JP6983400B2 - 二酸化炭素吸着剤、二酸化炭素吸着剤の再生方法、および、脱離型の層状金属水酸化物の製造方法 - Google Patents

二酸化炭素吸着剤、二酸化炭素吸着剤の再生方法、および、脱離型の層状金属水酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化炭素吸着剤、二酸化炭素吸着剤の再生方法、および、脱離型の層状金属水酸化物の製造方法に関する。
層状金属水酸化物は、金属水酸化物を含んでいるホスト層と、陰イオンおよび水を含んでいるゲスト層と、が交互に積層した、層状の化合物である。
層状金属水酸化物を一般式で表すと、[M2+ 1−x3+ (OH)x+[An− x/nx−・mHOにて示され、このとき、ホスト層は、[M2+ 1−x3+ (OH)x+にて示され、ゲスト層は、[An− x/nx−・mHOにて示される。
ホスト層は、2価の金属イオン(M2+:Mg2+、Zn2+、Co2+、または、Ni2+等)と、3価の金属イオン(M3+:Al3+、Fe3+、Cr3+、または、Ga3+等)と、を含み、金属イオンを6つのヒドロキシル基が取り込んで形成される八面体が互いに稜を共有することにより形成され得る。ホスト層は、2価の金属イオンの一部が3価の金属イオンによって置換されているため、正電荷を有し、当該ホスト層では、水酸化物シートが重なって層状構造を形成している。
一方、ゲスト層は、陰イオン(An−:Cl、NO 、CO 2−、SO 2−、または、PO 3−等)と、水とを含み、更に、その他の分子も含み得る。層状金属水酸化物が電気的に中性となるように、ゲスト層は陰イオンを含んでいる。
ホスト層に含まれる金属イオンの組成を変化させることにより、ホスト層の電荷密度を制御することができる。ホスト層の電荷密度を特定の値に制御すれば、特定の陰イオンを、当該ホスト層に吸着させることができる。つまり、ホスト層に含まれる金属イオンの組成を変化させることにより、当該ホスト層に、特定の陰イオンに対する吸着特性を付与することができる。
ホスト層に吸着した特定の陰イオンを脱離させることができれば、当該ホスト層を再生可能な機能性材料として利用することができる。それ故に、近年、ホスト層に特定の陰イオンを吸着させる技術のみならず、ホスト層に吸着した特定の陰イオンを脱離させる技術の開発も、盛んに行われている。
例えば、非特許文献1および非特許文献2には、2価の金属イオンとしてMg2+、3価の金属イオンとしてAl3+を用い、陰イオンとしてCO 2−(換言すれば、二酸化炭素)を用いた層状金属水酸化物が開示されている。更に、これらの非特許文献は、層状金属水酸化物を加熱した場合の二酸化炭素の放出挙動と、層状金属水酸化物の層構造の変化と、について開示している。
Nick D. Hutson et. al., Chem. Mater.,2004, 16, p.4135-4143 Toshiyuki Hibino et. al., Clays and Clay minerals, Vol.43, No.4, p.427-432, 1995
しかしながら、従来の層状金属水酸化物は、層状金属水酸化物から二酸化炭素を効率良く脱離させるためには高温条件(例えば、400℃をこえる高温条件)が必要であるとともに、層状金属水酸化物から二酸化炭素を脱離させるときに層状金属水酸化物の層構造が破壊されるという問題点を有している。なお、層状金属水酸化物の層構造が破壊されると、層構造を再構築しない限り当該層状金属水酸化物に対して繰り返して二酸化炭素を吸着および脱離させることができない。
本発明の一態様は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温条件にて層状金属水酸化物から二酸化炭素を効率良く脱離させることができるとともに、層状金属水酸化物から二酸化炭素を脱離させるときに層状金属水酸化物の層構造の少なくとも一部が破壊されない技術を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を行った結果、層状金属水酸化物をナノ粒子化することによって、低温条件にて層状金属水酸化物から二酸化炭素を効率良く脱離できるとともに、層状金属水酸化物から二酸化炭素を脱離させるときに層状金属水酸化物の層構造を少なくとも一部は維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、現在まで層状金属水酸化物をナノ粒子化したものを二酸化炭素吸収剤として使用した例はない。即ち、本発明は以下の構成を含む。
〔1〕平均粒子径が150nm以下である脱離型の層状金属水酸化物を含んでいることを特徴とする、二酸化炭素吸着剤。
〔2〕上記脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものである、〔1〕に記載の二酸化炭素吸着剤:
[M2+ 1−x3+ (OH)] ・・・一般式(1)
(一般式(1)中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、xは0<x<1の数を示す)。
〔3〕上記脱離型の層状金属水酸化物は、上記一般式(1)において、0.34≦x<1のものであることを特徴とする、〔2〕に記載の二酸化炭素吸着剤。
〔4〕二酸化炭素を吸着している〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の二酸化炭素吸着剤を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有することを特徴とする、二酸化炭素吸着剤の再生方法。
〔5〕平均粒子径が150nm以下である非脱離型の層状金属水酸化物を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有することを特徴とする、脱離型の層状金属水酸化物の製造方法。
〔6〕上記非脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものである、〔5〕に記載の製造方法:
[M2+ 1−x3+ (OH)] ・・・一般式(1)
(一般式(1)中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、xは0<x<1の数を示す)。
〔7〕上記非脱離型の層状金属水酸化物は、上記一般式(1)において、0.34≦x<1のものであることを特徴とする、〔6〕に記載の製造方法。
本発明の一態様によれば、低温条件にて層状金属水酸化物から二酸化炭素を脱離できるとともに、層状金属水酸化物から二酸化炭素を脱離させるときに層状金属水酸化物の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、本発明の一態様によれば、層状金属水酸化物に対する二酸化炭素の吸着および脱離を、繰り返し行うことができるという効果を奏する。
反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、の粉末X線回折測定(XRD)によるXRDピークを示す。 反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、の走査型電子顕微鏡観察(SEM)による粒子形状および動的光散乱測定(DLS)による平均粒子径を示す。 反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、の結合プラズマ発光分光分析(ICP)によるAlイオンおよびMgイオンの含有量およびAlイオンおよびMgイオンの含有割合から計算される層状金属水酸化物の組成式について示す。 応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、を常温から600℃まで加温させることによる水および二酸化炭素の脱離量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果示す。 反応時間が4時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、を常温、350℃、および600℃に加温後の層状金属水酸化物の構造を粉末X線回折測定(XRD)によるXRDピークを示す。 反応時間が4時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子と、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)と、を二酸化炭素の吸脱着を繰り返した際の二酸化炭素の脱離量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した結果示す。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意図する。加えて、本明細書において「層状金属水酸化物」とは、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)と同じ結晶構造を有する層状金属水酸化物を意図する。
〔1.二酸化炭素吸着剤〕
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤は、平均粒子径が150nm以下である脱離型の層状金属水酸化物を含んでいる。
本明細書において「脱離型の層状金属水酸化物」とは、ゲスト層が脱離しているホスト層を備えている層状金属水酸化物を意図する。このとき、「脱離型の層状金属水酸化物」では、ホスト層から少なくとも一部のゲスト層が脱離していればよく、ホスト層から全てのゲスト層が脱離している必要はない。例えば、ホスト層に対してゲスト層が飽和状態にて吸着しているときのゲスト層の重量を「1」としたとき、「脱離型の層状金属水酸化物」は、ホスト層に対して、0.9以下、より好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.1以下のゲスト層が吸着しているものであり得る。
一方、本明細書において「非脱離型の層状金属水酸化物」とは、ゲスト層が吸着しているホスト層を備えている層状金属水酸化物を意図する。このとき、「非脱離型の層層状金属水酸化物」では、少なくとも一部のホスト層に対してゲスト層が吸着していればよく、ホスト層に対してゲスト層が飽和状態にて吸着している必要はない。例えば、ホスト層に対してゲスト層が飽和状態にて吸着しているときのゲスト層の重量を「1」としたとき、「非脱離型の層状金属水酸化物」は、ホスト層に対して、0.1よりも多い、0.2よりも多い、0.3よりも多い、0.4よりも多い、0.5よりも多い、より好ましくは0.6よりも多い、より好ましくは0.7よりも多い、より好ましくは0.8よりも多い、最も好ましくは0.9よりも多いゲスト層が吸着しているものであり得る。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤では、脱離型の層状金属水酸化物は、平均粒子径が、150nm以下、好ましくは140nm以下、より好ましくは130nm以下、より好ましくは120nm以下、より好ましくは110nm以下、より好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、より好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。平均粒子径の下限値は、限定されないが、例えば、0.01nm、0.1nm、1nm、または5nmであってもよい。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の少なくとも一部の層構造を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる二酸化炭素吸着剤を実現することができる。
平均粒子径は、動的光散乱測定(DLS)によって求めることができる。なお、動的光散乱測定は、市販の装置(例えば、大塚電子株式会社製 ELSZ−1000ZS)を用い、当該市販の装置に添付のプロトコルにしたがって行えばよい。
上記脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものであってもよい:
[M2+ 1−x3+ (OH)] ・・・一般式(1)
(一般式(1)中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、xは0<x<1の数を示す)。
「M2+」としては、特に限定されないが、例えば、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、および、Sr2+を挙げることができる。一方、「M3+」としては、特に限定されないが、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+、Ga3+、および、Co3+を挙げることができる。一般式(1)における「M2+」と「M3+」との組み合わせは、特に限定されず、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、および、Sr2+からなる群より選択される任意の「M2+」と、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+、Ga3+、および、Co3+からなる群より選択される任意の「M3+」と、の組み合わせであり得る。「M2+」および「M3+」の各々は、単一種類のイオンによって構成されていてもよいが、複数種類のイオンによって構成されていてもよい。つまり、「M2+」および「M3+」の各々は、それぞれの群より選択される複数種類のイオンが混在して構成されるものであってもよい。なお、複数種類のイオンによって構成されている場合には、2種類のイオン、3種類のイオン、4種類のイオン、または、5種類以上のイオンによって構成され得る。
二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素をより低温条件にて脱離でき、かつ、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造をより安定に維持できるという観点からは、上述した「M2+」の中では、Mg2+、Zn2+、または、Ni2+がより好ましく、上述した「M3+」の中では、Al3+、または、Ga3+がより好ましく、上述した「M2+」と「M3+」との組み合わせの中では、Mg2+とAl3+との組み合わせ、Zn2+とAl3+との組み合わせ、または、Ni2+とAl3+との組み合わせがより好ましいといえる。
xは、0<x<1の数であればよいが、0.34≦x<1の数であることが好ましく、0.35≦x<1の数であることが更に好ましい。これらxの値の範囲では、xの上限値は「1未満」となっているが、当該上限値に限定されず、上限値は「0.90以下」、「0.80以下」、「0.70以下」、「0.60以下」、「0.50以下」、または、「0.40以下」であってもよい。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる二酸化炭素吸着剤を実現することができる。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤に含まれている脱離型の層状金属水酸化物の量は、特に限定されず、例えば、二酸化炭素吸着剤を100重量%とした場合に、0.001重量%〜100重量%であってもよく、0.01重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜95重量%であってもよく、0.1重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜80重量%であってもよく、0.1重量%〜70重量%であってもよく、0.1重量%〜60重量%であってもよく、0.1重量%〜50重量%であってもよく、0.1重量%〜40重量%であってもよく、0.1重量%〜30重量%であってもよく、0.1重量%〜20重量%であってもよく、0.1重量%〜10重量%であってもよい。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤は、脱離型の層状金属水酸化物以外の成分を含有し得る。これらの成分としては、例えば、非脱離型の層状金属水酸化物、および、脱離型および/または非脱離型の層状金属水酸化物を担持する担体(例えば、多孔質の担体)、を挙げることができる。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤に含まれている脱離型の層状金属水酸化物以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、二酸化炭素吸着剤を100重量%とした場合に、0重量%〜99.999重量%であってもよく、0重量%〜99.99重量%であってもよく、0重量%〜99.9重量%であってもよく、5重量%〜99.9重量%であってもよく、10重量%〜99.9重量%であってもよく、20重量%〜99.9重量%であってもよく、30重量%〜99.9重量%であってもよく、40重量%〜99.9重量%であってもよく、50重量%〜99.9重量%であってもよく、60重量%〜99.9重量%であってもよく、70重量%〜99.9重量%であってもよく、80重量%〜99.9重量%であってもよく、90重量%〜99.9重量%であってもよい。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤は、後述する〔2.二酸化炭素吸着剤の再生方法〕および/または〔3.脱離型の層状金属水酸化物の製造方法〕にしたがって作製することができる。水熱合成法にしたがって層状金属水酸化物を作製すると、大気中に存在する二酸化炭素がホスト層に吸着して、後述する一般式(2)にて示される「非脱離型の層状金属水酸化物」が形成され得る。例えば、当該「非脱離型の層状金属水酸化物」を200℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上390℃以下、より好ましくは200℃以上380℃以下、より好ましくは200℃以上370℃以下、より好ましくは200℃以上360℃以下、より好ましくは200℃以上350℃以下、より好ましくは200℃以上320℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上270℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下、最も好ましくは200℃以上220℃以下に加熱することによって、本実施の形態の二酸化炭素吸着剤を作製することができる。
〔2.二酸化炭素吸着剤の再生方法〕
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤の再生方法は、二酸化炭素を吸着している二酸化炭素吸着剤を200℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上390℃以下、より好ましくは200℃以上380℃以下、より好ましくは200℃以上370℃以下、より好ましくは200℃以上360℃以下、より好ましくは200℃以上350℃以下、より好ましくは200℃以上320℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上270℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下、最も好ましくは200℃以上220℃以下に加熱する工程を有している。
換言すれば、本実施の形態の二酸化炭素吸着剤の再生方法は、脱離型の層状金属水酸化物を含む二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素が吸着することにより、非脱離型の層状金属水酸化物を含む二酸化炭素吸着剤となった二酸化炭素吸着剤を200℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上390℃以下、より好ましくは200℃以上380℃以下、より好ましくは200℃以上370℃以下、より好ましくは200℃以上360℃以下、より好ましくは200℃以上350℃以下、より好ましくは200℃以上320℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上270℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下、最も好ましくは200℃以上220℃以下に加熱する工程を有している。
ここで、二酸化炭素を吸着する前の二酸化炭素吸着剤については、上述した〔1.二酸化炭素吸着剤〕の欄で既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
二酸化炭素を吸着している二酸化炭素吸着剤は、平均粒子径が150nm以下である非脱離型の層状金属水酸化物を含み得る。
上記非脱離型の層状金属水酸化物は、平均粒子径が、150nm以下、好ましくは140nm以下、より好ましくは130nm以下、より好ましくは120nm以下、より好ましくは110nm以下、より好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、より好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。平均粒子径の下限値は、限定されないが、例えば、0.01nm、0.1nm、1nm、または5nmであってもよい。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる能力を維持した二酸化炭素吸着剤を再生することができる。
平均粒子径は、動的光散乱測定(DLS)によって求めることができる。なお、動的光散乱測定は、市販の装置(例えば、大塚電子株式会社製 ELSZ−1000ZS)を用い、当該市販の装置に添付のプロトコルにしたがって行えばよい。
上記非脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものであってもよい:
[M2+ 1−x3+ (OH)] ・・・一般式(1)、
より具体的に、上記非脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(2)にて示されるホスト層およびゲスト層の複合体を含むものであってもよい:
[M2+ 1−x3+ (OH)(COx/2・mHO] ・・・一般式(2)
(一般式(1)および一般式(2)中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、xは0<x<1の数を示し、mは0以上の数を示す)。
「M2+」としては、特に限定されないが、例えば、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、および、Sr2+を挙げることができる。一方、「M3+」としては、特に限定されないが、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+、Ga3+、および、Co3+を挙げることができる。一般式(1)および一般式(2)における「M2+」と「M3+」との組み合わせは、特に限定されず、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Mn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、および、Sr2+からなる群より選択される任意の「M2+」と、Al3+、Fe3+、Cr3+、Mn3+、Ga3+、および、Co3+からなる群より選択される任意の「M3+」と、の組み合わせであり得る。「M2+」および「M3+」の各々は、単一種類のイオンによって構成されていてもよいが、複数種類のイオンによって構成されていてもよい。つまり、「M2+」および「M3+」の各々は、それぞれの群より選択される複数種類のイオンが混在して構成されるものであってもよい。なお、複数種類のイオンによって構成されている場合には、2種類のイオン、3種類のイオン、4種類のイオン、または、5種類以上のイオンによって構成され得る。
二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素をより低温条件にて脱離でき、かつ、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造をより安定に維持できるという観点からは、上述した「M2+」の中では、Mg2+、Zn2+、または、Ni2+がより好ましく、上述した「M3+」の中では、Al3+、または、Ga3+がより好ましく、上述した「M2+」と「M3+」との組み合わせの中では、Mg2+とAl3+との組み合わせ、Zn2+とAl3+との組み合わせ、または、Ni2+とAl3+との組み合わせがより好ましいといえる。
xは、0<x<1の数であればよいが、0.34≦x<1の数であることが好ましく、0.35≦x<1の数であることが更に好ましい。これらxの値の範囲では、xの上限値は「1未満」となっているが、当該上限値に限定されず、上限値は「0.90以下」、「0.80以下」、「0.70以下」、「0.60以下」、「0.50以下」、または、「0.40以下」であってもよい。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる能力を維持した二酸化炭素吸着剤を再生することができる。
mは、0以上の数であればよいが、0.1≦m≦10の数であることが好ましく、0.3≦m≦5の数であることが更に好ましい。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる能力を維持した二酸化炭素吸着剤を再生することができる。
本実施の形態の二酸化炭素吸着剤の再生方法は、二酸化炭素を吸着している二酸化炭素吸着剤を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有している。当該工程では、二酸化炭素を吸着している二酸化炭素吸着剤を、200℃以上390℃以下、200℃以上380℃以下、200℃以上370℃以下、200℃以上360℃以下、200℃以上350℃以下、200℃以上320℃以下、200℃以上300℃以下、200℃以上270℃以下、200℃以上250℃以下、または、200℃以上220℃以下に加熱してもよい。本実施の形態に用いられる二酸化炭素吸着剤であれば、低温であっても効率よく二酸化炭素を脱離することができ、かつ、二酸化炭素吸着剤の構造を安定に維持することができる。低温にて効率よく二酸化炭素を脱離することができれば、(i)安価かつ簡便な加熱装置によって二酸化炭素吸着剤を所望の温度に加熱することができる、および、(ii)加熱に必要なエネルギー(燃料および/または電力)を節約することができる、等の利点がある。一方、二酸化炭素吸着剤の構造を安定に維持することができれば、(iii)二酸化炭素吸着剤を繰り返し用いることによって、二酸化炭素を回収するためのコストを低減することができる、および、(iv)二酸化炭素吸着剤を繰り返し用いることによって、二酸化炭素吸着剤の交換に要する煩雑な作業を省略することができる、等の利点がある。
上記非脱離型の層状金属水酸化物は、結晶子サイズに特に制限はないが、0〜150nm、より好ましくは5〜150nm、より好ましくは10〜150nm、より好ましくは13〜150nm、より好ましくは14〜150nm、より好ましくは15〜150nm、より好ましくは16〜150nm、より好ましくは17〜150nm、よりこのましくは18〜150nm、より好ましくは19〜150nm、最も好ましくは20〜150nmのものである。なお、上述した結晶子サイズの上限値は、150nmに限定されず、50nm、100nm、または、150nmであり得る。当該構成によれば、二酸化炭素吸着剤に吸着した二酸化炭素を低温条件にて脱離することができるとともに、二酸化炭素吸着剤から二酸化炭素を脱離させるときに二酸化炭素吸着剤の層構造の少なくとも一部を維持できる。それ故に、当該構成によれば、二酸化炭素を繰り返して吸着および脱離することができる能力を維持した二酸化炭素吸着剤を再生することができる。
結晶子サイズは、周知の粉末X線回折測定(XRD)によって観察される(003)回折線から求めることができる。
〔3.脱離型の層状金属水酸化物の製造方法〕
本実施の形態の脱離型の層状金属水酸化物の製造方法は、平均粒子径が150nm以下である非脱離型の層状金属水酸化物を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有している。
「非脱離型の層状金属水酸化物」、「非脱離型の層状金属水酸化物の平均粒子径」および「加熱する工程の温度」としては、上述した〔1.二酸化炭素吸着剤〕および/または〔2.二酸化炭素吸着剤の再生方法〕に記載の構成と同じ構成を用いることができる。
例えば、本実施の形態の脱離型の層状金属水酸化物の製造方法では、上記非脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものであってもよい:
[M2+ 1−x3+ (OH)] ・・・一般式(1)
(一般式(1)中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、xは0<x<1の数を示す)。
例えば、本実施の形態の脱離型の層状金属水酸化物の製造方法では、上記非脱離型の層状金属水酸化物は、上記一般式(1)において、0.34≦x<1のものであってもよい。
<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>
以下に、本実施例における層状金属水酸化物のナノ粒子の製造方法を説明する。なお、本実施例では、水熱合成法にしたがって、様々な粒径の層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。
まず、0.6M MgCl水溶液(5mL)と、0.2M AlCl水溶液(5mL)とを混合して、MgClの最終濃度が0.3Mであり、かつ、AlClの最終濃度が0.1Mである、溶液A(10mL)を調製した。
別途、0.3M NaOH水溶液(20mL)と、0.026M NaCO水溶液(20mL)とを混合して、NaOHの最終濃度が0.15Mであり、かつ、NaCOの最終濃度が0.013Mである、溶液B(40mL)を調製した。
200mL容量の三角フラスコに溶液Bを加え、当該三角フラスコ内の溶液Bを撹拌しながら、当該溶液Bに対して溶液Aを加えた。その後、溶液Aと溶液Bとの混合物を室温にて10分間撹拌し、白色の生成物を形成させた。
溶液Aと溶液Bとの混合物を遠心分離し、白色の沈殿物を回収した。当該沈殿物をイオン交換水によって2回洗浄した。
洗浄後の沈殿物を40mLのイオン交換水に懸濁し、水熱合成法にしたがって、層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。なお、反応条件は100℃とし、反応時間は、4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間とした。なお、水熱合成法の詳細については、AU2005318862A1に記載の方法にしたがった。
水熱合成の時間が経過するにつれて、沈殿物を含むイオン交換水の白濁度が増すことが確認できた(図示せず)。
<2.粉末X線回折測定(XRD)>
以下に、粉末X線回折測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
以下に、粉末X線回折測定の試験方法について説明する。
(使用機材)
X線回折装置:D8−ADVANCE(Burker AXS株式会社製)
ディテクター:D8−ADVANCE VANTEC(Burker AXS株式会社製)
測定線源:波長1.5418ÅのCu Kα
フィルター:Ni
(測定条件)
X線管負荷:40mA、35kV
測定角度:5.0−70.0deg
サンプリング間隔:0.007deg
発散スリット(入射):0.6mm
受光スリットDetector Slit:12.09mm
Antiscattering Slit:7.87mm
ディテクター受光角:3.00°
次いで、粉末X線回折測定の試験結果について説明する。
図1にXRDピークを示す。(a)は反応時間を4時間、(b)は反応時間を8時間、(c)は反応時間を16時間、(d)は反応時間を48時間、(e)は反応時間を72時間、として作製した層状金属水酸化物ナノ粒子のXRDピークを示し、(f)は市販品であるハイドロタルサイトのXRDピークを示す。
以降、(a)から(e)の符号は、各々、水熱合成法の反応時間を、4時間、8時間、16時間、48時間、および72時間として製造した層状金属水酸化物のナノ粒子の試験結果を示し、(f)は、市販品であるハイドロタルサイトの試験結果を示す。
図1に記載の(003)および(006)は層状金属水酸化物特有のピークを示す。(a)から(e)および(f)のすべてに上記ピークが認められた。そのため、本発明の製法による層状金属水酸化物ナノ粒子は、反応時間を変更しても市販品のハイドロタルサイトと同様の層構造を有していることが明らかになった。
更に、(003)回折線を用いた周知の方法によって算出した結晶子サイズは、(a)〜(f)の各々について、13.4nm、13.1nm、14.5nm、17.1nm、17.0nm、および、20.3nmであった。
<3.走査型電子顕微鏡観察(SEM)および動的光散乱測定(DLS)>
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法、および、試験結果について説明する。また、以下に、動的光散乱測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載されている反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法について説明する。
(使用機器)
走査型電子顕微鏡:S4800(日立製)
(測定条件)
加速電圧:15kV(通常時)
20kV(EDX使用時)
次いで、走査型電子顕微鏡観察の試験結果について説明する。
図2に(a)から(f)のSEMによる観察画像を示す。(a)から(e)はすべて六角形の板状結晶が認められ、反応時間の増加に伴う粒子径の増大傾向が認められた。一方、(f)は結晶が凝集しているためのため、結晶の形状は確認できなかった。
以下に、動的光散乱測定の試験方法について説明する。
(使用機器)
動的光散乱測定器:ELSZ‐1000ZS(大塚電子株式会社製)
次いで、動的光散乱測定の試験結果について説明する。
(a)から(f)のそれぞれの平均粒子径は、(a)は約61nm、(b)は約70nm、(c)は約82nm、(d)は約98nm、(e)は約116nmであった。
<4.結合プラズマ発光分光分析(ICP)>
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法について説明する。
(使用機器)
ICP測定装置:iCAP6500(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
(測定条件)
測定元素:AlおよびMg
測定方向:アキシャル
試料形態:液体
検量線条件:絶対検量線法
(試料調整方法)
試料10mgを1mlのNHOに溶解させ、超純水で50mlに定容した。定容した試料を5倍希釈し測定用試料とした。
Al用標準溶液として、2.0、4.0、6.0および8.0ppmのAl(NO・9HOを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
Mg用標準溶液として、用いて2.5、5.0、7.5、および10ppmのMg(NO・6HOを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
次いで、結合プラズマ発光分光分析の試験結果について説明する。
図3に(a)から(f)に含まれるAlおよびMgの含有量、および組成について示す。
図3の(a)から(e)に示されるように、層状金属水酸化物ナノ粒子が含有する金属イオン(Alイオンの含有量およびMgイオンの含有量を加えたもの)に対するAlイオンの含有割合に差が認められず一般式(1)のxが一定となった。そのため、反応時間による組成への影響はないことが明らかになった。また、層状金属水酸化物ナノ粒子の原料として炭酸ナトリウムを用いており、さらに当該層状金属水酸化物ナノ粒子がゲスト層へ炭酸イオンを挿入しやすい性質を有するため、陰イオンとして炭酸イオンが選択的に挿入されている。
図3の(f)に示されるように、市販のハイドロタルサイトは、水熱合成法で調製した層状金属水酸化物ナノ粒子とは異なる組成を有していた。
<5.二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験>
以下に、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
以下に、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験方法について説明する。
(使用機器)
質量分析計:JMS−Q1050GC(日本電子株式会社製)
キャリアガス:Ar(100cc/min.)
(測定条件)
石英管セルに石英ウールと約30mgの層状金属水酸化物試料を入れ、電気炉で600℃まで10℃/minで昇温し、脱離した二酸化炭素および水をガスクロマトグラフ質量分析計にて分析を行った。
次いで、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験結果について説明する。
図4に、(a)から(e)の層状金属水酸化物ナノ粒子、および、(f)のハイドロタルサイトにおける水および二酸化炭素の脱離挙動について示す。
図4上部は水の離脱挙動について示したものであり、(a)から(f)では、水の脱離挙動に差が認められなかった。また、水の脱離挙動観察試験において220℃、330℃、および400℃付近にピークが観察された。これらは、典型的なMgAl−LDH−CO粒子(金属イオンとしてMgイオンとAlイオンを用い、ゲスト層に炭酸ガスが挿入された層状金属水酸化物粒子)の熱分解時における、水の離脱挙動であると考えられる。具体的に、約220℃の水の脱離は、層間(ゲスト層)に含まれる水の脱離であると考えられる。約330℃の水の脱離は、Al−OHの縮合脱水に起因する水の脱離であると考えられる。約400℃の水の脱離は、Mg−OHの縮合脱水および炭酸イオンの分解に起因する水の脱離であると考えられる。
図4下部は二酸化炭素の脱離挙動について示したものであり、(f)に示す市販のハイドロタルサイトでは400℃未満での二酸化炭素の脱離がほとんど認められなかった。一方、(a)から(e)に示す層状金属水酸化物ナノ粒子では反応時間の短いものほど(換言すれば、平均粒子径が小さいものほど)低温(350℃付近)での二酸化炭素の離脱が多いことが明らかになった。
低温での二酸化炭素の離脱の要因を調べるため、(a)に示す層状金属水酸化物ナノ粒子の層構造と、(f)に示すハイドロタルサイトの層構造とについて、XRDを用いて評価した。
図5に、(a)と(f)とにおける、常温、350℃、および600℃におけるXRDピークを示す。(a)と(f)とは、共に、常温、350℃においては層構造を維持している。しかし、(a)と(f)とは、共に、600℃においては層構造が破壊されていることが認められた。このことは、層状金属水酸化物ナノ粒子の350℃未満における二酸化炭素の離脱は、層構造の変化に起因しないことを示しており、層状金属水酸化物粒子をナノ粒子化することにより発現した性質と考えられる。
<6.二酸化炭素の吸着脱離試験>
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法について説明する。
(使用機器)
質量分析計:JMS−Q1050GC(日本電子株式会社製)
(測定方法)
(1)石英管セルに石英ウールと約30mgの層状金属水酸化物試料((a)または(f))とを入れた。
(2)アルゴン100cc/min.流通環境下で、電気炉を用いて層状金属水酸化物試料を200℃まで加熱し、約1時間恒温を維持した。
(3)層状金属水酸化物試料を350℃まで加熱し、層状金属水酸化物試料から二酸化炭素を離脱させた。
(4)二酸化炭素離脱後、層状金属水酸化物試料を200℃まで冷却して、当該層状金属水酸化物試料に1%二酸化炭素とアルゴンとの混合ガス100cc/min.、および、水1.2cc/hを1時間接触させることにより、層状金属水酸化物試料へ二酸化炭素を再吸着させた。
(5)系内に残留している二酸化炭素をアルゴンで置換した。
上記工程(3)から(5)を1サイクルとした工程を複数回行い、各工程における二酸化炭素離脱量をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定した。
次いで、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験結果について説明する。
図6において、「0サイクル」は、上記(1)から(3)を行った時の二酸化炭素の離脱量を示し、「1サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を1回目に行った際の二酸化炭素の離脱量を示し、「2サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を2回目に行った際の二酸化炭素の脱離量を示す。
(f)では、層構造を保ち得る条件下で二酸化炭素を離脱させても二酸化炭素の再離脱が認められなかった。一方、(a)では、(f)に比べて0サイクル目での二酸化炭素の離脱量が多く、かつ、二酸化炭素の再吸着および再離脱が認められた。
本発明による二酸化炭素吸着剤は継続的に二酸化炭素が排出される発電施設などに利用することができる。

Claims (3)

  1. 平均粒子径が150nm以下である脱離型の層状金属水酸化物を含み、
    上記脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものであることを特徴とする、二酸化炭素吸着剤。
    [M 2+ 1−x 3+ (OH) ] ・・・一般式(1)
    (一般式(1)中、M 2+ は2価の金属イオンを示し、M 3+ は3価の金属イオンを示し、xは0.34≦x<1の数を示す)
  2. 二酸化炭素を吸着している請求項に記載の二酸化炭素吸着剤を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有することを特徴とする、二酸化炭素吸着剤の再生方法。
  3. 平均粒子径が150nm以下である非脱離型の層状金属水酸化物を200℃以上400℃以下に加熱する工程を有し、
    上記非脱離型の層状金属水酸化物は、以下の一般式(1)にて示されるホスト層を含むものであることを特徴とする、脱離型の層状金属水酸化物の製造方法。
    [M 2+ 1−x 3+ (OH) ] ・・・一般式(1)
    (一般式(1)中、M 2+ は2価の金属イオンを示し、M 3+ は3価の金属イオンを示し、xは0.34≦x<1の数を示す)
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