JP6972500B2 - アルミニウム石鹸、その製造方法および液状油組成物 - Google Patents
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[1] イソステアリン酸のアルミニウム石鹸であって、イソステアリン酸に由来するアシル基のアルミニウムに対するモル比が1.1以上、2.5以下であり、25℃でのヘキサンに対する溶解度が0.5g/L以上、100g/L以下であることを特徴とする、アルミニウム石鹸。
[2] [1]のアルミニウム石鹸および液状油を含有することを特徴とする、液状油組成物。
[3] イソステアリン酸および炭素数1〜6のアルミニウムトリアルコキシドを原料とし、前記アルミニウムトリアルコキシド1モルに対してイソステアリン酸を1.4〜2.7モル反応させることによって、アルミニウム石鹸を得ることを特徴とする、アルミニウム石鹸の製造方法。
本発明に係るアルミニウム石鹸は、イソステアリン酸のアルミニウム石鹸であって、飽和脂肪酸に由来するアシル基のアルミニウムに対するモル比が1.1以上、2.5以下であり、25℃でのヘキサンに対する溶解度が0.5g/L以上である。
イソステアリン酸を用いることで、アルミニウム石鹸の増粘剤としての効果が得られ、アルミニウムトリアルコキシドとの反応性が低くならない。
アルミニウムトリアルコキシドは、炭素数1〜6のアルコキシドからなり、3つのアルコキシドは互いに同一でも異なっていてもよいが、入手の容易さなどの点から、同一のものが好ましく用いられる。アルコキシドの炭素数は2〜5が好ましく、3〜4がさらに好ましい。該アルミニウムトリアルコキシドの例として、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリn−ペントキシド、アルミニウムトリn−ヘキソキシドなどが挙げられる。
アルミニウムは、一般的に3つの結合を形成することができるが、立体障害等の理由から脂肪酸との反応では、2つまでの結合が主たる生成物となる。そのため、アルミニウムトリアルコキシド1モルに対するイソステアリン酸の仕込み量は1.4〜2.7モルが好ましく、1.5〜2.5がより好ましく、1.5〜2.3がさらに好ましい
アルミニウムトリアルコキシドと飽和脂肪酸との反応温度は85〜120℃であり、90〜110℃が好ましい。この反応温度が85℃未満であると反応が遅くなる。反応温度が110℃よりも高温であると飽和脂肪酸アルミニウム石鹸の高分子量化が進み沈殿を生じさせ、また、製品が着色しやすくなる。
本発明のアルミニウム石鹸は、飽和脂肪酸に由来するアシル基を有する。そして、このアシル基のアルミニウムに対するモル比が1.1以上、2.5以下である。アシル基のアルミニウムに対するモル比が1.1未満であると、液状油への相溶性が低下し沈殿等を生じやすくなるので、1.1以上とするが、1.2以上とすることが更に好ましい。また、アシル基のアルミニウムに対するモル比が2.5よりも高くなると、増粘効果が低下するので、2.5以下とするが、2.2以下が更に好ましい。
好適な実施形態においては、本発明のアルミニウム石鹸の灰分比A値(実測灰分/理論灰分)については、0.80≦A≦0.95とする。尚、実測灰分は、本発明で得られた試料の実測定値(酸化アルミニウムの質量)であり、理論灰分値は、アルミニウム石鹸の原料である飽和脂肪酸とアルミニウムアルコキシドの仕込みモル比から得られる理論値の値である。灰分比A値が上述の範囲であれば、本発明の効果が十分に得られるため好ましく、0.82≦A≦0.93がより好ましい。
本発明のアルミニウム石鹸の25℃でのヘキサンに対する溶解度が0.5g/L以上であり、1.0g/L以上であることがより好ましい。0.5g/Lであることにより炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の液状油と高添加量で併用した際に、溶解安定性が高い透明の増粘物を得られる。また、本発明のアルミニウム石鹸の25℃でのヘキサンに対する溶解度の上限は限定する必要は特にないが、増粘効果の高さの観点から、100g/L以下とすることが好ましい。
温度計を取り付けた加熱式混練ニーダーにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g)500.0g(1.68mol)を加え、95℃まで加熱した。そこに、アルミニウムトリイソプロポキシド(キシダ化学(株)試薬1級)を229.3g(1.12mol)を加え、加熱混練した。反応によって生成するイソプロピルアルコールの留出がなくなった時点で反応を停止し、粘稠性固体のイソステアリン酸アルミニウム石鹸を得た。
温度計を取り付けた加熱式混練ニーダーにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g)500.0g(1.68mol)を加え、95℃まで加熱した。そこに、アルミニウムトリイソプロポキシド(キシダ化学(株)試薬1級)を149.6g(0.73mol)を加え、加熱混練した。反応によって生成するイソプロピルアルコールの留出がなくなった時点で反応を停止し、粘稠性固体のイソステアリン酸アルミニウム石鹸を得た。
8Lセパラブルフラスコにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g)300g、および水2500g
を仕込み、60℃ まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を84.2g加え、同温度(60℃)にて1時間攪拌し、イソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。その後、60℃に保持したまま、20質量%硫酸アルミニウム水溶液1728.5gを60分かけてイソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、60℃に保持して10分間攪拌して熟成した。得られたイソステアリン酸アルミニウム石鹸水溶液スラリーに水1500gを加え、40℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキを棚段乾燥機で乾燥してイソステアリン酸脂肪酸アルミニウム石鹸を得た。
8Lセパラブルフラスコにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g) 300g、および水2500g
を仕込み、60℃ まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を84.2g加え、同温度(60℃)にて1時間攪拌し、イソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。その後、60℃に保持したまま、20質量%硫酸アルミニウム水溶液1296.4gを60分かけてイソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、60℃に保持して10分間攪拌して熟成した。得られたイソステアリン酸アルミニウム石鹸水溶液スラリーに水1500gを加え、40℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキを棚段乾燥機で乾燥してイソステアリン酸脂肪酸アルミニウム石鹸を得た。
温度計を取り付けた加熱式混練ニーダーにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g)500.0g(1.68mol)を加え、95℃まで加熱した。そこに、アルミニウムトリイソプロポキシド(キシダ化学(株)試薬1級)を1146.7g(5.61mol)を加え、加熱混練した。反応によって生成するイソプロピルアルコールの留出がなくなった時点で反応を停止し、粘稠性固体のイソステアリン酸アルミニウム石鹸を得た。
温度計を取り付けた加熱式混練ニーダーにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g)500.0g(1.68mol)を加え、95℃まで加熱した。そこに、アルミニウムトリイソプロポキシド(キシダ化学(株)試薬1級)を114.7g(0.56mol)を加え、加熱混練した。反応によって生成するイソプロピルアルコールの留出がなくなった時点で反応を停止し、粘稠性固体のイソステアリン酸アルミニウム石鹸を得た。
8Lセパラブルフラスコにイソステアリン酸(クローダジャパン(株) Prisorine 3503、酸価189mgKOH/g) 300g、および水2500gを仕込み、60℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を84.2
g加え、同温度(60℃)にて1時間攪拌し、イソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。その後、60℃に保持したまま、20質量%硫酸アルミニウム水溶液743.3gを60分かけてイソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、60℃に保持して10分間攪拌して熟成した。得られたイソステアリン酸アルミニウム石鹸水溶液スラリーに水1500gを加え、40℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキを棚段乾燥機で乾燥してイソステアリン酸脂肪酸アルミニウム石鹸を得た。
8Lセパラブルフラスコにステアリン酸(日油(株) NAA−180、酸価196mgKOH/g)300g、および水2500gを仕込み、60℃
まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を84.2g加え、同温度(60℃)にて1時間攪拌し、イソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。その後、60℃に保持したまま、20質量%硫酸アルミニウム水溶液1792.5gを60分かけてイソステアリン酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、60℃に保持して10分間攪拌して熟成した。得られたイソステアリン酸アルミニウム石鹸水溶液スラリーに水1500gを加え、40℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000
gの水で2回水洗し、得られたケーキを棚段乾燥機で乾燥してイソステアリン酸脂肪酸アルミニウム石鹸を得た。
得られた各例のアルミニウム石鹸について、アシル基のアルミニウムに対するモル比を以下のようにして測定した。
所定量のアルミニウム石鹸に塩酸を加えて酸分解し、ヘキサンを加えて脂肪酸を抽出し、ヘキサン層を蒸発乾固させてカルボン酸量を定量した。一方、水層に関してアルミニウム量を原子吸光光度法から定量し、両者のモル比を求めた。
試料約1gを磁器製ルツボにて精秤し、始めは低温で加熱して揮発分を揮発させ、試料に着火させて加熱し、煙がなくなるまで焼いた。650℃の電気炉内に1時間保持して完全に灰化させた後、電気炉から取り出し、5分間放冷後、デシケーター中で60分間放置し、強熱残分を精秤した。以下の式より算出した。
実測灰分(%)=(強熱残分(g)/試料(g))×100
以下の式により算出した。
理論灰分(%)={102/[78+(M−18)×A]}×100
・102・・・酸アルミニウムの分子量
・78 ・・・水酸化アルミニウムの分子量
・M ・・・用いた脂肪酸の分子量(56110/酸価)
・A ・・・アルミニウム化合物に対する脂肪酸の仕込みモル比
25℃にしたヘキサンにアルミニウム石鹸を所定量入れ、スターラーで混合して、1時間後の状態を目視で確認した。溶解した量を測定値とした。
<溶解性>
完全に溶解している・・・○
不溶分が残存している・・・×
<粘度および温度変化に対する粘度変化率>
各所定温度(25℃、65℃)におけるB型粘度計による測定値
および25℃に対する65℃の粘度の変化率を算出した。
粘度変化率
=(25℃の粘度-65℃の粘度)/25℃の粘度
比較例2では、アルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いており、ヘキサンへの溶解度が低く、液状油に対しては増粘効果が見られなかった。
比較例3では、アシル基/アルミニウムのモル比が0.3/1と低くなっておりヘキサンへの溶解度が低く、液状油に対しては増粘効果が見られなかった。
液状油に対してはある程度の増粘効果は見られたものの、粘度の温度変化に対して十分な安定性を有していなかった。
比較例5では、アルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いており、ヘキサンへの溶解度が低く、液状油に対しては増粘効果が見られなかった。
比較例6では、アルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いており、ヘキサンへの溶解度が低く、液状油に対しては増粘効果が見られなかった。
Claims (3)
- イソステアリン酸のアルミニウム石鹸であって、イソステアリン酸に由来するアシル基のアルミニウムに対するモル比が1.1以上、2.5以下であり、25℃でのヘキサンに対する溶解度が0.5g/L以上、100g/L以下であることを特徴とする、アルミニウム石鹸。
- 請求項1記載のアルミニウム石鹸および液状油を含有することを特徴とする、液状油組成物。
- イソステアリン酸および炭素数1〜6のアルミニウムトリアルコキシドを原料とし、前記アルミニウムトリアルコキシド1モルに対してイソステアリン酸を1.4〜2.7モル反応させることによって、アルミニウム石鹸を得ることを特徴とする、アルミニウム石鹸の製造方法。
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