以下、本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントの各実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを顎骨の下顎側の歯冠に金属冠ごとに被せる形態に基づいて図面を作成しており、これに従って説明を行う。
そのため、図面や文章中の上方向や下方向、左右方向についてはこのような形態で実施を装着した態様に基づいて定義付ける。また、以下の文章中の説明や図面の描き方に関しては、あくまで本発明の属する範囲の一例を示したものに過ぎず、本発明の作用を発揮し得る範囲内であれば、様々な形状や寸法、大きさ、材質を適宜変更可能である。
また、各図面の各構成要素間の配置関係や寸法関係、隙間の有無等については、発明の理解の容易化を図るために適宜多少誇張すると共に、実際とは異なる寸法関係で描いている。具体的には、例えば各図面中の粘膜の厚みについては、支台歯を構成する金属冠の被さった歯冠及びこれに連なる歯根に比べて発明の理解の容易化を図るために実際の寸法よりも誇張して描いている。同様に、歯根膜の厚さや残根部及び粘膜との相対的位置関係、各対応図面における義歯に備わる人工歯の数や形状についても、発明の理解の容易化を図るため実際の寸法関係や位置関係と異なり概略的に示している。即ち、各図面において例えば人工歯の数や形状は必ずしも一致させていない。
以上のことから、本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを実際の歯科医療に適用する場合は、義歯装着者ごとの装着位置や装着部位、人工歯の本数によって好ましい形態に変えながら、本発明を様々な実際の歯科医療に合わせて変更していくことが当然であり、このような様々なバリエーションも本発明の範囲に含まれることを予め述べておく。また、図面において断面ハッチングについては説明の理解の容易化を図るために適宜省略して示している。また、各実施形態及びその変形例の各構成要素に関して、等価的な構成要素については多少の形状等の違いはあっても同一の符号を付して説明する。
本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントは、少なくとも2本の人工歯が隣接して並べられかつ複数の人工歯を上部に固定した細長の義歯床を備えた義歯と、義歯を支台歯に装着するためのアタッチメントを備えた義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントである。
本発明においては、合わせて2本以上の人工歯となる小臼歯や大臼歯が義歯床の上部に備わっている。なお、本発明において義歯床に備わる小臼歯や大臼歯の種別や本数、配置形態については、本発明の作用を発揮し得る範囲内で様々な組み合わせが可能であり、義歯を装着する部位や残根部の周囲の欠損歯の状況に応じて適宜選択可能である。
とりあえず、本発明の各実施形態及びその変形例の共通する構成について以下に説明する。本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントは、支台歯の一部を構成する支台歯側取り付けアタッチメントと、義歯の一部に埋め込まれる義歯側取り付けアタッチメントを互いに着脱自在に有している。
そして、支台歯側取り付けアタッチメントは、歯冠に被せられる金属冠と、金属冠の周面の一部に取り付けられ、義歯側取り付けアタッチメントとの係合用凹み部を備えた磁性材からなる係合受け用磁性体部材を有している。
また、義歯側取り付けアタッチメントは、義歯の延在方向少なくとも一方の端部内に収容配置された磁石と、磁石の長手方向少なくとも一方の端部側に配置され、支台歯側取り付けアタッチメントに備わる係合用凹み部に着脱自在に嵌合する突出部を備えている。
磁石は、義歯の義歯床に沿って突出部の備わる一端を義歯の端部側に配置する共に、磁石の他端をこれとは長手方向反対側に配置されるように義歯に埋め込み可能となっている。
また、係合用凹み部を有する係合受け用磁性体部材は、その係合用凹み部も含めて義歯を支台歯から外した状態で、係合受け用磁性体部材の外部への露出部分となる外表面が、略平面部と、曲面部と、これらの各面をつなげる鋭利な突起状をなさない曲面状の連続領域とで構成されている。
続いて、本発明の第1の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントについて図面に基づいて詳細に説明する。本発明の第1の実施形態は、義歯が遊離端義歯であり、支台歯が1本の支台歯からなる形態に本発明を適用したものである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントの支台歯側取り付けアタッチメントと義歯側取り付けアタッチメントをそれぞれ互いに離間した状態で概略的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示した義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントの義歯側取り付けアタッチメントと支台歯側取り付けアタッチメントを遊離端義歯と支台歯にそれぞれ備えた状態で遊離端義歯を支台歯に装着した状態を一部断面で示す側面図である。また、図3は、図2に状態に対応する状態を一部断面で示す平面図である。
本発明の第1の実施形態における義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントは、上述した基本形態と同等の基本形態を有している。具体的には、本実施形態に係る1本の支台歯90に遊離端義歯10を取り付けるためのアタッチメントは、1本の支台歯90の一部を構成する支台歯側取り付けアタッチメント100と、遊離端義歯10の一部に埋め込まれる義歯側取り付けアタッチメント200を互いに着脱自在に有している。
遊離端義歯10は、義歯床30と、その義歯床30の上部に備わる人工歯20(21,22,23,・・・)を有している。なお、遊離端義歯10を示す各図面においては、これらの人工歯20に関して便宜上それらの形状や個数は厳密に一致させずに描いている。
支台歯側取り付けアタッチメント100は、1本の支台歯90の歯冠95に被せられる金属冠91と、金属冠91の周面の一部に取り付けられ、義歯側取り付けアタッチメント200との係合用凹み部110を備えた磁性材からなる係合受け用磁性体部材101を有している。
係合受け用磁性体部材101は、金属冠91の周面の一部に係合受け用磁性体部材101の基端部が鋳造時に第三合金による合着、鋳造金属による把持、又は蝋着され、この金属冠91の周面から係合受け用磁性体部材101が遊離端義歯10の装着方向に突出するようになっている。
係合用凹み部110は、係合受け用磁性体部材101が支台歯90の一部をなす状態において、支台歯90の先端側と基端側の双方をそれぞれの端部とする溝形状を有するように形成されている。
また、係合用凹み部110を有する係合受け用磁性体部材101は、その係合用凹み部110も含めて遊離端義歯10を支台歯90から外した際に、係合受け用磁性体部材101の外部への露出部分となる外表面が、略平面部と、曲面部と、これらの各面をつなげる鋭利な突起状をなさない曲面状の連続領域とで構成されている。即ち、図1において、実線で描かれている係合受け用磁性体部材101の隣接する各面同士の接続領域は、全て尖った角部をなさず、R状の曲面として面取りされた状態で構成されている。
また、義歯側取り付けアタッチメント200は、遊離端義歯10の延在方向一方の端部内、即ち、遊離端義歯10が着脱される支台歯側の端部内に収容配置される磁石250と、磁石250の長手方向において支台歯側端部近傍に配置され、支台歯90の支台歯側取り付けアタッチメント100に備わる係合用凹み部110に着脱自在に嵌合する突出部210を備えている。
磁石250は、本実施形態の場合、いわゆる棒状の磁石からなり、遊離端義歯10の義歯床30に沿って突出部210の備わる一端(一方の磁極)を遊離端義歯10の端部側に配置する共に、磁石250の他端(他方の磁極)を義歯床30の長手方向反対側に配置されるように遊離端義歯10に埋め込み可能となっている。
また、磁石250は、ハウジング260に囲まれた状態で遊離端義歯10の義歯床内に配置され、遊離端義歯10を支台歯90に取り付けた状態において、ハウジング260の支台歯側端部には突出部210の結合部220が備わるようになっている。また、本実施形態の場合、突出部210も磁性材でできており、磁石250によって突出部自体も磁性を帯びて磁力を発生させるようになっている。
そして、遊離端義歯10を支台歯90に取り付けた状態において、ハウジング260の支台歯側端部には突出部210の基端側が備わるようになっている。
なお、第1の実施形態においては、ハウジング260の支台歯90の対向する端部面に側面視で逆L字状をなす所定の厚さの板材からなる補強部材261が設けられている。補強部材261のハウジング260と当接する部分は、強固な接着剤や締結手段によって互いに結合されており、この部分の略中央部において突出部210とハウジング260を連結する結合部220の周囲を囲って結合部220の強度を充分に確保するようになっている。
また、上側の水平方向に延在する天板部分は、支台歯90に最も近接する遊離端義歯10の人工歯の下側部分に固定されている。そして、補強部材261は、係合用凹み部110に突出部210を係合させた状態、即ち支台歯90に遊離端義歯10を装着した状態で遊離端義歯10を食事等でしっかりと咬合しても、係合用凹み部110の上側部分と補強部材261との間には必ず空間が残存して互いが干渉しないようになっている。
なお、補強部材261は、磁性材でできていても良く、非磁性材でできていても良い。また、補強部材261は、ハウジングと元々一体化して形成されていても良い。係合受け用磁性体部材101の大きさが大きいことに加えて、これらの部材についても磁性材でできていることによって、磁性材からなる全ての部材を介して磁石250の磁気引っ張り力として作用する磁力線を効率良く発生させると共に吸収することができる。
また、第1の実施形態における突出部210は、球状体若しくは略球状体を有し、突出部210の一部がハウジング260の遊離端義歯端部側に直径が突出部210の外径よりも小さい円柱状の結合部220を介して取り付けられている。
一方、支台歯側取付けアタッチメント100の係合用凹み部110の突出部210が入り込んだり抜け出したりする開口部(互いに対向する長手方向の縁部分全体が曲面状に形成された開口縁部111で挟まれる部分)の幅は、突出部210の外径とほぼ等しくなっている。
そして、係合用凹み部110の開口部を介して球状体をなす突出部210が、係合用凹み部内に一旦入り込んだ後においては、いわゆるボールジョイントのように突出部210が所定の範囲で動くことができるように係合用凹み部110の溝の幅と深さが突出部210の外径よりも僅かに大きく形成されている。
このような構造によって、両者は、突出部210が係合用凹み部110に入ったり、係合用凹み部110から出たりしたりする際に、係合用凹み部110の開口部にある程度引っかかって押し込められるようなラッチ係合構造をなしている。
これによって、突出部210が係合用凹み部内に一旦入り込んだ後においては、突出部210は、溝状をなす係合用凹み部110の長手方向にスライド移動可能となっていると共に、このスライド移動動作の最中においては、突出部210とこの一部に備わる結合部220とで形成される軸線方向が、ボールジョイントと同様の原理で一定の角度範囲内で常に自由に動くことができるようになっている。
そして、本実施形態においては、遊離端義歯10の突出部210を支台歯90の係合受け用磁性体部材101の係合用凹み部110に接近するように遊離端義歯10をその義歯床30が対向する粘膜80に沿って支台歯90に向かって移動させることで、突出部210を係合用凹み部110に対して着脱可能に係合させるようになっている。
以下に、上述した第1の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを適用した遊離端義歯10を支台歯90に対して着脱する手順について図面に基づいて説明する。図4は、遊離端義歯10を支台歯90に装着する直前の状態を一部断面で示す側面図である。義歯装着者は、最初に遊離端義歯10を指で摘まんで支台歯90に近づけることによって、図4に示すような状態に至る。
この図4に示す状態に続いて、遊離端義歯10の支台歯90と対向する端部を支台歯90に押し付けることで、支台歯90の係合用凹み部110の2つの開口縁部111で挟まれて形成される開口部を介して遊離端義歯10の突出部210が係合用凹み部内に挿入し始める。これによって、図5に示すような状態に至る。図5は、遊離端義歯10を支台歯90に装着し始めた状態を一部断面で示す側面図である。
図5に示す状態から遊離端義歯10の突出部210を支台歯90の係合用凹み部110に更に押し込むことで、図2及び図3に示す状態に至る。ここで、図2は、遊離端義歯10を支台歯90に装着した状態を一部断面で示す側面図である。また、図3は、図2に状態に対応する状態を一部断面で示す平面図である。
この係合状態においては、遊離端義歯10の義歯床30の底面全体が唾液層Dを介して粘膜80にしっかりと密着し、遊離端義歯10の支台歯90への取り付け状態を維持する。
この状態で義歯装着者がある程度の咬合力で咬合すると、突出部210が係合用凹み部内を支台歯基端側に向かってスライド移動していき、やがては図6に示す状態に至る。
具体的には、突出部210が係合用凹み部内に一旦入り込んだ後においては、突出部210は、溝状をなす係合用凹み部110の長手方向にスライド移動していくと共に、このスライド移動動作の最中においては、突出部210とこの一部に備わる結合部220とで形成される軸線方向が、ボールジョイントと同様の原理で一定の角度範囲内で常に自由に動くようになっている。これによって、他方の端部が自由端となった遊離端義歯10の咬合時のある程度の動きの自由度を確保して、咬合力が好ましくない方向で遊離端義歯10の自由端部側に作用することに起因する支台歯90に悪影響を与える過大な曲げモーメントや捻りモーメントの発生を防いでいる。
図6は、遊離端義歯10を支台歯90に装着した後に食事等でしっかりと咬合した状態を一部断面で示す側面図である。
咬合した状態においては、図6から分かるように、遊離端義歯10の義歯床30が粘膜80を押し潰すことで生じる粘膜80からの圧縮反発力によって義歯床30の沈下が停止していることが理解できる。
即ち、義歯装着者が遊離端義歯10を咬合することで、遊離端義歯10の義歯床30が粘膜80に沈下して、この沈下度合いに応じて遊離端義歯10の義歯床30が粘膜80から受ける圧縮反発力が大きくなり、やがてはその反発力が咬合力と釣り合って遊離端義歯10の粘膜80に対する更なる沈下を停止させる。
以上の義歯装着者による咬合動作を終えると、遊離端義歯10に咬合力が作用しなくなり、遊離端義歯10は支台歯90に対して上述した順番と逆の順序で図4に示す状態まで戻る。そして、義歯装着者は、食事が終わった後など必要に応じて遊離端義歯10を指で摘んで引っ張り、遊離端義歯10を支台歯90から取り外す。この場合も図5、図4に示す順番の連続動作によって遊離端義歯10を支台歯90から簡単に取り外すことができる。
以下に、上述した構成を有する第1の実施形態を適用した遊離端義歯10とこれらの一方の端部を支持する1本の支台歯90からなる構成の作用効果について説明する。
第1の実施形態においては、係合受け用磁性体部材101は磁性材でできており、係合受け用磁性体部材自体の大きさは、金属冠91と比較してもかなりの大きさ、即ち、係合受け用磁性体部材101の容積が非常に大きいものとなっている。
そのため、遊離端義歯10の内部の磁石250の磁気引っ張り力として作用する磁力線の多くを係合受け用磁性体部材101で効率良く吸収することができる。その結果、磁石250によって発生する磁気引っ張り力が係合受け用磁性体部材101に効率良く作用する。
このようにして、遊離端義歯10は、係合受け用磁性体部材101に磁気引っ張り力によってしっかりと結合した状態を維持しつつ、食事中の咬合動作によって遊離端義歯10の義歯床30が粘膜80を押し潰しながら沈下していくのを可能にする。
また、磁石250の大きさが小さくても、磁石の発する磁気引っ張り力を係合受け用磁性体部材で効率良く吸収することができるので、磁石250の小型化や薄型化を達成することが可能となる。その結果、義歯全体の大きさを小さくすることが可能となる。これによって、例えば義歯装着者のうち、顎関節の機能が衰えて口を大きく開けることができなくなった高齢者や、口腔内の空間が元々小さい女性の高齢者の場合において、小型になった遊離端義歯10を指で摘まんで口の中に簡単に出し入れする本発明特有の優位点を発揮することができる。
その結果、例えば、奥歯など口腔内で指の届きにくい部分においても、このように小型化や薄型化した遊離端義歯10を出し入れし易く、義歯装着者にとって非常に使い勝手の良いものとなっている。
また、係合受け用磁性体部材101は、係合用凹み部110も含めて遊離端義歯10を支台歯90から外した際に、これらの外表面を曲面で繋がり鋭利な突起状をなさない曲面状の連続領域で全体的に構成されている。
係合受け用磁性体部材101がこのような構造を有することで、以下のような本発明特有の作用効果を発揮する。具体的には、例えば食事等の後に遊離端義歯10を支台歯90から外して汚れを取るためにきれいにする間に、支台歯90の係合受け用磁性体部材101が口腔内において露出することになる。この際に義歯装着者の口腔内の舌がこの露出部分に触れたり当たったりしても、係合受け用磁性体部材101の外表面の各面の連続領域(接続部分)が全て曲面で形成されており、鋭利な突起部をなしていないため、誤って舌を傷つけて出血したりするようなことを防止できる。
また、磁石250は、遊離端義歯内に収容され、外部に露出していないので、義歯の長期間の使用によって磁石250の摩耗した粒状物や剥離した破片が口腔内に残留したりそのまま嚥下してしまったりすることもなく、義歯装着者の健康を損なわないようにする。
続いて、本発明の第2の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントについて図面に基づいて詳細に説明する。本発明の第2の実施形態は、義歯が中間欠損歯用義歯であり、支台歯がこの中間欠損歯用義歯を挟む2本の支台歯からなる形態に本発明を適用したものである。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを互いに離間した状態で概略的に示す斜視図である。また、図8は、図7に示した義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを支台歯と中間欠損歯用義歯にそれぞれ備えた状態で、中間欠損歯用義歯を、これを挟む2本の支台歯に装着した状態を一部断面で示す側面図である。また、図9は、図8に示す状態に対応する図であり、中間欠損歯用義歯の突出部の部分を含むように切断した状態を一部断面で示す平面図である。また、図10は、図8に示す状態に対応する図であり、中間欠損歯用義歯のラッチ係合の部分を含むように切断した状態を一部断面で示す平面図である。
本発明の第2の実施形態における義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントは、上述した基本形態と同等の基本形態を有している。そして、この既に説明した基本形態に加えて弾性ラッチ係合機構を更に加えていることを特徴としている。
具体的には、義歯は、上述したように中間欠損歯用義歯50からなり、義歯を支台歯90に取り付ける取り付けアタッチメントは、中間欠損歯用義歯50の両端と、これを挟むように両端に位置する2本の支台歯90に備わるようになっている。
なお、中間欠損歯用義歯50の義歯床51の上部には人工歯20(21,22,23,・・・)が備わっている。なお、中間欠損歯用義歯50を示す各図面においては、これらの人工歯20に関して便宜上それらの形状や個数は厳密に一致させずに描いている。
本実施形態に係る2本の支台歯90に中間欠損歯用義歯50を取り付けるためのアタッチメントは、2本の支台歯90の一部を構成する支台歯側取り付けアタッチメント300と、中間欠損歯用義歯50の両端近傍の内部に一部を残して埋め込まれる義歯側取り付けアタッチメント400を互いに着脱自在に有している。
そして、中間欠損歯用義歯50の両端において、それぞれ磁石450と各磁石450が配置された側の近傍の支台歯90をなす支台歯側取り付けアタッチメント300の係合用凹み部310にスライド係合する突出部410が各々備わっている。
これに加えて、2つの弾性ラッチ係合部490が、中間欠損歯用義歯50の支台歯側両端部近傍に取り付けられる両端部側に設けられている。
支台歯側取り付けアタッチメント300は、2本の支台歯90の歯冠95に被せられる金属冠91と、金属冠91の周面の一部に取り付けられ、義歯側取り付けアタッチメント400と係合するための係合用凹み部310を備えた磁性材からなる係合受け用磁性体部材301を有している。
2つの係合受け用磁性体部材301は、それぞれ金属冠91,92の周面の一部に係合受け用磁性体部材301の基端部が鋳造時に第三合金による合着、鋳造金属による把持、又は蝋着され、この金属冠91の周面から係合受け用磁性体部材101が中間欠損歯用義歯50の装着方向に突出するようになっている。
また、支台歯側取付けアタッチメント300の係合受け用磁性体部材301に形成された係合用凹み部310は、係合受け用磁性体部材301が支台歯90の一部をなす状態において、支台歯90の先端側と基端側の双方をそれぞれ上側と下側に開口した端部とする溝形状をなすように形成されている。
即ち、支台歯側取付けアタッチメント300の係合用凹み部310は、磁性材からなる係合受け用磁性体部材301において、支台歯側取り付けアタッチメント300を用いて支台歯90を構成した際に、支台歯90の軸線方向と合致する方向を長手方向とする溝形状として形成されている。
また、係合用凹み部310を有する係合受け用磁性体部材301は、その係合用凹み部310も含めて中間欠損歯用義歯50を支台歯90から外した際に、係合受け用磁性体部材301の外部への露出部分となる外表面が、略平面部と、曲面部と、これらの各面をつなげる鋭利な突起状をなさない曲面状の連続領域とで構成されている。即ち、図7において、実線で描かれている係合受け用磁性体部材301の隣接する各面同士の接続領域は、全て尖った角部をなさず、R状の曲面として面取りされた状態で構成されている。
また、本発明の場合、係合受け用磁性体部材301は、ステンレス鋼などの磁性材でできている。そして、中間欠損歯用義歯50に備わる突出部410についても、本実施形態の場合、ステンレス鋼などの磁性材からできている。更には、磁石450を囲むハウジングについても同様に、ステンレス鋼などの磁性材からできている。
また、義歯側取り付けアタッチメント400は、中間欠損歯用義歯50の延在方向両端部側の内部、即ち、中間欠損歯用義歯50が着脱される2本の支台歯90に対向する両端部側近傍の内部にそれぞれ収容配置された2つの磁石450と、各磁石450の長手方向において支台歯側端部近傍に配置され、2本の支台歯90の支台歯側取り付けアタッチメント300に備わる係合用凹み部310に着脱自在に嵌合する突出部410と、を備えている。
第2の実施形態における突出部410は、第1の実施形態における突出部210と異なり、円柱体形状を有している。そして、突出部410の円柱体形状の長手方向は、中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に取り付ける際に、支台歯90に備わり上下の端部が開口している溝形状の係合用凹み部310の上側から突出部の下端部が挿入し、この係合用凹み部内をスライド移動する形状をなしている。
また、第2の実施形態の場合、各突出部410にはこれに対応するハウジング460の支台歯側端部に結合する結合部420がそれぞれ備わっている。結合部420は、本実施形態の場合、突出部410の長手方向と同一の長さを有すると共に、平面視で見て円形をなす突出部410の幅、即ちこの円形の直径よりも小さい厚みを有した板状体から構成されている。
第2の実施形態の場合、突出部410がスライド係合する係合用凹み部310は、上述したように、突出部410が入り込んだときに係合用凹み部内をスライド移動可能な溝形状として形成されている。即ち、係合用凹み部310の主要部分は、平面視で円形をなす突出部410をスライド移動させるための円形状の溝部をなすと共に、係合用凹み部310の支台歯と反対側の部分、即ち中間欠損歯用義歯50に長手方向全体に亘ってスリット状の長手方向開口部(互いに対向する長手方向の縁部分全体が曲面状に形成された開口縁部311で挟まれる部分)が設けられている。この長手方向開口部の幅は、上述した板状体の結合部420が入り込んで突出部410と一体となって係合用凹み部内をスライド移動するのに適した幅となっている。
そして、2本の支台歯90の歯根側や2本の支台歯間の粘膜側に中間欠損歯用義歯50の義歯床51を近づけたり遠ざけたりするように移動させることで、突出部610を係合用凹み部510に対して着脱可能に係合させるようになっている。
2つの磁石450は、本実施形態の場合、第1の実施形態と同様にいわゆる棒状の磁石からなり、中間欠損歯用義歯50の義歯床51に沿って突出部410の備わる一端(一方の磁極)を中間欠損歯用義歯50の端部側の内部に配置する共に、2つの磁石450の他端(他方の磁極)をこれとは長手方向反対側の中間欠損歯用義歯50の端部側の内部に配置されるように中間欠損歯用義歯50の義歯床51に埋め込み可能となっている。
また、2つの磁石450は、それぞれハウジング460に囲まれた状態で中間欠損歯用義歯50の内部に配置され、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に取り付けた状態において、ハウジング460の支台歯側端部には2本の突出部410の基端側が備わるようになっている。また、2本の突出部410も磁性材でできており、2つの磁石450によって磁化されることで突出部自体もそれぞれ磁力を発生させるようになっている。
なお、第2の実施形態においても、ハウジング460の支台歯90の対向する端部面に側面視で逆L字状をなす所定の厚さの板材からなる補強部材461が設けられている。補強部材461のハウジング460と当接する部分は、強固な接着剤や締結手段によって互いに結合されており、この部分の幅方向略中央部を長手方向に沿って突出部410とハウジング460を連結する結合部420の周囲を囲んで結合部420の強度を充分に確保するようになっている。
また、上側の水平方向に延在する天板部分は、支台歯90に最も近接する中間欠損歯用義歯50の人工歯の下側部分に固定されている。そして、補強部材461は係合用凹み部310に突出部410を係合させた状態、即ち、支台歯90に中間欠損歯用義歯50を装着した状態で中間欠損歯用義歯50を食事等で咬合した場合、しっかりと係合したままの状態を保ちながら、中間欠損歯用義歯50が粘膜80に押し付けられてそれ自体沈下しても、補強部材461の天板の部分が係合受け用磁性体部材301の上部に突き当たらず、一定の空間を残存させるようにして互いが干渉しないようになっている。
なお、補強部材461は磁性材でできていても良く、非磁性材でできていても良い。また、補強部材461は、ハウジング460と元々一体化して形成されていても良い。
以上の構成に基づいて、中間欠損歯用義歯50を、係合受け用磁性体部材301の係合用凹み部310に対して中間欠損歯用義歯50の義歯床51に対向する粘膜80に向かって上下に移動させることで、突出部410を係合用凹み部310に対して着脱可能に係合させるようになっている。
更に、第2の実施形態においては、第1の実施形態とは異なる構成が追加されて備わっている。具体的には、義歯側取付けアタッチメント400には、これに備わる突出部410の突出方向と略平行になるように配置された弾性ラッチ係合部490が備わっている。
また、支台歯側取り付けアタッチメント300には、係合用凹み部310の所定位置に弾性ラッチ係合部490の弾性力によってラッチ係合するラッチ係合受け部312が形成されている。
弾性ラッチ係合部490は、義歯側取付けアタッチメント400を取り付けた中間欠損歯用義歯50を支台歯側取り付けアタッチメント300に取り付けた2本の支台歯90に装着する際に、2つの弾性ラッチ係合部490がその弾性力によってラッチ係合窪み部(ラッチ係合受け部)312にそれぞれ弾性ラッチ係合することで、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に所定の位置関係で取り付けることを可能にした構造となっている。
弾性ラッチ係合部490は、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に取り付けた状態で中間欠損歯用義歯50の弾性ラッチ係合部490が弾性ラッチ係合すると共に、義歯装着者が咬合を開始した際に、弾性ラッチ係合部490の弾性力に抗して義歯側取り付けアタッチメント400の弾性ラッチ係合部490が支台歯側取り付けアタッチメント300の係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312から外れ、咬合力の大きさに応じて支台歯90の歯根側に向かってその分だけ移動する構造を有している。
以下に、弾性ラッチ係合部490の構造についてより詳細に説明する。弾性ラッチ係合部490は、中間欠損歯用義歯50を、これを挟む2本の支台歯90に取り付けた状態において、既に説明した突出部410、結合部420、磁石450とそれを囲うハウジング460の配列方向よりも粘膜側に所定距離だけ離間した状態で平行となるように義歯側取付けアタッチメント400の内部に配置されている。
弾性ラッチ係合部490は、その先端に備わるラッチ球状体492と、ラッチ球状体492を一方の端部で回転自在に保持すると共に、ラッチ球状体492の一部が突出部410の支台歯中心軸線側スライド摺動面よりも若干突出するか、若しくはその位置よりも支台歯中心軸線から直交方向に離れるように義歯側取付けアタッチメント内部にラッチ球状体492を引っ込める役目を果たすプランジャー493と、プランジャー493の他方の端部に一方の端部が押し付けられ、他方の端部が義歯側取付けアタッチメント内部の支台歯と反対側に固定されたストッパー491に押し付けられた圧縮コイルスプリング495を有している。
そして、圧縮コイルスプリング495の弾性力によって、ラッチ球状体492が係合用凹み部310の内壁面で押し付けられない状態、即ち中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に装着する前後状態、即ち突出部410が係合用凹み部310にスライド移動していない状態か、若しくは中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に装着してちょうど義歯取付け状態を保持する所定位置に達した状態、即ち突出部410が係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312にラッチ係合している何れかの状態において、ラッチ球状体492の一部が突出部410の支台歯中心軸線側スライド摺動面よりも若干突出するようになっている。
一方、ラッチ球状体492が係合用凹み部310に入り込んで中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に装着してから義歯取付け状態を保持する所定位置に達するまでの間、及び義歯装着後に咬合を開始してラッチ球状体492が係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312に対するラッチ係合が解除されて咬合中に中間欠損歯用義歯50の2本の義歯床51が粘膜80に向かってスライド移動している間においては、義歯側取付けアタッチメント内部にラッチ球状体492を引っ込めるようになっている。
以下に、上述した第2の実施形態に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを適用した中間欠損歯用義歯50を支台歯90に対して着脱する手順について図面に基づいて説明する。
図11は、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に装着する直前の状態を一部断面で示す側面図である。義歯装着者は、最初に中間欠損歯用義歯50を指で摘まんで支台歯90に近づけることによって、図11に示すような状態に至る。
この状態においては、圧縮コイルスプリング495の弾性力によって、ラッチ球状体492が係合用凹み部310の内壁面で押し付けられない状態となっており、ラッチ球状体492の一部が突出部410の支台歯中心軸線側スライド摺動面よりも若干突出している。
そして、図11に示す状態に続いて、中間欠損歯用義歯50の両端の突出部610を支台歯90に備わる係合用凹み部310に同時に挿入し始める。これによって、図12に示すような状態に至る。図12は、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に着脱し始めた状態を一部断面で示す側面図である。
この状態においては、ラッチ球状体492が係合用凹み部310に入り込んで中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に装着してから次に説明する義歯取付け状態を保持する所定位置に達するまでの間、即ち義歯50の2本の義歯床51が粘膜80に向かってスライド移動している間において、圧縮コイルスプリング495が若干縮んで義歯側取付けアタッチメント内部にラッチ球状体492を引っ込めることで、突出部410が係合用凹み部310に沿って滑らかにスライド移動する。
このように図12に示す状態から、中間欠損歯用義歯50の突出部410を支台歯90の係合用凹み部310に更に挿入することによって、図8、図9、図10に示す状態に至る。ここで、図8は、図7に示した支台歯90に義歯を取り付けるためのアタッチメントを支台歯90と中間欠損歯用義歯50にそれぞれ備えた状態で、中間欠損歯用義歯50を、これを挟む2本の支台歯に装着した状態を一部断面で示す側面図である。また、図9は、図8に示す状態に対応する図であり、中間欠損歯用義歯50の突出部410の部分を含むように切断した状態を一部断面で示す平面図である。また、図10は、図8に示す状態に対応する図であり、中間欠損歯用義歯50の弾性ラッチ係合部490の部分を含むように切断した状態を一部断面で示す平面図である。
この状態においては、圧縮コイルスプリング495の弾性力によって、ラッチ球状体492が係合用凹み部310の内壁面で押し付けられない状態、即ち中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に装着してちょうど義歯取付け状態を保持する所定位置に達した状態となっており、突出部410が係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312にラッチ係合していることで、ラッチ球状体492の一部が突出部410の支台歯中心軸線側スライド摺動面よりも若干突出している。
そして、この係合状態においては、中間欠損歯用義歯50の義歯床51の底面全体が唾液層Dを介して粘膜80にしっかりと密着し、中間欠損歯用義歯50の支台歯90への取り付け状態を維持する。
この状態で義歯装着者がある程度の咬合力で咬合すると、図13に示す状態に移行する。図13は、中間欠損歯用義歯50を支台歯90に装着した後に食事等でしっかりと咬合した状態を一部断面で示す側面図である。
この状態においては、前述したラッチ球状体492が係合用凹み部310に入り込んで義歯装着後に咬合を開始してラッチ球状体492が係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312に対するラッチ係合が解除され、咬合中に中間欠損歯用義歯50の2本の義歯床51が粘膜80に向かってスライド移動してから完全に咬合してスライド移動を停止させた状態を含めて、義歯側取付けアタッチメント内部にラッチ球状体492を引っ込めている。
このように咬合した状態においては、図13から分かるように、中間欠損歯用義歯50の義歯床全体が受ける粘膜80を押し潰すことで生じる粘膜80からの圧縮反発力によって義歯床51の沈下が停止していることが理解できる。
即ち、義歯装着者が中間欠損歯用義歯50を咬合することで、中間欠損歯用義歯50の義歯床51が粘膜80に沈下して、この沈下度合いに応じて中間欠損歯用義歯50の義歯床全体が受ける粘膜80から受ける圧縮反発力が大きくなり、やがてはその反発力が咬合力と釣り合って中間欠損歯用義歯50の粘膜80に対する更なる沈下を停止させる。
以上の義歯装着者による咬合動作を終えると、中間欠損歯用義歯50に咬合力が作用しなくなり、中間欠損歯用義歯50は支台歯90に対して上述した順番と逆の順序で図18に示す状態まで戻る。そして、義歯装着者は、食事が終わった後など必要に応じて中間欠損歯用義歯50を指で摘んで引っ張り、中間欠損歯用義歯50を支台歯90から取り外す。この場合も、上述と逆の同様の連続動作によって中間欠損歯用義歯50を支台歯90から簡単に取り外すことができる。
以下に、上述した構成を有する第2の実施形態を適用した中間欠損歯用義歯50とこれら両側から挟んで支持する2本の支台歯90からなる構成の作用効果について説明する。
第2の実施形態においても、係合受け用磁性体部材301は磁性材でできており、係合受け用磁性体部材自体の大きさは、金属冠91,92と比較してもかなりの大きさ、即ち、係合受け用磁性体部材301の容積が非常に大きいものとなっている。係合受け用磁性体部材301の大きさが大きいので、磁性体の容積もその分大きくなり、磁石450の磁気引っ張り力として作用する磁力線を効率良く吸収することができる。
このように、中間欠損歯用義歯50の内部の2つの磁石450の磁気引っ張り力として作用する磁力線の多くを係合受け用磁性体部材301で効率良く吸収することで、小型の磁石450であっても、これによって発生する磁気引っ張り力が係合受け用磁性体部材に十分に作用する。
このようにして、中間欠損歯用義歯50は、その両端が2本の支台歯90のそれぞれに備わる係合受け用磁性体部材301に磁気引っ張り力によってしっかりと結合した状態を維持しつつ、食事中の咬合動作によって中間欠損歯用義歯50の義歯床51が粘膜80を押し潰しながら沈下して行くことを可能にする。
これに伴って、磁石450の大きさが小さくても、磁石450の発する磁気引っ張り力を係合受け用磁性体部材301で効率良く吸収することができる。これによって、例えば磁石450の小型化や薄型化を達成することができる。
その結果、中間欠損歯用義歯自体の大きさを小さくすることが可能となる。中間欠損歯用義歯自体の大きさを小さくすることで、義歯装着者のうち、口の関節が十分に機能しなくなって口を大きく開けることができなくなった高齢者や、口腔内の空間が元々小さい女性の高齢者などの義歯装着者にとって、小型になった中間欠損歯用義歯50も指で摘まんで口の中に簡単に出し入れすることができる。
また、例えば、奥歯など口腔内で指の届きにくい部分においても、このように小型化や薄型化した中間欠損歯用義歯50を出し入れし易く、義歯装着者にとって非常に使い勝手の良いものとなる。
また、中間欠損歯用義歯50を、これを挟む2本の支台歯90に予め決められた所定の取付け位置に達するように装着した瞬間に、中間欠損歯用義歯50のラッチ係合部490の球状体492が、支台歯90の両側の係合用凹み部310のラッチ係合窪み部312に圧縮コイルスプリング495の弾性力によってプランジャー493に押されてそれぞれ同時に入り込むので、この感覚が指先の神経や聴覚神経の代わりに三叉神経を介して脳に直接伝わり、高齢であっても中間欠損歯用義歯50が、これを挟む2本の支台歯90にしっかりと装着できたことを確実に実感(確認)することができる。
これによって、例えば介護者などの第三者に手伝ってもらったり装着を確認してもらったりするような煩わしさをかけることなく自ら義歯の装着や取り外しを簡単に行うことができる。
なお、中間欠損歯用義歯50の一端側と他端側のラッチ係合動作に関して、一端側と他端側のラッチのタイミングが同期せずにずれていたとしても、上述の原理で義歯装着者はこの状況変化に直ぐに気が付くことができる。これによって、顎骨82の萎縮や、一方又は両方の支台歯91,92における問題の発生、つまり歯根膜81の損傷に基づく歯根の倒れや、後述するインプラントに本発明を適用した場合におけるインプラントの植設状態の変化、更には顎骨82と2本の支台歯91,92の相対位置関係の変化を義歯装着者自身が初期段階で直ぐに気が付くことができ、歯科医院に行って適切な治療を施し、このような問題の悪化を早期に回避することができる。
また、係合受け用磁性体部材301は、この係合用凹み部310も含めて中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90から外した際に、これらの外表面をなす略平面部や曲面部の各面をつなげる鋭利な突起状をなさない曲面状の連続領域で構成されているようになっている。
係合受け用磁性体部材301がこのような構造を有することで、以下のような本発明特有の作用効果を発揮する。具体的には、例えば食事等の後に中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90から外して汚れを取るためにきれいにする間に、2本の支台歯90の係合受け用磁性体部材301が口腔内において露出することになるが、この際に舌がこの露出部分に触れたり当たったりしても、係合受け用磁性体部材301の外表面の曲面で形成され、鋭利な突起部がないため、誤って舌を傷つけて出血したりするようなことを防止できる。
また、ハウジング460の支台歯側端部には、図面に示すように側面視で逆L字型を有する補強部材461が備わっている。補強部材461もステンレス鋼などの磁性材でできており、中間欠損歯用義歯50を2本の支台歯90に取り付けた状態において垂直方向の延在部がハウジング260の支台歯側端部に固定され、上側の水平方向の延在部は、人工歯の支台歯に最も近い人工歯の下側に延在して配置されている。
補強部材261の天板部は、義歯装着者が義歯を装着した後に食事等で咬合して、中間欠損歯用義歯50の義歯床51が粘膜80を押し潰すように沈下しても、天板部が係合受け用磁性体部材301の上面に突き当たることなく係合受け用磁性体部材301の上側面と一定の隙間を残存させるようになっており、これによって、食事等の咬合時において咬合力が支台歯90に衝撃力として作用するのを防止している。
また、磁石450は、中間欠損歯用義歯内に収容され、外部に露出していないので、義歯の長期間の使用によって磁石450の摩耗した粒状物や剥離した破片が口腔内に残留したりそのまま嚥下してしまったりすることもなく、義歯装着者の健康を損なわないようにする。
なお、上述した第2の実施形態に係る溝部をなす係合用凹み部310は、中間欠損歯用義歯50に作用する咬合力の方向を正しい正規な方向に導くガイド用(案内用)の役目も果たすようになっている。これによって、好ましくない噛み癖を矯正する役目も有している。その結果、食べ物を、消化吸収を促進できる程度まで咬み砕くようにする習慣をつけることが可能となる。
続いて、第2の実施形態の変形例に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントを適用した中間欠損歯用義歯60と、これを挟む2本の支台歯90について説明する。図14は、図8に示した状態に対応する図であり、第2の実施形態の変形例を備えた中間欠損歯用義歯60を支台歯90に装着した状態を一部断面で示す側面図である。
本変形例においては、上述した第2の実施形態における義歯側取付けアタッチメントに備わる突出部410と同等の突出部610を有するが、この突出部610の突出方向と略平行になるように配置された弾性ラッチ係合部(第2の実施形態の符号490)を有していない。
また、支台歯側取付けアタッチメント500の係合用凹み部510の所定位置には第2の実施形態のような弾性ラッチ係合部(第2の実施形態の符号490)の弾性力によってラッチ係合するラッチ係合窪み部(第2の実施形態の符号312)が形成されていない。
このような構成によって、上述した第2の実施形態とは異なり、弾性ラッチ係合部(第2の実施形態の符号450)が、義歯側取付けアタッチメント600を取り付けた中間欠損歯用義歯60を支台歯側取り付けアタッチメント500が取り付けられた支台歯90に装着する際に、弾性ラッチ係合部(第2の実施形態の符号450)がその弾性力によって弾性ラッチ係合窪み部(第2の実施形態の符号312)に弾性係合するようになっていない。
それ以外については、第2の実施形態と同等の構成を有している。即ち、支台歯側取り付けアタッチメント500の係合用凹み部510は、支台歯側取り付けアタッチメント500を用いて支台歯90を構成した際に、支台歯90の軸線方向と合致する方向を長手方向とする両端が開口した溝形状を有している。また、義歯装着者が咬合を開始した際に、咬合力の大きさに応じて突出部610が溝状を有する支台歯側取り付けアタッチメント500との係合用凹み部510の支台歯基端側に移動するようになっている。
そして、第2の実施形態のように、義歯装着者が中間欠損歯用義歯60を咬合することで、中間欠損歯用義歯60の義歯床61が粘膜80に沈下して、この沈下度合いに応じて中間欠損歯用義歯60の義歯床61が粘膜80から受ける圧縮反発力が大きくなり、やがてはその反発力が咬合力と釣り合って中間欠損歯用義歯60の粘膜80に対する更なる沈下を停止させる。
これは第2の実施形態における咬合状態を図示した図13において、図14に示すラッチ係合部が省略されている構成を適用した場合を考えてみると、容易に理解できる。
以下に、上述した構成を有する第2の実施形態の変形例を適用した中間欠損歯用義歯とこれら両側から挟んで支持する2本の支台歯からなる構成の作用効果について説明する。この第2の実施形態の変形例によると、上述した第2の実施形態によって発揮される作用効果のうち、ラッチ係合部490の構造に伴う作用効果を除いてそれ以外については同等の作用効果を発揮する。更には、この変形例においては、ラッチ係合部490の構造が備わっていないので、その分だけ中間欠損歯用義歯全体の高さ方向を低くすることができると共に、幅方向についても小さくすることができ、この変形例に係る中間欠損歯用義歯600の更なる小型化及び軽量化を達成できる。
その結果、義歯装着者のうち、例えば顎関節に問題があって上下の顎を無理して大きく開けない高齢の義歯装着者や、指先の微妙な動きが行い難くなった高齢の義歯装着者、更には顎骨の大きさが小さいため口腔内の容積もそれに応じて小さく、上下の歯を開いても義歯装着のために十分な大きさまで口を開けることができない女性の高齢者等に対しても、中間欠損歯用義歯600の着脱を更に容易にすることができ、中間欠損歯用義歯600の着脱に際して毎回人に手伝ってもらわなくて自ら行うことが可能となり、食事後に中間欠損歯用義歯600を外して毎回きれいにすることを習慣付けることができ、口腔内の衛生状態を維持することが可能となる。
これによって、歯槽膿漏や虫歯の発生や進行を抑えることができ、食事ごとに十分な咬合力と回数で食べ物を咀嚼することができるので、胃腸などの消化器官への負担が軽減され、健康状態の維持に貢献することができる。
なお、義歯全体の大きさのこのような小型化及び軽量化についての優位点は、ラッチ係合構造を有さない第1の実施形態において当然に発揮することができることは言うまでもなく、ラッチ係合構造を有する第2の実施形態においても十分に発揮することはできるが、この変形例によると、特に2本の支台歯に同時に挟み込んで取り付けることが必要とされる中間欠損歯用義歯において、第2の実施形態によって発揮することができる作用効果をこの変形例において更に高めることが可能となる。
続いて、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態並びに第2の実施形態の変形例に共通する従来例と比較した本発明の有する優位点について説明する。
咬合に際して一般的に咬合力は、約3MPa〜約9MPa(1cm2当たり平均30kg〜90kg(1m2当たり300トン〜900トン))と極めて大きい。そして、本発明によると思いっきり咬合した際にこのような咬合力が支台歯に衝撃力として加わるのを防止することができる。
即ち、本発明によると、支台歯、即ち金属冠を被せた歯冠とこの下側の歯根及び歯根と顎骨を結合する歯根膜にこのような大きな咬合力が衝撃力として加わるのを防止し、本発明の義歯を取り付けるための支台歯を長期間に亘って健全な状態で維持することができる。
その結果、本発明による支台歯に義歯を取り付けるためのアタッチメントを一旦装着すれば、その装着状態を長期間維持することが可能となり、歯科医院にメンテナンスのために頻繁に通院する必要もなく、支台歯に義歯を取り付けるためのアタッチメントが破損して新たな支台歯に義歯を取り付けるためのアタッチメントを装着し直すような重大な問題を生じさせるのを防止することができる。
また、クラスプを用いることなく義歯の係合用凹み部内で義歯係合用突出部に対して義歯全体を支台歯に装着しているので、クラスプのような金属部材が外部に露出することがない。その結果、口を開けたときにクラスプの金属部分が外部から見えたりすることなく、義歯を装着していることが一見すると全く分からないので、本発明に係る義歯が審美的に非常に優れていると言える。また、義歯装着者は、このような観点から外出して友人や知り合いとの会話を心置きなく楽しむことができると共に、買い物や講演等の受講を行っている際に質問等が生じたら相手が十分に聞き取れる声で遠慮なく聞いてみることが可能となる。
また、従来から用いられているクラスプの付いた義歯を装着した場合、咬合力は、上述したように約3MPa〜約9MPa(1cm2当たり平均30kg〜90kg(1m2当たり300トン〜900トン))と極めて大きい。このような咬合時に向きや大きさの絶えず変化する大きな咬合力が従来一般的に使われているクラスプを備えた義歯のクラスプの部分に作用すると、この部分が金属疲労により緩んだり破断してしまったりする問題がある。
また、支台歯にクラスプを備えた従来の義歯を装着した場合、口を開けたときにクラスプが目立って審美的な問題がある。更には、長期間の使用によってクラスプが緩んで義歯が外れ易くなり、口の中で外れかかった義歯を舌で押さえ続けたり、くしゃみなどで偶発的に義歯が外れて口から飛び出してしまったりするような事態を招いたりして、長期間にわたって使用し続けることができず、近年の高齢化社会の到来に向けて重要視されているクォリティ・オブ・ライフの向上に支障をきたしている。
更には、従来のクラスプを備えた義歯を使用した場合、クラスプの部分の緩みの有無の定期的な確認等とゆるみを発見した際にこの部分を元通りに直すような手間の掛かるメンテナンスを必要としている。また、従来のクラスプを備えた義歯を外してこれをきれいにする場合等において、特に指先の不自由な義歯装着者にとっては誤って義歯を床に落としてしまい、金属でできたクラスプの部分が曲がったり破断してしまったりする恐れもある。このような場合、このクラスプの部分を元の状態に直したり、直すことができない程度に曲がったり破損してしまった場合は、クラスプ全体を新しいものに交換しなければならない面倒な問題を生じさせる。
そして、クラスプの部分の修理又は交換を依頼している間、その義歯を使用することができなくなり、極めて不便となる。しかしながら、本発明によると、義歯を固定して支持するためのクラスプのような金属部部分を義歯の外部に備えていないので、そのような不都合なことは一切起こることはなく、殆どメンテナンスフリーで義歯を安心して使い続けることができるという非常に大きなメリットを有している。
なお、上述の各実施形態及びその各種変形例はあくまで本発明の例示的な内容を示したものに過ぎず、本発明の範囲内であれば形状、材質、大きさ等の異なる様々な構造の義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントであっても構わないことは言うまでもない。
具体的には、上述の実施形態及びその変形例において、磁石は、ハウジングに囲まれた状態で義歯内に配置されていたが、磁石が口腔内に露出しなければ必ずしも磁石がハウジングを介して義歯内に配置されている必要はなく、義歯の内部に直接埋め込まれていても良い。
また、磁石を義歯の内部に収容するハウジング若しくは上述のようにハウジングを有さない状態で義歯の内部に収容される磁石自体がそれぞれについては、義歯の義歯床の内部のみに収容されることに限定されず、それらの一部(例えば上側部分)が人工歯の内部に埋め込まれるように収容されていても良い。
また、上述の各実施形態及びその変形例においては、突出部も磁性材でできており、磁石によって突出部自体も磁性を帯びて磁力を発生させるようになっていたが、本発明の作用を発揮することができれば、係合受け用磁性体部材のみが磁性材でできて突出部は非磁性材でできていても良い。
また、義歯が遊離端義歯となった第1の実施形態においては、係合受け用磁性体部材に備わった係合用凹み部は、係合受け用磁性体部材が支台歯の一部をなす状態において支台歯の先端側と基端側の端部が支台歯の上側と下側にそれぞれ開口した溝形状として形成されていたが、これらの端部のうち少なくとも一方が閉塞された溝形状の係合用凹み部として形成されていても良い。
また、義歯が中間欠損歯用義歯となった第2の実施形態においては、弾性ラッチ係合部の弾性力は圧縮コイルスプリングによって発生するようになっていたが、同様の弾性力を発生させることができるものであれば、圧縮コイルスプリング以外の弾性部材であっても構わない。
また、上述の各実施形態及びその変形例においては、係合受け用磁性体部材は、歯冠に被せる金属冠の側面の一部に備わっていたが、この代わりに、歯冠を有さない残根に取り付けて支台歯を構成する残根利用型支台歯形成部材の一部に取り付けられるようになっても良い。
支台歯が歯根膜によって顎骨に結合している場合においては、本発明によると顕著なる作用効果を発揮することができる。具体的には、支台歯の歯根や残根が残っていてこれと顎骨が歯根膜によって結合している場合、支台歯に対して不適切な方向に作用する過度なモーメントを歯根部や残根部に発生させるのを阻止する。その結果、一旦破損すると再生不可能な繊維組織からなり歯根部や残根部と顎骨を生理学的にしっかりと結合して支台歯を安定して固定させる役目を果たしている歯根膜自体の破損を防止することができる。
更には、係合受け用磁性体部材は、歯冠に被せる金属冠の代わりに、インプラントに取り付けて支台歯を構成するインプラント利用型支台歯形成部材の一部に取り付けて支台歯を構成するインプラント利用型支台歯形成部材の一部に取り付けられるようになっても良い。
以上のように、例えば支台歯が歯冠に金属冠を被せた状態で形成されている代わりに、残根部に残根利用型支台歯形成部材を取り付けて支台歯を形成する形態において本発明を利用したり、顎骨に植設したインプラントにインプラント利用型支台歯形成部材を取り付けて支台歯を形成する形態において本発明を利用したりしても本発明特有の十分な作用効果を発揮することができる。
具体的には、例えばインプラントの場合、一端植設すると長期間それを使用し続ける必要のあるインプラントを本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントの支台歯の一部として利用することで、インプラントの破損を防止しつつ、かつ1本の支台歯のみで近接する部分にインプラントを植設する必要もなくコストをかけずに本発明に係る義歯を長期間使用し続けることができる。
即ち、インプラントを用いて支台歯を形成する場合に本発明を適用すると、一旦破壊すると再度植設することが難しいインプラントを長期間に亘って使用し続けることが可能となる。
なお、歯根膜やインプラントの破損防止の実効性を高めるためには、支台歯が歯冠に金属冠を被せて構成されていても、残根部を利用して構成されていても、インプラントを利用して構成されていても、思いっ切り咬合した場合に義歯係合用突出部の先端と係合用凹み部の底部との間に一定の残存空間を残存させるようにするとより好ましい。
一方、支台歯を構成するにあたって、金属冠を被せた歯冠に連なる歯根部や残根部を利用する場合のみならず、インプラントを利用して支台歯を構成する場合にも言えることであるが、強く咬み過ぎたときに第1の実施形態においては、支台歯側取り付けアタッチメントの溝状の凹み部の顎骨側端部に義歯側取付けアタッチメントの突出部に僅かに突き当たるようにしても良い。
また、第2の実施形態の変形例において、支台歯側取り付けアタッチメントの溝状の凹み部の顎骨側端部を開口させる代わりに閉塞させて、この閉塞した端部に義歯側取付けアタッチメンとの突出部が僅かに突き当たるようにしても良い。
このように強く咬合し過ぎた場合において、突出部が係合用凹み部の顎骨側端部に僅かに突き当たるようにすることで、義歯の支台歯との寸法関係を義歯装着者ごとに調整及び選択しても良い。
これによって、強く咬み過ぎたときにこの僅かな突き当たりによって支台歯から残根部及び顎骨を介して咬み過ぎたことを直接体感することができ、その後の咬合のし過ぎに積極的に注意を払うようになり、支台歯の残根部を破損せずに支台歯自体を長持ちさせることができるようになる。
最後に上述した各実施形態及びその変形例と等価的な構成及び内容を有することで、本発明の範囲内に当然に含まれる各種形態について説明する。図15は、第1の実施形態に係る遊離端義歯の支台歯に対する着脱方法とは異なる着脱方法を説明する図である。
同図から明らかなように、第1の実施形態と同等の構成を有する遊離端義歯と支台歯である。ここで、遊離端義歯を支台歯に取り付ける場合において、第1の実施形態のように遊離端義歯を支台歯に対して水平方向に押し付ける代わりに、図15に示すように遊離端義歯10の突出部210を支台歯90の係合用凹み部110の上側に位置させ、遊離端義歯10を支台歯90に向かう下方に移動させて押し付けることで、突出部210を係合用凹み部110に挿入させる。
そして、遊離端義歯10の義歯床30が唾液Dを介して粘膜80に密着させ、支台歯90にしっかりと取り付ける。この際、突出部210は、略球状を有しているので、突出部210の中心が係合用凹み部110の中心軸線と若干偏倚していても、この位置ずれを吸収して突出部210を係合用凹み部内に容易にかつスムーズに挿入することができる。なお、図15に示す矢印Zは、上述した遊離端義歯10を支台歯90に対して着脱する方向を示す矢印である。
続いて、図16は、第1の実施形態における義歯側取付けアタッチメント200の略球状をなす突出部210及び結合部220を、第2の実施形態における義歯側取付けアタッチメント400の円柱状をなす突出部410及び結合部420と等価的な構成を有する突出部810及び結合部820に置き換えたものである。また、図17は、図16において置き換えた突出部及び結合部を備えた遊離端義歯を支台歯に取り付ける手順について説明する図である。なお、図16及び図17の突出部810と結合部820との互いの相対的な大きさ(寸法関係)は、実質的に本発明の範囲に影響を与えないため、あえて異なるように描いている。
このような形態であっても、図17に示す内容から明らかなように、図15に示した内容及びこの文章による説明と同様のやり方で遊離端義歯10を支台歯90に着脱できる(図17に示す矢印Z参照)。
図18は、第2の実施形態における義歯側取付けアタッチメント400の円柱状をなす突出部410及び結合部420を、第1の実施形態における略球状をなす突出部210及び結合部220と同等の構成を有する突出部910及び結合部920に置き換えた形態を示している。
このような形態であっても、第2の実施形態及びその変形例を示す図7乃至図14及びこれらの文章による説明と同等の本発明特有の作用効果を発揮することができる。また、上述の説明において、特に遊離端義歯10と支台歯90との着脱関係について言えることだが、突出部が略球状であっても円柱状であっても遊離端義歯10を支台歯90に取り付ける際と取り外す際において、何れか一方の動作においては遊離端義歯10を支台歯90に対して上下方向に移動させると共に、何れか一方の動作において遊離端義歯10を支台歯90に対して水平方向に移動させるようにしても良い。
また、遊離端義歯10に備わった係合用凹み部の上端と下端の双方が閉塞している場合は、突出部が、略球状の突出部210であっても円柱状の突出部410であっても、遊離端義歯10を支台歯90に対して水平方向に押しつけたり引っ張ったりすることで、遊離端義歯10の支台歯90に対する着脱を可能とする。
更には、遊離端義歯10に備わった係合用凹み部の一方の端部が閉塞しており他方の端部が開放している場合は、その構成に基づいて許容する範囲で遊離端義歯10を支台歯90に水平方向に移動させたり垂直方向に移動させたり適宜選択して遊離端義歯10を支台歯90に対して着脱すれば良い。
以上説明したように、本発明に係る義歯とこの義歯を支台歯に取り付ける取付けアタッチメントは、図1に示すアタッチメントが遊離端義歯とこれが装着される支台歯に適用することに限定されるものではなく、同様に図7に示すアタッチメントが中間欠損歯用義歯とこれが装着される支台歯に適用することに限定されるものでないことは言うまでもない。
即ち、本発明は、これらの構成を実際の歯科医療の現場の治療状況に合わせて本発明の最適な作用効果を発揮するように適宜組み合わせて実施すれば良い。これによって、実際の歯科医療において最も好ましい治療効果を達成することができる。
また、本発明によると、歯科医院への最低限の通院で長期間に亘って最小限のメンテナンスを行ないながら義歯を使い続けることができる。また、義歯装着時の状態を悪化させることなく、即ち歯根や歯根膜の損傷を防ぎながら長期間に亘って一旦取り付けた義歯を長期間に亘って使い続けることができる。これによって、損傷した歯根を次々と抜歯してその部分ごとに費用的に高価なインプラントを植設する必要がなくなる。
また、本発明によると、義歯装着者に快適な咬み心地を提供することで、高齢の義歯装着者であっても、食べ物に関してしっかりと咀嚼する必要のない流動的な食べ物に限定されることがなく、その結果食べ物の種類が極端に限定されるようなこともなくなり、様々な物を食することができ、かつしっかりと咬んで嚥下することが可能となり、消化器官にも負担をかけることもなく、健康な体を維持すると共に、クォリティ・オブ・ライフを向上させることが可能となる。