以下、本開示の粉砕装置および排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
[粉砕装置の実施形態]
図1は粉砕装置の実施形態を示す一部切断概略側面図である。図2は、図1のA−A方向矢視図である。図3は、図1のB−B方向矢視図である。図4は、噴射ノズルから流動層へ吹き付ける噴流の条件を説明するための図である。
図5は、粉砕装置の流動層の平面形状に応じて流動層の表面に形成させる凹部の配置例を示すもので、図5(a)は、流動層の平面形状が正方形の場合、図5(b)は流動層の平面形状が円形の場合をそれぞれ示す概略切断平面図である。
本実施形態の粉砕装置は、図1、図2、図3に符号1で示すもので、上下方向に延びる筒状の容器2と、容器2の上端側に設けられた入口3および出口4と、容器2内の下部寄り位置に設けられた分散板5と、流動層7を形成するために分散板5の上側に充填された流動媒体6と、分散板5の下側に設けられた風箱8と、風箱8に空気ライン9を介して接続された流動用空気10の送風機11と、容器2内における流動層7の形成位置よりも上方となる位置に、流動層7に向く姿勢で設けられた噴射ノズル12と、噴射ノズル12に噴流形成用の空気13を供給する空気供給部14と、を備えた構成とされている。
容器2は、本実施形態では、平面形状が矩形の角筒状の構造とされている。
容器2は、上端側における矩形の平面形状の長手方向の一側寄りとなる位置(図1では右端寄り位置)に、入口3を備えている。入口3は、図示しないが、たとえば、二重ダンパーなど、容器2の内側から入口3の上流側への空気の吹き抜けを防止しながら、処理対象15を容器2内へ移動させるための手段を備えた構成とされている。
入口3の上流側には、処理対象15の供給装置16が接続されている。
更に、容器2は、上端側における入口3から離れた位置、たとえば、矩形の平面形状の長手方向の他側寄りとなる位置(図1では左端寄り位置)に、出口4が設けられている。
出口4は、後述するように、処理対象15が粉砕処理された粉砕物15aが、容器2内から空気搬送により排出される出口4となる。そのため、出口4には、粉砕物15aの空気搬送用の搬送ライン17の上流側となる一端側が接続され、この搬送ライン17の下流側となる他端側が、粉砕物15aの需要部18に接続されている。この粉砕物15aの需要部18は、粉砕物15aを直接利用する装置や設備であってもよいし、粉砕物15aを一旦貯蔵してから必要量ずつ利用する装置や設備であってもよい。
容器2にて出口4を入口3から離れた位置に設けるのは、容器2内では空気が出口4に向けて流れるので、その気流の影響で、入口3から供給されて容器2の内部を落下する処理対象15が、流動層7に達する前に吹き飛ばされないようにするためである。したがって、入口3から落下供給される処理対象15が、容器2内で出口4に向かう空気の流れの影響を受け難くすることができれば、入口3と出口4の配置は、たとえば、一方または双方を容器2の側壁の上端寄り位置に配置するなど、図示した以外の配置としてもよいことは勿論である。
分散板5は、容器2の内部の下部寄り位置に、容器2の内部空間を分散板5の上側の空間と下側の空間に仕切るように取り付けられている。
分散板5は、アルミナボールや砂などの固体粒子である流動媒体6の通過は阻止する一方、空気は通過可能な多孔質板または多孔板により形成されている。なお、分散板5は、流動媒体6の重量を支持可能な強度を備えるか、あるいは、流動媒体6の重量を支持可能な図示しない梁状の支持部材によって支持された構成とされている。
容器2内における分散板5の上側には、流動媒体6が、設定された厚みの層を形成するように充填されている。
容器2の下端側における分散板5の下側は、風箱8とされている。
本実施形態では、風箱8は、入口3から供給される処理対象15が落下する位置の下方から、該落下位置から離反する側にかけて、すなわち、容器2の矩形の平面形状の長手方向の一側寄りから他側寄りにかけて、たとえば、3つに仕切られた分割区画19a,19b,19cを備えている。
各分割区画19a,19b,19cは、空気ライン9の下流側を3本に分岐させた各分岐ライン20a,20b,20cが個別に接続されている。空気ライン9の上流側は、流動用空気10の送風機11に接続されている。更に、空気ライン9の各分岐ライン20a,20b,20cには、それぞれ対応する分割区画19a,19b,19cに供給する流動用空気10の流量を個別に調整する流量調整弁21a,21b,21cが設けられている。
本実施形態の粉砕装置1は、送風機11を運転すると、送風機11より送出される流動用空気10が、空気ライン9と分岐ライン20a,20b,20cを経て風箱8の各分割区画19a,19b,19cに供給される。これにより、容器2内では、各分割区画19a,19b,19cから分散板5を通して上向きに噴出する。よって、本実施形態の粉砕装置1では、分散板5の上側の流動媒体6の層に、流動用空気10が下方から上向きに吹き込まれるようになるため、流動媒体6の流動化が生じ、容器2内における分散板5の上側の領域に流動層7が形成される。
更に、本実施形態の粉砕装置1は、流動層7内の流動媒体6に、図1に矢印Xで示すように、入口3から供給される処理対象15が落下する位置では流動媒体6が下降し、該位置から離れた位置では流動媒体6が上昇する回流が生じるようにしている。
この回流を生じさせるために、本実施形態では、分割区画19aから上向きに噴出させる流動用空気10の流量および流速を基準として、分割区画19bから上向きに噴出させる流動用空気10の流量および流速と、分割区画19cから上向きに噴出させる流動用空気10の流量および流速が順次大となるように、各分割区画19a,19b,19cへの流動用空気10の供給量が流量調整弁21a,21b,21cにより調整される。これにより、流動層7では、分割区画19aの上方に位置する流動媒体6、分割区画19bの上方に位置する流動媒体6、分割区画19cの上方に位置する流動媒体6の順に吹き込まれる流動用空気10の量が多くなり、吹き込まれる流動用空気10の量が多い領域の流動媒体6ほど見かけ上の密度が小さくなる。したがって、流動層7では、この見かけ上の密度差に基づいて、分割区画19aの上方に位置する流動媒体6は下方に移動し、分割区画19cの上方に位置する流動媒体6は上方に移動するようになる。
このように、流動層7にて矢印Xで示すような流動媒体6の回流が生じている状態では、入口3から供給される処理対象15が流動層7に落下すると、その落下位置では、流動媒体6の下向きの移動が生じているため、たとえ処理対象15の密度が流動媒体6の密度よりも小さいとしても、流動媒体6の移動に同伴させて処理対象15を流動層7の内部に取り込ませることができる。
流動層7では、流動媒体6同士の衝突や、流動媒体6の容器2の壁面に対する衝突が高頻度で生じている。このため、流動層7に取り込まれた処理対象15は、流動媒体6同士の間や、流動媒体6と容器2の壁面との間で粉砕される。
本実施形態では、容器2の平面形状は矩形とされている。このことに鑑みて、本実施形態の粉砕装置1は、容器2内における流動層7よりも上方となる位置で、且つ容器2の平面形状の長手方向に沿い設定された間隔を隔てた3個所に、噴射ノズル12を配置した構成を備えている。
各噴射ノズル12は、鉛直方向に沿い下向きの姿勢とされている。
空気供給部14は、本実施形態では、容器2の側壁に内外方向に貫通するように取り付けられて、容器2の内側の端部を噴射ノズル12に接続した空気供給管22と、空気供給管22の容器2の外側の端部側に、一端側が接続された空気供給ライン23と、空気供給ライン23の他端側が1本に集合された状態で接続された空気供給装置24とを備えた構成とされている。
空気供給装置24は、空気13を、容器2内の圧力よりも高く設定された圧力に加圧した状態で供給する機能を備えている。
これにより、本実施形態の粉砕装置1は、空気供給装置24を運転すると、加圧された空気13を、空気供給ライン23と空気供給管22を介して各噴射ノズル12に供給することができて、各噴射ノズル12からは、空気13を下向きに噴射することができる。よって、容器2内では、各噴射ノズル12から噴射された空気13による噴流が、各噴射ノズル12の真下に位置する個所の流動層7の表層に吹き付けられるようになる。この際、流動層7の表層は、流動媒体6の粒子の濃度(空間占有率)が、流動層7における他の部分よりも希薄な層となる。以下、この層は希薄層という。よって、噴射ノズル12から噴射された空気13の噴流は、流動層7における希薄層に吹き付けられることになる。
本実施形態の粉砕装置1では、噴射ノズル12から流動層7に吹き付ける空気13の噴流は、以下の条件を満たすように設定されている。
ここで、噴流および流動媒体については、以下の表のようにパラメータを設定する。
流動層7の表面での噴流の運動量をMnとすると、この噴流の運動量Mnは、次式のように、噴流の密度ρn、流動層7の表面での噴流の断面積Anと、噴流の速度Vnの二乗とに比例する値となる。
Mn∝ρn×An×Vn2
また、流動層7における流動媒体6の運動量をMsとすると、この流動層7の運動量Msは、次式のように、流動媒体6の密度ρsと、流動媒体6の粒子の投影面積Asと、流動媒体6の上昇速度Vsの二乗と、流動媒体6の断面占有率εとに比例する値となる。
Ms∝ρs×As×Vs2×ε
本実施形態の粉砕装置1は、噴流の運動量Mnが、流動層7における流動媒体6の運動量Ms以上となる条件(Mn≧Ms)を設定し、この条件が満たされるように、前記した噴流および流動媒体に関する各パラメータが設定されている。
なお、噴射ノズル12から噴射される空気13の噴流は、噴射ノズル12から噴射された時点での速度に比して、流動層7の表面に到達するまでに減速し、その減速する割合は、噴射ノズル12の形状や形式によって決まる噴流が広がる角度θの影響を受ける。
よって、噴射ノズル12から流動層7の表面までの距離Hは、前記条件を満たすよう設定された流動層7の表面での噴流の速度Vnの設定値を基に、噴射ノズル12から噴射される空気13の速度と、噴射ノズル12の形状、形式とに応じて設定するようにすればよい。
また、噴射ノズル12は、より少ない空気13の噴射量で、設定された流動層7の表面での噴流の速度Vnの設定値を得るためには、できる限り、噴流の広がる角度θが小さくなるノズル形状、形式を採用すると共に、噴射する空気13の高流速化を図るようにすればよい。
更に、噴射ノズル12の配置については、以下のように設定することが好ましい。
噴射ノズル12から噴射された空気13の噴流が流動層7に当たると、流動層7の表面には、図1、図2に示すように、噴流が直接当たる個所、および、その周囲に、凹部25が形成される。この凹部25は、図3に一点鎖線で示すように、平面形状が、空気13の噴流の中央の位置を中心とするほぼ円形となる。
流動層7の表面に凹部25が形成された個所は、流動層7の希薄層に存在している流動媒体6が、流動用空気10による流動化の運動に加えて、空気13の噴流の影響を受けた運動をしている個所である。
したがって、流動層7における凹部25が形成された個所では、流動用空気10によって吹き上げられて希薄層まで移動した流動媒体6に対し、上方から吹き付けられる空気13の噴流により、下方へ叩きつけるような運動が更に与えられる。よって、この状態では、流動層7の希薄層における凹部25が形成された個所に存在する流動媒体6は、移動速度、および、流動媒体6同士の衝突の頻度が、流動用空気10の気泡の上昇のみによって流動媒体6が移動する場合に比して増加する。したがって、流動層7は、凹部25が形成された個所では、処理対象15に対する粉砕処理の能力を、流動用空気10による流動媒体6の流動化のみを行う場合に比して向上させることができる。
よって、本実施形態の粉砕装置1は、たとえば、図3に示すように、流動層7の表面に、3つの凹部25が互いに重ならずに整列して形成されるように、凹部25の配置を設定し、各凹部25の中央の上方となる位置に、噴射ノズル12の位置を設定するようにしてある。
流動層7の表面に凹部25が互いに重ならずに整列して形成されるようにしたのは、噴射ノズル12から噴射する空気13の噴流により、流動層7の希薄層に存在する流動媒体6のうち、できるだけ多くの流動媒体6に対して、移動速度および衝突の頻度の増加という運動の変化を与えるためである。
また、流動層7の表面に形成する凹部25同士の間隔dは、凹部25の半径の1/2以下とすることが好ましい。これは、流動層7の表面における凹部25が形成される面積の割合を向上させて、流動層7の希薄層に存在する流動媒体6のうち、なるべく多くの流動媒体6に対して運動の変化を与えるためである。
なお、図3では、容器2内に、平面形状が矩形となる流動層7を備える場合の構成について、凹部25の配置例を示した。これに対し、たとえば、図5(a)に示すように、容器2内に形成される流動層7の平面形状が正方形となる場合は、凹部25は、流動層7の表面に、図示したような4個所に形成されるようにすればよい。また、図5(b)に示すように、容器2内に形成される流動層7の平面形状が円形となる場合は、凹部25は、流動層7の表面に、図示したような周方向の4個所に形成されるようにすればよい。
また、流動層7の表面における凹部25の配置、サイズ、数は、図3、図5(a)、図5(b)に示した以外の配置、サイズ、数としてもよいことは勿論である。
更に、本開示の粉砕装置1は、流動層に複数の凹部25が部分的に重複する配置で形成される構成としてもよいこと、また、凹部25の一部が、容器2の側壁に掛かる配置となっていてもよいこと、凹部25同士の間隔は、凹部25の半径の1/2以下のみに限定されないこと、は勿論である。
なお、粉砕装置1は、前記のように凹部25の配置を様々に設定する場合にも、各凹部25の中央の上方となる位置に、噴射ノズル12の位置を設定するようにすればよい。
以上の構成としてある本実施形態の粉砕装置1を使用する場合は、送風機11を運転して、空気ライン9および分岐ライン20a,20b,20cを介して、風箱8の各分割区画19a,19b,19cへ、それぞれに設定された流量で、流動用空気10の供給を行う。これにより、本実施形態の粉砕装置1は、容器2内における分散板5の上側に、流動媒体6の流動層7を形成する。更に、流動層7には、図1に矢印Xで示すような流動媒体6の回流も生じさせる。
更に、空気供給装置24を運転して、空気供給ライン23と空気供給管22を介して、噴射ノズル12へ、空気13の供給を行う。これにより、本実施形態の粉砕装置1は、噴射ノズル12から空気13の噴射を行い、噴射された空気13の噴流が、流動層7の表面に吹き付けられた状態とする。
この状態で、本実施形態の粉砕装置1は、供給装置16を運転して、処理対象15を入口3から容器2内へ供給する。
これにより、入口3から供給された処理対象15は、流動層7の表面における入口3の下方となる位置に落下すると、流動層7に回流を形成している流動媒体6の移動に同伴されて流動層7の内側に取り込まれる。
流動層7では、流動媒体6同士の衝突や、流動媒体6の容器2の壁面に対する衝突が生じているので、流動層7の内側に取り込まれた処理対象15は、流動媒体6同士の間や、流動媒体6と容器2の壁面との間で粉砕される。
更に、本実施形態の粉砕装置1は、流動層7の表層にある希薄層に、噴射ノズル12より吹き付けられる空気13の噴流によって、流動媒体6の移動速度、および、流動媒体6同士の衝突の頻度が増加した領域が形成してあるので、この領域では、処理対象15に対する粉砕処理の能力をより高めた状態で、処理対象15の粉砕処理を行うことができる。 このように、本実施形態の粉砕装置1は、従来の流動用空気のみによる流動化が行われる流動層では処理が困難であった、付着性を有する処理対象15の粒子が付着した流動媒体6や、付着性を有する処理対象15の粒子同士が付着した凝集体についても、粉砕処理を行うことができる。
したがって、本実施形態の粉砕装置1は、付着性を有する処理対象15の粒子が付着した流動媒体6の形成を抑制することができ、また、流動層7の表面で付着性を有する処理対象15の粒子同士が凝集体を形成することも抑制することができる。このため、本実施形態の粉砕装置1は、流動層7にて処理対象15の粉砕処理を行うときに、付着性を有する処理対象15の粒子が付着した流動媒体6や、付着性を有する処理対象15の粒子同士の凝集体が原因となって、流動層7に流動不良が生じることを抑制することができる。
よって、本実施形態の粉砕装置1は、たとえば、付着性を有する消石灰が表面に多く露出した集塵ダストや、消石灰自体のような付着性を有する粒子を、処理対象として粉砕処理する装置として好適なものとすることができる。
更に、本実施形態の粉砕装置1は、流動層7の表層側に処理対象15に対する粉砕処理の能力をより高めた領域を備えているので、処理対象15が粉砕処理を受けないまま流動層7内で沈降する虞を抑制することができる。
流動層7は、粉砕処理を受けないまま流動層7の底部まで沈降する処理対象15があると、次第に層高が上昇するという問題が生じるが、本実施形態の粉砕装置1は、そのような問題の発生を抑制することができる。
容器2内では、流動層7の流動化に供された後の流動用空気10、および、噴射ノズルから噴流として流動層7に吹き付けられた後の空気13が、出口4に向かって流れる気流を形成する。
このため、処理対象15は、流動層7における粉砕処理を受けて粒径がより小さい粉砕物15aになり、容器2内で出口4に向けて流れる気流によって搬送されるようになると、その粉砕物15aは、流動用空気10および空気13と共に出口4から排出される。よって、この粉砕物15aは、搬送ライン17を通して需要部18まで空気搬送される。
これに対し、未処理の処理対象15や、粉砕処理が十分に進行していない処理対象15は、流動用空気10や流動層7に吹き付けられた空気13によって、流動層7の上方へ一時的に吹き上げられたとしても、容器2内で出口4に向けて流れる気流によって搬送されないため、流動層7へ落下し、流動層7における粉砕処理を更に受けるようになる。
したがって、本実施形態の粉砕装置1は、所定の粒径まで粉砕された粉砕物15aを、分級のため特別な装置を要することなく、未処理および粉砕処理が不十分な処理対象15と、分離して回収することができる。
また、一般的な粉砕機は、回転軸などの機械的な回転部分を有することが多いため、処理対象を粉砕処理する場合は、回転部分に処理対象や処理対象の粉砕物が付着し、その付着物に含まれる成分によって腐食を発生する虞がないように、回転部分を保護する粉体シールのような特殊な構造を必要とする。これに対し、本実施形態の粉砕装置1は、処理対象15や、その粉砕物15aが接する部分には、機械的な回転部分はもとより、機械的な可動部も有しないものであるため、前記粉体シールのような特殊な構造は不要にすることができる。
[排ガス処理装置の実施形態]
図6は、排ガス処理装置の実施形態を示す一部切断概略側面図である。
なお、本実施形態の排ガス処理装置が備える粉砕装置は、前記実施形態を示した粉砕装置1と同様である。よって、図6において、図1、図2、図3に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の排ガス処理装置は、図6に符号26で示すもので、集塵機としてのバグフィルタ27と、バグフィルタ27のガス入口28に接続された入口側煙道29と、入口側煙道29に設けられた薬剤供給ノズル30および循環物供給ノズル31と、バグフィルタ27のダスト排出口32に入口3を接続した粉砕装置1と、粉砕装置1の出口4を循環物供給ノズル31に接続する循環ライン33と、を備えた構成とされている。
バグフィルタ27は、矩形断面で上下方向に延び、下部をホッパ形状とした筒状の容器34を備える。容器34は、下部寄りの側部にガス入口28を備え、上端部の側部にガス出口35を備えている。容器34の底部には、たとえば、スクリューコンベヤ形式のダスト排出装置36を備え、このダスト排出装置36の送り先側の下方に、ダスト排出口32が設けられている。
容器34内の上部でガス出口35よりも下方となる位置には、複数のろ布取付孔38を開口させたセルプレート37が気密に取り付けられている。セルプレート37の各ろ布取付孔38には、円筒形状とした細長い袋状のろ布39を下方から外周側へ被せて保持させたリテーナ(図示せず)の上端部がそれぞれ支持されている。これにより、各リテーナおよび各ろ布39は、セルプレート37の下方に吊下配置され、この状態で、各ろ布39の上端開口部が、それぞれ対応する各ろ布取付孔38を介してセルプレート37の上方の空間に連通している。更に、容器34内のセルプレート37の上方位置には、各ろ布39の逆洗に用いる逆洗装置40が備えられている。
ガス入口28に接続された入口側煙道29は、廃棄物焼却炉のような図示しない燃焼装置から排出される燃焼排ガス41をガス入口28へ導くものである。
ガス出口35には、出口側煙道42が接続され、出口側煙道42の下流側に、誘引通風機などの図示しない下流側の機器が接続されている。
これにより、バグフィルタ27は、燃焼排ガス41を入口側煙道29からガス入口28を経て容器34内に流入させると、燃焼排ガス41が、各ろ布39を外側から内側へ通過してからガス出口35へ向かう流れとなる。このため、燃焼排ガス41中に含まれている煤塵などの固体粒子(図示せず)は、各ろ布39により捕集される。したがって、燃焼排ガス41は、各ろ布39に捕集された固体粒子が除去されることで清浄化され、この清浄化された排ガス41aが、ガス出口35より出口側煙道42へ排出される。
バグフィルタ27では、各ろ布39による燃焼排ガス41中の固体粒子を捕集する処理を継続して行うと、各ろ布39の外面側には、捕集された固体粒子が堆積する。そこで、バグフィルタ27では、圧力損失が過大になることを防ぐために、定期的に、あるいは、設定された運転時間ごとに、逆洗装置40による各ろ布39の逆洗処理を行って、各ろ布39の外面に付着した堆積物を払い落とすようにしてある。
各ろ布39から自然に脱落するか、あるいは、逆洗処理により払い落とされて容器34の内底部に落下した固形物は、ダスト排出装置36によりダスト排出口32へ送られて、ダスト排出口32から集塵ダスト43として排出される。
薬剤供給ノズル30は、入口側煙道29にて、ガス入口28から設定された距離で上流側に離れた個所に設けられている。
薬剤供給ノズル30は、酸性ガス吸収用の薬剤として、たとえば、消石灰44を、入口側煙道29内に供給する機能を備えている。なお、薬剤供給ノズル30は、消石灰44を搬送気体の流れに乗せて噴射する形式のものであることが好ましい。この形式の薬剤供給ノズル30によれば、入口側煙道29内をバグフィルタ27のガス入口28に向けて流通する燃焼排ガス41中に、消石灰44を、分散性を高めた状態で供給することができる。これにより、消石灰44は、燃焼排ガス41中に含まれる酸性ガスとの接触を効率よく行わせることができる。
燃焼排ガス41中に分散された消石灰44は、燃焼排ガス41の流れによりバグフィルタ27へ搬送されると共に、バグフィルタ27では、図示しない煤塵と共に各ろ布39により捕集される。したがって、ダスト排出口32より排出される集塵ダスト43は、煤塵に加えて、消石灰44を含んだものとなっている。
なお、本実施形態では、薬剤供給ノズル30から供給する消石灰44は、燃焼排ガス41中に含まれると想定される酸性ガスに対する当量比よりも設定された割合で過剰となる量で供給するようにする。このため、集塵ダスト43に含まれる消石灰44は、酸性ガスを吸収した反応済みのものと、未反応分とを含んだものとなっている。
なお、薬剤供給ノズル30は、入口側煙道29を流通する燃焼排ガス41に対して消石灰44を分散させながら供給することができれば、搬送気体を用いて消石灰44を噴射する形式以外の任意の形式のものを採用してもよいことは勿論である。
ダスト排出口32には、分配装置45の入口46が接続されている。
分配装置45は、2つの出口47,48を備え、第1の出口47が灰処理装置49に接続され、第2の出口48が粉砕装置1の入口3に接続されている。更に、分配装置45は、入口46を通してバグフィルタ27のダスト排出口32から受け入れる集塵ダスト43を、設定された割合で第1の出口47と第2の出口48とに分配する機能を備えている。この分配装置45における集塵ダスト43の分配は、たとえば、分配装置45の内部に備えた図示しない弁やフラップなどの切替手段の動作により、第1の出口47が入口46に連通する状態と、第2の出口48が入口46に連通する状態とを、設定された時間間隔で切り替えるようにすればよい。
なお、分配装置45における集塵ダスト43の第1の出口47と第2の出口48への分配は、前記した時間による切り替え以外の手法で行ってもよいことは勿論である。図示しないが、一例としては、分配装置45は、入口46から第1の出口47に向かって移動する集塵ダスト43から、ある一定量の集塵ダスト43を分取して第2の出口48へ送る手段を備える構成としてもよい。また、別の例としては、分配装置45は、入口46から集塵ダスト43を導く通路の下流側に各出口47,48に連通する2つの分岐通路を備え、該各分岐通路の断面積が設定された比となる構成を備えていてもよい。
また、分配装置45から第2の出口48を経て粉砕装置1へ送る集塵ダスト43は、粉砕装置1で粉砕処理を行った後、循環ライン33と循環物供給ノズル31を経て入口側煙道29を流通する燃焼排ガス41に供給されるものとなる。この点に鑑みて、分配装置45で第2の出口48側、すなわち、粉砕装置1側へ分配する集塵ダスト43の量は、粉砕装置1の容量や、入口側煙道29を流通する燃焼排ガス41の流量や流速に応じて定めるようにすればよい。
分配装置45の第1の出口47から排出される集塵ダスト43は、灰処理装置49へ送られる。灰処理装置49は、重金属の固定など、一般的に行われる集塵ダスト処理と同様の処理を行う機能を備えている。
分配装置45の第2の出口48から排出される集塵ダスト43は、粉砕装置1の入口3に、処理対象として供給される。
粉砕装置1は、入口3から供給される処理対象としての集塵ダスト43を、前記実施形態における処理対象15と同様に、流動層7にて粉砕処理することができる。
ところで、バグフィルタ27では、ろ布39に付着した堆積物を逆洗により払い落としてダスト排出口32から集塵ダスト43として取り出すと、煤塵と、未反応の消石灰44と、反応済みの消石灰などの粒子同士が互いに付着して、フレーク状などの凝集体を形成していることがある。
粉砕装置1の流動層7では、集塵ダスト43に含まれる前記のような凝集体を粉砕することができるため、未反応の消石灰44を外部に露出させることができる。
更に、集塵ダスト43には、たとえば、酸性ガスと反応して外側に塩が形成されている反応済みの消石灰が含まれていることがあるが、流動層7では、このような反応済みの消石灰の粒子を粉砕して内部の未反応の部分を新たに露出させることができる。
このように、集塵ダスト43を粉砕処理して未反応の消石灰44や、反応済みの消石灰における内部の未反応の部分を露出させると、消石灰44自体が付着性を有しているために、消石灰44の粒子や、消石灰の未反応部分が露出された状態の集塵ダスト43の粒子が、流動層7の流動媒体6に付着する可能性がある。また、流動層7では、付着性を有する未反応の消石灰44の粒子や、消石灰の未反応部分が露出された状態の集塵ダスト43の粒子は、粒子同士で付着して凝集体を形成する可能性がある。
しかし、粉砕装置1は、流動層7の表面に向けて空気13の噴流を吹き付けるための噴射ノズル12を備えた構成として、付着性を有する処理対象の粒子が付着した流動媒体6や、付着性を有する処理対象の粒子同士が付着した凝集体についても、粉砕処理を行うことができるものとなっている。
したがって、粉砕装置1は、消石灰44の粒子や、消石灰の未反応部分が露出された状態の集塵ダスト43の粒子が流動媒体6に付着することを抑制することができ、また、流動層7の表面で、消石灰44の粒子や、消石灰の未反応部分が露出された状態の集塵ダスト43の粒子が、粒子同士で凝集体を形成することも抑制することができる。
このため、粉砕装置1は、流動層7にて集塵ダスト43の粉砕処理を行うときに、前記したような付着性を有する粒子が付着した流動媒体6や、付着性を有する粒子同士の凝集体が原因となって、流動層7に流動不良が生じることを抑制することができる。
よって、粉砕装置1は、集塵ダスト43の粉砕処理を行って、未反応の消石灰44を露出させる処理や、反応済みの消石灰における内部の未反応部分を露出させる処理を、より確実に行うことができる。
集塵ダスト43が流動層7で粉砕処理されて、より粒径が小さいダスト粉砕物43aになり、流動用空気10および空気13が出口4に向けて流れる気流によって搬送されるようになると、そのダスト粉砕物43aは、流動用空気10および空気13と共に出口4から排出される。
なお、粉砕装置1は、図6に示すように、風箱8に流動用空気10を供給する送風機11の空気吸入側、および、噴射ノズル12に空気13を供給する空気供給部14の空気供給装置24の空気吸入側が、出口側煙道42に排ガス吸入ライン50を介して接続された構成とすることが好ましい。この構成によれば、流動層7の流動用空気10、および、噴射ノズル12へ供給する噴流形成用の空気13としては、バグフィルタ27を通過して清浄化された後の排ガス41aを循環させて利用することができる。したがって、流動用空気10および空気13の供給源や、流動用空気10および空気13にごみなどが混入しないようにするフィルタなどは必要がなく、また、出口側煙道42の下流側へ送られる排ガス41aの量が、流動用空気10および空気13の分、増加することもない。
更に、燃焼排ガス41中に含まれていた酸性ガスのうち、消石灰44による吸収では除去しきれなかった酸性ガスが排ガス41aに残留していたとしても、流動用空気10および空気13として循環される分の排ガス41aに含まれる酸性ガスについては、粉砕装置1にて、集塵ダスト43の粉砕処理により露出される未反応の消石灰44と効率よく接触させて、吸収させることができる。よって、この流動用空気10および空気13として利用される分の排ガス41aについては、酸性ガスの更なる除去による清浄化を図ることができる。
粉砕装置1の出口4より流動用空気10および空気13と共に排出されるダスト粉砕物43aは、循環ライン33を経て循環物供給ノズル31へ送られ、循環物供給ノズル31から、入口側煙道29を流通する燃焼排ガス41中に吹き込まれる。これにより、ダスト粉砕物43aに含まれている未反応の消石灰44や、反応済みの消石灰が粉砕処理されて新たに露出された未反応部分では、燃焼排ガス41中の酸性ガスの吸収が行われる。
このように、本実施形態の排ガス処理装置26によれば、バグフィルタ27から排出される集塵ダスト43に含まれている未反応の消石灰44の一部を、燃焼排ガス41中の酸性ガスの吸収に有効利用することができる。更に、集塵ダスト43に含まれている反応済みの消石灰であっても、粉砕して未反応の部分を新たに露出できるものであれば、それを燃焼排ガス41中の酸性ガスの吸収に有効利用することができる。
また、本実施形態の排ガス処理装置26は、粉砕装置1を備えているので、集塵ダスト43を粉砕する機能と、未反応の消石灰44や消石灰の未反応部分が露出された状態で含まれるダスト粉砕物43aを、未粉砕の集塵ダスト43や粉砕処理が十分に行われていないものから分離して、入口側煙道29の循環物供給ノズル31へ送る機能とを得ることができる。
この際、未反応の消石灰44や、反応済みの消石灰から新たに露出された未反応部分が付着性を有しているとしても、粉砕装置1では、その付着性に起因して流動層7に流動不良が生じることを抑制した状態で、集塵ダスト43の粉砕処理を実施することができる。
なお、本開示の粉砕装置および排ガス処理装置は、前記実施形態にのみ限定されるものではない。
図1から図5(a)(b)に示した粉砕装置1は、流動層7内に、入口3から供給される処理対象15が落下する位置では流動媒体6が下降し、該位置から離れた位置では流動媒体6が上昇する回流が生じるようにしてあれば、風箱8にて流動用空気10の流量や流速に差を生じさせるための分割区画の数は、2つ、あるいは4つ以上であってもよい。また、粉砕装置1は、流動層7では、処理対象15が落下供給される位置に応じて、たとえば、容器2の中央部で流動媒体6が下降し、外周部で流動媒体6が上昇する回流や、容器2の中央部で流動媒体6が上昇し、外周部で流動媒体6が下降する回流など、図1に示した以外の配置の回流を生じさせるようにしてもよい。この場合は、粉砕装置1は、発生させる回流の配置に応じて、風箱8に設ける分割区画の配置を適宜変更すればよい。
また、粉砕装置1にて、風箱8から分散板5を通して流動媒体6の層に下方から吹き込む流動用空気10の流量や流速に差を生じさせる機能は、たとえば、分散板5に開口率の異なる領域を備える構成とするなど、風箱8に分割区画19a,19b,19cを備える構成以外の手段で実現してもよい。
図6に示した排ガス処理装置26は、バグフィルタ27と分配装置45と粉砕装置1の寸法や、それぞれの寸法比は図示するための便宜上のものであり、実際の寸法を反映したものではない。
また、排ガス処理装置26は、バグフィルタ27のダスト排出口32から排出される集塵ダスト43の一部を粉砕装置1の入口3へ供給することができるようにしてあれば、入口3の上流側に集塵ダスト43を一旦貯留するホッパやビンのような貯留手段を備える構成としてもよい。
図6に示した排ガス処理装置26における各機器の配置は、図示するための便宜上のものであり、実際の配置を反映したものではない。
排ガス処理装置26にて、酸性ガス吸収用の薬剤は、消石灰44を例示したが、たとえば、ナトリウムを含む薬剤など、酸性ガスの吸収に従来使用されている薬剤であれば消石灰以外の薬剤であってもよい。
排ガス処理装置26にて、集塵機は、バグフィルタ27を例示したが、燃焼排ガス41中の固体粒子を乾式で捕集し、捕集された固体粒子をダスト排出口から集塵ダスト43として取り出すことができるものであれば、バグフィルタ27以外の集塵機を採用してもよい。
排ガス処理装置26にて、粉砕装置1へ供給する流動用空気10および空気13は、排ガス41aを循環して用いることが好ましいが、排ガス41aを用いなくてもよい。この場合は、送風機11の吸入側、および、空気供給装置24の吸入側は、それぞれフィルタを備えた外気取入口としてもよいし、清浄な空気の供給部に接続するようにしてもよい。
入口側煙道29に設ける薬剤供給ノズル30と循環物供給ノズル31の配置は、上流側からの順序を図6に示した順序と逆にしてもよい。また、各ノズル30,31は、入口側煙道29に周方向に並べた配置で設けてもよい。
本開示の排ガス処理装置は、入口側煙道29に、活性炭を供給するノズルを備えて、燃焼排ガス41中に含まれるダイオキシン類などを吸着して除去する機能を備えるようにしてもよい。この構成によれば、集塵ダスト43に含まれる活性炭は、その一部を粉砕装置1で粉砕処理して新たな面を露出させた後、入口側煙道29に循環供給して、燃焼排ガス41中のダイオキシン類などの吸着に有効利用することが可能になる。
本開示の排ガス処理装置は、酸性ガスを含む可能性がある燃焼排ガス41であれば、廃棄物焼却炉以外の任意の燃焼装置から排出される燃焼排ガス41を処理対象としてもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。