以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
(マスクの基本構成)
本発明の一形態によるマスクは、装着者の顔、より具体的には装着者の少なくとも鼻及び口を覆うことのできるマスクであってよい。本形態によるマスクは、異物が顔に到達することを防止したり、装着者から発生する飛沫が飛散することを防止したりする機能を有し得るものであって、衛生マスク又はサージカルマスクとも呼ばれる。
図1に、本形態によるマスク100の平面図を示す。図1は、マスク100を外側、すなわち装着時に顔に対向しない、外部に露出させる側から見た図である。また、図2に、マスクを内側(顔側)から見た平面図を示す。
図1に示すように、本形態によるマスク100は、装着時に装着者の顔の正面に配置され、装着者の主として鼻及び口を覆うことができるマスク本体10と、マスク本体10に結合された一対の耳材20、20とを備えている。マスク本体10は、装着時に装着者の顔の上下方向に対応する縦方向D1と、縦方向D1に直交する横方向D2とを有する。図1の形態では、マスク本体10は、横方向D2に長辺を有する長方形の平面視形状を有するが、マスク本体10の平面視形状は図示のものに限られない。
図1及び図2に示すように、マスク本体10は、縦方向D1に並んで配置された複数の襞(プリーツ)によって形成されるプリーツ構造15を有している。プリーツ構造15の襞は、本体10を構成するシートを横方向D2に沿った折り線にて折ることによって形成される。そして、複数の襞が形成された状態で、マスク本体10の側部(横方向D2端部)が接合され、固定される。そのため、マスク100の使用時には、プリーツ構造15の襞を縦方向D1に広げることで、横方向D2中央が、マスク100の外面側に突出するように湾曲して、顔の立体形状に適合するような形状に変形し得る。プリーツ構造15の具体的な構成は特に限定されず、マスク本体に形成される公知の構成であってよい。
図1及び図2に示すように、一対の耳材20、20は、本体10の外面に配置されている。図1に示すように、耳材20はそれぞれ、平面視で環状(若しくは閉じた帯状)であるか、又は環を含む形状を有していてよい(耳材20の環形状については後に詳述)。装着時には、耳材20の環の内側、すなわち耳材20の中央の開口29に装着者の耳が入るようにして、耳材20を耳に掛けることができる。
一対の耳材20、20は、横方向D2中央で互いに分離可能に結合した単一のシートとして構成されていてよい。一対の耳材20、20が単一のシートから構成されていることで、装着時に耳材20を耳に掛けた時に耳たぶの裏面に面接触できるので、違和感や痛みが低減される。また、一対の耳材20、20の分離可能な結合部28の結合形式は特に限定されないが、使用者の通常の力で引っ張ることによって分離可能な結合であることが好ましい。例えば図1に示すようにミシン目として形成されていてよい。また、シートの厚みを小さくすること等の他の手段によって、一対の耳材20、20の境界を脆弱化する又は応力が掛かりやすいようにすることで、結合部28を形成してもよい。
マスク本体10は、複数の層が積層されてなる多層構造を有していてよい。例えば、異物(塵、花粉、細菌、ウィルス等)を捕集する機能が高められた中間層を、外側層及び内側層で挟んだ3層を少なくとも含む構造であってよい。本体10を構成する各層は、不織布、織物、編物等の繊維含有層を含むことが好ましく、不織布を含むことがより好ましい。不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。また、中間層には、細い繊維を含み得るメルトブローン不織布が用いられることが好ましい。また、繊維含有層を構成する繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。外側層及び内側層の目付は、15〜50g/m2であってよい。異物捕集性の高い中間層の目付は、10〜100g/m2であると好ましく、15〜50g/m2であるとより好ましい。
耳材20は、伸縮性を有するシート、好ましくは本体10より高い伸縮性を有するシートから形成されている。また、耳材20を構成する伸縮シートの伸縮性は、縦方向D1及び横方向D2のいずれか一方向であってよいし、両方向であってもよい。また、縦方向D1及び横方向D2の両方で伸縮性を有する場合、縦方向D1の伸縮性と横方向D2の伸縮性とは同様であってもよいし、互いに異なっていてもよい。耳材20が装着時には主として横方向D2に引っ張られることに鑑みると、耳材20が横方向D2に伸縮性を有することによって、本体10を顔の正面により良好に位置固定できると共に、耳材20の上部及び/又は下部に及ぼす負担を軽減できる。また、耳材20が縦方向D1の伸縮性を有することによって、耳材20を耳たぶの裏に沿って装着させ、耳材20に掛かる力を耳たぶの裏側に沿って分散でき、装着者の耳に及ぼす負担を軽減できる。
耳材20は、伸縮性を有する繊維含有シートを含んでいてよく、且つ/又は伸縮性若しくは弾性を有するフィルムを含んでいてよい。繊維含有シートとしては、不織布、織物、編物等が挙げられ、このうち肌触り、通気性の良さ等から不織布を用いることが好ましい。不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられる。また、不織布に含まれる繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。
耳材20は、上記の伸縮性を有する繊維含有シート又は伸縮性フィルムを単層で含むものであってよいし、上記の伸縮性を有する繊維含有シート及び/又は伸縮性フィルムを複数積層させて、例えば繊維含有シートと伸縮性フィルムとを積層させて構成されていてもよい。繊維含有シートが伸縮性を有する場合、その伸縮性は、繊維含有シートが伸縮性繊維を含むことによって、例えば繊維の材料自体が伸縮性を有する又は繊維が捲縮繊維であることによって発現されていてよい。或いは、所定の物理的構造によって、例えば表面に凹凸を有することによって伸縮性が発現されていてもよい。さらに、耳材20は、伸縮性を有する又は伸縮性を有さない繊維含有シートで糸状ゴムを挟み込むことによって形成してもよい。繊維含有シートの伸縮性が低い又はない場合には、糸ゴムを伸ばした状態で繊維含有シートを両側から装着することができる。
より具体的には、耳材20は、伸縮性エアスルー不織布、伸縮性スパンボンド不織布、伸縮性スパンレース不織布、伸縮性ニードルパンチ不織布、伸縮性ケミカルボンド不織布等の単層の不織布を用いることができる。また、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドといった、複数層の不織布からなるものを用いることができる。さらに、不織布/伸縮フィルム、不織布/伸縮フィルム/不織布(例えば、スパンボンド/伸縮フィルム/スパンボンド、エアスルー/伸縮フィルム/エアスルー等)といったラミネートシートを用いることができる。耳材20を複数層から形成する場合、層同士を、伸縮性又は非伸縮性のホットメルト不織布(加熱により繊維が軟化又は溶融して他部材と接着可能な不織布)で貼り合わせてもよい。耳材20の目付は、20〜150g/m2であってよい。また、耳材20の厚みは、100〜3,000μmであってよい。
一対の耳材20、20は、本体10の外面の側部(横方向D2端部)にそれぞれ結合されている。すなわち、一対の耳材20、20のそれぞれの横方向D2外側の部分が本体10に接合され、それ以外の部分は、本体10には接合されていない。本形態によるマスク100の使用を開始する際、マスク100の装着前には、一対の耳材20、20同士の分離可能な結合を解除して、耳材20、20を互いに分離させ(分離動作ともいう)、耳材20、20の本体10に接合されていない部分を横方向D2側方へ開く(展開動作ともいう)。
(耳材の分離・展開動作)
図3に、図1に示すマスク100の使用を開始しようとしている状態の図を示す。また、図4に、図3のI−I線断面図を示す。使用開始時、使用者は、図3に示すように一対の耳材20、20をそれぞれの手で摘まんで又は把持して、互いに反対方向に引っ張ることができる。これにより、まず、分離可能な結合部28の結合を解除することができる。結合部28が、一対の耳材20、20間の境界線に沿って形成されたミシン目から構成されているのであれば、ミシン目を破断して両耳材20、20を境界線に沿って分離できる。その後、使用者は、一対の耳材20、20をそれぞれ把持したまま、図3及び図4の矢印に示す方向に横方向D2の外方へと開くことができる。
図5に、図3の状態から一対の耳材20、20を横方向D2外方にそれぞれ開いた状態を示す。また、図6に、図5のII−II線断面図を示す。図5及び図6に示すように、一対の耳材20、20を開くと、耳材20、20が裏返される、すなわち、耳材20、20の、使用開始前の状態で本体10に対向していた面が露出する。
図3に示すように、使用者が一対の耳材20、20をそれぞれ把持して横方向D2外方に開いた後には、マスク100の外面が、耳材20、20を開いた使用者に対向し、マスク100の内面(顔側の面)が、使用者とは反対側を向くことになる。そのため、本形態によるマスク100は、他の装着者に装着させるために適している。例えば、マスク100の外側を上にして(本体10の外面を上にして)マスク100が置かれた状態で、使用者が一対の耳材20、20をそれぞれ手で把持して横方向D2外方へ開く。その後、一対の耳材20、20を把持したまま、マスク100を他の装着者の顔へと移動させて、マスク本体10を装着者の顔の所望の位置へ配置したら、持ち方を変えることなく、一対の耳材20、20をそれぞれ装着者の耳に掛けることができる。よって、本形態によるマスク100は、例えば子供、病人等の、マスクを自らで装着することが困難である人にマスクを装着させる場合に、好適に使用することができる。
また、上述のように一対の耳材20、20は、本体10の外面に配置されているので、一対の耳材20、20同士を分離させて横方向D2外方に開く際に、使用者の手がマスク100の内側に触れる可能性を低減できるか、又は可能性をなくすことができる。そのため、マスク100を装着する前の準備段階における耳材20、20の展開動作を衛生的に行うことができる。
さらに、図3に示すように、一対の耳材20、20には、一対の耳材20、20を互いに分離して横方向D2外方に開く際に使用者が摘まむことができる摘み部25、25を有していてよい。摘み部25、25は、平面視で本体10の端縁から突出していると好ましい。摘み部25、25が本体10の端縁から突出していることで、本体10自体に、すなわち本体10の外面及び内面のどちらにも触れないで、使用者が両手で摘み部25、25を摘まむことができる。そして、使用者は、本体10に触れずに又はほとんど触れずに一対の耳材20、20を分離・展開させることができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク100を自らに又は他人に装着できる。さらに、摘み部25、25が、平面視で本体10の下端(図3において下側の端部)から突出していると、耳材の分離・展開動作を自然に行うことができるので、好ましい。
また、耳材20が摘み部25、25を有することで、使用者は、耳材20を装着者の耳に掛ける時又は掛けた後に、摘み部25、2を持って耳材の調整を容易に行うことができる。すなわち、摘み部25、25を持って、耳材20を、耳に対して相対的に耳材20の周方向にずらして位置調整を行ったり、耳材20を後側に向かって引っ張ったり緩めたりして耳材20の張り具合を調整したりすることができる。
マスク100の装着中、すなわち耳材20、20を側方に開いて耳に掛けている状態では、耳材20、20は装着者の耳の方へと引っ張られるが、それに伴い、耳材20、20の本体10との結合部分は装着者の顔に向かって押し付けられる。ここで、本形態では、一対の耳材20、20が本体10の外面の両側部にそれぞれ結合されている(図3及び図4)。そのため、マスク100の装着中、耳材20の一部は本体10の両側部の外側に配置される(図5及び図6)、すなわち、本体10の両側部は耳材20と装着者の顔との間に配置されることになるので、本体10の両側部は、耳材20によって顔に向かって押さえられる。これにより、マスク本体10の両側部において本体10と顔との隙間を小さくすることができ、マスクの機能、例えば異物を遮断する機能、装着者が発した飛沫を飛散させない機能等を向上できる。また、本体の両側部の内側(顔側)に耳材20が配置されていないことで、装着中に、本体10の両側部において耳材20が装着者の顔に接触しないので、より良好な装着感も得ることができる。
また、本体10には、本体10の外面及び内面の区別を可能にするマーク18を、エンボス加工、印刷、縫込み等によって形成してもよい。マーク18は、使用者が目視で認識できるものであれば、その形態は限定されない。マーク18は、図1等に示すように、文字であってもよいし、数字、記号、図形、ロゴ等であってもよい。
(耳材の形状)
図7に、本形態の一方の耳材20の拡大平面図を示す。上述のように、一対の耳材20はそれぞれ、環を含む又は環状の平面視形状を有しており、内側に開口29を有する。本形態は、耳材20は、図7に示すように、全体として矩形環状であってよい。本明細書において、矩形環状とは、環の周方向に沿って方向が大きく変更される場所が4つ視認される形状である。或いは、環が、互いに対向するおおよそ直線的に延びる部分を2組有し、隣り合う部分がおおよそ直交する形状である。
矩形環状の耳材20は、図7に示すように、マスク本体10に接着されている、接着部22と、装着時に装着者の耳の後ろに位置するフック部24と、耳材20の上側において接着部22からフック部24へ移行する上側移行部23と、耳材20の下側において接着部22からフック部24へ移行する下側移行部26とを有していてよい。接着部22及びフック部24は、おおよそ縦方向D1に沿って延在し、互いに対向している。また、上側移行部23及び下側移行部26は、おおよそ横方向D2に沿って延在し、互いに対向している。
しかし、耳材20に含まれる環の形状は、矩形環状に限定されず、おおよそ円形又は楕円形であってもよい。また、環の周方向に沿って方向が大きく変更される場所が3つ、又は5つ以上ある多角形環状の形状を有していてもよい。
上述のように、本形態における一対の耳材20、20は単一のシートとして形成されているので、耳材20、20を別々に構成して両者をマスク100の厚み方向に重ねる形態等と比べて、耳材20の大きさには制限がある。そのため、マスク本体10の大きさ、特にマスク本体10の横方向D2長さが小さい場合、耳材20の長さを十分に確保できず、装着感を損ねることがあった。これに対し、本形態によれば、耳材20の環の輪郭に1以上の凸部が形成されていてよい。そのため、マスク100の装着時に伸縮性の耳材20が環の周方向に沿って伸長された場合、凸部の部分の材料も伸長されるので、凸部の材料が周方向の伸長に寄与できる。すなわち、凸部が形成されていない場合と比べ、耳材20の周方向への伸長を大きくすることができる。よって、単一のシートとしての構成を変更することなく、耳材20の長さを確保することができる。
上記凸部は、耳材20の環の少なくとも内輪郭に形成されていてよい。耳材20を耳に掛ける時には耳材20の開口29に耳を入れるので、通常は耳と接触する側である耳材20の内側が優先的に伸長され得る。そのため、凸部が耳材20の環の内輪郭に形成しておくことで、耳材20の周方向の長さを効果的に大きくすることができる。なお、本明細書において、輪郭に形成された凸部とは、隣接する両側の領域に対して耳材20が突出した部分である。また、輪郭に形成された凹部とは、隣接する両側の領域に対して耳材20が窪んだ部分である。凸部及び凹部はいずれも、2つの変曲点の間に形成された部分であってよい。
凸部が形成される部分は、環における伸縮可能である場所、すなわち本体10に固定された接着部22を除く部分のいずれであってもよいが、1以上の凸部が少なくともフック部24に設けられていると好ましい。耳材20のフック部24の内輪郭に形成することで、耳材20を伸長させる効果を向上できるとともに、耳材20を装着者の耳に安定して配置できるという効果も奏する。より具体的に説明すると、マスク100の装着時、シート状である耳材20は、装着者の耳たぶの裏側又は耳の付け根より後ろの部分に面で接触し得る。すなわち、耳材20の、使用開始前では本体10に対向していた面(耳材20、20を側方へ開いた後ではマスク100の外側を向く面)が耳たぶの裏側に面接触するか、又は耳材20の、使用開始前では外側に露出していた面(耳材20、20を側方へ開いた後ではマスク100の内側を向く面)が耳の付け根の後ろの部分に面接触する。そして、凸部が形成されることで、耳と面接触する面積が大きくなるので、耳材20の装着位置を安定させることができる。
また、耳材20には、図7に示すように、フック部24の環の内輪郭に2つの凸部、すなわち第1凸部pi1及び第2凸部pi2が形成されていてよい。フック部24の上部は、装着時に力が掛かりやすい引っ張られやすい傾向にあるので、フック部24の上部に形成された第1凸部pi1は、耳材の周方向の長さを確保するという上述の機能を主として有し得る。一方、フック部24の下部は装着時に比較的力が掛かりにくく変形しにくいので、フック部24の下部に形成された第2凸部pi2は、耳材20を耳(耳たぶの裏側又は耳の付け根の後ろ側)に安定して装着させるという機能を主として有し得る。
耳材20の内輪郭に形成された凸部は、凸部の頂点における曲率半径が10〜30mmとなるように形成さされていてよい。曲率半径が上記範囲となる凸部を形成することで、装着時に耳材20の十分な長さの確保、場合によっては耳材20の耳への安定的な装着という上述の効果を向上できる一方、装着時に凸部の縁部が当たって生じ得る違和感を低減できる。
なお、第1凸部pi1と第2凸部pi2との間には、第1凹部ri1が形成されている。第1凹部ri1によって、第1凸部pi1から第2凸部pi2への移行が滑らかになり、フック部24の内輪郭を、耳に掛けられた際に耳の形状に(耳の付け根に)自然に沿わせることができるので、より良好な装着感を得ることができる。第1凹部ri1は、凹部の底点における曲率半径20〜40mmとなるように形成されていてよい。
また、フック部24の幅eは10〜20mmであってよく、ほぼ一定であってよい。ここで、ほぼ一定とは、幅eの最大値と最小値との差が最小値の10%以下であってよいことを指す。フック部24の幅eをほぼ一定とすると、耳材20の外輪郭には、凸部に対向する位置に凹部が形成される。例えば、図7に示すように、内輪郭に形成された第1凸部pi1に対向して外輪郭に第1凹部ro1が形成され、内輪郭に形成された第2凸部pi2に対向して外輪郭に第2凹部ro2が形成されている。また、内輪郭に形成された第1凹部ri1に対向して外輪郭には第1凸部po1が形成されている。外輪郭に形成された一方の耳材20の第1凸部po1は、対となるもう一方の耳材20の第1凸部と接合して、分離可能な結合部28を形成している。
また、フック部24に限らず、耳材20の幅がほぼ一定であると、凸部に対向して外輪郭に凹部が形成されることになるので、耳材20の環が伸長される際に生じる材料の歪を外側(外輪郭側)に逃がすことができ、耳材20の周方向での伸長がより容易になる。よって、装着時に耳材20の長さを確保するという効果をより確実に得ることができる。
なお、本形態では、図7に示すように、一対の耳材20、20を構成するシートの横方向D2長さの1/2の長さd(図7)、すなわち、一対の耳材20、20が左右対称の構成を有する場合には1つの耳材20の横方向D2長さは、マスク100の横方向D2長さの1/2の長さcより短くなっていてよい。長さcは長さdに対して95%以下であってよいし、90%以下であってよい。また、長さcは長さdに対して70%以上であると好ましい。長さdが長さcより短くなっていることで、本体10と耳材20との結合を補強する補助材30(後述)を利用することが可能になる。耳材20の横方向D2の外端21と本体10の横方向D2の外端11とをずらすことができ、耳材20に覆われていない本体10の端部付近に補助材30を貼ることができる。なお、長さdは、例えば60〜90mm、好ましくは65〜85mmであってよい。
(摘み部)
上述のように、一対の耳材20、20には、一対の耳材20、20を互いに分離して横方向D2外方に開く際に使用者が摘まむことができる摘み部25、25が設けられていてよい。この摘み部25の構成は、耳材20、20の展開時に使用者が摘まむことができれば特に限定されないが、平面視で本体10の端縁から突出していることが好ましい。また、摘み部25は、耳材20の下側移行部26に形成されていて、本体10の下端から突出していることが好ましい(図7)。
摘み部25、25が、平面視で本体10の端縁から突出していることで、使用者は一対の耳材20、20を、本体10から離れた位置で摘まむ又は把持することができる。これにより、耳材の分離及び/又は展開動作を、本体10に触れずに行うことができるか、又は使用者が本体10に触れる領域をわずかにすることができる。よって、使用者は、マスクを装着する前の準備段階で、本体10に触れずに又はほとんど触れずに摘み部25、25を摘まむことができる。そして、同様に本体10に触れずに又はほとんど触れずに、一対の耳材20、20を分離・展開することができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク100を準備できる。さらに、摘み部25が平面視で本体10の下端から突出していると、使用者は自然な動作で耳材20、20を分離して、展開することができる。また、このような本体10から突出する摘み部25の構成によって、耳材20を装着者の耳に掛ける時又は掛けた後に摘み部25、2を持って耳材の調整を容易に行うことができる、という上述の効果をさらに向上させることができる。
摘み部25の、本体10の端縁から突出した部分の縦方向D1の最大の長さaは、5〜15mmであると好ましく、8〜15mmであるとさらに好ましい。また、長さaを上記範囲とすることで、使用者が摘み部25を摘まみやすく、また耳材20を確実に持ち上げること及び耳材20、20同士を分離させることが容易になると共に、マスク100を装着する際の妨げにならず、また装着中にも摘み部25が顔や耳に触れて与え得る違和感を低減できる。
また、摘み部25の位置も特に限定されず、マスク100の横方向D2の端縁から、摘み部25が最も突出した位置までの横方向D2長さ(摘み部25の突出部分の頂点までの横方向D2長さ)bが、マスク100全体の横方向D2長さの1/2の長さcの45〜90%であると好ましく、65〜80%であるとより好ましい。上記長さbを長さcの45%以上とすることで、耳材20、20間の分離可能な結合部28から離れ過ぎて、耳材20、20の分離・展開が円滑にできなくなることを防止する。一方、上記長さbを上記長さcの90%以下とすることで、左右の摘み部25、25を両手でそれぞれ摘まんだ時に、両手が近付き過ぎて互いの手を邪魔するようなことがない。
(補助材)
本形態では、上述のように、一対の耳材20、20は、それぞれ補助材30、30を介して本体10の両側部にそれぞれ結合されている。補助材30、30の構成及び機能について、以下により詳細に説明する。
図8に、マスク100において補助材30が設けられている部分の拡大図を示す。図8(a)は、部分平面図であり、図8(b)は、図8(a)のIII−III線断面図である。また、図9に、図8に示す状態から耳材20を横方向D2外方に開いた後の図を示す。図9(a)は、部分平面図であり、図9(b)は、図9(a)のIV−IV線断面図である。図8及び図9の例では、本体10、耳材20、及び補助材30がこの順で積層されている。
補助材30は、本体10と耳材20との間を介在して、本体10と耳材20とを間接的に結合させるために設けられている。より具体的には、本体10と補助材30とは、第1接合部B1で接合され、耳材20と補助材30とは第2接合部B2で接合されていて、本体10と耳材20とは直接接合されていない。第1接合部B1及び第2接合部B2は、例えば、圧力及び/又は熱を加えることによって、部材の対向する面同士を接合させる手段、例えばヒートシール、超音波シール、非加熱のエンボス加工等によって形成できる。このうち、確実な接合が可能であることから、ヒートシールを用いることが好ましい。
接合部がヒートシール等によって形成されている場合には、接合部は複数の溶着部分を含んでいてよい。溶着部分は、接合部において、縦方向D1及び/又は横方向D2で連続であってもよいし、不連続であってもよい。なお、接合部の溶着部分の形状は、強度を十分に維持できる接合部を形成することができれば、特に限定されない。溶着部分は、長さに比べて幅狭の形状、すなわち線状(直線状又は曲線状)に形成されていてよいし、点状(点として視認され得る形状)に形成されていてよい。また、より具体的には、溶着部分の平面視形状は、矩形、菱形等の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形等、任意の形状であってよい。
上述のように、本体10は、異物の侵入を遮断したり装着者が発生する飛沫の飛散を防止したりする機能を有し、一方、耳材20は、装着時に装着者の耳掛けて本体10を保持する機能を有する。そのため、本体10と耳材20とは通常、異なる材料から形成されており、耳材20は、比較的伸縮性の高い材料で構成されることが好ましい。よって、本体10と耳材20とが直接接合されている従来の構成では、耳材20が引っ張られること等によってマスク100に力が加わった時には、本体10が耳材20の伸びに追随できず、接合が維持できずに両者が互いに剥がれてしまう可能性もある。
これに対し、本形態では、本体10と補助材30との接合部である第1接合部B1、及び耳材20と補助材30との接合部である接合部B2を別々に形成できる。すなわち、それぞれの結合部を、直接結合させようとする2つの部材の特性に適合した形式で形成できる。よって、例えば、補助材30の材料として、本体10との接合、及び耳材20との接合の両方を最適化できる材料を選択できる。これにより、本体10と耳材20との間接的な結合が壊れにくくなり、結果として力が加わっても壊れにくいマスクを得ることができる。
上述のように、本形態のマスク100を装着する前には、一対の耳材20、20にそれぞれ設けられた摘み部25、25を摘まんで引っ張ることにより、耳材20、20を互いに分離させ、それぞれ側方に開く。このような耳材20、20の分離・展開動作の際にはマスク100に大きな力が掛かりやすい。しかし、本形態によれば、使用開始時の耳材20、20の分離・展開動作においても本体10から剥がれにくく、良好な状態で装着を開始することができる。
補助材30は、伸縮性のない若しくは小さい材料から形成してもよいし、ある程度の伸縮性を有する材料から形成されると好ましい。また、補助材30は、力が掛かると形状が不可逆的に変形し得る材料から形成してもよい。補助材30も、耳材20と同様の上述の種類の伸縮性不織布を含んでいてよいが、補助材30の伸縮性は、少なくとも横方向D2で、耳材20の伸縮性より小さいことが好ましい。また、補助材30の伸縮性は、少なくとも横方向D2で、本体10の伸縮性より大きいことが好ましい。
伸縮性を有する補助材30を設けることで、耳材20が引っ張られた時にも、本体10の伸びと補助材30の伸びとの差、及び耳材20の伸びと補助材30の伸びとの差をそれぞれ抑えることができる。そのため、本体10と補助材30との第1接合部B1、及び耳材20と補助材30との第2接合部B2がいずれも壊れにくくなり、結果として、本体10と耳材20との間接的な結合が壊れにくくなる。なお、補助材30の目付は、5〜100g/m2であってよい。また、補助材30の厚みは、100〜1,000μmであってよい。
補助材30は、図8及び図9に示すように、マスク100の縦方向D1に沿って延在するシート状の部材であってよい。補助材30の縦方向D1の長さは、マスク100の縦方向D1の長さ(本体10の縦方向D1の長さ)と同じであると好ましいが、マスク100の縦方向D1の長さより短くてもよい。また、マスク100の横方向D2の一方の側(左右どちらかの側)において、補助材30の横方向D2の外端31は、本体10の横方向D2の外端11より横方向D2内方にあっても外方にあってもよいが、図8(a)及び(b)に示すように本体10の横方向D2の外端11と揃った位置にあると好ましい。
補助材30の横方向D2の長さ(幅)Wは、マスク100全体のサイズ及び構成、本体10及び耳材20のサイズ、形状、材質にもよるが、15〜35mmであると好ましい。横方向D2の長さを上記範囲とすることで、第1接合部B1及び第2接合部B2の面積をそれぞれ十分に確保できる一方、補助材30が、使用開始時の分離・展開動作及び/又は装着の妨げず、本体10及び耳材20の機能も妨げない。
図8に示すように、補助材30は、本体10の外面側に配置されている。そのため、マスク100の装着中においても、補助材30自体が装着者の顔に接触する可能性が低く、本形態のマスク100による良好な装着感が妨げられない。
さらに上述のように、本形態における耳材20は、本体10の両側部を装着者の顔に向かって押し付けるように機能し得るが、本体10の外面側に積層されている補助材30も少なくとも部分的に、耳材20と一体となって、本体10を顔へ向かって押し付ける機能を果たし得る。これにより、本体10の両側部と顔との間の隙間をさらに小さくすることができ、マスク100の機能を向上できる。