以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る手動搾乳器を説明する。なお、図4では、説明の便宜上、ハンドル5を省略している。図1〜図4に表した手動搾乳器(説明の便宜上、以下の説明では単に「搾乳器」と称する)2は、乳児に直接母乳を与えることが困難な場合、乳頭が傷ついている場合、乳腺炎を予防する場合などに用いられ、使用者が手動で操作をして搾乳できる器具である。使用者は、搾乳器2を自ら手で持って使用する。そのため、搾乳器2は、軽量であって、かつ、片手での操作を可能とし、疲労を軽減できるものが好ましい。
搾乳器2は、本体3と、フード4と、ハンドル5と、ボトル6と、を備える。フード4は、乳房の形状に対応するラッパ状または略ドーム状に形成され、乳房にあてがわれる。フード4のうちで最も径の小さい縮径部41は、本体3のケーシング(本体ケーシング)31の上部に設けられた装着部311に接続される。本実施形態のケーシング31は、本発明の「本体ケーシング」に相当する。使用者がフード4に囲まれた空間S1に乳房を挿入すると、空間S1は、使用者の乳首を密封するように収容する収容空間S2を有するようになる。収容空間S2の内部が負圧に設定されることで、搾乳可能な構造が形成される。
本体3は、ケーシング31と、ベース部32と、保持部材33と、ダイヤフラム34と、結合部35と、逆流防止弁36と、を有する。ケーシング31は、比較的軽く、かつ、硬質な合成樹脂材料により成形されている。ケーシング31の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン等が挙げられる。フード4が装着される装着部311は、気体や搾乳された母乳などが通過する第1通路312を有する。図2に表したように、第1通路312は、ケーシング31内の略中央部に形成された内部空間S3と、保持部材33の貫通孔335(図5および図6(b)参照)と、ベース部32の内部に形成された第2通路321と、を介して、連通部S4と空間的に繋がっている。内部空間S3には、搾乳された母乳が一時的に貯留される。
ベース部32は、保持部材33を介してケーシング31に保持され、内部空間S3と空間的に接続された連通部S4を有する。保持部材33は、ケーシング31およびベース部32のいずれかに設けられ、ケーシング31とベース部32との間に挟設された壁部332(図5参照)を有する。本実施形態の壁部332は、本発明の「壁部」に相当する。図2に表した例では、保持部材33は、ベース部32に設けられている。但し、保持部材33は、ケーシング31に設けられていてもよい。保持部材33がケーシング31に設けられた例については、後述する。保持部材33は、ケーシング31に対してベース部32を保持するとともに、ケーシング31とベース部32との間の隙間を気体や母乳が流れることを防止する。すなわち、保持部材33は、ケーシング31に対してベース部32を保持する保持機能と、ケーシング31とベース部32との間の隙間を気体や母乳が流れることを防止する密閉機能と、を有する。保持部材33は、例えば合成樹脂等の弾性体により一体成形されており、全体として可撓性を有する。保持部材33の材料としては、例えば、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等などが挙げられる。保持部材33の詳細については、後述する。
ベース部32の上部には、ダイヤフラム34が設けられている。ダイヤフラム34は、例えば合成樹脂等の弾性体により一体成形されており、全体として可撓性を有する。ダイヤフラム34は、伸ばされることでベース部32の上部に引っ掛けられ接続されている。具体的には、ダイヤフラム34の下端部344がベース部32の上部に設けられた溝部322に引っ掛けられることにより、ダイヤフラム34は、ベース部32に取り付けられている。
ベース部32は、装着部311とは反対側の位置に設けられたアーム323を有する。図2および図4に表したように、アーム323は、ケーシング31の上部に設けられた切り欠き部318とダイヤフラム34との間を通り、ダイヤフラム34がベース部32に接続される位置よりも上側の位置まで延びている。好ましくは、アーム323は、ダイヤフラム34に隣接した位置で、ケーシング31の切り欠き部318と、ダイヤフラム34と、の間を通り、ダイヤフラム34の上端よりも上側の位置まで延びている。
アーム323の上端部には、ハンドル5を回動自在に支持する支軸部324が形成されている。支軸部324は、ハンドル5の幅方向Xに沿ってアーム323から延び、両端部324a、324bにおいてハンドル5の内側に設けられた一対の軸受部51に着脱可能に接続されている。これにより、図1に表した矢印A11および図2に表した矢印A12のように、ハンドル5は、ベース部32の支軸部324を中心として支軸部324の回り(図2に表したY方向)に回動することができる。すなわち、ケーシング31は、使用者が片手で握ることができる大きさを有する。図2に表したように、ケーシング31は、親指TBが容易に密着できる湾曲状の窪み部317を、フード4側の外周側面に有する。使用者は、親指TBを窪み部317に置いた状態で、親指以外の任意の指FGをハンドル5のレバー部52に当て、ケーシング31とレバー部52とを同時に片手で把持することができる。そして、使用者は、ケーシング31とレバー部52とを把持した手を握ったり緩めたりすることで、支軸部324を中心にハンドル5の回動操作を行うことができる。なお、ハンドル5の軸支構造は、これだけには限定されない。例えば、ハンドル5の軸受部51は、円形状の貫通孔であってもよい。この場合には、アーム323の支軸部324は、貫通孔としての軸受部51に通される。
ベース部32とダイヤフラム34との間に形成された連通部S4は、負圧が付与される領域(空間)である。ダイヤフラム34が変化することによりベース部32とダイヤフラム34との間に形成された連通部S4が負圧状態になると、フード4により囲まれた空間S1は、ベース部32の第2通路321と、保持部材33の貫通孔335と、ケーシング31の内部空間S3と、第1通路312と、を介して負圧状態になる。
ケーシング31の内部空間S3の下側は、開口部313を通してボトル6に向かって開口している。図2に表したように、逆流防止弁36は、開口部313が形成された部分において、ケーシング31に対して着脱自在に取り付けられている。逆流防止弁36は、ケーシング31の内部に形成された開口部313を開閉し、開口部313を通過する母乳の逆流を防止する。逆流防止弁36は、例えば合成樹脂等の弾性体により一体成形されており、全体として可撓性を有する。逆流防止弁36の材料としては、例えば、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等などが挙げられる。
逆流防止弁36は、自身の弾性によりケーシング31に向かって予め付勢されており、通常状態で開口部313を密閉する(ノーマリークローズ)。すなわち、逆流防止弁36は、ケーシング31に取り付けられた状態において、自身の弾性によりケーシング31に向かって押し付けられている。つまり、逆流防止弁36の弾性により、ケーシング31に向かう方向のバイアスが逆流防止弁36にかかっている。
連通部S4が負圧状態になると、ケーシング31の内部空間S3は、ベース部32の第2通路321と、保持部材33の貫通孔335と、を介して負圧状態になる。そうすると、逆流防止弁36の弁部361は、ケーシング31の開口部313を通して内部空間(吸引空間)S3に吸い込まれる。ここで、弁部361は、円形の底部を有するとともに、弁部361の周囲に接続された基部から開口部313に向かって突出したドーム状を呈する。言い換えれば、弁部361の中心と、弁部361のうちでケーシング31と接触する部分(弁部361の周囲部分)と、の間の距離は、弁部361の全周囲にわたって略同一である。そのため、弁部361が開口部313を密閉した状態において、均一の力が弁部361にかかる。すなわち、弁部361が開口部313を密閉した状態では、弁部361がケーシング31から受ける力は、弁部361とケーシング31との接触部分の全体にわたって均一である。そのため、弁部361とケーシング31との間に隙間が生ずることを抑えることができ、ドーム状の弁部361が開口部313を通して内部空間S3に吸い込まれることで、より高い密閉性を確保することができる。
連通部S4の負圧状態が解除され、開口部313および弁部361の領域(内部空間S3)に搾乳された母乳が所定量まで貯留されると、逆流防止弁36の弁部361は、母乳の重量や負圧の解除(圧力の変化)に基づいて開口部313を開放する。これにより、搾乳された母乳は、開口部313を通りボトル6の内部に導かれる。
ケーシング31は、ボトル6に対して着脱可能に設けられた着脱部314を下端部に有する。着脱部314は、ドーム状あるいは筒状を呈し、逆流防止弁36が開口部313を開放したときに内部空間S3に連通する空間S5を有する。着脱部314の内側には、雌ネジ部315が設けられている。一方で、ボトル6の上端部の外側には、雄ネジ部61が設けられている。着脱部314の雌ネジ部315と、ボトル6の雄ネジ部61と、は互いに螺合可能とされている。なお、ボトル6は、搾乳器2の専用品でもよいし、着脱部314に適合した哺乳瓶等であってもよい。また、ボトル6は、成形された容器ではなく、袋状とされていてもよい。本実施形態の着脱部314の端部は、搾乳器2の専用品としてのボトル6だけではなく、任意の哺乳瓶を着脱可能にするため、任意の哺乳瓶の瓶口に対応した開口部316とされている。
ダイヤフラム34は、負圧を発生させるための負圧発生部材である。本実施形態では、ダイヤフラム34は、ベース部32の上部に接続され、連通部S4を覆っている。図2に表したように、ダイヤフラム34は、複雑に屈曲して、全体として比較的扁平な有底の円筒体に近いシート状を呈する。具体的には、ダイヤフラム34は、外側で起立した第1壁部341と、上端部が一体に内側に折り返された内側壁部としての第2壁部342と、を有する。第1壁部341は、外径を保持する程度の剛性を有する。第2壁部342の厚さは、第1壁部341の厚さよりも薄い。第2壁部342は、変形部として設けられている。第2壁部342の下端には、底面部343が接続されている。底面部343は、比較的広い内側底部として第2壁部342と一体的に形成され、円筒形状の下部を塞ぐように第2壁部342から中心に向かって延びている。すなわち、第1壁部341および第2壁部342は、互いに同じ材料で形成されている。そして、第1壁部341および第2壁部342において、材料の厚みを互いに異ならせることにより、互いに異なる剛性が付与されている。このため、ハンドル5の操作による外力がダイヤフラム34に作用した場合おいて、第2壁部342は、第1壁部341が変形しないレベルの外力が作用したときであっても変形することができる。
ダイヤフラム34は、比較的弾性に富んだ柔軟な変形材料、すなわち、JIS−K6253(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度がHS30〜70程度の合成樹脂により形成されている。ダイヤフラム34の材料としては、例えば、シリコーンゴムやイソプレンゴム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)等のエラストマー等が挙げられる。本実施形態では、ダイヤフラム34の材料としてシリコーンゴムが利用される。好ましくは、第1壁部341の部分の材料の厚さは、例えば約1.5mm以上、3.0mm以下程度である。具体的には、ダイヤフラム34の第1壁部341は、下方に延びており、下端において内側に曲折した下端部344を有する。下端部344の厚さは、第1壁部341の部分と同様に、例えば約1.5mm以上、3.0mm以下程度である。
ダイヤフラム34がハンドル5の操作の作用を受けると、変形部としての第2壁部342が変形する。そうすると、底面部343とベース部32との間に形成された連通部S4の空間の容積が変化する。これにより、ダイヤフラム34は、連通部S4に対して一定量の負圧を付与する。つまり、ダイヤフラム34の変形により、連通部S4が負圧状態になる。連通部S4が負圧状態になると、第2通路321、貫通孔335および内部空間S3を介して、第1通路312内の空気が吸引され、母乳が吸引(搾乳)される。この際、第1壁部341は殆ど変形せず、ベース部32に対する接続状態が保持される。本実施形態のダイヤフラム34は、起立した第1壁部341を有する。そのため、ベース部32の高さがあまり高くなくとも、ダイヤフラム34は、ベース部32よりも上方で十分に変形して、連通部S4において所要の負圧を発生させることができる。
結合部35は、ダイヤフラム34に設けられ、ハンドル5と連結し、ダイヤフラム34の第2壁部342を変形させる。結合部35は、変形部としての第2壁部342の材料よりも硬い硬質材料で形成されている。結合部35の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等の合成樹脂が挙げられる。結合部35は、平たい円盤状の基部351を有する。基部351は、底面部343の下側(連通部S4側)に配置されている。
また、結合部35は、基部351から上方に突出して軸状に延びた連結部352を有する。連結部352は、ハンドル5と連結している。具体的には、連結部352は、ダイヤフラム34の底面部343の中央部に形成された通し孔(基部351よりも小径な孔)に挿通されて、底面部343の上側に露出することで、ハンドル5に連結可能とされている。連結部352に連結されたハンドル5を使用者が引き上げると、基部351がダイヤフラム34の底面部343を押し上げる。そうすると、ダイヤフラム34の第2壁部342が連通部S4の空間を大きく変形させる。なお、本実施形態の基部351は、ダイヤフラム34の底面部343の下側において、底面部343には接続せずに配置されている。但し、基部351の設置形態は、これだけには限定されない。例えば、基部351は、底面部343の上側に固定されていてもよい。
図4に表したように、連結部352は、連結部352の延伸方向Zにおいて互いに並んで配置された第1突出部353および第2突出部354を有する。第1突出部353および第2突出部354のそれぞれは、連結部352の軸部から径外方向に突出している。第1突出部353と第2突出部354との間には、第1係合部355が設けられている。第1係合部355は、第1突出部353と第2突出部354との間において窪んだ部分(溝部分)である。また、第2突出部354と基部351との間には、第2係合部356が設けられている。第2係合部355は、第2突出部354と基部351との間において窪んだ部分(溝部分)である。
ハンドル5は、第1係合部355または第2係合部356と係合することにより連結部352と連結している。これにより、ハンドル5と連結部352との延伸方向Zにおける連結位置は、変更可能とされている。そのため、ハンドル5が連結部352を引き上げる距離は、変更可能とされている。これにより、ダイヤフラム34の変形量を変更することができる。すなわち、図4に表したように、第1係合部355および第2係合部356は、延伸方向Zにおいて互いに離れて段階的に形成されている。そのため、ハンドル5と係合部355、356との係合位置に応じて、ハンドル5が連結部352を引き上げる距離は、段階的に変更可能とされている。
ハンドル5が第1係合部355と係合すると、ハンドル5が連結部352を引き上げる距離は、ハンドル5が第2係合部356と係合する場合と比較して短い。そうすると、連通部S4の空間の容積変化は、相対的に小さい。これにより、ハンドル5およびダイヤフラム34は、相対的に低い負圧を連通部S4に発生させ、相対的に短い時間で元の状態に復帰する(準備モード)。一方で、ハンドル5が第2係合部356と係合すると、ハンドル5が連結部352を引き上げる距離は、ハンドル5が第1係合部355と係合する場合と比較して長い。そうすると、連通部S4の空間の容積変化は、相対的に大きい。これにより、ハンドル5およびダイヤフラム34は、相対的に高い負圧を連通部S4に発生させ、相対的に長い時間をかけて元の状態に復帰する(搾乳モード)。
ハンドル5は、長尺の形状を有し、全体として、比較的硬質であって軽量な合成樹脂により成形されている。ハンドル5の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等が挙げられる。ハンドル5は、ダイヤフラム34の上方に配置されて、ダイヤフラム34を持ち上げるリフト部53と、リフト部53から曲折して本体3の側面に位置するレバー部52と、を有する。
図3に表したように、リフト部53には、連結部352と連結される被連結部54が設けられている。被連結部54は、連結部352の連結位置を保持するための保持開口部541と、連結部352を挿入するための挿入開口部542と、を有する。保持開口部541と挿入開口部542とは、互いに空間的に接続されている。保持開口部541の内径は、第1係合部355および第2係合部356のそれぞれの外径よりも僅かに大きい一方で、第1突出部353および第2突出部354のそれぞれの外径よりも小さい。これに対して、挿入開口部542の内径は、第1突出部353および第2突出部354のそれぞれの外径よりも大きい。これにより、使用者は、連結部352を挿入開口部542に挿入した後、連結部352を保持開口部541に向かってスライドさせて第1係合部355または第2係合部356を保持開口部541に入れることにより、ハンドル5と連結部352とを互いに位置決めすることができる。
レバー部52は、レバー状に形成され、取手の役割を果たす。レバー部52の外側の領域は、使用者が親指以外の指FGを置く領域に相当する。つまり、レバー部52の外側表面は、使用者が親指以外の指FGを当てる表面に相当する。使用者が指FGを当てるレバー部52の外側表面と、使用者が親指TBを置く窪み部317と、の距離は、レバー部52の外側表面と窪み部317との間にケーシング31を挟んで使用者が把持できる程度の距離である。使用者がケーシング31を挟んで把持した手を握ることで、レバー部52は、ケーシング31に向かって押されてケーシング31に接近する。そうすると、ハンドル5が支軸部324を中心に回動する。そうすると、ハンドル5のリフト部53は、結合部35を介してダイヤフラム34を上に持ち上げる。そうすると、連通部S4の空間の容積が拡大して負圧状態となる。これにより、フード4により囲まれた空間S1および収容空間S2は、ベース部32の第2通路321と、保持部材33の貫通孔335と、ケーシング31の内部空間S3と、第1通路312と、を介して負圧状態になる。このようにして、母乳の搾乳が行われる。
レバー部52は、指FGを置く領域から下側に向かうに従って、除々に外側に向かうように湾曲している。これにより、ハンドル5の下端部55は、やや外側に跳ねるような外観を呈する。そのため、使用者がレバー部52をケーシング31に接近させた場合において、指FGハンドル5の下側にずれることを抑えることができる。
ここで、例えば、ケーシングに対するハンドルの配置が固定されていると、ハンドルは、ケーシングに対する配置が固定された状態でケーシングに対して近づいたり離れたりする往復運動を行う。そのため、この場合には、使用者が搾乳器を用いて母乳を搾乳するときにフードを乳房にあてがうと、ハンドルの配置は必然的に決定される。そうすると、使用者は、ハンドルを操作する手の関節を中間位に置くことができないことがある。そのため、ハンドルの反復操作に基づいて筋負担が引き起こされるという点においては改善の余地がある。
これに対して、本実施形態に係る搾乳器2によれば、図4に表したように、ケーシング31は、切り欠き部318を有する。切り欠き部318は、ダイヤフラム34が接続されたケーシング31の端部(図4では上端部)に設けられ、ケーシング31の端部の形状に沿って延びている。そして、ベース部32のアーム323は、切り欠き部318とダイヤフラム34との間を通り、ケーシング31の外側に向かって延びている。一方で、図2に表したように、ベース部32は、下端部に取り付けられた保持部材33を介してケーシング31に保持されている。つまり、ベース部32は、ケーシング31とは別の部材として設けられ、ケーシング31に固定されているわけではない。そのため、図4に表した矢印A15のように、ベース部32は、ベース部32の軸325を中心としてケーシング31に対して回転することができる。前述したように、ハンドル5は、ベース部32のアーム323の上端部に設けられた支軸部324に接続されている。そのため、図3(a)に表した矢印A13および矢印A14のように、ハンドル5は、ベース部32とともにベース部32の軸325を中心としてケーシング31に対して回転することができる。すなわち、ベース部32は、ハンドル5に接続され、ハンドル5がベース部32の軸325を中心としてケーシング31に対して回転するとハンドル5とともに保持部材33を介してケーシング31に対して回転する。そのため、使用者は、フード4を乳房にあてがったときに、ケーシング31に対するハンドル5の位置(角度)を自由に調整し、ハンドル5を操作する手の関節を中間位に置くことができる。これにより、ハンドル5の反復操作に基づく筋負担を軽減することができる。
また、ベース部32は、ケーシング31とは別の部材として設けられ、保持部材33によりケーシング31に保持されつつケーシング31に対して回転することができる。そのため、ハンドル5を回転させる複雑な回転機構や、負圧が付与される空間の周囲を囲むように十分な高さのある壁部を有する円筒状又はカップ状の部材は、不要である。そのため、母乳が接触する部位などの搾乳器2の内部の構造を簡易化することできる。これにより、使用者は、ケーシング31とベース部32とを互いに分解することで、母乳が接触する部位を容易に洗浄することができる。
図4に表したように、ケーシング31は、規制部319を有する。規制部319は、ベース部32の軸325を中心としたベース部32の回転の範囲を規制する。具体的には、規制部319は、切り欠き部318の一方の端部に形成された第1ストッパ部319aと、切り欠き部318の端部の端部に形成された第2ストッパ部319bと、を有する。第1ストッパ部319aおよび第2ストッパ部319bは、切り欠き部318の両端部に形成された壁部に相当する。ベース部32が回転し、アーム323が第1ストッパ部319aおよび第2ストッパ部319bのいずれかに当たると、ベース部32の回転は停止する。図3(b)に表した例では、ベース部32に接続されたハンドル5が、図3(a)に表した状態から−45°回転した位置で停止している。また、図3(c)に表した例では、ベース部32に接続されたハンドル5が、図3(a)に表した状態から45°回転した位置で停止している。このように、ベース部32とともに回転するハンドル5の回転の範囲は、ケーシング31の規制部319により規制される。すなわち、ハンドル5の回転の範囲は、所定の範囲に制限されている。これにより、ハンドル5の回転の範囲が明確になり、使用者は、ハンドル5の回転範囲を把握した上で安心してハンドル5を任意の位置に調整することができる。
次に、図5〜図7を参照して、ベース部32が保持部材33を介してケーシング31に保持された状態を詳細に説明する。図5に表したように、保持部材33は、ベース部32に設けられ、ケーシング31とベース部32との間に挟設された壁部332を有する。また、保持部材33は、壁部332に接続され内側に向かって延びた底部334を有する。図6(a)および図6(b)に表したように、保持部材33は、カップ状あるいは筒状に形成されている。また、保持部材33は、ケーシング31に対するベース部32の保持を支える保持構造333を有する。すなわち、保持構造333は、ケーシング31に対するベース部32の保持をサポートしている。保持構造333は、壁部332の外側の表面から外側に向かって突出している。保持部材33の壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態では、保持構造333は、壁部332の外側の表面からケーシング31に向かって突出している。
本実施形態の保持部材33の保持構造333は、第1突起部333aと、第2突起部333bと、第3突起部333cと、を有する。第1突起部333aは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の周方向に延びている。つまり、第1突起部333aは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の外側の表面に沿ってリング状に設けられている。第2突起部333bは、保持部材33の軸338の方向において第1突起部333aとは離れた位置に設けられている。第2突起部333bは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の周方向に延びている。つまり、第2突起部333bは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の外側の表面に沿ってリング状に設けられている。第3突起部333cは、第1突起部333aと第2突起部333bとの間に設けられている。第3突起部333cは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の周方向に延びている。つまり、第3突起部333cは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の外側の表面に沿ってリング状に設けられている。
このように、第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cのそれぞれは、壁部332の外側の表面から外側に向かって突出し、壁部332の外側の表面に沿ってリング状に設けられている。そのため、ベース部32が保持部材33を介してケーシング31に保持された状態(壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態)において、保持部材33がベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338に沿ってケーシング31から外れることを抑えることができる。
これにより、例えば、ハンドル5の操作に基づく力が、ハンドル5に接続されたベース部32に対して斜め方向に加わった場合であっても、ベース部32がケーシング31から外れることを抑えることができる。また、第1突起部333aおよび第2突起部333cは、保持部材33の軸338の方向において互いに離れて設けられている。そのため、第1突起部333aおよび第2突起部333cは、互いに離れた位置においてベース部32から保持部材33に加わる力を受け、ケーシング31に対するベース部32の保持をサポートすることができる。これにより、例えば、ハンドル5の操作に基づく力が、ハンドル5に接続されたベース部32に対して斜め方向に加わった場合であっても、ベース部32がケーシング31から外れることをより確実に抑えることができる。さらに、第3突起部333cが、第1突起部333aと第2突起部333bとの間に設けられている。そのため、ハンドル5の操作に基づく力が、ハンドル5に接続されたベース部32に対して斜め方向に加わった場合であっても、第1突起部333aと第2突起部333bとの間に設けられた第3突起部333cがケーシング31とベース部32との間において密閉性を確保することができる。
すなわち、第3突起部333cは、ケーシング31に対してベース部32を保持する保持機能と、ケーシング31とベース部32との間の隙間を流体が流れることを防止する密閉機能と、を有する。図5に表したように、本実施形態の第1突起部333aは、全周にわたってケーシング31に接触している。そのため、第1突起部333aは、第3突起部333cと同様に、ケーシング31に対してベース部32を保持する保持機能と、ケーシング31とベース部32との間の隙間を流体が流れることを防止する密閉機能と、を有する。一方で、本実施形態の第2突起部333bは、一部においてケーシング31に接触していない部分を有する。そのため、第2突起部333bは、ケーシング31に対してベース部32を保持する保持機能を有する。
第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cのそれぞれが壁部332の外側の表面に沿ってリング状に設けられているため、保持部材33がベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338を中心として回転するときにケーシング31から受ける抵抗力は、保持部材33がベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338に沿って移動するときにケーシング31から受ける抵抗力よりも小さい。そのため、ベース部32が保持部材33を介してケーシング31に保持された状態(壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態)において、保持部材33は、ケーシング31から外れることを抑えられつつ、ベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338を中心として回転することができる。これにより、保持部材33が設けられたベース部32は、ケーシング31に保持された状態で、ハンドル5がベース部32の軸325を中心としてケーシング31に対して回転するとハンドル5とともに保持部材33を介してケーシング31に対して回転することができる。
なお、第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cのそれぞれは、壁部332と一体的に形成されている。そのため、保持部材33がベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338に沿う力を受けたり、ベース部32の軸325あるいは保持部材33の軸338を中心として回転したりする場合であっても、第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cは、保持部材の別部材として設けられたOリングなどとは異なり、壁部332からは外れない。そのため、第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cの紛失を抑えることができる。
図5、図7(a)および図7(b)に表したように、ベース部32は、第1支持部326aと、第2支持部326bと、第3支持部326cと、を有する。ベース部32が保持部材33を介してケーシング31に保持された状態において、第1支持部326aは、第1突起部333aに対応する位置であって第1突起部333aが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第1突起部333aに向かって突出している。そのため、第1支持部326aは、壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態において、第1突起部333aを裏側(第1突起部333aが突出した側とは反対側)から支持することができる。第2支持部326bは、第2突起部333bに対応する位置であって第2突起部333bが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第2突起部333bに向かって突出している。そのため、第2支持部326bは、壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態において、第2突起部333bを裏側(第2突起部333bが突出した側とは反対側)から支持することができる。第3支持部326cは、第3突起部333cに対応する位置であって第3突起部333cが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第3突起部333cに向かって突出している。そのため、第3支持部326cは、壁部332がケーシング31とベース部32との間に挟設された状態において、第3突起部333cを裏側(第3突起部333cが突出した側とは反対側)から支持することができる。これにより、ケーシング31に対するベース部32の保持力を高めることができるとともに、ケーシング31とベース部32との間における密閉性を高めることができる。
第1支持部326aが突出した長さ(第1支持部326aの突出長さ)D1は、第2支持部326bが突出した長さ(第2支持部326bの突出長さ)D2よりも長い。第2支持部326bが突出した長さD2は、第3支持部326cが突出した長さ(第3支持部326cの突出長さ)D3よりも短い。このように、第1支持部326aの突出長さD1と、第2支持部326bの突出長さD2と、第3支持部326cの突出長さD3と、は互いに異なる。そのため、ケーシング31に対するベース部32の保持力を適宜調整し、保持力が過度に高くなることを抑えることができる。これにより、ケーシング31に対するベース部32の保持力を維持しつつ、ケーシング31とベース部32との互いの分解性を高めることができる。
図5および図6(b)に表したように、保持部材33は、フック部336を有する。フック部336は、壁部332の内側に設けられ、壁部332の内側の表面から外側に向かって後退した溝部として形成されている。そのため、図5に表したように、第1支持部326aと、第2支持部326bと、第3支持部326cと、の少なくともいずれかがフック部336に引っ掛かる。そのため、比較的強い力が保持部材33に加わった場合であっても、保持部材33がベース部32から外れることを抑えることができる。
また、保持部材33は、逆流防止壁337を有する。逆流防止壁337は、保持部材33の底部334に設けられた貫通孔335の周りを囲み、底部334から外側に向かって延びている。貫通孔335は、内部空間S3と連通部S4とを空間的に接続している。そこで、逆流防止壁337は、搾乳された母乳が保持部材33の壁部332や底部334を伝って貫通孔335から連通部S4に向かって吸引されることを抑えることができる。つまり、逆流防止壁337は、搾乳された母乳が貫通孔335を通って連通部S4に向かって流れる(逆流する)ことを抑えることができる。
ハンドル5およびダイヤフラム34が元の状態に復帰し、連通部S4の負圧状態が解除される際に、ハンドル5が復帰する速度(ハンドル5の移動速度)は、例えば保持部材33の貫通孔335の径などに応じて変化する。そのため、保持部材33の貫通孔335の径を調整することにより、ハンドル5が元の状態に復帰するときのハンドル5の移動速度を調整することができる。これにより、ハンドル5の操作感を向上させたり、搾乳器2に対して高級感を与えたりすることができる。
次に、図8を参照して、本実施形態の第1変形例に係る搾乳器を説明する。なお、第1変形例に係る搾乳器2Aの構成要素が、図1〜図7に関して前述した搾乳器2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第1変形例に係る搾乳器2Aでは、保持部材33Aは、ベース部32Aではなくケーシング31Aに設けられている。この点において、第1変形例に係る搾乳器2Aは、図1〜図7に関して前述した搾乳器2とは相違する。
本変形例の保持構造333は、保持部材33Aの壁部332の内側の表面から内側に向かって突出している。保持部材33Aの壁部332がケーシング31Aとベース部32Aとの間に挟設された状態では、保持構造333は、壁部332の内側の表面からベース部32Aに向かって突出している。第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cのそれぞれは、壁部332と一体的に形成され、壁部332の内側の表面に沿ってリング状に設けられている。そのため、ベース部32Aが保持部材33Aを介してケーシング31Aに保持された状態(壁部332がケーシング31Aとベース部32Aとの間に挟設された状態)において、ベース部32Aがベース部32Aの軸325あるいは保持部材33Aの軸338に沿って保持部材33Aから外れることを抑えることができる。これにより、例えば、ハンドル5の操作に基づく力が、ハンドル5に接続されたベース部32Aに対して斜め方向に加わった場合であっても、ベース部32Aがケーシング31Aから外れることを抑えることができる。
ケーシング31Aは、第1支持部371aと、第2支持部371bと、第3支持部371cと、を有する。ベース部32Aが保持部材33Aを介してケーシング31Aに保持された状態において、第1支持部371aは、第1突起部333aに対応する位置であって第1突起部333aが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第1突起部333aに向かって突出している。そのため、第1支持部371aは、壁部332がケーシング31Aとベース部32Aとの間に挟設された状態において、第1突起部333aを裏側から支持することができる。第2支持部371bは、第2突起部333bに対応する位置であって第2突起部333bが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第2突起部333bに向かって突出している。そのため、第2支持部371bは、壁部332がケーシング31Aとベース部32Aとの間に挟設された状態において、第2突起部333bを裏側から支持することができる。第3支持部371cは、第3突起部333cに対応する位置であって第3突起部333cが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第3突起部333cに向かって突出している。そのため、第3支持部371cは、壁部332がケーシング31Aとベース部32Aとの間に挟設された状態において、第3突起部333cを裏側から支持することができる。これにより、ケーシング31Aに対するベース部32Aの保持力を高めることができるとともに、ケーシング31Aとベース部32Aとの間における密閉性を高めることができる。
第1支持部371aが突出した長さ(第1支持部371aの突出長さ)D4は、第2支持部371bが突出した長さ(第2支持部371bの突出長さ)D5よりも長い。第2支持部371bが突出した長さD5は、第3支持部371cが突出した長さ(第3支持部371cの突出長さ)D6よりも短い。このように、第1支持部371aの突出長さD4と、第2支持部371bの突出長さD5と、第3支持部371cの突出長さD6と、は互いに異なる。そのため、ケーシング31Aに対するベース部32Aの保持力を適宜調整し、保持力が過度に高くなることを抑えることができる。これにより、ケーシング31Aに対するベース部32Aの保持力を維持しつつ、ケーシング31Aとベース部32Aとの互いの分解性を高めることができる。
図8に表したように、保持部材33Aは、フック部336Aを有する。フック部336Aは、壁部332の外側に設けられ、壁部332の外側の表面から突出した突起部として形成されている。そのため、図8に表したように、フック部336Aが、第1支持部371aと、第2支持部371bと、第3支持部371cと、の少なくともいずれかに引っ掛かる。そのため、比較的強い力が保持部材33Aに加わった場合であっても、保持部材33Aがケーシング31Aから外れることを抑えることができる。
次に、図9を参照して、本実施形態の第2変形例に係る搾乳器を説明する。なお、第2変形例に係る搾乳器2Bの構成要素が、図1〜図7に関して前述した搾乳器2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第2変形例に係る搾乳器2Bでは、保持部材33Bは、ベース部32Bではなくケーシング31Bに設けられている。この点において、第2変形例に係る搾乳器2Bは、図1〜図7に関して前述した搾乳器2とは相違する。また、本変形例のベース部32Bは、保持部材33Bの内側ではなく外側において保持部材33Bと接触し、保持部材33Bを介してケーシング31Bに保持されている。この点において、第2変形例に係る搾乳器2Bは、第1変形例に係る搾乳器2Aとは相違する。
本変形例の保持構造333は、保持部材33Bの壁部332の外側の表面から外側に向かって突出している。本変形例の保持構造333は、図5〜図6(b)に関して前述した保持部材33の保持構造333と同様である。図9に表したように、第1突起部333a、第2突起部333bおよび第3突起部333cのそれぞれは、ベース部32Bの内側の表面に接触している。そのため、ベース部32Bが保持部材33Bを介してケーシング31Bに保持された状態(壁部332がケーシング31Bとベース部32Bとの間に挟設された状態)において、ベース部32Bがベース部32Bの軸325あるいは保持部材33Bの軸338に沿って保持部材33Bから外れることを抑えることができる。これにより、例えば、ハンドル5の操作に基づく力が、ハンドル5に接続されたベース部32Bに対して斜め方向に加わった場合であっても、ベース部32Bがケーシング31Bから外れることを抑えることができる。
ケーシング31Bは、第1支持部372aと、第2支持372bと、第3支持部372cと、を有する。ベース部32Bが保持部材33Bを介してケーシング31Bに保持された状態において、第1支持部372aは、第1突起部333aに対応する位置であって第1突起部333aが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第1突起部333aに向かって突出している。そのため、第1支持部372aは、壁部332がケーシング31Bとベース部32Bとの間に挟設された状態において、第1突起部333aを裏側から支持することができる。第2支持部372bは、第2突起部333bに対応する位置であって第2突起部333bが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第2突起部333bに向かって突出している。そのため、第2支持部372bは、壁部332がケーシング31Bとベース部32Bとの間に挟設された状態において、第2突起部333bを裏側から支持することができる。第3支持部372cは、第3突起部333cに対応する位置であって第3突起部333cが突出した側とは反対側の位置に設けられ、第3突起部333cに向かって突出している。そのため、第3支持部372cは、壁部332がケーシング31Bとベース部32Bとの間に挟設された状態において、第3突起部333cを裏側から支持することができる。これにより、ケーシング31Bに対するベース部32Bの保持力を高めることができるとともに、ケーシング31Bとベース部32Bとの間における密閉性を高めることができる。
第1支持部372aが突出した長さ(第1支持部372aの突出長さ)D7は、第2支持部372bが突出した長さ(第2支持部372bの突出長さ)D8よりも長い。第2支持部372bが突出した長さD8は、第3支持部372cが突出した長さ(第3支持部372cの突出長さ)D9よりも短い。このように、第1支持部372aの突出長さD7と、第2支持部372bの突出長さD8と、第3支持部372cの突出長さD9と、は互いに異なる。そのため、ケーシング31Bに対するベース部32Bの保持力を適宜調整し、保持力が過度に高くなることを抑えることができる。これにより、ケーシング31Bに対するベース部32Bの保持力を維持しつつ、ケーシング31Bとベース部32Bとの互いの分解性を高めることができる。
図9に表したように、保持部材33Bは、フック部336Bを有する。フック部336Bは、壁部332の内側に設けられ、壁部332の内側の表面から突出した突起部として形成されている。そのため、図9に表したように、フック部336Bが、第1支持部372aと、第2支持372bと、第3支持部372cと、の少なくともいずれかに引っ掛かる。そのため、比較的強い力が保持部材33Bに加わった場合であっても、保持部材33Bがケーシング31Bから外れることを抑えることができる。
次に、図10および図11を参照して、本発明者が実施した検討の結果の一例を説明する。本発明者は、筋活動を定量的に評価する検討を行った。すなわち、筋繊維が運動する際には、筋繊維の活動電位として筋電位が放出される。筋電位の振幅については、筋出力に略比例して変化することが一般的に知られている。そのため、筋電位を測定することにより、筋活動を定量的に評価することができる。
測定機器としては、「BIOPAC Systems製 MP150システム」を使用した。測定機器において設定した「測定時のサンプリングレート」は、1000サンプル/秒である。測定条件としては、搾乳器2のハンドル5を最大量まで握り、その後にハンドル5を放す動作を、1秒間に2回の頻度で繰り返した。このとき、搾乳口(フード4の入口)に栓をすることにより、実際の搾乳時の負荷と同等の負荷を再現した。測定方法(解析方法)としては、10秒間において測定された筋電位の実測値から実効値(RMS値:Root Mean Square value)を求めた。さらに、ハンドル角度が0°であるときの実効値を基準値(100%)として、ハンドル角度が−45°、−30°、−15°、+15°、+30°、+45°であるときのそれぞれの実効値を基準値で除した値(相対値)を求めた。
なお、「ハンドル角度が0°である」とは、図3(a)に表した状態をいう。「ハンドル角度の符号がマイナス(−)である」とは、図3(b)に表した状態をいう。つまり、図3(b)に表したハンドル5のハンドル角度は、「−45°」である。一方で、「ハンドル角度の符号がプラス(+)である」とは、図3(c)に表した状態をいう。つまり、図3(c)に表したハンドル5のハンドル角度は、「+45°」である。
本発明者が実施した検討の結果の例は、図10および図11に表した通りである。すなわち、ハンドル角度と、浅指屈筋の実効値の相対値と、の間の関係の例は、図10に表した通りである。また、ハンドル角度と、総指伸筋の実効値の相対値と、の間の関係の例は、図11に表した通りである。浅指屈筋は、人間の上肢に存在する筋肉のうちの一種であり、主としてハンドル5などを握る動作のときや、手関節を掌屈させる動作のときに機能する。また、総指伸筋とは、人間の上肢に存在する筋肉のうちの一種であり、主としてハンドル5などを放す動作のときや、手関節を背屈させる動作のときに機能する。
図10および図11に表したグラフによれば、ハンドル角度が−15°および−30°である場合には、浅指屈筋および総指伸筋の実効値は、ハンドル角度が0°であるときの実効値(基準値)よりも小さいことが示されている。また、ハンドル角度が−30°である場合には、ハンドル角度が0°である場合と比較して約85〜90%程度の筋活動量で、ハンドル角度が0°である場合の搾乳動作と同等の搾乳動作が可能であることが示されている。これにより、ハンドル5の位置(角度)を適宜調整することで筋負担を軽減できることが示唆されている。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。