JP6971038B2 - 燃料電池シール材用組成物、燃料電池用シール材および燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含有する燃料電池シール材用組成物、燃料電池用シール材および燃料電池に関する。
燃料電池は、効率的でクリーンな発電システムであり、近年、自動車用および家庭用等の新しいエネルギーシステムとして注目されている。燃料電池のセルシール材としては、耐熱性、耐酸性、耐気体透過性および高速成形性に優れた、低コストな材料が求められている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2007/004481号
本発明者らは、燃料電池用シール材として、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を架橋剤により架橋した成形体を用いることを検討した。ゴムの架橋方法として、一般的にイオウ架橋、過酸化物架橋が知られている。
しかしながら、イオウ架橋では燃料電池を構成する白金触媒等の触媒がイオウにより被毒し、性能が低下する。また、過酸化物単独の架橋では、空気中で架橋させると成形体表面が酸化劣化してしまうため、押出成形等の成形法での連続架橋が困難であるため、生産性に劣る。本発明の課題は、被毒を起こさない燃料電池用シール材を形成できるのみならず、架橋効率にも優れる組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記成分を含有する組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[3]に関する。
[1]エチレンに由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、および環状非共役ポリエンに由来する構造単位を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、キノンジオキシム系架橋剤(B)とを含有する燃料電池シール材用組成物。
[2]前記[1]に記載の組成物から形成された燃料電池用シール材。
[3]前記[2]に記載の燃料電池用シール材を有する燃料電池。
本発明によれば、被毒を起こさない燃料電池用シール材を形成できるのみならず、架橋効率にも優れる組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
〔燃料電池シール材用組成物〕
本発明の燃料電池シール材用組成物は、以下に説明するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、キノンジオキシム系架橋剤(B)とを含有する。したがって、前記組成物は、架橋可能な組成物である。以下、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を単に「共重合体(A)」ともいう。
[共重合体(A)]
共重合体(A)は、エチレンに由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、および環状非共役ポリエンに由来する構造単位を有する。なお、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンとしてはそれぞれを、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。すなわち、共重合体(A)は、エチレンに由来する構造単位、少なくとも1種類の炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、および少なくとも1種類の環状非共役ポリエンに由来する構造単位を有する。
共重合体(A)は、例えば、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンがランダムに共重合したポリマーであり、好ましくは、これらのモノマーがメタロセン触媒(メタロセン化合物)の存在下に共重合したポリマーである。
<炭素数3〜20のα−オレフィン>
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。前記α−オレフィンの炭素数は、得られる架橋体の低温および高温でのゴム弾性に優れ、シール性が高くなる点、また組成物の押出性能の点から、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは4〜10である。
炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサンが挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンがより好ましく、1−ブテンがさらに好ましい。
α−オレフィンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
<環状非共役ポリエン>
環状非共役ポリエンとしては、非共役不飽和結合を2個以上有する環状化合物が制限なく使用でき、例えば、式[C1]で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006971038
式[C1]中の各記号の意味は、以下のとおりである。
nは、0〜2の整数である。
10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子またはハロゲン含有基であり、前記炭化水素基は二重結合を有していてもよい。
10〜R13までの任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、前記環は二重結合を含んでいてもよく、R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成していてもよく、R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成していてもよい。
ただし、R10〜R13は、以下の(i)〜(iv)の要件の少なくとも一つを満たす。
(i)R10〜R13の少なくとも1つは、二重結合を1つ以上有する炭化水素基である。
(ii)R10〜R13までの任意の2つの置換基が互いに結合して環を形成し、
前記環が二重結合を含んでいる。
(iii)R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成している。
(iv)R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成している。
10〜R13として挙げた、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の具体例としては、後述する架橋メタロセン化合物(a)の式[1]中におけるR1からR6として説明した原子および置換基が挙げられる。
式[C1]において、R10、R11、R12およびR13のいずれか1つ以上が、二重結合を1つ以上有する炭化水素基である場合、前記炭化水素基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、1−プロペニル基、2−プロペニル基(アリル基)、1−メチルエテニル基(イソプロペニル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,4−ヘキサジエニル基が挙げられる。前記(i)を満たす化合物としては、例えば、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)および下記の化合物が挙げられる。これらの中でも、VNBが好ましい。
Figure 0006971038
式[C1]において、R10〜R13までの任意の2つの置換基が互いに結合して環を形成し、前記環が二重結合を含んでいる場合、式[C1]の化合物は、例えば、式[C-I]、[C-II]または[C-III]で表すことができる。
Figure 0006971038
式[C-I]、[C-II]および[C-III]において、nおよびR11〜R13はそれぞれ式[C1]中の同一記号と同義である。前記(ii)を満たす化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ジメチルジシクロペンタジエンおよび下記の化合物が挙げられる。これらの中でも、DCPDが好ましい。
Figure 0006971038
式[C1]において、R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成している場合、前記アルキリデン基は、通常は炭素数1〜20のアルキリデン基であり、例えば、メチレン基(CH2=)、エチリデン基(CH3CH=)、プロピリデン基(CH3CH2CH=)およびイソプロピリデン基((CH3)2C=)が挙げられる。前記(iii)を満たす化合物としては、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネンおよび下記の化合物が挙げられる。これらの中でも、ENBが好ましい。
Figure 0006971038
式[C1]において、R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成している場合、式[C1]の化合物は、例えば式[C-IV]で表すことができる。
Figure 0006971038
式[C-IV]において、n、R11およびR13はそれぞれ式[C1]中の同一記号と同義である。前記(iv)を満たす化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0006971038
式[C1]で表される環状非共役ポリエンとしては、nが0の環状非共役ポリエンが好ましく、nが0のアルキリデン基置換環状非共役ポリエン、nが0の二重結合含有環置換環状非共役ポリエン、nが0の二重結合含有炭化水素基置換環状非共役ポリエンが好ましい。また、環状非共役ポリエンとしては、環状非共役ジエンが好ましい。具体的には、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)がより好ましい。これらの中でも、ENBまたはVNBが特に好ましい。
その他、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンが挙げられる。
環状非共役ポリエンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
<共重合体(A)の構成>
共重合体(A)は、エチレンに由来する構造単位(a)と炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位(b)とのモル比[(a)/(b)]が、通常は50/50〜80/20、好ましくは55/45〜80/20、より好ましくは60/40〜80/20である。モル比が前記範囲にあると、耐熱老化性、強度特性およびゴム弾性に優れるとともに、耐寒性および加工性に優れた成形体を提供できる組成物が得られる。
共重合体(A)は、環状非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量が、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンに由来する構造単位の合計を100モル%として、好ましくは0.1〜4.0モル%、より好ましくは0.5〜3.0モル%である。この含有量が前記範囲にあると、充分な架橋性および柔軟性を有する組成物が得られる。
エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンまたは環状非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量は、1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めることができる。
共重合体(A)のヨウ素価は、通常は10〜40(g/100g)、好ましくは10〜30(g/100g)、更に好ましくは10〜25(g/100g)、特に好ましくは10〜20(g/100g)である。ヨウ素価が前記範囲にあると、架橋密度の高い架橋体が得られ、耐圧縮永久歪性に優れるとともに、耐環境劣化性(=耐熱老化性)に優れた成形体を提供できるゴム組成物が得られ、またコスト的にも有利である。
共重合体(A)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常は0.01〜20dl/g、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは1〜5dl/gである。極限粘度[η]が前記範囲にあると、強度特性および耐圧縮永久歪性に優れるとともに、加工性に優れた成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
共重合体(A)は、100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、通常は1〜300、好ましくは5〜200、特に好ましくは10〜150である。ムーニー粘度が前記範囲にあると、良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れたゴム物性を有する組成物が得られる。
共重合体(A)は、式(Ia)に示すB値が、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.20〜1.80、特に好ましくは1.22〜1.40の範囲にある。B値が1.20以上の共重合体(A)は、低温での圧縮永久歪がより小さくなり、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスにより優れている。
B値 =([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕 …(Ia)
ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンのモル分率を示し、[EX]はエチレン−炭素数3〜20のα−オレフィンダイアッド連鎖分率を示す。
なお、B値は、共重合体中における共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示す指標であり、上記式(Ia)中の[E]、[X]、[Y]、[EX]は、13C−NMRスペクトルを測定し、J. C.Randall [Macromolecules, 15, 353 (1982)]、J. Ray [Macromolecules, 10, 773 (1977)] らの報告に基づいて求めることができる。
共重合体(A)の具体例としては、例えば、
エチレン・プロピレン・ENB共重合体、
エチレン・1−ブテン・ENB共重合体、
エチレン・1−ペンテン・ENB共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・ENB共重合体、
エチレン・1−へプテン・ENB共重合体、
エチレン・1−オクテン・ENB共重合体、
エチレン・1−ノネン・ENB共重合体、
エチレン・1−デセン・ENB共重合体、
エチレン・プロピレン・1−オクテン・ENB共重合体、
エチレン・1−ブテン・1−オクテン・ENB共重合体、
エチレン・プロピレン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−ブテン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−ペンテン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−へプテン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−オクテン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−ノネン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−デセン・ENB・VNB共重合体、
エチレン・1−ブテン・1−オクテン・ENB・VNB共重合体
が挙げられる。
本発明の組成物において、当該組成物中の共重合体(A)の含有割合は、通常は20質量%以上、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは25〜60質量%である。
共重合体(A)およびキノンジオキシム系架橋剤(B)を含有する本発明の組成物は、連続押出性等の連続架橋性に優れている。また、共重合体(A)をキノンジオキシム系架橋剤(B)により架橋すると、耐熱性、耐寒性、耐候性に優れた架橋体を得ることができる。
共重合体(A)は、オレフィン重合触媒を用いて製造することができ、前記触媒としては、例えば、メタロセン触媒、チーグラー・ナッタ触媒などが挙げられる。
共重合体(A)は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンを、メタロセン触媒(メタロセン化合物)を用いて重合して得られた共重合体であることが好ましい。このような共重合体(A)は、キノンジオキシム系架橋剤(B)に対する架橋効率が優れており、得られる架橋体は低温から高温にかけて圧縮永久歪が小さいためシール性に優れている。
共重合体(A)は、以下の製造方法で得ることができる。具体的には、(a)式[I]で表される遷移金属化合物(以下「架橋メタロセン化合物」ともいう)と、(b)有機金属化合物(b−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)、および架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b−3)から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含むオレフィン重合触媒の存在下において、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび環状非共役ポリエンを共重合することにより製造し得る。
<架橋メタロセン化合物(a)>
架橋メタロセン化合物(a)は、式[I]で表される。
Figure 0006971038
式[I]において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR6までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。Yは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子から選ばれ、好ましくは炭素原子である。Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはハフニウム原子である。Qはハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれる。nは1〜4の整数であり、1であることが好ましい。jは1〜4の整数であり、好ましくは2である。
1からR6における原子または置換基について説明する。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基、炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基が例示される。また、R1からR6までの隣接した置換基が互いに結合して環を形成する場合であれば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が例示される。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、ネオペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−ジプロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6である。
炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の1以上の水素原子が炭素数1〜17の炭化水素基で置き換えられた基である3−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−シクロヘキシルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5〜11である。
炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1−プロペニル基、2−プロペニル基(アリル基)、1−メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜4である。
炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の1以上の水素原子が炭素数1〜15の炭化水素基で置き換えられた基である3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3〜19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6〜10である。
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、n−プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜6である。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、4,4'−ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6〜12である。
アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2−ナフチル基が好ましい。
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
置換アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4−(トリメチルシリル)フェニル基、4−アミノフェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−(ジエチルアミノ)フェニル基、4−モルフォリニルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、5−メチルナフチル基、2−(6−メチル)ピリジル基などが例示される。
ケイ素含有基としては、炭素数1〜20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1〜10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6〜18が好ましい。
窒素含有基としては、アミノ基、ニトロ基、N−モルフォリニル基や、上述した炭素数1〜20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH−構造単位が窒素原子で置き換えられた基、−CH2−構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または−CH3構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N−モルフォリニル基が好ましい。
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、−CH2−構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または−CH3構造単位が炭素数1〜20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、n−2−オキサブチレン基、n−2−オキサペンチレン基、n−3−オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
1、R2、R3およびR4は、重合活性の向上、生成する共重合体の高分子量化、環状非共役ポリエンの共重合性能の向上という観点から、全て水素原子であることが好ましい。
5およびR6は、重合活性の向上、生成する共重合体の高分子量化、環状非共役ポリエンの共重合性能の向上という観点から、アリール基および置換アリール基から選ばれる基であることが好ましく、同一の基であることがより好ましく、同一の置換アリール基であることがさらに好ましい。置換アリール基における置換基は、窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基であることが好ましい。置換アリール基は、窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基を含む置換フェニル基であることがさらに好ましい。
窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基を含む置換フェニル基としては、2−アミノフェニル基、4−アミノフェニル基、2−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、2−(ジエチルアミノ)フェニル基、4−(ジエチルアミノ)フェニル基、3−(ジエチルアミノ)フェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−N−モルフォリニルフェニル基、4−N−モルフォリニルフェニル基、3−N−モルフォリニルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、4−(ジメチルアミノ)−3−メトキシフェニル基、4−(ジメチルアミノ)−3−メチルフェニル基、4−メトキシ−3−メチルフェニル基、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル基などが例示される。
Qにおける各要素について説明する。
ハロゲン原子および炭素数1〜20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1〜20の炭化水素基である場合は、炭化水素基の炭素数は1〜7であることが好ましい。
アニオン配位子としては、メトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリーロキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル基を含む架橋メタロセン化合物(a)を用いると、生成する共重合体(A)の高い分子量と、高い環状非共役ポリエン共重合性能と、高い重合活性とを、同時に高いレベルでバランス良く実現することができる。
架橋メタロセン化合物(a)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。製造方法として例えば、J.Organomet.Chem.,63,509(1996)、本出願人による出願に係る公報である国際公開第2006/123759号、国際公開第01/27124号、特開2004−168744号公報、特開2004−175759号公報、特開2000−212194号公報記載の方法により製造することができる。
<化合物(b)>
〈有機金属化合物(b−1)〉
有機金属化合物(b−1)として、下記一般式[b-1-1]〜[b-1-3]のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物などを例示することができる。
(b−1a)一般式 Ra mAl(ORbnpq ・・・[b-1-1]
(式[b-1-1]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドを例示することができる。
(b−1b)一般式 M2AlRa 4 ・・・[b-1-2]
(式[b-1-2]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基である。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物として、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することができる。
(b−1c)一般式 Rab3 ・・・[b-1-3]
(式[b-1-3]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属を有するジアルキル化合物。
有機金属化合物(b−1)の中では、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が好ましい。
有機金属化合物(b−1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
〈有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)〉
有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)は、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサンなどの従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(b−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、中でも、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)としては、下記一般式[b-2-1]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 0006971038
式[b-2-1]中、R1は炭素数が1〜10の炭化水素基を示し、R2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1〜10の炭化水素基を示す。
〈架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b−3)〉
架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b−3)(以下「イオン化イオン性化合物」ともいう)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。イオン化イオン性化合物(b−3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
イオン性化合物としては、例えば、式[b-3-1]で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006971038
式[b-3-1]中、R1+としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
1+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式[b-3-2]または[b-3-3]で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
Figure 0006971038
式[b-3-2]中、Etはエチル基を示す。
Figure 0006971038
式[b-3-3]中、Etはエチル基を示す。
イオン化イオン性化合物(b−3)の中では、上述のイオン性化合物が好ましく、その中でもトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがより好ましい。
架橋メタロセン化合物(a)を触媒とする場合、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物(b−1)と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)またはトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(b−3)とを併用すると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造に際して非常に高い重合活性を示す。
<担体(c)>
前記重合触媒は、担体(c)を含んでもよい。架橋メタロセン化合物(a)および/または化合物(b)は、担体(c)に担持された形態で用いてもよい。担体(c)としては、例えば、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体が挙げられる。
無機化合物としては、SiO2およびAl23等の多孔質酸化物;MgCl2、MgBr2、MnCl2およびMnBr2等の無機ハロゲン化物;粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
有機化合物としては、例えば、顆粒状ないしは微粒子状の有機物固体が挙げられる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される重合体、ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体、およびそれらの変成体が挙げられる。
担体(c)の具体例としては、例えば、国際公開第2014/050816号の段落[0150]〜[0162]に記載された化合物が挙げられる。
<重合方法>
エチレン、α−オレフィンおよび環状非共役ポリエンを共重合させる際、重合触媒を構成する各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下の方法が例示される。
(1)前記化合物(a)を単独で重合器に添加する方法。
(2)前記化合物(a)および前記化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)前記化合物(a)を前記担体(c)に担持した触媒成分と、前記化合物(b)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)前記化合物(b)を前記担体(c)に担持した触媒成分と、前記化合物(a)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)前記化合物(a)と前記化合物(b)とを前記担体(c)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
上記(2)〜(5)の各方法においては、化合物(a)、化合物(b)、担体(c)の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。
化合物(b)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない化合物(b)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、化合物(b)は、担体(c)に担持されている化合物(b)と同一でも異なっていてもよい。
また、担体(c)に化合物(a)が担持された固体触媒成分、担体(c)に化合物(a)および化合物(b)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
本発明では、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能である。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
前記重合触媒を用いて、エチレンなどの重合を行うに際して、化合物(a)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-8モルになるような量で用いられる。
化合物(b−1)は、化合物(b−1)と、化合物(a)中の全遷移金属原子(式[I]中のM)とのモル比〔(b−1)/M〕が通常0.01〜50000、好ましくは0.05〜10000となるような量で用いられる。化合物(b−2)は、化合物(b−2)中のアルミニウム原子(Al)と、化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が、通常10〜50000、好ましくは20〜10000となるような量で用いられる。化合物(b−3)は、化合物(b−3)と、化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−3)/M〕が、通常1〜20、好ましくは1〜15となるような量で用いられる。
また、前記重合触媒を用いたエチレンなどの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜+200℃の範囲、より好ましくは、+80〜+200℃の範囲であり、到達分子量および重合活性によるが、より高温(+80℃以上)であることが生産性の観点から望ましい。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られる共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物(b)の量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
[他のポリマー(AA)]
本発明の組成物は、共重合体(A)以外に、他のポリマー(AA)を含有してもよい。
架橋が必要な他のポリマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の架橋性ゴムが挙げられる。架橋が不要な他のポリマーとしては、例えば、スチレンとブタジエンとのブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩ビ系エラストマー(TPVC)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等のエラストマーが挙げられる。
本発明の組成物は、その他、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィンとからなる結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体;プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン;プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の、炭素数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィンの結晶性単独重合体または共重合体が挙げられる。
他のポリマー(AA)は、共重合体(A)100質量部に対して、通常は100質量部以下、好ましくは80質量部以下の量で配合することができる。
[キノンジオキシム系架橋剤(B)]
キノンジオキシム系架橋剤(B)としては、例えば、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロベンゾキノンジオキシム、ポリ(p−ジニトロソベンゾキノンジオキシム)が挙げられる。これらの中でも、生産性(架橋速度)の点で、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムが好ましい。
キノンジオキシム系架橋剤(B)は、空気中での架橋反応が可能であることから、生産性の高い押出成形等の成形方法で、燃料電池を構成する触媒を被毒するイオウを使用せずに、燃料電池用シール材を効率よく製造することができる。
キノンジオキシム系架橋剤(B)は、共重合体(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜8質量部、より好ましくは0.1〜7質量部の割合で用いられる。前記架橋剤(B)を前記範囲で用いると、耐熱性、耐寒性、引張特性、弾性回復性および反発弾性に優れた架橋度の高い成形体を得ることができ、しかも架橋度が高くなり過ぎることがないので、破断点伸びの低下をもたらすことはない。
[有機過酸化物(C)]
架橋剤として、キノンジオキシム系架橋剤(B)とともに、有機過酸化物(C)を用いることが好ましい。キノンジオキシム系架橋剤(B)単独では架橋が遅いことがあるため、前記(B)および(C)の併用系が好ましい。
有機過酸化物(C)としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
有機過酸化物(C)を用いる場合、組成物中の有機過酸化物(C)の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。有機過酸化物(C)の含有量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームがなく、また組成物が優れた架橋特性を示す。
[硫黄系化合物]
本発明では、上述したように架橋剤として硫黄系化合物を使用しないことが好ましい。硫黄系化合物(加硫剤)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
例えば、本発明の組成物中の硫黄系化合物の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0質量部である。
[添加剤]
本発明の組成物は、目的に応じて添加剤、例えば、架橋助剤、軟化剤、補強剤、無機充填剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、吸湿剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤および発泡剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〈架橋助剤〉
架橋剤として有機過酸化物(C)を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。
架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛または亜鉛華(例えば、「ZnO#1・酸化亜鉛2種」(ハクスイテック(株)製)、「META−Z102」(井上石灰工業(株)製))、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。
架橋助剤を用いる場合、組成物中の架橋助剤の含有量は、有機過酸化物(C)1モルに対して、通常は0.5〜10モル、好ましくは0.5〜7モル、より好ましくは1〜5モルである。
〈軟化剤〉
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は2〜100質量部、好ましくは10〜100質量部である。
〈補強剤および無機充填剤〉
補強剤および無機充填剤としては、例えば、未処理のカーボンブラック、シランカップリング剤で表面処理したカーボンブラック等のカーボンブラック、シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、クレーが挙げられる。
組成物が補強剤および/または無機充填剤を含有する場合には、これらの合計含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は2〜200質量部、好ましくは5〜180質量部、より好ましくは20〜150質量部である。含有量が前記範囲であると、組成物の混練加工性が優れており、機械特性に優れた成形体を得ることができる。
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明の組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成される成形体の寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤がある。
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤がある。
組成物が老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7.0質量部である。老化防止剤の含有量が上記範囲内であると、得られる成形体表面のブルームがなく、さらに架橋阻害の発生を抑制することができる。
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く用いることができる。加工助剤としては、例えば、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、および脂肪酸誘導体が挙げられ、脂肪酸誘導体としては、例えば、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸塩、リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルチミン酸エステル、ラウリン酸エステル類等の脂肪酸エステル類、N−置換脂肪酸アミドが挙げられる。これらのうちでは、ステアリン酸が好ましい。
組成物が加工助剤を含有する場合には、加工助剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は10質量部以下、好ましくは8.0質量部以下である。
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.2〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部である。
〈吸湿剤〉
吸湿剤としては、例えば、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンが挙げられる。
組成物が吸湿剤を含有する場合には、吸湿剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.5〜15質量部、好ましくは1.0〜12質量部である。
〈発泡剤〉
本発明の組成物からなる架橋体は、非発泡体であってもよいし、発泡体であってもよい。発泡体形成に際して発泡剤を使用することができ、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤;N,N’−ジニトロテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)ジフェニルスルフォン−3,3’−ジスルフェニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルスルホニルアジド、パラトルエンスルホニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
組成物が発泡剤を含有する場合には、発泡剤の含有量は、架橋発泡後の発泡体の比重が通常は0.01〜0.9になるよう適宜選択される。発泡剤の含有量は、共重合体(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(AA)(エラストマー、架橋性ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.5〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
[組成物の調製、架橋体(成形体)の形成]
本発明の架橋可能な組成物は、共重合体(A)と、キノンジオキシム系架橋剤(B)と、必要に応じて配合されるその他の成分とを、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の混練機を用いて所望の温度で混練することにより調製することができる。
具体的には、ミキサー、ニーダー等の従来公知の混練機を用いて、共重合体(A)および必要に応じてその他の成分1を所定の温度および時間、例えば80〜200℃で3〜30分、で混練した後、得られた混練物にキノンジオキシム系架橋剤(B)およびその他の成分2を加えて、ロールを用いて所定の温度および時間、例えばロール温度30〜80℃で1〜30分間、で混練することにより、本発明の組成物を調製することができる。
その他の成分1としては、例えば、他のポリマー(AA)、架橋助剤、軟化剤、補強剤、無機充填剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、吸湿剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。その他の成分2としては、例えば、有機過酸化物(C)と、架橋助剤、軟化剤、補強剤、無機充填剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、吸湿剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤および発泡剤から選ばれる少なくとも1種とが挙げられる。
本発明の組成物は、キノンジオキシム系架橋剤(B)(および有機過酸化物(C)を用いる場合は前記(C))を配合する前の組成において、100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、通常は10〜250、好ましくは15〜200、特に好ましくは20〜150である。ムーニー粘度が前記範囲にある組成物は、良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れたゴム物性を有する。
このようにして得られる架橋可能な組成物は、例えば、リボン状またはシート状のゴム配合物である。本発明の組成物は、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、トランスファー成形、発泡成形等の熱成形方法によって成形できる。
一例を挙げると、本発明の組成物を押出機にて製品形状に押出し、次いで、架橋槽内に導入し、熱空気、流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing Medium又はPowder Curing Method)またはマイクロ波等の手段によって加熱することにより、架橋(および必要に応じて発泡)を行う。好ましくは、熱空気架橋槽(HAV)、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing Medium又はPowderCuring Method)、または熱空気架橋槽(HAV)およびデシメートル波(UHF)等の装置を用いた連続押出加工によって、連続的に架橋(および必要に応じて発泡)させる。一実施態様では、連続押出加工によって、押出成形し連続的に架橋させた後、得られた各成形体をつなぎ合わせる方法が挙げられる。
また、射出成形により直接シール材を製造してもよいし、圧縮成形、カレンダー成形または押出成形により一旦フィルムやシートに熱成形した後、これを打抜加工してシール材を製造してもよい。
本発明において、前記組成物の架橋温度は、通常は140℃以上、好ましくは150〜220℃、より好ましくは160〜200℃である。また、この架橋反応は、空気中で行うことができる。
[燃料電池用シール材および燃料電池]
本発明の燃料電池用シール材は、本発明の組成物より形成された架橋体からなり、燃料電池用ガスケット等として用いることができる。本発明の燃料電池用シール材の形状としては、例えば、Oリング状、Vリング状、棒状、シート状、ブロック状が挙げられる。
本発明のシール材は優れたゴム弾性を有しており、しかも低温から高温において高いシール性を発揮する。例えば、前記シール材は、低温(例:−25〜−40℃程度)だけでなく、高温(例:70〜150℃程度)での圧縮永久歪(CS)に優れている。例えば、前記シール材は、JIS K6262(1997)に従って、70℃×22時間処理後の圧縮永久歪が、好ましくは60%以下、より好ましくは0〜50%である。また、−40℃×22時間処理後の圧縮永久歪が、好ましくは80%以下、より好ましくは0〜60%である。
燃料電池では単セルにおける構成部材または構成部材間をシールすることが重要であり、本発明のシール材は前記構成部材および前記構成部材間を良好にシールすることができる。構成部材としては、例えば、電解質膜、電極、セパレータ、フレームが挙げられる。
本発明の燃料電池は、本発明の燃料電池用シール材を有する。
本発明の燃料電池としては、例えば、固体高分子型燃料電池が挙げられる。
燃料電池の基本単位である単セルは、例えば、電解質膜と、一対の電極(燃料極、酸素極)と、セパレータと、フレームと、本発明のシール材(ガスケット)とを有する。
電解質膜は、例えば、プロトン伝導性を示すパーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜である。一対の電極は、電解質膜の両側に配置されており、電解質膜を挟持している。一対の電極は、例えば白金触媒等からなる触媒層を有する。電解質膜および電極は、膜/電極接合体(以下「MEA」ともいう)を構成している。セパレータは、MEAの両側に、対向して配置されており、セパレータには、燃料ガスおよび酸化ガス(空気)を各電極に供給するための流路が形成されている。フレームは、電解質膜の周縁を保持している。
本発明の燃料電池は、例えば、前記単セルが多数積層されて構成されている。
本発明のシール材の適用箇所は、燃料電池の種類および構造等により様々である。シール部位としては、例えば、電解質膜とセパレータとの間、電解質膜とフレームとの間、単セル内でMEAを挟んで対向するセパレータとセパレータとの間、MEAを支持するフレームとセパレータとの間、積層方向に隣接する単セルの隣り合うセパレータとセパレータとの間、水素等の燃料ガスの供給部が挙げられる。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り「部」は「質量部」を示す。
《エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体》
〔合成例1〕
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて、連続的に、エチレン、1−ブテン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)の重合反応を95℃にて行った。
重合溶媒としてはヘキサン(フィード量:31L/h)を用いて、連続的に、エチレンフィード量が3.8kg/h、1−ブテンフィード量が7kg/h、ENBフィード量が390g/hおよび水素フィード量が3NL/hとなるように、重合器に連続供給した。
重合圧力を1.6MPaG、重合温度を95℃に保ちながら、主触媒として、下記式で表される架橋メタロセン化合物a1を用いて、フィード量0.020mmol/hとなるよう、重合器に連続的に供給した。また、共触媒として(C653CB(C654 (CB−3)をフィード量0.100mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)をフィード量10mmol/hとなるように、それぞれ重合器に連続的に供給した。
Figure 0006971038
このようにして、エチレン、1−ブテンおよびENBから形成されたエチレン・1−ブテン・ENB共重合体を14質量%含む溶液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にてエチレン・1−ブテン・ENB共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
以上の操作によって、エチレン・1−ブテン・ENB共重合体(EBDM−1)が、毎時4.5kgの速度で得られた。得られたEBDM−1の物性を下記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006971038
また、以下の製品を用いた。
EPT14030:三井化学(株)製、エチレン・プロピレン・ENB共重合体(EPDM)、エチレン含量=51.1質量%、ENB含量=8.1質量%、ヨウ素価=22(g/100g)、ムーニー粘度ML(1+4)100℃=27
〔各構造単位のモル量〕
エチレンに由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位および環状非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量は、1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
〔ヨウ素価〕
共重合体のヨウ素価は、滴定法により求めた。
〔ムーニー粘度〕
共重合体のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
〔B値〕
o−ジクロロベンゼン−d4/ベンゼン−d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C−NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、前記式(Ia)に基づき、B値を算出した。
《架橋可能な組成物》
[実施例1]
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−2型、容積1.7L、ローター2WH)を用いて、エチレン・プロピレン・ENB共重合体(EPT14030:三井化学(株)製)100部に対して、架橋助剤として「酸化亜鉛2種」(ハクスイテック(株)製)を5部、加工助剤として「ステアリン酸つばき」(登録商標;日油(株)製)を1部、補強剤としてカーボンブラック「旭#50HG」(旭カーボン(株)製)を20部、無機充填剤として炭酸カルシウム「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業(株)製)を50部、吸湿剤として酸化カルシウム「VESTA−18」(井上石灰工業(株)製)を5部、軟化剤として「ダイアナプロセスオイルPW−100」(出光興産(株)製)を0部の配合量で配合した後に混練し、配合物1を得た。
混練条件は、ローター回転数が40rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い、混練排出温度は144℃であった。
次いで、配合物1が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて、配合物1に、架橋剤としてp−ベンゾキノンジオキシム「バルノックGM」(大内新興化学工業(株)製)を1部、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム「バルノックDGM」(大内新興化学工業(株)製)を5部、およびジクミルペルオキシド「DCP−40C」(化薬アグゾ(株)製)を2部の配合量で添加して混練し、配合物2を得た。
混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙を3mmとして、混練時間8分間で分出しし、配合物2を得た。
配合物2に、プレス成形機を用いて180℃で10分間架橋を行って、厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。また、配合物2から、円柱状金型を用いて、厚さ12.7mm、直径29mmの直円柱形の試験片を作成し、180℃で13分間架橋を行って、圧縮永久歪(CS)試験用試験片を得た。これらについて、以下の試験を行った。
[実施例2〜4]
配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4それぞれについて、配合物1〜2を得た。実施例1と同様にして、シート、試験片を作成し、各種評価を行った。
[比較例1]
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB−2型、容積1.7L、ローター2WH)を用いて、エチレン・プロピレン・ENB共重合体(EPT14030:三井化学(株)製)100部に対して、架橋助剤として「酸化亜鉛2種」(ハクスイテック(株)製)を5部、加工助剤として「ステアリン酸つばき」(登録商標;日油(株)製)を1部、補強剤としてカーボンブラック「旭#60」(旭カーボン(株)製)を80部、軟化剤として「ダイアナプロセスオイルPS−430」(出光興産(株)製)を50部の配合量で配合した後に混練し、配合物1を得た。
混練条件は、ローター回転数が40rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い、混練排出温度は144℃であった。
次いで、配合物1が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて、配合物1に、加硫促進剤としてMBT「サンセラーM」(三新化学工業(株)製)を0.5部、TMTD「サンセラーTT」(三新化学工業(株)製)を1部、および架橋剤として「硫黄」(純正化学(株)製)を1.5部の配合量で添加して混練し、配合物2を得た。
混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙を3mmとして、混練時間8分間で分出しし、配合物2を得た。
以降は実施例1と同様にしてシート、試験片を作成し、各種評価を行った。
[比較例2]
配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は比較例1と同様にして、配合物1〜2を得た。実施例1と同様にしてシート、試験片を作成し、各種評価を行った。
[評価]
〔ムーニー粘度〕
実施例・比較例で得られた配合物1のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
〔架橋特性評価〕
実施例・比較例で得られた配合物2を用いて、架橋測定装置:MDR2000(ALPHA TECHNOLOGIES社製)により、架橋速度(TC90)を以下のとおり測定した。
一定の温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定した。トルクの最大値(S'Max)とトルクの最小値(S'Min)との差の90%のトルクに達成するまでの時間を、TC90(min)とした。トルクが1dNm上昇する時間を、TS1(min)とした。測定条件は、実施例では温度180℃、比較例では温度160℃、時間20分とした。このTC90が小さいほど、架橋速度が速いことを示す。
〔硬度試験(Durometer−A)〕
実施例・比較例で得られた厚さ2mmの架橋ゴムシートの平らな部分を重ねて厚さ12mmのシートとし、JIS K6253に従い、硬度(JIS−A)を測定した。
〔引張試験〕
実施例・比較例で得られた厚さ2mmの架橋ゴムシートについて、JIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、伸び率が25%、50%、100%、200%および300%であるときの引張応力(25%モジュラス(M25)、50%モジュラス(M50)、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300))、破断時強度(TB)ならびに破断伸び(EB)を測定した。
〔圧縮永久歪試験〕
実施例・比較例で得られた圧縮永久歪(CS)測定用試験片について、JIS K6262(1997)に従って、70℃または−40℃×22時間処理後の圧縮永久歪を測定した。
〔架橋密度〕
実施例・比較例で得られた厚さ2mmの架橋ゴムシートの架橋密度νは、下記の平衡膨潤を利用したFlory−Rehnerの式(1)から算出した。式(1)中のVRは前記シートを37℃×72hの条件でトルエン抽出して求めた。EPDMにおけるμも0.49である。
Figure 0006971038
〔架橋ゴム成形体表面の硫黄原子存在量の定量〕
実施例・比較例で得られた厚さ2mmの架橋ゴムシート表面を、エタノールを含ませた脱脂綿を用いて5回以上洗浄した。なお、1回の洗浄ごとにエタノールを含ませた脱脂綿を新たに調製して用いた。続いて、前記シートを乾燥させた後、X線光電子分光法(XPS)によりSSI社製のSSX−100型を用いて、元素組成を求めた。X線源は単色化AlKαを用いた。積算回数は200回で行なった。
Figure 0006971038
Figure 0006971038
比較例1では表面硫黄量が0.2原子%であるのに対して、実施例では0原子%となっていることから、実施例で得られた架橋体を燃料電池用シール材として使用した際に触媒被毒を防止できることがわかる。比較例2では過酸化物単独の架橋であるため、空気中で架橋させると成形体表面が酸化劣化してしまい、押出成形での連続架橋が困難であった。また、実施例の架橋体は、耐熱性および耐寒性に優れるとともに、常温での機械的物性(伸び物性、引張強度等)のバランスにも優れる。以上の特性を有することから、実施例の上記組成物を用いて、温度特性と機械的物性とのバランスに優れた燃料電池用シール材を製造することができる。

Claims (3)

  1. エチレンに由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、および環状非共役ポリエンに由来する構造単位を有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、
    キノンジオキシム系架橋剤(B)と
    を含有し、前記炭素数3〜20のα−オレフィンは1−ブテンである燃料電池シール材用組成物。
  2. 請求項1に記載の組成物から形成された燃料電池用シール材。
  3. 請求項2に記載の燃料電池用シール材を有する燃料電池。

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