JP6958089B2 - 仮固定用樹脂フィルム、仮固定用樹脂フィルムシート及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、仮固定用樹脂フィルム、仮固定用樹脂フィルムシート及びそれらの製造方法に関する。
スマートフォン、タブレットPC等の電子機器の多機能化に伴い、半導体素子を多段に積層し、高容量化したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。半導体素子の実装には、実装工程において有利なフィルム状接着剤がダイボンディング用の接着剤として広く用いられている。しかし、このように多機能化の傾向があるにも関わらず、現行のワイヤボンドを使用した半導体素子の接続方式では、データの処理速度に限界があることから、電子機器の動作が遅くなる傾向にある。また、消費電力を低く抑え、充電せずにより長時間使用したいとのニーズが高まっていることから、省電力化も求められつつある。このような観点から、近年、更なる高速化及び省電力化を目的として、ワイヤボンドではなく貫通電極により半導体素子同士を接続する新しい構造の電子機器装置も開発されてきている。
このように新しい構造の電子機器装置が開発されてきているものの、依然として高容量化も求められており、パッケージ構造に関わらず、半導体素子をより多段に積層できる技術の開発が進められている。しかし、限られたスペースにより多くの半導体素子を積層するためには、半導体素子の安定した薄型化が必要不可欠である。
例えば、近年、半導体素子を薄型化する研削工程では、BGテープと呼ばれる支持テープを半導体素子に貼り付け、サポートした状態で研削することが主流となっている。しかし、薄型化した半導体素子は表面に施された回路の影響により反りやすい。そのため、変形しやすいテープ素材であるBGテープでは、薄型化した半導体素子を充分にサポートできなくなりつつある。
このような背景から、BGテープよりも硬い素材であるシリコンウェハ又はガラスを支持体とする半導体素子の薄型化プロセスが提案されており、半導体素子とシリコンウェハ又はガラスの支持体とを粘着させる材料が提案されてきている。このような粘着剤では、研削後の半導体素子を損傷させることなく、支持体から剥離できることが重要な特性として要求される。
近年、上記粘着剤を、2層以上の積層体とし、仮固定用樹脂フィルムとして用いて電子部品と支持体とを仮固定する方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、支持体状上に軟化点が250度以上の接着剤層、保護層、デバイスウエハをこの順に有する積層体が開示されている。また、特許文献2には、熱可塑性オルガノポリシロキサン重合体層からなる第一仮接着層と、熱硬化性シロキサン変性重合体層からなる第二仮接着層との2層構造を有する、複合仮接着材層を備えたウエハ加工体が開示されている。
特開2015−50268号公報 特開2016−72612号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、異なる特性を有する2種以上の樹脂組成物を組み合わせて多層構造を形成するため、基板に対する真空化での貼り付け工程、CVD等の加熱加工工程及び基板からの剥離工程において、仮固定用樹脂フィルムの層間剥離が発生するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、層間剥離が低減された2種類以上の樹脂層を備える仮固定用樹脂フィルム、及び、当該仮固定用樹脂フィルムを簡易な方法で得ることができる仮固定用樹脂フィルムの製造方法、当該方法により得られる仮固定用樹脂フィルム、並びに、当該仮固定用樹脂フィルムを用いた仮固定用樹脂フィルムシート及びその製造方法を提供することを主たる課題とする。
本発明の一側面は、2種類以上の樹脂層を備える仮固定用樹脂フィルムの製造方法に関する。この方法は、基材に2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布する工程を備える。この方法によれば、層間剥離が低減された仮固定用樹脂フィルムを簡易な方法で得ることができる。換言すれば、この方法によれば、層間密着性に優れる仮固定用樹脂フィルムを得ることができる。
また、上記製造方法により得られる仮固定用樹脂フィルムは、2層以上の多層構造を備えるため、電子部品の加工を良好に行うことができるとともに、加工後の電子部品及び支持体から容易に剥離が可能となる。すなわち、2層以上の液状樹脂組成物の種類を変更することで、電子部品面に対する剥離強度と、支持体面に対する剥離強度と、をそれぞれ調整することができ、電子部品の破損及び粘着剤の破断を防止することができる。また、上記製造方法により得られる仮固定用樹脂フィルムは、フィルム状であることにより、膜厚を容易に制御することができ、個々の電子部品間での厚さのバラツキを軽減することができると共に、ラミネート等の簡便な方法により電子部品又は支持体上に貼り合わせることができ、作業性にも優れている。
上記製造方法では、ダイコータを用いて2種以上の液状樹脂組成物を同時塗布してよい。この場合、塗布時の厚さのばらつきを低減することができる。
上記製造方法は、2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布して多層膜を形成した後、多層膜を乾燥する工程を更に備えてよい。
上記製造方法において、仮固定用樹脂フィルムは、2種以上の樹脂層のうちの隣り合う第一の層及び第二の層との間に位置し、第一の層から第二の層に至る領域を備えていてよい。この場合、第一の層と第二の層との間の接着強度は150N/m以上であってよい。
上記製造方法において、第一の層の厚さは10〜350μmであってよく、第二の層の厚さは10〜350μmであってよい。仮固定用樹脂フィルムの厚さを上記範囲内とすることで、半導体素子等の電子部品の表面の凹凸を充分に埋め込むことが容易にでき、電子部品と支持体とをより確実に固定することができる仮固定用樹脂フィルムが得られる。
上記製造方法において、第一の層の厚さ及び第二の層の厚さは下記式(1)の関係を満たしてよい。厚さの比率を下記範囲内とすることで、仮固定用樹脂フィルムにおける、電子部品面の剥離強度と支持体面の剥離強度とを容易に調整することができる。
(1/10)a≦b≦10a・・・(1)
[式(1)中、aは第一の層の厚さを表し、bは第二の層の厚さを表す。]
上記製造方法では、2種以上の液状樹脂組成物として、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第一の熱可塑性樹脂を含む第一の液状樹脂組成物と、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第二の熱可塑性樹脂及び硬化性成分を含む第二の液状樹脂組成物と、を用意する工程を更に備えてよい。この場合、第二の液状樹脂組成物における硬化性成分の含有量は、第二の熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜500質量部であってよい。
上記製造方法では、第一の液状樹脂組成物からなる層と、第二の液状樹脂組成物からなる層とが、第一の液状樹脂組成物及び第二の液状樹脂組成物を含む領域を介して隣り合うように、2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布してよい。この場合、層間密着性により優れ、電子部品及び支持体からの剥離性に優れる仮固定用樹脂フィルムを得ることができる。
上記製造方法において、第一の熱可塑性樹脂及び/又は第二の熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有し、且つ、重量平均分子量が10万〜120万の熱可塑性樹脂であってよい。この場合、第一の層及び/又は第二の層がより良好な剥離性を示す。
上記製造方法において、硬化性成分は熱硬化性樹脂を含んでいてよい。
上記製造方法において、第一の液状樹脂組成物は、硬化性成分を更に含んでいてよい。
上記製造方法において、第一の液状樹脂組成物及び/又は第二の液状樹脂組成物はシリコーン化合物を更に含んでいてよい。
上記製造方法において、第一の液状樹脂組成物及び/又は第二の液状樹脂組成物は硬化促進剤を更に含んでいてよい。
本発明の他の側面は、上述した方法により得られる仮固定用樹脂フィルム上にカバーフィルムをラミネートする工程を備える、仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法に関する。
本発明の他の側面は、第一の液状樹脂組成物又はその乾燥物からなる第一の層と、第二の液状樹脂組成物又はその乾燥物からなる第二の層と、第一の層と第二の層との間に位置し、第一の層から第二の層に至る領域と、を備える、仮固定用樹脂フィルムに関する。この仮固定用樹脂フィルムの上記領域は、第一の液状樹脂組成物及び第二の液状樹脂組成物、又はこれらの乾燥物を含む。この仮固定用樹脂フィルムでは、層間剥離が低減されている。換言すれば、この仮固定用樹脂フィルムは、層間密着性に優れる。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の液状樹脂組成物は、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第一の熱可塑性樹脂を含み、第二の液状樹脂組成物は、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第二の熱可塑性樹脂及び硬化性成分を含む。この場合、第二の液状樹脂組成物における硬化性成分の含有量は、第二の熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜500質量部である。このような構成を備える仮固定用樹脂フィルムは、層間密着性により優れ、電子部品及び支持体からの剥離性に優れる。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の熱可塑性樹脂及び/又は第二の熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有し、且つ、重量平均分子量が10万〜120万の熱可塑性樹脂であってよい。この場合、第一の層及び/又は第二の層がより良好な剥離性を示す。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、硬化性成分は熱硬化性樹脂を含んでいてよい。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の液状樹脂組成物は、硬化性成分を更に含んでいてよい。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の液状樹脂組成物及び/又は第二の液状樹脂組成物はシリコーン化合物を更に含んでいてよい。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の液状樹脂組成物及び/又は第二の液状樹脂組成物は硬化促進剤を更に含んでいてよい。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の層と第二の層との間の接着強度は150N/m以上であってよい。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の層の厚さは10〜350μmであってよく、第二の層の厚さは10〜350μmであってよい。仮固定用樹脂フィルムの厚さを上記範囲内とすることで、半導体素子等の電子部品の表面の凹凸を充分に埋め込むことが容易にでき、電子部品と支持体とをより確実に固定することができる。
上記仮固定用樹脂フィルムにおいて、第一の層の厚さ及び第二の層の厚さは下記式(1)の関係を満たしてよい。厚さの比率を下記範囲内とすることで、仮固定用樹脂フィルムにおける、電子部品面の剥離強度と支持体面の剥離強度とのバランスに優れる。
(1/10)a≦b≦10a・・・(1)
[式(1)中、aは第一の層の厚さを表し、bは第二の層の厚さを表す。]
本発明の他の側面は、上述した仮固定用樹脂フィルムと、該仮固定用樹脂フィルム上に設けられたカバーフィルムと、を備える、仮固定用樹脂フィルムシートに関する。
本発明によれば、層間剥離が低減された2種類以上の樹脂層を備える仮固定用樹脂フィルム、及び、当該仮固定用樹脂フィルムを簡易な方法で得ることができる仮固定用樹脂フィルムの製造方法、当該方法により得られる仮固定用樹脂フィルム、並びに、当該仮固定用樹脂フィルムを用いた仮固定用樹脂フィルムシート及びその製造方法を提供することができる。
図1は、一実施形態の仮固定用樹脂フィルムの製造方法を説明するための模式断面図である。 図2は、一実施形態のカバーフィルム付き仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法を説明するための模式断面図である。 図3は、電子部品の加工方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 図4は加工された電子部品を支持体及び仮固定用樹脂フィルムから分離する分離工程の一実施形態を説明するための模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、一実施形態の仮固定用樹脂フィルム(仮固定用フィルム状樹脂組成物)の製造方法を説明するための模式断面図である。図1(A)〜図1(C)に示すように、本実施形態の仮固定用樹脂フィルムの製造方法は、基材1に第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bを同時塗布して、多層膜5を形成する同時塗布工程(S1)と(図1(A)及び図1(B)参照。)、多層膜5を乾燥する乾燥工程(S2)と(図1(C)参照。)、を備える。
以下、上記実施形態の方法における、同時塗布工程(S1)及び乾燥工程(S2)の詳細について説明する。
同時塗布工程では、ダイコータ50を用いて、第一の液状樹脂組成物Aからなる層2と、第二の液状樹脂組成物Bからなる層3とが、第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bを含む液状樹脂組成物からなる領域(混合領域)4を介して隣り合うように、基材1に第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bを同時塗布する(図1(A)参照。)。具体的には、ダイコータ50から第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bを基材1上に吐出すると共に、ロール60を回転させることによって基材1をロール60の回転方向(図1(A)中の矢印で示す方向)に搬送する。これにより、第一の液状樹脂組成物Aからなる層2と、第二の液状樹脂組成物Bからなる層3とが積層されてなる多層膜5を形成する(図1(B)参照。)。図1(B)に示すように、この多層膜5において、第一の液状樹脂組成物Aからなる層2と、第二の液状樹脂組成物Bからなる層3との間には、第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bを含み、第一の液状樹脂組成物Aからなる層2から第二の液状樹脂組成物Bからなる層3に至る領域8が形成されている。
ここで、「同時塗布」とは、一般に同時塗布法と呼ばれる手法によって塗布することを意味し、厳密に同時である必要はない。第一の液状樹脂組成物と、第二の液状樹脂組成物とを連続して塗布する場合、第一の液状樹脂組成物を塗布した後、乾燥を行うことなく、1分以内に第二の液状樹脂組成物を塗布することが好ましい。
図1(A)では、ダイコータを用いているが、ダイコータを用いた方法以外の公知の方法により同時塗布を行ってもよい。同時塗布は、塗布時の厚さのばらつきを低減することができる観点から、ダイコータを用いて行うことが好ましい。
同時塗布工程では、乾燥工程(S2)後に所望の厚さの樹脂層(第一の層6及び第二の層7)が得られるように、第一の液状樹脂組成物及び第二の液状樹脂組成物の塗布量及び塗布速度を調整してよい。
基材1としては、特に限定はなく、仮固定用樹脂フィルムを支持できるものであればよい。使用時における基材の剥離性に優れる観点から、基材1における液状樹脂組成物を塗布する面(塗布面)は離型性を有することが好ましい。このような観点から、塗布面に離型処理がなされている基材が好ましく用いられる。基材1の構成成分は、特に限定はなく、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートなどであってよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする基材が好ましく用いられる。基材1の厚さは、特に限定はない。基材の厚さは、20μm以上であってよく、30μm以上であってよい。また、基材の厚さは、300μm以下であってよく、200μm以上であってよい。
第一の液状樹脂組成物Aは、第一の樹脂成分及び第一の溶剤成分を含み、第二の液状樹脂組成物Bは、第二の樹脂成分及び第二の溶剤成分を含む。第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bの詳細は後述する。なお、「樹脂成分」とは、液状樹脂組成物のうち、溶剤成分以外の成分を指す。
乾燥工程(S2)は、同時塗布工程(S1)で得られた多層膜5を乾燥(例えば加熱)する工程である。具体的には、多層膜5に含まれる溶剤成分(第一の溶剤成分及び第二の溶剤成分)を除去し、仮固定用樹脂フィルム10を形成する工程である(図1(C)参照。)。本工程により、機能性が付与された仮固定用樹脂フィルム10が基材1上に形成される。本工程により得られる仮固定用樹脂フィルム10は、図1(C)に示すように、第一の液状樹脂組成物Aの乾燥物(第一の樹脂成分)からなる層(第一の層)6と、第二の液状樹脂組成物Bの乾燥物(第二の樹脂成分)からなる層(第二の層)7と、第一の層6及び第二の層7の間に位置し、第一の層6から第二の層7に至る領域8と、を備える。この領域8は、第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bの乾燥物(第一の樹脂成分及び第二の樹脂成分)を含んでいる。領域8は、第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bの乾燥物(第一の樹脂成分及び第二の樹脂成分)からなるものであってもよい。
ここで、仮固定用樹脂フィルム10における溶剤成分(第一の溶剤成分及び第二の溶剤成分)の含有量は、仮固定用樹脂フィルムの全質量を基準として80質量%以下であることが好ましく、0質量%であることがより好ましい。
乾燥方法について特に限定はなく、例えば、ホットプレート、オーブン、加熱炉、赤外線ヒータ、熱風送風乾燥機等を使用することができる。乾燥条件についても特に限定はなく、多層膜5から溶剤成分(第一の溶剤成分及び第二の溶剤成分)を充分に除去できる条件であれば特に制限はない。例えば、乾燥温度は、60℃〜200℃であってよく、乾燥時間は、0.1〜90分であってよい。
上記同時塗布工程(S1)の終了後、本工程を行うまでの時間は1分以内であることが好ましく、同時塗布工程(S1)の終了後、直ちに本工程を行うことが特に好ましい。
以上の方法により、第一の層6と、第二の層7と、第一の層6と第二の層7との間に位置し、第一の層6から第二の層7に至る領域(混合領域)8と、を備える仮固定用樹脂フィルム10が得られる。
仮固定用樹脂フィルム10における第一の層6の厚さは、半導体素子等の電子部品の表面の凹凸を充分に埋め込むという観点から、半導体素子等の電子部品の表面の凹凸と同等以下の厚さが好ましく、10μm以上であることが好ましく、350μm以下であることが好ましい。第一の層6の厚さが10μm以上であれば、塗布時の厚さのバラツキが少なくなり、また、厚さが充分であるため仮固定用樹脂フィルム10又は仮固定用樹脂フィルム10の硬化物の強度が良好になり、半導体素子等の電子部品の表面の凹凸をより充分に埋め込むことができる。第一の層6の厚さが350μm以下であれば、第二の層7と貼り合わせる際につぶれにくくなるため、仮固定用樹脂フィルム10の厚さのバラツキが生じにくくなり、また、充分な乾燥により仮固定用樹脂フィルム10中の残留溶剤量を低減することが容易となり、仮固定用樹脂フィルム10を加熱したときの発泡を更に少なくできる。
第二の層7の厚さは、特に限定されず、電子部品と搬送用の支持体とを充分に固定するという観点から、10μm以上であることが好ましく、350μm以下であることが好ましい。第二の層7の厚さが10μm以上であれば、塗布時の厚さのバラツキが少なくなり、また、厚さが充分であるため、仮固定用樹脂フィルム10又は仮固定用樹脂フィルム10の硬化物の強度が良好になり、電子部品と搬送用の支持体とをより充分に固定することができる。第二の層7の厚さが350μm以下であれば、第一の層6と貼り合わせる際につぶれにくいため、仮固定用樹脂フィルム10の厚さのバラツキが生じにくく、また、充分な乾燥により仮固定用樹脂フィルム10中の残留溶剤量を低減することが容易となり、仮固定用樹脂フィルム10を加熱したときの発泡を更に少なくできる。
第一の層6と第二の層7との厚さの比率は、式(1)の関係を満たすことが好ましく、式(2)の関係を満たすことがより好ましい。
(1/10)a≦b≦10a・・・(1)
(1/5)a≦b≦6a・・・(2)
式中、aは第一の層6の厚さを示し、bは第二の層7の厚さを示す。
第一の層6及び第二の層7の厚さの比率が上記範囲内であれば、仮固定用樹脂フィルム10に半導体素子等の電子部品の表面の凹凸を充分に埋め込むことができ、電子部品と搬送用の支持体とを充分に固定することができる傾向にある。
仮固定用樹脂フィルム10の厚さ(例えば、第一の層6の厚さと、第二の層7の厚さと、領域8の厚さとの合計)は、例えば、10μm以上であってよく、200μm以下であってよい。
上述した方法によれば、層間剥離が低減された仮固定用樹脂フィルムを簡易な方法で得ることができる。上述した方法により得られる仮固定用樹脂フィルムにおいて、隣り合う第一の層と第二の層との間の接着強度は、例えば、150N/m以上であり、300N/m以上、又は、500N/m以上であってよい。本実施形態により層間剥離が低減された仮固定用樹脂フィルムが得られる理由は、明らかではないが、2種以上の液状樹脂組成物を同時塗布することによって、隣り合う樹脂層の間に、2種類の液状樹脂組成物が混在する領域が形成されることで、樹脂層間の密着性が向上するためであると推察される。
また、上述した方法によれば、仮固定用樹脂フィルムの耐熱性に優れる傾向がある。このような効果が得られる理由は明らかではないが、ラミネート等の従来の方法で得られる仮固定用樹脂フィルムでは、加熱時のアウトガスの発生によって層間剥離が生じやすい一方で、上述した方法により得られる仮固定用樹脂フィルムでは、樹脂層間の密着性が向上しており、アウトガスが発生した場合であっても、層間剥離が生じ難いためであると推察される。
次に、一実施形態のカバーフィルム付き仮固定用樹脂フィルムシート(以下、単に「仮固定用樹脂フィルムシート」ともいう。)の製造方法について説明する。なお、本明細書では、仮固定用樹脂フィルムの一方の主面上、及び/又は、他方の主面上に基材及び/又はカバーフィルムを備えるものを仮固定用樹脂フィルムシートと定義する。したがって、上述した仮固定用樹脂フィルム10の製造方法は、基材1上に仮固定用樹脂フィルム10を備える仮固定用樹脂フィルムシート11の製造方法ということもできる。
図2は、一実施形態のカバーフィルム付き仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法を説明するための模式断面図である。図2(A)及び図2(B)に示すように、カバーフィルム付き仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法は、上記実施形態の方法で得られた仮固定用樹脂フィルム10上にカバーフィルム9をラミネートするカバーフィルムラミネート工程(S3)を備える。これにより、カバーフィルム付き仮固定用樹脂フィルムシート12が得られる。
カバーフィルムラミネート工程(S3)では、仮固定用樹脂フィルム10の基材1とは反対側の表面にカバーフィルムをラミネートすることにより、仮固定用樹脂フィルム10を保護する。カバーフィルム9をラミネートする温度は20℃―40℃の範囲が好ましく、35℃であることが特に好ましい。
カバーフィルム9としては、特に限定はなく、仮固定用樹脂フィルム10の表面を保護できるものであればよい。カバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。カバーフィルムは、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。また、仮固定用樹脂フィルムとの剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムをカバーフィルムとして用いることが好ましい。
カバーフィルム9の厚さは、目的とする柔軟性により適宜設定することができ、例えば、10〜350μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であればフィルム強度がより良好になり、350μm以下であれば更なる柔軟性が得られる。このような観点から、カバーフィルム9の厚さは、15〜200μmであることがより好ましく、20〜150μmであることが更に好ましい。
上記実施形態の方法により得られる仮固定用樹脂フィルム10、並びに、仮固定用樹脂フィルムシート11及び12は、電子部品を加工する際に、電子部品を仮固定するために用いられる。例えば、(a)電子部品と支持体とを仮固定用樹脂フィルムを介して仮固定する工程と、(b)支持体に仮固定された電子部品を加工する加工工程と、(c)加工された電子部品を支持体及び仮固定材(仮固定用樹脂フィルムの硬化物)から分離する分離工程と、(d)電子部品に残渣がある場合に洗浄する洗浄工程とを備える、電子部品の加工方法において好適に用いることができる。
以下、図面を用いて、本実施形態の仮固定用樹脂フィルム10を用いて電子部品を加工する方法の一実施形態について説明する。
図3は、電子部品の加工方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
<(a)仮固定工程>
図3(A)は、支持体13及び電子部品14の間に、仮固定用樹脂フィルム10を介在させ、支持体13に電子部品14を仮固定する工程を示す。この際、電子部品14側に第一の層6が、支持体13側に第二の層7が接触するように、仮固定用樹脂フィルム10を配置する。
例えば、まず、ロールラミネーター、真空ラミネーターなどを用いて、支持体13上に仮固定用樹脂フィルム10の第二の層7側をラミネートすることにより仮固定用樹脂フィルム10を設ける。
次に、ウェハ接合装置又は真空ラミネーター上に、仮固定用樹脂フィルム10をラミネートした支持体13をセットし、第一の層6側に電子部品14をプレスで押圧して貼り付ける。
ウェハ接合装置を用いる場合は、例えばEVG社製真空プレス機EVG520IS(商品名)を用いて、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度60℃〜200℃、保持時間100秒〜300秒で、電子部品14と支持体13とをフィルム状の仮固定材20を介して仮固定する。
真空ラミネーターを用いる場合は、例えば株式会社エヌ・ピー・シー製真空ラミネーターLM−50×50−S(商品名)、ニチゴーモートン株式会社製真空ラミネーターV130(商品名)を用いることができる。押圧条件は、気圧1hPa以下、圧着温度40℃〜180℃、好ましくは60℃〜150℃、ラミネート圧力0.01〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.5MPa、保持時間1秒〜600秒、好ましくは30秒〜300秒で、電子部品14と支持体13とをフィルム状の仮固定材20を介して仮固定する。
次に、電子部品14と支持体13とを仮固定用樹脂フィルム10を介して仮固定した後、仮固定用樹脂フィルム10の硬化を行う。硬化方法は仮固定用樹脂フィルム10が硬化されれば特に制限されなく、熱又は放射線照射による方法がある。硬化方法としては、熱による硬化が好ましい。熱による硬化の硬化条件は、好ましくは100〜200℃で10〜300分、より好ましくは100〜200℃で20〜210分である。温度が100℃以上であればフィルムが充分に硬化して加工工程で問題が起きにくく、200℃以下であればフィルムの硬化中にアウトガスが発生しにくく、フィルムの剥離を更に抑制できる。また、硬化時間が10分以上であれば加工工程で問題が起きにくく、300分以下であれば作業効率が悪化しにくい。仮固定用樹脂フィルム10を硬化させることで、硬化した第一の層16と硬化した第二の層17とを備える仮固定材20が得られる。
電子部品としては、半導体素子等が挙げられる。電子部品の材質は特に制限されず、シリコンウェハ、ガラスウェハ、石英ウェハ、半導体ウェハ等の基板が使用可能である。電子部品の厚さは、特に制限はないが、600〜800μmとすることができる。
支持体の材質は特に制限されず、シリコンウェハ、ガラスウェハ、石英ウェハ等の基板が使用可能である。支持体には支持体には剥離処理が施されていてもよい。剥離処理に使用される剥離剤は特に限定されず、例えば、フッ素元素を有する表面改質剤、ポリオレフィン系ワックス及びシリコーンオイル、反応性基を含有するシリコーンオイル、シリコーン変性アルキド樹脂が剥離性に優れるため好ましい。
<(b)加工工程>
加工工程には、ウェハレベルで用いられる研削、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が含まれる。研削方式には特に制限はなく、公知の研削方式が利用できる。研削は電子部品と砥石(ダイヤモンド等)とに水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。
例えば、図3(B)に示すように、グラインダー70によって電子部品14の裏面、即ち電子部品14の仮固定材20と接する側とは反対側の面を研削し、例えば700μm程度の厚さを100μm以下にまで薄化する。
研削加工する装置としては、例えばDISCO株式会社製DGP−8761(商品名)等が挙げられ、この場合の切削条件は所望の電子部品の厚さ及び研削状態に応じて任意に選ぶことができる。
その他の工程は具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクするためのレジストの塗布、露光・現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成等、公知のプロセスが挙げられる。
図3(C)は、薄化した電子部品14の裏面側にドライイオンエッチング又はボッシュプロセス等の加工を行い、貫通孔を形成した後、銅めっき等の処理を行い、貫通電極15を形成した例を示している。
加工後の電子部品14は、後述する分離工程後又は分離工程の前に、ダイシングラインに沿ったダイシングによって半導体素子に個片化される。
<(c)分離工程>
図4は、加工された電子部品を支持体及びフィルム状の仮固定材から分離する分離工程の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態に係る分離工程は、支持体から電子部品を剥離する第一の剥離工程と、支持体からフィルム状の仮固定材を剥離する第二の剥離工程と、を含む。第一の剥離工程は、加工工程で加工を施した電子部品を支持体から剥離する工程、即ち、薄型化した電子部品に様々な加工を施した後、ダイシングする前に支持体から剥離する工程である。剥離方法としては、電子部品又は支持体の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、電子部品の研削面に保護フィルムを貼り、電子部品と保護フィルムとをピール方式で支持体から剥離する方法等が挙げられ、特に制限なく採用することができる。
本実施形態には、これらの剥離方法がすべて適用可能である。剥離方法としては、中でも、図4(A)に示されるように、電子部品14又は支持体13の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法等がより適しており、これにより電子部品14を得ることができる(図4(C)を参照)。本実施形態においては、本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルムを用いてフィルム状の仮固定材が形成されていることにより、糊残りなどの残渣が充分低減された加工済み電子部品を容易に得ることができる。これらの剥離方法は、通常、室温で実施されるが、40〜100℃程度の電子部品にダメージのない温度下で実施してもよい。機械的に分解する際は、例えばデボンダー(SUSS株式会社製、DB12T)、De−Bonding装置(EVG社製、EVG805EZD)等を用いる。
第二の剥離工程では、例えば、図4(B)に示されるように、電子部品14を水平に固定しておき、フィルム状の仮固定材20の端を水平方向から一定の角度をつけて持ち上げることで、仮固定材が剥離された電子部品14を得ることができ、支持体を回収することができる。
<(d)洗浄工程>
電子部品の回路形成面は仮固定材の一部が残存しやすい。剥離した電子部品の回路形成面に仮固定材が一部残存した場合、これを除去するための洗浄工程を設けることができる。仮固定材の除去は、例えば、電子部品を洗浄することにより行うことができる。
洗浄液は、一部残存した仮固定用樹脂フィルムを除去できるような洗浄液であれば、特に制限はない。このような洗浄液としては、後述する第一の溶剤成分として挙げる有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、残存した仮固定用樹脂フィルムが除去しにくい場合は、有機溶剤に塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類は、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で0.01〜10質量%が好ましい。また、洗浄液には、残存物の除去性を向上させるため既存の界面活性剤を添加してもよい。
洗浄方法に特に制限はなく、例えば、上記洗浄液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が挙げられる。温度は10〜80℃、好ましくは15〜65℃が好適であり、最終的に水洗又はアルコール洗浄を行い、乾燥処理させて、薄型の電子部品14が得られる。
なお、上述したように、本実施形態に係る仮固定用樹脂フィルムによれば、糊残り等の残渣を充分に低減することができるため、洗浄工程を省略することもできる。
次に、本実施形態の仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法に用いられる、第一の液状樹脂組成物A及び第二の液状樹脂組成物Bについて詳述する。
(第一の液状樹脂組成物A)
第一の液状樹脂組成物Aは、樹脂成分として、例えば、第一の熱可塑性樹脂(以下、(a1)熱可塑性樹脂という場合もある。)を含む。第一の樹脂成分は、(a1)熱可塑性樹脂に加え、必要に応じて、シリコーン化合物(以下、(a2)シリコーン化合物という場合もある。)、硬化促進剤(以下、(a3)硬化促進剤という場合もある。)及びその他の成分を含んでいてもよい。なお、本明細書において、第一の液状樹脂組成物に含まれるシリコーン骨格を有する化合物は全て(a2)シリコーン化合物に分類されるものとする。すなわち、熱可塑性樹脂であり、且つ、シリコーン骨格を有する樹脂は、(a1)熱可塑性樹脂には含まれない。
(a1)熱可塑性樹脂としては、少なくとも仮固定用樹脂フィルムが電子部品又は支持体にラミネートされる前において熱可塑性を有している樹脂であれば特に制限なく用いることができる。熱可塑性樹脂は、加熱等により架橋構造を形成する樹脂であってもよい。
(a1)熱可塑性樹脂としては、架橋性官能基を有するポリマーを用いることができる。架橋性官能基を有するポリマーとしては、熱可塑性ポリイミド樹脂、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体、ウレタン樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかの意味で用いられる。熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよく、或いは、市販品を用いてもよい。
架橋性官能基を有するポリマーは、架橋性官能基をポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。架橋性官能基としては、エポキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。架橋性官能基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a1)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と表記する場合もある。)は、−50℃〜50℃であることが好ましく、−30℃〜20℃であることがより好ましい。Tgがこのような範囲であれば、第一の層のタック力が上がりすぎて取り扱い性が悪化することを抑制しつつ、より充分な流動性を得ることができ、更に硬化後のシートの弾性率をより低くすることができるため、剥離強度が高くなりすぎることを更に抑制できる。
Tgは、示差走査熱量測定(DSC、例えば株式会社リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて熱可塑性樹脂を測定したときの中間点ガラス転移温度値である。具体的には、上記Tgは、昇温速度10℃/分、測定温度:−80〜80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
(a1)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に限定されず、好ましくは10万〜120万であり、より好ましくは20万〜100万である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量がこのような範囲であれば、成膜性と流動性とを確保することがより容易となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
(a2)シリコーン化合物としては、シリコーン骨格を有する化合物(例えば、シリコーンで変性された化合物)であれば特に制限はない。シリコーン化合物としては、シリコーン変性アルキド樹脂が好ましい。第一の樹脂成分がシリコーン変性アルキド樹脂を含有することで、仮固定用樹脂フィルムを電子部品から剥離する際、溶剤を用いることなく一層容易に剥離することが可能となる。
シリコーン変性アルキド樹脂を得る方法としては、例えば、(i)アルキド樹脂を得る通常の合成反応、即ち多価アコールと、脂肪酸、多塩基酸等とを反応させる際に、オルガノポリシロキサンをアルコール成分として同時に反応させる方法、(ii)あらかじめ合成された一般のアルキド樹脂に、オルガノポリシロキサンを反応させる方法が挙げられる。
アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキド樹脂の原料として用いられる多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキド樹脂は、変性剤又は架橋剤を更に含有していてもよい。
変性剤は、オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、ヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油及びこれらの脂肪酸等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。これらの中でも、アミノ樹脂は、アミノ樹脂により架橋されたアミノアルキド樹脂が得られるため好ましい。架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン変性アルキド樹脂は、硬化触媒として酸性触媒と併用することができる。酸性触媒としては特に制限はなく、アルキド樹脂の架橋反応触媒として公知の酸性触媒の中から適宜選択して用いることができる。このような酸性触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機系の酸性触媒が好適である。酸性触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のようなシリコーン変性アルキド樹脂としては、例えば、テスファインTA31−209E(日立化成株式会社製、商品名)が挙げられる。
本実施形態においては、仮固定用樹脂フィルムを支持体又は電子部品からより容易に剥離するという観点から、シリコーン変性アルキド樹脂と、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等のシリコーンとを組み合わせて使用することが好ましい。
上述のようなシリコーンとしては、高分子量体と相溶するものであれば、特に限定なく用いることができる。シリコーンとしては、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH3773M、L−7001、SH−550、SH−710、信越化学工業株式会社製のX−22−163、KF−105、X−22−163B、X−22−163C等が挙げられる。
第一の液状樹脂組成物Aにおける(a2)シリコーン化合物の配合量は、(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、2〜80質量部がより好ましい。(a2)シリコーン化合物の配合量が上記範囲内であれば、電子部品加工時の接着性と加工後の剥離性とをより高水準で両立させることが可能となる。
(a3)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一の液状樹脂組成物Aにおいて、(a1)熱可塑性樹脂がエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む場合、係るアクリル共重合体に含まれるエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を含有させることが好ましい。
第一の液状樹脂組成物Aにおける(a3)硬化促進剤の配合量は、(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜2.0質量部が好ましい。(a3)硬化促進剤の配合量が(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上であれば、半導体素子の製造工程内の熱履歴において第一の層を充分に硬化させることできるため、電子部品と支持体とをより確実に固定できる。(a3)硬化促進剤の配合量が(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対して2.0質量部以下であれば、製造工程中の加熱により仮固定用樹脂フィルムの溶融粘度が上昇しにくくなり、フィルムの保存安定性が更に良好になる傾向がある。
その他の成分としては、無機フィラー、有機フィラー、シランカップリング剤、硬化性成分等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー;シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の非金属無機フィラー等が挙げられる。無機フィラーは所望する機能に応じて選択することができる。金属フィラーは、フィルムにチキソ性を付与する目的で添加することができる。非金属無機フィラーは、フィルムに低熱膨張性及び低吸湿性を付与する目的で添加することができる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機フィラーは表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されていることにより、フィルムを形成するための樹脂組成物を調製するときの有機溶剤への分散性、並びにフィルムの密着性及び耐熱性を向上させることが容易となる。
表面に有機基を有する無機フィラーは、例えば、下記一般式(B−1)で表されるシランカップリング剤と無機フィラーとを混合し、30℃以上の温度で攪拌することにより得ることができる。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されたことは、UV(紫外線)測定、IR(赤外線)測定、XPS(X線光電子分光)測定等で確認することが可能である。
Figure 0006958089
式(B−1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、イソシアネート基及びメタクリロキシ基からなる群より選択される有機基を示し、sは0又は1〜10の整数を示し、R11、R12及びR13は各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基は、入手が容易であるという観点から、メチル基、エチル基及びペンチル基が好ましい。Xは、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基が好ましく、グリシドキシ基及びメルカプト基がより好ましい。式(B−1)中のsは、高熱時のフィルム流動性を抑制し、耐熱性を向上させる観点から、0〜5が好ましく、0〜4がより好ましい。
好ましいシランカップリング剤は、例えば、トリメトキシフェニルシラン、ジメチルジメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらの中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシフェニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カップリング剤の使用量は、耐熱性を向上させる効果と保存安定性とのバランスを図る観点から、無機フィラー100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.05質量部〜20質量部がより好ましく、耐熱性向上の観点から、0.5〜10質量部が更に好ましい。
第一の液状樹脂組成物Aにおける無機フィラーの配合量は、Bステージ状態における仮固定用樹脂フィルムの取扱い性の向上、及び低熱膨張性の向上の観点から、(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。無機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、第一の層の接着性を充分に確保しつつ、所望の機能を付与することができる傾向にある。
有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。有機フィラーの配合量は、(a1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。有機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。
また、第一の液状樹脂組成物Aは、耐熱性の向上の観点から、その他の成分として硬化性成分を更に含有することが好ましい。硬化性成分としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、主鎖中に柔軟性を発現させる分子骨格(ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ウレタン等の分子骨格)を有するエポキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、YX−7105(三菱ケミカル株式会社製)、EPR−4030(株式会社ADEKA製)、EP−4010S(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
第一の液状樹脂組成物Aにおける樹脂成分の含有量(固形分濃度)は、10質量%以上であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。
第一の溶剤成分は、例えば、有機溶剤であり、製膜時の揮発性等を沸点から考慮して決めることができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸メチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の塗布液の調製に用いられる有機溶剤として従来公知のものを適宜選択して用いることができる。第一の溶剤成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
第一の液状樹脂組成物Aは、上述した第一の樹脂成分を第一の溶剤成分中で混合及び混練することにより調製することができる。混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。
(第二の液状樹脂組成物B)
第二の液状樹脂組成物Bは、第二の樹脂成分として、第二の熱可塑性樹脂(以下、(b1)熱可塑性樹脂という場合もある。)及び硬化性成分(以下、(b2)硬化性成分という場合もある。)を含む。第二の樹脂成分は、(b1)熱可塑性樹脂及び(b2)硬化性成分に加え、必要に応じて、シリコーン化合物(以下、(b3)シリコーン化合物という場合もある。)、硬化促進剤(以下、(b4)硬化促進剤という場合もある。)及びその他の成分を含んでいてもよい。なお、本明細書において、(b2)硬化性成分とは、熱可塑性を有しない化合物を意味する。すなわち、硬化性を有する熱可塑性樹脂は、(b2)硬化性成分には含まれない。また、シリコーン骨格を有する化合物は全てシリコーン化合物に分類されるものとする。すなわち、シリコーン骨格を有する熱硬化性化合物は、(b2)硬化性成分には含まれない。
(b1)熱可塑性樹脂としては、少なくとも仮固定用樹脂フィルムが電子部品又は支持体にラミネートされる前において熱可塑性を有している樹脂であれば特に制限なく用いることができる。熱可塑性樹脂は、加熱等により架橋構造を形成する樹脂であってもよい。
本実施形態で用いる(b1)熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有するポリマーを用いることができる。架橋性官能基を有するポリマーとしては、熱可塑性ポリイミド樹脂、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体、ウレタン樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が好ましい。上記の樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよく、或いは、市販品を用いてもよい。
架橋性官能基を有するポリマーは、架橋性官能基をポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。架橋性官能基の具体例としては、エポキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。架橋性官能基の中でも、カルボキシル基が好ましい。カルボキシル基は、アクリル酸を用いることによってポリマー鎖に導入することができる。
架橋性官能基を有するポリマーは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体を用いることが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体を挙げることができる。これら中でも、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体としては、アクリル酸エステルを主成分とするものが挙げられ、例えば、ブチルアクリレート及び/又はエチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。
(b1)熱可塑性樹脂のTgは、−50℃〜50℃であることが好ましく、−40℃〜20℃であることがより好ましい。Tgがこのような範囲であれば、第二の層のタック力が上がりすぎて取り扱い性が悪化することを抑制しつつ、より充分な流動性を得ることができ、更に硬化後の第二の層の弾性率をより低くすることができるため、剥離強度が高くなりすぎることをより抑制できる。
(b1)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に限定されず、好ましくは10万〜120万であり、より好ましくは30万〜100万である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量がこのような範囲であれば、成膜性と流動性とを確保することが容易となる。
(b2)硬化性成分としては、特に制限はなく、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせても使用することができる。熱硬化性樹脂は、特に、耐熱性、作業性及び信頼性に優れる第二の層が得られる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、「エピコート」は登録商標)、ダウケミカル社製、DER−330、DER−301、DER−361、及び新日鉄住金化学株式会社製、YD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が挙げられる。o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027、新日鉄住金化学株式会社製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる(「アラルダイト」、「デナコール」は登録商標)。アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、東都化成株式会社製のYH−434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD−X及びTETRAD−C、住友化学株式会社製のELM−120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化性成分は、熱硬化性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂の硬化剤を含んでいてよい。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れるという観点から、エポキシ樹脂硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール樹脂硬化剤の中で好ましいものとしては、例えば、DIC株式会社製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65及び三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVRが挙げられる(「フェノライト」、「エピキュア」、「ミレックス」は登録商標)。
第二の液状樹脂組成物Bにおける(b2)硬化性成分の配合量は、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜500質量部であり、50〜300質量部がより好ましい。硬化性成分の配合量が上記範囲内であれば、仮固定用樹脂フィルムは充分な低温貼り付け性、耐熱性、硬化性及び剥離性を兼ね備えることができる。配合量が10質量部以上であれば支持体への貼付性及び耐熱性が向上するとともに、バックグラインド時の保持性も向上し、ウェハが割れにくい傾向がある。一方、配合量が500質量部以下であれば、硬化前の粘度が過度に低くなりにくく、比較的短時間で硬化できると共に、電子部品の支持体への保持性と支持体からの剥離性を両立できる傾向にある。
(b3)シリコーン化合物は、上述した(a2)シリコーン化合物として挙げたものを用いることができる。第二の液状樹脂組成物Bにおける(b3)シリコーン化合物の配合量は、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、2〜80質量部がより好ましい。(b3)シリコーン化合物の配合量が上記範囲内であれば、電子部品加工時の接着性と加工後の剥離性とを両立させることが可能となる。
(b4)硬化促進剤は、上述した(a3)硬化促進剤として挙げたものを用いることができる。第二の液状樹脂組成物Bにおいて、(b1)熱可塑性樹脂がエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む場合、係るアクリル共重合体に含まれるエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を含有することが好ましい。
第二の液状樹脂組成物Bにおける(b4)硬化促進剤の配合量は、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜2.0質量部が好ましい。(b4)硬化促進剤の配合量が(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上であれば、半導体素子の製造工程内の熱履歴において第二の層を充分に硬化させることできるため、電子部品と支持体とをより確実に固定できる。(b4)硬化促進剤の配合量が(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対して2.0質量部以下であれば、製造工程中の加熱により仮固定用樹脂フィルムの溶融粘度が上昇しにくくなり、フィルムの保存安定性が更に良好になる傾向がある。
その他の成分としては、無機フィラー、有機フィラー、シランカップリング剤等が挙げられる。
無機フィラーは上述したものを用いることができる。第二の液状樹脂組成物Bにおける無機フィラーの配合量は、Bステージ状態における仮固定用樹脂フィルムの取扱い性の向上、低熱膨張性の向上の観点から、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。無機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、第二の層の接着性を充分に確保しつつ、所望の機能を付与することができる。
有機フィラーは上述したものを用いることができる。有機フィラーの配合量は、(b1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。有機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。
第二の溶剤成分は、上述した第一の溶剤成分として挙げたものを用いることができる。第二の溶剤成分は、第一の溶剤成分と同一であってよく、異なってもよい。
第二の液状樹脂組成物Bは、第一の液状樹脂組成物Aと同様に、上述した第二の樹脂成分を第二の溶剤成分中で混合及び混練することにより調製することができる。
以上、本発明に係る仮固定用樹脂フィルム及び仮固定用樹脂フィルムシート、それらの製造方法、並びに、仮固定用樹脂フィルムを用いた電子部品の加工方法について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
例えば、同時塗布工程では、3種類以上の液状樹脂組成物を用いて、3層以上の層が積層されてなる多層膜を形成してもよい。例えば、第一の液状樹脂組成物及び第二の液状樹脂組成物に加えて第三の液状樹脂組成物(例えば、熱可塑性樹脂を含む液状樹脂組成物)を用いる場合、第一の液状樹脂組成物からなる層と、第二の液状樹脂組成物からなる層との間に第三の液状樹脂組成物からなる層が形成されるように、第一、第二及び第三の液状樹脂組成物を同時塗布してよく、第二の液状樹脂組成物からなる層における、第一の液状樹脂組成物からなる層とは反対側の面上に第三の液状樹脂組成物からなる層が形成されるように、第一、第二及び第三の液状樹脂組成物を同時塗布してもよい。なお、「3種以上の液状樹脂組成物」とは、溶剤成分以外の成分(樹脂成分)が互いに異なる3種以上の液状樹脂組成物を指す。
また、同時塗布工程では、同一の樹脂組成物からなる層を複数形成してもよい。例えば、第二の液状樹脂組成物からなる層における、第一の液状樹脂組成物からなる層とは反対側の面に第一の液状樹脂組成物からなる層が形成されるように、第一の液状樹脂組成物及び第二の液状樹脂組成物を同時塗布してもよい。
また、仮固定用樹脂フィルムの製造方法は、仮固定用樹脂フィルムを得た後、基材を除去する工程を更に備えていてもよい。
また、上記実施形態では、第一の層及び第二の層のうち、第二の層が基材側となるように同時塗布工程を行っているが、第一の層が基材側となるように同時塗布工程を行ってもよい。
また、上記実施形態では、液状樹脂組成物が、溶剤成分を含んでいるが、液状樹脂組成物は溶剤成分を含んでいなくてもよい。液状樹脂組成物が溶剤成分を含まない場合、多層膜が仮固定用樹脂フィルムとなる。
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリイミド樹脂PIの合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンであるBAPP(商品名、東京化成製、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、分子量:410.51)10.26g(0.025mol)及び1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成製、商品名:B−12、分子量:204.31)5.10g(0.025mol)と、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、デカメチレンビストリメリテート酸二無水物(DBTA)26.11g(0.05mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PIを得た。ポリイミド樹脂PIは熱可塑性樹脂であり、重量平均分子量は50000、Tgは70℃であった。ポリイミド樹脂PIは、NMP中に固形分濃度が50質量%になるように調製して使用した。なお、表1及び2に示すPIの配合量は固形分の質量部である。
[アクリルゴムKKの合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル61g、メタクリル酸メチル19g、グリシジルメタクリレート20g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液1.94g、ラウリルパーオキサイド0.2g、及びn−オクチルメルカプタン0.06gを配合した。続いて、フラスコに60分間N2ガスを吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して5時間重合を行った。更に、系内温度を90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。重合反応により得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムKKを得た。アクリルゴムKKをGPCで測定したところ、アクリルゴムKKの重量平均分子量はポリスチレン換算で40万であった。また、アクリルゴムKKのTgは−10℃であった。
GPCの測定は、GPC(東ソー株式会社製、SD−8022/DP−8020/RI−8020)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとして日立化成株式会社製Gelpack GL−A150−S/GL−A160−Sを使用し、溶離液流量1.0mL/分、カラム温度40℃の条件で行った。
Tgは、示差走査熱量測定(DSC)(株式会社リガク製、DSC8230)を用いて、昇温速度10℃/分、測定温度:−80〜80℃の条件で測定した。この場合のガラス転移温度とは、熱量変化からJIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度のことである。
(実施例1〜3)
[仮固定用樹脂フィルムの調製]
表1に示す質量部の組成で、第一の層を形成するための第一の液状樹脂組成物及び第二の層を形成するための第二の液状樹脂組成物として、液状樹脂組成物1〜4を調製した。調製した液状樹脂組成物を表2に示す組み合わせで、基材である離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A31、厚さ38μm)の離型処理面上に同時塗布し、90℃で5分間、140℃で5分間加熱乾燥した。その後、樹脂層上に上記フィルムをカバーフィルムとして更に貼り合わせ、基材、第一の層、第二の層及びカバーフィルムシートをこの順に備える仮固定用樹脂フィルムシートを得た。同時塗布は、ダイコータを用いて、以下の条件で行った。
(塗布条件)
・塗布装置:東レエンジニアリング株式会社製の製品名「塗工装置 TCS−0908L&SW」
・塗布速度:1.6m/分
・乾燥条件(温度/炉長):第一乾燥炉90℃/2.7m
第二乾燥炉130℃/5.3m
(比較例1〜3)
表2に示す第一の液状樹脂組成物を、基材である離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A31、厚さ38μm)の離型処理面上に塗布し、90℃で5分間、140℃で5分間加熱乾燥した。その後、得られた樹脂層上に上記フィルムをカバーフィルムとして更に貼り合わせ、基材、第一の層及びカバーフィルムをこの順に備える第一の樹脂シートを得た。第二の液状樹脂組成物を用いたこと以外は同様にして、基材、第二の層及びカバーフィルムをこの順に備える第二の樹脂シートを作製した。それぞれの樹脂シートから保護フィルムを剥離し、第一の層及び第二の層を80℃でロールラミネートにより貼り合せ、基材、第一の層、第二の層及びカバーフィルムシートをこの順に備える仮固定用樹脂フィルムシートを得た。
Figure 0006958089
Figure 0006958089
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・熱可塑性樹脂
HTR−280−CHN:GPCによる重量平均分子量90万、Tg−28℃のアクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製)
KK:上述したアクリルゴムKK
HTR−860P−3CSP:GPCによる重量平均分子量80万、Tg12℃のアクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製)
PI:上述したポリイミド樹脂PI
・硬化性成分
EXA830−CRP:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名、DIC株式会社製)
YDCN−700−10:クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製)
YX−7105:柔軟性エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
HE−100C−30:フェノールアラルキル樹脂(商品名、エア・ウォーター株式会社製)
・シリコーン化合物
SH550:メチルフェニルシリコーン化合物(東レ・ダウケミカル株式会社製)
SH3773M:ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウケミカル株式会社製)
TA31−209E:シリコーン変性アルキド樹脂(日立化成株式会社製)
BYK−UV3500:アクリロイル基含有ポリエーテル変性シリコーン化合物(ビックケミージャパン株式会社)
・硬化促進剤
2PZ−CN:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製)
調製した実施例及び比較例の仮固定用樹脂フィルムについて、ラミネート性、90°ピール強度、層間密着力、ボンディング性、デボンディング性及び200℃耐熱性を以下に示す方法にしたがって評価した。その評価結果を表3に示す。
[ラミネート性]
仮固定用樹脂フィルムシートから基材(第二の層側のポリエチレンテレフタレートフィルム)を剥離し、小型ラミネート機(株式会社TAISEI LAMINATOR製、FIRST LAMINATOR)を用いて80℃で厚み775μmのシリコンミラーウェハ(12インチ)にラミネートした。その後、表面を目視にて確認し、ボイドの有無を観察し、ラミネート性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
×:ボイドが発生する場合
○:ボイドが発生しない場合
[90°剥離強度]
シリコンミラーウェハ及び仮固定用樹脂フィルム(第二の層)の間の90°剥離強度を下記の方法により評価した。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)を真空ラミネーター(株式会社エヌ・ピー・シー製、LM−50X50−S)のステージ上に置き、仮固定用樹脂フィルムを第二の層がシリコンミラーウェハ側に貼り付くように設置し、15mbarの条件下で、120℃の温度、0.1MPaの圧力で2分間加熱加圧し、真空ラミネートした。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱して硬化させた。これを更に200℃で30分間加熱した後、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。測定用フィルムを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で50mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とした。
[層間密着力]
仮固定用樹脂フィルムの第二の層側を表面の粗化された銅箔表面に80℃にてロールラミネートし、積層サンプルを得た。その後得られたサンプルの第一の層側のカバーフィルムを剥離し、130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱して仮固定用樹脂フィルムを硬化させ、その後、200℃で30分間加熱した。こうして得られたサンプルの第一の層側にサポートテープをラミネートし、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。測定用フィルムを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で50mm/分の速度で剥離試験を実施し、仮固定用樹脂フィルムにおける硬化後の第一の層と第二の層の層との間の剥離強度を層間密着力として評価した。剥離できなかった際は層間密着力の値を150N/m以上とした。
[ボンディング性]
仮固定用樹脂フィルムのボンディング装置での剥離性を下記の方法により評価した。支持体として700μmのガラスウェハ(12インチ)を使用し、仮固定用樹脂フィルムを、第二の層側がガラスウェハに貼り付くように80℃でロールラミネートにより貼り付けることで、仮固定用樹脂フィルム付き支持体を得た。その後、ボンディング装置(株式会社SUSS製、LF12)を用いてボンディング温度:100℃、圧力:7kN、圧力保持時間:5分で775μmのシリコーンミラーウェハ(12インチ)と仮固定用樹脂フィルム付き支持体をボンディングし、積層サンプルを得た。得られた積層サンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱して仮固定用樹脂フィルムを硬化させ、その後、200℃で30分間加熱した。このようにして得られたサンプルをガラスウェハ面から観察し、画像をPhotoshop(登録商標)等のソフトウェハで解析し、仮固定用樹脂フィルム全体の面積に占めるボイドの割合から200℃での耐熱性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:ボイドが発生しない場合
×:ボイドが発生する場合
[デボンディング性]
ボンディング性評価で得られた積層サンプルを用いてシリコンウェハと仮固定用樹脂フィルムの第一の層側との間に、先端が鋭利なピンセットを差し入れ、外縁に沿ってピンセットを動かした。シリコンウェハ及び支持体が割れることなく剥離できたものを○とし、剥離できなかったもの又は損傷が見られたものは×とした。
[200℃での耐熱性評価]
仮固定用樹脂フィルムの200℃での耐熱性を下記の方法により評価した。厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)をブレードダイシングにより25mm角に小片化した。小片化したシリコンミラーウェハ表面に、仮固定用樹脂フィルムの第二の層側が貼り付くように80℃でロールラミネートした。次に、厚さが0.1〜0.2mmで大きさが約18mm角のスライドガラスを、仮固定用樹脂フィルムの第一の層側に80℃でロールラミネートし、仮固定用樹脂フィルムがシリコンウェハ及びスライドガラスで挟まれた積層体サンプルを作製した。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱して仮固定用樹脂フィルムを硬化させ、その後、200℃で30分間加熱した。このようにして得られたサンプルをスライドガラス面から観察し、画像をPhotoshop(登録商標)等のソフトウェハで解析し、仮固定用樹脂フィルム全体の面積に占めるボイドの割合から200℃での耐熱性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:ボイドの割合が5%未満。
×:ボイドの割合が5%以上。
Figure 0006958089
1…基材、5…多層膜、6…第一の層、7…第二の層、8…混合領域、9…カバーフィルム、10…仮固定用樹脂フィルム、11,12…仮固定用樹脂フィルムシート、50…ダイコータ、A…第一の液状樹脂組成物、B…第二の液状樹脂組成物。

Claims (25)

  1. 2種類以上の樹脂層を備える仮固定用樹脂フィルムの製造方法であって、
    2種類以上の液状樹脂組成物として、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第一の熱可塑性樹脂を含む第一の液状樹脂組成物と、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第二の熱可塑性樹脂及び硬化性成分を含む第二の液状樹脂組成物と、を用意する工程と、
    基材に前記2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布する工程と、を備え、
    前記第二の液状樹脂組成物における前記硬化性成分の含有量は、前記第二の熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜500質量部であり、
    下記(1)及び/又は(2)を満たす、仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
    (1)前記第一の液状樹脂組成物が硬化性成分を含まない
    (2)前記第一の液状樹脂組成物がシリコーン化合物を更に含み、前記第二の液状樹脂組成物がシリコーン化合物を含まない
  2. ダイコータを用いて前記2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布する、請求項1に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布して多層膜を形成した後、前記多層膜を乾燥する工程を更に備える、請求項1又は2に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記仮固定用樹脂フィルムは、前記2種類以上の樹脂層のうちの隣り合う第一の層及び第二の層との間に、前記第一の層から前記第二の層に至る領域を備え、
    前記第一の層と前記第二の層との間の接着強度は150N/m以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記第一の層の厚さは10〜350μmであり、前記第二の層の厚さは10〜350μmである、請求項4に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記第一の層の厚さ及び前記第二の層の厚さは下記式(1)の関係を満たす、請求項4又は5に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
    (1/10)a≦b≦10a・・・(1)
    [式(1)中、aは第一の層の厚さを表し、bは第二の層の厚さを表す。]
  7. 前記第一の液状樹脂組成物からなる層と、前記第二の液状樹脂組成物からなる層とが、前記第一の液状樹脂組成物及び前記第二の液状樹脂組成物を含む領域を介して隣り合うように、前記2種類以上の液状樹脂組成物を同時塗布する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  8. 前記第一の熱可塑性樹脂及び/又は前記第二の熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有し、且つ、重量平均分子量が10万〜120万の熱可塑性樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  9. 前記硬化性成分は、熱硬化性樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  10. 前記第一の液状樹脂組成物が硬化性成分及びシリコーン化合物を更に含み、
    第二の液状樹脂組成物がシリコーン化合物を含まない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  11. 前記第一の液状樹脂組成物及び前記第二の液状樹脂組成物がシリコーン化合物を更に含み、
    前記第一の液状樹脂組成物が硬化性成分を含まない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  12. 前記第一の液状樹脂組成物が硬化性成分を含まず、シリコーン化合物を更に含み、
    前記第二の液状樹脂組成物がシリコーン化合物を含まない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  13. 前記第一の液状樹脂組成物及び/又は前記第二の液状樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムの製造方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により得られる仮固定用樹脂フィルム上にカバーフィルムをラミネートする工程を備える、仮固定用樹脂フィルムシートの製造方法。
  15. 第一の樹脂成分からなる第一の層と、
    第二の樹脂成分からなる第二の層と、
    前記第一の層と前記第二の層との間に位置し、前記第一の層から前記第二の層に至る領域と、を備え、
    前記領域は、前記第一の樹脂成分及び前記第二の樹脂成分を含み、
    前記第一の樹脂成分は、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第一の熱可塑性樹脂を含み、
    前記第二の樹脂成分は、ガラス転移温度が−50℃〜50℃である第二の熱可塑性樹脂及び硬化性成分を含み、
    前記第二の樹脂成分における前記硬化性成分の含有量は、前記第二の熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜500質量部であり、
    下記(1)及び/又は(2)を満たす、仮固定用樹脂フィルム。
    (1)前記第一の樹脂成分が硬化性成分を含まない
    (2)前記第一の樹脂成分がシリコーン化合物を更に含み、前記第二の樹脂成分がシリコーン化合物を含まない
  16. 前記第一の熱可塑性樹脂及び/又は前記第二の熱可塑性樹脂は、架橋性官能基を有し、且つ、重量平均分子量が10万〜120万の熱可塑性樹脂である、請求項15に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  17. 前記硬化性成分は、熱硬化性樹脂を含む、請求項15又は16に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  18. 前記第一の樹脂成分が硬化性成分及びシリコーン化合物を更に含み、
    第二の樹脂成分がシリコーン化合物を含まない、請求項15〜17のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  19. 前記第一の樹脂成分及び前記第二の樹脂成分がシリコーン化合物を更に含み、
    前記第一の樹脂成分が硬化性成分を含まない、請求項15〜17のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  20. 前記第一の樹脂成分が硬化性成分を含まず、シリコーン化合物を更に含み、
    前記第二の樹脂成分がシリコーン化合物を含まない、請求項15〜17のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  21. 前記第一の樹脂成分及び/又は第二の樹脂成分は、硬化促進剤を更に含む、請求項15〜20のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  22. 前記第一の層と前記第二の層との間の接着強度は150N/m以上である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  23. 前記第一の層の厚さは10〜350μmであり、前記第二の層の厚さは10〜350μmである、請求項15〜22のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
  24. 前記第一の層の厚さ及び前記第二の層の厚さは下記式(1)の関係を満たす、請求項15〜23のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルム。
    (1/10)a≦b≦10a・・・(1)
    [式(1)中、aは第一の層の厚さを表し、bは第二の層の厚さを表す。]
  25. 請求項15〜24のいずれか一項に記載の仮固定用樹脂フィルムと、前記仮固定用樹脂フィルム上に設けられたカバーフィルムと、を備える、仮固定用樹脂フィルムシート。
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