[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの概略の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1は、外部磁界の、互いに直交する3方向の成分を検出するセンサである。
図1に示したように、磁気センサ1は、外部磁界の第1の方向に平行な方向の成分を検出するための第1の検出部10と、外部磁界の第2の方向に平行な方向の成分を検出するための第2の検出部20と、外部磁界の第3の方向に平行な方向の成分を検出するための第3の検出部30と、支持部50とを備えている。第1ないし第3の方向は、互いに直交する。第1ないし第3の検出部10,20,30の各々は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第3の検出部30は、更に、軟磁性材料よりなる軟磁性構造体40を含んでいる。軟磁性構造体40は、磁界変換部42と、少なくとも1つの軟磁性層を含んでいる。なお、磁界変換部42は、後で説明する図7および図9に示されている。磁界変換部42は、外部磁界の第3の方向に平行な方向の成分を受けて第3の方向に垂直な方向の出力磁界成分を出力する。以下、外部磁界の第3の方向に平行な方向の成分を、入力磁界成分と言う。出力磁界成分の強度は、入力磁界成分の強度と対応関係を有する。第3の検出部30は、出力磁界成分の強度を検出することによって、入力磁界成分の強度を検出する。軟磁性構造体40については、後で詳しく説明する。
支持部50は、第1ないし第3の検出部10,20,30を支持する構造体である。支持部50は、互いに反対側に位置する下面と上面51aとを有する基板51を含んでいる。
ここで、図1に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。X方向とY方向は基板51の上面51aに平行な方向である。Z方向は、基板51の上面51aに垂直な方向であって、基板51の下面から上面51aに向かう方向である。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。また、磁気センサ1の構成要素に関して、Z方向の端に位置する面を「上面」と言い、−Z方向の端に位置する面を「下面」と言う。
本実施の形態では特に、第1の方向はX方向と一致し、第2の方向はY方向と一致し、第3の方向はZ方向と一致する。
第1ないし第3の検出部10,20,30は、基板51の上面51aの上または上方に配置されている。
支持部50は、第3の方向すなわちZ方向に直交する基準平面RPを有している。本実施の形態では特に、基準平面RPは、基板51の上面51aである。
基準平面RPは、互いに異なる第1の領域A10と第2の領域A20と第3の領域A30を含んでいる。第1の領域A10は、基準平面RPに第1の検出部10を垂直投影してできる領域である。第2の領域A20は、基準平面RPに第2の検出部20を垂直投影してできる領域である。第3の領域A30は、基準平面RPに第3の検出部30を垂直投影してできる領域である。
本実施の形態では、第1の検出部10は、互いに異なる位置に配置された第1の部分11と第2の部分12を含んでいる。第2の検出部20は、互いに異なる位置に配置された第3の部分21と第4の部分22を含んでいる。第1ないし第4の部分11,12,21,22と第3の検出部30の各々は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第1の領域A10は、基準平面RPに第1の部分11を垂直投影してできる第1の部分領域A11と、基準平面RPに第2の部分12を垂直投影してできる第2の部分領域A12を含んでいる。第2の領域A20は、基準平面RPに第3の部分21を垂直投影してできる第3の部分領域A21と、基準平面RPに第4の部分22を垂直投影してできる第4の部分領域A22を含んでいる。
ここで、第3の領域A30の重心C30を通り、第3の方向(Z方向)に垂直で且つ互いに直交する2つの直線を第1の直線L1と第2の直線L2とする。本実施の形態では特に、第1の直線L1はX方向に平行であり、第2の直線L2はY方向に平行である。第1の部分領域A11と第4の部分領域A22は、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の両側または片側に位置している。本実施の形態では、第1の部分領域A11と第4の部分領域A22は、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置している。
第2の部分領域A12と第3の部分領域A21は、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の両側または片側に位置している。本実施の形態では、第2の部分領域A12と第3の部分領域A21は、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置している。
なお、第1の部分領域A11と第4の部分領域A22が、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の片側に位置し、第2の部分領域A12と第3の部分領域A21が、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の片側に位置する例は、後で第4の実施の形態として説明する。
本実施の形態では特に、第1の部分領域A11と第2の部分領域A12は、第3の方向(Z方向)から見て、第3の領域A30の重心C30を中心として第1の部分領域A11を90°回転すると第2の部分領域A12に重なる位置関係である。また、第3の部分領域A21と第4の部分領域A22は、第3の方向(Z方向)から見て、第3の領域A30の重心C30を中心として第3の部分領域A21を90°回転すると第4の部分領域A22に重なる位置関係である。
図1に示したように、磁気センサ1は、更に、基板51の上面51aの上または上方に配置された複数の端子を備えている。この複数の端子は、第1の検出部10に対応する電源端子Vxおよび出力端子Vx1,Vx2と、第2の検出部20に対応する電源端子Vyおよび出力端子Vy1,Vy2と、第3の検出部30に対応する電源端子Vzおよび出力端子Vz+,Vz−と、第1ないし第3の検出部10,20,30で共通に使用されるグランド端子Gとを含んでいる。
磁気センサ1は、更に、2つの演算回路15,25と、2つの出力ポート16,26とを備えている。演算回路15,25および出力ポート16,26については、後で詳しく説明する。
次に、図2および図3を参照して、第1の検出部10の第1および第2の部分11,12と第2の検出部20の第3および第4の部分21,22の構成の一例について説明する。第1の検出部10の第1の部分11はハーフブリッジ回路を構成する2つの抵抗部Rx1,Rx2を含み、第1の検出部10の第2の部分12はハーフブリッジ回路を構成する2つの抵抗部Rx3,Rx4を含んでいる。また、第2の検出部20の第3の部分21はハーフブリッジ回路を構成する2つの抵抗部Ry1,Ry2を含み、第2の検出部20の第4の部分22はハーフブリッジ回路を構成する2つの抵抗部Ry3,Ry4を含んでいる。図2には、第1の検出部10に関する配線も示している。また、図3には、第2の検出部20に関する配線も示している。
抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の各々は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。図2に示したように、抵抗部Rx1は、電源端子Vxと出力端子Vx1との間に設けられている。抵抗部Rx2は、出力端子Vx1とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rx3は、電源端子Vxと出力端子Vx2との間に設けられている。抵抗部Rx4は、出力端子Vx2とグランド端子Gとの間に設けられている。
抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の各々は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。図3に示したように、抵抗部Ry1は、電源端子Vyと出力端子Vy1との間に設けられている。抵抗部Ry2は、出力端子Vy1とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Ry3は、電源端子Vyと出力端子Vy2との間に設けられている。抵抗部Ry4は、出力端子Vy2とグランド端子Gとの間に設けられている。
図9に示したように、第3の検出部30は、4つの抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4を含んでいる。図4は、第3の検出部30に関する配線を示している。図9に示したように、抵抗部Rz1は、電源端子Vzと出力端子Vz+との間に設けられている。抵抗部Rz2は、出力端子Vz+とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rz3は、電源端子Vzと出力端子Vz−との間に設けられている。抵抗部Rz4は、出力端子Vz−とグランド端子Gとの間に設けられている。
以下、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4,Ry1,Ry2,Ry3,Ry4,Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のうちの任意の1つを抵抗部Rと言う。抵抗部Rは、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。本実施の形態では特に、少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子である。以下、磁気抵抗効果素子をMR素子と記す。
本実施の形態では特に、MR素子は、スピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、印加磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。各MR素子において、自由層は、磁化容易軸方向が、磁化固定層の磁化の方向に直交する方向となる形状異方性を有している。
図2および図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表している。図2および図3に示した例では、抵抗部Rx1におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はX方向である。抵抗部Rx2におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、出力端子Vx1の電位が変化する。第1の部分11は、出力端子Vx1の電位に対応する検出値Sx1を生成する。検出値Sx1は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する。
また、抵抗部Rx3におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はX方向である。抵抗部Rx4におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、出力端子Vx2の電位が変化する。第2の部分12は、出力端子Vx2の電位に対応する検出値Sx2を生成する。検出値Sx2は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する。
本実施の形態では特に、第1および第2の部分11,12は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sx1,Sx2が、共に増加または共に減少するように構成されている。なお、検出値Sx1,Sx2は、それぞれ出力端子Vx1,Vx2の電位に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
また、抵抗部Ry1におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はY方向である。抵抗部Ry2におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、出力端子Vy1の電位が変化する。第3の部分21は、出力端子Vy1の電位に対応する検出値Sy1を生成する。検出値Sy1は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する。
また、抵抗部Ry3におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はY方向である。抵抗部Ry4におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、出力端子Vy2の電位が変化する。第4の部分22は、出力端子Vy2の電位に対応する検出値Sy2を生成する。検出値Sy2は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する。
本実施の形態では特に、第3および第4の部分21,22は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sy1,Sy2が、共に増加または共に減少するように構成されている。なお、検出値Sy1,Sy2は、それぞれ出力端子Vy1,Vy2の電位に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向については、後で説明する。
次に、図5を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図5に示したMR素子100は、基板51側から順に積層された反強磁性層101、磁化固定層102、ギャップ層103および自由層104を含んでいる。反強磁性層101は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層102との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層102の磁化の方向を固定する。
なお、MR素子100における層101〜104の配置は、図5に示した配置とは上下が反対でもよい。また、MR素子100は、反強磁性層101を含まない構成であってもよい。この構成は、例えば、反強磁性層101および磁化固定層102の代わりに、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層とを含む人工反強磁性構造の磁化固定層を含む構成であってもよい。また、磁気検出素子は、ホール素子、磁気インピーダンス素子等、MR素子以外の磁界を検出する素子であってもよい。
次に、図6を参照して、抵抗部Rの構成の一例について説明する。この例では、抵抗部Rは、直列に接続された複数のMR素子100を含んでいる。抵抗部Rは、更に、複数のMR素子100が直列に接続されるように、回路構成上隣接する2つのMR素子100を電気的に接続する1つ以上の接続層を含んでいる。図6に示した例では、抵抗部Rは、1つ以上の接続層として、1つ以上の下部接続層111と、1つ以上の上部接続層112とを含んでいる。下部接続層111は、回路構成上隣接する2つのMR素子100の下面に接し、この2つのMR素子100を電気的に接続する。上部接続層112は、回路構成上隣接する2つのMR素子100の上面に接し、この2つのMR素子100を電気的に接続する。
次に、図7を参照して、第1ないし第3の検出部10,20,30の構造の一例について説明する。図7は、第1ないし第3の検出部10,20,30のそれぞれの一部を示している。この例では、第1ないし第3の検出部10,20,30は、基板51の上に配置されている。基板51は、上面51aと下面51bを有している。
第1の検出部10は、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層66A,67A,68Aを含んでいる。絶縁層66Aは、基板51の上面51aの上に配置されている。抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4は、絶縁層66Aの上に配置されている。図7には、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層67Aは、基板51の上面51aの上において抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の周囲に配置されている。絶縁層68Aは、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4および絶縁層67Aを覆っている。
第2の検出部20の構造は、第1の検出部10と同様である。すなわち、第2の検出部20は、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層66B,67B,68Bを含んでいる。絶縁層66Bは、基板51の上面51aの上に配置されている。抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4は、絶縁層66Bの上に配置されている。図7には、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層67Bは、基板51の上面51aの上において抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の周囲に配置されている。絶縁層68Bは、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4および絶縁層67Bを覆っている。
第3の検出部30は、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4と、軟磁性構造体40と、絶縁層61,62,63,64とを含んでいる。図7に示した例では、軟磁性構造体40は、磁界変換部42と、2つの軟磁性層41,43を含んでいる。
磁界変換部42は、複数の下部ヨーク42Bと、複数の上部ヨーク42Tとを含んでいる。図7には、複数の下部ヨーク42Bのうちの1つと、複数の上部ヨーク42Tのうちの1つを示している。
軟磁性層41は、基板51の上面51aの上に配置されている。複数の下部ヨーク42Bは、軟磁性層41の上に配置されている。絶縁層61は、基板51の上面51aの上において複数の下部ヨーク42Bの周囲に配置されている。
抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4は、絶縁層61の上に配置されている。図7には、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層62は、複数の下部ヨーク42Bおよび絶縁層61の上において抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の周囲に配置されている。
複数の上部ヨーク42Tは、絶縁層62の上に配置されている。絶縁層63は、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4および絶縁層62の上において複数の上部ヨーク42Tの周囲に配置されている。
軟磁性層43は、複数の上部ヨーク42Tおよび絶縁層63の上に配置されている。絶縁層64は、軟磁性層43を覆っている。
上方から見たときに、軟磁性層41,43は、第3の検出部30の全域にわたって存在する。言い換えると、基板51の上面51aすなわち基準平面RPに軟磁性層41を垂直投影してできる領域と、基準平面RPに軟磁性層43を垂直投影してできる領域は、いずれも、第3の領域A30と一致する。第3の領域A30は、基準平面RPに軟磁性構造体40を垂直投影してできる領域でもある。
図7に示した例では、第1ないし第3の検出部10,20,30に含まれる全ての磁気検出素子すなわちMR素子100は、基板51の上面51aすなわち基準平面RPから等しい距離の位置に配置されている。
なお、磁界変換部42は、複数の下部ヨーク42Bと、複数の上部ヨーク42Tの一方のみを含んでいてもよい。また、軟磁性構造体40は、軟磁性層41,43の一方のみを含んでいてもよい。
次に、図8を参照して、演算回路15,25および出力ポート16,26と、第1および第2の検出部10,20の回路構成の一例について説明する。図8は、第1および第2の検出部10,20に関わる回路を示している。演算回路15は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路15の2つの入力端は、それぞれ、出力端子Vx1,Vx2に接続されている。演算回路15の出力端は、出力ポート16に接続されている。
演算回路25は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路25の2つの入力端は、それぞれ、出力端子Vy1,Vy2に接続されている。演算回路25の出力端は、出力ポート26に接続されている。
演算回路15は、本発明における第1の演算回路に対応する。演算回路15は、第1の検出部10の第1の部分11の検出値Sx1と第1の検出部10の第2の部分12の検出値Sx2を用いた演算によって、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する第1の検出値Sxを生成する。本実施の形態では特に、演算回路15による演算は、検出値Sx1と検出値Sx2の和を求めることを含んでいる。演算回路15による演算は、検出値Sx1と検出値Sx2の和を求めた後に、所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含んでいてもよい。出力ポート16は、第1の検出値Sxを出力する。
演算回路25は、本発明における第2の演算回路に対応する。演算回路25は、第2の検出部20の第3の部分21の検出値Sy1と第2の検出部20の第4の部分22の検出値Sy2を用いた演算によって、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する第2の検出値Syを生成する。本実施の形態では特に、演算回路25による演算は、検出値Sy1と検出値Sy2の和を求めることを含んでいる。演算回路25による演算は、検出値Sy1と検出値Sy2の和を求めた後に、所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含んでいてもよい。出力ポート26は、第2の検出値Syを出力する。
次に、図9を参照して、第3の検出部30の磁界変換部42の構成の一例について説明する。この例では、磁界変換部42は、前記複数の下部ヨーク42Bとして、4つの下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4を含み、前記複数の上部ヨーク42Tとして、4つの上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4を含んでいる。下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4および上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4の各々は、Z方向に垂直な方向に長い直方体形状を有している。
下部ヨーク42B1および上部ヨーク42T1は、抵抗部Rz1の近傍に配置されている。下部ヨーク42B1は、抵抗部Rz1よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T1は、抵抗部Rz1よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz1は、下部ヨーク42B1と上部ヨーク42T1の間に位置している。
下部ヨーク42B2および上部ヨーク42T2は、抵抗部Rz2の近傍に配置されている。下部ヨーク42B2は、抵抗部Rz2よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T2は、抵抗部Rz2よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz2は、下部ヨーク42B2と上部ヨーク42T2の間に位置している。
下部ヨーク42B3および上部ヨーク42T3は、抵抗部Rz3の近傍に配置されている。下部ヨーク42B3は、抵抗部Rz3よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T3は、抵抗部Rz3よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz3は、下部ヨーク42B3と上部ヨーク42T3の間に位置している。
下部ヨーク42B4および上部ヨーク42T4は、抵抗部Rz4の近傍に配置されている。下部ヨーク42B4は、抵抗部Rz4よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T4は、抵抗部Rz4よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz4は、下部ヨーク42B4と上部ヨーク42T4の間に位置している。
磁界変換部42が出力する出力磁界成分は、下部ヨーク42B1および上部ヨーク42T1によって生成されて抵抗部Rz1に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B2および上部ヨーク42T2によって生成されて抵抗部Rz2に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B3および上部ヨーク42T3によって生成されて抵抗部Rz3に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B4および上部ヨーク42T4によって生成されて抵抗部Rz4に印加される磁界成分を含んでいる。
図9において、4つの白抜きの矢印は、それぞれ、入力磁界成分の方向がZ方向であるときに、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4に印加される磁界成分の方向を表している。また、図9において、4つの塗りつぶした矢印は、それぞれ、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向を表している。抵抗部Rz1,Rz4のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向は、それぞれ、入力磁界成分の方向がZ方向であるときに抵抗部Rz1,Rz4に印加される磁界成分の方向と同じ方向である。抵抗部Rz2,Rz3のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向は、それぞれ、入力磁界成分の方向がZ方向であるときに抵抗部Rz2,Rz3に印加される磁界成分の方向とは反対方向である。
ここで、第3の検出部30の作用について説明する。入力磁界成分が存在しない状態では、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のMR素子100の自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直である。
入力磁界成分の方向がZ方向であるときには、抵抗部Rz1,Rz4のMR素子100では、自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直な方向から、磁化固定層102の磁化の方向に向かって傾く。このとき、抵抗部Rz2,Rz3のMR素子100では、自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直な方向から、磁化固定層102の磁化の方向とは反対方向に向かって傾く。その結果、入力磁界成分が存在しない状態と比べて、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値は減少し、抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値は増加する。
入力磁界成分の方向が−Z方向の場合は、上述の場合とは逆に、入力磁界成分が存在しない状態と比べて、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値は増加し、抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値は減少する。
抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の抵抗値の変化量は、入力磁界成分の強度に依存する。
入力磁界成分の方向と強度が変化すると、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のそれぞれの抵抗値は、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値が増加すると共に抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値が減少するか、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値が減少すると共に抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値が増加するように変化する。これにより、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差が変化する。従って、この電位差に基づいて、入力磁界成分を検出することができる。
次に、本実施の形態に係る磁気センサ1の作用および効果について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1では、第1の検出部10は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分を検出し、第2の検出部20は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分を検出する。以下、第1の方向(X方向)に平行な方向を第1の検出部10の感磁方向とも言い、第2の方向(Y方向)に平行な方向を第2の検出部20の感磁方向とも言う。
第3の検出部30は、前述の作用によって、外部磁界の第3の方向(Z方向)に平行な方向の成分である入力磁界成分を検出する。第3の検出部30は、軟磁性構造体40を含んでいる。軟磁性構造体40は、磁界変換部42と、2つの軟磁性層41,43を含んでいる。軟磁性構造体40は、基準平面RPに平行な方向の磁界に対応する磁束を集める作用を有する。この軟磁性構造体40は、第1の検出部10と第2の検出部20の各々に印加される磁界に影響を与える。そのため、第1ないし第3の検出部10,20,30の配置によっては、軟磁性構造体40に起因して第1の検出部10と第2の検出部20の出力の特性が大きく異なる可能性がある。
本実施の形態では、第1の部分領域A11と第4の部分領域A22が、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置し、第2の部分領域A12と第3の部分領域A21が、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置している。これにより、本実施の形態によれば、軟磁性構造体40に起因して第1の検出部10と第2の検出部20の出力の特性が異なることを抑制することができる。以下、これについて詳しく説明する。
始めに、軟磁性構造体40が、検出値Sx1,Sx2に与える影響について説明する。図10は、磁気センサ1にX方向の外部磁界が印加された様子を表している。図10において、矢印の付いた複数の曲線は、第3の領域A30の近傍における磁束を模式的に表している。前述のように、第3の検出部30に含まれる軟磁性構造体40は、基準平面RPに平行な方向の磁界に対応する磁束を集める作用を有する。
図11は、上記の軟磁性構造体40の作用が検出値Sx1,Sx2に与える影響を模式的に示している。図11では、検出値Sx1,Sx2の大きさを、図11における上下方向に延びる直線上の位置で表している。本実施の形態では、検出値Sx1,Sx2の可変範囲は等しく、可変範囲の中間値も等しい。図11において、符号Sxcは、検出値Sx1,Sx2の可変範囲の中間値を表している。
本実施の形態では、外部磁界が、X方向に平行な方向の成分を含んでいる場合には、検出値Sx1,Sx2は、いずれも中間値Sxcよりも大きいか、いずれも中間値Sxcよりも小さいかのどちらかである。
本実施の形態では、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、第1の部分11と第2の部分12の一方における磁束密度が増加する場合には、第1の部分11と第2の部分12の他方における磁束密度は減少する。第1の部分11と第2の部分12のうち、磁束密度が増加する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sx1またはSx2が中間値Sxcから遠ざかる。第1の部分11と第2の部分12のうち、磁束密度が減少する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sx1またはSx2が中間値Sxcに近づく。そのため、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sx1,Sx2の一方が中間値Sxcから遠ざかる場合には、検出値Sx1,Sx2の他方は中間値Sxcに近づく。なお、第1の部分11と第2の部分12における磁束密度が等しい場合には、検出値Sx1,Sx2は等しい。
図11は、一例として、磁気センサ1にX方向の外部磁界が印加された場合における検出値Sx1,Sx2を示している。この場合には、検出値Sx1,Sx2は、いずれも中間値Sxcよりも大きい。そして、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sx1は中間値Sxcから遠ざかり、検出値Sx2は中間値Sxcに近づく。
軟磁性構造体40が存在することにより、検出値Sx1,Sx2の各々には誤差が生じ得る。しかし、本実施の形態では、検出値Sx1と検出値Sx2の和を求めることを含む演算によって第1の検出値Sxを生成している。これにより、本実施の形態によれば、検出値Sx1,Sx2の各々に生じる誤差を相殺することができる。そのため、本実施の形態によれば、外部磁界の方向に関わらずに、第1の検出値Sxに生じる誤差を、検出値Sx1,Sx2の各々に生じる誤差に比べて小さくすることができる。
上記の効果は、特に、第1の部分領域A11と第2の部分領域A12が、第3の方向(Z方向)から見て、重心C30を中心として第1の部分領域A11を90°回転すると第2の部分領域A12に重なる位置関係であることによって、顕著に発揮される。
次に、軟磁性構造体40が、検出値Sy1,Sy2に与える影響について説明する。図12は、磁気センサ1にY方向の外部磁界が印加された様子を表している。図12において、矢印の付いた複数の曲線は、第3の領域A30の近傍における磁束を模式的に表している。前述のように、第3の検出部30に含まれる軟磁性構造体40は、基準平面RPに平行な方向の磁界に対応する磁束を集める作用を有する。
図13は、上記の軟磁性構造体40の作用が検出値Sy1,Sy2に与える影響を模式的に示している。図13では、検出値Sy1,Sy2の大きさを、図13における上下方向に延びる直線上の位置で表している。本実施の形態では、検出値Sy1,Sy2の可変範囲は等しく、可変範囲の中間値も等しい。図13において、符号Sycは、検出値Sy1,Sy2の可変範囲の中間値を表している。
本実施の形態では、外部磁界が、Y方向に平行な方向の成分を含んでいる場合には、検出値Sy1,Sy2は、いずれも中間値Sycよりも大きいか、いずれも中間値Sycよりも小さいかのどちらかである。
本実施の形態では、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、第3の部分21と第4の部分22の一方における磁束密度が増加する場合には、第3の部分21と第4の部分22の他方における磁束密度は減少する。第3の部分21と第4の部分22のうち、磁束密度が増加する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sy1またはSy2が中間値Sycから遠ざかる。第3の部分21と第4の部分22のうち、磁束密度が減少する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sy1またはSy2が中間値Sycに近づく。そのため、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sy1,Sy2の一方が中間値Sycから遠ざかる場合には、検出値Sy1,Sy2の他方は中間値Sycに近づく。なお、第3の部分21と第4の部分22における磁束密度が等しい場合には、検出値Sy1,Sy2は等しい。
図13は、一例として、磁気センサ1にY方向の外部磁界が印加された場合における検出値Sy1,Sy2を示している。この場合には、検出値Sy1,Sy2は、いずれも中間値Sycよりも大きい。そして、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sy1は中間値Sycから遠ざかり、検出値Sy2は中間値Sycに近づく。
軟磁性構造体40が存在することにより、検出値Sy1,Sy2の各々には誤差が生じ得る。しかし、本実施の形態では、検出値Sy1と検出値Sy2の和を求めることを含む演算によって第2の検出値Syを生成している。これにより、本実施の形態によれば、検出値Sy1,Sy2の各々に生じる誤差を相殺することができる。そのため、本実施の形態によれば、外部磁界の方向に関わらずに、第2の検出値Syに生じる誤差を、検出値Sy1,Sy2の各々に生じる誤差に比べて小さくすることができる。
上記の効果は、特に、第3の部分領域A21と第4の部分領域A22が、第3の方向(Z方向)から見て、重心C30を中心として第3の部分領域A21を90°回転すると第4の部分領域A22に重なる位置関係であることによって、顕著に発揮される。
また、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20では、出力の特性、具体的には感磁方向に対して外部磁界の方向がなす角度の変化に対する出力の変化の特性が同じかほぼ同じになる。このように、本実施の形態によれば、軟磁性構造体40に起因して第1の検出部10と第2の検出部20の出力の特性が異なることを抑制することができる。
上記の効果は、特に、第1ないし第4の部分11,12,21,22および第3の検出部30に含まれる全ての磁気検出素子すなわちMR素子100が、基板51の上面51aすなわち基準平面RPから等しい距離の位置に配置されていることによって、顕著に発揮される。
また、軟磁性構造体40が軟磁性層41,43の少なくとも一方を含むことによっても、上記の効果が顕著に発揮される。
[第2の実施の形態]
次に、図14および図15を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図14は、本実施の形態に係る磁気センサにおける第1の検出部に関わる回路を示す回路図である。図15は、本実施の形態に係る磁気センサにおける第2の検出部に関わる回路を示す回路図である。
本実施の形態に係る磁気センサ1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1の検出部10の第1の部分11は、第1の実施の形態における抵抗部Rx1,Rx2の代わりに、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Rx11,Rx12,Rx13,Rx14と、差分検出器13とを含んでいる。抵抗部Rx11,Rx12,Rx13,Rx14の各々は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。差分検出器13は、第1の入力端と第2の入力端と1つの出力端とを有している。抵抗部Rx11は、電源端子Vxと第1の接続点CP1との間に設けられている。抵抗部Rx12は、第1の接続点CP1とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rx13は、電源端子Vxと第2の接続点CP2との間に設けられている。抵抗部Rx14は、第2の接続点CP2とグランド端子Gとの間に設けられている。第1の接続点CP1と第2の接続点CP2は、それぞれ差分検出器13の第1の入力端と第2の入力端に接続されている。
第1の検出部10の第2の部分12は、第1の実施の形態における抵抗部Rx3,Rx4の代わりに、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Rx21,Rx22,Rx23,Rx24と、差分検出器14とを含んでいる。抵抗部Rx21,Rx22,Rx23,Rx24の各々は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。差分検出器14は、第1の入力端と第2の入力端と1つの出力端とを有している。抵抗部Rx21は、電源端子Vxと第3の接続点CP3との間に設けられている。抵抗部Rx22は、第3の接続点CP3とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rx23は、電源端子Vxと第4の接続点CP4との間に設けられている。抵抗部Rx24は、第4の接続点CP4とグランド端子Gとの間に設けられている。第3の接続点CP3と第4の接続点CP4は、それぞれ差分検出器14の第1の入力端と第2の入力端に接続されている。
本実施の形態では、演算回路15の2つの入力端は、それぞれ、差分検出器13の出力端と差分検出器14の出力端に接続されている。
第2の検出部20の第3の部分21は、第1の実施の形態における抵抗部Ry1,Ry2の代わりに、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Ry11,Ry12,Ry13,Ry14と、差分検出器23とを含んでいる。抵抗部Ry11,Ry12,Ry13,Ry14の各々は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。差分検出器23は、第1の入力端と第2の入力端と1つの出力端とを有している。抵抗部Ry11は、電源端子Vyと第5の接続点CP5との間に設けられている。抵抗部Ry12は、第5の接続点CP5とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Ry13は、電源端子Vyと第6の接続点CP6との間に設けられている。抵抗部Ry14は、第6の接続点CP6とグランド端子Gとの間に設けられている。第5の接続点CP5と第6の接続点CP6は、それぞれ差分検出器23の第1の入力端と第2の入力端に接続されている。
第2の検出部20の第4の部分22は、第1の実施の形態における抵抗部Ry3,Ry4の代わりに、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Ry21,Ry22,Ry23,Ry24と、差分検出器24とを含んでいる。抵抗部Ry21,Ry22,Ry23,Ry24の各々は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に応じて変化する抵抗値を有する。差分検出器24は、第1の入力端と第2の入力端と1つの出力端とを有している。抵抗部Ry21は、電源端子Vyと第7の接続点CP7との間に設けられている。抵抗部Ry22は、第7の接続点CP7とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Ry23は、電源端子Vyと第8の接続点CP8との間に設けられている。抵抗部Ry24は、第8の接続点CP8とグランド端子Gとの間に設けられている。第7の接続点CP7と第8の接続点CP8は、それぞれ差分検出器24の第1の入力端と第2の入力端に接続されている。
本実施の形態では、演算回路25の2つの入力端は、それぞれ、差分検出器23の出力端と差分検出器24の出力端に接続されている。
上記複数の抵抗部の各々の構成は、第1の実施の形態における抵抗部Rの構成と同じである。すなわち、上記複数の抵抗部は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つのMR素子である。
図14および図15において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表している。図14に示した例では、抵抗部Rx11,Rx14の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、抵抗部Rx12,Rx13の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、第1の接続点CP1と第2の接続点CP2の間の電位差が変化する。差分検出器13は、この電位差に対応する検出値Sx1を出力する。このようにして、第1の部分11は、検出値Sx1を生成する。検出値Sx1は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する。
また、抵抗部Rx21,Rx24の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はX方向である。抵抗部Rx22,Rx23の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、第3の接続点CP3と第4の接続点CP4の間の電位差が変化する。差分検出器14は、この電位差に対応する検出値Sx2を出力する。このようにして、第2の部分12は、検出値Sx2を生成する。検出値Sx2は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する。
本実施の形態では、第1および第2の部分11,12は、第1の実施の形態と同様に、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sx1,Sx2が、共に増加または共に減少するように構成されている。なお、検出値Sx1は、第1の接続点CP1と第2の接続点CP2の間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。同様に、検出値Sx2は、第3の接続点CP3と第4の接続点CP4の間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
図15に示した例では、抵抗部Ry11,Ry14の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はY方向である。抵抗部Ry12,Ry13の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、第5の接続点CP5と第6の接続点CP6の間の電位差が変化する。差分検出器23は、この電位差に対応する検出値Sy1を出力する。このようにして、第3の部分21は、検出値Sy1を生成する。検出値Sy1は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する。
また、抵抗部Ry21,Ry24の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はY方向である。抵抗部Ry22,Ry23の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、第7の接続点CP7と第8の接続点CP8の間の電位差が変化する。差分検出器24は、この電位差に対応する検出値Sy2を出力する。このようにして、第4の部分22は、検出値Sy2を生成する。検出値Sy2は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する。
本実施の形態では、第3および第4の部分21,22は、第1の実施の形態と同様に、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sy1,Sy2が、共に増加または共に減少するように構成されている。なお、検出値Sy1は、第5の接続点CP5と第6の接続点CP6の間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。同様に、検出値Sy2は、第7の接続点CP7と第8の接続点CP8の間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、図16ないし図18を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ1の概略の構成について説明する。図16は、本実施の形態に係る磁気センサにおける第1および第2の検出部の構成と第1の検出部に関する配線を示す説明図である。図17は、本実施の形態に係る磁気センサにおける第1および第2の検出部の構成と第2の検出部に関する配線を示す説明図である。図18は、本実施の形態に係る磁気センサにおける第1および第2の検出部に関わる回路を示す回路図である。
本実施の形態に係る磁気センサ1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態における出力端子Vx1,Vx2,Vy1,Vy2が、それぞれ、出力端子Vx+,Vx−,Vy+,Vy−に置き換えられている。
本実施の形態では、第1の検出部10の第1の部分11は、出力端子Vx+の電位に対応する検出値Sx+を生成する。第1の検出部10の第2の部分12は、出力端子Vx−の電位に対応する検出値Sx−を生成する。なお、検出値Sx+,Sx−は、それぞれ出力端子Vx+,Vx−の電位に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
また、本実施の形態では、第2の検出部20の第3の部分21は、出力端子Vy+の電位に対応する検出値Sy+を生成する。第2の検出部20の第4の部分22は、出力端子Vy−の電位に対応する検出値Sy−を生成する。なお、検出値Sy+,Sy−は、それぞれ出力端子Vy+,Vy−の電位に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
また、本実施の形態では、第2の部分12に含まれる抵抗部Rx3,Rx4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向が、第1の実施の形態とは逆になっている。すなわち、図16および図18に示したように、抵抗部Rx3におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。抵抗部Rx4におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はX方向である。なお、第1の部分11に含まれる抵抗部Rx1,Rx2の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態と同じである。これにより、本実施の形態では、第1の検出部10の第1および第2の部分11,12は、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sx+と検出値Sx−の一方が増加し他方が減少するように構成されている。
また、本実施の形態では、第4の部分22に含まれる抵抗部Ry3,Ry4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向が、第1の実施の形態とは逆になっている。すなわち、図17および図18に示したように、抵抗部Ry3におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。抵抗部Ry4におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向はY方向である。なお、第3の部分21に含まれる抵抗部Ry1,Ry2の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態と同じである。これにより、本実施の形態では、第2の検出部20の第3および第4の部分21,22は、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分の変化に伴って、検出値Sy+と検出値Sy−の一方が増加し他方が減少するように構成されている。
また、本実施の形態に係る磁気センサ1は、第1の実施の形態における演算回路15,25および出力ポート16,26の代わりに、2つの演算回路17,27と、2つの出力ポート18,28とを備えている。演算回路17は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路17の2つの入力端は、それぞれ、出力端子Vx+,Vx−に接続されている。演算回路17の出力端は、出力ポート18に接続されている。
演算回路27は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路27の2つの入力端は、それぞれ、出力端子Vy+,Vy−に接続されている。演算回路27の出力端は、出力ポート28に接続されている。
演算回路17は、本発明における第1の演算回路に対応する。演算回路17は、第1の検出部10の第1の部分11の検出値Sx+と第1の検出部10の第2の部分12の検出値Sx−を用いた演算によって、外部磁界の第1の方向(X方向)に平行な方向の成分に対応する第1の検出値Sxを生成する。本実施の形態では特に、演算回路17による演算は、検出値Sx+と検出値Sx−の差を求めることを含んでいる。演算回路17による演算は、検出値Sx+と検出値Sx−の差を求めた後に、所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含んでいてもよい。出力ポート18は、第1の検出値Sxを出力する。
演算回路27は、本発明における第2の演算回路に対応する。演算回路27は、第2の検出部20の第3の部分21の検出値Sy+と第2の検出部20の第4の部分22の検出値Sy−を用いた演算によって、外部磁界の第2の方向(Y方向)に平行な方向の成分に対応する第2の検出値Syを生成する。本実施の形態では特に、演算回路27による演算は、検出値Sy+と検出値Sy−の差を求めることを含んでいる。演算回路27による演算は、検出値Sy+と検出値Sy−の差を求めた後に、所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含んでいてもよい。出力ポート28は、第2の検出値Syを出力する。
次に、本実施の形態に係る磁気センサ1の作用および効果について説明する。始めに、軟磁性構造体40が、検出値Sx+,Sx−に与える影響について説明する。第1の実施の形態で説明したように、第3の検出部30に含まれる軟磁性構造体40は、基準平面RPに平行な方向の磁界に対応する磁束を集める作用を有する。
図19は、上記の軟磁性構造体40の作用が検出値Sx+,Sx−に与える影響を模式的に示している。図19では、検出値Sx+,Sx−の大きさを、図19における上下方向に延びる直線上の位置で表している。本実施の形態では、検出値Sx+,Sx−の可変範囲は等しく、可変範囲の中間値も等しい。図19において、符号Sxcは、検出値Sx+,Sx−の可変範囲の中間値を表している。
本実施の形態では、外部磁界が、X方向に平行な方向の成分を含んでいる場合には、検出値Sx+,Sx−の一方は中間値Sxcよりも大きく、検出値Sx+,Sx−の他方は中間値Sxcよりも小さい。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、第1の部分11と第2の部分12の一方における磁束密度が増加する場合には、第1の部分11と第2の部分12の他方における磁束密度は減少する。第1の部分11と第2の部分12のうち、磁束密度が増加する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sx+またはSx−が中間値Sxcから遠ざかる。第1の部分11と第2の部分12のうち、磁束密度が減少する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sx+またはSx−が中間値Sxcに近づく。そのため、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sx+,Sx−の一方が中間値Sxcから遠ざかる場合には、検出値Sx+,Sx−の他方は中間値Sxcに近づく。なお、第1の部分11と第2の部分12における磁束密度が等しい場合には、検出値Sx+の絶対値と検出値Sx−の絶対値は等しい。
図19は、一例として、磁気センサ1にX方向の外部磁界が印加された場合における検出値Sx+,Sx−を示している。この場合には、検出値Sx+は中間値Sxcよりも大きく、検出値Sx−は中間値Sxcよりも小さい。そして、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sx+は中間値Sxcから遠ざかり、検出値Sx−は中間値Sxcに近づく。
軟磁性構造体40が存在することにより、検出値Sx+,Sx−の各々には誤差が生じ得る。しかし、本実施の形態では、検出値Sx+と検出値Sx−の差を求めることを含む演算によって第1の検出値Sxを生成している。これにより、本実施の形態によれば、検出値Sx+,Sx−の各々に生じる誤差を相殺することができる。そのため、本実施の形態によれば、外部磁界の方向に関わらずに、第1の検出値Sxに生じる誤差を、検出値Sx+,Sx−の各々に生じる誤差に比べて小さくすることができる。
次に、軟磁性構造体40が、検出値Sy+,Sy−に与える影響について説明する。図20は、前述の軟磁性構造体40の作用が検出値Sy+,Sy−に与える影響を模式的に示している。図20では、検出値Sy+,Sy−の大きさを、図20における上下方向に延びる直線上の位置で表している。本実施の形態では、検出値Sy+,Sy−の可変範囲は等しく、可変範囲の中間値も等しい。図20において、符号Sycは、検出値Sy+,Sy−の可変範囲の中間値を表している。
本実施の形態では、外部磁界が、Y方向に平行な方向の成分を含んでいる場合には、検出値Sy+,Sy−の一方は中間値Sycよりも大きく、検出値Sy+,Sy−の他方は中間値Sycよりも小さい。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、第3の部分21と第4の部分22の一方における磁束密度が増加する場合には、第3の部分21と第4の部分22の他方における磁束密度は減少する。第3の部分21と第4の部分22のうち、磁束密度が増加する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sy+またはSy−が中間値Sycから遠ざかる。第3の部分21と第4の部分22のうち、磁束密度が減少する方では、軟磁性構造体40が無い場合に比べて検出値Sy+またはSy−が中間値Sycに近づく。そのため、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sy+,Sy−の一方が中間値Sycから遠ざかる場合には、検出値Sy+,Sy−の他方は中間値Sycに近づく。なお、第3の部分21と第4の部分22における磁束密度が等しい場合には、検出値Sy+の絶対値と検出値Sy−の絶対値は等しい。
図20は、一例として、磁気センサ1にY方向の外部磁界が印加された場合における検出値Sy+,Sy−を示している。この場合には、検出値Sy+は中間値Sycよりも大きく、検出値Sy−は中間値Sycよりも小さい。そして、軟磁性構造体40が存在することにより、軟磁性構造体40が無い場合に比べて、検出値Sy+は中間値Sycから遠ざかり、検出値Sy−は中間値Sycに近づく。
軟磁性構造体40が存在することにより、検出値Sy+,Sy−の各々には誤差が生じ得る。しかし、本実施の形態では、検出値Sy+と検出値Sy−の差を求めることを含む演算によって第2の検出値Syを生成している。これにより、本実施の形態によれば、検出値Sy+,Sy−の各々に生じる誤差を相殺することができる。そのため、本実施の形態によれば、外部磁界の方向に関わらずに、第2の検出値Syに生じる誤差を、検出値Sy+,Sy−の各々に生じる誤差に比べて小さくすることができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図21を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図21は、本実施の形態に係る磁気センサの概略の構成を示す平面図である。
本実施の形態では、第1の部分領域A11と第4の部分領域A22が、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の片側に位置している。また、第2の部分領域A12と第3の部分領域A21が、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の片側に位置している。
なお、本実施の形態では、第1の部分領域A11と第2の部分領域A12は、第3の方向(Z方向)から見て、第3の領域A30の重心C30を中心として第1の部分領域A11を90°回転すると第2の部分領域A12に重なる位置関係である。また、第3の部分領域A21と第4の部分領域A22は、第3の方向(Z方向)から見て、第3の領域A30の重心C30を中心として第3の部分領域A21を90°回転すると第4の部分領域A22に重なる位置関係である。
本実施の形態に係る磁気センサ1の回路構成は、第1ないし第3の実施の形態のうちのいずれかと同じである。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第3の実施の形態のいずれかと同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1ないし第3の検出部の各々の構成は、各実施の形態に示した例に限られず、特許請求の範囲の要件を満たすものであればよい。