以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
以下、反応室2内で原料をマイクロ波表面波プラズマで処理して原料と異なる生成物を得る一例として、無水塩化マグネシウムを原料として、その無水塩化マグネシウムをマイクロ波表面波水素プラズマで処理し、水素化マグネシウムを含むマグネシウム生成物(以下、単に、水素化マグネシウムを含む生成物ともいう。)を得る場合で説明する。
しかし、この反応は一般的な反応式からでは説明できないため、それが実現できる理由について簡単に説明しておく。
通常、無水塩化マグネシウムと水素との反応を式で書くと、以下の式1のように表される。
MgCl2 + H2 ⇔ MgH2 + Cl2・・・(1)
ここで、問題となるのは、反応中の環境(圧力・温度)をどのようにすれば、式1において右側が安定状態となり、右側への反応が進むかということになる。
そして、どちらが安定であるかは、Gibbsの自由エネルギーを考えることでわかるが、式1の場合、プラズマの反応を行うための反応室2内の圧力を高密度で電子温度が低いマイクロ波表面波水素プラズマを生成させるために10Paにしたとすると、右側に反応を進めるためには、反応室2内の温度を約1150℃以上とする必要がある。
このような高温状態では、水素化マグネシウム自体が気体の状態になるため、固体として析出させるためには、反応室2内の温度を下げる必要がある。
しかし、約1150℃よりも低い温度領域では式1の左側への反応が優勢となるため、固体として析出する物質は、無水塩化マグネシウムになってしまい、水素化マグネシウムが析出しないことになる。
このため、一般的な反応式(式1参照)からでは、無水塩化マグネシウムと水素を反応させて水素化マグネシウムを得ることは困難である結論に至る。
しかしながら、マイクロ波表面波水素プラズマ中には、励起原子・分子、ラジカル(化学的に活性な原子・分子)、電子、イオン(正及び負)及び中性の原子や分子が存在し、そのような状態を考慮した反応式を考えることで、無水塩化マグネシウムにマイクロ波表面波水素プラズマを照射することで水素化マグネシウムを生成可能であることの説明ができる。
例えば、一例として、以下の式2のように、水素原子が存在する反応式を仮定し、Gibbsの自由エネルギーに基づいて、右側に進む反応と左側に進む反応の境界を示したのが図1である。
MgCl2 + 2H +H2 ⇔ MgH2 + 2HCl・・・(2)
図1は、反応室2(図2参照)の圧力が10Paとし、横軸に水素原子の分圧(mPa)を取り、縦軸に温度(℃)を取って、水素原子の分圧(mPa)を変えた場合に右側に進む反応と左側に進む反応の境界が何度(℃)のところになるのかを示したグラフである。
図1を見るとわかるように、水素原子の分圧が同じ場合、温度を下げることでMgH2が生成されるようになり、同じ温度では、水素原子の分圧が大きくなるほどMgH2が生成されるようになっている。
ここで、注目すべきは、10PaでMgH2がMgとH2に分解し始める温度である100℃より低い温度域であってもMgH2を生成する解が存在し、良好にMgH2を固体として析出させることが可能であることである。
そこで、実際に、水素原子等の存在が仮定できる高密度なマイクロ波表面波水素プラズマの存在する範囲内に、水素化マグネシウムを付着させる付着手段80(図2参照)を設け、水素化マグネシウムを付着させる実験を行い、付着手段80の表面81(図2参照)に付着したマグネシウム生成物が、水滴を垂らすだけで激しく発泡して水素を発生するほどに水素化マグネシウムを含有していることを確認しており、以下で説明する第1実施形態では、そのような製造装置1に基づいて説明を行う。
(第1実施形態)
図2は本発明に係る第1実施形態の製造装置1を説明するための断面図である。
図2に示すように、製造装置1は、原料(本例では、無水塩化マグネシウム)をマイクロ波表面波プラズマで処理する反応室2を形成する筐体10を備えており、本実施形態では、中央に開口部11Aを有する仕切部11を筐体10内に設けることで反応室2が第1空間Fと第2空間Sを有するようになっている。
そして、製造装置1は、その開口部11Aのところに設けられ、後ほど詳細に説明する、生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオン等の陰イオン)が付着手段80に向かうのを抑制するローレンツ力を反応室2内の第1窓W1から付着手段80に至るまでの反応室2内に形成する第2ローレンツ力発生手段13を備えている。
ただし、本実施形態では、仕切部11の中央に設けられた開口部11Aのところに第2ローレンツ力発生手段13を配置するものとしているが、このような仕切部11を設けるようにして第2ローレンツ力発生手段13を配置することに限定されるものでないことについては、後述の別の実施形態を見れば理解されるとおりである。
そして、製造装置1は、反応室2内にマイクロ波を入射させる部分に設けられ、表面でマイクロ波表面波プラズマを生成させる誘電体材料(例えば、石英やセラミックス等)の第1窓W1と、マイクロ波表面波プラズマを生成させるために第1窓W1を介して反応室2内(第1空間F内)に供給されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生手段20(例えば、マグネトロン)と、マイクロ波発生手段20で発生させたマイクロ波を第1窓W1のところまで導波させる導波管21と、を備えている。
なお、マイクロ波が第1窓W1を通じて反応室2内に供給されると、第1窓W1の反応室2内に露出した表面に表面波が形成され、この表面波のカットオフ角周波数で決まる密度以上の高密度プラズマ(高密度なマイクロ波表面波プラズマ)が生成される。
そして、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)は、電子密度が高いので照射されたマイクロ波はマイクロ波表面波プラズマの表面で反射されて内部には入らないがマイクロ波表面波プラズマの表面に沿う形で伝搬される。
本実施形態では、発生するマイクロ波の周波数を2.45GHzとしているが、この周波数に限定される必要はなく、例えば、通信目的以外で使用できるISMバンドの5GHz、24.1GHz、915MHz、40.6MHz、27.1MHz及び13.56MHz等であってもよい。
また、製造装置1は、反応室2に設けられ、反応室2内の気体を排気する第1排気口31Bと、反応室2の付着手段80よりも第1窓W1から離れる側に設けられ、反応室2内の気体を排気する第2排気口33Bと、第1排気口31B及び第2排気口33Bから反応室2内の気体を排気するために設けられ、反応室2内を減圧する減圧手段30を備えている。
なお、製造装置1は、後ほど詳細に説明する、第1排気口31Bに対応して設けられ、生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオン等の陽イオン)の排気を抑制するローレンツ力を形成する第1ローレンツ力発生手段14を備えている。
具体的には、減圧手段30は、途中に開閉操作又は開閉制御により排気の有無を決める第1排気バルブ31Aが設けられ、第1排気口31Bに繋がる第1排気管31を介して反応室2(第1空間F)に接続された第1真空ポンプ32と、途中に開閉操作又は開閉制御により排気の有無を決める第2排気バルブ33Aが設けられ、第2排気口33Bに繋がる第2排気管33を介して反応室2(第2空間S)に接続された第2真空ポンプ34と、を備えている。
なお、高密度なマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)を安定して生成させるためには、反応室2内の圧力が低い方が有利であり、少なくとも反応室2内は10分の1気圧以下がよく、100分の1気圧以下がより好ましく、1000分の1気圧以下が更に好ましく、本実施形態では、10000分の1気圧程度である約10Paにしている。
そして、気体の吸引力の弱い真空ポンプの場合、反応室2内の真空度を高めるのに時間がかかるため、そのような段取り時間を省略するために、第1真空ポンプ32又は第2真空ポンプ34のうちの少なくとも一方を気体の吸引力が高いメカニカルブースターポンプにしておくことが好ましい。
なお、製造装置1には、反応室2の第1空間F内の圧力を測定するための第1圧力計32Aと、反応室2の第2空間S内の圧力を測定するための第2圧力計34Aが設けられており、例えば、第1圧力計32Aが測定する圧力に基づいて、第1空間F内の圧力が所定の圧力(例えば、約10Pa)になるように、第1真空ポンプ32及び第1排気バルブ31Aの動作を制御するようにしてもよい。
例えば、第1真空ポンプ32を動作(ON)させておいて、第1圧力計32Aが測定する圧力に基づいて、第1排気バルブ31Aの動作を制御(開閉制御)するようにしてもよく、逆に、第1排気バルブ31Aが開の状態となるように動作させておいて、第1真空ポンプ32の動作を制御(ON、OFF制御)するようにしてもよい。
同様に、例えば、第2圧力計34Aが測定する圧力に基づいて、第2空間S内の圧力が所定の圧力(例えば、約10Pa)になるように、第2真空ポンプ34及び第2排気バルブ33Aの動作を制御するようにしてもよい。
例えば、第2真空ポンプ34を動作(ON)させておいて、第2圧力計34Aが測定する圧力に基づいて、第2排気バルブ33Aの動作を制御(開閉制御)するようにしてもよく、逆に、第2排気バルブ33Aが開の状態となるように動作させておいて、第2真空ポンプ34の動作を制御(ON、OFF制御)するようにしてもよい。
ただし、第1空間F及び第2空間S内の圧力を所定の圧力にするために、2つの真空ポンプ(第1真空ポンプ32及び第2真空ポンプ34)の双方を動作させる必要はない。
例えば、前段取りとして、反応室2内の圧力を所定の圧力にするときだけ、2つの真空ポンプ(第1真空ポンプ32及び第2真空ポンプ34)を動作させ、反応室2内の圧力が所定の圧力になったところで、第1排気バルブ31Aを閉にして第1真空ポンプ32の動作を停止し、その後は、第1圧力計32A又は第2圧力計34Aの測定する圧力に基づいて、反応室2内の圧力を所定の圧力に維持するように、第2真空ポンプ34及び第2排気バルブ33Aの動作を制御するようにしてもよい。
なお、反応室2内の圧力を所定の圧力に維持するときに使用される反応室2内の圧力の測定値としては、第1圧力計32A及び第2圧力計34Aの測定した圧力を平均したものを使用するようにしてもよい。
また、製造装置1は、反応室2に設けられ、マイクロ波表面波プラズマ化する気体を反応室2内に供給する気体供給口(本例では、第1気体供給口41B、及び、第2気体供給口42B)と、還元雰囲気を形成する気体としての水素を、その気体供給口から反応室2内に供給する図示しない水素供給手段を備えている。
なお、本実施形態では、マイクロ波表面波プラズマ化する気体が水素であるため、水素供給手段と呼んでいるが、処理によっては、別の気体をマイクロ波表面波プラズマ化する場合もあるので、この水素供給手段は、マイクロ波表面波プラズマ化する気体の気体供給手段の具体的な一例にすぎない。
例えば、水素供給手段は、水素の供給源となる図示しない水素貯蔵部(水素ボンベ又は水素貯蔵タンク)と、気体供給口(本例では、第1気体供給口41B、及び、第2気体供給口42B)に繋がり、水素貯蔵部から反応室2に水素を供給する水素供給配管(本例では、第1供給管41、及び、第2供給管42)と、水素供給配管上に設けられ、反応室2内に供給するマイクロ波表面波プラズマ化する水素(気体)の供給量を制御するマスフローメータ等の供給量制御手段(本例では、第1供給量制御手段MFC1及び第2供給量制御手段MFC2)と、を備えている。
なお、水素貯蔵部が水素ボンベである場合には、水素ボンベ中の水素の残量が減少したときに別の水素ボンベに取り換えることになるため、製造装置1自身の備える水素供給手段が、反応室2側から水素貯蔵部に至るまでの間の水素貯蔵部に接続される、水素貯蔵部から反応室2に水素を供給する水素供給配管(本例では、第1供給管41、及び、第2供給管42)までの構成に留まり、水素貯蔵部を含まない場合がある。
つまり、上記説明において、水素貯蔵部を除く部分が製造装置1の水素供給手段である場合がある。
また、マイクロ波表面波プラズマ化する気体が水素以外のものの場合には、当然、水素貯蔵部の部分がその別の気体を貯蔵した貯蔵部となるので、水素貯蔵部は、マイクロ波表面波プラズマ化する気体を貯蔵する気体貯蔵部の具体的な一例に過ぎない。
さらに、マイクロ波表面波プラズマ化する気体が水素以外のものの場合には、水素供給配管は、マイクロ波表面波プラズマ化する気体を貯蔵する気体貯蔵部から反応室2に気体を供給する気体供給配管となるので、水素供給配管は、気体貯蔵部から反応室2に気体を供給する気体供給配管の具体的な一例に過ぎない。
話をもとに戻すと、具体的には、水素貯蔵部は、第1供給管41を介して第1空間Fに水素が供給できるように第1気体供給口41Bに接続されるとともに、第2供給管42を介して第2空間Sに水素が供給できるように第2気体供給口42Bに接続されている。
そして、第1供給管41の水素貯蔵部側には、第1供給量制御手段MFC1が設けられ、その下流側に開閉操作又は開閉制御により供給の有無を決める第1供給バルブ41Aが設けられている。
同様に、第2供給管42の水素貯蔵部側には、第2供給量制御手段MFC2が設けられ、その下流側に開閉操作又は開閉制御により供給の有無を決める第2供給バルブ42Aが設けられている。
さらに、製造装置1は、気化した原料である無水塩化マグネシウムを反応室2内に受け入れる受入口15と、原料となる無水塩化マグネシウムを気化させて受入口15から反応室2内に気化させた原料を供給することで、気化させた原料をマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)中に供給する原料供給手段50を備えている。
具体的には、原料供給手段50は、原料となる無水塩化マグネシウムを貯蔵する原料貯蔵部51と、受入口15に繋がり、原料となる無水塩化マグネシウムをマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)中に供給するために、原料貯蔵部51内の無水塩化マグネシウムを反応室2の第1空間F内に供給する原料供給管52と、第1電源53Aからの電力の供給により発熱し原料供給管52及び原料貯蔵部51を加熱する第1加熱部53と、第1加熱部53の温度を測定する第1温度計54と、を備えている。
そして、第1温度計54による温度の測定結果が、設定される所定の温度となるように、第1電源53Aから第1加熱部53に供給される電力の供給量が制御され、原料供給管52及び原料貯蔵部51が所定の温度に加熱される。
例えば、本実施形態のように、原料が無水塩化マグネシウムである場合には、無水塩化マグネシウムが気体の状態となるように、第1加熱部53によって、原料供給管52及び原料貯蔵部51を約700℃程度の温度に加熱する。
そうすると、気化した無水塩化マグネシウムは反応室2の第1空間F内に向かって流れて行き、受入口15を通じて第1空間F内に供給され、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)中に供給されることになる。
また、製造装置1は、反応室2内を加熱する加熱手段60として、反応室2の第1空間F内に設けられ、第2電源61Aからの電力の供給により発熱し反応室2の第1空間F内を加熱する第2加熱部61を備えている。
なお、製造装置1は、反応室2の第1空間F内の温度を測定する第2温度計62を備えており、第2温度計62による温度の測定結果が、設定される所定の温度となるように、第2電源61Aから第2加熱部61に供給される電力の供給量が制御され、反応室2の第1空間F内の温度が所定の温度に保たれる。
具体的には、この第2加熱部61によって、第1空間F内の温度は気体として無水塩化マグネシウムが存在できる温度に保たれる。
一方、第2加熱部61の外側には、第2加熱部61からの輻射熱で筐体10が高温になるのを防止するために、輻射熱を反射するリフレクタ70が設けられるとともに、筐体10の外面上に水冷するための冷却管71が設けられている。
このように、製造装置1が、第2加熱部61によって、余分な場所が加熱されないように熱伝導を防止するリフレクタ70のような断熱手段を備える場合、筐体10が高温にならないため、筐体10の各所に使用されているパッキン等の劣化を抑制できるだけでなく、保温効率が高くなるため、消費電力を低減することができる。
なお、リフレクタ70は、仕切部11側が開放された状態になっている。
そして、図2に示すように、製造装置1は、仕切部11の開口部11A及び開口部11Aのところの第2ローレンツ力発生手段13に対向する位置に水素化マグネシウムを含む生成物を付着させる付着手段80を備えている。
なお、付着手段80は、製造装置1を停止させた後、製造装置1から取り出せるように、筐体10に対して着脱可能に取り付けられている。
付着手段80は、温調媒体(本例では、100℃未満の温度に制御された水又は気体等)を供給する供給口IN(温調媒体供給口)と温調媒体を排出する排出口OUT(温調媒体排出口)が設けられ、その温調媒体が反応室2の第2空間Sにリークしないようにした温調媒体収容部を有する容器構造になっている。
なお、付着手段80は、開口部11A及び第2ローレンツ力発生手段13に対向する側の水素化マグネシウムを含む生成物を付着させる表面81は、第1空間F側から第2空間S側に放出される、発光状態が目視で確認できる高密度のマイクロ波表面波プラズマ(マイクロ波表面波水素プラズマ)が直接接触する位置に配置されることで、少なくとも表面81を生成するマイクロ波表面波プラズマの存在する範囲内に配置したものになっている。
このため、表面81のところは、高密度なマイクロ波表面波水素プラズマ(例えば、水素イオンや水素原子等)の存在が仮定できる特殊な環境下にある。
そして、製造装置1は、付着手段80の水素化マグネシウムを含む生成物を付着させる表面81の表面温度を、水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲内に保つ温度制御手段(図示せず)を備えている。
温度制御手段は、例えば、温調媒体(本例では、100℃未満の温度に制御された水又は気体等)を供給口INから付着手段80の温調媒体収容部内に供給し、排出口OUTから温調媒体を排出させるように温調媒体を循環させる循環装置(図示せず)と、排出口OUTから排出された温調媒体の温度を設定される温度に調節する温調装置(図示せず)と、を備えている。
具体的には、本実施形態では、循環装置(図示せず)はポンプ等であり、温調装置(図示せず)は熱交換機等である。
なお、温調媒体に外気をそのまま利用できる場合には、供給口INに外気を供給するためのポンプが接続され、排出口OUTが大気開放となるようにすればよく、この場合、温調装置は不要である。
そして、高密度なマイクロ波表面波水素プラズマ(例えば、水素イオンや水素原子等)の存在が仮定できる特殊な環境下であって、かつ、表面温度が水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲内に保たれた表面81のところでは、先に説明した式(2)において、右側に進む反応が促進されるとともに、水素化マグネシウムが分解せずに存在できる状況を生み出すことができる。
例えば、表面81の表面温度が200℃を超えると生成物中の水素化マグネシウムの割合が大幅に低下するため、水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲は200℃以下の範囲であることが好ましく、150℃以下の範囲であることがより好ましく、100℃以下の範囲であることが更に好ましい。
実験では、表面温度が200℃を超える状態で析出した水素化マグネシウムを含む生成物の場合、その水素化マグネシウムを含む生成物に水滴を垂らし、水素の分離に伴う発泡現象が非常に弱いことを確認している。
一方、表面温度が100℃以下の状態で析出した水素化マグネシウムを含む生成物の場合、水滴を垂らすと水素の分離に伴う激しい発泡現象が見られることを確認しており、発泡しているガスが水素であることについては、水素検知管で確認を行っている。
なお、表面温度が100℃を超える場合、水素化マグネシウムが水素と金属マグネシウムに分解する反応も起きるため、析出した水素化マグネシウムを含む生成物中の水素化マグネシウムの割合が減少することになることから、水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲は、水素化マグネシウムの分解反応を抑えるという観点で100℃以下の範囲であることが最も好ましい。
また、実験では、表面温度が約80℃のときよりも、約70℃の方が水素化マグネシウムを含む生成物の単位時間当たりの析出量が多く、約50℃の方が更に単位時間当たりの析出量が多くなる結果を得ているので、水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲は、単位時間当たりの析出量の観点からは、更に低い温度範囲とすることが好ましい。
つまり、水素化マグネシウムを含む生成物の析出に適した所定の温度範囲は、80℃以下の範囲が好ましく、更に、70℃以下の範囲であることが好ましく、50℃以下の範囲であることがより好ましい。
そして、上記のように、原料と異なる生成物(本例では水素化マグネシウムを含む生成物)を付着させる付着手段80が、表面81をマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の存在する範囲内に配置するように設けられ、その付着手段80の原料と異なる生成物を付着させる表面81の温度を、原料と異なる生成物の析出に適した所定の温度範囲内(本例では、100℃未満の温度範囲)に保つ温度制御手段で適切な温度にしているので、通常では得られない生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)を得ることができる。
なお、生成物によっては、付着手段80を冷却するのではなく、保温することも考えられるため、この場合、温調装置はヒータ等となる。
例えば、金属マグネシウムが固体の状態となる温度が400℃以下の範囲であり、表面81の温度を250℃以上400℃以下にすると、水素化マグネシウムの含有量が大幅に減少する一方、金属マグネシウムの析出が可能であることから金属マグネシウムの割合が高い生成物が析出すると考えられ、このような場合には、ヒータ等で温調媒体の温度調節を行うことになると考えられる。
また、製造装置1は、途中にリークバルブ91が設けられた大気開放管90を備えており、大気開放管90の図示しない一端は製造装置1が設置される建屋の外で大気開放状態になっている。
この大気開放管90は、反応室2の圧力が異常な圧力になった場合に、緊急措置として反応室2を大気開放状態にするためのものであり、通常時には、リークバルブ91は閉の状態とされ、反応室2内に大気が混入することがないようになっている。
ところで、無水塩化マグネシウムを還元し、水素化マグネシウムを含む生成物を効率よく生成するためには、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の密度が高い方が好ましい。
そのための1つの方法は、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)を生成させるために、反応室2内に供給されるマイクロ波のマイクロ波電力(マイクロ波強度)を高くすることである。
しかしながら、この方法は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生手段20に供給する電力量を増加させることを意味し、平均的に使用される電力量が大幅に増加することになる。
一方、反応室2内に生成されたマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)が大幅に減衰する前に、反応室2内にマイクロ波を供給することでマイクロ波表面波プラズマを高密度な状態に保ち続けることが可能である。
そこで、本実施形態では、マイクロ波発生手段20が、パルス的なマイクロ波を発生させるものとして、マイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値を高めつつ、平均的なマイクロ波電力(マイクロ波強度)を下げるようにしている。
なお、パルス的なマイクロ波とは、周期的なマイクロ波電力(マイクロ波強度)の強弱を伴うものを意味し、必ずしも、周期的にマイクロ波電力(マイクロ波強度)がゼロになるものに限定されるものではない。
しかしながら、マイクロ波電力(マイクロ波強度)がゼロの状態とマイクロ波電力(マイクロ波強度)がピーク値の状態とが周期的に繰り返されるだけの場合が構成上シンプルな構成で済むため好ましい。
このようにすれば、マイクロ波電力(マイクロ波強度)がピーク値となるときには、マイクロ波発生手段20に大きな電力を供給することになるが、それ以外のときには、マイクロ波発生手段20に小さな電力を供給(又は、電力の供給を停止)することができるので、平均的に見たときのマイクロ波発生手段20で消費される電力を抑えることが可能となる。
しかも、反応室2内に生成されたマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)が大幅に減衰する前にマイクロ波電力(マイクロ波強度)がピーク値となるマイクロ波が反応室2内に供給されると、ほぼそのマイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値に対応する密度のマイクロ波表面波プラズマを維持することができる。
具体的には、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)が大幅に減衰する前に、反応室2内にピーク値のマイクロ波電力を有するマイクロ波を供給するために、パルス的なマイクロ波のマイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値が現れる周期が150マイクロ秒以下であることが好ましい。
なお、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の減衰速度は、反応室2の広さ等によって変わるため、このようなことを考慮すると、パルス的なマイクロ波のマイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値が現れる周期は、より速いことが好ましいので、100マイクロ秒以下であることが好ましく、50マイクロ秒以下であることがより好ましい。
このようにすれば、マイクロ波発生手段20が、マイクロ波電力(マイクロ波強度)をほぼ一定にしたパルス的なマイクロ波でないマイクロ波を発生させる場合に、プラズマ密度が1012/cm3以上1014/cm3以下であったとすれば、平均的なマイクロ波電力を同様にしても、マイクロ波発生手段20が、パルス的なマイクロ波を発生させる場合、マイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値を高くできるため、更に、高いプラズマ密度(例えば、1015/cm3以上の高いプラズマ密度)を得ることができ、平均的なマイクロ波電力を同様にしても一桁以上高いプラズマ密度を得ることができる。
したがって、マイクロ波発生手段20が、パルス的なマイクロ波を発生するものとすることで、マイクロ波発生手段20で使用される電力量(平均電力)の上昇を抑制しつつ、高密度なマイクロ波表面波プラズマを生成できる。
また、マイクロ波電力(マイクロ波強度)のピーク値が高くなると、マイクロ波表面波プラズマを点燈させやすくなるという効果もある。
なお、マイクロ波表面波プラズマは、他のプラズマ(例えば、高周波プラズマや直流放電プラズマ等)と比較すれば、電子温度が低く(例えば、電子温度が1eV以下)、他のプラズマのように、高い電子温度(例えば、10eV以上)とするためにエネルギーが消費されるプラズマと異なり、エネルギーロスが少ないという利点がある。
また、マイクロ波表面波プラズマは、プラズマ自身の摂氏での温度が熱プラズマと呼ばれるものに比べ大幅に低い(ほぼ常温)という特徴もある。
さらに、マイクロ波表面波プラズマは、上記のような高密度なプラズマを均一に、例えば、0.5m2以上の大面積の範囲に生成することができる。
次に、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13について詳細に説明する。
ただし、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13が理解しやすいようにするために、ローレンツ力を発生させるための基礎的な内容について説明した後に、具体的な構成について説明する。
図3はローレンツ力を発生させるための基礎的な内容を説明するための図である。
図3では左側にローレンツ力を発生させるための構成の概略図を示し、右側にその構成で発生するローレンツ力の状態を示している。
図3に示すように、左右一対の磁石をS極とN極が向かい合うように配置する。
図3の配置の場合、左右一対の磁石間で向かい合うS極とN極を見ると、左側にS極が位置し、右側にN極が位置しているため、磁界の方向(磁束密度)は右から左に向かう方向となる。
一方、この磁界の方向(磁束密度)と直交する方向に一対の電極を配置し、電圧を印加することで、一方を陽極(+極)とし、他方を陰極(−極)とする。
図3では、手前側(下側)が陽極(+極)とされ、奥側(上側)が陰極(−極)とされており、マイクロ波表面波プラズマ中は電流Iが流れる状態にあるため、図3に示すように、手前側(下側)から奥側(上側)に向かって電流Iが流れることになる。
そして、上記の状態を図示すれば、図3の右側に示すようになり、図3の右側に示す磁界の向きに左手の人差し指を合わせ、電流Iの流れに左手の中指を合わせるようにすれば、左手の親指が上側を向き、フレミングの左手の法則から力(ローレンツ力)が上向きに発生する構成になっていることが理解できる。
ただし、フレミングの左手の法則は、電荷が正である場合に働く力(ローレンツ力)を示すものになっており、電荷が負である場合に働く力(ローレンツ力)は逆方向になる。
したがって、図3の構成の場合、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
なお、図3の構成において、向かい合うS極とN極を逆転、つまり、左側にN極が位置し、右側にS極が位置するようにすれば、磁界の方向(磁束密度)が逆転することになるので、ローレンツ力の関係も逆転、つまり、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
同様に、図3の構成において、一対の電極の配置を逆転、つまり、手前側(下側)を陰極(−極)とし、奥側(上側)を陽極(+極)とすれば、電流Iの向きが逆転するので、ローレンツ力の関係も逆転、つまり、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
このような原理を利用して、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13は実現され、以下、具体的に、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13の構成について説明する。
図4は第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13を説明するための図である。
なお、部材構成自体は第1ローレンツ力発生手段14も第2ローレンツ力発生手段13も同じでよいため、まとめて説明を行うこととする。
図4の左側に示すように、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13は、どちらも導電性の材料で形成された円筒部材CMと、導電性の材料で形成され、円筒部材CMの中央に配置される棒状部材SMと、を備えている。
なお、本実施形態では、円筒部材CMはステンレス(SUS)で形成され、棒状部材SMはタングステン等の高温に耐えられるものを用いるようにしている。
ただし、棒状部材SMの断面積が大きく、あまり発熱しない場合には、円筒部材CMと同様にステンレス(SUS)等を用いるようにしてもよく、形状についても本実施形態では、棒状部材SMの断面形状が直径5mmから10mm程度の円形の円柱形状にしているが、棒状部材SMは断面形状が六角形等の多角形であってもよく、星型等であってもよい。
また、円筒部材CMの内径は、大きい方が、圧損が出ないため、例えば、5.0cm以上であることが好ましい。
また、第1ローレンツ力発生手段14及び第2ローレンツ力発生手段13は、円筒部材CMに電流Iを流すための電源(第1電源)と、円筒部材CMと棒状部材SMを一対の電極として機能させるための電圧を印加する電源(第2電源)と、を備えている。
例えば、第1電源は、0.5Vから1.0V程度で円筒部材CMに30Aから300Aの電流Iが流れるようにしている。
また、第2電源は、20Vから80V程度の電圧を印加するものとしている。
図4で示す構成では、第1電源が、円筒部材CMの一方側(例えば、図4の上側)から他方側(例えば、図4の下側)に向けて電流Iを流すように設けられ、第2電源が円筒部材CMを陰極(−極)とし、棒状部材SMを陽極(+極)とするように、円筒部材CMと棒状部材SMの間に電圧を印加するように設けられている。
図4の右側の図は、左側の図を上側から見た模式図になっており、上述のようにすると、まず、円筒部材CMの一方側(例えば、図4の上側)から他方側(例えば、図4の下側)に向けて流れる電流Iによって、図4の右側に点線で示すように、円筒部材CMの内部空間に反時計回りの磁界が形成される。
なお、物理のテキスト等においては、円筒部材CMの一方側から他方側に電流Iを流しても、円筒部材CMの内部空間には磁界が形成されないという説明になっているが、例えば、排気を取る程度に内径の大きな円筒部材CM(例えば、内径が3.0cm以上)の場合、棒状部材SMが位置するような中心には磁界が形成されないものの、それ以外のところでは磁界が形成されていることをガウスメーターで確認している。
ただし、中心ほど磁界が弱くなる傾向はある。
また、マイクロ波表面波プラズマ中は電流Iが流れる状態にあるため、図4の右側の図に示すように、棒状部材SMから円筒部材CMに向かって放射状に電流Iが流れる状態となる。
例えば、本実施形態では、1.0A程度の電流が流れるようになっている。
そして、棒状部材SMから円筒部材CMに向かって放射状に流れる電流Iと反時計回りの磁界との接点においては、その接点で磁界に対して接線を引いて反時計回り方向に向きを取った磁界が発生していることになる。
このため、図4に示す構成の場合、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
なお、円筒部材CM中を流れる電流Iの向きが逆になるように第1電源を設ければ、時計回りの磁界が形成されるため、ローレンツ力の関係は逆転、つまり、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
同様に、円筒部材CMを陽極(+極)とし、棒状部材SMを陰極(−極)とするように第2電源を設ければ、棒状部材SMと円筒部材CMの間を流れる電流Iの向きが逆転するため、ローレンツ力の関係は逆転、つまり、正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)には下側に向かう力(ローレンツ力)が働き、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)には上側に向かう力(ローレンツ力)が働くことになる。
したがって、円筒部材CMに対してどちら側に正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)に働く力(ローレンツ力)を発生させ、負の電荷を有するもの(例えば、陰イオンや電子)に働く力(ローレンツ力)を発生させるかは、第1電源又は第2電源の設け方によって選択される。
そして、図2に示す第1ローレンツ力発生手段14では、反応室2側に向かって正の電荷を有するもの(例えば、陽イオン)に働く力(ローレンツ力)を発生させるようにしている。
ここで、本実施形態は、マイクロ波表面波プラズマ化させる気体に水素を用いてマイクロ波表面波水素プラズマを生成し、無水塩化マグネシウムを原料として水素化マグネシウムを含む生成物を得る場合である。
したがって、マイクロ波表面波プラズマ中において、原料が分解された状態のものも含まれていることを考慮すると、生成物の生成に用いる第1イオンは、陽イオン(金属マグネシウムイオンや水素イオン)となる。
そして、第1ローレンツ力発生手段14のところに到達した陽イオンである第1イオンは、第1ローレンツ力発生手段14の形成するローレンツ力によって、反応室2側に向かう力が加えられるため、第1ローレンツ力発生手段14を通過して排気されることが抑制される。
なお、本実施形態の場合、生成物の生成に用いない第2イオンは、陰イオン(塩素イオン)となるため、その第2イオンに対しては、第1ローレンツ力発生手段14のところで反応室2内に向かう力が働かないため、第1ローレンツ力発生手段14を通過して排気されることになる。
したがって、本実施形態によれば、第1ローレンツ力発生手段14によって、生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオン)が排気されるのを抑制できるため、原料利用効率を高めることができる。
一方、図2に示す第2ローレンツ力発生手段13では、生成物の生成に用いない第2イオン(塩素イオン)が付着手段80に向かうのを抑制するローレンツ力(つまり、第2イオンが第1空間F側に向かう力)を形成するようにしている。
なお、これまでの説明でわかるとおり、図2に示す第2ローレンツ力発生手段13は、生成物の生成に用いる第1イオン(金属マグネシウムイオンや水素イオン)に対しては、第1空間F側に向かう力が働かず、第2空間S内に入った第1イオンに対して第1空間F側に向かうのを抑制するローレンツ力を形成するものとなっている。
したがって、第2ローレンツ力発生手段13によって、付着手段80側に生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオン)が向かうのが抑制されるだけでなく、生成物の生成に用いる第1イオン(金属マグネシウムイオンや水素イオン)が第1空間Fに戻るのが抑制され、生成物を高純度化(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物中の水素化マグネシウムの含有量を増加)させることができる。
なお、第2ローレンツ力発生手段13によって、生成物の高純度化が行えるものの、第2ローレンツ力発生手段13は中性のものに対してはフィルタとしての役目を果たさないため、付着手段80の表面81に水素化マグネシウムのみが析出するものではない。
このため、析出するものの中には、無水塩化マグネシウム等も含まれる場合があるため、原料と異なる生成物とは、原料と異なる物質を含む生成物と解されるべきものである。
また、本実施形態では、生成物の生成に用いる第1イオンが陽イオンであり、生成物の生成に用いない第2イオンが陰イオンになっているが、生成物によっては、生成物の生成に用いる第1イオンが陰イオンで、生成物の生成に用いない第2イオンが陽イオンであることもあり得るため、必ずしも、第1イオンが陽イオンで、第2イオンが陰イオンであることに限定されるものではない。
一方、上記では、原料として無水塩化マグネシウムを用いる場合について説明したが、水素化マグネシウムを含む生成物を得るための原料としては、無水ハロゲン化マグネシウムや金属マグネシウム等であってもよい。
また、上記では、マイクロ波表面波プラズマ化する気体に水素を用いた場合について説明したがメタン等であってもよい。
したがって、水素化マグネシウムを含む生成物を得るために用いられるマイクロ波表面波プラズマ化する気体は、水素に限定される必要はなく、水素原子を含み、還元雰囲気を形成する実質的に酸素原子を含まない反応性の気体を用いるようにすればよい。
なお、酸素原子が含まれる場合、酸化反応も起こるため、還元反応が阻害されることになるので、還元処理を行う場合、マイクロ波表面波プラズマ化する気体には酸素原子が含まれないことが好ましい。
しかしながら、高純度ガスとして提供されるものの中にも微量に水分等が含まれるため、完全に酸素原子を含まないものとすることは困難であるが、そのような微量の酸素原子の含有は還元反応に影響を及ぼさない。
したがって、実質的に酸素原子を含まない反応性の気体とは、還元反応に影響を及ぼさない程度の酸素原子しか含有しない気体という意味で用いているものである。
また、原料に無水ハロゲン化マグネシウムを用いるものとしているのも、還元反応を阻害する酸素原子を含む水分等を排除するためであるが、無水塩化マグネシウム等は潮解性があるため微量には水分を含むものとなっていると考えられる。
したがって、この無水との表現も還元反応に影響を及ぼさない程度の水分しか含まないという意味で用いるものである。
一方、原料として無水塩化マグネシウムを用い、マイクロ波表面波プラズマ化する気体に水素と窒素の混合気体を用いると、窒化マグネシウムを含むマグネシウム生成物(以下、窒化マグネシウムを含む生成物という場合がある。)を得ることも可能であり、必ずしも、原料をマイクロ波表面波プラズマで処理して得る原料と異なる生成物が水素化マグネシウムを含む生成物に限定されるものではない。
例えば、その他の例としては、マイクロ波表面波プラズマ化する気体に還元雰囲気を形成する実質的に酸素原子を含まない反応性の気体を用いて、塩化チタンを還元させれば、生成物としてチタンを生成することができ、この場合には、チタンが高温でも安定な物質であることから、温度制御手段等は不要と考えられる。
このように、上記で説明した製造装置1は、原料に金属原子を含む原料を用いるとともに、気体に還元雰囲気を形成する実質的に酸素原子を含まない反応性の気体を用いて、原料と異なる生成物(原料と異なる金属原子を含む生成物)を得るのに適したものとなっており、製造装置1は水素化マグネシウムを含む生成物を得る製造方法に用いられることに限定されるものではない。
また、上記では、第1窓W1が反応室2の下側に位置し、付着手段80が第1窓W1に対して上側に位置する場合について示したが、この関係は逆になっていてもよい。
つまり、第1窓W1が反応室2の上側に位置し、付着手段80が第1窓W1に対して下側に位置してもよい。
さらには、第1窓W1が反応室2の一方の側方(左右の一方の側方、又は、前後の一方の側方)に位置し、付着手段80が第1窓W1に対して対向する他方の側方(左右の他方の側方、又は、前後の他方の側方)に位置してもよい。
このように、第1窓W1と付着手段80の位置関係を変更したとしても、原料が気化した状態で供給されているため、排気の取り方等によって、良好に付着手段80の表面81に気化した原料が向かうようにすることが可能であるため問題ない。
加えて、上記実施形態では、マイクロ波発生手段20が発生させたマイクロ波を導波管21で第1窓W1に導波させる場合について示したが、直接、第1窓W1に向けてマイクロ波を放射できるように、マイクロ波発生手段20を配置し、導波管21を省略することも可能である。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の製造装置1について説明する。
図5は第2実施形態の製造装置1を説明するための断面図であり、説明する上で図が見やすいように、第1実施形態と同様の点については図示を省略したものになっている。
なお、以下の説明でも、原料に無水塩化マグネシウムを用い、その原料をマイクロ波表面波水素プラズマで処理して、原料と異なる生成物として水素化マグネシウムを含む生成物を得る場合で説明する。
図5に示すように、製造装置1は、第1実施形態と同様に、原料(本例では、無水塩化マグネシウム)をマイクロ波表面波プラズマで処理する反応室2を形成する筐体10と、反応室2の一方側(図5の左側)に設けられ、反応室2内の気体を排気する第1排気口31Bと、反応室2の付着手段80よりも第1窓W1から離れる他方側(図5の右側)に設けられ、反応室2内の気体を排気する第2排気口33Bと、を備えている。
なお、図示を省略しているが、製造装置1は、第1排気口31B及び第2排気口33Bから反応室2内の気体を排気するために設けられ、反応室2内を減圧する第1実施形態の減圧手段30と同様の減圧手段、反応室2内を原料が気化する温度に保つための第1実施形態の加熱手段60と同様の役目を果たす加熱手段、及び、筐体10の外面上に設けられ、筐体10を水冷するための第1実施形態の冷却管71と同様の役目を果たす冷却管等も備えている。
また、製造装置1は、第1実施形態と同様に、第1排気口31Bに対応して設けられ、生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオン)の排気を抑制するローレンツ力を形成する第1ローレンツ力発生手段14を備えている。
なお、この第1ローレンツ力発生手段14は、先に図4を参照して説明したのと同様の構成である。
一方、本実施形態では、製造装置1が、第2排気口33Bに対応して設けられ、生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオン)の排気を抑制するローレンツ力を形成する第1ローレンツ力発生手段14も備えるものとなっている。
なお、この第1ローレンツ力発生手段14も、先に図4を参照して説明したのと同様の構成である。
また、本実施形態では、製造装置1が、反応室2の第1窓W1よりも付着手段80側の部分に設けられ、表面でマイクロ波表面波プラズマを生成させる1つ以上の誘電体材料の第2窓W2と、反応室2の第1窓W1よりも第1排気口31B側の部分に設けられ、表面でマイクロ波表面波プラズマを生成させる1つ以上の誘電体材料の第3窓W3と、を備えている。
なお、図示を省略しているが、製造装置1は、第1実施形態のマイクロ波発生手段20と同様のマイクロ波発生手段を備え、そのマイクロ波発生手段が発生させたマイクロ波は、これら第1窓W1、第2窓W2、及び、第3窓W3を通じて反応室2内に供給される。
そして、製造装置1は、第1窓W1よりも第1排気口31B側の第1排気口31Bに至るまでの反応室2内の位置(本例では、第1窓W1と第3窓W3の間に対応する領域(位置))に生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオンといった陽イオン)の排気を抑制するローレンツ力LF3を形成する第1ローレンツ力発生手段(図示せず)を備えている。
具体的には、この第1窓W1と第3窓W3の間に対応する位置にローレンツ力LF3を形成する第1ローレンツ力発生手段(図示せず)は、先ほど図3を参照して説明したのと同様の構成になっている。
つまり、この第1ローレンツ力発生手段(図示せず)は、S極とN極が向かい合うように反応室2内に配置した一対の磁石と、その一対の磁石で形成される磁界を挟むように反応室2内に配置された一対の電極と、を備え、その一対の電極間に電圧を印加して、一方の電極を陽極(+極)とし、他方の電極を陰極(−極)とすることでローレンツ力を形成するものとしている。
なお、製造装置1は、付着手段80よりも第2排気口33B側の第2排気口33Bに至るまでの反応室2内にも、図3を参照して説明したのと同様の構成の生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオンといった陽イオン)の排気を抑制するローレンツ力を形成するように設けられた第1ローレンツ力発生手段を備えるものとしてもよい。
また、本実施形態の製造装置1は、第1窓W1と第2窓W2の間に対応する反応室2内の領域(第1窓W1と第2窓W2の間の位置)に生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオンといった陰イオン)が付着手段80に向かうのを抑制するローレンツ力LF1を形成する第2ローレンツ力発生手段(図示せず)と、第2窓W2と第2窓W2の間に対応する反応室2内の領域(第2窓W2と第2窓W2の間の位置)に生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオンといった陰イオン)が付着手段80に向かうのを抑制するローレンツ力LF2を形成する第2ローレンツ力発生手段(図示せず)と、を備えている。
なお、この第2ローレンツ力発生手段(図示せず)は、先ほど図3を参照して説明したのと同様の構成になっている。
つまり、この第2ローレンツ力発生手段(図示せず)は、S極とN極が向かい合うように反応室2内に配置した一対の磁石と、その一対の磁石で形成される磁界を挟むように反応室2内に配置された一対の電極と、を備え、その一対の電極間に電圧を印加して、一方の電極を陽極(+極)とし、他方の電極を陰極(−極)とすることでローレンツ力を形成するものとしている。
そして、本実施形態の製造装置1は、第1窓W1に対向する領域に対応した反応室2の箇所に設けられ、気化した原料を反応室2内に受け入れる受入口15を備えるとともに、マイクロ波表面波プラズマ化する気体(本例では、水素)を反応室2内に供給する気体供給口41Bも第1窓W1に対向する領域に対応した反応室2の箇所に設けられたものになっている。
なお、受入口15に原料を気化した状態で供給するための構成、及び、気体供給口41Bにマイクロ波表面波プラズマ化する気体(本例では、水素)を供給する構成は、第1実施形態と同様である。
そして、上記のような本実施形態の製造装置1によれば、第2排気口33Bに対応して設けられた第1ローレンツ力発生手段14と、第1窓W1から第1排気口31Bに至るまでの反応室2内の位置に設けられた第1ローレンツ力発生手段を備えているので、より一層、生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、金属マグネシウムイオンや水素イオン)が排気されるのを抑制できるため、より原料利用効率を高めることができる。
なお、第3窓W3に対応する領域においても、原料等のイオン化が起こるため、中性のものとして排気されるものを低減することも期待できる。
また、生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオンといった陰イオン)が付着手段80に向かうのを抑制するための第2ローレンツ力発生手段が多段に設けられているため、より一層、生成物を高純度化(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物中の水素化マグネシウムの含有量を増加)させることができる。
なお、第2窓W2に対応する領域においても、原料等のイオン化が起こるため、中性のものとして付着手段80側に向かう塩素や原料が低減されるため、この点からしても生成物の高純度化が行える。
(第3実施形態)
これまでは、原料(例えば、無水塩化マグネシウム)を気化させてマイクロ波表面波プラズマ(マイクロ波表面波水素プラズマ)中に供給する場合について説明した。
原料を気化させた状態は、原料が究極に微粒化された状態と考えられるため、原料の表面積が最も広くなる状態といえ、原料の気化量に見合う適切な気体の供給量(マイクロ波表面波プラズマ化させる気体の供給量)とすれば、還元反応の効率という点では好ましいと考えられる。
また、原料を気化させた状態は、原料自体の温度が高くなっていることで活性も高くなっていると考えられることから、この点からしても、還元反応の効率という点では好ましいと考えられる。
しかしながら、付着手段80に付着せず、排気とともに排出される原料及び生成物があるため、この点からすれば、還元効率(還元速度)は低下するものの、固体の状態の原料を気化させないようにしつつ、還元させる方が、原料の利用効率を高くすることができる。
なお、上記のような製造装置1で、マイクロ波表面波水素プラズマの照射を行わない状態で、付着手段80の表面81に、まず、無水塩化マグネシウムを析出させ、その後、その表面81に高密度なマイクロ波表面波水素プラズマ(例えば、水素イオンや水素原子等)を照射することで、固体の状態を保ったまま、還元反応を進ませ、水素化マグネシウムを含む生成物に変化させることが可能であることも実験的に確認している。
そこで、第3実施形態として、反応室2内で原料をマイクロ波表面波プラズマで処理して原料と異なる生成物を得る処理を、原料を気化させないようにして行うのに適した製造装置1について説明する。
なお、以下の説明でも、原料に無水塩化マグネシウムを用い、その原料をマイクロ波表面波水素プラズマで処理して、原料と異なる生成物として水素化マグネシウムを含む生成物を得る場合で説明する。
この場合、生成物の生成に用いる第1イオン(本例では、水素イオンといった陽イオン)の排気を抑制し、還元反応への水素の利用効率よくすることで、水素の使用量を抑制し、水素化マグネシウムを含む生成物の製造コストを抑制することができる。
図6は、本発明に係る第3実施形態の製造装置1を説明するための断面図である。
なお、以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略することがある。
また、第3実施形態では、生成物の生産効率を高めるために、製造装置1の稼働をできるだけ停止させることなく、生成物を連続生産する構成としている。
そのために、図6に示すように、製造装置1は、反応室2内に設けられ、原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)をマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)で処理する処理領域(第1窓W1に対向する領域)の一方の外側(図6の左外側)から処理領域を通過させて処理領域の他方の外側(図6の右外側)に向けて移動可能な搬送手段A1を備えている。
具体的には、搬送手段A1は、駆動ローラR1と、従動ローラR2と、駆動ローラR1と従動ローラR2の間に橋渡しされ、配置された原料Oを搬送するベルトで形成された搬送部Bと、を備えている。
そして、原料Oである無水塩化マグネシウムを供給する原料供給手段50から搬送部B上に供給された固体状態の原料Oが、順次、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の照射される処理領域(第1窓W1に対向する領域)となる位置に運搬されていくようになっている。
具体的には、製造装置1は、処理領域(第1窓W1に対向する領域)の一方の外側(図6の左外側)の位置に位置する搬送部Bの部分に対して、上側から原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)を落下させるように供給する原料供給手段50を備えている。
なお、原料Oを還元させ、生成物を得る上で、原料Oを微粒化した状態(例えば、マイクロ粒子又はナノ粒子の状態)とする方が、還元に必要な時間を短くすることが可能である。
そこで、本実施形態では、微粒化した状態(例えば、マイクロ粒子又はナノ粒子の状態)の原料Oを原料供給手段50に充填し、原料供給手段50が、搬送部Bの部分に向けて、微粒化状態の原料Oを設定された単位時間当たりの分量で落下させるようにして供給するものとしている。
ただし、微粒化する前の原料Oを原料供給手段50に充填しておいて、搬送部Bに向けて原料Oを落下させるように排出する原料供給手段50の排出口に、原料Oを微粒化した状態に粉砕する粉砕機構を設けるようにしてもよい。
そして、原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)に対するマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)での処理を停止させずに生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)を製造装置1外に取り出すために、本実施形態では、製造装置1が、処理領域(第1窓W1に対向する領域)の他方の外側(図6の右外側)の位置で生成物を回収する回収部3を備えるものとしている。
具体的には、回収部3は、回収室3Aと、回収室3Aと反応室2の間を連通可能とする開閉扉3Bと、外部から回収室3A内にアクセスし、生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)を外部に取り出すための取出扉3Cと、を備えている。
そして、生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)が回収室3A内に一定量蓄積されるまでは、開閉扉3Bが開いた状態に制御され、ベルトで形成された搬送部Bの終端側(図6の右側の端)から落下する生成物を受け入れるようになっている。
なお、本実施形態の製造装置1は、ベルトで形成された搬送部Bの開閉扉3Bの直上の位置の表面に接触するように設けられ、自重で落下しなかった生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)を回収室3Aに落下させる刷毛Hも備えている。
そして、回収室3Aに一定量の生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)が蓄積されると、開閉扉3Bが閉じて、回収室3A内を大気圧の状態まで昇圧するための気体が供給されるように気体供給路の電磁弁V3が開の状態になる。
なお、この気体供給路から供給される気体は、露点の低い気体が供給される。
このように、回収室3A内の圧力が大気圧の状態にされた後、回収室3Aに設けられた取出扉3Cを開けて、蓄積した生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)が回収される。
一方、回収室3Aから生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)を回収した後には、再び、取出扉3Cを閉めて、回収室3A内の圧力を反応室2と同じ圧力にした後、先ほどと、同様に、開閉扉3Bが開いた状態となる。
このために、回収室3Aには、途中に排気制御弁35Aが設けられ、第1排気管31に合流する排気管35が繋がっている。
なお、図示を省略しているが、製造装置1は、回収室3A内の圧力を測定する圧力計を備えており、その圧力計の測定結果が反応室2内の圧力とほぼ同じ圧力になるように排気制御弁35Aが制御される。
一方、製造装置1には、原料供給手段50側にも予備室4が設けられており、予備室4内には、原料供給手段50に原料Oである無水塩化マグネシウムを供給する予備原料供給手段50Aが設けられている。
そして、予備原料供給手段50Aと原料供給手段50の間の位置には、予備室4と反応室2とを仕切る仕切扉4Aが設けられており、この仕切扉4Aが開くことで、予備室4と反応室2とが連通した状態となり、予備原料供給手段50Aから原料供給手段50に原料Oである無水塩化マグネシウムを供給することができるようになっている。
また、予備室4には、予備室4内を大気圧の状態まで昇圧するための気体が供給されるように気体供給路が接続されており、仕切扉4Aを閉じた状態で、その気体供給路の電磁弁V4を開の状態とすることで予備室4内を大気圧の状態にすることができる。
なお、この気体供給路から供給される気体は、露点の低い気体が供給される。
このように予備室4を大気圧の状態とした後、予備原料供給手段50Aに原料Oである無水塩化マグネシウムを供給する作業のために予備室4に設けられた供給作業扉4Bを開けて、予備原料供給手段50Aに原料Oを新たに供給することができるようになっている。
なお、予備室4には、途中に排気制御弁36Aが設けられ、第1排気管31に合流する排気管36が繋がっているので、予備原料供給手段50Aに原料Oである無水塩化マグネシウムを供給する作業を終えて、供給作業扉4Bを閉めた後、再び、排気制御弁36Aの制御によって、予備室4内の圧力が反応室2と同じ圧力にされる。
そのために、製造装置1は、予備室4内の圧力を測定する圧力計(図示せず)も備えており、予備室4内の圧力が反応室2内の圧力とほぼ同じ圧力になるように、排気制御弁36Aが制御される。
以上のように、本実施形態によれば、反応室2を大気開放の状態にせず、原料Oである無水塩化マグネシウムの供給と、還元処理後の生成物である水素化マグネシウムを含む生成物の回収が行えるため、連続稼働が可能であり、水素化マグネシウムを含む生成物を得る処理の効率化ができる。
一方、製造装置1は、配置された原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)を搬送するベルトで形成された搬送部Bの少なくとも処理領域(第1窓W1に対向する領域)に対応する原料Oと接触する部分の温度を所定の温度範囲内に保つ温度制御手段A2を備えている。
具体的には、温度制御手段A2は、ベルトで形成された搬送部Bの裏面(原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)が配置される面の反対側の面)に接触するように設けられ、熱伝導率の高い材料で形成された温調媒体(本例では、100℃未満の温度に制御された水又は気体等)を内包する温調媒体収容部A21と、その温調媒体収容部A21に設けられた供給口INから温調媒体を供給し、排出口OUTから温調媒体を排出させるように温調媒体を循環させる循環装置(図示せず)と、排出口OUTから排出された温調媒体の温度を設定される温度に調節する温調装置(図示せず)と、を備えている。
なお、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、循環装置(図示せず)はポンプ等であり、温調装置(図示せず)は熱交換機等である。
ただし、第1実施形態と同様に、温調媒体に外気をそのまま利用できる場合には、供給口INに外気を供給するためのポンプが接続され、排出口OUTが大気開放となるようにすればよく、この場合、温調装置は不要である。
したがって、原料O(本例では、無水塩化マグネシウム)及び生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)が100℃を超える温度にならないように、搬送部Bの少なくとも処理領域(第1窓W1に対向する領域)に対応する原料Oと接触する部分の温度が保たれているので、確実に、原料O及び生成物が所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保たれた状態でマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の照射が行われることになる。
つまり、本実施形態では、第1実施形態や第2実施形態のように、原料Oを気化して供給するものではないため、反応室2内を積極的に加熱する構成を備えていないものの、第1窓W1のところが発熱するため、その輻射熱で処理領域(第1窓W1に対向する領域)に位置する原料Oが加熱される場合がある。
しかし、上記のように、温度制御手段A2を設けることで、確実に、原料O及び生成物が所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保たれた状態でマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の照射が行われるため、生成物の分解を抑制することができる。
ただし、温度制御手段A2は、上記のような構成に限らず、例えば、反応室2内のいろいろな箇所に冷却管等を設け、反応室2内を全体的に所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保ち、原料O及び生成物が所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保たれた状態でマイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)を照射できるようにしてもよいし、熱源となる第1窓W1の周辺に冷却管等を設け、冷却する構成であってもよい。
したがって、温度制御手段A2は、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)が照射される原料O及び生成物を所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保つものであればよい。
なお、原料O及び生成物に対する輻射による加熱が小さく、十分に、原料O及び生成物を所定の温度範囲(100℃未満の温度範囲)に保てる場合には、温度制御手段A2を省略することが可能である。
ところで、原料Oにマイクロ波表面波水素プラズマを照射すると、原料Oがマイクロ波表面波水素プラズマ中の電子によって電荷がチャージされ、そのマイナスにチャージされた原料Oに向かって陽イオンが加速度的に引き寄せられ、陽イオンが原料Oに衝突することに伴い発熱が起きる場合があるが、温度制御手段A2を設けることで、このような発熱も抑制することができる。
なお、このような電荷のチャージを抑制するために、製造装置1は、原料O及び生成物が帯電するのを抑制するアース手段を備えるものとしてもよい。
例えば、導電性を有する材料で搬送部Bを形成し、製造装置1が搬送部Bをアースするアース手段を備えるようにして、原料O及び生成物がチャージされるのを抑制し、陽イオンが加速度的に引き寄せられて原料O及び生成物に衝突するのを回避して発熱を抑制するようにしてもよい。
ただし、このような発熱は、原料O及び生成物の帯電状態に起因し、あまり帯電が起きず、発熱自体がほとんど発生しない場合もあるため、この場合には、発熱等に対する対策(冷却やアース)を講じる必要はない。
そして、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、第1排気口31Bに対応して設けられ、生成物(本例では、水素化マグネシウムを含む生成物)の生成に用いる第1イオン(本例では、水素イオン)の排気を抑制するローレンツ力を形成する第1ローレンツ力発生手段14を備えている。
したがって、排気される水素量が低減されるため、使用する水素量を抑制することができ、水素化マグネシウムを含む生成物の製造コストを抑制することができる。
また、第1ローレンツ力発生手段14は、生成物の生成に用いない第2イオン(本例では、塩素イオンといった陰イオン)の排気に影響を及ぼさないため、反応室2内の第2イオンを良好に排気できるとともに、本実施形態の場合、原料Oを搬送する速度を制御することで、原料Oに対する十分な還元処理の時間を得ることができるので、純度の高い生成物を得ることができる。
なお、本実施形態では、生産性を高めるために、いわゆるベルトコンベアー式で原料Oを搬送する構成としたが、原料Oを搬送させる手段は、このような形態に限定される必要はない。
例えば、製造装置1の備える搬送手段A1が、反応室2内に設けられ、一方側から他方側にトレイを搬送する多段に並ぶ駆動ローラと、原料Oを配置する複数のトレイと、を備え、製造装置1が、反応室2の一方側に隣接して設けられ、開閉扉で反応室2と連通可能なトレイ上に原料Oを配置する準備室と、反応室2の他方側に隣接して設けられ、開閉扉で反応室2と連通可能な搬送されたトレイを受け入れる取出室と、を備えるものとして、順次、原料Oを配置したトレイが処理領域(第1窓W1に対向する領域)を通過するようにして、先に説明したのと同様に連続稼働できるものとしてもよい。
以上、具体的な実施形態に基づいて、本発明について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。