JP6985969B2 - 光測定装置及びこれを備えた歯ブラシ - Google Patents

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Description

本発明は、光測定装置及びこれを備えた歯ブラシに関する。
歯磨きの際には、歯垢の付着量をモニターしながらその部位を集中して磨くと短い時間で効果的に歯垢を除去できることから、従来、いくつかの光学的な歯垢検出方法が提案されている。代表的なものは、歯垢に含まれる細菌あるいはう蝕部の細菌が口腔内環境で蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(以下、PPIXという)を産生することを利用するものである。例えば、特許文献1〜5には、歯に特定の波長の励起光を照射し、蛍光物質が発する蛍光を検出することで歯垢の量あるいはう蝕の程度を定量する蛍光測定法が記載されている。
特許文献6には、液状試料を分析試験ストリップに導入し、試験ストリップの両端間に電圧信号を印加して合成電流信号を測定し、測定した合成電流信号を用いて同相及び直角位相信号を連続的に発生させ、同相及び直角位相信号に基づき位相シフト測定ブロックを用いて液状試料に対応する位相シフトを自動的に測定する方法が記載されている。同相及び直角位相信号を発生させる工程では、合成電流信号に対応する合成電圧信号を位相検波器に供給し、第1の位相を有する第1の基準信号を位相検波器に供給し、次いで、第1の位相とは90°異なる第2の位相を有する第2の基準信号を位相検波器に供給する。
特公平6−73531号公報 特表2002−515276号公報 特開2011−131057号公報 特許第3737579号公報 国際公開第2016/140199号 特開2014−235168号公報
歯に付着した歯垢が少量の場合、その付着部位を励起光で照射した際に得られる蛍光の中では、歯の自家蛍光の強度が強く、歯垢由来の蛍光は微弱である。歯垢からの蛍光の波長帯域(630〜680nm)で見ると、歯の強い自家蛍光に歯垢由来の弱い蛍光が重畳している状態であり、それらを効果的に分離して検出できる方式が求められる。さらに、その機構を歯ブラシに組み込むことが容易なシンプルな構成が求められている。
室内の照明などの影響を除去して強度が弱い歯垢由来の蛍光を検出するためには、蛍光強度から蛍光物質量を演算する制御部にロックインアンプを使用することが望ましい。特に、2相のロックインアンプを使用すれば、歯垢量と歯の蛍光物質量を同時に求めることができ、歯と検出部との距離による感度変化を補正することもできる。しかしながら、ロックインアンプは高価であり、AD変換回路を含めて2組の回路が必要となることから、歯ブラシサイズの光測定装置を実現するには、コスト及びサイズの点で障害となる。そこで、1相のロックインアンプを時分割駆動することで等価的に2相のロックインアンプとして使用することが考えられるが、単純に時分割駆動するだけでは各位相でのデータ量が半分になり、さらに光源の点灯のDutyを50%よりも小さくする必要があるので、測定精度が低下する。
本発明の目的は、少量の歯垢を確実に検出でき、しかも歯ブラシに容易に組み込むことができる小型でシンプルな構成の光測定装置を提供することである。
第1の波長の光を出射する第1の光源と、第1の波長よりも長波長である第2の波長の光を出射する第2の光源と、試料に第1の波長の光を照射したときに発生する第1の蛍光強度、及び試料に第2の波長の光を照射したときに発生する第2の蛍光強度を検出する検出部と、交互に繰り返されそれぞれが基準信号の周期よりも長い第1及び第2の期間のうち、第1の期間では基準信号に従い第1及び第2の光源を交互に発光させ、第2の期間では基準信号に従い第2の光源のみを発光させる発光制御部と、基準信号に従い位相検波を行って、第1の期間における第1及び第2の蛍光強度に応じた第1の出力信号、並びに第2の期間における第2の蛍光強度に応じた第2の出力信号を生成する位相検波器と、第1及び第2の出力信号を用いた演算により測定対象の蛍光物質量を算出する制御回路とを有することを特徴とする光測定装置が提供される。
上記の光測定装置では、第1の波長の光は、歯及び歯垢に含まれる蛍光物質を励起させて、歯及び歯垢に由来する蛍光を発生させ、第2の波長の光は、歯垢に含まれる蛍光物質に対する励起効率が第1の波長の光よりも低いことが好ましい。
上記の光測定装置では、第1の波長は350nmから430nmの範囲内であり、第2の波長は435nmから500nmの範囲内であることが好ましい。
上記の光測定装置では、第1の期間は第2の期間よりも長いことが好ましい。
上記の光測定装置は、少量の歯垢を確実に検出でき、しかも歯ブラシに容易に組み込むことができる。
紫色光を清浄な歯及び歯垢が付着した歯に照射した際にそれぞれの歯から得られる光のスペクトルを示すグラフである。 青色光を清浄な歯及び歯垢が付着した歯に照射した際にそれぞれの歯から得られる光のスペクトルを示すグラフである。 蛍光測定装置1の構成図である。 歯ブラシ型の蛍光測定装置400の構成図である。 混色部4の構成例を示す図である。 歯ブラシヘッド41の内部を示す構成図である。 比較例の制御部310の回路構成を示すブロック図である。 制御部310の動作タイミングを示すタイミングチャートである。 実施例の制御部300の回路構成を示すブロック図である。 制御部300の動作タイミングを示すタイミングチャートである。 図10の動作タイミングの変形例を示すタイミングチャートである。 蛍光測定装置1,400を用いた測定と制御部300,310による出力信号の差異を説明する図である。
以下、図面を用いて、光測定装置及び光測定方法について詳細に説明する。ただし、本発明は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
最初に光測定方法の原理を図1及び図2を用いて説明する。この光測定方法は、2つの異なる波長を有する励起光を交互に同一の歯に照射し、それぞれの波長の励起光により歯で生じた蛍光を歯垢に由来する蛍光波長領域で検出し、その蛍光強度の比あるいは差を用いることで、歯の自家蛍光に重畳した測定対象である歯垢に由来した蛍光を分離して検出するものである。
図1は、第1の波長として405nmのピーク波長を有する紫色光を清浄な歯及び歯垢が付着した歯に照射した際にそれぞれの歯から得られる光のスペクトルを示すグラフである。グラフの横軸は波長λ(nm)を示し、縦軸は第1の蛍光強度である蛍光強度Iを示す。細線は清浄な歯から得られるスペクトルS1を示しており、太線は歯垢が付着した歯から得られるスペクトルS1’を示している。405nm付近のピークE1は、照射された405nmの紫色光が歯面で反射あるいは散乱されることにより検出された励起光である。500nm付近にピークP0をもつブロードな蛍光は歯の自家蛍光である。635nm及び675nm付近のピークP1,P2は、歯垢に含まれる蛍光物質PPIXから得られる蛍光スペクトルである。
清浄な歯から得られるスペクトルS1では歯垢由来のピークP1,P2は観察されないが、歯垢が付着した歯から得られるスペクトルS1’では歯垢由来の蛍光のピークP1,P2が観察される。同時に、スペクトルS1’は、スペクトルS1に比べて全波長域で一定の減衰を示している。これは、付着した歯垢によって励起光が吸収されるために生じる減衰であり、歯垢量に依存し、波長によらずほぼ一定の減衰を示す。
歯垢由来の蛍光のピークP1をより精度よく測定するためには、下記の数式(1)に示すように、その波長におけるスペクトル強度p1’から歯の自家蛍光の成分t1’を引いた歯垢由来の蛍光物質量Δpを求める必要がある。
Δp = p1’ − t1’ ・・・(1)
つまり、歯垢が付着した状態で、かつ歯垢由来の蛍光を生じさせずに、歯の自家蛍光の成分t1’を求める必要がある。このような条件について鋭意検討した結果、第1の波長、ここでは405nmよりも長波長の第2の波長の光源を用いた際のスペクトルを取得すればよいことがわかった。
図2は、第2の波長として465nmのピーク波長を有する青色光を清浄な歯及び歯垢が付着した歯に照射した際にそれぞれの歯から得られる光のスペクトルを示すグラフである。図1と同様に、グラフの横軸は波長λ(nm)を示し、縦軸は第2の蛍光強度である蛍光強度Iを示す。細線は清浄な歯から得られるスペクトルS2を示しており、太線は歯垢が付着した歯から得られるスペクトルS2’を示している。
波長465nmの青色光を清浄な歯及び歯垢が付着した歯に照射した場合には、歯の自家蛍光のブロードなピークP0は波長405nmの紫色光を照射した場合と同様に観察されるが、PPIXの励起が弱くなるため、歯垢由来のピークP1,P2は観察されない。したがって、第2の波長で励起した際の歯の自家蛍光の成分t2’を第1の波長で励起した際の自家蛍光の成分t1’として代用することが可能であり、歯垢由来の蛍光物質量Δpは下記の数式(2)で近似できる。
Δp ≒ p1’ − t2’ ・・・(2)
近似が成立するためには、第1の波長及び第2の波長の励起光の強度を事前に調整して自家蛍光の成分t1’とt2’を揃えておく必要があるが、歯垢量に対して自家蛍光の減衰が比例関係にあることを利用して、清浄な歯で測定された自家蛍光の成分t1とt2が一致するように励起光の強度を調整しておけばよい。あるいは、あらかじめ清浄な歯について自家蛍光の成分t1とt2の比t1/t2を測定しておけば、下記の数式(3)のように補正することが可能である。
Δp ≒ p1’ − t2’×(t1/t2) ・・・(3)
以上説明した原理により、2つの異なる波長を有する励起光を交互に歯に照射し、それぞれの波長の励起光により歯で生じた蛍光を歯垢由来の蛍光波長領域で検出し、それらの蛍光強度である第1の蛍光強度と第2の蛍光強度との比あるいは差を用いることで、歯の自家蛍光に重畳した歯垢に由来した蛍光を分離して検出することが可能となる。
次に、上記の光測定方法を実現するための蛍光測定装置を説明する。図3は、蛍光測定装置1の構成図である。蛍光測定装置1は、検査光として蛍光を利用する光測定装置の一例である。蛍光測定装置1は、歯垢に含まれる蛍光物質を励起するための光源部100と、歯の表面で生じた蛍光の強度を検出するための検出部200と、計測された蛍光強度から歯垢の付着量を求めて利用者に報知する制御部300との3つのブロックから構成されている。
光源部100は、第1の波長で発光する第1の光源2、第2の波長で発光する第2の光源3、混色部4、出射光用光学フィルター5、出射光用光導波路6及び出射光用集光部7を有している。混色部4、出射光用光学フィルター5、出射光用光導波路6及び出射光用集光部7は、第1の光源2及び第2の光源3からの光を測定対象の歯に照射するための光経路部分を構成する。
第1の光源2及び第2の光源3としては、小型で安価なLED(発光ダイオード)や半導体レーザーを用いることができる。第1の光源2又は第2の光源3で発生する光の波長は、次のように選択される。第1の波長は、歯垢に含まれる蛍光物質に対する励起効率が高い波長を含み、第2の波長は第1の波長よりも長波長で、かつ励起効率が第1の波長よりも低いか、あるいはほぼゼロとなる波長に設定される。第1の波長は350nmから430nmの範囲内の波長であることが好ましく、第2の波長は435nmから500nmの範囲内の波長であることが好ましい。具体例として、第1の光源2をピーク波長が405nmの紫色LEDとし、第2の光源3をピーク波長が465nmの青色LEDとすることができる。
混色部4は、第1の光源2及び第2の光源3で発生した光を測定対象である歯に照射した際に色むらが生じないようにするために、光の照射面内での光強度分布を第1の波長の光と第2の波長の光との間で均一とする機能を有する。光強度分布が第1の波長の光と第2の波長の光とで一致していることが重要であり、光強度分布を持つこと自体は差し支えないため、混色部4の設計の自由度は比較的高くなる。
出射光用光学フィルター5は、第1の光源2と第2の光源3の光を通過させ、歯垢由来の蛍光波長領域をカットするフィルターであり、500nm以上の波長をカットする。出射光用光学フィルター5にショートパスフィルターを用いる場合、カットオフ波長は、第2の波長よりも十分長く、かつ歯垢に含まれる蛍光物質の蛍光波長よりも十分短波長に選べばよい。
出射光用光導波路6は、第1の光源2又は第2の光源3の光を測定対象の歯の付近まで減衰させずに運ぶためのものであり、その材質としては、例えばプラスチックやガラスが用いられる。また、出射光用光導波路6の外周をミラーコーティングして光漏れを防止することがより好ましい。また、出射光用光導波路6として、ライトパイプのようなミラーで囲まれた中空の光導波路を用いることもできる。
出射光用集光部7は、出射光用光導波路6中を伝播する光を歯の大きさ程度に集光して照射するためのレンズから構成される。第1の光源2又は第2の光源3からの励起光は、出射光用集光部7から、第1の照射光8又は第2の照射光9として歯10に照射される。
検出部200は、受光用集光部21、受光用光導波路22、受光用光学フィルター23及び光検出器24を有する。
受光用集光部21は、歯で生じた蛍光を含む検査光20を集光する。受光用光導波路22は、受光用集光部21と共に、集光された光を光検出器24まで伝播するための光経路部分を構成する。蛍光測定装置1を歯ブラシに組み込む際には、歯ブラシのブラシ部分を受光用光導波路22として、歯ブラシの先端を受光用集光部21としてもよい。
受光用光学フィルター23は、目的の蛍光以外の波長成分をカットするためのフィルターである。受光用光学フィルター23は、歯垢に含まれる蛍光物質が発する蛍光波長領域である620nmから690nmの範囲を除く波長領域をカットするように設定することが好ましい。特に短波長側では、直接歯で反射した光源からの光の反射光が強く現れるので、これらをカットできるように、受光用光学フィルター23にはシャープな減衰特性を持たせることが好ましい。歯垢からの蛍光スペクトルは630〜640nm付近と670〜680nm付近との2つの強いピークを有するので、受光用光学フィルター23として、これらの蛍光スペクトルの形状に近づけた透過率特性を有するバンドパスフィルターを使うことで、S/N比を向上させることができる。
制御部300は、制御回路30と報知部31とから構成されている。
制御回路30は、マイクロコンピュータにより構成され、第1の光源2及び第2の光源3の明るさと点灯時間を制御して、歯に対して2つの波長の光を交互に照射させる。このように、第1の光源2の点灯時間と第2の光源3の点灯時間とを分けることによって、それぞれの光が歯に照射されて得られる蛍光物質の蛍光を区別して受光することが可能となる。第1の光源2を点灯して得られた蛍光強度をP1とし、第2の光源3を点灯して得られた蛍光強度をP2として、制御回路30は、蛍光強度の比P1/P2、あるいは差(P1−P2)を求めることで、原理の項で説明したように、歯垢に含まれる蛍光物質量を求める。
報知部31は、求められた蛍光物質量を歯ブラシの利用者に報知する。この報知には、ブザー音や圧電素子を用いた電子音を用いてもよい。電子音の場合、蛍光物質量に応じて音の高さや大きさ、断続音のピッチを変えることで利用者にフィードバックすることができる。さらには、音声合成による音声メッセージや、音楽などを用いてもよい。あるいは、報知部31は、偏芯モーターを用いた振動報知や、LED点滅や色調を変えた光による報知、液晶表示による言語や図形、グラフによる報知を行ってもよい。さらに、報知部31に無線通信を併用し、携帯電話やパーソナルコンピュータなどの外部機器に報知情報や測定に関する情報を送信して、外部機器で使用者に報知してもよい。
制御部300は、2つの波長の光ごとに、検出した蛍光強度を記録し、それらを任意回数分だけ平均化処理してもよく、これによりノイズを軽減することができる。また、制御部300は、蛍光灯などの室内光の影響を避けるために、第1の光源2及び第2の光源3の点灯時間を商用電源の周期とは異なる時間に設定して、これにより照明光の影響を軽減することができる。
また、制御部300は、必要に応じて消灯を挟んで第1の光源2又は第2の光源3の発光を交互に照射してもよい。第1の光源2又は第2の光源3を点灯して取得した蛍光物質量から消灯して取得した蛍光物質量を減算することで、環境光の影響を軽減することが可能である。
図4(A)及び図4(B)は、歯ブラシ型の蛍光測定装置400の構成図である。
歯ブラシ型の蛍光測定装置400は、検査光として蛍光を利用する光測定装置の一例であり、歯ブラシヘッド41、柄部42及び握り部43から構成されている。第1の光源2及び第2の光源3は、握り部43内に設けられた回路基板44に制御回路30(図3を参照)、報知部31と共に搭載されている。第1の光源2及び第2の光源3からの光は、握り部43に設けられた混色部4及び出射光用光学フィルター5と、柄部42に設けられた長いテーパー形状の出射光用光導波路6aとを介して、歯ブラシヘッド41に導かれる。導かれた光は、歯ブラシヘッド41内でミラーなどの手段などを用いて方向が変えられ、歯ブラシヘッド41上の光照射部50から、励起光として歯面に対して照射される。歯で生じた蛍光は、歯ブラシヘッド41の光検出部51に配置された蛍光を透過する材質の複数のブラシ40を介して、光検出器24に導かれる。
蛍光測定装置400では、図4(B)に示すように、光照射部50は歯ブラシヘッドの中央に配置され、光検出部51は光照射部50に隣接して設けられている。しかしながら、配置はこの例に限らず、例えば、複数の光照射部50と複数の光検出部51とを歯ブラシヘッドに設けてもよいし、それらを直線状に交互に配置してもよい。
光検出器24で検出された蛍光は光電流に変換され、配線52を介して回路基板44に伝えられる。光電流から回路基板44内に設けられた制御回路30により蛍光物質量が求められ、その蛍光物質量が報知部31によりブザーや電子音などで利用者に報知される。
握り部43には、蛍光測定装置400を駆動するための電源として電池45が搭載されている。また、握り部43には2つのスイッチ46が設けられている。例えば、一方のスイッチ46を用いて蛍光測定機能をオン・オフすることができ、他方のスイッチ46を用いて、報知音を切り替えたり、蛍光の検出感度を調整したりすることができる。
図5(A)〜図5(C)は、混色部4の構成例を示す図である。歯ブラシ型の蛍光測定装置400では、第1の光源2又は第2の光源3から歯に照射される光の面内強度分布が変化しないことが重要であり、そのことが検出限界を決定する重要な指標となる。そのため、歯ブラシヘッド41に設けられた出射光用集光部7に光が達する段階で、照射光の面内強度分布に波長依存性がないことが必要である。混色部4は、照射光の面内強度分布の波長依存性をなくす作用を担う。
図5(A)は、テーパー形状のライトパイプを用いた混色部の構成例を示す図である。歯ブラシ型の蛍光測定装置400の柄部42から歯ブラシヘッド41に渡って出射光用光導波路6aとしてライトパイプを配置することで、長い光学経路を得ることができる。第1の光源2又は第2の光源3からの光は、ライトパイプ内で複数回の反射を繰り返すことで面内分布が均一化されるので、混色の効果を容易に高めることができる。つまり、出射光用光導波路6a自体が混色部として機能する。第1の光源2又は第2の光源3から斜めに出射した光62は複数回の反射を繰り返す一方、出射光用光導波路6aの端面に対してほぼ垂直に出射した光61は反射回数が少なくなるが、長い光学経路のため有効な混色が可能となる。
図5(A)に示すテーパー形状のライトパイプを出射光用光導波路6aとして用いることで、混色部4を別途設けなくても出射光用光導波路6aに混色部の機能をもたせることができ、簡便な構成で照射光の面内強度分布を均一に近づけることが可能となる。極端に斜めに出射した光はライトパイプ内での反射回数が多いため反射損失が無視できなくなるが、第1の光源2及び第2の光源3として出射角が狭い砲弾型LEDを使うことで、反射損失を減らし、同時に光結合効率を上げることができる。
ライトパイプは、ミラーを使った中空タイプでも、プラスチック製でもよい。プラスチック製の場合、外周に金属ミラーをコーティングすることで、光漏れを減少させることが可能である。ライトパイプの形状は、単純な直線形状でもテーパー状でもよいが、規則的なあるいは乱雑な反射面をパイプ内部に設けることで、混色の効果を容易に高めることが可能である。ライトパイプの断面形状は、丸型、楕円型、矩形、多角形などでもよく、そうした様々な形状のうちで、歯ブラシの形状及びデザインに合わせて適した構造を使い分けることも容易である。
図5(B)は、図5(A)に示す出射光用光導波路6aに混色部4が追加された形態の説明図である。図5(B)に示す例では、混色部4として、入射端面にマイクロレンズアレイ64が配置されたものが用いられている。こうして第1の光源2又は第2の光源3からの光を複数の点光源からの光67,69に変換することで、混色の効果がさらに高まる。
また、図5(B)に示す例では、第1の光源2及び第2の光源3としてLEDチップが、45度の反射ミラーを持ったミラー付き基板63に実装されている。この構造により、第1の光源2及び第2の光源3から出射する光が前方に導かれるので、出射角が狭まる。さらに、LEDチップを使うことで光源の間隔を狭くできるため、照射光の面内強度分布をより均一に近づけることが可能である。
図5(C)は、図5(A)に示す出射光用光導波路6aに別の構成の混色部4が追加された形態の説明図である。図5(C)に示す例では、混色部4として、第1の光源2及び第2の光源3からの出射光を散乱させる散乱体を含むものが用いられている。この混色部4は、光散乱粒子71を含む透明な樹脂で、ミラー付き基板63に搭載された第1の光源2及び第2の光源3を封止して形成されている。各光源からの光を多数の光散乱粒子71で多重に散乱させることで、照射光の面内強度分布を均一に近づけることができる。また、混色部4の出射端面にマイクロレンズアレイ64を追加してもよく、これにより混色の効果をさらに高めることが可能である。
図6は、歯ブラシヘッド41の内部を示す構成図である。出射光用光導波路6aを伝わる光は、歯ブラシヘッド41内のミラー6bで向きを変え、出射光用光導波路6cを介して、出射光用集光部7から歯10に向けて励起光として照射される。歯の表面に付着した歯垢及びその近辺の歯から生じた蛍光は、ブラシ40と受光用光学フィルター23を介して、光検出器24で検出される。ブラシ40の先端は、曲率を持たせることにより受光用集光部21として機能し、続くブラシ40は、受光用光導波路22として機能する。また、受光用光学フィルター23を取り囲むように遮光体23aが配置されており、遮光体23aは、環境光や励起光がブラシ40を介さずに直接受光用光学フィルター23に入射することを防ぐ。
受光用光学フィルター23とブラシ40の端面とをブラシ40及び受光用光学フィルター23の屈折率に近い屈折率を持つ光学接着剤で接着することで、散乱損失を防ぐことができる。また、受光用光学フィルター23の機能を有する光学接着剤を使って、ブラシ40の端面と光検出器24の開口部24aとを接着することもできる。さらに、ブラシ40の素材に光学フィルターとして機能するような素材を用いることも可能である。その際は、ブラシ40の端面は、光検出器24の開口部24aに配置され、光学接着剤で接着される。
蛍光を用いて歯垢を検出するには、上記の通り、歯からの蛍光と歯垢からの蛍光を分離して求める必要がある。例えば、ピーク波長が405nmの紫色光で歯を励起すると、歯垢由来の蛍光と歯の自家蛍光の両方が発生するが、ピーク波長が465nmの青色光で歯を励起すると、歯の自家蛍光だけが発生する。そこで、歯垢量を求めるには、紫色光で歯を励起したときの蛍光強度から、青色光で歯を励起したときの蛍光強度を差し引く必要がある。さらに、歯垢からの蛍光は微弱であり、歯垢由来の蛍光のピーク波長635nmは蛍光灯のピーク波長620nmに近いため、蛍光灯などの環境光の影響を取り除くことも必要である。蛍光灯の光を光学フィルターだけで除去することは困難であるため、制御部300では、ノイズ除去能力が高く微弱な光を測定できるロックインアンプを使用する。
制御部300は、1相(1組)のロックインアンプを時分割駆動して、等価的に2相(2組)のロックインアンプとして用いることで、歯と歯垢の蛍光強度を測定する。特に、制御部300では、単純な時分割駆動の場合とは光源の点灯パターンを変えることで、歯と歯垢の蛍光の測定精度と環境光のノイズ除去特性を向上させる。以下では、単純な時分割駆動を行う比較例の制御部310(図7を参照)と比較して、蛍光測定装置1,400(実施例)の制御部300の回路構成と動作を説明する。
図7は、比較例の制御部310の回路構成を示すブロック図である。図8は、制御部310の動作タイミングを示すタイミングチャートである。図9は、実施例の制御部300の回路構成を示すブロック図である。図10は、制御部300の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図9に示す実施例の制御部300は、制御回路30及び報知部31(図3を参照)に加えて、光源駆動回路83,84、インバータ85、電流電圧変換回路86、発振回路100A、間引き制御回路102A及びロックインアンプ103を有する。これらは、握り部43内の回路基板44(図4を参照)上に設けられている。図7に示す比較例の制御部310の回路構成は、インバータ85が間引き制御回路102Bに置き換えられている点のみが制御部300のものと異なる。図7及び図9では、便宜的に、光源部100内の第1の光源2及び第2の光源3、並びに検出部200内の光検出器24も併せて図示している。
発振回路100Aは、制御回路30の制御の下で、周期Tの矩形波であるタイミング信号101(基準信号の一例)を生成する。
光源駆動回路83は第1の光源2を駆動し、光源駆動回路84は第2の光源3を駆動する。光源駆動回路83,84は、発振回路100Aからのタイミング信号101に基づいて、第1の光源2及び第2の光源3を交互に駆動する。制御部300では、第1の光源2及び第2の光源3のうちで第2の光源3のみがインバータ85を介して発振回路100Aに接続されているので、第1の光源2はタイミング信号101と同相で点灯し、第2の光源3はタイミング信号101とは逆相で点灯する。第1の光源2は、タイミング信号101の1周期内における前半の半周期に発光して、第1の波長の光(例えば405nmの紫色光)を出射する。第2の光源3は、タイミング信号101の1周期内における後半の半周期に発光して、第2の波長の光(例えば465nmの青色光)を出射する。
光検出器24は、第1の光源が点灯し第1の波長の光が歯に照射されたときに歯から発生する蛍光の強度(第1の蛍光強度)と、第2の光源3が点灯し第2の波長の光が歯に照射されたときに歯から発生する蛍光の強度(第2の蛍光強度)を検出する。電流電圧変換回路86は、光検出器24の出力信号を電圧信号に変換して、光信号PDを生成する。以下では、歯垢由来の蛍光による光信号PDを「歯垢の蛍光量Pp」、歯の自家蛍光による光信号PDを「歯の蛍光量Pt」という。
間引き制御回路102Aは、制御回路30からの間引き信号102に従って、時分割された複数の時間領域のうちで偶数番目の時間領域における第1の光源2の発光を禁止する信号を光源駆動回路83に出力し、これにより、その時間領域における第1の光源2の発光を停止させる。以下では、複数の時間領域のうちで、奇数番目の時間領域のことを「第1の期間T1」、偶数番目の時間領域のことを「第2の期間T2」という。第1及び第2の期間は、タイミング信号101の周期Tよりも長い周期で交互に繰り返される。間引き制御回路102Aは、第2の期間T2ではなく第1の期間T1に第1の光源2の発光を停止させてもよく、第1の期間T1と第2の期間T2のどちらを発光停止期間としても、制御部300の動作は本質的に同じである。制御部300では、発振回路100A、間引き制御回路102A及びインバータ85が発光制御部として機能する。
ロックインアンプ103は、位相検波器104及びA/Dコンバータ106を有する。位相検波器104は、タイミング信号101に従い光信号PDを位相検波して光信号PD同士の差を求めることで、歯の蛍光量Pt及び歯垢の蛍光量Ppに応じた同相検波出力105を生成する。制御部300では、第1の期間T1には第1の光源2と第2の光源3が交互に点灯し、第2の期間T2には第2の光源3のみが点灯する。このため、位相検波器104は、同相検波出力105として、第1の期間T1には、第1及び第2の蛍光強度に応じた信号(第1の出力信号)を生成し、第2の期間T2には、第2の蛍光強度に応じた信号(第2の出力信号)を生成する。A/Dコンバータ106は、同相検波出力105をデジタルの同相検波出力107(IOUT1,IOUT2)に変換して、制御回路30に出力する。
制御回路30は、発振回路100A及び間引き制御回路102Aの動作を制御すると共に、第1及び第2の期間における同相検波出力107から、測定対象の蛍光物質量である歯の蛍光量Pt及び歯垢の蛍光量Ppを算出する。
比較例の制御部310では、図7に示すように、発振回路100Aと光源駆動回路83の間に間引き制御回路102Aが、発振回路100Aと光源駆動回路84の間に間引き制御回路102Bが、それぞれ設けられている。制御部310の間引き制御回路102Aは、制御回路30からの間引き信号102に従って、第1の期間T1のみ第1の光源2の発光を許可し、第2の期間T2における第1の光源2の発光を禁止する信号を光源駆動回路83に出力する。間引き制御回路102Bは、間引き信号102に従って、第2の期間T2のみ第2の光源3の発光を許可し、第1の期間T1における第2の光源3の発光を禁止する信号を光源駆動回路84に出力する。制御部310では、第1の光源2と第2の光源3の両方とも、第1の期間T1又は第2の期間T2におけるタイミング信号101の前半の半周期に発光する。
図8では、タイミング信号101をTIMで表し、第1の光源2及び第2の光源3の点灯タイミングをそれぞれVLED,BLEDで表す。PDは、電流電圧変換回路86から出力される光信号である。これらは、後述する図10及び図11でも同様である。以下では、簡単のため、紫色LEDである第1の光源2及び青色LEDである第2の光源3のことも、それぞれVLED,BLEDという。
図8では、時分割駆動を制御する間引き信号102をDIVで表す。図8に示す比較例の時分割駆動では、DIVが「H」の期間が、時分割の前半(奇数番目)の時間領域(第1の期間T1)であり、この期間にはVLEDが発光する。DIVが「L」の期間が、時分割の後半(偶数番目)の時間領域(第2の期間T2)であり、この期間にはBLEDが発光する。Tsは、A/Dコンバータ106によるデータ取得間隔(サンプリング時間)であり、これは後述する図10及び図11でも同様である。比較例では、一例として、タイミング信号101の周期Tを256μs(3.91kHz)、第1の期間T1、第2の期間T2及びデータ取得間隔Tsを共に12.5ms(80Hz)とする。時分割駆動の周期はT1+T2=2Ts=25ms(40Hz)である。
比較例の制御部310では、第1の期間T1でTIMが「H」のときにはVLEDが点灯し、このときの光信号PDは、歯の蛍光量Ptと歯垢の蛍光量Ppの和である(P1=Pt+Pp)。第2の期間T2でTIMが「H」のときにはBLEDが点灯し、このときの光信号PDは歯の蛍光量Ptである(P2=Pt)。TIMが「L」のときにはVLEDとBLEDは消灯し、このときの光信号PDは0である。したがって、比較例の場合、第1及び第2の期間における同相検波出力107(IOUT1,IOUT2)は、
IOUT1=(P1−0)/2=(Pt+Pp)/2
IOUT2=(P2−0)/2=Pt/2
であり、制御回路30が算出する歯の蛍光量Pt及び歯垢の蛍光量Ppは、
Pt=2×IOUT2
Pp=2×(IOUT1−IOUT2)
である。
このようにして、時分割駆動の周期2Tsごとに、歯の蛍光量Ptと歯垢の蛍光量Ppのデータの組が得られる。比較例では、歯垢の蛍光量Ppは、第1の期間T1での出力信号IOUT1から第2の期間T2での出力信号IOUT2を差し引くことで求められる。その際、第1の期間T1における歯の蛍光量Ptを、第2の期間T2における歯の蛍光量Ptで代用して差し引くため、比較例の光測定方法では、第1及び第2の期間でノイズの相関が小さい場合には、ノイズの影響を大きく受ける。
図10では、時分割駆動を制御する間引き信号102をVINHで表す。図10に示す実施例の時分割駆動では、VINHが「L」の期間が、時分割の前半(奇数番目)の時間領域(第1の期間T1)であり、この期間にはVLEDとBLEDが交互に発光する。VINHが「H」の期間が、時分割の後半(偶数番目)の時間領域(第2の期間T2)であり、この期間にはVLEDの発光が禁止され、BLEDのみが発光する。実施例では、一例として、タイミング信号101の周期Tを256μs(3.91kHz)、データ取得間隔Tsを12.5ms(80Hz)、第1の期間T1を3Ts/2=18.75ms、第2の期間T2をTs/2=6.25msとする。時分割駆動の周期はT1+T2=2Ts=25ms(40Hz)である。
実施例の制御部300では、第1の期間T1でTIMが「H」のときにはVLEDが点灯し、このときの光信号PDは、歯の蛍光量Ptと歯垢の蛍光量Ppの和である(P1=Pt+Pp)。TIMが「L」のときにはBLEDが点灯し、このときの光信号PDは歯の蛍光量Ptである(P2=Pt)。第2の期間T2でTIMが「H」のときにはVLEDとBLEDは消灯し、このときの光信号PDは0である。したがって、実施例の場合、第1及び第2の期間における同相検波出力107(IOUT1,IOUT2)は、
IOUT1=(P1−P2)/2={(Pt+Pp)−Pt}/2=Pp/2
IOUT2=(0−P2)/2 =−Pt/2
であり、制御回路30が算出する歯の蛍光量Pt及び歯垢の蛍光量Ppは、
Pt=−2×IOUT2
Pp= 2×IOUT1
である。
歯垢の蛍光量Ppは、歯垢量が多いほど大きくなるが、歯垢量が少なくても、測定装置と測定対象の歯との間の距離が近いほど大きくなる。このため、制御部300は、歯垢の蛍光量Ppに加えて歯の蛍光量Ptも算出する。両者の比をとれば、測定距離の変動による歯垢の蛍光量Ppへの影響を補正することができる。
実施例では、第1の期間T1の出力信号IOUT1は、VLED点灯時に生じる歯及び歯垢の蛍光量とBLED点灯時に生じる歯の蛍光量との差成分であるから、IOUT1として歯垢の蛍光量が直接求められる。歯の蛍光量も、第2の期間T2の出力信号IOUT2として直接求められる。制御部300も、歯垢の蛍光量を求める際に異なる時刻での蛍光量P1,P2の差分をとるが、その時間差は、タイミング信号101の周期Tと同程度であり、制御部310の場合の蛍光量同士の時間差であるデータ取得間隔Tsよりもはるかに小さい。このため、制御部300では、時分割駆動をすることにより生じる測定誤差は、制御部310の場合よりも小さい。
歯垢の蛍光は歯の蛍光に比べて弱いので、制御部300では、歯垢を検出する時間の割合、すなわち、時分割駆動の1周期における第1の期間T1の割合を増やせば、歯垢量の測定精度を向上させることができる。また、歯の蛍光量は、上記の通り、測定距離の変動による影響を補正するために補助的に用いられるものであるから、歯の蛍光量が得られる第2の期間T2は短くてもよい。したがって、実施例の時分割駆動では、第1の期間T1は第2の期間T2よりも長いことが好ましい。
実施例では、T1:T2=3:1とすると、1周期2TsにおいてVLEDは3/8の期間点灯し、BLEDは4/8の期間点灯する。この値は見かけの点灯期間であり、歯垢量を測定する期間T1におけるVLEDとBLEDの点灯期間は共に3/8であり、歯の蛍光を測定する期間T2におけるBLEDの点灯期間は1/8となる。これが測定精度を考慮した際の実質的な点灯期間となる。
時分割駆動を行わず、2相のロックインアンプを使用して、VLEDとBLEDを交互に、かつ50%よりも小さいDutyαで駆動した場合、αがVLEDとBLEDの見かけの点灯時間になる。実施例の時分割駆動に合わせてα=3/8とすると、2相のロックインアンプの出力IOUT1,IOUT2は、
IOUT1=αPp=(3/8)Pp
IOUT2=(1/2−α)(Pp+Pt)=(1/8)(Pp+Pt)
となる。歯の蛍光量PtはIOUT1とIOUT2から求められるが、各式の係数が実質的なLEDの点灯Dutyと考えられる。検出精度を考慮すると、歯垢の蛍光量を検出する場合の点灯時間はVLED,BLED共に3/8となる一方、歯の蛍光量の検出精度は実質的な点灯Dutyの小さいIOUT2で規定され、歯の蛍光量を検出する場合の実質的な点灯時間は検出原理から1/2−α=1/8となる。
したがって、実施例では、1相のロックインアンプを使用しているにもかかわらず、2相のロックインアンプを使用する場合と同等の測定精度を得ることが可能である。用途により、歯に対して相対的に歯垢の検出感度を上げたい場合には、第2の期間T2を短くし、第1の期間T1を長くすることができる。
図11は、図10の動作タイミングの変形例を示すタイミングチャートである。図11では、第2の期間T2においてVLEDではなくBLEDの点灯を停止させる場合の動作タイミングを示しており、時分割駆動を制御する間引き信号102をBINHで表す。図11に示す変形例の時分割駆動では、BINHが「L」の期間が、時分割の前半(奇数番目)の時間領域(第1の期間T1)であり、この期間にはVLEDとBLEDが交互に発光する。BINHが「H」の期間が、時分割の後半(偶数番目)の時間領域(第2の期間T2)であり、この期間にはBLEDの発光が禁止され、VLEDのみが発光する。
変形例の場合、第1及び第2の期間における同相検波出力107(IOUT1,IOUT2)は、
IOUT1=(P1−P2)/2={(Pt+Pp)−Pt}/2=Pp/2
IOUT2=(P1−0)/2 =(Pt+Pp)/2
であり、制御回路30が算出する歯の蛍光量Pt及び歯垢の蛍光量Ppは、
Pt=2×(IOUT2−IOUT1)
Pp=2×IOUT1
である。
変形例の時分割駆動では、歯の蛍光量Ptを求めるために第1の期間T1での出力信号IOUT1と第2の期間T2での出力信号IOUT2との差分をとる必要があるので、比較例の場合と同等の測定誤差が生じる。このため、変形例のように、実施例の場合と同様の点灯パターンを採用し、歯垢由来の蛍光が発生するVLEDの点灯時間を実施例の場合よりも長くしても、測定精度の向上には寄与しない。したがって、単に一方の期間で2つの光源を交互に駆動し、他方の期間で一方の光源だけを駆動すればよいわけではなく、実施例のように、他方の期間ではBLEDだけを駆動することが望ましい。実施例では、時分割駆動を行い、かつ一方の期間でBLEDだけを駆動することにより、各期間の出力信号として歯及び歯垢の蛍光量が直接得られ、2つの期間を跨って出力信号の差分をとる必要がないので、比較例及び変形例の場合と比べて測定精度が向上する。
図12(A)〜図12(D)は、蛍光測定装置1,400を用いた測定と制御部300,310による出力信号の差異を説明する図である。図12(A)は、歯垢11が付着した2つの歯10に対して、図中に点線の矢印で示す水平方向右向きに励起光の照射スポット12を移動させながら、歯及び歯垢の蛍光量を測定する様子を示す。歯間付近の歯面に付着した歯垢は除去しにくいため、図12(A)に示した状況は、歯垢量の測定では一般的である。図12(B)〜図12(D)は、図12(A)に示す点線に沿って歯列を測定したときに検出される歯及び歯垢の蛍光強度の変化を示す。各図の横軸は時間tを、縦軸は蛍光強度Iを表す。
図12(B)は、データ取得間隔Tsが十分短く、405nmの紫色光で歯を励起したときの蛍光量と465nmの青色光で歯を励起したときの蛍光量とを同時に測定できる理想的な測定装置を用いた場合の蛍光強度を示す。グラフの実線は、405nmの励起光での蛍光強度(歯垢の蛍光強度Ipと歯の蛍光強度Itとの和)であり、点線は、465nmの励起光での蛍光強度(歯の蛍光強度It)である。歯垢の蛍光強度Ip及び歯の蛍光強度Itは、上記した歯垢の蛍光量Pp及び歯の蛍光量Ptと実質的に同じである。グラフの実線と点線の差分である図中に矢印で示したベクトルが、歯垢の蛍光強度Ipに相当する。405nmの励起光での蛍光強度には、歯間付近の歯垢が付着している部分にピークが見られる。
図12(C)は、比較例の時分割駆動で測定した場合の蛍光強度を示す。図12(C)では、時分割された奇数番目の時間領域(第1の期間)をT1,T3,・・・で表し、偶数番目の時間領域(第2の期間)をT2,T4,・・・で表す。P1は第1の期間T1での出力信号IOUT1であり、P2は第2の期間T2での出力信号IOUT2である。奇数番目の時間領域で得られる出力信号IOUT1は、405nmの励起光による歯垢の蛍光強度Ip’’と歯の蛍光強度It’’との和であり、偶数番目の時間領域で得られる出力信号IOUT2は、465nmの励起光による歯の蛍光強度It’’である。これらの出力信号は、データ取得間隔Tsごとに交互に得られる。歯垢の蛍光量は出力信号IOUT1,IOUT2の差分で求められるため、図中に矢印で示したベクトルが、歯垢の蛍光強度Ip’’に相当する。
図12(A)における左側の歯10の左端から測定する際、照射スポット12の移動に伴い歯10に当たる励起光量が増加するために、蛍光強度も増加する。第1の期間T1の蛍光強度であるP1(=Ip’’+It’’)と第2の期間T2の蛍光強度であるP2(=It’’)との差分は、左側の歯10の左端には歯垢がないため0になるはずであるが、比較例では、図12(C)の左端の矢印で示すように負の大きな値として算出される。図12(C)に矢印(ベクトル)で示した歯垢の蛍光強度Ip’’は図12(B)における実線と破線のグラフの差分とは大きく異なり、歯の両端や歯垢が付着している歯間付近などの蛍光量が大きく変化するところで特に測定誤差が生じていることが分かる。この測定誤差は、互いに異なる時刻、すなわち、照射スポット12が時間と共に移動することによる互いに異なる位置での蛍光強度を用いて歯垢量を算出するために生じる。
図12(D)は、実施例の時分割駆動で測定した場合の蛍光強度を示す。実施例の場合、奇数番目の時間領域では、405nmと465nmの励起光を交互に照射することで歯垢の蛍光強度Ip’が得られ、偶数番目の時間領域では、465nmの励起光により歯の蛍光強度It’が得られる。図12(D)では、図12(B)及び図12(C)と同様に、歯垢の蛍光強度Ip’を矢印(ベクトル)でも示している。
図12(B)と図12(D)を比較すると分かるように、実施例では、理想的な測定装置の場合に近い結果が得られる。実際の測定装置で時分割駆動を行う場合、データ取得間隔Tsは有限の長さを持ち、2波長での蛍光量を同時に測定することはできないが、実施例の時分割駆動であれば、比較例の場合よりも測定精度が上がることが分かる。これは、実施例の場合、時分割された異なる時間領域間での蛍光量同士の差分をとる必要がないので、照射スポット12が移動することによる蛍光量の誤差が比較例の場合ほど問題にならないためである。また、実施例の場合、歯と歯垢の蛍光強度が交互に求められ、歯垢の蛍光強度Ip’と歯の蛍光強度It’とが異なる時間での蛍光強度であるが、歯の蛍光強度It’は内挿すれば概ね正確に求められるので、異なる時間で求めた蛍光量でも特に問題はない。
以上説明したように、波長の異なる2つの光で歯を励起し、蛍光を1波長で計測することにより、自家蛍光から歯垢由来の蛍光を分離して計測することが可能となり、シンプルな構成で精度よく歯垢を検出できる蛍光測定装置が得られる。よって、この蛍光測定装置を搭載した歯ブラシであれば、きちんと磨けているかどうかを確認しながら歯を磨くことができる。
特に、実施例の制御部300では、図10に示した時分割駆動を行うことにより、ロックインアンプ1台で歯と歯垢の蛍光を分離して測定できるので、ローコスト化の効果が大きい。また、歯垢の蛍光量に関しては、図8に示した比較例の場合よりも測定誤差が減り、時分割駆動を行わずに2相のロックインアンプを使用する場合と同等の精度が得られる。歯の蛍光量に関しては、比較例の場合と比べれば精度は低下するが、2相のロックインアンプを使用する場合と同等の精度が得られる。ただし、歯の蛍光量は、歯と測定装置との距離による影響の補正や、測定位置が歯間か歯面かの判定などに補助的に用いられるものであるため、実施例の場合でも必要な精度を確保することが可能である。
1,400 蛍光測定装置
2 第1の光源
3 第2の光源
30 制御回路
100 光源部
100A 発振回路
102A,102B 間引き制御回路
103 ロックインアンプ
104 位相検波器
200 検出部
300 制御部

Claims (5)

  1. 第1の波長の光を出射する第1の光源と、
    前記第1の波長よりも長波長である第2の波長の光を出射する第2の光源と、
    試料に前記第1の波長の光を照射したときに発生する第1の蛍光強度、及び試料に前記第2の波長の光を照射したときに発生する第2の蛍光強度を検出する検出部と、
    交互に繰り返されそれぞれが基準信号の周期よりも長い第1及び第2の期間のうち、前記第1の期間では前記基準信号に従い前記第1及び第2の光源を交互に発光させ、前記第2の期間では前記基準信号に従い前記第2の光源のみを発光させる発光制御部と、
    前記基準信号に従い位相検波を行って、前記第1の期間における前記第1及び第2の蛍光強度に応じた第1の出力信号、並びに前記第2の期間における前記第2の蛍光強度に応じた第2の出力信号を生成する位相検波器と、
    前記第1及び第2の出力信号を用いた演算により測定対象の蛍光物質量を算出する制御回路と、
    を有することを特徴とする光測定装置。
  2. 前記第1の波長の光は、歯及び歯垢に含まれる蛍光物質を励起させて、歯及び歯垢に由来する蛍光を発生させ、
    前記第2の波長の光は、歯垢に含まれる蛍光物質に対する励起効率が前記第1の波長の光よりも低い、請求項1に記載の光測定装置。
  3. 前記第1の波長は350nmから430nmの範囲内であり、
    前記第2の波長は435nmから500nmの範囲内である、請求項2に記載の光測定装置。
  4. 前記第1の期間は前記第2の期間よりも長い、請求項2又は3に記載の光測定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光測定装置を備えた歯ブラシ。
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