以下、薬液投与装置の実施の形態例について、図1〜図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
1.薬液投与装置の構成
まず、図1〜図5を参照して、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる薬液投与装置の構成例について説明する。
図1は、薬液投与装置を示す斜視図、図2は、薬液投与装置のクレードル装置に薬液投与部を装着する前の状態を示す斜視図である。
図1に示す装置は、パッチ式や、チューブ式のインスリンポンプ、さらにその他の携帯型の薬液投与装置のように、患者の体内に持続的に薬液投与を行うための携帯型のインスリンポンプである。薬液投与装置1は、薬液投与部2と、薬液投与部2が着脱可能に装着されるクレードル装置3と、クレードル装置3に装着される接続ポート6とを有している。
[薬液投与部]
次に、薬液投与部2の構成について図1〜図4を参照して説明する。
図3は、薬液投与部2を示す斜視図、図4は、薬液投与部2を底面側から見た平面図である。
図1〜図4に示すように、薬液投与部2は、中空の筐体11と、接続針管12とを備えている。また、筐体11内には、不図示の薬液貯蔵部と、送液配管13と、制御部と、駆動部と、電源部と、押し子機構等が収容されている。薬液貯蔵部には、投与する薬液が貯蔵されている。薬液貯蔵部には、送液配管13が接続されている。そして、駆動部により押し子機構が駆動することで薬液貯蔵部に貯蔵された薬液が送液配管13に送り出される。
また、送液配管13における薬液貯蔵部側とは反対側の端部には、接続針管12が接続されている。そして、送液配管13を通過した薬液は、接続針管12から排出される。この接続針管12は、薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際に、後述する接続ポート6の接続部82に穿刺される。これにより、送液配管13と接続部82が接続針管12を介して接続される。
以下、薬液投与部2がクレードル装置3に装着される方向(装着方向)を第1の方向Xとし、第1の方向Xと直交し、薬液投与部2とクレードル装置3が重なる方向とも直交する方向を第2の方向Y(幅方向)とする。そして、薬液投与部2とクレードル装置3が重なる方向、すなわち第1の方向Xと第2の方向Yとも直交する方向を第3の方向Z(上下方向)とする。
筐体11は、角部が湾曲した扁平状の略直方体状に形成されている。筐体11は、上面部21と、底面部22と、正面部23と、背面部24と、第1側面部25と、第2側面部26と、底面収納部27を有している。上面部21と底面部22は、互いに対向している。上面部21は、角部が湾曲した略矩形状に形成されている。また、上面部21は、中央部が第3の方向Zにおいて底面部22とは反対側に向けて膨出している。
上面部21の第1の方向Xの一端部には、正面部23が略垂直に連続し、上面部21の第1の方向Xの他端部には、背面部24が略垂直に連続している。そして、正面部23と背面部24は、互いに対向している。さらに、上面部21の第2の方向Yの一端部には、第1側面部25が略垂直に連続し、上面部21の第2の方向Yの他端部には、第2側面部26が略垂直に連続している。
正面部23には、嵌合突起31が形成されている。嵌合突起31は、第2の方向Yの他端部側に形成されている。嵌合突起31は、正面部23から第1の方向Xの一端部に向けて突出している。この嵌合突起31は、後述するクレードル装置3に設けた嵌合孔54に嵌り込む(図1参照)。
図3及び図4に示すように、底面部22には、摺動溝32と、装着検出スイッチ33が形成されている。摺動溝32は、底面部22から第3の方向Zに沿って上面部21に向けて凹んだ溝部である。摺動溝32は、底面部22における第2の方向Yの中間部に形成されている。摺動溝32は、底面部22の第1の方向Xの一端部から他端部にかけて連続して形成されている。摺動溝32の一端部における第2の方向Yの間隔は、第1の方向Xの一端部から他端部に向かうにつれて連続して狭まっている。同様に、摺動溝32の他端部における第2の方向Yの間隔は、第1の方向Xの他端部から一端部に向かうにつれて連続して狭まっている。
装着検出スイッチ33は、薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際に、後述するクレードル装置3に設けた検出レール52によって押圧される。そして、装着検出スイッチ33は、押圧されると、不図示の制御部に装着情報を出力する。これにより、薬液投与部2がクレードル装置3に装着されたことが制御部によって検出される。装着検出スイッチ33の近傍には、底面収納部27が形成されている。
底面収納部27は、筐体11における底面部22、第1側面部25及び正面部23の角部に形成されている。底面収納部27は、底面部22から第3の方向Zに沿って上面部21に向けて所定の長さで凹んだ凹部である。
底面収納部27における第1の方向Xの他端部側の側壁27aには、筒状の接続口28が形成されている。接続口28は、側壁27aから第1の方向Xの一端部側に向けて突出している。接続口28の筒孔には、接続針管12が配置される。接続針管12は、側壁27aから第1の方向Xの一端部側に向けて突出している。
図2及び図3に示すように、第1側面部25には、第1係合溝部35と、第1係合フック部36Aが形成されている。第1係合フック部36Aは、第1側面部25における第1の方向Xの他端部に形成されている。第1係合フック部36Aは、後述するクレードル装置3の第1係合受け部63Aに着脱可能に係合される。
第1係合溝部35は、第1側面部25における第3の方向Zの中間部に形成されている。第1係合溝部35は、第1側面部25から第2の方向Yに沿って筐体11内に向けて凹んだ溝部である。第1係合溝部35は、第1側面部25における第1係合フック部36Aの近傍から第1の方向Xに沿って延在し、底面収納部27まで形成されている。
第1係合溝部35の一端部、すなわち底面収納部27側には、傾斜面35aが形成されている。傾斜面35aは、第1係合溝部35における第3の方向Zの底面部22側の面である。傾斜面35aは、第1の方向Xの一端部側である底面収納部27に近づくにつれて第3の方向Zの底面部22側に連続して接近するテーパー面である。
また、図4に示すように、第1係合溝部35における第1の方向Xの中間部には、第1切り欠き部35bが形成されている。第1切り欠き部35bは、第1係合溝部35における底面部22側の一面を切り欠くことで形成されている。第1切り欠き部35bの第1の方向Xの長さは、後述するクレードル装置3の第1矯正レール62の第1の方向Xの長さと等しいか、あるいは若干長く形成されている。
図2及び図4に示すように、第2側面部26における第1の方向Xの一端部は、第2の方向Yの一端部側に向けて凹んでいる。第2側面部26には、第2係合溝部37と、第2係合フック部36Bが形成されている。第2係合フック部36Bは、第2側面部26における第1の方向Xの他端部に形成されている。第2係合フック部36Bは、後述するクレードル装置3の第2係合受け部63Bに着脱可能に係合される。
第2係合溝部37は、第2側面部26における第3の方向Zの中間部に形成されている。第2係合溝部37は、第2側面部26から第2の方向Yに沿って筐体11内に向けて凹んだ溝部である。第2係合溝部37は、第2係合フック部36Bから第1の方向Xに沿って、第1係合溝部35における第1の方向Xの長さと略同一の長さで延在している。
そして、第2係合溝部37における第1の方向Xの一端部には、第1係合溝部35と同様に、傾斜面37aが形成されている。なお、第2係合溝部37の傾斜面37aの構成は、第1係合溝部35の傾斜面35aと同一であるため、その説明は省略する。
また、図4に示すように、第2係合溝部37における第1の方向Xの中間部には、第2切り欠き部37bが形成されている。第2切り欠き部37bは、第2係合溝部37における底面部22側の一面を切り欠くことで形成されている。第2切り欠き部37bの第1の方向Xの長さは、後述するクレードル装置3の第2矯正レール65の第1の方向Xの長さと略等しいか、あるいは若干長く形成されている。
さらに、第2係合溝部37において第2切り欠き部37bが形成された箇所は、第1係合溝部35における第1切り欠き部35bが形成された箇所と同一である。そのため、第1切り欠き部35bと第2切り欠き部37bは、第2の方向Yで対向する位置に形成されている。
なお、本例の薬液投与部2では、第1切り欠き部35bと第2切り欠き部37bが第1係合溝部35と第2係合溝部37において同一の箇所に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1切り欠き部35bと第2切り欠き部37bを第1係合溝部35と第2係合溝部37で異なる位置に形成してもよい。
[クレードル装置]
次に、図1、図2及び図5を参照してクレードル装置3について説明する。
図5は、クレードル装置3を示す平面図である。
図5に示すように、クレードル装置3は、略平板状の載置面部41と、第1側壁部42と、第2側壁部43と、第3側壁部44とを有している。
載置面部41は、角部が湾曲した略矩形状に形成されている。クレードル装置3に薬液投与部2が装着されると、載置面部41には、薬液投与部2における筐体11の底面部22が載置される。
載置面部41の一面41aには、装着部51と、検出レール52と、摺動レール53が設けられている。装着部51は、載置面部41における第1の方向Xの一端部で、かつ第2の方向Yの一端部に形成されている。装着部51には、接続ポート6が装着される。さらに、装着部51には、後述する接続ポート6のカニューレ81が挿通する不図示の挿通孔が設けられている。
検出レール52は、装着部51よりも第1の方向Xの他端部側に形成されている。検出レール52は、載置面部41の一面41aから突出する突条部である。検出レール52は、第1の方向Xに沿って所定の長さで延在している。そして、クレードル装置3に薬液投与部2を装着した際に、検出レール52は、薬液投与部2の装着検出スイッチ33を押圧する。
摺動レール53は、載置面部41の一面41aにおける第2の方向Yの中間部に形成されている。摺動レール53は、載置面部41の一面41aにおける第1の方向Xの一端部から他端部にかけて延在している。薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際に、摺動レール53には、薬液投与部2の摺動溝32が摺動可能に嵌り込む。
載置面部41の第2の方向Yの一端部には、第1側壁部42が略垂直に連続し、載置面部41の第2の方向Yの他端部には、第2側壁部43が略垂直に連続している。そして、載置面部41の第1の方向Xの一端部には、第3側壁部44が略垂直に連続している。そのため、載置面部41の四辺のうち三辺は、第1側壁部42、第2側壁部43及び第3側壁部44で囲まれる。そして、載置面部41の第1の方向Xの他端部が開放されている。載置面部41の第1の方向Xの他端部から、薬液投与部2が装着される。
図1及び図2に示すように、第3側壁部44には、嵌合孔54が開口している。薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際、嵌合孔54には、薬液投与部2の嵌合突起31が嵌り込む。
図2及び図4に示すように、第1側壁部42には、規制レール61と、第1矯正レール62と、第1係合受け部63Aが設けられている。規制レール61は、第1側壁部42における第3の方向Zの中間部に形成されている。規制レール61は、第1側壁部42から第2の方向Yの他端部側に向けて突出している。規制レール61は、第1側壁部42における第1の方向Xの一端部において装着部51の近傍に配置されている。そして、規制レール61は、第1の方向Xと平行に延在する突条部である。
また、規制レール61における第1の方向Xの他端部、すなわち薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際の上流側の端部は、後述する接続ポート6の接続部82の接続面82aよりも第1の方向Xの他端部側(装着する際の上流側)に配置される。そして、薬液投与部2がクレードル装置3に対して正しい姿勢で装着された場合、規制レール61には、薬液投与部2の第1係合溝部35が係合される。
第1矯正レール62は、規制レール61と同様に、第1側壁部42における第3の方向Zの中間部に形成されている。第1矯正レール62は、第1側壁部42から第2の方向Yの他端部側に向けて突出し、第1の方向Xと平行に所定の長さで延在する突条部である。第1矯正レール62の第1の方向Xの長さは、薬液投与部2の第1係合溝部35の第1切り欠き部35bの長さと略等しいか、あるいは若干短く形成されている。
第1矯正レール62は、第1側壁部42の第1の方向Xの中間部に配置されている。そして、第1矯正レール62と規制レール61の間には、第1の方向Xに所定の間隔が空いている。第1矯正レール62と規制レール61の間隔は、第1係合溝部35における第1切り欠き部35bから第1の方向Xの一端部までの長さよりも長く空いている。薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際に、第1矯正レール62は、第1係合溝部35と係合する。
さらに、第1矯正レール62の第1の方向Xの両端部には、それぞれテーパー面部62aが形成されている。テーパー面部62aは、第1の方向Xの一端部又は他端部に向かうにつれて第3の方向Zの長さが連続して短く形成されている。
第1係合受け部63Aは、第1側壁部42の第1の方向Xの他端部に形成されている。第1係合受け部63Aは、第1側壁部42を略矩形状に切り欠いた開口部である。薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際、第1係合受け部63Aには、第1係合フック部36Aが着脱可能に係合される。
第2側壁部43には、ガイドレール64と、第2矯正レール65と、第2係合受け部63Bが設けられている。ガイドレール64は、第2側壁部43における第3の方向Zの中間部に形成されている。ガイドレール64は、第2側壁部43から第2の方向Yの一端部側に向けて突出し、第1の方向Xと平行に所定の長さで延在する突条部である。薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際に、ガイドレール64は、薬液投与部2の第2係合溝部37と係合する。
第2矯正レール65は、第2側壁部43における第3の方向Zの中間部に形成されている。第2矯正レール65は、第2側壁部43から第2の方向Yの一端部側に向けて突出し、第1の方向Xと平行に所定の長さで延在する突条部である。第2矯正レール65の第1の方向Xの長さは、薬液投与部2の第2係合溝部37の第2切り欠き部37bの長さと略等しいか、あるいは若干短く形成されている。
第2矯正レール65は、第2側壁部43の第1の方向Xの中間部に配置されている。そして、第2矯正レール65は、第1矯正レール62と第2の方向Yで対向している。ガイドレール64と第2矯正レール65の間には、第1の方向Xに所定の間隔が空いている。第2矯正レール65とガイドレール64の間隔は、第2係合溝部37における第2切り欠き部37bから第1の方向Xの一端部までの長さよりも長く空いている。薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際に、第2矯正レール65は、第2係合溝部37と係合する。
さらに、第2矯正レール65の第1の方向Xの両端部には、それぞれテーパー面部65aが形成されている。テーパー面部65aは、第1の方向Xの一端部又は他端部に向かうにつれて第3の方向Zの長さが連続して短く形成されている。
なお、薬液投与部2に設けた第1切り欠き部35bと第2切り欠き部37bが第2の方向Yで対向する位置に配置されているため、本例のクレードル装置3では、第1矯正レール62と第2矯正レール65を第2の方向Yで対向する位置に設けた例を説明した。しかしながら、第1矯正レール62及び第2矯正レール65における第1の方向Xでの位置は、上述した例に限定されるものではない。
例えば、第1切り欠き部35bと第2切り欠き部37bが第1係合溝部35と第2係合溝部37の第1の方向Xにおいて異なる位置に形成されている場合、第1矯正レール62と第2矯正レール65は、第1の方向Xにおいて異なる位置に配置されていてもよい。少なくとも、第1矯正レール62が第1切り欠き部35bに挿入された際に、第2矯正レール65が第2切り欠き部37bに挿入される位置であればよい。
第2係合受け部63Bは、第2側壁部43の第1の方向Xの他端部に形成されている。第2係合受け部63Bは、第2側壁部43を略矩形状に切り欠いた開口部である。薬液投与部2をクレードル装置3に装着した際、第2係合受け部63Bには、第2係合フック部36Bが着脱可能に係合される。
また、クレードル装置3には、患者の皮膚に貼り付けられる貼付シート71が設けられている。貼付シート71は、クレードル装置3の載置面部41の一面41aとは反対側の他面41b(図6参照)に設けられている。貼付シート71には、後述する接続ポート6のカニューレ81が貫通する不図示の開口部が形成されている。
また、貼付シート71は、可撓性を有する部材で形成されており、載置面部41とは反対側の面には、患者の皮膚に貼り付けられる接着層が形成されている。患者の皮膚に貼り付ける前の状態では、貼付シート71の接着層は、剥離紙72によって覆われている。
[接続ポート]
次に、図1、図2及び図5を参照して接続ポート6について説明する。
接続ポート6は、カニューレ81と、接続部82とを有している。カニューレ81は、接続ポート6から第3の方向Zの他端部側に突出している。接続ポート6をクレードル装置3の装着部51に装着した際に、カニューレ81は、載置面部41を第3の方向Zに沿って貫通し、載置面部41の他面から突出する。そして、カニューレ81は、生体に穿刺・留置される。
接続部82は、その接続面82aが第1の方向Xの他端部側、すなわち装着方向の上流側を向く。接続部82の接続面82aには、薬液投与部2の接続針管12が穿刺する。これにより、接続部82と薬液投与部2の送液配管13が接続され、送液配管13とカニューレ81が連通する。そして、薬液投与部2の薬液貯蔵部に貯蔵された薬液は、不図示の駆動部が駆動されると、送液配管13を介して接続ポート6に送り出されると共にカニューレ81から患者に投与される。
なお、本例の薬液投与装置1では、第1係合溝部35に第1切り欠き部35b、第2係合溝部37に第2切り欠き部37bとして、切り欠き部をそれぞれ一つずつ形成し、第1側壁部42と第2側壁部43に矯正レール62、65を一つずつ形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1係合溝部35と第2係合溝部37に切り欠き部を2箇所以上形成すると共に、第1側壁部42と第2側壁部43に矯正レールを2つ以上設けてもよい。
2.薬液投与部の装着動作例
次に、上述した構成を有する薬液投与装置における薬液投与部2をクレードル装置3に装着する装着動作の一例について図1、図2、図6〜図11を参照して説明する。
まず、クレードル装置3における貼付シート71の剥離紙72を剥がし、貼付シート71を患者の皮膚に貼り付ける。これにより、患者の皮膚にクレードル装置3が貼付シート71を介して取り付けられる。そして、クレードル装置3の装着部51に接続ポート6を装着し、カニューレ81を患者に穿刺し、留置させる。
次に、図2に示すように、薬液貯蔵部に薬液が貯蔵された薬液投与部2を、クレードル装置3の第1の方向Xの他端部側から挿入する。ここで、図6及び図7に示すように、薬液投与部2がクレードル装置3に対して傾いた状態、すなわち、薬液投与部2の底面部22が第2の方向Yに対して平行をなしていない状態で装着される例について説明する。この状態では、底面部22は、第2の方向Yに対して傾斜し、載置面部41の一面41aに対しても傾斜している。
図7に示す状態では、第1矯正レール62は、薬液投与部2の第1係合溝部35に係合されていない。そして、第1矯正レール62は、第1係合溝部35に設けた第1切り欠き部35bよりも第1の方向Xの一端部側に位置している。
図6及び図7に示す状態から、第1の方向Xの一端部側に向けて薬液投与部2を挿入させると、図8に示すように、クレードル装置3の第1矯正レール62の位置に、薬液投与部2の第1切り欠き部35bが移動する。また、図9に示すように、第2矯正レール65の位置に、薬液投与部2の第2切り欠き部37bが移動する。そして、第1切り欠き部35bに第1矯正レール62が第3の方向Zから挿入され、第2切り欠き部37bに第2矯正レール65が第3の方向Zから挿入される。
その結果、図10に示すように、薬液投与部2の傾きが矯正されて、薬液投与部2の底面部22が第2の方向Yと平行になる。そのため、薬液投与部2の底面部22とクレードル装置3の載置面部41が互いに平行な状態で、載置面部41の一面41aに底面部22が載置される。
また、第1矯正レール62及び第2矯正レール65は、接続ポート6の接続部82よりも第1の方向Xの他端部側に配置されている。そして、第1切り欠き部35b及び第2切り欠き部37bは、接続部82の接続面82aに接続針管12が穿刺される位置よりも第1の方向Xの他端部側である。そのため、第1矯正レール62が第1切り欠き部35bに挿入される位置と、第2矯正レール65が第2切り欠き部37bに挿入される位置は、接続部82の接続面82aに接続針管12が穿刺される位置よりも第1の方向Xの他端部側になる。これにより、接続部82と送液配管13が接続される前に、薬液投与部2の装着姿勢を矯正することができる。
上述したように、第1矯正レール62と規制レール61の間隔は、第1係合溝部35における第1切り欠き部35bから第1の方向Xの一端部までの長さよりも長く空いている。そして、第2矯正レール65とガイドレール64の間隔は、第2係合溝部37における第2切り欠き部37bから第1の方向Xの一端部までの長さよりも長く空いている。さらに、第1側面部25の第1の方向Xの一端部には、底面収納部27が形成されており、第2側面部26の第1の方向Xの一端部は、第2の方向Yの一端部側に向けて凹んでいる。これにより、第1切り欠き部35bに第1矯正レール62が挿入されると共に、第2切り欠き部37bに第2矯正レール65が挿入される際に、規制レール61やガイドレール64が薬液投与部2の筐体11に干渉することを防ぐことができる。
さらに、薬液投与部2を第1の方向Xの一端部側に向けて移動させると、第1矯正レール62が第1係合溝部35に摺動可能に係合し、第2矯正レール65が第2係合溝部37に摺動可能に係合する。上述したように、第1矯正レール62及び第2矯正レール65の第1の方向Xの両端部には、それぞれテーパー面部62a、65aが形成されている。そのため、第1矯正レール62と第1係合溝部35、第2矯正レール65と第2係合溝部37をスムーズに係合させることができる。これにより、薬液投与部2をクレードル装置3に対して正しい姿勢で移動させることができる。
薬液投与部2のクレードル装置3への挿入において別方向に傾く場合として、第2の方向Yに対しては平行であるが、第1の方向Xに傾いた状態で装着される例について説明する。この状態では、薬液投与部2のクレードル装置の第1の方向Xの他端部側から挿入する際に、第1側壁部42と第2側壁部43のいずれか一方と、筐体11の第1側面部25または第2側面部26が正面部23側で当接する。筐体11が当接した後、滑りにより装着方向が矯正されるよう、筐体11の角部が丸みを帯びたR形状とするとよい。
また、筐体11の底面部22には、摺動溝32が設けられており、図4で示すように、第2の方向Yの間隔が第1の方向Xの他端部から中央へ向かって連続して狭まっている勾配形状となっている。したがって、薬液投与部2の挿入時に第1の方向Xと平行でなくても、筐体11の角部に設けたR形状により挿入角度が矯正された後、クレードル装置3の載置面部41の摺動レール53が第1の方向Xの他端部の勾配に従って嵌めやすい。
また、摺動溝32の勾配形状は、勾配部分の長さ及び摺動溝32の中心線との角度と関連して設定される。例えば、筐体11における第1の方向Xの長さが50−150mm程度であれば、摺動溝32の勾配部分の長さは、5−50mm程度で、摺動溝32の中心線との角度は、45度程度までであると、角度矯正効果が期待できるため、好ましい。このような勾配形状は、図4に示すような扇型形状に限らず、摺動溝32の第1の方向Xの他端部側において、摺動レール53の幅の2倍以上の幅であれば適宜設定可能である。そして、挿入時の角度が、第1の方向Xと平行でない場合においても薬液投与部2の装着姿勢を矯正することができる。
上記の通り、第1の方向Xに筐体11が傾いた状態で挿入される際、筐体11の角部が丸みを帯びたR形状とすることで、滑りによって装着方向が矯正されやすいという効果がある。また、同時に、薬液投与部2とクレードル装置3の当接時の衝撃力を分散し、振動減少及び破損防止という効果も合わせ持つ。このような筐体11の角部のR形状は、筐体11の第1の方向Xや第2の方向Yの長さに応じて設定される。なお、筐体11の第1の方向Xの長さが、50−150mm程度の場合、筐体11の角部におけるR部の曲率半径の長さは、1mm以上であれば衝撃力分散効果が期待できるが、角度矯正効果は低くなる。そのため、筐体11の角部におけるR部の曲率半径の長さは、衝撃力分散効果に加えて角度矯正効果のある3mm以上であることが好ましい。
なお、薬液投与部2が正しい姿勢、すなわち底面部22が第2の方向Yに対して平行な状態で載置面部41の一面41aに載置してクレードル装置3に挿入した場合、第1矯正レール62は、第1係合溝部35における第1の方向Xの一端部から摺動可能に係合する。同様に、第2矯正レール65は、第2係合溝部37における第1の方向Xの一端部から摺動可能に係合する。
さらに、薬液投与部2を第1の方向Xの一端部側に向けて移動させると、クレードル装置3に装着した接続ポート6が薬液投与部2の底面収納部27内に収容される。また、図11に示すように、クレードル装置3の規制レール61が第1係合溝部35に摺動可能に係合する。なお、図示しないが、ガイドレール64も第2係合溝部37に係合する。
なお、本例では、第1矯正レール62と第1切り欠き部35b、第2矯正レール65と第2切り欠き部37bによって、薬液投与部2の装着方向がクレードル装置3に対して正しい姿勢に矯正されている。そのため、規制レール61が第1係合溝部35に挿入され、規制レール61と第1係合溝部35を係合させることができる。さらに、第1係合溝部35には、傾斜面35aが形成されているため、第1係合溝部35に規制レール61をスムーズに挿入させることができる。
しかしながら、薬液投与部2におけるクレードル装置3に対する姿勢が矯正されていない状態、すなわち図6及び図7に示す状態のままで装着動作が行われた場合、規制レール61は、第1係合溝部35に挿入される前に、筐体11に当接する。例えば、規制レール61は、第1係合溝部35よりも第1の方向Xの一端部側に形成された底面収納部27の側壁27aに当接する。このように、規制レール61が当接することで、薬液投与部2における第1の方向Xの一端部側への移動が規制される。
本例の薬液投与装置1によれば、規制レール61と第1係合溝部35によって、薬液投与部2をクレードル装置3に対して正しい姿勢でのみ装着することができる。また、薬液投与部2における第1の方向Xの一端部側への移動が規制されることで、薬液投与部2におけるクレードル装置3に対する姿勢が傾いている、すなわち薬液投与部2がクレードル装置3に対して正しい装着姿勢でないことを患者や装着動作を行う使用者に知らせることができる。
また、上述したように、規制レール61における第1の方向Xの他端部、すなわち装着方向の上流側の端部は、接続ポート6の接続部82の接続面82aよりも第1の方向Xの他端部側に配置されている。そして、クレードル装置3に対して薬液投与部2を正しい姿勢で装着された場合、規制レール61と第1係合溝部35は、接続針管12が接続部82の接続面82aに穿刺される前に係合する。また、薬液投与部2がクレードル装置3に対して正しい装着姿勢でない場合では、接続針管12が接続面82aに穿刺される前に規制レール61が筐体11に当接し、薬液投与部2の装着動作を規制する。
これにより、薬液投与部2におけるクレードル装置3に対する装着姿勢を、接続針管12が接続面82aに穿刺される前である接続部82と送液配管13が接続される前に、規制レール61と第1係合溝部35で判断することができる。一方、適切でない角度で接続針管12が接続面82aに穿刺されると、接続面82aの表面が削られて、接続針管12や送液配管13内に混入する(コアリング)危険性があり、穿刺回数の増加によりコアリングの発生確率が増加することが知られている。このようなリスクに対しても、接続針管12が正しい角度でのみ挿入されると同時に、接続針管12が何度も接続面82aに穿刺されることを防止することができるため、接続針管12にコアリングが発生することを抑制することができる。
さらに、薬液投与部2を第1の方向Xの一端部側に向けて移動させると、図1に示すように、嵌合突起31がクレードル装置3の嵌合孔54内に嵌り込む。そして、第1係合フック部36Aが第1係合受け部63Aと係合し、第2係合フック部36Bが第2係合受け部63Bと係合する。これにより、クレードル装置3に装着された薬液投与部2がクレードル装置3から脱落することを防ぐことができる。
さらに、接続ポート6の接続部82が接続口28の筒孔内に挿入され、接続部82の接続面82aに接続針管12が穿刺される。これにより、薬液投与部2の不図示の薬液貯蔵部と接続ポート6が送液配管13、接続針管12及び接続部82を介して接続される。
また、装着検出スイッチ33は、クレードル装置3の検出レール52によって押圧される。これにより、薬液投与部2に設けた不図示の制御部は、薬液投与部2がクレードル装置3に装着されたことを検出する。その結果、薬液投与部2のクレードル装置3への装着動作が完了する。このとき、本発明によれば、規制レール61と第1係合溝部35によって、薬液投与部2をクレードル装置3に対して正しい姿勢でのみ装着されるため、不適切な装着状態で装着検出スイッチ33が押される誤検出が発生しない。薬液投与部2のクレードル装置3への装着状態は、装着検出スイッチ33によって正しく検出され、正しく装着されていないことを患者や装着動作を行う使用者に知らせることができる。
以上、本発明の実施の形態例について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の薬液投与装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
なお、上述した実施の形態例では、クレードル装置3側に突条状のレールを設け、レールに摺動可能に係合する係合溝部を薬液投与部2側に設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、薬液投与部2側にレールを設け、クレードル装置3側にレールに摺動可能に係合する係合溝部を形成してもよい。
さらに、上述した実施の形態例では、規制レール61と矯正レール62の間に間隔を開けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、規制レール61と矯正レール62を連結させ、第1係合溝部35や第2係合溝部37に切り欠き部35b、37bを設けなくてもよい。この場合、薬液投与部2の装着姿勢を矯正することはできないが、薬液投与部2をクレードル装置3に対して正しい装着姿勢でのみ装着させることができる。そのため、不適切な装着状態で装着検出スイッチ33が押される誤検出は発生せず、正しく装着されていないことを患者や装着動作を行う使用者に知らせることができるという同様の効果がある。
さらに、規制レール61は、第1側壁部42だけでなく第2側壁部43に設けてもよい。そして、上述した実施の形態例では、規制レール61を接続ポート6の近傍に設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、規制レール61を第1側壁部42の第1の方向Xの他端部、すなわち装着方向の上流側の端部に設けてもよい。
少なくとも、規制レール61と第1係合溝部35における係合を開始する端部が、接続部82の接続面82aに接続針管12が穿刺される位置よりも装着方向の上流側に位置していれば、規制レール61を設ける位置は、限定されるものではない。すなわち、規制レール61における装着方向の上流側の端部が、接続部82と送液配管13が接続される位置よりも装着方向の上流側に位置していればよい。
なお、規制レール61が第1側壁部42の第1の方向Xの他端部に設けられている場合、第1側壁部42の第1の方向Xの一端部、すなわち接続ポート6の近傍に設けた場合よりも、第1係合溝部35を摺動する量が長くなる。その結果、規制レール61が第1係合溝部35を摺動する際に、規制レール61が第1係合溝部35に引っ掛かるおそれがある。そのため、規制レール61は、第1側壁部42における第1の方向Xの中間よりも接続ポート6側に配置されることが好ましい。
薬液投与装置1は、薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際の衝撃によって、薬液貯蔵部の破損、薬液漏れが発生する危険性があり、薬液への振動によって気泡が発生することで薬液劣化や気泡の流路混入という危険が間接的に発生し得る。これらを防止するためにも、薬液貯蔵部への強い振動や衝撃は避けることが望ましい。また、薬液投与部2をクレードル装置3に装着する際は、衝撃や振動が発生しており、第1の方向X及び第2の方向Yに対して傾斜する場合における装着姿勢矯正時や、姿勢が矯正されずに規制レール61に筐体11が当接した場合には、衝撃や振動がさらに大きくなる、という問題がある。
本発明においては、上述した通り、薬液投与部2を装着する際に、他端部側に勾配形状を有する摺動溝32から挿入した摺動レール53が嵌り込む構成によって、装着時の振動を低減するという効果がある。さらに、第1切り欠き部35b及び第2切り欠き部37bの第1の方向Xの長さは、こられに挿入される第1矯正レール62及び第2矯正レール65の長さと等しいか若干長く形成されており、第1矯正レール62及び第2矯正レール65は、テーパー面部62a、65aを有している構成によって、薬液投与部2の装着時及び装着姿勢の矯正時の振動を低減するという効果がある。
さらに、規制レール61を筐体11と接触する面や、装着時の接触面に振動吸収性のある部材を設置することにより、さらに振動を抑えることが可能となる。振動吸収性のある部材としては、シリコンやゴム等の素材が適宜用いられ、接着剤や熱遊着、超音波遊着等の手段によって接合される。
また、装着時には、薬液投与部2上の嵌合突起31、第1係合フック部36A、第2係合フック部36Bが、クレードル装置3上の嵌合孔54、第1係合受け部63A、第2係合受け部63Bに各々係合する。これにより、薬液投与部2とクレードル装置3は、着脱可能でありながら、確実に保持され得る。このような構成によって薬液投与部2のクレードル装置3への装着において、装着時の振動を抑えつつ、正しい装着姿勢でのみ装着がなされ、着脱可能でありながら、確実にクレードル装置3に薬液投与部2が保持されることが可能となる。
本発明によって、患者の皮膚に貼り付けたクレードル装置3に薬液投与部2を装着して用いる薬液投与装置において、装着が正しく行われていないことによる薬液投与部2の脱落、接続ポート6と送液配管13との接続不具合による液漏れ、接続時振動による薬液貯蔵部の破損と気泡発生、接続針管12の接続面82aにおけるコアリングによる異物混入と詰まり、等の不具合やリスクを低減することが可能となり、安全性の高い薬液投与装置を提供することができる。
上述した実施の形態例では、薬液投与装置としてインスリンを投与するインスリンポンプを適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。投与する薬液としては、鎮痛薬、抗癌治療薬、HIV薬、鉄キレート薬、肺高血圧症治療薬等のその他各種の薬液を用いてもよい。また、患者の皮膚に貼り付ける薬液投与装置に限らず、患者の衣類や持ち物の取り付け可能なクレードル装置と組み合わせて用いる他の装置にも応用が可能である。例えば、血糖値等のモニタリングに使用する体液成分測定装置、心拍数や歩数等の情報を収集する患者情報収集装置などが挙げられ、部材連結機能において多面的に活用が可能であることは言うまでもない。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。