発明の概要
脳腫瘍の治療における抗体の有効性は、それらのサイズによってよって妨げられ、従って、血液脳関門(BBB)を通過する能力を犠牲にしている。アプタマーは、抗体と比較してサイズが有意に小さく、抗体療法を損なうことがある非特異的Fc媒介性の効果がないため、癌治療に対して抗体よりも特に有利である。本開示は、脳転移及び/又は脳腫瘍を効果的に標的とすることができる二機能性アプタマーに関する。
本開示は、EpCAMに結合するEpCAMアプタマー、並びに血液脳関門を通過することができる二重の機能性を示し、脳内に位置する腫瘍細胞上に存在するマーカーに結合するEpCAMアプタマーコンジュゲートを記載する。アプタマー又はアプタマーコンジュゲートには、腫瘍に送達されて腫瘍細胞死をもたらす化学療法剤を備え得る。アプタマーコンジュゲートは、受容体媒介トランスサイトーシス(RMT)を介して脳に入り、脳腫瘍又は脳転移によって発現される癌幹細胞マーカーに結合することができる。特定の例において、アプタマーコンジュゲートは、EpCAM及びトランスフェリン受容体(TfR)に結合する。アプタマーコンジュゲートは、RNA又はDNA、又はRNAとDNAの組み合わせであり得る。一例では、アプタマーコンジュゲートは、ヒトEpCAMに結合する。さらなる例において、アプタマーコンジュゲートは、ヒトTfRに結合する。さらなる例において、アプタマーコンジュゲートは、EpCAMに特異的に結合し、かつ、トランスフェリンレセプター(TfR)に特異的に結合する。別の例では、アプタマーコンジュゲートは、EpCAMへのその結合とは独立してTfRに結合し、逆もまた同様である。
一例では、アプタマーコンジュゲートは、2つのアプタマー配列(又は本明細書に記載の「結合成分」)の融合体である。別の例では、アプタマーコンジュゲートは、別のアプタマー配列(又は結合成分)に連結された1つのアプタマー配列(又は結合成分)を含む。適切なリンカー配列は当該分野で公知である。
本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、合成的に生成され得る。別の例では、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは単離又は精製される。
一実施形態では、本開示は、(i)配列番号9の塩基5〜13(AGGTTGCGT)、(ii)配列番号11の塩基4〜13(ACGTTGTCAT)又は(iii)配列番号12の塩基4〜9(GTTGGC)のいずれか1つから選択されるループ領域配列及び任意にその1つ又は複数の置換を含む、EpCAMに結合するアプタマーを提供する。
アプタマーは、上記で特定したループ領域配列内に1つ、2つ又は3つの置換を含み得る。
一例では、アプタマーは、配列番号9の塩基5〜13のループ領域と、3〜15塩基対を含むステム領域とを含む。さらなる例において、アプタマーは、4〜10塩基対を含むステム領域を含む。さらなる例において、アプタマーは、10塩基対を含むステム領域を含む。さらなる例において、アプタマーは、4塩基対を含むステム領域を含む。
一例では、アプタマーは、配列番号9に記載の配列を含むか又はそれからなる。一例では、アプタマーは、配列番号13に記載の配列を含むか又はそれからなる。
一例では、アプタマーは、配列番号11の塩基4〜13のループ領域及び3〜15塩基対を含むステム領域を含む。一例では、アプタマーは、3〜5塩基対を含む。別の例では、アプタマーは3塩基対を含む。
一例では、アプタマーは、配列番号11に記載の配列を含むか、又はそれからなる。
一例において、アプタマーは、配列番号12の塩基4〜9のループ領域及び3〜15塩基対を含むステム領域を含む。一例では、アプタマーは、3〜5塩基対を含む。一例では、アプタマーは3塩基対のステム領域を含む。
一例において、アプタマーは、配列番号12に記載の配列を含むか、又はそれからなる。
一例では、アプタマーは、約1nM〜約500nM、約1nM〜約400nM、約3nM〜約300nM、約3nM〜約150nM、約3nM〜約100nM、約5nM〜約100nM、約5nM〜約80nM、約5nM〜約50nM、約8nM〜約35nM、約8nM〜約10nM、10nM未満、又は5nM未満のEpCAMに対する結合親和性(KD)であり得る。
別の実施形態では、本開示は、トランスフェリン受容体(TfR)及びEpCAMに結合するアプタマーコンジュゲートを提供する。アプタマーコンジュゲートは、RNA、DNA、又はRNAとDNAの組み合わせであり得る。アプタマーコンジュゲートは、EpCAMへの結合とは独立してTfRに結合し得る。
一例では、本開示は、アプタマーコンジュゲートがEpCAM及びTfRに結合するコンセンサス配列5’−GCG CGG X1X2C CGC GCT AAC GGA GGT TGC GTC CGT−3’(配列番号1)を含むアプタマーコンジュゲートを提供する。一例では、X1及びX2はA、T、C又はGである。一例では、X1はG又はCであり、X2はA又はTである。
一例において、本開示は、1つ以上の置換基を任意にその中に有する配列5’−GCG CGG GCC CGC GCT AAC GGA GGT TGC GTC CGT−3’(配列番号2)を含むアプタマーコンジュゲートを提供し、ここで、前記アプタマーコンジュゲートはEpCAM及びTfRに結合する。
別の例では、本開示は、1つ以上の置換基を任意にその中に有する配列5’−GCG CGG TAC CGC GCT AAC GGA GGT TGC GTC CGT−3’(配列番号3)を含むアプタマーコンジュゲートを提供し、ここで、前記アプタマーコンジュゲートはEpCAM及びTfRに結合する。
本開示はまた、1つ以上の置換基を任意にその中に有する配列5’−GC GCG GTA C CG CGC TA ACG G AT TCC TTT T CC GT−3’(配列番号10)を含むアプタマーコンジュゲートを提供し、ここで前記アプタマーコンジュゲートは、EpCAM及びTfRに結合する。
別の例では、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号10の配列は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個のその置換を含む。別の例では、1つ又は複数の置換が、アプタマーコンジュゲートのTfR結合部分内で生じる。別の例では、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号10の配列は、アプタマーコンジュゲートのステム領域内に少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個の置換を含む。別の例では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個の置換が、アプタマーコンジュゲートのTfR結合部分のステム領域内で起こる。一例では、ステム領域は、アプタマーコンジュゲートの予測された2D構造の領域である。
一例では、TfR結合部分は、トランスフェリン受容体との結合に対し、トランスフェリンと競合しない。
本発明者らは、コンジュゲートアプタマーの結合親和性は損なわれず、結合アフィニティーは、それらが由来する単一アプタマーの結合アフィニティーと比較して強くない場合、典型的には類似していることを見出した。
一例では、本開示のアプタマーコンジュゲートは、TfRに対して約300〜340nMの結合親和性(KD)を有する。別の例において、本開示のアプタマーコンジュゲートは、150〜450nM、200〜420nM、250〜350nM、270〜340nM、又は300〜340nMのTfRに対する結合親和性を有する。一例では、結合親和性はbEnd.3細胞で測定される。
一例において、本開示のアプタマーコンジュゲートは、約210〜220nMのEpCAMに対する結合親和性(KD)を有する。別の例において、本開示のアプタマーコンジュゲートは、130〜280nM、150〜260nM、170〜240nM、又は200〜220nMのEpCAMに対する結合親和性を有する。一例において、結合親和性はHEY細胞で測定される。
一例では、アプタマーコンジュゲートは、33〜100塩基の配列の長さを含む。別の例において、アプタマーコンジュゲートは、33〜80塩基、33〜70塩基、33〜50塩基、又は33〜40塩基の配列を含む。
別の例では、アプタマーコンジュゲートは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号10の配列を含み、ここで、配列長は33〜100塩基である。別の例において、配列の長さは、33〜80塩基、33〜70塩基、33〜50塩基、又は33〜40塩基である。
別の例では、アプタマーコンジュゲートは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号10の配列から本質的になる。
別の例では、アプタマーコンジュゲートは、配列番号2、配列番号3又は配列番号10の配列からなる。
別の実施形態では、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、(インビトロ又はインビボで)アプタマーの安定性を改善する1つ又は複数の修飾を含む(修飾アプタマー)。適切な修飾は、本明細書の他の箇所で議論される。一例では、ピリミジン塩基は、2’−フルオロ(2’−F)修飾されている。別の例では、アプタマーコンジュゲートの3’末端が、ヌクレアーゼ消化から保護するために修飾される。別の例では、アプタマーコンジュゲートは、5’末端をフルオロフォア(例えば、Cy3、Cy5又はTYE665)に連結することによって修飾される。別の例では、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、3’末端に、inv−dT(逆リンケージ)と呼ばれる、逆位デオキシチミジン(inverted deoxythymidine)(dT)を含む。
別の実施形態において、本開示はまた、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12の配列を含むアプタマーと、実質的に同じEpCAMへの結合能力を有するアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを提供する。一例において、「実質的に同じ結合能力を有する(having substantially the same ability ot bind)」とは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアプタマーと実質的に同じ又は類似の(similar)結合親和性を有することを意味する。別の例において、「実質的に同じ結合能力を有する」とは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のアプタマーと同じ又は重複するエピトープへの結合を意味する。
一例では、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、EpCAM+細胞(単数又は複数)に特異的に結合する。
別の例では、EpCAM+細胞(単数又は複数)は幹細胞(単数又は複数)である。別の例では、幹細胞は、単離された癌幹細胞(単数又は複数)である。別の例では、癌幹細胞(単数又は複数)は、(i)EpCAMを発現し、(ii)腫瘍形成性(tumorigenic)であり、(iii)自己再生することができ、(iv)分化することができ、及び(v)従来の療法によるアポトーシスに抵抗性である、ものとして特徴付けられる。
癌幹細胞(単数又は複数)は、生物学的サンプルなどの供給源から単離、濃縮、又は精製されたものとして代替的に記載されてもよい。別の例では、癌幹細胞(単数又は複数)は、EpCAM+発現に基づいて濃縮された(enriched)細胞集団を表す。別の例では、細胞集団は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%が癌幹細胞を含む。
一例では、EpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞は、インビボで存在する。別の例では、EpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞は、インビトロで存在する。さらなる例において、EpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞は、対象から得られた生物学的サンプル中に存在する。さらなる例において、生物学的サンプルは生検サンプルである。
別の例において、本開示のEpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞は、CD44、ABCG2、β3−カテニン、CD133、ALDH、VLA−2、CD166、CD201、IGFR及びEGF1Rを含む1つ以上のさらなる抗原を発現し得る。
別の例において、本開示による癌幹細胞は、脳癌転移である。さらなる例において、転移は原発性の乳癌、肝臓癌又は結腸癌に由来する。
別の例では、アプタマーコンジュゲートは、トランスフェリン受容体(TfR)に特異的に結合する。別の例では、アプタマーコンジュゲートは、血液脳関門を通過することができる。別の例では、トランスフェリン受容体はトランスフェリン受容体1である。
別の実施形態において、本開示はまた、検出可能な標識にカップリングされた本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含む検出剤を提供する。
別の実施形態では、本開示はまた、検出可能な標識にカップリングした本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含む診断剤を提供する。
当業者であれば、本発明のアプタマーコンジュゲートが、非特異的抗体結合に関連し得る合併症を回避し、それにより、優れたシグナル対ノイズ比を提供することが理解されよう。
一例では、本明細書に記載の検出又は診断剤は、インビボ又はインビトロでEpCAM発現細胞を検出するために使用される。
一例では、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、対象又は腫瘍を有するか若しくは腫瘍を有すると疑われる対象から得られる生物学的サンプル中のEpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞の存在を検出するために使用され得る。
さらなる例において、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、対象又は腫瘍を有するか若しくは腫瘍を有すると疑われる対象から得られる生物学的サンプル中の脳腫瘍又は脳転移の存在を診断するために使用され得る。
特定の例において、検出又は診断は、EpCAM発現細胞の検出に基づく。
検出は、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートを検出可能な標識にカップリングすることによって促進され得る。検出可能な標識の例には、種々の酵素、補欠分子族(prosthetic groups)、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、電子密度標識(electron dense labels)、MRI用標識及び放射性物質が含まれる。
本開示はまた、生物学的サンプルの組織学的検査において使用するための、本明細書に記載のアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート又は本明細書に記載の検出剤を提供する。組織学的調製物を調製するための方法は、当業者によく知られているであろう。
本開示はまた、成分(moiety)にカップリングした本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含む抗癌剤(anticancer agent)を提供する。一例において、本明細書に記載の抗癌剤は、対象における脳腫瘍若しくは癌及び/又は脳転移を治療するために使用される。本開示の当業者は、本開示の抗癌剤が、脳内で新たに生じたか、又は脳の外に起因する原発性腫瘍若しくは癌の転移から発生した癌又は腫瘍を治療するために使用され得ることを認識するであろう。一例では、対象は、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートによる治療の恩恵を受ける対象である。別の例では、対象は、脳癌(brain cancer)又は脳腫瘍(brain tumour)と診断された対象である。典型的には、癌は、悪性であり、二次増殖(secondary growths)を生じさせることができる制御不能な増殖として認識される。腫瘍は、悪性又は良性であってもよい。良性腫瘍は、身体のある成分に限定された成長として特徴付けられる。別の例では、対象は、固形腫瘍を有する対象である。腫瘍の処置におけるそれらの有用性に関して、当業者は、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートが、腫瘍サイズ及び/又は腫瘍内で増殖するその能力を低下させ、そ脳機能及び/又は完全性(integrity)を損なう(compromise)腫瘍の能力を予防又は軽減する、そのような腫瘍に成分を送達するために使用され得ることを認識するであろう。
本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、成分にカップリングされ得、アプタマーは、EpCAM発現細胞(例えば、EpCAMを発現する癌幹細胞)を含むか又はそれを含むと疑われる腫瘍の部位に成分を導くために使用される。成分の例は、EpCAM発現細胞を死滅させるために使用され得る毒素、放射性核種又は化学療法剤、又はEpCAM発現細胞を含む腫瘍の位置及びサイズ決定に使用され得る造影剤(imaging agents)を含む。さらなる例において、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、ドキソルビシン(dox)とカップリングされる。ドキソルビシンは、好ましくは、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートのステム領域に挿入又はインターカレートされる(intercalated)。
本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含む抗癌剤は、1つ以上の有効成分をさらに含み得る。有効成分は、1つ以上のさらなる抗癌剤を含み得る。
本開示はまた、対象から得られた生物学的サンプルからEpCAM発現細胞(単数又は複数)及び/又は癌幹細胞(単数又は複数)を単離、精製又は濃縮する方法を提供し、該方法は、細胞を、本開示のアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート又は本開示の検出剤と接触させることを含む。一例では、この方法はインビトロで実施される。
EpCAM発現細胞を単離、精製又は濃縮する方法は、当業者に公知であり、本明細書の他の箇所にも記載されている。
本開示はまた、対象、又は脳癌若しくは脳腫瘍及び/若しくは脳転移を有するか又は有すると疑われる対象から得られた生物学的サンプル中の、EpCAM発現細胞(単数又は複数)及び/又は癌幹細胞(単数又は複数)を同定又は検出するための方法を提供するものであり、細胞又はサンプルを、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート、又は本開示の検出剤と接触させることを含む。
本開示はまた、脳腫瘍又は脳腫瘍及び/又は脳転移を診断する方法を提供するものであり、対象又は対象から得られた生物学的サンプル中のEpCAM発現細胞(単数又は複数)及び/又は癌幹細胞(単数又は複数)を、本開示のアプタマーコンジュゲート又は本開示の診断剤と接触させることを含む。
本開示はまた、対象における脳腫瘍又は腫瘍及び/又は脳転移を、治療又は予防する方法を提供するものであり、対象に、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート、又は本明細書に記載の抗癌剤を提供することを含む。一例では、癌は、EpCAM発現細胞及び/又は癌幹細胞が存在するか又は疑われる任意の癌である。脳転移は、身体のどこかに位置し、原発癌の治療後数ヶ月又は数年後に脳に現れる原発癌に由来するものであってもよい。
EpCAM発現細胞は、星状細胞腫、頭蓋咽頭腫、感覚神経芽腫(esthesioneuroblastoma)、神経線維腫(neurofibroma)、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)を含む、脳腫瘍において見出され得るが、これらに限定されない。さらに、EpCAM発現細胞は、皮膚腫瘍(例えば、基底細胞腫、メラノーマ、メルケル細胞癌)、胸腺腫、線維肉腫、乳腺/乳房腫瘍(例えば、アポクリン腺癌(apocrine carcinoma)、篩状癌(cribriform carcinoma)、腺管癌(ductal carcinoma)、髄様癌(medullary carcinoma)、子宮内膜腫瘍(endometrial tumours)、卵巣腫瘍(ovarian tumours)(例えば、エンドメトリオド癌(endometriod carcinoma)、類内膜癌(endometrioid carcinoma)、漿液癌(serous carcinoma))、前立腺癌、腎臓腫瘍、膀胱腫瘍、肺腫瘍、結腸及び直腸腫瘍(例えば、結腸腺腫(colon adenoma)、結腸腺癌(colon adenocarcinoma))、食道腫瘍、肝臓腫瘍、膵腫瘍、胃腫瘍、及び神経内分泌腫瘍(例えば、カルチノイド腫瘍、副甲状腺腺腫、甲状腺腺腫、甲状腺濾胞癌、甲状腺乳頭癌(thyroid papillary carcinoma))を含むが、これらに限定されない。
本開示の方法は、全身療法(whole body therapy)を対象に送達するために使用され得ることが理解されるであろう。例えば、投与経路に応じて、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートを、EpCAM発現細胞を含有する脳腫瘍/癌又は転移並びに身体の他の部位に位置する腫瘍を標的にするために使用され得る。このようにして、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、治療に対する全身療法アプローチを提供し得る。
別の例では、対象は、脳癌又は脳腫瘍及び/又は脳転移を有すると診断された対象である。別の例では、対象は固形腫瘍を有する対象である。
別の実施形態では、本開示はまた、医療(medicine)において、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート又は抗癌剤の使用に関する。
本開示はまた、対象における脳癌、脳腫瘍及び/又は脳転移を治療又は予防するための、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート又は抗癌剤の使用に関する。
本開示は、対象における脳癌、脳腫瘍及び/又は脳転移を治療又は予防するのに使用するための、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート又は抗癌剤にも関する。
本開示はまた、対象における脳癌、脳腫瘍及び/又は脳転移を治療又は予防するための医薬品の製造における、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲート又は抗癌剤の使用に関する。
別の実施形態では、本開示は、siRNA、リボザイム又はDNAザイム(DNAzyme)にカップリングした本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含む送達剤(delivery agent)を提供する。
別の実施形態では、本開示は、医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤とともに、治療有効量の本明細書に記載のアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート、抗癌剤又は送達剤を含む組成物を提供する。一例では、アプタマーはリポソーム製剤として送達される。
別の実施形態では、本開示は、脳癌、脳腫瘍又は脳転移の分子イメージングにおける使用のための、本明細書に記載のアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート又は本明細書に記載の診断剤を提供する。
本発明のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートの腫瘍浸透能力は、腫瘍の分子イメージングのための抗体よりも顕著な利点を提供する。例えば、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、EpCAM発現細胞を有する癌又は腫瘍の検出及びイメージングを促進する剤にカップリングされ得る。適切な剤の例には、本明細書に記載の検出標識が含まれる。
本明細書に記載のアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート、診断剤、抗癌剤、送達剤又は医薬組成物は、単独で、又は他の治療様式(modalities)と組み合わせて使用されてもよい。例えば、アプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート、診断剤、抗癌剤、送達剤又は医薬組成物は、化学療法及び/又は放射線療法と組み合わせて使用され得る。理論に縛られることを望むものではないが、化学療法剤又は放射線療法剤は、主に癌幹細胞の子孫細胞である急速に分裂する細胞を主に標的にして腫瘍を縮小させるために使用できると想定される。診断剤は、腫瘍中の癌幹細胞の存在又は非存在を検出することによって、癌幹細胞を排除するための任意の先の治療様式の有効性を決定するために使用することができる。次いで、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含有する抗癌剤、送達剤又は医薬組成物は、EpCAM発現細胞を特異的に枯渇させるために、対象に投与され得る。従って、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートを含有する抗癌剤、送達剤又は医薬組成物は、化学療法又は放射線療法と共に、又は化学療法若しくは放射線療法治療の後に使用され得る。本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、癌幹細胞上に存在する抗原を標的とする1つ又は複数のさらなるアプタマーと組み合わせられ得ることも考えられる。
本開示の各実施例は、対象において癌を治療、予防、又は改善するための方法について準用するものとする。
本開示の各実施例は、癌又は腫瘍の分子イメージングに準用するものとする。
図面の説明
配列表への鍵
配列番号1:本開示のアプタマーコンジュゲートのコンセンサスDNA配列
配列番号2:アプタマーコンジュゲートBi2のDNA配列
配列番号3:アプタマーコンジュゲートBi3のDNA配列
配列番号4:アプタマーTfR1のDNA配列
配列番号5:アプタマーTfR2のDNA配列
配列番号6:アプタマーTfR3のDNA配列
配列番号7:アプタマーTfR4のDNA配列
配列番号8:アプタマーコンジュゲートBi1のDNA配列
配列番号9:アプタマーEp7のDNA配列
配列番号10:アプタマーコンジュゲート(アプタマー6)のDNA配列
配列番号11:アプタマーEp8のDNA配列
配列番号12:アプタマーEp9のDNA配列
配列番号13:伸長Ep7アプタマーのDNA配列(Ex Ep7)
配列番号14:スクランブル伸長Ep7アプタマー(scr ex ep7)のDNA配列
配列番号15:全長64mer TfRアプタマーのDNA配列
配列番号16:全長48mer EpCAMアプタマーのDNA配列
配列番号17:TfRアプタマーのDNA配列
配列番号18:TfRアプタマーのDNA配列
配列番号19:TfRアプタマーのDNA配列
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」を意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味を明示的に支持するために用いられる。
本明細書を通して、別段の記載がない限り、又は文脈上他の意味を必要としない限り、単一の工程(step)、物質の組成物、工程の群(group)又は物質の組成物の群は、それらの工程、物質の組成物、工程の群又は物質の組成物の群の1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含するものとする。
本明細書に記載される各例示は、他に特に断らない限り、本開示の各例及び他の全ての例に準用して適用される。
当業者であれば、本開示は具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、そのような全ての変形及び修正を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書において言及又は指示される工程(steps)、特徴(features)又は組成物(compositions)の全てを個別に又は集合的に、及び前記工程又は特徴のいずれか及び全ての組合せ又は任意の2つ以上、を含んでいる。
本開示は、例示のみを目的とする本明細書に記載の特定の例によって範囲が限定されるものではない。機能的に同等な製品、組成物及び方法は、本開示の範囲内にあることは明らかである。
本開示は、特に明記しない限り、分子生物学、組換えDNA技術、細胞生物学及び免疫学の従来技術を使用して、過度の実験をすることなく実施される。このような手順は、例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Second EditioN(1989),Vols I,II及びIIIの全て;DNA Cloning:A Practical Approach,Vols.I及びII(D.N.Glover,ed.,1985),IRL Press,Oxford,全テキスト;Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(M.J.Gait,ed,1984)IRL Press,Oxford,全テキスト、及び、特にその中のGait、ppl−22の論文;Atkinson et al,pp35−81;Sproat et al,pp83−115;及び、Wu et al,pp135−151;4.Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(B.D.Flames & S.J.Higgins,eds.,1985)IRL Press,Oxford,全テキスト;Immobilized Cells and Enzymes:A Practical Approach(1986)IRL Press,Oxford,全テキスト;Perbal,B.,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.),全シリーズ,Sakakibara,D.,Teichman,J.,Lien,E.Land Fenichel,R.L.(1976).Biochem.Biophys.Res.Commun.73 336−342;Merrifield,R.B.(1963).J.Am.Chem.Soc.85,2149−2154;Barany,G.and Merrifield,R.B.(1979)in The Peptides(Gross,E.and Meienhofer,J.eds.),vol.2,pp.1−284,Academic Press,New York.12.Wunsch,E.,ed.(1974)Synthese von Peptiden in Houben−Weyls Metoden der Organischen Chemie(Wier,E.,ed.),vol.15,4th edn.,Parts 1 and 2,Thieme,Stuttgart;Bodanszky,M.(1984)Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,Heidelberg;Bodanszky,M.& Bodanszky,A.(1984)The Practice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,Heidelberg;Bodanszky,M.(1985)Int.J.Peptide Protein Res.25,449−474;Handbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications);及び、Animal Cell Culture: Practical Approach,Third Edition(John R.W.Masters,ed.,2000),ISBN0199637970、全テキスト、に記載されている。
文脈が他を必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、明示された工程(step)又は要素(element)又は整数(integer)、又は工程若しくは要素の群を含むことを意味すると理解されるが、他の工程又は要素又は整数又は要素若しくは整数の群を排除するものではない。
「からなる(consists of)」又は「からなる(consisting of)」という用語は、事項(matter)の方法(method)、プロセス(process)又は組成物(composition)が、列挙された工程及び/又は構成要素(components)を有し、追加の工程又は構成要素を有さないことを意味すると理解されるべきである。
重量、時間、用量などのような測定可能な値を指すときに本明細書で使用する「約(about)」という用語は、変動が開示される方法の実施に適切であるように、特定された量の±20%、又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、いっそう好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、ループ状の一本鎖領域を含み、ここで、該一本鎖領域の両端に隣接する領域は、それぞれ、好ましくは二本鎖領域を形成する。アプタマーは、このように、多くの場合、いわゆる「ステム−ループ構造」を含むことが知られ、主に一本鎖ループ構造領域を介して標的物質に特異的に結合することも知られている。一本鎖領域の両端に隣接し、それぞれでもって二本鎖領域を形成する領域の大きさは特に限定されないが、好ましくは2bp〜15bpである。アプタマーの二次構造は、コンピュータを用いた常法により容易に決定することができる。アプタマーの二次構造を分析するためのソフトウェアとして、例えば、周知のMfoldを利用することができ、そのソフトウェアはMfoldウェブサーバーで自由に利用可能である。
二本鎖ステム領域は塩基対を含む。例えば、一塩基対は、A−T塩基対又はC−G塩基対のいずれかであり得る。
本明細書で用いられる「アプタマーコンジュゲート(aptamer confucate)」という用語は、二機能性活性を有する構築物を指す。特に、少なくとも1つの「EpCAM結合部分(EpCAM binding portion)」及び少なくとも1つの「TfR結合部分(TfR binding portion)」を含む構築物を指す。特定の例において、アプタマー構築物は、1つのEpCAM結合部分及び1つのTfR結合部分を含む。一例では、EpCAM結合部分はアプタマーであり、TfR結合部分はアプタマーである。EpCAM結合部分(アプタマー)及びTfR結合部分(アプタマー)は隣接していてもよい。あるいは、EpCAM結合部分(アプタマー)及びTfR結合部分(アプタマー)は、リンカーを介して結合され得る。適切なリンカーの例には、アプタマーコンジュゲートに柔軟性(flexibility)を与えるリンカーが含まれる。一例では、アプタマーコンジュゲートはDNAアプタマーである。用語「アプタマーコンジュゲート」は多量体も包含する。
「TfR結合部分」とは、TfRに結合することができ、ステム領域及び結合ループ領域を構成するアプタマーコンジュゲートの一部(part)を意味する。一例では、TfR結合部分はアプタマーである。TfR結合部分は、TfRに結合するか、又は特異的に結合することができる。
「EpCAM結合部分」とは、EpCAMに結合することができ、ステム領域及び結合ループ領域を構成するアプタマーコンジュゲートの一部を意味する。一例では、EpCAM結合部分はアプタマーである。EpCAM結合部分は、EpCAMに結合するか、又は特異的に結合することができる。
「EpCAMアプタマー」とは、EpCAMに結合することができ、ステム領域及び結合ループ領域を構成するアプタマーを意味する。
本明細書で使用する「結合親和性(binding affinity)」及び「結合活性(binding activity)」という用語は、標的に結合する又は結合しないアプタマー又はアプタマーコンジュゲート(及び/又はそれぞれそれらのEpCAM及びTfR結合部分)の傾向を指し、アプタマー又はアプタマーコンジュゲート及び/又はそのEpCAM及びTfR結合部分の、標的と結合する結合又は親和性の強さの程度(measure)を記述する。前記相互作用のエネルギー論(energetics)は、相互作用するパートナーの必要な濃度、これらのパートナーが結合することができる速度、及び溶液中の結合分子及び遊離分子の相対濃度を定義するので、「結合活性」及び「結合親和性」において重要である。エネルギー論は、本明細書では、他の方法を通して、他の方法の中で、解離定数KDの決定を特徴とする。当該技術分野で知られているように、低解離定数は、分子同士のより強い結合及び親和性を示す。EpCA1つの例において、解離定数は少なくとも10-6Mである。別の例では、解離定数は少なくとも10-8及び10-9Mである。結合親和性はまた、アプタマー会合速度(Kon)に対するアプタマー解離速度(Koff)の比を表す、平衡解離定数(KD)の点から表現される。KD値が小さいほど、その標的に対するアプタマーの親和性が大きくなる。KD値は、例えば偏光変調された斜入射反射率差(polarization−modulated oblique−incidence reflectivity difference)(OI−RD)又はBiacoreのいずれかを用いて測定することができる。
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的サンプル(biological sample)」は、細胞又は細胞集団又は対象由来の組織若しくは液体の量(quantity)をいう。ほとんどの場合、サンプルは対象から除去されているが、用語「生物学的サンプル」は、インビボで分析された細胞又は組織、すなわち対象から除去されない組織又は組織をも指し得る。本開示の文脈における「生物学的サンプル」は、対象由来の腫瘍細胞を含むであろう。生物学的サンプルとしては、限定されないが、組織生検(tissue biopsies)、又は脳腫瘍から得られた針生検(needle biopsies)が挙げられる。サンプルは、パラフィン包埋された又は凍結した組織であってもよい。サンプルは、対象から細胞のサンプルを除去することによって得ることができるが、以前に単離された細胞(例えば、別の人によって単離された細胞)を使用することによって、又はインビボで本発明の方法を実施することによっても達成することができる。
本明細書中で使用される「カップリングされた(coupled to)」という用語は、本明細書に記載されるように、アプタマーコンジュゲートが、検出剤、成分(moiety)、siRNA、リボザイム又はDNAザイムに連結(linked)、付着(attached)、インターカレート又は接合(joined)された任意の構築物を包含することを意図する。カップリング効果をもたらすための方法は、当業者に知られており、結合(conjugation)、ペプチド若しくはDNAリンカーによる連結(linking)、又は全部の鎖(whole chain)としてのDNA及び剤の直接化学合成(例えばDNAザイム)によるものが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する「単離された(isolated)」という用語は、他の成分(components)から単離可能又は精製された幹細胞(例えば、癌幹細胞)を意味することを意図する。単離された細胞とは、それが自然に生じる可能性のある環境由来の細胞をいう。単離された細胞は、その自然に得られる状態と比較して任意の程度まで精製され得る。
本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、好ましくは、当該分野で公知の方法を用いて化学的に合成される。アプタマーコンジュゲートの文脈における「単離された」という用語への言及は、アプタマーの合成中(例えば、SELEX法)に存在し得る他の成分から精製されるアプタマーを指す。
「治療上有効な量」という用語は、EpCAM発現癌幹細胞の数及び/又は1つ以上の癌の症状を減少させるか、又は阻害するために、本開示によるアプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート、抗癌剤、送達剤又は医薬組成物の十分な量を意味する。当業者は、そのような量が、例えば、特定の対象及び/又は疾患のタイプ若しくは重症度若しくはレベルに依存して、変化することを認識するであろう。この用語は、本開示を特定量のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートに限定するものと解釈されない。
本明細書中で使用される場合、用語「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」又は「治療する(treating)」は、本明細書に開示されるアプタマー、アプタマーコンジュゲート、抗癌剤、送達剤又は医薬組成物の治療有効量を投与し、そして癌に関連するか、又は癌によって引き起こされる臨床症状の少なくとも1つの症状を減少させる、又は阻害することを意味すると理解される。
本明細書中で使用される場合、「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」又は「予防(prevention)」という用語は、本開示のアプタマー、アプタマーコンジュゲート、抗癌剤、送達剤又は医薬組成物の治療有効量を投与して、そして癌の少なくとも1つの症状の発症又は進行を停止させるか、又は妨げるか、又は遅延させることを意味するものとみなされる。
本明細書中で使用される場合、「特異的に結合する(specifically binds)」という用語は、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートが、代替細胞(マーカー)よりも、特定の細胞(細胞上に存在するマーカー)へ、より頻繁に、より迅速に、より長い期間及び/又はより高い親和性で反応するか、又は会合することを意味するものとみなされる。例えば、標的タンパク質に特異的に結合するアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、そのタンパク質又はエピトープ又はその免疫原性フラグメントに、非関連タンパク質及び/若しくはエピトープ又はその免疫原性フラグメントに結合するよりも、より高い親和性で、結合活性で、より容易に、及び/又は、より長い持続時間、結合する。一般的に、必ずしも必要ではないが、結合すること(binding)への言及は特異的結合を意味する。結合の特異性は、アプタマー若しくはアプタマーコンジュゲート及び環境中若しくは一般に無関係な分子中の他の物質に対する解離定数又は平衡解離定数と比較した場合の、標的に対するアプタマーコンジュゲートの比較解離定数(KD)又は平衡解離定数(KD)に関して定義される。典型的には、標的に対するアプタマーのKd又はKDは、標的及び環境中の無関係な物質又は付随する物質に対する、Kd又はKDの2倍、5倍又は10倍低い。さらにより好ましくは、Kd又はKDは、50倍、100倍又は200倍低いであろう。
本明細書で使用される「EpCAM+」又は「EpCAM発現細胞(単数又は複数)」という用語は、互換的に使用することができる。この用語は、任意の適切な手段によって検出することができるEpCAM抗原の細胞表面発現を包含する。所与のマーカーに対して陽性である細胞への言及は、マーカーが細胞表面上に存在する程度に応じて、そのマーカーの低(lo又は薄暗い(dim))又は高(明るい(bright)、bri)発現体のいずれかであり得ることを意味し、これらの用語は蛍光強度に関する。
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト対象を含む任意の対象を意味すると解釈されるものとする。一例では、対象はヒトである。
アプタマー
アプタマーは、特定の標的に結合することができる小さなオリゴヌクレオチドである。それらは、相補的な塩基対形成によってではなく、抗体と同様の様式で、標的との3D構造の相互作用により、相補的なリガンドに結合する。アプタマーは2つのユニークなドメインを有する:非結合ステム領域及び結合ループ;及び、DNA又はRNAのいずれかであり得る。DNAアプタマーはRNAアプタマーよりも安定で安価であるが、RNAアプタマーはより多様な機能を有する(Shigdar S.et al.(2011)British Journal of Hematology 155(1):3−13)。アプタマーは、指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(SELEX)として知られているプロセスによって産生される。
アプタマーは、それらを治療用途のための抗体より優れた多くの特徴を有する。第一に、それらは、抗体タンパク質カウンターパート(counterparts)よりも小さく(5〜25kDa対125kDa)、従って、組織の深部まで、さらには腫瘍の核(core)までさえ浸透することができる(Shigdar S. et al.(2013)Cancer Letters 330(1):84−95)。また、抗体とは異なり、アプタマーは免疫応答を生成することが実証されていない。アプタマーの産生は、SELEXが、動物の免疫系を用いて産生される抗体とは対照的に、インビトロプロセスであるため、より単純なプロセスでもある。これにより、広い範囲のエピトープに対してアプタマーを製造することができ、バッチ間のばらつきが限定され、両方の観点が、アプタマーが抗体よりも優れたものにすることを確実にする。
しかしながら、アプタマーには多くの制限がある。アプタマーは、2つの要因により低下した循環半減期を有する。第一に、オリゴヌクレオチドであるため、それらはヌクレアーゼ分解を受けやすい。さらに、アプタマーのサイズが小さいほど、糸球体濾過を受けやすくなり、容易に尿中に流出する。アプタマーへの任意のSELEX後修飾は、結合親和性を変化させる可能性を有する。アプタマーはまた、部分的に、負に荷電した細胞膜による核酸の反発のために、送達の問題を有する。
アプタマーは、抗体と同様に多くの目的に使用される可能性がある。アプタマーは、黄斑変性の治療において、臨床使用のためにFDAによって既に承認されており(Rinaldi M.et al.(2012)British Journal of Clinical Pharmacology 74(6):940−6)、現在、いくつかの用途に対し、治験が進行中である。インビトロ及びインビボでの前臨床試験では、糖尿病からHIV及びプリオン病への状態を治療する際のアプタマーの治療的適用が示されている。時折知られているような、これらの化学抗体は、癌細胞の表面上の特定のマーカーを標的にして細胞毒性効果を誘導するように設計されたペイロード(payload)を送達するために使用され得ることがあるため、癌研究の分野において特に有望である。このアプローチは、癌の部位に向けて薬剤を集中させることによって、化学療法レジメンの全身毒性を制限させる可能性を有する。このような技術を臨床的に適用することができれば、患者の副作用を制限し、より高い薬物用量の使用を可能にするであろう。さらに、標的化治療は腫瘍形成CSCに向けられ得、これは患者の予後(outcomes)を改善する。
EpCAM
癌細胞は、正常細胞とは異なる抗原発現プロファイルを示し、この異なるパターンは、抗癌治療プログラムの焦点となり得る。多くの細胞表面マーカーが癌細胞上でより高いレベルで発現され、従って、これらの癌細胞に結合するアプタマーが生成され得る。上皮細胞接着分子(EpCAM)は、正常な上皮細胞と比較して、その高レベルの発現(1000倍)のために、固形腫瘍及びCSCのマーカーとして同定されている膜糖タンパク質である(88−91)。興味深いことに、二次腫瘍の108サンプルの免疫組織化学的分析により、EpCAM発現が4%のみ欠けていることが判明した。さらに、EpCAMは、細胞増殖及び転移に関連しているため、予期しない、哀れな患者予後(poor patient prognosis)と関連している(93−95)。
EpCAMは、正常細胞では上皮膜の側底側(basolateral side)に発現するのに対して、癌細胞ではEpCAMが頂端膜側(apical surface)に強く発現するため、理想的な治療標的である。抗体に基づく治療法(therapeutics)は、正常な細胞のEpCAMがそれほど顕著でなく露出が少なく、健康な細胞が抗体結合に対して感受性でないことを意味するので、EpCAM発現のこの特徴を利用(exploit)することができた。従って、副作用は限られており、薬物作用は問題の細胞に向けられている。
癌治療のための抗EpCAM治療抗体を含む臨床研究では、患者における急性膵炎の発症が観察されている。しかしながら、この副作用は、高い親和性を有する抗体においてのみ見られた。これは、EpCAMのアプタマーに基づく標的化が、副作用を制限するために中程度の結合親和性を有するアプタマーを使用すべきであることを示唆する。正常な脳組織がEpCAMに対して陰性であるため、EpCAMはアプタマーに基づく癌治療、特に脳腫瘍のための有用な標的である(Amann M.et al.(2008)Cancer Research 68(1):143−51)。従って、BBBをバイパスすることができれば、EpCAMは脳転移及び/又は脳腫瘍の治療のための理想的な標的となるだろう。
アプタマー−ドキソルビシンコンジュゲート
癌細胞を殺すために、アプタマーは、細胞傷害性効果を引き起こすであろう何かにコンジュゲートしなければならない。1つの選択肢は、アプタマーを化学療法薬と結合させて、癌細胞を直接殺すことである。ドキソルビシン(dox)は、アプタマーとコンジュゲートされた薬物である。doxのアントラサイクリン構造(anthracycline structure)のために、アプタマーのステム領域に、グアニン−シトシン(GC)対の間に、結合親和性の変化は最小限で、容易に挿入することができる(10秒以内に平衡に達する)。これは、細胞のDNAにインターカレートし、アポトーシスを誘導するので、dox毒性のメカニズムを反映している。アプタマーは、高GC含量の伸長したステム領域を有するように設計することができ、doxのインターカレーションを増加させることができる。アプタマー−doxコンジュゲートは、RMEを介して細胞にインターナライズされ(internalised)、遊離doxに匹敵する細胞傷害性効果を不法(illicit)にし、正常細胞よりも癌細胞に対して6倍高い毒性を示す。このシステムの利点は、pH媒介薬物放出である。これらのコンジュゲートは、血漿(7.4)及び脳(6.6−7.2)pHでは安定であるが、インターナライズに際し、エンドソームのより酸性の環境に解離する。
所与の標的に対するアプタマーの選択
実質的に任意の特定の標的に結合するアプタマーは、SELEX(商標)(指数関数的濃縮によるリガンドの系統進化(Systemic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment))と呼ばれる反復プロセスを用いて選択することができる。このプロセスは、例えば米国特許第5270163号明細書及び米国特許第5475096号明細書に記載されている。SELEX(商標)プロセスは、単量体(monomeric)であろうと多量体(polymeric)であろうと、核酸が、様々な2次元及び3次元構造を形成するのに十分な能力を有し、実質的に任意の化合物とリガンドとして作用する(すなわち、特異的結合対を形成する)ために、それらの単量体中に利用可能な十分な化学的多様性を有するというユニークな洞察に基づいている。任意のサイズ又は組成の分子が標的として働くことができる。
SELEX(商標)は、出発点として、無作為配列を含む一本鎖オリゴヌクレオチドの大きなライブラリー又はプールに依存する。オリゴヌクレオチドは、修飾された、又は修飾されていないDNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドであり得る。いくつかの例では、プールは、100%ランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含む。他の例では、プールは、ランダム化配列内に組み込まれた少なくとも1つの固定配列及び/又は保存配列を含むランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含む。他の例では、プールは、オリゴヌクレオチドプールの全ての分子によって共有される配列を含み得る、その5’及び/又は3’末端に少なくとも1つの固定配列及び/又は保存配列を含むランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含む。固定配列は、予め選択された目的のために組み込まれたプール中のオリゴヌクレオチドと共通の配列であり、例えば、CpGモチーフ、PCRプライマーのためのハイブリダイゼーション部位、RNA/DNAポリメラーゼのためのプロモーター配列(例えば、T3、T4、T7及びSP6)、制限酵素部位、又はホモポリマー配列(例えばポリA又はポリTトラクト(tracts))、触媒性コア、アフィニティーカラムへの選択的結合のための部位、及び目的のオリゴヌクレオチドのクローニング及び/又は配列決定を容易にするための他の配列などである。保存された配列は、同じ標的に結合する多数のアプタマーによって共有される、以前記載された固定配列以外の配列である。
プールのオリゴヌクレオチドは、好ましくは、効率的な増幅に必要なランダム配列部分並びに固定配列を含む。典型的には、出発プールのオリゴヌクレオチドは、30〜50個のランダムなヌクレオチドの内部領域に隣接する固定された5’及び3’末端配列を含む。ランダムなヌクレオチドは、化学合成及びランダムに切断された細胞核酸からのサイズ選択を含む多くの方法で産生され得る。試験核酸中の配列変異は、選択/増幅反復の前又は最中に突然変異誘発によって導入又は増加させることもできる。
オリゴヌクレオチドのランダム配列部分は、任意の長さとすることができ、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドを含むことができ、修飾又は非天然のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含むことができる(例えば、米国特許第5958691号明細書、米国特許第5660985号明細書及び国際公開第92/07065号を参照のこと)。ランダムオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の固相オリゴヌクレオチド合成技術を用いてホスホジエステル連結ヌクレオチドから合成することができる。例えば、Froehler et al.(1986).Nucl.Acid Res.14:5399−5467、及び、Froehler et al.(1986)Tet. Lett.27:5575−5578を参照のこと。ランダムオリゴヌクレオチドはまた、例えば、トリエステル合成法などの溶液相方法(solution phase methods)を用いて合成することができる。例えば、Sood et al.(1977).Nucl.Acid Res.4:2557、及び、Hirose et al.(1978).Tet.Lett.,28:2449を参照されたい。自動化されたDNA合成装置で実施される典型的な合成は、1014〜1016個の個々の分子をもたらし、ほとんどのSELEX(商標)実験に十分な数である。
オリゴヌクレオチドの出発ライブラリーは、DNAシンセサイザーでの自動化された化学合成によって生成され得る。部分的にランダムな配列は、各添加段階で、異なるモル比の4つのヌクレオチドを加えることによって作製することができる。
オリゴヌクレオチドの出発ライブラリーは、RNA又はDNAのいずれかであり得る。RNAライブラリーを出発ライブラリーとして使用する場合、典型的には、T7 RNAポリメラーゼ又は修飾T7 RNAポリメラーゼを使用してインビトロでDNAライブラリーを転写し、精製することによって生成される。次いで、RNA又はDNAライブラリーは、結合に好ましい条件下で標的と混合され、実質的に任意の所望の結合親和性及び選択性基準を達成するために、同じ一般的選択スキームを用いて結合、分離(partitioning)及び増幅の段階的反復に供される。より具体的には、核酸の出発プールを含有する混合物から出発して、SELEX(商標)法は、以下:(a)結合に好ましい条件下で混合物を標的と接触させる工程;(b)標的分子に特異的に結合した核酸から未結合の核酸を分離する(partitioning)工程;(c)核酸−標的複合体を解離させる工程;(d)核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して、核酸のリガンド濃縮混合物を得る工程;(e)標的分子に対して高度に特異的で高親和性の核酸リガンドを得るために、所望のサイクル数で結合、分離、解離及び増幅の工程を反復する工程、を含む。RNAアプタマーが選択されている場合、SELEX(商標)法は、さらに、以下:(i)工程(d)において増幅前に、核酸−標的複合体から解離した核酸を逆転写する工程;及び(ii)工程を再開する前に、工程(d)から増幅された核酸を転写する工程、を含む。
選択及び増幅のサイクルは、所望の目標が達成されるまで繰り返される。一般に、これは、サイクルの繰り返しで結合強度の有意な改善が達成されなくなるまでである。典型的には、核酸アプタマー分子は、5〜20サイクルの手順で選択される。様々な核酸の一次、二次及び三次構造が存在することが知られている。非ワトソン−クリック型相互作用に関与することが最も一般的に示されている構造又はモチーフは、ヘアピンループ、対称及び非対称バルジ、シュードノット(pseudoknots)及びそれらの無数の組み合わせとして言及される。このようなモチーフのほとんど全ての既知の事例は、それらが30ヌクレオチド以下の核酸配列において形成され得ることを示唆している。この理由のため、連続ランダム化セグメントを有するSELEX(商標)手順は、約20〜約50ヌクレオチドのランダム化セグメントを含む核酸配列で開始されることがしばしば好ましい。
コアのSELEX(商標)法は、多くの特定の目的を達成するために変更されている。例えば、米国特許第5707796号明細書は、例えば、曲げられたDNA(bent DNA)などの、特定の構造的特徴を有する核酸分子を選択するためにゲル電気泳動と組み合わせたSELEX(商標)の使用を記載している。米国特許第5763177号明細書は、標的分子に結合及び/又は光架橋する(photo−crosslinking)及び/又は光不活性化する(photoinactivating)ことができる光反応基を含む核酸リガンドを選択するためのSELEX(商標)に基づく方法を記載している。米国特許第5567588号明細書及び米国特許第5861254号明細書は、標的分子に対する高親和性及び低親和性を有するオリゴヌクレオチド間の効率的な分離を達成するSELEX(商標)に基づく方法を記載している。米国特許第5496938号明細書は、SELEX(商標)プロセスが実施された後に改良された核酸リガンドを得るための方法を記載する。米国特許第5705337号明細書は、リガンドをその標的に共有結合する方法を記載している。
Counter−SELEX(商標)は、1つ以上の非標的分子に対して交差反応性を有する核酸リガンド配列を排除することによって、標的分子に対する核酸リガンドの特異性を向上させる方法である。Counter−SELEX(商標)は、以下:(a)核酸の候補混合物を調製する工程;(b)候補混合物を標的と接触させる工程であって、候補混合物と比較して、標的に対する増加した親和性を有する核酸が、候補混合物の残りの成分から分離され得る工程;(c)増加した親和性核酸を候補混合物の残りから分離する工程;(d)増加した親和性核酸を標的から解離させる工程;(e)非標的分子(単数又は複数)に対する特異的親和性を有する核酸リガンドが除去されるように、増加した親和性核酸を1つ以上の非標的分子と接触させる工程;及び(f)標的分子のみへの特異的親和性を有する核酸を増幅して、標的分子への結合に対して比較的高い親和性及び特異性を有する核酸配列が濃縮された核酸の混合物を得る工程、を含む。SELEX(商標)について上述したように、選択及び増幅のサイクルは、所望の目的が達成されるまで必要に応じて繰り返される。
代表的な例において、アプタマーは、Beaucage et al.(1981)Tetrahedr.Letters 22:1859−1862、及びSinha et al.,(1984)Nucleosides and Nucleotides 3:157−30 171によって記載されているような従来技術を用いて、固体支持体カラム上で合成される。あるいは、大規模な合成が使用される場合、アプタマーは、固体支持体法のスケールアップによって作製することができ、又は、アプタマーは、特に、所望の最終産物が比較的短いオリゴヌクレオチドであれば、液相技術(solution phase techniques)によって作製することができる。合成プロセスのための出発物質は、好ましくは保護された塩基を有することができ、好ましくは固体支持体に結合される、所望の一次構造の5’−非トリチル化RNAオリゴリボヌクレオチド又は類似体であり得る。任意の従来使用されている保護基(protecting groups)を使用することができる。典型的には、N6−ベンゾイルがアデニン、シトシンについてはN4−ベンゾイル、グアニンについてはN2−イソブチリル、2−アミノプリンについてはN2−ベンゾイルが使用される。他の有用な保護基には、フェノキシアセチル(PAC)及びt−ブトキシアセチル(TAC)が含まれる。好都合には、アプタマーの合成のために、より塩基に不安定な(labile)保護基を使用すべきであり、当業者はこれらの基(group)を知っている。このような基は、生成された三リン酸又は二リン酸の加水分解を防止するのに役立ち得、これは一般に塩基性条件下では非常に安定であるが、いくらかの加水分解に供される可能性がある。他の想定される変更は、米国特許第6,011,020号明細書に記載されており、限定されるものではないが、共有結合を介してPEG又はコレステロールのようなバイオアベイラビリティー増強分子の取り込みを含む。
さらに、ヌクレオシド類似体(nucleoside analogs)、例えば、2’−デオキシ、2’−ハロ、2’−アミノ(非置換又は一置換又は二置換)、2’−モノ、ジ−若しくはトリハロメチル、2’−0−アルキル、2’−0−ハロ−置換アルキル、2’−アルキル、アジド、ホスホロチオエート、スルフヒドリル、メチルホスホン酸、フルオレセイン、ローダミン、ピレン、ビオチン、キサンチン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリン、6位(6−position)が硫黄又は5位(5−position)がハロ若しくはC1〜5アルキル基で置換された2−ヒドロキシ−6−メルカプトプリン及びピリミジン塩基、無塩基リンカー、3’−デオキシ−アデノシン並びに他の利用可能な「鎖終結剤(chain terminator)」又は「非伸長性」類似体(アプタマーの3’末端において)などが、合成中に組み込まれ得る。さらに、例えば、32P又は33Pなどの様々な標識が、同様に合成の間に組み込むことができ、このプロセスによって製造された新規類似体が得られる。他の想定される変更は、米国特許第6,011,020号明細書に記載されており、限定されるものではないが、3’キャップ、例えば逆DTキャップ(inverted DT cap)、又は逆向き脱塩基キャップ(inverted abasic cap)、又はそれらの組み合わせの組み込みが含まれる。
アプタマーの結合親和性
結合親和性は、分子同士の結合又は親和性の強さの尺度を表す。標的及び他の分子に関する本明細書中のアプタマーの結合親和性は、解離定数(Kd)又は平衡解離定数(KD)に関して定義される。解離定数は、当該分野で公知の方法によって決定することができ、例えば、Caceci,M.,et al.,Byte(1984)9:340−362に記載されるものなどの方法により、複合体混合物に対して算出され得る。
解離定数の測定の例は、例えば表面プラズモン共鳴分析を記載する米国特許第7602495号明細書、米国特許第6562627号明細書、米国特許第6562627号明細書及び米国特許出願公開第2012/00445849号明細書に記載されている。別の例において、解離定数は、Wong and Lohman,(1993).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,5428−5432によって開示されたような二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを用いて確立される。
しかし、いくつかの小さなオリゴヌクレオチドでは、解離定数の直接的決定が困難であり、誤って高い結果をもたらし得ることが観察されている。これらの状況下で、標的分子又は他の候補物質に対する競合的結合アッセイを、標的又は候補に結合することが知られている物質に関して行うことができる。50%阻害が生じる濃度の値(K)は、理想的な条件下ではKDに等しい。K値はまた、本発明のアプタマーが標的に結合することを確認するために使用され得る。
アプタマーの安定性の改善
それらのホスホジエステル形態のオリゴヌクレオチドが所望の効果が現れる前に、細胞内及び細胞外酵素、例えばエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼによって体液中で迅速に分解され得る点における、治療剤として核酸を使用する際に遭遇する1つの潜在的な問題が、顕在化している。本開示はまた、本明細書に記載の類似体及び/又はヌクレアーゼ消化からの保護などのアプタマーの1つ又は複数の特性を改善するように設計されたさらなる修飾も含む。
本開示で企図されるオリゴヌクレオチド修飾には、限定されないが、核酸リガンド塩基又は全体としての核酸リガンドへの追加の電荷、分極率(polarizability)、疎水性(hydrophobicity)、水素結合、静電相互作用、及び可動性率(fluoxionality)を組み込む他の化学基を提供するものが含まれる。
ヌクレアーゼに耐性のオリゴヌクレオチドを生成するための改変はまた、1つ以上の、置換ヌクレオチド間結合、改変された糖、改変された塩基、又はそれらの組み合わせを含み得る。このような修飾には、2’−位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ若しくは5−ヨード−ウラシルの置換、骨格修飾、ホスホロチオエート若しくはアルキルホスフェート修飾、メチル化修飾、イソ塩基(isobases) イソシチジン及びイソグアノシンのような珍しい塩基対合の組み合わせ;キャッピングなどの3’及び5’修飾;高分子量の非免疫原性化合物へのコンジュゲーション;親油性化合物へのコンジュゲーション;及びリン酸骨格修飾、を含み得る。好ましくは、アプタマーは、3’逆位チミジン(3’inverted thymidine)を含む。
一例では、本開示のアプタマーにコンジュゲートした非免疫原性の高分子量化合物は、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールである。一例では、骨格修飾は、リン酸骨格への1つ以上のホスホロチオエートの組み込みを含む。別の例において、本開示のアプタマーは、リン酸骨格に10未満、6未満、又は3未満のホスホロチオエートの取り込みを含む。
血液脳関門
脳癌又は腫瘍の治療は、分子の通過を厳密に制御することによって脳微小環境を全身循環から隔離する血液脳関門(BBB)の存在によって複雑である。このような化学療法薬は脳に入ることはほとんどできないが、体内の他の場所ではまだ損傷を与え得る。BBBは、脳微小血管に並ぶ脳血管内皮細胞の単層からなる。これらは、クローディン(claudins)のような膜と細胞質の両方に関連する様々な細胞−細胞接着分子によって密に詰め込まれている。オクルディン帯(zona occuldens)を含む後者のタイプは、隣接する細胞の細胞骨格を互いに結合させる働きをする。他の細胞型もまた、星状細胞及びペリサイトを含む、BBBの特性の調節に関与する。しかしながら、最も重要な成分は内皮単層(endothelial monolayer)であり、タイトジャンクションを介して物理的障壁を形成する。BBBは、物質の脳実質内外への通過を調節する分子トランスポーター及び特殊酵素(specialist enzymes)のユニークな発現を特徴としている。
転移
腫瘍は毎日何百万個もの細胞が放たれるが、体内の他の部位の種腫瘍(seed tumours)にはほとんど行かない。この失敗率の理由は、2つの要因によるものである;放たれた細胞のほとんどが死んでいるという事実、及び細胞が循環中に遭遇する過酷な環境。転移の成功には、腫瘍塊からの細胞の放出及び循環系又はリンパ系への血管内遊走(intravasation)と、血液からの血管外遊走(extravasation)及び別の組織内のコロニー形成の、2つの別々のプロセスが関与する。これらは両方とも、細胞が最初に遊走し、次いで他の組織に定着することを可能にする表現型のスイッチによって起こると考えられている。この形態学的変化は、上皮性及び間葉性形質間の相互変換(inter−conversion)を含む。
抗癌薬のように、転移性細胞は、BBBの存在により脳実質に入るのに苦労する。従って、脳への血管外遊走は、他の臓器に比べて測定可能なほど長いことは驚くことではない。脳転移の正確なメカニズムには多くの不確実性が残っているが、癌細胞は、内皮のタイトジャンクションを分解し、内皮細胞間をナビゲートすることによって、傍細胞経路(paracellular route)を介してBBBを通過するようである。
Kienast and co−workers(2010)Nat.Med.16(1):116−22による研究は、癌細胞が脳に入る過程を解明するうえで重要であった。多光子レーザー走査顕微鏡を用いて、彼らは4つの異なる段階を確認した。第1に、癌細胞は脳毛細血管に捕捉され、潜在的な日数の間そのまま残る。重要なことは、これは、細胞の接着特性よりも微小血管直径の制限のために起こることである。この静的状態にある間、細胞は形態学的変化を受け、BBBに機械的圧力を加える。第2のステップは、脳組織への血管外遊出であり、それは、天然のBBB防御を克服し、内皮タイトジャンクションを破壊するマトリックスメタロプロテアーゼなどの酵素が関与する。次に、癌細胞が、ペリサイトと同様にBBBの反管腔側(abluminal side)に接着することが重要である。ここから、細胞は、既存の脈管構造を利用することによって、又は血管新生を介して新生血管の形成を促進することによって増殖する。
アプタマーの有用性
本開示のアプタマー及びアプタマーコンジュゲートは、標的分子(例えば、EpCAMを有する細胞)を分離及び精製するための親和性リガンドとして、標的分子(例えば、EpCAMを有する細胞)を追跡、モニタリング、検出及び定量するためのプローブとして、又は、治療効果を達成するために生理学的に関連する反応を阻害する、可能にする、活性化する、又は触媒するために、使用され得る。それらは、医薬品(pharmaceutical agent)として作用し、特定の標的に結合し、特定の分子を所望の部位に向けることができる。
本開示のアプタマー及びアプタマーコンジュゲートは、インビトロプロセス、例えば、標的分子(例えば、EpCAMを有する細胞)を精製するためのアフィニティー精製混合物において使用され得る。アプタマーは、標的分子(例えば、EpCAMを有する細胞)を汚染物質からのクロマトグラフィー分離に、及び細胞培養物若しくは細胞抽出物から標的分子を精製するために、理想的である。
一例では、本開示のアプタマー及びアプタマーコンジュゲートは、標的(例えば、EpCAMを有する細胞)を固体支持体に結合又は固定するための捕捉剤(capture agents)として使用することができる。固体支持体は、フィルター、ウェハー、ウェハーチップ、膜及び薄膜に一般的に関連する構造及び組成を有する基材から構成することができる。
しかし、固体支持体は、診断、検出又は定量研究のための試薬を捕捉又は固定化するために、樹脂、親和性樹脂、磁性若しくはポリマービーズ、又は任意の診断用検出試薬を含むがこれらに限定されない基質から構成され得ることが企図される。
固体支持体は、所望の用途に応じた任意の材料を含んでもよく、限定されないが、ガラス、及び、鋼(steel)、セラミック又はポリマー材料(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、及びポリフッ化ビニリデンなど、又はその組み合わせ)などの金属表面及び材料を含む。
EpCAM発現癌幹細胞の単離と精製
癌幹細胞は、腫瘍原性幹細胞、すなわち、広範に(extensively)又は無期限に(indefinitely)増殖する能力を有する細胞、を含む任意の細胞から由来し得るものであり、そしてそれは大多数の癌細胞を生じる。確立された腫瘍内では、ほとんどの細胞が広範に増殖して新たな腫瘍を形成する能力を消失しており、小さなサブセットの癌幹細胞が増殖して癌幹細胞を再生し、腫瘍形成能を欠く腫瘍細胞も生じる。癌幹細胞は、非対称的及び対称的に分裂し、増殖速度の変化を示しうる。癌幹細胞は、幹細胞の性質を再獲得した遷移増幅細胞(transit amplifying cells)又は前駆細胞を含み得る。
EpCAMを発現する癌幹細胞が単離され得る代表的な癌には、原発癌由来の脳腫瘍又は脳転移が含まれ、限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、滑膜腫、リンパ内皮肉腫(lymphagioendotheliosarcoma)、中皮腫、骨髄原発性肉腫(Ewing’s tumour)、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫(hepatoma)、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ(seminoma)、胎児性癌(embryonal carcinoma)、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫(glioma)、星状細胞腫、髄芽腫(medulloblastoma)、頭蓋咽頭腫、上衣腫(ependymoma)、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫(acoustic neuroma)、乏突起膠腫(oligodendroglioma)、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫及び網膜芽腫(retinoblastoma)を含む。
さらに、脳転移は、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性(intermediate grade diffuse)NHL、高悪性度免疫芽細胞NHL、高悪性度小非切断細胞(high grade small non−cleaved cell)NHL、巨大腫瘤病変NHL及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、慢性白血球性白血病(chronic leukocytic leukemia)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ芽球性白血病(lymphoblastic leukemia)、リンパ球性白血病(lymphocytic leukemia)、単球性白血病、骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む、B細胞リンパ腫および白血病などの造血器悪性腫瘍(hematopoietic malignancies)から選択される原発腫瘍又は癌に由来し得る。
EpCAMを有する癌幹細胞は、本明細書に記載のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートを用いて選択されてもよい。例えば、蛍光色素にカップリングされたアプタマーは、癌幹細胞の陽性選択のために使用され得る。EpCAMは、いくつかの正常細胞でも発現することが知られている。しかしながら、EpCAM発現は、癌幹細胞においてアップレギュレートされていると考えられている。癌幹細胞マーカーは、典型的には、同じ起源の分化細胞又は非腫瘍原性細胞より、少なくとも約5倍高いレベルで発現され、例えば、少なくとも約10倍高い、又は少なくとも約15倍高い、又は少なくとも約20倍高い、又は少なくとも約50倍高い、又は少なくとも約100倍高い。選択プロセスはまた、癌幹細胞ではない集団におけるこれらの癌細胞の排除に用いることができる陰性選択マーカーを含んでもよい。
本開示を実施する際に、EpCAMを有する細胞の分離は、多数の異なる方法によって達成され得ることが理解されるであろう。例えば、本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、粗製分離を可能にするために固体支持体に結合されてもよい。洗練された装置及び/又は技術的技量に対する分離効率、関連する細胞傷害性、性能の容易さ及び速度、及び必要性に応じて、異なる有効性の様々な技術を使用することができる。単離又は精製のための手順は、アプタマー被覆磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、及び固体マトリックスに結合したアプタマーによる「パニング(panning)」を含むが、これに限定されない。正確な単離又は精製を提供する技術には、FACSが含まれるが、これに限定されない。FACSを調製するための方法は、当業者には明らかであろう。
EpCAM発現細胞の濃縮
一例において、EpCAM発現細胞は、対象から得られた生物学的サンプルから濃縮される(enriched)。典型的には、対象は、脳腫瘍を有するか、又は癌幹細胞を含む脳腫瘍又は脳転移を有する疑いがある。本明細書では、「濃縮された(enriched)」又は「濃縮(enrichment)」という用語又はその変形は、1つの特定の細胞型(すなわち、癌幹細胞)の割合が、未処理の細胞集団(例えば、サンプル中の細胞)と比較した場合、増加された細胞集団を述べるために本明細書中で使用される。
1つの例において、癌幹細胞を濃縮した集団は、少なくとも約0.1%、又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のEpCAMを有する癌幹細胞を含む。これに関して、用語「癌幹細胞を含む濃縮された細胞集団」は、「X%の癌幹細胞を含む細胞集団」という用語を明示的に支持するために用いられ、ここでX%は本明細書中に記載される百分率である。一例において、細胞集団は、選択可能な形態のEpCAM+細胞を含む細胞調製物から濃縮される。これに関して、用語「選択可能な形態(selectable form)」は、細胞が、EpCAMを有する細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解される。
アプタマーコンジュゲートを用いた癌の診断
本開示のアプタマー及びアプタマーコンジュゲートは、悪性組織(malignant tissue)における癌幹細胞の存在を決定するための診断目的のためにインビトロで使用され得る。この方法は、EpCAM+癌幹細胞の存在について生物学的サンプルを試験することを含む。例えば、生物学的サンプルを本開示の標識アプタマーと接触させることができ、アプタマーがサンプル中の細胞に特異的に結合する能力が決定される。アプタマーによる結合は、EpCAMを有する細胞の存在を示す。一例では、EpCAMを有する細胞は癌幹細胞である。
本開示のアプタマーコンジュゲートはまた、検出可能なシグナルを与えるレポーター基(reporter group)で標識された本開示の単離されたアプタマーを対象に投与することによって、インビボでEpCAM+腫瘍を局在化するために使用され得る。結合したアプタマーは、その後、フローサイトメトリー、顕微鏡検査、外部シンチグラフィー(external scintigraphy)、エミッショントモグラフィ、光学イメージング又は放射性核種スキャニング(radionuclear scanning)を用いて検出することができる。該方法は、疾患の程度に関して対象の癌をステージ分類し(stage)、治療に対する応答の変化をモニターするために使用され得る。
癌幹細胞の検出は、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートを検出可能な標識にカップリングすることによって促進することができる。検出可能な標識の例には、種々の酵素、補欠分子族(prosthetic group)、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、電子密度標識(electron dense labels)、MRI用標識、及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれる。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフォン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンを含む。発光物質の例としては、ルミノールが含まれる。生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが含まれ、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、18F、64Cu、94mTc、124I、11C、13N、15O、68Ga、86Y、82Rb又は3Hが含まれる。
アプタマーの3’末端での標識は、例えばKlenowポリメラーゼを用いた鋳型伸長、T4 RNA/DNAリガーゼ媒介ライゲーション、及び末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって達成することができる。5’末端での標識は、インビトロ転写混合物を過剰のGTP−13−Sで補うことによって達成することができ、そのチオールはビオチンを付着させるために使用することができる。さらに、適切な基(単数又は複数)の5’又は3’末端への直接的な化学的コンジュゲーションは、アプタマーを標識するために使用され得る。
本開示の抗癌剤
本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、成分(moiety)にさらにコンジュゲートされ、この成分をEpCAM+細胞、好ましくは癌幹細胞に導くために使用され得る。成分の例には、癌幹細胞を死滅させるために使用できる毒素(toxin)、放射性核種、又は化学療法剤が含まれる。
アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、化学的に合成される成分及びアプタマーによって、又は別々に産生されたアプタマーとその成分を結合させるために使用されるコンジュゲーション(例えば、非ペプチド共有結合、例えば、非アミド結合)の手段のいずれかによって、成分、例えば毒素に融合され得る。あるいは、アプタマー及び成分は、適切なリンカーペプチドによって結合されてもよい。
有用な毒素分子としては、ペプチド毒素が挙げられ、これは細胞内に存在する場合に著しく細胞傷害性である。毒素の例には、細胞毒素(cytotoxin)、酵素活性を破壊し、それによって癌幹細胞を死滅させる代謝崩壊剤(metabolic disrupters)(阻害剤及び活性化剤)、及びエフェクター部分(effector portion)の規定された半径内の全ての細胞を殺す放射性分子が含まれる。代謝崩壊剤は、分子、例えば、正常な機能を変化させるように細胞の代謝を変化させる酵素又はサイトカイン、である。概して、毒素という用語は、腫瘍細胞に死を引き起こす任意のエフェクター(effector)を含む。
多くのペプチド毒素は、一般化された真核生物受容体結合ドメインを有し、これらの場合、毒素は、EpCAMを保有していない細胞を死滅させないように(例えば、EpCAMを保有していないが、改変されていない毒素の受容体を有する死細胞を防ぐために)改変されなければならない。そのような改変は、分子の細胞傷害性機能を保存する様式で行われなければならない。潜在的に有用な毒素には、ジフテリア毒素、コレラ毒素、リシン、0−志賀様毒素(O−Shiga−like toxin)(SLT−1、SLT−II、SLT−1Iv)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素百日咳毒素(Shiga toxin pertussis toxin)、破傷風毒素(tetanus toxin)、シュードモナス外毒素(Pseudomonas exotoxin)、アロリン、サポニン、モデシン(modeccin)及びゼラニンが挙げられるが、これらに限定されない。他の毒素には、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)及びリンホトキシン(LT)が含まれる。抗腫瘍活性を有する別の毒素は、腫瘍に対して顕著な効力を有する抗腫瘍抗生物質を含む、カリチアマイシンγ1(calicheamicin gamma 1)、ジン−エンである(diyne−ene)(Zein N et al.(1988).Science 240:1198−201)。
一例として、ジフテリア毒素(この配列は公知である)を本開示のアプタマーコンジュゲートに結合させることができる。天然のジフテリア毒素分子は、トランスロケーションドメイン(translocation domain)及び一般化された細胞結合ドメイン(AA 475−535)を含む、酵素活性フラグメントA(AA1−193)及びフラグメントB(AA194−535)として、分子のアミノ末端で始まることで特徴づけることができるいくつかの機能的ドメインからなるコリネバクテリウムジペプテリア(Corynebacterium diptheriae)によって分泌される。
アプタマー及び毒素成分は、当業者に知られているいくつかの方法のいずれかで連結することができる。例えば、アプタマーを毒素(ゲロニン)に結合させる方法は、Chu TC et al.(2006)Cancer Res 6(12)5989−5992に記載されている。成分はまた、局所レベルで身体の免疫系を活性化又は阻害する免疫系のモジュレーターであり得る。例えば、サイトカイン、例えば、腫瘍に送達されるIL−2のようなリンホカインは、腫瘍の近傍で細胞傷害性Tリンパ球又はナチュラルキラー細胞の増殖を引き起こし得る。
成分又はレポーター基はまた、放射性分子、例えば、放射性ヌクレオチド、又はいわゆる増感剤、例えば、例えば特定の条件下で放射性になる前駆体分子、例えば、Barth et al.(1990).Scientific American Oct 1990:100−107に記載されているように、いわゆる「ホウ素中性子捕獲療法(boron neutron capture therapy)」(BNCT)においてわずかな低エネルギー中性子にさらされたときのホウ素であってもよい。そのような放射性エフェクター成分を有する化合物は、腫瘍における癌幹細胞の増殖を阻害するため、及び画像化目的のために癌幹細胞を標識するための両方に用いることができる。
放射性核種は、α、β、又はγ粒子のいずれかを放出することができる単一原子放射性分子である。α粒子エミッタ(emitters)は、β又はγ粒子エミッタよりも好ましい。何故ならば、これらのエミッタは短い距離ではるかに高いエネルギーを放出し、従って正常組織に著しく浸透し、損傷することなく効率的であるからである。適切な粒子放出放射性核種には、211At、212Pb、及び212Biが含まれる。
放射性分子は、直接又は二官能性キレートによってアプタマーに強く結合しなければならない。このキレートは溶離(elution)を許容せず、従ってインビボでの放射性分子の早すぎる放出を許容してはならない。Waldmann,Science,252:1657−62(1991)。一例として、BNCTを本発明に適合させるために、ホウ素の安定同位体、例えばホウ素10を、化合物の抗腫瘍成分又はエフェクター成分として選択することができる。ホウ素は、アプタマーが癌幹細胞に特異的に結合することによって、腫瘍細胞に送達され、腫瘍細胞内又は腫瘍細胞上に濃縮される。充分な量のホウ素を蓄積させる時間が経過した後、約0.025eVのエネルギーを有する低エネルギー中性子ビームで腫瘍を撮像及び照射することができる。この中性子照射は、それ自体、腫瘍を取り囲む健康な組織又は腫瘍そのものにほとんど損傷を与えないが、ホウ素10(例えば、腫瘍細胞の表面上)は中性子を捕捉し、それによって不安定な同位体、ホウ素11を形成する。ホウ素11は即時に分裂してリチウム7核及び約279万電子ボルトのエネルギーを有するエネルギー性の粒子を生成する。これらの重粒子は、非常に致命的であるが、粒子がわずか約1セル直径(10ミクロン)の経路長を有するため、非常に局在する放射線の形態である。
本開示の送達剤(Delivery agent)
本開示のアプタマーコンジュゲートは、細胞へ送達するsiRNA、リボザイム、又はDNAザイム(DNAzyme)のために使用され得る。適切なsiRNA、リボザイム又はDNAザイムの例は、状況に依存する。本開示に従って使用するのに適したsiRNA、リボザイム、又はDNAザイムの例は、ATP結合カセット膜輸送体(ATP binding cassette membrane transporters)、幹性遺伝子(Bmi−1、Notch1、Sox2、Oct−4、Nanog、β−カテニン(catenin)、Smo、ネスチン(nestin)、ABCG2、Wnt2及びSCFなど)、GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、及びサバイビン(survivin)を標的とするものが含まれる。
例として、これは、抗PSMAアプタマーを用いた先行技術において実証されている。PSMAはエンドソームにクラスリン被覆ピット(clathrin−coated pits)を介してインターナライズされるという知見に基づいて、抗PSMAアプタマーは、結合させたsiRNAを、PSMAを発現する細胞へと運搬し、PSMAタンパク質に結合したアプタマー−siRNAは、インターナリゼーションを介して細胞へのアクセスすることになるであろうと仮定された。次に、siRNA成分(siRNA portion)はダイサー(Dicer)複合体によるプロセシングを受け、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)媒介遺伝子サイレンシング経路に供給される。3つのグループがこれを達成するために異なる戦略を利用している。Chu et al.(2006)Nucleic Acids Res 34,e73は、抗PSMAアプタマー及びsiRNAを組み立てるためのビオチン−ストレプトアビジン架橋媒介接合方法を記載している。McNamara et al.(2006)Nat.Biotechnol 24,1005−1015は、アプタマーとsiRNAを連結するための「RNAのみ」のアプタマー−siRNAキメラアプローチを使用した。その後のWullner et al.(2008).Curr.Cancer Drug Targets 8:554−565の研究では、著者が、PSMA陽性前立腺癌細胞に真核伸長因子2(Eukaryotic Elongation Factor 2)(EEF2)siRNAを送達するために抗PSMAアプタマーを使用し、二価PSMAアプタマーは、この目的のために使用された。この著者らは、一価抗PSMA−siRNAキメラと比較して、二価アプタマー構築物の遺伝子ノックダウンの力価が優れていることを実証した。本開示のアプタマーコンジュゲートはまた、様々な固形腫瘍においてEpCAM+癌幹細胞に積荷(cargo)を送達するために使用され得る。ゲロニン(Gelonin)は、タンパク質合成のプロセスを阻害し、細胞傷害性であるリボソーム毒素である。しかしながら、それは膜不浸透性であり、その細胞侵入のための先導役(usher)を必要とする。従って、本開示のアプタマーコンジュゲートは、癌幹細胞に膜不透過性毒性ペイロードを送達するために利用され得る。細胞傷害性化学療法剤に対する腫瘍耐性は、部分的には、癌細胞への不十分な送達及び取り込み、そしてより重要なことには、癌細胞による排出が原因である。ポリ(D,L−乳酸−グリコール酸)PLGA由来の生分解性ナノ粒子(NP)は、Dhar et al.(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:17356−17361に記載されるように、この課題に取り組むために使用された。簡潔に述べると、シスプラチンは、2つのアルキル鎖を導入することによってそのプロドラッグのPt(IV)化合物に変換された。これは、化合物の疎水性を増加させ、NPの疎水性コア内でのそのパッケージングのプロセスを容易にした。PLGA−PEGナノ粒子を合成するためのナノ沈殿工程(nanoprecipitation step)の間に、ポリエチレングリコール(PEG)をコポリマーとして使用した。PLGA−PEG−NP表面は、PSMA(前立腺特異的膜抗原)アプタマーで修飾された。NPは、LNCaP細胞と共にインキュベートしたときにエンドサイトーシスを受け、アルキル化プロドラッグは、細胞質ゾル(cytosolic)還元プロセスによってシスプラチンに変換された。
本開示はまた、脳腫瘍又は脳転移のための同時薬物送達及び画像化剤としてのアプタマー又はアプタマーコンジュゲートの使用にも及ぶ。これは、アプタマーを蛍光量子ドット(fluorescent quantum dot)(QD)の表面に結合させることによって達成することができる。次に、QD−アプタマーコンジュゲートをDoxと共にインキュベートして、QD−アプタマー−Doxナノ粒子を形成する。Dox及びQDは共に蛍光分子である。しかし、それらはQD−アプタマー−Doxナノ粒子中に近接しているため、二重蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)機構によって互いの蛍光を消光する。従って、QD−アプタマー−Doxナノ粒子は非蛍光性である。しかしながら、癌細胞におけるPSMA媒介エンドサイトーシスを介したQD−アプタマー−Doxナノ粒子のインターナリゼーションは、Dox及びQDの両方による蛍光の回復をもたらす、QD−アプタマー−Doxナノ粒子からのDoxの放出を引き起こす。
医薬組成物
本開示の一例では、本開示によるアプタマー、アプタマーコンジュゲート、抗癌剤又は薬物送達剤(drug delivey agent)は、医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む組成物の形態で投与される。賦形剤又は組成物の他の要素の選択は、投与に使用される経路及びデバイスに従って適合させることができる。
「担体」及び「賦形剤」という用語は、活性化合物/アプタマーの貯蔵、投与及び/又は生物学的活性を促進するために当該技術分野で従来使用されている物質の組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mac Publishing Company(1980)を参照のこと)。担体はまた、活性化合物/アプタマーの望ましくない副作用を低減し得る。担体は、例えば、安定であり、例えば、担体中の他の成分と反応することができないものである。一例として、担体は、治療に使用される用量及び濃度で、レシピエントにおいて有意な局所的又は全身的有害作用を引き起こさない。
本開示のための適切な担体には、従来使用されているものを含み、例えば、水、生理食塩水、水溶性デキストロース、ラクトース、リンゲル液 緩衝溶液、ヒアルロナン及びグリコールは、特に溶液の場合(等張性の場合)の典型的な液体担体である。適切な医薬的担体及び賦形剤は、澱粉、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。
抗酸化剤、緩衝液、静菌剤(bacteriostatic agent)などの他の一般的な添加剤を添加することができる。注射可能な溶液を調製するために、丸剤(pills)、カプセル剤、顆粒剤又は錠剤(tablets)、希釈剤、分散剤、界面活性剤(surfactants)、結合剤(binders)及び滑沢剤(lubricants)をさらに添加することができる。
本開示のアプタマーを含む抗癌剤又は薬物送達剤は、当該分野で公知の方法に従って、脳への送達のために対象に投与することができる。投与は、非経口的手段(例えば、静脈内、皮下、局所又は腹腔内注射)によって行うことができる。あるいは、投与は、鼻腔内であり得る。いくつかの実施形態では、アプタマー又はアプタマーコンジュゲートは、ナノ粒子又はリポソームの形態で提供される。例えば、ナノ粒子は、薬物の標的送達のための本開示のアプタマー又はアプタマーコンジュゲートで機能化することができる。
抗癌剤の有効投与量は、体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与頻度、投与方法、排泄及び疾患の重篤度に応じて決定することができる。一例では、抗癌剤又は薬物送達剤は、アプタマーコンジュゲートを10〜95重量%含む。別の例において、抗癌剤又は薬物送達剤は、アプタマーコンジュゲートを25〜75重量%含む。
投与頻度は、1日に1〜数回でよい。一例では、アプタマーの有効細胞内含量は、約1nM〜1000nMである。別の例では、アプタマーの有効細胞内含量は、好ましくは100nM〜500nMである。しかし、アプタマーの投与量は、上記の範囲未満又はそれ以上であり得る。
トランスフェリン受容体
トランスフェリン受容体(TfR;CD71)は、2つの90kDaサブユニットからなる膜貫通糖タンパク質である。ジスルフィド架橋はこれらのサブユニットを連結し、各サブユニットは1つのトランスフェリン(Tf)分子に結合することができる。TfRは、主に肝細胞、赤血球、腸細胞、単球上、並びに血液脳関門(BBB)の内皮細胞上で発現する。さらに、脳においてTfRは、脈絡叢(choroid plexus)上皮細胞及びニューロン上で発現される。TfRは、受容体媒介エンドサイトーシスによる鉄飽和(iron−saturated)トランスフェリンのインターナリゼーションを媒介する。研究は、その受容体に対するトランスフェリンの親和性がpH及び鉄負荷(iron loading)に依存することを示した。
トランスフェリンリガンドが受容体に結合すると、受容体−リガンド複合体はクラスリン被覆小胞(clathrin−coated vesicles)を介してエンドサイトーシスされる。
アプタマーの組み合わせ
本開示の単離されたアプタマー分子(単数又は複数)は、本明細書中に開示される任意の方法に従って、単独で、又は1つ以上のさらなるアプタマーと組み合わせて使用され得る。一例では、本開示のアプタマーコンジュゲート(単数又は複数)は、癌幹細胞の検出、精製、又は濃縮を促進するアプタマーと組み合わせることができる。
キット
本開示はまた、本明細書中に開示される方法を実施するための診断キットを提供する。一例では、診断キットは、EpCAM発現細胞(例えば、癌幹細胞)を検出するための本明細書に記載の診断剤を含む。
キットはまた、緩衝剤及び安定化剤などの補助剤を含み得る。診断キットは、バックグラウンド干渉を低減するための薬剤、対照試薬、及び試験を行うための装置をさらに含み得る。診断キットの使用方法についての説明も一般的に含まれている。
当業者であれば、本開示の広範な一般的な範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に多くの変形及び/又は修正を行うことができることが理解されよう。従って、本実施形態は、全ての点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
方法
細胞培養
細胞培養細胞株(表1)をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen)中、37℃、5%CO2雰囲気中で維持した。細胞株は、bEnd.3マウス大脳内皮細胞(TfR陽性)、HEY卵巣癌細胞(EpCAM陽性)及びMOLT4白血病細胞(TfR陰性、EpCAM陰性)であった。アッセイに必要とされる場合、又は細胞数を維持するのに適切な場合、細胞を継代した(付着細胞については1xトリプシンを使用)。
アプタマー
アプタマーを表2に記載する。全てのアプタマーを、3’inv dT及び5’末端(TYE 665)上のフルオロフォアでタグ付けした。これらは全て商業的に合成された(Integrated DNA Technologies)。アプタマーの2つの異なる群を使用した。マウスTfRに対する4つのアプタマーを最初に試験した。これに続き、これらの抗TfRアプタマーのいくつかと、Song Y et al.(2013)Analytical Chemistry 85(8):4141−9に記載されている、より大きいEpCAMアプタマー由来の抗EpCAMアプタマー(Ep7)を組み込んだ、3つのコンジュゲートアプタマーが生成された。Songらのアプタマーは以下の配列からなる:
5’CAC TAC AGA GGT TGC GTC TGT CCC ACG TTG TCA TGG GGG GTT GGC CTG 3’(配列番号16)
2つの追加のEpCAMアプタマーもまた、Ep8及びEp9を設計して作製され、それらもまた、Songらに記載されている、より大きなEpCAMアプタマーから誘導されたものである。
アプタマーの特徴付け
i)アプタマーの結合親和性の決定
アプタマーの結合親和性(平衡解離定数KD)を決定するために、結合アッセイを行って、細胞表面上に発現された天然のEpCAMタンパク質への結合を測定した。アプタマーを、0nM〜400nMの範囲の濃度で細胞とともにインキュベートした。その後、これらをフローサイトメトリーによって分析した。アプタマーは、使用前に保存温度(−20℃)から解凍した。次いで、これらを所望の濃度を達成するために、リン酸緩衝食塩水(PBS)で連続希釈して希釈した。PBSに、アプタマーに適切なMgCl2濃度を補充した(抗TfRアプタマーについては1mM;コンジュゲートアプタマーについては5mM)。次いで、アプタマーは、サーモサイクラーを用いて3D構造に折り畳んだ(85℃で5分間、10分間かけて22℃へゆっくりと冷却、そして37℃で15分間)。
同時に、継代培養した細胞をブロッキング緩衝液(10%FCS、1mg/mLのBSA、0.1mg/mLのtRNAを含むPBS)中で30分間インキュベートした。遠心分離後、ブロッキング緩衝液を除去し、細胞を結合緩衝液(10%FCS、1mg/mLのBSA、0.1mg/mLのtRNAを含むPBS)に再懸濁した。次いで、細胞(50μL)をアプタマー(50μL)と共に37℃で30分間、濃度範囲(0nM、20nM、40nM、60nM、80nM、100nM、200nM、400nM)でインキュベートした。この後、フローサイトメトリーのための最終再懸濁の前に、細胞を100μLのPBSで3回洗浄した。
アプタマーを、選択された細胞株(bEnd.3細胞、TfR陽性マウス細胞;HEY細胞、EpCAM陽性ヒト卵巣癌細胞株;及びTfR及びEpCAM陰性MOLT4ヒト細胞)と一定の濃度でインキュベートした。アプタマーに結合した細胞を、FACS Canto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析し、アプタマーの結合親和性を測定するために各サンプルについて10,000イベントを数えた。蛍光を示す生存細胞が観察され、中央蛍光強度が記録された。バックグラウンド蛍光を説明するために、自己蛍光0nM濃度の値を他の数字から差し引いた(Li N et al.(2009)Journal of Proteome Research 8(5):2438−48)。得られた値を用いて、GraphPad Prism 3ソフトウェアを介して解離定数(KD)を決定した。
ii)細胞へのアプタマーインターナリゼーションの測定
細胞へのアプタマーインターナリゼーションを視覚化する手段として共焦点顕微鏡法を用いた。アプタマー及び細胞は、混合して、37℃でインキュベートする前に上記と同じ方法で調製した。アプタマーを200nMの濃度で使用し、60分間インキュベートした。コンジュゲート(二官能性)アプタマーの濃度は400nMであり、これらを細胞とともに120分間インキュベートした。インキュベーション終了の10分前に、2μLのHoechst核染色液(10mg/mL)を細胞に添加した。次いで、細胞を上記のように100μLのPBSで3回洗浄し、視覚化のために8チャンバースライド(8−chambered slide)(Lab−Tek II、Nunc)に20μL(8×105細胞/ウェル)で再懸濁した。細胞をブロッキング緩衝液中で60分間インキュベートし、続いてアプタマーを含む結合緩衝液に再懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。最後の10分間のインキュベーションの間、細胞にビスベンズイミダゾール(Bisbenzimide)Hoechst 33342(3mg/mL)(Sigma)を添加した。アプタマー溶液を除去し、FluoView FV10iレーザー走査共焦点顕微鏡(Olympus)を用いて可視化する前に、細胞をPBS中でそれぞれ5分間3回洗浄した。
細胞取り込みの機序を評価するために、フィコエチリン標識ラット抗マウスTfRモノクローナル抗体(R17217;Abcam)のインターナリゼーションを、1μg/mLのアプタマーと30分間、共インキュベートすることにより、共焦点顕微鏡法によっても可視化した。
インビトロ血液脳関門モデル
アプタマーを含むTfRがレセプター媒介輸送(RMT)を介して内皮細胞単層を通過する能力を評価するために、図1に模式的に示すように、BBBのインビトロモデルを作製した。24ウェルプレート(Corning)中のトランスウェルインサート(直径0.4μmの細孔を有するポリエチレンテレフタレート(PET))を100μLの50%コラーゲンIVと共に37℃で2時間インキュベートした。bEnd.3細胞のフラスコをトリプシン処理して単一細胞懸濁液を生成し、十分な割合の細胞が生存していることを確実にするために血球計及びトリパンブルーを用いて計数した。次いで、これらを遠心分離し、培地に再懸濁した。ウェルに800μLの無血清培地を充填し、トランスウェルインサートを上に置いた。次いで、細胞を1×106細胞/cm2の密度で90μLの無血清培地に播種し、37℃でインキュベートした。細胞を6時間静置させ、次いで増強培地(DMEM低グルコース:Ham’s F12(1:1)、(両方無血清)550nMヒドロコルチゾン、32μMのcAMP、17.5μMのアミノフィリン、1μMのレチノイン酸、5μg/mLのインスリン、2.75μg/mLのトランスフェリン、2.5ng/mLの亜セレン酸ナトリウム、100ng/mLのbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、20ng/mLのEGF(表皮成長因子))(Wuest DM et al.(2013)Journal of Neuroscience Methods 212(2):211−21)をトランスウェルに添加した。単層の成長を補うために、両方の区画の培地を翌日に増強培地に交換した。
(i)経皮電気抵抗測定(Transendothelial electrical resistance measurements)
膜の完全性を評価するために、トランスウェルの経内皮電気抵抗(TEER)を測定した。EVOM2上皮電圧計(EVOM2 Epithelial Voltohmmeter)(World PrecisioNInstruments)の電極をBBBモデルの両チャンバーに挿入し、抵抗をオーム単位で記録した。次いで、この値にトランスウェルの面積を掛けた。ブランクのトランスウェルインサートを使用して同じことを行い、TEERをΩcm2で得るために、前に記録した値から差し引いた。
(ii)トランスウェル膜の可視化
トランスウェルは培地を吸引してから、PBSで穏やかにすすいだ。次にメタノールをトランスウェルに5分間添加して細胞を固定した。これを除去し、ヘマトキシリンを5分間加えた。その後、トランスウェルをPBSですすぎ、次に酸性化したアルコールを加えた。PBSでさらにすすいだ後、エオシンをトランスウェルに30秒間加えた。トランスウェルは、ヘマトキシリン染色及びエオシン染色の前及び後に、光学顕微鏡下(オリンパス)で視覚化した。
(iii)HEY−bEnd.3共培養及びアプタマー血液脳関門透過性
HEY細胞を継代培養し、生存細胞のパーセンテージを評価するために、血球計及びトリパンブルーを用いて計数した。続いて、それらをDMEM培地中で87,500細胞/mLの濃度で希釈した。インビトロBBBモデルの底部コンパートメントから培地を除去し、HEY細胞溶液800μLと交換し、ウェル当たり70,000細胞を播種した。これらを一晩インキュベートした。次に、培地をトランスウェルの上部コンパートメントから取り出し、濃度2μMのアプタマー100μLをトランスウェル膜の上部にピペットで加えた。37℃で3時間インキュベートした後、底部コンパートメントの培地を除去し、遠心分離した。次いで、細胞を100μLのPBSに再懸濁し、2μLのHoechst核染色液(10mg/mL)を添加し、10分間インキュベートした。次いで、細胞を100μLのPBSで3回洗浄した後、共焦点顕微鏡(Olympus)下で観察した。
データ分析
GraphPad Prism 3を用いてデータ及び結果を分析し、特に明記しない限り、平均及び平均の標準誤差(平均±S.E.M.)として報告した。
実施例1 抗トランスフェリン受容体アプタマーの特徴付け
(i)TfRアプタマーの生成
本明細書において生成されたトランスフェリンアプタマーは、Chen et al.(2008)PNAS 105(41):15908−13に以前記載され、そして図3A及びBに示されるように、マウストランスフェリン受容体(tfR)に対するアプタマーに由来するものであった。BBBを介したアプタマーのトランスサイトーシスの概念実証(proof−of−concept)として、この元のアプタマーデザインを使用した。本発明者らは、さらに、Chenらの元のTfRアプタマーであって、配列:5’GAATTCCGCGTGTGCACACGCTCACAGTTAGTATCGCTACGTTCTTTGGTAGTCCGTTCGGGAT 3’(配列番号15)
アプタマーを有するものをさらに切断し、TfRアプタマーを生成した(図2C及び配列番号4)。次いで、これを結合ループの配列のスクランブリングにより改変して、表2に示すように3つの代替バージョン(TfR2、TfR3及びTfR4と命名)を作製した。抗TfRアプタマーの2D構造は、結合ループ中の配列の変化に続いて変化していないことを確実にするために、VIENNAソフトウェア(Gruber AR et al.(2008)Nucleic Acids Research 36(Webサーバー発行):W70−W4)を用いて予測した。
(ii)抗トランスフェリン受容体アプタマー結合親和性の決定
アプタマーの標的受容体への結合親和性は、治療剤としてのその使用に重大な影響を及ぼす分子の重要な特徴である。より高い親和性は、細胞へのより大きな取り込みを可能にするが、腫瘍全体にわたる薬物の最適な治療分布を防止し、オフターゲット効果の危険にさらす可能性もある。さらに、一部のアプタマーは、それらが意図された機能を実行するための一時的な結合のみを必要とする。これは、本明細書で設計されている抗TfRアプタマーの場合である。これらはBBBを介してトランスサイトーシスするように設計されており、単に内皮細胞にインターナリゼーションするのではなく、より低い結合親和性が必要である。
アプタマーTfR1、TfR2、TfR3及びTfR4の結合親和性を、フローサイトメトリーを介して、TfR陽性細胞株としてbEnd.3マウス大脳内皮細胞、及びネガティブコントロールとしてヒトTfRを発現するが、マウスTfRは発現しない、MOLT4急性リンパ芽球性白血病細胞(Sutherland R et al.(1981)PNAS 78(7):4515−9)を用いて、半定量的に決定した。3つの独立した結合アッセイを各細胞株に対する各アプタマーについて実施した。
結合アッセイの結果は、アプタマー結合ループでなされた変化が、結合アフィニティーに様々な影響を及ぼしたが、任意のアプタマーが完全に特異性を失う程度のものではないを示している。驚くべきことに、結合親和性が最も低いアプタマーは、最も密接な結合を示すアプタマーであるTfR3(図3C;KD=365.6±83.28nM)とは対照的に、元のトランケーションであるTfR1(図3A;KD=5764±7117nM)であった。
アプタマーの結合親和性は、ネガティブコントロールとしてのヒト細胞株(MOLT4)に対しても測定した。MOLT4はTfRを発現するが、ヒトTfRとマウスTfRとの間のアミノ酸配列相同性はわずか77%であるため(Altschul SF et al.(1990)Journal of Molecular Biology)、特異的な結合は期待されなかった。アプタマーはMOLT4細胞への非特異的結合を示し、bEnd.3細胞に対して観察された結合が実際に特異的であるという確信を確立した。
(iii)細胞への抗トランスフェリン受容体アプタマーインターナリゼーションの定量分析
これらのアプタマーの細胞内への取り込みは、治療薬としての使用の可能性を決定する重要な因子である。本明細書で生成される抗トランスフェリン受容体アプタマーは、活性トランスサイトーシス経路を介してBBBを通過するように設計される。従って、アプタマーが単に細胞表面に結合するのではなく、細胞内にインターナリゼーションされることを確実にすることが重要である。これは、共焦点顕微鏡を用いて、1時間のインキュベーションの間にbEnd.3及びMOLT4細胞に200nMの濃度でアプタマーのインターナリゼーションを視覚化することによって行った。
4つの抗TfRアプタマー全てをTfR陽性のマウス大脳内皮細胞に取り込んだ。TfR陰性細胞は、明確なアプタマー取り込みを示さず、インターナリゼーションプロセスの特異性に対する信頼を確立した。さらに、インターナリゼーションされたアプタマーは点状の染色パターンを有し、エンドソーム局在の可能性を強調し、これは細胞取り込み活性があることを示す。
(iv)抗トランスフェリン受容体アプタマー取り込みの特異性の決定
アプタマーは、診断及び治療の分野における比較的新しい分子ツールである。従って、タンパク質ベースの結合分子(表1参照)よりも多くの利点があるにもかかわらず、抗体は特異的な表面抗原を介して細胞を標的化するためのよりよく受け入れられたアプローチである。対応する抗体を用いたアプタマーの性能を、bEnd.3細胞における取り込みを調べることによって比較した。これは、最も高い親和性アプタマー、TfR3、及び抗TfR抗体をbEnd.3細胞と共にインキュベートし、共焦点顕微鏡でそれらを観察することによって行った。
bEnd.3細胞中に、TfR3アプタマーと抗TfR抗体との共局在が顕微鏡で観察された。アプタマー及び抗体にて非常に類似した分布パターンが細胞全体にて観察され、両方の分子が同じ経路を介して細胞に入ったことを示している。
(V)細胞への抗トランスフェリン受容体アプタマーインターナリゼーションの定性的時間経過分析
本明細書において生成される抗TfRアプタマーは、血液脳関門(BBB)を通過することができる薬物送達剤として使用されることが意図される。インビボ又は臨床の場面では、これらは、反対側で脳実質へと出る前に、血流からBBB内皮単層へと通過する必要がある。これを考えると、これらは能動輸送過程を経て細胞に入ることができるだけでなく、再び細胞外に排出され得ることが重要である。従って、アプタマーが細胞内に保持されているのか、又は細胞外液に戻っているのかを確認するために、時間経過インターナリゼーション実験を行った。トランスフェリン受容体に対する最良の結合剤であるTfR3を、6つの異なる時点(0.5、1、2、4、6、8時間)にわたってbEnd.3細胞とともにインキュベートした。次いで細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
前の結果と一致して、両方の実験セットは均一な分布及び斑点状の外観を示すという、同様のパターンのインターナリゼーションが各時点にわたって観察された。図3は、この分配パターンがインキュベーションの8時間を通して維持され、アプタマーが細胞から除去されなかったことを示している。
実施例2 EpCAMアプタマーの特徴付け
SYL3C(全長又はFL)48merアプタマーは、もともとSong et al.(2013)Analytical Chemistry 85:4141−4149によって生成されたものである。RNAfoldを用いて2D構造を予測した。表2及び図4に示すように、それぞれ、Ep7、Ep8及びEp9と名付けられたこのアプタマーのトランケート型バージョン(truncated versions)を生成した。伸長Ep7及びスクランブル伸長Ep7アプタマーの配列を表2に示す。延長Ep7はEp7と同じ結合ループを有し、スクランブル伸長Ep7は、結合ループにおいてランダムに選択された塩基対を有する。2D構造は、RNAfoldを用いて予測された(Gruber AR et al.(2008)The Vienna RNA websuite.Nucleic acids Research 36:W70−W4)。
トランケート型Ep7、Ep8、Ep9、伸長(Ex)ExEp7及びスクランブル(Scr)ScrEx Ep7を含む全てのアプタマーは、5’末端にTYE665色素、3’末端に逆向きチミジンを有し、商業的に合成された(Integrated DNA Technologies)。
i)結合親和性の決定
各DNA EpCAMアプタマー(Ep7、Ep8及びEp9)の平衡解離定数(KD)は、フローサイトメトリーを用いて細胞表面上に発現された天然EpCAMタンパク質へのその結合を測定することによって決定した。HT29、HEY及びHEK293T(5×105)細胞をブロッキング緩衝液(10%FCS、1mg/mLのtRNA、1mg/mLのBSAを含むPBS)で30分間インキュベートした後、結合緩衝液(10%FCS、1mg/mLのtRNA、1mg/mLのBSAを含むPBS)で一回洗浄した後、結合緩衝液中のそれぞれの連続希釈した濃度のTYE665標識アプタマー(0〜200nM)で37℃にて30分間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、フローサイトメトリー分析の前にPBSに再懸濁した。FACS Canto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて蛍光強度を測定し、各サンプルについて10,000イベントを測定した。各濃度の平均蛍光強度を自己蛍光コントロールの平均蛍光強度から差し引き、各アプタマーのKDを蛍光強度の正規化した値から計算した。
図5Aは、全長のSongらのアプタマー(配列番号16)と比較した、EpCAM陽性細胞株、HT29及びHEYに対するEp7、Ep8及びEp9の相互作用についての平衡解離定数(KD)の決定を示す。
図5Bは、EpCAM陽性卵巣癌細胞株、HEYに対するEX Ep7及びScr Ex Ep7アプタマーの相互作用についての平衡解離定数(KD)の決定を示す。
各アプタマーについてのK
D値を中央値±SEM(n=3)として以下の表3に示す。
結果は、トランケート型アプタマーがEpCAMに対する特異性及び感受性を維持したことを示す。
図6Aは、EpCAM陰性細胞株、HEK293T及びK562に対するEp7、Ep8及びEp9の相互作用についての平衡解離定数(KD)の決定を示す。図6Bは、EpCAM陽性卵巣癌細胞株、HEYに対する、伸長Ex Ep7及びスクランブルEx Ep7の相互作用についての平衡解離定数(KD)の決定を示す。
これらの結果は、アプタマーEp7、Ep8及びEp9がEpCAM陰性細胞株に結合しなかったことを示す。
ii)インターナリゼーションアッセイ
各DNA EpCAMアプタマーがインターナリゼーションされる能力は、共焦点顕微鏡によって確立された。HT29、HEY、K652及びHEK293Tを、共焦点マイクロアレイの調製のために、24時間、8チャンバースライドで8×105細胞/ウェルで播種した。細胞をブロッキング緩衝液と共に60分間インキュベートし、続いて結合緩衝液、及び200nMのEpCAMアプタマー又はネガティブコントロールアプタマーを含有する結合緩衝液中に再懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベーションの最後の10分間、細胞にビスベンズイミダゾール(Bisbenzimide)Hoechst 33342(3mg/mL)(Sigma)を添加した。アプタマー溶液を除去し、FluoView FV10iレーザー走査共焦点顕微鏡(Olympus)を用いて可視化する前に、細胞をPBS中でそれぞれ5分間3回洗浄した。
図7は、TYE665標識アプタマー(Ep7、Ep8及びEp9)で染色した培養HT29及びHEY細胞の共焦点画像の結果を示す。スケールバー=10μm。結果は、トランケート型アプタマーがEpCAM陽性細胞によってインターナリゼーションされたことを示す。
図8は、TYE665標識アプタマー(Ex Ep7及びScr Ex Ep7)で染色した培養HEK293T、HT29及びHEY細胞の共焦点画像を示す。結果は、伸長EXEp7はインターナリゼーションされたが、スクランブルされたEx Ep7アプタマーはインターナリゼーションされなかったことを示す。
iii)ドキソルビシン負荷効率(loading efficiency)の決定
DOXを含む、アントラサイクリンクラスの薬物は、DNAにインターカレーションした後、消失する蛍光特性を有する(Valentini L et al.(1985) ll Farmaco edizione scientifica 40(6):377−90)。ドキソルビシンの自然蛍光と、DNA EpCAMアプタマーとインターカレートしたあとのその後の消失を、蛍光分光法(Fluorescent Spectroscopy)を介するドキソルビシンコンジュゲーションの程度の測定に使用した。コンジュゲーションプロセスは、異なるアプタマードキソルビシンモル比(0、0.01、0.04、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5及び0.6)を用いて検討し、蛍光プレートリーダーを用いて、遊離ドキソルビシンの標準曲線に基づいて分析した。
コンジュゲーションの前に、アプタマーを前述のように適用のために調製した。DOXは、その後、0.1Mの酢酸ナトリウム、0.05MのNaCl及び5mMのMgCl2を含む結合緩衝液中のアプタマーと組み合わせ、攪拌しながら(75r.p.m)1時間、オービタルミキサー/インキュベータ(Orbital mixer/incubator)(RATEK)で37℃にてインキュベートした。次いで、コンジュゲートをSephadex(登録商標)G−10メディウムカラム(Sigma−Aldrich)に通して、アプタマー:ドキソルビシンコンジュゲートを遊離DOXから分離した。DOXは、二本鎖DNAにインターカレートした後、消失する天然の蛍光を有するので、DOXのこの特性は、コンジュゲートアプタマーの二本鎖ステム領域中に挿入されたDOXの量を決定するために利用された。カラム分離後、150μLのアセトニトリルを添加することによりコンジュゲート産物からDOXを抽出した。次いで、この溶液を21,000gで5分間遠心分離した。80マイクロリットルの上清を除去し、蛍光強度を蛍光プレートリーダーで定量した。較正標準曲線を、既知の濃度のDOXを用いて同じ条件下で調製した。
Graph Pad Prism 3を用いてデータを分析し、特に断らない限り、データは平均値及び平均値の標準誤差(平均±SEM)として報告した。
各アプタマー対ドキソルビシンのモル比を決定し、下記の表4に示す。
全長及びトランケート型アプタマーは、ドキソルビシンをインターカレートすることができた。
実施例3 コンジュゲートアプタマーの特徴付け
(i)コンジュゲートアプタマー
EpCAMに対するアプタマーは、以前SongSong et al.(2013)Analytical Chemistry 85:4141−4149によって生成されていた。本発明者の研究室で以前に特徴付けられたこれのトランケート型(Ep7と表記される、表2)は、特徴付けのために、3つの二重特異性アプタマーを産生するために抗TfRアプタマーとコンジュゲートするために使用された。二機能性アプタマーの配列を表2に示す。TfR及びEp7のそれぞれの結合ループをスクランブルした。Bi1はTfR1及びEp7に基づき、Bi2はTfR2及びEp7に基づき、Bi3はTfR3及びEp7に基づいていた。
アプタマーとドキソルビシンとのインターカレーションを見越して、GC対の数を増加させるために、ステム領域においてわずかな変更がなされた。2つの元のアプタマーの形状がコンジュゲート中に保持されているかどうかを確認するために、VIENNAソフトウェアを用いて、二重特異性アプタマーの2D構造を再度決定した。
(ii)コンジュゲートアプタマー結合親和性の決定
文献に十分に記載されており、抗TfRアプタマーを用いたこの研究ですでに観察されているように、アプタマーの構成のわずかな変化でさえ、結合特性を変える可能性がある。コンジュゲートを生成するために元のアプタマーに成された、より実質的な変化が与えられた場合、TfR及びEpCAM発現細胞の両方に対する結合親和性が逸脱した程度を決定することが重要であった。
アプタマーBi1、Bi2及びBi3の結合親和性を、TfRとの反応性を評価するためにbEnd.3細胞を、EpCAM特異性を決定するためにHEY細胞を、ネガティブコントロールとしてのMOLT4細胞を用いて、フローサイトメトリーにより半定量的に決定した。3つの独立した結合アッセイを、3つの細胞株(bEnd.3、HEY及びMOLT4)全てに対し、これらのアプタマーについて実施した。
コンジュゲートアプタマーの結合曲線は、陽性細胞株の両方に対する特異的結合を明らかにした(図9A〜C)。実際、コンジュゲートアプタマーの結合親和性は、より強くない場合、設計された単一アプタマーの結合親和性と類似していた(表5)。bEnd.3細胞に対する親和性を考慮すると、Bi2(図9B;KD=305.5±152.6nM)は、それが基礎とした単一のアプタマーであるTfR2よりも有意にしっかりと結合していた(表5;KD=524.7±161.3nM)。さらに、他の2つのコンジュゲートアプタマーは、同一のそれぞれの結合ループを共有する2つの抗TfRアプタマーの範囲内で結合親和性を示した。EpCAM発現HEY細胞に対して、Ep7アプタマーと同じ結合ループを含むコンジュゲートアプタマーは、以前記録されたものと類似の結合親和性を有していた(KD=248.3±82.16nM)。対照的に、スクランブルされたEpCAM結合ループを有するBi1は、はるかに弱い結合親和性を有していた(図9A;KD=921.2±269.7nM)。
コンジュゲートアプタマーの結合は、MOLT4陰性細胞株に対して観察されなかった。これは、これらの細胞に対する抗TfRアプタマーの以前の結果とは対照的であり、非特異的な結合を示した(図3)。これは、0nMと100nMのアプタマー濃度の間に集団蛍光のシフトが観察されなかった点を明確にする(図9D〜F)。
(iii)細胞へコンジュゲートアプタマーインターナリゼーションの定量分析
抗TfR単一アプタマーと同様に、観察された結合が表面付着ではなく細胞インターナリゼーションに起因することを確実にすることが必要であった。これは以前と同様の方法で行われた。400nMの濃度にて、bEnd.3、HEY及びMOLT4細胞へのコンジュゲートアプタマーのインターナリゼーションを、共焦点顕微鏡を用いて2時間のインキュベーションの経過時間にわたって可視化した。
共焦点顕微鏡により観察されるように、3つのコンジュゲートアプタマーは全て、EpCAM陽性HEY細胞株にインターナリゼーションすることが観察された。対照的に、アプタマーBi2及びBi3のみが、TfR発現bEnd.3細胞に取り込まれた。また、アプタマーを取り込んだ細胞の内部には、点状の染色の分布が存在した。MOLT4ネガティブコントロールではインターナリゼーションは観察されなかった。
(iv)HEY細胞株に対するコンジュゲートアプタマーのEpCAM特異性の決定
コンジュゲートアプタマーが2つの異なる標的に結合することが観察されたことを考慮すると、結合アッセイ又は共焦点顕微鏡法のいずれかからHEY細胞株に対して得られた結果が、EpCAM結合によるものか、又はこれらの細胞株の任意のTfRの存在によりよるものであるか、不明であった。実際、TfRの発現は、ヒト組織に広範囲に分布する(Harel E et al.(2011)PLoS ONE 6(9):e24202)。従って、マウス抗TfRアプタマーは、HEY細胞と交差反応しないことを確実にすることも重要であった。これは、コンジュゲートアプタマーがHEY細胞株に対して示す特異的結合(図10)及びインターナリゼーションが、アプタマーのEpCAM結合部分に起因し得ることを確認するであろう。これは、最もしっかりと結合する抗TfRアプタマー、TfR3を用いる2つの方法によって行われた。フローサイトメトリーを介して結合曲線を作成し、細胞を共焦点顕微鏡で可視化した。
HEY細胞株に対するTfR3の結合アッセイの結果は、明確に非特異的結合を示した(図10)。この知見と一致して、アプタマーのインターナリゼーションは、これらの同じ細胞では検出されなかった。これらの2つの証拠は、コンジュゲートアプタマーのEpCAM結合特性における信頼性を提供する。
実施例4 インビトロ血液脳関門モデル
(i)インビトロBBBモデルの特徴付け
TfRの標的化のためのアプタマーを設計する目的は、それがBBB内皮単層を通過することを可能にすることであった。BBBを横切る物質の透過性を評価するための認識された方法は、このシステムのインビトロモデルを作製することである(Wuest DM et al.(2013)Journal of Neuroscience Methods 212(2):211−21)。このように、内皮細胞の密着した単層を成長させる目的で、無血清培地中で、bEnd.3細胞を継代し、トランスウェルインサート上に播種した。このバリアの完全性は、記載されているように(Wilhelm I et al.(2011)Acta Neurobiologiae Experimentalis 71(1):113−28)、経内皮電気抵抗(TEER)を測定することによって評価した。トランスウェルインサートをヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡で画像化した。トランスウェルの画像は、低TEER示度と一致して、細胞のパッチ状の被覆を示した。しかしながら、これにもかかわらず、膜を横切る細胞の被覆範囲は広範囲であった。
(ii)インビトロ血液脳関門モデルを通るコンジュゲートアプタマー透過性の決定
コンジュゲートアプタマーが脳転移の標的化に使用されるために必要とされる重要な特徴は、BBBを通過する能力である。インビトロ環境でこれを行う最良の方法は、これらのアプタマーがこの生理学的システムのモデルを通過できるかどうかを決定することである。従って、HEY細胞をインビトロBBBモデルの底部コンパートメントで共培養し、一晩増殖させた後、コンジュゲートアプタマー2μMを上部コンパートメントで3時間インキュベートした。その後、HEY細胞を共焦点顕微鏡により可視化した。
コンジュゲートアプタマーの2つ、Bi2及びBi3がHEY細胞にインターナリゼーションすることが観察された(示さず)。これらは、bEnd.3細胞株への特異的結合を証明した同一の2つのアプタマーである。対照的に、bEnd.3内皮単層の他方側でインキュベートした後、HEY細胞内でBi1は観察されなかった。このアプタマーは、以前はHEY細胞にインターナリゼーションすることが観察されていたが、bEnd.3細胞はインターナリゼーションしていなかったことを考慮すると、興味深い観察である。これは、Bi1アプタマーがインビトロモデルを通過しなかった可能性を提供するものであり、従って、他の2つのアプタマーがRMTを介して膜を横断したという示唆を支持する。
実施例5 インビボでの血液脳関門を通過するコンジュゲートアプタマー透過性の決定
蛍光標識したアプタマーBi1(ネガティブコントロール)、及びBi1のEpCAM結合部分に結合したアプタマーBi3のTfR結合部分の組み合わせであって、3’末端に逆向きのdTと、5’末端にフルオロフォアを有する、配列5’−GC GCG GTA C CG CGC TA ACG G AT TCC TTT T CC GT−3’(配列番号10)アプタマー6を、マウスに注射した。2nmolのアプタマー6を健常マウスの尾静脈に注射した場合、図11Aに示すように、Xenogen IVIS Lumina IIイメージングシステムを用いて、10分間で、頭部領域においてシグナルが識別できた。ネガティブのアプタマーBi1の蛍光シグナル強度は、EpCAMアプタマー6については6.82×109及び1.25×1010であった。
マウスを30分で安楽死させ、解剖した脳を画像化すると、ネガティブコントロールアプタマーBi1を注射したマウスで観察されなかったシグナルとは対照的に、脳の周辺にはっきりとしたシグナルが見られた。これらの結果は、アプタマーが血液脳関門トランスサイトーシス剤として効果的に使用できることを示している。肝臓における高レベルのTfR発現は、鉄の捕捉及び貯蔵におけるこの受容体の特定の役割を示唆している。肝臓はトランスフェリン受容体を発現することが知られている。
実施例6 脳におけるトランスフェリン/EpCAMアプタマーの取り込み
脳取り込みにおける、陰性トランスフェリン修飾カウンターパートに対する陽性トランスフェリン修飾アプタマーの利点を評価するために、4つの様々な構造(トランスフェリン+/EpCAM+、トランスフェリン+/EpCAM−、トランスフェリン−/EpCAM+、トランスフェリン−/EpCAM−)を有するアプタマーの生体内分布は、NOD/SCIDマウスへ40nmol/Kgの投与量で、これらの薬剤を単一の静脈注射の30分後及び60分後に調べた。
種々のアプタマーを以下のように設計した:
TEPP:トランスフェリン陽性、EpCAM陽性アプタマーBi3(配列番号3)
TENN:トランスフェリン陰性、EpCAM陰性アプタマーBi1(配列番号1)
TEPN:トランスフェリン陽性、EpCAM陰性アプタマー5’GC GCG GTA C CG CGC TA ACG G AT TCC TTT T CC GT3’
TENP:トランスフェリン陰性、EpCAM陽性アプタマー5’GC GCG TGC A CG CGC TA ACG G AG GTT GCG TCC GT3’
脳における蓄積に関して、トランスフェリン+/EpCAM+の量は、30分及び60分において、カンターパートのトランスフェリン−/EpCAM−(又はトランスフェリン−/EpCAM+)より、12.2倍(又は3.1倍)及び10.8倍(又は2.5倍)、それぞれ、統計的に有意に高かった(図12及び図13)。さらに、投与30分後の脳におけるトランスフェリン+/EpCAM−取り込みのレベルが、トランスフェリン−/EpCAM−の取り込みよりも有意に高かったが、グロス差異(gross difference)は、注射1時間後のこれらの2つのグループ間に大きな差は見られなかった。これらのデータは、インビボでのライブイメージングによる、注入後1時間の、トランスフェリン−/EpCAM−に対するトランスフェリン+/EpCAM+アプタマーの脳内での持続的な保持と一致しており、トランスフェリン+修飾アプタマーが少なくとも1時間、インビボに高濃度で脳内に保持され得ることを示している。まとめると、トランスフェリン+修飾アプタマーは、脳における陰性トランスフェリン修飾アプタマーと比較して、良好な蓄積及び保持プロフィールを示し、このアプタマーが脳−血液障壁を克服するための有効な様式として開発され、脳へ標的とされた薬物送達のために新たな窓を開いた。