実施の形態を詳細に説明する前に、実施の形態が実装されうる例示的な環境を提示することが有益である。
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。本装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータ)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め部PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えば、レジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成される第2位置決め部PWに接続されている基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されるパターンを基板Wの(例えば1つ又は複数のダイを備える)ターゲット部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を備える。投影システムは、基準フレーム(RF)に支持されている。
照明システムは、放射を方向付け、形状を整え、または制御するために、屈折光学部品、反射光学部品、磁気的光学部品、電磁気的光学部品、静電的光学部品、または他の種類の光学部品などの各種の光学部品、またはこれらの組合せを含みうる。
支持構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境に保持されるか否か等その他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを支持する。支持構造は、パターニングデバイスを保持すべく、機械的、または真空、または静電、またはその他のクランプ技術を用いることができる。支持構造は、例えばフレームまたはテーブルであってもよく、これは必要に応じて固定されまたは移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して所望の位置にあることを保証しうる。本書での「レチクル」または「マスク」との用語の使用はいずれも、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義であるとみなされうる。
本書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを付与するために使用可能ないかなるデバイスをも指すよう広く解釈されるべきである。ある実施の形態においては、パターニングデバイスは、基板のターゲット部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用可能な任意のデバイスである。例えばパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合のように、放射ビームに与えられるパターンは、基板のターゲット部分に所望されるパターンと厳密に一致していなくてもよい。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、ターゲット部分に生成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを様々な方向に反射するように個別に傾斜可能であるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
本書で使用される「投影システム」という用語は、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはそれらの任意の組み合わせを含むものであり、使用される露光放射に関して又は液浸液の使用または真空の使用等の他の要因に関して適切とされるいかなる投影システムをも包含するよう広く解釈されるべきである。本書での「投影レンズ」との用語の使用はいずれも、より一般的な用語である「投影システム」と同義であるとみなされうる。
投影システムPSは、不均一でありうる光学伝達関数を有し、これは基板W上に結像されるパターンに影響を与えうる。非偏光の放射に関してこのような影響は、2つのスカラーマップによってかなりよく記述することができる。これらは、投影システムPSを出る放射の透過(アポダイゼーション)および相対位相(収差)をその瞳面における位置の関数として記述するものである。透過マップおよび相対位相マップと呼ばれうるこれらのスカラーマップは、一式の基底関数の線形結合として表記されうる。特に便利なものは、ゼルニケ多項式であり、これは単位円に定義される直交多項式のセットを形成する。各スカラーマップの決定には、こうした展開における係数の決定が含まれうる。ゼルニケ多項式は単位円上で直交しているため、ゼルニケ係数は、測定されるスカラーマップと各ゼルニケ多項式の内積を順番に計算し、これをそのゼルニケ多項式のノルムの二乗で割ることによって決定されうる。
透過マップと相対位相マップは、フィールドおよびシステムに依存する。すなわち、一般的に、各投影システムPSは、フィールドポイントごとに(すなわち、その像面内の空間位置ごとに)異なるゼルニケ展開を持つことになる。投影システムPSについてのその瞳面における相対位相は、放射を、例えば投影システムPSの対物面(すなわち、パターニングデバイスMAの平面)内の点状のソースから投影システムPSを介して投影し、シアリング干渉計を用いて波面(すなわち、同じ位相をもつ点の軌跡)を測定することにより決定されうる。シアリング干渉計は共通経路干渉計であり、したがって、有利なことに、波面を測定するのに第2の参照ビームを必要としない。シアリング干渉計は、投影システムの像面(すなわち基板テーブルWT)における例えば二次元グリッドの回折格子と、投影システムPSの瞳面と共役な平面における干渉パターンを検出するよう配置される検出器とを備えてもよい。この干渉パターンは、瞳面におけるシアリング方向の座標についての放射の位相の導関数に関連している。検出器は、例えば電荷結合素子(CCD)などのセンサ素子のアレイを備えてもよい。
リソグラフィ装置の投影システムPSは目に見える縞を生成しないかもしれないので、波面の決定の精度を、例えば回折格子を移動するなどの位相ステッピング技術を用いて向上することができる。ステッピングは、回折格子の平面において測定の走査方向に垂直な方向に行われうる。ステッピング範囲は1つの格子周期であってもよく、少なくとも3つの(均等に分布した)位相ステップが用いられてもよい。よって、例えば、3回の走査測定がy方向に行われ、各走査測定がx方向の異なる位置に対して行われてもよい。この回折格子のステッピングは、位相変動を強度変動に効果的に変換し、位相情報を決定することを可能にする。格子は、検出器を較正するために、回折格子に垂直な方向(z方向)にステップされてもよい。
投影システムPSの瞳面における透過(アポダイゼーション)は、放射を、例えば投影システムPSの対物面(すなわち、パターニングデバイスMAの平面)内の点状のソースから投影システムPSを介して投影し、検出器を用いて投影システムPSの瞳面と共役な平面における放射の強度を測定することにより決定されうる。収差を決定するために波面を測定するのに使用したものと同じ検出器が使用されてもよい。
投影システムPSは、複数の光学(例えばレンズ)素子を備えてもよく、収差(フィールド全体の瞳面にわたる位相変動)を補正するために1つ又は複数の光学素子を調整するよう構成される調整機構AMを更に備えてもよい。これを達成するために、調整機構は、投影システムPS内の1つ又は複数の光学(例えばレンズ)素子を1つ又は複数の異なる方法で操作するよう動作可能であってもよい。投影システムは、その光軸がz方向に延びる座標系を有してもよい。調整機構は、1つ又は複数の光学素子の変位、1つ又は複数の光学素子の傾斜、及び/または、1つ又は複数の光学素子の変形からなる任意の組合せを行うよう動作可能であってもよい。光学素子の変位は、任意の方向(x、y、zまたはそれらの組合せ)であってもよい。光学素子の傾斜は、典型的には、x及び/またはy方向の軸まわりに回転させることによって光軸に垂直な平面外となるが、非回転対称の非球面光学素子に関してはz軸まわりの回転が用いられてもよい。光学素子の変形は、低周波形状(例えば非点収差)、及び/または高周波形状(例えば自由形式の非球面)を含んでもよい。光学素子の変形は、例えば1つ又は複数のアクチュエータを用いて光学素子の1つ又は複数の側面に力を及ぼすことにより、及び/または加熱素子を用いて光学素子の1つ又は複数の選択された領域を加熱することにより、実行されてもよい。一般的に、アポダイゼーション(瞳面にわたる透過変動)を補正するために投影システムPSを調整することは可能でないかもしれない。投影システムPSの透過マップは、リソグラフィ装置LAのためのパターニングデバイス(例えばマスク)MAを設計する際に用いられてもよい。計算リソグラフィ技術を用いて、少なくとも部分的にアポダイゼーションを補正するようパターニングデバイスMAが設計されてもよい。
図示されるように、本装置は、(例えば透過型マスクを用いる)透過型である。これに代えて、本装置は、(例えば、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ、または反射型マスクを用いる)反射型であってもよい。
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれより多くのテーブル(例えば、2以上の基板テーブルWTa、WTb、2以上のパターニングデバイステーブル、基板テーブルWTaおよび投影システム下方で基板無しで例えば測定及び/または洗浄を容易にするための専用のテーブルWTb、等)を有する形式のものであってもよい。このような「多重ステージ」の装置においては、追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1つ又は複数のテーブルで準備工程を実行しながら他の1つ又は複数のテーブルが露光のために使用されてもよい。例えば、アライメントセンサASを用いたアライメント測定、及び/またはレベルセンサLSを用いたレベル(高さ、傾斜など)測定が行われてもよい。
また、リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部分が例えば水などの比較的高い屈折率を有する液体で投影システムと基板との間の空間を満たすよう覆われうる形式のものであってもよい。液浸液は、例えばパターニングデバイスと投影システムとの間などリソグラフィ装置の他の空間に適用されてもよい。液浸技術は投影システムの開口数を増大させるために本分野において周知である。本書で使用される「液浸」との用語は、基板等の構造体が液体に浸されなければならないことを意味するのではなく、液体が投影システムと基板との間に露光中に配置されることを意味するにすぎない。
図1を参照すると、イルミネータILは放射ソースSOから放射ビームを受ける。ソースとリソグラフィ装置とは、例えばソースがエキシマレーザである場合には、別体であってもよい。この場合、ソースはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは、適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを例えば備えるビーム搬送系BDを介してソースSOからイルミネータILへと受け渡される。ソースが例えば水銀ランプである等の他の場合には、ソースはリソグラフィ装置と一体の部分であってもよい。ソースSOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称されてもよい。
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ-outer)」、「シグマ−インナ(σ-inner)」と呼ばれる)を調整することができる。加えてイルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等その他の各種構成要素を備えてもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために使用されてもよい。
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、パターニングデバイスによりパターン形成される。パターニングデバイスMAを横切った放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦する。第2位置決め部PWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、2次元エンコーダ、または静電容量センサ)により、例えば放射ビームBの経路に別のターゲット部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め部PMと他の位置センサ(図1には明示せず)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを、例えばマスクライブラリからの機械的な取り出し後または走査中に、正確に位置決めするために使用することができる。一般に支持構造MTの移動は、第1位置決め部PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め)及びショートストロークモジュール(微細な位置決め)により実現されうる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2位置決め部PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現されうる。ステッパの場合(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用のターゲット部分を占拠しているが、ターゲット部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブレーン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイが設けられる場合にはパターニングデバイスアライメントマークがダイ間に配置されてもよい。
図示される装置は次のモードのうち少なくとも1つのモードで使用可能でありうる。
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回でターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる(すなわち単一静的露光)。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、別のターゲット部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められうる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光でのターゲット部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離がターゲット部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述の形式のプログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
また、上述の使用モードの組合せ及び/または変形例または全く異なる使用モードが用いられてもよい。
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィックセルLC(リソセル又はクラスタとも呼ばれることがある)の一部を形成してもよく、これは露光前又は露光後プロセスを基板に行う装置も含む。従来、これらは、1つ又は複数のレジスト層を堆積させる1つ又は複数のスピンコーターSC、露光されたレジストを現像するための1つ又は複数のデベロッパDE、1つ又は複数の冷却プレートCH及び/又は1つ又は複数のベークプレートBKを含む。基板ハンドラ又はロボットROは、入出力ポートI/O1、I/O2から1つ又は複数の基板を取り、それらを異なるプロセス装置間で移動させ、及びそれらをリソグラフィ装置のローディングベイLBに届ける。これらの装置は、多くの場合トラックと総称され、トラック制御ユニットTCUの制御下にある。これはそれ自体が監視制御システムSCSによって制御され、また、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置を制御する。こうして、スループット及び処理効率を最大化するべく、さまざまな装置を動作させることができる。
リソグラフィ装置によって露光される基板が正確かつ整合的に露光されるためには、露光された基板を検査して、オーバレイ(例えば、重なり合う層の構造間、または、同じ層内であって例えばダブルパターニングプロセスによってその層に別々に設けられた構造間についてのものでありうる)、線幅、クリティカルディメンジョン(CD)、フォーカスオフセット、材料特性など1つ又は複数の特性を測定又は決定することが望ましい。したがって、リソセルLCが配置される製造施設は典型的に、リソセルで処理された基板Wの一部又は全てを受け取るメトロロジシステムMETも含む。メトロロジシステムMETは、リソセルLCの一部であってもよく、例えばリソグラフィ装置LAの一部であってもよい。
メトロロジ結果は、監視制御システムSCSに直接又は間接的に提供されてもよい。誤差が検出される場合、調整が、後続の基板の露光に対して(特に、検査がすばやく行われ、バッチの1つ又は複数の他の基板がまだこれから露光される場合)、及び/又は、露光された基板の後続の露光に対して行われてもよい。また、既に露光された基板は、歩留まりを向上するよう剥離および再加工が行われ、又は廃棄されてもよく、それにより、欠陥があると分かっている基板に対して更なる処理を行うことが回避されてもよい。基板の幾つかのターゲット部分にのみ欠陥がある場合には、良好なターゲット部分のみに更なる露光が行われてもよい。
メトロロジシステムMETにおいて、メトロロジ装置は、基板の1つ又は複数の特性、とくに、異なる基板について1つ又は複数の特性がどのように変動するか、または同じ基板の異なる層が層ごとにどのように変動するかを決定するために使用される。メトロロジ装置は、リソグラフィ装置LA又はリソセルLCに組み込まれてもよいし、又はスタンドアロン装置であってもよい。高速測定を可能にするために、メトロロジ装置が、露光直後に、露光されたレジスト層の1つ又は複数の特性を測定することが望ましい。しかし、レジストの潜像はコントラストが低く(放射に露光されたレジストの部分とそうではないレジストの部分との間にごく小さな屈折率の差異が存在するにすぎない)、あらゆるメトロロジ装置が潜像の有用な測定を行うのに十分な感度を有するわけではない。従って、測定は、露光された基板に対して行われる通例最初のステップであってレジストの露光部分と非露光部分との間のコントラストを増加させるポストベークステップ(PEB)後に行われてもよい。この段階ではレジストの像は、半潜像と呼ばれることがある。現像されたレジスト像の測定を行うことも可能であり(この時点で、レジストの露光部分又は非露光部分は、除去済みである)、又はエッチングなどのパターン転写ステップ後に行うことも可能である。後者の可能性は、欠陥のある基板の再加工の可能性を限定するが、それでも有用な情報を提供しうる。
メトロロジを可能にするために、1つ又は複数のターゲットを基板上に設けることができる。ある実施の形態では、ターゲットは、特別に設計され、周期構造を備えてもよい。ある実施の形態では、ターゲットは、デバイスパターンの一部(例えばデバイスパターンの周期構造)である。ある実施の形態では、デバイスパターンは、メモリデバイスの周期構造(例えば、バイポーラトランジスタ(BPT)、ビットラインコンタクト(BLC)などの構造)である。
ある実施の形態では、基板上のターゲットは、1つ又は複数の1次元周期構造(例えば格子)を備えてもよく、これは、現像後に周期構造フィーチャが固体レジストラインから形成されるように印刷されたものでもよい。ある実施の形態では、ターゲットは、1つ又は複数の2次元周期構造(例えば格子)を備えてもよく、これは、現像後に1つ又は複数の周期構造が固体レジストピラー又はレジストのビアから形成されるように印刷されたものでもよい。代替的に、バー、ピラー、又はビアは、基板内に(例えば、基板上の1つ又は複数の層内に)エッチングされていてもよい。
ある実施の形態では、パターニングプロセスの対象パラメータの1つは、オーバレイである。オーバレイは、0次回折(鏡面反射に対応する)が遮蔽され、より高次のものだけが処理される暗視野スキャトロメトリを用いて、測定することができる。暗視野メトロロジの例は、その全体が本書に援用される国際公開第2009/078708号及び第2009/106279号に見ることができる。更に、この技術の更なる発展が、その全体が本書に援用される米国特許出願公開第2011−0027704号、第2011−0043791号及び第2012−0242970号に記載されている。回折次数の暗視野検出を使用する回折ベースのオーバレイは、より小さなターゲットでのオーバレイ測定を可能にする。こうしたターゲットは、照明スポットよりも小さくてもよく、基板上のデバイス製品構造によって取り囲まれていてもよい。ある実施の形態では、複数のターゲットを一度の放射キャプチャで測定することができる。
図3Aには、実施の形態において例えばオーバレイを測定するための使用に適するメトロロジ装置が模式的に示される。図3Bには、ターゲットT(格子などの周期構造を備える)及び回折光線がより詳細に図示される。メトロロジ装置は、スタンドアロン装置であってもよく、または、リソグラフィ装置LAにおいて例えば測定ステーションに、またはリソグラフィックセルLCに組み込まれてもよい。装置全体を通して幾つかの分岐を有する光軸が、点線Oにより表される。この装置では、出力11(例えば、レーザ又はキセノンランプなどのソース、又はソースに接続された開口)によって放出される放射が、レンズ12、14、及び対物レンズ16を備える光学系によって、プリズム15を介して基板W上に向けられる。これらのレンズは、4F構成の二重配列で設けられる。基板の像が検出器に提供されるのであれば、別のレンズ配置が使用されてもよい。
ある実施の形態では、レンズ配置は、空間周波数フィルタリングのための中間瞳面へのアクセスを可能にする。従って、放射が基板に入射する角度範囲は、基板面の空間スペクトルを与える平面(ここでは(共役)瞳面と呼ぶ)での空間強度分布を定めることによって、選択されることができる。具体的には、これは例えば、適切な形態のアパチャープレート13をレンズ12と14との間で対物レンズ瞳面の後方投影像である平面に挿入することによって行うことができる。図示の例では、アパチャープレート13は、様々な形態(13N及び13Sと表記される)を有しており、様々な照明モードが選択されることを可能にする。本例の照明システムは、オフアクシス照明モードを形成する。第1照明モードでは、アパチャープレート13Nが、説明の便宜にすぎないが、「北」と指定される方向からオフアクシス照明を提供する。第2照明モードでは、アパチャープレート13Sが、同様の照明を「南」と表記される反対方向から提供するために使用される。他の照明モードは、異なるアパチャーを用いることによって可能である。瞳面の残りの部分は暗いことが望ましい。なぜなら、所望の照明モードの外側の不必要な放射は、所望の測定信号を妨げうるからである。
図3Bに示されるように、ターゲットTは、基板Wを対物レンズ16の光軸Oに実質的に垂直として配置される。軸Oから外れた角度からターゲットTに当たる照明光線Iは、0次光線(実線0)と2つの1次光線(一点鎖線+1及び二点鎖線−1)とを生じさせる。過充填の小ターゲットTの場合、これらの光線は、メトロロジターゲットT及び他のフィーチャを含む基板の領域に広がる多くの平行光線の1つにすぎない。プレート13のアパチャーが(有用な量の放射を受け入れるのに必要な)有限の幅をもつので、入射光線Iは実際には、ある角度範囲を占め、回折光線0及び+1/−1は若干広がる。小ターゲットの点像分布関数に従って、各次数+1及び−1は、ある角度範囲にわたり、更に広がる(図示されるような単一の理想光線ではない)。なお、周期構造のピッチ及び照明角度は、対物レンズに入る1次光線が中心光軸と厳密にアライメントされるように、設計又は調整されることができる。図3A及び図3Bに示される光線は、単に図中でそれらをより簡単に区別することができるように、ある程度オフアクシスに示される。基板W上のターゲットによって回折された少なくとも0次及び+1次は、対物レンズ16によって収集され、プリズム15を通じて戻るよう方向付けられる。
図3Aに戻り、第1及び第2の照明モードの両方が、北(N)及び南(S)と表記された正反対のアパチャーを指定することによって図示される。入射光線Iが光軸の北側からのものである場合、すなわち第1照明モードがアパチャープレート13Nを用いて適用される場合、+1回折光線(+1(N)と表記される)が対物レンズ16に入る。対照的に、第2照明モードがアパチャープレート13Sを用いて適用される場合、−1回折光線(−1(S)と表記される)が、レンズ16に入る回折光線である。よって、ある実施の形態では、−1次及び+1次の回折次数強度を別々に取得するために、例えばターゲットを回転させ、又は照明モードを変更し、又は結像モードを変更するなど特定の条件のもとでターゲットを2回測定することによって測定結果が取得される。所与のターゲットについてこれらの強度を比較することにより、ターゲットの非対称性の測定が提供され、ターゲットの非対称性は、リソグラフィプロセスのパラメータ(例えばオーバレイ)の指標として使用することができる。上記の状況では、照明モードが変更される。
ビームスプリッタ17は、回折ビームを2つの測定分岐に分割する。第1測定分岐では、光学系18が0次及び1次の回折ビームを用いて第1センサ19(例えば、CCD又はCMOSセンサ)上にターゲットの回折スペクトル(瞳面像)を形成する。各回折次数がセンサ上の異なる点に当たるので、画像処理により次数を比較及び対照することができる。センサ19によって捕捉された瞳面像は、メトロロジ装置を合焦し、及び/または強度測定を規格化するために使用することができる。瞳面像は、以下に更に記載されるように、再構築などの他の測定目的に使用することもできる。
第2測定分岐では、光学系20、22がセンサ23(例えば、CCD又はCMOSセンサ)上に基板W上のターゲットの像を形成する。第2測定分岐では、開口絞り21が、対物レンズ16の瞳面と共役な平面に設けられる。開口絞り21は、センサ23上に形成されるターゲットの像が−1又は+1次ビームから形成されるように、0次回折ビームを遮るように機能する。センサ19及び23によって測定された像に関するデータは、プロセッサ及びコントローラPU(その機能は、行われる測定の具体的な種類に依存する)に出力される。なお、「像」という用語は、広い意味で使用される。−1次及び+1次の一方しか存在しない場合には、周期構造フィーチャ(例えば、格子ライン)の像は、そのようなものとしては形成されない。
図3に示されるアパチャープレート13及び絞り21の特定の形態は、単なる例である。他の実施の形態では、ターゲットのオンアクシス照明を用いるとともにオフアクシスアパチャーをもつ開口絞りを用いることによって、実質的に一方の1次回折放射のみがセンサに送られる。更に他の実施の形態では、1次ビームの代わりに、又は1次ビームに加えて、2次、3次及びそれより高次のビーム(図3では不図示)を測定に使用することができる。
照明をこれらの異なる種類の測定に適応できるようにするためには、アパチャープレート13は、ディスクの周囲に形成される幾つかのアパチャーパターン(ディスクの回転により所望のパターンを定位置に移動させる)を備えてもよい。なお、アパチャープレート13N又は13Sは、一方向(セットアップに応じてX又はY)に配向されたターゲットの周期構造を測定するために使用される。直交周期構造の測定の場合、90°及び270°のターゲットの回転が実施されてもよい。図3C及び図3Dには、異なるアパチャープレートが示される。図3Cは、更なる二種類のオフアクシス照明モードを示す。図3Cの第1照明モードでは、アパチャープレート13Eが、説明の便宜上、前述の「北」に対して「東」と指定された方向から、オフアクシス照明を提供する。図3Cの第2照明モードでは、アパチャープレート13Wを用いて、同様の照明が「西」と表記された反対方向から提供される。図3Dは、更なる二種類のオフアクシス照明モードを示す。図3Dの第1照明モードでは、アパチャープレート13NWが、前述の「北」及び「西」と指定された方向から、オフアクシス照明を提供する。第2照明モードでは、アパチャープレート13SEを用いて、同様の照明が前述の「南」及び「東」と表記された反対方向から提供される。これら及び様々な変形例の使用並びに装置への適用は例えば、先に公表された上述の特許出願公開に記載されている。
図4は、基板上に形成された複合メトロロジターゲットTの例を示す。複合ターゲットは、共に近接して配置された4つの周期構造(この場合、格子)32、33、34、35を備える。ある実施の形態では、周期構造レイアウトは、測定スポットよりも小さくされてもよい(すなわち、周期構造レイアウトは過充填となる)。よって、ある実施の形態では、周期構造は、それら全てがメトロロジ装置の照明ビームによって形成される測定スポット31内にあるように共に近接して配置される。この場合、4つの周期構造は、全て同時に照明され、同時にセンサ19及び23上に結像される。オーバレイ測定に専用の例では、周期構造32、33、34、35は、それら自体が、上下に重なる周期構造によって形成される複合周期構造(例えば複合格子)であり、すなわち、周期構造は、基板W上に形成されるデバイスの異なる複数の層において、1つの層の少なくとも1つの周期構造が、別の層の少なくとも1つの周期構造に重なるようにパターン形成される。こうしたターゲットは、20μm×20μmの範囲内、又は16μm×16μmの範囲内の外寸を有してもよい。また、全ての周期構造が、特定の層のペア間のオーバレイを測定するために使用される。ターゲットにより複数ペアの層を測定できることを容易にするうえで、周期構造32、33、34、35は、複合周期構造の異なる部分が形成される異なる層どうしのオーバレイの測定を容易にするために、異なってバイアスされたオーバレイオフセットを有してもよい。よって、基板上のターゲットの全ての周期構造が1つのペアの層を測定するために使用され、基板上の他の同一ターゲットの周期構造の全てが他の1つのペアの層を測定するために使用され、このとき、異なるバイアスが、層のペアどうしの区別を容易にする。
図4に戻り、周期構造32、33、34、35は、図示されるように、入射する放射をX及びY方向に回折するために、それらの配向が異なっていてもよい。一例では、周期構造32及び34は、それぞれ+d及び−dのバイアスをもつX方向周期構造である。周期構造33及び35は、それぞれ+d及び−dのオフセットをもつY方向周期構造であってもよい。4つの周期構造が図示されるが、他の実施の形態は、所望の精度を得るために、より大きなマトリックスを含みうる。例えば、3×3アレイの9つの複合周期構造が、バイアス−4d、−3d、−2d、−d、0、+d、+2d、+3d、+4dを有してもよい。これらの周期構造の個別の像は、センサ23によって捕捉される像において特定されることができる。
図5は、図3の装置において図4のターゲットを用い、図3Dのアパチャープレート13NW又は13SEを用いて、センサ23上に形成されセンサ23によって検出されうる像の一例を示す。センサ19は、異なる個々の周期構造32〜35を解像することはできないが、センサ23は、それを行うことができる。暗い長方形は、センサ上の像のフィールドを表し、その内側で、基板上の照明スポット31が対応する円形領域41に結像される。これの内側で、長方形領域42〜45は、周期構造32〜35の像を表す。ターゲットは、スクライブレーン内ではなく、又はスクライブレーン内に加えて、デバイス製品フィーチャ間に配置されてもよい。周期構造がデバイス製品領域内に位置する場合、デバイスフィーチャがこの像フィールドの周辺に視認されることがある。プロセッサ及びコントローラPUは、パターン認識を用いてこれらの像を処理することによって、周期構造32〜35の個別の像42〜45を特定する。このようにして、像は、センサフレーム内のある特定の場所で非常に厳密にアライメントされる必要はなく、これは、測定装置全体としてのスループットを大きく向上させる。
周期構造の個別の像が特定されると、これらの個々の像の強度は、例えば特定された領域内で選択されたピクセル強度値を平均し又は合計することによって、測定されうる。像の強度及び/又は他の特性は、互いに比較することができる。これらの結果を組み合わせて、リソグラフィプロセスの様々なパラメータを測定することができる。オーバレイ性能は、そうしたパラメータの一例である。
ある実施の形態では、パターニングプロセスの対象となるパラメータの1つは、フィーチャ幅(例えばCD)である。図6は、フィーチャ幅の決定を可能にすることができる例示的なメトロロジ装置(例えばスキャトロメータ)を高度に模式的に示す。それは、放射を基板W上に投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。方向転換された放射は、スペクトロメータ検出器4に向かう。スペクトロメータ検出器4は、例えば左下のグラフに示されるような鏡面反射放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定するものである。このデータから、検出されたスペクトルを生じさせる構造又はプロファイルが、プロセッサPUによって、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって、又は図6の右下に示されるようなシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、再構築されてもよい。一般に、再構築のためには、構造の大体の形が既知であり、いくつかの変数がその構造を作成するプロセスについての知識から推測され、それにより、測定データから決定されるべき当該構造の変数はほんの幾つかでよい。このようなスキャトロメータは、法線入射メトロロジ装置、または斜入射メトロロジ装置として構成されうる。更に、再構築によるパラメータの測定に加えて、角度分解スキャトロメトリが、製品のフィーチャ及び/又はレジストパターンの非対称性の測定において有用である。非対称性測定のある特定の適用例は、ターゲットが周期フィーチャのあるセットが他のセットに重畳されたものをターゲットが備える場合のオーバレイの測定に関するものである。このような非対称性測定の概念は、例えば、その全体が本書に援用される米国特許出願公開第2006−066855号に記載されている。
図7は、本書に開示される発明の実施の形態での使用に適するメトロロジ装置100の一例を示す。この形式のメトロロジ装置の動作の原理は、その全体が本書に援用される米国特許出願公開第2006−033921号及び第2010−201963号により詳細に説明される。装置全体を通して幾つかの分岐を有する光軸が、点線Oによって表される。この装置では、ソース110(例えばキセノンランプ)によって放出された放射は、レンズ系120、アパチャープレート130、レンズ系140、部分反射面150及び対物レンズ160を備える光学系によって基板W上に方向付けられる。ある実施の形態では、これらのレンズ系120、140、160は、4F構成の二重配列で設けられる。ある実施の形態では、放射ソース110によって放出された放射は、レンズ系120を用いて平行化される。望まれる場合には、異なるレンズ構成を使用することができる。放射が基板に入射する角度範囲は、基板面の空間スペクトルを与える平面での空間強度分布を定めることによって、選択されることができる。具体的には、これは、適切な形態のアパチャープレート130をレンズ120と140との間で対物レンズ瞳面の後方投影像である平面に挿入することによって行うことができる。異なるアパチャーを用いることによって、異なる強度分布(例えば、環状、双極など)が可能である。径方向及び周方向の照明の角度分布、並びに、放射の波長、偏光及び/又はコヒーレンスなどの特性は全て、所望の結果を取得するために調整することができる。例えば、1つ又は複数の干渉フィルタ130(図9参照)をソース110と部分反射面150との間に設け、例えば400〜900nmの範囲内、又は更に低い200〜300nmの範囲内の対象の波長を選択してもよい。干渉フィルタは、1セットの異なるフィルタを備えるのではなく、調節可能であってもよい。干渉フィルタの代わりに、格子が使用されてもよい。ある実施の形態では、1つ又は複数の偏光子170(図9参照)をソース110と部分反射面150との間に設け、対象の偏光を選択してもよい。偏光子は、1セットの異なる偏光子を備えるのではなく、調節可能であってもよい。
図7に示されるように、ターゲットTは、基板Wを対物レンズ160の光軸Oに実質的に垂直として配置される。従って、ソース110からの放射は、部分反射面150によって反射され、対物レンズ160を介して基板W上のターゲットT上の照明スポットS(図8参照)に合焦される。ある実施の形態では、対物レンズ160は、望ましくは少なくとも0.9又は少なくとも0.95の高開口数(NA)を有する。液浸メトロロジ装置(水などの比較的高い屈折率の流体を用いる)は、1を超える開口数を有していてもよい。
軸Oから外れた角度から照明スポットに合焦された照明光線170、172は、回折光線174、176を生じさせる。これらの光線は、ターゲットTを含む基板の領域に広がる多くの平行光線の1つにすぎないことを忘れてはならない。照明スポット内の各要素は、メトロロジ装置の視野内にある。プレート130のアパチャーが、(有用な量の放射を受け入れるのに必要な)有限の幅を有するので、入射光線170、172は実際には、ある角度範囲を占め、回折光線174、176はいくらか広がる。小ターゲットの点像分布関数に従って、各回折次数は、ある角度範囲にわたり、更に広がる(図示されるような単一の理想光線ではない)。
基板W上のターゲットによって回折された少なくとも0次が、対物レンズ160によって収集され、部分反射面150を通じて戻るよう方向付けられる。光学素子180は、回折ビームの少なくとも一部を光学系182に提供し、光学系182は、0次及び/又は1次回折ビームを用いて、センサ190(例えば、CCD又はCMOSセンサ)上にターゲットTの回折スペクトル(瞳面像)を形成する。ある実施の形態では、アパチャー186は、ある特定の回折次数がセンサ190に提供されるように、所定の回折次数を除去するために設けられる。ある実施の形態では、アパチャー186は、実質的に又は主に0次放射のみがセンサ190に到達することを許容する。ある実施の形態では、センサ190は、基板ターゲットTの二次元角散乱スペクトルを測定することができるように、二次元検出器であってもよい。センサ190は、例えば、CCD又はCMOSセンサのアレイであってもよく、例えば1フレームにつき40ミリ秒の積分時間を用いてもよい。センサ190は、単一波長(又は狭い波長範囲)で方向転換された放射の強度、複数の波長での別々の強度、又はある波長範囲にわたって積分された強度を測定するために用いられてもよい。更に、センサは、TM及び/又はTE偏光の放射の強度、及び/又はTM偏光放射とTE偏光放射との間の位相差を別々に測定するために用いられてもよい。
任意選択的に、光学素子180は、センサ230(例えば、CCD又はCMOSセンサ)上に基板W上のターゲットの像を形成するために、回折ビームの少なくとも一部を測定分岐200に提供する。測定分岐200は、メトロロジ装置を合焦する(すなわち、基板Wを対物レンズ160の焦点に合わせることを可能にする)などの様々な補助機能のため、及び/又は導入部で説明した形式の暗視野結像のために使用することができる。
格子の様々なサイズ及び形状に対してカスタマイズされた視野を提供するために、調整可能な視野絞り300が、ソース110から対物レンズ160への経路上のレンズ系140内に設けられる。視野絞り300は、アパチャー302を含み、照明スポットがアパチャー302の像となるように、ターゲットTの平面と共役な平面内に位置する。像は、ある倍率に従って拡大されてもよく、または、アパチャーと照明スポットは、1:1のサイズ関係にあってもよい。照明を様々な種類の測定に適応できるようにするために、アパチャープレート300は、ディスクの周囲に形成される幾つかのアパチャーパターン(ディスクの回転により所望のパターンを定位置に移動させる)を備えてもよい。それに代えて又はそれに加えて、同じ効果を達成するために、1セットのプレート300が設けられ、交換されてもよい。それに加えて又はそれに代えて、変形可能なミラーアレイ又は透過型空間光変調器などのプログラマブルアパチャーデバイスも使用することができる。
典型的に、ターゲットは、その周期構造フィーチャがY軸と平行に又はX軸と平行に広がるようにして位置合わせされている。その回折挙動に関しては、Y軸と平行な方向に延在するフィーチャをもつ周期構造はX方向に周期性を有する一方、X軸と平行な方向に延在するフィーチャをもつ周期構造はY方向に周期性を有する。両方向で性能を測定するために、両方の形式のフィーチャが一般に設けられる。単純化のためにライン及びスペースに言及するが、周期構造はライン及びスペースから形成される必要はない。更に、各ライン及び/又はライン間のスペースは、より小さなサブ構造から形成された構造であってもよい。更に、周期構造は、例えば、周期構造がポスト及び/又はビアホールを備える場合のように、同時に二次元の周期性を有して形成されてもよい。
図8は、典型的なターゲットTの平面図を、図7の装置における照明スポットSの範囲とともに示す。周囲の構造による干渉の無い回折スペクトルを取得するために、ターゲットTは、ある実施の形態では、照明スポットSの幅(例えば直径)よりも大きい周期構造(例えば格子)である。スポットSの幅は、ターゲットの幅及び長さよりも小さくてもよい。つまり、ターゲットは、照明による「充填不足」とされ、回折信号は、ターゲット自体の外側にある製品フィーチャまたは類似物からの信号を実質的に何ら含まない。これにより、ターゲットを無限とみなすことができ、ターゲットの数学的再構築が単純化される。
図9は、メトロロジを用いて取得される測定データに基づいてターゲットパターン30’の1つ又は複数の対象となる変数の値を決定するプロセスの一例を模式的に示す。検出器190によって検出される放射は、ターゲット30’についての測定放射分布108を提供する。
所与のターゲット30’に関して、放射分布208は、数値的なマクスウェルソルバー210を例えば使用するパラメータ化された数学モデル206から計算/シミュレートすることができる。パラメータ化数学モデル206は、ターゲットを構成しターゲットに関連する様々な材料の層の例を示す。パラメータ化数学モデル206は、対象となるターゲットの部分がもつフィーチャ及び層についての1つ又は複数の変数を含みうるものであり、これは変動され導出されうる。図9に示されるように、1つ又は複数の変数は、1つ又は複数の層の厚さt、1つ又は複数のフィーチャの幅w(例えばCD)、1つ又は複数のフィーチャの高さh、1つ又は複数のフィーチャのサイドウォール角α、及び/又はフィーチャ間の相対位置(本書ではオーバレイを考慮する)を含みうる。図示されないが、1つ又は複数の変数は、1つ又は複数の層の屈折率(例えば、実又は複素屈折率、屈折率テンソルなど)、1つ又は複数の層の消散係数、1つ又は複数の層の吸収、現像中のレジスト損失、1つ又は複数のフィーチャのフッティング、及び/又は1つ又は複数のフィーチャのラインエッジラフネスを更に含んでもよく、これらに限定されない。幅、長さ、形状又は3次元プロファイル特性の値など1次元周期構造又は2次元周期構造の1つ又は複数のパラメータの1つ又は複数の値が、パターニングプロセス及び/又は他の測定プロセスについての知識から再構築プロセスに入力されてもよい。例えば、変数の初期値は、測定されているターゲットについてのCD、ピッチ等の値など1つ又は複数のパラメータの予測値であってもよい。
場合によっては、ターゲットが、一つのユニットセルの複数のインスタンスに分割されることができる。その場合のターゲットの放射分布の計算を簡単にするために、モデル206は、そのユニットセルがターゲット全体にわたりインスタンスとして繰り返される場合、ターゲットの構造のユニットセルを用いて計算/シミュレーションを行うように設計されることができる。よって、モデル206は、1つのユニットセルを用いて計算し、その結果をコピーしてターゲット全体へと適切な境界条件を用いて適合させ、ターゲットの放射分布を決定することができる。
再構築の時点で放射分布208を計算することに加えて、又はそれに代えて、再構築の時点で使用される放射分布のライブラリを作成するために、複数の放射分布208が、対象となるターゲット部分の変数に関する複数の変動について事前計算されることができる。
そして、測定放射分布108は、212において、計算された放射分布208(例えば、その時点前後に計算され又はライブラリから取得されたもの)と比較され、それら二者間の差が決定される。差がある場合には、パラメータ化数学モデル206の1つ又は複数の変数の値が変化されてもよく、測定放射分布108と放射分布208が十分に一致するまで、新たな計算放射分布208が、取得され(例えば、計算され、又はライブラリから取得され)、測定放射分布108と比較されてもよい。その時点で、パラメータ化数学モデル206の変数の値は、実際のターゲット30’のジオメトリとの良好な又は最良の一致を提供する。ある実施の形態では、測定放射分布108と計算放射分布208との間の差が許容しきい値の範囲内である場合に、十分な一致が存在することになる。
これらのメトロロジ装置では、測定動作中に基板Wを保持する基板支持部が設けられてもよい。基板支持部は、図1の基板テーブルWTと形態が類似し又は同一であってもよい。メトロロジ装置がリソグラフィ装置と一体化されている例においては、それが同一の基板テーブルであってもよい。測定光学系に関して基板を正確に位置決めする粗動及び微動の位置決め部が設けられてもよい。例えば対象となるターゲットの位置を取得して対物レンズの下方に移動させる様々なセンサ及びアクチュエータが設けられる。典型的には、多くの測定が基板W全体の様々な場所でターゲットインスタンスに行われる。基板支持部は、別のターゲットインスタンスを取得するためにX及びY方向に、及び光学系のフォーカスに対するターゲットの所望の場所を取得するためにZ方向に移動させることができる。便利であるのは、例えば実際には光学系が実質的に静止状態とされ基板のみが移動する場合であっても(典型的にX及びY方向において、ただし場合によってはZ方向においても)、対物レンズが基板に対して様々な場所に移動させられるかのように動作を捉えて記述することである。基板と光学系の相対位置が正しければ、現実世界でそのうち一方が移動しているのか、又は両方が移動しているのか、又は光学系の一部が(例えば、Z及び/又は傾斜方向に)移動し光学系の残りの部分が静止した状態で基板が(例えば、X及びY方向に、ただし任意選択的にZ及び/又は傾斜方向にも)移動するという組み合わせであるのかは、原理的に重要ではない。
ある実施の形態では、ターゲットの測定精度及び/又は感度は、例えば、放射ビームの波長、放射ビームの偏光、放射ビームの強度分布(すなわち、角度又は空間強度分布)など、ターゲット上に提供される放射ビームの1つ又は複数の特性に関して変動しうる。従って、望ましくは例えばターゲットの良好な測定精度及び/又は感度を得るように、特定の測定方式が選択されうる。
少なくとも1つのパターン転写ステップ(例えば光リソグラフィステップ)を含むパターニングプロセス(例えばデバイス製造プロセス)をモニタするために、パターン形成された基板が検査され、パターン形成された基板の1つ又は複数のパラメータが測定/決定される。1つ又は複数のパラメータは、例えば、パターン形成された基板の内部又は表面に形成された連続する層間のオーバレイ、例えばパターン形成された基板の内部又は表面に形成されたフィーチャのクリティカルディメンジョン(CD)(例えばクリティカルライン幅)、光リソグラフィステップのフォーカス又はフォーカス誤差、光リソグラフィステップのドーズ又はドーズ誤差、光リソグラフィステップの光学収差、配置誤差(例えばエッジ配置誤差)などを含みうる。この測定は、製品基板のターゲット自体に、及び/又は基板上に設けられた専用のメトロロジターゲットに行われてもよい。この測定は、レジストの現像後でエッチングの前に、又はエッチング後に行われてもよい。
ある実施の形態では、測定プロセスから取得されるパラメータは、測定プロセスから直接決定されるパラメータから導出されるパラメータである。一例として、測定パラメータから取得される導出パラメータは、パターニングプロセスのエッジ配置誤差である。エッジ配置誤差は、パターニングプロセスによって生成される構造のエッジの位置の変動量を提供する。ある実施の形態では、エッジ配置誤差は、オーバレイ値から導出される。ある実施の形態では、エッジ配置誤差は、オーバレイ値とCD値の組み合わせから導出される。ある実施の形態では、エッジ配置は、オーバレイ値と、CD値と、局所的な変動量(例えば、個々の構造のエッジラフネス、形状非対称性など)に相当する値の組み合わせから導出される。ある実施の形態では、エッジ配置誤差は、組み合わされたオーバレイ及びCDの誤差の極値(例えば、標準偏差の3倍すなわち3σ)を備える。ある実施の形態では、構造を生成することを含むとともに、構造と関連したパターニングプロセスによって提供されるパターンのエッチングにより構造の一部を除去することによって構造を「カットする」ことを含むマルチパターニングプロセスにおいて、エッジ配置誤差は、以下の形を有する(又は以下の項の1つ又は複数を備える)。
ここで、σは、標準偏差であり、σ
overlayは、オーバレイの標準偏差に相当し、σ
CDU structuresは、パターニングプロセスで生成される構造のクリティカルディメンジョン均一性(CDU)の標準偏差に相当し、σ
CDU cutsは、パターニングプロセスで生成されるカット(もしあれば)のクリティカルディメンジョン均一性(CDU)の標準偏差に相当し、σ
OPE,PBAは、光近接効果(OPE)及び/又はピッチCD(CD at pitch)と基準CDの差である近接バイアス平均(PBA)の標準偏差に相当し、σ
LER,LPEは、ラインエッジラフネス(LER)及び/又は局所配置誤差(LPE)の標準偏差に相当する。上記の定式化は標準偏差に関連するが、分散など同等の別の統計的手法で定式化されてもよい。
パターニングプロセスで形成された構造の測定を行うには、走査型電子顕微鏡、画像ベースの測定ツール及び/又は様々な専門ツールの使用を含む様々な技術がある。上述のように、高速かつ非侵襲的な形態の専門メトロロジツールは、放射ビームを基板表面上のターゲットに向け、散乱された(回折/反射された)ビームの特性を測定するものである。基板で散乱した放射の1つ又は複数の特性を評価することによって、基板の1つ又は複数の特性を決定することができる。これを回折ベースのメトロロジと称することができる。この回折ベースのメトロロジの1つの適用例は、ターゲット内のフィーチャ非対称性の測定である。これは例えばオーバレイの尺度として使用することができるが、他の適用例も知られている。例えば非対称性は、回折スペクトルの反対側の部分どうしを比較する(例えば、周期格子の回折スペクトルにおける−1次と+1次を比較する)ことによって測定できる。これは上述のように、また、その全体が参照により本書に援用される米国特許出願公開第2006−066855号に記載されるようにして行うことができる。回折ベースのメトロロジの別の適用例は、ターゲット内のフィーチャ幅(CD)の測定である。そうした技術は、図6から図9を参照して上述した装置及び方法を使用することができる。
今でもこれらの技術は有効であるが、ターゲット内のフィーチャ非対称性(オーバレイ、CD非対称性、サイドウォール角の非対称性など)を導出する新しい測定技術を提供することが望ましい。この技術は、特別に設計されたメトロロジターゲットに有効でありうるか、場合によってはより重要なことに、デバイスパターン上で直接フィーチャ非対称性を決定するために有効でありうる。
図10を参照して、この測定技術の原理をオーバレイ実施形態の文脈で説明する。図10Aには、ターゲットTの幾何学的に対称なユニットセルが示されている。ターゲットTは、単一の物理インスタンスのみのユニットセルを備えるか、又は図10Cに示されるように複数の物理インスタンスのユニットセルを備えることができる。
ターゲットTは、特別に設計されたターゲットとすることができる。ある実施の形態では、ターゲットは、スクライブレーン用のものである。ある実施の形態では、ターゲットは、ダイ内ターゲットとすることができる。すなわち、ターゲットは、デバイスパターン間(従ってスクライブレーンとスクライブレーンとの間)にある。ある実施の形態では、ターゲットは、デバイスパターンフィーチャと同等のフィーチャ幅又はピッチを有することができる。例えば、ターゲットフィーチャの幅又はピッチは、デバイスパターンの最小フィーチャサイズ又はピッチの300%以下、又はデバイスパターンの最小フィーチャサイズ又はピッチの200%以下、又はデバイスパターンの最小フィーチャサイズ又はピッチの150%以下、又はデバイスパターンの最小フィーチャサイズ又はピッチの100%以下とすることができる。
ターゲットTは、デバイス構造とすることができる。例えばターゲットTは、メモリデバイスの一部とすることができる(これは多くの場合、以下で更に述べるように、幾何学的に対称であるか又はその可能性のある1つ又は複数の構造を有する)。
ある実施の形態では、ターゲットT、又はユニットセルの物理インスタンスは、2400平方ミクロン以下の面積、2000平方ミクロン以下の面積、1500平方ミクロン以下の面積、1000平方ミクロン以下の面積、400平方ミクロン以下の面積、200平方ミクロン以下の面積、100平方ミクロン以下の面積、50平方ミクロン以下の面積、25平方ミクロン以下の面積、10平方ミクロン以下の面積、5平方ミクロン以下の面積、1平方ミクロン以下の面積、0.5平方ミクロン以下の面積、又は0.1平方ミクロン以下の面積を有しうる。ある実施の形態では、ターゲットT、又はユニットセルの物理インスタンスは、基板の平面に平行な断面寸法が、50ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、15ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、3ミクロン以下、1ミクロン以下、0.5ミクロン以下、0.2ミクロン以下、又は0.1ミクロン以下である。ユニットセルの場合、面積及び/または寸法は、これらの範囲の下限の0.75倍から0.05倍でありうる。
ある実施の形態では、ターゲットT、又はユニットセルの物理インスタンスは、構造のピッチが、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、32nm以下、22nm以下、16nm以下、10nm以下、7nm以下、又は5nm以下である。
ある実施の形態では、ターゲットTは、複数の物理インスタンスのユニットセルを有する。このため、ターゲットTは典型的に、ここに列挙した大きい方の寸法を有しうるが、ユニットセルの物理インスタンスはここに列挙した小さい方の寸法を有する。ある実施の形態では、ターゲットTは、ユニットセルに50,000以上の物理インスタンス、ユニットセルに25,000以上の物理インスタンス、ユニットセルに15,000以上の物理インスタンス、ユニットセルに10,000以上の物理インスタンス、ユニットセルに5,000以上の物理インスタンス、ユニットセルに1000以上の物理インスタンス、ユニットセルに500以上の物理インスタンス、ユニットセルに200以上の物理インスタンス、ユニットセルに100以上の物理インスタンス、ユニットセルに50以上の物理インスタンス、又はユニットセルに10以上の物理インスタンスを備える。
望ましくは、ユニットセルの1つの物理インスタンスは、又は集合的にユニットセルの複数の物理インスタンスは、メトロロジ装置のビームスポットを充填する。その場合の測定結果は、ユニットセルの1つの物理インスタンス(又は複数のインスタンス)からの情報のみを実質的に備える。ある実施の形態では、ビームスポットの断面幅は、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、15ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、又は500nm以下である。
図10Aのユニットセルは、基板上で物理インスタンスとされているか又はされることになる少なくとも2つの構造を備える。第1の構造1000はラインを備え、第2の構造1005は楕円形状を備える。もちろん、第1及び第2の構造1000、1005は図示されているものとは異なる構造であってもよい。
更に、この例では、第1及び第2の構造1000、1005は、別々に基板に転写されるので、それらに期待される位置から相対的なずれが生じ、オーバレイの誤差となりうる。この例では、第1の構造1000は第2の構造1005よりも基板上の高い層に位置する。このため、ある実施の形態では、第2の構造1005はパターニングプロセスの第1の実行で第1の低い層に生成され、第1の構造1000はパターニングプロセスの第2の実行で第1の低い層よりも高い第2の層で生成されうる。ここで、第1及び第2の構造1000、1005が異なる層に配置されることは必須でない。例えば、ダブルパターニングプロセス(例えばその一部としてエッチングプロセスを含む)では、第1及び第2の構造1000、1005を同一層に生成して実質的に単一のパターンを形成することができるが、それでもなお、同一層内における相対的な配置に関して「オーバレイ」問題が存在しうる。この単一層の例では、第1及び第2の構造1000、1005は双方とも例えば第1の構造1000について図10Aに示されるラインの形態を有しうるが、第1のパターン転写プロセスによって基板上にすでに設けられている第2の構造1005のラインは、第2のパターン転写プロセスで設けられる構造1000のラインと交互配置されうる。
重要なことは、ユニットセルが、軸又は点に対して幾何学的対称性を有するか又は有することが可能なことである。例えば図10Aのユニットセルは、例えば軸1010に対して鏡映対称性を有し、更に、例えば点1015に対して点対称性/回転対称性を有する。同様に、図10Cのユニットセルの物理インスタンス(従って、物理インスタンスを組み合わせたユニットセル)も幾何学的対称性を有することがわかる。
ある実施の形態では、ユニットセルは、特定の特徴(オーバレイ等)について幾何学的対称性を有する。本書における実施形態は、幾何学的に対称である場合にゼロのオーバレイを有するユニットセルに着目している。しかしながらその代わりに、ユニットセルは、特定の幾何学的非対称性についてゼロのオーバレイを有することも可能である。その場合、適切なオフセット及び計算が、特定の幾何学的非対称性を有する場合にゼロのオーバレイを有するユニットセルを説明するために使用される。適宜、ユニットセルは、特定の特徴値に応じた対称性の変化(例えば非対称になる、又は更に非対称になる、又は非対称の状態から対称になる)を可能とすべきである。
図10Aの例では、ユニットセルは、ゼロのオーバレイに対して幾何学的対称性を有する(が、これがゼロのオーバレイであることは必須ではない)。これは、第1の構造1000のラインが第2の構造1005の楕円形状に対して均等にアライメントされていることを示す矢印1020及び1025によって表されている(また、この均等なアライメントは少なくとも部分的にユニットセルが図10Aに示されているような幾何学的対称性をもつことを可能にする)。従ってこの例では、ユニットセルが幾何学的対称性を有する場合、オーバレイはゼロである。しかしながら、オーバレイに誤差がある場合(例えば非ゼロのオーバレイ)、ユニットセルはもはや幾何学的に対称でなく、当然ながらターゲットはもはや幾何学的に対称でない。
更に、ターゲットが複数の物理インスタンスのユニットセルを備える場合、ユニットセルのインスタンスは周期的に配置されている。ある実施の形態では、ユニットセルのインスタンスは格子状に配置されている。ある実施の形態では、周期的な配置はターゲット内で幾何学的対称性を有する。
従ってこの手法では、以下で更に述べるように、対象のフィーチャ非対称性(例えば非ゼロのオーバレイ)に関連した幾何学的対称性の変化(例えば幾何学的非対称への変化、又は更なる幾何学的非対称への変化、又は幾何学的非対称から幾何学的対称への変化)を利用することで、フィーチャ非対称性(例えば非ゼロのオーバレイ)の決定を可能とする。
図10Aのユニットセルの物理インスタンスを備えるターゲットは、例えば図7のメトロロジ装置を用いて、放射により照明することができる。ターゲットによって方向転換された放射は、例えば検出器190によって測定されることができる。ある実施の形態では、方向転換された放射の瞳、すなわちフーリエ変換面が測定される。そうした瞳の例示的な測定が瞳像1030として図示されている。瞳像1030はダイヤモンド形状を有するが、そうした形状を有することは必須ではない。本書において、瞳及び瞳面という用語は、文脈上他の意味に解釈すべき場合(例えば、特定の光学系についてある瞳面を特定している場合)を除いて、その共役を含む。瞳像1030は実質的に、方向転換された放射の瞳の、光学特性(この場合は強度)に関して特定された像である。
便宜上、本書の議論は、対象の光学特性として強度に着目している。しかしながら、本書の技術は、位相及び/又は反射率など1つ又は複数の代替的な又は追加の光学特性と共に使用することも可能である。
更に、便宜上、本書の議論は、方向転換された放射の像、具体的には瞳像を検出し処理することに着目している。しかしながら、方向転換された放射の光学特性は、像とは異なる手法で測定し表現することも可能である。例えば、方向転換された放射は、1つ又は複数のスペクトル(例えば波長の関数としての強度)に関して処理されることができる。従って、方向転換された放射について検出される像は、方向転換された放射の光学的な表現の一例とみなすことができる。このため、瞳面像の場合、瞳像は瞳表現の一例である。
更に、方向転換された放射は、偏光されているか、又は非偏光でありうる。ある実施の形態では、測定ビーム放射は、偏光放射である。ある実施の形態では、測定ビーム放射は、直線偏光されている。
ある実施の形態では、瞳表現は、ターゲットから方向転換された放射の、主に又は実質的に1つの回折次数を有するものである。例えば、放射は、この放射の特定の次数の50%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上でありうる。ある実施の形態では、瞳表現は、主に又は実質的に、ゼロ次の方向転換された放射である。これが起こりうるのは例えば、ターゲットのピッチ、測定放射の波長、及び任意選択的に1つ又は複数の他の条件のために、ターゲットが主にゼロ次を方向転換させる場合である(しかしながら、1つ又は複数の高次の放射も存在しうる)。ある実施の形態では、瞳表現の大部分は、ゼロ次の方向転換された放射である。ある実施の形態では、瞳表現は、ゼロ次放射及びこれとは別個の1次放射のものであり、これらは線形に結合されうる(重ね合わせ)。図7のアパチャー186は、例えばゼロ次など放射の特定の次数を選択するために使用されることができる。
第1及び第2の構造1000、1005の幾何学的に対称なユニットセルに対応する瞳像1030に関しては、瞳像内の強度分布は本質的に対称である(例えば、幾何学的構造と同じ対称形を有する)ことが理解される。これは、瞳像1030から対称な強度分布の部分を除去することによっても確認され、それにより導出された瞳像1035を得られる。この対称強度分布部分を除去するために、特定の瞳像画素(例えばピクセル)は、その特定の瞳像画素における強度から対称配置された瞳像画素の強度を減算することによって対称強度分布部分を除去することができる。逆も同様である。ある実施の形態では、この画素は検出器(例えば検出器190)の画素に相当しうるが、これは必須ではない。例えば、瞳像画素は検出器の画素のうち複数のものでありうる。ある実施の形態では、画素強度の減算を行う際に中心となる対称点又は対称軸は、ユニットセルの対称点又は対称軸と一致する。このため、例えば瞳像1030について考えると、例えば、図示されているその特定の画素における強度Iiから、対称配置された、すなわち軸1032に対して対称配置された画素の強度Ii’を減算することによって、対称強度分布部分を除去することができる。従って、対称強度部分が除去された特定の画素における強度Siは、Si=Ii−Ii’である。これを、瞳像の複数の画素について、例えば瞳像内の全ての画素について繰り返すことができる。導出された瞳像1035に見られるように、対称なユニットセルに対応する強度分布は本質的に完全に対称である。従って、対称なユニットセルジオメトリを有する対称なターゲット(及び、適用可能な場合にはユニットセルのインスタンスの特定の周期性)によって、メトロロジ装置で測定される対称な瞳応答が生じる。
ここで図10Bを参照すると、図10Aに示されたユニットセルに対するオーバレイの誤差の一例が示されている。この場合、第1の構造1000は第2の構造1005に対してX方向にずれている。具体的には、第1の構造1000のラインの中心にあった軸1010は、図10Bでは軸1045へと右側にずれている。従って、X方向のオーバレイの誤差1040、すなわちX方向オーバレイ誤差が存在する。もちろん、第2の構造1005が第1の構造1000に対してずれるか、又は双方が相対的にずれる可能性もある。いずれにせよ、この結果としてX方向オーバレイ誤差が生じる。しかしながら、このユニットセル配置から理解されるように、第1の構造1000と第2の構造1005との間のY方向の純粋に相対的なずれでは、このユニットセルの幾何学的な対称性は変化しない。しかしながら、適切な幾何学的配置を用いる場合、2方向のオーバレイ又はユニットセルの部分どうしの異なる組み合わせ間のオーバレイが対称性を変化させる可能性があり、以下で更に議論するようにこれは決定されうる。
図10Aにおけるユニットセルの公称の物理構成から、オーバレイの誤差1040で表されているユニットセルの物理構成の変化が生じた結果として、ユニットセルは幾何学的に非対称になっている。これは、第2の構造1005の楕円形状が第1の構造1000のラインに対して不均等に配置されていることを示す異なる長さの矢印1050及び1055に見られる。対称性は、瞳像1030の対称点又は対称軸に対して、すなわち、この場合は軸1034でも示されている軸1032に対して調べられる。
図10Bのユニットセルの物理インスタンスは、例えば図7のメトロロジ装置を用いて放射により照明することができる。方向転換された放射の瞳像を、例えば検出器190によって記録することができる。そうした瞳像の一例が瞳像1060として図示されている。瞳像1060は実質的に強度の像である。瞳像1060はダイヤモンド形状を有するが、そうした形状を有することは必須ではなく、これは円形状又は他の任意の形状である可能性もある。更に、瞳像1060は瞳像1030と実質的に同じ軸又は座標位置のものである。すなわち、この実施形態において、図10Aのユニットセルの対称軸1010及び図10Bのユニットセルの同じ軸は、瞳像1030、1060の対称軸1032と整合している。
第1及び第2の構造1000、1005の幾何学的に非対称なユニットセルに対応する瞳像1060に関して、視覚的には、強度分布は瞳像内で事実上対称であるように見える。しかしながら、瞳像内には非対称強度分布部分が存在する。この非対称強度分布部分は、ユニットセルにおける非対称性に起因している。また、非対称強度分布は、瞳像における対称強度分布部分よりも大きさが著しく小さい。
従ってある実施の形態では、非対称強度分布部分をより効果的に分離するために、瞳像1060から対称強度分布部分を除去することによって導出瞳像1065を得てもよい。導出瞳像1035の取得と同様に、特定の瞳像画素(例えば一つの画素)は、その特定の瞳像画素における強度から対称配置された瞳像画素の強度を減算することによって対称強度分布部分を除去することができる。前述のように逆も同様である。そのため、例えば瞳像1060について考えると、例えば図示される特定の画素における強度Iiから強度Ii’を減算することによって、対称配置された、すなわち軸1032に関して対称配置された画素から対称強度分布部分が除去され、Siを得ることができる。これを、瞳像の複数の画素について、例えば瞳像内の全ての画素について繰り返すことができる。図10A及び図10Bでは、導出瞳像の全体のSiが説明のために図示されている。理解されるように、図10A又は図10Bの導出瞳像の半分は、他方の半分と同じである。このため、ある実施の形態では、瞳像の半分のみからの値を本書で検討される更なる処理に使用することができ、従って、本書における更なる処理に用いられる導出像瞳は、ある瞳についてのSi値の半分のみでありうる。
導出瞳像1065に見られるように、非対称なユニットセルの物理インスタンスを用いて測定される強度分布は対称的でない。領域1075及び1080に見られるように、対称強度分布部分が一度除去されれば、非対称強度分布部分は視認可能となる。上記のように、導出瞳像1065の全体が図示されているので、非対称強度分布部分が2つの半分の両方に示されている(それら2つの半分は大きさ及び分布が相互に等しい)。
このように、幾何学的領域における非対称性は、瞳における非対称性に対応する。従ってある実施の形態では、ユニットセルの物理インスタンスに固有の幾何学的対称性を有するか又は幾何学的対称性を可能とする周期的ターゲットの光学応答を用いて、ユニットセルの物理インスタンスの幾何学的対称性の変化を引き起こす(例えば非対称性を引き起こす、又は更なる非対称性を引き起こす、又は非対称なユニットセルを対称にする)物理構成の変化に対応するパラメータを決定する方法が提供される。具体的には、ある実施の形態では、メトロロジ装置により測定された、瞳におけるオーバレイ誘発の非対称性(又はその欠如)を利用することで、オーバレイを決定できる。すなわち、瞳の非対称性を用いて、ユニットセルの物理インスタンス内の、従ってターゲット内のオーバレイが測定される。
ユニットセルの幾何学的非対称性を生じさせる物理構成の変化に対応したパラメータをどのように決定するかを検討するために、瞳像内の画素の強度を、その画素に影響を及ぼすターゲットの物理特性に関連付けて検討する。これを行うため、オーバレイの例を検討するが、その手法及び原理は、ユニットセルの幾何学的非対称性を生じさせる物理構成の変化に対応した別のパラメータ(例えば非対称のサイドウォール角、非対称の底壁傾斜、コンタクトホールの楕円率等)に拡張することも可能である。
再び図10A及び図10Bのユニットセルを参照すると、瞳像1060内の画素Ii、Ii’の強度は、ユニットセルの様々な物理特性に起因して生じる強度成分の結合として解析的に評価することができる。具体的には、対称なユニットセルから非対称なユニットセルへの物理構成の変化は、強度分布が特に瞳像内においてどのように変化するかを決定するために評価されうる。
従って、これらの原理を説明するための極めて単純な例において、ユニットセルプロファイルの物理構成のいくつかの変化が評価されうる(しかしながら、もちろん、より多くの物理構成の変化、又は別の物理構成の変化が発生する可能性がある)。検討される物理構成の変化の1つは、Z方向における構造1000の高さの変化であり、Δxhとして表される。しかしながら、重要なことは、この高さの変化が一般にユニットセルの物理インスタンスにわたって均一であることである。すなわち、Δxhの結果、ユニットセルの対称軸又は対称点の一方側における物理構成には対称軸又は対称点の他方側と同じ変化が生じる。同様に、CDやサイドウォール角等の変化のような他の物理構成の変化も、一般にユニットセルの物理インスタンスにわたって均一であり、従って、ユニットセルの対称軸又は対称点の一方側における物理構成には対称軸又は対称点の他方側と同じ変化が生じる。従って、便宜的にΔxhのみを検討するが、これは、ユニットセルにわたって均一である多数の他の物理構成の変化を代表している。
対象のユニットセルの物理構成の変化の別のものは、構造1000と構造1005との間の相対的なシフト、すなわちオーバレイの変化1040である。このオーバレイシフトをΔxovと称する。もちろん、オーバレイは異なる方向又は追加の方向で検討することも可能である。重要なことは、Δxovの結果、ユニットセルの対称軸又は対称点の一方側には対称軸又は対称点の他方側とは異なる物理構成が生じることである。このため、対称な画素の各対はオーバレイに関する情報を有する。重要なことは、ほとんどのターゲットプロファイルパラメータ(CD、高さ等)の変化は瞳において対称な変化を誘発する(従って対称なパラメータとして検討できる)が、オーバレイの変化は、測定された瞳において非対称な変化を生じることである。従って、オーバレイの変化は非対称な瞳応答を与える。更に、全てではないがほとんどの他のユニットセルプロファイルパラメータは、ユニットセル又は瞳応答の非対称性を生じないが、測定オーバレイ値に対して何らかの影響を及ぼしうる。以下で検討するように、1次に対しては、他のユニットセルプロファイルパラメータは影響が無いかもしれない。ある実施の形態では、2次以上に対しては、他のユニットセルプロファイルパラメータはオーバレイ値の決定に影響を及ぼす。従って、以下で更に詳しく検討するように、瞳の非対称性を測定することによって、そこからオーバレイを決定することができる。
具体的には、測定された瞳非対称性からどのようにオーバレイを決定できるかを評価するため、瞳像1060内の画素iの強度I
iは以下のように定義されうる。
ここで、I
0は照明放射に起因して生じる基本強度であり、a、e、f、及びgは係数である。従って、同様に、瞳像1060内の相補的な対称な画素I'
iの強度は以下のように定義されうる。
ここで、係数a'、b'、c'、d'、e'、及びf'は、相補的な対称な画素I'
iの強度に固有であり、瞳像1060内の画素I
iの強度の係数a、b、c、d、e、及びfと関連する。
そのため、瞳像1060内の対称な画素間の強度の差S
i=I
i−I'
iは、以下のように評価されうる。
例えば対称性のために、eΔx
hのような対称パラメータのみを含みうる全ての項は、数式(3)で見られるように消えることがわかっている。更に、例えば対称性のために、オーバレイの偶数乗の項は対称配置された画素では等しいことがわかっており、従ってΔx
ov 2のような項も同様に消える。これにより、オーバレイと対称パラメータとの組み合わせの項、及び、オーバレイの奇数乗(例えば1乗、3乗、5乗、7乗等)のみの項が残る。
上記の数式(3)において、強度の差Siは主としてaΔxovに依存することがわかっている。すなわち、強度の差Siはほとんどオーバレイに線形に依存し、更に重要なことは、オーバレイがほとんど強度に線形に依存すること、具体的には強度の差Siに線形に依存することである。従って、画素強度の結合は、適切な換算係数と線形結合されるとき、オーバレイの良好な推定値を導くことができる。
このためある実施の形態では、オーバレイは、適切に重み付けされた画素の強度の結合から決定できることがわかっている(この重み付け自体が、強度からオーバレイへの換算係数として働くか、又は強度からオーバレイへの換算係数と組み合わされてもよい)。ある実施の形態では、オーバレイ信号は以下のように記述できる。
ここで、オーバレイ信号Mは、測定された瞳における信号成分S
iの重み付け結合であり、w
iは、信号成分S
iのそれぞれの重みである(重みは、信号成分とオーバレイとの間の換算係数として働く。あるいは上記のように、信号成分をオーバレイに変換するよう働くのではない重みと組み合わせて換算係数を使用することも可能である)。ある実施の形態では、重みw
iは、その大きさがオーバレイに関連しているベクトルである。上記のように、信号成分S
iは測定瞳の半分について決定されうる。ある実施の形態では、信号成分S
iが対称画素(N)の全ての対(N/2)について実質的に同じ大きさを有する場合、信号成分S
iは平均化され、以下の式に従って信号成分S
iの総和からオーバレイへの換算係数Cと組み合わされて、以下のように総オーバレイが導かれる。
従って、ある実施の形態では、重みは2つの役割を有することができる。1つは、オーバレイの測定に関する1画素対ごとの信頼性であり、他の役割は、信号成分の光学特性の値(例えばグレイレベルのような強度レベル)をオーバレイ値(例えばナノメートル単位)に変換することである。上述のように、第2の役割は換算係数に担わせることができる。
しかし、例えば、信号成分Siが全ての対称画素対について実質的に同じ大きさを持たない場合、測定瞳内の全ての画素に等しく重み付けを行うと、低い信号対雑音比(低い精度)が生じうる。このため、オーバレイに対して感度の高い画素がオーバレイの計算に大きく寄与するように重み付けすることが望ましい。従って、ある実施の形態では、オーバレイに対して感度の高い画素は、オーバレイに対して感度の低い画素(実質的に機能していない画素)とは異なる(例えば大きい)重み付けが与えられる。上述のように、導出瞳1065の領域1075及び1080内の画素はオーバレイに対して比較的高い感度を有するが、領域1075及び1080内の画素に比べて強度が低いか又は強度を全く持たない導出瞳1065内の残りの画素は、オーバレイに対して低い感度を有する(従って、オーバレイ決定における寄与が小さいように重み付けするべきである)。従って、ある実施の形態では、信号対雑音比を増加または最大化するように重み付けが生成されてもよい。ある実施の形態では、スタック感度を増加または最大化する(例えば、システマチック誤差へのより良好な耐性を提供する)ように重み付けが生成されてもよい。
ある実施の形態では、重みは、実質的に、数式(3)のaΔxov項について決定される。ある実施の形態では、重みは、aΔxov項と、bΔxovΔxh(更に、典型的には、CDやサイドウォール角などの他のパラメータのための他の同等の項)について決定されるように拡張できる。しかしながらこの計算は、実質的に数式(3)のaΔxov項についてだけ重みを決定することに比べ、より複雑となりうる。更に、(対称パラメータについての)非線形プロセスに対するロバスト性と、オーバレイ決定の精度(すなわち、決定される値が実際の同一のオーバレイを決定するたびにどの程度近似するか)との間には、トレードオフが存在する。そのため、この計算を用いてロバスト性の向上を図ると、精度が犠牲になる可能性がある。従って、精度を向上させ(例えば線形項の影響を最大化すると共に非線形項を抑制する)、ロバスト性を向上させ(例えば非線形項を最大化する)、又は双方のバランスを見出すための最適化が実行されてもよい。しかし、いずれの場合にも、関連する重み付けと線形結合された強度の組み合わせを用いると、瞳の取得及び数式(4)の簡単な計算を必要とするにすぎないので、オーバレイの迅速な決定が可能となる。
ある実施の形態では、高次の項が重要になる場合、非線形解法が、cΔxov 3及び/又は他のより高次の項を有する数式(3)を解くために採用されてもよい。理解されるように、非線形解法は、単に測定瞳における各信号成分Siを各信号成分Siの各重みwiで乗算してからそれら全てを合計するよりも複雑となりうる。更に、この場合も、非線形プロセスに対するロバスト性とオーバレイ決定の精度(すなわち、決定される値が実際の同一のオーバレイを決定するたびにどの程度近似するか)との間にはトレードオフが存在する。そのため、この計算を用いてロバスト性の向上を図ると、精度が犠牲になる可能性がある。従って、精度を向上させ及び/またはロバスト性を向上させるための最適化が実行されてもよい。
そこで、オーバレイに起因するユニットセルの幾何学的非対称性から生じる非対称強度分布を認識することにより、オーバレイの誤差は、この非対称強度分布に着目した解析を通じて決定されうる。よって、オーバレイに関連したターゲットの物理構成の変化によって生じる非対称強度分布からオーバレイを決定する手法について以下検討する。
図11を参照すると、重みを決定する方法が模式的に示されている。重みの決定を可能とするために、図9を参照して上述した再構築法が有利に用いられる。すなわちある実施の形態では、非対称なユニットセルの物理インスタンスの瞳像からオーバレイ信号を分離するために、CD再構築が用いられる。
図11の方法は2つのプロセスを含む。第1のプロセス1100は、あるターゲットのCD及び/又は他の1つ又は複数のプロファイルパラメータの再構築法を、パターニングプロセスの一部として基板上に露光された当該ターゲットの(従って、そのユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスの)公称のプロファイルを導出するために使用することを含む。ターゲットの公称プロファイルと共に、プロセス1110では再構築法の基本エンジンを用いて重み付けを導出する。次いでこの重み付けを用いて、図12を参照して更に記載されるように、測定瞳からオーバレイを導出することができる。
そこで、プロセス1100では、ターゲットとして提供される対象のユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有する基板の測定結果1130が取得される。ある実施の形態では、この測定結果はエッチング後のターゲットのものである。ある実施の形態では、測定結果は現像後であるがエッチング前のターゲットのものである。ある実施の形態では、ターゲットはデバイス構造である。ある実施の形態では、測定結果は、図7のメトロロジ装置などのメトロロジ装置を用いて取得することができるか、又は取得されている。例えばターゲットは、図10A又は図10Bのユニットセルの物理インスタンス、例えば単一のインスタンス、又は図10Cに示される複数の隣接したインスタンスを備えてもよい。ある実施の形態では、ターゲットの複数のインスタンスの(従って、ユニットセルの複数の物理インスタンスの)測定結果が取得される。ある実施の形態では、測定結果は、基板に分布しているターゲットインスタンスのものである。ある実施の形態では、各々が1つ又は複数のターゲットインスタンスを有する(各々がユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有する)複数の基板が測定される。そのため、ある実施の形態では、測定した各ターゲットについて放射分布108が取得される。
次いで、1100での再構築プロセス(例えば図9に関して記述された再構築プロセス)は、ユニットセルの物理インスタンスの公称プロファイル(図9のプロファイル206に相当する)を導出するために使用される。再構築プロセスは、再構築プロセスを開始すると共に容易にすべく、ユニットセルの物理インスタンスの予想プロファイル1120を取得する。ある実施の形態では、導出される公称プロファイルは、1つ又は複数の基板におけるターゲットインスタンスのプロファイルの平均から得られる。例えば、各ターゲットについて放射分布108がターゲットのそのインスタンスのプロファイルを導出するよう処理され、ターゲットの複数のインスタンスのプロファイルが平均され、公称プロファイルが導出されてもよい。ある実施の形態では、公称プロファイルは少なくともターゲットの幾何学プロファイルを備える。ある実施の形態では、幾何学プロファイルは3次元プロファイルである。ある実施の形態では、公称プロファイルは、物理ターゲットを構成する1つ又は複数の層の1つ又は複数の材料特性に関する情報を備える。
そのため、ある実施の形態では、公称プロファイルは、基板における、任意選択的に複数の基板における、ターゲットの多数のインスタンスの測定から取得されるターゲット(従ってユニットセル)のプロファイルの様々なパラメータ値の重心とみなすことができる。しかし、ある実施の形態では、公称プロファイルは別の形態を有し、より具体的でありうる。例えば公称プロファイルは、ターゲットの1つ又は複数の特定のインスタンスについて(例えば、複数の基板での1つ又は複数の同一のターゲット位置からの値を用いることによって)定義されうる。別の例として、公称プロファイルは、ある特定の基板について(例えばその基板のみからの値を用いることによって)定義されうる。ある実施の形態では、公称プロファイルは、図12のプロセスの一部として特定のターゲット及び/又は基板について調整されうる。例えば、ターゲット及び/又は基板が図12のプロセスの一部として測定される場合、測定データと共に再構築法を用いて、そのターゲット及び/又は基板について公称プロファイルを微調整することができ、次いで、微調整された公称プロファイルを本書における公称プロファイルとして使用して重みを決定し、次いでこの重みを同じ測定データと共に用いて1つ又は複数のオーバレイ値を得ることができる。
次いで、再構築された公称プロファイル1140がプロセス1110に与えられる。従って、ある実施の形態では、プロセス1110は、導出されるターゲット公称プロファイル(例えば、測定データから導出されるデバイスのユニットセルの幾何学的エッチング後プロファイル)を使用する。ある実施の形態では、公称プロファイルは、測定されたユニットセルに従ってパラメータ化されたモデル206のような、パラメータ化されたモデルの形式でありうる。従って、ある実施の形態では、プロセス1110は、ユニットセルの導出プロファイルモデル(例えば、測定データから導出されるデバイスのユニットセルの物理インスタンスの幾何学的エッチング後プロファイルのモデル)を使用する。
プロセス1110では、本書に記載される再構築法の基本エンジンが、導出プロファイル又は導出プロファイルモデルと共に使用され、重み付けが導出される。ある実施の形態では、導出プロファイルモデル又は導出プロファイルから導出される導出プロファイルモデルが、オーバレイに対して感度が高いユニットセル内の瞳画素を決定するために使用される。具体的には、ある実施の形態では、オーバレイに対する瞳応答の感度が、公称プロファイルについて誘発されるオーバレイの変化に対する瞳応答の変化を決定するシミュレーション(例えばマクスウェルソルバー)を用いることにより、決定される。
これを達成するには、導出プロファイルモデルにおいて特定量のオーバレイ変化(例えば1nm)を誘発すると共に導出プロファイルモデルの他の全てのパラメータ/変数が不変のままとするようにモデルを変化させればよい。これは実質的に、対称なユニットセルを非対称とし、又は、既に非対称なユニットセルの対称性を変化させる(更に非対称になること、又は非対称な状況から対称になることを含む)ものである。
次いで、メトロロジ装置において予想されるであろう瞳(例えば、特定の測定ビーム波長、測定ビーム偏光、測定ビーム強度等での放射について)は、誘発されたオーバレイ変化をもつ導出プロファイルモデルに基づいて(例えばマクスウェルソルバー、ライブラリ検索、又は他の再構築法を用いて)導出されうる。ユニットセルの物理インスタンスがビームスポットよりも小さい場合、再構築は、ビームスポットがユニットセルの物理インスタンスで充填されているものとして扱うことができる。ある実施の形態では、導出される瞳は、シミュレーションされた瞳像1060及び/又はシミュレーションされた瞳像に基づく導出瞳像1065でありうる。
次いでこの導出瞳を用いて、オーバレイ変化に対する複数の瞳画素の強度の感度を、例えば、誘発されたオーバレイが存在しないユニットセルの導出瞳と比較することにより、決定することができる(例えば、誘発されたオーバレイが存在しないユニットセルの導出瞳は、シミュレーションされた瞳像1030及び/又はシミュレーションされた瞳像に基づく導出瞳像1035でありうる)。ある実施の形態では、これらの感度は重み付けの基礎を形成する。
ある実施の形態では、瞳の画素(従って画素強度、信号成分Si等)は、ベクトルとして表現されうる。ある実施の形態では、次いで、重み付けが、モデリングにおいて生成されるヤコビ行列から導出されうる。ある実施の形態では、重み付けは、モデリングにおいて生成されるヤコビ行列のムーア・ペンローズ擬似逆行列から導出されうる。こうして、重みは実質的に、数式(3)のaΔxovについて決定される。ヤコビ行列又はヤコビ行列のムーア・ペンローズ擬似逆行列から導出された重み付けは、比較的小さいオーバレイ変動(例えば±3nm以内、又は±4nm以内、又は±5nm以内)について充分に適用できるようである。
ある実施の形態では、重みは、aΔxov項、及びbΔxovΔxh(更に、典型的には、CDやサイドウォール角など他のパラメータについての他の同等の項)について決定されるように拡張できる。この場合、重み付けは、ヤコビ行列に加えて、モデリングにおいて生成されるヘッセ行列とするか又はヘッセ行列から導出することができる。ヘッセ行列は、オーバレイに対する応答が、特定量の別の(対称な)パラメータ(CD等)の変化によってどのように変化するかを示す。従って、そうした全てのパラメータについて、ヘッセ行列には列が存在する。ある実施の形態では、(より)ロバストにするため、重みは、ユニットセルの感度が高い列(パラメータ)に対し直交性を高めるように変更されてもよい。直交性を高めるために、1つ又は複数の感度の高い列がヤコビ行列に連結されてもよく、次いで、ムーア・ペンローズ擬似逆行列が、ヘッセ行列から1つ又は複数の列が連結されたこのヤコビ行列から計算されてもよい。この計算から重みが得られる。しかしながら、この計算は複雑になりうるので、ヤコビ行列(のムーア・ペンローズ擬似逆行列)から導出される重み付けが良好な結果を示すオーバレイ変動範囲を実際のオーバレイ値が超えると予想される状況に適しうる。
ある実施の形態では、重みは、数式(3)の他の項について決定されるように拡張されうる。その場合の重み付けは、ヤコビ行列に加えて、モデリングにおいて生成される3次導関数であるか、又は3次導関数から導出されてもよい。また、別の形式の級数展開(例えばテイラー級数、フーリエ級数など)がオーバレイ感度および非線形性を決定するために使用されてもよい。
上記のように、公称プロファイルは、ターゲット又は基板ごとに微調整された公称プロファイルでありうる。例えば、図12のプロセスの一部として特定のターゲット又は基板が測定される場合、再構築法を測定データと共に用いて、そのターゲット又は基板について公称プロファイルを微調整することができる。ここで、微調整に応じて、重みを(再)決定すること、及び/又は、作成する重み付けの形式の選択(例えば、ヤコビ行列、又はヤコビ行列とヘッセ行列との組み合わせ)を行うことが可能となる。例えば、微調整しなかった公称プロファイルに基づく重みがΔxhの影響を抑制すべく予め選択されている場合があるが、微調整によってターゲット及び/又は基板のΔxhが同定され更新されるならば、Δxhの影響を抑制する必要がなくなる可能性がある。この場合、重みは、ロバスト性よりも精度を優先するものを選択することができる。
従って、プロセス1110から、重みwiの集合(例えばベクトル)を出力することができる。重みwiは、それ自体が強度からオーバレイへの換算係数として働き、または、強度からオーバレイへの換算係数と組み合わされることができる(この換算係数は同じモデリングの一部として導出されうる)。瞳像1065から理解されるように、領域1075及び1080内の画素は、領域1075及び1080の外側の画素よりもオーバレイに対する感度が比較的高いので、それらの重み付けは、領域1075及び1080の外側の画素(これらの画素はオーバレイに対する感度が比較的低い)の重み付けとは明らかに異なる(例えばより大きい)。従って、これらの重みを、ユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有するターゲットの測定強度値と(例えば数式(4)に従って)組み合わせた場合、その特定のターゲット(ユニットセルの物理インスタンスを有するデバイスパターン等)についてのオーバレイ信号を取得することができる。
更に、1つ又は複数の測定パラメータが、ターゲットの測定強度値を取得する際に使用される測定戦略を形成すべく、決定されうる。1つ又は複数の測定パラメータは、画素のオーバレイ感度に影響を及ぼしうる。例えばオーバレイ感度は、測定ビーム波長が異なれば変化する。従ってある実施の形態では、1つ又は複数の測定パラメータ(例えば波長、偏光、ドーズなど、ターゲットへの特定の照明について検出センサにより取得される多数の光学特性読み取り値(通常、この読み取り値は平均され、そのターゲット測定について平均光学特性値を与える))は、モデリングプロセス1100の一部として変化されてもよい。例えば、1つ又は複数の測定パラメータが、特定の誘発されたオーバレイ変化に対して調査され、(例えば、重み付けが1つ又は複数のパラメータの1つの値に対するものである場合に得られるオーバレイと、重み付けが1つ又は複数のパラメータの別の値に対するものである場合に得られるオーバレイとの間の)残留誤差を最小値に又は特定の閾値未満に低減させる1つ又は複数の測定パラメータの値が決定されてもよい。このようにして、精度を向上させる1つ又は複数の測定パラメータの値を得ることができる。
更に、プロセス変動に対するロバスト性は、1つ又は複数の測定パラメータの値が異なれば、変化する。具体的な例として、プロセス変動に対するロバスト性は、測定ビーム波長及び/又は測定偏光の値が異なることによって、変化する。そのためある実施の形態では、重み付けスキームは、プロセス変動に対するロバスト性の欠如への少なくとも主要因に対処するべきである。従って、精度向上のために1つ又は複数の測定パラメータの値を決定することに加えて又はそれに代えて、1つ又は複数の測定パラメータが、様々な特定の誘発されたオーバレイ変化値について(及び/又は、CDやサイドウォール角の変化など、導出プロファイルモデルの他の1つ又は複数のパラメータの特定の誘発された変化について)調査され、重み付けを用いてプロセス変動に対するロバスト性を向上させることを可能にする1つ又は複数の測定パラメータの値が取得されてもよい。例えば、誘発されたオーバレイ変化の様々な大きさについて、1つ又は複数の測定パラメータの様々な値を評価することで、1つ又は複数の測定パラメータの値に関連付けられた重み付けを用いて決定されるオーバレイに最小の(又は閾値よりも小さい)変動を生じさせる1つ又は複数の測定パラメータの値が決定されうる。もちろん、1つ又は複数の測定パラメータの値の選択においては、精度とロバスト性向上との間でバランスを取ることができる。例えば、精度のために決定される1つ又は複数の測定パラメータの値(例えば精度を測定する性能メトリックに適用される重み)と、ロバスト性向上のために決定される1つ又は複数の測定パラメータの値(例えばロバスト性を測定する性能メトリックに適用される重み)との間で重み付けを適用し、次いで、最大の組み合わせや最上位の組み合わせ等を選択することができる。また、もちろん、測定戦略全体において実質的に複数の異なる測定戦略が存在するように、1つ又は複数の測定パラメータの複数の値を決定することも可能である。複数の値は、1つ又は複数の性能メトリックに従って順位付けられてもよい。任意選択的に、測定戦略が、ユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有するターゲットの測定強度値を取得する際に使用するために、プロセス1110から出力されてもよい。
更に、CDやサイドウォール角などの1つ又は複数の非オーバレイパラメータは、強度信号をオーバレイにマッピングするため使用される重みに対して影響を及ぼしうる。上記のように、この文脈において重みを決定する例示的な手法は、ヘッセ行列及び/又は3次導関数を用いることである。従ってある実施の形態では、良好なオーバレイ値を維持するように1つ又は複数の非オーバレイパラメータを考慮に入れるために、様々な重み付けスキームがありうる。ある実施の形態では、オーバレイについて情報量の多いオーバレイ画素及びそれらの重み付けが、オーバレイ決定精度のために最適化されてもよい。これは、良好なモデル品質、すなわち非オーバレイパラメータの良好な推定を必要とする可能性がある。ある実施の形態では、オーバレイについて情報量の多い画素及びそれらの重みは、非オーバレイパラメータ等の変動を処理するように、ロバスト性向上のために最適化されてもよい。これは精度を犠牲にする可能性がある。
ある実施の形態では、1つ又は複数の非オーバレイパラメータの推定値が、例えば図9を参照して記載した再構築法を用いて作成され、導出プロファイル又は導出プロファイルモデルを調整するためにフィードフォワードされてもよい。例えばCD再構築は、基板における特定位置での、及び/又はパターニングプロセス設定の特定の組み合わせ(例えば露光ドーズ、露光焦点等)についてのターゲットのCDを推定し、そのCD推定値を用いて導出プロファイル又は導出プロファイルモデルのCDパラメータを調整することができる。ある実施の形態では、正確な導出プロファイル又は導出プロファイルモデルパラメータの反復再構築を実行することができる。
図12を参照すると、幾何学的に対称でありうるユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有するターゲットについてオーバレイ値を決定する方法である。この方法は2つのプロセス1200及び1210を含む。プロセス1200は、ユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを有するターゲットの測定結果を取得することを含む。プロセス1210は、測定されたターゲットのオーバレイ値を、プロセス1200からのターゲットの測定結果に基づいて決定することを含む。
プロセス1200は、本書に記載される、幾何学的に対称でありうるユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを含む測定対象のターゲット1220を入力とする。ある実施の形態では、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスを有する基板がメトロロジ装置(例えば図7のメトロロジ装置)に与えられる。
任意選択的に、プロセス1200は、そのターゲット用に指定された特定の測定戦略1230を入力とする。ある実施の形態では、測定戦略は、1つ又は複数の測定パラメータの値を指定することができる。1つ又は複数の測定パラメータは例えば、測定ビーム波長、測定ビーム偏光、測定ビームドーズ、及び/又は、ターゲットへの特定の照明についてメトロロジ装置の検出センサにより取得された多数の光学特性読み取り値から選択された1つ以上のものである。ある実施の形態では、測定戦略は、各々が1つ又は複数の測定パラメータの値を指定する複数の測定戦略を備えてもよい。測定戦略は、ターゲットを測定するために使用されることができる。
次いでプロセス1200は、メトロロジ装置を用いて任意選択的な測定戦略に従ってターゲットを測定する。ある実施の形態では、メトロロジ装置は、方向転換された放射の瞳表現を取得する。ある実施の形態では、メトロロジ装置は、瞳像1030(例えばターゲットがオーバレイの誤差を有しない場合)、又は瞳像1060(例えばターゲットがオーバレイの誤差を有する場合)などの瞳表現を生成することができる。従って、ある実施の形態では、プロセス1200は、放射の瞳表現のような、ターゲットから方向転換された放射に関する光学情報1240を出力する。
次いでプロセス1210は、光学情報1240を受信し、この光学情報を、ターゲットについてオーバレイ値1260を決定するよう処理する。ある実施の形態では、プロセス1210は、図11の方法によって決定された重み付け1250を入力として受信し、これは次いで、光学情報1240から取得又は導出される1つ又は複数の光学特性値(例えば強度)と組み合わされる。
ある実施の形態では、プロセス1210(又はプロセス1200)は、光学情報から未加工のオーバレイ信号を導出するよう光学情報を処理することができる。ある実施の形態では、未加工オーバレイ信号は、光学情報の差、すなわち対称軸又は対称点の両側の対称な画素間の光学特性値の差を備える。ある実施の形態では、導出瞳像1035(例えばターゲットがオーバレイ誤差を有しない場合)、又は導出瞳像1065(例えばターゲットがオーバレイ誤差を有する場合)が取得されることができる。
ある実施の形態では、重み付けと、ターゲットで方向転換された放射に関する光学情報(例えば、プロセス1200からの光学情報、又は未加工オーバレイ信号などのプロセス1200からの光学情報を処理したもの)とを組み合わせて、オーバレイ値が決定される。ある実施の形態では、方向転換された測定ビームの強度を関連する重み付けと線形結合したものを使用することで、オーバレイの迅速な決定が可能となる。例えばある実施の形態では、数式(4)を用いてオーバレイ値を導出することができる。数式(4)のオーバレイ値Mは、信号成分Siの各々についての重みwiを用いて未加工オーバレイ信号から、信号成分Siの重み付け結合として計算される。
ある実施の形態では、プロセス1200から収集された光学情報を更に用いて、オーバレイ以外の1つ又は複数のターゲット関連パラメータを導出することができる。例えば、プロセス1200から収集された光学情報は、CD、サイドウォール角、底壁傾斜などのターゲットの任意の1つ又は複数の幾何学プロファイルパラメータを導出するよう再構築プロセスにおいて使用されうる。従ってある実施の形態では、ダイ内エッチング後ターゲットなど、ターゲットから収集された同じ光学情報セットを用いて、ターゲット(デバイス構造等)のオーバレイ、CD、及び/又は1つ又は複数の他の幾何学プロファイルパラメータが決定されてもよい。
上記のように強度に着目しているが、ある実施の形態では、光学特性は反射率であってもよく、放射は偏光されてもよく、測定は交差偏光測定であってもよい。例えば、特定の直線偏光に露光されたターゲットが、その偏光によって又は別の偏光で測定されてもよい。従って、対称な画素p
i及びp'
iについて(ここでアポストロフィは対称な位置を表す)、これらの画素の反射率Rは、以下のように測定されうる。
ここで、sはs偏光を表し、pはp偏光を表す。従って、反射率R
SSは、ターゲットがs偏光を用いて照明された場合に測定されたs偏光放射の反射率Rに相当し、反射率R
SPは、ターゲットがp偏光を用いて照明された場合に測定されたs偏光放射の反射率Rに相当する等である。更に、これらの測定は異なる波長で行うことができる。また、特定の実施形態では、オーバレイ変化に応じて対称性が変化する対称なユニットセルについてのオーバレイを、合同なR
PS及びR
SPから見出し決定できることがわかっている。
更に、非線形性は、オーバレイから及び/又は他のパラメータから生じうる。上述の通り、特定の非線形性は、重み付けの適切な選択、例えばヘッセ行列及び/又は3次導関数を用いて重み付けを導出することによって対処できる。ある実施の形態では、非線形性は、非線形解法を用いて、ターゲットで方向転換された放射の測定された光学情報からオーバレイを導出することによって、対処されてもよい。
ある実施の形態では、オーバレイは、公称プロファイルを導出するために使用される上述の再構築エンジンを用いて決定されてもよい。例えば、導出される公称プロファイルに基づくモデル及び/又は導出される公称プロファイルモデルから動作する非線形ソルバーが、対象のターゲットで方向転換された放射から予想される光学情報をシミュレーションしたものを導出してもよく、これが対象のターゲットの測定された光学情報と比較されてもよい。上述のように、対象のターゲットは、対称的でありうると共にオーバレイによって対称性が変化するユニットセルの1つ又は複数の物理インスタンスを備える。特定の閾値と一致しない場合は、閾値と一致するまで、幾何学プロファイルパラメータ(例えばオーバレイ)を変動させ、光学情報をシミュレーションしたものを再び計算し、測定光学情報と比較することができる。同様に、対象のターゲットの測定光学情報は、対象のターゲットで方向転換された放射から予想される光学情報のライブラリと比較されてもよい(このライブラリは典型的に非線形ソルバーを用いて導出される)。特定の閾値と一致しない場合は、閾値と一致するまで、幾何学プロファイルパラメータ(例えばオーバレイ)を変動させ、光学情報をシミュレーションしたものについてライブラリを再び参照し、測定光学情報と比較することができる。
ある実施の形態では、対象のターゲットからの測定光学情報と共に再構築エンジンが用いられる場合、例えば各画素における光学特性値から対称点又は対称軸を挟んで対称配置された画素における光学特性値を減算することによって、上述のように対称放射分布が除去された測定光学情報が使用される。従って、光学情報は、実質的に非対称な放射分布にのみ関連する。同様に、光学情報をシミュレーションしたもの又は光学情報のライブラリは実質的に非対称な放射分布にのみ関連する。これは計算及び/又は比較の速度を向上させる。光学情報の大部分は差分によって除去されるので、計算又は評価する必要がないからである。
非線形解法についての更なる実施形態では、非線形ソルバーにより数式(3)の展開を解いてΔxovを導出することができる。具体的には、対象のユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルを決定することの一部として、数式(3)の(a−a')、(b−b')、(c−c')等(適用可能な場合)の値を決定することができる。例えば、導出公称プロファイルが非線形再構築の一部として一度決定されれば、導出公称プロファイルに対応する瞳についてシミュレーションされた光学情報又はライブラリ光学情報(例えば、オーバレイの特定の変化(例えばΔxov)に対する導出公称プロファイルの摂動に対応する)を取得し、次いで、a、b、c等(適用可能な場合)の値を瞳内の各画素について、例えば残差を最小化すべく(例えばオーバレイ(例えばΔxov)の1つ又は複数の摂動に応じて)解法を反復する非線形ソルバーにより決定することができる。その結果は、適用可能な場合、瞳についてのa値のベクトル(各a値は瞳の画素に対応する)、瞳についてのb値のベクトル(各b値は瞳の画素に対応する)、瞳についてのc値のベクトル(各c値は瞳の画素に対応する)等である。次いでこれらのベクトルを、対象のユニットセルを有するターゲットの測定瞳から決定されたSi値のベクトルと組み合わせることができる。例えば残差を最小化すべく解法を反復する非線形ソルバーは、これらの入力ベクトルを取得し、オーバレイΔxovを解くことができる。
上記の検討は、ユニットセルの物理プロファイルをモデリングするモデルの使用に着目しているが、ある実施の形態では、重み付けは、物理プロファイルモデリングを必要としないデータ駆動型手法を使用して導出されてもよく、または、物理プロファイルモデリングを補足するデータ駆動型手法によって導出されてもよい。そのためある実施の形態では、データ駆動型手法には物理プロファイルモデルを必要としないという利点があり、これは例えば秘密情報の共有を制限するために有用でありうる。なぜなら、物理プロファイルモデリングは、ユニットセルがデバイスパターン構造であれば機微情報でありうるユニットセル(従ってターゲット)に関する詳細事項から開始し、これを決定するからである。ある実施の形態では、データ駆動型手法は、例えば、測定された光学情報(例えば瞳強度)をパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)に変換するための上述した重みを比較的迅速に決定することを可能とする。ある実施の形態では、データ駆動型手法は、以下で検討するように測定データ及び関連する基準のみを必要としうるので、早い段階でパターニングプロセスパラメータを決定することを可能とする。
そこで、ある実施の形態では、データ駆動型手法は、対象のユニットセルの物理インスタンスを1つ又は複数のターゲットとしてパターニングした1つ又は複数の基板から測定されるデータ(「獲得」データ)を、対象のパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)の1つ又は複数の特定の設定値と共に処理することを含む。パターンを生成するための特定のパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)の意図的な「設定」値と、それらパターンから測定されるデータ(「獲得」データ)とのこの組み合わせを、「設定・獲得」プロセスと称する。例えば、パターニングプロセスの一部としてユニットセルの物理インスタンスの特定量のオーバレイが生成され、次いでユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットが測定され、例えばその瞳像(すなわち「獲得」データ)が取得される。ある実施の形態では、複数の基板がこのようにしてパターニングされ測定されてもよい。ある実施の形態では、オーバレイの複数の異なる設定値が生成され、このオーバレイの異なる値は1つの基板上にあってもよく、異なる複数の基板にわたってもよい。ある実施の形態では、各基板で複数のターゲットインスタンスが測定され、例えば複数の瞳像が得られる。ある実施の形態では、オーバレイは、ユニットセルの物理インスタンスの異なる部分間でのパターニングで設計倍率から倍率を変化させることによって生成されてもよい。ある実施の形態では、オーバレイは、ユニットセルの物理インスタンスの様々な部分をパターニングする間に設計位置から意図的な平行移動を与えることによって生成されてもよい。その結果、ターゲットには、意図的に適用された、すなわち例えばリソグラフィ装置によって引き起こされる、オーバレイが生じる。
ある実施の形態では、一般に、測定データ及び関連する基準値が取得される。従ってある実施の形態では、様々なオーバレイが存在するがこれらオーバレイが別の手段によって(例えば走査型電子顕微鏡から)決定される場合は、意図的なオーバレイを提供する必要はない。ある実施の形態では、対応する基準データを有するクリティカルディメンション均一基板(例えばCD・SEMから入手される)が入力データとして使用されてもよい。測定データ及び基準値を用いて、データ駆動型手法は、本書で検討されるように、推測されたオーバレイ値が基準値に近似するように重みを見出すことができる。従って、データ駆動型手法の検討は、意図的に設定されたオーバレイ値において得られる測定光学情報及び瞳表現に着目するが、それらは概して、より一般的な測定データ及び関連する基準値に適用することができる(測定されたものであるか意図的に設定されたものであるかに関わらず)。
更に、ここでの手法は特定のオーバレイ(例えばX方向のオーバレイ)に関連するが、ここでの手法は、対応する測定データ及び基準値を用いて、別のオーバレイ(例えばY方向のオーバレイ、別の層内の構造間のオーバレイ等)について反復できることは理解されよう。従って、別のオーバレイのために別の重みセットが決定されてもよい。
従って、図13を参照すると、データ駆動型手法のある実施の形態の高レベルフローが図示されている。1300では、測定光学情報(例えば瞳強度)をパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)に変換するための上述の重みを導出する計算が実行される。具体的には、この計算はいくつかの入力を使用する。入力の1つは、対象のユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットについての設定・獲得プロセスの設定値1320である。上記のように、1つ又は複数の基板にわたってターゲットの複数のインスタンスが測定されてもよく、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスでは、ターゲットの1つ又は複数の他のインスタンスとは、パターニングプロセスパラメータの意図的な設定値の値が異なっている。更なる入力は、様々な設定値におけるターゲットのインスタンスの測定光学情報1310である。ある実施の形態では、光学情報1310は、各々がターゲットのインスタンスに対応する複数の瞳表現である。次いで、入力1310及び1320がデータ駆動型手法で処理され、重み1330に達する。こうしたデータ駆動型手法の例について以下で説明する。
ある実施の形態では、重みw(wに下線)のベクトルを見出すためのデータ駆動型手法の一例は、重みwに達するよう以下の目的関数又はメリット関数を最小化するものである。
ここで、wは、測定光学特性(例えば強度)の値と組み合わされてパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)を決定するための重みベクトルであり、各重みは瞳の画素値に対応し、P
iは、パターニングプロセスパラメータの特定の設定値を得るようにパターニングされた基板iから取得したターゲットのインスタンスの測定瞳からの測定光学特性の画素値を含む各列を有する行列であり(この行列は転置されて、列が瞳の画素になり、行が基板上のターゲットの1つ又は複数のインスタンスになり、行列内の値は各画素における測定光学特性の値である)、s
i(s
iに下線)は、1つ又は複数の基板i上のターゲットの1つ又は複数のインスタンスについてのパターニングプロセスパラメータの対応する設定値を含むベクトルであり、各設定値はパターニングプロセスパラメータ値に対応し、1(1に下線)は、設定値の数のサイズをもつ単位ベクトルであり、c
iは、各基板について、パターニングプロセスパラメータの設定値とパターニングプロセスパラメータの推測値(P
i Tw(wに下線))との間のオフセット差であり、Dは、測定された基板の数である。行列P
iは、ターゲットの各インスタンスについての異なる結果の組み合わせとすることができる。例えばターゲットは、異なる波長や異なる偏光等を用いて測定されてもよい。そのため、これらの結果が各列に連結されてもよく、例えば、ある一つの列は、第1の波長及び第1の偏光で測定されたターゲットの瞳の画素の値を有し、この列には、第2の異なる波長で測定されたターゲットの瞳の画素の値が続き、又は、第2の異なる偏光で測定されたターゲットの瞳の画素の値が続く(更にこの後に、1つ又は複数の異なる偏光及び/又は波長における別の値が続いてもよい)。
従って、実際にはこの関数は、各基板iについての推測値Pi Twがオフセットciを除いて設定値siと(L2正則化ノルムの意味で)できるだけ近似して見えるような、重みベクトルwを見出す。原理上、逆行列によって最適な重み及びオフセットを計算することができる。測定光学特性の画素値は1つ又は複数の特定のメトロロジ装置によって取得されるので、取得された重みは、結果に対するこの特定のメトロロジ装置による影響を軽減すべく、較正データにより正規化されてもよい。
データ駆動型手法として目的関数又はメリット関数を用いて上述のように重みを見出すことに代えて、又はこれに加えて、データ駆動型手法は、重みを、対象のパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)に意図的に差を与えたターゲットの測定瞳に基づいて決定するように、ニューラルネットワークのような機械学習アルゴリズム、又は非線形方法を用いてもよい。
ある実施の形態では、トレーニング(すなわち、目的関数又はメリット関数又は機械学習アルゴリズムを用いる)の後、重みは、他のデータを用いてチェックされてもよい。トレーニングの結果として過剰適合が生じる可能性があり、データ駆動型手法は、データを設定値に「ぴったり」適合させる。従って、交差検証が実行される。既知の設定値を有する新しいデータが、重みをチェックするために使用される。また、この新しいデータは、処理中の基板のサブセットでありうる。従ってある実施の形態では、トレーニングは基板のサブセットに対して実行され、検証は基板の別の(分離した)サブセットに対して実行される。
図14は、物理幾何モデルと組み合わせたデータ駆動型手法のある実施の形態の高レベルフローを示している。この実施形態では、図13を参照して記載したデータ駆動型手法を用いて重みを導出することができ、これを用いて物理幾何モデルを調整して(例えば、ヘッセ行列を用いてより良いモデル公称値を得ることや、モデル公称値を変更することによって等)、物理幾何モデルからの重み(例えば、物理幾何モデルのヤコビ行列(のムーア・ペンローズ擬似逆行列))が、データ駆動型手法によって決定される重みと同一又は同様となる(例えば、値が統計的に)ようにする。従ってある実施の形態では、(スケーリングされた)重みベクトルwを用いて物理幾何モデルを微調整して、ヤコビ行列(のムーア・ペンローズ擬似逆行列)が(スケーリングされた)重みベクトルwと同様になるように物理幾何モデルを調整することができる。
従ってある実施の形態では、1400では、データ駆動型手法(その例は上述されている)が実行され、重みが上述のように導出される。この計算はいくつかの入力を使用する。入力の1つは、対象のユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットについての設定・獲得プロセスの設定値1420である。上記のように、ターゲットの複数のインスタンスが1つ又は複数の基板にわたって測定されてもよく、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスでは、ターゲットの他の1つ又は複数のインスタンスとはパターニングプロセスパラメータの意図的な設定値の値が異なっている。更なる入力は、様々な設定値におけるターゲットのインスタンスの測定光学情報1410である。ある実施の形態では、光学情報1410は、各々がターゲットのインスタンスに対応する複数の瞳表現である。次いで、入力1410及び1420がデータ駆動型手法で処理され、重み1430に達する。
重み1430は、プロセス1440に入力され、重み1430を用いて物理幾何モデルが微調整される。プロセス1440は、ユニットセルについての物理プロファイル1450を取得する(プロセス1440はこれを用いて物理プロファイルモデルを導出する)か、又は、ユニットセルについての物理プロファイルモデル1450を取得する(プロセス1440はこれを用いる)。ある実施の形態では、物理プロファイルは、上述のように、ユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルである。
プロセス1440は、物理幾何モデルを用いて、重み1430に対応する重みを導出する。次いで、この重みが重み1430と比較される。この比較は、大きさのマッチング、統計的分析、フィッティング評価等を含みうる。(例えば閾値に対する比較を評価することによって)有意な差が存在する場合、物理プロファイルの1つ又は複数のパラメータが調整されてもよい。例えば、1つ又は複数の物理プロファイルパラメータ(例えばCD、サイドウォール角、材料高さ等)は、比較の結果が例えば特定の閾値に近くなるか又は等しくなるように、調整されてもよい。ある実施の形態では、ヘッセ行列を用いてこの微調整を実行するか、又は非線形ソルバー(1つ又は複数のフォワードコール(例えばマクスウェルソルバー)を含む)を用いて実行することができる。この調整及び比較は、閾値と合致するか又は交差するまで反復することができる。次いで、調整された物理幾何モデルは、パターニングプロセスパラメータ値を導出すべく対象のターゲットの測定光学情報と組み合わせて用いられる更新された重み1460を出力することができる。
図15は、物理幾何モデルと組み合わされたデータ駆動型手法の更なる実施形態の高レベルフローを示している。物理幾何モデルが測定データと同様に機能する場合、物理幾何モデルを用いてプロセス変動の影響を予測することができる。そのためある実施の形態では、物理幾何モデルのヘッセ行列を用いて重みを調整することで、物理幾何モデルの調整に使用される重みを取得するためにデータ駆動型手法で使用したデータ内に存在しなかったプロセス変動に対して重みの直交性を(より)高めることができる。
また、ヘッセ行列を使用して重みを調整するこの手法は、データ駆動型手法を用いることなく実行することも可能である。すなわち、ヘッセ行列を用いて重みを更新するこの手法は、図11に関連して記載した物理幾何モデルの手法により実行することができる。この場合、例えば、上述のように、ユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルを得るため使用されたデータ内に存在しなかったプロセス変動に対して重みの直交性を(より)高めるように、重みを調整することができる。そうした調整によって、物理幾何モデルの生成に使用された測定データ内で観察されなかったプロセス変動に対して、重みはよりロバストになる。
従ってある実施の形態では、1500では、データ駆動型手法(その例は上述されている)が実行され、上述のように重みが導出される。この計算はいくつかの入力を使用する。入力の1つは、対象のユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットについての設定・獲得プロセスの設定値1510である。上記のように、ターゲットの複数のインスタンスが1つ又は複数の基板にわたって測定されてもよく、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスでは、ターゲットの他の1つ又は複数のインスタンスとはパターニングプロセスパラメータの意図的な設定値の値が異なっている。更なる入力は、様々な設定値におけるターゲットのインスタンスについての測定光学情報1505である。ある実施の形態では、光学情報1505は、各々がターゲットのインスタンスに対応する複数の瞳表現である。次いで、入力1505及び1510がデータ駆動型手法で処理され、重み1515に達する。
重み1515がプロセス1520に入力され、重み1515を用いて物理幾何モデルが微調整される。プロセス1520は、ユニットセルについての物理プロファイル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いて物理プロファイルモデルを導出する)か、又は、ユニットセルについての物理プロファイルモデル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いる)。ある実施の形態では、物理プロファイルは、上述のように、ユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルである。
プロセス1520は、物理幾何モデルを用いて、(重み1515に対応する)重みを導出する。次いで、この重みが、重み1515と比較される。この比較は、大きさのマッチング、統計的分析、フィッティング評価等を含みうる。(例えば閾値に対する比較を評価することによって)有意な差が存在する場合、物理プロファイルの1つ又は複数のパラメータを調整することができる。例えば、1つ又は複数の物理プロファイルパラメータ(例えばCD、サイドウォール角、材料高さ等)は、比較の結果が例えば特定の閾値に近くなるか又は等しくなるように、調整されてもよい。ある実施の形態では、ヘッセ行列を用いてこの微調整を実行するか、又は非線形ソルバー(1つ又は複数のフォワードコール(例えばマクスウェルソルバー)を含む)を用いて実行することができる。この調整及び比較は、閾値と合致するか又は交差するまで反復することができる。
しかし、理解されるように、パターニングプロセスは実行中に変動しうるとともに、パターニングプロセスの実行のたびに異なって変動しうる。従って、データ駆動型手法のために取得されたデータは、起こりうる全てのパターニングプロセス変動を考慮に入れているわけではない。しかし、物理幾何モデルが測定データと同様に機能するようにこのモデルの調整が行われる場合は、物理幾何モデルを用いてプロセス変動の影響を予測し、これに応じて重みを調整することができる。
従ってある実施の形態では、調整された物理幾何モデル1530が使用され、調整された物理幾何モデルのヘッセ行列が1535において計算される。次いで、1545において、ヘッセ行列1540を用いて重みを調整することで、物理幾何モデルの調整に使用される重みを取得するためにデータ駆動型手法で使用したデータ内に存在しなかったプロセス変動に対して重みの直交性が(より)高まる(すなわちロバストになる)ようにする。言い換えると、基板がプロセス変動を経験する場合であっても、基板からの測定データと組み合わせた際に正確な結果を生成する可能性が高くなるように、重みが調整される。
どのようにヘッセ行列を用いて重みを微調整するかの非限定的な例について、ここではオーバレイに関連付けて記載されているが、別のパターニングプロセスパラメータが適宜使用されてもよい。この例では、1つのタイプのオーバレイ(例えばX方向のオーバレイ)のみを評価することを仮定している。複数タイプのオーバレイを用いた微調整も可能である。
ヘッセ行列を用いて重みを微調整するこの例においては、オーバレイ応答が、1つ又は複数の設定・獲得基板で測定されたデータから、特異値分解をこのデータに適用することによって、推定される。固有ベクトルd(dに下線、長さ1を有する)がオーバレイ応答に対応するものと仮定する。次いで、以下の数式を解いてベクトルΔp(Δpに下線)を見出す。
ここで、J(Jに下線)は、オーバレイパラメータに対するヤコビ行列であり、ヘッセ行列H(太字)は、プロセス変動(例えばCD、材料高さ等の変動)及びオーバレイパラメータに関する偏導関数を列に含む行列である(ヤコビ行列及びヘッセ行列の双方が上述のようにモデルから取得される)。決定されたベクトルΔpは、更新された(例えばより良い)モデルを得るためにモデルにおいて非オーバレイパラメータに適用されるデルタパラメータに対応する。
重みをプロセス変動に対してロバストにする(すなわちプロセス変動に直交させるため)ために、以下の手法を用いることができる。瞳I(Iに下線)は、以下の2次テイラー展開によって定義することができる。
ここで、J(Jに下線)は、オーバレイパラメータに関するヤコビ行列であり、H(太字)は、プロセス変動(例えばCD、材料高さ等の変動)及びオーバレイパラメータに関する偏導関数を列に含む行列である。ベクトルΔp(Δpに下線)は、対応するプロセス変動を含む。従って、所与の構造について、及び、オーバレイ値oを有する所与のプロセス変動インスタンスΔpについて、瞳は(ほぼ)Iに等しい。理解されるように、上記の定式化は、より多くのオーバレイパラメータへと、それらの寄与も追加することによって拡張することができる。更に、テイラー展開における高次は無視されるので、この定式化は近似である。
今度は、プロセス変動の影響が小さい場合、重みはヤコビ行列Jのムーア・ペンローズ逆行列を用いて計算される。オーバレイパラメータが1つのみである場合、重みは、
に等しい。また、実際、瞳との重み付け平均(内積)により、オーバレイ値oが得られ、
すなわち、
となる。しかしながら、プロセス変動が大きい影響を有する場合、オーバレイ応答は、
に変化する。これらの変動に対して重みをロバストにするために、
とする。これは、行列[J H](Jに下線、Hは太字)の擬似逆行列の第1行に等しい重みw(wに下線)を取得することによって達成できる。あるいは、言い換えると、逆行列を求める前にヘッセ行列Hがヤコビ行列に連結される。このようにして、重みはプロセス変動に対して直交となる(しかし、精度はいくらか犠牲となる)。
従って、調整1545から、パターニングプロセスパラメータ値を導出するために対象のターゲットの測定光学情報と組み合わされて用いられる、調整された重み1550が出力される。
図16は、物理幾何モデルと組み合わされるデータ駆動型手法の更なる実施形態の高レベルフローを示している。この実施形態では、データ駆動型手法に入力されるデータは、パターニングプロセスのプロセス変動(例えば、パターニングプロセス変動はCD測定から取得されうる)を含む人工光学情報(例えば瞳表現)を含むことによって、拡張される。人工光学情報は単独で又は測定光学情報と組み合わせて、データ駆動型手法を用いた新たな重みを見出すように使用されうる。
従ってある実施の形態では、1500では、データ駆動型手法(その例は上述されている)が実行され、上述のように重みが導出される。この計算はいくつかの入力を使用する。入力の1つは、対象のユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットについての設定・獲得プロセスの設定値1510である。上記のように、ターゲットの複数のインスタンスが1つ又は複数の基板にわたって測定されてもよく、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスでは、ターゲットの他の1つ又は複数のインスタンスとはパターニングプロセスパラメータの意図的な設定値の値が異なっている。更なる入力は、様々な設定値におけるターゲットのインスタンスについての測定光学情報1505である。ある実施の形態では、光学情報1505は、各々がターゲットのインスタンスに対応する複数の瞳表現である。次いで、入力1505及び1510がデータ駆動型手法で処理され、重み1515に達する。
重み1515がプロセス1520に入力され、重み1515を用いて物理幾何モデルが微調整される。プロセス1520は、ユニットセルについての物理プロファイル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いて物理プロファイルモデルを導出する)か、又は、ユニットセルについての物理プロファイルモデル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いる)。ある実施の形態では、物理プロファイルは、上述のように、ユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルである。
プロセス1520は、物理幾何モデルを用いて、重み1515に対応する重みを導出する。次いで、この重みが、重み1515と比較される。この比較は、大きさのマッチング、統計的分析、フィッティング評価等を含みうる。(例えば閾値に対する比較を評価することによって)有意な差が存在する場合、物理プロファイルの1つ又は複数のパラメータを調整することができる。例えば、比較の結果が例えば特定の閾値に近くなるか又は等しくなるように、1つ又は複数の物理プロファイルパラメータ(例えばCD、サイドウォール角、材料高さ等)を調整できる。この調整及び比較は、閾値と合致するか又は交差するまで反復することができる。
従ってある実施の形態では、1535において、調整された物理幾何モデル1530が使用され、調整された物理幾何モデルのヘッセ行列が計算する。次いで1610では、ヘッセ行列1600を用いて人工光学情報(例えば1つ又は複数の瞳表現)が生成される。人工光学情報は、シミュレーションされた光学情報である。人工光学情報は、パターニングプロセスにおける1つ又は複数の予想されるプロセス変動を模擬することを意図している。ある実施の形態では、パターニングプロセスにおける1つ又は複数のプロセス変動に関するデータ1620が、人工光学情報を導出するためにヘッセ行列1600と組み合わせて使用されうる。ある実施の形態では、人工瞳I(Iに下線)が、上記の数式(8)に様々なオーバレイ値o及び様々なパラメータ変動Δpを代入することによって生成されうる。ここで、重みは、
に相当する。上述の数式(8)は単一のオーバレイパラメータを対象としているが、この手法は、より多くのオーバレイパラメータへと、それらの寄与も追加することによって拡張されうる。更に、テイラー展開における高次は無視されるので、数式(8)を用いた手法は近似である。データ1620は例えば、プロセス変動の種類及び程度を記述する情報を備えてもよい(例えば、オーバレイやCD等の指標は、ある特定のパーセンテージで変動を生じうる)。データ1620は、例えばオーバレイやCD等の測定など、パターニングプロセスにおける測定によって取得されうる。従って、データ1620をヘッセ行列1600と共に用いて、予想されるプロセス変動を含むシミュレーションされた光学情報1630が生成される。人工光学情報1630は、人工光学情報1630に関連付けられた1つ又は複数の関連推定設定値も含みうる。次いで、人工光学情報1630(及び関連設定値)は、単独で又は測定光学情報と組み合わせて解析するためにデータ駆動型手法1500に入力され、データ駆動型手法を用いた新たな重みが見出される。
図17は、物理幾何モデルと組み合わされるデータ駆動型手法の更なる実施形態の高レベルフローを示している。この実施形態は、ヘッセ行列を計算する代わりに、全てのプロセス変動について非線形ソルバー(例えばマクスウェルソルバー)へのフォワードコールを実行して人工光学情報を得ることを除いて、図16の実施形態と同様である。
従ってある実施の形態では、1500では、データ駆動型手法(その例は上述されている)が実行され、上述のように重みが導出される。この計算はいくつかの入力を使用する。入力の1つは、対象のユニットセルの物理インスタンスを有するターゲットについての設定・獲得プロセスの設定値1510である。上記のように、ターゲットの複数のインスタンスが1つ又は複数の基板にわたって測定されてもよく、ターゲットの1つ又は複数のインスタンスでは、ターゲットの他の1つ又は複数のインスタンスとはパターニングプロセスパラメータの意図的な設定値の値が異なっている。更なる入力は、様々な設定値におけるターゲットのインスタンスについての測定光学情報1505である。ある実施の形態では、光学情報1505は、各々がターゲットのインスタンスに対応する複数の瞳表現である。次いで、入力1505及び1510がデータ駆動型手法で処理され、重み1515に達する。
重み1515がプロセス1520に入力され、重み1515を用いて物理幾何モデルが微調整される。プロセス1520は、ユニットセルについての物理プロファイル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いて物理プロファイルモデルを導出する)か、又は、ユニットセルについての物理プロファイルモデル1525を取得する(プロセス1520はこれを用いる)。ある実施の形態では、物理プロファイルは、上述のように、ユニットセルについて導出される公称プロファイル及び/又は導出される公称プロファイルモデルである。
プロセス1520は、物理幾何モデルを用いて、重み1515に対応する重みを導出する。次いで、この重みが、重み1515と比較される。この比較は、大きさのマッチング、統計的分析、フィッティング評価等を含みうる。(例えば閾値に対する比較を評価することによって)有意な差が存在する場合、物理プロファイルの1つ又は複数のパラメータを調整することができる。例えば、比較の結果が例えば特定の閾値に近くなるか又は等しくなるように、1つ又は複数の物理プロファイルパラメータ(例えばCD、サイドウォール角、材料高さ等)を調整できる。この調整及び比較は、閾値と合致するか又は交差するまで反復することができる。
従ってある実施の形態では、1720において、調整された物理幾何モデル1700を用いて上述のように人工光学情報が計算される。上述のように、パターニングプロセスにおける1つ又は複数のプロセス変動に関するデータ1710が、人工光学情報を導出するために、調整された物理幾何モデル1700と組み合わせて使用されうる。例えばデータ1710は、プロセス変動の種類及び程度を記述する情報を備えてもよい(例えば、オーバレイやCD等の指標は、ある特定のパーセンテージで変動しうる)。データ1710は、例えばオーバレイやCD等の測定など、パターニングプロセスにおける測定によって取得されうる。上記のように、1720のプロセスは、プロセス変動について非線形ソルバー(例えばマクスウェルソルバー)へのフォワードコールを用いて人工光学情報を取得することができる。従って、データ1710が調整された物理幾何モデル1700と共に使用され、予想されるプロセス変動を含むシミュレーションされた光学情報1730が生成される。人工光学情報1730は、人工光学情報1730に関連付けられた1つ又は複数の関連推定設定値も含みうる。次いで、人工光学情報1730(及び関連設定値)は、単独で又は測定光学情報と組み合わせて解析するためにデータ駆動型手法1500に入力され、データ駆動型手法を用いた新たな重みが見出される。
図10Aから図10Cにおいて、実質的に1方向のみのオーバレイがユニットセルの対称性の変化を引き起こす比較的単純なユニットセルの例を提示した。具体的には、図10Aから図10Cのユニットセルでは、X方向のオーバレイ変化によってユニットセルの対称性/非対称性の変化が生じるのに対し、Y方向のオーバレイ変化はユニットセルの対称性の変化を生じない。これは、図10Aから図10Cのユニットセルが有する2つの構造1000、1005が、実質的に1方向のみのオーバレイによってユニットセルの対称性の変化を引き起こすような特定の幾何学的態様で構成されていることの結果である。もちろん、これは、適切な構造の選択によってこのように設計することができる。しかしながら、実質的に1方向のみのオーバレイがユニットセルの対称性の変化を引き起こすような特定の幾何学的態様を有するデバイス構造など既存の構造を特定することも可能である。従って、実質的に1方向のみ(X方向である必要はない)のオーバレイの決定を可能とする様々なユニットセルを選択又は設計することができる。
しかしながら、有利なことに、2以上の別々のオーバレイについてユニットセルの対称性の変化が生じるように構成されたユニットセルが特定又は設計されてもよい。ある実施の形態では、別のオーバレイは、異なる方向とすることができる。具体的には、ある実施の形態では、第1のオーバレイはX方向であり、第2のオーバレイはY方向でありうる。ある実施の形態では、別のオーバレイはそれぞれ、ユニットセルの構造または部分の様々な組み合わせ間のものでありうる。ある実施の形態では、それらの構造はターゲットの同じ層及び/又は異なる層内に存在してもよい。具体的には、ある実施の形態では、第1のオーバレイはユニットセルの第1の構造と第2の構造との間であり、第2のオーバレイはユニットセルの第1の構造(又は第2の構造)と第3の構造との間、又はユニットセルの第3の構造と第4の構造との間でありうる。この場合、第1のオーバレイ及び第2のオーバレイは同一方向でありうる。当然、異なる方向における別のオーバレイと、ユニットセルの構造の組み合わせによる別のオーバレイとを組み合わせてもよい。例えば、第1のオーバレイは、第1の層内の第1の構造及びこれよりも下方の第2の層内の第2の構造のX方向のものであり、第2のオーバレイは、第1の層内の第1の構造及び第2の層よりも下方の第3の層内の第3の構造のY方向のものでありうる。このように、ユニットセル(従ってターゲット)の適切な特定又は設計によって、オーバレイの多数の組み合わせを決定することができる。
更に、理解されるように、X方向及びY方向のオーバレイを決定することで、(X及びYの)合計オーバレイの決定が適切な組み合わせにより可能となる。同様に、オーバレイが発生しうる複数の異なる構造について合計オーバレイの決定を可能とするために、それらの構造の各々のオーバレイを決定する必要がある。このため、一例として、オーバレイが発生しうる4層(これらの層のうち1つが基準層である)内に4つの別個の構造を有するユニットセルであれば、ユニットセルの合計オーバレイの決定を可能とするために6のオーバレイ(各層でX及びY)を決定すればよい。もちろん、所望の場合には、その一部を決定することで、対象となる1つ又は複数の別種のオーバレイを4層間で得てもよい。
図18は、ターゲットのマルチプルオーバレイユニットセルの例示的な実施形態を示している。図10Aから図10Cのユニットセルと同様に、このユニットセルは第1の構造1000及び第2の構造1005を備える。加えて、このユニットセルは、この実施形態ではZ方向に第1及び第2の構造1000、1005の上方の層内にある第3の構造1800を有する。この実施形態では、このユニットセルの非対称性が、1つ又は複数の異なるオーバレイによって生成されうる。例えば、構造1005と構造1800との間のX方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるX方向のオーバレイを生じうる。別の例として、構造1005と構造1000との間のY方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるY方向のオーバレイを生じうる。更に別の例として、構造1000と構造1800との間のY方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるY方向の別のオーバレイを生じうる。
図19は、ターゲットのマルチプルオーバレイユニットセルの別の例示的な実施形態を示している。図10Aから図10Cのユニットセルと同様に、このユニットセルは第1の構造1000及び第2の構造1005を備える。更に、図18のユニットセルと同様に、このユニットセルは、この実施形態ではZ方向に第1及び第2の構造1000、1005の上方の層内にある第3の構造1800を有する。更に、このユニットセルは、この実施形態ではZ方向に第1、第2、及び第3の構造1000、1005、1800の上方の層内にある第4の構造1900を有する。図18のユニットセルと同様に、この実施形態では、このユニットセルの非対称性が1つ又は複数の異なるオーバレイによって生成されうる。例えば、構造1005と構造1800との間のX方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるX方向のオーバレイを生じうる。別の例として、構造1005と構造1900との間のX方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるX方向のオーバレイを生じうる。別の例として、構造1005と構造1000との間のY方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるY方向のオーバレイを生じうる。更に別の例として、構造1000と構造1800との間のY方向の相対的なシフトは、非対称性を生じさせるY方向の別のオーバレイを生じうる。
従ってある実施の形態では、実際に複数の別種のオーバレイが存在する場合、図18又は図19のユニットセルの照明された物理インスタンスを測定することによって、複数の異なるオーバレイを潜在的に含みうる光学情報を生成する。例えば図18を参照すると、図18のユニットセルの対称性がゼロのオーバレイを表すと共に、構造1005がその上に重なった構造に対してゼロオーバレイ位置からX及びYにシフトした場合(例えば、0度、90度、180度、又は270度ではない方向のシフト)、このシフトは、構造1005と構造1800との間のX方向の相対的なシフト及び構造1005と構造1000との間のY方向の相対的なシフトに起因した非対称性を生じる。このため、X方向及びY方向の双方で構造1005のオーバレイを決定することが望ましい(この組み合わせが構造1005の合計オーバレイを生成する)。
後述するように、光学特性値から、ユニットセルの物理インスタンスについての第1のオーバレイの値を、同じ光学特性値から取得可能なユニットセルの物理インスタンスについての第2のオーバレイとは別に決定することができる手法が提示される。ここで、第1のオーバレイは、第2のオーバレイとは異なる方向である(例えばX方向のオーバレイ及びY方向のオーバレイ)か、又は、ユニットセルの部分についての第2のオーバレイとは異なる組み合わせ間のものである(例えば、構造1005と構造1800との間の第1のオーバレイ、及び構造1005と構造1000との間の又は構造1000と構造1800との間の第2のオーバレイであり、第1のオーバレイ及び第2のオーバレイは場合によっては同一方向でありうる)。
すなわちある実施の形態では、ある光学特性値における第1のオーバレイ情報を、同じ光学特性値における第2の(又はより多くの)オーバレイ情報から分離するように、重みが決定される。従ってある実施の形態では、特別に選択された重みを適用して、これらの重みを光学特性値と組み合わせることにより、対象の特定のオーバレイが、同じ光学特性値において生じうる他のオーバレイ情報から区別して生成される。実際、重みは、対象のオーバレイを特徴付けると共に、1つ又は複数の他のオーバレイを抑制する。もちろん、対象のオーバレイそれぞれに異なる重みセットを構築して、様々な対象のオーバレイの各々について異なる値を生成するように光学特性値が処理されてもよい。
この手法について図20のグラフを参照して説明する。図20のグラフは、この手法のグラフ表示を提示しているが、実際には、グラフを生成する必要なく全ての処理を数学的に実行できるので、グラフを構築する必要はない。更に、この手法は図11のモデルを参照して記載されている。しかし、本書の他の図を参照して記載されるモデル(及びそれらに関連する他の手法)も使用することができる。
更に、この例は、モデルから重みの線形バージョンを導出することに関して提示される。すなわちある実施の形態では、重みはヤコビ行列(のムーア・ペンローズ擬似逆行列)から導出される。
従って、この線形の事例では、特定方向のオーバレイなど特定のパラメータを再構築するために、ヤコビ行列は逆行列とされうる。しかし、対象のパラメータの列を残りの列にどのように相関付けるかによって、このパラメータの再構築がどのくらい容易であるかが決定される。
そこで、対象のユニットセル(例えば図18のユニットセル)の公称プロファイルモデルを例えば有する場合、少なくとも2つのベクトルが生成されうる。第1のオーバレイベクトルp1(p1に下線)は、ユニットセル内の第1の対象のオーバレイ(例えばX方向のオーバレイ)を表し、第2のオーバレイベクトルp2(p2に下線)は、第2の対象のオーバレイ(例えばY方向のオーバレイ)を表す。理解されるように、更なるベクトルが、追加の対象のオーバレイについて生成されてもよい。
更に、2つのオーバレイベクトルの各々について、ユニットセルの物理インスタンスの予想測定値に対応する瞳表現の1つ又は複数の画素が選択される。この実施形態では、各オーバレイベクトルについて1対の画素が選択され、各画素対は、前述のように対称配置された画素を備える。望ましくは、画素対は、上述のように、瞳表現の非対称放射分布部分から選択される。
ここで、第1のオーバレイベクトルp1は、第1のオーバレイベクトルについての第1の対象のオーバレイの変化(他のパラメータは全て不変のままである。すなわち、第2の対象のオーバレイは変化させない)に対する画素対の応答(この場合は、対を生成する画素間の非対称な信号)に対応する。この応答は、公称プロファイルモデルを用いて第1の対象のオーバレイの変化(例えば1nmの変化)を誘発し、次いでこの変化に対する画素対の光学応答(例えば強度)を計算することによって生成されうる。
同様に、第2のオーバレイベクトルp2は、第2のオーバレイベクトルについての第2の対象のオーバレイの変化(他のパラメータは全て不変のままである。すなわち、第1の対象のオーバレイは変化させない)に対する画素対の応答(この場合は、対を生成する画素間の非対称な信号)に対応する。この応答は、公称プロファイルモデルを用いて第2の対象のオーバレイの変化(例えば1nmの変化)を誘発し、次いでこの変化に対する画素対の光学応答(例えば強度)を計算することによって生成されうる。
この結果得られたベクトルが図20に示されている。横軸uは、第1の画素対の対称配置された画素間の非対称な強度(Ii−Ii’)に対応し、縦軸vは、第2の画素対の対称配置された画素間の非対称な強度(Ii−Ii’)に対応する。このように、図20は2つの極めて相関性の高いベクトルp1およびp2を示している。
従って、画素対に対する第1及び第2の対象のオーバレイの寄与を分離するために、ベクトルp1を、ベクトルp2に直交するベクトルであるベクトルp2 ⊥に後方投影してベクトルp'1を形成し、投影されたベクトルp'1の長さを、ベクトルp1とp2 ⊥との間の角度θ1のコサインで除算する。このベクトルは、第1の対象のオーバレイを画素対の強度から隔離するのに役立つ(また、拡張によって、瞳表現における他の画素対)。
これに加えて又はこれに代えて、画素対に対する第1及び第2の対象のオーバレイの寄与を分離するために、ベクトルp2を、ベクトルp1に直交するベクトルであるベクトルp1 ⊥に後方投影してベクトルp'2を形成し、投影されたベクトルp'2の長さを、ベクトルp2とp1 ⊥との間の角度θ2のコサインで除算する。このベクトルは、第2の対象のオーバレイを画素対の強度から隔離するのに役立つ(また、拡張によって、瞳表現における他の画素対)。
そこで、再び数式(3)及び数式(4)を参照すると、S
iは、画素対の対称配置された画素間の非対称な強度(I
i−I
i’)を表している。従って、第1のオーバレイベクトルp
1は、第1の対象のオーバレイの変化に対する、U
0のS
iを有する第1の画素対及びV
0のS
iを有する第2の画素対の応答に対応しうる。同様に、第2のオーバレイベクトルp
2は、第2の対象のオーバレイの変化に対するそれら第1の画素対及び第2の画素対の応答に対応しうる。このようにして、ベクトルp'
1及び/又はベクトルp'
2が構築されうる。ただし、これらは双方とも説明のために構築される。ベクトルp'
1及びベクトルp'
2は、U
0に対応した第1の画素対に対応する強度uについて、及びV
0に対応した第2の画素対に対応する強度vについて定義される。従って、ベクトルp'
1及びベクトルp'
2は次のように記述されうる。
従ってここでは、上述した線形の文脈において、更に数式(4)を参照して、以下のように、U
0、V
0、並びにベクトルp'
1及びp'
2に基づいて、第1の対象のオーバレイのオーバレイ値を定義することができる。
これに加えて又はこれに代えて、以下のように、U
0、V
0、並びにベクトルp'
1及びp'
2に基づいて、第2の対象のオーバレイのオーバレイ値を定義することができる。
従って、数式(14)から、第1の対象のオーバレイを決定するための重みは、U
0及びV
0のそれぞれについて以下となる。
更に、数式(15)から、第2の対象のオーバレイを決定するための重みは、U
0及びV
0のそれぞれについて以下となる。
従って、理解されるように、瞳表現における画素対の全て又は実質的に全てについてこれを繰り返して、第1の対象のオーバレイについての重みw
iのセット(w
i 1)に到達し、及び/又は第2の対象のオーバレイについての重みw
iのセット(w
i 2)に到達することができる。次いで、これらの一方又は双方を数式(4)に従って測定光学特性値に適用して、それぞれの対象のオーバレイのオーバレイ値に至ることができる。もちろん、1つ又は複数の更に別の対象のオーバレイを評価し、それらについて1つ又は複数の適切な重みセットを決定することも可能である。理解されるように、ある実施の形態では、様々な対象のオーバレイの全てに対する感度(例えばヤコビ行列)が、特定の対象のオーバレイの重みの定義に含まれる。
従って、例えば4つの層(これらの層のうち1つが基準層である)を有するユニットセルに関して、各層のX方向及びY方向のシフトが対称性の変化を引き起こす(例えば、非対称性を引き起こす、又は更なる非対称性を引き起こす、又は非対称なユニットセルを対称にする)場合、6つのベクトルを生成することができ(各ベクトルが異なる画素対に関連付けられている)、これら6つのベクトルは、各層についてのX方向のオーバレイベクトル及び各層についてのY方向のオーバレイベクトルを備える。従って、各オーバレイを導出するために6セットの重みが存在しうる。もちろん、ベクトルのうち1つが対象でない場合は、重みセットの全てを導出する必要はない(しかしある実施の形態では、対象の特定のオーバレイの重み定義に、様々な対象のオーバレイの全てに対する感度(例えばヤコビ行列)が含まれる)。これらのオーバレイのうち2以上の適切な数学的組み合わせによって、任意の他のオーバレイを決定することができる。
理解されるように、ユニットセルの層のシフトには対称性の変化をもたらさないものがあり、従ってこのシフトに対応したオーバレイはユニットセルから決定することができない。このため、明らかに、そうしたシフトについてはベクトルが定義され得ない。従って、図18を一例として取り上げると、このユニットセルについては3つのベクトルを定義することができる。すなわち、1つはX方向オーバレイであり、2つは異なるY方向オーバレイである。このため、測定光学特性値と組み合わされたときX方向のオーバレイを与える1つの重みセットを決定することができる。あるいは、測定光学特性値と組み合わされたときY方向のオーバレイのうち一方を与える重みセットを決定することができ、及び/又は測定光学特性値と組み合わされたときY方向のオーバレイのうち他方を与える重みセットを決定することができる。もちろん、3つの重みセット全てが決定されてもよく、又は2つのみでもよい。
上記の検討は、デバイスの構造から構成されている対称なユニットセルの1つ又は複数のインスタンスによって形成されたターゲットに着目している。そうしたターゲットは、製品上ターゲットで方向転換された放射の製品上測定によって、パターニングプロセスパラメータの製品上の値の決定を可能とする。しかしながら、上述のように、ターゲットはデバイス構造のみから構成される必要はない。言い換えると、デバイス構造のみを備えるわけではない構造をもつ非製品ターゲットが提供されてもよい。例えばある実施の形態では、ターゲットは、デバイスを形成すべく使用されるのではなく単に測定用に使用される構造から特別に生成されてもよい。そうしたターゲットは、例えばデバイスから離れたスクライブレーンに設けられてもよい(従って、デバイスパターンから離れたデバイスパターニングパターンの一部に設けられてもよい)。ある実施の形態では、ターゲットは、デバイスパターンの間に設けられてもよい(従って、パターニングデバイスパターンのデバイスパターンのフィーチャ間に設けられてもよい)。適切である場合には、非製品ターゲットは、1つ又は複数のデバイス構造と、デバイスを形成すべく使用されるのではなく単に測定用に使用される1つ又は複数の特別に生成された構造と、を備えてもよい。
非製品ターゲットは、例えば、パターニングプロセスパラメータが対称なユニットセルインスタンスを提供し得ないデバイスパターンについて決定される場合に有用でありうる。別の例として、非製品ターゲットは、例えば、パターニングプロセスパラメータが上述のような対称なユニットセルを持たないデバイスパターンの一部について決定され、そのパターニングプロセスパラメータの尺度を与えられる場合に、有用でありうる。例えば、上述の対称なユニットセル方法を用いて決定することが望ましいが対称性を持たないエッチング後のオーバレイ用の構造の場合がありうる。例えば、論理回路又は構造は多くのプロセス層/ステップを有し、それぞれが構造の対称性を破壊しうる異なるオーバレイ成分を生じうる。例えば論理回路の場合、論理回路構造に対称なユニットセルが存在しないので、通常はデバイスパターンに対する測定を実行することができない。
更に別の例として、非製品ターゲットは、(ユニットセルが全ての対象のパターニングプロセスパラメータの尺度を与えられる場合であっても)対称なユニットセルインスタンスを提供できるデバイスパターンと関連付けて使用されてもよい。これは例えば、デバイスパターンが複雑であり、著しい計算時間を必要としうる場合でありうる。更に、デバイスパターンは、対象でないパターニングプロセスパラメータの信号との潜在的なクロストークを生じうる。一例として、様々なオーバレイ成分の瞳相関は、それら様々なオーバレイ誤差を分離することが不可能となるほど、極めて大きいかもしれない。
従って、非製品ターゲットは、ビームスポットについて対称なユニットセルのインスタンスを有するデバイスパターンとともに、又は、ビームスポットについて対称なユニットセルのインスタンスを提供し得ないデバイスパターンとともに使用されてもよい。非製品ターゲットの構成、設計、測定および使用の詳細は、2017年2月28日に出願された米国特許出願第15/445,612号に詳細に説明されており、その全体が本書に援用される。
メトロロジターゲットによって方向転換された放射からパターニングプロセスに関する正確な情報を得るためには、通常、メトロロジプロセスの慎重な較正が必要である。情報が、検出される放射の非対称成分に含まれる場合、他の発生源によって引き起こされる非対称性を低減する必要がある。このような非対称性は、システム非対称性と呼ばれることがある。システム非対称性は、メトロロジターゲットにおける非対称性とは独立して生じる非対称性である。メトロロジプロセスを実行するために使用されるメトロロジ装置の光学系又はセンサにおける欠陥がシステム非対称性に寄与しうる。この寄与は、センサ非対称性と呼ばれることがある。それに代えて又はそれに加えて、検出される放射から対象のパラメータを推測するために使用される数学的モデリング(例えば、図9を参照して上述したもの)の誤差がシステム非対称性に寄与しうる。この寄与は、モデル非対称性と呼ばれることがある。図13から図17を参照して上述したように、データ駆動型手法は、数学的モデリングの代わりに使用されてもよいし、数学的モデリングを補完するために使用されてもよい。データ駆動型手法は、対象のパラメータ(例えば、オーバレイ)の1つ又は複数の意図的に設定された値を有する、1つ又は複数のメトロロジターゲットを有する1つ又は複数の基板から測定されるデータ(「獲得」データ)を処理することを含んでもよい。対象のパラメータの意図的な「設定」値と、対応するメトロロジターゲットの測定とのこの組み合わせは、「設定・獲得」プロセスと呼ばれる。ある実施の形態では、オーバレイについて異なる複数の設定値が、1つ又は複数の基板にわたって生成される。対象のパラメータについて異なる設定値を有するメトロロジターゲットの測定は、対象のパラメータの値の変化に対するメトロロジターゲットから検出される放射の感度を決定するために使用されてもよい。データ駆動型手法に基づく実施形態では、モデル非対称性は、(モデリングが使用されない場合)全くもたらされないか、又は(データ駆動型手法が数学的モデリングを補う場合)あまりもたらされないかもしれない。よって、システム非対称性は、センサ非対称性を備え、又はセンサ非対称性とモデル非対称性の組み合わせを備えうる。
システム非対称性の影響を低減するための1つのアプローチは、基板Wの異なる回転位置で基板W上で複数の測定を行うことであり、例えば、基板Wをθ度およびθ+180度のそれぞれで測定すること(任意のθについて)を含む。このアプローチは、システム非対称性の影響を少なくとも部分的に打ち消すことを可能にするが、メトロロジプロセスを実行するために必要とされる時間を大幅に増加させる。さらに、システム非対称性の影響が打ち消される度合いは、基板Wの異なる回転位置で実行される複数の測定(必然的に異なる時間に実行されなければならない)間のメトロロジ装置状態のドリフトによって悪影響を受けるかもしれない。
較正測定は、メトロロジターゲット自体が測定される前に、システム非対称性を決定するために使用することができる。決定されたシステム非対称性は、次に、対象のパラメータを得るために、メトロロジターゲットからの測定値から減算することができる。このようにしてシステム非対称性を除去することのできる度合いは、較正測定とメトロロジターゲット測定との間のメトロロジ装置状態のドリフトによって、更には、較正に使用されるターゲットによって生じるシステム非対称性の、メトロロジに使用されるターゲットと比べたときの差異によって、制限される。
以下に説明する構成は、システム非対称性などの誤差の影響を、リアルタイムで、かつ基板Wの異なる回転位置での測定の実行(ただし、これは所望であれば、精度をさらに向上させるためになお行われてもよい)を必要とすることなく低減するものである。これにより、パターニングプロセスについての情報は、より迅速に、より正確に、及び/または、より確実に取得することができる。
図21は、パターニングプロセスについての情報を決定する例示的な方法を示す。この方法は、メトロロジプロセスから測定データ340を取得することを備えるデータ取得ステップ320を備える。ある実施の形態では、メトロロジプロセスは、図7および図8を参照して上述したメトロロジ装置を使用して実行される。
メトロロジプロセスは、図22に模式的に示されるように、基板W上の複数のメトロロジターゲットTの各々に適用される。図示される例では、メトロロジプロセスは、3つの異なるメトロロジターゲットTに適用され、そのため、3つのメトロロジターゲットTの各々に対応する3つのユニットの測定データ340(符号340A〜Cで示される)を備える。
各メトロロジターゲットTについての測定データ340は、少なくとも第1寄与度341と第2寄与度342を備える。第1寄与度は、メトロロジターゲットTを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータに由来する。第2寄与度342は、メトロロジターゲットTを測定するために使用されるメトロロジプロセスにおける誤差に由来する。この実施形態では、測定データは、検出される瞳表現の対称成分を第3寄与度343として備える。検出される瞳表現の対称成分の役割については、後述する。
本方法は、さらに、データ処理ステップ321を備える。データ処理ステップ321は、ステップ320で測定データを得た複数のメトロロジターゲットTのすべてからの取得した測定データを、メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用することを備える。データ処理ステップ321は、さらに、メトロロジプロセスにおける誤差について取得された情報を、各メトロロジターゲットTについて対象のパラメータの値を抽出するために使用することを備える。ある実施の形態では、誤差について取得された情報は、取得された対象のパラメータの値の精度への誤差の影響を低減または除去するために使用される。ある実施の形態では、対象のパラメータは、メトロロジターゲットTにおける異なる層間のオーバレイ誤差を備える。
本方法は、複数のメトロロジターゲットT、任意選択的に基板W上で互いに間隔をあけて配置された複数のメトロロジターゲットTからの測定データを使用することによって、誤差が低減又は除去された対象のパラメータの値を抽出することができる。複数のメトロロジターゲットTからの測定データの使用は、(誤差を含む)未知数の数と等しいかそれより多い数の式を実質的に提供し、それにより、誤差を、測定データにおける対象のパラメータの値についての情報から少なくとも部分的に非相関とすることを可能にする。
ある実施の形態では、対象のパラメータから測定データへの寄与度(例えば、オーバレイへの感度)の予想される変動が対象のパラメータの値の関数として、(例えば、上述したように、モデリングから又はデータ駆動型手法における較正データから)各メトロロジターゲットについて既知である。予想される変動は、異なるメトロロジターゲットTに対して同じであってもよいし、異なるメトロロジターゲットTに対して異なってもよい。
ある実施の形態では、複数のメトロロジターゲットTは、互いに公称上同一である。これにより、データ処理ステップ321(例えば、使用される場合には、図9を参照して上述したモデリング)を実装するために必要なデータ処理が簡素化される。
ある実施の形態では、メトロロジプロセスにおける誤差は、複数のメトロロジターゲットTの各々について実質的に同じである。これにより、メトロロジプロセスにおける誤差を除去することができる度合いを改善することによって、抽出される対象のパラメータの値の精度が向上される。
ここで、詳細な例を説明する。この例は、測定データへの第1および第2寄与度がメトロロジターゲットTによって方向転換された放射について検出される瞳表現の非対称成分への寄与度を備える場合への本方法の適用を例示するものである。このタイプの実施形態では、測定データは、検出される瞳表現における画素対の光学特性値の測定結果を備えてもよい(又はこの測定結果から導出されてもよい)。ある実施の形態では、各メトロロジターゲットについて少なくとも2つの画素対が使用される(すなわち、非対称性は、検出される瞳表現における少なくとも2つの異なる部分で評価される)。各画素対の画素は、瞳面における共通の対称点に対して点対称にあってもよく、又は瞳面における共通の鏡映対称軸に対して鏡映対称にあってもよい。光学特性値は、強度又は位相を備えてもよい。検出される瞳表現の非対称成分は、図10Aおよび10Bを参照して上述したように、例えば、検出される瞳表現における特定の画素の強度から対称的に配置された画素の強度を減算することによって取得されてもよく、またその逆も同様である。このタイプの実施形態では、各メトロロジターゲットTは、(例えば図10Aのように)公称の物理構成において幾何学的対称性を有していてもよい。(例えば、図10Bに示されるように、オーバレイに起因する)公称の物理構成とは異なるメトロロジターゲットTの物理構成は、検出される瞳表現の非対称成分に寄与する(測定データへの第1寄与度)。対象のパラメータ(例えばオーバレイ)は、物理構成の変化を測定するものである。
対象のパラメータがオーバレイである場合、各メトロロジターゲットTについて、検出される瞳表現の非対称成分は、(1)オーバレイに対する感度(例えば、上述のようにヤコビ行列及び/またはデータ駆動型手法から導出される)にオーバレイを乗算したものと、(2)誤差の非対称成分に、検出される瞳表現の対称成分を乗算したものの和によって記述することができる。測定データによって提供される方程式の数は、検出される瞳表現において検出される画素の数の半分に等しい(この画素数の1/2という係数は、検出される瞳表現の非対称成分のみが使用されることに起因する)。未知数の数のほうが多く、検出される画素数の半分と検出すべきオーバレイの数との和に相当する。よって、方程式系は不定であり、一意に解くことができない。
複数のメトロロジターゲットTからのデータを使用することにより、方程式の数が増え、それにより解くことが可能になる。ある実施の形態では、使用されるメトロロジターゲットTの数は、各メトロロジターゲットTから抽出されるべき対象のパラメータ(例えばオーバレイ)の数よりも多くする。これにより、抽出される必要がある対象パラメータの数が増えたために未知数の数が増えた場合であっても、方程式の数が未知数の総数と同じかそれより多くなることが確実となる。
精度は、メトロロジプロセスからの非対称誤差が複数の測定にわたって比較的安定している場合には、高くなる。メトロロジプロセスからの非対称誤差が比較的安定していると仮定すると、以下の式が得られる。
ここで、aP
tは、メトロロジターゲットtについて測定される、上記検出される瞳表現の非対称成分であり、ov
t(上付き矢印)は、メトロロジターゲットtのオーバレイであり、sP
tは、検出される瞳表現の対称成分であり、J
tは、メトロロジターゲットtのヤコビ行列(オーバレイに対するメトロロジプロセスの予想される感度を表す)であり、a
εは、メトロロジプロセスからの未知の非対称誤差である。他の実施形態では、メトロロジターゲットtのヤコビ行列は、上述したように、データ駆動型手法から導出される予想感度を表す重みで置き換えられてもよい。
この実施形態は、システム非対称性からの上記検出される瞳表現の非対称成分への寄与度が、検出される瞳表現の対称成分の線形関数(これは、検出される瞳表現の対称成分から、検出される瞳表現の非対称成分への線形写像とも呼ばれうる)となる部類の実施形態の一例である。この特定の例では、線形関数は、sPt・aεの形式をとるが、他の形式も可能である。
メトロロジプロセスからの非対称誤差aεが、複数のメトロロジターゲットtについて実質的に同じである場合、上記の一連の方程式は、次の形式の線形方程式系となる。
この方程式において、y(上付き矢印)は、メトロロジターゲットの各々についての測定データを含むベクトル(測定データ340に対する第1寄与度341及び第2寄与度342を備える)であり、x(上付き矢印)は、メトロロジターゲットの各々について測定データへの第1寄与度から導出される対象のパラメータの未知の値と、測定データへの未知の第2寄与度(非対称誤差)とを含むベクトルである。A(太字)は、対象のパラメータに対するメトロロジプロセスの予想感度(この例ではオーバレイであり、メトロロジターゲットごとのヤコビ行列をこの例では含む)と、検出される瞳表現の対称成分(測定データ340に対する第3寄与度343によって提供される)とを表す行列である。
上式y=Axは、方程式の数が、検出される瞳表現において検出される画素数の半分にメトロロジターゲットの数Tを乗じたものに等しい線形方程式系である。未知数の数は、決定されるべきオーバレイの数とメトロロジターゲットの数との積と非対称誤差モードの数との和に等しい。線形方程式系は、方程式の数が未知数の数と等しいか、それより多い限り、様々な既知の技法によって解くことができる。検出される画素間で非対称誤差が無相関である場合、非対称誤差モードの数は、検出される瞳表現において検出される画素数の半分に等しい。
ある実施の形態では、本方法は、検出される瞳表現の検出される画素間の非対称誤差の相関を考慮に入れる。この場合の解x(上付き矢印)は、オーバレイと非対称誤差の両方を含むベクトルとなる。非対称誤差は、センサ非対称性とモデル非対称性のどちらか、または両方からの寄与度を備えうる。どちらのタイプの誤差も、対象のパラメータ(この例ではオーバレイ)の推定に同様の影響を与える。この方法は、両方の誤差を一緒に補正する。
本方法は、画素を備える上記検出される瞳表現に限定されない。このアプローチは、信号の非対称成分を測定することによってメトロロジターゲットの非対称性を測定する任意の方法に適用可能であり、ここで、信号は、信号の対称成分と相互作用する非対称誤差寄与度を備え、異なるメトロロジターゲットからの測定データがサンプリングスキームに従って結合される。上式から、信号の非対称部分における入力信号の数が1よりも大きく、サンプリングスキームが十分なメトロロジターゲットを含む場合に、本方法が機能することが分かる。複数の入力信号は、上記の例のように、非対称性を表す複数の検出される画素からのものであってもよいが(例えば、検出される瞳表現において対称的に配置された検出された画素対の間の差を取ることによって導出される)、異なる波長(例えば、分光エリプソメトリーの文脈において)、異なる偏光、または位相ベースの測定において得られた異なる信号であってもよい。したがって、メトロロジプロセスは、(1)異なる複数の波長帯の放射でメトロロジターゲットTを照明し、各波長帯で方向転換された放射を個別に検出すること、および、(2)異なる複数の偏光を有する放射でメトロロジターゲットTを照明し、異なる複数の偏光を有する方向転換された放射を個別に検出すること、のうちのいずれかまたは両方を備えてもよい。
図23および図24を参照して、例示的な簡略な例を以下に説明する。
図23及び図24はそれぞれ、基板W上の異なる位置にある2つのメトロロジターゲットTの検出される瞳表現を示している。図23のメトロロジターゲットTに対応する測定データは、2つの画素対の強度値(瞳面内の強度分布の一部に対応する)を備え、それぞれI1とI3、I2とI4である。図24のメトロロジターゲットTに対応する測定データは、対応する2つの画素対の強度値を備え、それぞれI1'とI3'、I2'とI4'である。
対象のパラメータについての情報は、検出される瞳表現の非対称成分に含まれており、これは理想的には各画素対について測定される強度の差に等しくなるであろう。実際には、測定される強度は、誤差εi(すなわち、センサ非対称性とモデル非対称性のどちらか一方または両方からの寄与度を備える)の影響を受けており、各測定強度はそれぞれ以下のように与えられる。
I1=(1+ε1)IN1
I2=(1+ε2)IN2
I3=(1+ε3)IN3
I4=(1+ε4)IN4
I1'=(1+ε1)IN1'
I2'=(1+ε2)IN2'
I3'=(1+ε3)IN3'
I4'=(1+ε4)IN4'
ここで、IN1などは、何ら誤差が無かった場合に測定されるであろう強度を表す。
図23に示される上側の画素対間の測定強度の差は、次のように書くことができる。
上式の右辺の最後の項は、典型的に2番目の項よりもはるかに大きいので、その場合、この2番目の項は無視してもよい。((ε1−ε3)/2)は、メトロロジプロセスにおける誤差の非対称成分を表しており、これをE1と呼ぶことができる。これに対応する式は、他の3つの画素対のそれぞれについて得られる。
一次に関しては、対象のパラメータαは、非対称誤差がない場合に測定される強度の非対称成分に線形に比例する。したがって、図23の上側の画素対については、(IN1−IN3)=S1・αであり、ここで、S1は、比例(または感度)を表す係数である。上記に基づいて、4つの画素対の測定結果は、4つの未知数を持つ次の4つの方程式を与える。
I1−I3=S1・α+E1・(IN1+IN3)
I2−I4=S2・α+E2・(IN2+IN4)
I1'−I3'=S1・α'+E1・(IN1'+IN3')
I2'−I4'=S2・α'+E2・(IN2'+IN4')
ここで、E1=((ε1−ε3)/2)、E2=((ε2−ε4)/2)、(IN1+IN3)≒(I1+I3)、(IN2+IN4)≒(I2+I4)、(IN1'+IN3')≒(I1'+I3')、(IN2'+IN4')≒(I2+I4)である。したがって、方程式系は、4つの未知数α、α'、E1、E2を得るために解くことができる。
図21から図24を参照して上述した方法は、方程式の数が未知数の数と等しいかそれより多くなる方程式系を生成するように、複数のメトロロジターゲットTからの測定結果を使用している。具体的に例示したのは、対象の単一のパラメータ(例えば、単一のオーバレイ)のみが必要とされる場合であるが、この方法論は、適切に使用されるメトロロジターゲットTの数を増やすことによって、任意の数の対象のパラメータの抽出を可能にするように拡張することができる。ある実施の形態では、パターニングプロセスについての情報を決定する方法のためのメトロロジターゲットを選択する方法が提供され、この方法では、メトロロジターゲットTは、メトロロジターゲットの数が対象のパラメータの数よりも多くなるように選択される。したがって、1つのオーバレイについては、少なくとも2つのメトロロジターゲットTが必要となる。2つのオーバレイについては、少なくとも3つのメトロロジターゲットTが必要となる。複数の対象のオーバレイを有する例示的なメトロロジターゲットTのユニットセルは、図18から図20を参照して上述したように詳細に論じられている。
ある実施の形態では、複数のメトロロジターゲットは、基板W上のある所定のメトロロジターゲットタイプのすべてのインスタンスを備えるように選択されており、すべてのインスタンスは同一の公称構造を有している。複数のメトロロジターゲットは、基板W上のすべてのメトロロジターゲットのサブセットを備えてもよく、又は備えなくてもよい。したがって、メトロロジプロセスにおける誤差について取得される情報は、平均誤差(取得される情報に寄与しているメトロロジターゲットTを含む基板表面の一部にわたって空間的に平均化され、及び/または、取得される情報に寄与しているメトロロジターゲットTを測定した期間にわたって時間的に平均化されたもの)を備えてもよい。ある実施の形態では、センサ非対称性は、ドリフトについてモニタされ、その後の測定の精度を向上させるためにフィードフォワードされることができる。
代替的な実施形態では、複数のメトロロジターゲットは、基板W上のある所定のメトロロジターゲットタイプのすべてのインスタンスのサブセットからなり、ここで、すべてのインスタンスは、同一の公称構造を有する。このようにして、メトロロジターゲットの特定のサブセットが選択される。特定のサブセットは、対象の1つ又は複数のパラメータのより正確な値を提供するように選択されてもよい。ある実施の形態では、本方法は、メトロロジターゲットの異なるサブセットを用いて繰り返し実行される。このように、メトロロジプロセスにおける誤差についての情報は、メトロロジターゲットの異なるサブセットを使用して繰り返し取得されてもよい。このタイプの実施形態では、メトロロジプロセスにおける誤差についての情報は、リアルタイムで漸進的に更新されてもよい。ある実施の形態では、メトロロジターゲットの異なるサブセットTは、新しい測定データを利用可能なメトロロジターゲットTをサブセットに追加するとともに、それより古い測定データのみを利用可能なメトロロジターゲットTをサブセットから取り除くことを徐々に行うことによって得られる。このようにして、任意の時点で、サブセットには、最近測定されたメトロロジターゲットTだけが(または主に)含まれており、したがって、例えば、異なるメトロロジターゲットTの測定間におけるセンサ非対称性のドリフトに起因する誤差の影響が少なくなる。識別された異常は、さらに調査して対処することができる。
ある実施の形態では、上記の方法論は、測定データにおける誤差を低減するために使用される。基板W上の複数のメトロロジターゲットTの各々に適用されるあるメトロロジプロセスから測定データが取得される方法が提供される。各メトロロジターゲットTについての測定データは、少なくとも第1寄与度および第2寄与度を備える。第1寄与度は、メトロロジターゲットTを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータからのものである。第2寄与度は、メトロロジターゲットTを測定するために使用されるメトロロジプロセスにおける誤差からのものである。複数のメトロロジターゲットのすべてから取得される測定データが、メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用される。取得される情報は、測定データにおける誤差を低減するために使用される。
ある実施の形態では、上記の方法論は、メトロロジプロセスを較正するために使用される。基板W上の複数のメトロロジターゲットTの各々に適用されるあるメトロロジプロセスから測定データが取得される方法が提供される。各メトロロジターゲットTの測定データは、少なくとも第1寄与度および第2寄与度を備える。第1寄与度は、メトロロジターゲットTを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータからのものである。第2寄与度は、メトロロジターゲットTを測定するために使用されるメトロロジプロセスにおける誤差からのものである。複数のメトロロジターゲットのすべてから取得される測定データが、メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用される。取得される情報は、メトロロジプロセスによって生成される測定データにおける誤差を低減するために、メトロロジプロセスを較正するために使用される。
更なる実施形態では、ウェーハ上のターゲットのセットが測定される。さらに、このセットのサブセットが、ウェーハを180°回転させた状態で測定される。上記セットの測定結果と上記サブセットの測定結果のフィッティングを実行することにより、センサ非対称性のモデルが作成される。このセンサ非対称性のモデルは、対象のパラメータ、例えばオーバレイの測定結果を補正するために使用され、補正は本発明の前述の実施形態に従って実行される。
更なる実施形態では、ウェーハを180°回転させた状態で、一連の測定が行われる。これらの点は、補正モデルを作成するために使用される。補正モデルを使用して、センサ非対称性が多数の場所で推定される。これらの場所は、補正モデルを作成するための入力を得るために測定が行われた場所とは異なる。補正モデルを推定に用いる場所は二次点と呼ばれる。これら二次点のセンサ非対称性を使用して、新たなシステム非対称性補正モデルが生成され、これは、オーバレイのようなリソグラフィプロセスの正確なパラメータを推定するために必要な補正スキームにさらに採用される。さらに、補正モデルを生成するために測定が実行されることになる位置を選択するために必要とされるサンプリングスキームは、静的(ターゲットの位置の固定値)であってもよい。さらに、サンプリングスキームは、動的であってもよく、ロット内の次のウェーハ上の測定が前のウェーハから収集された情報を使用して較正されるものであってもよい。
本発明の更なる実施形態では、センサ非対称性は、対称瞳の関数として記述されると仮定される。対称瞳は、測定瞳に対称化の操作を適用して得られる。また、関数は、線形回帰、主成分回帰、部分的最小二乗回帰、正準相関分析などの統計的学習法によって学習されたパラメトリックモデルであってもよい。パラメトリックモデルは、線形モデル(すなわち線形変換)であってもよいし、非線形モデル(すなわちガウス過程やニューラルネット)であってもよい。学習プロセスへの入力は、上述のように対称瞳のセットであり、出力は、ウェーハを回転したターゲット上で測定された、瞳またはオーバレイ空間のいずれかにおける非対称誤差である。単一配向のターゲットで測定される対称瞳は、学習されたモデルにセンサ誤差を得るために供給される。
さらに、所与の測定レシピは、(a)取得プロファイル(波長、偏光、線量、またはアパチャーなどの光学系のパラメータのセット)、(b)測定プロファイル(これは、測定された生信号からの(例えば測定された瞳からの)オーバレイ測定を可能にする)、および、(c)ウェーハレイアウトまたはサンプリングスキーム(どのターゲットが測定されるべきかを示す)を含む。
さらに、ある実施の形態では、モデルを取得するための方法を備える較正が提案されており、この方法は、センサ角度とは反対側のウェーハでターゲットのセットを測定することと、これらの測定結果を上述の学習アルゴリズムに供給することとを備え、ここで、学習アルゴリズムの出力がモデルであり、対称瞳が入力として使用されてもよい。
さらに、ある実施の形態では、測定ステップが提案され、これは、ウェーハ上のターゲットの別のサブセットを測定することを備え、このサブセットは、ウェーハ上のすべてのターゲットを備えてもよく、または前述の実施形態で説明した較正ステップで使用されていないターゲットによって形成されるセットのみを備えてもよく、さらに、測定で得られた測定瞳を対称化することと、対称化された瞳を較正ステップで決定されたモデルへの入力として使用することと、を備える。
別の実施形態では、センサ非対称性を決定する方法は、すべてのターゲットが測定され、ここで、あるサブセットの測定が2つのセンサについて複数のウェーハ配向角度で実行され、別のサブセットの測定が1つの配向に対して実行される取得ステップと、ウェーハ回転モードで測定されたターゲットが学習アルゴリズムまたはモデルへの入力として使用される上述の対称化ステップと、学習アルゴリズムの出力が単一配向ターゲットで得られた測定に使用されるべきモデルであり、センサ非対称性がこのモデルに対称瞳を供給することによって取得される計算ステップと、を備える。
本発明の更なる実施形態では、オフライン較正方法が提案される。第1のステップでは、2つのウェーハにより複数のセンサ配向角度について既に取得されたデータを用いてモデルが作成され、ここで、学習方法の入力は、上記測定の対称瞳と非対称センサ誤差であり、出力はモデルである。「オンライン」ステップまたはオンザフライステップとみなされる測定ステップでは、単一の取得におけるターゲットだけの測定結果が使用され、それが学習アルゴリズムに供給される。
また、他のセンサ情報伝達チャネルが、上述の較正方法において使用されてもよい。これらは、ターゲット位置、完全な瞳(対称化ステップなし)、測定された完全な瞳または光学系の温度から得られる非対称な瞳であってもよい。
本発明の更なる実施形態では、センサ非対称性は、ウェーハ上で滑らかに変化する関数によって記述されるものと仮定される。この仮定において、センサ非対称性は、単一配向で得られた測定値のセットのバイリニア補間などの補間として取得され、ドメインパラメータがターゲット位置である。
図25を参照すると、コンピュータシステム3200が図示されている。コンピュータシステム3200は、情報を通信するためのバス3202又は他の通信機構と、情報を処理するための、バス3202と結合されたプロセッサ3204(又は複数のプロセッサ3204及び3205)と、を含む。また、コンピュータシステム3200は、情報及びプロセッサ3204によって実行される命令を記憶するため、バス3202に結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的ストレージデバイス等のメインメモリ3206も含む。また、メインメモリ3206は、プロセッサ3204によって実行される命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を記憶するためにも使用されうる。コンピュータシステム3200は更に、プロセッサ3204用の静的情報及び命令を記憶するための、バス3202に結合されたリードオンリーメモリ(ROM)3208又は他の静的ストレージデバイスも含む。磁気ディスク又は光ディスク等のストレージデバイス3210が、情報及び命令を記憶するために設けられ、バス3202に結合されている。
コンピュータシステム3200は、バス3202を介して、コンピュータユーザに情報を表示するためのブラウン管(CRT)又はフラットパネル又はタッチパネルディスプレイ等のディスプレイ3212に結合することができる。英数字キー及び他のキーを含む入力デバイス3214が、プロセッサ3204に情報及びコマンド選択を伝達するためバス3202に結合されている。別のタイプのユーザ入力デバイスは、マウス、トラックボール、又はカーソル方向キー等、プロセッサ3204に方向情報及びコマンド選択を伝達し、ディスプレイ3212上でのカーソル移動を制御するためのカーソル制御3216である。この入力デバイスは典型的に、2軸、すなわち第1の軸(例えばx)及び第2の軸(例えばy)の2自由度を有し、デバイスが面内で位置を指定することを可能とする。また、タッチパネル(スクリーン)ディスプレイも入力デバイスとして使用されうる。
コンピュータシステム3200は、プロセッサ3204がメインメモリ3206に含まれる1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを実行することに応答して本書の処理ユニットとして機能するのに適切なものでありうる。そうした命令は、ストレージデバイス3210のような別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ3206に読み出されうる。メインメモリ3206に含まれる命令のシーケンスの実行によって、プロセッサ3204は、本書に記載されるプロセスを実行する。また、メインメモリ3206に含まれる命令のシーケンスを実行するため、マルチプロセッシング構成の1つ又は複数のプロセッサも使用されうる。代替的な実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに又はソフトウェア命令と組み合わせてハードワイヤード回路を使用してもよい。従って、実施形態は、ハードウェア回路及びソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
本書で用いられる「コンピュータ可読媒体」という用語は、プロセッサ3204に実行用の命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そうした媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含む多くの形態をとりうる。不揮発性媒体は、例えばストレージデバイス3210のような光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ3206のような動的メモリを含む。伝送媒体は、バス3202を構成するワイヤを含む同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含む。伝送媒体は、無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に発生されるものなど、音波又は光波の形態もとりうる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の磁気媒体、CD−ROM、DVD、他の任意の光媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理的な媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、他の任意のメモリチップもしくはカートリッジ、後述するような搬送波、又はコンピュータが読み取ることができる他の任意の媒体を含む。
コンピュータ可読媒体の様々な形態は、実行のためにプロセッサ3204に1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを運ぶことに関与し得る。たとえば、命令は、最初にリモートコンピュータの磁気ディスクに入っている場合がある。リモートコンピュータは、命令を動的メモリに読み込み、モデムを使用して電話回線を介して命令を送信できる。コンピュータシステム3200にローカルのモデムは、電話回線上のデータを受信し、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バス3202に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されたデータを受信し、そのデータをバス3202に配置することができる。バス3202はメインメモリ3206にデータを搬送し、そこからプロセッサ3204が命令を取得して実行する。メインメモリ3206が受け取った命令は、プロセッサ3204によって実行される前または後のいずれかにストレージデバイス3210に記憶されてもよい。
コンピュータシステム3200は、バス3202に結合された通信インターフェース3218を含み得る。通信インターフェース3218は、ローカルネットワーク3222に接続されたネットワークリンク3220に双方向データ通信結合を提供する。例えば、通信インターフェース3218は、対応する種類の電話回線にデータ通信接続を提供する統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)カードまたはモデムであってもよい。別の例として、通信インターフェース3218は、対応するLANにデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよい。ワイヤレスリンクも実装できる。そうした実装において、通信インターフェース3218は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを伝送する電気的、電磁的または光学的信号を送受信する。
ネットワークリンク3220は通常、1つ又は複数のネットワークを介して他のデータデバイスへのデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク3220は、ホストコンピュータ3224またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)3226によって動作するデータ機器へのローカルネットワーク3222を介した接続を提供することができる。ISP3226は、世界規模のパケットデータ通信ネットワークを通じてデータ通信サービスを提供し、現在では一般に「インターネット」3228と呼ばれている。ローカルネットワーク3222およびインターネット3228は、どちらもデジタルデータストリームを伝送する電気的、電磁的または光学的信号を使用する。コンピュータシステム3200との間でデジタルデータを伝送する各種ネットワークを介した信号および通信インターフェース3218を介したネットワークリンク3220上の信号が、情報を輸送する搬送波の例示的な形態である。
コンピュータシステム3200は、ネットワーク、ネットワークリンク3220、および通信インターフェース3218を介して、メッセージを送信しプログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、サーバー3230は、インターネット3228、ISP3226、ローカルネットワーク3222および通信インターフェース3218を介してアプリケーションプログラムに要求されるコードを送信しうる。1つ又は複数の実施形態によれば、このようなダウンロードされたアプリケーションの1つは、例えば、本書に述べる方法を提供することができる。受信したコードは、受信時にプロセッサ3204によって実行され、及び/または、後で実行するためにストレージデバイス3210または他の不揮発性記憶装置に記憶される。このようにして、コンピュータシステム3200は、搬送波の形でアプリケーションコードを取得してもよい。
本開示のある実施の形態は、本書に開示される方法を記述する機械可読命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又は、そうしたコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとりうる。更に、機械可読命令は2以上のコンピュータプログラムにおいて具現化されてもよい。2以上のコンピュータプログラムは、1つ又は複数の異なるメモリ及び/又はデータ記憶媒体に記憶されてもよい。
1つ又は複数のコンピュータプログラムがリソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内にある1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって読み出される時に、本書に記載するコントローラは、各々が、又は組み合わされて、動作可能となりうる。コントローラは、各々が、又は組み合わされて、信号を受信、処理、送信するのに適した任意の構成を有する。1つ又は複数のプロセッサは、コントローラの少なくとも1つと通信するように構成されている。例えば、各コントローラは、上記方法のための機械可読命令を含むコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプロセッサを含んでもよい。コントローラは、そうしたコンピュータプログラムを記憶するデータ記憶媒体及び/又はそうした媒体を受け取るハードウェアを含むことができる。従って、コントローラは、1つ又は複数のコンピュータプログラムの機械可読命令に従って動作しうる。
本書ではICの製造におけるメトロロジ装置の使用に特に言及しているが、本書で説明するメトロロジ装置およびプロセスには、例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用の案内及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など、他の用途もあることを理解されたい。こうした代替的な用途に照らして、本書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義とみなしてよいことが、当業者には認識される。本書に言及する基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又は1つ又は複数の他のツールで処理することができる。適用可能であれば、本書の開示は、これらの及びその他の基板処理ツールに適用されうる。更に、基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本書で使用する基板という用語は、すでに複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
光リソグラフィの分野での本開示の実施形態の使用に特に言及してきたが、本開示は文脈が許せば、その他の分野、例えばナノインプリントリソグラフィに適用されてもよく、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。ナノインプリントリソグラフィの場合、パターニングデバイスは、インプリントテンプレート又はモールドである。
本書に使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及び極紫外(EUV)放射(例えば5〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射、更にはイオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを包含する。
「レンズ」という用語は、文脈が許す場合、屈折光学部品、反射光学部品、磁気的光学部品、電磁気的光学部品、静電的光学部品を含む各種の光学部品のうちいずれか1つ、又はこれらの組み合わせを指してもよい。
本書において、閾値と交差する又は閾値を通過するとの言及は、例えばパラメータ等に基づいて、特定の値よりも低いか又は特定の値以下の値を有すること、特定の値よりも高いか又は特定の値以上の値を有すること、(例えばソートによって)他のものよりも高く又は低く順位付けされることを含みうる。
本書において、誤差を補正すること又は誤差の補正との言及は、誤差を除去すること又は誤差を許容範囲内に低減させることを含む。
本書に用いられる「最適化する」又は「最適化」という用語は、リソグラフィ又はパターニングプロセスの結果及び/又はプロセスが、デザインレイアウトの基板への投影の精度向上やプロセスウィンドウの拡大のような望ましい特性を有するように、リソグラフィ装置、パターニングプロセス等を調整することを指すか又は意味する。従って、本書におい用いられる「最適化する」又は「最適化」という用語は、少なくとも1つの関連するメトリックにおいて、1つ又は複数の変数の1つ又は複数の初期値のセットに比べ、例えば局所最適のような改善を与えるその1つ又は複数の変数の1つ又は複数の値を特定するプロセスを指すか又は意味する。「最適」及びその他の関連する用語は、これに従って解釈されるべきである。ある実施の形態では、最適化ステップを繰り返し適用して、1つ又は複数のメトリックにおいて更に改善を得ることができる。
システムの最適化プロセスにおいて、システム又はプロセスのフィギュア・オブ・メリットをコスト関数として表すことができる。最適化プロセスは、要するに、コスト関数を最適化する(例えば最小化又は最大化する)システム又はプロセスのパラメータ(設計変数)のセットを見出すプロセスということになる。コスト関数は、最適化の目標に応じて任意の適切な形態を有しうる。例えばコスト関数は、システム又はプロセスの特定の特性(評価ポイント)の意図される値(例えば理想的な値)に対するこれらの特性の偏差の重み付き二乗平均平方根(RMS)とすることができる。また、コスト関数は、これらの偏差の最大値(すなわち最悪の偏差)とすることも可能である。本書における「評価ポイント」という用語は、システム又はプロセスの任意の特性を含むよう広義に解釈するべきである。システムの設計変数は、システム又はプロセスの実装の実用性のために、有限範囲に制約され、及び/又は相互依存でありうる。リソグラフィプロセス又はパターニングプロセスの場合、この制約は、調節可能範囲のようなハードウェアの物理特性及び特性、及び/又はパターニングデバイス製造可能性デザインルールに関連付けられることが多く、評価ポイントは、基板上のレジスト像における物質的な点、更には、ドーズ及び焦点のような非物質的な特性を含みうる。
上記では本開示の特定の実施形態を説明したが、本開示は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。例えば、本開示は、上記で開示した方法を記述する機械可読命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、またはこうしたコンピュータプログラムが内部に記憶されたデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気または光ディスク)の形をとることができる。
ブロック図において、図示されるコンポーネントは離散的な機能ブロックとして示されているが、実施形態は、本書に記載される機能が図示のように整理されているシステムには限定されない。各コンポーネントによって提供される機能は、ここに図示したものとは異なる形で構築されたソフトウェア又はハードウェアモジュールによって提供されてもよく、例えば、そうしたソフトウェア又はハードウェアは、混合され、結合され、複製され、分割され、分散され(例えばデータセンタ内で又は地理的に)、又は他の異なる形で構築されてもよい。本書に記載される機能は、有形で非一時的な機械可読媒体に記憶されたコードを実行する1つ又は複数のコンピュータの1つ又は複数のプロセッサによって提供されてもよい。場合によっては、サードパーティーのコンテンツ送出ネットワークが、ネットワーク上で伝送される情報の一部又は全てをホストすることができる。その場合、情報(例えばコンテンツ)が供給され又は他の方法で提供されると言われている範囲で、情報は、情報をコンテンツ送出ネットワークから検索する命令を送信することによって提供されてもよい。
特に明記しない限り、ここでの検討から明らかであるように、本明細書全体を通して、「処理する」、「計算する」、「決定する」等の用語を用いた議論は、専用コンピュータ又は同様の専用電子処理/コンピューティングデバイスのような特定の装置の動作又はプロセスを指すことは認められよう。
読者は、本出願がいくつかの発明を記載していることを理解すべきである。出願人らは、それらの発明を複数の個別の特許出願に分離するのではなく、それらの主題の関連性が出願プロセスにおいて節約に役立つので、単一の文書にまとめている。しかし、そうした発明の別々の利点及び態様は一つにまとめるべきではない。場合によっては、実施形態は本書に記した欠点の全てに対処するが、発明がそれぞれ独立して有用であること、及び、いくつかの実施形態がそうした問題の一部のみに対処すること、又は本開示を検討する当業者には明らかである他の言及されていない利点を提供することは理解されよう。コストの制約のため、本書に開示されるいくつかの発明はここでは特許請求されず、継続出願のような後の出願において又は本発明の請求項を補正することによって特許請求される可能性がある。同様に、スペースの制約のため、本文書の「要約」セクションも「発明の概要」セクションも、全てのそうした発明又はそうした発明の全ての態様の包括的な列挙を含むものとして解釈すべきではない。
本説明及び図面は、開示される特定の形態に本発明を限定することは意図しておらず、逆に、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲内に該当する全ての変更、均等物、及び代替を包含することが意図されることは理解されよう。
本発明に係る更なる実施形態は、以下に番号付けられた節に記載される。
1.パターニングプロセスについての情報を決定する方法であって、
基板上の複数のメトロロジターゲットの各々に適用されるメトロロジプロセスから測定データを取得することを備え、
各メトロロジターゲットについての測定データが、少なくとも第1寄与度および第2寄与度を備え、前記第1寄与度が前記メトロロジターゲットを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータに由来し、前記第2寄与度が前記メトロロジターゲットを測定するために使用される前記メトロロジプロセスにおける誤差に由来し、
前記方法は、さらに、
前記複数のメトロロジターゲットのすべてから取得された前記測定データを、前記メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用することと、
前記メトロロジプロセスにおける誤差について取得された前記情報を、各メトロロジターゲットについて前記対象のパラメータの値を抽出するために使用することと、を備える方法。
2.前記複数のメトロロジターゲットは、互いに公称上同一である、節1に記載の方法。
3.前記メトロロジプロセスにおける前記誤差は、前記複数のメトロロジターゲットの各々について実質的に同一である、節1または2に記載の方法。
4.各メトロロジターゲットは、公称の物理構成において幾何学的対称性を有し、前記公称の物理構成とは異なる前記メトロロジターゲットの物理構成が、前記測定データに非対称性を生じさせ、前記対象のパラメータは、前記物理構成の変化を測定するものである、節1から3のいずれかに記載の方法。
5.前記メトロロジプロセスは、各メトロロジターゲットを放射で照明することと、各メトロロジターゲットによって方向転換された放射を検出することとを備える、節1から4のいずれかに記載の方法。
6.前記測定データは、方向転換された放射について検出される表現を備える、節5に記載の方法。
7.前記検出される表現は、検出される瞳表現を備える、節6に記載の方法。
8.前記測定データへの前記第1寄与度は、前記検出される瞳表現の非対称成分への寄与度を備える、節7に記載の方法。
9.前記測定データへの前記第2寄与度は、前記検出される瞳表現の前記非対称成分への寄与度を備える、節8に記載の方法。
10.前記測定データへの前記第2寄与度からの前記検出される瞳表現の前記非対称成分への前記寄与度は、前記検出される瞳表現の対称成分の線形関数を備える、節9に記載の方法。
11.前記測定データは、前記検出される瞳表現における少なくとも2つの画素対の光学特性値を備え又は前記光学特性値から導出される、節7から10のいずれかに記載の方法。
12.前記光学特性値は、強度又は位相を備える、節11に記載の方法。
13.各画素対の画素は、瞳面における共通の対称点に対して点対称にあり、又は瞳面における共通の鏡映対称軸に対して鏡映対称にある、節11または12に記載の方法。
14.前記第1寄与度は、前記検出される表現の非対称成分への寄与度を備え、前記第2寄与度は、前記検出される表現の前記非対称成分への寄与度を備え、
前記メトロロジプロセスにおける前記誤差についての情報を取得すること及び各メトロロジターゲットについて前記対象のパラメータの値を抽出することが、
の形の線形方程式系を解くことを備え、ここで、
は、メトロロジターゲットの各々についての測定データを含むベクトルであり、
は、メトロロジターゲットの各々について前記測定データへの前記第1寄与度から導出される前記対象のパラメータの未知の値、および前記測定データへの未知の前記第2寄与度を含むベクトルであり、
Aは、前記対象のパラメータに対する前記メトロロジプロセスの予想感度および前記検出される表現の対称成分を表す行列である、節6から13のいずれかに記載の方法。
15.前記複数のメトロロジターゲットは、前記基板上のある所定のメトロロジターゲットタイプのすべてのインスタンスを備え、前記所定のメトロロジターゲットタイプの前記すべてのインスタンスが、同一の公称構造を有する、節1から14のいずれかに記載の方法。
16.前記複数のメトロロジターゲットは、前記基板上に存在するすべてのメトロロジターゲットのサブセットを備える、節1から14のいずれかに記載の方法。
17.前記サブセットは、前記基板上のある所定のメトロロジターゲットタイプのすべてのインスタンスのサブセットからなり、前記所定のメトロロジターゲットタイプの前記すべてのインスタンスが、同一の公称構造を有する、節16に記載の方法。
18.前記メトロロジプロセスにおける前記誤差についての前記情報は、メトロロジターゲットの異なるサブセットを用いて繰り返し取得される、節16または17に記載の方法。
19.メトロロジターゲットの前記異なるサブセットは、新しい測定データを利用可能なメトロロジターゲットを前記サブセットに追加するとともに、それより古い測定データのみを利用可能なメトロロジターゲットを前記サブセットから取り除くことを徐々に行うことによって得られる、節18に記載の方法。
20.前記メトロロジプロセスは、
前記メトロロジターゲットを異なる複数の波長帯の放射で照明し、前記波長帯の各々の方向転換された放射を個別に検出すること、および、
前記メトロロジターゲットを異なる複数の偏光をもつ放射で照明し、異なる複数の偏光をもつ方向転換された放射を個別に検出すること、のうち一方または両方を備える、節1から19のいずれかに記載の方法。
21.前記対象のパラメータは、前記メトロロジターゲットにおける異なる層間のオーバレイ誤差を備える、節1から20のいずれかに記載の方法。
22.前記複数のメトロロジターゲットの各メトロロジターゲットは、前記複数のメトロロジターゲットの他の各メトロロジターゲットから離れて配置されている、節1から22のいずれかに記載の方法。
23.測定データにおける誤差を低減する方法であって、
基板上の複数のメトロロジターゲットの各々に適用されるメトロロジプロセスから測定データを取得することを備え、
各メトロロジターゲットについての測定データが、少なくとも第1寄与度および第2寄与度を備え、前記第1寄与度が前記メトロロジターゲットを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータに由来し、前記第2寄与度が前記メトロロジターゲットを測定するために使用される前記メトロロジプロセスにおける誤差に由来し、
前記方法は、さらに、
前記複数のメトロロジターゲットのすべてから取得された前記測定データを、前記メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用することと、
取得された前記情報を、前記測定データにおける誤差を低減するために使用することと、を備える方法。
24.メトロロジプロセスを較正する方法であって、
基板上の複数のメトロロジターゲットの各々に適用されるメトロロジプロセスから測定データを取得することを備え、
各メトロロジターゲットについての測定データが、少なくとも第1寄与度および第2寄与度を備え、前記第1寄与度が前記メトロロジターゲットを形成するために使用されるパターニングプロセスの対象のパラメータに由来し、前記第2寄与度が前記メトロロジターゲットを測定するために使用される前記メトロロジプロセスにおける誤差に由来し、
前記方法は、さらに、
前記複数のメトロロジターゲットのすべてから取得された前記測定データを、前記メトロロジプロセスにおける誤差についての情報を取得するために使用することと、
取得された前記情報を、前記メトロロジプロセスによって生成される前記測定データにおける誤差を低減するために前記メトロロジプロセスを較正するために使用することと、を備える方法。
25.パターニングプロセスについての情報を決定する方法のためのメトロロジターゲットを選択する方法であって、
パターニングプロセスについての情報を決定する前記方法は、選択された複数のメトロロジターゲットの各々に適用されるメトロロジプロセスから測定データを取得することと、取得された測定データを、各メトロロジターゲットを形成するために使用されるパターニングプロセスについての1つ又は複数の対象のパラメータの値を抽出するために使用することと、を備え、
前記メトロロジターゲットは、前記メトロロジターゲットの数が前記対象のパラメータの数よりも多くなるように選択される、方法。
26.パターニングプロセスについての情報を決定する前記方法は、節1から22のいずれかに記載の方法を備える、節25に記載の方法。
27.前記メトロロジターゲットは、前記基板上に存在するすべてのメトロロジターゲットのサブセットを備えるように選択される、節25または26に記載の方法。
28.前記サブセットは、前記基板上の所定のメトロロジターゲットタイプのすべてのインスタンスのサブセットからなり、前記所定のメトロロジターゲットタイプの前記すべてのインスタンスが、同一の公称構造を有する、節27に記載の方法。
29.前記パターニングプロセスについての前記情報は、メトロロジターゲットの異なるサブセットを前記選択された複数のメトロロジターゲットとして用いて繰り返し取得される、節27または28に記載の方法。
30.メトロロジターゲットの前記異なるサブセットは、新しい測定データを利用可能なメトロロジターゲットを前記サブセットに追加するとともに、それより古い測定データのみを利用可能なメトロロジターゲットを前記サブセットから取り除くことを徐々に行うことによって得られる、節29に記載の方法。
31.コンピュータによって実行されるとき節1から30のいずれかに記載の方法を実装する命令が記録されている非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品。
32.コンピュータシステムと、
機械可読命令を記憶するように構成される非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、を備え、前記機械可読命令は、実行されるとき節1から30のいずれかに記載の方法を前記コンピュータシステムに実行させるシステム。
33.パターニングプロセスについて物体を測定するためのメトロロジ装置であって、節1から30のいずれかに記載の方法を実行するように構成されるメトロロジ装置。
34.放射ビームを物体表面に提供し、前記物体表面上の構造によって方向転換された放射を検出するように構成されるメトロロジ装置と、節31に記載のコンピュータプログラム製品と、を備えるシステム。
35.放射ビームを変調するパターニングデバイスを保持するように構成される支持構造と、変調された放射ビームを放射感応性基板に投影するように構成される投影光学システムと、を備え、物体が基板であるリソグラフィ装置をさらに備え、前記リソグラフィ装置は、前記メトロロジ装置および前記コンピュータプログラム製品を用いて取得される情報に基づいて前記リソグラフィ装置の設定を制御するように構成される、節34に記載のシステム。
本発明の様々な態様の変更及び代替的な実施形態は、本説明を考慮することで当業者には明らかとなろう。従って、本説明及び図面は単に例示としてのみ解釈されるものであり、本発明を実行する一般的な方法を当業者に教示する目的のためのものである。本書に図示され記載される本発明の形態は、実施形態の例とみなされることは理解されよう。要素及び材料は本書に図示され記載されるものと置換することができ、部分及びプロセスは逆転するか又は省略することができ、いくつかの特徴は独立して利用することができ、実施形態又は実施形態の特徴は組み合わせることができる。これらは全て、本発明の本説明の利点を得た後で当業者に明らかとなろう。以下の特許請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本書に記載される要素に変更を加えることができる。本書に記載される見出しは、単に整理する目的のためのものであり、本記載の範囲を限定するため使用することは意図していない。
本出願全体を通して、「〜しうる」という語が用いられる場合、強制的な意味(すなわち「〜しなければならない」を意味する)のではなく、許可の意味で用いられる(すなわち「〜する可能性を有する」を意味する)。「含む」、「含んでいる」等の語は、限定ではなく、含むことを意味する。本出願全体を通して、単数形「a」、「an」、「the」が用いられる場合、文脈上明らかに他の意味が示される場合を除いて、複数形を含む。従って、1つ又は複数の要素について「1つ又は複数」のような他の用語及び句が使用されるにもかかわらず、例えば、「an」又は「a」を付して要素に言及する場合、2つまたはそれより多数の要素が含まれる。「又は」という用語は、他の指示がない限り、非排他的であり、すなわち「及び」と「又は」の双方を包含する。条件関係を記述する用語、例えば「X、Yに応じて」、「X、Yの時」、「X、Yであるならば」、「X、Yである場合」等は、前件が後件の必要因果条件であるか、前件が充分因果条件であるか、又は前件が寄与因果条件である因果条件を包含する。例えば、「状態Xは条件Yが確立した時に発生する」は、「XはYの時にのみ発生する」及び「XはY及びZの時に発生する」に対して包括的である。そうした条件関係は、前件が確立した直後に続いて起こる結果に限定されない。いくつかの結果は遅れることがある。条件文において、前件はそれらの後件に接続されている。例えば、前件は後件が発生する可能性に関連している。複数の属性又は関数が複数のオブジェクトにマッピングされているという言明(例えば、1つ又は複数のプロセッサがステップA、B、C、及びDを実行する)は、他の指示がない限り、全てのそうしたオブジェクトにマッピングされた全てのそうした属性又は関数と、属性又は関数のサブセットにマッピングされた属性又は関数のサブセットとの双方を包含する(例えば、全てのプロセッサの各々がステップAからDを実行する場合と、プロセッサ1がステップAを実行し、プロセッサ2がステップB及びステップCの一部を実行し、プロセッサ3がステップ3の一部及びステップDを実行する場合の双方)。更に、他の指示がない限り、1つの値又はアクションが別の条件又は値「に基づいている」言明は、その条件又は値が唯一の要因である例と、その条件又は値が複数の要因のうちの1つの要因である例の双方を包含する。他の指示がない限り、ある集合の「各」インスタンスがある特性を有するという言明は、より大きい集合のいくつかの他の点で同一の又は同様のメンバがその特性を持たない事例を除外すると解釈するべきではない。すなわち、「各」は必ずしも、あらゆるものを意味するわけではない。
特定の米国特許、米国特許出願、又は他の資料(例えば論文)の援用については、そうした米国特許、米国特許出願、及び他の資料の文章が、そうした資料と本書で述べた言明及び図面の間に抵触が存在しない範囲で援用されるにすぎない。そうした抵触が生じた場合、援用される米国特許、米国特許出願、及び他の資料における抵触する文章は特に、本書に援用されない。
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。