実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<関連技術における流量センサのレイアウト構成>
まず、流量センサに関する関連技術について説明する。
ここで、本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
図1は、関連技術における流量センサの一部を構成する半導体チップの模式的な構成を示す図である。図1において、関連技術における半導体チップ100は、例えば、平面形状が矩形形状である基板101を含む厚板部と、厚板部よりも厚さが薄い薄膜部102を有する。すなわち、図1に示すように、関連技術における半導体チップ100においては、厚さの厚い基板(厚板部)101の中央部に厚さの薄い薄膜部102が形成されている。そして、この薄膜部102には、発熱抵抗体から構成されるヒータ103と、このヒータ103を両側から挟む測温抵抗体104aおよび測温抵抗体104bと、発熱抵抗体から構成される補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bとが形成されている。このように構成されている半導体チップ100においては、ダイヤフラムである薄膜部102の端部近傍に補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bが配置されている。このため、関連技術における半導体チップ100では、補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bによる加熱によって、気体の流れる方向(x方向)における薄膜部102の端部近傍での温度勾配を緩和することができると考えられる。
ところが、本発明者の検討によると、関連技術における半導体チップ100のように、薄肉部102の端部近傍に補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bを設ける構成であっても、薄膜部102の端部近傍に汚損物となる微粒子の付着を効果的に抑制する観点から不充分であることを新たに見出した。
<関連技術に存在する改善の余地>
以下では、関連技術に存在する改善の余地について説明する。
図2は、関連技術における半導体チップでの等温線を模式的に示す図である。図2では、無風時の場合で、かつ、ヒータ103と補助ヒータ105aと補助ヒータ105bとを発熱状態にした場合における半導体チップ100の表面の温度分布が示されている。図2において、薄膜部102の中央部に配置されているヒータ103付近の温度が最も高く、薄膜部102の外縁部に向って温度が低下する。このとき、例えば、図2の領域ARにおいては、等温線の密度が高くなっている。これは、図2の領域ARを含む薄膜部102の端部においては、温度勾配が急峻になっていることを意味する。このように、薄膜部102の端部近傍に補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bを設ける構成を採用しても、薄膜部102の端部から基板101への放熱量が想定よりも大きい結果、薄膜部102と基板101との境界部における温度勾配が急峻になってしまうのである。すなわち、関連技術のように、単に、薄膜部102の端部近傍に補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bを設ける構成を採用する対策だけでは、薄膜部102と基板101との境界部における温度勾配をなだらかにするためには不充分なのである。
このことから、関連技術では、依然として、気体に混入している汚損物が、熱泳動現象によって、半導体チップ100の表面温度が低温から高温となるような温度勾配がある場所に多く付着することになる。つまり、関連技術では、薄膜部102と基板101との境界部に汚損物が付着することを効果的に抑制することが困難となる。そして、薄膜部102と基板101との境界部に付着する汚損物が多くなると、付着した汚損物によって、気体の流れが乱される。この結果、流量センサにおける気体流量の測定精度が低下することになる。つまり、関連技術における流量センサでは、長期間にわたって流量センサの性能を維持することが困難となるのである。
さらに詳細に説明する。図3は、関連技術における半導体チップの断面図(図1のA−A線での断面図)と半導体チップの表面における温度分布との関係を示す図である。図3に示すように、関連技術における半導体チップ100は、基板101(厚板部)と、基板101よりも厚さの薄い薄膜部(ダイヤフラム)102とを有する。基板101上には、絶縁膜201が形成されており、この絶縁膜201上に、ヒータ103と、測温抵抗体104aと、測温抵抗体104bと、補助ヒータ105aと、補助ヒータ105bとが形成されている。そして、ヒータ103と、測温抵抗体104aと、測温抵抗体104bと、補助ヒータ105aと、補助ヒータ105bとを覆うように、絶縁膜202が形成されている。ここで、絶縁膜201と絶縁膜202とによって、薄膜部102が構成され、この薄膜部102に、ヒータ103と、測温抵抗体104aと、測温抵抗体104bと、補助ヒータ105aと、補助ヒータ105bとが形成されていることになる。一方、図3において、基板101と絶縁膜201と絶縁膜202とによって厚板部が構成されている。そして、図3に示すように、薄膜部102と厚板部とは、境界線BL1および境界線BL2で区切られている。
このように構成されている関連技術における半導体チップ100では、図3に示すように、薄膜部102の中央部に配置されているヒータ103付近の温度が最も高く、薄膜部102の外縁部に向って温度が低下する。特に、図3に示す関連技術における半導体チップ100の表面では、境界線BL1の近傍および境界線BL2の近傍での温度勾配が急峻となっており、厚板部(基板101)では、低い一定温度Trtとなる。これは、薄膜部102の端部近傍に補助ヒータ105aおよび補助ヒータ105bを設ける構成を採用しても、薄膜部102の端部から基板101への放熱量が想定よりも大きい結果、薄膜部102と基板101との境界線BL1の近傍(境界線BL2の近傍)における急峻な温度勾配をなだらかにすることが困難であることを意味している。
このことから、関連技術における半導体チップ100では、例えば、図4に示すように、境界線BL1の近傍に、急峻な温度勾配に起因する温度障壁が形成される。この結果、気体に混入してきた汚損物である微粒子300は、温度障壁によって、基板101と薄膜部102との境界線BL1の近傍に集中的に溜まることになる。このため、関連技術における流量センサでは、基板101と薄膜部102との境界線BL1の近傍に集中的に溜まった汚損物(微粒子300)によって、気体の流れが乱される。したがって、関連技術における流量センサでは、気体流量の測定精度が低下することになる。つまり、関連技術における流量センサでは、使用期間が長くなるにつれて、気体の流れる経路に汚損物が溜まる結果、気体流量の測定精度を維持することが困難となるという改善の余地が存在する。
そこで、本実施の形態では、関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
<実施の形態における流量センサのレイアウト構成>
図5は、本実施の形態における流量センサの一部を構成する半導体チップのレイアウト構成を示す平面図である。図5において、本実施の形態における半導体チップ10は、厚板部である基板11と、基板11よりも厚さの薄い薄膜部12とを有する。そして、この薄膜部12には、発熱抵抗体から構成されるヒータ13と、ヒータ13を離間して挟む測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bとが形成されている。さらに、薄膜部12には、発熱抵抗体から構成される補助ヒータ15aおよび補助ヒータ15bが形成されている。特に、測温抵抗体14aは、平面視において補助ヒータ15aとヒータ13との間に配置されている一方、測温抵抗体14bは、平面視において補助ヒータ15bとヒータ13との間に配置されている。
このように、本実施の形態における半導体チップ10では、単結晶シリコン(Si)からなる基板11上に絶縁膜(図示せず)が形成されている。そして、半導体チップ10の一部領域では、基板11が除去されて絶縁膜から構成されるダイヤフラムと呼ばれる薄膜部12が構成される。このダイヤフラムと呼ばれる薄膜部12には、ヒータ13と、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aおよび補助ヒータ15bとが形成されている。例えば、ヒータ13と測温抵抗体14aと測温抵抗体14bのそれぞれは、引き出し配線を介して、外部機器と接続するためのパッド(接続端子)と電気的に接続されている。一方、補助ヒータ15aは、伝熱部16と引き出し配線18とを介して、外部機器と接続するためのパッドと電気的に接続されている。同様に、補助ヒータ15bは、伝熱部17と引き出し配線19とを介して、外部機器と接続するためのパッド(接続端子)と電気的に接続されている。
そして、図5に示すように、引き出し配線18からは、抵抗体20が分岐して接続されており、この抵抗体20も外部機器と接続するためのパッドと電気的に接続されている。同様に、引き出し配線19からは、抵抗体21が分岐して接続されており、この抵抗体21も外部機器と接続するためのパッドと電気的に接続されている。
なお、本実施の形態における流量センサは、逆流する気体の気体流量も検知可能に構成されている。このことから、薄膜部12に中心部にヒータ13を配置し、かつ、ヒータ13に対して、測温抵抗体14aと測温抵抗体14bとを線対称に配置し、かつ、ヒータ13に対して、補助ヒータ15aと補助ヒータ15bとを線対称に配置することが望ましい。
次に、図5において、半導体チップ10は、気体の流れる方向(x方向)と交差する方向(y方向)に延在し、かつ、平面視において薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1および辺S2を備える。
そして、半導体チップ10には、薄膜部12に形成された部位16aと、厚板部(基板11)に形成され、かつ、部位16aと一体化した部位16bとを有する伝熱部16が形成されている。すなわち、半導体チップ10において、伝熱部16は、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1を跨ぐように形成されている。このとき、x方向における部位16bの幅は、x方向における部位16aの幅よりも大きい。
同様に、半導体チップ10には、薄膜部12に形成された部位17aと、厚板部(基板11)に形成され、かつ、部位17aと一体化した部位17bとを有する伝熱部17が形成されている。すなわち、半導体チップ10において、伝熱部17は、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S2を跨ぐように形成されている。このとき、x方向における部位17bの幅は、x方向における部位17aの幅よりも大きい。
ここで、辺S1は、平面視において伝熱部16で覆われる被覆部分と、平面視において伝熱部16から露出する露出部分とを有し、伝熱部16で覆われる被覆部分は、伝熱部16から露出する露出部分よりも長くなっている。
同様に、辺S2は、平面視において伝熱部17で覆われる被覆部分と、平面視において伝熱部17から露出する露出部分とを有し、伝熱部17で覆われる被覆部分は、伝熱部17から露出する露出部分よりも長くなっている。
続いて、図5において、伝熱部16は、補助ヒータ15aと電気的に接続されている一方、伝熱部17は、補助ヒータ15bと電気的に接続されている。例えば、図5に示すように、補助ヒータ15aは、x方向において伝熱部16よりも薄膜部12の内側(中央側)に配置されているとともに、補助ヒータ15bは、x方向において伝熱部17よりも薄膜部12の内側(中央側)に配置されている。
例えば、図5に示すように、伝熱部16は、分割された複数の分割部位から構成されており、これらの複数の分割部位は、離間しながらy方向に沿って配置されている。このとき、伝熱部16と接続される補助ヒータ15aは、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を接続する接続部位から構成されている。
同様に、図5に示すように、伝熱部17も、分割された複数の分割部位から構成されており、これらの複数の分割部位は、離間しながらy方向に沿って配置されている。このとき、伝熱部17と接続される補助ヒータ15bは、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を接続する接続部位から構成されている。
具体的に、本実施の形態における接続部位は、互いに隣り合う分割部位のうちの一方の分割部位と接続され、かつ、x方向に延在する第1部位と、第1部位と接続され、かつ、y方向に延在する第2部位と、第2部位と接続され、かつ、x方向に延在する第3部位と、第3部位と接続され、かつ、y方向に延在する第4部位とを含む。さらに、この接続部位は、第4部位と接続され、かつ、x方向に延在する第5部位と、第5部位と接続され、かつ、y方向に延在する第6部位と、第6部位と接続され、かつ、x方向に延在し、かつ、互いに隣り合う分割部位のうちの他方の分割部位と接続される第7部位とを含む。
このように、本実施の形態における半導体チップ10は、伝熱部16とは離間して配置されているヒータ13(第1発熱部)と、x方向においてヒータ13と伝熱部16との間に配置され、かつ、伝熱部16と電気的に接続されている補助ヒータ15a(第2発熱部)とを有することになる。さらに、本実施の形態における半導体チップ10は、x方向においてヒータ13と伝熱部17との間に配置され、かつ、伝熱部17と電気的に接続されている補助ヒータ15b(第2発熱部)も有していることになる。
続いて、図5に示すように、辺S1の一端部(上端部)は、伝熱部16で覆われる被覆部分であるとともに、辺S1の他端部(下端部)も、伝熱部16で覆われる被覆部分である。同様に、辺S2の一端部(上端部)は、伝熱部17で覆われる被覆部分であるとともに、辺S2の他端部(下端部)も、伝熱部17で覆われる被覆部分である。これにより、図5に示すように、伝熱部16と補助ヒータ15aとを合わせたトータルのy方向の長さは、辺S1の長さと同等以上となる。
そして、ヒータ13は、y方向に延在しているとともに、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bも、y方向に延在している。このとき、y方向におけるヒータ13の長さは、辺S1の長さよりも短く、かつ、y方向における測温抵抗体14a(測温抵抗体14b)の長さは、y方向におけるヒータ13の長さよりも短くなっている。すなわち、本実施の形態におけるヒータ13は、ほぼ薄膜部12の中心位置に配置されており、気体の流れるx方向と交差するy方向に長く形成されている。そして、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bは、気体の流れに乱れが生じた場合であっても、気体流量の検出精度を確保できるように、ヒータ13よりも短く設計されている。ただし、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bは、気体流量の検出感度を保つため、ヒータ13よりも高抵抗にする必要がある。このため、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bのそれぞれの配線幅をヒータ13の配線幅よりも狭くするとともに、折り返し回数を多くして実質的な配線長をヒータ13の配線長よりも長くすることが望ましい。また、伝熱部16と補助ヒータ15aとを合わせたトータルのy方向の長さ(辺S1の長さと同等)は、y方向におけるヒータ13の長さよりも長く、これによって、空気の偏流に対する影響を小さくしている。
また、図5に示すように、x方向における補助ヒータ15aと測温抵抗体14aとの間の距離は、x方向におけるヒータ13と測温抵抗体14aとの間の距離よりも大きく、x方向における補助ヒータ15bと測温抵抗体14bとの間の距離は、x方向におけるヒータ13と測温抵抗体14bとの間の距離よりも大きくなっている。すなわち、本実施の形態では、補助ヒータ15aおよび補助ヒータ15bを設けることに起因する気体流量の検出感度への悪影響を小さくするために、補助ヒータ15aと測温抵抗体14aとの間の距離を、ヒータ13と測温抵抗体14aとの間の距離よりも大きくし、かつ、補助ヒータ15bと測温抵抗体14bとの間の距離を、ヒータ13と測温抵抗体14bとの間の距離よりも大きくしている。
次に、図5に示すように、伝熱部16は、基板11に形成されている引き出し配線18と電気的に接続されており、この引き出し配線18は、抵抗体20とも電気的に接続されている。したがって、補助ヒータ15aと伝熱部16と引き出し配線18とは電気的に接続されていることになり、引き出し配線18が接続されているパッド(接続端子)を介して、半導体チップ10の外部から補助ヒータ15aに電流を流すことが可能となる。
同様に、図5に示すように、伝熱部17は、基板11に形成されている引き出し配線19と電気的に接続されており、この引き出し配線19は、抵抗体21とも電気的に接続されている。したがって、補助ヒータ15bと伝熱部17と引き出し配線19とは電気的に接続されていることになり、引き出し配線19が接続されているパッド(接続端子)を介して、半導体チップ10の外部から補助ヒータ15bに電流を流すことが可能となる。
なお、引き出し配線18の幅は、抵抗値を低減するために、伝熱部16の幅よりも大きいことが望ましく、同様に、引き出し配線19の幅は、抵抗値を低減するために、伝熱部17の幅よりも大きいことが望ましい。
ヒータ13も基板11に形成されている引き出し配線と電気的に接続されており、引き出し配線が接続されているパッド(接続端子)を介して、半導体チップ10の外部からヒータ13に電流を流すことが可能となる。また、測温抵抗体14aも基板11に形成されている引き出し配線と電気的に接続されており、引き出し配線が接続されているパッド(接続端子)を介して、半導体チップ10の外部から測温抵抗体14aに電流を流すことが可能となる。同様に、測温抵抗体14bも基板11に形成されている引き出し配線と電気的に接続されており、引き出し配線が接続されているパッド(接続端子)を介して、半導体チップ10の外部から測温抵抗体14bに電流を流すことが可能となる。
以上にようにして、本実施の形態における流量センサの一部を構成する半導体チップ10がレイアウト構成されていることになる。
<変形例1>
続いて、実施の形態における半導体チップのレイアウト構成の変形例1について説明する。図6は、本変形例1における半導体チップのレイアウト構成を示す図である。図6に示すように、本変形例1においても、伝熱部16は、分割された複数の分割部位から構成されており、これらの複数の分割部位は、離間しながらy方向に沿って配置されている。このとき、伝熱部16と接続される補助ヒータ25aは、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を接続する接続部位から構成されている。具体的に、本変形例において、補助ヒータ25aとなる接続部位は、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を最短距離で接続する部位から構成されている。
同様に、図6に示すように、伝熱部17も、分割された複数の分割部位から構成されており、これらの複数の分割部位は、離間しながらy方向に沿って配置されている。このとき、伝熱部17と接続される補助ヒータ25bは、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を接続する接続部位から構成されている。具体的に、本変形例1において、補助ヒータ25bとなる接続部位は、複数の分割部位のうちの互いに隣り合う分割部位を最短距離で接続する部位から構成されている。
以上のように、補助ヒータは、図5に示す補助ヒータ15aおよび補助ヒータ15bのように構成されるだけでなく、図6に示す補助ヒータ25aおよび補助ヒータ25bのように構成することもできる。
<実施の形態における流量センサの回路構成>
次に、本実施の形態における流量センサの回路構成について説明する。
図7は、流量センサの回路構成を示す回路ブロック図である。図7において、本実施の形態における流量センサは、図示しないが、例えば、流量センサを制御するためのCPU(Central Processing Unit)を有し、さらに、このCPUに入力信号を入力するための入力回路、および、CPUからの出力信号を出力するための出力回路を有している。そして、流量センサには、データを記憶するメモリが設けられており、CPUは、メモリにアクセスして、メモリに記憶されているデータを参照することができるようになっている。
そして、CPUは、出力回路を介して、例えば、トランジスタのベース電極と接続されている。そして、このトランジスタのコレクタ電極は電源に接続され、トランジスタのエミッタ電極は、端子TE1と接続されている。そして、端子TE1とグランド端子との間に発熱抵抗体から構成されるヒータ13が設けられている。したがって、トランジスタは、CPUによって制御されるようになっている。すなわち、トランジスタのベース電極は、出力回路を介してCPUに接続されているので、CPUからの出力信号がトランジスタのベース電極に入力される。この結果、CPUからの出力信号(制御信号)によって、トランジスタを流れる電流が制御されるように構成されている。
CPUからの出力信号によってトランジスタを流れる電流が大きくなると、電源から端子TE1に供給される電流が大きくなり、ヒータ13の加熱量が大きくなる。一方、CPU1からの出力信号によってトランジスタを流れる電流が少なくなると、ヒータ13へ供給される電流が少なくなり、ヒータ13の加熱量は減少する。このように流量センサでは、CPUによってヒータ13を流れる電流量が制御され、これによって、ヒータ13からの発熱量がCPUによって制御されるように構成されていることがわかる。
次に、図7において、本実施の形態における流量センサは、気体の流量を検知するための温度センサブリッジTSBを有している。この温度センサブリッジTSBは、参照電圧Vsが印加される端子TE2とグランド端子との間に設けられたブリッジを構成する4つの抵抗体から構成されている。この4つの抵抗体は、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bと、抵抗体30および抵抗体31から構成されている。
図7の矢印の方向は、気体が流れる方向を示しており、この気体が流れる方向の上流側に測温抵抗体14aが設けられ、下流側に測温抵抗体14bが設けられている。これらの測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bは、ヒータ13までの距離が同じになるように配置されている。一方、抵抗体(固定抵抗体)30および抵抗体(固定抵抗体)31は、例えば、半導体チップの外部に設けられるが、半導体チップ内に設けることもできる。
温度センサブリッジTSBでは、端子TE2とグランド端子の間に測温抵抗体14aと抵抗体30が直列接続されており、この測温抵抗体14aと抵抗体30の接続点がノードAとなっている。さらに、端子TE2とグランド端子との間には、測温抵抗体14bと抵抗体31とが直列接続されており、この測温抵抗体14bと抵抗体31の接続点がノードBとなっている。そして、ノードAの電位とノードBの電位は、増幅回路32を介して、CPUに出力されるようになっている。
そして、矢印方向に流れる気体の流量が零である無風状態のとき、ノードAの電位とノードBの電位との差電位が0Vとなるように、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bと抵抗体30および抵抗体31の各抵抗値が設定されている。具体的に、測温抵抗体14aと測温抵抗体14bは、ヒータ13からの距離が等しく、かつ、抵抗値も等しくなるように構成されている。このため、温度センサブリッジTSBでは、ヒータ13の発熱量にかかわらず、無風状態であれば、ノードAとノードBの差電位は0Vとなるように構成されていることがわかる。
続いて、本実施の形態における流量センサは、ブリッジAHBを有している。このブリッジAHBは、端子TE3とグランド端子との間に設けられたブリッジを構成する6つの構成要素から構成されている。この6つの構成要素は、発熱抵抗体からなる補助ヒータ15aおよび発熱抵抗体からなる補助ヒータ15bと、伝熱部16および伝熱部17と、抵抗体20および抵抗体21から構成されている。
ブリッジAHBでは、端子TE3とグランド端子の間に補助ヒータ15aと伝熱部16と抵抗体20とが直列接続されており、この伝熱部16と抵抗体20の接続点がノードCとなっている。さらに、端子TE2とグランド端子との間には、補助ヒータ15bと伝熱部17と抵抗体21とが直列接続されており、この伝熱部17と抵抗体21の接続点がノードDとなっている。ノードCの電位とノードDの電位は、増幅回路33を介して、CPUに出力されるようになっている。このとき、CPUは、矢印方向に流れる気体の流量が零である無風状態のとき、ノードCの電位とノードDの電位との差電位が0Vとなるように、端子TE3に供給される電流を制御するようになっている。
<実施の形態における流量センサの動作>
本実施の形態における流量センサは上記のように構成されており、以下に、その動作について、図7を参照しながら説明する。まず、CPUは、出力回路を介してトランジスタのベース電極に出力信号(制御信号)を出力することにより、トランジスタに電流を流す。すると、トランジスタのコレクタ電極に接続されている電源から、トランジスタのエミッタ電極に接続されている端子TE1を介して、ヒータ13に電流が流れる。このため、ヒータ13は発熱する。このとき、CPUは、例えば、ヒータ13に流れる電流をフィードバック制御する。これにより、本実施の形態における流量センサでは、ヒータ13で暖められた気体が一定温度となるように制御される。
次に、流量センサでの気体の流量を測定する動作について説明する。まず、無風状態の場合について説明する。無風状態のとき、温度センサブリッジTSBのノードAの電位とノードBの電位との差電位が0Vとなるように、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bと抵抗体30および抵抗体31の各抵抗値が設定されている。このため、温度センサブリッジTSBでは、ヒータ13の発熱量にかかわらず、無風状態であれば、ノードAとノードBの差電位は0Vとなり、この差電位(0V)が増幅回路32を介してCPUに入力される。そして、温度センサブリッジTSBからの差電位が0Vであることを認識したCPUは、矢印方向に流れる気体の流量が零であると認識し、出力回路を介して気体流量が零であることを示す出力信号が流量センサから出力される。
続いて、図7の矢印方向に気体が流れている場合を考える。この場合、図7に示すように、気体の流れる方向の上流側に配置されている測温抵抗体14aは、矢印方向に流れる気体によって冷却される。このため、測温抵抗体14aの温度は低下する。これに対し、気体の流れる方向の下流側に配置されている測温抵抗体14bは、ヒータ13で暖められた気体が測温抵抗体14bに流れてくるので温度が上昇する。この結果、温度センサブリッジTSBのバランスが崩れ、温度センサブリッジTSBのノードAとノードBとの間に零ではない差電位が発生する。この差電位が増幅回路32を介してCPUに入力される。そして、温度センサブリッジTSBからの差電位が零ではないことを認識したCPUは、矢印方向に流れる気体の流量が零ではないことを認識する。その後、CPUはメモリにアクセスする。メモリには、差電位と気体流量を対応づけた対比表(テーブル)が記憶されているので、メモリにアクセスしたCPUは、メモリに記憶されている対比表から気体流量を算出する。このようにして、CPUで算出された気体流量は出力回路を介して、流量センサから出力される結果、流量センサによれば、気体の流量を求めることができる。
なお、本実施の形態における流量センサが動作している際、補助ヒータ15aの温度および補助ヒータ15bの温度が一定となるように、CPUは、ノードCとノードDの差電圧に基づいて、ブリッジAHBが接続されている端子TE3に供給する電流を制御する。
<実施の形態における特徴>
次に、本実施の形態における特徴点について説明する。本実施の形態における第1特徴点は、例えば、図5に示すように、薄膜部12に形成された部位16aと、厚板部(基板11)に形成された部位16bとを有する伝熱部16が半導体チップ10に形成され、かつ、部位16aと部位16bとが一体化している点にある。言い換えれば、本実施の形態における第1特徴点は、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1を跨るように、伝熱部16が形成されている点にあるとも言える。
これにより、本実施の形態によれば、薄膜部12に形成されている発熱部(例えば、ヒータ13や補助ヒータ15a、15b)で発生した熱が周囲に拡散する際、伝熱部16を直接熱が伝わる熱伝導作用と、伝熱部における輻射熱作用との相乗効果によって、伝熱部16上の表面における温度勾配を緩やかにすることができる。つまり、本実施の形態によれば、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1に跨る伝熱部16の存在によって、辺S1近傍の表面の温度勾配を緩やかにすることができる。
この結果、本実施の形態における半導体チップ10では、辺S1の近傍における温度勾配が緩和されるため、気体に混入してきた汚損物である微粒子の熱泳動に起因する辺S1近傍への付着を抑制することができる。したがって、本実施の形態における流量センサでは、汚損物(微粒子)の付着に起因する気体流れの乱れが抑制されることから、本実施の形態における流量センサでは、気体流量の測定精度が低下を防止できる。すなわち、本実施の形態における流量センサでは、使用期間が長くなっても、気体の流れる経路に汚損物が溜まりにくくなる結果、長期間にわたって、気体流量の測定精度を維持できる。
図8は、本実施の形態における半導体チップでの等温線を模式的に示す図である。図8では、無風時の場合で、かつ、ヒータ13と補助ヒータ15aと補助ヒータ15bとを発熱状態にした場合における半導体チップ10の表面の温度分布が示されている。図8において、薄膜部12の中央部に配置されているヒータ13付近の温度が最も高く、薄膜部12の外縁部に向って温度が低下する。このとき、例えば、図8の辺S1の近傍領域(ドット領域)においては、図2よりも等温線の密度が低くなっている。これは、図8の辺S1の近傍領域においては、温度勾配が緩和されていることを意味する。このように、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1を跨るように、伝熱部16を形成することによって、薄膜部12と基板11との境界部における温度勾配を緩和できることがわかる。すなわち、本実施の形態1における第1特徴点を採用することによって、伝熱部における熱伝導作用と熱輻射作用との相乗効果を得ることができ、これによって、辺S1近傍の表面の温度勾配を緩やかにすることができるのである。
図9は、本実施の形態における半導体チップの断面図(図5のA−A線での断面図)と半導体チップの表面における温度分布との関係を示す図である。図9に示すように、本実施の形態における半導体チップ10は、基板11(厚板部)と、基板11よりも厚さの薄い薄膜部(ダイヤフラム)12とを有する。基板11上には、絶縁膜40が形成されており、この絶縁膜40上に、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bとが形成されている。そして、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bとを覆うように、絶縁膜41が形成されている。ここで、絶縁膜40と絶縁膜41とによって、薄膜部12が構成され、この薄膜部12に、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bとが形成されていることになる。一方、図9において、基板11と絶縁膜40と絶縁膜41とによって厚板部が構成されている。そして、図9に示すように、薄膜部12と厚板部とは、薄膜部12と厚板部との境界線となる辺S1および辺S2で分けられていることになる。
このように構成されている本実施の形態における半導体チップ10では、図9に示すように、薄膜部12の中央部に配置されているヒータ13付近の温度が最も高く、薄膜部12の外縁部に向って温度が低下する。つまり、ヒータ13の温度は、補助ヒータ15a(補助ヒータ15b)の温度よりも高くなっている。
ここで、図3に示す関連技術における半導体チップ100とは異なり、図9に示す本実施の形態における半導体チップ10の表面では、辺S1の近傍および辺S1の近傍での温度勾配が緩やかになっていることがわかる。これは、図9に示す本実施の形態における半導体チップ10では、例えば、辺S1を跨いで伝熱部16が形成されており、この伝熱部16での熱伝導効果と熱輻射効果との相乗効果によって、厚板部への温度勾配の「裾引き」が生じていることに起因している。このように、本実施の形態における第1特徴点を採用することによって、辺S1の表面近傍における温度勾配を緩和できることがわかる。
本実施の形態における半導体チップ10では、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1の近傍に、急峻な温度勾配が生じなくなるため、急峻な温度勾配に起因する温度障壁が形成されにくくなる。この結果、例えば、図10に示すように、気体に混入してきた汚損物である微粒子300は、基板11と薄膜部12との境界線となる辺S1の近傍に集中的に付着しにくくなる。このことから、本実施の形態における流量センサでは、基板11と薄膜部12との境界線となる辺S1の近傍に汚損物の塊が形成されにくくなるため、汚損物の塊による気体流れの乱れが抑制され、気体は、流量センサの表面上をスムーズに流れることになる。したがって、本実施の形態における流量センサでは、気体流れの乱れに起因する気体流量の測定精度の低下を抑制することができる。つまり、本実施の形態における流量センサでは、使用期間が長くなっても、気体の流れる経路に汚損物が溜まりにくくなる結果、長期間にわたって気体流量の測定精度を維持できる。
なお、上述したように、本実施の形態における第1特徴点は、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1を跨るように、伝熱部16が形成されている点にあり、この伝熱部16は、熱伝導効果と熱輻射効果との相乗効果によって、辺S1の表面近傍の温度勾配を緩和している。したがって、伝熱部16は、熱伝導率の高い材料から構成することが望ましく、例えば、図9に示す絶縁膜40や絶縁膜41の熱伝導率よりも高い材料から構成することが望ましい。具体的に、伝熱部16は、金属材料から構成できる。
続いて、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、図5に示すように、辺S1に跨る伝熱部16を形成することを前提として、この辺S1が、平面視において伝熱部16で覆われる被覆部分と、平面視において伝熱部16から露出する露出部分とを有する点にある。これにより、例えば、伝熱部16は、図5に示すように、分割された複数の分割部位から構成されることになる。この結果、互いに隣り合う分割部位を接続する接続部位を補助ヒータ15aとして使用することができる。つまり、本実施の形態における第2特徴点によれば、伝熱部16を補助ヒータ15aと電気的に接続する配線として機能させることができる利点が得られる。ここで、伝熱部16の本来の基本機能は、熱伝導効果と熱輻射効果との相乗効果によって、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1の近傍の温度勾配を緩和するものである。この点に関し、上述した本実施の形態における第2特徴点を採用すると、伝熱部16は、補助ヒータ15aと直接接続されることになるため、補助ヒータ15aで発生した熱が伝熱部16に直接伝わりやすくなる。この結果、本実施の形態における第2特徴点によれば、補助ヒータ15aとの接続容易性を向上できるだけでなく、伝熱部16の本来の機能である熱伝導効果も高めることができ、これによって、辺S1の近傍の温度勾配のさらなる緩和を図ることができる。
特に、図5に示すように、伝熱部16を構成する複数の分割部位は、離間しながらy方向に沿って配置されていることが望ましい。この場合、図5に示すように、伝熱部16と複数の補助ヒータ15aとを接続することができ、かつ、この複数の補助ヒータ15aをy方向に沿って配置することが可能となる。これにより、辺S1に沿った伝熱部16の温度が平均化されることになり、辺S1の近傍上の表面全体にわたって、ほぼ均等に温度勾配を緩和することができる。つまり、離間しながらy方向に沿って配置された複数の分割部位から伝熱部16を構成することにより、温度勾配の緩やかな領域を広げることができる結果、汚損物(微粒子)の付着を抑制できる領域が広がることになる。したがって、離間しながらy方向に沿って配置された複数の分割部位から伝熱部16を構成すると、流量センサ上を流れる気体の方向が多少偏流しても、流量センサの流量特性に与える悪影響を低減することができる効果が得られる。
さらに、図5に示すように、辺S1の近傍上の表面全体にわたって、ほぼ均等に温度勾配を緩和する観点から、伝熱部16で覆われる辺S1の被覆部分は、伝熱部16から露出する辺S1の露出部分よりも長いことが望ましい。なぜなら、伝熱部16で覆われる辺S1の被覆部分は、伝熱部16による熱伝導効果と熱輻射効果との相乗効果によって、被覆部分の上方に存在する半導体チップ10の最表面の温度勾配を緩和することができることから、このような温度勾配を緩和できる領域を増加させることが望ましいからである。
以上のように、本実施の形態における第1特徴点と第2特徴点とを組み合わせることにより、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界線となる辺S1近傍領域の上方に位置する半導体チップ10の最表面での温度勾配を効果的に緩和することができる。このため、汚損物(微粒子)は、辺S1近傍の半導体チップ10の最表面に局在化することなく分散化される。そして、仮に、汚損物が、辺S1近傍の半導体チップ10の最表面に付着したとしても、汚損物のサイズは小さく、流量センサの検出特性に及ぼす悪影響を低減できる。このような効果は、伝熱部16による良好な熱伝導性に基づいている。
次に、本実施の形態における第3特徴点は、例えば、図10に示すように、伝熱部16のうちの薄膜部12に形成されている部位16aのx方向の幅W1が、伝熱部16のうちの厚板部(基板11)に形成されている部位16bのx方向の幅W2よりも小さい点にある。言い換えれば、本実施の形態における第3特徴点は、伝熱部16のうちの厚板部(基板11)に形成されている部位16bのx方向の幅W2が、伝熱部16のうちの薄膜部12に形成されている部位16aのx方向の幅W1よりも大きい点にある。これにより、本実施の形態によれば、絶縁膜41の表面における温度勾配の厚板部(基板11)側への「裾引き」を大きくすることができる結果、付着物による悪影響が顕在化しやすい辺S1近傍の広い領域にわたって温度勾配を緩和することができる。
続いて、本実施の形態における第4特徴点は、例えば、図10に示すように、補助ヒータ15aと伝熱部16との間の距離Lを、伝熱部16のうちの薄膜部12に形成されている部位16aのx方向の幅W1以下にする点にある。これは、伝熱部16による熱伝導効率を向上するためには、補助ヒータ15aを伝熱部16に近づけることが望ましい一方、補助ヒータ15aを伝熱部16に近づけすぎると、補助ヒータ15aと厚板部(基板11)との間の距離も縮まる結果、厚板部からの熱の放熱量が大きくなってしまうことを考慮したものである。つまり、本実施の形態における第4特徴点によれば、厚板部(基板11)からの熱の放熱量の増大(熱逃げの増大)を抑制しながら、伝熱部16による熱伝導効率の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態における第5特徴点は、例えば、図10に示すように、絶縁膜40の膜厚T1が、絶縁膜41の膜厚T2よりも厚い点にある。言い換えれば、本実施の形態における第5特徴点は、絶縁膜41の膜厚T2が、絶縁膜40の膜厚T1よりも薄い点にある。これにより、本実施の形態における第5特徴点によれば、補助ヒータ15aおよび伝熱部16のそれぞれから絶縁膜41の表面までの距離を小さくすることができる。このことは、伝熱部16からの熱伝導と熱輻射が効率良く絶縁膜41の表面まで行なわれることを意味し、これによって、辺S1近傍上の絶縁膜41の表面における温度勾配を緩和できる(第1利点)。一方、本実施の形態における第5特徴点によれば、伝熱部16の下層に位置する絶縁膜40の膜厚T1が厚いことから、基板11と伝熱部16との間に熱伝導率の低い絶縁膜40が介在することによる断熱効果によって、伝熱部16から基板11への放熱(熱逃げ)が抑制される(第2利点)。このように、本実施の形態における第5特徴点によれば、上述した第1利点と第2利点との相乗効果によって、辺S1近傍上の絶縁膜41の表面における温度勾配のさらなる緩和を実現することができる。
<実施の形態における流量センサの製造方法>
次に、本実施の形態における流量センサの製造方法について、図面を参照しながら説明する。まず、図11に示すように、(100)の結晶方位の単結晶シリコン(Si)からなる基板11を用意する。次に、図12に示すように、第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に形成された第2絶縁膜と、第2絶縁膜上に形成された第3絶縁膜とからなる絶縁膜40を基板11上に形成する。ここで、第1絶縁膜は、例えば、1000℃以上の炉体に、酸素あるいは水蒸気を導入した形成された圧縮応力を有する酸化シリコン膜である。また、第2絶縁膜は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成された引張応力を有する窒化シリコン膜であり、第3絶縁膜は、CVD法を使用して形成された圧縮応力を有する酸化シリコン膜である。なお、第3絶縁膜を形成した後、薄膜部(ダイヤフラム)全体の膜応力を調整するために、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜を適宜追加してもよい。
続いて、図13に示すように、アルゴンガス(Arガス)によるスパッタリングを使用したエッチング(スパッタエッチング)により、絶縁膜40を約15nm除去した後、表面改質を行なう。その後、スパッタリング法を使用することにより、例えば、モリブデンン(Mo)やタングステン(W)に代表される高融点金属材料からなる金属膜(導体膜)50を形成する。この金属膜50の膜厚は、例えば、約160nmである。
その後、図14に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、金属膜50を加工して、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bと、伝熱部16と、伝熱部17と、引き出し配線18と、引き出し配線19とを形成する。したがって、例えば、ヒータ13と補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bとは、同じ金属材料から構成されることになる。
次に、図15に示すように、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bと、伝熱部16と、伝熱部17と、引き出し配線18と、引き出し配線19とを覆うように絶縁膜41を形成する。この絶縁膜41は、例えば、第4絶縁膜と、第4絶縁膜上に形成された第5絶縁膜と、第5絶縁膜上に形成された第6絶縁膜とから構成される。
具体的に、第4絶縁膜を形成した後、例えば、化学機械的研磨法(CMP法)を使用することにより、第4絶縁膜の表面を平坦化する。なお、第4絶縁膜は、CVD法を使用して形成された圧縮応力を有する酸化シリコン膜であり、CMP法による研磨工程後に、再度酸化シリコン膜を追加形成することもできる。
そして、第4絶縁膜上に第5絶縁膜を形成した後、第5絶縁膜上に第6絶縁膜を形成する。ここで、第5絶縁膜は、例えば、プラズマCVD法で形成された引張応力を有する窒化シリコン膜であり、第6絶縁膜は、例えば、CVD法で形成された圧縮応力を有する酸化シリコン膜である。なお、ここまでの工程で形成された絶縁膜40と金属膜50と絶縁膜41の応力を調整するために、適宜熱処理工程を加えることもできる。
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、引き出し配線18と、引き出し配線19と、ヒータ13と接続された引き出し配線と、測温抵抗体14aおよび測温抵抗体14bのそれぞれと接続された引き出し配線とを覆う絶縁膜41に接続孔(図示せず)を形成する。その後、アルゴンガス(Arガス)を使用したスパッタリングによるエッチングにより、絶縁膜41と、接続孔の底面に露出する金属膜50とを約15nm程度除去する。次に、表面改質処理を実施した後、例えば、スパッタリング法を使用することにより、第1金属膜を形成する。この第1金属膜は、例えば、チタン膜(Ti膜)や窒化チタン膜(TiN膜)やチタンタングステン膜(TiW膜)から構成され、その膜厚は、例えば、20nm〜200nm程度である。その後、第1金属膜上に、例えば、アルミニウムを主成分とする第2金属膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によるパターニング工程により、第1金属膜と第2金属膜を加工して、接続端子(パッド電極)を形成する。
なお、接続端子を形成した後、保護絶縁膜を形成して、ワイヤを接続する接続端子のボンディング領域以外を覆うようにしてもよい。この場合、後述する薄膜部12上に形成される保護絶縁膜は、膜応力を計算して除去するか否かを判断する。
次に、図16に示すように、基板11の裏面に絶縁膜42を形成する。この絶縁膜42は、CVD法を使用して形成された酸化シリコン膜や、プラズマCVD法を使用して形成された窒化シリコン膜や、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜から構成することができる。また、基板11の表面に絶縁膜40を形成する際に、基板11の裏面にも絶縁膜40を形成して、この絶縁膜40を絶縁膜42として使用することもできる。このように、基板11の裏面に、シリコンとエッチング選択比が取れる材料から構成される絶縁膜42を形成する。
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、基板11の裏面に形成されている絶縁膜42をパターニングする。絶縁膜42のパターニングは、平面視において後述する薄膜部と重なる基板11の領域を露出するように行なわれる。
その後、図17に示すように、パターニングした絶縁膜42をマスクとして、基板11をエッチングすることにより、基板11の部分が除去された薄膜部12を形成する。
ここで、基板11の裏面からのエッチングは、KOH(水酸化カリウム)溶液やTMAH(テトラメチルアミド)溶液によるウェットエッチングや、フッ素系ガスを主成分とするエッチングガスを使用したドライエッチングによって行なわれる。なお、本実施の形態では、パターニングされた絶縁膜42からなるハードマスクを使用して、シリコンからなる基板11をエッチングする例について説明したが、例えば、ドライエッチングによって基板11をエッチングする場合、パターニングされた絶縁膜42からなるハードマスクを使用するのではなく、ドライエッチングに対して耐性を有するレジスト膜を使用することも可能である。
以上のようにして、本実施の形態における流量センサの一部を構成する半導体チップを製造することができる。
<変形例2>
実施の形態における半導体チップの変形例2について説明する。
図18は、本変形例2における半導体チップの構成例を示す図である。図18に示す本変形例2における半導体チップ10では、伝熱部16が補助ヒータ(15a)(図18では、伝熱部16に隠れて見えない)よりも上層に形成され、かつ、伝熱部17も補助ヒータ(15b)(図18では、伝熱部17に隠れて見えない)よりも上層に形成されている。したがって、本変形例2では、平面視において補助ヒータ(15a)と伝熱部16とは、重なる部分を含むように配置され、かつ、平面視において補助ヒータ(15b)と伝熱部17とは、重なる部分を含むように配置されていることになる。
図18に示すように、半導体チップ10は、基板11が形成されている厚板部と、この厚板部よりも厚さの薄い薄膜部12を有している。薄膜部12には、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ(15a)と、補助ヒータ(15b)とが同一層に形成されている。一方、薄膜部12と厚板部(基板11)との跨るように伝熱部16および伝熱部17が形成されており、これらの伝熱部16および伝熱部17は、ヒータ13などが形成されている層よりも上層に形成されている。
図19は、図18のA−A線での断面図である。図19に示すように、本変形例2における半導体チップ10は、基板11上に絶縁膜40が形成されており、基板11の一部領域が除去されて薄膜部12が形成されている。絶縁膜40上には、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bと、引き出し配線18と、引き出し配線19とが同一層に形成されている。次に、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bと、引き出し配線18と、引き出し配線19とを覆うように絶縁膜43が形成されており、この絶縁膜43上に伝熱部16および伝熱部17が形成されている。ここで、図19に示すように、伝熱部16は、絶縁膜43に設けられた接続プラグによって、補助ヒータ15aと接続され、伝熱部17は、絶縁膜43に設けられた接続プラグによって、補助ヒータ15bと接続されている。続いて、伝熱部16および伝熱部17を覆うように、絶縁膜43上に絶縁膜44が形成されている。
このように構成されている半導体チップ10の製造工程は、図11から図14まで、実施の形態における半導体チップ10とほぼ同様の工程となっている。ただし、実施の形態とは異なり、絶縁膜40上には、伝熱部16および伝熱部17は形成しない。次に、ヒータ13と、測温抵抗体14aと、測温抵抗体14bと、補助ヒータ15aと、補助ヒータ15bと、引き出し配線18と、引き出し配線19とを覆うように絶縁膜43を形成する。そして、絶縁膜43に接続孔を形成した後、絶縁膜43上に金属膜を形成する。この金属膜は、例えば、モリブデン(Mo)やタングステン(W)に代表される高融点金属膜から構成され、その膜厚は、例えば、約160nmである。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、金属膜をパターニングして、伝熱部16および伝熱部17を形成する。次に、伝熱部16および伝熱部17を覆うように、絶縁膜44を形成する。その後、図15〜図17に示す工程を経ることにより、本変形例2における半導体チップ10を製造することができる。
本変形例2によれば、例えば、図19に示すように、伝熱部16が補助ヒータ15aと平面視において重なる部分を有している結果、補助ヒータ15aから伝熱部16への伝熱効率が向上する。つまり、補助ヒータ15aから伝熱部16への熱伝導効果および熱輻射効果を高めることができる。この結果、伝熱部16から絶縁膜44の表面への伝熱特性(熱伝導効果および熱輻射効果)も向上することから、薄膜部12と厚板部(基板11)との境界近傍領域における絶縁膜44の表面上の温度勾配を緩和することができる。
さらに、本変形例2では、伝熱部16の下層に絶縁膜40だけでなく、絶縁膜43も形成されていることになるため、伝熱部16から基板11側に熱が伝わる際の断熱効果を高めることができる。これにより、本変形例2では、伝熱部16から基板11側への放熱(熱逃げ)が抑制される結果、流量センサの流量特性への悪影響を抑制できる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。