JP6980271B2 - 電力供給システム、配置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電力供給システム、配置方法に関する。
本出願人は、電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムを既に提案している。電界結合電力伝送技術とは、対向する金属板からなる電極対により接合容量が形成された状態で、高周波電流を流すことで非接触の電力電送を実現する技術である。具体的には例えば、図11に示すように、電源からの電力を送電する側となる送電電極110と、受電した電力を負荷に供給する側となる受電電極210とを対向させて配置することにより、接合容量Ccが形成されて電界結合電力電送技術が実現される。
本出願人は、図11(A)に示すような、同軸線路の一部にストレート形状の開口部を有する給電通信用伝送路を既に提案している(例えば特許文献1参照)。この給電通信用伝送路は、漏洩同軸ケーブル(LCX)と比べて電磁波放射が少ないというメリットがある。また、本出願人は、ストレート形状の開口部を有する同軸線路を用いた電界結合方式の電力伝送線路として、図11(B)及び(C)に示すような、平面部と、この平面部に対向するように差し込まれた電極とを有する電力伝送線路を既に提案している。このような、ストレート形状の開口部を有する電力伝送線路は、開口部の大きさが小さければ電磁界放射が少ないので、周囲に強い電磁界を形成しない。このため、人が同軸線路に接近したり、同軸線路の周辺に金属片が置かれたとしても問題が生じない。さらに、外部導体(接地電位)が内部導体をカバーする構造となっているので、感電等に対する安全性も高い。
特許6208592号公報
しかしながら、図11(B)に示すような電界結合方式の電力伝送線路の場合、内部導体に対向する電極を取り出するために、開口部をある程度大きくする必要がある。また、図11(C)に示すような電界結合方式の電力伝送線路の場合、4つの電極を出し入れするために、外部導体の上部が完全に空いた状態となってしまう。これより、開口部からゴミや埃が浸入したり放射電磁波が多くなるといった、実用性の面での問題があった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、非接触での電力の供給及び通信を可能とするとともに、ゴミや埃が侵入するおそれがなく、放射電磁波の少ない電力伝送線路を供給することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様の電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
長手方向に延びたスリットを天井部に有する筒状の外部導体と、前記外部導体の内側に前記外部導体と非接触で配置された内部導体とを有する、所定の波長の交流電源からの電力を送電する電力伝送線路と、
前記内部導体と非接触で対向する第1受電電極を有し、前記電力伝送線路に沿って移動し、前記内部導体と前記第1受電電極とにより第1接合容量を形成させることで前記電力伝送線路から電力を受電して負荷に供給する移動搬送体と、
を備え、
前記内部導体は、前記第1受電電極を挿入可能とする第1溝を有し、
前記第1溝の中で、前記内部導体と前記第1受電電極との間に前記第1接合容量が形成される。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記移動搬送体は、第2受電電極をさらに有し、
前記外部導体は、さらに、第2受電電極を挿入可能とする第2溝を有し、
前記第2溝の中で、前記内部導体と前記第2受電電極との間に第2接合容量が形成されることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記第2溝の底部に、磁石が複数取り付けることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記第2溝の底部に、さらに、強磁性金属片が複数取り付けることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性金属片は、前記第2溝の底部において、前記内部導体の長手方向に長く、かつ、前記磁石の極性が揃うように配置させることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記外部導体は、さらに、前記スリットを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属を夫々有し、
前記強磁性極薄金属の前記一方の端部が、極性の異なる磁石に夫々接続されており、
前記強磁性極薄金属のもう一方の端部同士が、磁力により接合して前記スリットの蓋を形成することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部は、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて、前記接合を解いて離隔することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性極薄金属と前記磁石との間に、非磁性体からなるストッパーをさらに有し、
前記ストッパーは、前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部が前記接合を解いて離隔したときに、前記もう一方の端部が前記磁石に接触する前に、前記もう一方の端部を係止することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記外部導体は、さらに、通信線を配置させるケーブルチャネルを有し、
前記ケーブルチャネルを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属を夫々有し、
前記強磁性極薄金属のもう一方の端部は、凹部と凸部とを夫々有し、前記凹部と前記凸部が互い違いに重なり合って前記ケーブルチャネルの蓋を形成し、
前記凸部は、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて湾曲し、前記蓋を開放することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記凸部は、先端に出っ張り形状の係止片を有し、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて湾曲すると、隣接する前記係止片の夫々が互いに係止し合うことができる。
上記目的を達成するため、本発明の一態様の配置方法は、
長手方向に延びたスリットを天井部に有する筒状の外部導体の中心部に、柱状の内部導体を配置する配置方法であって、
外周の形状が前記外部導体の内周の形状と同一又は略同一であり、断面形状が開口部を有するコの字型である板状の絶縁体を、前記開口部が上を向くように前記スリットから前記外部導体の内部に挿入するステップと、
前記絶縁体の一部に固定させた治具とともに前記絶縁体を回転させて、前記外部導体の内壁に前記絶縁体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記外部導体の内部で前記絶縁体を固定するステップと、
前記開口部から前記絶縁体の内部に前記内部導体を挿入し、前記絶縁体の内壁に前記内部導体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記絶縁体の内部で前記内部導体を固定するステップと、
を含む。
本発明によれば、非接触での電力の供給及び通信を可能とするとともに、ゴミや埃が侵入するおそれがなく、放射電磁波の少ない電力伝送線路を供給することが可能になる。
本発明の電力供給システムにおける電力伝送線路の電極を示す図である。 内部導体の溝に受電電極を挿入して接合容量を形成させる試験の実施内容と結果を示す図である。 電極挿入方式を用いたスライド式の電力伝送線路と、電力伝送線路からの電力の供給を受けながら電力伝送線路の上を移動する移動搬送体とを含む電力供給システムの構成を示す断面斜視図である。 図3の電力供給システムの構成を示す断面である。 内部導体を外部導体の内側に固定させる具体的な手法を示す図である。 ベース材のスリットを塞ぐ手法の基本事項を示す図である。 外部導体のスリット及び溝に適用した場合を示す図である。 強磁性極薄金属の構造を示す図である。 強磁性極薄金属にインターデジタル型のパターンを切り出す手法を示す図である。 強磁性極薄金属を用いて、金属製のケーブルチャネル内に漏洩同軸線路(LCX)が入っている場合を示す図である。 本出願人が既に提案している電界結合方式の電力伝送線路を含む従来技術を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の電力供給システムにおける電力伝送線路1の電極を示す図である。図2(A)〜(D)は、いずれも送電電極110の内部導体101を長手方向に直交する面で切った断面図である。
本発明の電力供給システムにおける電力伝送線路1は、図1(A)〜(D)に示すように、送電電極110の内部導体101に溝Gを設け、溝Gに極薄金属からなる受電電極210を挿入する構成となっている。ここで、内部導体101と受電電極210とは、非接触であることが前提となるが、図1(A)に示すように、単に溝Gに受電電極210を挿入するだけでは受電電極210が溝Gの内壁に接触してしまう。このため、受電電極210の表面にDLC等のコーティングを施すことで非接触にすることもできるが、長時間の使用に伴ってコーティングが摩耗すると接触することになってしまう。また、図1(B)に示すように、受電電極210が反って溝Gの内壁に接触してしまうことがある。
そこで、図1(C)に示すように、溝Gの底部に磁石Mを配置し、強磁性の極薄金属膜を溝Gに挿入し、この金属膜を受電電極210として用いる。これにより、磁力Fによって受電電極210が磁石Mの中央部に引き寄せられるので、受電電極210に対し張力を加え続けることができる。その結果、溝Gの内壁との接触を防ぐことができる。さらに、磁石Mに強磁性金属片Nを取り付けてもよい。この場合、強磁性金属片Nの形状を鋭角にすることにより、磁力Fと、磁石Mの中央部への集中力とを増大させることができる。また、溝Gの底部において、強磁性金属片Nを内部導体101の長手方向に長く配置して、磁石Mの極性を揃えてもよい。この場合、溝Gの底部に磁石Mを連続して配置する必要がなくなるので、製造コストを低減させることができる。なお、内部導体101は非磁性体又はこれに準ずる導電材料であることとする。
内部導体101に溝Gを設けて、溝Gに受電電極210を挿入する構成とすることにより、受電電極210の両面を使って接合容量を形成させることができる。さらに、受電電極210が、強磁性金属片Nの上部で、あたかもヒンジがついているように動作するので、溝Gへの挿入位置を意図的にずらすことで、接合容量を増大させることができる。また、圧電素子(ピエゾ素子)等を用いて、受電電極210の挿入位置を変位できるようにしてもよい。これにより、機械的な変動があったとしても、溝Gの内部において受電電極210が常に最適な位置に戻すことができる。
溝Gは、図1(D)に示すように、間口部の幅Wを広くしてもよい。これにより、受電側における受電電極210の取り付け位置の変化に柔軟に対応することができる。
[試験1]
図2は、内部導体101の溝Gに受電電極210を挿入して接合容量Ccを形成させる試験の実施内容と結果を示す図である。図2(A)は内部導体101の溝Gに受電電極210を挿入して接合容量Ccを形成させた状態を示す図であり、内部導体101を長手方向に直交する面で切った断面図である。図2(B)は、内部導体101の溝Gに受電電極210を挿入して接合容量Ccを形成させた状態を示す図であり、図2(A)のa‐a´断面図である。
(内容)
図2(A)に示すように、内部導体101に溝Gを設け、溝Gに受電電極210の一方の端部を挿入して接合容量Cc1を形成させ、受電電極210のもう一方の端部を外部導体102の外側に配置して接合容量Cc2を形成させた。次に、接合容量Cc1の値と接合容量Cc2の値とを求め、その直列合成値で共振するようにインダクタンスLを配置した。
(結果)
図2(B)に示すように、溝Gの内部において、受電電極210が存在する部分は、電界の強度が強い強電界領域Esとなっている。これに対して、受電電極210が存在しない部分は、電界の強度が弱い弱電界領域Ewとなっている。この結果によれば、内部導体101に設けられた溝Gに受電電極210を挿入する方式は実用性がないとも思われる。しかしながら、非共振状態では電界強度が弱いものの、共振を取ると、電極の周囲に強い電界が発生することがわかった。即ち、内部導体101に設けられた溝Gに受電電極210を挿入する方式(以下「電極挿入方式」と呼ぶ)は、電界結合電力伝送技術に適用することができることがわかった。
図3は、電極挿入方式を用いたスライド式の電力伝送線路1と、電力伝送線路1からの電力の供給を受けながら電力伝送線路1の上を移動する移動搬送体600とを含む電力供給システムSの構成を示す断面斜視図である。
電極挿入方式を用いたスライド式の電力伝送線路1は、図3に示すように、天井部にスリットJを有する筒状の外部導体102と、外部導体102の内側に外部導体102に非接触で配置された内部導体101とを有する電力伝送線路である。
内部導体101は、外部導体102との間に配置されたサポート材131によって外部導体102と非接触となるように固定されている。内部導体101には、溝Gが設けられており、図示はしないが、溝Gの底部には磁石Mと強磁性金属片Nとが取り付けられている。この溝Gに受電電極210(図示せず)が挿入されることで接合容量Cc1(図示せず)が形成される。なお、外部導体102の内側に内部導体101を取り付ける具体的手法については後述する。
内部導体101の素材は非磁性体又はこれに準ずる導電材料であることとする。例えば押し出しアルミ材を用いて内部導体101を製作することができる。
外部導体102には、溝Hが設けられており、図示はしないが、溝Hの底部には磁石Mと強磁性金属片Nとが取り付けられている。この溝Hに受電電極210(図示せず)が挿入されることで接合容量Cc2(図示せず)が形成される。
外部導体102は、通信を行うための通信線2と、移動搬送体を走らせるためのガイドレール111とラックギヤ113とを備える。通信線2は特に限定されない。図3に示す例では、外部導体102の側面のうち、溝Hが設けられている面とは反対側の面に、通信線2としての漏洩同軸線路(LCX)が3本配置されている。
外部導体102は、接地電位(GND)であるため、人が触っても感電することが無い。
外部導体102の素材は非磁性体又はこれに準ずる導電材料であることとする。例えば押し出しアルミ材を用いて外部導体102を製作することができる。
移動搬送体600には、外部導体102のガイドレール111に噛合するローラー112と、ラックギヤ113に噛合するピニオンギヤ114(図示せず)とが設けられている。移動搬送体600には、ピニオンギヤ114を回転させることでスライド式の電力伝送線路1の上をスムーズに移動することができる。
図4は、図3の電力供給システムSの構成を示す断面である。
図4に示すように、外部導体102の底面には、インバータ及びマッチング回路115が取り付けられる。図4に示す例では、インバータ及びマッチング回路115は、固定台700の一部をくり抜いた部分に埋め込まれるようにして外部導体102の底面に取り付けられているが、配線を引き回すことで外部導体102の横に配置させてもよい。
内部導体101の溝G内と、外部導体102の溝H内とには、磁石Mと強磁性金属片Nとが取り付けられており、溝G及び溝Hの中にそれぞれ受電電極210が挿入されて接合容量Cc1及びCc2が形成されることにより、移動搬送体600内の受電回路に電力が供給される。
内部導体101は、外部導体102の内側でサポート材131によって固定されている。サポート材131の構成は特に限定されないが、低損失誘電体であり、かつ、弾性を有する薄板で構成されていることが好ましい。
上述したように、移動搬送体600が移動する際のガイドは、ガイドレール111、及びガイドレール111に噛合するローラー112により行われ、移動搬送体600の駆動は、ラックギヤ113に噛合するピニオンギヤ114により行われる。なお、移動搬送体600を移動させるための手法は、図4に示す例に限定されない。図示はしないが、リニアモータやタイヤ等を用いて移動搬送体600を移動させてもよい。
次に、図5を参照して、内部導体101を外部導体102の内側に固定させる具体的な手法について説明する。
図5は、内部導体101を外部導体102の内側に固定させる具体的な手法を示す図である。図5(A)〜(D)は、内部導体101を外部導体102の内側に固定させる手順をその順番で示している。
図5に示すように、外部導体102と内部導体101との間には、サポート材131が配置される。これにより、外部導体102の内部に、外部導体102と非接触で内部導体101を固定することができる。
サポート材131は、弾力性を有する板状の低損失誘電材で構成されている。サポート材131の平面形状は、図5に示すような、開口部132を有するコの字形状のものとなっている。また、サポート材131の外枠はアールを付けた仕上げが施されており、内枠は平面仕上げが施されている。
このような構成のサポート材131を、以下の手順で外部導体102に挿入して固定させる。即ち、図5(A)に示すように、サポート材131の平面が外部導体102の長手方向と平行になる向きで、外部導体102のスリットJから内部に挿入する。次に、図5(B)に示すように、サポート材131の開口部132に回転冶具152を挿入し、サポート材131の平面が外部導体102の長手方向と垂直になるようにサポート材131を回転させる。なお、図5(B)に示す回転冶具152は一例にすぎず、サポート材131を回転させることができる治具であればよい。この手順を繰り返し行うことにより、外部導体102の内部にサポート材131を一定間隔毎に配置していく。次に、図5(C)に示すように、サポート材131の開口部132に内部導体101を挿入する。このとき、サポート材131は弾性を有するため、サポート材131の開口部132に内部導体101を最後まで押し込むことで固定される。このような低コストな手法を用いて、図5(D)に示すように、外部導体102の内部に、外部導体102と非接触で内部導体101を配置することができる。
次に、図6を参照して、スリットJを塞ぐ手法について説明する。スリットJを塞ぐことにより、防塵及び電磁シールドすることができる。
図6は、ベース材800のスリットJを塞ぐ手法の基本事項を示す図である。図6(A)は、2つの強磁性極薄金属801を用いてスリットJを塞ぐ手法を示す図である。図6(B)は、移動磁石Mmを用いて、スリットJを塞いでいる2つの強磁性極薄金属801を引き付けて、スリットJを開口させる手法を示す図である。
図6(A)に示す手法は、2つの強磁性極薄金属801の可動部812を突き合わせるか重ねることで接合してスリットJを塞ぐ(Close)させる手法である。強磁性極薄金属801は、図6(A)に示すように、ベース材800に固定された固定部811と、ベース材800に固定されずに可動する可動部812とを有する。2つの強磁性極薄金属801の固定部811には、夫々極性が異なる磁石Mが取り付けられている。この手法の場合、2つの強磁性極薄金属801の可動部812が夫々異なる磁極となっているので、2つの強磁性極薄金属801の可動部812を磁力によって接合することができる。また、強磁性極薄金属801を何度も変形させたことで弾性力の低下が生じたとしても、これを磁力によって補うことができる。このとき、弾性力の低下を避けられない頻度があるときには、ヒンジを用いてもよい。
図6(B)に示す手法は、塞がれた状態にある2つの強磁性極薄金属801の上に、より強力な磁力を有する移動磁石Mmを移動させることにより、強磁性極薄金属801を磁力によって引きつけてスリットJを開口(Open)させる手法である。この手法の場合、移動磁石Mmが通り過ぎる瞬時にスリットJのOpenとCloseを繰り返すため、強磁性極薄金属801の弾性力が劣化しない程度の動きでストップさせるためのストッパー821を設けてもよい。強磁性極薄金属801と移動磁石Mmとの間に、非磁性体からなるストッパー821を備えることにより、強磁性極薄金属801が接合を解いて離隔したときに、移動磁石Mmに接触する前に、強磁性極薄金属801を係止することもできる。ストッパー821は、非磁性材料のものとする。スリットJをCloseする際は、単に移動磁石Mmを遠ざけて、ばね力と磁力とでCloseさせるか、あるいは、逆極性となる移動磁石Mmを移動させることで、磁気的に強磁性極薄金属801をCloseポジションまで戻す。
次に、図7に示す手法を、外部導体102のスリットJ及び溝Hに適用することについて説明する。
図7は、外部導体102のスリットJ及び溝Hに適用した場合を示す図である。図7(A)は、強磁性極薄金属801が閉じた状態を示す図である。即ち、強磁性極薄金属801同士が、磁力により接合してスリットJの蓋を形成している。図7(B)は、移動磁石Mmによって強磁性極薄金属801が開かれた状態を示す図である。図7(C)は、移動磁石Mmがあるとともに、受電電極210が通過している状態を示す図である。即ち、図7(B)及び(C)において、強磁性極薄金属801は、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて、接合を解いて離隔している。図7(D)は、逆極性の移動磁石Mmによって、強磁性極薄金属801が初期位置に戻った状態を示す図である。図7(E)は、移動搬送体600の平面図である。
図7(A)〜(D)の状態が繰り返されることにより、ゴミや埃等が同軸管内に侵入するリスクを低減させることができる。
次に、図8を参照して、強磁性極薄金属801の構造について説明する。
図8は、強磁性極薄金属801の構造を示す図である。図8(A)は、短冊形の強磁性極薄金属801が、弾性を有する樹脂膜841によって連接されている状態を示す図である。図8(B)は、短冊形の強磁性極薄金属801の跳ね上がりが部分的に大きい場合を示す図である。
強磁性極薄金属801は、移動磁石MmによってスリットJを順次Openする。強磁性極薄金属801が1枚構造である場合には、部分的にスリットJをOpenするが、柔らかさがない。このため、短冊形の強磁性極薄金属801は、弾性を有する樹脂膜841によって連接される構造となっている。これにより、図8(B)に示すように、強磁性極薄金属801の部分的な跳ね上がりを大きくすることもできる。
例えば、図3に示す、外部導体102の側面の一部には、通信線2としての漏洩同軸線路(LCX)が3条敷設してある。漏洩同軸線路(LCX)は、有効な通信手段であるが、単に電磁波が通る媒体であり、通信規格自体は、WiFiを用いている。このため、他のWiFiとの混信が問題になるとともに、自身が発する電波も他に影響を与える。
工場生産設備にWiFi通信を使用するとなると、この様な干渉が問題になる。ただし、WiFiは広く普及した通信規格であり、コストも安く、対応するソフトウェア及びハードウェアが豊富であり、使用すべき規格である。このため、漏洩同軸線路(LCX)から電波を出さず、他からの電波も受信しないようにするために、シールドカバーを付けることが好ましい。ただし、使用したいときだけシールドカバーが開けられる必要がある。このような目的で、磁石Mを用いたカバーの操作を、漏洩同軸線路(LCX)にも適用することができる。
次に、図9を参照して、強磁性極薄金属801にインターデジタル型のパターンを切り出す手法について説明し、図10を参照して、強磁性極薄金属801を用いたシールドカバーの具体例について説明する。
図9は、強磁性極薄金属801にインターデジタル型のパターンを切り出す手法を示す図である。図9(A)は、レーザーカッター、ウォータージェット又はワイヤーカットソー等を用いて、強磁性極薄金属801から、インターデジタル型のパターンを切り出した図である。図9(B)は、図9(A)に示す矢印の方向に強磁性極薄金属801を移動させた場合を示す図である。
図10は、強磁性極薄金属801を用いて、金属製のケーブルチャネル内に漏洩同軸線路(LCX)が入っている場合を示す図である。
図9に示す切り出し手法により切り出された強磁性極薄金属801をオーバーラップさせて、ケーブルチャネル内に入っている漏洩同軸線路(LCX)の上に乗せる。これにより、完全ではないが、シールド体が被さることになるため、外部との通信が遮断される。このとき、図10(B)に示すように、移動磁石Mmが通過すると、強磁性極薄金属801が跳ね上がって離隔し隙間が生じる。その際、インターデジタル構造に作られた凸部831(図9)同士がぶつかり、先端の係止片832が互いに係止し合うことで跳ね上がりが止まる。この横にアンテナANTを付けておくことにより、移動搬送体600が存在するところのみで通信が可能になる。これをすべての線路に付けることにより、相互干渉を大きく低減することができる。
以上説明したように、アルミ押し出し材及び極薄金属等を用いて製作するため、軽量・低コストで走行可能なシステムが構築できる。さらに、耐干渉性のある通信機能によるIoT性を有しているため、例えばIndustry4.0用の走行システムとして最適である。これにより、現行の生産システムを大きく変えることも可能と思われる。特に通信機能が強化されているため、ビックデータ処理とそれを用いたAI処理により、さらに進歩したシステム構築が可能になる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲における変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述した実施形態では、電極対の非接触が前提とされているが、完全な非接触でなくとも絶縁物を介して接触し、電気的に近接状態を維持した場合には、十分な接合容量を確保することは可能である。即ち、電極対の一部が物理的に互いに接触したとしても電気的に絶縁されていれば、十分な電力を供給することができる。
以上まとめると、本発明が適用される電力供給システムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
長手方向に延びたスリット(例えば図4のスリットJ)を天井部に有する筒状の外部導体(例えば図4の外部導体102)と、前記外部導体の内側に前記外部導体と非接触で配置された内部導体(例えば図4の内部導体101)とを有する、所定の波長の交流電源(例えば図4のインバータ及びマッチング回路115)からの電力を送電する電力伝送線路(例えば図4の電力伝送線路1)と、
前記内部導体と非接触で対向する第1受電電極を有し、前記電力伝送線路に沿って移動し、前記内部導体と前記第1受電電極(例えば図4の受電電極210)とにより第1接合容量(例えば図2の接合容量Cc1)を形成させることで前記電力伝送線路から電力を受電して負荷に供給する移動搬送体(例えば図4の移動搬送体600)と、
を備え、
前記内部導体は、前記第1受電電極を挿入可能とする第1溝(例えば図4の溝G)を有し、
前記第1溝の中で、前記内部導体と前記第1受電電極との間に前記第1接合容量が形成される。
これにより、非接触での電力の供給及び通信を可能とするとともに、ゴミや埃が侵入するおそれがなく、放射電磁波の少ない電力伝送線路を供給することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記移動搬送体は、第2受電電極(例えば図4の受電電極210)をさらに有し、
前記外部導体は、さらに、第2受電電極を挿入可能とする第2溝(例えば図4の溝H)を有し、
前記第2溝の中で、前記内部導体と前記第2受電電極との間に第2接合容量(例えば図2の接合容量Cc2)が形成されることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記第2溝の底部に、磁石(例えば図4の磁石M)が複数取り付けることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記第2溝の底部に、さらに、強磁性金属片(例えば図4の強磁性金属片N)が複数取り付けることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性金属片は、前記第2溝の底部において、前記内部導体の長手方向に長く、かつ、前記磁石の極性が揃うように配置させることができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記外部導体は、さらに、前記スリットを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属(例えば図7の強磁性極薄金属801)を夫々有し、
前記強磁性極薄金属の前記一方の端部が、極性の異なる磁石(例えば図7の磁石M)に夫々接続されており、
前記強磁性極薄金属のもう一方の端部同士が、磁力により接合して前記スリットの蓋を形成することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部は、自身の近傍を通過する磁石(例えば図7の移動磁石Mm)に引きつけられて、前記接合を解いて離隔することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記強磁性極薄金属と前記磁石との間に、非磁性体からなるストッパー(例えば図6のストッパー821)をさらに有し、
前記ストッパーは、前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部が前記接合を解いて離隔したときに、前記もう一方の端部が前記磁石に接触する前に、前記もう一方の端部を係止することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記外部導体は、さらに、通信線(例えば図10の通信線2)を配置させるケーブルチャネル(例えば図10のケーブルチャネル61)を有し、
前記ケーブルチャネルを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属を夫々有し、
前記強磁性極薄金属のもう一方の端部は、凹部と凸部(例えば図9の凸部831)とを夫々有し、前記凹部と前記凸部が互い違いに重なり合って前記ケーブルチャネルの蓋を形成し、
前記凸部は、自身の近傍を通過する磁石(例えば図10の移動磁石Mm)に引きつけられて湾曲し、前記蓋を開放することができる。
また、本発明の一態様の電力供給システムにおいて、前記凸部は、先端に出っ張り形状の係止片(例えば図10の係止片832)を有し、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて湾曲すると、隣接する前記係止片の夫々が互いに係止し合うことができる。
本発明が適用される配置方法は、
長手方向に延びたスリットを天井部に有する筒状の外部導体の中心部に、柱状の内部導体を配置する配置方法であって、
外周の形状が前記外部導体の内周の形状と同一又は略同一であり、断面形状が開口部(例えば図5の開口部132)を有するコの字型である板状の絶縁体(例えば図5のサポート材131)を、前記開口部が上を向くように前記スリットから前記外部導体の内部に挿入するステップと、
前記絶縁体の一部に固定させた治具(例えば図5の回転冶具152)とともに前記絶縁体を回転させて、前記外部導体の内壁に前記絶縁体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記外部導体の内部で前記絶縁体を固定するステップと、
前記開口部から前記絶縁体の内部に前記内部導体を挿入し、前記絶縁体の内壁に前記内部導体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記絶縁体の内部で前記内部導体を固定するステップと、
を含む。
1:電力伝送線路、2:通信線、61:ケーブルチャネル、101:内部導体、102:外部導体、111:ガイドレール、112:ローラー、113:ラックギヤ、114:ピニオンギヤ、115:インバータ及びマッチング回路、121:送電ポート、131:サポート材、131:開口部、152:回転冶具、210:受電電極、221:ヒンジ、222:受電ポート、420:トランシーバ、421:受電回路、600:移動搬送体、601:シャーシ、700:固定台、800:ベース材、801:強磁性極薄金属、811:固定部、821:ストッパー、823:樹脂膜、831:凸部、832:係止片、841:オーバーラップ部、851:導通固定部、ANT:アンテナ、G,H:溝、M:磁石、Mm:移動磁石、N:強磁性金属片、W:間口部の幅、Cc,Cc1,Cc2:接合容量、F:磁力、S:電力供給システム、L:共振インダクタンス、Em:放射電磁波、Es:強電界領域、Ew:弱電界領域、J:スリット

Claims (11)

  1. 電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システムであって、
    長手方向に延びたスリットを天井部に有する筒状の外部導体と、前記外部導体の内側に前記外部導体と非接触で配置された内部導体とを有する、所定の波長の交流電源からの電力を送電する電力伝送線路と、
    前記内部導体と非接触で対向する第1受電電極を有し、前記電力伝送線路に沿って移動し、前記内部導体と前記第1受電電極とにより第1接合容量を形成させることで前記電力伝送線路から電力を受電して負荷に供給する移動搬送体と、
    を備え、
    前記内部導体は、前記第1受電電極を挿入可能とする第1溝を有し、
    前記第1溝の中で、前記内部導体と前記第1受電電極との間に前記第1接合容量が形成される、
    電力供給システム。
  2. 前記移動搬送体は、第2受電電極をさらに有し、
    前記外部導体は、さらに、第2受電電極を挿入可能とする第2溝を有し、
    前記第2溝の中で、前記内部導体と前記第2受電電極との間に第2接合容量が形成される、
    請求項1に記載の電力供給システム。
  3. 前記第2溝の底部に、磁石が複数取り付けられている、
    請求項2に記載の電力供給システム。
  4. 前記第2溝の底部に、さらに、強磁性金属片が複数取り付けられている、
    請求項3に記載の電力供給システム。
  5. 前記強磁性金属片は、前記第2溝の底部において、前記内部導体の長手方向に長く、かつ、前記磁石の極性が揃うように配置されている、
    請求項4に記載の電力供給システム。
  6. 前記外部導体は、さらに、前記スリットを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属を夫々有し、
    前記強磁性極薄金属の前記一方の端部が、極性の異なる磁石に夫々接続されており、
    前記強磁性極薄金属のもう一方の端部同士が、磁力により接合して前記スリットの蓋を形成する、
    請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の電力供給システム。
  7. 前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部は、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて、前記接合を解いて離隔する、
    請求項6に記載の電力供給システム。
  8. 前記強磁性極薄金属と前記磁石との間に、非磁性体からなるストッパーをさらに有し、
    前記ストッパーは、前記強磁性極薄金属の前記もう一方の端部が前記接合を解いて離隔したときに、前記もう一方の端部が前記磁石に接触する前に、前記もう一方の端部を係止する、
    請求項7に記載の電力供給システム。
  9. 前記外部導体は、さらに、通信線を配置させるケーブルチャネルを有し、
    前記ケーブルチャネルを挟む両側に、一方の端部が固定された強磁性極薄金属を夫々有し、
    前記強磁性極薄金属のもう一方の端部は、凹部と凸部とを夫々有し、前記凹部と前記凸部が互い違いに重なり合って前記ケーブルチャネルの蓋を形成し、
    前記凸部は、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて湾曲し、前記蓋を開放する、
    請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の電力供給システム。
  10. 前記凸部は、先端に出っ張り形状の係止片を有し、自身の近傍を通過する磁石に引きつけられて湾曲すると、隣接する前記係止片の夫々が互いに係止し合う、
    請求項9に記載の電力供給システム。
  11. 長手方向に延びたスリットを天井部に有する筒状の外部導体の中心部に、柱状の内部導体を配置する配置方法であって、
    外周の形状が前記外部導体の内周の形状と同一又は略同一であり、断面形状が開口部を有するコの字型である板状の絶縁体を、前記開口部が上を向くように前記スリットから前記外部導体の内部に挿入するステップと、
    前記絶縁体の一部に固定させた治具とともに前記絶縁体を回転させて、前記外部導体の内壁に前記絶縁体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記外部導体の内部で前記絶縁体を固定するステップと、
    前記開口部から前記絶縁体の内部に前記内部導体を挿入し、前記絶縁体の内壁に前記内部導体の外周の一部又は全部を圧接させて、前記絶縁体の内部で前記内部導体を固定するステップと、
    を含む配置方法。
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