JP6964333B2 - 治療器 - Google Patents

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JP6964333B2
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この発明は、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器に関する。
従来より、頭痛、慢性痛、目眩、気分障害、うつ病、喘息、心臓疾患など、その人がもともと持っていた症状が、気象の変化が原因で顕著に表れるという病態の存在が知られている。
そこで、この出願の発明者らは、上記の病態の発症原因に関する研究を行った結果、次のことが分かった。それは、大気圧が低下すると内耳の中にある気圧センサーが過剰反応してしまい、脳の情報伝達に乱れが生じ、その結果、交感神経や副交感神経が活発になり過ぎ、本人がもともと持っている痛みの感覚を呼び起こしてしまったり、目眩や、気持ち悪さや落ち込みなどの心の病を起こすということである。
そして、この出願の発明者らは、前述の症状を改善するための研究を重ねた結果、いくつかの手法を確立し、それらを公開した(非特許文献1)。たとえば、その手法の1つは、医師に目眩の薬を処方してもらい、それをできれば症状が出る前に服用するという手法である。
佐藤純著、「天気痛を治せば頭痛、めまい、ストレスがなくなる!」、2015年11月1日、株式会社扶桑社発行、p.115〜117。
しかし、医師に目眩の薬を処方してもらう手法は、定期的な通院が必要であるため、手間および時間がかかる。また、症状が出る前に薬を服用するためには、一定時間毎にパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して気象情報を入手する必要があるため、やはり手間および時間がかかる。特に、仕事中や外出中に気象情報を入手し、薬を服用するのは困難な場合が多い。さらに、薬の服用は、人によって副作用が出るおそれもある。
そこで、この出願に係る発明は、頭痛、慢性痛、目眩、気分障害、うつ病、喘息、心臓疾患などの大気圧の低下に起因する症状(以下、天気痛と略称する)を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することを目的とする。
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)が存在する場所の気象情報を取得し(S3)、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに(S5)前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する(S7)ように構成されているという技術的手段を用いる。
なお、上記の気象情報とは、大気圧を直接表す情報以外に、曇り、雨、前線の接近、台風の接近など、大気圧の低下に影響する天気予報情報を含む意味である。
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)が存在する場所の現在の大気圧または予測される大気圧を取得し(S72)、その取得した大気圧が設定値以下のときに(S73)前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する(S75)ように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに(S33)、その取得した大気圧の変動量を算出し(S35)、その算出した変動量が設定量以上低下しているときに(S36)前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する(S38)ように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
GPSを利用することにより、この治療器の使用者(H)の位置情報を測定し(S53)、その測定した位置情報が、前記使用者が大気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い位置を示す特定の位置情報である場合に(S55)前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する(S57)ように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明では、
大気圧の低下に起因する症状を改善するための治療器であって、
この治療器の使用者(H)の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明では、
大気圧の低下に起因する症状を改善するための治療器であって、
この治療器の使用者(H)の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明では、請求項1に記載の治療器(1)において、
通信により前記気象情報を取得するとともに、その取得した気象情報を解析し、大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧の低下が予測されると判定したときに(S5)出力命令信号を出力する携帯端末(20)と、
前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材(12,14)と、
を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明では、請求項2に記載の治療器(1)において、
通信により前記現在の大気圧または予測される大気圧を取得し(S72)、その取得した大気圧が設定値以下であると判定したときに(S73)出力命令信号を出力する携帯端末(20)と、
前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明では、請求項3に記載の治療器(1)において、
通信により前記現在の大気圧を前記所定時間毎に取得するとともに(S33)、その取得した大気圧の変動量(ΔP)を算出し(S35)、その算出した変動量が設定量(Pv)以上低下していると判定したときに(S36)出力命令信号を出力する(S38)携帯端末(20)と、
前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明では、請求項4に記載の治療器(1)において、
前記GPSを利用することにより、前記使用者(H)の位置情報を測定し(S53)、その測定した位置情報が前記特定の位置情報であると判定したときに(S55)出力命令信号を出力する(S57)携帯端末(20)と、
前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項11に係る発明)
請求項11に係る発明では、請求項5に記載の治療器において、
前記使用者(H)の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項12に係る発明)
請求項12に係る発明では、請求項6に記載の治療器において、
前記使用者(H)の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した温度差の上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置(17)と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(12)と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材(14)とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えることを特徴とする。
(請求項13に係る発明)
請求項13に係る発明では、請求項7ないし請求項10のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記携帯端末(20)および刺激信号出力装置(17)は、無線通信により接続されているという技術的手段を用いる。
(請求項14に係る発明)
請求項14に係る発明では、請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器(1)において、
両端に前記一対の部材(12,14)の各部材がそれぞれ設けられており、前記使用者(H)の頭部または首に装着可能なバンド(19)を備えており、
前記使用者が前記バンドを頭部または首に装着すると、一方の部材(12)が右の乳様突起またはその近傍に当接し、他方の部材(14)が左の乳様突起またはその近傍に当接するように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項15に係る発明)
請求項15に係る発明では、請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記一対の部材(12,14)の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォン(80)の左右にそれぞれ取付けられており、かつ、前記使用者(H)が前記ヘッドフォンを装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項16に係る発明)
請求項16に係る発明では、請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記一対の部材(12,14)の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォン(90)の左右のうち前記使用者(H)の左右の外耳道に挿入する部分(92,94)にそれぞれ取付けられているという技術的手段を用いる。
(請求項17に係る発明)
請求項17に係る発明では、請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記一対の部材の各部材(12,14)は、眼鏡(70)の左右のツル(71,72)の後部にそれぞれ取付けられており、かつ、前記使用者(H)が前記眼鏡を装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されているという技術的手段を用いる。
(請求項18に係る発明)
請求項18に係る発明では、請求項14に記載の治療器(1)において、前記刺激信号出力装置(17)は、前記バンド(19)に設けられているという技術的手段を用いる。
(請求項19に係る発明)
請求項19に係る発明では、請求項15または請求項16に記載の治療器(1)において、前記刺激信号出力装置(17)は、前記ヘッドフォン(80,90)に設けられているという技術的手段を用いる。
(請求項20に係る発明)
請求項20に係る発明では、請求項17に記載の治療器(1)において、前記刺激信号出力装置(17)は、前記眼鏡(70)の左右のツル(71,72)の少なくとも一方に設けられているという技術的手段を用いる。
(請求項21に係る発明)
請求項21に係る発明では、請求項7ないし請求項20のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記刺激信号の強度を調節する調節装置(17d,17e,17g)を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項22に係る発明)
請求項22に係る発明では、請求項7ないし請求項10および請求項13のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記携帯端末(20)の前記判定の結果を報知する報知装置(21,32,33)を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項23に係る発明)
請求項23に係る発明では、請求項1ないし請求項22のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記使用者(H)が所定の操作を行ったときに前記左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激する操作部(B1)を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項24に係る発明)
請求項24に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置(10,20)と、
前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材(12,14)と、を備えており、
前記電気刺激装置は、
記使用者が所定の操作を行ったときに前記刺激信号を出力するように構成されており、
さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧(P)または予測される大気圧を取得する第1の処理(S112)と、
前記第1の処理において取得した大気圧が設定値(Pa)以下のときに前記使用者の左右の前庭神経を前記刺激信号によって刺激する第2の処理(S115)と、
前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧(S125)が、前記設定値よりも高かった場合は(S126:Yes)、前記設定値を、前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧に変更する第3の処理(S127)と、を実行するという技術的手段を用いる。
(請求項25に係る発明)
請求項25に係る発明では、請求項24に記載の治療器(1)において、
前記第3の処理(S127)は、
前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧(P)が、前記設定値(Pa)よりも高かった場合は、前記設定値を、前記操作部が操作されたときに取得した大気圧に所定値を加算した値に変更するという技術的手段を用いる。
(請求項26に係る発明)
請求項26に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置(10,20)と、
前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材(12,14)と、を備えており、
前記電気刺激装置は、
記使用者が所定の操作を行ったときに前記刺激信号を出力するように構成されており、
さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量(ΔP)を算出する第1の処理(S132,S133)と、
前記第1の処理において算出した変動量が設定量(Pv)以上低下しているときに前記使用者の左右の前庭神経を前記刺激信号によって電気的に刺激する第2の処理(S134,S136)と、
前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量が前記設定量よりも少なかった場合は(S147:Yes)、前記設定量を、前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量に変更する第3の処理(S148)と、を実行するという技術的手段を用いる。
(請求項27に係る発明)
請求項27に係る発明では、請求項26に記載の治療器(1)において、
前記第3の処理(S148)は、
前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理(S132,S133)において算出した変動量(ΔP)が前記設定量(Pv)よりも少なかった場合は、前記設定量を、前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量から所定量を減算した値に変更するという技術的手段を用いる。
(請求項28に係る発明)
請求項28に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置(10,20)と、
前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材(12,14)と、を備えており、
前記電気刺激装置は、
記使用者の第1の操作によって前記刺激信号を出力し、さらに、前記使用者の第2の操作によって前記刺激信号の強度を調節するように構成されており、
さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧(P)を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量(ΔP)を算出する第1の処理(S152,S153)と、
前記第1の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量と、前記第1の操作が行われたときの前記刺激信号の強度とを対応付けて所定の記憶部に記憶する第2の処理(S165)と、
前記第1の処理において算出した変動量が設定量(Pv)以上低下しているときは(S154:Yes)、前記所定の記憶部において、前記第1の処理において算出した変動量と対応付けられている刺激信号の強度の中から最適の強度を割り出し、その割り出した強度の前記刺激信号によって前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する第3の処理(S156,S157,S158)と、を実行するという技術的手段を用いる。
(請求項29に係る発明)
請求項29に係る発明では、請求項28に記載の治療器(1)において、
前記第2の処理(S165)は、
前記第1の操作が行われたときの直前に前記第1の処理(S152,S153)において算出した変動量(ΔP)から所定量を減算した変動量と、前記第1の操作が行われたときの刺激信号の強度とを対応付けて前記所定の記憶部に記憶するという技術的手段を用いる。
(請求項30に係る発明)
請求項30に係る発明では、大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器(1)であって、
この治療器の使用者(H)の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する刺激信号出力部と、
前記刺激信号出力部が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材(12,14)と、
前記刺激信号出力部を制御する制御部と、を備えており、
前記制御部は、
この治療器の使用者が存在する場所の気象情報を取得し、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに前記刺激信号出力部に前記刺激信号を出力させるための更新可能なコンピュータプログラムが記憶された記憶部と、
前記コンピュータプログラムを実行するCPUと、を備えるという技術的手段を用いる。
(請求項31に係る発明)
請求項31に係る発明では、請求項7ないし請求項30のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記刺激信号の電流値は、前記大気圧の変動または低下が無い環境下で前記使用者(H)の前庭神経を電気的に刺激して前記使用者に目眩感が現れたときの電流値以下であるという技術的手段を用いる。
(請求項32に係る発明)
請求項32に係る発明では、請求項31に記載の治療器(1)において、前記電流値は、0.2mA以下であるという技術的手段を用いる。
(請求項33に係る発明)
請求項33に係る発明では、請求項7ないし請求項32のいずれか1つに記載の治療器(1)において、前記刺激信号は、2Hz以下の正弦波であるという技術的手段を用いる。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発明の治療器は、この治療器の使用者が存在する場所の気象情報を取得し、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したか否かの判定、あるいは、大気圧が低下するか否かの予測を行うため、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して気象情報を調べる必要がない。
しかも、治療器は、取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器は、携帯可能であるため、使用者は屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
さらに、大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧の低下が予測されると判定したときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するため、使用者が治療器を操作する必要がないので便利である。
したがって、請求項1に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(請求項2に係る発明の効果)
請求項2に係る発明の治療器は、この治療器の使用者が存在する場所の現在の大気圧または予測される大気圧を取得し、その取得した大気圧が設定値以下であるか否かの判定を行うため、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧を調べる必要がない。
しかも、治療器は、取得した大気圧が設定値以下のときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器は、携帯可能であるため、使用者は屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
さらに、取得した大気圧が設定値以下のときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するため、使用者が治療器を操作する必要がないので便利である。
したがって、請求項2に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(請求項3に係る発明の効果)
請求項3に係る発明の治療器は、この治療器の使用者が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量を算出し、その算出した変動量が設定量以上低下しているか否かの判定を行うため、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して所定時間毎に大気圧を調べるとともに、その調べた大気圧の変動量を算出する必要がない。
しかも、治療器は、上記の算出した変動量が設定量以上低下しているときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器は、携帯可能であるため、使用者は屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
さらに、取得した大気圧の変動量が設定量以上低下しているときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するため、使用者が治療器を操作する必要がないので便利である。
したがって、請求項3に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(請求項4に係る発明の効果)
請求項4に係る発明の治療器は、GPSを利用することにより、この治療器の使用者の位置情報を測定し、その測定した位置情報が、使用者が大気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い位置を示す位置情報である場合に使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されている。
したがって、使用者が、大気圧の低い場所へ移動する可能性が高い場合に、その場所に到達する前に、予め使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛の発症を予防することができる。
さらに、測定した位置情報が、使用者が大気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い位置を示す位置情報である場合に使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するため、使用者が治療器を操作する必要がないので便利である。
たとえば、大気圧の低下する場所とは、新幹線などの高速鉄道車両内、航空機内、エレベーター内、標高の高い場所などである。たとえば、使用者が高速鉄道の駅構内、または、空港へ移動した場合に、左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、走行中の高速鉄道車両内、または、飛行中の航空機内での気圧低下による天気痛の発症を未然に防ぐことができる。
したがって、請求項4に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(請求項5に係る発明の効果)
請求項5に係る治療器では、この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されている。
したがって、請求項5に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
しかも、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧を調べる必要がないため便利である。
(請求項6に係る発明の効果)
請求項6に係る治療器では、この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した上昇率が設定値以上のときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されている。
したがって、請求項5に係る発明を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
しかも、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧を調べる必要がないため便利である。
(請求項7に係る発明の効果)
請求項7に係る発明の治療器では、携帯端末が通信により気象情報を取得するとともに、その取得した気象情報を解析する。
したがって、請求項7に係る発明を実施すれば、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して気象情報を調べるとともに、その調べた気象情報を解析する必要がない。
しかも、携帯端末が、大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧の低下が予測されると判定したときに出力命令信号を刺激信号出力装置へ出力し、刺激信号出力装置が刺激信号を出力するため、使用者が刺激信号出力装置を操作して出力命令信号を出力させる必要がないので便利である。
(請求項8に係る発明の効果)
請求項8に係る発明の治療器では、携帯端末が通信により現在の大気圧または予測される大気圧を取得する。
したがって、請求項8に係る発明を実施すれば、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧を調べる必要がない。
しかも、携帯端末が、大気圧が設定値以下であると判定したときに出力命令信号を刺激信号出力装置へ出力し、刺激信号出力装置が刺激信号を出力するため、使用者が刺激信号出力装置を操作して出力命令信号を出力させる必要がないので便利である。
(請求項9に係る発明の効果)
請求項9に係る発明の治療器では、携帯端末が通信により現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量を算出する。
したがって、請求項9に係る発明を実施すれば、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して現在の大気圧を所定時間毎に調べるとともに、その調べた大気圧の変動量を計算する必要がない。
しかも、携帯端末が、算出した変動量が設定量以上低下していると判定したときに出力命令信号を刺激信号出力装置へ出力し、刺激信号出力装置が刺激信号を出力するため、使用者が刺激信号出力装置を操作して出力命令信号を出力させる必要がないので便利である。
(請求項10に係る発明の効果)
請求項10に係る発明の治療器では、携帯端末がGPSを利用することにより、使用者の位置情報を測定する。
したがって、請求項10に係る発明を実施すれば、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して現在の位置情報を調べる必要がない。
しかも、携帯端末が、測定した位置情報が前記特定の位置情報であると判定したときに出力命令信号を刺激信号出力装置へ出力し、刺激信号出力装置が刺激信号を出力するため、使用者が刺激信号出力装置を操作して出力命令信号を出力させる必要がないので便利である。
(請求項7ないし請求項10に係る発明の他の効果)
さらに、請求項7ないし請求項10に係る発明の治療器では、使用者の左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ部材を当接することにより、使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する。
したがって、請求項7ないし請求項10に係る発明を実施すれば、左右の前庭神経を確実かつ効率的に刺激することができる。
さらに、携帯端末とは別個に刺激信号出力装置が設けられているため、携帯端末と刺激信号出力装置とを別個に携帯することができるので便利である。
たとえば、携帯端末をバッグや鞄などに収容し、刺激信号出力装置をポケットなどに収容した状態で行動することができる。
(請求項11または請求項12に係る発明の効果)
さらに、請求項11または請求項12に係る発明の治療器では、使用者の左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ部材を当接することにより、使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する。
したがって、請求項11または請求項12に係る発明を実施すれば、左右の前庭神経を確実かつ効率的に刺激することができる。
(請求項13に係る発明の効果)
請求項13に係る発明の治療器では、携帯端末および刺激信号出力装置は、無線通信により接続されている。
したがって、請求項13に係る発明を実施すれば、治療器を携帯する際に、携帯端末および刺激信号出力装置を電気的に接続するケーブルなどが邪魔になることがない。
(請求項14に係る発明の効果)
請求項14に係る発明の治療器では、使用者が、バンドを頭部または首に装着すると、そのバンドの両端に設けられた一方の部材が右の乳様突起またはその近傍に当接し、他方の部材が左の乳様突起またはその近傍に当接するように構成されている。
したがって、請求項14に係る発明を実施すれば、上記のバンドを頭部または首に装着することにより、各部材が左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
(請求項15に係る発明の効果)
請求項15に係る発明の治療器では、一対の部材の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォンの左右にそれぞれ取付けられており、かつ、使用者がヘッドフォンを装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されている。
したがって、請求項15に係る発明を実施すれば、上記のヘッドフォンを装着することにより、各部材が左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
しかも、上記のヘッドフォンによって音楽を聴きながら治療を行うこともできる。
(請求項16に係る発明の効果)
請求項16に係る発明の治療器では、一対の部材の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォンの左右のうち使用者の左右の外耳道に挿入する部分にそれぞれ取付けられている。
したがって、請求項16に係る発明を実施すれば、上記のヘッドフォンを装着することにより、各部材が左右の外耳道に挿入された状態、つまり、左右の乳様突起の近傍に当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
しかも、上記のヘッドフォンによって音楽を聴きながら治療を行うこともできる。
さらに、各部材が左右の外耳道に挿入されるため、外部から各部材が目立たないので、外見を気にする必要がない。
(請求項17に係る発明の効果)
請求項17に係る発明の治療器では、一対の部材の各部材は、眼鏡の左右のツルの後部にそれぞれ取付けられており、かつ、使用者が上記眼鏡を装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されている。
したがって、請求項17に係る発明を実施すれば、上記の眼鏡を装着することにより、各部材が左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
なお、上記眼鏡は、レンズまたはガラスが入っていないフレームだけの眼鏡でも良い。
(請求項18に係る発明の効果)
請求項18に係る発明の治療器では、使用者が頭部または首に装着するバンドに刺激信号出力装置が設けられている。
したがって、請求項18に係る発明を実施すれば、バンドとは別個に刺激信号出力装置を携帯する必要がないため、利便性を高めることができる。さらに、刺激信号出力装置を携帯することを忘れてしまうおそれもない。
(請求項19に係る発明の効果)
請求項19に係る発明の治療器では、刺激信号出力装置がヘッドフォンに設けられている。
したがって、請求項19に係る発明を実施すれば、ヘッドフォンとは別個に刺激信号出力装置を携帯する必要がないため、利便性を高めることができる。さらに、刺激信号出力装置を携帯することを忘れてしまうおそれもない。
(請求項20に係る発明の効果)
請求項20に係る発明の治療器では、刺激信号出力装置が眼鏡の左右のツルの少なくとも一方に設けられている。
したがって、請求項20に係る発明を実施すれば、眼鏡とは別個に刺激信号出力装置を携帯する必要がないため、利便性を高めることができる。刺激信号出力装置を携帯することを忘れてしまうおそれもない。
(請求項21に係る発明)
請求項21に係る発明の治療器では、刺激信号の強度を調節する調節装置を備える。
したがって、請求項21に係る発明を実施すれば、前庭神経の感受性の個人差に対応して刺激信号の強度を調節することができるため、治療効果を高めることができる。
(請求項22に係る発明)
請求項22に係る発明の治療器では、携帯端末の判定の結果を報知する報知装置を備える。
したがって、請求項22に係る発明を実施すれば、使用者は、刺激信号出力装置が刺激信号を出力して治療を開始したことを知ることができる。
また、上記の報知が行われるため、治療を忘れないようにすることができる。
さらに、上記の報知が行われてから、前庭神経を刺激する準備をすれば良いため、前庭神経を刺激する態勢を常時作っている必要がない。
(請求項23に係る発明)
請求項23に係る発明の治療器では、使用者が所定の操作を行ったときに左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激する操作部を備える。
したがって、請求項23に係る発明を実施すれば、使用者は、いつでも所望のタイミングで治療を行うことができる。
(請求項24に係る発明)
請求項24に係る発明の治療器では、大気圧が設定値以下のときに使用者の左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激するが、使用者の操作によって左右の前庭神経を電気的刺激したときの大気圧が設定値よりも高かった場合は、その大気圧を設定値に変更する。
したがって、請求項24に係る発明を実施すれば、設定値よりも高い大気圧でも症状が出るような使用者であっても天気痛の症状を改善することができる。
(請求項25に係る発明)
請求項25に係る発明の治療器では、取得した大気圧が設定値よりも高かった場合は、その設定値を、使用者の操作によって電気的刺激をしたときに取得した大気圧に所定値を加算した値に変更する。
したがって、請求項25に係る発明を実施すれば、症状が出たときの大気圧よりも高い大気圧のときに電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
(請求項26に係る発明)
請求項26に係る発明の治療器では、大気圧の変動量が設定量以上低下しているときに使用者の左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激するが、使用者の操作によって左右の前庭神経を電気的刺激したときの大気圧の変動量が設定量よりも高かった場合は、その変動量を設定量に変更する。
したがって、請求項26に係る発明を実施すれば、設定量よりも少ない大気圧の変動量でも症状が出るような使用者であっても天気痛の症状を改善することができる。
(請求項27に係る発明)
請求項27に係る発明の治療器では、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの大気圧の変動量が設定量よりも少なかった場合は、その設定量を、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの大気圧の変動量から所定量を減算した値に変更する。
したがって、請求項27に係る発明を実施すれば、症状が出たときの大気圧の変動量よりも少ない変動量のときに電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
(請求項28に係る発明)
請求項28に係る発明の治療器では、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの直前に算出した変動量と、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの刺激信号の強度とを対応付けて所定の記憶部に記憶し、大気圧の変動量が設定量以上低下しているときは、上記所定の記憶部において、変動量と対応付けられている刺激信号の強度の中から最適の強度を割り出し、その割り出した強度の刺激信号によって使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する。
したがって、請求項28に係る発明を実施すれば、大気圧が変動したときに最適の刺激強度により左右の前庭神経を電気的に刺激することができるため、天気痛の治療効果を高めることができる。
(請求項29に係る発明)
請求項29に係る発明の治療器では、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの直前に算出した変動量から所定量を減算した変動量と、使用者の操作によって電気的刺激をしたときの刺激信号の強度とを対応付けて所定の記憶部に記憶する。
したがって、請求項29に係る発明を実施すれば、症状が出たときの大気圧の変動量よりも少ない変動量のときに最適の強度により電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
(請求項30に係る発明)
請求項30に係る発明の治療器では、CPUの制御によって左右の前庭神経を刺激し、かつ、そのCPUが実行するコンピュータプログラムを更新可能である。
したがって、請求項30に係る発明を実施すれば、使用者の個人差に対応したコンピュータプログラムを作成し、そのコンピュータプログラムに基づいて天気痛を治療することができる。
しかも、治療の方針や治療内容などを変更する場合に、その変更内容をコンピュータプログラムに反映させることができるため、治療器を買い換える必要がないので、治療費用を抑制することもできる。
(請求項31に係る発明の効果)
請求項31に係る発明の治療器では、刺激信号の電流値が、大気圧の変動または低下が無い環境下で使用者の前庭神経を電気的に刺激して使用者に目眩感が現れたときの電流値以下である。
したがって、請求項31に係る発明を実施すれば、目眩を感じることなく、天気痛を改善することができる。
(請求項32に係る発明)
請求項32に係る発明の治療器では、刺激信号の電流値が0.2mA以下である。
したがって、請求項32に係る発明を実施すれば、前庭神経の感受性が高い使用者であっても、目眩を感じることなく、天気痛を改善することができる。
(請求項33に係る発明)
請求項33に係る発明の治療器では、刺激信号が2Hz以下の正弦波である。
したがって、請求項33に係る発明を実施すれば、電気刺激による皮膚のチクチク感が生じることなく天気痛を改善することができる。
第1実施形態の治療器の外観を示す説明図である。 (a)は図1に示す治療器本体を構成するバンドの部分拡大図であり、(b)は右側ユニットの平面拡大図である。 図1に示す治療器の使用状態を示す説明図である。 図1に示す治療器を構成する刺激信号出力装置の電気的構成をブロックで示す説明図である。 図1に示す治療器を構成する携帯端末の電気的構成をブロックで示す説明図である。 携帯端末の主制御部が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 刺激信号出力装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 実験1,2に使用した実験装置の構成を示す説明図である。 実験1の実験結果を示すグラフである。 実験2における測定プロトコルを示す説明図である。 実験2のうち、疼痛緩和効果を調べた実験の結果を示すグラフである。 実験2のうち、ストレス指標を調べた実験の結果を示すグラフである。 第2実施形態において携帯端末の主制御部が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 第3実施形態における位置情報テーブルの説明図である。 第3実施形態において携帯端末の主制御部が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 (a)は第4実施形態の治療器の使用状態を示す説明図であり、(b)は、治療器に設けられた調節ダイヤルの拡大図である。 図16に示す治療器を構成する刺激信号出力装置の電気的構成をブロックで示す説明図である。 第4実施形態において刺激信号出力装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 (a)は、第5実施形態の治療器を構成する刺激信号出力装置に格納されている位置情報テーブルの説明図であり、(b)は、気圧低下値テーブルの説明図である。 携帯端末の主制御部が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 第6実施形態の治療器の外観を示す説明図である。 治療器の使用状態を示す説明図である。 第7実施形態の治療器の外観を示す説明図である。 第8実施形態の治療器の使用状態を示す説明図である。 (a)は第9実施形態の治療器の使用状態を示す説明図であり、(b)はヘッドフォンの側面拡大図である。 (a),(b)は第10実施形態の治療器を構成する携帯端末の操作画面の説明図である。 携帯端末の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 第11実施形態において電気刺激装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 第12実施形態の治療器を構成する電気刺激装置に格納されている刺激強度学習テーブルの説明図である。 電気刺激装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。 第13実施形態の治療器の電気的構成をブロックで示す説明図である。 実験3における健康被験者HI,HSの左右鼓膜温度差と大気圧との関係を示すグラフである。 実験3における被験者MIの左右鼓膜温度と大気圧との関係を示すグラフである。 図33の左右鼓膜温度の%TMTAと大気圧との関係を示すグラフである。 実験3における被験者SKの左右鼓膜温度と大気圧との関係を示すグラフである。 図35の左右鼓膜温度の%TMTAと大気圧との関係を示すグラフである。 実験3における被験者MIのLF/HFと大気圧との関係を示すグラフである。 実験3における被験者SKのLF/HFと大気圧との関係を示すグラフである。
〈第1実施形態〉
[治療器の概略構成]
最初に、この実施形態の治療器の概略構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、この実施形態の治療器の外観を示す説明図である。図2(a)は、図1に示す治療器本体を構成するバンドの部分拡大図であり、(b)は右側ユニットの平面拡大図である。図3は、図1に示す治療器の使用状態を示す説明図である。
図1に示すように、この実施形態の治療器1は、治療器本体10と、携帯端末20とを備える。治療器本体10および携帯端末20は、Bluetooth(登録商標)によって相互通信を行う。治療器本体10および携帯端末20は通信時にペアリングされ、携帯端末20がマスターになり、治療器本体10がスレーブになる。
治療器本体10は、ステレオイヤフォン型に構成されており、治療器1の使用者H(図3)の右耳に装着する右側ユニット11と、左耳に装着する左側ユニット13とを備える。右側ユニット11には、右耳の外耳道に挿入する右側電極12が設けられており、左側ユニット13には、左耳の外耳道に挿入する左側電極14が設けられている。図2(b)に示すように、右側電極12は、合成樹脂製の円筒形状部材12aの周面に被覆されている。円筒形状部材12aの中心軸の周囲には、空洞部12bが形成されている。右側電極12は、右耳の外耳道に挿入したときに外耳道の内壁に当接する大きさに形成されている。左側電極14も右側電極12と同一の構造であり、左耳の外耳道に挿入したときに外耳道の内壁に当接する大きさに形成されている。右側電極12および左側電極14の一方が陽極に他方が陰極になっている。
この実施形態では、右側電極12および左側電極14は、Ag/AgCl(銀/塩化銀)により形成されている。
さらに、治療器本体10は、使用者Hの首に装着するバンド19と、右側電極12および左側電極14へ刺激信号を出力する刺激信号出力装置17とを備える。刺激信号出力装置17はバンド19に内蔵されている。さらに、治療器本体10は、刺激信号出力装置17と左側電極14とを電気的に接続する接続コード18と、接続コード18と左側電極14とを電気的に接続する接続コード16と、刺激信号出力装置17と右側電極12とを電気的に接続する接続コード15とを備える。接続コード18は、バンド19に内蔵されている。接続コード15,16は、銅または銀などの導電性の撚線をポリ塩化ビニルなどの絶縁材料により被覆して形成されており、可撓性を有する。図3に示すように、各接続コード15,16は、使用者Hが、バンド19を首の後部から装着したときに、右側ユニット11の右側電極12が右耳の外耳道に挿入され、左側ユニット13の左側電極14が左耳の外耳道に挿入されるに足りる十分な長さに形成されている。バンド19は、合成樹脂材料により略U字形状に形成されており、バネ性を有する。また、図3に示すように、バンド19は、使用者Hが首の後部から装着したときに、首を跨ぐ大きさに形成されており、自身が有するバネ性によって首を軽く挾み込むことにより、装着状態が維持されるように構成されている。なお、治療器本体10は、バンド19を首の前部から装着したり、頭の上から装着したりすることができるように構成することもできる。
図2(a)に示すように、バンド19の右端には、刺激信号出力装置17の電源を投入するための電源スイッチ17aと、電源が投入されていることを表す電源LED17bと、刺激信号出力装置17から出力される刺激信号の強度を強くするための強度プラスボタン17dと、強度を弱くするための強度マイナスボタン17eと、刺激信号の強度を表示するための強度表示LED17cとが設けられている。この実施形態では、強度表示LED17cは、5個のLEDにより構成されており、強度に応じてLEDの点灯数が増加する。バンド19のうち、電源スイッチ17a、強度プラスボタン17dおよび強度マイナスボタン17eが設けられた部分の表面は、ゴムにより被覆されており、電源スイッチ17a、強度プラスボタン17dおよび強度マイナスボタン17eは、それぞれ圧電スイッチにより構成されている。
携帯端末20は、治療器本体10と通信する機能の他、携帯電話の機能と、インターネットを介して気象情報やGPS情報などの種々の情報を取得する機能とを備える。図1に示すように、携帯端末20は、各種の情報を表示する表示部21と、電源ボタン22と、操作ボタン23とを備える。表示部21は、液晶表示パネルまたは有機ELパネルにより構成されており、その表面にはタッチセンサ30(図5)が配置されている。
[治療器の電気的構成]
次に、治療器1の主な電気的構成について図4および図5を参照して説明する。
図4は、刺激信号出力装置17の電気的構成をブロックで示す説明図であり、図5は、携帯端末20の電気的構成をブロックで示す説明図である。
(刺激信号出力装置17の電気的構成)
図4に示すように、刺激信号出力装置17は、スイッチ回路17nと、表示回路17fと、調節回路17gと、制御回路17hと、近距離通信部17kと、通信アンテナ17mと、刺激信号出力回路17jと、バッテリ17iとを備える。スイッチ回路17nは、電源スイッチ17aのオン・オフを検出する。表示回路17fは、スイッチ回路17nがオンしたときに電源LED17bを点灯し、強度プラスボタン17dおよび強度マイナスボタン17eの操作に応じて強度表示LED17cを点灯または消灯する。近距離通信部17kは、携帯端末20との間で通信を行う。刺激信号出力回路17jは、調節回路17gによって調節された強度の刺激信号を出力する。この刺激信号は、接続コード15を介して右側電極12へ出力され、接続コード18,16を介して左側電極14へ出力される。
刺激信号の調節可能な最大電流量は0.2mAである。また、刺激信号は、0.5Hzの正弦波である。この刺激信号によって使用者の左右の前庭神経を刺激すると、天気痛を予防または改善することができる。この効果は、この出願の発明者らの実験によって実証されており、その実験内容および実験結果は後述する。また、刺激信号出力回路17jは、刺激信号の出力開始時において刺激信号を0mAから調節値まで漸増させ、出力停止時には、刺激信号を調節値から0mAまで漸減させる。
制御回路17hは、近距離通信部17kの通信を制御し、携帯端末20とのペアリングなどを実行する。さらに、制御回路17hは、近距離通信部17kが携帯端末20から受信した信号を解析し、刺激信号出力回路17jに対して刺激信号の出力開始および出力停止を実行させる。さらに、制御回路17hは、調節回路17gから出力される信号に基づいて刺激強度(刺激信号の電流量)を決定し、その決定内容を示す制御信号を刺激信号出力回路17jへ出力する。さらに、制御回路17hは、調節回路17gから出力される信号に基づいて表示回路17fにLEDの点灯・消灯を指示する。バッテリ17は、表示回路17f、調節回路17g、制御回路17h、近距離通信部17kおよび刺激信号出力回路17jへ動作電源を供給する。
(携帯端末20の電気的構成)
図5に示すように、携帯端末20は、携帯端末20全体の制御を行う主制御部27を備える。主制御部27は、CPU、RAMおよびROMなどから構成される。主制御部27と電気的に接続されたプログラムメモリ28はROMであり、主制御部27が実行するブートプログラム、携帯端末20を携帯電話機として機能させるためのコンピュータプログラムなどが格納されている。また、プログラムメモリ28には、インターネットを介して気象情報を取得するとともに、その取得した気象情報を解析し、その解析結果に応じて刺激信号出力装置17と通信を行い、刺激信号出力装置17に対して刺激信号の出力開始および出力停止を命令するためのアプリケーションプログラム(以下、治療アプリと略称する)が格納されている。
また、プログラムメモリ28には、インターネットのビューア、メーラー、カメラ制御、GPS制御などを実行するための各種のアプリケーションプログラムが格納されている。また、主制御部27と電気的に接続されたメモリ41には、受信した気象情報の履歴、各種のプリセットデータ、電話帳データ、メールの送受信データ、電話履歴、位置情報履歴、行動履歴、写真データなどの各種のデータが格納される。また、主制御部27と電気的に接続された大容量メモリ42は、フラッシュメモリなどから構成されており、GPSナビゲーションに使う地図データや動画データなどが格納される。
主制御部27と電気的に接続された操作部29は、電源ボタン22、操作ボタン23(図1)、音量アップボタンおよび音量ダウンボタン(図示省略)などから構成されている。主制御部27と電気的に接続された表示部21は、前述した各種のアプリケーションプログラムを選択するためのアイコン、主制御部27の処理結果、インターネットを介して受信した気象情報、刺激信号出力装置17(図4)の動作状況などを表示する。表示部21の表面に形成されたタッチセンサ30は、使用者Hの指が触れた位置や指が描いた軌跡を検出し、その検出結果に対応する信号を主制御部27へ出力する。
主制御部27と電気的に接続された近距離通信部37は、Bluetoothにより、刺激信号出力装置17と無線で接続してデータの送受信を行う部分であり、近距離通信部37には通信アンテナ38が電気的に接続されている。主制御部27と電気的に接続されたIr送信部39およびIr受信部40は、赤外線により他の携帯端末または周辺機器と通信を行う。主制御部27と電気的に接続された無線部25は、携帯端末20の基地局との間で、電波の送受信を行う。通信方式としては、PDC(Personal Digital Cellular)、GSM(登録商標:Global System for Mobile Communication)、CDMA(Code Division Multiple Access)、WCDMA(登録商標:Wideband CDMA)などを用いることができる。主制御部27と電気的に接続された通信制御部26は、無線部25の制御を行う。
主制御部27と電気的に接続されたカメラ部31は、カメラ撮影を行うものであり、レンズなどの光学系と、CCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサからなる撮像部と、イメージセンサの撮像信号を処理する映像信号処理部とが含まれる。主制御部27と電気的に接続された着信報知スピーカ32は、電話やメールの着信を知らせる音、治療アプリによる気象情報の解析結果が出たことを報知する音、天気痛の治療を開始したことを報知する音、音楽などを出力する。主制御部27と電気的に接続されたバイブレータ33は、電話やメールの着信があったこと、治療アプリによる気象情報の解析結果が出たこと、天気痛の治療を開始したことなどを振動で知らせるものであり、小型モータと、この小型モータの回転軸に偏心して取付けられた重錘と、上記の小型モータを駆動する駆動回路とを備える。
主制御部27と電気的に接続されたGPS機能部34は、複数の衛星からの電波を受信して、携帯端末20の現在地を測位する。GPS機能部34には上記の電波を受信するためのGPSアンテナ35が電気的に接続されている。マイクロフォン46は、携帯端末20を電話として使う場合に使用者Hの音声を入力し、スピーカ47は、通話相手の音声などを出力する。主制御部27と電気的に接続された音声処理部45は、マイクロフォン46から入力された音声信号を送信可能な信号に変換する処理、受信した信号をスピーカ47から出力可能な音声に変換する処理などを行う。
主制御部27と電気的に接続された外部入力端子36は、コンピュータや他の携帯端末などと接続し、携帯端末20との間でデータの入出力などを行うための端子である。バッテリ44は、携帯端末20の各部に動作電源を供給する。バッテリ44としては、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウム・イオン電池などの二次電池が用いられる。主制御部27と電気的に接続された電源制御部43は、バッテリ44から供給される電源の制御を行う。
次に、使用者Hが治療器1を使用して治療を行う場合の携帯端末20および刺激信号出力装置17の処理内容について説明する。
図6は、携帯端末20の主制御部27(図5)が実行する処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、刺激信号出力装置17の制御回路17h(図4)が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
[携帯端末の処理内容]
携帯端末20の主制御部27は、治療アプリが起動中であるか否かを判定し(図6のステップ(以下、ステップをSと略す)1)、起動中ではないと判定した場合は(S1:No)、治療アプリが起動したか否かを判定する(S2)。ここで、治療アプリは、使用者Hが、表示部21(図1)に表示されている治療アプリのアイコンをタッチすると起動する。主制御部27は、治療アプリが起動したと判定した場合は(S2:Yes)、気象情報を提供しているサーバーからインターネットを介して気象情報を受信する(S3)。続いて、主制御部27は、受信した気象情報を解析し(S4)、大気圧が低下すると予測されるか否か、あるいは、既に大気圧が低下したか否かを判定する(S5)。
たとえば、受信した気象情報の中に、今後、大気圧が低下することを示す天気予報情報(たとえば、曇りの予報、台風が接近した情報など)が含まれている場合は、今後、大気圧が低下することが予測されると判定する。また、前回の処理サイクルにおいて受信した気象情報の解析結果と今回受信した気象情報の解析結果とを比較し、前回よりも大気圧が低下している場合は、大気圧が低下したと判定する。
ここで、主制御部27は、大気圧が低下すると判定した場合は(S5:Yes)、大気圧が低下することを報知する(S6)。たとえば、携帯端末20の表示部21(図1)に、大気圧低下が予測されることを表す画像またはメッセージ、あるいは、それらの両方を表示する。また、携帯端末20の表面にLEDが設けられている場合は、そのLEDを点灯または点滅させることにより報知することもできる。さらに、着信報知スピーカ32(図5)から、特定の音を出力することにより報知することもできる。さらに、バイブレータ33(図5)を振動させることにより報知することもできる。
なお、上記報知を行うための表示部21、上記LED、着信報知スピーカ32およびバイブレータ33などが、この出願の請求項22に記載の報知装置に対応する。
続いて、主制御部27は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17(図1)へ送信し(S7)、治療を開始することを示す治療開始フラグをオンする(S8)。続いて、主制御部27は、治療時間を計測するためのタイマーをセットし、治療時間の計測を開始する(S9)。この治療時間は、治療アプリの設定画面において、予め設定されている制限時間内で所望の時間に設定することができる。
そして、主制御部27は、次の処理サイクルで、治療アプリが起動中であると判定し(S1:Yes)、治療開始フラグがオンしているか否か、つまり治療中であるか否かを判定する(S10)。ここで、主制御部27は、治療開始フラグがオンしていると判定した場合は(S10:Yes)、先のS9において計測を開始した治療時間がタイプアップしたか否かを判定し(S11)、タイムアップしたと判定した場合は(S11:Yes)、刺激信号の出力を停止させるための出力停止命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S12)、治療開始フラグをオフする(S13)。
また、主制御部27は、治療アプリが起動中ではあるが(S1:Yes)、治療開始フラグがオンしていない、つまり大気圧低下の予報が無いため、治療を開始していない場合は(S10:No)、今後、大気圧低下と判定するまで気象情報の受信およびその解析を繰り返し実行する(S3,S4,S5)。
[刺激信号出力装置の処理内容]
制御回路17h(図4)は、電源スイッチ17a(図1)がオンしたか否かを判定し(図7のS20)、オンしたと判定した場合は(S20:Yes)、刺激信号出力回路17j(図4)が右側電極12および左側電極14へ刺激信号を出力中か否かを判定する(S21)。ここで、制御回路17hは、刺激信号出力回路17jが刺激信号を出力中ではないと判定した場合は(S21:No)、携帯端末20から出力命令信号を受信したか否かを判定し(S22)、出力命令信号を受信したと判定した場合は(S22:Yes)、刺激信号出力回路17j(図4)に対して刺激信号を出力させる(S23)。
そして、制御回路17hは、次の処理サイクルにおいて、刺激信号出力回路17jが刺激信号を出力中であると判定した場合は(S21:Yes)、携帯端末20から出力停止命令信号を受信したか否かを判定し(S24)、受信したと判定した場合は(S24:Yes)、刺激信号出力回路17jに対して刺激信号の出力を停止させる(S25)。
[治療器の使用方法]
次に、治療器1の使用方法について説明する。
使用前の準備として、携帯端末20(図1)において治療アプリを立ち上げ、電源スイッチ17a(図2(a))を押圧して治療器本体10を起動状態にしておき、治療器1を携帯する。携帯端末20は気象情報を所定時間毎に受信し、大気圧が低下すると判定したときに、大気圧低下を報知するための画像を携帯端末20の表示部21(図1)に表示するとともに、大気圧低下を報知するための音を携帯端末20の着信報知スピーカ32(図5)から出力し、バイブレータ33(図5)を振動させる。この報知により、使用者Hは、大気圧が低下することを認識する。
また、携帯端末20は、刺激信号出力装置17(図1)へ刺激信号の出力を命令し、刺激信号出力装置17は、刺激信号を右側電極12および左側電極14へ出力する。そして、図3に示したように、使用者Hは、治療器本体10のバンド19を首の後ろ側から装着し、右側電極12を右耳の外耳道に挿入し、左側電極14を左耳の外耳道に挿入する。これにより、右側電極12および左側電極14のうち、陽極に設定されいる方の電極から陰極に設定されている方の電極へ刺激電流が流れ、使用者Hの左右の前庭神経が電気的に刺激されるため、天気痛を予防することができる。
また、治療器1を使用した時点において既に大気圧が低下しており、天気痛が発症している場合は、刺激信号によって左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善することができる。
次に、この出願の発明者らが行った実験について図を参照して説明する。
図8は、この実験に使用した実験装置の構成を示す説明図である。
この出願の発明者らは、前庭神経の電気的刺激に対する感受性を調べる実験を行った。
[実験1]
(実験の背景)
慢性痛、うつ病、喘息、心臓疾患のように、発症や症状の悪化が天気変化に影響を受ける疾患は少なくない。しかしながら、このような病態(気象病と総称される)の実証と発症メカニズムの研究はほとんど行われていない。そこで、この出願の発明者らは、慢性痛、抑うつ症状を持つ被験者、あるいはこれらの疾患モデル動物を人工低気圧環境へ曝露して再現実験を行ってきた。これまでに、慢性痛モデルラットの疼痛行動と、うつ病モデルラットの抑うつ行動が日常体験する程度の低気圧曝露によって増強することを示した。また、この増強効果は内耳を破壊した慢性痛モデルでは消失し、内耳感覚を支配する前庭神経細胞の25%が低気圧曝露で放電数を増やすことを明らかにしたことから、げつ歯目の内耳(前庭神経支配領域)には気圧センサーが備わっている可能性を強く示唆した。おそらく人間にも同様のメカニズムがあると考えられることから、この気圧センサーの感受性を制御することで、気象病が天候の変化(特に気圧変化)で悪化し、QOLが低下するのを予防・治療することが可能であると考えた。
(実験方法)
1.被験者
慢性痛患者22名と健康成人16名を被験者とした。慢性痛患者のうち、14名は症状が天候の崩れる前あるいは悪化中に増悪する天気痛被験者であり、男性4名女性10名で年齢は31−73才(平均52才)である。また、天気痛被験者でない慢性痛被験者(気象非依存型慢性痛)は男性4名、女性4名で年齢は25−73才(平均53才)である。一方、健康被験者16名は男性11名、女性5名で平均年齢は38才である。
2.実験装置
実験に使用した刺激装置は、図8に示すように、正弦波信号の発生および入力信号のA/D変換などを行う刺激装置51と、刺激装置51が発生した正弦波信号を昇圧するバッテリ53,55と、正弦波信号にノイズが混入するのを防止するアイソレータ52,54と、被験者の左右の乳様突起に装着する表面電極56,57と、被験者の心電図データを送信する心電図送信機58と、心電図送信機58から送信された心電図データを受信して刺激装置51へ送信する多チャンネルテレメータシステム59と、刺激装置51から送られるデータに基づく波形生成およびデータ解析を行うPC50とから構成される。
表面電極56,57として、直径8mmのAg/AgCl(銀−塩化銀)電極を使用した。なお、2極(+極と−極)を備えた両極型電極を用いて刺激を行ったところ、皮膚にチクチクとした感覚があり被験者が不快感を持つことから採用しなかつた。また、刺激波形の種類としては、特定の周波数に対する評価が行えるように高調波成分を含まない正弦波を採用した。刺激周波数が高いほど、被験者の目眩感が強くなることや、2Hz以上になると電気刺激による皮膚のチクチク感が生じたため、0.5Hzでの刺激を採用した。
この実験では、刺激装置51として、ADInstruments社製のPowerLab8/30を、アイソレータ52,54として、AMPI社製のFlexible Stimulus Isolator,ISO-Flexを、バッテリ53,55として、AMPI社製の90V Battery with Connecting Cordを、表面電極56,57として、株式会社ユニークメディカル製のLEP-30-5を、心電図送信機58として、日本光電工業株式会社製のZB-151Hを、多チャンネルテレメータシステム59として、日本光電工業株式会社製のWEB-1000をそれぞれ使用した。また、PC50において使用する波形生成ソフトとして、ADInstruments社製のLabChartを、心拍変動リアルタイム解析ソフトとして、有限会社諏訪トラスト製のMemCalk/Tarawaをそれぞれ使用した。
3.実験の手順
表面電極56,57を被験者の左右の乳様突起に貼り付け、心電図測定用の表面電極を胸部に取付けた。実験中の被験者の姿勢は坐位である。また、被験者には、実験中に応答させるために押しボタンを持たせた。
そして、被験者には、120秒間安静にしてもらった後、刺激がゆっくりと増えるように、刺激電流量を2μA/秒のスピードで漸増した。また、その間に目眩感を感じたら押しボタンを押すように指示した。この押しボタンを押したときの刺激電流量が前庭神経知覚閾値である。
このように、被験者の両耳後部の乳様突起に表面電極56,57を装着し、左右の表面電極間に微弱電流を流すことで前庭神経に電気刺激を与えた。その結果、電流の陽極側へ加速度が生じ、被験者の目眩感・重心のゆらぎ感を引き起こすことができた。
そして、押しボタンを押したタイミングの刺激強度で60秒間維持した後、刺激がゆっくりと消えるように、刺激電流量を2μA/秒のスピードで漸減した。また、その間に目眩感が消失したタイミングで再度押しボタンを押すように指示した。この押しボタンを押したときの刺激電流量が前庭神経知覚消失閾値である。
上述したテストを被験者毎に2回ずつ行い、前庭神経知覚閾値および前庭神経知覚消失閾値の各平均値を求めた。
また、PC50にインストールした心拍変動リアルタイム解析ソフトを使用して、前庭神経を電気刺激しているときの心拍変動係数(CVRR)を計測した。
4.実験結果
(1)前庭神経知覚閾値
総ての被験者で刺激中に目眩感を生じた。目眩感の種類は回転性、浮動性、動揺性であつたが、天気痛の有無や慢性痛の有無で明らかな違いは見られなかつた。天気痛被験者については、実際の天気悪化の際に生じる目眩感と同様な感覚であるとの回答が多かった。
実験結果を図9に示す。目眩を感じたときの刺激電流量(前庭神経知覚閾値)は、天気痛被験者で0.1±0.02mAであった。一方、慢性痛被験者(気象非依存型慢性痛被験者)の平均値は0.22±0.03mAであり、健康被験者の平均値は0.31±0.04mAであった。つまり、天気痛被験者の前庭神経知覚閾値が、他の2群の値に比べ、有意に低かった。
(2)前庭神経知覚消失閾値
健康被験者では、前庭神経知覚閾値の電流量から徐々に電流値を下げていくと、前庭神経知覚閾値から35%程度電流量を下げたときに目眩感が消失した。一方、天気痛被験者の場合、前庭神経知覚閾値から70%程度電流量を下げるとようやく目眩感が消失した。気象非依存型慢性痛被験者の前庭神経知覚消失閾値も健康被験者に比べて低い傾向があるが、統計学的に有意な変化ではなかった。以上の結果は、天気痛被験者の場合、いったん目眩感が出現すると、刺激電流量を下げても効果が持続することを意味する。
(3)自律神経指標
前庭神経への電気刺激が自律神経系に与える影響を調べるため、天気痛被験者7名と健康被験者5名について、前庭神経刺激中の心拍変動係数(CVRR)をリアルタイムに求めた。その結果、健康被験者では、目眩を感じたタイミング(前庭神経知覚閾値)でCVRRが減少傾向(つまり交感神経優位)となったが、天気痛被験者では健康被験者のようなCVRRの減少はなく、逆に増加(つまり副交感神経優位)した。
5.考察
上記の実験により、天気痛を患う被験者は、気象の影響を受けない慢性痛被験者や健康被験者に比べ、弱い電流値の前庭神経刺激で目眩感覚を得られることが分かった。また、前庭神経への刺激を中止しても他の被験者に比べ、目眩感覚が長く続くことが分かった。これらの結果は、天気痛患者の前庭神経が電気刺激に対して感受性が高いことを示している。この出願の発明者らのこれまでの実験によれば、気圧変化を感じるセンサーが内耳前庭部に存在することが分かっているので、天気痛患者は、電気刺激に対する高感受性のみならず気圧変化に対しても高感受性を持つことが推測される。
つまり、天気痛患者の内耳前庭部が気圧変化に対してより敏感であるために天気の崩れに伴う微少な気圧の揺れがセンサーを容易に刺激して、慢性痛などの症状を悪化させている可能性がある。また、同じ慢性痛を患う場合でも、気象(特に気圧変化)に影響を受けない被験者においては、内耳の感受性に健康被験者と有意な違いが見られなかったことから、内耳の感受性が高いのは慢性痛に共通するものではないことも分かった。もしこの仮説が正しければ、内耳前庭部の感受性をコントロール(抑制)できる方法とそれを可能にする装置を開発することで、天気痛の予防あるいは治療が可能になると考えた。
さらに、天気痛被験者では目眩感を得たタイミングで副交感神経が優位であることが分かった。健康被験者では同じタイミングで交感神経が優位になっていたことから、前庭神経の電気刺激に対する自律神経反応が健康人と全く異なった。この出願の発明者らの研究によれば、気圧変化は内耳前庭部で受容されたのち、自律神経反応を引き起こすことが分かっている。慢性痛が自律神経(特に交感神経)とリンクしていることは、これまでの多くの研究により明らかとなっていることから、天気痛被験者でみられたような自律神経反応の特異性が天気痛メカニズムに重要なものである可能性があると考えた。
[実験2]
次に、この出願の発明者らは、上述した仮説を検証するための実験を行った。
図10は、この実験における測定プロトコルの説明図である。
1.被験者
この実験の被験者は、天気痛を患っている女性3名である。
2.実験装置
この実験では、実験1において使用した実験装置(図8)と、低気圧チャンバーとを使用した。低気圧チャンバーとして、日本気圧バルク工業株式会社製のものを使用した。また、低気圧チャンバー内の気圧を制御する制御装置として、低気圧チャンバーに付属の制御装置を使用した。
3.実験方法
(前庭神経知覚閾値の測定)
被験者の左右の乳様突起に表面電極56,57を貼り付け、心電図を測定するための電極を胸部に取付けた。そして、低気圧チャンバーの外で、0.5Hzの正弦波の刺激電流を表面電極56,57に流した。刺激電流は、2μA/秒のスピードで漸増させた。そして、被験者には、目眩感を感じたときに、それを口頭で答えてもらい、そのときの刺激電流量を記録した。この測定を各被験者毎に2回ずつ行い、2回の平均の刺激電流量を各被験者の前庭神経知覚閾値とした。
この測定の結果、前庭神経知覚閾値は、被験者1が、0.245mAであり、被験者2が、0.165mAであり、被験者3が、0.065mAであった。
(測定1回目)
前庭神経を電気刺激しない状態で大気圧が低下したときの痛みの強さおよびストレス指標を測定した。
最初に、被験者は、総ての電極を取付けていない状態で低気圧チャンバーに入り、測定日の大気圧(1013hPa)の下、坐位姿勢で15分間安静にした。この安静状態を開始したタイミングが実験時間の計測開始時点である。また、この安静状態を開始した時点(0分)、3分経過時点および10分経過時点に、痛みの強度を被験者に口頭で尋ね、それを記録した。痛みの強度は、NRS(Numerical Rating Scale)を用いて表した。NRSは、被験者が今までに経験した最高の痛みを10として現在はいくつにあたるかを決める疼痛尺度である。0は痛みなし、1〜3は軽い痛み、4〜6は中等度の痛み、7〜10は強い痛みを表す。
上述した15分間の安静の後、低気圧チャンバー内の気圧を5分間で40hPa低下させ、その気圧(大気圧−40hPa)を15分間維持した。そして、実験開始から17分経過した時点(気圧低下開始から2分経過した時点)、24分経過した時点(気圧が大気圧−40hPaに達してから4分経過した時点)、31分経過した時点(気圧が大気圧−40hPaに達してから11分経過した時点)のそれぞれにおいて痛みの強さを尋ね、それを記録した。
また、被験者が低気圧チャンバーに入ってから心電図測定用の電極を取付け、その後、PC50(図8)にインストールした心拍変動リアルタイム解析ソフトを使用し、心電図のR−R間隔変動係数CVRRと、副交感神経活動を表すHF成分と、交感神経機能の指標であるLF/HFとを測定し、被験者のストレス指標を求めた。
ところで、周知の通り、副交感神経が活性化してリラックス状態のときには、呼吸変動を反映したHF(高周波)成分と血圧変動を反映したLF(低周波)成分とが波形に現れるが、交感神経が活性化してストレス状態にあるときには、LF成分が現れる一方、HF成分が減少する。このため、リラックス状態にあると相対的にHF成分が大きくなるので、LF/HFの値は小さくなり、逆に、ストレス状態にあるとHF成分に対してLF成分が大きくなるので、LF/HFの値が大きくなる。つまり、LF/HFの値を読取ることにより、被験者のストレスの大きさを知ることができる。
なお、心電図測定用の電極の取付けに10分を要したため、実験開始から10分間はストレス指標を測定していない。
(測定2回目)
大気圧が低下しているときに前庭神経を電気刺激した場合の痛みの強さおよびストレス指標を測定した。
低気圧チャンバー内で被験者の左右の乳様突起に表面電極56,57を貼り付け、表面電極56,57間に刺激電流を流し、実験を開始した。被験者1には、前庭神経知覚閾値0.245mAの約60%の0.15mAの刺激電流を流した。被験者2には、前庭神経知覚閾値0.165mAの約50%の0.08mAの刺激電流を流した。被験者3には、前庭神経知覚閾値0.065mAの約60%の0.04mAの刺激電流を流した。
この実験は、被験者に対する負担が大きいことから、限られた測定回数で知見が得られるようにするため、上記のように、前庭神経知覚閾値に対する刺激電流量の割合を被験者毎に異なせた。
そして、被験者が低気圧チャンバー内で15分間安静にした後、チャンバー内の気圧を5分間で40hPa低下させ、その気圧(大気圧−40hPa)を15分間維持した。実験開始時点(0分)、3分経過時点および10分経過時点、17分経過した時点(気圧低下開始から2分経過した時点)、24分経過した時点(気圧が大気圧−40hPaに達してから4分経過した時点)、31分経過した時点(気圧が大気圧−40hPaに達してから11分経過した時点)のそれぞれにおいて痛みの強さを尋ね、それを記録した。
また、被験者が低気圧チャンバーに入ってから心電図測定用の電極を取付け、その後、心電図のR−R間隔変動係数CVRRと、副交感神経活動を表すHF成分と、交感神経機能の指標であるLF/HFとを測定し、被験者のストレス指標を求めた。なお、表面電極56,57および心電図測定用の電極の取付けに11分を要したため、実験開始から11分間はストレス指標を測定していない。
(測定3回目)
測定3回目は、測定2回目と同じ手順で測定を行った。被験者1には、前庭神経知覚閾値0.245mAの約25%の0.06mAの刺激電流を流した。被験者2は、測定2回目において数値的な効果は得られていたが、自覚的な改善があまり得られなかったため、測定3回目は中止した。被験者3は、測定2回目において気圧低下時に疼痛緩和効果がみられたものの、気圧低下後に足にズキンズキンとした感覚が生じたため、気圧が下がりきた後に電気刺激を中止すれば改善が得られるのではないかと考察し、この測定3回目では測定2回目と同じ電流量の0.04mAで刺激し、気圧が下がりきった後に刺激電流量を0mAにした。
また、被験者が低気圧チャンバーに入ってから心電図測定用の電極を取付け、その後、心電図のR−R間隔変動係数CVRRと、副交感神経活動を表すHF成分と、交感神経機能の指標であるLF/HFとを測定し、被験者のストレス指標を求めた。なお、表面電極56,57および心電図測定用の電極の取付けに11分を要したため、実験開始から11分間はストレス指標を測定していない。
(測定結果1)
前庭神経を電気刺激しない状態で大気圧が低下したときの痛みの強さの変化を算出した。測定1回目において所定時間毎に被験者に尋ねた痛みの強さに基づき、所定時間毎の痛みの強さの変化量を算出し、被験者1〜3の変化量の平均値を算出した。その算出結果を図11のグラフにおいて一点鎖線(前庭神経刺激なし)にて示す。同グラフにおいて破線は気圧を示す。同グラフに示すように、実験開始から15分が経過し、気圧が低下すると、痛みの強さの変化が増大しており、天気痛を患っている人の特徴が出ている。
(測定結果2)
前庭神経を電気刺激した状態で大気圧が低下したときの痛みの強さの変化を算出した。前述したように、被験者3の測定2回目は、被験者1の測定3回目とは刺激電流量および刺激の停止条件が異なるため、被験者1,3の測定3回目の測定データに基づき、所定時間毎の痛みの強さの変化量を算出し、被験者1,3の痛みの強さの変化量の平均値を算出した。
実際の測定結果の一部を示すと、実験開始時(0分)のとき(気圧低下前)の被験者1の痛みの強さが5であり、実験開始から17分経過したとき(気圧低下後)の被験者1の痛みの強さが5であった。つまり、実験開始から17分経過したときの被験者1の痛みの変化量は0(=5−5)であった。
また、実験開始時(0分)のとき(気圧低下前)の被験者2の痛みの強さが2であり、実験開始から17分経過したとき(気圧低下後)の被験者2の痛みの強さが2.5であった。つまり、実験開始から17分経過したときの被験者2の痛みの変化量は0.5(=2.5−2)であった。
また、実験開始時(0分)のとき(気圧低下前)の被験者3の痛みの強さが1.5であり、実験開始から17分経過したとき(気圧低下後)の被験者3の痛みの強さが2.5であった。つまり、実験開始から17分経過したときの被験者3の痛みの変化量は1(=2.5−1.5)である。
したがって、実験開始から17分経過したときの痛みの強さの平均値は、0.5(=(0+0.5+1)/3)であった(図11)。
また、痛みの強さの平均値は、実験開始から3分経過したときが約0.3、10分経過したときが、約0.3、24分経過したときが0.3、31分経過したときが0であった(図11)。
図11のグラフに示すように、気圧が低下している期間は、痛みの強さが僅かに増大しているだけであり、前庭神経知覚閾値以下の電流量で0.5Hzの正弦波によって前庭神経を電気刺激することにより、天気痛の緩和効果が出ていることが実証された。
なお、被験者3については、気圧が低下した後に電気刺激を中止した方が、疼痛緩和が効果的であることが示唆された。つまり、気圧が低下したときにのみ電気刺激を行うことで疼痛緩和効果があることが示唆された。
(測定結果3)
図12は、測定1〜3回目における被験者1,2に対する自律神経系の測定結果を示すグラフである。
PC50にインストールした心拍変動リアルタイム解析ソフトにより、HFおよびLF/HFの各値が2秒毎に算出される。また、被験者の個人差による影響を減らし、各値の分布を正規分布に近づけるため、2秒毎に算出される値に対して自然対数(LN)を取り、さらに1分毎に自然対数の値の平均値を算出した。そして、被験者1,2の1分毎の平均値を算出した。図12において、符号Aにて示す実線は、前庭神経を電気刺激したときのLN(HF)の変化を表すグラフであり、符号Bにて示す実線は、前庭神経を電気刺激したときのLN(LF/HF)の変化を表すグラフである。また、符号Cにて示す破線は、前庭神経を電気刺激しないときのLN(LF/HF)の変化を表すグラフであり、符号Dにて示す一点鎖線は、前庭神経を電気刺激しないときのLN(HF)の変化を表すグラフである。符号Eにて示す破線は、気圧の変化を表すグラフである。
同図において、気圧が低下している期間において、符号Bにて示すグラフ(前庭神経の電気刺激あり)と符号Cにて示すグラフ(前庭神経の電気刺激なし)とを比較すると、符号Bにて示すグラフの方が、符号Cにて示すグラフよりも、ストレスの大きさを示すLF/HFの値が小さいことが分かる。また、リラックス状態を示すHFの値は、符号Aで示すグラフ(前庭神経の電気刺激あり)の方が、符号Dで示すグラフ(前庭神経の電気刺激なし)よりも大きいことが分かる。
つまり、気圧が低下した場合でも、前庭神経知覚閾値以下の電流量の0.5Hzの正弦波によって前庭神経を電気刺激すると、ストレスが軽減され、リラックス状態になることが実証された。
[第1実施形態による効果]
(1)上述したように、第1実施形態の治療器1は、使用者Hが存在する場所の気象情報を取得し、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したか否かの判定、あるいは、大気圧が低下するか否かの予測を行うため、使用者Hがパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して気象情報を調べる必要がない。
しかも、治療器1は、取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器1は、携帯可能であるため、使用者Hは屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
したがって、第1実施形態の治療器1を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(2)しかも、携帯端末20が、大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧の低下が予測されると判定したときに出力命令信号を刺激信号出力装置17へ出力し、刺激信号出力装置17が刺激信号を出力するため、使用者が刺激信号出力装置17を操作して出力命令信号を出力させる必要がないので便利である。
(3)さらに、治療器1は、使用者Hの左右の外耳道を介して左右の前庭神経を電気的に刺激することができるため、左右の前庭神経を確実かつ効率的に刺激することができる。
(4)さらに、刺激信号出力装置17を有する治療器本体10と、携帯端末20とが別個に設けられているため、治療器本体10と携帯端末20とを別個に携帯することができるので便利である。
たとえば、携帯端末をバッグや鞄などに収容し、刺激信号出力装置をポケットなどに収容した状態で行動することができる。
(5)さらに、携帯端末20および刺激信号出力装置17は、無線通信により接続されているため、治療器1を携帯する際に、携帯端末20および刺激信号出力装置17を電気的に接続するケーブルなどが邪魔になることがない。
(6)さらに、治療器1では、使用者Hが首に装着するバンド19に刺激信号出力装置17が設けられているため、バンド19とは別個に刺激信号出力装置17を携帯する必要がないため、利便性を高めることができる。また、刺激信号出力装置17を携帯することを忘れるおそれがない。
(7)さらに、治療器1では、刺激信号の電流量が、大気圧の変動または低下が無い環境下で使用者の前庭神経を電気的に刺激して使用者に目眩感が現れたときの電流量、つまり、前庭神経知覚閾値以下であるため、目眩を感じることなく、天気痛を改善することができる。
(8)さらに、刺激信号の電流量が0.2mA以下であるため、前庭神経の感受性が高い使用者であっても、目眩を感じることなく、天気痛を改善することができる。
(9)さらに、治療器1では、刺激信号が2Hz以下の正弦波であるため、電気刺激による皮膚のチクチク感が生じることなく天気痛を改善することができる。
(10)さらに、治療器1は、強度プラスボタン17dおよび強度マイナスボタン17eを操作することにより刺激信号の強度を調節することができるため、前庭神経の感受性の個人差に対応して刺激信号の強度を調節することができるので、治療効果を高めることができる。
(11)さらに、治療器1は、大気圧が低下する可能性のあることを報知することができるため、使用者Hは、刺激信号出力装置17が刺激信号を出力して治療を開始したことを知ることができる。
また、上記の報知が行われるため、治療を忘れないようにすることができる。さらに、上記の報知が行われてから、前庭神経を刺激する準備をすれば良いため、前庭神経を刺激する態勢を常時作っている必要がない。
なお、上述した第1実施形態の治療器1が、この出願の請求項1に係る発明に対応する。
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について図を参照して説明する。
図13は、携帯端末20の主制御部27が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
この実施形態の治療器1は、大気圧の変動量が設定量以上低下しているときに、左右の前庭神経を電気刺激することを特徴とする。この実施形態の治療器1は、主制御部27が実行する制御内容以外は、前述した第1実施形態の治療器1と同じ構成および機能であるため、それらの説明を省略する。また、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
携帯端末20の主制御部27(図5)は、治療アプリが起動中であるか否かを判定し(図13のS30)、起動中ではないと判定した場合は(S30:No)、治療アプリが起動したか否かを判定する(S31)。ここで、治療アプリは、使用者Hが、表示部21(図1)に表示されている治療アプリのアイコンをタッチすると起動する。主制御部27は、治療アプリが起動したと判定した場合は(S31:Yes)、気象情報を受信するタイミングであるか否かを判定する(S32)。ここで、気象情報を受信するタイミングは、5分間隔、30分間隔など、任意の間隔に設定することができる。
ここで、主制御部27は、気象情報を受信するタイミングであると判定した場合は(S32:Yes)、気象情報を提供しているサーバーからインターネットを介して気象情報を受信する(S33)。続いて、主制御部27は、受信した気象情報に含まれている大気圧情報をRAMなどの記憶媒体に格納し(S34)、その記憶媒体に格納されている大気圧情報に基づいて大気圧変動量ΔPを算出する(S35)。たとえば、前回(たとえば、30分前)に記憶媒体に格納された大気圧情報が1013hPaであり、今回、記憶媒体に格納された大気圧情報が1003hPaであった場合は、1013hPa−1003hPa=10hPa(ΔP)を算出する。
続いて、主制御部27は、算出した大気圧変動量ΔPが、予め設定されている大気圧変動量Pv以上であるか否かを判定し(S36)、肯定判定した場合は(S36:Yes)、大気圧が低下することを報知する(S37)。たとえば、算出した大気圧変動量ΔPが10hPaであり、予め設定されている大気圧変動量Pvが5hPaである場合は、ΔP≧Pvであるため、大気圧が低下することを報知する。報知は、使用者Hが認識しやすい手法にて行うことが望ましい。たとえば、携帯端末20の表示部21(図1)に、大気圧低下が予測されることを表す画像またはメッセージ、あるいは、それらの両方を表示する。また、携帯端末20の表面にLEDが設けられている場合は、そのLEDを点灯または点滅させることにより報知することもできる。さらに、着信報知スピーカ32(図5)から、特定の音を出力することにより報知することもできる。さらに、バイブレータ33(図5)を振動させることにより報知することもできる。
続いて、主制御部27は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17(図1)へ送信し(S38)、治療を開始することを示す治療開始フラグをオンする(S39)。続いて、主制御部27は、治療時間を計測するためのタイマーをセットし、治療時間の計測を開始する(S40)。この治療時間は、治療アプリの設定画面において、予め設定されている制限時間内で所望の時間に設定することができる。
そして、主制御部27は、次の処理サイクルで、治療アプリが起動中であると判定し(S30:Yes)、治療開始フラグがオンしているか否か、つまり治療中であるか否かを判定する(S41)。ここで、主制御部27は、治療開始フラグがオンしていると判定した場合は(S41:Yes)、先のS40において計測を開始した治療時間がタイプアップしたか否かを判定し(S42)、タイムアップしたと判定した場合は(S42:Yes)、刺激信号の出力を停止させるための出力停止命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S43)、治療開始フラグをオフする(S44)。
また、主制御部27は、治療アプリが起動中ではあるが(S30:Yes)、治療開始フラグがオンしていない、つまり大気圧変動量が小さく、大気圧低下と判定しない場合は(S41:No)、次に、大気圧変動量ΔPが、予め設定されている大気圧変動量Pv以上であると判定するまで、気象情報の受信、大気圧変動量ΔPの算出および判定などを繰り返し実行する(S32〜S36)。
一方、刺激信号出力装置17の制御回路17h(図4)は、上記主制御部27の処理に対応して第1実施形態と同じ制御(図7)を実行する。
[第2実施形態による効果]
上述したように、第2実施形態の治療器1は、使用者Hが存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、大気圧変動量ΔPを算出し、その算出した大気圧変動量ΔPが、予め設定されている大気圧変動量Pv以上であるか否かの判定を行うため、使用者Hがパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して所定時間毎に大気圧を調べるとともに、大気圧変動量を算出する必要がない。
しかも、治療器1は、上記の算出した大気圧変動量ΔPが、Pv以上であるときに使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器1は、携帯可能であるため、使用者は屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
したがって、第2実施形態の治療器1を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
なお、上述した第2実施形態の治療器1が、この出願の請求項3に係る発明に対応する。
〈第3実施形態〉
次に、この発明の第3実施形態について図を参照して説明する。
図14は、位置情報テーブルの説明図であり、図15は、携帯端末20の主制御部27が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
この実施形態の治療器1は、使用者Hが大気圧の低下する可能性の高い場所に移動したときに、左右の前庭神経を電気刺激することを特徴とする。この実施形態の治療器1は、主制御部27が実行する制御内容以外は、前述した第1実施形態の治療器1と同じ構成および機能であるため、それらの説明を省略する。また、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図14に示す位置情報テーブルは、携帯端末20の大容量メモリ42(図5)に格納されている。位置情報テーブルは、世界中をカバーするGPS情報のうち、使用者Hが、気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い場所を示すGPS位置情報が複数格納されている。位置情報テーブルにおいてGPS位置情報と対応付けられている推定場所は、GPS位置情報を説明するためのものであり、説明の便宜上記載している。図14に示す例では、GPS位置情報A001が示す推定場所は、名古屋駅新幹線ホームになっている。つまり、携帯端末20が受信したGPS情報がA001であった場合は、携帯端末20を携帯している使用者Hは、名古屋駅新幹線ホームにいると推定され、新幹線に乗車する可能性が高く、気圧が低い環境へ移行する可能性が高い。
携帯端末20の主制御部27(図5)は、治療アプリが起動中であるか否かを判定し(図15のS50)、起動中ではないと判定した場合は(S50:No)、治療アプリが起動したか否かを判定する(S51)。ここで、治療アプリは、使用者Hが、表示部21(図1)に表示されている治療アプリのアイコンをタッチすると起動する。主制御部27は、治療アプリが起動したと判定した場合は(S51:Yes)、GPS位置情報を受信するタイミングであるか否かを判定する(S52)。ここで、GPS位置情報を受信するタイミングは、1分間隔、30分間隔など、任意の間隔に設定することができる。
ここで、主制御部27は、GPS位置情報を受信するタイミングであると判定した場合は(S52:Yes)、GPS機能部34(図5)を制御してGPS位置情報を受信する(S53)。続いて、主制御部27は、位置情報テーブル(図14)を参照し(S54)、受信したGPS位置情報と同じGPS位置情報が位置情報テーブルに格納されているか否か、つまり、受信したGPS位置情報が、気圧が低下する場所へ移動する可能性が高い特定の場所を示すGPS位置情報であるか否かを判定する(S55)。ここで、肯定判定した場合は(S55:Yes)、大気圧が低下する可能性があることを報知する(S56)。たとえば、受信したGPS位置情報が、A002であった場合は、位置情報テーブルにA002(推定場所が中部国際空港国内線出発ロビー)が格納されているため、大気圧が低下する可能性があることを報知する。
続いて、主制御部27は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17(図1)へ送信し(S57)、治療を開始することを示す治療開始フラグをオンする(S58)。続いて、主制御部27は、治療時間を計測するためのタイマーをセットし、治療時間の計測を開始する(S59)。この治療時間は、治療アプリの設定画面において、予め設定されている制限時間内で所望の時間に設定することができる。
そして、主制御部27は、次の処理サイクルで、治療アプリが起動中であると判定し(S50:Yes)、治療開始フラグがオンしているか否か、つまり治療中であるか否かを判定する(S60)。ここで、主制御部27は、治療開始フラグがオンしていると判定した場合は(S60:Yes)、先のS59において計測を開始した治療時間がタイプアップしたか否かを判定し(S61)、タイムアップしたと判定した場合は(S61:Yes)、刺激信号の出力を停止させるための出力停止命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S62)、治療開始フラグをオフする(S63)。
また、主制御部27は、治療アプリが起動中ではあるが(S50:Yes)、治療開始フラグがオンしていない、つまり、使用者Hが、大気圧が低下する特定の場所へ移動する可能性がない場合は(S60:No)、次に、特定の場所であると判定するまで、GPS位置情報受信、位置情報テーブル参照、特定の場所か否かの判定を繰り返し実行する(S52〜S55)。
一方、刺激信号出力装置17の制御回路17h(図4)は、上記主制御部27の処理に対応して第1実施形態と同じ制御(図7)を実行する。
[第3実施形態による効果]
上述したように、第3実施形態の治療器1は、GPSを利用することにより、使用者Hの位置情報を測定し、その測定した位置情報が、使用者Hが大気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い位置を示す位置情報である場合に使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することができる。
したがって、使用者Hが、大気圧の低い場所へ移動する可能性が高い場合に、その場所に到達する前に、予め使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛の発症を予防することができる。
さらに、治療器1は、携帯可能であるため、使用者は屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
したがって、第3実施形態の治療器1を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
なお、上述した第3実施形態の治療器1が、この出願の請求項4に係る発明に対応する。
〈第4実施形態〉
次に、この発明の第4実施形態について図を参照して説明する。
図16(a)は、この実施形態の治療器の使用状態を示す説明図であり、(b)は、治療器に設けられた調節ダイヤルの拡大図である。図17は、この実施形態の治療器を構成する刺激信号出力装置の電気的構成をブロックで示す説明図である。図18は、刺激信号出力装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
この実施形態の治療器1は、大気圧センサが測定した大気圧が設定値以下のときに左右の前庭神経を電気刺激することを特徴とする。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図16に示すように、この実施形態の治療器1は、携帯型の刺激信号出力装置17と、使用者Hの頭部に装着するヘッドバンド60と、ヘッドバンド60の左端に取付けられたパッド62と、一端がパッド62に取付けられたアーム61と、アーム61の他端に取付けられた左側電極14と、刺激信号出力装置17と右側電極(図示せず)とを電気的に接続する接続コード15と、刺激信号出力装置17と左側電極14とを電気的に接続する接続コード16とを備える。アーム61の内部には、接続コード16と左側電極14とを電気的に接続する接続コードが内蔵されている。パッド62は、ヘッドバンド60の左端が左耳に直接当たらないようにするためのクッションである。図示しないが、ヘッドバンド60の右端にもパッド62が取付けられており、そのパッド62には、アーム61の一端が取付けられており、そのアームの他端には、左側電極14と同一形状の右側電極が取付けられている。アーム61は、合成樹脂などの材料によって形成されており、可撓性を有し、形状を変更可能である。
図示のように、ヘッドバンド60は、使用者Hが頭部に装着したときに、左側電極14が左側の乳様突起またはその近傍に当接し、右側電極が右側の乳様突起またはその近傍に当接するように構成されている。ヘッドバンド60を装着したときに電極が乳様突起またはその近傍に当接しない場合は、アーム61の形状を変え、電極が乳様突起またはその近傍に当接するように調節する。
刺激信号出力装置17は、電源スイッチ17aと、報知LED17sと、刺激強度を調節するための調節ダイヤル17pとを備える。報知LED17sは、電源スイッチ17aがオンしたことを報知するとともに、刺激信号を出力していることを報知する。この実施形態では、報知LED17sは、電源スイッチ17aがオンしたときに緑色で点灯し、刺激信号を出力しているときに赤色で点灯する。図16(b)に示すように、調節ダイヤル17pは、使用者Hがダイヤル操作することにより、刺激強度(刺激信号の電流量)を可変するものである。この実施形態では、刺激強度は最小の1から最大の5までの5段階に設定されている。図示の例では、刺激強度が中程度の3に調節されている。
図17に示すように、刺激信号出力装置17は、大気圧を検出する気圧センサ17rを備える。気圧センサ17rは、検出した大気圧に対応する信号を制御回路17uへ出力し、制御回路17uが大気圧を測定する。
ここで、制御回路17uの制御の流れについて図18を参照して説明する。
制御回路17uは、治療開始フラグがオンしているか否かを判定し(図18のS70)、オンしていないと判定した場合は(S70:No)、電源スイッチ17a(図16(a))がオンしたか否かを判定する(S71)。ここで、制御回路17uは、電源スイッチ17aがオンしたと判定した場合は(S71:Yes)、報知LED17sを緑色で点灯させ、圧センサ17r(図17)が出力した信号に基づいて大気圧Pを測定する(S72)。
続いて、制御回路17uは、測定した大気圧Pが、予め設定されている大気圧Pa以下であるか否かを判定し(S73)、肯定判定した場合は(S73:Yes)、報知LED17s(図16(a))を赤色で点灯させ、大気圧が設定値以下であることを報知する(S74)。続いて、制御回路17uは、刺激信号出力回路17j(図17)に対して刺激信号を出力させ(S75)、治療を開始することを示す治療開始フラグをオンする(S76。続いて、制御回路17uは、治療時間を計測するためのタイマーをセットし、治療時間の計測を開始する(S77)。
そして、制御回路17uは、次の処理サイクルで、治療開始フラグがオンしていると判定し(S70:Yes)、先のS77において計測を開始した治療時間がタイプアップしたか否かを判定する(S78)。ここで、制御回路17uは、タイムアップしたと判定した場合は(S78:Yes)、刺激信号出力回路17jに対して刺激信号の出力を停止させ(S79)、治療開始フラグをオフする(S80)。
[第4実施形態による効果]
(1)上述したように、第4実施形態の治療器1は、使用者Hが存在する場所の現在の大気圧Pを測定し、その測定した大気圧Pが、予め設定されている大気圧Pa以下であるか否かの判定を行うため、使用者Hがパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧Pを調べる必要がない。
しかも、治療器1は、測定した大気圧Pが、予め設定されている大気圧Pa以下のときに使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、天気痛を改善するため、薬を服用する必要がない。
さらに、治療器1は、携帯可能であるため、使用者Hは屋内または屋外に居る場合、あるいは、移動中であっても天気痛の治療を行うことができる。
したがって、第4実施形態の治療器1を実施すれば、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
(2)さらに、使用者Hが、ヘッドバンド60を頭部に装着することにより、ヘッドバンド60の両端に取付けられた電極が左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
なお、上述した第4実施形態の治療器1が、この出願の請求項2に係る発明に対応する。
〈第5実施形態〉
次に、この発明の第5実施形態について図を参照して説明する。
図19(a)は、この実施形態の治療器を構成する刺激信号出力装置に格納されている位置情報テーブルの説明図であり、(b)は、気圧低下値テーブルの説明図である。図20は、刺激信号出力装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
この実施形態の治療器1は、使用者Hの位置情報および大気圧情報に基づいて、左右の前庭神経を電気刺激するか否かを決定することを特徴とする。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図19(a)に示すように、位置情報テーブルは、GPS位置情報と点数とを対応付けて構成されている。GPS位置情報には、A地域からK地域・・の複数の地域のGPS位置情報が格納されており、点数には、0点から5.0点の点数が0.5点刻みで格納されている。たとえば、標高が低いA地域には0点が、標高が少し高いE地域には2.0点がそれぞれ対応付けられている。
図19(b)に示すように、気圧低下値テーブルは、大気圧の低下値Pd(hPa)と点数とを対応付けて構成されている。低下値Pd(hPa)には、0から9以上まで、1hPa刻みで低下値Pdが格納されており、点数には、0.5点から5.0点の点数が0.5点刻みで格納されている。たとえば、0≦Pd<1には0.5点が、4≦Pd<5には2.5点がそれぞれ対応付けられている。
この実施形態の治療器は、治療アプリの内容と、その治療アプリを実行する主制御部27(図5)の制御内容以外は、第1実施形態の治療器1と同じ構成である。
次に、主制御部27が実行する制御の流れについて図20を参照して説明する。
携帯端末20の主制御部27(図5)は、治療アプリが起動中であるか否かを判定し(図20のS90)、起動中ではないと判定した場合は(S90:No)、治療アプリが起動したか否かを判定する(S91)。ここで、治療アプリは、使用者Hが、表示部21(図1)に表示されている治療アプリのアイコンをタッチすると起動する。主制御部27は、治療アプリが起動したと判定した場合は(S91:Yes)、GPS位置情報および大気圧情報を受信し、その受信した大気圧情報と前回の処理サイクルで受信した大気圧情報とを比較して大気圧の低下値を算出し(S92)、位置情報テーブルおよび気圧低下値テーブル(図19)を参照する(S93)。
続いて、主制御部27は、S92において受信したGPS位置情報と対応付けられている点数と、S92において算出した大気圧の低下値と対応付けられている点数との合計点数Mを算出する(S94)。つまり、大気圧低下の2つの要因を加算することにより、判定基準の重み付けを行う。続いて、主制御部27は、合計点数Mが3点以上か否かを判定し(S95)、3点以上と判定した場合は(S95:Yes)、大気圧が低下する可能性があることを報知する(S96)。たとえば、受信したGPS位置情報がE地域であり、算出した大気圧の低下値Pdが2.5hPaであった場合は、位置情報テーブルにおいてE地域は2.0点であり、気圧低下値テーブルにおいて2.5hPaは1.5点であるから、合計点数Mは、3.5点(=2.0点+1.5点)となるため、大気圧が低下する可能性があることを報知する。
続いて、主制御部27は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17(図1)へ送信し(S97)、治療を開始することを示す治療開始フラグをオンする(S98)。続いて、主制御部27は、治療時間を計測するためのタイマーをセットし、治療時間の計測を開始する(S99)。この治療時間は、治療アプリの設定画面において、予め設定されている制限時間内で所望の時間に設定することができる。
そして、主制御部27は、次の処理サイクルで、治療アプリが起動中であると判定し(S90:Yes)、治療開始フラグがオンしているか否か、つまり治療中であるか否かを判定する(S100)。ここで、主制御部27は、治療開始フラグがオンしていると判定した場合は(S100:Yes)、先のS99において計測を開始した治療時間がタイプアップしたか否かを判定し(S101)、タイムアップしたと判定した場合は(S101:Yes)、刺激信号の出力を停止させるための出力停止命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S102)、治療開始フラグをオフする(S103)。
また、主制御部27は、治療アプリが起動中ではあるが(S90:Yes)、治療開始フラグがオンしていないと判定した場合は(S100:No)、次に、合計点数Mが3点以上であると判定するまで、GPS位置情報・大気圧情報受信、テーブル参照、合計点数M算出、合計点数Mが3点以上か否かの判定を繰り返し実行する(S92〜S95)。
一方、刺激信号出力装置17の制御回路17h(図4)は、上記主制御部27の処理に対応して第1実施形態と同じ制御(図7)を実行する。
[第5実施形態による効果]
上述したように、第5実施形態の治療器1は、GPS位置情報および大気圧情報に基づいて大気圧低下を判定することにより大気圧低下の判定精度を高めることができるため、天気痛を確実に予防することができる。
つまり、気象変化による大気圧の低下は僅かであり、天気痛を発症していないような場合であっても、標高が高い場所へ移動した場合は、気象変化による大気圧の低下に対して地理的要因による大気圧の低下が加わるため、天気痛を発症するおそれがあるが、そのような場合であっても上記実施形態の治療器を実施すれば、天気痛を予防することができる。
〈第6実施形態〉
次に、この発明の第6実施形態について図を参照して説明する。
図21は、この実施形態の治療器の外観を示す説明図であり、図22は、治療器の使用状態を示す説明図である。
この実施形態の治療器1は、眼鏡のツルに電極を取付けたことを特徴とする。この実施形態の治療器1は、右側電極12および左側電極14の取付け構造以外は、第4実施形態と同じ構成および機能である。第4実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図21に示すように、この実施形態の治療器1は、刺激信号出力装置17と、眼鏡70と、右側のツル71の後端に取付けられた右側電極12と、左側のツル72の後端に取付けられた左側電極14と、刺激信号出力装置17と各電極とを接続する接続コード15,16とを備える。図22に示すように、眼鏡70は、使用者Hが装着したときに、右側電極12が右側の乳様突起またはその近傍に当接し、左側電極14が左側の乳様突起またはその近傍に当接するように構成されている。図示の例では、眼鏡70は、レンズまたはガラスが入っているが、それらが入っていないフレームだけでも良い。
[第6実施形態による効果]
上述したように、第6実施形態の治療器1を実施すれば、使用者Hは、眼鏡70を装着するだけで、各電極が左右の乳様突起またはその近傍に当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
また、一般の眼鏡のツルを利用して各電極を取付けることもできる。たとえば、ツルの後端から乳様突起またはその近傍までの長さに形成された可撓性のアームと、このアームの一端をツルの後端に着脱可能に取付けるための取付け部材と、上記アームの他端に取付けられた電極と、電極と刺激信号出力装置17とを接続する接続コードとから構成する。この構成の治療器を実施すれば、普段眼鏡を使用している者は、新たに眼鏡70を購入するとともに眼鏡70にレンズを入れる必要がないため、治療器のコストを低減することができる。
なお、上述した第6実施形態の治療器1が、この出願の請求項17に係る発明に対応する。
〈第7実施形態〉
次に、この発明の第7実施形態について図を参照して説明する。
図23は、この実施形態の治療器の外観を示す説明図である。
この実施形態の治療器1は、眼鏡のツルに電極および刺激信号出力装置を取付けたことを特徴とする。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図23に示すように、この実施形態の治療器1は、携帯端末20と、眼鏡70と、右側のツル71の後端に取付けられた右側電極12と、左側のツル72の後端に取付けられた左側電極14と、左のツル72に取付けられた刺激信号出力装置17と、右側電極12と刺激信号出力装置17とを電気的に接続する接続コード18とを備える。刺激信号出力装置17は、左側のツル72の後端と一体的に形成されている。また、図示を省略するが、刺激信号出力装置17には、第1実施形態において図2(a)に示した電源スイッチ17aと、電源LED17bと、強度プラスボタン17dと、強度マイナスボタン17eと、強度表示LED17cとが設けられている。
刺激信号出力装置17および携帯端末20は、Bluetooth(登録商標)によって相互通信を行う。携帯端末20は、使用者Hが存在する場所の気象情報または大気圧情報をインターネットを介して受信し、その受信した情報を解析して大気圧が低下した、あるいは、低下すると判定した場合に、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信する。そして、その出力命令信号を受信した刺激信号出力装置17は、刺激信号を右側電極12および左側電極14へ出力し、使用者Hの左右の前庭神経を電気刺激し、天気痛を予防または改善する。
[第7実施形態による効果]
上述したように、第7実施形態の治療器1を実施すれば、使用者Hは、眼鏡70を装着するだけで、各電極が左右の乳様突起またはその近傍に当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
しかも、眼鏡70とは別個に刺激信号出力装置17を携帯する必要がないため、利便性を高めることができる。
なお、上述した第7実施形態の治療器1が、この出願の請求項20に係る発明に対応する。
〈第8実施形態〉
次に、この発明の第8実施形態について図を参照して説明する。
図24は、この実施形態の治療器の使用状態を示す説明図である。
この実施形態の治療器1は、ステレオタイプのヘッドフォンに電極および刺激信号出力装置を取付けたことを特徴とする。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図24に示すように、この実施形態の治療器1は、治療器本体10および携帯端末20を備える。携帯端末20は、音楽再生装置としての機能を備える。ヘッドフォン80は耳掛け式ヘッドフォンであり、スピーカが内蔵されたイヤーパッド81,81(右耳用のイヤーパッド81は図示していない)と、耳掛け部材82,82(右耳用の耳掛け部材82は図示していない)と、右耳用のイヤーパッド81と携帯端末20とを電気的に接続する接続コード84と、左耳用のイヤーパッド81と携帯端末20とを電気的に接続する接続コード85とを備える。
治療器本体10は、刺激信号出力装置17と、右側電極12(図示せず)と、左側電極14と、アーム83,83(右側のアーム83は図示せず)と、刺激信号出力装置17と右側電極12とを電気的に接続する接続コード18とを備える。刺激信号出力装置17は、耳掛け部材82に着脱可能に取付けられている。刺激信号出力装置17にはアーム83の一端が取付けられており、アーム83の他端には左側電極14が取付けられている。アーム83の内部には、刺激信号出力装置17と左側電極14とを電気的に接続するための接続コードが内蔵されている。アーム83は、合成樹脂などの材料によって形成されており、可撓性を有し、使用者Hは、アーム83の形状を変えることにより、左側電極14を左側の乳様突起またはその近傍に当接させる。
刺激信号出力装置17および携帯端末20は、Bluetooth(登録商標)によって相互通信を行う。携帯端末20は、使用者Hが存在する場所の気象情報または大気圧情報をインターネットを介して受信し、その受信した情報を解析して大気圧が低下した、あるいは、低下すると判定した場合に、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信する。そして、その出力命令信号を受信した刺激信号出力装置17は、刺激信号を右側電極12および左側電極14へ出力し、使用者Hの左右の前庭神経を電気刺激し、天気痛を予防または改善する。また、使用者Hは、携帯端末20にて選曲した好きな音楽をヘッドフォン80で聞きながら天気痛を予防または改善することができる。
[第8実施形態による効果]
上述したように、第8実施形態の治療器1を実施すれば、使用者Hは、ヘッドフォン80を装着することにより、各電極12,14が左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
しかも、使用者Hは、ヘッドフォン80によって音楽を聴きながら治療を行うこともできる。
さらに、刺激信号出力装置17がヘッドフォン80に設けられているため、ヘッドフォン80とは別個に刺激信号出力装置17を携帯する必要がないので、利便性を高めることができる。
なお、上述した第8実施形態の治療器1が、この出願の請求項15に係る発明に対応する。
〈第9実施形態〉
次に、この発明の第9実施形態について図を参照して説明する。
図25(a)は、この実施形態の治療器の使用状態を示す説明図であり、(b)はヘッドフォンの側面拡大図である。
この実施形態の治療器1は、ワイヤレスでインナーイヤータイプのステレオヘッドフォンに電極および刺激信号出力装置を設けたことを特徴とする。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図25に示すように、この実施形態の治療器1は、ヘッドフォン90および携帯端末20を備える。携帯端末20は、音楽再生装置としての機能を備えており、Bluetooth(登録商標)によってヘッドフォン90へ音楽信号を送信する。図25(b)に示すように、ヘッドフォン90は、ワイヤレスでインナーイヤータイプのステレオヘッドフォンであり、右耳用の右側ユニット91と、左耳用の左側ユニット93とを備える。右側ユニット91は、右耳の外耳道へ挿入するイヤーピース92を備えており、そのイヤーピース92の外周面には、右側電極12が形成されている。左側ユニット93は、左耳の外耳道へ挿入するイヤーピース94を備えており、そのイヤーピース94の外周面には、左側電極14が形成されている。
また、右側ユニット91には、携帯端末20との間で通信を行うための通信回路95が内蔵されており、左側ユニット93には、刺激信号出力装置17が内蔵されている。右側ユニット91および左側ユニット93には、音を発生するドライバユニット(図示省略)がそれぞれ内蔵されている。右側ユニット91および左側ユニット93は、接続コード18によって電気的に接続されている。接続コード18には、通信回路95と左側ユニット93に内蔵されたドライバユニットとを電気的に接続する接続線と、左側ユニット93に内蔵された刺激信号出力装置17と右側電極12とを電気的に接続する接続線とが内蔵されている。
使用者Hが、右側ユニット91のイヤーピース92を右耳の外耳道に挿入すると、イヤーピース92の外周面に形成された右側電極12が、右耳の外耳道の内壁に当接し、左側ユニット93のイヤーピース94を左耳の外耳道に挿入すると、イヤーピース94の外周面に形成された左側電極14が、左耳の外耳道の内壁に当接する。
つまり、ヘッドフォン90は、音楽を再生する他、左右の前庭神経を電気刺激することができる構成になっている。
携帯端末20は、使用者Hが存在する場所の気象情報または大気圧情報をインターネットを介して受信し、その受信した情報を解析して大気圧が低下した、あるいは、低下すると判定した場合に、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信する。そして、その出力命令信号を受信した刺激信号出力装置17は、刺激信号を右側電極12および左側電極14へ出力し、使用者Hの左右の前庭神経を電気刺激し、天気痛を予防または改善する。また、使用者Hは、携帯端末20にて選曲した好きな音楽をヘッドフォン80で聞きながら天気痛を予防または改善することができる。
[第9実施形態による効果]
上述したように、第9実施形態の治療器1を実施すれば、使用者Hは、ヘッドフォン90を装着することにより、各電極12,14が左右の外耳道、つまり、左右の乳様突起の近傍にそれぞれ当接した状態を容易に作り出すことができるため、治療の準備の煩わしさを軽減することができる。
しかも、使用者Hは、ヘッドフォン90によって音楽を聴きながら治療を行うこともできる。
さらに、刺激信号出力装置17がヘッドフォン90に内蔵されているため、ヘッドフォン90とは別個に刺激信号出力装置17を携帯する必要がないので、利便性を高めることができる。
さらに、各電極が左右の外耳道に挿入されるため、外部から電極が目立たないので、外見を気にする必要がない。
なお、上述した第9実施形態の治療器1が、この出願の請求項16に係る発明に対応する。
〈第10実施形態〉
次に、この発明の第10実施形態について図を参照して説明する。
図26(a),(b)は、この実施形態の治療器を構成する携帯端末の操作画面の説明図である。図27は、携帯端末の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
この実施形態の治療器1は、第8実施形態の治療器1(図24)と同じ外観構成であるが、治療器本体10および携帯端末20の機能が異なる。第8実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
携帯端末20にインストールされた治療アプリを起動すると、図26(a)に示すように、表示部21の画面21aには、「治療アプリ起動中」というメッセージと、電気刺激を開始するために操作する刺激開始ボタンB1と、電気刺激を停止するために操作する刺激停止ボタンB2とが表示されている。使用者Hが、治療アプリ起動中に刺激開始ボタンB1に触れると、つまり、刺激開始ボタンB1をオンすると、携帯端末20の命令によって刺激信号出力装置17(図24)が刺激信号を右側電極12および左側電極14へ出力し、使用者Hの左右の前庭神経を電気刺激する。また、使用者Hが、電気刺激中に刺激停止ボタンB2に触れると、つまり、刺激停止ボタンB2をオンすると、携帯端末20の命令によって刺激信号出力装置17が刺激信号の出力を停止する。
また、図26(b)に示すように、治療アプリの設定画面21bを開くと、強度プラスボタンB3と、強度マイナスボタンB4と、強度表示部H1と、刺激している時間を増加させるために操作する刺激時間増加ボタンB5と、刺激している時間を減少させるために操作する刺激時間減少ボタンB6と、タイマー表示部H2とが表示される。
この実施形態では、刺激信号の強度は1〜10の10段階のレベルに設定可能になっており、刺激時間は1〜60分の範囲において1分単位で設定可能になっている。図示の例では、刺激信号の強度はレベル3に設定されており、刺激時間は15分に設定されている。
次に、携帯端末20に内蔵された制御回路が実行する処理の流れについて図27を参照して説明する。
制御回路は、治療開始フラグがオンしているか否かを判定し(S110)、オンしていないと判定した場合は(S110:No)、治療アプリが起動中であるか否かを判定する(S111)。ここで、制御回路は、治療アプリが起動中であると判定した場合は(S111:Yes)、大気圧に関する情報を提供するサーバーからインターネットを介して大気圧Pを取得する(S112)。続いて、制御回路は、S112において取得した大気圧Pが、予め設定されている大気圧Pa以下であるか否かを判定し(S113)、肯定判定した場合は(S113:Yes)、大気圧が低下していることを示す画像を表示部21に表示し、大気圧の低下を報知する(S114)。
続いて、制御回路は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S115)、治療開始フラグをオンし(S116)、刺激時間を計測するタイマーをセットし、刺激時間の計測を開始する(S117)。
そして、制御回路は、次の処理サイクルで、治療開始フラグがオンしていると判定し(S110:Yes)、先のS117においてセットした治療時間がタイプアップしたか否かを判定する(S118)。ここで、制御回路は、タイムアップしたと判定した場合は(S118:Yes)、刺激信号出力装置17に対して刺激信号の出力を停止させ(S119)、治療開始フラグをオフする(S120)。
続いて、制御回路は、刺激開始ボタンB1(図26(a))がオンしたか否かを判定し(S121)、オンしたと判定した場合は(S121:Yes)、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信する(S122)。続いて、制御回路は、治療開始フラグをオンし(S123)、治療時間を計測するタイマーをセットし(S124)、大気圧Pを取得する(S125)。続いて、その取得した大気圧Pが、予め設定されている大気圧Paよりも高いか否かを判定し(S126)、高いと判定した場合は(S126:Yes)、予め設定されている大気圧Paを、S125において取得した大気圧Pに変更する(S127)。たとえば、刺激開始ボタンB1がオンしたときに取得した大気圧が995hPaであり、設定値が990hPaであった場合は、995hPaを設定値に変更することができる。
[第10実施形態による効果]
上述したように、第10実施形態の治療器1を実施すれば、取得した大気圧が設定値以下のときに使用者Hの左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激するが、使用者Hが刺激開始ボタンB1をオンして左右の前庭神経を電気的刺激したときの大気圧が設定値よりも高かった場合は、その大気圧を設定値に変更することができる。
したがって、第10実施形態の治療器1を実施すれば、設定値よりも高い大気圧でも症状が出るような使用者Hであっても天気痛の症状を改善することができる。
なお、上述した第10実施形態の治療器1が、この出願の請求項24に係る発明に対応する。また、刺激信号出力装置17および携帯端末20が請求項24に記載の電気刺激装に対応する。
〈第10実施形態の変更例〉
刺激開始ボタンB1がオンしたときに取得した大気圧が設定値よりも高かった場合は、その設定値を、刺激開始ボタンB1がオンしたときに取得した大気圧に所定値を加算した値に変更することもできる。たとえば、刺激開始ボタンB1がオンしたときに取得した大気圧が995hPaであり、設定値が990hPaであった場合は、995hPaに5hPa(所定値)を加算した1000hPaを設定値に変更することができる。
つまり、設定値を、刺激開始ボタンB1がオンしたときに取得した大気圧よりもさらに高い大気圧に変更することもできる。
したがって、症状が出たときの大気圧よりも高い大気圧のときに電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
なお、上述した第10実施形態の変更例の治療器1が、この出願の請求項25に係る発明に対応する。
〈第11実施形態〉
次に、この発明の第11実施形態について図28を参照して説明する。
図28は、この実施形態において電気刺激装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。第10実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
制御回路は、治療開始フラグがオンしているか否かを判定し(図28のS130)、オンしていないと判定した場合は(S130:No)、治療アプリが起動中であるか否かを判定する(S131)。ここで、制御回路は、治療アプリが起動中であると判定した場合は(S131:Yes)、大気圧に関する情報を提供するサーバーからインターネットを介して大気圧Pを取得し(S132)、所定時間毎の大気圧の変動量ΔPを算出する(S133)。続いて、制御回路は、S133において算出した変動量ΔPが、予め設定されている変動量(以下、設定変動量という)Pv以上であるか否かを判定し(S134)、肯定判定した場合は(S134:Yes)、大気圧が低下していることを示す画像を表示部21に表示し、大気圧の低下を報知する(S135)。
続いて、制御回路は、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(136)、治療開始フラグをオンし(S137)、刺激時間を計測するタイマーをセットし、刺激時間の計測を開始する(S138)。
そして、制御回路は、次の処理サイクルで、治療開始フラグがオンしていると判定し(S130:Yes)、先のS138においてセットした治療時間がタイプアップしたか否かを判定する(S139)。ここで、制御回路は、タイムアップしたと判定した場合は(S139:Yes)、刺激信号出力装置17に対して刺激信号の出力を停止させ(S140)、治療開始フラグをオフする(S141)。
続いて、制御回路は、刺激開始ボタンB1(図26(a))がオンしたか否かを判定し(S142)、オンしたと判定した場合は(S142:Yes)、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信する(S143)。続いて、制御回路は、治療開始フラグをオンし(S144)、治療時間を計測するタイマーをセットし、刺激時間の計測を開始する(S145)。続いて、制御回路は、直前、つまり、前回の処理サイクルのS133において算出した変動量ΔPを参照し(S146)、その変動量ΔPが、設定変動量Pvよりも少ないか否かを判定する(S147)。ここで、少ないと判定した場合は(S147:Yes)、設定変動量Pvを、S146において参照した変動量ΔP、つまり、前回の処理サイクルのS133において算出した変動量ΔPに変更する(S148)。つまり、刺激開始ボタンB1を押した直前の変動量ΔPに変更する。
たとえば、設定変動量Pvが5hPaであり、刺激開始ボタンB1を押した直前の変動量ΔPが3hPaであった場合は、設定変動量を5hPaから3hPaに変更する。
[第11実施形態による効果]
上述したように、第11実施形態の治療器1を実施すれば、大気圧の変動量が設定量以上低下しているときに使用者の左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激するが、使用者が刺激開始ボタンB1をオンして左右の前庭神経を電気的刺激したときの直前の大気圧の変動量が設定量よりも高かった場合は、その変動量を設定量に変更することができる。
したがって、第11実施形態の治療器1を実施すれば、設定量よりも少ない大気圧の変動量でも症状が出るような使用者であっても天気痛の症状を改善することができる。
なお、上述した第11実施形態の治療器1が、この出願の請求項26に係る発明に対応する。また、刺激信号出力装置17および携帯端末20が請求項26に記載の電気刺激装置に対応する。
〈第11実施形態の変更例〉
刺激開始ボタンB1がオンしたときの大気圧の変動量が設定量よりも少なかった場合は、その設定量を、刺激開始ボタンB1がオンしたときの大気圧の変動量から所定量を減算した値に変更することもできる。たとえば、設定変動量Pvが5hPaであり、刺激開始ボタンB1を押した直前の変動量ΔPが3hPaであった場合は、3hPaから1hPa(所定量)を減算した2hPaを設定変動量に変更する。
つまり、設定量を、刺激開始ボタンB1がオンしたときの直前の設定量よりもさらに少ない設定量に変更することもできる。
したがって、症状が出たときの大気圧の変動量よりも少ない変動量のときに電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
なお、上述した第11実施形態の変更例の治療器1が、この出願の請求項27に係る発明に対応する。
〈第12実施形態〉
次に、この発明の第12実施形態について図29および図30を参照して説明する。
図29は、この実施形態の治療器を構成する電気刺激装置に格納されている刺激強度学習テーブルの説明図である。図30は、電気刺激装置の制御回路が実行する制御の流れを示すフローチャートである。第11実施形態と同じ構成については同じ符号を用いる。
図29に示すように、刺激強度学習テーブルは、所定時間毎の大気圧の変動量ΔP(hPa)と、使用者Hが選択した刺激強度と、最適刺激強度とを対応付けて構成されている。最適刺激強度は、制御回路が、刺激強度学習テーブルに格納された複数の刺激強度に基づいて学習して決定した刺激強度であり、使用者Hの症状を緩和するために最適の刺激強度である。この実施形態では、最適刺激強度は、各変動量ΔP毎に決定し、かつ、刺激強度学習テーブルに格納された刺激強度のうち、格納数の多い刺激強度に決定する。図示の例では、3≦ΔP<4に対して刺激強度2が3個、刺激強度3が1個それぞれ格納されているため、変動量が3hPa以上4hPa未満であった場合は、刺激強度2に決定する。
また、異なる刺激強度が同じ数ずつ格納されている場合は、強い方の刺激強度に決定する。図示の例では、4≦ΔP<5に対して刺激強度2,3がそれぞれ2個ずつ格納されているため、変動量が4hPa以上5hPa未満であった場合は、刺激強度3に決定する。
制御回路は、治療開始フラグがオンしているか否かを判定し(図30のS150)、オンしていないと判定した場合は(S150:No)、治療アプリが起動中であるか否かを判定する(S151)。ここで、制御回路は、治療アプリが起動中であると判定した場合は(S151:Yes)、大気圧に関する情報を提供するサーバーからインターネットを介して大気圧Pを取得し(S152)、所定時間毎の大気圧の変動量ΔPを算出する(S153)。続いて、制御回路は、S153において算出した変動量ΔPが、予め設定されている変動量Pv以上であるか否かを判定し(S154)、肯定判定した場合は(S154:Yes)、大気圧が低下していることを示す画像を表示部21に表示し、大気圧の低下を報知する(S155)。
続いて、制御回路は、刺激強度学習テーブル(図29)を参照し(S156)、最適刺激強度を決定する(S157)。続いて、刺激信号を出力させるための出力命令信号を刺激信号出力装置17(図24)へ送信し(158)、治療開始フラグをオンし(S159)、刺激時間を計測するタイマーをセットし、刺激時間の計測を開始する(S160)。
そして、制御回路は、次の処理サイクルで、治療開始フラグがオンしていると判定し(S150:Yes)、先のS160においてセットした治療時間がタイプアップしたか否かを判定する(S161)。ここで、制御回路は、タイムアップしたと判定した場合は(S161:Yes)、刺激信号出力装置17に対して刺激信号の出力を停止させ(S162)、治療開始フラグをオフする(S163)。
続いて、制御回路は、刺激開始ボタンB1(図26(a))がオンしたか否かを判定し(S164)、オンしたと判定した場合は(S164:Yes)、このとき、携帯端末20において設定されている刺激強度を、刺激開始ボタンB1がオンした直前、つまり、1つ前の処理サイクルのS153において算出した変動量と対応付けて刺激強度学習テーブルに格納する(S165)。たとえば、刺激開始ボタンB1がオンしたと判定したときに設定されている刺激強度が3であり、刺激開始ボタンB1がオンしたときの直前に算出された変動量ΔPが4.5hPaであった場合は、刺激強度学習テーブルの4≦ΔP<5に対応付けて刺激強度3を格納する。
続いて、制御回路は、出力命令信号を刺激信号出力装置17へ送信し(S166)、治療開始フラグをオンし(S167)、治療時間を計測するタイマーをセットし、刺激時間の計測を開始する(S168)。
[第12実施形態による効果]
上述したように、第12実施形態の治療器1を実施すれば、刺激開始ボタンB1がオンしたときの直前に算出した変動量と、刺激開始ボタンB1がオンしたときの刺激の強度とを対応付けて刺激強度学習テーブルに格納し、大気圧の変動量が設定量以上低下しているときは、刺激強度学習テーブルにおいて、変動量と対応付けられている刺激の強度の中から最適の刺激強度を割り出し、その割り出した刺激の強度の刺激信号によって使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することができる。
したがって、第12実施形態の治療器1を実施すれば、大気圧が変動したときに最適の刺激強度により左右の前庭神経を電気的に刺激することができるため、天気痛の治療効果を高めることができる。
ところで、右側電極12および左側電極14が当接する箇所の皮膚抵抗は、皮膚の湿潤の度合いや大気の湿度などの要因によって変化するため、天気痛の緩和に必要な刺激強度は、その要因によって変化する。
また、天気痛の症状が改善してくると、前庭神経の感受性が低くなることがある。さらに、前庭神経に電気的刺激を与える治療を繰り返した場合、前庭神経が電気的刺激に慣れて感受性が低くなることがある。
つまり、天気痛の効果的な治療に必要な刺激強度は、上述したいくつかの要因によって変化するため、一定の強度に決めることが困難である。
しかし、上述した第12実施形態の治療器1は、上記の各要因により、使用者Hが使った刺激強度にばらつきが生じた場合であっても、最適な刺激強度によって治療を行うことができるため、治療効果を高めることができる。
なお、上述した第12実施形態の治療器1が、この出願の請求項28に係る発明に対応する。また、刺激信号出力装置17および携帯端末20が請求項28に記載の電気刺激装置に対応する。また、使用者Hが刺激開始ボタンB1をオンする操作が、請求項28に記載の第1の操作に対応し、強度プラスボタンB3または強度マイナスボタンB4の操作が第2の操作に対応する。
〈第12実施形態の変更例〉
制御回路が実行するS165において、刺激開始ボタンB1がオンしたときの刺激強度と、刺激開始ボタンB1がオンした直前に算出した変動量から所定量を減算した変動量とを対応付けて刺激強度学習テーブルに格納することもできる。たとえば、刺激開始ボタンB1がオンしたと判定したときの刺激強度が3であり、刺激開始ボタンB1がオンしたときの直前に算出された変動量ΔPが4.5hPaであった場合は、4.5hPaから1.0hPa(所定量)減算した3.5hPa(3≦ΔP<4)に対応付けて刺激強度3を刺激強度学習テーブルに格納する。
したがって、症状が出たときの大気圧の変動量よりも少ない変動量のときに最適な刺激強度により電気的な刺激を開始することができるため、天気痛を予防することができる。
なお、上述した第12実施形態の変更例の治療器1が、この出願の請求項29に係る発明に対応する。
〈第13実施形態〉
次に、この発明の第13実施形態について説明する。
この実施形態の治療器1は、使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する刺激信号出力装置17(図24)と、この刺激信号出力装置17が出力した刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の右側電極12および左側電極14と、大気圧に関する情報に基づいて刺激信号出力装置17を制御する携帯端末20(図24)とを備える。また、携帯端末20は、刺激信号出力装置17を制御する更新可能なコンピュータプログラムが記憶された記憶部と、上記コンピュータプログラムを実行するCPUとを備える。
コンピュータプログラムは、使用者の天気痛を治療するための治療アプリであり、使用者Hの個人差に対応した刺激強度および大気圧の関係などに基づいてプログラムされている。たとえば、前庭神経の感受性が元々高い使用者Hには、大気圧の変動量が少ないときから弱い刺激強度で治療を開始できるようにプログラムする。また、前述した実験2において説明したように、予め、前庭神経知覚閾値またはストレス指標などを実験により求めておき、その実験結果に基いて使用者毎の治療アプリを作成すれば、個人差を解消することができるため、治療効果を高めることができる。CPUは、治療アプリを起動しているときに大気圧に関する情報をインターネットを介して取得し、その取得した大気圧に基づいて刺激信号出力装置17を制御する。
上記の記憶部は、CPUと電気的に接続されたデータ書換え可能なROM、または、着脱可能なSDカードなどの記憶媒体である。治療アプリは、PC(パーソナルコンピュータ)からSDカードなどの着脱可能な記憶媒体に記録し、それを治療器にセットしても良いし、治療器とPCとを無線または有線で接続し、PCから治療器に治療アプリをインストールしても良い。また、治療器がインターネットを介した通信機能を有する場合は、治療アプリを提供するサーバーからインターネットを介して更新プログラムをインストールすることにより、治療アプリを更新することができる。また、刺激信号出力装置17および携帯端末20は同一のハウジング内に設けても良いし、別体でも良い。
[第13実施形態による効果]
上述した第13実施形態の治療器1を実施すれば、使用者Hの個人差に対応したコンピュータプログラムを作成し、そのコンピュータプログラムに基づいて天気痛を治療することができる。
しかも、治療の方針や治療内容などを変更する場合に、その変更内容をコンピュータプログラムに反映させることができるため、治療器1を買い換える必要がないので、治療費用を抑制することもできる。
なお、上述した第13実施形態の治療器1が、この出願の請求項30に係る発明に対応する。また、刺激信号出力装置17が請求項30に記載の刺激信号出力部に対応し、携帯端末20が制御部に対応する。
〈第14実施形態〉
次に、この発明の第14実施形態について説明する。
この実施形態の治療器は、使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することにより、使用者Hの天気痛の症状を緩和するという手法については、前述の各実施形態と共通であるが、大気圧の変動に基づいて前庭神経を電気的に刺激するのではなく、使用者Hの左右の鼓膜の温度差に基づいて前庭神経を電気的に刺激することを特徴とする。
図31は、この実施形態の治療器の電気的構成をブロックで示す説明図である。なお、第1および第4実施形態の治療器と共通の構成については共通の符号を用いて説明する。また、以下の説明では、鼓膜の温度を鼓膜温度と、鼓膜の温度差を鼓膜温度差とそれぞれ略称する。
(治療器100の電気的構成)
図31に示すように、この実施形態の治療器100は、鼓膜温度センサー101,102と、刺激信号出力装置17とを備える。刺激信号出力装置17は、温度測定部103と、スイッチ回路17nと、表示回路105と、調節回路17gと、制御回路104と、刺激信号出力回路17jと、バッテリ17iとを備える。鼓膜温度センサー101は、使用者Hの右の鼓膜温度を検出するセンサーであり、鼓膜温度センサー102は左の鼓膜温度を検出するセンサーである。鼓膜温度センサー101は、右の鼓膜から放出される赤外線量を検出し、その検出量に対応する信号を温度測定部103へ出力する。鼓膜温度センサー102は、左の鼓膜から放出される赤外線量を検出し、その検出量に対応する信号を温度測定部103へ出力する。温度測定部103は、各鼓膜温度センサ−101,102から出力される各信号に基づいて、使用者Hの左右の鼓膜の温度を測定し、その各測定値に基づいて左右の鼓膜の温度差を算出し、その算出結果を制御回路104に出力する。
制御回路104は、温度測定部103から出力される算出結果を入力し、その入力した算出結果が、制御回路104に予め設定されている設定値以上であるか否かを判定し、肯定判定した場合は、刺激信号の出力を命令する出力命令信号を刺激信号出力回路17jに出力する。そして、刺激信号出力回路17jは、刺激信号を接続コード15を介して右側電極12へ出力し、接続コード16を介して左側電極14へ出力する。スイッチ回路17nは、電源スイッチ17aのオン・オフを検出する。表示回路17fは、スイッチ回路17nがオンしたときに電源LED17bを点灯し、刺激信号の出力中、つまり天気痛の治療中であることを表示する治療中表示LED106を点灯する。
各鼓膜温度センサー101,102は、使用者Hの外耳道に挿入可能な棒状のプローブをそれぞれ備える。各鼓膜温度センサー101,102は、使用者Hの両耳に掛けることができるように構成することができる。たとえば、前述の第4実施形態の治療器1に備えられたヘッドバンド60(図16)を利用することができる。上記プローブをパッド62の内側から突出するように設け、各プローブに接続された接続コード(図示省略)を刺激信号出力装置17に接続する。各プローブに接続された各接続コードと、左右の電極12,14と接続された各接続コード15,16とを撚り合わせても良いし、両接続コードを被覆した1本の接続コードにしても良い。左右の電極12,14は、図16に示すように、一端がパッド62に取付けられたアーム61の他端にそれぞれ取付けることができる。このように構成することにより、各鼓膜温度センサー101,102および左右の電極12,14を一体化することができ、ヘッドバンド60を装着すれば、左右の鼓膜温度の測定と左右の乳様突起の電気刺激とを容易に行うことができる。しかも、各鼓膜温度センサー101,102および左右の電極12,14を別個に携帯する必要がないため、携帯性に優れ、便利である。
[実験3]
この出願の発明者らは、天気痛患者の左右の鼓膜温度と、大気圧との関係を調べる実験を行った。
(実験の背景)
この出願の発明者らは、前述の実験1,2の各結果から、天気痛患者は、大気圧が低下すると、目眩や疼痛、あるいは、ストレスが大きくなるなどの症状が発現するが、前庭神経を前庭神経知覚閾値以下の刺激信号によって電気刺激すると、上記症状が緩和されるという知見を得た。
そこで、発明者らは、上記の知見に基づいて、次のような仮説を立てた。
先ず、天気痛患者の前庭神経が健康人よりも敏感なのは、前庭神経のメカニズムに何らかの問題があり、それによって上記症状が発現するのではないかという仮説を立てた。
そして、上記の問題とは、天気痛患者が本来持っている前庭神経の左右の感度差が、大気圧低下によってより一層大きくなることではないかと推測した。つまり、前庭神経の左右の感度差が大きくなると、頸部自律神経のアンバランスが大きくなり、それによって左右の頸骨動脈の血流量差が大きくなり、それが原因で前記の症状が発現するのではないかと推測した。
そして、前庭神経の左右の感度差が大きくなった状態を検出できれば、大気圧を測定しなくても、前庭神経を電気刺激することにより、前述の症状の発現を抑制または緩和できるのではないかと推測した。
ここで、頸骨動脈の血流量を測定すれば、前庭神経の左右の感度差を測定できると考えられたが、天気痛患者が日常生活において頸骨動脈の血流量を測定することは困難であるため、他に測定の手法がないか考えた。
そこで、頸骨動脈から前庭に分岐している血管の血流量は、頸骨動脈の血流量を反映しており、前庭を囲んでいる血管の血流量は、内耳の温度、つまり鼓膜温度を反映しているから、左右の鼓膜温度差を測定することができれば、前庭神経の左右の感度差が大きくなった状態、つまり、天気痛を発症する状態であるか否かを予測できると考えた。
次に、この出願の発明者らは、上述した仮説を検証するための実験を行った。
1.被験者
この実験の被験者は、天気痛患者2名および健康人2名の計4名で行った。天気痛患者の2名は、26歳の女性(MI)と、69歳の女性(SK)であり、健康人の2名は、49歳の男性(HI)と、43歳の男性(HS)である。
2.実験装置
この実験では、一対の鼓膜温度センサーと、ワイマチック株式会社製のBL-100と、実験1において使用した低気圧チャンバーとを使用した。BL-100は、鼓膜温度センサーの検出量をデータ化してBlueToothにてPCへ送信するデータロガーである。
3.実験方法
前述した実験2と同じ手法により、被験者2名の前庭神経知覚閾値を測定した。この測定の結果、前庭神経知覚閾値は、被験者MIが、0.31mAであり、被験者SKが、0.24mAであった。
そして、実験2と同じプロトコルに従って低気圧チャンバーの大気圧を変化させながら、各被験者の左右の鼓膜温度と、LF/HFとを測定した。また、この測定は、大気圧を変化させただけの場合、内耳を電気刺激した場合、抗めまい薬を服用した場合の計3つの場合について行った。
4.実験結果
(1)図32において上のグラフは、健康被験者HIの左右の鼓膜温度差と大気圧との関係を示すグラフであり、下のグラフは、健康被験者HSの左右の鼓膜温度差と大気圧との関係を示すグラフである。ここで、%TMTAとは、Tympanic Membrane Temperature Asymmetry(鼓膜温度非対称)の略であり、温度変化の大きい方の鼓膜温度から温度変化の小さい方の鼓膜温度を減算した値を、左右の鼓膜温度の和で除した値の百分率を示す。
図32の各グラフから、2名の健康被験者では、大気圧変動による左右の鼓膜温度差の変化は小さいことが分かる。
(2)図33は、天気痛被験者MIの左右の鼓膜温度と大気圧との関係を示すグラフである。図34は、図33の左右鼓膜温度の%TMTAと大気圧との関係を示すグラフである。図33および図34の各グラフから、大気圧の低下開始から約17分経過したころから、左耳の鼓膜温度は上昇していないが、右耳の鼓膜温度が急激に上昇していることが分かる。つまり、大気圧の低下開始から所定時間経過すると、左右の鼓膜温度差が急激に大きくなっていることが分かる。左右の鼓膜温度差が最大になったときの右耳の鼓膜温度は36.76℃であり、左耳の鼓膜温度は35.98℃であり、左右の鼓膜温度差の最大値は0.78℃であった。また、%TMTAの最大値は1.07%であった。つまり、左右の鼓膜温度差が非常に大きいことが分かった。また、天気痛被験者MIは、左右の鼓膜温度差が大きくなってきたとき、偏頭痛の発現とともに右耳の奥が熱くなってきたことを訴えた。
また、各グラフから、大気圧が低下した状態から上昇を開始しても、しばらくの間、左右の鼓膜温度差が大きい状態が続いていることが分かる。
そして、図34のグラフに示すように、大気圧が低下する前から前庭神経知覚閾値の60%で内耳を電気刺激した場合は、大気圧が変化しても左右の鼓膜温度差は大きくなっていない。このときの%TMTAの最大値は0.3%であった。また、この電気刺激により、天気痛被験者MIは、偏頭痛が緩和され、右耳の奥が熱くなることはなかったと報告した。また、実験開始の1時間前に抗めまい薬であるドラマミン(薬品名:ジメンヒドリナート、ドラマミンは大正製薬株式会社の登録商標)(50mg)を服用した場合も、大気圧が変化しても左右の鼓膜温度差は大きくなっていない。このときの%TMTAの最大値は0.22%であった。また、このドラマミン服用により、天気痛被験者MIは、偏頭痛が緩和され、右耳の奥が熱くなることはなかったと報告した。
(3)図35は、天気痛被験者SKの左右鼓膜温度と大気圧との関係を示すグラフである。図36は、図35の左右鼓膜温度の%TMTAと大気圧との関係を示すグラフである。図35および図36の各グラフから、大気圧の低下開始から数分経過すると、左右の鼓膜温度差が大きくなり、その状態が数分間続いていることが分かる。左右の鼓膜温度差が最大になったときの右耳の鼓膜温度は36.45℃であり、左耳の鼓膜温度は36.21℃であり、左右の鼓膜温度差の最大値は0.24℃であった。また、%TMTAの最大値は0.33%であった。つまり、左右の鼓膜温度差が健康被験者と比較すると大きいことが分かった。
また、天気痛被験者SKは、左右の鼓膜温度差が大きくなってきたとき、足全体が痛くなったと訴えた。
そして、図36のグラフに示すように、大気圧が低下する前から前庭神経知覚閾値の60%で内耳を電気刺激した場合は、大気圧が変化しても左右の鼓膜温度差は大きくなっていない。このときの%TMTAの最大値は0.18%であった。また、この電気刺激により、天気痛被験者SKは、足の痛みが緩和されたと報告した。また、実験開始の4時間前に抗めまい薬であるメリスロン(薬品名:ベタヒスチンメシル、メリスロンはエーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社の登録商標)(6mg)を服用した場合も、大気圧の変化による左右の鼓膜温度差は大きくなっていない。このときの%TMTAの最大値は0.18%であった。また、このメリスロン服用により、天気痛被験者SKは、足の痛みが緩和されたと報告した。
(4)図37は、この実験3における被験者MIのLF/HFと大気圧との関係を示すグラフである。図38は、この実験3における被験者SKのLF/HFと大気圧との関係を示すグラフである。なお、前述した実験2では、被験者2名の測定1〜3回目の平均を示した。その際、被験者の個人差による影響を減らし、各値の分布を正規分布に近づけるために2秒ごとに算出されるパワー値に対して自然対数(LN)をとり、さらに1分ごとにその値を平均した。しかし、この実験3では、個人内の比較であるため、2秒ごとに算出されるパワー値をそのまま表記している。
図37のグラフから、天気痛被験者MIは、大気圧が低下し始めると、直ぐにLF/HFの変動が出現し、その後、大気圧低下開始から15分を経過したころからLF/HFの変動が出現し、20分を経過するころにLF/HFが最大になっている。つまり、図34のグラフに示した左右の鼓膜温度差の変化態様と、LF/HFの変化態様とが略一致していることが分かった。つまり、左右の鼓膜温度差は、ストレス指標であるLF/HFと対応関係にあることが分かった。
そして、図37のグラフに示すように、大気圧が低下する前から前庭神経知覚閾値の60%で内耳を電気刺激した場合は、大気圧が変化してもLF/HFの値は大きくなっていないし、変化も大きくなっていない。つまり、ストレスが大きくなっていないことが分かる。また、実験開始の1時間前に抗めまい薬であるドラマミン(50mg)を服用した場合は、内耳を電気刺激した場合ほどLF/HFの値および変化は小さくなっていないが、電気刺激およびドラマミン服用の両方を行わない場合よりもLF/HFの値および変化は小さくなっている。つまり、ストレスが大きくなっていないことが分かる。
図38のグラフから、天気痛被験者SKは、大気圧の低下開始から数分経過すると、LF/HFの値および変化が大きくなり、その状態が数分間続いていることが分かる。つまり、図36のグラフに示した左右の鼓膜温度差の変化態様と、LF/HFの変化態様とが略一致していることが分かった。つまり、左右の鼓膜温度差は、ストレス指標であるLF/HFと対応関係にあることが分かった。
そして、図38のグラフに示すように、大気圧が低下する前から前庭神経知覚閾値の60%で内耳を電気刺激した場合は、大気圧が変化してもLF/HFの値は大きくなっていないし、変化も大きくなっていない。つまり、ストレスが大きくなっていないことが分かる。また、実験開始の4時間前に抗めまい薬であるメリスロン(6mg)を服用した場合も、大気圧が変化してもLF/HFの値は大きくなっていないし、変化も大きくなっていない。つまり、ストレスが大きくなっていないことが分かる。
5.結論
実験3の結果から、天気痛患者の左右の鼓膜温度差と大気圧との間には、相関関係があり、大気圧が低下すると左右の鼓膜温度差が大きくなることが分かった。このことから、左右の鼓膜温度差は、左右の前庭の血流量差、つまり、前庭神経の左右の感度差を反映していると推測した。そして、左右の鼓膜温度差を測定すれば、大気圧を測定しなくても大気圧の低下を予測または判定することができると結論した。
また、前庭神経を電気刺激することにより、天気痛の症状が緩和する理由については、前庭神経を前庭神経知覚閾値以下にて電気刺激することにより、前庭神経に確率共鳴現象が起き、これにより左右の前庭神経の感度差が正常化するからであると推測した。
[第14実施形態による効果]
(1)上述した第14実施形態の治療器100を実施すれば、使用者Hの左右の鼓膜温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されているため、天気痛を改善するために、手間および時間がかからず、かつ、薬を服用する必要がない治療器を実現することができる。
しかも、使用者がパーソナルコンピュータや携帯電話などを使用して大気圧を調べる必要がないため便利である。
(2)さらに、使用者Hの左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ部材を当接することにより、使用者Hの左右の前庭神経を電気的に刺激することができるため、左右の前庭神経を確実かつ効率的に刺激することができる。
[第14実施形態の他の実施形態]
(1)左右の鼓膜温度差の上昇率を測定し、その測定した上昇率が設定値以上のときに使用者Hの左右の前庭神経を電気刺激するように構成することもできる。
(2)超音波画像診断装置(エコー)やドップラー血流量計を用いて左右の頸骨動脈の血管径、流速および流量などの差を測定し、その測定結果に基づいて内耳を電気刺激することもできる。
〈気象非依存型慢性痛患者と左右の鼓膜温度差との関係〉
実験1の結果を示す図9から、天気痛ではないが慢性痛を有する患者、つまり気象非依存型慢性痛患者(図9では慢性痛被験者)は、前庭神経知覚閾値が天気痛患者(図9では天気痛被験者)よりも大きいが、健康人(図9では健康被験者)よりも小さいことが分かる。つまり、気象非依存型慢性痛患者は、左右の前庭神経の感度差が健康人よりも大きいと推測することができる。換言すると、気象非依存型慢性痛患者は、左右の前庭神経の感度差が大きいために自律神経がアンバランス状態になり易く、そのために、元々持っている疾患や病態が憎悪すると推測することができる。
したがって、気象非依存型慢性痛患者の左右の鼓膜温度差を測定すれば、左右の前庭神経の感度差の大きさ、つまり、自律神経のアンバランス状態の程度を知ることができるため、左右の鼓膜温度差が大きいときに、前庭神経を電気刺激することにより左右の前庭神経の感度差が小さくなり、自律神経のアンバランス状態の程度が小さくなり、慢性痛を緩和することができると推測することができる。
さらに、左右の前庭神経の感度差があるために、もともと頸部自律神経のアンバランスがあり、疼痛は無いがストレス症状が出ている人に対しても、左右の鼓膜温度差を測定することによりストレス状態を知ることができると推測した。そして、その測定結果に基づいて前庭神経を電気刺激することによりストレス症状を緩和することもできると推測した。
これらの推測から、気象の影響を受けて症状が発現することが多い天気痛患者ばかりでなく、気象以外の何らかの要因により慢性痛を抱えている気象非依存型慢性痛患者や、左右の前庭神経の感度差に起因するストレス症状を持っている人などにも前述した第14実施形態の治療器100を適用すれば、慢性痛やストレス症状を緩和することができると考えた。このように治療対象を天気痛患者以外の気象非依存型慢性痛患者などに拡大した治療器の技術的手段を次に記載する。
(技術的手段1
左右の前庭神経の感度差に起因する症状を改善するための治療器であって、
この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
(技術的手段2)
左右の前庭神経の感度差に起因する症状を改善するための治療器であって、
この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
(技術的手段3)
前記使用者の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えることを特徴とする技術的手段1に記載の治療器。
(技術的手段4)
前記使用者の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した温度差の上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
を備えることを特徴とする技術的手段2に記載の治療器。
〈他の実施形態〉
(1)第2実施形態の治療器1は、使用者Hが大気圧変動量Pv(図13のS35)を治療アプリの設定画面において変更することができる機能(設定値変更機能)を有する構成でもよい。
この治療器を実施すれば、天気痛を発症するきっかけとなる大気圧変動量の個人差に対応した治療を行うことができる。
(2)第3実施形態の治療器1は、位置情報テーブル(図14)をGPS位置情報書込み可能に構成し、使用者Hが、任意のGPS位置情報を書込むことができる機能(GPS位置情報書込み機能)を有する構成でもよい。たとえば、新しく建設された鉄道、高層ビル、空港などのGPS位置情報を位置情報テーブルに書込み可能に構成する。
この治療器を実施すれば、使用者Hは、治療器を使用した当初では設定されていなかった特定の場所へ移動した場合でも、天気痛を治療することができる。
(3)第4実施形態の治療器1は、使用者Hが予め設定されている大気圧Paを治療アプリの設定画面において変更することもできる機能(設定値変更機能)を有する構成でもよい。
この治療器を実施すれば、天気痛を発症するきっかけとなる大気圧の個人差に対応した治療を行うことができる。
1・・治療器、10・・治療器本体、12・・右側電極(部材)、
14・・左側電極(部材)、17・・刺激信号出力装置、17a・・電源スイッチ、
17d・・強度プラスボタン(調節装置)、
17e・・強度マイナスボタン(調節装置)、19・・バンド、20・・携帯端末、
70・・眼鏡、80,90・・ヘッドフォン。

Claims (33)

  1. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者が存在する場所の気象情報を取得し、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  2. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者が存在する場所の現在の大気圧または予測される大気圧を取得し、その取得した大気圧が設定値以下のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  3. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の前記所定時間毎の変動量を算出し、その算出した変動量が設定量以上低下しているときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  4. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    GPSを利用することにより、この治療器の使用者の位置情報を測定し、その測定した位置情報が、前記使用者が大気圧の低下する場所へ移動する可能性の高い位置を示す特定の位置情報である場合に前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  5. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  6. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するように構成されていることを特徴とする治療器。
  7. 通信により前記気象情報を取得するとともに、その取得した気象情報を解析し、大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧の低下が予測されると判定したときに出力命令信号を出力する携帯端末と、
    前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の治療器。
  8. 通信により前記現在の大気圧または予測される大気圧を取得し、その取得した大気圧が所定値以下であると判定したときに出力命令信号を出力する携帯端末と、
    前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項2に記載の治療器。
  9. 通信により前記現在の大気圧を前記所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量を算出し、その算出した変動量が所定量以上低下していると判定したときに出力命令信号を出力する携帯端末と、
    前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項3に記載の治療器。
  10. 前記GPSを利用することにより、前記使用者の位置情報を測定し、その測定した位置情報が前記特定の位置情報であると判定したときに出力命令信号を出力する携帯端末と、
    前記携帯端末とは別個に設けられており、前記携帯端末が出力した前記出力命令信号を入力したときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項4に記載の治療器。
  11. 前記使用者の左右の鼓膜の温度差を測定し、その測定した温度差が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項5に記載の治療器。
  12. 前記使用者の左右の鼓膜の温度差の上昇率を測定し、その測定した温度差の上昇率が設定値以上のときに前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する刺激信号を出力する刺激信号出力装置と、
    前記使用者の右の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材と、前記使用者の左の乳様突起またはその近傍に当接可能な部材とから成る一対の部材であって、前記刺激信号出力装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    を備えることを特徴とする請求項6に記載の治療器。
  13. 前記携帯端末および刺激信号出力装置は、無線通信により接続されていることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1つに記載の治療器。
  14. 両端に前記一対の部材の各部材がそれぞれ設けられており、前記使用者の頭部または首に装着可能なバンドを備えており、
    前記使用者が前記バンドを頭部または首に装着すると、一方の部材が右の乳様突起またはその近傍に当接し、他方の部材が左の乳様突起またはその近傍に当接するように構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器。
  15. 前記一対の部材の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォンの左右にそれぞれ取付けられており、かつ、前記使用者が前記ヘッドフォンを装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器。
  16. 前記一対の部材の各部材は、ステレオタイプのヘッドフォンの左右のうち前記使用者の左右の外耳道に挿入する部分にそれぞれ取付けられていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器。
  17. 前記一対の部材の各部材は、眼鏡の左右のツルの後部にそれぞれ取付けられており、かつ、前記使用者が前記眼鏡を装着したときに左右の乳様突起またはその近傍にそれぞれ当接するように構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の治療器。
  18. 前記刺激信号出力装置は、前記バンドに設けられていることを特徴とする請求項14に記載の治療器。
  19. 前記刺激信号出力装置は、前記ヘッドフォンに設けられていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の治療器。
  20. 前記刺激信号出力装置は、前記眼鏡の左右のツルの少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項17に記載の治療器。
  21. 前記刺激信号の強度を調節する調節装置を備えることを特徴とする請求項7ないし請求項20のいずれか1つに記載の治療器。
  22. 前記携帯端末の前記判定の結果を報知する報知装置を備えることを特徴とする請求項7ないし請求項10および請求項13のいずれか1つに記載の治療器。
  23. 前記使用者が所定の操作を行ったときに前記左右の前庭神経を刺激信号によって電気的に刺激する操作部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項22のいずれか1つに記載の治療器。
  24. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置と、
    前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、を備えており、
    前記電気刺激装置は、
    記使用者が所定の操作を行ったときに前記刺激信号を出力するように構成されており、
    さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧または予測される大気圧を取得する第1の処理と、
    前記第1の処理において取得した大気圧が設定値以下のときに前記使用者の左右の前庭神経を前記刺激信号によって刺激する第2の処理と、
    前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧が、前記設定値よりも高かった場合は、前記設定値を、前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧に変更する第3の処理と、を実行することを特徴とする治療器。
  25. 前記第3の処理は、
    前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧が、前記設定値よりも高かった場合は、前記設定値を、前記所定の操作が行われたときに取得した大気圧に所定値を加算した値に変更することを特徴とする請求項24に記載の治療器。
  26. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置と、
    前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、を備えており、
    前記電気刺激装置は、
    記使用者が所定の操作を行ったときに前記刺激信号を出力するように構成されており、
    さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量を算出する第1の処理と、
    前記第1の処理において算出した変動量が設定量以上低下しているときに前記使用者の左右の前庭神経を前記刺激信号によって刺激する第2の処理と、
    前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量が前記設定量よりも少なかった場合は、前記設定量を、前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量に変更する第3の処理と、を実行することを特徴とする治療器。
  27. 前記第3の処理は、
    前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量が前記設定量よりも少なかった場合は、前記設定量を、前記所定の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量から所定量を減算した値に変更することを特徴とする請求項26に記載の治療器。
  28. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する電気刺激装置と、
    前記電気刺激装置が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、を備えており、
    前記電気刺激装置は、
    記使用者の第1の操作によって前記刺激信号を出力し、さらに、前記使用者の第2の操作によって前記刺激信号の強度を調節するように構成されており、
    さらに、前記使用者が存在する場所の現在の大気圧を所定時間毎に取得するとともに、その取得した大気圧の変動量を算出する第1の処理と、
    前記第1の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量と、前記第1の操作が行われたときの前記刺激信号の強度とを対応付けて所定の記憶部に記憶する第2の処理と、
    前記第1の処理において算出した変動量が設定量以上低下しているときは、前記所定の記憶部において、第1の処理において算出した変動量と対応付けられている刺激信号の強度の中から最適の強度を割り出し、その割り出した強度の前記刺激信号によって前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する第3の処理と、を実行することを特徴とする治療器。
  29. 前記第2の処理は、
    前記第1の操作が行われたときの直前に前記第1の処理において算出した変動量から所定量を減算した変動量と、前記第1の操作が行われたときの刺激信号の強度とを対応付けて前記所定の記憶部に記憶することを特徴とする請求項28に記載の治療器。
  30. 大気圧の低下に起因する症状を改善するための携帯可能な治療器であって、
    この治療器の使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激するための刺激信号を出力する刺激信号出力部と、
    前記刺激信号出力部が出力した前記刺激信号を入力し、その入力した刺激信号により前記使用者の左右の前庭神経を電気的に刺激する一対の部材と、
    前記刺激信号出力部を制御する制御部と、を備えており、
    前記制御部は、
    この治療器の使用者が存在する場所の気象情報を取得し、その取得した気象情報を解析して大気圧が低下したと判定したとき、あるいは、大気圧が低下すると予測したときに前記刺激信号出力部に前記刺激信号を出力させるための更新可能なコンピュータプログラムが記憶された記憶部と、
    前記コンピュータプログラムを実行するCPUと、を備えることを特徴とする治療器。
  31. 前記刺激信号の電流量は、
    前記大気圧の変動または低下が無い環境下で前記使用者の前庭神経を電気的に刺激して前記使用者に目眩感が現れたときの電流量以下であることを特徴とする請求項7ないし請求項30のいずれか1つに記載の治療器。
  32. 前記電流量は、0.2mA以下であることを特徴とする請求項31に記載の治療器。
  33. 前記刺激信号は、2Hz以下の正弦波であることを特徴とする請求項7ないし請求項32のいずれか1つに記載の治療器。
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