにより、第1の気室21に滞留している処理液は、第2の気室22側に落下(移動)するとともに、第3の流通口26及び排液流路34を経由して廃液タンク60に移送される。
共通流路32の、送液ポンプ51と処理容器20との間の部位には、気液判別センサ50Aが設けられている。また、排液流路34の、処理容器20と排液ポンプ52との間の部位には、気液判別センサ50Bが設けられている。気液判別センサ50A及び50Bは、それぞれ、流路を流れる流体が、液体であるか気体であるかを判別し、判別結果を示す判別信号を、後述する制御部80(図3参照)に供給する。気液判別センサ50A及び50Bは、流路を流れる流体が、液体であるか気体であるかの判別を、例えば、流路内に照射されたレーザ光の屈折角に基づいて行うものであってもよい。
共通流路32の、処理容器20側の端部とは反対側の端部には、送気流路36を介して密閉容器11が接続されている。すなわち、密閉容器11は、個別流路31と共通流路32との接続部に接続されている。密閉容器11には、無菌状態の気体が封入される。密閉容器11として、処理液封入容器10と同じ形態の容器を用いることが可能である。図1には、密閉容器11としてシリンジを使用する場合が例示されている。密閉容器11に封入される気体は、細胞毒性を有さない気体であることが好ましく、例えば、酸素を含有した混合気体または空気であってもよい。送気流路36の途中には送気バルブ44が設けられている。
送気バルブ44が開状態となり、且つ送液ポンプ51が動作することで、密閉容器11に封入された無菌状態の気体が送気流路36及び共通流路32を経由して処理容器20に移送される。共通流路32を流通する気体は、共通流路32と個別流路31との各接続部を通過する。このように、密閉容器11に封入された無菌状態の気体を処理容器20に移送することで、共通流路32内に残留する処理液が、無菌状態の気体と共に処理容器20に移送される。密閉容器11に封入される気体の体積は、個々の処理液封入容器10から処理容器20までの流路における共通流路区間の体積の総和よりも大きいことが好ましい。すなわち、密閉容器11に封入される気体の体積は、処理液封入容器10の各々につらなる個々の継手35から処理容器20までの流路の体積を合計したものよりも大きいことが好ましい。これにより、共通流路32内に残留する処理液の処理容器20への移送を、より確実に行うことができる。
図3は、処理装置1の構成の一例を示す側面図である。処理装置1は、処理容器20に振動を加える加振機構70を有する。加振機構70は、モータ71と、モータ71の回転軸72に接続されたカム73と、カム73に接触するように配置されたカムフォロア74と、カムフォロア74に接続され、カム73の回転動作に伴って、直線往復動作を行う振動ステージ75と、を含んで構成されている。モータ71の駆動制御は、制御部80によって行われる。振動ステージ75には、処理容器20を保持する保持部76が搭載されている。振動ステージ75が、直線往復動作を行うことで、保持部76に保持された処理容器20に振動が加えられる。制御部80、モータ71、カム73及びカムフォロア74は、筐体81の内部に収容されている。
保持部76には、ヒータ77及び温度センサ78が埋設されている。保持部76は、金属等の熱伝導率の比較的高い材料で構成されており、ヒータ77から発せられた熱を処理容器20に伝えるヒートブロックとしても機能する。温度センサ78は、例えば、熱電対を含んで構成され、保持部76の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を制御部80に供給する。制御部80は、温度センサ78からの温度検出信号に基づいてヒータ77の出力を制御する。制御部80は、保持部76の温度が所定の温度(例えば37℃)を維持するようにヒータ77を制御する。処理容器20が温度制御された保持部76に保持されることで、処理容器20の周囲温度が、一定(例えば37℃)に保たれる。
制御部80は、モータ71及びヒータ77の制御に加え、送液バルブ41、送気バルブ44、排気バルブ42及び排液バルブ43の開閉制御、並びに送液ポンプ51及び排液ポンプ52の駆動制御も行う。
図4Aは、複数の処理液封入容器10、密閉容器11、処理容器20及び廃液タンク60を、流路を介して接続して構成される、処理装置1の流通系統2の構成の一例を示す図である。図4Bは、処理装置1の本体3の構成の一例を示す斜視図である。流通系統2は、図4Aに示すように、複数の処理液封入容器10、密閉容器11、処理容器20及び廃液タンク60を、流路を介して接続した状態のまま、本体3に着脱可能である。これにより、流路を構成する管状部材と継手35を外すことなく、流通系統2の各構成要素に対して加熱滅菌処理及びγ線照射滅菌処理を行うことが可能となる。また、滅菌処理後に、流通系統2を本体3にそのまま取り付けることができる。このように、処理装置1の使用時及びメンテナンス時を通して、流通系統2の各構成要素の接続を維持することで、流通系統2の各構成要素が汚染源に暴露されるリスクを抑制することができる。
図5は、生体組織から細胞を分離する分離処理を処理装置1において実施する場合に、制御部80が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、複数の処理液封入容器10の各々には、互いに異なる種類の処理液が封入されているものとする。処理容器20の第1の気室21には、処理対象の生体細胞が収容されているものとする。密閉容器11には、無菌状態の気体が封入されているものとする。複数の送液バルブ41の各々は、制御部80において、識別番号N(Nは自然数)により識別されるものとする。初期状態において、送液バルブ41、排気バルブ42、排液バルブ43及び送気バルブ44がそれぞれ閉状態であり、送液ポンプ51及び排液ポンプ52がそれぞれ停止状態であるものとする。
ステップS1において、制御部80は送液バルブ41の識別番号Nの設定値を1にセットする。これにより、識別番号1に対応する送液バルブ41が選択される。ステップS2において、制御部80は排気バルブ42を開状態に制御する。ステップS3において、制御部80は識別番号1に対応する送液バルブ41を開状態に制御する。ステップS4において、制御部80は送液ポンプ51の動作を開始させる。これにより、識別番号1に対応する処理液封入容器10に封入されている処理液が、対応する個別流路31及び共通流路32を経由して処理容器20に移送される。処理液を処理容器20に移送する際に、排気バルブ42を開状態とし且つ排液バルブ43を閉状態としておくことで、処理容器20への処理液の流入に伴って第1の気室21内の気体が排気流路33を経由して処理容器20の外部に排出される。これにより、第1の気室21の気圧が第2の気室22の気圧よりも低い状態を形成することができ、処理容器20に流入した処理液を、第1の気室21に滞留させることができる。すなわち、第1の気室21において、生体組織を処理液に浸漬することができる。
ステップS4Aにおいて、制御部80は気液判別センサ50Aから供給される判別信号をモニタすることにより処理液の送液状態を検出する。ステップS5において、制御部80は、処理液の送液が完了したか否かを判定する。制御部80は、気液判別センサ50Aから供給される判別信号により、共通流路32を流れる流体が液体から気体に変化したものと判定した場合に、処理液の送液が完了したものと判定する。制御部80は、処理液の送液が完了したと判定すると処理をステップS6に移行する。
ステップS6において、制御部80は識別番号1に対応する送液バルブ41を閉状態に制御する。ステップS7において、制御部80は送気バルブ44を開状態に制御する。このとき送液ポンプ51は稼働状態を維持している。これにより、密閉容器11に封入されている無菌状態の気体が、共通流路32を経由して処理容器20に移送される。密閉容器11に封入されている無菌状態の気体は、共通流路32と個別流路31の各接続部を通過して処理容器20に達する。このように、処理液の送液を行った後に、密閉容器11に封入されている無菌状態の気体を処理容器20に移送することで、ステップS7Aにおいて共通流路32に残留している処理液は、密閉容器11から排出された無菌状態の気体によって押し流され、無菌状態の気体と共に処理容器20に流入する。
制御部80は、送気バルブ44を開状態に制御してから所定時間が経過すると、ステップS8において、制御部80は送気バルブ44を閉状態に制御する。これにより、密閉容器11に封入されている無菌状態の気体の処理容器20への移送が停止する。なお、上記の所定時間は、密閉容器11から排出された無菌状態の気体が処理容器20に到達するのに必要な時間に設定される。ステップS9において、制御部80は送液ポンプ51の動作を停止させる。ステップS10において、制御部80は排気バルブ42を閉状態に制御する。この時、生体組織及び処理液が第1の気室21に収容されている状態が維持されている。
ステップS11において、制御部80はモータ71の駆動を開始させることで、加振機構70の動作を開始させる。これにより、処理容器20に収容されている処理液が撹拌され、当該処理液による生体組織に対する処理が促進される。
ステップS12において、制御部80は加振機構70の動作を開始してから所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過したと判定すると、処理をステップS13に移行する。ステップS13において、制御部80はモータ71の駆動を停止させることで、加振機構70の動作を停止させる。これにより、処理容器20に収容された処理液の撹拌処理が終了する。
ステップS14において、制御部80は排気バルブ42を開状態に制御する。ステップS15において、制御部80は排液バルブ43を開状態に制御する。ステップS16において、制御部80は排液ポンプ52の動作を開始させる。ステップS14からステップS16までの処理により、第2の気室22の気圧が第1の気室21の気圧よりも低くなり、第1の気室21に滞留していた処理液は、フィルタを透過して第2の気室22に移送される。その後、処理液は、排液流路34を経由して廃液タンク60に移送される。
ステップS16Aにおいて、制御部80は気液判別センサ50Bから供給される判別信号をモニタすることにより処理液の送液状態を検出する。ステップS17において、制御部80は、処理容器20から廃液タンク60への処理液の送液が完了したか否かを判定する。制御部80は、気液判別センサ50Bから供給される判別信号により、排液流路34を流れる流体が、液体から気体に変化したものと判定した場合に、処理液の送液が完了したものと判定する。制御部80は、処理液の送液が完了したと判定すると処理をステップS18に移行する。ステップS18において、制御部80は排液バルブ43を閉状態に制御する。ステップS19において、制御部80は排液ポンプ52の動作を停止させる。
ステップS20において、制御部80は、処理液封入容器10の各々に封入されている全ての処理液について、上記のステップS2からステップS19までの処理が完了したか否かを判定する。制御部80は、例えば、送液バルブ41の現在の識別番号Nの設定値が、処理液封入容器10の数に相当する最大値であるか否かを判定することにより上記の判定を行ってもよい。制御部80は、全ての処理液について、上記のステップS2からステップS19までの処理が完了したと判定した場合には、本ルーチンを終了させる。一方、制御部80は、全ての処理液について、上記のステップS2からステップS19までの処理が完了していないと判定した場合には、処理をステップS21に移行させる。
ステップS21において、制御部80は、送液バルブ41の識別番号Nの設定値を、1つ増加させ、処理をステップS2に戻す。これにより、識別番号2に対応する送液バルブ41が選択され、識別番号2に対応する処理液封入容器10に封入された処理液について上記のステップS2からステップS19までの処理が実施される。上記のステップS2からステップS19までの処理は、処理液封入容器10の各々に封入されている全ての処理液について処理が完了するまで繰り返し実施される。
以上の説明から明らかなように、開示の技術の実施形態に係る処理装置1によれば、互いに異なる種類の処理液を、処理液封入容器10から処理容器20に順次移送する処理、及び使用済みの処理液を処理容器20から廃液タンク60に移送する処理を自動で行うことができる。これらの送液において、処理液が通過する流路は、閉鎖系を形成しているので、生体組織及び生体組織から分離した細胞が、細菌及びウイルス等の汚染源に暴露されるリスクを抑制することができる。
また、個別流路31と共通流路32との接続部に接続された密閉容器11には、無菌状態の気体が封入されており、処理液封入容器10から処理容器20に処理液が移送された後、密閉容器11に封入された無菌状態の気体が処理容器20に移送される。これにより、共通流路32に残留している処理液は、密閉容器11から排出された無菌状態の気体によって押し流され、無菌状態の気体と共に処理容器20に流入する。このように、流路内に残留する処理液を処理容器20に移送することで、生体組織に添加される処理液の量が不足するリスクを抑制することができるので、処理液の不足による処理不良が発生するリスクを抑制することができる。また、流路内に残留する処理液は、密閉容器11に封入された無菌状態の気体によって移送されるので、生体組織及び生体組織から分離した細胞が、細菌及びウイルス等の汚染源によって汚染されるリスクを抑制することができる。
また、互いに異なる種類の処理液を、処理液封入容器10から処理容器20に順次移送し、さらに、共通流路32に残留している処理液をも処理容器20に移送することで、複数の処理液封入容器10の各々に封入された互いに異なる種類の複数の処理液が混合されるリスクを抑制することできる。
以上のように、開示の技術の実施形態に係る処理装置1によれば、生体組織及び生体組織から分離した細胞が汚染源に暴露されるリスクを抑制しつつ、流路内における処理液の残留を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態に係る処理装置1によれば、密閉容器11に封入された気体は、個別流路31の各々を通過しないので、個別流路31の各々に残留する処理液については、処理容器20に移送することが困難である。従って、処理液封入容器10の各々には、対応する個別流路31に残留する処理液の量に相当する分量だけ余分に処理液を封入しておくことが好ましい。
[第2の実施形態]
図6は、開示の技術の第2の実施形態に係る処理装置1Aの構成の一例を示す正面図である。処理装置1Aは、送気流路36に接続された無菌フィルタ90を有する。すなわち、無菌フィルタ90は、第1の実施形態に係る処理装置1における密閉容器11(図1参照)の代替として用いられる。
処理装置1Aにおいて、送気バルブ44を開状態としつつ送液ポンプ51を稼働させると、外部から無菌フィルタ90を介して共通流路32に気体が導入され、処理容器20に移送される。これにより、共通流路32に残留している処理液は、無菌フィルタ90介して導入された無菌状態の気体によって押し流され、無菌状態の気体と共に処理容器20に流入する。
第2の実施形態に係る処理装置1Aによれば、第1の実施形態に係る処理装置1と同様の効果を得ることができる。
[第3の実施形態]
図7は、開示の技術の第3の実施形態に係る処理装置1Bの構成の一例を示す正面図である。処理装置1Bは、第1の実施形態に係る処理装置1(図1参照)が備える送気流路36、送気バルブ44及び密閉容器11を含まない点が、第1の実施形態に係る処理装置1(図1参照)と異なる。
第3の実施形態に係る処理装置1Bにおいては、複数の処理液封入容器10の各々には、図8に示すように、無菌状態の気体101が処理液100と共に封入されている。
処理装置1Bによれば、処理液封入容器10に封入された処理液100が、処理容器20に移送された後、当該処理液封入容器10に封入された無菌状態の気体101が、対応する個別流路31及び共通流路32を経由して処理容器20に移送される。これにより、当該処理液封入容器10に対応する個別流路31及び共通流路32に残留している処理液は、処理液封入容器10から排出された無菌状態の気体によって押し流され、無菌状態の気体と共に処理容器20に流入する。
複数の処理液封入容器10のそれぞれに封入される無菌状態の気体101の体積は、気体101の処理容器20への移送において気体101が通過する流路区間の体積よりも大きいことが好ましい。すなわち、各処理液封入容器10に封入される気体101の体積は、対応する個別流路31の体積と、当該個別流路31と共通流路32との接続部から処理容器20に至る区間における共通流路32の体積とを合わせた体積よりも大きいことが好ましい。上記の体積を有する無菌状態の気体101は、複数の処理液封入容器10のそれぞれに封入される。これにより、個別流路31及び共通流路32内に残留する処理液の処理容器20への移送を、確実に行うことができる。
第3の実施形態に係る処理装置1Bによれば、処理液封入容器10の各々に封入された無菌状態の気体は、共通流路32のみならず、対応する個別流路31をも通過するので、共通流路32に残留する処理液のみならず、当該個別流路31に残留する処理液をも処理容器20に移送することができる。
また、第3の実施形態に係る処理装置1Bによれば、無菌状態の気体101が、処理液封入容器10の各々に封入されるので、第1の実施形態に係る処理装置1(図1参照)が備える密閉容器11、送気流路36及び送気バルブ44が不要であり、装置構成を簡略化することができる。
なお、第1の実施形態に係る処理装置1において、無菌状態の気体が、密閉容器11に封入されると共に、複数の処理液封入容器10の各々に封入されていてもよい。
また、上記第1乃至第3の実施形態において、処理液封入容器10の各々から処理容器20への処理液の移送を、共通流路32の途中に設けられた送液ポンプ51により行う態様を例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、複数の処理液封入容器10の各々が、シリンジによって構成されている場合、処理液封入容器10の各々から処理容器20への処理液の移送を、複数の処理液封入容器10の各々に付随して設けられたシリンジポンプによって行ってもよい。
また、上記第1乃至第3の実施形態において、複数の個別流路31と共通流路32との接続部が、個別流路31毎に複数存在する態様を例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、図9に簡略化して示すように、複数の個別流路31と共通流路32との接続部は、1つであってもよい。
なお、処理容器20は、開示の技術における第1の容器の一例である。処理液封入容器10は、開示の技術における第2の容器の一例である。送液ポンプ51は、開示の技術における処理液移送手段の一例であり、開示の技術における気体移送手段の一例である。
なお、2018年2月20日に出願された日本国特許出願2018−027882の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (12)

  1. 処理対象の生体組織を収容するための第1の容器と、
    前記生体組織の処理に用いる処理液を封入するための複数の第2の容器と、
    前記第1の容器と前記複数の第2の容器の各々とを接続する流路と、
    前記複数の第2の容器の各々から前記第1の容器への前記処理液の移送を行う処理液移送手段と、
    前記流路の少なくとも一部を経由して前記第1の容器に無菌状態の気体を移送する気体移送手段と、
    を含み、
    前記第1の容器に前記無菌状態の気体が移送されている間、前記第1の容器に移送された処理液は、前記第1の容器内に保持される
    処理装置。
  2. 前記流路は、
    前記複数の第2の容器の各々に個別に接続された複数の個別流路と、
    前記複数の個別流路の各々と前記第1の容器とを接続する共通流路と、
    を含む
    請求項1に記載の処理装置。
  3. 前記無菌状態の気体は、前記複数の第2の容器の各々に前記処理液と共に封入され、
    前記気体移送手段は、前記第2の容器に封入された前記無菌状態の気体を、当該第2の容器に接続された個別流路及び前記共通流路を経由して前記第1の容器に移送する
    請求項2に記載の処理装置。
  4. 前記複数の第2の容器の各々に封入されている前記無菌状態の気体の体積は、前記無菌状態の気体の前記第1の容器への移送において前記無菌状態の気体が通過する流路区間の体積よりも大きい
    請求項3に記載の処理装置。
  5. 前記無菌状態の気体が封入され、且つ前記共通流路と前記個別流路との接続部に接続された密閉容器を更に含み、
    前記気体移送手段は、前記密閉容器に封入された前記無菌状態の気体を、前記共通流路を経由して前記第1の容器に移送する
    請求項2に記載の処理装置。
  6. 前記密閉容器に封入されている前記無菌状態の気体の体積は、前記複数の第2の容器の個々の第2容器から前記第1の容器までの流路における共通流路区間の体積の総和よりも大きい
    請求項5に記載の処理装置。
  7. 前記個別流路の各々に設けられたバルブを更に含む
    請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の処理装置。
  8. 前記気体移送手段は、前記複数の第2の容器のうちの少なくとも1つから前記第1の容器への前記処理液の移送が行われる度に、前記第1の容器に前記無菌状態の気体を移送する
    請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の処理装置。
  9. 前記第1の容器に振動を加える加振機構を更に含む
    請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の処理装置。
  10. 前記第1の容器の周囲温度を制御する温度制御手段を更に含む
    請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の処理装置。
  11. 前記第1の容器に接続された排気流路と、
    前記排気流路に設けられた排気バルブと、
    を含み、
    前記第1の容器に前記処理液及び前記無菌状態の気体が移送されている間、前記排気バルブは開状態とされる
    請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の処理装置。
  12. 処理対象の生体組織を収容するための第1の容器と、前記生体組織の処理に用いる処理液を封入するための複数の第2の容器と、前記第1の容器と前記複数の第2の容器の各々とを接続する流路と、を含む処理装置の動作方法であって、
    前記生体組織が収容された前記第1の容器に、前記複数の第2の容器の各々から前記処理液の移送を行い、
    前記第1の容器に移送された処理液を前記第1の容器内に保持しつつ、前記流路の少なくとも一部を経由して前記第1の容器に無菌状態の気体を移送する
    動作方法。
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