以下、図面を参照し、本発明の実施形態を詳しく説明する。説明の便宜上、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。各図に示された構成部材間の寸法比も、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
[クロスモダリティ効果の概要]
まず、クロスモダリティ効果について説明する。クロスモダリティ効果とは、複数の感覚器官で得られた情報が脳に入り、脳が入ってきた情報と脳の中にある情報とを統合して判断する際に、複数の感覚器官の中の少なくとも1つが、通常とは異なる別の情報を取得することで、脳がこの別の情報をも統合し、別の情報が統合されなかった場合とは異なる判断を行うことである。通常とは異なる別の情報は、ユーザーに本来とは異なる感覚を与え、これが判断を異ならせる。
図1は、クロスモダリティ効果を説明する図であり、(a)は、クロスモダリティ効果が発現していない場合を示し、(b)は、クロスモダリティ効果が発現している場合を示す。
図1の(a)に示すように、「未完熟のいちご」に対して、複数の感覚器官が、視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚、温度感覚等の情報を得る。触れたり、食べたりできない状況では、「未完熟のいちご」より得られる情報は、視覚情報、嗅覚情報となる。脳は、得られた「未完熟のいちご」の視覚情報と嗅覚情報を脳の中の情報と統合して、「硬くて酸っぱそうないちご」と判断する。
一方、図1の(b)に示すように、複数の感覚器官の中の少なくとも1つに別の情報を取得させた場合、例えば、「未完熟のいちご」に対して白色の光を照射し、視覚情報に「つやつやした光沢」の情報をプラスで取得させると、その場合、同じ「未完熟のいちご」であっても、脳は、「瑞々しくておいしそうないちご」と、異なる判断をする。このとき、ユーザーに本来とは異なる「つやつやした感じ」が与えられ、これが判断を異ならせる。
また、例えば、「甘い匂い」を足して、嗅覚情報に「甘い匂い」の情報をプラスで取得させると、同じ「未完熟のいちご」であっても、脳は「甘くておいしそうないちご」と、異なる判断をする。このとき、ユーザーに本来とは異なる「甘い匂い」が与えられ、これが判断を異ならせる。
なお、図1では、クロスモダリティ効果により、食べ物の「味のイメージ」が変わる場合を例示したが、「味のイメージ」に限定されるものではなく、クロスモダリティ効果により、「重さのイメージ」や「作業のイメージ」等を変えることもできる。
このように、複数の感覚器官の中の少なくとも1つに通常とは違う情報をプラスで取得させて、クロスモダリティ効果を発現させることで、脳が判断する「イメージ」を変えることができる。
[第1実施形態]
<食品保存機1の概要構成>
第1実施形態に係る、食品保持部を備えた装置として食品保存機1の概要について、図を用いて説明する。図2は、第1実施形態に係る食品保存機1の全体構成を示す概略図である。図2に示すように、食品保存機1は、食材(食品)を保存し、陳列する本体部2を有し、本体部2の正面には、本体部2を塞ぐ扉3が設けられている。本体部2の上部には、扉3が開かれることで開放される保存室(食品保持部)4が設けられ、本体部2の下部には、引き出し式の保存室(食品保持部、引き出し)8が設けられている。扉3の外面には、ユーザーが食品保存機1を操作するための操作部7が設けられている。なお、操作部7は、スイッチ式でもタッチパネル式でもよい。以下、説明の便宜上、「食材」「食品」の両方のタームを使用するが両タームは同意である。
保存室4には、庫内灯(内部灯)6とクロスモダリティLED(クロスモダリティ光源)5とが設置されている。庫内灯6は、庫内(室内)の明るさを確保し視認性を高めるための光源であり、白色の光を照射する。クロスモダリティLED5は、前述したクロスモダリティ効果を発現させるための光源である。クロスモダリティLED5は、RGBフルカラーLED光源を有し、多様な色を再現することができる。また、クロスモダリティLED5の点灯時間(発光時間)、点滅パターン(発光パターン)、照度等も任意に変化させることができる。庫内灯6についても、点灯時間、照度を任意に変化させることができる。図2の例では、庫内灯6は保存室4の奥壁に設置され、クロスモダリティLED5は保存室4の側壁に設置されている。
庫内灯6およびクロスモダリティLED5の動作は、図3に示す発光制御部10にて制御される。図3は、食品保存機1の発光制御部10を含む要部の構成を示すブロック図である。なお、図3では、1つの発光制御部10にて庫内灯6およびクロスモダリティLED5の両方を制御する構成を例示するが、それぞれに単独の制御部にて制御される構成であってもよい。
図3に示すように、食品保存機1は、記憶部12を備えている。該記憶部12には、発光制御部10が用いる、クロスモダリティLED5を適切な色(光源の色)で発光させるための情報が格納されている。適切な色は、クロスモダリティLED5の光を照射する食品の色とクロスモダリティ効果を発現させて得たい感覚とによって決まる。クロスモダリティLED5の適切な色は、色相、明度、彩度等で、予め設定されており、ユーザーによって光源の色を変更することもできる。発光制御部10は、クロスモダリティ効果を発現させることで、ユーザーに認知させたい本来の感覚と異なる感覚、を与え得るように、クロスモダリティLED5の光源の色を決定する。
検出部11は、保存室4内に保管した食品を認識するものである。発光制御部10は、検出部11による認識結果に基づいて、食品の色を判断し、クロスモダリティLED5の光源の色(発光色)を決定する。なお、検出部11に代えて、操作部7等より、保存室4内に保管した食品(食材)の情報を入力して記憶部12に登録する構成としてもよい。その場合、発光制御部10は、登録された情報に基づいて、クロスモダリティLED5の光源の色を決定する。
記憶部12には、発光制御部10がクロスモダリティLED5および庫内灯6を発光(点灯)させる際に使用する各種の情報も格納されている。第1実施形態に係る食品保存機1においては、発光制御部10は、クロスモダリティLED5の光による庫内の照度が、時刻に応じて変わるように、クロスモダリティLED5の光の強度を変化させる。例えば、食事または食事準備の時間帯と、他の時間帯とで、庫内の照度が変わるように、クロスモダリティLED5光の強度を異ならせる。さらに、ここでは、庫内灯6とクロスモダリティLED5とを連動させており、発光制御部10は、クロスモダリティLED5と庫内灯6との庫内照度の発光バランスを変化させる。これにより、庫内灯6とクロスモダリティLED5との両方で庫内全体を照らしたり、クロスモダリティLED5の光のみで、照射対象の食品を照らしたりする。以下、「光の強度」を「光の照度」として説明する。
<食品保存機1の動作>
図4は、第1実施形態に係る食品保存機1における発光特性の一例を示す図である。(a)は、時間軸に対するクロスモダリティLED5および庫内灯6の照度を示し、(b)は、時間軸に対するクロスモダリティLED5および庫内灯6を合わせたトータルの照度を示し、(c)は、(a)の四角で囲った、7時以降の特定の時間帯における、時間軸に対するクロスモダリティLED5および庫内灯6の照度を示す。クロスモダリティLED5の点灯は、扉3が透明である場合は、常時、図4に示す発光特性で点灯することが有効である。扉3が不透明な場合は、扉3を開けた時のみ図4の発光特性で点灯させる構成とすればよい。
図4の(a)に示すように、食品保存機1が設置されている空間(室内)の照度に合わせて、朝日が昇っている7時頃に、クロスモダリティLED5の照度が1日の中で一番高くなる。この時間帯、庫内灯6は反対に1日の中で照度が最も低くなり、ほぼクロスモダリティLED5のみで照射している。
7時を過ぎると、クロスモダリティLED5の照度は低下し、庫内灯6の照度が高くなり、逆転する(図4の(c)参照)。クロスモダリティLED5の照度は、その後、12時と18時に再びピークを有し、18時をすぎて日が暮れ、夜になるにつれてだんだんと低くなる。18時のピークは12時のピークよりも低い。一方、庫内灯6の照度は、クロスモダリティLED5の照度を補うように、クロスモダリティLED5のピークとピークの間にあたる10時と15時にピークを向かえる。15時のピークは10時のピークよりも低い。
クロスモダリティLED5および庫内灯6を合わせた庫内全体の照度は、図4の(b)に示すように、7時が最も高くなり、18時から翌朝の7時までが最も低く一定となる。
図4に示す発光特性にてクロスモダリティLED5および庫内灯6の動作を制御することで、朝食時、昼食時、夕食時に相当する7時、12時、18時の時間帯において、クロスモダリティ効果を発現させることができる。そして、新たな光源となるクロスモダリティLED5を設けた構成であっても、クロスモダリティLED5の照度に連動させて、庫内灯6の照度を調整し、庫内全体として、外環境と庫内の照度の差を縮めながら視認性を確保しているので、省電力に貢献する発光が実現する。なお、朝食、昼食、夕食の時間帯は、前記の例に固定されるものではなく、ユーザーの生活スタイルに合わせて設定することができる。
クロスモダリティLED5の発光色は、前述したように、検出部11にて検出された食品の情報、あるいは記憶部12に登録された食品の情報をもとに選択され、該当食品が最もおいしい、新鮮、甘く感じる条件により色が決定される。
例えば、青野菜の場合、通常であれば、苦く渋そうに見えるが、クロスモダリティLED5よりオレンジ色の光を照射することで、甘く、柔らかい味がし、よりおいしい味を感じることができる。これは、青野菜の色の視覚・味覚情報に加え、オレンジ色の光の情報が脳で統合され、クロスモダリティ効果が発現し、味覚としておいしいと認知することができるためである。庫内灯6とクロスモダリティLED5の動作を連動させることにより、常に一定の照度を保ちながら、食事準備どきは、クロスモダリティの効果を享受することが可能となる。
<食品保存機1の効果>
図5に、第1実施形態に係る食品保存機1のクロスモダリティ効果を調査した結果を示す。なお、図5には、後述する第2実施形態〜第4実施形態に係る食品保存機1の効果および比較例1〜4の結果も併せて示す。
調査実験においては、健康上大きな問題を持っておらず、視覚、触覚、温度感覚が正常で、5つの味覚感覚を識別できる男性3名、女性3名を被験者として選定し、各実施形態に係る食品保存機1および比較例の官能評価を行った。評価手法は、9段階のスケールのアンケート用紙を用い、適切な統計処理を行った。各被験者は、他者の干渉を防ぐため個別に官能評価を行い、提示順はランダムにして順番による影響を無くした。
調査の項目は、「意識の程度」「マイルドさ」「嫌悪感」「嗜好性」「鮮度」「やわらかさ」「おいしさ」「カムフラージュ(識別不能変化率)」「満腹感」「食欲」「表面体感温度」「食材体感温度」「軽さ」「負担」「清潔感」とした。全実施形態および全比較例において、全項目の調査を行ったわけではなく、必要な項目を選択的に行った。
図5においては、「意識の程度」〜「清潔感」までの調査結果に基づいて、「クロスモダリティ効果の有無」「食品特化性クロスモダリティ効果の有無」を記載している。なお、食品特化性クロスモダリティ効果とは、食欲単体以外のクロスモダリティ効果を指す。
また、「庫内視認性」「庫内の照度の安定性」の判定結果、並びに、「時間帯毎の発光違いの有無」「発光バランスの有無」等の発光条件も併せて記載している。なお、図5において、特定の時間帯に照度を高める制御を行った場合を、「発光タイミング」と称し、時間軸に応じて照度を徐々に高めるあるいは弱める制御を行った場合を、「発光時間」と称している。
比較例1として、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第1実施形態と同様の構成を有する食品保存機を、図6に示す発光特性にて庫内灯6のみを発光させた。なお、庫内灯6のみ備える構成では、庫内全体の照度は、庫内灯6の照射時のものと同じとなる。
図5に示すように、調査実験の結果、第1実施形態に係る食品保存機1では、食品保存機1を使用する動作の中で、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果を得られることを確認した。具体的には、「嫌悪感」が解消され、「マイルドさ」「嗜好性」「鮮度」「やわらかさ」「おいしさ」が向上した。また、庫内の照度も安定であることを確認した。
これに対し、比較例1の構成では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られず、「マイルドさ」「嫌悪感」「嗜好性」「鮮度」「やわらかさ」「おいしさ」に一切変化しなかった。また、庫内灯6のみで照射の強を変更しているため、庫内の照度が不安定となった。
ここでは、照度(光の強度)を変更しているが、庫内灯6とクロスモダリティLED5との発光バランスは、照度だけでなく、色相、彩度、輝度等を変更することでも変化させることができる。
また、ユーザーにクロスモダリティ効果が与えられる構成であれば、図7に示すように、庫内灯6とクロスモダリティLED5とが1ユニットにて構成されていてもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る食品保存機1と第1実施形態に係る食品保存機1との違いは、発光特性にある。第2実施形態に係る食品保存機1においては、クロスモダリティLED5の光源の色(発光色)を時刻に応じて変化させる。つまり、特定の時間帯においてクロスモダリティLED5による照射を高め、かつ、照射の高い状態で照射する色も変える。なお、ここでは、庫内灯6との発光バランスについては記載しないが、庫内灯6を第1実施形態と同様に、クロスモダリティLED5の照度に合わせて変更する構成とすることが望ましい。
図8は、第2実施形態に係る食品保存機1における発光特性の一例を示す図である。時間軸に対するクロスモダリティLED5による照度を、照射する色と共に示す。図8の例では、クロスモダリティLED5の発光色を、各々の時間帯の食事でよく食べられる食品に適した色に設定している。
朝食の時間帯は、朝食でよく食べられる(青野菜、牛乳)に適した色の光を、照度を高めて照射する。例えば、牛乳にはよりコクを感じることができるピンク色を、青野菜にはおいしさと甘さを強調させるオレンジ色を照射する。これにより、クロスモダリティ効果が発現し、脳でコクとおいしさ、甘さを認知し、味を感じることができる。昼食の時間帯は、昼食でよく食べられる(パスタ、うどん)に適した色の光を、照度を高めて照射する。夕食の時間帯は、夕食でよく食べられる(刺身、肉、スープ)に適した色の光を、照度を高めて照射する。
図5に、図8に示す発光特性でクロスモダリティLED5を動作させた場合の効果を調査した結果を、比較例2と共に示す。比較例2として、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第2実施形態と同様の構成を有する食品保存機を、図9に示す発光特性にて、庫内灯6のみを規定の色(庫内の照度と色相で規定)で発光させた。
具体的には、第2実施形態に係る食品保存機1において、「青野菜」にオレンジ色を照射し、「うどん」に黄色を、「魚」に淡いさくら様の色を照射した。一方、比較例2においては、「青野菜」に白色(R:100%、G:100%、B:100%)を照射し、「うどん」に通常色(R:70%、G:50%、B:25%)、「魚」に暖色(R:82%、G:70%、B:25%)を照射した。被験者は第2実施形態の検証のための食材と比較例の食材とを食べ、それぞれアンケート用紙に回答した。
図5に示すように、第2実施形態に係る食品保存機1においては、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。つまり、朝食、昼食、夕食で、食欲が向上した。これに対し、比較例2では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
このように、図8に示す発光特性とすることで、クロスモダリティ効果により、ユーザーが食事でよく食べる食品を魅力的に見せることができる。これにより、ユーザーは意識せずに日々の食事を楽しむことができる。
図10は、第2実施形態に係る食品保存機1における発光特性の別の例を示す図である。時間軸に対するクロスモダリティLED5による照度を、照射する色と共に示す。図10の例では、クロスモダリティLED5の発光色を、朝食と夕食で、要求される機能に合った食品に適した色とし、間食の時間帯では、食欲を抑制し得る色に設定している。
朝食の時間帯は、朝食をしっかり食べられるように、栄養価が高い食品(オレンジ、肉、魚)に適した色の光を照射する。夕食の時間帯は、夜は、控えめにするため、薄味の食材(こんにゃく、豆腐)に適した色の光を照射する。また、午前中と午後の間食の時間帯、および就寝前は、間食予防のために、高カロリーなもの(ショートケーキ、チョコレート)ほど、まずく感じる色、物理的に重く感じる色、あるいは硬そうに感じる色の光を照射する。
図5に、図10に示す発光特性でクロスモダリティLED5を動作させた場合の効果を調査した結果を、比較例3と共に示す。比較例3として、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第2実施形態と同様の構成とし、図11に示す発光特性で、庫内灯6のみを規定の色(庫内の照度と色相で規定)で発光させた。
具体的には、第2実施形態に係る食品保存機1において、オレンジに食欲促進目的の黄色を照射し、ショートケーキには食欲抑制目的の青色を、こんにゃくには食欲促進目的の白色を照射した。一方、比較例3においては、オレンジに白色(R:100%、G:100%、B:100%)を照射し、ショートケーキに通常色(R:70%、G:50%、B:25%)、こんにゃくに暖色(R:82%、G:70%、B:25%)を照射した。被験者は第2実施形態の検証のための食材と比較例の食材とを食べ、それぞれアンケート用紙に回答した。
図5に示すように、第2実施形態に係る食品保存機1においては、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例3では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
このように、図10に示す発光特性とすることで、クロスモダリティ効果により、ユーザーが食べるべき食品を魅力的に見せ、不必要な食品についてはおいしさ感等を低下させ、食欲を減少させることができる。これにより、ユーザーは意識せずに必要な栄養素が取れ、かつ、不必要なものには嫌悪感を抱くことができ、自然な減量効果が期待できる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る食品保存機1と第1実施形態に係る食品保存機1との違いは、発光特性にある。第3実施形態に係る食品保存機1においては、発光バランスを、食品が保管されてからの時間の経過に応じて変化させる。食品が保管されてからの時間が経過するにつれて、クロスモダリティLED5の照度(光の強度)を高くし、庫内灯6の照度(光の強度)を低くする。なお、庫内灯6とクロスモダリティLED5の関係は、照度だけでなく、色相、彩度、輝度等によっても連動して互いに変化することができる。
図12の(a)は、第3実施形態に係る食品保存機1における発光特性の一例を示す図である。時間軸に対するクロスモダリティLED5および庫内灯6の照度を示す。図12の(a)の例では、食品保存機1に食品が保管されてから日数(時間)が経過する伴い、クロスモダリティLED5の照度を高め、庫内灯6については照度を低める。例えば、ユーザーが買い物し、その食品を庫内に入れた日を、横軸左の0日目とする。クロスモダリティLED5は、食品の鮮度を上げる色を庫内に照射する。日数が経るごとに、クロスモダリティLED5は、葉物野菜に鮮度を高く見せることができる白色の照度を高める。これにより、クロスモダリティ効果が発現し、庫内灯6だけでは、しおれてまずそうに見えた野菜も、一定の鮮度を保ったまま保管できているように見え、食べても新鮮な葉物と認識することができる。
また、検出部11にて、庫内の食品の内容量を検出させ、内容量に基づいて食品が保管されてからの時間の経過を判断する構成としてもよい。つまり、検出部11にて、庫内の食品の内容量を検出し、一定数を下回ると、発光制御部10は、前回買い物から一定の時間が経ったとみなし、保管されている食品を新鮮に見せるべく、同様の動作をする。これによっても、同様のクロスモダリティ効果が得られる。
図12の(b)は、第3実施形態に係る食品保存機1における発光特性の一例を示す図である。食品保存機1が、保管している食品を加熱する構成である場合は、図12の(b)に示すように、加熱時間の増加に伴って、上記と同様に、クロスモダリティLED5の照度を高め、庫内灯6の照度を低める。この場合のクロスモダリティLED5の色は、保管されている食品に対して温かみに関わるクロスモダリティ効果を発現できる色とする。これにより、取り出した食品を食べた際に、十分な温かみを感じつつも、口腔内を火傷するようなことがない。換言すると、口腔内を火傷することなく、十分な温かみを感じることができる。
図5に、図12の(a)(b)に示す発光特性でクロスモダリティLED5を動作させた場合の効果を調査した結果を、比較例4と共に示す。比較例4として、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第3実施形態と同様の構成とし、図12の(a)(b)に示す発光特性で、庫内灯6の照度のみを、保存してからの時間経過あるいは加熱時間の増加に伴って高めた。
具体的には、第3実施形態に係る食品保存機1において、鮮度を調査する青野菜には黄色かかった白色を照射し、温度感を調査するミネストローネには、赤白色を照射した。一方、比較例4においては、青野菜およびミネストローネ共に、オレンジかかった白色を照射した。何れの実験にも、被験者は時系列官能評価装置を用い、9段階のアンケートを実施した。
図5に示すように、第3実施形態に係る食品保存機1においては、鮮度においても、温度感においても、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例4では、鮮度においても、温度感においても、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る食品保存機1と第1実施形態に係る食品保存機1との違いは、発光特性にある。第4実施形態に係る食品保存機1においては、クロスモダリティLED5および庫内灯6の発光パワーバランスを変更することができる。
図14は、第4実施形態に係る食品保存機1の発光パワーバランスを模式的に示す図である。(a)は、庫内灯6とクロスモダリティLED5の照度が同程度の場合、(b)は、庫内灯6の照度がクロスモダリティLED5の照度を上回る場合、(c)は、クロスモダリティLED5の照度が庫内灯6の照度を上回る場合を示す。
図14の(a)に示す、庫内灯6とクロスモダリティLED5の照度が同程度の場合、視認性も十分に保ちながら、クロスモダリティ効果も得られるバランス型となる。一見視認性の方が強いが、ユーザーが気にならない程度のクロスモダリティ効果が得られ、刷り込み効果、普段使い等が可能となる。この場合、清潔感に関するクロスモダリティ効果が適している。
図14の(b)に示す、庫内灯6の照度の方が高い場合、視認性に関する部分が大きく影響するため、クロスモダリティの効果は低めとなる。しかしながら、ほんのりとした緩やかな効果を得たい場合に効果的である。例えば、温度に関するものである。若干の温かさであれば、好まれるものでも、極端な熱さと認識してしまうと、食品を避けることに繋がるからである。
図14の(c)に示す、クロスモダリティLED5の照度の方が高い場合は、クロスモダリティ効果に関する色情報の方が多く目に入る。このため、クロスモダリティ効果が強烈に発揮される。この発光パワーバランスの場合、強い効果が必要な味覚に関する影響、または、短時間でも強い効果が期待できるため、扉3を開けたり、保存室8を引き出したりするような短時間の動作時の軽さに関わる認知に影響を与えることができる。
図5に、図14の(c)に示す発光パワーバランスでクロスモダリティLED5と庫内灯6とを動作させた場合の効果を調査した結果を示す。図5に示すように、第4実施形態に係る食品保存機1においては、扉3を開けたり、保存室8を引き出したりする操作が軽く感じられ、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。
図15に、第4実施形態に係る食品保存機1における、クロスモダリティLED5の切り替えパターンとクロスモダリティ効果との関係を示す。クロスモダリティLED5が消灯している時は、庫内灯6の点灯、消灯に関わらずクロスモダリティの効果はない。クロスモダリティLED5が点灯しているときは、庫内灯6点灯でクロスモダリティ効果は弱くなり、庫内灯6の消灯時はクロスモダリティ効果が強くなる。
なお、庫内灯6とクロスモダリティLED5のパワーバランス、およびこれらの切り換えパターンは、照度だけでなく、色相、彩度、輝度等によっても連動して互いに変化することができる。
[第5実施形態]
図16は、第5実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図16に示すように、第5実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、扉3を開ける際に用いる取っ手30を照射するように設置されている。これにより、クロスモダリティLED5の光源により適切な色で取っ手30が照らされ、ユーザーは、適切な色で照らされている取っ手30を用いて扉3を開閉する。
この一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。取っ手30のもともとの色に、クロスモダリティLED5の光源の色を加えることで、脳での情報処理の際、クロスモダリティ効果により、視覚情報とその他の感覚情報が統合され、実際とは異なる感覚を認知することができる。例えば、取っ手30のもともとの色のままでは、明度が低いため重そうに思える場合でも、クロスモダリティLED5より白色の光を照射することで、明度が高く軽く見え、必要以上の筋力を使わずに扉3を開けようとする。これにより、実際に扉3を軽く感じることができる。
第5実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を図17に示す。図17には、後述する第6実施形態〜第14実施形態に係る食品保存機1の効果および比較例5〜8の結果も併せて示す。なお、調査実験の条件や内容は、図5と同じである。
図17に示すように、第5実施形態に係る食品保存機1においては、扉3が軽く感じられ、作業の負担も軽減され、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。
なお、図16では、クロスモダリティLED5を扉3の取っ手30に設置しているが、図18に示すように、扉3の側面、あるいは、図19に示すように、扉3の内側に設置しても同様の効果が得られる。
[第6実施形態]
図20は、第6実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図20に示すように、第6実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、引き出し式の保存室8の開ける際に用いる取っ手31を照射するように設置されている。これにより、クロスモダリティLED5の光源により適切な色で取っ手31が照らされ、ユーザーは、適切な色で照らされている取っ手31を用いて保存室8を開閉する。
この一連の動作の中で、第5実施形態で扉3を開けるときと同様のクロスモダリティ効果が発現する。つまり、例えば、クロスモダリティLED5より白色の光を照射することで、取っ手31のもともとの色のままでは明度が低いため重そうに思える場合でも、明度が高く軽く見え、必要以上の筋力を使わずに引き出しを開けようとする結果、実際に保存室8の引き出し操作を軽く感じることができる。図17に、第6実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を示す。
なお、図20では、クロスモダリティLED5を保存室8の取っ手31に設置しているが、図21に示すように、保存室8の側面に設置しても同様の効果が得られる。
[第7実施形態]
図22は、第7実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図22に示すように、第7実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、引き出し式の保存室8のへり8aに設置されている。これにより、ユーザーは、保存室8を開閉して、内部に食品を入れたり内部から出したりする時、ヘリ8aに設置されたクロスモダリティLED5の影響を受ける。
保存室8を引き出し、その中から食品を取り出す一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。引き出し式の保存室8のヘリ8aにクロスモダリティLED5を設置すると、保存室8内の食品の手前にクロスモダリティLED5の光源の色が来るため、光源の色が食品の色をカバーする。クロスモダリティLED5の光源の色として、白色などのユーザーが軽いと思える光源色を使用することにより、脳での情報処理の際、クロスモダリティ効果により、視覚情報とその他の感覚情報が統合され、実際とは異なる感覚を認知することができる。
例えば、クロスモダリティLED5が設置されていない構成では、明度が低く、保存室8内に食品が多く入っていると重そうに思えるが、クロスモダリティLED5より白色の光を照射することで明度が高くなり、食品が多く入っていても保存室8の内部が軽そうに見える。これにより、必要以上の筋力を使わずに引き出し式保存室8を開けようとし、結果的に、実際に保存室8の開閉動作を軽く感じることができる。図17に、第7実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を示す。
[第8実施形態]
図23は、第8実施形態に係る食品保存機1の上面構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図23に示すように、第8実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、引き出し式の保存室8の内部底面に設置されている。クロスモダリティLED5は、保存室8の底面から、内部の食品や、ユーザーに対して光を照射する。ユーザーは、保存室8に食品を並べ、適宜、必要な食品を選択し取り出す際に、底面に設置されたクロスモダリティLED5の影響を受ける。
保存室8を引き出し、その中から食品を取り出す一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。保存室8の底にクロスモダリティLED5を設置すると、保存室8の内側全体がほんのりと照らされる。ほんのりと柔らかい光で空間を照らすことで、光源をぼかすことができ、食品全体に柔らかみのある光の効果を付加することができる。例えば、視覚的に柔らかな印象を与えることで、マイルドさ、おいしさ、温かみといった味に関するクロスモダリティ効果が期待できる。図17に、第8実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を示す。
[第9実施形態]
図24は、第9実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図24に示すように、第9実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、引き出し式の保存室8の上部に取り付けられ、併せて庫内灯6も上部に設置されている。クロスモダリティLED5および庫内灯6は、保存室8の上部から、内部の食品や、ユーザーに対して光を照射する。ユーザーは、保存室8に食品を並べ、適宜、必要な食品を選択し取り出す際に、クロスモダリティLED5の影響を受ける。
保存室8を引き出し、その中に食品を並べたり、選択して取り出したりする一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。保存室8の上部にクロスモダリティLED5を設置すると、保存室8内の食品の手前にクロスモダリティLED5の光源の色が来るため、光源の色が食品の色をカバーする。これにより、ユーザーが嫌いもしくは苦手と感じている食品であっても、おいしい、飲みたいと思える光源色を使用することにより、食材の色をカムフラージュすることができる。そして、嗜好性に関わるクロスモダリティ効果が期待でき、食卓をより豊かにすることができる。また、光源色によっては、鮮度、引き出しの軽さ感、引き出し動作時の負担感を改善することも可能である。
なお、ここで、ユーザーにクロスモダリティ効果が与えられる構成であれば、庫内灯6とクロスモダリティLED5とが1ユニットにて構成されていてもよい(図7参照)。
図17に、第9実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を、比較例5の結果と共に示す。比較例5としては、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第15実施形態と同様の構成とし、保存室8の上部に設置した庫内灯6のみを規定の色(庫内の照度と色相で規定)で発光させた。
具体的には、第9実施形態に係る食品保存機1において、青野菜に対し、白色の庫内灯6と、クロスモダリティLED55からはオレンジ色の光を照射し、比較例5では、庫内灯より白色の光を照射した。
図17に示すように、第9実施形態の構成では、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例5では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
[第10実施形態]
図25は、第10実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図25に示すように、第10実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、保存室4のへり4aに取り付けられている。クロスモダリティLED5は、保存室8のへり4aから、内部の食品を取り出すユーザーに対して光を照射する。ユーザーは、保存室8に食品を並べ、適宜、必要な食品を選択し取り出す際に、クロスモダリティLED5の影響を受ける。
保存室4に対して、食品を並べたり、選択して取り出したりする一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。保存室4のへり4aにクロスモダリティLED5を設置すると、保存室4内の食品の手前にクロスモダリティLED5の光源の色が来るため、光源の色が食品の色をカバーする。これにより、ユーザーが嫌いもしくは苦手と感じている食品であっても、おいしい、飲みたいと思える光源色を使用することにより、食材の色をカムフラージュすることができる。そして、嗜好性に関わるクロスモダリティ効果が期待でき、食卓をより豊かにすることができる。クロスモダリティLED5は、ユーザーがいる空間だけでなく、保存室4の庫内の食品に向けられ、食材の色をカムフラージュできる状態であればよい。
図17に、第10実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を、比較例6の結果と共に示す。比較例6としては、クロスモダリティLED5に変えて保存室4のへり4aに庫内灯6を設置した以外は第10実施形態と同様の構成とした。
具体的には、第10実施形態に係る食品保存機1において、青野菜に対し、白色の庫内灯6と、クロスモダリティLED55からはオレンジ色の光を照射し、比較例6では、庫内灯より白色の光を照射した。
図17に示すように、第10実施形態の構成では、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例6では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
[第11実施形態]
図26は、第11実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図26に示すように、第11実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、保存室4の内部底面に取り付けられている。クロスモダリティLED5は、保存室8の内部底面から、内部の食品や、ユーザーに対して光を照射する。ユーザーは、保存室8に食品を並べ、適宜、必要な食品を選択し取り出す際に、クロスモダリティLED5の影響を受ける。
保存室4に対して、食品を並べたり、選択して取り出したりする一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。保存室4の底面にクロスモダリティLED5を設置すると、保存室4の内側全体がほんのりと照らされる。ほんのりと柔らかい光で空間を照らすことで、光源をぼかすことができ、食品全体に柔らかみのある光の効果を付加することができる。例えば、視覚的に柔らかな印象を与えることで、マイルドさ、おいしさ、温かみといった味に関するクロスモダリティ効果が期待できる。図17に、第11実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を示す。
図27は、第11実施形態に係る食品保存機1の変形例を示すものである。図27に示すように、保存室4内に仕切り板34が設置されている場合は、仕切り板34の底面にクロスモダリティLED5を設置することで、同様の効果が得られる。
[第12実施形態]
図28は、第12実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図28に示すように、第12実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、保存室4の側壁に設置され、保存室4の奥壁に庫内灯6が設置されている。保存室4の側壁に設置されたクロスモダリティLED5は、保存室4の側面から適切な色で食品を照らすことができる。また、保存室4内部が、奥壁に設置された庫内灯6にて照射される。ユーザーは、保存室4に食品を並べ、適宜、必要な食品を選択し取り出す際に、クロスモダリティLED5の影響を受ける。
図29は、第12実施形態に関わる食品保存機1における発光特性を示す図である。横軸が扉3の開放経過時間、縦軸が照度を表す。なお、この縦軸は照度のみならず、色相、彩度、明度などでもよい。
扉3の開放直後は、クロスモダリティLED5が点灯し、クロスモダリティ効果が主に得られる。扉3の開放時間が経過するにつれて、クロスモダリティLED5の照度が低下し、一方、庫内灯6の照度が上昇する。そして、扉3の開放経過時間が10秒を超えるとクロスモダリティLED5は消灯し、庫内灯6のみ点灯し、視認性を高める。
この一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。例えば、食品に対し、鮮度を与えるクロスモダリティ効果を発現させる場合、扉3の開放直後から4秒まで、強いクロスモダリティ効果を得ることができ、その後は、クロスモダリティLED5の照度が低下するにつれてクロスモダリティ効果は低下する。扉3の開放後10秒ほどで庫内灯6の照度が最大になり、クロスモダリティ効果は発現しなくなる。この発光バランスの制御により、視認性を確保しつつも、食品に対する鮮度感のクロスモダリティ効果を得られ、食品を保存室4から選択する1つの基準となる。
図17に、第12実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を、比較例7の結果と共に示す。比較例7としては、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第2実施形態と同様の構成を有する食品保存機を、図30に示す発光特性にて、庫内灯6のみを規定の色(庫内の照度と色相で規定)で発光させた。
図17に示すように、第12実施形態に係る食品保存機1においては、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例7では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
なお、ここで、ユーザーにクロスモダリティ効果が与えられる構成であれば、庫内灯6とクロスモダリティLED5とが1ユニットにて構成されていてもよい(図7参照)。
また、クロスモダリティLED5と庫内灯6の設置場所は、保存室4の側面と奥壁のみならず、図31に示すように、クロスモダリティLED5を保存室4の側面に設置し、庫内灯6を保存室4の底面に設置してもよい。あるいは、図32に示すように、保存室4の側壁に庫内灯6を設置し、保存室4の内部上面(天面)にクロスモダリティLED5を設置してもよい。要は、保存室4中に庫内灯6、クロスモダリティLED5の役割をする発光部がそれぞれ1つ以上あればよい。発光バランスも扉3の開放直後に庫内灯照度による視認性を高め、のちにクロスモダリティLED照度を優位にする動作も有効である。
[第13実施形態]
図33は、第13実施形態に係る食品保存機1の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図33に示すように、第13実施形態に係る食品保存機1において、クロスモダリティLED5は、食品保存機1の上面に設置され、食品保存機1の上面より、ユーザーやユーザーの居る空間を照らす。ユーザーは、食品保存機1に近づいた際、クロスモダリティLED5の光源により適切な色で照らされる。
この一連の動作で、クロスモダリティ効果は発現する。食品保存機1の上面にクロスモダリティLED5を設置すると、比較的表面積が広い上部全体が光ることで、無意識のうちにクロスモダリティLED5からの視覚情報を取り込むことができ、クロスモダリティ効果により、消化管などの臓器機能が調節され、満腹感、もしくは食欲減退感が得られ、食欲をコントロールすることが可能である。図17に、第13実施形態に係る食品保存機1の効果を調査した結果を示す。
また、クロスモダリティLED5は食品保存機1の上面に限らず、図34に示すように、面積の広い食品保存機1の側面に設置した場合でも、同様の効果が得られる。
[変形例]
第1実施形態〜第13実施形態においては、食品保存を目的とした食品保存機1について説明したが、食品を加熱もしくは冷却する食品調理機器等においても適応できる。つまり、保存室4,8に代えて、加熱処理室、食品冷却室がこれに相当する。
[第14実施形態]
図35は、第14施形態に係る食品加熱機50の全体構成と、クロスモダリティLED5の発光域を示す概略図である。図35に示すように、第14実施形態に係る食品加熱機50は、食材(食品)を加熱する本体部51を有し、本体部51の正面には、本体部51を塞ぐ扉52が設けられている。本体部51の内部には、扉52が開かれることで開放される加熱室(食品保持部)53が設けられている。本体部51の正面には、ユーザーが食品加熱機50を操作するための操作部57が設けられている。なお、操作部57は、スイッチ式でもタッチパネル式でもよい。
操作部57には、庫内灯6と同等の白色の光を照射する白色灯56と、クロスモダリティLED(クロスモダリティ光源)5とが、操作部57に光を照射できるように設置されている。クロスモダリティLED5は、ユーザーやユーザーの居る空間を照らす。ユーザーは、食品保存機1に近づいた際、クロスモダリティLED5の光源により適切な色で照らされる。
この一連の動作の中で、クロスモダリティ効果が発現する。ユーザーが操作に際して直接触れる操作部57にクロスモダリティLED5を設置すると、食品加熱機50の表面温度を感じることができる。
この時、クロスモダリティLED5の光源の色が暖色の場合、クロスモダリティLED5の光源の影響により操作部57に触れると温かいと感じるクロスモダリティ効果を付加できる。そして、この食品加熱機50に保持されている食品を摂食することによる味覚情報と、先ほどのクロスモダリティLED5の光源、表面温度による視覚と触覚情報とが脳で統合され、そのクロスモダリティ効果により、食品も温かいと認知することができる。
一方、食品を冷却する食品冷却機の場合は、クロスモダリティLEDの光源の色が寒色の場合、クロスモダリティLED5の光源の影響により操作部57に触れると冷たいと感じるクロスモダリティ効果を付加できる。そして、食品冷却機に保持されている食品を摂食することによる味覚情報と、先ほどのクロスモダリティLED5の光源、表面温度による視覚と触覚情報とが脳で統合され、そのクロスモダリティ効果により、食品も冷たいと認知することができる。食品冷却機は、加熱室(食品保持部)53に代えて食品冷却室を有する構成であり、その他は、食品加熱機50と同様の構成を有する。
図14に、第14実施形態に係る食品加熱機50、食品冷却機の効果を調査した結果を、比較例8の結果と共に示す。比較例8としては、クロスモダリティLED5が設置されていない以外は第14実施形態と同様の構成を有する食品加熱機50、食品冷却機を用い、白色灯56のみを白色で発光させた。
具体的には、第14実施形態に係る食品加熱機50の操作部57を、白色灯56と暖色のクロスモダリティLED5で発光させた。比較例8においては、操作部57を白色灯56のみで発光させた。一方、第14実施形態に係る食品冷却機においては、操作部57を、白色灯56と寒色のクロスモダリティLED5で発光させた。比較例8においては、操作部57を白色灯56のみで発光させた。被験者は実施形態と比較例を触り比べ、それぞれアンケート用紙に回答した。
図17に示すように、第14実施形態に係る食品加熱機50、食品冷却機においては、クロスモダリティ効果、食品特化性クロスモダリティ効果が得られることを確認した。これに対し、比較例8では、クロスモダリティ効果も、食品特化性クロスモダリティ効果も得られなかった。
[第15実施形態]
本実施形態においては、第1実施形態〜第14実施形態にて説明した食品保持部を備えた装置における発光部5の光源の色について説明する。前述したように、発光部5の色は、食品や食材であれば、クロスモダリティ効果が発現させて、おいしいと感じさせる色、食欲を抑えるまずいと感じるような色が選択される。なお、おいしいと感じさせる色や、まずいと感じる色は、食品や食材の全体的な色に応じて決まるので、食品や食材に対して、スポットライト的に照射されることが有効である。また、空間に向かって照射される場合は、クロスモダリティ効果が発現させて、食欲抑制などの得たい効果に応じて色が選択される。また、扉3の開閉操作の負担を軽減する色としては、照射色の明度が90以上(上限100)の場合は白色の光が有効であることを確認している。
図36に、発光部5の光を照射する対象物の食品(食材)として、表色の異なる5種の飲料を選び、各々の対象物の表色の色相角度(h)とこれに照射する照射色の色相角度との差(色相差)と、その際の飲み物(食品)への味覚的印象についての関係を調べた結果を示す。飲料としては、
・赤色系の代表としてトマトジュース
・橙色または黄色系の代表としてコーンスープ
・緑色系の代表としてグリーンジュース
・青色系の代表としてぶどうジュース
・茶色系の代表としてコーヒー
の5種について調べた。
ここでの調査実験は、被験者12名に主観評価を行ったものである。色相以外の明度、彩度に関しては対象物の表色と照射色では同条件としている。
また、上記5種の飲料については、同じ種類であっても、原材料の違い等で異なる表色に違いを網羅するべく、同色系でありながら表色の異なるいくつかのものについて実施している。上記5種類の飲料の表色の分布範囲は、概ね、L*C*h表色系において、
・トマトジュースの表色の分布範囲:明度(L*)30以上60以下,彩度(C*)40以上60以下、色相角度(h)−20度以上30度未満
・コーンスープの表色の分布範囲:明度30以上60以下,彩度40以上60以下,色相角度30度以上110度未満
・グリーンジュースの表色の分布範囲:明度30以上60以下,彩度40以上60以下,色相角度110度以上200度未満
・ぶどうジュースの表色の分布範囲:明度30以上60以下,彩度40以上60以下,色相角度200度以上340度未満
・コーヒーの表色の分布範囲:明度30以上60以下,彩度10以上40以下,色相角度30度以上110度未満
とした。
図36に示すように、前記5種の飲料についてのいずれの場合についても、色相角度の差が10度を超えたころから味覚の印象に差が表れる。例えば、トマトジュースの場合は、10度を超えたころからやや甘みを感じる。コーンスープの場合は、10度を超えたころからやや深みを感じ、16度を超えると深みを感じる。グリーンジュースの場合は、10度を超えたころから、ややさっぱりさを感じ、16度を超えるとやわらかさを感じる。ぶどうジュースの場合は、10度を超えたころからやや甘みを感じる。コーヒーの場合は、10度を超えたころからやや酸味を感じる。
これらのことから、概ねどの色相の食品(食材)であっても、色相角度の差が10度を超えるとその対象物とは異なる味覚の印象を与えることがわかる。つまり、対象物の表色における色相と照射色の色相との差である色相差が、少なくとも10度以上異なるように、発光部5における照射色を決定することで、味覚的効果を付与することができる。
<赤色系の表色に対する照射色>
図37に、前述の調査実験にて、トマトジュースに対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。図37において、味覚的印象として「×」を示したものは好意的な味覚を示さなかったものであり、「○」を示したものは何らかの好意的な味覚を示したものである。「○」については、どのような味覚的印象かについて、その概要についても図中に記載している。
図37に示すように、照射色の明度が90以上(上限100)の場合は、照射色の色相によらず味覚的印象として新鮮感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、新鮮感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上110度未満の範囲内であれば、トマトジュースらしさを味覚的に強調して感じる。また、それ以外については、概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。色相角度が110度以上200度未満の範囲内では腐敗感増し、色相角度が200度以上340度未満の範囲内ではまずさ感が増す。
以上のように、赤色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が30以上60以下、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射することで、新鮮感のより一層の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、色相角度が110度以上200度未満の範囲の光や、色相角度が200度以上340度未満の範囲内の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
<橙色〜黄色系の表色に対する照射色>
図38に、前述の調査実験にて、コーンスープに対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。なお、この図における味覚的印象等の結果の記載の仕方は、図37と同じである。
図38に示すように、照射色の明度が90以上の場合は、照射色の色相によらず味覚的印象としてコク感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、コク感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満または110度以上200度未満の範囲内であれば、濃さや深みなどを強調して感じる。彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内であれば、コーンスープらしさを味覚的に強調して感じる。また、それ以外については概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。色相角度が200度以上340度未満の範囲内ではまずさ感が増す。
以上のように、橙色〜黄色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が30以上60以下、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射することで、コク感のより一層の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができることがわかる。また、照射色の明度が50以上90以下、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満または110度以上200度未満の範囲内となる光を照射することで、濃さ感や深み感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、200度以上340度未満の範囲内の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
<緑色系の表色に対する照射色>
図39に、前述の調査実験にて、グリーンジュースに対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。この図における味覚的印象等の結果の記載の仕方は、図37と同じである。
図39に示すように、照射色の明度が90以上の場合においては、照射色の色相によらず味覚的印象としてさっぱり感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、さっぱり感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内であれば、やわらか感を強調して感じる。また、それ以外については概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。色相角度が−20度以上30度未満の範囲内ではまずさ感が増し、色相角度が110度以上200度未満の範囲内では硬さ感が増す。さらに、色相角度が200度以上340度未満の範囲内では重さ感が増す。
以上のように、緑色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が30以上60以下、彩度が40以上60以下、色相角度が110度以上200度未満の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射することで、さっぱり感のより一層の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90度未満、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内となる光を照射することで、やわらか感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内の光や、色相角度が110度以上200度未満の範囲内の光、色相角度が200度以上340度未満の範囲内の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
<青色系の表色に対する照射色>
図40に、前述の調査実験にて、ぶどうジュースに対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。この図における味覚的印象等の結果の記載の仕方は、図37と同じである。
図40に示すように、照射色の明度が90以上の場合は、照射色の色相によらず味覚的印象として軽さ感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、軽さ感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内であれば、甘さ感を強調して感じる。また、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内であれば、やわらか感を強調して感じる。また、それ以外については概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。色相角度が110度以上200度未満の範囲内ではまずさ感が増し、色相角度が200度以上340度未満の範囲内では重さ感が増す。
以上のように、青色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が30以上60以下、彩度が40以上60以下、色相角度が200度以上340度未満の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射することで、軽さ感のより一層の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内となる光を照射することで、甘さ感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90度未満、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内となる光を照射することで、やわらか感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、色相角度が110度以上200度未満の範囲内の光や、色相角度が200度以上340度未満の範囲内の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
<茶色系の表色に対する照射色>
図41に、前述の調査実験にて、コーヒーに対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。この図における味覚的印象等の結果の記載の仕方は、図37と同じである。
図41に示すように、照射色の明度が90以上の場合は、照射色の色相によらず味覚的印象として旨み感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、旨み感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内であれば、酸味感を強調して感じる。
また、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内であれば、甘さ感を強調して感じる。また、彩度が40以上60以下、色相角度が200度以上340度未満の範囲内であれば、深み感を強調して感じる。また、それ以外については概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。色相角度が110度以上200度未満の範囲内では未熟成感が増す。
以上のように、茶色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が30以上60以下、彩度が10以上40以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射することで、旨み感のより一層の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上30度未満の範囲内となる光を照射することで、酸味感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が30度以上110度未満の範囲内となる光を照射することで、甘さ感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が200度以上340度未満の範囲内となる光を照射することで、深み感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、色相角度が110度以上200度未満の範囲内の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
<白色系の表色に対する照射色>
前述の調査実験と同様の調査実験を、白色系の代表としての牛乳について実施した。前述の調査実験同様、牛乳についても表色の異なるいくつかのものについて実施しており、それらは概ね明度が90以上の範囲内に分布している。図42に、牛乳に対する照射色の明度、彩度および色相角度と味覚的印象との関係をさらに調査した結果を示す。この図における味覚的印象等の結果の記載の仕方は、図37と同じである。
図42に示すように、照射色の明度が90以上の場合においては、照射色の色相によらず味覚的印象としてコク感が向上する。さらに、この場合、色相角度が10度以上とすることで、コク感がより一層向上し好ましい。照射色の明度が50以上90未満の場合は色相により味覚が異なり、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上110度未満の範囲内であればコク感を強調して感じる。また、彩度が40以上60以下、色相角度が110度以上340度未満の範囲内であれば爽やかさ感を強調して感じる。また、それ以外については概ね違和感があるなど好意的な味覚を示さない。彩度が0度以上10度未満の範囲内ではまずさ感が向上する。彩度が10度以上30度未満の場合、色相角度30度以上110度未満で重さ感が向上し、色相角度110度以上200度未満で腐敗感が向上し、色相角度200度以上340度未満で硬さ感が向上する。
以上のように、白色系の表色をもつ飲料、すなわち明度が90以上の範囲内の表色である食品や食材に対しては、照射色の明度が90以上となる白に近い色の光であって、かつ、色相角度が10度以上異なる光を照射する、あるいは、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が−20度以上110度未満の範囲内となる光を照射することで、コク感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、照射色の明度が50以上90未満、彩度が40以上60以下、色相角度が110度以上340度未満の範囲内となる光を照射することで、爽やか感の向上といった当該食品や食材らしさ以外のさらなる好意的な味覚の付加を行うことができる。また、彩度が0度以上10度未満の範囲内の光や、彩度が10度以上30度未満で、色相角度30度以上110度未満の範囲あるいは色相角度110度以上200度未満の範囲の光を照射することで、食欲を抑制させることができる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る食品保持部を備えた装置(食品保存機1、食品加熱機50)は、食品を保持する食品保持部(保存室4,保存室8,加熱室53)を備えた装置であって、本来の感覚とは異なる感覚をユーザーに与えるように、発光色を変化させることができるクロスモダリティ光源(クロスモダリティLED5)を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、本来の感覚とは異なる感覚をユーザーに与えるように、発光色を変化させることができるクロスモダリティ光源を備えることで、当該装置を使用するユーザーに対して、クロスモダリティ効果を発現させて、ユーザーが得る感覚を変えることができる。例えば、保持されている食品に関するクロスモダリティ効果を利用することにより、食欲を制御することができきる。また、例えば、当該装置に関するクロスモダリティ効果を利用することにより、家事負担を軽減することができる。
本発明の態様2に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記クロスモダリティ光源は、前記食品保持部の内部に光を照射し、前記食品保持部の内部を照明する内部灯(庫内灯6)を備え、時刻に応じて前記クロスモダリティ光源が照射する光の強度と、前記内部灯が照射する光の強度とのバランスを変化させる構成である。
上記構成によれば、内部灯とクロスモダリティ光源の光の強度のバランスを変化させて、それらの照度のバランスを変えることで、視認性を確保しつつ、クロスモダリティ効果を得ることができる。
本発明の態様3に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記クロスモダリティ光源は、時刻に応じて発光色または照射する光の強度を変化させる構成である。
上記構成によれば、時刻に応じて、クロスモダリティ効果によってユーザーが得る感覚あるいはクロスモダリティ効果の強さを変えることができる。これにより、例えば、クロスモダリティ効果にて食欲を制御する場合、食事の時間帯や、空腹を感じる時間帯に合わせてクロスモダリティ効果を発現させることで、より効果的に食欲を制御することができる。
本発明の態様4に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記クロスモダリティ光源は、予め設定された食事または食事準備の時間帯と、他の時間帯とで発光色または照射する光の強度を異ならせる構成である。
上記構成によれば、食事や食事準備の時間帯と、他の時間帯とで、クロスモダリティ効果にて得られる感覚を変えることができるので、食欲を制御する場合に、より効果的に食欲を制御することができる。
本発明の態様5に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記クロスモダリティ光源は、前記他の時間帯において、食欲を抑制する色で発光する構成である。
上記構成によれば、食事や食事準備の時間帯以外で、食欲を抑制する色で発光するので、間食を減らすことができ、減量効果が期待できる。
本発明の態様6に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記クロスモダリティ光源は、前記食品保持部の内部に光を照射し、前記食品保持部の内部を照明する内部灯を備え、前記食品保持部が開けられてから経過した時間に応じて前記クロスモダリティ光源が照射する光の強度と、前記内部灯が照射する光の強度とのバランスを変化させる構成である。
上記構成によれば、食品保持部が開けられてから経過した時間に応じて、ユーザーに発現させるクロスモダリティ効果の強弱を変えることができる。これにより、視認性を確保しつつも、例えば、食品に対する鮮度感のクロスモダリティ効果を効果的に与え得るなどの効果を奏する。
本発明の態様7に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、前記食品保持部を開閉時に用いる取っ手を備え、前記クロスモダリティ光源は、前記取っ手を照明する構成である。
上記構成によれば、クロスモダリティ効果により、例えば、扉や引き出しの開閉を軽く感じることばできるといった効果を奏する。
本発明の態様8に係る食品保持部を備えた装置は、さらに、ユーザーが操作する操作部を備え、前記クロスモダリティ光源は、前記操作部に配置されている構成である。
上記構成によれば、直接、触れる操作部にクロスモダリティ光源を配置することで、当該装置の表面温度を感じさせることができる。例えば、クロスモダリティ光源を暖色とすることで、食品を温かいと感じるクロスモダリティ効果を発現させることがでる。一方、クロスモダリティ光源を寒色とすることで、食品を冷たいと感じるクロスモダリティ効果を発現させることがでる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。