(関連出願)
本出願は、2015年10月30日に出願された、米国仮出願番号62/249143の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
(分野)
本開示のいくつかの実施形態は、一般的に、眼の治療のシステムに関連し、より具体的には、治療用核酸のデリバリによる眼障害の治療のためのシステム、デバイス、および方法に関連する。
(関連技術の説明)
多くの眼障害は治癒不可能なままであるため、このような障害を治療する技術のシステムの発展は重要である。例えば、緑内障は、網膜神経節細胞およびそれらの軸索を破壊して、視力喪失を引き起こす眼障害である。増加した産生または房水の流出の減少のいずれかによる眼内圧の上昇は、緑内障に関連する。眼内圧の上昇は、例えば、異常な線維柱体網の損傷、または他の原因の中で、虹彩の傷害や病気による網状組織の損傷などにより引き起こされる。
一般的に、医師は、点眼剤、投薬、手術などの眼障害の治療を支援するために、様々な戦術を採用している。しかしながら、点眼薬および/または治療薬を使用する患者は、いくつかの望ましくないおよび/または意図しない不快感、または他の副作用を経験することがある。加えて、手術をしても、医師は眼の疾病を効率的にコントロールできないことがある。典型的な手術の後、患者は、眼圧が高すぎたり低すぎたり、炎症、不快感、および/または瘢痕などのいくつかの合併症やリスクに直面することもある。多くの慢性眼障害では、治療は、異常な遺伝子またはタンパク質などの要因に起因する基礎的な病因を戻すのではなく、障害の進行を阻止することのみを求める。
眼内圧上昇に伴うおよび/または引き起こされる眼障害の治療の必要性において、本明細書では、眼内圧を生理学的(または生理学的に近い)レベルに規制するための種々の方法、デバイス、システムおよびキットが提供される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの正電極が配備されている第1のアーチ状の筐体、少なくとも1つの負電極が配備されている第2のアーチ状の筐体を含む電解を生成し印加するデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、前記第1および第2のアーチ状の筐体は、所望の寸法の卵形を生じるように互いに調整が可能であり、前記所望の寸法は、対象の眼の外面の形状に一致する。
いくつかの実施形態では、前記第1および第2のアーチ状の筐体は、複数の正電極または複数の負電極を含む。いくつかの実施形態では、特定の眼の標的組織の電場を印加する間に作動される前記複数の正電極および負電極のパーセンテージに関連するユーザ入力を受け取るように構成される、制御モジュールをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記複数の正電極および前記複数の負電極は、数が等しい。
いくつかの実施形態では、高まった眼内圧を治療するための眼の特定の標的組織へと治療薬をデリバリする注射システムを含む。いくつかの実施形態では、前記注射システムは、前記対象の眼の前房に治療剤をデリバリするように構成される第1のシリンジ、および前記対象の眼の前房から房水を引き抜くように構成される第2のシリンジを含む。実施形態に応じて、シリンジを使用する必要はなく、治療薬のデリバリに好適な他のデバイスを使用することができる(例えば、治療薬源および圧力または慣性源に流体連通されて、治療薬をデリバリさせるニードルまたは他の注射デバイス)。
いくつかの実施形態では、前記前房の眼圧を評価するように構成される、1またはそれ以上の圧力変換器を含む。いくつかの実施形態では、前記治療剤のデリバリの体積、濃度、速度、頻度、または圧力のうち1つまたは複数を、前記評価された眼圧に基づき選択する、制御モジュールまたは他のロジックを含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは、対象とする前記眼の繊維柱帯網に焦点を当てて電場を印加するように構成される。追加の実施形態では、前記デバイスは、前記対象とする眼の毛様体に焦点を当てて電界を印加するように構成される。
いくつかの実施形態では、前記眼の標的組織は、線維柱帯網であり、前記電場は、100mVと100Vとの間の電圧で印加され、前記電場は、1パルスと20パルスの間でパルス出力され、前記パルスは、1パルス当たり0.5ミリ秒と10ミリ秒の間の持続時間で印加され、前記パルスは、約20ミリ秒から150ミリ秒の間の間隔で隔てられている。
いくつかの実施形態では、デバイスは、前記治療剤を約10から1000マイクロリットルの体積、かつ1ミリリットル当たり核酸約10マイクログラムから1ミリリットル当たり5000マイクログラムの間の濃度でデリバリするように構成される。
いくつかの実施形態では、引き抜かれた房水の体積は、デリバリされる治療剤の体積に等しく、房水の引き抜きは、治療剤のデリバリの前に実施される。しかし、追加の実施形態では、引き抜かれた房水の体積は、デリバリされた治療剤の量よりも多くなるか少なくなり得る。同様に、治療剤のデリバリおよび房水の引き抜きは、交互のセグメント(例えば、デリバリ、引き抜きなど)を含む、任意の順序で行うことができる。さらに、房水の引き抜きは、治療剤のデリバリとは異なる部位にあり、以前にデリバリされた治療剤の引き抜きを、低減または排除することができる。
いくつかの実施形態では、前記デバイスは、1分当たり約0.1マイクロリットルと1分間当たり約100マイクロリットルの間の速度で、前記治療剤をデリバリするように構成される。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、水銀柱における約10と約40mmの間の圧力で、前記治療剤をデリバリするように構成される。
いくつかの実施形態では、前記デバイスは、特定の眼標的組織への治療剤のデリバリを可能にするように構成され、前記治療剤は、プラスミドを含む。いくつかの実施形態では、前記治療剤は、リジルオキシダーゼ様1(LOXL1)、CYP1B1、ミオシリン、TGF―ベータ潜在型関連ペプチド(LAP)、プロスタグランジンF合成酵素、 C3転移酵素、カルデスモンまたはそれらのバリアントをコードする、ポリヌクレオチドを含む。
また、本明細書では、いくつかの実施形態では、眼圧の上昇の治療のための、本明細書に記述される実施形態に関するデバイスの使用を提供する。
いくつかの実施形態では、緑内障に罹患し、眼内圧の上昇を示すかまたはそのリスクを有する対象の眼の眼圧を評価すること、
デリバリ・デバイスを前記対象の眼の前房内に導入すること、および
前記評価された眼圧に基づき治療遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを含むプラスミドを含む、治療剤を前記前房にデリバリすること
を含む、緑内障を治療する方法を提供する。
実施形態に応じて、前記治療剤のデリバリの体積、濃度、速度、頻度、または圧力のうち1つまたは複数は、前記評価された眼圧に基づき、任意的に選択される。いくつかの実施形態では、前記治療剤は、約10から1000マイクロリットルの体積でデリバリされる。しかしながら、いくつかの実施形態では、前記治療剤を前前記前房でデリバリする前に、記対象の眼の前記前房からある体積の流体を除去することをさらに含む。実施形態に応じて、前記除去およびデリバリは、2回と10回の間、(例えば、約5から8回)実施される。このような実施形態では、 眼の中の流体を繰り返し除去し、プラスミドDNAを含む溶液を体積で置換すると、前記前房に存在するプラスミドDNAの量が増加する。ゆえに、プラスミドDNA(および治療剤)の最大量は、デリバリされることができる。
いくつかの実施形態では、前記治療剤の濃度は、1ミリリットル当たり核酸約10マイクログラムから5000マイクログラムである。実施形態に応じて、治療剤のデリバリの速度は変化するが、一般的には、1分当たり約0.1マイクロリットルと、1分当たり約100ミリリットルの間である。デリバリの頻度も変化するが(例えば、眼障害の状態および/または強度にもよる)、いくつかの実施形態では、デリバリの頻度は、4週間毎に1回と2年毎に1回の間である。もう一度、障害の状況および/または強度は制御できるが、いくつかの実施形態では、前記治療剤は、水銀柱における約10と約40mmの間の圧力でデリバリされる。いくつかの実施形態では、前記デリバリ(および/または引き抜き)に圧力測定が行われ(任意にリアルタイムで)、前記前房の圧力は、所望の圧力窓内に維持される。
実施形態によると、前記治療剤は、リジルオキシダーゼ様1(LOXL1)、CYP1B1、ミオシリン、TGF―ベータ潜在関連ペプチド(LAP)、プロスタグランジンF合成酵素、C3転移酵素、 カルデスモンまたはそれらのバリアントをコードするポリヌクレオチドを含み得る。直接的または間接的に、眼内圧および/または排液に影響する、他の遺伝子も使用され得る。いくつかの実施形態では、前記遺伝子は、誘導性プロモーターまたは他の調節可能なプロモーターによって制御される。
いくつかの実施形態では、前記治療剤は、前記前房に手動的にデリバリされる。いくつかの実施形態では、前記治療剤は、前記前房に半手動的にデリバリされる。いくつかの実施形態では、前記治療剤は、前記前房に自動的にデリバリされる。
いくつかの実施形態では、眼内組織の少なくとも一部分にわたって焦点を合わせた電場を発生し印加することをさらに含む方法。いくつかの実施形態では、前記眼内組織は、線維柱帯網である。いくつかの実施形態では、前記眼内組織は、前記毛様体である。いくつかの実施形態では、前記焦点を合わせた電場の印加は、エクストロポーション装置の使用によって達成され、前記エクストロポーション装置は、少なくとも1つの正電極および少なくとも1つの負電極を含む。いくつかの実施形態では、前記エクストロポーション装置は、複数の正電極および複数の負電力を含む。いくつかの実施形態では、前記複数の正電極は、前記対象の眼の外側の湾曲を模すような形状を取るアーチ状の筐体に配備され、前記複数の負電極は、前記対象の眼の反対側の外側の湾曲(または反対側ではない他の部分)を模すような形状を取るアーチ状の筐体に配置される。任意的に、前記複数の正電極および負電極は、数が等しい。いくつかの実施形態では、前記複数の正電極および前記複数の負電極のパーセンテージの作動を制御する制御モジュールを用いる。一実施形態では、前記眼内の組織は、線維柱帯網であり、前記電場は1パルスと20パルスの間を用いて100mVと100 Vの間の電圧で印加され、 前記パルスは、1パルス当たり0.5ミリ秒と10ミリ秒の間の持続時間に印加され、前記パルスは約20ミリ秒から150ミリ秒の間の間隔で隔てられている。
本明細書は、眼標的組織の電場を生成し印場し、複数の正電極に位置する第1アーチ状の筐体、複数の負電極に位置する第2アーチ状の筐体を含むデバイスをも提供し、前記第1および第2アーチ状の筐体は、所望の寸法の卵型を生じるように互いに調整が可能であり、前記所望の寸法は、対象の眼の外面の形状に一致する。
いくつかの実施形態では、前記デバイスは、対照の眼の線維柱体網に焦点を合わせた電場を印加するように構成される。他の眼組織は、例えば、毛様体も標的にされ得る。
一実施形態では、前記複数の正電極および前記複数の負電極は、数が等しい。
いくつかの実施形態では、前記デバイスは、特定の眼の標的組織の電場を印加する間に動作される、記複数の正電極および負電極のパーセンテージに関連するユーザ入力を受け取るように構成される、制御モジュールをも含む。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、治療剤を灌流するように構成される第1シリンジおよび房水を引き抜くように構成される第2シリンジを含む、注射システムも含む。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、前記眼の眼内圧を検出するように構成される、圧力変換器をも含む。
実施形態は、複数のシリンジ、プラスミドDNAをデリバリするように構成される針、針および複数のシリンジを接続するための管、および複数のプランジャを含む、注射システムをも提供する。いくつかの実施形態では、複数のシリンジは、止めコックが、前記複数のシリンジのそれぞれの中にあることをさらに含む。いくつかの実施形態では、それぞれの止めコックは、ボタンをさらに含む。
一実施形態では、前記複数のプランジャは、第1のプランジャおよび第2のプランジャを含み、前記第1のプランジャは、前記複数のシリンジの第1シリンジに結合され、前記第2のプランジャは、前記複数のシリンジの第2のシリンジに結合される。
実施形態によると、前記複数のプランジャおよび/または止めコックは、手動で操作されるか、半自動的に操作されるか、または自動的に操作される。
いくつかの実施形態では、前記複数のシリンジは、流体を標的空間にデリバリするように構成される第1のシリンジ、および標的空間から流体を引き抜くように構成される第二のシリンジを含む。そのような一実施形態では、前記デリバリ・シリンジは、一度に約250マイクロリットルまでの流体をデリバリするように構成される。追加の実施形態では、前記引き抜きシリンジは、一度に約250マイクロリットルまでの流体を引き抜くように構成される。いくつかの実施形態では、前記システムは、流体を引き抜いてはプラスミドDNAをデリバリすることを交互に繰り返すように構成される。
いくつかの実施形態は、前記変換機筐体の外面に連結されているディスプレイ、圧力変換器、および 振動板を含む変換器筐体をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記圧力変換機の筐体は、脱着可能である。任意的に、前記圧力変換器の筐体は、ジャックをさらに含み、前記ジャックは、コントローラに接続されるように構成され、ポンプに接続されるように構成され、増幅器に接続されるように構成されるか、またはそれらの(アナログまたはデジタル)コンビネーションに接続されるように構成される。
本明細書は、目的の遺伝子を含むプラスミド、生体適合性を有し、前記プラスミドを溶解するように構成され、それによって、前記プラスミドを注射によるデリバリに適するものとする、緩衝液、注射デバイス、および使用説明書を含む、標的組織へプラスミドDNAをデリバリするためのキットも提供する。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは治療遺伝子を含み、前記治療遺伝子は、リジルオキシダーゼ様1(LOXL1)、CYP1B1、ミオシリン、TGF―ベータ潜在型関連ペプチド(LAP)、プロスタグランジンF合成酵素、C3転移酵素、カルデスモン、またはそれらのバリアント、切り詰め、ミュータント、または断片からなる群より任意的に、選択される。いくつかの実施形態では、前記治療遺伝子は、眼圧への治療的変化を直接的または間接的に促進する遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは、レポーター因子をさらに含む。追加の実施形態では、前記プラスミドは誘導因子をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記注射デバイスは、注射シリンジ、引き抜きシリンジ、前記注射シリンジおよび引き抜きシリンジと流体連通している管、前記管と流体連通している針、および前記管と流体連通している圧力変換器を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、前記標的組織に電場を印加するように構成されるエクストロポーション装置をさらに含む。任意的に、前記キットは、複数の追加のプラスミドDNAをもさらに含み、前記追加のプラスミドDNAは、異なる治療遺伝子を任意選択的に含むか、異なる量のプラスミドDNAを任意選択的に含むか、同じ治療遺伝子の異なる起点を任意選択的に含むか、異なる誘導因子を任意的に含むか、または異なるプロモーターを任意選択的に含む。
本明細書は、眼圧の上昇を治療または予防するための治療遺伝子を含み、前記プラスミドDNAは、眼圧の上昇を有するか、その傾向がある対象の眼の前房にデリバリされるように構成され、前記プラスミドDNAのデリバリは、線維柱帯網および毛様体などの、前記眼の組織における前記治療遺伝子の発現を誘導するように構成される、プラスミドDNAの使用をも提供する。本使用のデバイスおよびシステムも本明細書に記載され、デバイスおよび/またはシステムの機能のコンビネーションは、眼圧の上昇を治療または予防する治療遺伝子を含む、プラスミドDNAの特定の使用を適用することができる。
前述した、および他の特徴、本発明の実施形態の態様および利点は、ここに開示される発明を限定するものではなく、例示することを目的とし、様々な実施形態の図面を参照して以下に詳細に説明される。本図面は、以下の図を含む:
図1は、眼の断面側面図を示す。
図2A〜2Bは、眼の概略図であり、開放角(2A)および虹彩と角膜(2B)との間の閉じた角度での逆向きの流れを示す。
図3は、注射システムの実施形態を含む、眼の断面側面図を示す。
図4は、注射システムおよび帯電したプローブの実施形態を含む、眼の断面側面図を示す。
図5は、エレクトロポレーションシステムの実施形態を含む、眼の断面側面図を示す。
図6Aは、エレクトロポーションシステムの実施形態の側面概略図である。
図6Bは、エレクトロポレーションシステムの実施形態の上面概略図である。
図7A〜7Cは、エレクトロポレーションシステムの実施形態を、眼の前眼房に配置する方法を示す、フローチャートである。
図8は、注射システムの実施形態を示す概略図である。
図9Aは、注射システムの実施形態の上面図を示す概略図である。
図9Bは、注射システムの実施形態の下面図を示す概略図である。
図10は、注射システムとポンプとの間の接続の実施形態の概略図である。
図11は、エレクトロポレーションシステムの実施形態の上面概略図である。
図12は、眼の断面側面図およびエレクトロポレーションシステムの配置を示す。
図13は、2ピース手動システムのための、医療処置の実施形態を示すフローチャートである。
図14は、ワンピース半手動システムのための、医療処置の実施形態を示すフローチャートである。
図15は、ワンピース自動システムのための、医療処置の実施形態を示すフローチャートである。
図16は、GFPを発現する単一のTM細胞の、実施形態の画像である。
図17A〜17Cは、免疫組織化学の実施形態を示す。
図18A〜18Bは、線維柱体網(A)の細胞でのDsRed2プラスミド媒介発現を示す一方、in vivoでの前房デリバリ後のプラスミド(B)なしの媒体のみを受容する対照組織では発現しないことを示す図である。
図19は、ミクロフィブリル上の弾性繊維重合の実施形態の概略図である。
図20A〜20Cは、エラスチンリッチなTMの実施形態を示す。
図21A〜21Bは、流体力学的灌流後およびエレクトロポレーション後のTMにおける、プラスミドDNAの発現レベルを示す。
図22A〜22Cは、線維柱体網(TM)および毛様体(CB)のin vivo EGFPプラスミド媒介トランスフェクションを示す。22A:対照眼、媒体のみを受容する。22B:治療された眼、レポーター遺伝子(EGFP;緑色発現)を有するプラスミドを受容する。22C:サイトゾルEGFP発現を有するTM中の単一細胞の詳細。矢線:TM。 矢頭:CB。
図23は、LOXL1および、トロポエラスチンがWTマウスTMにコローカライズする実施形態を示す。
図24A〜24Bは、LOXL1発現に関する実験データを示す。24Aは、pDNA灌流後の、LOXL1マウスTMにおける原線維を欠如したエラスチン凝集体の間でのトランスジェニックLOXL1発現の実施形態を示す。24Bは、WT陰性対照マウスにおける、線維性エラスチンの実施形態を示す。
図25は、LOXL1マウスにおけるIOPの実施形態を比較するグラフである。
図26A〜26Bは、ヒト眼組織へのプラスミドDNAのデリバリを評価するための灌流チャンバー装置を示す。
図27A〜27Dは、ヒトTMにおけるpDNA発現の実施形態を示す。
発明の詳細な説明
いくつかの実施形態を通じて、実施例および図解を以下に開示する。 本明細書に記載された本発明は、当業者により具体的に開示された実施形態、実施例および図解を超えて拡張され、本発明の他の用途およびその明白な改変および等価物を含むことが理解されるであろう。本発明の実施形態は、添付の図面を参照して説明され、同様の参照番号は同様の要素を参照する。本明細書に提示された説明で使用される用語は、単に本発明の特定の明細書の実施形態の詳細な説明と併せて使用されているので、制限的または限定的に解釈されることを意図するものではない。加えて、本発明の実施形態は、いくつかの新規的な特徴を含み、単一の特徴がその望ましい属性を単独で担うものではなく、また、本明細書に記載された本発明を実施するために不可欠なものである。
本明細書の開示は、上述した障害の治療を効率的に制御する能力を劇的に改善する、治療用核酸のデリバリによる眼障害の治療のための方法、システム、およびデバイスを提供する。眼障害を治療するための従来のシステムでは、眼の前房に薬剤および/または医薬を供給することができるが、薬剤および/または医薬の投与量を、効果的に制御することはできない。加えて、眼の液体の流出の滴定は、典型的には不完全である。本明細書の開示は、眼内圧上昇を効果的に防止または制御する、実施形態を提供する。いくつかの実施形態では、眼障害の治療の方法、システムおよびデバイスは、治療を通して圧力を加えることができ、および/または規模を適用することができる。
従来の眼障害の治療システムでは、医師は、導入されたプラスミド、薬物および/または他の医薬の標的位置を、効率的に制御することができない場合がある。本明細書の開示は、導入されたプラスミド、薬物、および/または他の医薬の流れを、眼の前房を横切って、線維柱体網のような生理学的流出空間に影響を与える実施形態を提供する。眼障害を治療するための従来のシステムは、眼圧が高すぎたり低すぎたり、炎症、不快感、および/または瘢痕化などのいくつかの合併症およびリスクを結果としてもたらす場合がある。本明細書では、治療剤のデリバリ、量および標的化を効果的に制御することによって、合併症のリスクを低減する実施形態が提供される。
外科手術のような、眼障害疾患を治療するための従来のシステムでは、膀胱漏出、感染、瘢痕、白内障および/または他の副作用を含む、多くの合併症が生じる。加えて、他のタイプの従来的な外科手術の後、患者は、毎日の点眼剤または他の局所的な医薬を必要とする場合もある。伝統的なタイプの薬物投与は、特定の眼障害を完全に治療するために、重要な患者コンプライアンスを必要とすることがある。また、従来の手術方法の後に、眼の圧力制御も、失われる可能性がある。
本明細書の開示は、とりわけ、これらの合併症を軽減することができる実施形態を提供する。本明細書に開示される実施形態は、眼圧を効果的かつ効率的に監視し、治療に必要なDNAプラスミドを含む組成物のデリバリ圧力および量を正確に決定し、注射装置を眼の中または近くに適切に配置し、および/または全治療を通したシステムや過程を制御する。いくつかの実施形態では、治療システムは、手動、半自動、およびまたは自動とすることができる。本明細書中に開示されるいくつかの実施形態はまた、眼障害の治療におけるコンプライアンスに関し、患者関与を低減することが必要となる。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーションは、一度プラスミドが注射された後、眼の前房にDNAプラスミドを向けるために使用され得る。エレクトロポレーションはまた、目の線維柱帯網または毛様体への遺伝子デリバリを増強し得る。いくつかの実施形態では、これは、瘢痕、炎症および/または他の副作用の軽減を支援する。
排液インプラントなどの眼障害を治療する、いくつかの従来システムは、非常に低い眼圧、白内障、角膜剥離脈絡膜および/または網膜の破壊、および/または眼球運動障害の結果になり得る。インプラントが失敗するかブロックされると、しばしば追加の手術が必要になることがある。本明細書の開示は、眼圧を効率的かつ効果的に監視し、治療に必要なDNAセラミドの適切な量を決定するシステム、デバイスおよび方法を提供する。このため、いくつかの実施形態を通して、眼障害の治療の従来のシステムに関するコンプライアンスは、実質的に軽減され得る。
医学的治療システムの技術分野の前述した改善を達成するために、本明細書に開示するシステムは、様々な機能、技術、および方法論を採用する。本明細書に記載の新たな特徴、技術および方法論は、特に、眼の障害の部門に生じる問題、特に緑内障の治療の問題を解決する。本明細書に開示されたシステムは、緑内障を治療するために主に記載されているが、開示されたシステムは、眼または任意の身体器官に関係する他の障害の治療に使用することが出来る。
(眼の解剖学)
眼は、光を検出し、それをニューロンの電気化学的インパルスに変換する特殊な感覚器官であり、それにより視力を可能にする。目には複数の房、すなわち前房(ヒトにおいて約250マイクロリットルの房水で満たされている)後房(虹彩の後ろの小さな空間であるが、レンズの前方))、および硝子体房(3つの房のうち、最も後方にある)を有している。前房は、眼の外面、角膜および虹彩との間に位置する。房水は、毛様体から分泌され、前房に流入する。房水は、これらに限定されるものではないが、眼内圧を維持し眼球を膨らませること、栄養を角膜、線維柱帯網、レンズおよび他の前房解剖学的構造に提供すること、および視力を向上させるための屈折率を提供するという複数の機能を有する。房水は、連続的に生成され、したがって眼内圧の維持は、等しい速度の房水排液で釣り合わなければならない。
房水は、前房から線維柱帯網を通って、シュレム管に流入する。シュレム管は、上強膜静脈への房水の流れを可能にする。流出の主要な調節因子として、線維柱帯網は、水の流れに対して最大の抵抗を提供する。線維柱帯網は、最大90%の水流出を処理する。この組織は、高く弾性であり、収縮性であり、ゆえに流体の流れを調節し、したがってIOPを調節するのに重要な役割を果たす。線維柱帯網の弾力性および収縮性を調節するメカニズムの病理学的変化は、水流出およびIOPに悪影響を及ぼし、緑内障を引き起こす可能性がある。流出の二次経路は、ブドウ膜腔の排液(眼内圧より独立している)を経由するものであり、その経路は、通常、線維柱帯網よりもはるかに少ない排液を説明する。
(眼障害)
上述したように、房水の生産と排出のバランスは、通常の眼内圧の維持を必要とする。緑内障は、網膜神経節細胞およびそれらの軸索を破壊して、対応する視力低下を引き起こす進行性疾患である。これは世界中の不可逆的な失明の主原因であり、現在までは治癒不可能である。上昇した眼内圧は、房水の生産の増加または流出の低下のいずれかによるものであり、緑内障に関連する。眼内圧の上昇は、例えば、異常な線維柱帯網、または虹彩の損傷または疾患による網状組織の損傷によって引き起される。
種々のタイプの緑内障が存在し、主要な分類は、緑内障が開放隅角または閉塞隅角緑内障であるかどうかである。問題の角度は、虹彩と角膜との間の角度による。この角度が狭くなったり閉じたりすると、圧力が上がり、最終的に視神経に損傷を与えて視力喪失につながる。
原発性開放隅角緑内障は、排液管の詰まりが進行して眼圧が上昇し、進行する視神経損傷を引き起こす結果である。これは、緑内障の中で最も普通のタイプであり、米国では90%のケースを占める。発症は遅く、無痛であり、視力喪失は徐々にかつ不可逆的である。狭小角緑内障では、虹彩が前方に弓なりになり、眼を排液する角度が狭まり、眼内圧が上昇する。治療しない場合は、閉塞隅角緑内障の緊急事態を引き起こす。閉塞隅角緑内障(閉塞隅角緑内障)では、虹彩が前方に弓なりになり、虹彩と線維柱帯網の間の物理的接触を引き起こし、眼内からの房水の流出を阻止する。この接触は、水生産の速度を保つことをできなくさせ、眼圧が上昇するまで、線維柱帯網の機能に対する妥協を増大させる。症状の発症は、突然起こり、痛みや他の症状が顕著に現れ、緊急事態として処置される。
二次的な緑内障は、別の病気、外傷、薬物または処置が眼圧上昇を引き起こし、視神経損傷および視力喪失をもたらす場合を指す。
角膜剥離緑内障では、圧力は、房水の正常な排液を妨げる顕微鏡的な粒状タンパク質繊維の蓄積に起因する。本質的に、破片は線維柱帯網の流出通路を閉塞する。同様に、色素性緑内障は、虹彩の裏側から色素細胞を剥がし、前房に集めて線維柱帯網を詰まらせることによって生じる。リシルオキシダーゼライク1(LOXL1)遺伝子の多型は、剥離症候群に関連し、眼圧が上昇して緑内障が発症する。剥離症候群で発生する緑内障は、特に攻撃的である。LOXL1は、弾性繊維の維持に関与しており、LOXL1の欠乏は、組織における弾性的な攪乱を引き起こす。線維柱帯網では、これにより眼圧の調節不全および隆起が生じると考えられている。
剥脱症候群が探索され得る動物モデルは、以下でより詳細に議論されるLOXL1ホモ接合性ノックアウト(LOXL1−/−)マウスである。LOXL1−/−マウスは、正常なエラスチン含量で生まれているが、経時的なエラスチン維持障害のために、この含量は年齢と共に減少する。以下に述べるように、剥離症候群の早期に、線維柱帯網のLOXL1異常を矯正する能力は、LOXL1異常に関連する眼内圧上昇および緑内障の予防を可能にする場合もある。
原発性若年性緑内障は、新生児または若年性異常であり、出生時またはその直後に高眼圧症が明らかであり、典型的には、前眼房角発達における解剖学的異常の結果であり、房水流出の閉塞をもたらす。
尿毒症性緑内障は、ブドウ膜炎(ブドウの腫れおよび炎症、目の中間層)の結果である。ブドウ膜炎の眼圧上昇は、炎症自体またはそれを治療するために使用されたステロイドに起因する。
以下でさらに詳しく述べるように、いくつかの実施形態では、長期間の緑内障を効果的に管理、治療、最終的に治癒または緩和することは、眼内圧の異常(例えば、線維柱帯網のような)の原因となる組織の分子欠損の矯正の結果となる。
(緑内障の治療)
上述したように、緑内障は、房水の過剰産生および/またはより一般的には房水の排液障害により生じる。したがって、緑内障治療は、典型的には、房水生成または排液の一方または両方の側面に集中している。1つの治療のアプローチは、毛様体による房水の生成を減少させる薬物治療を含む。しかし、経時的な薬物投薬量は、定期的に監視されなければならず、その時の患者のコンプライアンスは所望の治療効果未満になる。加えて、薬物療法は、副作用を打ち消すために、追加の医薬療法を必要とする重要な副作用を与え、患者のコンプライアンスをさらに低下させる。別のアプローチは、例えば、線維柱帯網をステント留置することによって(または網状組織全体を通過させることによって)房水の流出を強化または増強することに特に焦点を当てている。これらのアプローチの1つの欠点は、手順の侵襲性である。加えて、これらは物理的なアプローチであるため、それらはまた、線維柱帯網自体が、経時的な流出効率と同じ漸進的な低下を被ることもある。例えば、ステントは、インプラントの直後に流出増強を提供し得るが、経時的にゆっくりと閉塞され、それにより、ステントを清浄化および/または置換するための追加の侵襲的手術を必要とする。いくつかのアプローチは、薬物デリバリを物理的ステントと結合する一方で、房水の排液を強化するために、標的組織に薬物をより正確にデリバリするためのインプラント型デバイスを使用する、追加のアプローチも提供する。これらのアプローチには確かな欠点があるかもしれないが、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、緑内障の治療において、強化された治療効果を提供するために、これらのアプローチに匹敵するよう構成される。
分子的なアプローチはまた、緑内障を主に治療するための試みとして使用されており、例えば、遺伝子治療である。しかし、下記に、より詳細に記述するように、遺伝子治療は、関心のある治療用遺伝子のデリバリのためのウイルスベクターを典型的には用いるものであり、眼内環境で使用する場合、いくつかの制限および免疫原性リスクなど潜在的な欠点がある。ある種のウイルスベクター(アデノ随伴ウイルス(AAV)など)は、網膜遺伝子治療にある程度成功しているが、それらのベクターは、遺伝子運搬能に問題があり、免疫応答や悪性腫瘍を誘発する能力を依然として残している。
(ベクターとしてのプラスミド)
ウイルスベクターとは対照的に、プラスミドDNAなどの非ウイルス性の天然由来のDNAは、免疫原性および/または安全性のリスクが有意に低下するか、または存在しない。プラスミドDNAを使用する場合、プラスミドDNAベクターに組み込むことができる目的の治療遺伝子のサイズの制限がほとんどないなど、さらなる利点が実現される。したがって、ウイルスベクターに適合する十分小さい治療遺伝子のプールは、大きく低減されることもあるが、広範囲の治療遺伝子が所与の疾患について評価することができる。加えて、プラスミドDNAは、非常に安定であり、長期間安定性を維持するために冷凍または凍結を必ずしも必要とせず、実験室環境での長い使用の歴史を有する。まとめると、プラスミドDNAの特徴の多くは一般に理解されており、プラスミドDNAは、本明細書に開示されている、いくつかの治療的実施形態にとって理想的な選択肢となる。さらに、プラスミドは、遺伝子がプラスミドに挿入される方向性にある程度の柔軟性を与える(遺伝子は、目的の治療用遺伝子をコードするポリペプチドのN末端領域またはC末端領域で、プラスミド内の所望の位置に挿入することができる)。目的の治療用遺伝子の適応性を変化させるこの能力は、当業者に理解されるいくつかの利点を提供する。加えて、上述したように、プラスミドは、サイズ制限があるとしてもほとんどないので、大きな治療遺伝子でさえ、マーカーまたは他のタイプのレポーター遺伝子をプラスミドに組み込む能力を残している(例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、または標的細胞内の治療遺伝子の長期寿命のデリバリおよび決定のための品質管理として使用され得る、いくつかの他の識別可能なマーカなど)。
(治療遺伝子)
上述したように、高まった眼内圧に関連するか、さもなければそれに関連する様々なタイプの眼障害が存在する。よって、本明細書に開示された、いくつかの実施形態にしたがい、眼内圧を正常レベルに低下させるために、または圧力上昇を防止するために使用することができる治療遺伝子を、本明細書に開示される方法、デバイス、およびシステムと共に使用することができる。実施形態に応じて、治療遺伝子は、3つの主な概念的経路の1つ、すなわち、眼内液の生成の低減;眼内流体の流出の増加;病気に関連した流出の減少によって、眼内圧上昇に関連する障害の症状を軽減しおよび/または治療するために使用することができる。
例えば、一実施形態では、リシルオキシダーゼ様1(LOXL1)をコードするポリヌクレオチドは、角膜の緑内障の治療で投与が可能である。このようなヌクレオチドの一例は、NCBI参照配列:NM_005576.2である。一実施形態では、ミオシリンをコードするポリヌクレオチドは、若年性緑内障の治療で使用が可能である。一実施形態では、CYP1B1をコードするポリヌクレオチドは、小児期および/または成人緑内障の治療で使用が可能である。一実施形態では、プロスタグランジンF合成酵素をコードするポリヌクレオチドは、眼の組織を誘導するために、プロスタグランジンの産生を上方制御するため投与が可能であり、毎日のプロスタグランジンの点眼薬の使用を補う(または置き換える)ために使用することができる。また追加の一実施形態では、C3転移酵素またはカルデスモンをコードするポリヌクレオチドは、眼内および/または眼球外の筋肉(例えば、ミオシンのATPアーゼ活性の阻害による)の収縮性を減少するために投与が可能であり、副次的な効果として、眼全体の圧迫を軽減することができる。
実施形態によると、目的の治療遺伝子の断片、誘導体、ミュータント、切り詰め、または他のバリアントが使用できる。これらの用語は、その通常の意味を与えられるものとする。それらはまた、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95% 、または99%は、天然(例えば、野生型)ポリヌクレオチドと同一である、ポリヌクレオチド;少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98% または99% は、天然のポリペプチドと同一である、ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸ミューテーション(例えば、付加、欠失および/または置換)(天然ポリペプチドと比較した)を含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;中程度または典型的な、ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件下で、天然ポリペプチドをコードする核酸に、ハイブリダイズすることができるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または、中程度または典型的なストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件下で、少なくとも20個の連続したアミノ酸、少なくとも30個の連続したアミノ酸、少なくとも40個の連続したアミノ酸、少なくとも50個の連続したアミノ酸、少なくとも75個の連続したアミノ酸、少なくとも100個の連続したアミノ酸、少なくとも125個の連続したアミノ酸、または少なくとも150個の連続アミノ酸の天然ポリペプチドの断片をコードする、核酸配列にハイブリダイズできるポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドに言及する。
加えて、天然ポリヌクレオチドの誘導体、断片、またはバリアントは、天然ポリペプチドの活性の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%を保有する、ポリペプチドをコードするものを含む。
上述したように、治療遺伝子は、場合によりレポーター遺伝子と一体化していてもよいし、レポーター遺伝子と一列に並んでいてもよい。適切なレポーター遺伝子は、これらに限定されないものの、lacZ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、または本明細書に開示される他のまたはヒト療法での使用に適切なレポーターを含むことができる。
いくつかの実施形態では、プラスミドDNAはまた、治療遺伝子の遺伝子発現を、ポジティブまたはネガティブに調節する誘導性要素を含む。実施形態によると、化学的に調整または物理的に調整された誘導性要素のいずれかが使用される。物理的に調節される誘導性要素は、光(例えば、光度)、温度、例えば眼内環境などで見られるような、生理学的温度に反応するものを含むが、これらに限定されない。化学的に調節される誘導性要素は、例えば、アルコール、テトラサイクリン、ドキシサイクリンなどの薬物、ステロイド化合物、金属または金属イオンなどの存在または非存在に基づいて、遺伝子発現を調節することに応答するものを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、例えば、Cre―lox誘導性システムを使用する。いくつかの実施形態は、例えば、Tet―on/Tet―offシステム(または他の薬物ベースの調節システム)を使用する。いくつかの実施形態は、インターフェロンαおよびγならびにdsRNAアナログポリ(I:C)によって誘導可能な、ミクソウィルス抵抗性1(Mx1)プロモーターを使用する。上記のように、このようなシステムを用いて、治療遺伝子の陽性および/または陰性調節を達成することができる。治療遺伝子の発現を調節するために、例えば、低分子干渉RNA、shRNAなどの、他のメカニズムも使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子発現のレギュレーターは、利点的には感光性である。いくつかの実施形態では、レギュレーターは、局所的または経口的に投与される。
他の利点に加えて、目的の治療遺伝子を含むプラスミドDNAのデリバリは、治療遺伝子の発現を促進する調整されたプロモーターの使用をも含み、いくつかの実施形態では、標的効果を低減または回避するために、組織特異的プロモーターが使用される。しかし、特定の実施形態では、組織特異的ではないプロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの、十分に確立された高効率プロモーターが使用される。
(デリバリおよび付属デバイス)
下記にさらに充分に議論されるように、裸のプラスミドDNAをデリバリするためのデバイスおよびシステムは、実施形態に応じて変えることができる。例えば実施形態によっては、デリバリ・デバイスは、所望の体積のプラスミドDNAを対象の標的組織(例えば眼組織)にデリバリする注射シリンジを含む。実施形態によっては、デリバリ・デバイスは、所望の圧力の枠内でプラスミドDNAを対象の眼組織にデリバリするために、マノメータを組み込むおよび/またはマノメータと通信する。いくつかの実施形態は、1つまたは複数のデリバリ変量(例えば、注入の圧力、体積、速度、持続時間など)を動力学的に調整することを可能にする、コンピュータ・インターフェースを含む。いくつかのそのような実施形態では、眼組織への電場の印加などの付属の方法も、コンピュータ・インターフェースによって制御することができる。
図3は、注射システム800の一実施形態を図示する。一実施形態では、注射システム800の針802は、眼の前房に接触していてもよい。一実施形態では、注射システム800は、プラスミドDNAを眼組織にデリバリする。
図4は、別の実施形態を図示する。ここでは、注射システム800の針802は、眼の前房に接触、穿刺、貫通、その他進入してもよい。一実施形態では、負電荷を持つ電極404が、眼の一方の側に配置されていることがある。一実施形態では、正電荷を持つ電極406が、眼の別の側に配置されていることがある。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極が、正電荷または負電荷を有していることがある。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極が、眼の反対側に配置されていることがある。眼の反対側または異なる側に配置された1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはそれを超える電極のそれぞれが、逆の電荷を有していることがある。逆の電荷を持つ電極を眼の反対側に配置することによって、注射されたDNAプラスミドの眼の一方の側から他方へ流れる方向を制御する能力が有利に増強されることがある。実施形態に応じて、眼の全体にわたって電荷のバランスが取られている必要はない(例えば、眼の一部分が3つの電極に接触する可能性があるが、一方で反対の部分が1つの電極のみに接触する)ことが認識されよう。同様に、電極の配備では、正確に反対である必要はない(例えば、電極間が180度未満の角度が使用されてもよい)。
図5は、エレクトロポレーション・システムの一実施形態を図示する。一実施形態では、負電荷を持つエレクトロポレーション・プレート502が、正電荷を持つエレクトロポレーション・プレート504に連結されることがある。負電荷を持つエレクトロポレーション・プレート502および正電荷を持つエレクトロポレーション・プレート504の側壁は、下方へ傾いていることがある。これによって、エレクトロポレーション・システムを、眼の前房を覆って合わせることが可能になろう。実施形態によっては、エレクトロポレーション・システムは、様々なサイズの眼に適合するように調整可能である場合がある。一実施形態では、注射システム800は、エレクトロポレーション・システムに連結される。他の実施形態では、注射システム800を、エレクトロポレーション・システムの中心に置くことができる。一実施形態では、注射システム800のシリンジ506を、エレクトロポレーション・システムの中心の周りにまたはシステムの側に回転させることができる。これによって、DNAプラスミドを様々な角度で注射することが可能になり、眼のある種の構造の外傷および瘢痕が回避される。逆の電荷を持つエレクトロポレーション・プレートを眼の両側に配置することによって、注射されたDNAプラスミドの眼の一方の側から他方へ流れる方向を制御する能力が有利に増強されることがある。
図6Aは、エレクトロポレーション・システムの一実施形態を図示する。エレクトロポレーション・システムの一実施形態は、正電荷を持つエレクトロポレーション・プレート502、負電荷を持つエレクトロポレーション・プレート504、および/または注射システム800のシリンジ506を含むことがある。図6Bは、エレクトロポレーション・システムの一実施形態の上面概略図を示す。一実施形態では、正電荷を持つエレクトロポレーション・プレート502および負電荷を持つエレクトロポレーション・プレート504は、半円形、矩形、円形および/または任意の他の形状を有することがある。一実施形態では、エレクトロポレーション筐体610は、矩形、半円形、円形および/または任意の他の形状としてもよい。
図7A〜7Cは、眼を覆ってエレクトロポレーション・システムを置くためのプロセスの一実施形態の上面概略図を示す。図示されるように、眼の前房を覆ってエレクトロポレーション・システムを置く。
図8は、注射システム800の一実施形態の概略図である。一実施形態では、注射システム800は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ、またはそれを超えるシリンジまたは他の注射システムとしてもよい。一実施形態では、注射システム800は、手動で操作される、半自動的である、および/または完全に自動的であるものとできる。一実施形態では、注射システム800は、引き抜くおよび/または灌流するように構成されるものとできる。
一実施形態では、注射システム800は、針802、Y字管804、灌流シリンジ806、引抜きシリンジ808、止めコック810、ディスプレイ812、第1のプランジャ814、第2のプランジャ816、および/または圧力変換器筐体818を含むことがある。針802は、Y字管804の第1の部分822および/または第2の部分824および/またはa第3の部分826に連結されることがある。実施形態によっては、Y字管804を非膨張性としてもよい。
注射システム800は、圧力変換器筐体818にある圧力変換器を含むことがある。一実施形態では、振動板902および/またはホイートストン・ブリッジも、圧力変換器筐体808にあることがある。一実施形態では、圧力変換器筐体818は、注射システム800から取り外し可能であることがある。
実施形態によっては、圧力変換器筐体818は、Y字管804の第2の部分824に連結されていることがある。他の実施形態では、圧力変換器筐体818は、Y字管804の第1の部分822、第2の部分824、および/もしくは第3の部分826、もしくはY字管804の任意の他の部分、および/または注射システム800の任意の部分の間に形成された接合点に連結されていることがある。さらになお、他の実施形態では、圧力変換器筐体818は、灌流シリンジ806および/または引抜きシリンジ808に連結されることがある。一実施形態では、圧力変換器筐体818は、針802に連結されることがある。他の実施形態では、圧力変換器筐体818は、第1のプランジャ814および/または第2のプランジャ816に連結されることがある。
ディスプレイ812は、圧力変換器筐体818の外面に連結することができる。ディスプレイ812は、アナログおよび/またはデジタルとすることができ、実施形態によっては目盛盤を含んでいることがある。ディスプレイ812は、圧力変換器によって決定された圧力を表示するように構成されてもよい。一実施形態では、ジャック820は、圧力変換器筐体818の第2の外面に連結されることがある。ジャック820は、コントローラおよび/またはポンプ1002に接続するように構成されてもよい。コントローラは、実施形態によっては、アナログとしてもデジタルとしてもよい。
一実施形態では、灌流シリンジ806は、第1のプランジャ814で構成されることがある。この実施形態では、灌流シリンジ806は、最大250マイクロリットルを注射するように構成することができる。他の実施形態では、灌流シリンジ806は、250マイクロリットル超を注射するように構成されることがある。実施形態によっては、灌流シリンジ806は、医薬、DNA、プラスミド、および/または任意の他の物質で予め充填されていることがある。他の実施形態では、灌流シリンジ806は、予め充填されていないことがある。灌流シリンジ806は、ガラス製としてよい。
一実施形態では、引抜きシリンジ808は、第2のプランジャおよび止めコック810を含むことがある。止めコック810は、引抜きシリンジ808を開くおよび/または閉じるためのボタンを含むことがある。実施形態によっては、引抜きシリンジ808は、予めゼロマイクロリットルに設定することができ、最大125マイクロリットルを引き抜くように構成することができる。他の実施形態では、引抜きシリンジ808は、125マイクロリットル超を引き抜くように構成することができる。
図9A〜9Bは、注射システム800の一実施形態を描いた概略図である。図9Aは、灌流シリンジ806の一実施形態の側面図である。図9Bは、引抜きシリンジ808の一実施形態の側面図である。一実施形態では、圧力変換器筐体818は、管連結チャンバ904によって灌流シリンジ806に連結される。一実施形態では、圧力変換器筐体818の振動板902は、第1の止めコック906のボタン908に連結される。一実施形態では、振動板902を、圧電性とすることができる。圧力変換器筐体818内にある圧力変換器によって標示された特定の圧力に基づき、第1の止めコック906は、注射される医薬および/またはDNAを適正な量とすることを可能にするために、開くおよび閉じるように構成することができる。
注射システム800は、何通りかで使用することができる。一例では、注射システム800は、医薬および/またはDNAを含む50%の水性液体を変換圧力に交換するように構成することができる。このプロセスの一実施形態では、灌流シリンジ806は、その最大注射容量を250マイクロリットルに設定することができる。針802は、角膜の前房内に挿入することができる。次に、第2の止めコック910を開くことができる。次に、引抜きシリンジ808の第2のプランジャ816を引いて、最大125マイクロリットルの水性液体を引き抜くことができる。その後、第1の止めコック906を開くことができ、第1のプランジャ814を押すことによって、灌流シリンジ806中にある医薬および/またはDNAを注射して、引き抜いた水性液体と置換することができる。引き抜いた水性液体が置換されれば、第1のプランジャ814をさらに押して医薬および/またはDNAを注射して、変換圧力を増加させることができる。圧力が変換圧力のレベルに到達すれば、針802を引き抜いてプロセスを完了することができる。
別の実施形態では、ポンプ1002は、コネクタ1008によってジャック820に接続することができる。一実施形態では、コネクタ1008は、ジャック820をブリッジ・アンプに、および/またはブリッジ・アンプをデジタル入力および/もしくは出力に、および/またはブリッジ・アンプをアナログ・ボルト・ポンプ・コントローラに、および/またはアナログ・ボルト・ポンプ・コントローラをポンプ1002に、接続することがある。これは、さらに長く灌流するのに有利であり、なぜなら、この実施形態によって、変換圧力(例えば、35mmHg、15mmHg、25mmHgおよび/または15mmHgから35mmHg)を灌流の期間にわたって修正および/または制御することが可能になるためである。変換圧力は、針802を角膜の前房内に挿入することによって決定されてもよい。一実施形態では、灌流シリンジ806のポンプ1002は、作り付けのアナログ電圧インテグレータを含むことがある。一実施形態では、ポンプ1002は、ディスプレイを含むことがある。
図12は、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極の配置の一実施形態を図示する。概して、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、角膜と強膜との縁接合部1128の近くに据えられることがある。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、線維柱帯網1118上に配置されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、線維柱帯網1118からの第1の距離1122に配置されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、例えば、接合部1128からおよそ0.5から0.75mmに配置されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、毛様体1120上に配置されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、毛様体1120からの第2の距離1124に配置されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極は、毛様体1120からおよそ1.0から2.0mmに、例えば、かつ強膜1126の上方に配置されてもよい。
図11は、エレクトロポレーション・システムの一実施形態を図示する。エレクトロポレーション・システムの一実施形態は、全体的に円錐の形状、円筒の形状、および/または任意の他の形状を有していてもよい。
一実施形態では、エレクトロポレーション・システムは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートで構成される。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれは、患者の眼の表面の輪郭に適合するように上向きの角度に傾斜させることができる。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれは、正電荷および/もしくは負電荷を有していてもよい、および/または電荷を有していなくてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれは、ケーブルを接続して電流を供給するための正極および/もしくは負極を有していてもよい、および/または電極を有していなくてもよい。眼内に導入されたプラスミドの流れを方向付けるために、両側に配置された1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれが逆電荷を有することが有利である。
例えば、図11では、エレクトロポレーション・システムは、第1のエレクトロポレーション・プレート1102および第2のエレクトロポレーション・プレート1104を含むことがある。一実施形態では、第1のエレクトロポレーション・プレートは、正極1130を有することがあり、第2のエレクトロポレーション・プレートは、負極1132を有することがある。一実施形態では、第1のエレクトロポレーション・プレート1102および第2のエレクトロポレーション・プレート1104のそれぞれは、半円形および/または任意の他の形状を有するものとすることができる。例えば、図6Bは、エレクトロポレーション・システムの一実施形態の上面図を示す。一実施形態では、正電荷を持つエレクトロポレーション・プレート502および負電荷を持つエレクトロポレーション・プレート504は、半円形、矩形、円形および/または任意の他の形状を有することがある。一実施形態では、エレクトロポレーション筐体610は、矩形、半円形、円形および/または任意の他の形状としてもよい。
一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれは、部分に分割されてもよい。例えば、図11では、第1のエレクトロポレーション・プレート1102および第2のエレクトロポレーション・プレート1104は、それぞれ第1の部分および第2の部分に分割されて四分円を形成している。各部分は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれに電荷を持たせるために、および/または眼に電流を供給するために、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超える電極1108を含んでいてもよい。有利には、各四分円は、例えば、3つ、4つ、または5つの電極1108を含有することがある。1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超える電極1108のそれぞれは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレート内のワイヤによって接続されてもよい。
一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108のそれぞれが、配置可能および/または置換可能であることがある。これによって、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108を常に滅菌する必要がなくなることから、さらに効率の良い治療が可能となろう。一実施形態では、電極スイッチ1116が、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれの外面に連結されてもよく、これらのプレートは、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108を係合または格納するように構成されてもよい。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108のそれぞれが係合状態にある際に、1つ、2つ、3つ、4つ、および/もしくは5つまたはそれを超える電極1108は、エレクトロポレーション・プレート表面の直下および/または下に、角膜と強膜との縁接合部1112内の眼の任意の部分(例えば角膜1110)に接触させて配置されることがある。実施形態によっては、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108は、格納可能でなくてもよい。
上に記載されたように、エレクトロポレーション・システムの一実施形態の1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ、またはそれを超える電極1108を眼に接触させることが有利である。エレクトロポレーションは、電場を細胞に印加して、細胞膜の多孔性を増加させる。これによって、DNAおよび/または薬剤を細胞内に導入することが可能になる。複数の実施形態では、注射システム800を通じて、プラスミドを眼内に注射することができる。そうして、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える電極1108の供給する電流によって、細胞内へのプラスミドの導入が促進され、それによって、標的組織へデリバリされる目的の治療遺伝子の量が増加する。さらに、エレクトロポレーションは、眼から排出するための線維柱帯網などの組織に向かう、眼の前房におけるプラスミドの流れを有利に方向付けることがある。さらに、プラスミドは、一定および/または様々な圧力下で眼に供給されることがあり、実施形態によっては、高容量、中容量、および/または低容量で眼に供給されることがある。それにもかかわらず、エレクトロポレーションによって、プラスミドの導入を制御することが可能になろう。
実施形態によっては、エレクトロポレーションは、眼の一周縁の眼の一部分に印加されてもよい。視覚障害を治療するための他の遺伝子療法の方法では、治療がオフ・ターゲットとなり、その結果、望ましくない眼の範囲に望ましくない発現が生じる可能性がある。エレクトロポレーション・システムおよび/または注射システムの複数の実施形態は、タンパク質産生によって形成される発現を制御できることから有利である。実施形態によっては、ある特定量のタンパク質のみを生成させることが必要である。眼の一周縁の眼の一部分のみへエレクトロポレーションを加えることによって、治療されるべき特定の眼の範囲で、タンパク質を濃縮して生成させることが可能になろう。
一実施形態では、第1のエレクトロポレーション・プレート1102および第2のエレクトロポレーション・プレート1104は、調整可能とすることができる。一実施形態では、スライド1106によって、第1のエレクトロポレーション・プレート1102および第2のエレクトロポレーション・プレート1104をスライド1106の周りに動かして、各エレクトロポレーション・プレート間の空間を調整することが可能になる。他の実施形態では、スライド1106は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるエレクトロポレーション・プレートのそれぞれに連結される。このことは有利であり、なぜなら、エレクトロポレーション・プレートのそれぞれが電荷を有し、エレクトロポレーション・プレートの間の空間が遮蔽を提供するためである。加えて、各患者の眼の線維柱帯網および形状が様々であることから、スライド1106は有利である。実施形態によっては、スライド1106によって、エレクトロポレーション・システムを患者の眼の輪郭および形状に合わせて調整することが可能になろう。
実施形態によっては、ホルダ1114が、エレクトロポレーション・プレートのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つおよび/またはそれを超える数のものに連結されることがある。ホルダ1114は、一実施形態では絶縁されていることがある。
一実施形態では、エレクトロポレーション・システムは、一体化された注射システムを含んでいてもよい。他の実施形態では、注射システムは、エレクトロポレーション・システムと一体化されていない。図5に図示される実施形態など、一実施形態では、注射システムが、(完全にまたは部分的にのどちらかで)エレクトロポレーション・システムの中心(または中央部分)を垂直に通過する。有利には、瘢痕および他の潜在的な副作用を予防するために、シリンジは、中心を外しておよび/またはある角度で、エレクトロポレーション・システムを通過することがある。
複数の実施形態では、エレクトロポレーションの間に採用される様々なパラメータは、具体的な患者、具体的なプラスミド、または他のコンテクストの具体的な特徴に誂えることができる。この具体的な特徴は、線維柱帯網などの標的組織に対し治療遺伝子を含むプラスミドDNAの所望のデリバリを達成するように、最適化できる。上に記載されたように、本明細書に開示されるエレクトロポレーション・デバイスの複数の実施形態は、特定の患者の眼表面に最適な適合をもたらすように調整可能であり、それに加えて、そのような実施形態では、アーチ状のエレクトロポレーション・デバイスが採用され、電場が通過して印加される円弧(例えば角度の数)を調整することができる。実施形態によっては、眼の周縁全体が単純に四分円に分割され、そこでは、第1の四分円に正電場が印加され、反対側の四分円に負電場が印加される。追加の実施形態では、眼の周縁全体の周りをさらに小さく分割したものが使用され、そのようなものとしては、例えば約1°から約5°の間、約5°から約15°の間、約15°から約25°の間、約25°から約30°の間、約30°から約45°の間、約45°から約60°の間、約60°から約90°の間の円弧、および端点を含めてそれらの列挙された値の間にある任意の円弧などがある。実施形態によっては、例えば、眼のスキャンまたは他の診断測定が実施される際に、多様な円弧がコンピュータにより制御され、それらのスキャンまたは測定では、結果として得られるデータがコンピュータ・モジュールを通じて処理される。例えば、診断用スキャンを実施して、特定の値のエレクトロポレーションに最適な円弧が明らかにされることがある。他の実施形態では、多様な円弧が、患者に伴う過去の経験、診断的評価、または医師の通常の技術に基づき、医師により手動で制御および設定される。
実施形態によっては、エレクトロポレーションに使用される電圧は、約50ミリボルト(mV)から約150ボルト(V)の間に及び、そのようなものとしては、約50mVから約75mVの間、約75から約100mVの間、約100mVから約150mVの間、約150から約200mVの間、約200から約250mVの間、約250から約300mVの間、約300から約350mVの間、約350から約400mVの間、約400から約450mVの間、約450から約500mVの間、約500から約550mVの間、約550から約600mVの間、約600から約650mVの間、約650から約700mVの間、約700から約750mVの間、約750から約800mVの間、しかし800から約850mVの間、約850から約900mVの間、約900から約950mVの間、約950mVから約1Vの間、約1から約5Vの間、約5から約10Vの間、約10から約15Vの間、約15から約20Vの間、約20から約25Vの間、約25から約30Vの間、約30から約35Vの間、約35から約40Vの間、約40から約45Vの間、約45から約50Vの間、約50から約55Vの間、約55から約60Vの間、約60から約65Vの間、約65から約70Vの間、約70から約75Vの間、約75から約80Vの間、約80から約85Vの間、約85から約90Vの間、約90から約95Vの間、約95から約100ボルトの間、約100から約110Vの間、約110から約120Vの間、約120から約130Vの間、約130から約140Vの間、約140から約150Vの間、および端点を含めて列挙されたそれらの間にある任意の電圧が挙げられる。
1回の所与のエレクトロポレーションのセッションで眼表面に印加されるパルスの数は、約2パルスから約20パルスの間に及ぶことがあり、そのようなものとしては、2から3パルス、3から4パルス、4から5パルス、5から6パルス、6から7パルス、7から8パルス、8から9パルス、9から10パルス、10から12パルス、12から14パルス、14から16パルス、16から18パルス、または18から20パルスが挙げられる。実施形態に応じて、さらに多数のパルスが使用されることがある。
1回の所与のエレクトロポレーションのセッションで眼表面に印加されるパルスの持続時間は、約0.5ミリ秒(ms)から約10msの間に及ぶものとすることができ、そのようなものとしては、約0.5から約1ms、約1から約2ms、約2から約3ms、約3から約4ms、約4から約5ms、約5から約6ms、約6から約7ms、約7から約8ms、約8から約9ms、もしくは約9から約10ms、または列挙されたそれらの時間と時間との間にある端点を含めた任意の時間が挙げられる。
印加されるパルスとパルスとの間の間隔も、実施形態に応じて変えることができる。パルス間隔は、約20msと約200msの間とすることができ、そのようなものとしては、約20から約30ms、約30から約40ms、約40から約50ms、約50から約60ms、約60から約70ms、約70から約80ms、約80から約90ms、約90から約100ms、約100から約110ms、約110から約120ms、約120から約130ms、約130から約140ms、約140から約150ms、約150から約170ms、約170から約190ms、約190から約200ms、または列挙されたそれらの間にある端点を含めた任意の時間が挙げられる。
パルス列は、実施形態に応じて、同様に変わるものとできる。実施形態によっては、パルス列は、1から10までに及び、そのようなものとしては、1から2まで、2から3まで、3から4まで、4から5まで、5から6まで、6から7まで、7から8まで、8から9まで、9から10まで、または端点を含めてその間にある任意の体積が挙げられる。本明細書に議論されるように,電気割当量と併せてデリバリされるDNAの量も、調整することができる。例えば、実施形態によってはプラスミドDNA濃度は、約1と約300μLとの間の体積中で約0.1から約20μgまでに及ぶ。さらに具体的には、DNAの量は、約0.1μgから約1μgまで、約1μgから約2μgまで、約2μgから約3μgまで、約3μgから約4μgまで、約4μgから約5μgまで、約5μgから約6μgまで、約6μgから約7μgまで、約7μgから約8μgまで、約8μgから約9μgまで、約9μgから約10μgまで、約10μgから約12μgまで、約12μgから約14μgまで、約14μgから約16μgまで、約16μgから約18μgまで、約18μgから約20μgまでに及ぶものとでき、端点を含めてこれらの列挙された値の間にある任意の量のプラスミドDNAとすることができる。デリバリされるプラスミドDNAの体積および特定の対象の前房の容積に応じて、実施形態によっては、DNAの量をさらに多くすることができる。.さらに、プラスミドDNA溶液の体積は、実施形態に応じて、約1μLから約2μLまで、約2μLから約2.5μLまで、約2.5μLから約3μLまで、約3μL約3.5μLまで、約3.5μLから約4μLまで、約4μLから約4.5μLまで、約4.5μLから約5μLまで、約5μLから約6μLまで、約6μLから約7μLまで、約7μL約8μLまで、約8μLから約9μLまで、約9μL約10μLまで、約10μLから約12μLまで、約12μLから約14μLまで、約14μL約16μLまで、約16μLから約18μLまで、約18μLから約20μLまで、約20μLから約25μLまで、約25μLから約30μLまで、約30μLから約35μLまで、約35μLから約40μLまで、約40μLから約45μLまで、約45μLから約50μLまで、約50μLから約100μLまで、約100μLから約150μLまで、約150μLから約200μLまで、約200μLから約250μLまで、約250μLから約300μLまでに及ぶものとすることができ、列挙されたそれらの間にある任意の体積とすることができる。さらに、本明細書に議論されるように、他の特徴(例えば、デリバリされるプラスミドDNAの量、特定の対象の前房の容積など)に応じて、さらに多い体積を使用することもできる。さらに別の実施形態では、本明細書に開示されたデバイスを有利に使用して、前房から流体を引き抜いた後にその流体をプラスミドDNA溶液に置き換えるプロセスを通じて、プラスミドDNAの濃度を増加させることができる。例えば、内房にアクセスすれば、引き抜きシリンジは、例えば25から50μLの眼液(その中にプラスミドDNAを含有しない眼液)を除去することができる。除去される流体の体積は、次いで、プラスミドDNAを含む治療溶液に置換することができる。この引き抜きと注射の手順を複数回繰り返すことによって、プラスミドDNAを含む治療溶液で前房の全流体体積が構成される点まで、プラスミドDNAの最終濃度を増加させることができる。
個別の電極とアーチ状の電極のどちらを使用するかという電極の配置に応じて、エレクトロポレーションの間に印加される電場の平面は、具体的な眼組織を標的にすることができる。上に記載されたように、実施形態によっては、電場平面は、線維柱帯網に焦点を合わされる。追加の実施形態では、電場平面は、毛様体に焦点が合うように移動される。別の追加の実施形態では、電場平面は、眼の角膜縁および/または眼球後方に焦点が合うように移動される。
図13は、2部構成の手動のシステムを含む治療システムに用いる医療プロセスの一実施形態を描いたフローチャートである。一実施形態では、プロセスはブロック1302で開始することができる。ブロック1304では、シリンジを患者の眼内に挿入することができる。ブロック1306では、シリンジ中のおよび/またはシリンジに接続されている圧力検出器を使用することによって、眼の圧力を決定することができる。一実施形態では、圧力を圧力検出器のディスプレイ上で見てもよい。一実施形態では、圧力を治療システムのディスプレイ上で見てもよい。一実施形態では、圧力の読み取りを使用して、所定の圧力でのプラスミドのデリバリをガイドしてもよい。上記に述べたように、このプロセスは、一連の引き抜き動作および注入動作の連続を任意選択的に含むこともできる(任意選択的なブロック1309を参照‐示されていないが、対応する任意選択的なブロックが、図14および図15に示される手順に存在する)。すなわち、前房からの眼液を引き抜いて、プラスミドDNAを含む治療溶液に置換することができる。実施形態によっては、モニターの圧力は、操作者が引き抜きおよび/または注入のプロセスの間に望ましい圧力の枠を維持し、それによって眼内の組織への損傷の可能性を低減する助けとなる。引き抜きおよび注入のプロセスが繰り返されることから、前房にデリバリされるプラスミドDNAの濃度を上昇させることができる。
ブロック1308では、ブロック1306で決定された圧力に基づき、用量を設定することができる。一実施形態では、この用量を、目盛盤に設定するおよび/またはシリンジに接続することができる。ブロック1310では、ブロック1306で決定された投薬に基づき、眼内に治療化合物を注射することができる。ブロック1312では、1つまたは複数のエレクトロポレーション・プローブを、眼の表面に適用してもよい。ブロック1314では、ある量(例えば、体積またはパーセンテージ)のエレクトロポレーションを、眼に適用するために決定することができる。ブロック1316では、ブロック1314で決定された通りのエレクトロポレーションの量を、眼に適用することができる。本明細書にさらに詳細に議論されるように、実施形態に応じて、電場の印加の際のDNAデリバリを隔てる時間は変わるものとできる。デリバリと電場の印加との間の時間のバリエーションは、実施形態によっては、デリバリされているプラスミドDNAの量およびまたは前房内での濃度(例えば、上に記載された引き抜きと注入の手順の結果として)によって規定されていてもよい。引き抜きおよび注入の手順を採用するさらに追加の実施形態では、任意選択的に、エレクトロポレーションを各回のプラスミドDNAの注射の後に適用することができる。あるいは、所望の量のプラスミドDNAが前房にデリバリされていれば、単回の電場の印加を使用することができる。
ブロック1318では、眼を分析して、プロセスの治療効果を決定することができる。治療効果に応じて、プロセスを、ブロック1306で開始して繰り返すことができる。プロセスが繰り返されないことがある場合には、ブロック1320でプロセスを完了することができる。
図14は、1部構成の半自動システムを含む治療システムのための医療プロセスの一実施形態を描いたフローチャートである。一実施形態では、プロセスをブロック1402で開始することができる。ブロック1404では、治療システムを、患者の眼の表面上に据えることができる。ブロック1406では、治療システムを調整して、線維柱帯網を覆っておよび/またはその近くに、1つまたは複数のエレクトロポレーション・プローブを配備することができる。一実施形態では、治療システムを調整して、眼の他の部分を覆っておよび/またはその近くに、1つまたは複数のエレクトロポレーション・プローブを配備することができる。
ブロック1408では、この治療システムから眼内にのシリンジを挿入してもよい。ブロック1410では、シリンジ中のおよび/またはシリンジに接続されている圧力検出器を使用することによって、眼の圧力を決定することができる。一実施形態では、圧力を圧力検出器のディスプレイ上で見てもよい。一実施形態では、圧力を治療システムのディスプレイ上で見てもよい。
ブロック1412では、ブロック1410で決定された圧力に基づき、用量を設定することができる。一実施形態では、この用量を、目盛盤に設定するおよび/またはシリンジに接続することができる。ブロック1414では、ブロック1410で決定された圧力に基づき、眼内に治療化合物を注射することができる。ブロック1416では、ある量(例えば、体積またはパーセンテージ)のエレクトロポレーションを、眼に適用するために決定することができる。ブロック1418では、ブロック1416で決定された通りのエレクトロポレーションの量を、眼に適用することができる。
ブロック1420では、眼を分析して、プロセスの治療効果を決定することができる。治療効果に応じて、プロセスを、ブロック1406で開始して繰り返すことができる。プロセスが繰り返されないことがある場合には、ブロック1422でプロセスを完了することができる。
図15は、1部構成の自動システムを含む治療システムのための医療プロセスの一実施形態を描いたフローチャートである。一実施形態では、プロセスをブロック1502で開始することができる。ブロック1504では、治療システムを、患者の眼の表面上に据えることができる。ブロック1506では、治療システムを調整して、線維柱帯網を覆っておよび/またはその近くに、1つまたは複数のエレクトロポレーション・プローブを配備することができる。一実施形態では、治療システムを調整して、眼の他の部分を覆っておよび/またはその近くに、1つまたは複数のエレクトロポレーション・プローブを配備することができる。
ブロック1508では、この治療システムから眼内にのシリンジを挿入してもよい。ブロック1510では、治療システムを作動させてもよい。ブロック1512では、シリンジ中のおよび/またはシリンジに接続されている圧力検出器を使用することによって、眼の圧力を決定することができる。一実施形態では、圧力を圧力検出器のディスプレイ上で見てもよい。一実施形態では、圧力を治療システムのディスプレイ上で見てもよい。
ブロック1514では、ブロック1512で決定された圧力治療システムに基づき、用量を設定することができる。ブロック1516では、ブロック1512で決定された圧力に基づき、眼内に治療化合物を注射することができる。ブロック1518では、ある量(例えば、体積またはパーセンテージ)のエレクトロポレーションを、眼に適用するために決定することができる。ブロック1520では、ブロック1518で決定された通りのエレクトロポレーションの量を、眼に適用することができる。
ブロック1522では、眼を分析して、プロセスの治療効果を決定することができる。治療効果に応じて、プロセスを、ブロック1506で開始して繰り返すことができる。プロセスが繰り返されないことがある場合には、ブロック1524でプロセスを完了することができる。
(デリバリ)
実施形態に応じて、治療遺伝子を含むプラスミドDNAのデリバリは、種々のルートのうち1つまたは複数によるものとすることができる。ルートの選択は、治療される標的組織、患者の特定の特徴(例えば患者の治療時現在の健康状態)、デリバリされるプラスミドDNAおよびまたは治療遺伝子の特定の特徴(例えば、間接的なデリバリのルートを有効にできるように使用される組織特異的なプロモーターに関する)、または本明細書に議論される他の変量に依存することがある。いくつかの実施形態によれば、デリバリは、標的組織への静脈内注入、動脈内注入、筋肉内注射、皮下注射、直接注射による、局所的、経口的、経鼻的な、標的組織と連絡している開口部または房へのプラスミドDNAのデリバリ、1つまたは複数の粘膜へのデリバリなどとすることができる。ある特定の実施形態では、プラスミドDNAのデリバリとは、本明細書に開示されるデバイスのうち1つまたは複数を使用して、注射によって、プラスミドDNAを対象の眼の前房にデリバリすることである。線維柱帯網が前房からの眼液の流出の門番としての役割を果たすことから、前房へプラスミドDNAがデリバリされる結果、線維柱帯網の細胞によるプラスミドDNAの取り込みと、それに続いて、線維柱帯網のそれらの細胞における治療遺伝子の発現とが生じる。
様々な担体を使用して、治療遺伝子を含むプラスミドDNAのデリバリを促進することができ、そのような担体としては、例えば、括弧リン酸緩衝生理食塩水、通常生理食塩水、ハンクス平衡塩溶液、Krebs緩衝液、眼液(合成または天然のどちらか)、または眼内のデリバリに適合性のある任意の他の種々の適切な担体などがある。
実施形態に応じて、本明細書に開示される方法、デバイス、およびシステムは、診療所の状況下(例えば外来患者の環境)にある患者に治療遺伝子を含むプラスミドDNAをデリバリする際に、使用することができる。実施形態によっては、治療用プラスミドDNAのデリバリは、下記に記載されるように、さらに長い経過時間にわたって実施することができる。例えば、外科手術一式のある環境では、上記に議論されたようなデリバリの方法および時間の選択は、それらは患者および/またはデリバリされる特定のプラスミドDNAの特徴に依存する。
デリバリのパラメータは、本明細書に開示される他に考慮されるもののうち特定の対象およびその身体的な特徴に応じて、変えることができる。実施形態によっては、プラスミドDNAの注射(または注入)の頻度は、数週間毎のデリバリから1週間に1回もしくは2回のみのデリバリまでに及ぶものとするか、またはさらに頻度を少なくすることができる。例えば、デリバリは、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、6週間毎に1回、8週間毎に1回、12週間毎に1回、16週間毎に1回、20週間毎に1回、もしくは24週間毎に1回(または端点を含めて列挙されたそれらの間にある任意のデリバリ間隔で)とすることができる。実施形態によっては、デリバリは、1〜2年毎に1回または2回とすることを目指す。
他に考慮されるもののうち目的の遺伝子および/または標的細胞集団に応じて、効能の持続時間(例えば、目的の治療遺伝子がどれほど長い間発現するか)は、実施形態に応じて、数週間から数ヶ月まで、またはさらに数年にまで変えてもよい.例えば、実施形態によっては、目的の治療遺伝子はデリバリ後、少なくとも3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、少なくとも約16週間、少なくとも約20週間、少なくとも約24週間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月間(または端点を含めて列挙されたそれらの間にある任意の持続時間)発現する。
デリバリの体積は、実施形態によっては、治療されている患者(例えば小児対成人)に依存するものとなるが、概して約10から約1000μLの間に及ぶものとなる。そのようなものとしては、約10から約20μLの間、約20から約30μLの間、約30から約40μLの間、約40から約50μLの間、約50μLから約100μLの間、約100μLから約125μLの間、約125μLから約150μLの間、約150μLから約175μLの間、約175μLから約200μLの間、約200μLから約250μLの間、約250μLから約300μLの間、約300μLから約350μLの間、約350μLから約400μLの間、約400μLから約450μLの間、約450μLから約500μLの間、約500μLから約600μLの間、約600μLから約700μLの間、約700μLから約800μLの間、約800μLから約900μLの間、約900μLから約1000μLの間、または端点を含めて挙げられるそれらの間にある任意の体積が挙げられる。
治療用プラスミドDNAのデリバリの速度は、実施形態に応じて変えるものとなる。例えば、外来患者の診療所では注射が行われるのに対して、例えば外科手術の一式があるところまたは手術室では、さらに長い持続時間のかかる灌流が実施される。デリバリされている治療用プラスミドDNAの体積も、デリバリの速度に影響を及ぼすものとなる。しかし、実施形態によっては、デリバリの速度は、約1から約3秒の間、約3から約6秒の間、約6から約10秒の間、約10から約15秒の間、もしくは約15から約20秒の間(または列挙されたそれらの間にある端点を含めた任意の時間)となる。さらに長い注射時間も使用されることがあり、実施形態に応じて、例えばおよそ約30から60秒となる。治療用プラスミドDNAが灌流によってデリバリされる際の実施形態では、灌流の持続時間は、約5から約90分までに及ぶものとすることができ、そのようなものとしては、約5から約6分、約6から約7分、約7から約8分、約8から約9分、約9から約10分、約10分から約20分、約20分から約30分、約30分から約40分、約40分から約50分、約50分から約60分、約60分から約70分、約70分から約80分、約80分から約90分、または列挙されたそれらの時間と時間との間にある端点を含めた任意の時間が挙げられる。実施形態によっては、より長い注入時間が有益であり、これはなぜなら、標的細胞、例えば線維柱帯網では、線維柱帯網細胞の最終的なトランスフェクション効率を低減させる可能性がある過剰なプラスミドDNAによるはみ出しがないためである。
実施形態に応じて、プラスミドDNAのデリバリを、一定の速度にまたは多様な速度にすることができる。例えば、デリバリの一定の速度は、1分当たり約0.25μLから1分当たり約30μLとすることができ、そのようなものとしては、1分当たり約0.25μLから1分当たり約0.5μL、1分当たり約0.5μLから1分当たり約1μL、1分当たり約1μLから1分当たり約2μL、1分当たり約2μLから1分当たり約4μL、1分当たり約4μLから1分当たり約8μL、1分当たり約8μLから1分当たり約10μL、1分当たり約10μLから1分当たり約15μL、1分当たり約15μLから1分当たり約20μL、1分当たり約20μLから1分当たり約25μL、1分当たり約25μLから1分当たり約30μL、および端点を含めて列挙されたそれらの間にある任意の体積が挙げられる。
多様な速度が使用される際の実施形態では、速度を調整して、例えば、圧力の増加にリアルタイムで適応させることができるが、この圧力の増加は、プラスミドDNAを含有する溶液を眼の前房(または別の標的組織)にデリバリすることを通じて発生する可能性があるものである。それだけでなくリアルタイムで(または刻一刻の単位で)調整して、対象の眼の眼圧の変動を把握することができる。
実施形態に応じて、治療剤のデリバリの圧力を、所与の対象の現時点の眼の圧力を把握するために変えることができる。例えば、眼疾患の初期段階にある患者は、僅かに眼圧の上昇があるに過ぎないことがあり、僅かに眼圧の上昇があるに過ぎないことがあり、敏感な眼内組織に圧力による損傷を生じるリスクを冒すことなく、より高圧の治療剤のデリバリの圧力に耐えることができる。これに対して、他の患者は、大幅な眼圧の上昇に付随するさらに進行した病態を有することがあり、それゆえ、治療剤のデリバリによってもたらされる追加の圧力は、敏感な眼内組織を損傷するリスクがなければさほど大きくならない可能性がある。そのため、複数の実施形態による治療剤をデリバリする圧力は、水銀柱で約10ミリメートル(mmHg)から約50mmHgの間で変わるものとできる。例えば、治療剤をデリバリする圧力は、約10から約15mmHgまで、約15から約20mmHgまで、約22から約25mmHg、約25から約30mmHgまで、約30から約35mmHgまで、約35から約40mmHgまで、約45から約50mmHgまで、および端点を含めて列挙されてそれらの間にある任意の圧力に及ぶものとすることができる。
本明細書に開示される他の変量に加えて、デリバリされる治療剤内のプラスミドDNAの量または濃度は、対象ごとに変わるものとできる。例えば、実施形態によっては、所与の標的細胞(例えば線維柱帯網細胞)の核内に導入されるDNAコピーの標的範囲は、50と50,000コピーの間である。しかし、全ての治療遺伝子が他のもののように効率良く発現されるわけではないことが認識されるべきである。それゆえ、濃度を、所与の治療遺伝子の所望の発現レベルに応じて変えることができる。このことを考慮すると、特定のプロモーターを選択して目的の治療遺伝子の発現レベルを最大にすることもできる。実施形態によっては、目的のDNA配列のコピー数は、核1つ当たり約1000コピーから核1つ当たり約5000コピーに及び、そのようなものとしては、核1つ当たり約1000から約2000コピーまで、核1つ当たり約2000から約3000コピーまで、核1つ当たり約3000約4000コピーまで、核1つ当たり約4000約5000コピーまで、および端点を含めて間にある任意の量が挙げられる。この濃度は、本開示に与えられたガイダンスに基づいて、当技術分野の通常技術を使用して、所望の治療効能を達成するように変えることができることが認識されるべきである。
対象の眼の前房(または他の標的場所)にデリバリされるプラスミドDNA(目的の治療遺伝子を含む)の量は、実施形態に応じて変わるものとできる。この量は、約0.1マイクログラム(μg)と約10μgとの間とすることができ、そのようなものとしては、約0.1から約0.5μg、約0.5から約1.0μg、約1.0から約1.5μg、約1.5から約2.0μg、約2.0から約2.5μg、約2.5から約3.0μg、約3.0から約3.5μg、約3.5から約4.0μg、約4.0から約4.5μg、約4.5から約5.0μg、約5.0から約7.5μg、約7.5から約10.0μg、および端点を含めて列挙されたそれらの間にある任意の量が挙げられる。
例によっては、プラスミドを用いる組織トランスフェクションが、所望とするところよりも効率が悪いことがある一方で、複数の実施形態によれば、隔離された前房区画内にpDNAを流体力学的に灌流することによって、線維柱帯網の細胞のトランスフェクションの効率が増加する。加えて、複数の実施形態では、エレクトロポレーションと組み合わせた際に、線維柱帯網のプラスミド・トランスフェクションの効率が大幅に増加する。
形質膜は、細胞内空間と細胞外空間とを隔てる脂質の障壁である。細胞外空間に堆積した外来性の遺伝子またはDNAおよび数多くの薬剤が、この障壁を横断して細胞に進入することはできない。細胞内空間および細胞外空間は、イオン伝導正の流体で満たされている。ある電場では、細胞内空間および細胞外空間にあるイオンは、電気泳動によって移動するが、一方の空間から他方内への横断を形質膜によって妨げられる。その代わりに、逆電荷を持つ粒子が、形質膜の各側に蓄積する。これによって、形質膜を横切る電位差が発生する。エレクトロポレーションは、電位差の閾値を超えて起こり、そこでは、一過的な構造変化が形質膜に起こり、その膜の伝導性および透過性を変える。複数の実施形態に従って本明細書に記載されるように、電気刺激のパラメータ(例えば、場の強度、パルス持続時間、パルス数)を様々にすることによって、ある種の膜透過性の特徴を調節することができ、それによって、トランスフェクション・プロセスをある程度制御することが可能になる。また、電気刺激パラメータを変えて、エレクトロポレーション後の細胞の回復と生存率を決定してもよい。これらの特徴によって、エレクトロポレーション支援型遺伝子療法は魅力ある提案となる。膜の障壁機能に電気的に誘導される変化は、膜孔の一過的な開口に起因する。これらの膜孔は初めには疎水性であるが、続いて、膜脂質が再配置されて孔を親水性にするものと考えられる。これによって、イオンおよび分子の膜貫通移送が促進される。DNA自体は、エレクトロポレーションの間に電場のベクターに沿って移動させることがあるように、高い電荷を有し、方向付けが可能であり。
TMは、眼表面の外部かつ前房の内部のすぐ隣に位置する。TMは房水に浸っている。房水は、生理的な塩溶液であり、隣にある角膜のエレクトロポレーションの間に立証されたように、優れたイオン導電体としての役割を果たす。房水で満たされた前房は、遺伝子またはDNAを角膜貫通注射によって内部に堆積し易くする、デポーに相当する。この空間内で、外来性DNAは、TMエレクトロポレーションと連結される際の遺伝子デリバリを増強するように、房水と混ざり合い、次いでTM細胞を浸らせる。TMは、眼表面のすぐ隣にあり、組織を横切って電場を発生するのに使用される表面電極によってアクセス可能である。これによって、侵襲性の最も小さなエレクトロポレーション支援型遺伝子デリバリおよびトランスフェクションに理想的な、前眼におけるTMの位置が設けられる。ウイルスベクター非存在下でヒトのTMをトランスフェクションするためのエレクトロポレーションを、図24A〜図24Bに示す。
(実施例1−線維柱帯網への核酸のエレクトロポレーション支援型デリバリ)
この実施例は、遺伝子を線維柱帯網(TM)にデリバリする方法としての、非ウイルス性のエレクトロポレーション支援型トランスフェクションに関する。上に記載されたように、TMは、眼表面の外部かつ前房の内部のすぐ隣に位置する。TMは房水に浸っている。房水は、生理的な塩溶液であり、優れたイオン導電体としての役割を果たす。房水で満たされた前房は、遺伝子またはDNAを上記に開示される角膜貫通注射、灌流などによって内部に堆積し易くする、デポーに相当する。この空間内で、外来性DNAは、房水と混ざり合い、次いでTM細胞を浸らせる。TM細胞への目的の遺伝子のデリバリを促進するために、電場の印加を使用することができる。TMは、眼表面のすぐ隣にあり、組織を横切って電場を発生するのに使用される表面電極によって容易にアクセス可能であり、それによって、侵襲性の最も小さなエレクトロポレーション支援型遺伝子デリバリおよびトランスフェクションに特に理想的な、前眼におけるTMの位置が設けられる。図16に示される予備データは、エレクトロポレーションを使用して、ウイルスベクター非存在下でヒトのTMをトランスフェクションできることを示す。
エレクトロポレーションを用いたプラスミドDNAの補足的なデリバリの効能を決定するために、LOXL1遺伝子を有する/有さないプラスミドDNAベクターを野生型C57BL/6マウスおよびLOXL1−/−マウスのTMにデリバリするものとする。図17A〜図17Cに示されるように、野生型(WT)C57BL/6マウスは、LOXL1およびエラスチンを豊富にTMに発現している。図17Aは、LOXL1の発現を示し、図17Bは、エラスチンの発現を示し、図17Cは、それら2遺伝子の共局在を示す。この発現パターンは、LOXL1を欠損しているLOXL1−/−マウスとは対照的である。次いで、in vivoエレクトロポレーション支援型LOXL1トランスフェクションの効果および効率を評価するものとする。
(材料および方法)
マウスLOXL1のクローニング
マウスLOXL1遺伝子の全長cDNAコード配列(cDNA 3.15kbp;クローン#MC203207(OriGene);NM_010729)を、CMVプロモーターの下流にDsRed2赤色蛍光レポーターを有する商業的に入手可能な哺乳類発現ベクター(pDsRed2−N1;Clontech;Cat#632406)内にクローニングするものとする。LOXL1遺伝子を有するベクター(pDsRed2−N1.LOXL1)を増幅し、エンドトキシン除去キットを使用して精製するものとする。
前房の灌流のみによるLOXL1のトランスフェクション
LOXL1を有する/有さないプラスミドDNAベクターを、灌流によってマウスの前房にデリバリするものとする。8〜12週齢(w)のWT C57BL/6マウスを使用するものとする。初めに、最適化実験を実施するものとし、そこでは、空のpDsRed2−N1ベクターをWTマウスでのみ灌流させるものとする。続いて、pDsRed2−N1.LOXL1をWTマウスで灌流させるものとする。様々なパラメータを試験してトランスフェクション効率を最適化するものとするが、そのようなものとしては、以下に限定されないが、灌流された溶液の体積、灌流の速度および持続時間、およびDNA用量が数ある中でも挙げられる。体積および流速がトランスフェクション効率に影響を与える場合があることから、様々な用量のpDsRed2−N1ベクターおよびpDsRed2−N1.LOXL1(0.1〜10μg)を様々な体積(2.5、5、10、20μLのPBS)中に希釈して、様々な一定流速(0.25、0.5、1、2、4μL/分)で様々な持続時間(30秒、1、2、4分)にわたって灌流するものとする。さらに持続時間の長い灌流(30、60分)も、流速0.25、0.5および1μL/分で実施するものとする。トランスフェクション効率および導入遺伝子の発現を、遺伝子デリバリの24〜48時間後にフラット・マウントおよび免疫組織化学(図18A〜図18B)において評価するものとする。
野生型マウスにおけるエレクトロポレーション支援型LOXL1トランスフェクション
灌流のみによる最適なTMトランスフェクションのストラテジー(デリバリできるプラスミドDNAの実施例にあるようなpDsRed2−N1およびpDsRed2−N1.LOXL1のもの)がWTマウスで決定されていれば、エレクトロポレーションの影響下で、このプロトコールを繰り返すものとする。前房での遺伝子の灌流(上記に開示される実施形態によっては、エレクトロポレーションが投与と同時に起こるとはいえ)の直後に、眼をエレクトロポレーションするものとする。エレクトロポレーションは、BTX ECM830エレクトロポレータ(Harvard Apparatus、マサチューセッツ州)のピンセット電極(チップまたはパッドの付いた20Gの白金−イリジウム・ループ)を使用して実施するものとする。マウスは、ケタミン/キシラジン/アサプロマジンのカクテルを腹腔内投与して麻酔し、体温加温器の下に横倒しにするものとする。眼瞼を分離し、緩やかな圧力をマウスの眼窩周囲範囲に加えて眼球を僅かに脱出させ、マウス角膜縁領域を露出させて、電極チップ(負極および正極)を、TM上に重なる強膜と接触させて180度離して据えるものとする。電極が正しく配備されたら、フット・ペダルを押し下げて、予め設定されたパラメータに従って電流を印加するものとする。エレクトロポレーションの間、電極−電極の接触を避けるように留意するものとする。
生きたマウスのTMのエレクトロポレーション支援型LOXL1トランスフェクションを最適化するプロトコールを決定するものとする。エレクトロポレーションに用いる開始域は、(a)電圧5〜80V、(b)5〜10パルス、(c)1〜5msのパルス持続時間、(d)50〜100msのパルス間隔,(e)1〜3パルス列、および(f)2.5〜20μL中0.1〜10.0μgのDNA濃度とする。トランスフェクション効率は、灌流のみによってトランスフェクションを受けた対照と比較するものとする。他方の灌流されなかった眼および別個体のトランスフェクションされなかったWTマウスが、陰性対照としての役割を果たすことになる。電気的に誘導される損傷を組織または細胞が受ける可能性を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、およびTUNEL染色によって評価するものとする。組み合わせた知見を使用して、エレクトロポレーション・パラメータの微調整をガイドするものとする。
エレクトロポレーション後、マウスは、目覚めて動き出すまで(1〜2時間)、清潔なケージにて暖かい毛布の下で回復させるものとする。人工涙液を5〜10分おきに角膜に投与して、乾燥を予防する。トランスフェクション効率および導入遺伝子の組織局在は、遺伝子デリバリの24〜48時間後に、前眼部のフラット・マウントで免疫組織化学によって評価するものとする。(a)DSRed2(ベクター)および(b)LOXL1(抗体標識;Alexa−488)の各種蛍光体を、共焦点顕微鏡によって評価し区別するものとする。確立された方法によって、定量的な蛍光のプロファイリングをTMで実施するものとする。
発現の寿命をトランスフェクションの1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、および6ヶ月後に評価するものとする。下流の房水流出路(シュレム管、集水チャネル、強膜上静脈)における導入遺伝子の発現を、放射状の組織学的切片で確かめるものとする。
LOXL1欠損マウスにおけるエレクトロポレーション支援型LOXL1トランスフェクション
WTマウスにおけるエレクトロポレーション支援型LOXL1トランスフェクションに最適化されたプロトコールを構築すれば、前房へpDsRed2−N1(ベクター対照)および/またはpDsRed2−N1.LOXL1のデリバリした後にエレクトロポレーションすることを含む同じプロトコールを、8〜12週齢のLOXL1−/−マウスに適用するものとする。DSRed2の蛍光強度の定量的なプロファイリングを、TMのホール・マウントおよび免疫組織化学切片で実施して、トランスフェクション効率、導入遺伝子の局在、および発現の寿命を決定するものとする(トランスフェクションの6ヶ月後まで)。LOXL1−/−マウスのTMにおいてLOXL1トランスフェクションがLOXL1およびトロポエラスチンの発現に及ぼす効果を分析するものとする。細隙灯およびH&E染色を使用して、遺伝子デリバリおよびエレクトロポレーションの後にTMおよび前眼部の炎症が生じる可能性を調べるものとする。
(結果および考察)
この実施例は、目的の治療遺伝子を含むプラスミドDNAをヒト対象に治療的にデリバリするためのモデルとして、生きたマウスのTMにおけるウイルス不含エレクトロポレーション支援型トランスフェクションの有用性を決定するためにデザインされた。段階的なストラテジーによって、プロトコールを最適化することが可能になり、首尾良く導入遺伝子がTMで発現されることを、ホール・マウント分析および免疫組織化学によって立証されるように検出できるようになる。有利には、研究のデザインによって、異なる蛍光体の検出および共局在分析に基づき、ベクターとLOXL1遺伝子の発現の組織局在を別々に分析することが可能になる。エレクトロポレーションによって、TMのトランスフェクション効率が、前房での遺伝子の灌流によるデリバリのみの効率を超えて増加するようになること、ならびに電極の配置および電場のベクターが導入遺伝子の局在に影響を及ぼすようになることが推定される。万一、トランスフェクション効率を所望よりも低くする場合には、代替のプラスミドDNAベクター、例えば、N末端での遺伝子挿入の代わりのC末端での挿入、異なるプロモーター、または蛍光レポーターのないプラスミドDNAを供試することができる。同様に、必要に応じて、異なる蛍光体(例えばmCherry)を有する代替のプラスミドDNA構築体を利用することができる。TM細胞は有糸分裂が終了していることから、導入遺伝子の発現は寿命が長いことが予想される。電場のベクターを変えるための電極の配置(例えば角膜縁および眼球後方)など、上で議論された変量を調整して、発現を増加させることができる。また、TM周縁を取り巻く複数の場所でエレクトロポレーションすることによって、さらに広範な組織での導入遺伝子の発現が促進されることがある。電気的に誘導される組織損傷が起こるか、またはTM細胞の生存率が低減した場合、デリバリされる電圧を低減する必要がないことがある。LOXL1遺伝子およびLOXL1−/−マウスを、IOPの上昇および落屑緑内障に関連のあるヒトLOXL1遺伝子の異状のモデルとしてここに選ぶ。この焦点が関わるのは、エレクトロポレーションによってTMへの遺伝子デリバリが増強され、分子的な欠陥が組織中で修正されて疾患を予防または治療し得るという概念が支持されるか否かということである。これに続いて、エレクトロポレーションによってデリバリされるLOXL1導入遺伝子が、LOXL1欠損マウスにおいてエラスチンの維持を回復させ、緑内障の表現型の発達を予防するか否かについて、研究が実施されることになる。
(実施例2−緑内障を治療するための裸のDNAの線維柱帯網へのデリバリ)
よくある緑内障のバリアントである落屑緑内障(XFG)は、不治であり、悪性度の高い視力喪失、激しい眼圧(IOP)の変化、およびリジルオキシダーゼ様1(LOXL1)遺伝子の一塩基多型(SNP)に関連がある。本実施例は、異常なIOPの原因である組織の分子的な欠陥を修正することによる、XFGからの治癒または長期の緩和を特定することを目的とする。
ウイルスベクターは、動物モデルの組織で遺伝子を効率的にデリバリするために使用されるが、一方で、ヒトの遺伝子療法での使用は、致死性を含めた免疫原性および安全性のリスクにより制限されている。非ウイルス性の裸のプラスミドDNA(pDNA)は、これらのリスクを持たないが、使用がさらに簡単である。本明細書に開示されるシステム、方法、およびデバイスは、ヒトの緑内障の遺伝子療法のための安全かつ有効なベクターとしてのpDNAの使用に関連する。
線維柱帯網(TM)は、前房の出口に位置する、IOPの主要な組織調節器であり、組織への遺伝子デリバリの助けとなる場所である。前房水中に堆積した遺伝子は、必然的に、TMを通過して眼から出て行く。ここで、TM細胞は、貪食性でありかつ有糸分裂の終了した特長を有し、この特長によって、外来性DNAの内部移行および導入遺伝子の発現の保持が促進されることが予想される。また、TMがこのユニークな場所にあることから、前房の流体力学的灌流に容易にアクセスすること、およびin vivoの細胞性取り込みを増強する手法であるエレクトロポレーションを適用することが可能になる。上に記載されたように、本出願は、pDNAを前房にデリバリした後に、トランスフェクションされた導入遺伝子がTMで有効に発現することを開示する。
LOXL1は、弾性線維の架橋および再生に重要な役割を果たし、XFGに関係がある。公知のLOXL1のSNPがどのようにエラスチンに富むTMの機能性を攪乱させ、IOPの上昇の原因となるかは不明である。概念実証研究では、pDNAベクターを使用して、生きたLOXL1ホモ接合性ノックアウト(LOXL1−/−)マウスで、前房の流体力学的灌流によって、野生型(WT)のLOXL1遺伝子をデリバリするものとする。遺伝子の欠陥を安全にレスキューし、表現型を変えるか否かを決定するものとする。併行して効能および安全性の研究をヒトのTMで実施するものとする。
生きたマウスにおけるpDNAデリバリの効能
本実施例では、LOXL1−/−マウスにおいて、pDNA媒介性のLOXL1導入遺伝子の発現が、エラスチン維持の不全に起因するTMの機能欠損をレスキューする能力を検討するものとする。この研究では、pDNA媒介性の遺伝子療法の有効性を立証し、さらにIOPおよびXFGの決定におけるLOXL1の役割の理解を確立するものとする。
pDNAベースのWTおよび変異型のLOXL1遺伝子(ヒトSNP:rs1048661(R141L)およびrs3825942(G153D))をLOXL1−/−マウスにデリバリするものとする。試験により、以下、トランスフェクションされたLOXL1タンパク質を確認するものとする。すなわち、(a)組織分布、トランスフェクション効率、発現持続時間、炎症または組織損傷との関連、およびエレクトロポレーション後の発現、(b)持続される発現が弾性線維に経時で影響を及ぼすか否か、(c)表現型に及ぼす効果(臨床上の特長、IOP、流出能)を、LOXL1−/−マウスで経時で調べるものとする。
(ヒト線維柱帯網へのpDNAのターゲティング)
この試験によって、ヒトの緑内障遺伝子療法に用いるヒトTMへのpDNAベースの遺伝子デリバリを検討するものとする。それによって、ヒトTMへのpDNAベースの遺伝子デリバリの効能および安全性を確立し、マウス試験のヒトへの適用性を確認するものとする。WTのLOXL1がタグ化されたpDNAを、ex vivo器官系にてヒトの生存TMへ灌流でデリバリした後、in situ2光子イメージングを行い、以下、トランスフェクションされたLOXL1タンパク質を決定するものとする。すなわち、(a)ヒトTM内での分布、トランスフェクション効率、発現持続時間、およびエレクトロポレーション後の発現、および(b)正しく有効かつ安全なタンパク質の発現の反映である、エラスチンとの正しい共局在性である。
XFGは、本明細書に開示される非ウイルス性の緑内障遺伝子療法のデバイスおよび方法を試験するために、少なくとも以下の理由により、魅力のある疾患モデルである。すなわち、(a)XFGはありふれたものであり、世界中の開放隅角緑内障(OAG)の25%の原因であること、(b)XFGは初期のOAGよりも侵襲性が高く治療が難しく、それゆえ治療法を見つけるかまたは長期間の有効な緩和をもたらすことが重要であること、(c)LOXL1のSNPの強い関連性は多様な集団を越えて再現性があるが、その生物学的基盤は未知であり、明らかにすることが求められていること、および(d)関連の変異型LOXL1マウスが利用可能であること、(e)ヒトでのウイルスベクターの使用に伴う重大な安全性の懸念が残っており、より安全な代替物を見つけることが重要であること、である。
LOXL1は、エラスチンの架橋を触媒し、弾性線維を維持する。XFGでは、弾性線維が異常である証拠が、(a)LOXL1エピトープ、ミクロフィブリル・エピトープ、およびエラスチン・エピトープを含有する、眼の不溶堆積物、(b)弾性のある水晶体小帯の自然発生的な崩壊、(c)強膜および篩骨篩板の異常、(d)ブルッフ膜の脆弱性、および(e)心血管および脳血管の疾患に起因する血管の異常、として見出されている。弾性線維の異常がどのようにIOPの調節不全に寄与するのかは不明であるが、理解は重要である。トロポエラスチンはエラスチンの単量体形であり、それらの重合によって、フィブリリン骨格上に弾性のミクロフィブリルが形成される。フィブリン−5は、LOXL1とトロポエラスチンの両方に結合してそれらをフィブリリンと近接させ(図19)、その結果、LOXL1がエラスチン、フィブリリン、およびフィブリン−5と共局在する。これによって、LOXL1は、弾性ミクロフィブリルの限局的な自己集合、安定化、および再生触媒することが可能になるが、LOXL1の不在または低減によってこのプロセスは途絶される。
LOXL1の機能が不充分であることによって弾性線維の維持および再生の欠陥が生じるものと考えられる。時間と共に、このことによってTMの弾力性の欠損、収縮調節機構への応答の不全、およびIOPの上昇が生じる。
TMは、エラスチンに富んだ収縮組織であり、眼から水分の90%までを排出する。TMの細胞は、精緻な内部の弾性線維システムおよび組織の収縮性を調節する(図20A〜20C)。図220Aは、TMの排水孔を取り巻く弾性線維の2光子自家蛍光評価を図示する。図20Bは、TM細胞の梁を取り巻くF−アクチンを図示する。図20Cは、コラーゲン、エラスチン、およびシュレム管の場所(点線部)の間の物理的な関係を描いた3Dモデルを図示する。弾性コンプライアンスおよび収縮トーンを調節することによりもたらされたバランスによって、房水流出耐性およびIOPが動力学的に調節される。本明細書に議論されるような、弾力性/収縮性のバランスに影響を与える遺伝子発現‐正常または異常な‐は、流出耐性およびIOPに影響を与えることになろう。そのため、XFGでは、TMにおける細胞の異常なLOXL1発現によって、弾性線維のホメオスタシスが危ういものとなりかねず、収縮力に対する組織コンプアイアンスが損なわれて流出耐性およびIOPの調節不全が引き起こされかねない。しかし、正常なLOXL1発現を取り戻すことによって、本明細書に開示される複数の方法の結果のように、さらに多くの生理的なバランスおよびIOPを回復させることができよう。
上に記載されたように、本明細書に開示されるようなプラスミドベクターの使用は、少なくとも部分的には、その優れた安全性プロファイルに基づく。免疫原性は稀であるため、導入遺伝子の発現の持続時間を制限しないはずである。ゲノムの組み込みは比較的効率が悪いことから、発がんは制限されることが予想される。プラスミドの遺伝子パッケージング能は重要であり、この能力によって大きなゲノムDNA断片および複数のタンパク質コード体(ポリシストロニックな発現カセット)であっても収容される。ごく最近では、アデノ随伴ウイルス(AAV)などのウイルスベクターが、アデノウイルスなどのベクターよりも有害事象が少なく炎症性が低い、網膜の遺伝子療法に適用されている。とはいえ、AAVベクターは、免疫原性能を保持し、発がんなど長期間にわたるリスクを有し、大きな遺伝子を収容することができない。プラスミドの他の利点は、その簡単な造り、増幅の容易さ、および室温での安定性であり、それらにより保管および操作のためのメリットがもたらされることから、プラスミドは臨床で広く使用された。pDNAは、肝臓、筋骨格系、および心血管系などの器官への遺伝子デリバリに用いるのに提案されている。安全性の課題は、数多くの心血管の臨床試験では顕著に少ないものとなっており、FDAはヒトでの使用の認可さえもしている。
TMは、pDNAベースの遺伝子デリバリのためのユニークな組織標的である。それは前房からの水分のための出口に位置し、したがって、水分中にデリバリされる遺伝子は、通常の流出の間は必然的にTMに直面する。TM細胞へのこの直接的な経路によって、酵素による分解、血清成分との相互作用、血管から溢出してECMを通って遊走する必要性など、血中への全身性デリバリの問題が回避される。しかし、上に記載されたように、他の投与経路も実施形態によっては使用されてもよい。
プラスミドのデリバリは、他の組織区画を用いて成功している。すなわち、前房の角膜内皮細胞、肝類洞内の肝細胞への静脈内デリバリ、唾液腺房細胞への逆行性の腺管デリバリ、ならびに筋肉の線維および細胞をトランスフェクションするための筋肉の筋膜区画内への注射である。隔離された組織区画内では、細胞は、ウイルスベクターがなくても、流体力学的灌流下ではさらに効率良くトランスフェクションされる。本明細書に開示される複数の実施形態では、灌流は、物理的および一過的に形質膜の障壁を乗り越えて、外来性DNAのサイトゾル内への進入を可能にする。例として、流体力学的灌流による肝細胞のトランスフェクション効率は、70%の高さにも達することがある。貪食性であることなど、TM細胞のいくつかの特長が、裸のsiRNAの灌流で起こるように、トランスフェクションの機会をさらに増加させることがある。核に輸送されれば、pDNAは、活発に分裂している細胞よりもTMなどの有糸分裂が終了した細胞で、発現を存続させ持続する傾向が強い。有糸分裂が終了した組織によっては、pDNA媒介性の発現の発現は、少なくとも1年半続く。眼表面の直下にあるTMの配置は、細胞取り込みを増強するための物理的な手法であるエレクトロポレーションに好都合である。外面的には、TMは、強膜表面の電極の配置の数ミクロン内にある。内面的には、それは房水に浸っており、その内部へ、角膜を貫くルートによってpDNAを容易にかつ最小の侵襲性でデリバリする。生理的な塩水溶液は、膜を貫く電圧の発生を促進する導電媒質であり、その電圧によって、外来性DNAに対する膜透過性が一過的に増加する
上に記載されたように、緑内障の病態形成および療法の研究では、TMと房水流出耐性およびIOPを調節するその分子機構とを精査する可能性が提示されている。TMを深く追究するためのこのプラットフォームによって、ヒト緑内障に関連する遺伝子操作、表現型の観察、および橋渡し(translational)研究が可能となる。出生時にエラスチンを欠損しているフィブリリンおよびフィブリン−5の変異型マウスとは異なり、若齢のLOXL1−/−マウス(本明細書に議論される実験で使用されるかまたは使用することを提案されている)の弾性フィブリルは正常である。しかし、老齢のLOXL1−/−マウスでは、成熟し組織化された弾性フィブリルの代わりに、重合の少ない未熟なエラスチンが見られる。器官の脱出などの異常は、組織の支持が不全であるために起こる。このように、LOXL1の欠損は、エラスチンの維持および再生を不全とし、加齢に伴い異常な表現型を展開させる。同様のストレスが、生理的なIOPを支持するエラスチンに富んだTMにかけられる。若齢のLOXL1−/−マウスでは高いIOPが報告されていない一方で、LOXL1+/−マウスのIOPが加齢と共に上がることが決定されている(図25)。このシナリオは、加齢に関連するXFGを模しており、このXFGは、LOXL1の機能の不充分さが十分早期に修正された場合に予防可能となりうるものである。TMのLOXL1の異常が後期に修正されたとしても、比較的生理的な弾性線維の構造および機能をレスキューすることは依然として可能である場合がある。LOXL1−/−マウスにおける有効なpDNAベースの遺伝子デリバリによって、これらの可能性を供試するための簡単かつ有効な選択肢が提供される。また本明細書に詳説および開示されるのは、pDNAデリバリを試験するためのヒトのTM組織ベースのモデルである。最先端の2光子励起蛍光イメージング(TPEF)および深部組織光学切片法によって、分子的な事象のin situでの可視化および分析が可能になる。
この試験は、in vivoのpDNAデリバリが遺伝子の欠陥による機能の欠失を回復させるか否かを焦点としている。この結論に向けて、LOXL1−/−マウスは、エレクトロポレーションを用いておよび用いずに、in vivoで、pDNAの流体力学的灌流によって、WTおよび変異型のLOXL1遺伝子の形態を受けるものとする。試験は、(a)トランスフェクション効率、発現の持続時間、および組織分布の特徴を明らかにすることによって、in vivoにおけるTMでのpDNAトランスフェクションの実現性を探るために、(b)炎症、灌流に関連する損傷、正しいECMターゲティング、および弾性線維の再組織化の可能性についてアッセイに反映されるような、LOXL1導入遺伝子の安全性および機能を決定するために、(c)若齢のLOXL1−/−マウスにおけるWTのLOXL1のTMでの遺伝子デリバリが典型的なLOXL1−/−表現型を予防するか否かを決定するために、デザインされる。
目的の遺伝子を含むpDNAは、確立された手法を用いて、生きたLOXL1−/−マウスの前房内に灌流でデリバリするものとする。初めに、LOXL1のない空のpDNAベクター(pCMV6−AC−GFP;OriGeneカタログ番号PS100010)を使用して、最適な流体力学的灌流のためのパラメータを決定するものとする。増幅し、エンドトキシン不含プラスミド・プレップ・キットを用いて精製した後、異なる濃度のpDNA(0.1〜1μg/5μL)を、生理的に妥当な20〜35mmHgの範囲の一定の灌流圧力(上に記載されたように、実施形態に応じて他の圧力も使用することができるが)に見合った流速で、灌流するものとする。特定の患者には別の濃度および/または灌流圧力が適用可能である場合があることが認識されよう。灌流の持続時間を計算して、マウスの前房の体積×1〜3の体積(〜5μL)をデリバリすることを可能にするものとする。最適なプロトコールが決定したら、これを使用して(a)WTのLOXL1(pCMV6−AC−GFP−LOXL1;NM_005576、OriGeneカタログ番号RG209830)を灌流するものとする。PBSのみまたはGFPレポーターを有した空のpDNAを陰性対照として役立てるものとする。LOXL1遺伝子を有したウイルスベクター(pLenti−C−mGFP−LOXL1;OriGeneカタログ番号MR209361L2)を陽性対照として役立てるものとする。
エレクトロポレーションは、最適な流体力学的灌流のプロトコールが決定したら実施するものとする。それは、pDNAの灌流の間に、BTX ECM830エレクトロポレータ(Harvard Apparatus、マサチューセッツ州)のピンセット電極を使用して実施するものとする。電極チップ(陽極および陰極)を、TMの上に重なっている強膜から180度離して据えるものとする。本明細書に開示される通りとはいえ、他の配置を進んで使用してもよい。エレクトロポレーション支援型TMトランスフェクションを最適化するプロトコールを(a)80V、(b)繰り返しを伴う5パルス列、(c)10msのパルス持続時間、および(d)100msのパルス間隔で開始して決定するものとする。(i)流体力学的デリバリのみおよび(ii)エレクトロポレーションを用いた後の、組織アッセイを比較するものとする(図21A〜図21B)。図21Aは、フラット・マウントにしたマウス線維柱帯網細胞から収集したデータを図示し、この細胞は、流体力学的灌流のみによってデリバリされたGFPを発現している。図21Bは、GFP遺伝子を持つプラスミドDNAのデリバリが灌流とエレクトロポレーションとを組み合わせて行われた際に、GFP発現が増強されたことを図示する。エレクトロポレーションのパラメータは、個々の実験の知見および本明細書に記された開示に基づき、容易に微調整することができる。
pDNAデリバリの1週間後、動物を麻酔し、眼を摘出してフラット・マウント、凍結切片の作製、および免疫組織化学(IHC)に用い、以下を解析するものとする。(1)組織分布:前眼部組織[例えばTM(図22A〜図22C、これらはマウスの隅角構造におけるGFPの発現を図示しており、プラスミドを灌流デリバリした後の放射状切片(22B)がビヒクル対照(22A)と比較されており、細胞の詳細なクローズアップが22Cに示されている))、毛様体、レンズ、角膜]および遠位の流出経路(例えばシュレム管、集水チャネル、強膜上静脈内皮)におけるGFPの発現に基づく。(2)トランスフェクション効率:(i)ヘキストで核を標識したIHCの切片における、GFPを担持するTM細胞のパーセント;および(ii)前眼部のフラット・マウント調製物における、GFPを担持するTM周縁のパーセント。(3)発現持続時間:繰り返しの可能なトランスジェニックタンパク質の発現が確認されたら、pDNAデリバリの30日後、60日後、および90日後にIHCを繰り返すものとし、標示されるよりも長期である場合には、ウェスタン・ブロットおよび定量的PCR(qPCR)による確認を補う。
導入遺伝子の発現の安全性および有効性を検討するために、(a)充血と前房の発赤および細胞について、細隙灯検査を実施するものとし、(b)ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E;構造の崩壊、組織の熱傷、炎症細胞)およびヘキスト標識(細胞の欠失)の後、パラフィン切片で、灌流に関連する損傷を探索するものとし、(c)カルセインAM標識化の後に、新鮮な全眼のTPEF分析(細胞生存率分析)、(d)血液房水関門の破綻または炎症の指標として総タンパク質を測定するために、複数のマウス(5〜10頭)からプールした房水試料にブラッドフォード・アッセイを行った。弾性線維の組織化に及ぼす効果は、蛍光顕微鏡によるH&E切片の試験によって評価し、定量的強度分析、およびVoerhoff’s von Giesson染色、および比較のために抗体標識トロポエラスチンによって、エラスチンに関連するエオシンの蛍光を可視化および分析した(例えば図23を参照されたいが、この図は、エオシン標識された線維柱帯網の線維を示す)。
表現型も評価するものとし、その評価は例えば、流出能、耐性、および収縮性に対する応答性を導入遺伝子のトランスフェクションのパーセントに比較して検討すること、IOPの測定、および前眼部のデジタル撮影を用いる細隙灯検査によって行い、pDNAデリバリの前後に実施する。発現の持続時間に関する知見によって、長期の表現型の観察がガイドされる。表現型の変化の検討は、デリバリ後6〜12ヶ月までの間実施するものとする。上に記載されたように、実施形態によっては、レポーター・エレメントまたはマーカーを採用するが、そのような実施形態が所望の効能よりも低いものを実現した場合、代替のアプローチを採用することができる。例えば、代替のプラスミドベクターのデザイン(例えば、N末端での遺伝子挿入の代わりのC末端での挿入、異なるプロモーター(例えばMIEmCMV)、および/または蛍光タンパク質レポーターのないpDNAを供試することができ、例えば図24A〜図24Bを参照されたい)。図24Aは、プラスミドDNAの灌流後のLOXL1−/−マウスの線維柱帯網細胞における、エラスチンの凝集体に囲まれたLOXL1の発現を図示する(GFPではなく抗体標識LOXL1−DDKを使用)。図24Bは、野生型陰性対照マウスにおけるフィブリル状エラスチンを図示する。
有効なpCMV6−AC−GFP−LOXL1導入遺伝子の発現があれば、GFP蛍光レポーターは、(図22および図24に示されるデータによって立証されるように)TMでは細胞内に、およびECMに、エラスチンと共局在して容易に検出されるはずである。WTのエラスチン染色がフィブリル状のパターンを有する一方で、LOXL1−/−のエラスチン染色は凝集を示す(図24)。WTの導入遺伝子の発現が持続しているLOXL1−/−マウスは、時間と共にフィブリル状のエラスチンのパターンをより多く進展させることがあり、このことはエラスチンの回復を反映する。十分早期にトランスフェクションされる場合、LOXL1−/−エラスチンの解体が全体的に予防されることがある。房水関門の破綻やレンズの混濁など、LOXL1抗体で標識される欠損も、改善されることがある。抗体によるLOXL1の標識はまた、LOXL1−/−マウスにおいて、トランスフェクションされたトランスジェニックLOXL1と例外なく共局在するはずであり、このことはトランスジェニックLOXL1のみが存在することを反映する。しかし、WTマウスでは、内在性のLOXL1が、トランスジェニックLOXL1と共局在しない画分として検出可能であるはずである。それゆえ、内在性およびトランスジェニックのLOXL1は区別されることがある。これらのマウスの齢に伴い、徐々に流出能が不全となることが予想されるが、それはおそらくは、弾力性の不全によってTMのコンプライアンスが低減するためである。WTのLOXL1の発現が回復される場合は、しかしながら、比較的生理的な応答が回復する場合がある。LOXL1−/−マウスでは、齢と共にIOPをさらに高く進展することがあり(図25、この図は、ヘテロ接合性のLOXLマウスの眼圧が齢と共に30%まで増加することを示す)、これはカウンターパートで予想される眼圧を超えているが、WTのLOXL1の発現を復活させることによって、このIOPの上昇が鈍ることがある。逆に、LOXL1−/−マウスにおける変異型LOXL1導入遺伝子の発現によって、ヒトXFGに類似した表現型が生じる可能性があり、そのような表現型としては、未熟な不溶のエラスチンが眼に堆積するなどがあり、これはLOXL1−/−マウスでは特段には見られないものである。導入遺伝子の発現が持続することは、これらの表現型の変化を駆り立てるのに必要となろう。しかし、導入遺伝子の発現が一過的または所望よりも短期である場合、上記に開示されるものなどの代替のステップ、そのようなものとしては、以下に限定されないが、pDNAデリバリを繰り返すか、またはプラスミドの改変(例えばDNA核ターゲティング配列を含有させる;非メチル化CpGジヌクレオチド含量を低減させることによって自然免疫応答が低減する。上に記載されたように、一実施形態では、理想的な発現の持続時間は数ヶ月(例えば3から6ヶ月)である。導入遺伝子の発現が不定であることは、治癒のための概念としては魅力がある一方で、治療プロセスにわたっていくらかの制御をもたらすには、より発現が有限であることが望ましい。In vivoでの強膜を貫くTPEFを経時試験に適用して、トランスフェクションされた導入遺伝子の発現の持続時間を検証するものとする。実施形態によっては、TPEFの知見を、IHC、ウェスタン・ブロット、およびqPCRによってバリデーションするものとする。
いくつかの実施形態によれば、プラスミドを非ウイルスベクターとして使用して、遺伝子をヒトのTMに効率良くデリバリし、それによって簡単かつ安全なヒト緑内障の遺伝子療法の選択肢を提供してもよい。本明細書に開示される試験によって、ex vivoでのヒトTMへのpDNAベースの遺伝子デリバリの効率、有効性、および安全性が確立されよう。また提供されるのは、ヒト組織ベースのモデルであり、そこでは、生きたTMがin situでその本来の三次元構造を保持し、TPEF深部組織光学切片法によってイメージングされる。複数の実施形態では、人工の前房を、灌流試験のために再構築するものとする。
例によっては、無傷かつ生存可能な房水排水管を含有する死後のヒトのドナーの角強膜を、VisionShareから購入するものとする。初めに、内部のアプローチによるTPEF硝子体内イメージングを実施して、TM細胞の生存率を分析するものとする。前房の再構築のために、角強膜の周縁を基板の上に留めるものとする(図26A)。基板は2つの注入口を有し、それらは作り付けのチャネルによってルアー・ロック・ハブに接続され、ハブは外部の管に取り付けられている。図26Bに示されるように、一方の注入口はマイクロシリンジ・ポンプおよび灌流装置に、他方は圧力変換器に接続している。灌流装置は、低グルコースDMEM、pH7.4で満たし、ウォーター・ジャケット・インキュベータに37℃、5%CO2で格納するものとする。圧力および流速をリアルタイムでサンプリングしながら、pDNAを人工前房内にデリバリするものとする。
エレクトロポレーションを伴う補足的な流体力学的デリバリだけでなく、pDNAのヒトTMへの流体力学的デリバリも評価するものとする。例えば、(a)ex vivoの流体力学的灌流デリバリを評価するものとし、この評価を、ヒト組織ベースの系において(a)空のpDNAベクター、および(b)WTのLOXL1を有したpDNAを試験および最適化することによって行う。これらの最初の試験は、トランスフェクション効率、およびタンパク質の正しさ、奏功性および安全性に焦点を合わせるものとし、エラスチンと会合する程度を分析することによって行う。DMEM/GFPを有した空のpDNAを陰性対照とし、pLenti−C−mGFP−LOXL1を陽性対照とする。また、評価するのは、エレクトロポレーション後の組織、流出能および耐性であり、さらに長期の観察がr7〜14日にわたって行われることを除く(最大28日)。その際に、生存性の継続を生体内で検証することと組み合わせるものとする。エレクトロポレーションを使用してプラスミドDNAをデリバリした際に、初めのデータは発現の増強を示す。代表的なデータを図27A〜図27Dに示す。図27Aでは、灌流のみを介したデリバリの1週間後のヒト線維柱帯網におけるプラスミドDNAの発現(DSRed2)を選んでいる。図27Bは、27Aに図示された場所から180°離れたプラスミドDNAの発現(さらにDSRed2も)を図示するが、ここでは、エレクトロポレーションを使用してプラスミドDNAがデリバリされている。図27Aおよび図27Bは、露光下では一致し、発現の強度の増加は、エレクトロポレーションを使用した際にプラスミドDNAのデリバリの度合いがより大きなものとなることを示している。図27Cおよび図27Dは、陰性対照の線維柱帯網細胞の2光子細胞イメージングを図示する。
単数形「a」、「an」および「the」などの用語が本明細書に使用される際には、特段明確に規定されない限り、複数の指示対象を含むことが認識されよう。それゆえ、例えば、「an薬剤」という言及は、2つまたはそれ以上の薬剤を含むなどである。本明細書に使用されるような語「or」などの用語は、特定の一覧にある任意の1つのメンバーを意味し、その一覧のメンバーの任意の組合せを含む。
この書面の記載および請求項を通じて、語「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」や「含む(comprises)」などのこの語のバリエーションは、「含むがこれらに限定されない」を意味し、例えば、他の添加物、構成物、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
上記に開示される実施形態の具体的な特長および態様の様々な組合せまたはサブコンビネーションがなされ、依然として1つまたは複数の本発明内にある場合があることが想定される。さらに、一実施形態に関連する任意の特定の特長、態様、方法、特性、特徴、質、属性、要素などに関する本明細書の開示は、本明細書に規定される他の全ての実施形態で使用することができる。したがって、開示される発明に関する様々なモードを形成するために、開示される実施形態の様々な特長および態様を、互いに組み合わせるかまたは置き換えることができることが理解されるべきである。それゆえ、本明細書に開示される本発明の範囲が、上に記載された特定の開示される実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明が様々な改変、および代替の形態を許容する一方で、それらの具体的な実施例が図面に示されており、本明細書に詳細に記載される。しかしながら、理解されるべきは、本発明が、開示される特定の形態または方法に限定されることはないが、それとは逆に、本発明は、記載される様々な実施形態および添付の特許請求の範囲の趣旨および範疇にある、あらゆる改変、等価物、および代替物をカバーするものとなるということである。本明細書に開示される任意の方法は、説明された順番で実施される必要はない。本明細書に開示される方法は、実践者の取るある種の動作を含むが、それらの動作に関する任意の第三者の指示を、明確にまたは暗示でのどちらかで含むこともできる。例えば、「ヒスタミンを投与すること」などの動作は、「ヒスタミンの投与を指示すること」を含む。また、本明細書に開示される範囲は、任意のおよび全ての重複、部分範囲、およびそれらの組合せを包含する。「まで」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」、「の間」などの言葉は、規定された数を含む。「約」や「およそ」などの用語の先立つ数は、規定された数を含む。例えば、「約3mm」は「3mm」を含む。