以下、図1〜図12を用いて、本発明の実施形態に係る画像形成装置1、及び、画像形成システム100を説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成システム100)
図1を用いて、実施形態に係る画像形成システム100の一例を説明する。図1は、実施形態に係る画像形成システム100の一例を示す図である。
図1に示すように、画像形成システム100は、画像形成装置1と携帯通信装置2を含む。以下の説明では、画像形成装置1が複合機である例を説明する。なお、画像形成装置1は、プリンターや複写機でもよい。また、以下の説明では、携帯通信装置2を所持しつつ移動する者を携帯者と称する。
画像形成装置1(複合機)で実行可能なジョブは複数種類ある。例えば、コピージョブ、スキャン保存ジョブ、スキャン送信ジョブ、メモリー接続印刷ジョブを行うことができる。コピージョブは、原稿読み取りで得られた画像データに基づき印刷するジョブである。コピージョブは、原稿の複写物を得るためのジョブである。スキャン保存ジョブは、原稿読み取りで得られた画像データを画像形成装置1のストレージ11cに記憶するジョブである。スキャン送信ジョブは、原稿読み取りで得られた画像データを設定された宛先に向けて送信するジョブである。メモリー接続印刷ジョブは、画像形成装置1に接続された携帯型メモリー3からデータを読み出し、読み出したデータに基づき印刷を行うジョブである。携帯型メモリー3は、例えば、USBメモリーやメモリーカードである。
携帯通信装置2は、使用者に携帯(所持)される。携帯通信装置2は使用者とともに移動する。図1に示すように、スマートフォンを携帯通信装置2として用いる例を説明する。なお、携帯通信装置2はスマートフォンに限られない。携帯通信装置2は、タブレット型コンピューター200でもよいし、ノートPCでもよいし、ヘッドマウントディスプレイ22でもよい。携帯され、他の通信機器と通信する機能を有しているものを携帯通信装置2として利用することができる。
(画像形成装置1)
図2を用いて、実施形態に係る画像形成装置1の一例を説明する。図2は、実施形態に係る画像形成装置1の一例を示す図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、制御部10、第1記憶部11、操作パネル12、画像読取部13、印刷部14、通信部15、メモリーインターフェイス16、カメラ17を含む。
制御部10は画像形成装置1の動作を制御する。制御部10はCPU10a、画像処理部10bを含む。第1記憶部11はRAM11a、ROM11b、ストレージ11cを含む。ストレージ11cは大容量の不揮発性記憶装置である。例えば、ストレージ11cはHDDやSSDである。第1記憶部11は画像形成装置1を制御するためのデータ、設定、プログラムを記憶する。CPU10aは第1記憶部11に記憶されるプログラム、データに基づき画像形成装置1を制御する。画像処理部10bは画像データを処理する回路を含む。画像処理部10bは画像データを処理し、ジョブに用いる画像データを生成する。
原稿を読み取るジョブ(コピージョブ、スキャン保存ジョブ、スキャン送信ジョブ)のとき、制御部10は、原稿を画像読取部13に読み取らせる。画像読取部13は、原稿の画像データを生成する。
操作パネル12は使用者の設定操作を受け付ける。操作パネル12は、表示パネル12a、タッチパネル12b、ハードキー12cを含む。表示パネル12aは、液晶パネル又は有機ELパネルである。制御部10は設定画面や操作用画像を表示パネル12aに表示させる。操作用画像は、例えば、ボタン、ソフトキー、タブである。使用者は、表示パネル12aに表示された操作用画像を操作(タッチ)する。これにより、使用者は、画像形成装置1の各種設定を入力できる。
タッチパネル12bは表示パネル12aの上面に設けられる。タッチパネル12bは使用者がタッチした位置、座標を検知する。タッチパネル12bは使用者の操作を受け付ける。タッチパネル12bの出力は制御部10に入力される。制御部10は、使用者のタッチ位置を認識する。タッチパネル12bの出力に基づき、制御部10は、使用者が操作した操作用画像を認識する。制御部10は使用者の設定操作を認識する。使用者の設定に基づき、制御部10は、画像読取部13、印刷部14、通信部15を動作させる(ジョブを行わせる)。例えば、ハードキー12cは、テンキーやスタートキーである。テンキーは、数字入力用のキーである。スタートキーはジョブ開始指示用のキーである。ハードキー12cも使用者の操作を受け付ける。
操作パネル12はジョブの種類の選択を受け付ける。使用者は、実行するジョブの種類を操作パネル12で選択できる。選択できるジョブの種類には、例えば、コピージョブ、スキャン送信ジョブ、スキャン保存ジョブ、メモリー接続印刷ジョブがある。ジョブの種類ごとに、複数の設定項目が設けられる。例えば、コピージョブに関し、印刷に用いる用紙サイズや、拡大縮小の倍率のような設定項目が設けられる。操作パネル12は、設定項目の選択を受け付ける。
また、操作パネル12は選択された設定項目の設定値の設定を受け付ける。例えば、用紙サイズの設定項目の場合、使用する用紙サイズを設定値として設定することができる(例えば、レターサイズ)。拡大縮小の設定項目については、倍率を設定値として設定することができる。なお、スキャン送信やスキャン保存ジョブでは、原稿の画像データの送信先(保存先)の設定値の設定が必要である。
印刷部14は、例えば、給紙部14a、用紙搬送部14b、画像形成部14c、定着部14dを含む。印刷を伴うジョブのとき、制御部10は、画像データに基づく印刷を印刷部14に実行させる。制御部10は用紙を給紙部14aに供給させる。制御部10は用紙を用紙搬送部14bに搬送させる。制御部10は画像形成部14cにトナー像を形成させる。制御部10は、形成されたトナー像の用紙への転写を画像形成部14cに行わせる。制御部10は、トナー像の用紙への定着を定着部14dに行わせる。
通信部15は、ネットワークを介し、コンピューター200と通信できる。通信部15はコンピューター200から送信された印刷用データを受信する。制御部10は、受信した印刷用データに基づき、印刷部14に印刷させる。また、通信部15は、近距離無線通信により、携帯通信装置2の無線通信部28と通信を行える。例えば、通信部15は、Wi−Fiの規格に基づき、無線通信部28と通信できる。また、通信部15は、Bluetooth(登録商標)の規格に基づき、無線通信部28と通信を行ってもよい。通信部15は、規格に基づく通信を行うためのハードウェア(通信回路)、通信ソフトウェアを備える。
メモリーインターフェイス16は、携帯型メモリー3を画像形成装置1に接続する部分である。メモリーインターフェイス16は、携帯型メモリー3と通信するためのソケット、端子、通信回路、通信ソフトウェアを含む。制御部10は、メモリーインターフェイス16に接続された携帯型メモリー3からデータを読み出すことができる。制御部10は、読み出したデータに基づく印刷を印刷部14に行わせる(メモリー接続印刷ジョブ)。
画像形成装置1は、カメラ17を含む。カメラ17は1台でもよいし、複数台でもよい。制御部10は、画像形成装置1に近づく携帯者をカメラ17に撮影させる。カメラ17は、レンズ、イメージセンサー、撮影データ生成回路を含む。レンズは、画像形成装置1に近づく携帯者を撮影できる方向に向けられる。
イメージセンサーは2次元的に配列された複数の受光素子を含む。イメージセンサーの各受光素子は、受光量に応じた大きさのアナログ信号(電荷)を出力する。例えば、イメージセンサーは、R、G、Bの色成分のアナログ信号を出力する。撮影データ生成回路は、イメージセンサーから出力されるアナログ信号を処理する。撮影データ生成回路は、処理後のアナログ信号をA/D変換する。撮影データ生成回路は、撮影データ(ディジタルデータ)を出力する。撮影データは第1記憶部11に記憶される。
(携帯通信装置2)
次に、図3を用いて、実施形態に係る携帯通信装置2の一例を説明する。図3は、実施形態に係る携帯通信装置2の一例を示す図である。
携帯通信装置2は、処理部20、第2記憶部21、ディスプレイ22、タッチパネル23、音声処理部24、マイクロフォン25、再生処理部26、スピーカー27、無線通信部28を含む。
処理部20は、携帯通信装置2の動作を制御する回路である。処理部20は、CPU20aや画像処理回路20bを含む。処理部20は、OS、プログラム、アプリケーション、データに基づき、携帯通信装置2の動作を制御する。画像処理回路20bは、画像データの画像処理を行う。
第2記憶部21はROM、RAM、フラッシュメモリーを含む。第2記憶部21は、携帯通信装置2のOS、プログラム、アプリケーション、データを不揮発的に記憶する。処理部20は、第2記憶部21の記憶内容に従って、携帯通信装置2の各部を制御する。タッチパネル23を通じた使用者のアプリケーションの起動要求に応じ、処理部20は、第2記憶部21からアプリケーションを第2記憶部21に読み出し、実行する。
アプリケーションとして、経路取得アプリケーション29が第2記憶部21にインストールされる。第2記憶部21は経路取得アプリケーション29を不揮発的に記憶する。経路取得アプリケーション29は、携帯者が画像形成装置1に近づいたとき、画像形成装置1に現在経路データを自動的に送信するためのアプリケーションである(詳細は後述)。
ディスプレイ22は、処理部20からの要求に従い各種情報を表示する。ディスプレイ22は、液晶パネルや有機ELパネルのような表示用のパネルである。ディスプレイ22は、操作用画像を表示する。操作用画像は、例えば、アイコン、ボタン、キー、タブである。タッチパネル23は処理部20と接続される。処理部20は、タッチパネル23の出力に基づき、タッチ位置を認識し、操作された(タッチされた)操作用画像を認識する。アイコンやボタンやキーを押すことにより、使用者は、アプリケーションの起動及び利用することができる。音声処理部24は、マイクロフォン25から入力された音声を無線通信部28から送信できるデータに変換する信号処理を行う。再生処理部26は、無線通信部28で受信した相手方からの音(声)のデータをスピーカー27に再生させる。
無線通信部28は近距離無線通信を行うための回路、ソフトウェアを含む。無線通信部28は処理部20の指示に応じて、通信可能距離内にある無線機器4と通信する。無線通信部28(携帯通信装置2)は、近距離無線通信により、画像形成装置1とも通信できる。例えば、無線通信部28は、IEEE 802.11シリーズ(Wi−Fi)の規格に基づく通信を行える。また、無線通信部28は、Bluetoothの規格に基づく通信も行える。無線通信部28は、通信規格に基づいて通信を行うためのハードウェア(通信回路)、通信ソフトウェアを備える。無線通信部28は、他の通信規格に基づく通信を行えてもよい。
(携帯者の所持物の判定)
次に、図4を用いて、実施形態に係る画像形成装置1による所持物の判定の流れの一例を説明する。図4は、実施形態に係る画像形成装置1による所持物の判定の流れの一例を示す図である。
画像形成装置1の通信部15と携帯通信装置2の無線通信部28は無線で通信できる。近距離無線通信可能なエリア内に携帯通信装置2が入ったとき、通信部15と無線通信部28は互いに通信を開始する。通信部15は、自分の近距離無線通信可能なエリア内に携帯通信装置2が入ったことを認識する。図4のスタートは、通信部15が携帯通信装置2と通信可能になった時点である。
まず、画像形成装置1の制御部10は、携帯通信装置2の所持者(携帯者)をカメラ17に撮影させる(ステップ♯11)。言い換えると、制御部10は、画像形成装置1に向かって近づいている携帯者をカメラ17に撮影させる。そして、撮影で得られた撮影データに基づき、制御部10は、所持物を判定する。
撮影データは画像データの一種である。制御部10(画像処理部10b)は、撮影データに基づき、携帯者の所持物を判別する。まず、制御部10は各撮影データ中の移動物体部分を認識する。携帯者が画像形成装置1に近づく場合、携帯者はカメラ17にも近づいていることになる。携帯者がカメラ17に近づいている場合、撮影データ内での携帯者の大きさが変化する。複数枚の撮影データを比較することにより、移動物体部分を認識することができる。
移動物体部分を認識するため、制御部10は、所定の時間間隔で複数回、撮影させる。通信部15が携帯通信装置2と通信可能な間、制御部10は周期的にカメラ17に撮影させてもよい。あるいは、撮影回数は予め定められてもよい。これにより、複数枚の撮影データが得られる。制御部10は、複数枚の撮影データをそれぞれ比較する。制御部10は、撮影データごとに、変化している画素領域を判定する。制御部10は、変化している画素領域を移動物体部分と判定する。
制御部10は、移動物体部分と判定した画素領域のうち、肌色画素領域を認識する。制御部10は撮影データごとに肌色画素領域を認識する。肌色と扱う画素値は予め定められる。制御部10は、撮影データごとに、認識した肌色画素領域のうち、手の部分を判定する。携帯者を撮影した場合、通常、顔から首の部分と手の部分が肌色画素領域と判定される。撮影データにおいて、顔の肌色画素領域は一番上側に位置する。そこで、例えば、制御部10は、一番上側の肌色画素領域よりも下の肌色画素領域を手の部分と判定する。
そして、制御部10は、携帯者の所持物が紙であるか否かを判定する(ステップ♯12)。具体的に、制御部10は、各撮影データにおいて、手の肌色画素領域の近傍の画素を確認する。複数又は全ての撮影データにおいて、手の近傍に一定サイズ以上の白色領域が撮影されているか否かを確認する。白と扱う画素値は予め定められる。手の近傍に一定サイズ以上の白色領域があるとき、制御部10は、携帯者の所持物は紙であると判定する(ステップ♯12のYes)。所持物が紙と判定できたとき、所持物の判定は終了したので、本フローは終了する(エンド)。手の近傍に一定サイズ以上の白色領域がないとき、制御部10は、携帯者は紙を持っていないと判定する(ステップ♯12のNo)。なお、他のアルゴリズムに基づき、制御部10は紙を持っているか否かを判定してもよい。
ステップ♯12のNoの場合、制御部10は、携帯者の所持物が携帯型メモリー3であるか否かを判定する(ステップ♯13)。携帯型メモリー3はUSBメモリーやメモリーカードである。例えば、第1記憶部11は、携帯型メモリー3のテンプレート画像を複数記憶する。テンプレート画像は、USBメモリーのコネクタ部分のように、携帯型メモリー3の一部分のみでもよい。制御部10は、各撮影データにテンプレート画像と同じパターン又は近似するパターンが含まれているか否か確認する。撮影データがテンプレート画像と類似度が所定値以上の画像を含むとき、制御部10は携帯型メモリー3を所持していると判定する(ステップ♯13のYes)。所持物が携帯型メモリー3と判定できたとき、所持物の判定は終了したので、本フローは終了する(エンド)。
どの撮影データもテンプレート画像と類似度が所定値以上の画像を含まないとき、制御部10は携帯型メモリー3を所持していないと判定する(ステップ♯13のNo)。なお、他のアルゴリズムに基づき、制御部10は携帯型メモリー3を持っているか否かを判定してもよい。複数又は全ての撮影データにおいて、紙又は携帯型メモリー3を所持していると判定できないとき(ステップ♯13のNo)、制御部10は、所持物不明と判定する(ステップ♯14)。そして、本フローは終了する(エンド)。
(移動履歴データ5の記憶)
次に、図5を用いて、実施形態に係る携帯通信装置2での移動履歴データ5の記憶を説明する。図5は、実施形態に係る移動履歴データ5の記憶の一例を示す図である。
図5を用いて、オフィスでの移動履歴データ5の記憶を説明する。図5のうち、中央上側の図は、画像形成装置1を示す。図5のうち、中央下側の図は、携帯者の勤務場所(机)を示す。図5のうち、右側の図は、携帯者の上司の勤務場所を示す。図5のうち、左側の図は、資料、文書が収められた倉庫(書庫)である。なお、以下の説明では、オフィス内での携帯者の移動について説明する。移動履歴データ5の記憶は、オフィス外で移動する場合にも行われる。
また、図5のうち、アルファベットの大文字を含む丸印は、Wi−Fiの規格に基づく無線機器4を示す。言い換えると、アルファベットの大文字を含む丸印は、アクセスポイントである。アクセスポイントは、無線ローカルネットワークを構築するための無線機器4である。例えば、アクセスポイントは、天井に設置される。また、図5のうち、ギリシャ文字の小文字を含む四角形は、室内に設置されたBluetoothの規格に基づく無線機器4を示す。なお、携帯通信装置2は画像形成装置1と通信する。そのため、図5の画像形成装置1も無線機器4の一種である。
携帯通信装置2の第2記憶部21は移動履歴データ5を記憶する。移動履歴データ5は携帯者の移動の履歴を示す。経路取得アプリケーション29が携帯通信装置2で動作している。経路取得アプリケーション29に基づき、処理部20は、移動履歴データ5を第2記憶部21に記憶させる。具体的に、携帯者の移動に伴い、携帯通信装置2が無線機器4の通信可能エリアに新たに入ることがある。例えば、携帯通信装置2が無線機器4からのビーコン信号を受信する。
このとき、処理部20は、新たに通信可能になった無線機器4との通信を無線通信部28に行わせる。処理部20は新たに通信可能になった無線機器4を認識する。処理部20は無線機器4の識別用情報を無線通信部28に取得させる。処理部20は、取得順に(時系列で)識別用情報を並べたデータを移動履歴データ5として第2記憶部21に記憶させる。なお、画像形成装置1の識別用情報は、経路取得アプリケーション29を用いて、第2記憶部21に登録しておくことができる。処理部20は、画像形成装置1の識別用情報を新たに取得したことにより、画像形成装置1に近づいたことを認識できる。
処理部20は、無線機器4のMACアドレスを識別用情報として無線通信部28に取得させてもよい。処理部20は、MACアドレス以外の識別用情報を無線通信部28に取得させてもよい。例えば、処理部20はSSIDのようなID情報を取得してもよい。
例えば、図5において、自席を立ち、書庫で書類(資料)を取りだした後、画像形成装置1で書類をコピーする場合を考える。この場合、無線通信部28は、無線機器4A、無線機器4α、無線機器4C、無線機器4γ、画像形成装置1の順に通信可能になる。処理部20は、新たな無線機器4の通信可能エリアに入るたびに、識別用情報を無線通信部28に取得させる。識別用情報を取得するたびに、処理部20は、新たに取得した識別用情報の移動履歴データ5への追加(更新)を第2記憶部21に行わせる。この例では、無線機器4Aの識別用情報、無線機器4αの識別用情報、無線機器4Cの識別用情報、無線機器4γの識別用情報、画像形成装置1の識別用情報の順に記述された移動履歴データ5が第2記憶部21に記憶される。
別の例を説明する。例えば、自席を立ち、書類に上司のサインを受け、その書類のスキャン保存ジョブを実行する場合を考える。このとき、携帯者は、勤務場所(机)から上司の机に向かう。上司のサインを得た後、携帯者は、画像形成装置1に向かう。携帯者の移動経路は、勤務場所(自分の机)→上司の机→画像形成装置1となる。見方を変えると、移動経路が、勤務場所(自分の机)→上司の机→画像形成装置1の場合、スキャン保存ジョブを実行する可能性が高いと推測できる。つまり、特定のジョブを実行する前に、携帯者が一定の移動を行うことがある。
また、業務において、書類の扱いが定められている場合がある。例えば、上司がサインした書類の画像データの保存先が定められることがある。この場合、スキャン保存ジョブでは、特定のフォルダ(保存先、宛先)が設定値として設定される。また、保存する画像データのファイル形式が定められることもある。この場合、スキャン保存ジョブでは、特定のファイル形式が設定値として設定される。移動パターンに応じて、設定すべき設定値が一定である場合がある。
そこで、画像形成装置1は、画像形成装置1に到るまでの移動経路と、移動経路に対してよく実行されているジョブの種類、よく設定されている設定値を学習する。学習のため、画像形成装置1の制御部10は、設定情報6を第1記憶部11に記憶させる。設定情報6は、設定値データ7と経路データ8を含む(図7参照)。設定値データ7は、実行されたジョブの種類と各設定項目の設定値を示す。経路データ8は、設定値データ7に対応するジョブが実行されたときに携帯通信装置2(携帯者)が通信部15(画像形成装置1)と通信可能になるまでの移動経路を示す。制御部10は、設定情報6(設定値データ7と経路データ8に)基づき、設定値を設定する(詳細は後述)。
(現在経路データの取得)
次に、図6を用いて、実施形態に係る画像形成装置1による現在経路データの取得の流れの一例を説明する。図6は、実施形態に係る画像形成装置1による現在経路データの取得の流れの一例を示す図である。
図6のスタートは通信部15が携帯通信装置2と通信可能になった時点である。新たに携帯通信装置2と通信可能になったとき(無線通信可能な携帯通信装置2が現れたとき)、画像形成装置1の制御部10は、その携帯通信装置2に向けて、現在経路データの送信要求を通信部15に送信させる(ステップ♯21)。
無線通信部28が現在経路データの送信要求を受信したとき、携帯通信装置2の処理部20は、現在経路データを生成する(ステップ♯22)。そして、処理部20は、画像形成装置1の通信部15に向けて、生成した現在経路データを無線通信部28に送信させる(ステップ♯23)。
現在経路データは移動履歴データ5に基づくデータである。現在経路データは画像形成装置1と通信可能になるまでの携帯者の移動経路を示すデータである。処理部20は現在経路データを生成する。処理部20は、移動履歴データ5から、連続する所定台数分の無線機器4の識別用情報を現在経路データとして抜き出す。所定台数は適宜定められる。例えば、所定台数は、数台〜十数台とすることができる。現在経路データのうち、時系列的に最後の識別用情報は、画像形成装置1よりも1台前に通信可能になった無線機器4となる。最後の識別用情報は画像形成装置1の識別用情報でもよい。
例えば、移動履歴データ5において、識別用情報が無線機器4A→無線機器4α→無線機器4C→無線機器4γ→画像形成装置1の優先順位で記憶されているとする。所定台数が3台の場合、処理部20は、無線機器4αの識別用情報と、無線機器4Cの識別用情報と、無線機器4γの識別用情報との組み合わせを現在経路データとして生成する。画像形成装置1の通信部15は現在経路データを受信(取得)する(ステップ♯24)。制御部10は、受信した現在経路データを第1記憶部11(RAM11a)に記憶させる(ステップ♯25)。そして、本フローは終了する(エンド)。
(設定情報6の蓄積)
次に、図7、図8を用いて、実施形態に係る画像形成システム100での設定情報6の蓄積の一例を説明する。図7は、実施形態に係る画像形成装置1の記憶内容の一例を示す図である。図8は、実施形態に係る画像形成装置1の設定情報6の蓄積の流れの一例を示す図である。
移動経路に対応するジョブの種類、設定値を学習するため、画像形成装置1の制御部10は、設定情報6を第1記憶部11に蓄積させる。第1記憶部11(ストレージ11c)は複数の設定情報6を不揮発的に記憶する。設定情報6は自動的に設定値の設定に用いられる情報である。設定情報6は設定値データ7、経路データ8、使用頻度値6aを含む。なお、設定情報6に基づく自動的な設定値の設定の詳細は後述する。
ここで、制御部10は、第1記憶部11(RAM11a)に現在設定値情報9を記憶させる(図2参照)。現在設定値情報9は、これから実行しようとするジョブについて、現在設定されている各設定項目の設定値を示す。現在設定値情報9は、現在の設定値を示すデータである。制御部10は、選択されたジョブの種類の各設定項目の設定値の全てを現在設定値情報9として記憶させる。
なお、携帯通信装置2を持たずに画像形成装置1に近づいた場合、又は、制御部10が第1記憶部11の設定情報6に基づく自動的な設定値の設定をしない場合、操作パネル12がジョブの選択を受け付けたときの全設定項目の設定値は、デフォルト値となる。第1記憶部11(ストレージ11c)はデフォルト設定値データ9aを不揮発的に記憶する。デフォルト設定値データ9aは、各設定項目のデフォルトの設定値を定めたデータである。これらの場合、操作パネル12がジョブの種類の選択を受け付けたとき、制御部10は、デフォルト設定値データ9aを読み出す。そして、制御部10は、読み出したデータを現在設定値情報9とする。
携帯者は、所望の結果が得られるように、設定値を変更する。例えば、両面印刷はデフォルトでは無効とされる。両面印刷を行うとき、携帯者は、両面印刷機能の設定値を有効に変更する。設定値が変更されたとき、制御部10は現在設定値情報9を更新する。制御部10は、変更された設定値を現在設定値情報9に書き込む。
全ての設定値が所望の設定値となっているとき、携帯者はジョブの実行開始指示を行う。例えば、携帯者は操作パネル12のスタートキーを操作する。操作パネル12は、ジョブの実行開始指示を受け付ける。ジョブ実行開始指示がなされたとき(スタートが操作されたとき)、現在設定値情報9に基づき、制御部10は、印刷部14、画像読取部13、又は、通信部15にジョブを実行させる。
図8のスタートは、携帯者(携帯通信装置2)が画像形成装置1に近づき、画像形成装置1にジョブの実行を開始させた時点である。言い換えると、現在経路データをやりとりした携帯通信装置2と通信可能な状態のまま、ジョブが開始された時点である。ジョブの実行前、携帯者は、必要な設定項目の選択と設定値の設定を行っている。また、携帯通信装置2は、現在経路データを画像形成装置1に送信している。制御部10は、設定情報6を蓄積するための処理を開始する。
まず、制御部10は、第1記憶部11が同一情報を記憶しているか否かを確認する(ステップ♯31)。同一情報は、現在経路データと経路データ8が同じであり、かつ、実行を開始したジョブの現在設定値情報9と設定値データ7が同じ設定情報6である。ステップ♯31では、今回実行されたジョブと同じ移動経路、同じ設定値のジョブが過去に実行されたか否かが確認される。
同一情報を記憶していないとき(ステップ♯31のNo)、画像形成装置1の制御部10は、設定情報6を第1記憶部11に新たに記憶させる(ステップ♯32)。記憶させる設定情報6は、現在経路データを経路データ8とし、現在設定値情報9を設定値データ7とされる。そして、本フローは終了する(エンド)。これにより、携帯者の移動パターンと、移動パターンに対応するジョブの設定値が蓄積される。
同一情報を記憶しているとき(ステップ♯31のYes)、画像形成装置1の制御部10は、同一情報の使用頻度値6aを加算する(ステップ♯33)。そして、本フローは終了する(エンド)。例えば、制御部10は、同一情報と判定した設定情報6の使用頻度値6aに1を加算する。使用頻度値6aにより、ある移動経路に対し、よく用いられる設定値の組み合わせを学習することができる。
(画像形成装置1の設定値の自動設定)
次に、図9〜図11を用いて、実施形態に係る画像形成装置1の設定値の自動設定の一例を説明する。図9、図10は、実施形態に係る画像形成装置1の設定値の自動設定の一例を示す図である。図11は、実施形態に係る選択画面S1の一例を示す図である。
画像形成装置1を使うとき、携帯者は画像形成装置1に近づく。図9のスタートは、画像形成装置1と携帯通信装置2とが通信可能になった時点である。言い換えると、画像形成装置1が、通信可能エリアに入った携帯通信装置2から現在経路データを取得した時点である。現在経路データを取得したとき、画像形成装置1の制御部10は、第1記憶部11が記憶する設定情報6のうち、経路データ8が現在経路データと同じ設定情報6を抽出する(ステップ♯41)。以下の説明では、制御部10がステップ♯41で抽出した設定情報6を1次抽出情報と称する。次に、制御部10は、複数の設定情報6を抽出したか(1次抽出情報が複数か)否かを確認する(ステップ♯42)。
抽出した設定情報6が1つのとき(ステップ♯42のNo)、制御部10は、抽出した設定情報6の設定値データ7に基づき、各設定項目の設定値を設定する(ステップ♯43)。具体的に、制御部10は第1記憶部11の現在設定値情報9を書き換える。制御部10は抽出した設定情報6の設定値データ7を現在設定値情報9の記憶領域に書き込む。これにより、移動パターンに対応する設定値を自動的に設定することができる。以前に同じ行動パターンをとったときに実行したジョブの設定状態を再現することができる。そして、制御部10は設定画面を表示パネル12aに表示させる(ステップ♯44→エンド)。
制御部10は、抽出した設定情報6に対応するジョブの種類の設定画面を表示パネル12aに表示させる。例えば、抽出した設定情報6がコピージョブの設定値データ7を含むとき、制御部10は、コピージョブの設定画面を表示パネル12aに表示させる。また、制御部10は、抽出した設定情報6の設定値データ7で定義された設定値が反映されている設定画面を表示パネル12aに表示させる。どのような設定値が自動的に設定されたかを示すため、制御部10は、デフォルト値と異なる設定値の一覧を表示パネル12aに表示させてもよい。画像形成装置1まで来た携帯者に設定内容を知らせることができる。
抽出した設定情報6(1次抽出情報)が複数のとき(ステップ♯42のYes)、制御部10は、携帯者の所持物が紙であると判定したか否かを確認する(ステップ♯45)。所持物は紙と判定しているとき(ステップ♯45のYes)、制御部10は、複数の1次抽出情報から画像読取部13を用いるジョブの設定情報6をさらに抽出する(ステップ♯46)。例えば、制御部10は、抽出された設定情報6のうち、コピージョブ、スキャン保存ジョブ、スキャン送信ジョブの設定情報6をさらに抽出する。以下の説明では、1次抽出情報から所持物に基づいてさらに抽出した設定情報6を2次抽出情報と称する。
所持物が紙であると判定していないとき(ステップ♯45のNo)、制御部10は、携帯者の所持物が携帯型メモリー3と判定したか否かを確認する(ステップ♯47)。所持物は携帯型メモリー3と判定しているとき(ステップ♯47のYes)、制御部10は、複数の1次抽出情報から携帯型メモリー3を用いるジョブの設定情報6をさらに抽出する(ステップ♯48)。例えば、制御部10は、抽出された設定情報6のうち、メモリー接続印刷ジョブの設定情報6をさらに抽出する。
ステップ♯46又はステップ♯48の後、制御部10は、2次抽出情報が複数か否かを確認する(ステップ♯49)。2次抽出情報が1つのとき(ステップ♯49のNo)、2次抽出情報の設定値データ7に基づき、制御部10は各設定項目の設定値を設定する(ステップ♯410)。具体的に、制御部10は、2次抽出情報の設定値データ7の設定値が再現されるように、現在設定値情報9を第1記憶部11に更新させる。これにより、移動パターンと所持物の組み合わせに対応する設定値を自動的に設定することができる。また、以前に紙又は携帯型メモリー3を所持しつつ、同じ行動パターンをとったときに実行したジョブの設定状態を再現することができる。そして、制御部10は設定画面を表示パネル12aに表示させる(ステップ♯411→エンド)。
ステップ♯411では、制御部10は、2次抽出情報に対応するジョブの種類の設定画面を表示パネル12aに表示させる。また、制御部10は、2次抽出情報の設定値データ7で定義された設定値が反映されている設定画面を表示パネル12aに表示させる。どのような設定値が自動的に設定されたかを示すため、制御部10は、デフォルト値と異なる設定値の一覧を表示パネル12aに表示させてもよい。
複数の1次抽出情報を抽出したが所持物を判定できなかったとき(ステップ♯47のNo)、又は、2次抽出情報が複数のとき(ステップ♯49のYes)、制御部10は抽出した設定情報6の優先順位を定める(ステップ♯412)。具体的に、複数の1次抽出情報を抽出したものの所持物を判定できなかったとき、制御部10は、各1次抽出情報の優先順位を定める。複数の2次抽出情報が抽出されたとき、制御部10は、各2次抽出情報の優先順位を定める。制御部10は、使用頻度値6aが大きいほど優先順位を高くする。
制御部10(画像形成装置1)は、選択画面S1を表示パネル12aに表示させる(ステップ♯413)。図11は選択画面S1の一例を示す。選択画面S1は、1次抽出情報又は2次抽出情報に含まれる設定値データ7を携帯者に選択させるための画面である。
選択画面S1は、複数の領域に分割される。図11の例では、分割された領域のうち、2つの領域が選択用領域F1とされる。選択用領域F1は、抽出した設定情報6に含まれる設定値データ7の内容を表示するための領域である。選択用領域F1の数は、2つに限られない。3つ以上でもよい。具体的に、複数の1次抽出情報を抽出したものの所持物を判定できなかったとき、制御部10は、1つの選択用領域F1の中に、1つの1次抽出情報に含まれる設定値データ7の内容を表示する。複数の2次抽出情報が抽出されたとき、制御部10は、1つの選択用領域F1の中に、1つの2次抽出情報に含まれる設定値データ7の内容を表示する。図11は、選択用領域F1の内側に、ジョブの種類や、デフォルト値と異なる設定項目名と設定値を表示させる例を示す。
制御部10は、抽出した設定情報6から選択用領域F1の数と同じ数の表示候補を選択する。制御部10は、優先順位が最も高い設定情報6から順に表示候補を選択する。図11の場合、優先順位が最高の設定情報6と、優先順位が2番目の設定情報6を選択する。具体的に、複数の1次抽出情報を抽出したものの所持物を判定できなかったとき、制御部10は、複数の1次抽出情報から、優先順位が高い順に表示候補を選択する。複数の2次抽出情報が抽出されたとき、複数の2次抽出情報から、優先順位が高い順に表示候補を選択する。
使用者(携帯者)は、使用したい設定値を含む選択用領域F1に触れる。操作パネル12は、設定情報6(設定値データ7、選択用領域F1)の選択を受け付ける。タッチパネル23の出力に基づき、制御部10は、選択された設定情報6を認識する。これにより、移動経路(移動パターン)に対し、よく設定する設定値のパターンが複数あるとき、所望の設定値データ7を抽出することができる。
そして、選択画面S1で選択された設定情報6(1次抽出情報又は2次抽出情報)の設定値データ7に基づき、制御部10(画像形成装置1)は、各設定項目の設定値を設定する(ステップ♯414)。具体的に、制御部10は、選択された設定値データ7の設定値が再現されるように、現在設定値情報9を第1記憶部11に更新させる。そして、制御部10は、設定画面を表示パネル12aに表示させる(ステップ♯415→エンド)。ステップ♯415は、ステップ♯44やステップ♯411と同様である。
(使用する設定情報6の切替)
次に、図12を用いて、実施形態に係る設定情報6の切替の一例を説明する。図12は、実施形態に係る設定情報6(設定値データ7)の切替の一例を示す図である。
選択画面S1で設定情報6(設定値データ7)を選択したものの、他の設定情報6に基づき、設定したい場合がある。画像形成装置1では、使用する設定情報6を切り替えることができる。使用する設定情報6を切り替えるとき、携帯者は切替操作を行う。操作パネル12は切替操作を受け付ける。どのような操作を切替操作と扱うかは、適宜定めることができる。図12は、設定画面のうち、背景領域(操作用画像がない領域)をフリック操作(スワイプ操作)する操作を切替操作と扱う例を示している。フリック操作はタッチしたままタッチ位置をスライド移動させる操作である。
そして、予め定められた第1方向にタッチ位置が移動するように切替操作がなされたとき、制御部10は、現在選択している設定情報6の次の優先順位の設定情報6を新たに選択する。予め定められた第2方向にタッチ位置が移動するように切替操作がなされたとき、制御部10は、現在選択している設定情報6よりも1つ優先順位が高い設定情報6を新たに選択する。第2方向は第1方向と反対の方向である。第1方向は適宜定められる。例えば、第1方向は左方向とできる。この場合、第2方向は右方向となる。第1方向は下方向としてもよい。この場合、第2方向は上方向となる。
操作パネル12が切替操作を受け付けたとき、制御部10は、新たに選択された設定情報6に含まれる設定値データ7に基づき、各設定項目の設定値を設定する。制御部10は、新たに選択された設定情報6の設定値データ7を現在設定値情報9と扱う。そして、制御部10は、表示パネル12aに表示される画面を変更する。
制御部10は、新たに選択された設定情報6の設定値データ7に対応するジョブの種類の設定画面を表示パネル12aに表示させる。また、制御部10は、新たに選択された設定情報6の設定値データ7で定義された設定値が反映されている設定画面を表示パネル12aに表示させる。制御部10は、デフォルト値と異なる設定値の一覧を一定時間、表示パネル12aに表示させてもよい。図12は、切替操作による設定値と設定画面の変化の一例を示す。図12のうち、上側の図は、切替操作前の設定画面の一例を示す。図12の下側の図は、切替操作後の設定画面の一例を示す。
特定の設定値を組み合わせてジョブを実行するとき、画像形成装置1に到る前に、携帯者が決まった行動(移動)を行っている場合がある。例えば、書類に上司にサインをもらい、サイン済の書類をコピーする場合、自己のデスク→上司のデスク→画像形成装置1というルートで移動する。そして、サイン済の書類をコピーするとき、画像形成装置1で設定すべき設定値が決められている場合がある。移動経路により、使用者が所望する設定値を予測できる場合がある。
そこで、実施形態に係る画像形成装置1は、通信部15、第1記憶部11、制御部10を含む。前記通信部15は携帯通信装置2と通信する。前記第1記憶部11は、現在設定値情報9と設定情報6を記憶する。前記制御部10は、前記現在設定値情報9に基づきジョブを行わせる。前記現在設定値情報9は、これから実行しようとするジョブについて、現在設定されている各設定項目の設定値を示すデータである。前記設定情報6は、設定値データ7と経路データ8を含む。前記設定値データ7は、実行されたジョブの各設定項目の設定値を示す。前記経路データ8は、前記設定値データ7に対応するジョブが実行されたときに前記携帯通信装置2が前記通信部15と通信可能となるまでの移動経路を示す。前記通信部15は、前記携帯通信装置2と通信可能になったとき、前記携帯通信装置2から現在経路データを取得する。前記現在経路データは、今回、前記画像形成装置1と通信可能になるまでの前記携帯通信装置2の携帯者の移動経路を示す。前記通信部15が前記現在経路データを取得したとき、前記制御部10は、前記第1記憶部11の前記設定情報6のうち、取得した前記現在経路データと前記経路データ8が同じ前記設定情報6を抽出する。前記制御部10は、抽出した前記設定情報6の前記設定値データ7の前記設定値が再現されるように、前記現在設定値情報9を前記第1記憶部11に更新させる。
これにより、携帯者の移動経路(行動パターン)に対応する設定値を自動的に設定することができる。画像形成装置1に到るまでの移動経路に基づき、携帯者が設定する可能性が高い設定値を自動的に設定することができる。設定操作を行わずにジョブを開始できる確率が高くなるように、画像形成装置1の設定値を自動的に設定することができる。
画像形成装置1は、携帯者を撮影するためのカメラ17を含む。通信部15が携帯通信装置2と通信可能になったとき、制御部10は携帯者をカメラ17に撮影させる。制御部10は、撮影により得られた撮影データに基づき、携帯者の所持物を判定する。複数の設定情報6を抽出したとき、制御部10は、抽出された設定情報6である1次抽出情報から所持物を用いて行うジョブの設定情報6をさらに抽出する。制御部10は、1次抽出情報からさらに抽出した設定情報6である2次抽出情報の設定値データ7の設定値が再現されるように、現在設定値情報9を第1記憶部11に更新させる。これにより、画像形成装置1に近づいた携帯者の所持物を判定することができる。所持物に基づき、携帯者が設定する可能性が高い設定値データ7(設定情報6)をさらに絞り込むことができる。自動的に設定情報6を絞り込むことができる。
携帯者が紙を持っている場合、ジョブに用いる(読み取る)原稿である可能性が高い。
画像形成装置1は、原稿を読み取る画像読取部13を含む。制御部10は、撮影データに基づき、所持物が紙であるか否かを判定する。所持物が紙であると判定したとき、制御部10は、1次抽出情報のうち、画像読取部13を用いるジョブの設定情報6を2次抽出情報として抽出する。これにより、画像形成装置1に近づいた携帯者の所持物が紙であるか否かを判定することができる。所持物が紙であるとき、原稿を読み取るジョブを行う可能性が高い。所持物が紙であるとき、画像読取部13を用いるジョブの設定情報6を自動的に選び出すことができる。携帯者が設定したい設定値と対応する設定値データ7(設定情報6)だけを選び出すことができる。設定操作を行わずにジョブを開始できる確率をさらに高めることができる。
画像形成装置1は、携帯型メモリー3を接続し、携帯型メモリー3の読み書きを行うためのメモリーインターフェイス16を含む。制御部10は、撮影データに基づき、所持物が携帯型メモリー3であるか否かを判定する。所持物が携帯型メモリー3であると判定したとき、制御部10は、1次抽出情報のうち、携帯型メモリー3を用いるジョブの設定情報6を2次抽出情報として抽出する。これにより、画像形成装置1に近づいた携帯者の所持物が携帯型メモリー3であるか否かを判定することができる。所持物が携帯型メモリー3のとき、携帯型メモリー3を用いるジョブを行う可能性が高い。所持物が携帯型メモリー3のとき、携帯型メモリー3を用いるジョブの設定情報6を自動的に選び出すことができる。携帯者が設定したい設定値と対応する設定情報6だけを選び出すことができる。設定操作を行わずにジョブを開始できる確率をさらに高めることができる。
画像形成装置1は操作パネル12を備える。操作パネル12は、表示パネル12aを含み、操作を受け付ける。複数の1次抽出情報を抽出したものの所持物を判定できなかったとき、又は、複数の2次抽出情報が抽出されたとき、制御部10は、複数の1次抽出情報、又は、複数の2次抽出情報のなかから使用する設定情報6を選択するための選択画面S1を表示パネル12aに表示させる。制御部10は、選択画面S1で選択された設定情報6に含まれる設定値データ7の設定値が再現されるように、現在設定値情報9を第1記憶部11に更新させる。これにより、画像形成装置1だけでは設定情報6を絞り込みきれないとき、携帯者は、使用する設定情報6(設定値データ7)を自分で選ぶことができる。設定値データ7を選ぶだけで、所望の設定値を設定することができる。
制御部10は、選択画面S1で選択された設定情報6に含まれる設定値データ7により設定される設定値を表示パネル12aに表示させる。設定値データ7に基づき設定される設定値を確認することができる。
ジョブが実行されたとき、制御部10は、現在経路データと経路データ8が同じであり、かつ、実行したジョブの現在設定値情報9と設定値データ7が同じ設定情報6である同一情報を第1記憶部11が記憶しているか否かを確認する。同一情報を記憶しているとき、制御部10は、同一情報の使用頻度値6aを加算する。複数の1次抽出情報を抽出したものの所持物を判定できなかったとき、又は、複数の2次抽出情報が抽出されたとき、制御部10は、使用頻度値6aが大きいほど優先順位が高くなるように抽出した各設定情報6の優先順位を設定する。制御部10は、優先順位が高いものから順に、複数の設定情報6を表示候補として選択する。制御部10は、表示候補として選択した設定情報6に含まれる設定値データ7の内容を選択画面S1に表示させる。これにより、携帯者の移動経路(行動パターン)に対応する設定情報6のうち、最も使用頻度が高い設定情報6を表示候補として選び出すことができる。携帯者の行動を学習し、移動経路にあわせた設定情報6を表示候補として選び出すことができる。
同一情報が記憶されていないとき、制御部10は、現在経路データを経路データ8とし、現在設定値情報9を設定値データ7とする設定情報6を第1記憶部11に新たに記憶させる。これにより、新たな移動経路と新たな設定値データ7の組み合わせ(新たな設定情報6)を自動的に画像形成装置1に登録することができる。
操作パネル12は使用する設定情報6を切り替えるための切替操作を受け付ける。切替操作がなされたとき、制御部10は、切替操作により新たに選択された設定情報6に含まれる設定値データ7の設定値が再現されるように、現在設定値情報9を第1記憶部11に更新させる。これにより、設定情報6(設定値データ7)の選択を間違えたとき、正しい設定値データ7に容易に切り替えることができる。所望の設定値データ7を容易に選ぶことができる。
画像形成システム100は、上述の画像形成装置1と携帯通信装置2を含む。携帯通信装置2は、前記通信部15と通信可能になったとき、前記通信部15に前記現在経路データを送信する。この構成により、携帯通信装置2を持ったまま、画像形成装置1に近づくだけで、画像形成装置1の設定値を自動的に設定することができる。画像形成装置1に到るまでの移動経路に基づき、携帯者が設定したい可能性が高い設定値を自動的に設定することができる。設定操作を行わずに画像形成装置1のジョブを開始できる確率が高い画像形成システム100を提供することができる。
又、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。