JP6960638B2 - シール材及び同シール材を用いた回転センター - Google Patents

シール材及び同シール材を用いた回転センター Download PDF

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Description

本発明は、シール材及び同シール材を用いた回転センターに関する。
金属加工技術は、身の回りのあらゆる金属製品を製造する上で必須の技術である。
中でも旋盤加工は、シャフトやボルトなど機械を構築する上で重要な構成要素を生み出すための中核的な技術であり広く実施されている。
旋盤加工は、主軸台に配されたチャックにワーク(旋削加工物)を固定してワークを回転させ、刃物台に備えられたバイト(切削工具)をワークに接触させることで加工を行うのであるが、このとき、ワークが長物の場合など必要に応じ、芯押し台に配した回転センターでチャックの対向位置からワークを支えて振れを防止し、正確な寸法の製品製造が行われる。
また、旋盤加工中は多くの場合、潤滑や冷却、バイトとワークの溶着等を防止すべく切削油が使用されており、特に近年では冷却効率や環境負荷の観点から、水溶性切削油が広く利用されている。水溶性切削油は、水と所定割合で混合し水系の切削液の状態に調製してから使用される。
ところで、この水系切削液は水分を多量に含むため、旋盤加工機の構成部品に腐食などの影響を与える場合がある。例えば、先述の回転センターは、ワークと当接する回転軸を回動自在に支持するベアリングがケーシング内に収容された構造を有しており、ワークに対して噴射した際の水系切削液の飛沫や、回転するワークから飛散した飛沫が回転センター内に浸入しベアリングに付着すると、腐食によって円滑な回転が困難となり、加工精度が低下するおそれがある。
従って、回転センターのケーシング内部には、水系切削液がベアリングに浸透することがないよう軸封構造が備えられるのが一般的である。
軸封構造としては、回転軸の軸回りにゴム製でリング状のシール部材を配したものや、ラビリンス部を備えたメカニカルシールを配したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2018−108614号公報
しかしながら、上記従来のゴムリングシールを配した回転センターは、回転軸表面に摺接するリップ部の摩耗が著しく、耐久性に乏しいのが現状である。
また、メカニカルシールは耐久性には優れるものの、複雑な構造を備えることから比較的高価であり、また、回転軸が停止しているときはシール性に乏しいという問題があり、いずれにしても液体の浸入による軸受等の腐食を防ぐ効果は十分とは言い難い。
また、このことは回転センターや旋盤装置の構成部材に限定されるものではなく、軸受の如く水を嫌う部材が配された回転軸を有し、水系の液飛沫の存在下で使用される機構部品であれば、同様の問題が生じうる。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性や耐久性に優れ、回転軸の停止時でもシール性を発揮することができ、しかも、低摩擦性に優れたシール材を提供する。
また本発明では、同シール材を軸封構造に使用することで水系液の浸入を抑制し、軸受等の腐食が可及的に抑制された回転センターについても提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るシール材では、(1)水系液飛沫が存在するウェット領域と前記水系液の浸入を抑制すべき保護領域との間に架け渡された回転軸の周囲に配置され、同回転軸の軸回りの液密性を確保する親水性樹脂発泡体にて形成された軸挿通孔を備える短筒状のシール材であって、前記軸挿通孔の内壁面を除き、少なくとも同シール材の保護領域側側面に目止め処理が施されていることとした。
また、本発明に係るシール材では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記シール材のウェット領域側側面にも目止め処理が施されていること。
(3)前記軸挿通孔の周縁から半径方向外方へ0.01〜100μmの縁周りを非目止め領域としつつ前記目止め処理が施されていること。
(4)前記軸挿通孔の直径は、前記回転軸の軸径以下であること。
また、本発明に係る回転センターでは、(5)芯出し位置と同軸にワーク端面に当接させてワークを支持し水系切削液を使用しつつ加工を行うための回転センターであって、前記ワークと同軸で回転する回転軸と、ケーシング内に収容され、前記回転軸を回動自在に支持する軸受部と、を備え、前記ケーシング内の少なくとも軸受部が配された領域を前記保護領域として、前記回転軸の前記ウェット領域との境界位置に、前述した(1)〜(4)のシール材が装着されていることとした。
シール材に係る本発明によれば、水系液飛沫が存在するウェット領域と前記水系液の浸入を抑制すべき保護領域との間に架け渡された回転軸の周囲に配置され、同回転軸の軸回りの液密性を確保する親水性樹脂発泡体にて形成された軸挿通孔を備える短筒状のシール材であって、前記軸挿通孔の内壁面を除き、少なくとも同シール材の保護領域側側面に目止め処理が施されていることとしたため、耐摩耗性や耐久性に優れ、回転軸の停止時でもシール性を発揮することができ、しかも、低摩擦性に優れたシール材を提供することができる。
また、前記シール材のウェット領域側側面にも目止め処理が施されていることとすれば、より堅実なシール性を発揮させることができる。
また、前記軸挿通孔の周縁から半径方向外方へ0.01〜100μmの縁周りを非目止め領域としつつ前記目止め処理が施されていることとすれば、堅実なシール性を実現しつつも、回転軸との摩擦をより低減することができ、しかも、シール材への水系液飛沫の軸挿通孔内周面への供給効率を向上させて、シール材と回転軸との摺動面の潤滑をより良好なものとすることができる。
また、前記軸挿通孔の直径は、前記回転軸の軸径以下であることとすれば、更に堅実なシール性を確保することができる。
また、回転センターに係る本発明によれば、芯出し位置と同軸にワーク端面に当接させてワークを支持し水系切削液を使用しつつ加工を行うための回転センターであって、前記ワークと同軸で回転する回転軸と、ケーシング内に収容され、前記回転軸を回動自在に支持する軸受部と、を備え、前記ケーシング内の少なくとも軸受部が配された領域を前記保護領域として、前記回転軸の前記ウェット領域との境界位置に前述の(1)〜(4)に記載のシール材が装着されていることとしたため、水系液の浸入を抑制し、軸受等の腐食が可及的に抑制された回転センターを提供することができる。
比較試験に使用した試験装置の概要を示す説明図である。 比較試験にて構築した軸封構造を示す説明図である。 比較試験の試験結果を示すグラフである。 シール材の試験前後における動的シール面の状態を示した顕微鏡像である。 本実施形態に係る回転センターの構成を示す説明図である。
本発明は、水系液飛沫が存在するウェット領域と前記水系液の浸入を抑制すべき保護領域との間に架け渡された回転軸の周囲に配置され、同回転軸の軸回りの液密性を確保する親水性樹脂発泡体にて形成された軸挿通孔を備える短筒状のシール材に関するものであり、耐摩耗性や耐久性に優れ、回転軸の停止時でもシール性を発揮することができ、しかも、低摩擦性に優れたシール材を提供するものである。
ここで水系液は、水を主成分とする液体であれば特に限定されるものではなく、機能性を持たせるために所定の成分が溶解されていても良く、また、エマルションであっても良い。
ウェット領域は、水系液の飛沫が存在する領域であり、液相中は除かれる。一例としては、気相領域であるが水系液が蛇口やシャワーなどから吐出され、液滴が飛散する領域が挙げられる。
これに対し保護領域は、水系液の浸入を抑制すべき領域であり、乾燥していても良く、また、水系液の混入を避けるべき異種液体が存在する領域であっても良い。一例としては、電気的な回路であったり、後述の回転軸を回動自在に支持する軸受など水気を嫌う部材が配されている領域が挙げられ、例えば軸受であれば必ずしも乾いている必要はなく、グリスアップされ油脂で濡れている状態であっても良い。
本実施形態に係るシール材が挿貫される回転軸は、上述のウェット領域と保護領域との間に架け渡された軸であり、シール材はこの回転軸の軸回りの液密性を確保する、すなわち、ウェット領域の水系液が軸表面やシール材を介して保護領域に浸入することを防止する。
シール材は、親水性を有する樹脂を発泡し固化させた樹脂発泡体によりなる。親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニール、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂等を採用することができ、中でもポリビニルアルコールは、優れた低摩擦性を有しており、回転軸の運動を阻害してしまうことを可及的に防止できるため好ましい。
また、シール材を構成する樹脂発泡体の形成に際しては、親水性ポリマーが架橋された樹脂を使用しても良い。このような樹脂を使用することで、強度や耐摩耗性を向上させることができ、安定した液密性を実現することができる。
より具体的には、親水性樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合、樹脂発泡体の形成に際して、ポリビニルアルコールをホルムアルデヒドでホルマール化して得られるポリビニルホルマール(PVF)が好適である。ポリビニルホルマールで形成した樹脂発泡体は、優れた低摩擦抵抗性や耐摩耗性、強度を有している。
また、このときの架橋割合は、1〜87%、更に限定的には20〜80%であるのが好ましい。架橋割合が20%を下回ると、使用可能であるものの形成される多孔質体の強度や耐摩耗性が低下し、1%を下回ると、耐摩耗性の著しい低下を来して実用性に乏しくなるため好ましくない。また、架橋割合が80%を上回った場合、使用可能であるものの形成される多孔質体の柔軟性が損なわれ、87%を上回ると実用性に乏しいほど柔軟性が失われ、多孔質体が摺接する対象の部材(以下、対摺接部材ともいう。)への追従性が低下するため好ましくない。架橋割合を1〜87%、更に好ましくは20〜80%とすることにより、優れた強度と回転軸への追従性を備えた樹脂発泡体を形成することができる。
また、樹脂発泡体の空隙率は1%〜95%、より好ましくは40%〜95%であり、孔の直径は0.1〜1000μm、より好ましくは5〜200μmである。併せて、樹脂発泡体中に形成される孔は、それぞれ独立した孔ではなく、連通孔であるのが望ましい。
本実施形態に係るシール材は、回転軸をタイトに挿通可能な軸方向断面視円形状の軸挿通孔を備えていればその軸方向断面視における外形状は特に限定されるものではなく、円形状や多角形状、不定形状の短筒とすることができる。
そして、本実施形態に係るシール材の特徴としては、少なくとも同シール材の保護領域側側面に目止め処理が施されている点が挙げられる。
ここで目止めとは、シール材の側面、すなわち軸方向端面に露出開口している発泡により生じた気泡の切断凹部を封じて水系液の浸透を防ぐ処理であり、このような封止構造を形成することができるのであれば、その封止に使用する素材は溶出等によって失われず、また、軸に直交する方向へのシール材の柔軟性を著しく損なわない限り特に限定されるものではない。
目止め処理の例としては、例えば固化後においても柔軟性を有するコーキング剤を側面に塗布したりなど、薬剤や熱により側面を溶かす処理が挙げられる。
そして、このようなシール材によれば、飛散した水系液の液滴がシール材に付着すると、液滴は速やかにシール材に吸収され、連通孔を介して拡散する。また拡散した水系液は、シール材が親水性樹脂発泡体にて形成されているため、軸挿通孔の内壁面に至ると回転軸との間に分子レベルの薄膜を形成する。
従って、境界潤滑状態となり回転軸表面にシール材が直接接触することが抑制されるため、極めて低摩擦で耐摩耗性や耐久性に優れた軸封構造を構築することができる。
また、次々に飛来する水系液の液滴は逐次シール材に吸収されると共に、連結孔内で飽和した水系液が軸挿通孔の内壁面から滲出することとなるため、回転軸との間で常に新鮮な水系液によって潤滑が成されることとなる。
また、シール材の少なくとも保護領域側側面に目止め処理が施されているため、シール材を介しての保護領域側への水系液の滲出を堅実に防止することができ、これは回転軸の停止時にもその機能が発揮される。
また、本実施形態に係るシール材では、ウェット領域側側面にも目止め処理が施されていても良い。
このウェット領域側側面における目止め処理は、前述の保護領域側側面に施される目止め処理よりも透水抑制機能が低い目止め処理とすることもできる。
そして、このような構成を備えるシール材によれば、シール材による飛散液滴の吸収を抑制することができ、より堅実なシール性を確保することができる。
また、本実施形態に係るシール材では、軸挿通孔の縁周りを非目止め領域としつつ目止め処理が施されていても良い。すなわち、軸挿通孔の縁周りに目止めしない領域が形成された構造とすることもできる。
この非目止め領域は、軸挿通孔の周縁から半径方向外方へ0.01〜100μmの幅の縁周り領域として形成するのが好ましく、0.01〜5μmの幅とするのがより好ましい。
このような構成とすることにより、堅実なシール性を実現しつつも、回転軸との摩擦をより低減することができ、しかも、シール材への水系液飛沫の軸挿通孔内周面への供給効率を向上させて、シール材と回転軸との摺動面の潤滑をより良好なものとすることができる。なお、ウェット領域側側面に目止め処理を施す場合は、保護領域側側面に施される目止め処理と同様の目止め処理であっても良い。
また、本実施形態に係るシール材では、軸挿通孔の直径は、挿貫される回転軸の軸径以下であることとしても良い。
多孔質樹脂材料にて形成されたスポンジ状のシール材は、液体を含ませることで膨潤し、また、回転軸に対する軸挿通孔内周面からの圧着力は小さい方が一般には摩擦力の低減が図れるため、本来であれば軸挿通孔の直径は回転軸への装着の容易性なども加味すると回転軸の直径よりも僅かに大きい方が有利とも言える。
しかしながら、本実施形態に係るシール材の場合、上述したように保護領域から遠ざけるべき飛来した水系液の液滴を寧ろ積極的に吸収し、それをシール材内で拡散させ、連通孔を軸挿通孔内周面への供給経路として境界潤滑に利用するといった作用を生起可能な構成としているため、圧着力の増大による摩擦力の問題を相当に軽減することが可能である。
そして、軸挿通孔の直径を挿貫される回転軸の軸径以下、例えば軸径未満とすることにより、回転軸に対してタイトな締付けを行い、本来の目的である保護領域への水系液の浸入防止と、軸の円滑な回動、更には摩耗低減による長寿命という相反する効果の実現を図ることができる。なお、軸挿通孔の直径を軸径未満とする場合は、0mmより大きく4.0mm以下、より好ましくは0.5〜2.0mmほど軸径よりも小さくするのが良い。
また、本願は、芯出し位置と同軸にワーク端面に当接させてワークを支持し水系切削液を使用しつつ旋盤加工を行うための回転センターであって、上述してきた本実施形態に係るシール材を軸封構造に使用することで水系の切削液の浸入を抑制し、低摩擦でありながら、軸受等の腐食が可及的に抑制された回転センターについても提供する。
具体的には、ワークと同軸で回転する回転軸と、ケーシング内に収容され、前記回転軸を回動自在に支持する軸受部とを備え、ケーシング内の少なくとも軸受部が配された領域を前述した保護領域とし、前述したウェット領域との境界となる回転軸上の周面に本実施形態に係るシール材が装着されていることとしている。
ここで水系切削液は、旋盤加工時に使用される切削油のなかでも水溶性切削油により調製される水系液である。例えば、JIS分類に照らしてみれば、水で希釈調製することによりエマルションとなって乳白色を呈するA1種に属するものや、ソリュブルと称され半透明乃至透明を呈するA2種に属するもの、ソリューションと称され透明を呈するA3種に属するものが挙げられる。
また、それ以外にも、保護領域内において水分により腐食等の顕著な影響が現れる程度に水分を含有していれば本明細書において水系切削液に含まれ、例えばJIS規格では区別されないシンセティックあるいはオイルフリーと称される潤滑成分として合成潤滑剤を使用した切削油剤による調製液もこれに相当する。
そして、このような構成を備える回転センターによれば、水系の切削液の浸入を抑制し、低摩擦でありながら、軸受等の腐食を可及的に抑制して長寿命を実現することができる。
以下、本実施形態に係るシール材及び同シール材を用いた回転センターについて、図面等を参照しながら更に説明する。なお、以下の説明においてシール材はポリビニルホルマール(PVF)製のシール材を例に説明するが、前述の如くシール材の素材はこれに限定されるものではない。
〔1.シール材の製作〕
板状のPVFスポンジ(井和工業株式会社製)の表裏両面にセメダイン株式会社製のペースト状コーキング剤を塗布して乾燥させた後に、エンドミルを用いて直径25.5mm、内径(軸挿通孔の直径)15.5mm、厚み5mmの短管円筒状のシール材A1を得た。
また同様に、片面にのみコーキング材を塗布して製作したシール材A2と、両面にコーキング剤を塗布したが、軸挿通孔の周回りに幅20μmの非目止め領域を形成したシール材A3についても製作した。なお、いずれのシール材A1〜A3も、気孔径は80μm、気孔率は89%、保水率は1000wt%、弾性率は0.087MPaであった。
〔2.比較試験〕
次に、製作したシール材A1〜A3について、従来のゴム製シール材X1との摩擦トルクの比較試験を行った。図1及び図2に試験装置の概要を示す。
本比較試験に使用した試験装置は、図1に示すように、壁体16に装着される後述の測定対象シール20を境に保護領域とウェット領域とが構築されている。
保護領域では、基台10の上方に回転軸11が配されており、同回転軸11は2つのベアリング12を介して基台10に回動自在に設置されている。
また、基台10にはモータ13が配されており、このモータ13のモータ軸13aは、回転軸11の基端側に連動連結されている。
モータ13は、電圧ロガー14を介してコンピュータ15と電気的に接続されており、モータ13の負荷状態、換言すれば回転軸11と後述の測定対象シール20との間に生じる摩擦の大きさを監視し記録可能としている。
また、回転軸11の先端側に立設した壁体16には軸貫通穴16aが穿設されており、回転軸11は壁体16の一側から他側へ軸貫通穴16aを介してその先端部を突出させている。
また、図2(a)に示すように、壁体16のウェット領域側の軸貫通穴16aの縁周りには、シール材装着凹部16bが形成されており、同シール材装着凹部16bには測定対象シール20を嵌着して軸封構造21を構成している。なお、符号16cは、シール材装着凹部16b内に装着された測定対象シール20の抑え板である。
測定対象シール20としては、図2(b)に示すように本実施形態に係るシール材A1〜A3や、図2(c)に示すように比較対照となるゴム製シール材X1が装着され試験に供され、破線で囲んだ部分に動的シール面が形成される。
また、図1に示すようにウェット領域では、軸封構造21を囲うように箱体22が設けられている。箱体22内には突出する回転軸11の先端近傍へ向けて水系切削液23を噴射する噴射ノズル24を臨ませており、旋盤加工時の軸封構造の状態を再現できるよう構成している。図1の下方に示す写真は、試験時の回転軸11の先端部近傍の状態を示している。
噴射された水系切削液23は、箱体22の底部に溜まり、再び噴射ノズル24へ循環される。具体的には、箱体22の底部に溜まった水系切削液23を回収し貯留するバッファタンク25と、同バッファタンク25から噴射ノズル24へ水系切削液23を供給するポンプ26とを備えている。
また、軸封構造21を介して保護領域側に漏出した水系切削液23は、トレイ部27に貯留されるよう構成している。
そして、このような試験装置を用い、シール材A1〜A3とゴム製シール材X1とについて、摩擦抵抗性やシール性について検討を行った。
具体的には、モータ13のモータ軸13aを5000rpmの一定速度で連続的に回転させた。また、このモータ13で消費される電力は、電圧ロガー14を用いて測定し、軸封構造21で発生する摩擦トルクとして換算した。
またこの試験は、シールが全部で5000時間にわたって連続的に機能することを目的として行われ、回転軸11の回転と水系切削液23の供給を2500時間に1回停止し、720時間(30日間)の停止時間を設定した。なおこれは、例えば工場工作機械の一部に本試験対象の測定対象シール20が組み込まれている状態で、その機械が1ヶ月間停止した状態を想定したものである。また停止期間の後は、最初の2500時間と同じ条件で回転シャフトを2500時間運転した。
また、試験中の水系切削液23の漏れ量、すなわち、保護領域側に漏出した水系切削液23が0.1mL/hとなった時点で、測定対象シール20の漏れ防止機能が失われたものとして試験を終了することとした。
本試験結果を図3に示す。図3は摩擦トルクの経時変化を示したグラフである。まずゴム製シール材X1の試験結果に着目すると、初期トルクの値が最も高く、またその後においてもトルク値は著しく変動することが分かる。なお、ゴム製シール材X1のトルク値のグラフの一部で負の値を示している部分があるが、これは、長時間のテストにより基準点がドリフトしたためである。
また、試験前半の2500時間を経過して720時間(30日)の停止期間の後に試験を再開したところ、試験直後から水系切削液23が漏れ、漏れ量が0.1mL/hを超えたため、試験を終了した。このことからゴム製シール材X1は、摩擦トルクの平均値は5.09N・mmであり、総稼働時間は2500時間であった。
一方、シール材A2は、ゴム製シール材X1に比して長きに亘り安定した低いトルク値を維持していることが分かる。また、停止期間中及び停止期間後に試験後半を再開しても水系切削液23の漏れは確認されず、試験終了となる5000時間に至るまでその性能を維持した。また、摩擦トルクの平均値は3.61N・mmであった。
また、図示は割愛するが、本実施形態に係るシール材A1やシール材A3についても、ほぼ同様の結果が得られた。
図4は、ゴム製シール材X1及びシール材A2の試験前後における動的シール面の状態を示した光学顕微鏡像及び走査電顕像を示している。具体的には、(a1)は試験前のゴム製シール材X1の光学像、(a2)は同走査電顕像、(b1)は試験後のゴム製シール材X1の光学像、(b2)は同走査電顕像、(c1)は試験前のシール材A2の光学像、(c2)は同走査電顕像、(d1)は試験後のシール材A2の光学像、(d2)は同走査電顕像である。
図4からも分かるように、左半部に示したゴム製シール材X1は、その試験前後の変化に着目すると、動的シール面において明らかな摩耗や劣化が観察された。
その一方、シール材A2においては、動的シール面に特別な変化は観察されなかった。また、図示は割愛するが、シール材A1やシール材A3においても同様であった。
これらのことから、本実施形態に係るシール材は、耐摩耗性や耐久性に優れ、回転軸の停止時でもシール性を発揮することができ、しかも、低摩擦性に優れたシール材であることが示された。
〔3.回転センター〕
次に、本実施形態に係る回転センターC1について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る回転センターC1の断面模式図である。
回転センターC1は、例えば金属材料の旋盤加工の際に使用される旋盤機械の構成部材として用いられる装置であり、芯出し位置と同軸にワーク端面に当接させてワークを支持するためのものである。
また、回転センターC1は、旋盤加工に際し使用される切削油のうち、水溶性切削油に水を添加して調製した水系切削液を使用しての加工で用いられ、前述してきたシール材A1〜A3が採用されていることにより、水分による可動部品の腐食や劣化が抑制されているのは勿論のこと、水系切削液を積極的に吸収しつつ動的シール面に供給して低摩擦性を実現している点で特徴を有している。
具体的には、図5に示すように回転センターC1は、回転軸30と、ケーシング31と、を備えている。
回転軸30は、略円柱状の軸体部30aと、図5中において破線で示すワーク32の端面32aに当接させるヘッド部30bとを備えている。ヘッド部30bは、予め芯出しの作業によりワーク32の端面32aに穿設されたセンター穴32bにその先端を係合させることで、ワーク32と回転軸30とが同一軸線P1上で回動する。
ケーシング31は、回転センターC1の外形を形成すると共に、回転軸30のヘッド部30bを露出させた状態で軸体部30aを収容する。
また、ケーシング31内には、同ケーシング31の内壁と回転軸30の軸体部30aとの間隙部分に軸受部としてのベアリング33が配設されており、回転軸30はケーシング31に対して回動自在に保持されている。なお、符号31aは、ケーシング31の後端開口を閉塞する閉塞体である。
このような回転センターC1において、ベアリング33が配された保護領域と、ワーク32の加工時に水系切削液の飛滴34、すなわち水系液飛沫が存在するウェット領域に露出させたヘッド部30bとの間に本実施形態に係るシール材35を配設している。
具体的には、ウェット領域に近い軸体部30a上であって、保護領域とウェット領域との境界位置にシール材35が装着されている。
そして、このような回転センターC1によれば、水系切削液の浸入を抑制し、軸受等の腐食が可及的に抑制された回転センターを提供することができる。
また、飛散した水系切削液の飛滴34がシール材35に付着すると、その液滴は速やかにシール材35に吸収され、前述の如く連通孔を介して拡散する。また拡散した水系液は、シール材が親水性樹脂発泡体にて形成されているため、軸挿通孔の内壁面に至ると回転軸との間に分子レベルの薄膜を形成し、境界潤滑状態となり回転軸表面にシール材が直接接触することが抑制されて、極めて低摩擦で耐摩耗性や耐久性に優れた回転センターを構築することができる。
また、次々に飛来する水系液の液滴は逐次シール材に吸収されると共に、連結孔内で飽和した水系液が軸連通孔の内壁面から滲出することとなるため、回転軸との間で常に新鮮な水系液によって潤滑が成されることとなる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
11 回転軸
12 ベアリング
20 測定対象シール
21 軸封構造
23 水系切削液
24 噴射ノズル
30 回転軸
30a 軸体部
30b ヘッド部
31 ケーシング
32 ワーク
32a 端面
33 ベアリング
34 飛滴
35 シール材
C1 回転センター

Claims (5)

  1. 水系液飛沫が存在するウェット領域と前記水系液の浸入を抑制すべき保護領域との間に架け渡された回転軸の周囲に配置され、同回転軸の軸回りの液密性を確保する親水性樹脂発泡体にて形成された軸挿通孔を備える短筒状のシール材であって、
    前記軸挿通孔の内壁面を除き、少なくとも同シール材の保護領域側側面に目止め処理が施されていることを特徴とするシール材。
  2. 前記シール材のウェット領域側側面にも目止め処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のシール材。
  3. 前記軸挿通孔の周縁から半径方向外方へ0.01〜100μmの縁周りを非目止め領域としつつ前記目止め処理が施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール材。
  4. 前記軸挿通孔の直径は、前記回転軸の軸径以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のシール材。
  5. 芯出し位置と同軸にワーク端面に当接させてワークを支持し水系切削液を使用しつつ加工を行うための回転センターであって、
    前記ワークと同軸で回転する回転軸と、
    ケーシング内に収容され、前記回転軸を回動自在に支持する軸受部と、を備え、
    前記ケーシング内の少なくとも軸受部が配された領域を前記保護領域として、前記回転軸の前記ウェット領域との境界位置に請求項1〜4いずれか1項に記載のシール材が装着されていることを特徴とする回転センター。
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