JP6985572B2 - 単鎖抗体のスクリーニング方法及び単鎖抗体 - Google Patents
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Description
多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含む、抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法。
〔2〕
前記単鎖抗体が前記抗原に対して1.5×10−2s−1以下の解離速度定数を有する、〔1〕に記載の方法。
〔3〕
前記単鎖抗体がウサギ由来である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕
前記抗原がタンパク質である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕
前記タンパク質が抗体である、〔4〕に記載の方法。
〔6〕
前記抗体がヒト血清由来IgGポリクローナル抗体又はヒト血清由来IgAポリクローナル抗体である、〔5〕に記載の方法。
〔7〕
前記単鎖抗体がヒト由来抗体のL鎖に結合する単鎖抗体である、〔5〕又は〔6〕に記載の方法。
〔8〕
前記タンパク質がエクソソーム由来タンパク質を含む、〔4〕に記載の方法。
〔9〕
前記タンパク質が、Sf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質である、〔8〕に記載の方法。
〔10〕
前記タンパク質がウイルス由来タンパク質である、〔4〕に記載の方法。
〔11〕
前記ウイルス由来タンパク質がインフルエンザウイルス由来タンパク質である、〔10〕に記載の方法。
〔12〕
前記インフルエンザウイルス由来タンパク質がB型インフルエンザウイルス由来タンパク質である、〔11〕に記載の方法。
〔13〕
前記B型インフルエンザウイルス由来タンパク質がB型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Protein である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕
前記タンパク質が炎症性タンパク質である、〔4〕に記載の方法。
〔15〕
前記炎症性タンパク質がヒト由来炎症性タンパク質C-reactive Protein (CRP)である、〔14〕に記載の方法。
〔16〕
〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によりスクリーニングする工程、
スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列を決定する工程、
決定されたアミノ酸配列の可変領域の配列に基づき、抗体をコードするDNA配列を作成する工程、及び
作成されたDNA配列を宿主細胞で発現させる工程
を含む、抗体の製造方法。
〔17〕
抗体をコードするDNA配列がヒト化抗体をコードする〔16〕に記載の製造方法。
〔18〕
ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対して3.0×10−8M以下の解離定数を有する単鎖抗体。
〔19〕
さらに、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に結合する、〔18〕に記載の単鎖抗体。
〔20〕
ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
〔21〕
ヒト由来抗体のL鎖に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
〔22〕
エクソソーム由来タンパク質を含むタンパク質に対して8.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
〔23〕
前記タンパク質が、Sf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質である、〔22〕に記載の単鎖抗体。
〔24〕
ウイルス由来タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
〔25〕
前記ウイルス由来タンパク質がインフルエンザウイルス由来タンパク質である、〔24〕に記載の単鎖抗体。
〔26〕
前記インフルエンザウイルス由来タンパク質がB型インフルエンザウイルス由来タンパク質である、〔25〕に記載の鎖抗体。
〔27〕
前記B型インフルエンザウイルス由来タンパク質がB型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Proteinである、〔26〕に記載の単鎖抗体。
〔28〕
炎症性タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
〔29〕
前記炎症性タンパク質がC-reactive Protein (CRP)である、〔28〕に記載の単鎖抗体。
多重膜リポソームは分散性が良好であるため、従来の方法に比べて、多重膜リポソームに結合した抗原と抗体との接触を効率よく行うことができ、遠心分離により簡便に回収することもできる。また、多重膜リポソームを用いれば、担体に非特異的に吸着するファージが極めて少なくなる。さらに、抗原は多重膜リポソームの膜上を側方拡散できるため、ファージライブラリとの結合性が大きく、分離効率に優れ、抗原との結合能が極めて大きい単鎖抗体を取得することができる。
本発明の第一の発明は、次の第一の実施態様および第二の実施態様を含む。
第一の実施態様:多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程を含む、抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法。
第二の実施態様:第一の実施態様に記載のスクリーニング方法によりスクリーニングする工程、スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列を決定する工程、決定されたアミノ酸配列の可変領域の配列に基づき、抗体をコードするDNA配列を作成する工程、及び作成されたDNA配列を宿主細胞で発現させる工程を含む、抗体の製造方法。
本発明の第一の発明における第一の実施態様は、多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程を含む、抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法である。
[多重膜リポソーム(MLVs)]
多重膜リポソームとしては、抗原を結合できるのであれば特に制限はない。例えば、Journal of Biotechnology 131 (2007) 144-149に記載されるような公知の方法に従って作製することができる。具体的には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、リン酸ジセチル(DCP)、及びN−(4−(p−マレイミドフェニル)ブチリル)ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(MPB−DPPE)を適量水和するなどして作製できる。
抗原としては、本実施態様に係るスクリーニング方法によりスクリーニングされる単鎖抗体が結合する物質であれば特に制限されない。例えば、細胞、タンパク質、脂質、糖鎖などが挙げられ、これらの中ではタンパク質が好ましい。抗原は、得られる単鎖抗体の用途に従って適宜選択できる。
ここで、二以上の異なる抗原の共通部位に結合する単鎖抗体については、例えば、二以上の異なる抗原それぞれに対して行うスクリーニングで選択された単鎖抗体のアミノ酸配列を比較すれば決定できる。このことは、当業者であれば容易に理解することができる。
また、単鎖抗体のアミノ酸配列としては同一だが二以上の異なる部位に結合する単鎖抗体については、例えば、ある抗原を用いたスクリーニングで選択された単鎖抗体の、他の抗原への結合性を確認すればよい。このことは、当業者であれば容易に理解することができる。
具体的には、タンパク質Aとタンパク質Bとの融合タンパク質の場合、ファージライブラリは、タンパク質Aで動物を免疫して得られたものであってもよいし、タンパク質Aと他のタンパク質との融合タンパク質で動物を免疫して得られたものであってもよい。
アイソタイプとは無関係に軽鎖(L鎖)に含まれるアミノ酸配列に結合する単鎖抗体を選択するための、抗原としての抗体は、特に制限されないが、好ましくはIgA抗体であり、例えば、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体などが挙げられる。
というのは、例えばIgG抗体やIgM抗体は補体活性を有する一方で、IgA抗体が補体活性を有しないことを考えると、IgG抗体を基準に考えた場合、機能および構造がIgG抗体からかけ離れているのはIgM抗体よりもIgA抗体であると考えられることから、例えばIgM抗体を用いるよりもIgA抗体を用いた方が、軽鎖(L鎖)に含まれるアミノ酸配列に結合する単鎖抗体が選択されやすいからである。
また、例えば5量体を形成するIgM抗体に比べ、単量体又は二量体を形成するIgA抗体の方が分子量が小さく、多重膜リポソーム上の分散性も高いため、IgM抗体よりもIgA抗体を用いた方が、スクリーニングの効率がよいからである。
さらには、IgA抗体は、粘膜において治療効果の高い抗体医薬として利用することができる。
また、エクソソーム由来タンパク質の中でも、単鎖膜タンパク質CD9(p24)が好ましい。CD9は、4つの膜貫通ドメインを持ち、N末端とC末端ともに細胞内にある構造をとっている。CD9は、VLA(Very Late Activation)インテグリン分子やHLA−DRなどの分子と関連しており、細胞間の接着やシグナル伝達、細胞の運動能に関与すると考えられている。
また、ウイルス由来タンパク質の中でも、インフルエンザウイルス由来タンパク質が好ましく、その中でも、A型インフルエンザウイルス由来タンパク質、B型インフルエンザウイルス由来タンパク質、C型インフルエンザウイルス由来タンパク質がより好ましい。
また、B型インフルエンザウイルス由来タンパク質の中でも、B型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Protein がさらに好ましい。これは、B型インフルエンザの感染有無の検査に利用可能な抗原である。
また、炎症性タンパク質の中でも、ヒト由来炎症性タンパク質C-reactive Protein (CRP)が好ましい。これは、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに発現するタンパク質であり、病気の進行度や重症度、経過、予後などを判定するのに重要な指標として利用されているものである。
多重膜リポソームに抗原を結合する方法としては、多重膜リポソームから抗原が遊離しなければ特に制限されない。例えば、非特許文献1に記載されるような公知の方法に従って結合することができる。具体的には、抗原と多重膜リポソームとの混合液に、モル比として過剰量の2−イミノチオラン塩酸塩を加えて撹拌しながら反応させることなどが挙げられる。例えば、抗原と多重膜リポソームとの混合液に、モル比として抗原の10倍量の2−イミノチオラン塩酸塩を加えて、25℃で3時間以上撹拌しながら反応させることなどが挙げられる。
[単鎖抗体を提示するファージライブラリ]
ファージライブラリとしては、単鎖抗体を提示しているファージライブラリであれば特に制限されず、公知のライブラリや市販のライブラリを用いてもよい。単鎖抗体が由来する動物に特に制限はないが、抗原への結合能が大きいものが好ましく、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サルなどが挙げられ、より好ましくはヒト、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヤギが挙げられ、さらに好ましくはマウス、ウサギである、特に好ましくはウサギである。
免疫動物を用いる場合には、例えば次のようにして行うことができる。免疫動物に特定の抗原を投与し、該免疫動物の脾臓から全RNAを取得し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)でcDNAライブラリを構築する。次に、所定のプライマーを用いて、重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子、及び、軽鎖(L鎖)の可変領域(VLドメイン)の遺伝子をPCRで増幅する。
免疫動物としてウサギを用いる場合のプライマーとしては、目的の遺伝子をPCRで特異的に増幅できれば特に制限はないが、重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子を増幅するセンスプライマーとしては、例えば、
5’−AAAAAGGCCATGGCCCAGTCGGTGGAGGAGTCCRGG−3’(配列番号1、本明細書においてNco-VH1 Sと称することがある。)、
5’−AAAAAGGCCATGGCCCAGTCGGTGAAGGAGTCCGAG−3’(配列番号2、本明細書においてNco-VH2 Sと称することがある。)、
5’−AAAAAGGCCATGGCCCAGTCGYTGGAGGAGTCCGGG−3’(配列番号3、本明細書においてNco-VH3 Sと称することがある。)、
5’−AAAAAGGCCATGGCCCAGSAGCAGCTGRWGGAGTCCGG−3’(配列番号4、本明細書においてNco-VH4 Sと称することがある。)などが挙げられ、
アンチセンスプライマーとしては、例えば、
5’−TCCACCACTAGTGACGGTGACSAGGGT−3’(配列番号5、本明細書においてVH-Spe ASと称することがある。)などが挙げられる。
5’−AATTAAGGATCCGAGCTCGTGMTGACCCAGACTSCA−3’(配列番号6、本明細書においてBam-Vκ1 Sと称することがある。)、
5’−AATTAAGGATCCGAGCTCGATMTGACCCAGACTSCA−3’(配列番号7、本明細書においてBam-Vκ2 Sと称することがある。)、
5’−AATTAAGGATCCGAGCTCGTGATGACCCAGACTGCA−3’(配列番号8、本明細書においてBam-Vκ3 Sと称することがある。)、
5’−AATTAAGGATCCGAGCTCGTGCTGACTCAGTCGYCCTC−3’(配列番号9、本明細書においてBam-Vλ4 Sと称することがある。)などが挙げられ、
アンチセンスプライマーとしては、例えば、
5’−TATATATGCGGCCGCCGAACSTKTGAYSWCCAC−3’(配列番号10、本明細書においてVκ-Not ASと称することがある。)、
5’−TTTAAATTTGCGGCCGCCGAACCTGTGACGGTCAG−3’(配列番号11、本明細書においてVλ-Not ASと称することがある。)などが挙げられる。
本工程(選択工程)は、抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とを結合する工程(結合工程)、多重膜リポソームに結合した抗原に結合しなかった単鎖抗体を提示するファージを洗浄により除去する工程(洗浄工程)、及び、多重膜リポソームに結合した抗原に結合した単鎖抗体を提示するファージを、該抗原から解離(溶出)させる工程(溶出工程)を含む。
本工程は、抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とを結合する工程である。その方法は、両者が十分に結合できれば特に制限はない。例えば、以下のような条件下で行うことができる。
抗原とファージライブラリとの比は、両者が十分に結合できれば特に制限はない。ライブラリ中の総ファージ数:抗原分子数として、通常1:5以上、好ましくは1:100以上、より好ましくは1:1000以上である。当該範囲内にあることで、ファージ表面に発現した単鎖抗体に対して抗原分子数が十分となり、両者間で十分な結合が期待できる。
抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とを結合する場合の溶媒の種類は、両者が十分に結合できれば特に制限はない。例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの当該技術分野で用いられている通常の溶媒を用いることができる。
抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とを結合する場合の温度は、両者が十分に結合できれば特に制限はないが、分解や変性等を回避するために、例えば、室温、例えば25℃が好ましく、低温、例えば4℃がより好ましい。
抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とを結合する場合の結合時間は、両者が十分に結合できれば特に制限はないが、例えば、30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくはオーバーナイトである。
抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体とは、反応中に十分に撹拌されるように、例えば、ローテートしながら結合させることが好ましい。また、両者を結合する際に用いるチューブ等の反応容器は、予め、ブロッキングしておくことが好ましい。ブロッキング剤としては公知のものが挙げられ、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したものなどが挙げられる。また、このようなブロッキング剤を、結合に用いる溶媒に予め添加しておくことなどもできる。
本工程は、多重膜リポソームに結合した抗原に結合しなかった単鎖抗体を提示するファージを洗浄により除去する工程である。その方法は、抗原に結合しなかった単鎖抗体を提示するファージを洗浄により除去できれば特に制限はない。例えば、以下のような条件下で行うことができる。
抗原とファージライブラリ中のファージ表面に発現した単鎖抗体との結合反応後、遠心分離により、多重膜リポソームに結合した抗原に結合したファージは沈殿し、結合しなかったファージは上清に含まれる。そのため、上清を除去した後、ペレットに溶媒を加えて懸濁することで、多重膜リポソームに結合した抗原に結合したファージを選択的に取得することができる。
本工程は、多重膜リポソームに結合した抗原に結合した単鎖抗体を提示するファージを、該抗原から解離(溶出)させる工程である。その方法は特に制限されないが、例えば、非特許文献1に記載されるような公知の方法に従うことができる。
ファージを溶出するための溶液としては、例えば、グリシン−塩酸緩衝液等を用いることができる。さらに、ファージを溶出した後にその溶液を中和してもよく、その中和には、例えばトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。
当該選択工程は、上記3工程(結合工程、洗浄工程、溶出工程)のほかにも、適宜、任意の工程を含んでよい。例えば、選択されたファージを増幅する工程(増幅工程)、上記選択工程を反復する工程(反復工程)、選択されたファージの遺伝子配列を決定する工程(遺伝子配列決定工程)、遺伝子配列決定工程により決定された配列に基づいてクローンを選択する工程(クローン選択工程)、選択されたファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する結合活性を評価する工程(抗原結合活性の評価工程)などが挙げられる。
本工程は、選択工程で選択されたファージを増幅する工程である。その方法は特に制限されないが、例えば、以下のような条件下で行うことができる。
選択工程で選択されたファージを宿主細胞へ感染させて増幅することができる。その方法は特に制限されず、非特許文献1に記載されるような公知の方法に従うことができる。宿主細胞としては、ファージを増殖できれば特に制限されず、例えば大腸菌を用いることができ、菌株としては、例えば、TG1株やXL−1 Blue株などが挙げられる。また、宿主細胞を予め培養し、指数増殖中期のものを用いることが好ましい。宿主細胞へファージを感染させた後のその宿主細胞の培養条件も特に制限されず、例えば、37℃で200rpmの振とう培養が挙げられる。
ファージが感染した宿主細胞に対してヘルパーファージを感染させ、培養することによって、培養上清中に単鎖抗体を提示するファージ及び単鎖抗体を分泌させることができる。その方法は特に制限されず、非特許文献1に記載されるような公知の方法に従うことができる。このとき、ヘルパーファージは特に限定されないが、例えば、VCSM13などが挙げられる。また、培養条件も特に制限されず、例えば、37℃で200rpmの振とう培養が挙げられる。
上記選択工程で選択されたファージのライブラリ、または、さらに上記増幅工程で増幅されたファージのライブラリを用いて、上記選択工程を反復してもよい。
上記選択工程を1単位とするラウンドを反復することで、抗原との結合能が極めて大きいファージをさらに選択することができる。そのラウンド数は特に制限されない。ラウンド数が多ければ、抗原との結合能が極めて大きいファージが取得されるが、ラウンド数が少なければ、迅速で効率的なスクリーニング法として有用である。本方法は、従来技術と比べて少ないラウンド数で、抗原との結合能が極めて大きいファージを取得できる点で有用である。
反復工程を行う回数は、通常3回以下、好ましくは2回以下、より好ましくは1回以下、さらに好ましくは0回である。反復工程を行う回数が0回ということは、選択工程を1回のみ行うことを意味する。
本工程は、上記選択工程で選択されたファージのライブラリを用いて各ファージの重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子配列、及び、軽鎖(L鎖)の可変領域(VLドメイン)の遺伝子配列を決定する工程である。本工程は、最終ラウンド及び/又はラウンド間に行ってもよい。
上記増幅工程における「宿主細胞へのファージの感染、及びファージが感染した宿主細胞の培養」欄の方法によりファージを感染させた大腸菌をシングルコロニー化して、それぞれをサブクローニング後、コロニーごとに、重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子、及び、軽鎖(L鎖)の可変領域(VLドメイン)の遺伝子の配列を解析して決定することができる。遺伝子配列の解析は公知の技術を用いることができる。また、遺伝子配列が決定できれば、その遺伝子配列がコードしているアミノ酸配列も決定される。このように遺伝子配列が決定できれば、スクリーニングの効率をモニタリングすることもできる。
本工程は、遺伝子配列決定工程により決定された配列に基づいてクローンを選択する工程である。所望の重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子配列、及び、軽鎖(L鎖)の可変領域(VLドメイン)の遺伝子配列を含むファージが感染した宿主細胞のクローンを選択する工程である。重複するクローンを排除するのにも有効である。
本工程は、最終ラウンド及び/又はラウンド間に行ってもよい。このようなクローンが選択できれば、抗原に対して、結合能の大きいファージが感染した宿主細胞を選択でき、スクリーニングをより効率よく行うことができる。
本工程は、選択されたファージが提示する抗体と抗原との結合活性を評価する工程である。選択されたファージが提示する抗体と抗原との結合活性が評価できれば、その方法に制限はない。
本工程は、最終ラウンド及び/又はラウンド間に行ってもよい。抗原に対する結合能が大きい抗体の遺伝子を含むクローンが選択できれば、そのクローンを用いてスクリーニングをより効率よく行うことができる。
その他、実施例4や実施例6に記載するように、Biacoreを用いるなどして、解離速度定数koffや解離定数KDを測定し、それを指標にすることもできる。
[解離速度定数koff]
(定義)
本明細書では、抗原と単鎖抗体との結合における解離速度定数koffを次のように定義する。解離速度定数koffは、好ましくなる順に、1.5×10−2s−1以下、1.0×10−2s−1以下、8.0×10−3s−1以下、7.0×10−3s−1以下、6.0×10−3s−1以下、5.0×10−3s−1以下、4.0×10−3s−1以下、3.0×10−3s−1以下、2.0×10−3s−1以下、1.5×10−3s−1以下、1.0×10−3s−1以下、9.0×10−4s−1以下、8.0×10−4s−1以下、7.0×10−4s−1以下、6.0×10−4s−1以下、5.0×10−4s−1以下、4.0×10−4s−1以下、3.0×10−4s−1以下、2.0×10−4s−1以下、1.0×10−4s−1以下、7.0×10−5s−1以下、6.0×10−5s−1以下、5.0×10−5s−1以下、4.0×10−5s−1以下、3.0×10−5s−1以下、1.5×10−5s−1以下、1.0×10−5s−1以下、5.0×10−6s−1以下、3.0×10−6s−1以下である。解離速度定数koffが小さいほど抗原との結合能が大きく、抗体として有用である。
解離速度定数の測定方法は特に制限されず、例えば、測定装置としてBiacore X−100(GEヘルスケア社)などの公知の装置を用いて、上述したように測定グラフが描ければ、その傾きから解離速度定数を算出することができる。
解離定数KDは、好ましくなる順に、1.0×10−6M以下、7.0×10−7M以下、5.0×10−7M以下、1.5×10−7M以下、1.0×10−8M以下、9.0×10−8M以下、8.7×10−8M以下、4.0×10−8M以下、3.5×10−8M以下、3.0×10−8M以下、2.5×10−8M以下、1.0×10−8M以下、7.0×10−9M以下、6.0×10−9M以下、5.0×10−9M以下、4.0×10−9M以下、3.0×10−9M以下、1.0×10−9M以下、6.0×10−10M以下、5.0×10−10M以下、1.0×10−10M以下、5.0×10−11M以下、2.0×10−11M以下、1.5×10−11M以下である。解離定数が小さいほど抗原との結合能が大きく、抗体として有用である。尚、一般的な抗体のKDは10nM程度であるのに対し、本実施態様における単鎖抗体のKDの範囲は上記の通りであり、一般的な抗体に比べて格段に結合能が大きいことが分かる。
解離定数KDの測定方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、測定装置としては、Biacore X−100(GEヘルスケア社)を用いることができる。
従来のパニング法では、例えば、選択されたファージを感染させた大腸菌をシングルコロニー化して、それぞれをサブクローニング後、コロニーごとに、重鎖(H鎖)の可変領域(VHドメイン)の遺伝子、及び、軽鎖(L鎖)の可変領域(VLドメイン)の遺伝子の配列を解析して決定する。そして、得られた遺伝子配列を解析し、重複するクローン数が多ければ多いほど、そのクローンを「親和力の大きい(可能性のある)候補」として扱い、単鎖抗体の性質を詳しく解析する。しかし、そもそもファージディスプレイ法では各ステップにおいて様々な摂動が加わるため、遺伝子配列が重複するクローンであっても、それらが、必ずしも結合力や選択性が大きいクローンとは限らない。例えば、ファージの生産量や増殖速度の違いによって、結合力や選択性が小さいクローンも得られることがある。また、単鎖抗体の結合力や選択性を評価する方法としてELISA法もよく用いられているが、scFv濃度が不明な状態でELISA法のようなエンドポイントアッセイ(Endpoint assay)を行った場合、抗原に結合するかどうかは分かっても、抗原に対する単鎖抗体の結合力の大きさを直接的に評価することはできない。
解離定数KD=(解離速度定数koff)/(結合速度定数kon)であるところ、分子の速度以上に結合速度が大きくなることはあり得ず、kon値の大きさには上限があることから、kon値の大小はクローンによって大きく相違しない。従って、クローン間においては、結合速度定数konよりも解離速度定数koffの方が大きな差を生じやすいため、解離速度定数koffの小さいクローンは、解離定数KDの小さいクローンとみなすことができる。すなわち、本発明の第一の発明では、濃度を特定することなく、パニング終了時の単鎖抗体の解離速度定数koffを測定するという方法によって、従来法よりも結合力や選択性が大きい単鎖抗体を効率よく、かつ簡便に、迅速に選択することができる。
単鎖抗体のVH鎖の相補性決定領域(CDR)は、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。周知の通り、これらの中で、抗原への結合性に最も寄与しているのはCDR3のアミノ酸配列である。
本実施態様におけるVH鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はいずれも、抗体を構成したときにその抗体が抗原に結合する限り特に限定されない。抗原としてヒト血清由来IgGポリクローナル抗体やヒト血清由来IgAポリクローナル抗体を、単鎖抗体としてウサギ由来単鎖抗体を用いて本方法を実施した場合には、本明細書の実施例に記載するVH鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列と、それぞれ80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。
単鎖抗体のVL鎖の相補性決定領域(CDR)は、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。周知の通り、これらVL鎖のCDRのアミノ酸配列も、抗原への結合性に寄与している。
上述した「VH鎖のCDRのアミノ酸配列と実質的な相同性を有するアミノ酸配列」に記載した内容と同様である。
単鎖抗体のVH鎖のフレームワーク領域(FR)は、FR1、FR2、FR3、及びFR4を含む。周知の通り、これらVH鎖のFRのアミノ酸配列も、抗原への結合性に寄与している。
上述した「VH鎖のCDRのアミノ酸配列と実質的な相同性を有するアミノ酸配列」に記載した内容と同様である。
単鎖抗体のVL鎖のフレームワーク領域(FR)は、FR1、FR2、FR3、及びFR4を含む。周知の通り、これらVL鎖のFRのアミノ酸配列も、抗原への結合性に寄与している。
上述した「VH鎖のCDRのアミノ酸配列と実質的な相同性を有するアミノ酸配列」に記載した内容と同様である。
本発明の第一の発明における第二の実施態様は、第一の実施態様に記載のスクリーニング方法によりスクリーニングする工程、スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列を決定する工程、決定されたアミノ酸配列の可変領域の配列に基づき、抗体をコードするDNA配列を作成する工程、及び作成されたDNA配列を宿主細胞で発現させる工程を含む、抗体の製造方法である。
本工程は、第一の実施態様に記載のスクリーニング方法によりスクリーニングする工程であり、その説明には、既出の第一の実施態様の説明が適用される。
本工程は、スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列を決定する工程である。スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列が決定できれば、その方法に制限はない。
例えば、既出の「遺伝子配列決定工程」により決定された遺伝子配列に基づいて、アミノ酸配列を決定することができる。
本工程において、決定されたアミノ酸配列の可変領域の配列に基づき、抗体をコードするDNA配列が作成できれば、その方法に制限はない。また、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるため、特定のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列は容易に特定することができる。
以下では、ヒト化抗体をコードするDNA配列を例に挙げて説明するが、上記の通り、定常領域(Cドメイン)のアミノ酸配列が由来する動物は制限されない。
ヒト化抗体とは、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。本実施態様では、ヒト化抗体は、第一の実施態様に記載のスクリーニング方法によりスクリーニングされた単鎖抗体のCDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築することができる。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。例えば、国際公開2013/125654号パンフレット、欧州特許出願公開第EP239400号公報、国際公開96/02576号パンフレットなどに記載されている。
本工程では、抗体をコードするDNA配列を作成する工程で作成されたDNA配列が宿主細胞で発現させられれば、その方法に制限はない。
例えば、抗体を生産するための宿主は哺乳動物起源のものが多いが、当業者であれば、発現したい遺伝子産物に最も適する特定の宿主細胞を適宜選択することができる。一般的な宿主細胞系としては、CHO由来細胞株(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)、CV1(サル腎臓系)、COS(SV40T抗原をするCV1の誘導体)、SP2/0(マウスミエローマ)、P3x63−Ag3.653(マウスミエローマ)、293(ヒト腎臓)、及び293T(SV40T抗原をする293の誘導体)などが挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞系は、各種メーカー、ATCCなどの機関、または文献に記載の論文発表機関から入手することができる。
宿主細胞で発現させる工程の後に、その抗体を分離・精製する工程を設けてもよい。その方法は特に制限されないが、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて抗体を分離・精製することができる。
例えば、イオン交換クロマトグラフィー等の荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。
本発明の第二の発明は、次の第一の実施態様ないし第六の実施態様を含む。
第一の実施態様:ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対して3.0×10−8M以下の解離定数を有する単鎖抗体。
第二の実施態様:担体と担体の表面に化学結合によって結合する第一の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体の分離剤。
第三の実施態様:ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
第四の実施態様:担体と担体の表面に化学結合によって結合する第三の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体の分離剤。
第五の実施態様:ヒト由来抗体のL鎖に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
第六の実施態様:担体と担体の表面に化学結合によって結合する第五の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト由来抗体の分離剤。
第七の実施態様:エクソソーム由来タンパク質を含むタンパク質に対して8.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
第八の実施態様:ウイルス由来タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
第九の実施態様:炎症性タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体。
本発明の第二の発明における第一の実施態様は、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対して3.0×10−8M以下の解離定数を有する単鎖抗体である。
該単鎖抗体は、好ましくは、さらに、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対する抗体であり、より好ましくは、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する。また、該単鎖抗体は、これらの抗体のL鎖に結合することが好ましく、κ鎖に結合することがより好ましい。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第二の実施態様は、担体と担体の表面に化学結合によって結合する、第二の発明における第一の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体の分離剤である。
第一の実施態様の単鎖抗体は、その抗体結合性を利用して、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体の分離剤として利用することができる。該分離剤は、抗体の精製や除去、抗体を利用した診断、治療、検査等に用いることができる。
本実施態様の分離剤は、第一の実施態様の単鎖抗体が水不溶性の固相支持体に固定化された形態を有する。
用いる水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが挙げられるが、中でも親水性担体は非特異吸着が比較的少なく、第一の実施態様の単鎖抗体の選択性が良好であるため好ましい。ここでいう親水性担体とは、担体を構成する化合物を平板状にしたときの水との接触角が60度以下の担体を示す。この様な担体としてはセルロース、キトサン、デキストラン等の多糖類、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸グラフト化ポリエチレン、ポリアクリルアミドグラフト化ポリエチレン、ガラスなどからなる担体が代表例として挙げられる。
さらに担体表面には、単鎖抗体の固定化反応に用いうる官能基が存在していると単鎖抗体の固定化に好都合である。これらの官能基の代表例としては、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基、酸無水物基、ヨードアセチル基などが挙げられる。
ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体の分離剤およびその製造方法の具体例として、例えば、実施例8に記載するようなHiTrap NHS-activated HP Columns(GEヘルスケア)およびそれを用いた第一の実施態様に係る単鎖抗体の固定化方法が挙げられる。簡潔に言えば、セファロース(ビーズ状のアガロース担体)のカルボキシル基をNHSでエステル化し、精製した第一の実施態様に係る単鎖抗体のアミノ基とアミド結合を形成させて固定化する。未反応のNHSエステルはエタノールアミンを加えてブロックすることができる。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明、および第二の発明における第一の実施態様の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第三の実施態様は、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体である。
該単鎖抗体は、好ましくは、さらに、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対する抗体であり、より好ましくは、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対して3.0×10−8M以下の解離定数を有する。また、該単鎖抗体は、これらの抗体のL鎖に結合することが好ましく、κ鎖に結合することがより好ましい。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第四の実施態様は、担体と担体の表面に化学結合によって結合する、第二の発明における第三の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体の分離剤である。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明、第二の発明における第二の実施態様、第二の発明における第三の実施態様の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第五の実施態様は、ヒト由来抗体のL鎖に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体である。
該単鎖抗体は、好ましくは、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体及び/又はヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対する抗体であり、より好ましくは、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に対して3.0×10−8M以下の解離定数を有し、及び/又は、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して1.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する。また、該単鎖抗体は、κ鎖に結合することが好ましい。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第六の実施態様は、担体と担体の表面に化学結合によって結合する、第二の発明における第五の実施態様に記載の単鎖抗体とを含む、ヒト由来抗体の分離剤である。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明、第二の発明における第二の実施態様、第二の発明における第五の実施態様の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第七の実施態様は、エクソソーム由来タンパク質を含むタンパク質に対して8.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体である。
該エクソソーム由来タンパク質を含むタンパク質は、好ましくは、Sf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質である。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第八の実施態様は、ウイルス由来タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体である。
該ウイルス由来タンパク質は、好ましくは、インフルエンザウイルス由来タンパク質であり、より好ましくは、B型インフルエンザウイルス由来タンパク質であり、さらに好ましくは、B型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Protein である。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
本発明の第二の発明における第九の実施態様は、炎症性タンパク質に対して1.0×10−2s−1以下の解離速度定数を有する単鎖抗体である。
該炎症性タンパク質は、好ましくは、ヒト由来炎症性タンパク質C-reactive Protein (CRP)である。
本実施態様におけるその他についての説明には、既出の第一の発明の説明が適用される。
以下では、本発明の第一の発明に係るスクリーニング法の実施例の前に、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するマウス由来単鎖抗体(以下、「抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体」と称することがある。)を、ファージライブラリの中からスクリーニングする方法を記載する。このとき、比較実験として、マウス由来単鎖抗体を提示していないファージライブラリを用いた場合についても記載する。さらに、いずれの場合においても、多重膜リポソームを用いた場合とイムノチューブを用いた実験について記載する。
10μmolのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1μmolのリン酸ジセチル(DCP)、0.5μmolのN−(4−(p−マレイミドフェニル)ブチリル)ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(MPB−DPPE)を、クロロホルム5ml中に溶解し、100mlナスフラスコ中で減圧下、クロロホルムを留去した。
イムノチューブ(Immunotube;Nunc社、Maxisorp(登録商標))に、PBSで濃度10μg/mlに調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体(Sigma、#I4506)溶液を1ml加えて4℃で一晩インキュベートした。その後、PBSで5回洗浄し、2%BSA−PBSを1ml加えて1時間インキュベートした。
この後、ファージライブラリと混合する際には、PBSでさらに5回洗浄してからファージライブラリ溶液を添加して用いた。
pelB leaderの遺伝子配列、Nco Iサイト、Spe Iサイト、フレキシブルリンカー(G4S)3の遺伝子配列、BamH Iサイト、Not Iサイト、FLAG−tagの遺伝子配列、c−myc−tagの遺伝子配列、Amber ストップコドン(TAG)、及びgIIIpコートタンパク質の遺伝子(N末端側250アミノ酸残基を欠損)を含むDNAを委託合成し、pT7 Blue(メルク社)のXba I/BamH Iサイトに挿入した。このpT7 Blue組換えファージミドベクターをpPLFMAΔ250gIIIpとし、一連のファージディスプレイの実験に用いた。
この組換えファージミドベクターで大腸菌TG1を形質転換し、2×YT培地(1%グルコース、50mg/Lアンピシリン含有)10ml中に植菌した。200ml三角フラスコ中で37℃、200rpmにおいて一晩培養した(前培養)。
上清を遠心分離によって回収し、PEG沈殿によって濃縮とするとともに、1mlのPBS中に再懸濁して、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリを取得した。
抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体の遺伝子を挿入していない組換えファージミドベクターpPLFMAΔ250gIIIpで大腸菌TG1を形質転換したこと以外は、上記1−3と同様にして、非提示ファージを取得した。
(疑似ファージライブラリの調製)
上記1−3及び1−4で取得した抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリと非提示ファージのライブラリを表1に示す比で混合し、疑似ファージライブラリを調製した。
(ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを用いたパニング)
以下のようにして、上記疑似ファージライブラリとして条件1を採用し、上記1−1で調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを用いて、以下のようにパニングを実施した。
まず各ラウンドにおいて行う操作を説明する。
ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsをIgG量が10μgとなるように加え、ボルテックスした。これを25℃、20,000g、2分間遠心分離し、上清を取り除いて、2%BSA−PBSを0.9ml加えて再懸濁した。
上記チューブ内のヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsに10mM グリシン−HCl(pH1.5)を0.9ml加えて懸濁し、BSAブロッキングしたチューブに移した。そして、さらに、室温(または4℃)でチューブを10分間転倒混和して、ファージを溶出した。
ここまでの操作を1ラウンドとする。上記操作によりラウンド1を行ったことになる。
その後、上記ラウンドをさらに3回実施した。すなわち、ラウンド4まで行った。各ラウンドで得られたコロニーからファージミドDNAを回収した。
疑似ファージライブラリとして条件2を採用したこと以外は実施例1−1と同様にしたものを実施例1−2とした。
上記疑似ファージライブラリとして条件1を採用し、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsではなく、上記1−2で調製した、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化チューブを用いて、以下のようにパニングを行った。
各ラウンドにおいて行う操作を説明する。
上記1−2の通り、イムノチューブ(Immunotube;Nunc社、Maxisorp(登録商標))に、PBSで濃度10μg/mlに調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体(Sigma、#I4506)溶液を1ml加えて4℃で一晩インキュベートした。その後、PBSで5回洗浄し、2%BSA−PBSを1ml加えて1時間インキュベートした。
次に、PBSTで5回洗浄し、2%BSA−PBSTを900μl加え、さらに、疑似ファージライブラリ溶液を100μl加えて25℃で1時間インキュベートした。
大腸菌TG1の培養液をOD=0.1となるように新しいLB培地10mlに植菌し、30℃で培養を行った。
ここまでの操作を1ラウンドとする。上記操作によりラウンド1を行ったことになる。
その後、上記ラウンドをさらに3回実施した。すなわち、ラウンド4まで行った。各ラウンドで得られたコロニーからファージミドDNAを回収した。
疑似ファージライブラリとして条件2を採用したこと以外は比較例1−1と同様にしたものを比較例1−2とした。
実施例1−1、実施例1−2、比較例1−1、比較例1−2で回収したファージミドDNAから、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認した。
表2−1及び表2−2に、ラウンド1〜4におけるパニング前後のファージ数、パニング前に対するパニング後のファージ数である回収率を示した。
また、表3に、ラウンド1〜4における、取得されたポジティブクローン数(すなわち、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−マウス由来単鎖抗体の遺伝子を含むクローン数)と、取得された全クローン数に対するポジティブクローン数の割合を示した。さらに、この割合を図1に示した。
以下では、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体(以下、「抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体」と称することがある。)を、ファージライブラリの中からスクリーニングする方法を記載する。
上記1−1と同様にして、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを調製した。
まず、公知の方法により、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体(Sigma、#I4506)でアナウサギを免疫した。そのウサギの脾臓から全RNAを抽出した。
次に、VLライブラリベクターを大腸菌から精製し、増幅したVH遺伝子を、Nco I/Spe Iサイトに導入し、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体を提示するファージライブラリベクター(2.0×107コロニー)を取得した。このときの宿主細胞も大腸菌TG1である。
[実施例2]
上記2−2で調製したファージライブラリと、上記2−1で調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを用いて、以下のようにパニングを実施した。
各ラウンドにおいて行う操作を説明する。
1.5mlエッペンドルフチューブに2%BSA−PBSを1ml加え、室温で1時間以上ブロッキングした。このブロッキングは使用するチューブ全てについて行った。ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsをIgG量が10μgとなるように加え、ボルテックスした。これを4℃、20,000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。これに、2%BSA−PBSで10倍希釈したファージライブラリを1ml加え、4℃で回転転倒しながら1晩インキュベートした。
続いて、4℃、20000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。10mMグリシン−HCl(pH1.5)を0.9ml加えて懸濁し、溶液を別のエッペンドルフチューブに移した。4℃で回転転倒しながら10分間インキュベートし、ファージを溶出した。
4℃、20000gで2分間遠心分離し、上清を別のエッペンドルフチューブに移した。さらに、2M Tris−HCl(pH8.0)を0.1ml加えて、ファージ溶出液を中和した。
この溶液を、2×YT培地(1%グルコース、50mg/Lアンピシリン含有)に懸濁し、30℃、200rpmで振とう培養した。OD=1.0付近まで増殖させた後、VCSM13を感染多重度(MOI)=20となるように添加し、37℃で30分インキュベートし、30℃、3000gで10分間遠心分離した。
その後、上記ラウンドをさらに2回実施した。すなわち、ラウンド3まで行った。各ラウンドで得られたコロニーからファージミドDNAを回収した。
ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体を結合しなかった多重膜リポソームを用いたこと以外は実施例2と同様にしたものを比較例2とした。
実施例2、比較例2で回収したファージミドDNAから、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認した。
当該遺伝子内におけるCDR領域の決定は、IMGT(http://www.imgt.org/)のVquestサーチエンジンを利用して行った。
図2に、実施例2及び比較例2におけるパニング前、ラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時におけるファージ数を示した。
また、図3に、実施例2及び比較例2におけるラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時における各ファージ数を、それぞれパニング前のファージ数で除した回収率(%)を示した。
[実施例3−1]
各ラウンドで回収されたファージミド含有大腸菌のペレット単位(すなわち、シングルコロニー化しておらず、ペレットに含まれる大腸菌が含むファージ全体)から得られたウサギ由来単鎖抗体について、以下のようにして抗原結合活性を評価した。
次に、上記固相化したプレートをPBSで洗浄し、10%のBlocking One−PBS(ナカライテスク)を300μl加えて25℃で1時間インキュベート後(ブロッキング)、PBSTでプレートを洗浄した。
これを10% Blocking One−PBSTで10倍に希釈し、上記ブロッキング及びPBSTによる洗浄後のプレートに100μlずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。
その後、PBSTでプレートを洗浄し、TMB溶液を100μlずつ加えて5分間インキュベートし、0.3M硫酸を100μlずつ加えて反応を停止した。
マイクロプレートリーダーを用いて450nmにおける吸光度を測定した。なお、650nmを副波長とした。
さらに、ラウンド2終了時には、ヒトIgG1抗体、ヒトIgG2抗体、ヒトIgG3抗体、ヒトIgG4抗体に加えて、ヒトIgA抗体に対しても特異的に結合するファージが濃縮されていることが分かった。
[実施例3−2]
各ラウンドで回収されたファージミド含有大腸菌のコロニーから得られたウサギ由来単鎖抗体について、以下のようにして抗原結合活性を評価した。
尚、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法において取得されたクローンの名称として、例えば、「ラウンド1終了時のクローン番号1」のクローンを「R1−1」や「I−1」と略すことがある。同様に、例えば、「ラウンド2終了時のクローン番号1」のクローンを「R2−1」や「II−1」と、「ラウンド3終了時のクローン番号1」のクローンを「R3−1」や「III−1」と略すことがある。
ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを用いることで、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に極めて特異的に結合するファージを効率的に回収することができた。ここで、1ラウンドのパニングで、全クローン数中のポジティブクローン数の割合が50%を越える結果は、従来技術では困難であり、極めて稀なものである。また、ラウンドを重ねるごとにポジティブクローン数が顕著に増加し、結合量も顕著に増加していることから、多重膜リポソームを用いた本発明にかかるスクリーニング方法は、非常に高効率なスクリーニング技術であるといえる。
[実施例4]
ラウンド1終了時に得られた48コロニー、ラウンド2終了時に得られた48コロニー、及びラウンド3終了時に得られた96コロニーのうち、抗原結合活性評価2で吸光度が2.5を超えたコロニーのそれぞれについて、Biacore X−100(GEヘルスケア社)を用いて解離速度定数koffの測定を行った。
ファージミド含有大腸菌のコロニーを、96ウェルディープウェルプレート内で、1mlのOvernight Express(登録商標、メルク)培地中に植菌し、30℃、1600rpmで24時間培養後、遠心分離で上清を除去した。これに、0.2mlのBugbuster、及び0.2μLのBenzonase Nucleaseを加えて溶菌後、遠心分離し、上清を回収した。回収した上清をPBSTで10倍希釈した。
以下の測定条件で測定を行った。
Sensor Chip: human IgG−coupled CM5(15000 RU)
Running buffer: PBST
Binding time: 300 sec
Dissociation time: 180 sec
Elution: 10mM Glycine,pH 1.5
[実施例5]
解離速度定数koffの測定の結果で、1位(R3−75)、2位(R3−23)、3位(R3−26)、4位(R3−43)、5位(R3−58)、6位(R2−18)、7位(R2−16)、8位(R1−27)、11位(R3−8)、68位(R1−7)について、ウサギ由来単鎖抗体遺伝子の遺伝子配列からアミノ酸配列を決定した。なお、4位(R3−43)はシーケンスできなかった。
[実施例6]
解離速度定数koffの測定の結果で、1位(R3−75)、2位(R3−23)、6位(R2−18)、7位(R2−16)、8位(R1−27)、68位(R1−7)となった各コロニーから取得されたウサギ由来単鎖抗体について、Biacore X−100(GEヘルスケア社)を用いて、ヒトIgG1抗体との結合性を測定した。
得られたファージミド含有大腸菌のコロニーを、500mlバッフル付フラスコ内で、50mlのOvernight Express(登録商標、メルク)培地中に植菌し、30℃、200rpmで24時間培養後、遠心分離で上清を除去した。これに、5mlのBugbuster、及び0.2μLのBenzonase Nucleaseを加えて溶菌後、遠心分離し、上清を回収した。これをPBSTで10倍希釈し、測定に用いた。
以下の測定条件で測定を行った。
Sensor Chip: human IgG1-coupled CM5 (5000 RU)
Running buffer: PBST
Binding time: 540 sec
Dissociation time: 120 sec
Elution: 10mM Glycine, pH 1.5
サンプルの代わりに、PBSTで最終濃度10μg/mLに調製したプロテインA(ナカライテスク、29435-14)を用いたこと以外は実施例6と同様にしたものを比較例6−1とした。
サンプルの代わりに、mouse scFv-FM(可溶性画分をPBSTで10倍希釈)を用いたこと以外は実施例6と同様にしたものを比較例6−2とした。
得られたファージミド含有大腸菌のコロニーを、500mlバッフル付フラスコ内で、50mlのOvernight Express(登録商標、メルク)培地中に植菌し、30℃、200rpmで24時間培養後、遠心分離で上清を除去した。これに、5mlのBugbuster、及び0.2μLのBenzonase Nucleaseを加えて溶菌後、遠心分離し、上清を回収した。これをPBSTで10倍希釈し、測定に用いた。
[実施例7]
解離速度定数koffの測定の結果で、1位(R3−75)、2位(R3−23)、3位(R3−26)、6位(R2−18)、7位(R2−16)、8位(R1−27)、68位(R1−7)となったコロニーから取得されたウサギ由来単鎖抗体について、Biacore X−100(GEヘルスケア社)を用いて、ヒトIgG1抗体に対する解離定数KDの測定を行った。
ファージミドベクターよりT7 promoter primerおよびM13 primerを用いてウサギ由来単鎖抗体遺伝子を含むDNA断片をPCRによって増幅した。DNA断片を精製後、制限酵素Xba IおよびNot Iで消化し、pET22ベクター(メルク)のXba I/Not Iサイトに挿入した。構築したウサギ由来単鎖抗体発現ベクターは、N末端側にペリプラズム移行シグナル配列(pelB leader signal)、C末端側にヒスチジンタグ(6xHis-tag)を融合された形で発現される。発現後、ウサギ由来単鎖抗体はペリプラズムに移行し、pelB leader配列はシグナルペプチダーゼによって切断される。
得られた培養液を遠心分離(10000rpm、4℃、15分)し、培養上清を得た。また、菌体は、Bugbuster、リゾチーム、Benzonase Nucleaseを含む5mlの溶解バッファと懸濁し、37℃で1時間インキュベートすることで破砕した。10000rpm、4℃、15分間遠心分離し、上清を菌体内可溶性画分として回収した。
以下の測定条件で測定を行った。
Sensor Chip: human IgG1-coupled CM5 (5000 RU)
Running buffer: PBST
Binding time: 180 sec
Dissociation time: 600 sec
Elution: 10mM Glycine, pH 1.5
Mode: Single cycle kinetics mode
[実施例8]
(単鎖抗体の調製)
Jar Fermenterを用いた流加培養により、「R3−26」の単鎖抗体を大量生産した。さらに、培養上清中に分泌された単鎖抗体をHisTrap HPカラム(GEヘルスケア)を利用した固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。さらに、脱塩・バッファ交換用Hi Trap Desaltingカラム(GEヘルスケア)を用いて0.5M NaClを含む0.1M炭酸バッファー(pH8.3)に置換、さらには、限外ろ過を用いて濃縮した。最終的に、濃度1mg/ml、体積10mlの単鎖抗体を得た。
HiTrap NHSカラム5ml(GEヘルスケア)の担体であるセファロース(ビーズ状のアガロース担体)のカルボキシル基をNHSでエステル化し、精製した上記単鎖抗体を供給して、そのアミノ基とアミド結合を形成させて固定化した。未反応のNHSエステルはエタノールアミンを加えてブロックした。
単鎖抗体を固定した上記カラム5mlをクロマトグラフィーシステムAKTA Purifier UPC 10(GEヘルスケア)にセットし、PBSで平衡化した。そこへ、1mg/mlに調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体(Sigma、#I4506)を1ml/minの流速で10ml分供給した。その後、カラムをPBSで洗浄し、UV280の値がベースラインとなったのを確認後、0.5M アルギニン(pH1.5)を供給して、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体をカラムから溶出した。
以上の結果より、本発明のスクリーニング方法によって選択された単鎖抗体の、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体の分離剤としての利用可能性が示された。
先に検討したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体固定化MLVsを用いたパニングにおいて、ラウンド1〜3で得られた合計192クローンの抗原特異性ならびにアミノ酸配列の評価を行った結果、3クローン(R2−18、R3−8、R3−75)がヒトIgG抗体のみならず、ヒトIgA抗体にも強く結合していることが明らかとなった。
さらに、これらの単鎖抗体の抗原特異性をウェスタンブロットで解析した結果、これらは、ヒト抗体の軽鎖(L鎖)、具体的にはκ鎖を特異的に認識していることが明らかとなった。ヒトIgG抗体とヒトIgA抗体の定常部のアミノ酸配列を比較した場合、重鎖(H鎖)のアミノ酸配列は全く異なるが、軽鎖(L鎖)のアミノ酸配列はλ鎖又はκ鎖に大別され、配列はそれぞれで共通である。このことは、ヒトIgM抗体、ヒトIgE抗体、ヒトIgD抗体等でも同様である。したがって、これら3クローンは、ヒトIgG抗体、ヒトIgA抗体のみならず、ヒトIgM抗体、ヒトIgE抗体、ヒトIgD抗体等、全てのヒト抗体に対し、特異的に結合できる非常に付加価値の高い抗体であることが示唆された。
そこで、先に調製した、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリ中から、このような、ヒト抗体のL鎖に特異的に結合するウサギ由来単鎖抗体を高効率に回収するために、新たに以下のパニングを行うことにした。
尚、抗−ヒト抗体L鎖−ウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法において取得されたクローンの名称として、例えば、「ラウンド1終了時のクローン番号1」のクローンを「IgA R1−1」や「IgA I−1」と略すことがある。同様に、例えば、「ラウンド2終了時のクローン番号1」のクローンを「IgA R2−1」や「IgA II−1」と、「ラウンド3終了時のクローン番号1」のクローンを「IgA R3−1」や「IgA III−1」と略すことがある。
上記1−1と同様にして、ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体固定化MLVsを調製した。ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体には、Sigmaの#I4036を用いた。
上記2−2と同様にして、抗−ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリを調製した。
[実施例9−1]
上記9−2で調製したファージライブラリと、上記9−1で調製したヒト血清由来IgAポリクローナル抗体固定化MLVsを用いて、上記2−3と同様にパニングを実施した。
ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体を固定化しなかった多重膜リポソームを用いたこと以外は実施例9−1と同様にしたものを比較例9−1とした。
上記2−2と同様にして、実施例9−1、比較例9−1で回収したファージミドDNAから、抗−ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体−ウサギ由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認した。
図11に、実施例9−1及び比較例9−1におけるパニング前、ラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時におけるファージ数を示した。
また、図12に、実施例9−1及び比較例9−1におけるラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時における各ファージ数を、それぞれパニング前のファージ数で除した回収率(%)を示した。
[実施例9−2]
上記3−1と同様に、各ラウンドで回収されたファージミド含有大腸菌のペレット単位(すなわち、シングルコロニー化しておらず、ペレットに含まれる大腸菌が含むファージ全体)から得られたウサギ由来単鎖抗体について、以下のようにして抗原結合活性を評価した。ただし、プレートに固相化した抗原としてはヒトIgA抗体(Sigma、#I4036)を用いたのみであり、抗原結合活性評価もヒトIgA抗体に対してしか行わなかった。すなわち、ヒトIgG1抗体等の固相化およびヒトIgG1抗体等に対する抗原結合活性評価は行わなかった。
[実施例9−3]
各ラウンドで回収されたファージミド含有大腸菌のコロニーから得られたウサギ由来単鎖抗体について、3−2と同様にして抗原結合活性を評価した。尚、ここでは、プレートに固相化した抗原としてはヒトIgA抗体(Sigma、#I4036)を用いただけでなく、3−2と同様にヒトIgG1抗体等も用い、ヒトIgG1抗体等に対する抗原結合活性評価も行った。
ラウンド3で回収された単鎖抗体は、すべてヒトIgA抗体に結合するものであり、その結合活性も極めて高かった。また、ヒトIgA抗体のみならず、ヒトIgG1抗体、ヒトIgG2抗体、ヒトIgG3抗体、及びヒトIgG4抗体のすべてに結合するものであった。この結果より、パニングが極めて高効率に実施されていることがわかった。
[実施例10]
ラウンド1終了時に得られた32コロニー、ラウンド2終了時に得られた32コロニー、および、ラウンド3終了時に得られた32コロニーについて、ウサギ由来単鎖抗体遺伝子の遺伝子配列からアミノ酸配列を決定した。
また、抗原抗体反応の特異性に大きく関与するVHドメインのCDR3領域のアミノ酸配列について、アミノ酸残基数、32クローン中の出現数、32クローン中の出現確率を図17−2に示した。「ネガティブクローン」とは、VHドメインのCDR3領域のアミノ酸配列が決定できなかったクローンに関するものである。こちらにも、各アミノ酸配列について図中に示す通り配列番号を付した。
同様にして、ラウンド2終了時に得られた32コロニーについては図17−3、図17−4に、ラウンド3終了時に得られた32コロニーについては図17−5、図17−6に示した。
さらに、参考のために、<2.ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法>で得られた「R2−18」、「R3−8」、「R3−75」のVHドメインのアミノ酸配列を図17−7に示した。
さらに、備考欄に、例えば「共通3(R3−75と同一)」と記載されているクローンがある。これは、<2.ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法>で得られた「R3−75」と同一のクローンであることを示している。
さらに、ラウンド1〜3終了時に得られた「共通1」〜「共通7」のクローンの数を、図17−8、図17−9、図17−10にまとめた。
図17−6から分かるように、ラウンド3においては、<2.ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法>で得られた、「R2−18」、「R3−8(ただし、当該クローンは、R2−18と同一クローンである。)」、「R3−75」が含むCDR3のアミノ酸配列である「ATRYDSYGYAYNYWFGTLW(配列番号30、19残基)」を含むVHドメインが、全32クローン中26クローン取得され、81.3%の割合で存在した。
さらに、他の2クローンは、<2.ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合するウサギ由来単鎖抗体のスクリーニング方法>で得られた、「R3−75(1位)」と同一の共通3のクローンであった。
[実施例11]
センサーチップとしてヒトIgA抗体固定化CM5を用いたこと以外は<4.解離速度定数koffの測定>と同様にして、ラウンド3終了時に得られた32コロニーについて解離速度定数koffの測定を行った。その結果を図18、表12に示した。また、R2も併せて記載した。
「IgA R1−2」を用いた以外は実施例11と同様にしたものをネガティブコントロールとし、比較例11とした。
以下では、Sf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質(以下、EC2hFcと称することがある。)に結合するウサギ由来単鎖抗体(以下、「抗−EC2hFc−ウサギ由来単鎖抗体」と称することがある。)を、ファージライブラリの中からスクリーニングする方法を記載する。
EC2hFcの遺伝子を含む塩基配列(配列番号148)をPCRで増幅し、昆虫細胞用発現ベクターpACGP67(BD Bioscience社製)中のBamH Iサイト内に導入した。構築したベクターで昆虫細胞Sf9を形質転換し、さらに、バキュロウィルスを感染させて、10%FBSを含むGrace培地中で培養した。培養上清中に生産されたEC2hFc遺伝子が導入された組換えバキュロウィルスを回収した。SF900 SFM培地中で継代している昆虫細胞Sf9に対し、組換えバキュロウィルスを感染させることで、培養上清中にEC2hFcを産生させた。上清を遠心分離によって回収し、限外濾過ならびにHi Trap Desaltingカラムを用いたゲルクロマトグラフィによってEC2hFcを回収した。回収されたEC2hFcは、SDS−PAGE、ならびに抗CD9抗体および抗ヒトIgG抗体を用いたウェスタンブロット解析によって確認した。
上記1−1と同様にして、EC2hFcを固定化したMLVsを調製した。
CD9を細胞膜上に強制発現させたHEK293T細胞を免疫したこと以外は上記2−2と同様にして、HEK293T細胞にCD9を強制発現した細胞に対するウサギ由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリを調製した。
[実施例12]
上記10−3で調製したファージライブラリと、上記10−2で調製したEC2hFc固定化MLVsを用いて、上記2−3と同様にパニングを実施した。
上記2−2と同様にして、実施例12で回収したファージミドDNAから、抗−EC2hFc−ウサギ由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認し、シーケンス解析によって配列決定を行った。
図19に、実施例12におけるパニング前、ラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時、ラウンド4終了時におけるファージ数を示した。
また、図20に、実施例12におけるラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時、 ラウンド4終了時における各ファージ数を、それぞれパニング前のファージ数で除した回収率(%)を示した。
[実施例13]
<4.解離速度定数koffの測定>と同様にして、ラウンド3終了時に得られた48コロニー、ならびに、ラウンド4終了時に得られた48コロニーについて解離速度定数koffの測定を行った。その結果を図21、図22−1、図22−2に示した。
以下では、B型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Protein に結合するウサギ由来単鎖抗体(以下、「抗−B型インフルエンザウイルス由来NP−ウサギ由来単鎖抗体」と称することがある。)を、ファージライブラリの中からスクリーニングする方法を記載する。
NPの遺伝子を含む塩基配列(配列番号149)をpETBAベクター(株式会社バイオダイナミクス研究所製)内にクローニングし、本ベクターで大腸菌Rosetta (DE3)を形質転換した。形質転換体をOvernight Express TB medium(+Amp)100ml中に植菌し、30℃、200rpmで24時間培養した。菌体を遠心分離で回収後、Bugbuster、リゾチーム、Benzonaseを含むLysis Bufferを用いて溶菌し、遠心分離によって上清を回収した。さらに、これをHis Trap HPカラムにアプライし、カラムを洗浄後、500 mMイミダゾールを用いて溶出した。PBSで透析後、4℃で保存した。
上記1−1と同様にして、B型インフルエンザウイルス由来NPを固定化したMLVsを調製した。
B型インフルエンザウイルス由来NPでアナウサギを免疫したこと以外は上記2−2と同様にして、抗−B型インフルエンザウイルス由来NP−ウサギ由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリを調製した。
[実施例14]
上記11−3で調製したファージライブラリと、上記11−2で調製したB型インフルエンザウイルス由来NP固定化MLVsを用いて、上記2−3と同様にパニングを実施した。
上記2−2と同様にして、実施例14で回収したファージミドDNAから、抗−B型インフルエンザウイルス由来NP−ウサギ由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認し、シーケンス解析によって配列決定を行った。
図23に、実施例14におけるパニング前、ラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時、ラウンド4終了時におけるファージ数を示した。
また、図24に、実施例14におけるラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時、 ラウンド4終了時における各ファージ数を、それぞれパニング前のファージ数で除した回収率(%)を示した。
[実施例15]
<4.解離速度定数koffの測定>と同様にして、ラウンド3終了時に得られた48コロニー、ならびに、ラウンド4終了時に得られた48コロニーについて解離速度定数koffの測定を行った。その結果を表14−1、表14−2、表14−3に示した。
以下では、ヒト由来炎症性タンパク質C-reactive Protein (CRP)に結合するウサギ由来単鎖抗体(以下、「抗−ヒト由来CRP−ウサギ由来単鎖抗体」と称することがある。)を、ファージライブラリの中からスクリーニングする方法を記載する。
ヒト由来CRPとしては、rCRP(C‐リアクティブプロテイン(リコンビナント))(オリエンタル酵母工業株式会社製、#47190000)を用いた。
上記1−1と同様にして、ヒト由来CRPを固定化したMLVsを調製した。
ヒト由来CRPでアナウサギを免疫したこと以外は上記2−2と同様にして、抗−CRP−ウサギ由来単鎖抗体を提示するファージのライブラリを調製した。
[実施例16]
上記12−3で調製したファージライブラリと、上記12−2で調製したヒト由来CRP固定化MLVsを用いて、上記2−3と同様にパニングを実施した。
上記2−2と同様にして、実施例16で回収したファージミドDNAから、抗−ヒト由来CRP−ウサギ由来単鎖抗体の遺伝子の有無を確認し、シーケンス解析によって配列決定を行った。
図25に、実施例16におけるパニング前、ラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時におけるファージ数を示した。
また、図26に、実施例16におけるラウンド1終了時、ラウンド2終了時、ラウンド3終了時における各ファージ数を、それぞれパニング前のファージ数で除した回収率(%)を示した。
[実施例17]
<4.解離速度定数koffの測定>と同様にして、ラウンド2終了時に得られた48コロニー、ならびに、ラウンド3終了時に得られた48コロニーについて解離速度定数koffの測定を行った。その結果を表16に示した。
Claims (12)
- 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がSf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記融合タンパク質に対して8.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する、方法。 - 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がB型インフルエンザウイルス由来Nucleotide-binding Proteinであり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記Nucleotide-binding Proteinに対して6.68×10−5s−1以下の解離速度定数を有する、方法。 - 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がヒト由来炎症性タンパク質C-reactive Protein (CRP)であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記C-reactive Protein
(CRP)に対して1.21×10−5s−1以下の解離速度定数を有する、方法。 - Sf9細胞株由来CD9のExtracellular Domain 2 (EC2)部分のみとヒト抗体のFcドメインとの融合タンパク質に対して8.0×10−3s−1以下の解離速度定数を有する、ウサギ由来の単鎖抗体。
- 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がヒト血清由来IgAポリクローナル抗体であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して8.69×10−5s−1以下の解離速度定数を有する、方法。 - 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体に対して3.7×10−5s−1以下の解離速度定数を有し、
前記単鎖抗体が、さらにヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に結合し、該ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体に対して9.88×10−5s−1M以下の解離速度定数を有する、方法。 - 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体に対して3.7×10−5s−1以下の解離速度定数を有し、
前記単鎖抗体が、前記ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体のL鎖に結合する単鎖抗体である、方法。 - 請求項6に記載の方法であって、選択されるファージの提示する単鎖抗体が、前記ヒト血清由来IgAポリクローナル抗体のL鎖に結合する単鎖抗体である、方法。
- 多重膜リポソームに結合した抗原を準備する工程、
単鎖抗体を提示するファージライブラリを準備する工程、及び
前記ファージライブラリから、前記多重膜リポソームに結合した抗原に結合する単鎖抗体を提示するファージを選択する工程
を含み、
前記選択工程は、前記ファージが提示する単鎖抗体の抗原に対する解離速度定数を算出し、該解離速度定数の小さい順にランキングする工程を含む、
抗原に結合する単鎖抗体のスクリーニング方法において、
前記抗原がヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体であり、前記単鎖抗体がウサギ由来であり、選択されるファージの提示する単鎖抗体が前記ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体に対して3.7×10−5s−1以下の解離速度定数を有し、
前記単鎖抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号12の配列であり、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号21の配列である、方法。 - 請求項5に記載の方法であって、選択されるファージの提示する重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号113の配列である、方法。
- 請求項1〜3及び5〜10のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によりスクリーニングする工程、
スクリーニングされた単鎖抗体のアミノ酸配列を決定する工程、
決定されたアミノ酸配列の可変領域の配列に基づき、抗体をコードするDNAを作成する工程、及び
作成されたDNAを宿主細胞で発現させる工程
を含む、抗体の製造方法。 - 抗体をコードするDNAがヒト化抗体をコードする請求項11に記載の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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