JP6977816B1 - 評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラム - Google Patents

評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】調光シートの光学状態を表した評価指標の多様化を可能にした評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムを提供する。【解決手段】調光シート10の光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置であって、所定環境中の撮影対象13が調光シート10を介して撮影された評価画像PEを取得し、評価画像PEの画像解析を用いて調光シート10による評価画像PEのぼかし度合いを評価指標として算出する。画像解析は、評価画像PEの周波数解析であり、ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさである。【選択図】図1

Description

本発明は、調光シートが有する光学状態の評価指標を算出する評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムに関する。
透明電極間に液晶分子を備える調光シートを通した物体の視認性は、透明電極間の電圧変化に応じて変わる。非通電時に不透明を保つノーマル型の調光シートは、不透明であることを長時間にわたり求められるデジタルサイネージのスクリーンや店舗の外装などに適用される。非通電時に透明を保つリバース型の調光シートは、透明であることを非常時に求められるガラスパーティションや移動体の窓などに適用される。
調光シートにおける光学状態の安定化や再現性の向上は、調光シートの用途を多方面に広げて調光シートの普及を加速させる。JIS K 7136:2000に準拠したヘイズは、調光シートが有する光学状態の評価指標に採用される。例えば、調光シートのヘイズが95%以上の所定範囲であることを不透明の管理項目に設定し、調光シートのヘイズが12%以下の所定範囲であることを透明の管理項目に設定することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許6493598号公報
ところで、調光シートが取り付けられるガラス板やアクリル板などの透明体は、建築物や移動体などに装置されている。建築物や移動体などに装置された状態で調光シートの光学状態を評価できることは、調光シートの普及を一層に加速させ得る。しかし、積分球のような専用光学機器を配置して暗所で光量を計測するヘイズの測定は、建築物や移動体などでの光学状態の評価を寧ろ煩わしいものとしまうため、調光シートを使用する分野では、調光シートが装置された状態でも調光シートの光学状態を評価できる新たな評価指標が切望されている。
なお、調光シートの光学状態を表した新たな評価指標の要請は、調光シートの装置時に限らず、調光シートの開発時、調光シートの出荷時、調光シートの監視時などの調光シートを扱う各種の場面において共通している。
本発明は、調光シートの光学状態を表した評価指標の多様化を可能にした評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための評価指標算出装置は、調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置であって、前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出する算出部を備える。
上記課題を解決するための評価指標算出方法は、調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出方法であって、前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出することを含む。
上記課題を解決するための評価指標算出プログラムは、調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置に、前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出させる。
上記各構成によれば、調光シートを介して撮影された評価画像の調光シートによるぼかし度合いが、評価画像の画像解析を用いて算出される。評価画像の撮影は、積分球のような専用光学機器ではなく、スマートフォンやタブレット端末などの汎用的な撮影機器によって実現される。評価画像のぼかし度合いは、評価画像の周波数解析やエッジ強度解析などの各種の画像解析を用いて算出される。調光シートによるぼかし度合いは、調光シートを通さずに撮影された評価画像のぼかし度合いや、調光シートを透明にして撮影された評価画像のぼかし度合いや、これらに相当すると推定される所定値などを基準として算出できる。調光シートによるぼかし度合いは、調光シートのヘイズが大きいほど大きいという傾向を有して、調光シートのヘイズ変化に同調して変わりやすいため、評価画像のぼかし度合いを算出する上記構成であれば、調光シートの光学状態を表した評価指標の多様化が可能となる。
上記評価指標算出装置は、前記調光シートにおける光学状態が正常であるときの前記ぼかし度合いと、前記評価指標算出装置が算出した前記ぼかし度合いとを用いて、前記調光シートが正常であるか否かを判定する判定部を有してもよい。
上記評価指標算出装置によれば、新たな評価指標を用いて調光シートが正常であるか否かを判定することが可能ともなる。
上記評価指標算出装置において、前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であってもよい。
評価画像のなかの短周期での繰り返しの鮮明さは、高い周波数帯域における周波数成分の大きさとして検出される。一方で、評価画像のなかの長周期での繰り返しの鮮明さは、低い周波数帯域における周波数成分の大きさとして検出される。この点、上記評価指標算出装置であれば、評価画像の周波数解析を通じてぼかし度合いが算出されるため、調光シートの光学状態をぼかし度合いによって詳細に表すことが可能ともなる。
上記評価指標算出装置において、前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであってもよい。
上記評価指標算出装置によれば、所定周波数帯域での周波数成分の大きさがぼかし度合いとして算出されるため、例えば、短周期での繰り返しの鮮明さ、あるいは長周期での繰り返しの鮮明さに特化した評価指標を提供することが可能ともなる。
上記評価指標算出装置において、前記周波数成分の大きさは、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布の大きさであってもよい。
上記構成によれば、動径方向分布における周波数成分の大きさがぼかし度合いとして算出されるため、空間周波数成分が一次元方向に現れる場合であれ、空間周波数成分が二次元方向に現れる場合であれ、調光シートが有する光学状態に準じた大きさの周波数成分を算出できる。すなわち、空間異方性に関わる制約が撮影対象において軽減される。したがって、評価指標算出装置が適用される場面を多方面に広げること、ひいては、評価指標算出装置の汎用性を高めることが可能となる。
上記評価指標算出装置において、前記所定周波数帯域は、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布においてエネルギーが最大を示す周波数よりも高い帯域であってもよい。
上述したように、評価画像のなかの短周期での繰り返しの鮮明さは、高い周波数帯域における周波数成分の大きさとして検出される。一方、低い周波数帯域における周波数成分は、調光シートを通して物体の存否のみを示しやすく、動径方向分布においては、最大のエネルギーを示しやすい。この点、上述した評価指標算出装置であれば、エネルギーが最大を示す周波数よりも高い帯域で評価画像のぼかし度合いが算出されるから、物体の存否という粗い視認性ではなく、物体の輪郭などの細やかな視認性を調光シートが与えるか否かを評価することが可能ともなる。
上記評価指標算出装置において、前記調光シートの光学状態が正常であるときの前記周波数成分の大きさを正常範囲として記憶し、前記周波数成分の大きさが前記正常範囲内であるときに前記調光シートの光学状態が正常であると判定してもよい。
上記評価指標算出装置によれば、調光シートの光学状態が正常であることを画像解析による周波数成分の大きさから判定することが可能ともなる。
上記評価指標算出装置において、前記調光シートに駆動電圧が印加されていないときの前記評価画像のぼかし度合いを、前記調光シートに駆動電圧が印加されているときの前記評価画像のぼかし度合いによって規格化した値を算出してもよい。
上記評価指標算出装置によれば、駆動電圧が印加されているときの調光シートの状態を基準として、駆動電圧が印加されていないときの調光シートの光学状態が評価指標として算出される。そのため、調光シートを駆動するための駆動装置が正常であるか否かを含めて、調光シートの光学状態を評価することが可能ともなる。
本発明に係る評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムは、調光シートの光学状態を表した評価指標の多様化を可能にする。
評価指標算出装置の構成を調光シートと共に示すブロック図。 画像解析部の構成を機能的に示すブロック図。 評価指標を算出するための標本群の抽出例を示すパワースペクトル図。 評価指標算出方法における工程の流れを示すフローチャート。 装置例1における評価画像の撮影装置を示す装置構成図。 装置例2における評価画像の撮影装置を示す装置構成図。 (a)評価画像例1−1、(b)評価画像例2−1を示す。 (a)評価画像例1−2、(b)評価画像例2−2を示す。 (a)評価画像例1−3、(b)評価画像例2−3を示す。 (a)は評価画像例1−1のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例2−1のFFT変換画像を示す。 (a)は評価画像例1−2のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例2−2のFFT変換画像を示す。 (a)は評価画像例1−3のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例2−3のFFT変換画像を示す。 (a)は評価画像例3−1、(b)は評価画像例4−1を示す。 (a)は評価画像例3−2、(b)は評価画像例4−2を示す。 (a)は評価画像例3−3、(b)は評価画像例4−3を示す。 (a)は評価画像例3−1のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例4−1のFFT変換画像を示す。 (a)は評価画像例3−2のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例4−2のFFT変換画像を示す。 (a)は評価画像例3−3のFFT変換画像を示し、(b)は評価画像例4−3のFFT変換画像を示す。 評価画像例1−1,1−2,1−3のFFT変換画像から得た試験例1の動径方向分布を示すグラフ。 評価画像例1−1,1−2,1−3のFFT変換画像から得た試験例1の角度方向分布を示すグラフ。 評価画像例3−1,3−2,3−3のFFT変換画像から得た試験例3の動径方向分布を示すグラフ。 評価画像例3−1,3−2,3−3のFFT変換画像から得た試験例3の角度方向分布を示すグラフ。 評価画像例2−1,2−2,2−3のFFT変換画像から得た試験例2の動径方向分布を示すグラフ。 評価画像例2−1,2−2,2−3のFFT変換画像から得た試験例2の角度方向分布を示すグラフ。 評価画像例4−1,4−2,4−3のFFT変換画像から得た試験例4の動径方向分布を示すグラフ。 評価画像例4−1,4−2,4−3のFFT変換画像から得た試験例4の角度方向分布を示すグラフ。 各試験例の動径方向分布から得た標本積算値の規格値と駆動電圧との関係をヘイズと共に示すグラフ。
図1から図25を参照して、評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムを説明する。まず、評価対象となる調光シートの構成を説明し、次いで、評価指標算出装置、評価指標算出方法、および評価指標算出プログラムを説明する。
[調光シート10]
調光シート10は、光透過率を変更可能に構成されている。調光シート10が有する光透過率の変更は、調光シート10に印加される駆動電圧の変更によって行われる。調光シート10の種類は、液晶調光シートの他に、エレクトロクロミックシートを含む。液晶調光シートは、駆動電圧Vの印加による液晶分子の配向制御によって透過率が制御される。エレクトロクロミックシートは、駆動電圧Vの印加によるエレクトロクロミック材料の電荷制御によって透過率が制御される。
調光シート10は、商業施設や公共施設などの各種の建築物が備える窓、オフィス内や医療施設内などに設置されるパーティション、展示施設や文化施設に設置されるショーウインドウ、映像を投影するスクリーンの基材、車両や航空機などの移動体が備える窓などの各種の透明体11に取り付けられる。調光シート10の取り付けは、窓ガラスなどの透明体11の表面に対する貼り付けや、合わせガラスなどの2つの透明体の間への挟み込みなどである。
調光シート10の形状は、透明体11の外形に追従した平面状の他に、円筒状や楕円筒状などの二次元の曲面状、球面状や楕円体状などの三次元的な曲面状、および幾何学形状以外の不定形状などを含む。高透過率を有した状態での調光シート10の色は、無色透明、あるいは有色透明である。低透過率を有した状態での調光シート10の色は、無彩色、あるいは有彩色である。
調光シート10の型式は、ノーマル型、あるいはリバース型である。ノーマル型の調光シートは、調光シート10の通電時に、相対的に高い光透過率を有する一方で、調光シート10の非通電時に、相対的に低い光透過率を有する。リバース型の調光シートは、調光シート10の通電時に、相対的に低い光透過率を有する一方で、調光シート10の非通電時に、相対的に高い光透過率を有する。
調光シート10は、調光シート10の面方向に広がる第1透明電極、第2透明電極、および調光層を備える。調光シート10では、第1透明電極、調光層、第2透明電極の順に積層されており、調光層は、第1透明電極と第2透明電極とに挟まれている。第1透明電極と第2透明電極とは、調光制御装置30に電気的に接続されている。
第1透明電極と第2透明電極とは、可視光を透過する光透過性を有する。第1透明電極の光透過性は、調光シート10を通した物体の視覚認識を可能にする。第2透明電極の光透過性もまた、調光シート10を通した物体の視覚認識を可能にする。各透明電極を構成する材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。
液晶調光シートが備える調光層は、液晶組成物を含む。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。液晶組成物の保持型式は、高分子分散型やカプセル型などである。高分子分散型は、高分子層のなかに分散している多数の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子分散型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備える高分子ネットワーク型を含む。高分子ネットワーク型は、網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
リバース型の液晶調光シートは、調光層と第1透明電極との間、および調光層と第2透明電極との間に配向膜をさらに備える。配向膜を構成する材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウムなどの無機化合物、または、これらの混合物である。
配向膜は、例えば、垂直配向膜、あるいは水平配向膜である。垂直配向膜は、第1透明電極と接する面とは反対側の面、および、第2透明電極と接する面とは反対側の面に対して垂直になるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。水平配向膜は、第1透明電極と接する面とは反対側の面、および、第2透明電極と接する面とは反対側の面に対してほぼ平行となるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。
エレクトロクロミックシートが備える調光層は、エレクトロクロミック材料と電解質とを含む。エレクトロクロミック材料の一例は、ポリアニリン誘導体、ビオロゲン、金属フタロシアニン、フェナントロリン錯体などの有機化合物、三酸化タングステンや二酸化インジウムなどの無機化合物から選択される一種である。電解質の一例は、リチウム塩やカリウム塩などの液体電解質、あるいは、高分子固体電解質である。
[調光システム]
図1が示すように、調光システムは、調光シート10、撮影部12、評価指標算出装置の一例である指標算出装置20、および、駆動装置の一例である調光制御装置30を備える。
調光制御装置30は、指標算出装置20から駆動指令NSを受けて、あるいは、操作部の入力信号MCを受けて、評価指標Qeの算出用に調光シート10を駆動する。撮影部12は、調光シート10を介して撮影対象13を撮影して、撮影対象13の評価画像PEを生成する。撮影部12は、撮影部12が生成した評価画像PEを指標算出装置20に送信する。指標算出装置20は、評価画像PEの画像解析を用いて、調光シート10による評価画像PEのぼかし度合いを算出する。
指標算出装置20が算出するぼかし度合いは、調光シート10の評価指標Qeである。調光シート10によるぼかし度合いは、評価項目である光学状態を調光シート10が有するか否かを示す値である。評価項目である光学状態は、例えば、所定値以上のヘイズを有することや、所定値以下のクラリティを有することなどである。
例えば、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の存否が視覚で認識されない程度の高いヘイズを調光シート10が有するか否かを示す値である。反対に、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の存否が視覚で認識される程度の低いヘイズを調光シート10が有するか否かを示す値である。
例えば、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを調光シート10が有するか否かを示す値である。反対に、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識される程度の低いヘイズを調光シート10が有するか否かを示す値である。
例えば、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の種類が視覚で認識されない程度の低いクラリティを調光シート10が有するか否かを示す値である。反対に、調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10を通して物体の細部が視覚で認識される程度の高いクラリティを調光シート10が有するか否かを示す値である。
指標算出装置20は、例えば、調光シート10の製造時、施工時、あるいは、使用期間中において、指標算出装置20が算出した評価指標Qeと、調光シート10における光学状態が正常であるときの評価指標である指標閾値Qmとを比較し、調光シート10が正常であるか否かを判定する。すなわち、指標算出装置20が算出した評価指標Qeは、調光シート10の異常判定に用いられる。
指標算出装置20は、例えば、調光シート10の製造時、施工時、あるいは、使用期間中において、調光シート10における光学状態が正常であると推定される駆動電圧Vを特定する。調光制御装置30は、例えば、指標算出装置20から駆動指令NSを受けて、あるいは、利用者による入力信号MCを受けて、特定された駆動電圧Vを調光シート10に印加する。すなわち、指標算出装置20が算出する評価指標Qeは、調光シート10の駆動補正に用いられる。
指標算出装置20は、例えば、劣化判定を行う処理では、調光シート10の使用期間中において、前回算出された評価指標である前回指標Q0を記憶し、今回算出された評価指標Qeと前回指標Q0との乖離が所定範囲内であるか否かを判定する。そして、指標算出装置20は、今回算出された評価指標Qeと前回指標Q0との乖離が所定範囲内であることに基づいて、調光シート10に経年劣化が生じていないと判断する。一方で、指標算出装置20は、今回算出された評価指標Qeと前回指標Q0との乖離が所定範囲外であることに基づいて、調光シート10に経時劣化などが生じていると判定する。すなわち、指標算出装置20が算出する評価指標Qeは、調光シート10の劣化判定に用いられる。
撮影部12と指標算出装置20とは、有線通信、あるいは無線通信を通じて、撮影部12による評価画像PEの送信と、指標算出装置20による評価画像PEの受信とを可能に構成されている。指標算出装置20は、例えば、撮影部12とネットワークを介さずに通信可能に接続されたメンテナンス用機器、撮影部12とネットワークを介して通信可能に接続されたサーバー装置、あるいは、撮影部12を搭載した利用者端末に内蔵される装置などである。指標算出装置20は、例えば、撮影部12を搭載した利用者端末から評価指標Qeの算出申請を受け付けて、調光シート10を介して撮影された評価画像PEを利用者端末から受信するサーバー装置である。
指標算出装置20と調光制御装置30とは、例えば、有線通信、あるいは無線通信を通じて、指標算出装置20による駆動指令NSの送信と、調光制御装置30による駆動指令NSの受信とを可能に構成されている。指標算出装置20は、例えば、調光制御装置30とネットワークを介さずに通信可能に接続されたメンテナンス用機器、調光制御装置30とネットワークを介して通信可能に接続されたサーバー装置、あるいは、調光制御装置30の一部と共通するハードウェアを備えた電子機器である。
撮影部12は、CCD(Charged coupled devices)、あるいは、CMOS(Complementary metal oxide semiconductor)などの撮影素子を二次元に配置した二次元イメージセンサーと、撮影対象13から発せられた光をイメージセンサーの受光面に結像させる撮影光学系とを備える。撮影部12は、撮影対象13から発せられた光をイメージセンサーの受光面に結像させて、調光シート10を通した撮影対象13の静止画を画像データである評価画像PEとして記録する。撮影部12は、例えば、スマートフォンやタブレット端末に搭載されるカメラや、商業施設や公共施設などの各種施設に設置される監視カメラや、デジタルカメラなどの一般的なカメラである。
撮影部12は、評価画像PEを生成する。評価画像PEは、所定環境中の撮影対象13が調光シート10を介して撮影された画像である。撮影対象13の撮影は、撮影部12と撮影対象13とが所定環境中におかれた状態で調光シート10を通して行われる。
評価画像PEを撮影するための所定環境は、撮影部12の設定環境、撮影部12に対する照明環境、および、撮影対象13に対する照明環境である。撮影部12の設定環境は、例えば、撮影時のマニュアルフォーカス距離を所定値に設定すること、絞り値やシャッタースピードを所定値にすることである。撮影部12に対する照明環境は、例えば、撮影部12が置かれた場所で照明が点灯されているや、撮影部12が置かれた場所での日射量が所定量であると推定されることである。撮影対象13に対する照明環境は、例えば、撮影対象13が置かれた場所で照明が点灯されているや、撮影対象13が置かれた場所での日射量が所定量であると推定されることである。日射量が所定量であると推定されることは、例えば、撮影日時が所定日時であること、撮影時における天候の種類が快晴であることなどである。このように、評価画像PEの撮影は、積分球のような専用光学機器ではなく、スマートフォンやタブレット端末などの汎用的な撮影機器によって実現される。
撮影対象13は、評価指標Qeの算出に用いられる撮影の対象である。撮影対象13は、予め準備された印刷物などのテストパターン、人物画像、調光シート10を通して視認される建築物や建造物などの人工物、調光シート10を通して視認される自然風景である。
テストパターンは、例えば、コントラスト、解像度、ノイズなどの物理性能を白および黒の分離度合いによって評価することに用いられる印刷物である。テストパターンは、例えば、白および黒の細線が交互に平行に並べられたパターン、白および黒の細線が放射状に並べられたパターン、相互に異なる線幅を有した白および黒の細線が交互に平行に並べられたパターン、相互に異なる線密度を有した白および黒の細線が配置されたパターンなどである。テストパターンは、例えば、相互に異なる大きさを有した文字や英数字である。また、テストパターンは、例えば、デジタルカメラの解像度測定に用いられる文字や英数字などのテキストを含むテストチャート、ISO12233-2000に準拠した解像度チャート、バーコードリーダーの性能評価に用いられるJIS X 0527に準拠したバーコードテストチャートなどである。
[指標算出装置20]
指標算出装置20は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、指標算出装置20は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(Graphics Processing Unit:GPU、Application Specific Integrated Circuit:ASIC)などの専用のハードウェアを備えてもよい。指標算出装置20は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路としても構成される。なお、以下では、指標算出装置20が、読み取り可能な可読媒体に評価指標算出プログラムを記憶し、可読媒体が記憶する評価指標算出プログラムを読み出して実行し、各種の処理を行う例を説明する。
指標算出装置20は、制御部21、画像解析部22、記憶部23、および通信部24を備える。
記憶部23は、評価指標を算出するための評価指標算出プログラム23A、および、評価指標算出プログラムの実行に用いられる指標算出情報23Bを記憶している。指標算出情報23Bは、評価電圧V0や標本抽出条件を含む。評価電圧V0は、調光シート10に印加される駆動電圧Vであって、評価指標Qeの算出用に印加される初期値として用いられる。標本抽出条件は、評価指標Qeの算出に用いられる標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件である。標本抽出条件は、予め実施される試験の結果などに基づいて、評価に適した標本群が抽出されるように定められる。
例えば、調光シート10を通して物体の存否が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有することが光学状態の評価項目である場合、当該高いヘイズを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。反対に、調光シート10を通して物体の存否が視覚で認識される程度の低いヘイズを調光シート10が有することが評価項目である場合、当該低いヘイズを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。
例えば、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有することが光学状態の評価項目である場合、当該高いヘイズを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。反対に、調光シート10を通して物体の細部が視覚で認識される程度の低いヘイズを調光シート10が有することが評価項目である場合、当該低いヘイズを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。
例えば、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の低いクラリティを有することが評価項目である場合、当該低いクラリティを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。反対に、調光シート10を通して物体の細部が視覚で認識される程度の高いクラリティを調光シート10が有することが評価項目である場合、当該高いクラリティを有するか否かを評価することに適した標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件が、標本抽出条件として記憶される。
なお、指標算出情報23Bは、指標閾値Qm、上限電圧Vmax、ステップ電圧Vsなどのように、評価指標Qeを用いた各種の処理に要するデータを含んでもよい。指標閾値Qmは、評価項目を満たしている調光シート10を通じて得られる評価指標Qeの閾値であり、予め実施される試験などに基づいて定められる。上限電圧Vmaxは、調光制御装置30が調光シート10に印加する駆動電圧の最大値である。ステップ電圧Vsは、駆動補正において評価指標Qeを算出する機会ごとに変えられる駆動電圧Vの変更量である。
制御部21は、記憶部23から評価指標算出プログラム23Aを読み出し、評価指標算出プログラム23Aを解釈して、画像解析部22、記憶部23、および通信部24に、各種の処理を実行させる。例えば、制御部21は、通信部24に撮影部12から評価画像PEを取得させて、通信部24が取得した評価画像PEを用いて画像解析部22に画像解析を実行させる。例えば、制御部21は、画像解析部22による画像解析の結果を用いて、評価指標Qeを外部に出力する出力処理を通信部24に実行させる。例えば、制御部21は、判定部の一例であり、画像解析部22による画像解析の結果を用いて、調光シート10の異常判定や、調光シート10の駆動補正などの各種処理を実行させる。
[画像解析部22]
画像解析部22は、評価画像PEの画像解析を実行して、調光シート10による評価画像PEのぼかし度合いを評価指標Qeとして算出する。画像解析部22は、算出部の一例である。
図2が示すように、画像解析部22は、グレースケール処理22A、FFT処理部22B、および周波数解析部22Cとして機能する。グレースケール処理22Aは、評価画像PEの(i)グレースケール化を行う。FFT処理部22Bは、グレースケール化された画像データを用いて(ii)二次元の高速フーリエ変換を行う。周波数解析部22Cは、FFT処理部22Bの処理結果を用いて(iii)フーリエ変換画像の周波数解析を実行する。
なお、画像解析部22が実行する画像解析は、画像のぼかし度合いとして、評価画像PEの明確さを示す度合い、すなわち、評価画像PEの輝度などの光学濃度と、背景画像の輝度などの光学濃度の差を算出することであってもよい。あるいは、画像解析部22が実行する画像解析は、画像のぼかし度合いとして、評価画像PEの輪郭におけるエッジ強度に対応する画素値が有する画素の光学濃度を算出することであってのよい。例えば、評価画像の輪郭に対応する各画素について画素の輝度値に基づいてエッジ検出処理によって求められたエッジ強度の平均値を用いて定めることも可能である。
(i)グレースケール化は、RGB空間の画像データをYUV空間の画像データに変更する。グレースケール化は、RGB値を用いた中間値を結果として出力する中間値法や、各別の係数によって重み付けされたRGB値の平均値を結果として出力する加重平均法などを行う処理である。また、グレースケール化は、各別の係数によって重み付けされたRGB値の加重平均値にガンマ補正が施された値を結果として出力する加重平均法と補正とを組み合わせた処理でもよい。さらに、グレースケール化は、RGB値の単純平均値を結果として出力する単純平均法や、RGB値のなかの中央値を結果として出力する中央値法などを行う処理でもよい。
(ii)二次元の高速フーリエ変換は、グレースケール化後の画像データを用いて行われると共に、二次元のフーリエ変換画像における特徴ベクトルの分布を算出する。特徴ベクトルは、動径方向ベクトル、および角度方向ベクトルの少なくとも1つである。動径方向分布p(r)は、周波数成分の一例であり、二次元フーリエ変換画像の中心から距離rに存在する同心円領域上のパワースペクトルの和である。角度方向分布q(θ)は、水平軸に対する角度θの線形領域上のパワースペクトルの和である。特徴ベクトルの分布は、グレースケール化後の画像データにおいて、どのような空間周波数を有した波が強く含まれるか、またどのような方向に強い波が含まれるか、すなわち、動径方向や角度方向における画像での濃淡の周期性を示す。
(iii)周波数解析は、標本抽出条件を満たす標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出する。周波数解析は、抽出された標本群の特徴ベクトルから評価指標Qeを算出する。上述したように、標本抽出条件は、評価指標の算出に用いられる標本群を特徴ベクトルの分布のなかから抽出するための条件である。周波数解析は、例えば、標本抽出条件を満たす全ての標本の特徴ベクトルの総和を標本積算値SumVとして算出する。周波数解析は、算出した標本積算値SumVと、標本積算値SumVを規格化するための基準値と、を用いて、評価指標Qeを算出する。
[標本抽出]
次に、上記周波数解析における標本群の抽出例を以下に説明する。図3は、フーリエ変換画像のパワースペクトルにおいて抽出される標本群にドットを付して示す。
図3が示すように、例えば、特徴ベクトルの分布が動径方向の分布である場合、標本抽出条件の一例は、距離rが所定範囲内であること、すなわち、周波数が所定周波数帯域であることである。物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有することが評価項目である場合、標本抽出条件の一例は、距離rが標本閾値rx以上であることである。標本閾値rxの一例は、動径方向の分布において、下記条件1、および条件2を満たす。
(条件1)
標本閾値rx>抽出基準距離rs
(条件2)
標本閾値エネルギーp(rx)<抽出基準エネルギーp(rs)×10%
ここで、抽出基準エネルギー(rs)は、例えば、動径方向分布p(r)のなかで最も大きいエネルギーを示す最大値p(r)maxである。抽出基準距離rsは、最大値p(r)maxを与える距離rである。
グレースケール化後の画像のなかで最大値p(r)maxに相当する濃淡の波は、物体の存否を示す波である可能性が高い。一方、グレースケール化後の画像のなかで最大値p(r)maxよりも小さいエネルギーに相当する濃淡の波は、物体の輪郭などを示す波である可能性が高い。そして、上記条件1、および条件2に基づく標本群の抽出は、物体の存否を示す可能性が高い波を標本群から除外して、物体の輪郭が視覚で認識されない程度であることの評価に適した標本群を抽出し得る。
このように、上記条件1、および条件2の設定は、抽出基準エネルギー(rs)を特定の特徴ベクトルに設定することによって、当該特徴ベクトルに相当する濃淡の波以下の低い周波数の波を除外し、高い周波数の波が視覚で認識されるか否かの評価に適した標本群を抽出可能にする。すなわち、標本抽出条件の設定は、所定周波数帯域における周波数成分の大きさを算出可能にする条件である。周波数解析は、こうした標本抽出条件に基づいて抽出された全ての標本の特徴ベクトルの総和を標本積算値SumVとして算出する(図3においてドットを付した領域)。そして、周波数解析は、標本積算値SumVを基準値によって除算し、基準値によって規格化された評価指標Qeを算出する。
なお、物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有することが評価項目である場合、基準値は、調光シート10を通さずに所定環境下で撮影された評価画像PEの標本積算値SumVや、調光シート10を透明にして撮影された評価画像PEの標本積算値SumVや、これらに相当すると推定される所定値である。
反対に、物体の輪郭が視覚で認識される程度の低いヘイズを有することが評価項目である場合、基準値は、物体の輪郭が視覚で認識されない程度の調光シート10を通して所定環境下で撮影された評価画像PEの標本積算値SumVや、これに相当すると推定される所定値である。この場合においても、基準値は、指標算出装置20によって別途算出されてもよいし、指標算出装置20において予め記憶されてもよい。
また、調光シート10に駆動電圧Vが印加されているときの光学状態が評価項目である場合、基準値は、例えば、調光シート10に駆動電圧Vが印加されていないときの標本積算値SumVや、これに相当すると推定される所定値である。
反対に、調光シート10に駆動電圧Vが印加されていないときの光学状態が評価項目である場合、基準値は、例えば、調光シート10に駆動電圧Vが印加されているときの標本積算値SumVや、これに相当すると推定される所定値である。
なお、いずれの場合においても、基準値は、指標算出装置20によって別途算出されてもよいし、指標算出装置20において予め記憶されてもよい。
また、特徴ベクトルの分布が角度方向分布q(θ)である場合、角度θが所定範囲内であることが標本抽出条件である。また、特徴ベクトルの分布が角度方向分布q(θ)である場合、基準値もまた、調光シート10を通さずに所定環境下で撮影された評価画像PEの角度方向分布q(θ)から得た標本積算値である。また、特徴ベクトルの分布が角度方向分布q(θ)である場合、基準値は、調光シート10を透明にして撮影された評価画像PEの角度方向分布q(θ)から得た標本積算値や、これらに相当すると推定される所定値などである。
通信部24は、制御部21からの指令に応じて、撮影部12から評価画像PEを取得することを実行する。なお、通信部24は、例えば、制御部21からの指令に応じて、評価指標Qeの算出に要する駆動指令NSを調光制御装置30に送信すること、外部報知装置に異常判定の結果を通知させること、調光シート10の駆動補正に要する駆動指令NSを調光制御装置30に送信することなどを実行可能とする。また、通信部24は、制御部21からの指令に応じて、画像解析部22が算出した評価指標Qeを利用者端末に送信してもよい。
[調光制御装置30]
図1に戻り、調光制御装置30は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、調光制御装置30は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用のハードウェアを備えてもよい。調光制御装置30は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路としても構成される。なお、以下では、調光制御装置30が、読み取り可能な可読媒体に駆動プログラムを記憶し、可読媒体が記憶する駆動プログラムを読み出して実行し、各種の処理を行う例を説明する。
調光制御装置30は、制御部31、記憶部32、および駆動部33を備える。記憶部32は、調光シート10を駆動するための駆動プログラム、および駆動プログラムの実行に用いられる各種のデータを記憶している。制御部31は、記憶部32から駆動プログラムを読み出し、駆動プログラムを解釈して、駆動電圧Vを生成することを駆動部33に実行させる。
例えば、制御部31は、指標算出装置20から駆動指令NSを受けて、あるいは、操作部の入力信号MCを受けて、評価指標Qeを算出するための駆動電圧Vを駆動部33に生成させる。駆動部33は、生成された駆動電圧Vを調光シート10に印加する。
例えば、制御部31は、指標算出装置20から駆動補正後の駆動指令NSを受けて、駆動補正によって補正された駆動電圧Vを記憶部32に記憶させる。制御部31は、指標算出装置20から駆動指令NSを受けて、あるいは、操作部の入力信号MCを受けて、補正後の駆動電圧Vを記憶部32から読み出し、補正後の駆動電圧Vを駆動部33に生成させる。駆動部33は、生成された補正後の駆動電圧Vを調光シート10に印加する。
[指標算出方法]
次に、指標算出装置20が実行する指標算出方法を、調光システムが実行し得る正常判定、異常判定、駆動補正などの各種の処理と共に説明する。なお、以下では、リバース型の液晶調光シートを用い、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを調光シート10が有するか否かを評価項目とした例を示す。
図4が示すように、指標算出装置20は、まず、駆動電圧Vとして評価電圧V0を生成するための駆動指令NSを調光制御装置30に送信する。調光制御装置30は、駆動指令NSに応じて評価電圧V0を生成し、調光シート10を不透明にするための評価電圧V0を調光シート10に印加する。これにより、調光シート10は、評価指標Qeを算出するための光学状態に変わる(ステップS11)。
なお、指標算出装置20は、評価項目ごとに別々の評価電圧V0を記憶する構成であってもよい。例えば、評価電圧V0は、利用者が選択した評価項目に応じて、当該評価項目に対応する評価電圧V0が指標算出装置20で選択される。例えば、調光シート10を通して物体の存否が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有すること、および、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有することが評価項目である場合、利用者はいずれかの評価項目を選択する。指標算出装置20は、利用者によって選択された評価項目に対応する評価電圧V0を読み出して、当該評価電圧V0を駆動電圧Vにするための駆動指令NSを調光制御装置30に送信する。
次いで、撮影部12は、評価電圧V0を印加された調光シート10を介して撮影対象13の評価画像PEを撮影する。指標算出装置20は、調光シート10を介して撮影された撮影対象13の評価画像PEを撮影部12から取得する(ステップS12)。
次いで、指標算出装置20は、取得された評価画像PEの画像解析を実行して、調光シート10による評価画像PEのぼかし度合いを評価指標Qeとして算出する。指標算出装置20が実行する画像解析は、調光シート10による評価画像PEのぼかし度合いを算出することであり、上述したように、例えば、グレースケール化、二次元の高速フーリエ変換、および周波数解析の順に行われる(ステップS13)。
次いで、指標算出装置20は、算出された評価指標Qeが指標閾値Qm以上であるか否かを判定する。この際、指標閾値Qmは、適正な光学状態を有する調光シート10を通じて予め得られた評価指標Qeの下限値である。適正な光学状態を有する調光シート10は、調光シート10を通して物体の輪郭が視覚で認識されない程度の高いヘイズを有する(ステップS14)。
指標算出装置20は、評価指標Qeが指標閾値Qm以上であると判断すると(ステップS14でYES)、当該評価指標Qeを前回指標Q0として記憶する(ステップS15)。そして、指標算出装置20は、評価電圧V0での調光シート10の光学状態が正常である旨を外部報知装置に通知する(正常判定:ステップS16)。なお、指標算出装置20は、正常判定に加えて、あるいは、正常判定における評価指標Qeと指標閾値Qmとの比較に代えて、今回算出された評価指標Qeと前回指標Q0との乖離が所定範囲内であるか否かを判定する上述した劣化判定を行うことも可能である。
一方で、指標算出装置20は、評価指標Qeが指標閾値Qmに満たないと判定すると(ステップS14でNO)、今回の駆動電圧Vが上限電圧Vmaxであるか否かを判断する(ステップS17)。次いで、指標算出装置20は、今回の駆動電圧Vが上限電圧Vmaxでないと判断すると(ステップS17でNO)、評価電圧V0にステップ電圧Vsを加えた新たな駆動電圧Vが生成されるように、駆動指令NSを調光制御装置30に送信する。
調光制御装置30は、駆動指令NSに応じて新たな駆動電圧Vを生成し、生成された駆動電圧を調光シート10に印加する。これにより、調光シート10の光透過率がさらに低められる。そして、ステップS12からステップS18までの処理が繰り返されることによって、指標算出装置20は、評価指標Qeが指標閾値Qm以上となるときの駆動電圧Vを把握する(駆動補正)。なお、指標算出装置20は、駆動補正に加えて、あるいは、駆動補正に代えて、評価指標Qeが指標閾値Qmに満たないことに基づいて(ステップS14でNO)、調光シート10に劣化が認められた旨の通知を調光制御装置30に行うことも可能である。この際、指標算出装置20、あるいは調光制御装置30は、調光シート10の状態経緯を後の解析に使用するために、当該通知をログとして記憶してもよい。
なお、指標算出装置20は、評価指標Qeが指標閾値Qm以上であるときの駆動電圧Vを調光制御装置30に通知する。調光制御装置30は、評価項目を満たす駆動電圧Vとして当該通知された駆動電圧Vを記憶し、評価項目を満たすための駆動に際しては、当該記憶した駆動電圧Vを用いる。
他方で、指標算出装置20は、今回の駆動電圧Vが上限電圧Vmaxであると判断すると(ステップS17でYES)、調光シート10の光学状態が異常である旨を外部報知装置に通知する(異常判定:ステップS19)。
[試験例]
次に、調光シート10の光学状態が画像解析によって評価可能であることを示す試験例を、図5から図27を参照して説明する。なお、以下では、調光シート10として、ノーマル型として駆動される高分子ネットワーク型の液晶調光シートを用いた例を示す。
まず、評価画像PEを撮影するための装置について説明する。図5および図6は、試験例1から4の撮影に用いた装置例1と装置例2とを示す。
図5が示すように、装置例1の暗室51は、面光源として機能する底部51Bを備える。暗室51の底部51Bは、暗室51の頂部に向けて光を照射するLEDテーブルである。暗室51の底部は、暗室51の内部において撮影対象13を支持する。暗室51の頂部51Tは、撮影対象13の直上において暗室51の内部を撮影可能にスマートフォンなどの撮影部12を搭載する。暗室51の内面は、撮影部12に外光が照射されること、および撮影部12に映り込みが生じることを抑えるように、黒色を呈している。
暗室51の内部は、撮影部12と撮影対象13との間に調光シート10を載置するための載置部52を備える。載置部52は、撮影対象13が配置される空間と、それ以外の空間とを仕切る平板状の仕切板を備え、当該仕切板のなかで撮影対象13と対向する位置に、矩形孔状の貫通孔が形成されている。載置部52は、仕切板の貫通孔から撮影部12に向けて延びる矩形筒状の載置筒をさらに備え、当該載置筒上に調光シート10が載置される。撮影部12は、調光シート10、載置筒の筒内、および仕切板の貫通孔を通して、撮影対象13を撮影する。
調光シート10は、無色透明のガラス板に貼り付けられた状態で、載置部52に載置される。調光シート10は、矩形シート状を有し、短辺が100mmであり、長辺が112mmである。調光シート10を貼り付けられたガラス板は、これもまた矩形板状を有し、短辺が105mmであり、長辺が126mmである。駆動電圧Vが0Vであるとき、調光シート10が最も低い透過率を有し、駆動電圧Vが上限電圧Vmaxであるとき、調光シート10が最も高い透過率を有する。
暗室51の内部は、撮影対象13に光Lを照射する対象用LED54R,54Lを備える。対象用LED54R,54Lは、暗室51の内部において、載置部52の下面から底部51Bの全体に光Lを照射する。対象用LED54R,54Lは、互いに同一色の昼光を照射する。対象用LED54R,54Lによる撮影対象13での照度は、2690lxである。
暗室51の内部は、調光シート10に光Lを照射するシート用LED53R,53Lを備える。シート用LED53R,53Lは、暗室51の内部において、暗室51の頂部51Tから載置部52の全体に光Lを照射する。シート用LED53R,53Lは、互いに同一色の昼光を照射する。シート用LED53R,53Lによる調光シート10での照度は、532lxである。
撮影部12と撮影対象13との間の鉛直方向における距離H1は、350mmである。撮影対象13と載置部52との間の鉛直方向における距離H2は、100mmである。載置部52の鉛直方向における距離H3は、100mmである。すなわち、撮影対象13と調光シート10との間の鉛直方向における距離(=H2+H3)は、200mmであり、調光シート10と撮影部12との間の鉛直方向における距離は、150mmである。
図6が示すように、装置例2の暗室51は、装置例1の暗室51における載置部52から載置筒が割愛された校正である。装置例2の載置部52は、撮影対象13が配置される空間と、それ以外の空間とを仕切る平板状の仕切板を備える。当該仕切板のなかで撮影対象13と対向する位置に、矩形孔状の貫通孔が形成されている。載置部52では、仕切板上に調光シート10が載置される。撮影部12は、調光シート10、および仕切板の貫通孔を通して、撮影対象13を撮影する。
装置例2において、シート用LED53R,53Lによる調光シート10での照度は、1632lxである。また、対象用LED54R,54Lによる撮影対象13での照度は、2901lxである。
装置例2において、撮影部12と撮影対象13との間の鉛直方向における距離H1は、装置例1と同じく、350mmである。一方、撮影対象13と調光シート10との間の鉛直方向における距離(=H2)は、100mmであり、調光シート10と撮影部12との間の鉛直方向における距離は、200mmである。
図7(a)から図9(a)は、装置例1を用いてテストチャートを撮影し、この際、駆動電圧Vを30V,20V,0Vに変更したときの評価画像例1−1,1−2,1−3を示す。
図7(b)から図9(b)は、装置例2を用いてテストチャートを撮影し、この際、駆動電圧Vを30V,20V,0Vに変更したときの評価画像例2−1,2−2,2−3を示す。なお、評価画像例1−1,1−2,1−3、および評価画像例2−1,2−2,2−3は、いずれも以下の処理によって得られた画像である。すなわち、撮影部12が撮影した画像のなかから、調光シート10を介して撮影された部分を縦横サイズが600cps×600cpsとなるようにトリミングした後に、トリミング後の画像を縦横サイズが256cps×256cpsとなるように圧縮したものである。
図7(a)から図9(a)が示すように、評価画像例1−1,1−2,1−3は、駆動電圧Vが低められることに従って、調光シート10による不透明さが高まることを示す。図7(b)から図9(b)においても、評価画像例2−1,2−2,2−3は、駆動電圧Vが低められることに従って、調光シート10による不透明さが高まることを示す。そして、評価画像例1−1,1−2,1−3と、評価画像例2−1,2−2,2−3との比較から、調光シート10での照度が高まるほど、評価画像PEにおける白みが増すといえる。
図10から図12では、(a)が評価画像例1−1,1−2,1−3の二次元のフーリエ変換画像であるFFT変換画像LPを示し、(b)が評価画像例2−1,2−2,2−3のFFT変換画像LPを示す。
図13(a)から図15(a)は、装置例1を用いて人物画像を撮影し、この際、駆動電圧Vを30V,20V,0Vに変更したときの他の評価画像例3−1,3−2,3−3を示す。
図13(b)から図15(b)は、装置例2を用いて人物画像を撮影し、この際、駆動電圧Vを30V,20V,0Vに変更したときの他の評価画像例4−1,4−2,4−3を示す。なお、評価画像例3−1,3−2,3−3、および評価画像例4−1,4−2,4−3は、いずれも以下の処理によって得られた画像である。すなわち、撮影部12が撮影した画像のなかから、調光シート10を介して撮影された部分を縦横サイズが600cps×600cpsとなるようにトリミングした後に、トリミング後の画像を縦横サイズが256cps×256cpsとなるように圧縮したものである。
図13(a)から図15(a)が示すように、評価画像例3−1,3−2,3−3においても、駆動電圧Vが低められることに従って、調光シート10による不透明さが高まることを示す。図13(b)から図15(b)においても、評価画像例4−1,4−2,4−3は、駆動電圧Vが低められることに従って、調光シート10による不透明さが高まることを示す。そして、評価画像例3−1,3−2,3−3と、評価画像例4−1,4−2,4−3との比較から、他の評価画像PEにおいても、調光シート10での照度が高まるほど、評価画像PEにおける白みが増すといえる。
図16から図18では、(a)が評価画像例3−1,3−2,3−3のFFT変換画像LPを示し、(b)が評価画像例4−1,4−2,4−3のFFT変換画像LPを示す。
[試験例1]
図19は、動径方向分布p(r)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、評価画像例1−1,1−2,1−3のFFT変換画像から得られる試験例1の動径方向分布p(r)を示す。図19では、動径方向分布p(r)を最大値p(r)maxで規格化した値を、駆動電圧Vごとに示す。図20は、角度方向分布q(θ)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、評価画像例1−1,1−2,1−3のFFT変換画像から得られる試験例1の角度方向分布q(θ)を示す。図20でも、角度方向分布q(r)を最大値q(θ)maxで規格化した値を、駆動電圧Vごとに示す。
なお、各FFT(i)グレースケール化としてITU-R Rec BT.601の規格に準じた処理を用い、グレースケール化後の画像データを用いて、(ii)二次元の高速フーリエ変換、および(iii)周波数解析を順に行った。
図19が示すように、試験例1の周波数解析結果において、距離rが16以下である相対的に小さい範囲には、相対的に大きい動径方向分布p(r)が存在する。一方、距離rが16を越える相対的に大きい範囲には、相対的に小さい動径方向分布p(r)が存在する。
動径方向分布p(r)は、駆動電圧Vが30V、20V、0Vと低められる順に低められる。そして、動径方向分布p(r)が低められる度合いは、距離rが相対的に小さい範囲で小さく、距離rが相対的に大きい範囲で大きい。このように、距離rが相対的に小さい範囲、すなわち、実空間の空間周波数が相対的に低い範囲は、駆動電圧Vの差異によって動径方向分布p(r)が変わりにくい。一方、距離rが相対的に大きい範囲、すなわち、実空間の空間周波数が相対的に高い範囲は、駆動電圧Vの差異によって動径方向分布p(r)が大きく変わる。
実空間の空間周波数が高い範囲は、グレースケール化後の画像のなかの細かい濃淡であり、例えば、物体の表面形状や物体の輪郭などを示す。一方、実空間の空間周波数が低い範囲は、グレースケール化後の画像のなかの粗い濃淡であり、例えば、物体の存否などを示す。上述したように、実空間における空間周波数の差異は、駆動電圧Vの差異による動径方向分布p(r)の差異として現れる。例えば、物体の表面形状や輪郭などのような細かい濃淡と、物体の存否のような粗い濃淡との差異は、駆動電圧Vの差異による動径方向分布p(r)の差異として現れる。
結果として、例えば、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否か、あるいは、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させる程度の光学状態であるか否かは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。例えば、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の存否などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否か、あるいは、物体の存否などを視覚で認識させる程度の光学状態であるか否かは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。
言い換えれば、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させない程度に調光シート10を不透明させる駆動電圧V、あるいは、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させる程度に調光シート10を透明させる駆動電圧Vは、動径方向分布p(r)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。また、物体の存否などを視覚で認識させない程度に調光シート10を不透明させる駆動電圧V、あるいは、物体の存否などを視覚で認識させる程度に調光シート10を透明させる駆動電圧Vは、動径方向分布p(r)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。
図20が示すように、試験例1の周波数解析結果において、角度θが60°以上120°以下である範囲には、各駆動電圧Vにおける相対的に大きい角度方向分布q(θ)が存在する。角度θが60°以上120°以下の角度方向分布q(θ)における積算値は、駆動電圧Vが30V、20V、0Vと低められる順に低められる。このように、角度θが60°以上120°以下の範囲では、駆動電圧Vの差異によって角度方向分布q(θ)が大きく変わる。
結果として、所定の不透明さを有した光学状態であるか否かは、角度方向分布q(θ)における積算値の差異として現れるといえる。また、調光シート10を所定の不透明さを有した光学状態とする駆動電圧Vは、角度方向分布q(θ)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。
[試験例3]
図21は、動径方向分布p(r)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例3−1,3−2,3−3のFFT変換画像から得られる試験例3の動径方向分布p(r)を示す。図22は、角度方向分布q(θ)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例3−1,3−2,3−3のFFT変換画像から得られる試験例3の角度方向分布q(θ)を示す。
図21が示すように、試験例3においても、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。また、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の存否などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。
図22が示すように、試験例3においても、所定の不透明さを有した光学状態であるか否かは、角度方向分布q(θ)における積算値の差異として現れるといえる。また、調光シート10を所定の不透明さを有した光学状態とする駆動電圧Vは、角度方向分布q(θ)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。
[試験例2]
図23は、動径方向分布p(r)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例2−1,2−2,2−3のFFT変換画像から得られる試験例2の動径方向分布p(r)を示す。図24は、角度方向分布q(θ)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例2−1,2−2,2−3のFFT変換画像から得られる試験例2の角度方向分布q(θ)を示す。
図23が示すように、試験例2においても、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。また、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の存否などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。
図24が示すように、試験例2においても、所定の不透明さを有した光学状態であるか否かは、角度方向分布q(θ)における積算値の差異として現れるといえる。また、調光シート10を所定の不透明さを有した光学状態とする駆動電圧Vは、角度方向分布q(θ)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。
[試験例4]
図25は、動径方向分布p(r)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例4−1,4−2,4−3のFFT変換画像から得られる試験例4の動径方向分布p(r)を示す。図26は、角度方向分布q(θ)における駆動電圧Vの依存性を示すグラフであって、試験例1と同じく、評価画像例4−1,4−2,4−3のFFT変換画像から得られる試験例4の角度方向分布q(θ)を示す。
図25が示すように、試験例4においても、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の表面形状や輪郭などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。また、所定の駆動電圧Vを印加された調光シート10が、物体の存否などを視覚で認識させない程度の光学状態であるか否かなどは、動径方向分布p(r)の差異として現れるといえる。
図26が示すように、試験例4においても、所定の不透明さを有した光学状態であるか否かは、角度方向分布q(θ)における積算値の差異として現れるといえる。また、調光シート10を所定の不透明さを有した光学状態とする駆動電圧Vは、角度方向分布q(θ)の総和が所定値であることに基づいて特定できるといえる。
[ヘイズと評価指標Qe]
図27は、試験例1から試験例4の動径方向分布p(r)から得られる評価指標Qeの駆動電圧Vに対する依存性と、調光シート10が有するヘイズの駆動電圧Vに対する依存性とを示す。なお、図27では、各駆動電圧Vにおいて算出された標本積算値SumVを基準値によって除算し、これにより、基準値によって規格化された評価指標Qeを示す。この際、駆動電圧Vが30Vであるときの標本積算値SumV、すなわち、調光シート10が最も高い光透過率を有しているときの標本積算値SumVを基準値として用いた。また、図27では、調光シート10が有するヘイズは、100%を1として規格化された値を示す。
図27が示すように、駆動電圧Vが0V以上10V以下の範囲において、調光シート10のヘイズは、100%に近いほぼ一定値を示す。また、駆動電圧Vが0V以上10V以下の範囲において、試験例1から試験例4までの各評価指標Qeも、0.2以下のほぼ一定値を示す。
駆動電圧Vが15V以上20V以下の範囲において、調光シート10のヘイズは、65%から30%に向けて急激に低下する。また、駆動電圧Vが15V以上20V以下の範囲において、試験例1から試験例4までの各評価指標Qeは、0.2から0.8に向けて急激に上昇する。
駆動電圧Vが25V以上30V以下の範囲において、調光シート10のヘイズは、20%から10%に向けて緩やかに低下する。また、駆動電圧Vが25V以上30V以下の範囲において、試験例1から試験例4までの各評価指標Qeは、0.8から1.0に向けて緩やかに上昇する。
このように、駆動電圧Vが0V以上30V以下の全ての範囲において、調光シート10におけるヘイズの変化に追従して、評価指標Qeは変化する。また、調光シート10におけるヘイズの維持に追従して、評価指標Qeは維持される。これにより、評価画像PEの画像解析を用いて得られる評価指標Qeは、調光シート10の光学状態を表しているといえる。
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)調光シート10を介して撮影された評価画像PEの調光シート10によるぼかし度合いが、評価画像PEの画像解析を用いて算出される。評価画像PEの撮影は、積分球のような専用光学機器ではなく、スマートフォンやタブレット端末などの汎用的な撮影機器によって実現されるから、調光シート10の光学状態を評価することに際して、その汎用性を高めることが可能となる。
(2)調光シート10によるぼかし度合いは、調光シート10のヘイズが大きいほど大きいという傾向を有して、調光シート10のヘイズ変化に同調して変わりやすい。そのため、評価画像PEのぼかし度合いを算出する上記構成であれば、調光シート10の光学状態を表した評価指標の多様化が可能となる。
(3)調光シート10における光学状態が正常であるときの評価指標Qeである指標閾値Qmと、指標算出装置20が算出した評価指標Qeとを用いて、調光シート10が正常であるか否かが判定される。したがって、新たな評価指標Qeを用いて調光シート10が正常であるか否かを判定することが可能ともなる。
(4)評価画像PEのなかの物体の表面形状や輪郭などの短周期での繰り返しの鮮明さは、高い周波数帯域における周波数成分の大きさとして検出される。一方、評価画像PEのなかの物体の存否などの長周期での繰り返しの鮮明さは、低い周波数帯域における周波数成分の大きさとして検出される。この点、評価画像PEの周波数解析を通じて評価指標Qeが算出される構成であれば、調光シート10の光学状態を評価指標Qeによって詳細に表すことが可能ともなる。
(5)評価指標Qeを算出するための標本群を標本抽出条件に基づいて抽出し、標本抽出条件として、上記条件1、および条件2を満たすことを設定する。すなわち、標本閾値rxが抽出基準距離rsよりも大きい所定周波数帯域を、評価指標Qeを算出するための標本群として抽出する。これにより、例えば、短周期での繰り返しの鮮明さに特化した評価指標Qeを提供することが可能ともなる。
なお、標本閾値rxが抽出基準距離rs以下となる所定周波数帯域を、評価指標Qeを算出するための標本群に含める構成であれば、例えば、長周期での繰り返しの鮮明さを加味した評価指標Qeを提供することが可能ともなる。
(6)動径方向分布p(r)における標本積算値SumVから評価指標Qeが算出されるため、空間周波数成分が一次元方向に現れる場合であれ、空間周波数成分が二次元方向に現れる場合であれ、調光シート10が有する光学状態に準じた大きさの評価指標Qeを算出できる。すなわち、空間異方性に関わる制約が撮影対象13において軽減される。したがって、指標算出装置20が適用される場面を多方面に広げること、ひいては、指標算出装置20の汎用性を高めることが可能となる。
(7)相対的に短い距離rの動径方向分布p(r)は、調光シート10を通して物体の存否のみを示しやすく、最大のエネルギーを示しやすい。この点、上記条件1、および条件2が示すように、最大値p(r)maxよりも高い帯域を標本群として、評価指標Qeが算出されるから、物体の存否という粗い視認性ではなく、物体の輪郭などの細やかな視認性を調光シート10が与えるか否かを評価することが可能ともなる。
(8)駆動電圧Vが0Vであるときの標本積算値SumVを、駆動電圧Vが30Vであるときの標本積算値SumVによって規格化して、その規格値を評価指標Qeとして算出する。そのため、駆動電圧Vが印加されているときの調光シート10の光学状態を基準として、駆動電圧Vが印加されていないときの調光シート10の光学状態を評価することができる。そのため、調光制御装置30が正常であるか否かを含めて、調光シート10の光学状態を評価することが可能ともなる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・評価指標Qeは、標本積算値SumVが基準値によって規格化された値に限らず、例えば、標本積算値SumVそのものであってもよい。なお、調光シート10が透明であるときの評価指標Qeを算出し、当該評価指標Qeを基準値として他の評価指標Qeを規格化する構成であれば、撮影時における照明の差異や撮影対象13の差異による誤差を評価指標Qeにおいて軽減することができる。そして、調光シート10によるぼかし度合いを高い精度で算出することが可能である。
・指標算出装置20は、通信部24が割愛された構成であって、画像解析部22が算出した評価指標Qeを表示や音声によって出力する出力部を備えてもよい。この際、ステップS14からステップS18までの正常判定、異常判定、および駆動補正などの評価指標Qeを用いる処理は、評価指標Qeが操作部などから入力されるように構成された調光制御装置30などの他の装置で行われてもよい。
p(r)…動径方向分布
PE…評価画像
Qe…評価指標
10…調光シート
12…撮影部
13…撮影対象
20…指標算出装置
22…画像解析部
23A…評価指標算出プログラム
30…調光制御装置

Claims (9)

  1. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置であって、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出する算出部を備え
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記周波数成分の大きさは、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布の大きさである
    評価指標算出装置。
  2. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置であって、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出する算出部を備え
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記所定周波数帯域は、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布においてエネルギーが最大を示す周波数よりも高い帯域である
    評価指標算出装置。
  3. 学状態が正常である調光シートの評価指標と、前記評価指標算出装置が算出した検査対象となる調光シートの前記評価指標とを用いて、前記検査対象となる調光シートが正常であるか否かを判定する判定部を有する
    請求項1または2に記載の評価指標算出装置。
  4. 前記調光シートの光学状態が正常であるときの周波数成分の大きさを正常範囲として記憶し、前記周波数成分の大きさが前記正常範囲内であるときに前記調光シートの光学状態が正常であると判定する
    請求項1または2に記載の評価指標算出装置。
  5. 前記調光シートに駆動電圧が印加されていないときの前記評価画像のぼかし度合いを、前記調光シートに駆動電圧が印加されているときの前記評価画像のぼかし度合いによって規格化した値を算出する
    請求項1からのいずれか一項に記載の評価指標算出装置。
  6. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出方法であって、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出することを含み、
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記周波数成分の大きさは、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布の大きさである
    評価指標算出方法。
  7. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出方法であって、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出することを含み、
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記所定周波数帯域は、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布においてエネルギーが最大を示す周波数よりも高い帯域である
    評価指標算出方法。
  8. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置に、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出させ
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記周波数成分の大きさは、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布の大きさである
    評価指標算出プログラム。
  9. 調光シートの光学状態を表した評価指標を算出する評価指標算出装置に、
    前記調光シートを介して撮影された所定環境中にある被写体に関する画像を評価画像と定義し、当該評価画像の画像解析を用いて前記調光シートによる前記評価画像のぼかし度合いを前記評価指標として算出させ
    前記画像解析は、前記評価画像の周波数解析であり、
    前記ぼかし度合いは、所定周波数帯域における周波数成分の大きさであり、
    前記所定周波数帯域は、前記画像のフーリエ変換から得られる動径方向分布においてエネルギーが最大を示す周波数よりも高い帯域である
    評価指標算出プログラム。
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