以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態におけるインプリント装置100の構成を示した図である。図1を用いてインプリント装置100の構成について説明する。ここでは、基板11が配置される面をXY面、それに直交する方向をZ方向として、図1に示したように各軸を決める。インプリント装置100は、基板上に供給されたインプリント材を型21(モールド)と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。図1のインプリント装置100は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用される。ここでは光硬化法を採用したインプリント装置100について説明する。
インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。このように、インプリント装置は型(モールド)を用いて基板上のインプリント材を成形する装置である。
インプリント装置100は、基板11を保持する基板ステージ2と、型21を保持する型保持部3と、アライメント計測部4と、照射部5と、供給部6(ディスペンサ)とを含む。型保持部3は、ベース定盤41により支柱43を介して支持されたブリッジ定盤42に固定されており、基板ステージ2は、ベース定盤41に固定されている。また、インプリント装置100は、CPUやメモリを含み、インプリント処理を制御する(インプリント装置100の各部を制御する)制御部7を含む。制御部7は、インプリント装置100内に設けてもよいし、インプリント装置100とは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
基板11は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板などが用いられる。基板11の上面(被処理面)には、後述する供給部6によってインプリント材(紫外線硬化樹脂)が供給される。また、型21は、通常、石英など紫外線を通過させることが可能な材料で作製されており、基板側の面における一部の領域21a(パターン領域)には、基板11に転写する凹凸のパターンが形成されている。
基板ステージ2は、基板保持部12(基板チャック)とステージ駆動部13とを含み、型21と基板上のインプリント材とを接触させる際に、基板11をX方向およびY方向に移動させて基板11と型21との位置合わせを行う。基板保持部12は、例えば、真空吸着力や静電力などによって基板11を保持する。ステージ駆動部13は、基板保持部12を機械的に保持するとともに、基板保持部12をX方向およびY方向に駆動する。ここで、ステージ駆動部13は、例えば、リニアモータが用いられ、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系によって構成されてもよい。また、ステージ駆動部13は、基板11をZ方向に駆動する駆動機能や、基板11をθ方向(Z軸周りの回転)に回転駆動して基板11の位置を調整する位置調整機能、基板11の傾きを補正するためのチルト機能などを有していてもよい。
型保持部3は、例えば真空吸着力や静電力などにより型21を保持する型保持機構22と、型保持機構22をZ方向に駆動する型駆動機構23とを含む。型保持機構22および型駆動機構23は、それぞれの中心部(内側)に開口領域を有しており、照射部5から射出された光が型21を介して基板11に照射されるように構成されている。ここで、型21には、製造誤差や熱変形などにより、例えば、倍率成分や台形成分、弓型成分、樽型成分などの成分を含む変形が生じている場合がある。そのため、型保持部3は、型21の側面における複数の箇所に力を加えて型21を変形させる変形部24を備えている。このように当該複数の箇所の各々に変形部24によって力を加えることで、型21に形成された領域21aの形状を変えることができる。
型駆動機構23は、例えば、リニアモータやエアシリンダなどのアクチュエータを含み、型21と基板上のインプリント材とを接触させたり剥離させたりするように型保持機構22(型21)をZ方向に駆動する。型駆動機構23は、型21と基板上のインプリント材とを接触させる際には高精度な位置決めが要求されるため、粗動駆動系と微動駆動系などの複数の駆動系によって構成されてもよい。また、型駆動機構23は、Z方向の駆動だけではなく、XY方向およびθ方向に型21の位置を調整する位置調整機能や、型21の傾きを補正するためのチルト機能などを有していてもよい。ここで、第1実施形態のインプリント装置100では、基板11と型21との間の距離を変える動作は型駆動機構23で行っているが、基板ステージ2のステージ駆動部13で行ってもよいし、双方で相対的に行ってもよい。
アライメント計測部4は、基板上に形成されたショット領域8(型21のパターンが転写される領域)の形状と、型に形成された領域21a(パターン領域)の形状との差異(以下、形状差)を計測する。例えば、形状差を計測する方法として、ショット領域8と領域21aのそれぞれに形成された複数のアライメントマークを検出する方法がある。基板のショット領域と型のパターン領域のそれぞれ対応した位置にアライメントマークが形成されている。アライメント計測部4は、ショット領域8のアライメントマークと型の領域21aのアライメントマークをそれぞれ個別に観察してもよいし、それぞれのアライメントマークを重ねて観察(例えば、モアレ縞を観察)してもよい。これにより、アライメント計測部4は、ショット領域8のアライメントマークと型の領域21aのアライメントマークとの位置ずれ量を検出し、その位置ずれ量に基づいてショット領域8と型の領域21aとの形状差を計測することができる。
ここで、基板11のショット領域8において基板11を支持する基板保持部12の表面形状が平坦ではない場合や、半導体デバイスの製造工程などの影響により、基板11が変形し、所望の平坦度ではない場合がある。この場合、基板上のショット領域8に型21のパターン(領域21a)を精度よく転写するためには、変形部24によって変形された型の領域21aの形状(目標形状)に合わせてショット領域8を変形させる必要がある。そのため、第1実施形態のインプリント装置100は、後述するように、基板上のショット領域8に基板保持部12に到達可能な波長の光を照射することによって基板保持部12を加熱し、基板保持部12を高さ方向(Z方向)に変形させる。なお、基板11および基板保持部12の高さ方向の寸法はインプリント装置内外の既知の手段でインプリント前後、またはインプリント中に計測することができる。
照射部5は、基板上のインプリント材を硬化させる光を射出する露光部31と、基板保持部12を加熱する光を射出する加熱部32と、露光部31から射出された光と加熱部32から射出された光を基板上や基板保持部12に導く光学部材33とを含む。露光部31は、基板上のインプリント材を硬化させる光(紫外線)を射出する光源と、当該光源から射出された光をインプリント処理において適切な光に調整する光学系とを含みうる。
加熱部32(光源部)は、基板上のショット領域8に対応する基板保持部12を加熱する光を射出する光源と、当該光源から射出された光で基板保持部12を加熱する上で適切な光に調整する光学系を含みうる。ここで、この加熱部は、基板保持部で保持している基板の表面の高さを変える(変化させる)機能を有している。具体的には、基板を基板保持部側に突き当てるようにすることにより基板を保持する構成の場合に、基板保持部を加熱し膨張(冷却し収縮)させることによって、基板を基板と垂直な方向に変形(部分的な高さの変化)させている。基板保持部は、基板と基板保持部との間を真空にする(少なくとも基板表面側の空間よりも低圧にする)ことにより基板を基板保持部に突き当てている。基板保持部は上記の構成のみならず、磁力によって基板を基板保持部側に突き当てても良いし、その他の方法で、基板保持部側に突き当てても構わない。
加熱部32の光源は、基板上に供給されたインプリント材を硬化させず、かつ基板保持部12の加熱に適した波長(例えば、2μm以上5μm以下)を有する光を射出する。このように加熱部32の光源は、基板保持部12を加熱させるために、型21と基板11を透過する波長の光を射出する。例えば、加熱部32の光源は、基板11の透過率が50%以上の波長の光を照射する。加熱部32の光学系は、加熱部32の光源から射出された光を、ショット領域8における基板保持部12の温度分布が所望の温度分布となるように、即ち、ショット領域8(基板保持部12)の形状が目標形状となるように調整可能な(整形可能な)調整部を含む。例えば、加熱部32(光源部)の光学系に含まれる調整部(光学素子)としては、複数の反射ミラーを含むDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)や液晶素子などが用いられる。
また、光学部材33は、例えば、露光部31から射出された光(紫外線)を透過し、加熱部32から射出された光(波長2000nm〜5000nm)を反射するビームスプリッタを含みうる。なお、従来技術のインプリント装置の加熱部32は、基板上に供給されたインプリント材を硬化させず、かつ基板11の加熱に適した波長(例えば、400nm〜2000nm)の光であり、基板11の表面に沿った方向の変形を目的とした波長設定である。また、アライメントに使用する光波長は基板の材質がSiの場合、光が反射しやすい1000nm以下が一般的である。よって、本発明で示す波長2000nm〜5000nmは基板を透過する以外で用途が少なく、不要な光としてカットすることが一般的である。
供給部6は、基板上にインプリント材を供給する。第1実施形態では、紫外線の照射によって硬化する性質を有するインプリント材が用いられているが、供給部6から基板上に供給されるインプリント材は、半導体デバイスの製造工程における各種条件によって適宜選択されうる。また、供給部6の吐出口から吐出されるインプリント材の位置や量は、基板上のインプリント材に形成されるパターンの厚さやパターンの密度などを考慮して適宜決定されうる。基板上に供給されたインプリント材を、型21に形成されたパターンに十分に充填させるために、型とインプリント材とを接触させた状態で一定の時間を経過させてもよい。
インプリント材には、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターにより基板上に膜状に付与される。或いは液体噴射ヘッドにより、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上、100mPa・s以下である。
基板は、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板としては、具体的に、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどである。
このように構成された第1実施形態のインプリント装置100において、型21のパターンを基板上のショット領域8に転写するインプリント処理について図2を参照しながら説明する。図2は、型21のパターンを基板上のショット領域8に転写するインプリント処理における動作シーケンスを示すフローチャートである。なお、基板保持部12の平坦度計測を事前に実施した場合について述べる。
S101では、制御部7は、型21を型保持機構22の下に搬送するように型搬送機構(不図示)を制御し、型21を保持するように型保持機構22を制御する。これにより、型21がインプリント装置100内に搬入(配置)される。S102では、制御部7は、基板11を基板保持部12の上に搬送するように基板搬送機構(不図示)を制御し、基板11を保持するように基板保持部12を制御する。これにより、基板11がインプリント装置100内に搬入(配置)される。S103では、制御部7は、基板上のショット領域8(インプリント処理が行われる対象の領域)が供給部6の下に配置されるようにステージ駆動部13を制御して、基板11を移動させる。S104では、制御部7は、基板上のショット領域8にインプリント材を供給するように供給部6を制御する。S105では、制御部7は、インプリント材が供給された基板上のショット領域8が型21の領域21aの下に配置されるようにステージ駆動部13を制御して、基板11を移動させる。S106では、制御部7は、型21のパターンと基板上のインプリント材とが接触するように、即ち、基板11と型21との距離が短くなるように型駆動機構23を制御する。
S107では、制御部7は、ショット領域8に形成されたアライメントマークと型21に形成されたアライメントマークとを計測するようにアライメント計測部4を制御する。これにより、アライメント計測部4は、基板上のショット領域8と型の領域21aとの形状差を計測することができる。基板上のショット領域8と型の領域21aとの形状差は、基板上のショット領域8および型の領域21aの形状を事前に計測しておき、それを取得してもよい。また、事前の計測値とアライメント計測部4による計測値を併用してもよい。S108では、制御部7は、アライメント計測部4により計測された形状差が許容範囲に収まるように変形部24と加熱部32とを制御し、型の領域21aおよび基板上のショット領域8の基板保持部12をそれぞれ変形させる。上述したように、変形部24は、型21の側面における複数の箇所に力を加えることにより、型の領域21aにおける変形を補正する。そして、加熱部32は、例えば変形部24により補正された型の領域21aの形状を目標形状として、基板上のショット領域8の形状が目標形状になるようにショット領域8における基板保持部12を変形する。これにより、型の領域21aとショット領域8との形状差を許容範囲に収めて、型21のパターンをショット領域8に精度よく転写することができる。加熱部32によるショット領域8における基板保持部12の変形については、後に詳細を説明する。ここで、S107におけるアライメント計測部4による計測工程と、S108における型21の変形工程は、型21と基板上のインプリント材とを接触させる工程(S106)の前に行われてもよい。また、アライメント計測部4による計測は、S108における型21の変形工程とショット領域8の変形工程との間に行われてもよい。
S109では、制御部7は、型21を接触させたインプリント材に対して紫外線を照射するように露光部31を制御し、当該インプリント材を硬化させる。S110では、制御部7は、型21を基板上のインプリント材から剥離する(離型する)ように、即ち、基板11と型21との距離が長くなるように型駆動機構23を制御する。S111では、制御部7は、基板上に引き続き型21のパターンを転写するショット領域8(次のショット領域8)があるか否かの判定を行う。次のショット領域8がある場合はS103に進み、次のショット領域8がない場合はS112に進む。S112では、制御部7は、基板11を基板保持部12から回収するように基板搬送機構(不図示)を制御する。S113では、制御部7は、引き続きインプリント処理を行う基板11(次の基板11)があるか否かの判定を行う。次の基板11がある場合はS102に進み、次の基板11がない場合はS114に進む。S114では、制御部7は、型21を型保持機構22から回収するように型搬送機構(不図示)を制御する。
ここで、加熱部32によるショット領域8における基板保持部12の変形について説明する。上述したように、基板上のショット領域8は、例えば基板11や基板保持部12の製造誤差や装置との組合せ、使用回数等によって平坦度が変化し、所望の形状ではない場合がある。そして、この場合、基板上のショット領域8に型21のパターンを精度よく転写するためには、ショット領域8の形状が目標形状になるようにショット領域8を変形させる必要がある。そのため、第1実施形態のインプリント装置100は、ショット領域8における基板保持部12の複数の部分の各々に光を照射することにより熱を加え、各部分における熱膨張により当該ショット領域を変形させる加熱部32を含む。そして、加熱部32は、制御部7により決定された加熱プロファイルに基づいてショット領域8における基板保持部12における各部分に熱を加える。これにより、ショット領域8の基板保持部12において温度分布を得ることができ、基板保持部12の基板を保持する保持面の高さを調整することでショット領域8の形状を目標形状にすることができる。ここで、加熱プロファイルとは、1つの部分に加える単位時間当たりの加熱量(以下、加熱流と称する)と時刻との関係を示すプロファイルである。加熱プロファイルの生成方法については後述する。また、第1実施形態において制御部7は、上述したように、ショット領域8の目標形状として、変形部24により変形された型の領域21aの形状を用いる。さらに、第1実施形態では、複数の部分は、全てショット領域8に含まれているが、それに限られるものではなく、ショット領域8の外側に配置された部分を含んでもよい。
ここでは、説明を簡単にするために、ショット領域8は、図4(a)に示すように、部分8A、8B、8C、8Dの4つの部分を含むものとする。
図4(b)のように基板保持部12に保持された基板11のショット領域8に凸形状の変形が生じている場合には、凸形状がある領域8aの温度がそれ以外の領域に対して低くなるように、ショット領域8の部分ごとに加熱プロファイルが生成される。これは、凸形状を含んだ領域8aに熱を加えない、つまり凸形状を含んだ領域8aの外側を加熱することで、凸形状を含んだ領域の外側の基板保持部12の温度を高くして熱膨張させ、基板11をZ方向に押し上げることにより基板11を平坦化する。基板保持部12を加熱することで、特に基板と接触する接触部12aがZ方向に変形する。ここで、Z方向とは、基板11の表面に垂直な方向を示す。そして、生成された加熱プロファイルに従って加熱部32がショット領域8の各部分に熱を加えることにより、ショット領域8の形状が目標形状となるようにショット領域8を変形することができる。
図4(c)のように基板保持部12に保持された基板11のショット領域8に凹形状の変形が生じている場合には、凹形状がある領域8bの温度がそれ以外の領域に対して高くなるように、ショット領域8の部分ごとに加熱プロファイルが生成される。これは、凹形状を含んだ領域8bに熱を加えることで、基板保持部12の温度を高くして熱膨張させ、基板11をZ方向に押し上げて凹形状を平坦化する狙いである。基板保持部12を加熱することで、特に基板と接触する接触部12aがZ方向に変形する。そして、生成された加熱プロファイルに従って加熱部32がショット領域8の各部分に熱を加えることにより、ショット領域8の形状が目標形状となるようにショット領域8を変形することができる。
また、ショット領域8に凸形状と凹形状とを含む変形が生じている場合もある。この場合には、凸形状の変形を補正する加熱プロファイルと凹形状の変形を補正する加熱プロファイルが足し合わされた加熱プロファイルがショット領域8の部分ごとに生成される。そして、加熱部32は、双方が足し合わされた加熱プロファイルに従ってショット領域8の各部分に熱を加える。これにより、凸形状と凹形状とを含む基板保持部12の保持面のZ方向の変形を調整することができ、ショット領域8の形状(平坦度)が目標形状となるように、ショット領域8を変形することができる。
ここで、一例として、図4(a)に示すショット領域8にY方向に進むにつれてZ方向の変形量が線形的に大きくなるような変形が生じている場合における加熱プロファイルの生成方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、制御部7における加熱プロファイルの生成方法を示すフローチャートである。また、ショット領域8は、加熱部32により個別に熱が加えられる複数の部分を含む。
S301では、制御部7は、ショット領域8の各部分8A〜8Dに所定の加熱量(以下、所定加熱量)を与え、その際のショット領域8(基板保持部12)のZ方向の変形量をそれぞれ取得する。図5に、ショット領域8の各部分8A〜8Dに与えられる所定加熱量と、所定加熱量を各部分8A〜8Dに与えた際のショット領域8(基板保持部12)のZ方向の変形量とを示す。図5において、横軸は、図4(a)に示すショット領域8の右辺(線P1−P5)の位置P1〜P5を示す。図5(a)は、ショット領域8の部分8Aに与えられる所定加熱量(左図)とその際のショット領域8のZ方向の変形量(右図)とを示す。同様に、図5(b)は、ショット領域8の部分8Bに与えられる所定加熱量(左図)とその際のショット領域8のZ方向の変形量(右図)とを示す。図5(c)は、ショット領域8の部分8Cに与えられる所定加熱量(左図)とその際のショット領域8のZ方向の変形量(右図)とを示す。そして、図5(d)は、ショット領域8の部分8Dに与えられる所定加熱量(左図)とその際のショット領域8のZ方向の変形量(右図)とを示す。このようなショット領域8の変形量は、例えば、実験やシミュレーションなどによって求めることができ、データベースもしくは関数として制御部7によって取得されうる。ここで、ショット領域8の部分8A〜8Dに与えられる所定加熱量は、部分8A〜8Dにおいて同じにするとよく、その大きさは任意に設定することができる。
S302では、制御部7は、S301で取得したショット領域8の変形量を用いて、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける目標加熱量を決定する。例えば、図4(a)に示すショット領域8の線P1−P5を、図6(a)に示すように、Y方向に進むにつれてZ方向の変形量が線形的に大きくなるように変化させるとする。即ち、図6(a)に示す関数が、図4(a)に示すショット領域8の線P1−P5における目標形状となる。このとき、制御部7は、S301で取得したショット領域8の変位量(図5(a)〜(d)の右図)のそれぞれに係数を乗じて合成することにより(線形結合)、図6(b)の太線で示すように、ショット領域8の線P1−P5の形状を近似する。そして、制御部7は、この近似されたショット領域8の線P1−P5の形状(近似形状)が目標形状に近づくように係数を決定し、決定した係数を所定加熱量に乗ずる。これにより、制御部7は、図6(c)に示すように、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける目標加熱量を決定することができる。
S303では、制御部7は、S302で決定されたショット領域8の各部分8A〜8Dにおける目標加熱量を用いて、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルをそれぞれ生成する。加熱プロファイルは、上述したように、各部分8A〜8Dに加えられる加熱流(単位時間当たりの加熱量)と時刻との関係を示している。そして、加熱部32がこの加熱プロファイルに従って各部分8A〜8Dに熱を加えることにより、各部分8A〜8Dにおける加熱量をそれぞれ目標加熱量に近づけることができる。即ち、ショット領域8の形状を目標形状に近づけることができる。ここで、加熱プロファイルを生成する方法の一例としては、例えば、加熱部32が熱を加えている時間を部分8A〜8Dで一定として生成する方法と、加熱部32が加える加熱流を部分8A〜8Dで一定として生成する方法とが挙げられる。以下に、両者の方法について説明する。
まず、加熱部32が熱を加えている時間を部分8A〜8Dで一定として加熱プロファイルを生成する方法について説明する。この方法は、図7(a)に示すように、加熱部32が加熱を開始する時刻t1と加熱量が目標加熱量に到達する時刻t2とを固定し、時刻t1と時刻t2との間において加熱部32が加える加熱流を変更して加熱プロファイルを生成する方法である。時刻t2は、例えば、基板上のインプリント材の硬化を開始する時刻、即ち、当該インプリント材への紫外線の照射を開始する時刻である。制御部7は、加熱部32が部分8Aに加える加熱流Q1を時刻t1から時刻t2で積分した値(部分8Aの加熱量)がS302で決定された目標加熱量になるように、加熱部32が部分8Aに加える加熱流Q1を決定する。これにより、制御部7は、図8(a)に示すように、ショット領域8の部分8Aにおける加熱プロファイルを生成することができる。また、制御部7は、加熱部32が部分8Bに加える加熱流Q2を時刻t1から時刻t2で積分した値(部分8Bの加熱量)がS302で決定された目標加熱量になるように、加熱部32が部分8Bに加える加熱流Q2を決定する。これにより、制御部7は、図8(b)に示すように、ショット領域8の部分8Bにおける加熱プロファイルを生成することができる。同様に、制御部7は、加熱部32が部分8Cに加える加熱流Q3と、加熱部32が部分8Dに加える加熱流Q4とを決定する。これにより、制御部7は、図8(c)および(d)に示すように、ショット領域8の部分8Cおよび8Dにおける加熱プロファイルをそれぞれ生成することができる。
図8(e)は、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルの合計、即ち、加熱部32がショット領域8の全体に加える加熱流と時刻との関係を表す加熱プロファイルを示す。図8(e)におけるQtotalは、各部分8A〜8Dに加える加熱流Q1〜Q4の合計値である。図8(e)に示す加熱プロファイルに従って加熱部32がショット領域8に熱を加える場合、ショット領域8における温度の平均値(以下、平均温度)は、図8(f)に示すように、時刻t1から上昇し始める。そして、ショット領域8の平均温度は、平均温度の変化の時定数よりも加熱時間(時刻t1から時刻t2までの間)が短ければ、線形に変化する。図8(f)に示すようにショット領域8の平均温度が上昇する場合、ショット領域8(線P1−P5)は、図8(g)に示すように、時刻t1から変形し始める。なお、後述のように、基板保持部12を熱変形させる光波長の一部は基板11に吸収され、基板11を熱変形させうる。時刻t1の直後では、図8(g)に示すように、ショット領域8の温度変化に応じて生じる熱応力が基板11と基板保持部12との間に発生する摩擦力より小さいため、ショット領域8は緩やかに変形することとなる。そして、時刻t3の後になると、ショット領域8に生じる熱応力が摩擦力より大きくなるため、ショット領域8は大きく変形し始める。即ち、時刻t3はショット領域8に生じる熱応力と摩擦力とが同じになる時刻であり、時刻t3の前と後とでは、ショット領域8の変形量の変化率が異なる。第1実施形態のインプリント装置100では、S301において取得されたショット領域8の変形量を用いて各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルが決定されており、当該変形量は実験などによって求められる。そのため、制御部7は、時刻t3の前後においてショット領域の変形量の変化率が異なっている場合であっても、ショット領域8の形状が目標形状Aになるように各部分8A〜8Dの加熱プロファイルを決定することができる。
次に、加熱部32が加える加熱流を部分8A〜8Dで一定として加熱プロファイルを生成する方法について説明する。この方法は、図7(b)に示すように、加熱部32が加える加熱流Qを固定し、加熱部32が加熱を開始する時刻t1を変更して加熱プロファイルを生成する方法である。時刻t2は、上述したように、例えば、基板上のインプリント材の硬化を開始する(紫外線の照射を開始する)時刻である。制御部7は、加熱部32が部分8Aに加える加熱流Q1を設定し、加熱流Q1を時刻t1Aから時刻t2で積分した値(部分8Aの加熱量)がS302で決定された目標加熱量になるように時刻t1Aを決定する。これにより、制御部7は、図9(a)に示すように、ショット領域8の部分8Aにおける加熱プロファイルを生成することができる。また、制御部7は、加熱部32が部分8Bに加える加熱流Q2を設定し、加熱流Q2を時刻t1Bから時刻t2で積分した値(部分8Bの加熱量)がS302で決定された目標加熱量になるように時刻t1Bを決定する。これにより、制御部7は、図9(b)に示すように、ショット領域8の部分8Bにおける加熱プロファイルを生成することができる。同様に、制御部7は、加熱部32が部分8Cに加える加熱流Q3と部分8Dに加える加熱流Q4をそれぞれ設定し、時刻t1Cと時刻t1Dとを決定する。これにより、制御部7は、図9(c)および(d)に示すように、ショット領域8の部分8Cおよび8Dにおける加熱プロファイルをそれぞれ生成することができる。図9(e)は、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルの合計、即ち、加熱部32がショット領域8の全体に加える加熱流と時刻との関係を表す加熱プロファイルを示す。図9(e)におけるQtotalは、各部分8A〜8Dに加える加熱流Q1〜Q4の合計値である。そして、図8(e)に示す加熱プロファイルでは、ショット領域8に加える加熱流が時刻t1A〜t1Dにおいて階段状に変わる。ここで、加熱部32が部分8A〜8Dに加える加熱流Q1〜Q4は、それらが互いに異なる大きさになるように設定されてもよいし、それらが同じ大きさになるように設定されてもよい。
上述したように、第1実施形態のインプリント装置100は、ショット領域8に含まれる複数の部分の各々に熱を加えることによってショット領域8における基板保持部12をZ方向に変形させる加熱部32を含む。そして、制御部7が各部分における加熱プロファイルを生成し、生成された加熱プロファイルに従って加熱部32がショット領域8の各部分に熱を加えることで、ショット領域8の形状を目標形状に近づけることができる。したがって、第1実施形態のインプリント装置100は、ショット領域8の形状と型の領域21aの形状との差を許容範囲に収めることができ、ショット領域8に型のパターンを精度よく転写することができる。ここで、加熱プロファイルは、例えば、図7(c)に示すように、加熱部32による各部分への加熱がPWM(Pulse Width Modulation)制御されるように生成されてもよい。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のインプリント装置について説明する。第1実施形態のインプリント装置100では、基板上のインプリント材の硬化を開始する時刻t2までに加熱部32によるショット領域8(基板保持部12)のZ方向の変形が行われるように、加熱プロファイルが制御部7によって生成されている。一方で、第2実施形態のインプリント装置では、加熱部32によるショット領域8のZ方向の変形が時刻t2の前までに完了し、変形したショット領域8の形状が時刻t2まで維持されるように加熱プロファイルが制御部7によって生成される。即ち、第2実施形態のインプリント装置において、制御部7により生成される加熱プロファイルには、変形したショット領域8の形状と目標形状との差が許容範囲内に収まっている状態を維持するようにショット領域8に熱を加えている範囲が含まれている。
このように、ショット領域8の変形を維持することにより、型21のパターンと基板上のインプリント材との接触状態が安定したときに、基板上のインプリント材を硬化させることができる。以下では、加熱部32によるショット領域8の変形が完了する時刻を時刻t4とし、時刻t1から時刻t4まで範囲ではショット領域8の変形が行われており、時刻t4から時刻t2までの範囲ではショット領域8の形状が維持されているものとする。ここで、第2実施形態のインプリント装置は、第1実施形態のインプリント装置100と装置構成が同じであるため、ここでは装置構成に関する説明を省略する。
例えば、図10(a)に示すように、時刻t4から時刻t2までの範囲において加熱部32がショット領域8に加える加熱流(単位時間当たりの加熱量)が一定になるように、加熱プロファイルが生成されたとする。そして、加熱部32が、図10(a)に示す加熱プロファイルに従ってショット領域8に熱を加えたとすると、ショット領域8の温度(平均温度)は、図10(b)に示すように、時刻t4から時刻t2までの範囲において一定になる。ここで、時刻t4から時刻t2までの範囲において加熱部32がショット領域8に加える加熱流は、例えば、ショット領域8から流出される熱の大きさと同じになるように設定されうる。ショット領域8から流出される熱は、例えば、基板11内での熱拡散、基板保持部12内での熱拡散、基板11から空気などの流体に伝達される熱、基板11からインプリント材を介して型21に伝達される熱、基板11と基板保持部12で伝達する熱などを含む。したがって、ショット領域8から流出される熱は、これらの熱やショット領域8の温度(時刻t4までの加熱量)などを考慮して算出される。
さらに、ショット領域8の温度を一定にすることができても、ショット領域8から流出される熱によって、基板11および基板保持部12におけるショット領域8の周辺の温度が上昇してしまう。このようにショット領域8の周辺の温度が上昇してしまうと、ショット領域8の周辺における熱応力が変化し、図10(c)に示すように、ショット領域8の形状が時刻の経過につれて変化してしまいうる。
そこで、第2実施形態のインプリント装置では、図10(d)に示すように、時刻t4から時刻t2までの範囲において、加熱部32がショット領域8に加える加熱流Qが時刻の経過につれて減少するように、加熱プロファイルが制御部7によって生成される。このように生成された加熱プロファイル(図10(d))に従って、加熱部32がショット領域8に熱を加えると、ショット領域8の温度(平均温度)は、図10(e)に示すように、時刻t4から時刻t2までの範囲において時刻の経過につれて低下する。一方で、ショット領域8の形状は、図10(f)に示すように、時刻t4から時刻t2までの範囲において一定とすることができる。即ち、ショット領域8の形状を維持することができる。時刻t4から時刻t2までの範囲における加熱流Qの減少率は、例えば、実験やシミュレーションなどによって取得されうる。
ここで、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルを生成する方法の一例について説明する。第2実施形態のインプリント装置では、第1実施形態のインプリント装置100と同様に、制御部7が図3に示すフローチャートに従って各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルを生成する。第2実施形態では、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルを生成する方法(図3のS303)が第1実施形態と異なるため、ここでは当該方法について説明する。また、ここでは、加熱部32が加える加熱流を部分8A〜8Dで一定として加熱プロファイルを生成する方法について説明する。
制御部7は、加熱部32が加える加熱流Qを固定し、加熱部32が加熱を開始する時刻t1を変更することにより加熱プロファイルを生成する。時刻t4は、上述したように、加熱部32によるショット領域8の変形が完了する時刻であり、任意に設定することができる。制御部7は、加熱部32が部分8Aに加える加熱流Q1を設定し、加熱流Q1を時刻t1Aから時刻t4で積分した値がS302で決定された目標加熱量になるように時刻t1Aを決定する。そして、制御部7は、時刻t4から時刻t2までの範囲におけるプロファイルを決定する。当該プロファイルは、例えば、時刻t4において加熱部32が加える加熱流Q1mとしてショット領域8から流出される加熱流を算出し、予め取得された減少率で加熱流Q1mを減少させることにより決定されうる。
これにより、制御部7は、図11(a)に示すように、ショット領域8の部分8Aにおける加熱プロファイルを生成することができる。また、制御部7は、加熱部32が部分8Bに加える加熱流Q1を設定し、加熱流Q1を時刻t1Bから時刻t4で積分した値がS302で決定された目標加熱量になるように時刻t1Bを決定する。そして、制御部7は、時刻t4から時刻t2までの範囲におけるプロファイルを決定する。これにより、制御部7は、図11(b)に示すように、ショット領域8の部分8Bにおける加熱プロファイルを生成することができる。同様に、制御部7は、加熱部32が部分8Cに加える加熱流Q3と部分8Dに加える加熱流Q4をそれぞれ設定し、時刻t1Cと時刻t1Dとを決定する。そして、制御部7は、時刻t4から時刻t2までの範囲におけるプロファイルを決定する。これにより、制御部7は、図11(c)および(d)に示すように、ショット領域8の部分8Cおよび8Dにおける加熱プロファイルをそれぞれ生成することができる。
図11(e)は、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルの合計、即ち、加熱プロファイルがショット領域8の全体に加える加熱流と時刻との関係を表す加熱プロファイルを示す。図11(e)におけるQtotalは、各部分8A〜8Dに加える加熱流Q1〜Q4の合計値である。そして、図8(e)に示す加熱プロファイルでは、ショット領域8に加える加熱流が時刻t1A〜t1Dにおいて階段状に変わる。ここで、加熱部32が部分8A〜8Dに加える加熱流Q1〜Q4は、それらが互いに異なる大きさになるように設定されてもよいし、それらが同じ大きさになるように設定されてもよい。
また、制御部7は、加熱部32が加える加熱流Qを固定し、加熱部32によるショット領域8の変形が完了する時刻t4を変更することにより加熱プロファイルを生成してもよい。この場合、制御部7は、図12(a)〜(d)に示すように、ショット領域8の部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルをそれぞれ生成することができる。また、図11(e)は、ショット領域8の各部分8A〜8Dにおける加熱プロファイルの合計、即ち、加熱プロファイルがショット領域8の全体に加える加熱流と時刻との関係を示す加熱プロファイルを示す。
上述したように、第2実施形態のインプリント装置では、制御部7によって生成された加熱プロファイルに、変形したショット領域の形状を維持するようにショット領域8に熱を加えている範囲が含まれている。そして、加熱プロファイルは、当該範囲においてショット領域8に加える加熱流が時刻の経過につれて減少するよう生成されている。このように生成された加熱プロファイルに従って加熱部32がショット領域8に熱を加えることで、ショット領域8の形状と目形状との差が許容範囲に収まっている状態を維持することができる。これにより、型21のパターンと基板上のインプリント材との接触状態が安定したときに基板上のインプリント材を硬化させることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態のインプリント装置について説明する。第1実施形態のインプリント装置100では、加熱部32によって変形されたショット領域8の形状が型の領域21aの形状(目標形状)に一致するように加熱プロファイルが生成される。一方で、第3実施形態のインプリント装置では、加熱部32および変形部24を併用して型21と基板11との位置合わせが行われる。ここで、第3実施形態のインプリント装置は、第1実施形態のインプリント装置100と装置構成が同じであるため、ここでは装置構成に関する説明を省略する。
制御部7は、基板保持部12のZ方向の寸法を取得する。取得の方法は、基板保持部12単体の表面を計測してもよいし、厚みの既知な基板を基板保持部12に保持させた状態で計測してもよい。また、形状情報は、実際にパターンを形成する基板とは異なるテスト基板に対してインプリント装置でインプリント処理を行い、重ね合わせ検査を行った結果を含みうる。テスト基板のショット領域上に、型の領域21aがインプリント(転写)されるので、重ね合わせ検査の結果を用いれば、テスト基板のショット領域と型の領域21aの形状差を取得できる。このテスト基板のショット領域と型の領域21aの形状差と、基板保持部12のZ方向の寸法の関係を把握することで重ね合わせ精度を改善する基板保持部12のZ方向の寸法の調整量を導出することができる。さらに、パターン形状情報は、複数の基板に対して同一としてもよい。例えば、1ロットを25枚の基板で管理する場合、1ロット分の基板に対して共通のパターン形状情報を使用してもよい。すべての基板において重ね合わせ検査を行うことは、コストや生産性の観点で好ましくないからである。
制御部7は、取得したパターン形状情報に基づいて、加熱部32の加熱プロファイルと変形部24の制御量を生成する。変形部24の制御量は、例えば、変形部24にピエゾ素子が用いられる場合には、駆動量や駆動力、電圧、電流などを含みうる。加熱プロファイルの生成方法は、第1実施形態の方法とほぼ同じであるが、第3実施形態では加熱部32の加熱プロファイルと変形部24の制御量とが同時に生成される。そのため、制御部7は、図5に示した各加熱領域の加熱によるショット領域8の変形量に加えて、変形部24に含まれる各変形機構の単位制御量に対する型の領域21aの変形量を示すデータベースもしくは関数を更に取得する。制御部7は、パターン形状情報を目標形状として、形状差が低減されるように、各加熱領域の目標加熱量および変形部24の各変形機構の制御量を決定する。目標加熱量が決定された後の加熱プロファイルの生成方法は、第1実施形態と同様である。例えば、図7(a)に示すように、加熱部32による基板の加熱量が目標加熱量となるように、加熱部32が基板を加熱する加熱流Qの大きさを決定する。制御部7は、生成された加熱プロファイルに基づいて、加熱部32によって基板を加熱する。また、制御部7は、決定された制御量に基づいて変形部24を制御する。変形部24を駆動するタイミングは、型21と基板11上のインプリント材が接触する前でもよいし、接触した後でもよいし、加熱部32による加熱中であってもよい。
アライメント計測部4は、ショット領域8と型の領域21aとの形状差を取得する。以下、アライメント計測部4によって計測されたショット領域8と型の領域21aとの形状差をアライメント計測結果と呼ぶ。ただし、アライメント計測部4による計測は、ショット領域の2点〜9点程度と少ない点数の可能性がある。例えば、図13に示すように、アライメント計測を行う箇所(アライメント計測点)は、ショット領域8の角の4点である。そのため、実線で示される実際のショット領域8の形状に対し、アライメント計測部4によって計測されたショット領域8の形状は、一点鎖線で示されるように、シフト、ローテーションなどの低次の成分しか含まない。即ち、アライメント計測部4では、ショット領域8における高次の成分を計測することが困難である。
加熱部32の加熱プロファイルおよび変形部24の制御量は、すでにパターン形状情報に基づいて決定されているが、制御部7は、アライメント計測結果を用いて変形部24の制御量を修正する。また、制御部7は、アライメント計測結果に基づいて加熱部32の加熱プロファイルも修正してもよいが、アライメント計測結果は低次の形状のみを含むため、変形部24のみで型の領域21aを補正することが好ましい。変形部24による機械的な変形の方が加熱部32による熱的な変形よりも応答性がよく、変形部24による補正の方がアライメント計測結果に追従させやすいからである。
パターン形状情報を複数枚の基板で同一とした場合には、各基板間のショット領域の形状の差(誤差)によって転写精度が低下しうる。アライメント計測部4によるアライメント計測は全ショット領域で行われるため、各基板間のショット領域の形状の差を補正することが可能である。ただし、前述したように、アライメント計測結果は低次の変形のみを含むので、高次の情報を含むパターン形状情報よりも形状の情報が少ない。パターン形状情報は、重ね合わせ検査に基づくため、一般的に、計測点数が10点以上あり、アライメント計測部4による計測よりも計測点数を多くすることができる。つまり、パターン形状情報を用いて、複数枚の基板で共通している高次成分を含む大まかな形状を補正し、それに加えて、アライメント計測結果を用いて、各ショット領域の低次のばらつき成分を補正している。以上により、重ね合わせ精度および生産性のうち少なくとも一方を向上させることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態のインプリント装置について説明する。第1実施形態のインプリント装置100では、加熱部32によって変形されたショット領域8の形状が型の領域21aの形状(目標形状)に一致するように加熱プロファイルが生成される。しかしながら、基板保持部12のみを加熱変形させたい場合でも、光波長の透過率の関係で基板11が光を吸収し、加熱変形してしまう可能性がある。そこで、第4実施形態のインプリント装置では、加熱部32および変形部24を併用して型21と基板11との位置合わせが行われる。ここで、第4実施形態のインプリント装置は、加熱部32に基板上に供給されたインプリント材を硬化させず、かつショット領域8の基板11の加熱に適した波長(例えば、400nm〜2000nm)を有する光(光源)を追加構成する。加熱に適した波長の光を追加する以外は、第1実施形態のインプリント装置100と装置構成が同じであるため、ここでは装置構成に関する説明を省略する。
補正の一例として、例えば、図4(c)のようにショット領域8に凸形状を含む変形が生じている場合には、凸形状がある領域の温度がそれ以外の領域に対して低くなるように、ショット領域8の部分ごとに加熱プロファイルが生成される。これは、凸形状を含んだ領域に熱を加えない、つまり凸形状を含んだ領域の外側を加熱することで、凸形状を含んだ領域の外側の基板11を支持している基板保持部12の温度を高くして熱膨張させ、基板11をZ方向に押し上げて凸形状を平坦化する狙いである。しかし、この時に基板11が光を吸収し、熱変形する可能性がある。この場合、ショット領域8の基板11の加熱に適した波長(例えば、400nm〜2000nm)を有する光波長をショット領域8の基板11に照射することで、基板保持部12の熱変形で生じた基板11の熱変形を調整し、所望の形状に近づけることができる。基板11への照明条件は、基板11の加熱に適した波長(例えば、400nm〜2μm)と基板保持部12の加熱に適した波長(例えば、2μm〜5μm)を照射してそれぞれの変形量の関係を事前に把握してインプリント時の照明条件を決定してもよい。また、基板11の加熱に適した波長と基板保持部12の加熱に適した波長を加熱部32から照射してもよいし、分離したユニットから照射してもよい。なお、各照射タイミングは同時でもよいし、基板保持部12の加熱に適した波長を照射後、変形目標値を計測してから基板11の加熱に適した波長を照射して変形目標値に近づけてもよい。
このように、生成された加熱プロファイルに従って加熱部32が各部分に熱を加えることにより、ショット領域8の形状が目標形状となるようにショット領域8を変形することができる。
(物品の製造方法)
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図14(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図14(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図14(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図14(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図14(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。なお、当該エッチングとは異種のエッチングにより当該残存した部分を予め除去しておくのも好ましい。図14(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。