図1に示す通り、赤外線カットフィルタ1aは、近赤外線反射膜20と、吸収膜30とを備えている。吸収膜30は、近赤外線反射膜20と平行に延びている。近赤外線反射膜20及び吸収膜30は、近赤外線反射膜20及び波長400〜1100nmにおいて90%以上の平均分光透過率を有する透明誘電体基板のみによって形成された第一積層体と、吸収膜30及び波長400〜1100nmにおいて90%以上の平均分光透過率を有する透明誘電体基板のみによって形成された第二積層体とに、下記(A)〜(E)の特性を付与する。
(A)第一積層体に垂直に入射する光の分光透過率は、波長600〜800nmの範囲における当該分光透過率が70%であるときの波長λH R(0°,70%)が700nm以上であり、かつ、波長600〜800nmの範囲における当該分光透過率が20%であるときの波長λH R(0°,20%)が770nm以下であるとともに波長λH R(0°,70%)よりも大きいように、波長λH R(0°,70%)〜波長λH R(0°,20%)の範囲
で単調に減少する。
(B)第一積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率は、波長600〜800nmの範囲における当該分光透過率が70%であるときの波長λH R(40°,70%)が650nm以上であり、かつ、波長600〜800nmの範囲における当該分光透過率が20%であるときの波長λH R(40°,20%)が720nm以下であるとともに波長λH R(40°,70%)よりも大きいように、波長λH R(40°,70%)〜波長λH R(40°,20%)の範囲で単調に減少する。
(C)第二積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率は、波長600〜800nmの範囲において、波長λH R(40°,20%)より小さい波長λH A(40°,20%)で、20%である。
(D)第二積層体に垂直に入射する光の分光透過率は波長λH R(0°,20%)において15%以下であり、
(E)第一積層体に垂直に入射する光の分光透過率及び第一積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率の450〜600nmの波長範囲における平均値は、75%以上であり、かつ、第二積層体に垂直に入射する光の分光透過率及び第二積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率の450〜600nmの波長範囲における平均値は、75%以上である。
第一積層体は、上記(A)及び(B)の特性を有するので、第一積層体に0°〜40°の入射角で入射する光に対する分光透過率は、波長650nm〜770nmの範囲において急峻に低下する。第一積層体に垂直に入射する光の分光透過率及び第一積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率は、例えば、波長770〜1100nmの範囲において、平均値で1%以下である。これにより、赤外線カットフィルタ1aは、近赤外線を効果的に反射できる。波長λH R(0°,70%)から波長λH R(40°,70%)を差し引いた差ΔλH R(70%)(=λH R(0°,70%)−λH R(40°,70%))は、例えば、40〜60nmである。また、波長λH R(0°,20%)から波長λH R(40°,20%)を差し引いた差ΔλH R(20%)(=λH R(0°,20%)−λH R(40°,20%))は、例えば、40〜55nmである。このように、第一積層体に入射する光の入射角が0°から40°に変化すると、第一積層体に入射する光の透過率スペクトルが短波長側にシフトする。
第二積層体が上記(C)及び(D)の特性を有することにより、赤外線カットフィルタ1aに0°〜40°の角度で光の入射角が変化しても、特定の範囲の波長600〜700nmにおける透過率スペクトルの変化が小さくなる。例えば、さらに、第二積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率は波長λH R(40°,20%)において15%以下である。例えば、赤外線カットフィルタ1aに垂直に入射する光の分光透過率が波長600〜700nmの範囲で50%である波長と赤外線カットフィルタに40°の入射角で入射する光の分光透過率が波長600〜700nmの範囲で50%である波長との差の絶対値|ΔλH(50%)|が10nm以下である。なお、第二積層体に入射する光の分光透過率は、第二積層体に入射する光の入射角が0°〜40°の範囲ではほとんど変化しない。換言すると、第二積層体に垂直に入射する光の分光透過率と第二積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率とは実質的に同一である。
第一積層体及び第二積層体が上記(E)の特性を有することにより、赤外線カットフィルタ1aは、波長450〜600nmの範囲で高い分光透過率を有する。第一積層体に垂直に入射する光の分光透過率及び第一積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率の450〜600nmの波長範囲における平均値は、望ましくは85%以上であり、より望ましくは90%以上である。第二積層体に垂直に入射する光の分光透過率及び第二積層体に40°の入射角で入射する光の分光透過率の450〜600nmの波長範囲における平均値は、望ましくは85%以上であり、より望ましくは90%以上である。
図1に示す通り、赤外線カットフィルタ1aは、例えば、透明誘電体基板10をさらに備えている。この場合、近赤外線反射膜20及び吸収膜30は、透明誘電体基板10の主面に平行に延びている。透明誘電体基板10は、場合によっては省略可能である。
図1に示す通り、赤外線カットフィルタ1aにおいて、近赤外線反射膜20は透明誘電体基板10の一方の主面に接触している。透明誘電体基板10の材料は、例えば、高温高湿等の環境に対する耐性及び優れた耐薬品性を有することが望ましい。特に、近赤外線反射膜20が形成される工程において透明誘電体基板10が高温環境に置かれる場合には、透明誘電体基板10はそのような高温環境に十分な耐性を有する必要がある。透明誘電体基板10の材料は、例えば、ホウケイ酸ガラスなどのガラス、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アラミド系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール(PVA)、又はポリビニルブチラールである。透明誘電体基板10の厚みは、例えば50〜400μmである。
近赤外線反射膜20は、可視光域の光に対して高い透過率を示し、かつ、赤外線域の光に対して低い透過率を示す透過率スペクトルを有する。換言すると、近赤外線反射膜20の透過率スペクトルは可視光域に透過帯域を有するとともに赤外線域に赤外線反射帯域を有し、透過帯域と赤外線反射帯域との間に遷移帯域が存在する。
近赤外線反射膜20は、例えば、波長400nm以下の光に対する低い透過率を有していてもよい。例えば、第一積層体に垂直に入射する光の波長350〜380nmの範囲における分光透過率の平均値は20%以下である。この場合、近赤外線反射膜20の透過率スペクトルの可視光域、赤外線域、及び紫外線域には、それぞれ、透過帯域、赤外線反射帯域、及び紫外線反射帯域が存在する。加えて、透過帯域と赤外線反射帯域との間には波長の増加に対し透過率が急速に低下する遷移帯域が存在し、紫外線反射帯域と透過帯域との間には波長の増加に対し透過率が急速に増加する遷移帯域が存在する。この場合、例えば、吸収膜30に含まれる成分に紫外線が照射されることを抑制できる。
近赤外線反射膜20は、例えば、透明誘電体基板10の一方の主面上に無機材料又は有機材料の層を積層することにより形成されている。近赤外線反射膜20は、1種類の材料が透明誘電体基板10の一方の主面に積層されて形成されていてもよいし、2種類以上の材料が透明誘電体基板10の一方の主面から代わる代わる積層されて形成されていてもよい。近赤外線反射膜20は、例えば、SiO2、TiO2、Ta2O5、及びMgF等の材料から選ばれる1種の材料が透明誘電体基板10の一方の主面に積層されて形成されていてもよい。また、近赤外線反射膜20は、例えば、SiO2、TiO2、Ta2O5、及びMgF等の材料から選択された屈折率の異なる2種以上の材料が透明誘電体基板10の一方の主面から代わる代わる積層されて形成されていてもよい。この場合、近赤外線反射膜20の設計の自由度が高く、近赤外線反射膜20の特性を細かく調整しやすい。このため、近赤外線反射膜20が所望の光学特性を容易に発揮できる。また、近赤外線反射膜20は、例えば二組以上の反射膜に分割されて形成されていてもよい。この場合、二組以上の反射膜は各々異なる波長域の光を反射していてもよいし、一部の波長域の光は複数の反射膜で反射していてもよい。例えば、第一反射膜が近赤外波長域内の例えば波長750〜1100nmの範囲内の比較的短波長側の光を主として反射し、第二反射膜が上記波長範囲内の比較的長波長側の光を主として反射するように設計、作製したうえで、第一反射膜と第二反射膜の反射特性とを合成することによって、波長750〜1100nmの範囲内の波長域の光を反射でき、場合によっては400nm以下の波長域の光も反射できるように近赤外線反射膜20を設計及び作製できる。または、第一反射膜及び第二反射膜のいずれかの反射膜のみの特性だけでは、例えば反射膜で遮蔽すべき波長750〜1100nmの範囲内において透過率がベースラインより大きくなるような範囲が現れて、漏れ光が生じることがある。これを低減又は防止するために反射特性の異なる反射膜を組み合わせてもよい。近赤外線反射膜20の厚みは、例えば4〜10μmである。
近赤外線反射膜20は、例えば、(i)蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びイオンアシスト蒸着(IAD)法等の物理的な方法、(ii)化学気相蒸着(CVD)法等の化学的な方法、又は(iii)ゾルゲル法等の湿式法によって形成される。
第二積層体が上記(H)及び(I)の特性を有することにより、赤外線カットフィルタ1aに0°〜40°の角度で光の入射角が変化しても、特定の範囲の波長350〜450nm、特に波長400nm付近における透過率スペクトルの変化が小さい。
第一積層体及び第二積層体が(F)〜(I)の特性を有する場合、例えば、赤外線カットフィルタ1aに垂直に入射する光の分光透過率が波長350〜450nmの範囲で50%である波長と、赤外線カットフィルタ1aに40°の入射角で入射する光の分光透過率が波長350〜450nmの範囲で50%である波長との差の絶対値|ΔλL(50%)|が10nm以下である。
赤外線カットフィルタ1aに入射する光の入射角が0°から40°に増大すると、紫外線反射帯域と透過帯域との間の遷移帯域が短波長側にシフトする。これにより、赤外線カットフィルタ1aに入射する光の入射角の増加に伴い赤外線カットフィルタ1aを透過する短波長の光の光量が増加しやすい。第一積層体が上記(J)の特性を有していると、このような短波長の光の光量の増加を相殺できる。これにより、例えば、赤外線カットフィルタ1aを備えた撮像装置から得られる画像の色再現性又はその画像の面内における色味の均一性を高めることができる。
赤外線カットフィルタ1aを所定の撮像素子とともに用いた場合に、入射角が0°で赤外線カットフィルタ1aに入射光を入射させたときの撮像素子の分光感度の比であるB/G比を1とする。このとき、例えば、入射角が40°で赤外線カットフィルタ1aに入射光を入射させたときのB/G比が0.97以上、かつ、1.03以下である。
第一積層体に入射する光の透過率スペクトルには、透過帯域、反射帯域、及び遷移帯域のそれぞれにおいて、リップルと呼ばれるベースラインから突出したスペクトルが出現することがある。赤外線カットフィルタ1aがデジタルカメラなどの撮像装置に用いられている場合、赤外線カットフィルタ1aには、蛍光灯からの光のように輝線スペクトルを有する光が入射することがある。この場合、第一積層体に入射する光の透過率スペクトルに出現するリップルは赤外線カットフィルタ1aに入射する光の透過率スペクトルに影響を及ぼす。このため、このリップルが輝線スペクトルと重なり合わないことが望ましい。リップルと輝線スペクトルが重なり合うと、蛍光灯等の光源からの光が赤外線カットフィルタ1aに入射する場合に赤外線カットフィルタ1aを透過する光量が、その光源以外の光源からの光が赤外線カットフィルタ1aに入射する場合に比べて特定範囲の波長で大きく異なる可能性がある。
例えば、赤外線カットフィルタ1aに垂直に入射する光の分光透過率及び赤外線カットフィルタ1aに40°の入射角で入射する光の分光透過率は、440nm付近、550nm付近、及び610nm付近に現れるTL84光源の輝線スペクトルと重なる、ベースラインと極値との差が4ポイント以上であり、かつ、半値幅が15nmであるスペクトルを有しない。この場合、赤外線カットフィルタ1aは、TL84光源の輝線スペクトルと重なるリップルを有しないので、光源が変わることによって赤外線カットフィルタ1aを透過する光量が特定の波長で大きく変動することを抑制できる。
図1に示す通り、例えば、吸収膜30は、透明誘電体基板10の他方の主面に接触している。換言すると、吸収膜30は、透明誘電体基板10に対して近赤外線反射膜20と反対側に形成されている。吸収膜30は、例えば、特定範囲の波長(例えば、λH R(40°,70%)以上の波長範囲)において吸収ピークを有する物質(吸収物質)が分散しているバインダ樹脂を含む溶液を塗布し、この塗膜を乾燥及び硬化させることによって形成される。吸収物質は、例えば、λH R(40°,70%)〜λH R(0°,20%)の範囲において吸収ピークを有する。吸収膜30を形成するためのバインダ樹脂は、例えば、波長400〜1100nmの光に対して85%以上の分光透過率を有する。また、吸収膜30を形成するためのバインダ樹脂は、例えば、高温高湿等の環境に対して耐性を有する。吸収膜30を形成するためのバインダ樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素樹脂、PC樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、又はエポキシ系樹脂である。これらの樹脂は、一種のモノマー、一種のオリゴマー、又は一種のポリマーによって形成されていてもよいし、二種以上のモノマー、二種以上のオリゴマー、又は二種以上のポリマーが組み合わされることによって形成されていてもよい。吸収膜30の厚みは、例えば1〜200μmである。
吸収膜30が透明誘電体基板10と接触している場合、吸収膜30と透明誘電体基板10との界面における反射を抑制する観点から、吸収膜30を形成するためのバインダ樹脂の屈折率naと透明誘電体基板10の材料の屈折率nsとの差は小さいことが望ましい。例えば、|na−ns|は0.1以下である。
吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液は、例えば、スピンコーティング、ディッピング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、バーコーティング、及びインクジェット等の方法によって塗布される。この溶液は、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、及びテトラヒドロフランなどの溶媒中で吸収物質とバインダ樹脂とを混合させて調製されている。なお、この溶液の調製において、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。
吸収物質は、例えば、(i)リン酸エステル、ホスフィン酸、及びホスホン酸などのリン含有化合物若しくは硫酸及びスルホン酸などの硫黄含有化合物が銅(Cu)及びコバルト(Co)等の金属のイオンに配位した金属錯体、(ii)インジウムスズ酸化物(ITO)及びアンチモンスズ酸化物(ATO)などの金属酸化物、又は(iii)アゾ系の有機色素、フタロシアニン系の有機色素、ナフタロシアニン系の有機色素、ジインモニウム系の有機色素、シアニン等のメチン系の有機色素、アンスラキノン系の有機色素、及びスクアリリウム系の有機色素などの有機色素である。これらの物質が単独で使用されてもよく、これらの物質のうち2種類以上の物質が混合されて使用されてもよい。
吸収膜30は、紫外線吸収性物質を含んでいてもよい。この場合、例えば、吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液に、紫外線吸収性物質が添加される。また、吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液と紫外線吸収性物質を含む溶液とを混合してもよい。紫外線吸収性物質は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアール系化合物、又はベンゾエート系化合物である。これらの化合物が単独で使用されてもよいし、これらの化合物のうち2種類以上の組み合わせが使用されてもよい。また、紫外線吸収性物質が含まれる膜と吸収物質が含まれる膜とは別々に形成されていてもよい。紫外線吸収性物質と吸収物質とが同一の層に混在する場合、物質間の相互作用が生じ、吸収能力や耐候性を低下させたり、または色素の劣化を招いたりすることがある。そこで紫外線吸収性物質が含まれる膜と吸収物質が含まれる膜とを別々に形成することにより、このような不具合を回避できる。
紫外線吸収性物質を可視光域で十分に透明なPVB等の樹脂に含有させた塗布液を波長400〜1100nmにおいて90%以上の平均分光透過率を有する透明誘電体基板に塗布して乾燥又は硬化させることにより紫外線吸収膜と透明誘電体基板との積層体を作製する。この積層体の透過率スペクトルを測定することにより紫外線吸収性物質を含む積層体の特性を評価できる。紫外線吸収性物質を含む積層体は、望ましくは、以下の(K)および(L)の特性を有する。
(K)波長450〜1100nmの範囲において、平均の分光透過率が85%以上である。
(L)波長390nmにおける分光透過率が波長420nmにおける分光透過率より小さい。
吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液には、吸収物質、バインダ樹脂、及び溶媒の組み合わせによっては、分散剤がさらに添加される。これにより、吸収物質が溶液中で凝集することを防止できる。分散剤としては、(i)ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン系の界面活性剤、(ii)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのポリオキシエチレンアルキルエーテル並びにポリアクリル酸塩などのノニオン系の界面活性剤、(iii)シリコーン系界面活性剤、又は(iv)フッ素系界面活性剤を使用できる。これらの分散剤は単独で使用されてもよく、これらの分散剤のうち2種類以上の組み合わせが使用されてもよい。これらの界面活性剤は、吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液の粘度を低下させる作用、その溶液の塗布面に対する濡れ性を高める作用、及び塗膜のレベリングを容易にする作用を生じさせることもできる。これにより、吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液の塗膜に欠点が生じることを防止できる。吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液における分散剤の添加量は、例えば、その溶液の固形分の0.001〜5重量%である。
吸収物質が分散しているバインダ樹脂を含む溶液には、吸収物質、バインダ樹脂、及び溶媒の組み合わせによっては、酸化防止剤がさらに添加される。これにより、吸収物質又はバインダ樹脂の劣化を抑制できる。酸化防止剤としては、フェノール系の酸化防止剤、ビンダードフェノール系の酸化防止剤、アミン系の酸化防止剤、ビンダードアミン系の酸化防止剤、硫黄系化合物類、ニトロ基含有化合物類、及び亜リン酸を例示できる。これらの酸化防止剤は単独で使用されてもよいし、これらの酸化防止剤のうち2種類以上の組み合わせが使用されてもよい。バインダ樹脂を含む溶液における酸化防止剤の添加量は、例えば、その溶液の固形分の0.001〜5重量%である。
吸収膜30は、複数の膜が積層されることによって形成されていてもよい。この場合、一つの膜に含まれる吸収物質及び別の膜に含まれる吸収物質は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
パッシベーションのために、吸収膜30上には無機材料又は樹脂でできた保護膜がさらに形成されてもよい。これにより、高温又は高湿等の環境で吸収膜30のバインダ樹脂及び吸収物質の劣化を防止できる。
本発明の別の実施形態に係る赤外線カットフィルタ1b〜1hについて説明する。赤外線カットフィルタ1b〜1e、1hは、特に説明する場合を除き、赤外線カットフィルタ1aと同様に構成されている。赤外線カットフィルタ1aの構成要素と同一又は対応する赤外線カットフィルタ1b〜1e、1hの構成要素には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。赤外線カットフィルタ1aに関する説明は技術的に矛盾しない限り赤外線カットフィルタ1b〜1e、1hにもあてはまる。赤外線カットフィルタ1fおよび1gは、透明誘電体基板10を有さないこと以外は、赤外線カットフィルタ1aと同様に構成されており、赤外線カットフィルタ1aの構成要素と同一又は対応する赤外線カットフィルタ1fおよび1gの構成要素には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
図3に示す通り、赤外線カットフィルタ1cは、一対の近赤外線反射膜20を備え、一対の近赤外線反射膜20は、第一反射膜201と第二反射膜202とを含む。第一反射膜201と第二反射膜202とは、透明誘電体基板10の両主面に接触して形成されている。透明誘電体基板10の一方の主面のみに接触するように単一の近赤外線反射膜20を形成する場合、近赤外線反射膜20で発生する応力により透明誘電体基板10に反りが生じる可能性がある。しかし、一対の反射膜、例えば、例えば第一反射膜201と第二反射膜202とが近赤外線反射膜20が透明誘電体基板10の両主面に接触して形成されていると、第一反射膜201と第二反射膜202とで発生する応力の合成により透明誘電体基板10に反りが生じることを防止できる。特に、単一の近赤外線反射膜20において多数(例えば、16層以上)の層が積層されていると、近赤外線反射膜20で発生する応力が大きくなるので、一対の近赤外線反射膜20が透明誘電体基板10の両主面に接触して形成されていることが望ましい。
図5に示す通り、赤外線カットフィルタ1eの吸収膜30は、第一吸収膜301及び第二吸収膜302を含む。第二吸収膜302は透明誘電体基板10に接触している。第一吸収膜301は、透明誘電体基板10に接触している第二吸収膜302の主面と反対側の主面に接触している。第一吸収膜301は第一の吸収物質を含み、第二吸収膜302は第二の吸収物質を含む。第二の吸収物質は、典型的には第一の吸収物質とは異なる吸収物質である。これにより、吸収膜30に所望の特性を付与しやすい。第一の吸収物質は、例えば、有機色素である。第二の吸収物質は、例えば、リン酸エステル、ホスフィン酸、及びホスホン酸などのリン含有化合物とCu及びCo等の金属元素との錯体であってもよい。第二吸収膜302の厚みは、例えば、第一吸収膜301の厚みより大きい。第一吸収膜301の厚みは、例えば1μm〜3μmであり、第二吸収膜302の厚みは、例えば30μm〜150μmである。
図6に示す通り、赤外線カットフィルタ1fは透明誘電体基板10を備えていない。また、赤外線カットフィルタ1fの吸収膜30は、第一吸収膜301及び第二吸収膜302を含む。第一吸収膜301は第一の吸収物質を含み、第二吸収膜302は第二の吸収物質を含む。第二の吸収物質は、典型的には第一の吸収物質とは異なる吸収物質である。これにより、吸収膜30に所望の特性を付与しやすい。第一の吸収物質は、例えば、有機色素である。第二の吸収物質は、例えば、リン酸エステル、ホスフィン酸、及びホスホン酸などのリン含有化合物とCu及びCo等の金属元素との錯体であってもよい。赤外線カットフィルタ1fの厚み方向において、第一吸収膜301と第二吸収膜302との間にはSiO2膜40が形成されている。SiO2膜40の両面は、第一吸収膜301及び第二吸収膜302に接触している。SiO2膜40は、例えば、蒸着法等の方法により形成されている。赤外線カットフィルタ1fの近赤外線反射膜20は、第二吸収膜302に接触している。第一吸収膜301の厚みは、例えば1μm〜3μmであり、第二吸収膜302の厚みは、例えば50μm〜150μmであり、SiO2膜40の厚みは、例えば0.5μm〜3μmである。
図8に示す通り、赤外線カットフィルタ1hの吸収膜30には紫外線吸収性物質含有膜305が重なっていてもよい。紫外線吸収性物質含有膜305は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアール系化合物、又はベンゾエート系化合物等の紫外線吸収性物質を含有している。例えば、吸収膜30の透明誘電体基板10と接触している主面と反対側の主面と接触するように配置されている。紫外線吸収性物質含有膜305の厚みは、例えば、1μm〜10μmである。この場合、赤外線カットフィルタ1hが所望の紫外線吸収機能を発揮しやすい。
次に、本発明の実施形態に係る撮像光学系100について説明する。図9に示す通り、撮像光学系100は、例えば、赤外線カットフィルタ1aを備えている。撮像光学系100は、例えば、撮像レンズ3をさらに備えている。撮像光学系100は、デジタルカメラなどの撮像装置において、撮像素子2の前方に配置されている。撮像素子2は、例えば、CCD又はCMOSなどの固体撮像素子である。図9に示す通り、被写体からの光は、撮像レンズ3によって集光され、赤外線カットフィルタ1aによって赤外線域の光がカットされた後、撮像素子2に入射する。このため、色再現性の高い良好な画像を得ることができる。加えて、撮像光学系100を備えた撮像装置の画角が大きく、赤外線カットフィルタ1aに対して例えば40°の入射角で入射した光が撮像素子2に導かれる場合でも、得られる画像の画質が高い。特に、得られる画像の中心部及び周辺部において色味が均一に保たれる。なお、撮像光学系100は、赤外線カットフィルタ1aに代えて、赤外線カットフィルタ1b〜1hのいずれか1つを備えていてもよい。
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例には限定されない。
<実施例1>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面にSiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された近赤外線反射膜R1を蒸着法により形成した。このようにして、実施例1に係る第一積層体を作製した。実施例1に係る第一積層体の近赤外線反射膜R1の厚みは、5μmであった。また、実施例1に係る第一積層体の近赤外線反射膜R1は、17層のSiO2膜と17層のTiO2膜を含んでいた。実施例1に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、分光光度計(日本分光社製、型式:V−670)を用いて測定した。この測定において、実施例1に係る第一積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させた。得られた透過率スペクトルを図10に示す。
実施例1に係る第一積層体に40°の入射角で入射する光の透過率スペクトルにおいて波長490nm付近にリップルが生じているものの、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。一方で、入射角が40°のときの実施例1に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約410nmに分光透過率が約69%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が95%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから20ポイント以上低下した分光透過率を有し、約16nmの半値全幅を有していた。
第一積層体への入射角がX°のときに得られた透過率スペクトルにおいて波長600〜800nmの範囲において透過率がY%である波長を、特定波長としてλH R(X°,Y%)と定義した。実施例1に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長を表1に示す。また、ΔλH R(70%)=λH R(0°,70%)−λH R(40°,70%)、ΔλH R(50%)=λH R(0°,50%)−λH R(40°,50%)、及びΔλH R(20%)=λH R(0°,20%)−λH R(40°,20%)と定義した。実施例1に係る第一積層体における、ΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表1に示す。
第一積層体への入射角がW°のときに得られた透過率スペクトルにおいて波長350〜450nmの範囲において透過率がZ%である波長を同様に特定波長としてλL R(W°,Z%)と定義した。実施例1に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表1に示す。また、ΔλL R(70%)=λL R(0°,70%)−λL R(40°,70%)、ΔλL R(50%)=λL R(0°,50%)−λL R(40°,50%)、及びΔλL R(20%)=λL R(0°,20%)−λL R(40°,20%)と定義した。実施例1に係る第一積層体における、ΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表1に示す。
(第二積層体)
波長700〜750nmに吸収ピークを持ち、可視域の吸収が少なく、メチルエチルケトン(MEK)に可溶な有機色素(シアニン系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、及びジインモニウム系の有機色素から選択される1種類以上の有機色素)を組合せ、溶媒としてMEKを用い、固形分比で99重量%のポリビニルブチラール(PVB)を添加し、その後2時間撹拌して、コーティング液a1を得た。塗膜化して分光特性を測定した際に図10の第二積層体の分光スペクトル特性が得られるように各有機色素の含有量と配合比を決めた。
このコーティング液a1を、0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、スピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A1を形成した。このようにして、実施例1に係る第二積層体を作製した。吸収膜A1の厚みは3μmであった。実施例1に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、分光光度計(日本分光社製、型式:V−670)を用いて測定した。この測定において、実施例1に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図10に示す。図10に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例1に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例1に係る第二積層体は、波長約700nm及び波長約760nmにおいて吸収ピークを有していた。加えて、実施例1に係る第二積層体は、波長約410nmにおいて吸収ピークを有していた。
第二積層体への入射角がX°のときに得られた透過率スペクトルにおいて、波長600〜800nmの範囲において透過率がY%である波長を特定波長としてλH A(X°,Y%)と定義した。実施例1に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長を表1に示す。実施例1に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長711nm(=λH R(0°,70%))、波長714nm(=λH R(0°,50%))、波長721nm(=λH R(0°,20%))、波長655nm(=λH R(40°,70%))、波長666nm(=λH R(40°,50%))、波長677nm(=λH R(40°,20%))、波長413nm(=λL R(0°,70%))、波長411nm(=λL R(0°,50%))、波長403nm(=λL R(0°,20%))、波長410nm(=λL R(40°,70%))、波長393nm(=λL R(40°,50%))、及び波長384nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表1に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例1に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R1が形成されていない主面に、第二積層体の作製と同様にして吸収膜A1を形成した。このようにして、実施例1に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例1に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を、分光光度計(日本分光社製、型式:V−670)を用いて測定した。この測定において、実施例1に係る赤外線カットフィルタには、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させた。得られた透過率スペクトルを図11に示す。
赤外線カットフィルタへの入射角がX°のときに得られた透過率スペクトルにおいて波長600〜800nmの範囲において透過率がY%である波長を特定波長としてλH(X°,Y%)と定義した。表4に示す通り、波長λH(0°,70%)=614nm、波長λH(40°,70%)=612nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλH(70%)|と定義すると、|ΔλH(70%)|=2nmであった。波長λH(0°,50%)=638nm、波長λH(40°,50%)=635nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλH(50%)|と定義すると、|ΔλH(50%)|=3nmであった。波長λH(0°,20%)=672nm、波長λH(40°,20%)=658nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλH(20%)|とすると、|ΔλH(20%)|=14nmであった。
<実施例2>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1に記載の近赤外線反射膜R1とは異なる近赤外線反射膜R2を蒸着法により形成した。このようにして、実施例2に係る第一積層体を作製した。実施例2に係る第一積層体の近赤外線反射膜R2の厚みは、5μmであった。また、実施例2に係る第一積層体の近赤外線反射膜R2は、17層のSiO2膜と17層のTiO2膜を含んでいた。実施例2に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図12に示す。
実施例2に係る第一積層体に関する透過率スペクトルにおいて、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。実施例2に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表1に示す。また、実施例2に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表1に示す。
(第二積層体)
波長700〜750nmに吸収ピークを持ち、可視域の吸収が少なく、MEKに可溶な有機色素からなり、実施例1で使用した有機色素の組合せとは異なる、吸収性物質を組合せ、溶媒としてMEKを用い、固形分比で99重量%のPVBを添加し、その後2時間撹拌して、コーティング液a2を得た。塗膜化して分光特性を測定した際に図12の第二積層体の分光スペクトル特性が得られるように有機色素の含有量と配合比を決めた。
コーティング液a2を0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、スピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A2を形成した。このようにして、実施例2に係る第二積層体を作製した。吸収膜A2の厚みは3μmであった。実施例2に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例2に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図12に示す。図12に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例2に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例2に係る第二積層体は、波長約710nmにおいて吸収ピークを有していた。加えて、実施例2に係る第二積層体は、波長約420nmにおいて吸収ピークを有していた。
第二積層体への入射角がW°のときに得られた透過率スペクトルにおいて波長350〜450nmの範囲において透過率がZ%である波長を同様に特定波長としてλL A(W°,Z%)と定義した。実施例2に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及びλL A(0°,70%)を表1に示す。実施例2に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長715nm(=λH R(0°,70%))、波長720nm(=λH R(0°,50%))、波長731nm(=λH R(0°,20%))、波長658nm(=λH R(40°,70%))、波長670nm(=λH R(40°,50%))、波長684nm(=λH R(40°,20%))、波長406nm(=λL R(0°,70%))、波長405nm(=λL R(0°,50%))、波長402nm(=λL R(0°,20%))、波長389nm(=λL R(40°,70%))、波長387nm(=λL R(40°,50%))、及び波長385nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表1に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例2に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R2が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A2を形成した。実施例2に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図13に示す。
表4に示す通り、実施例2に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=621nm、波長λH(40°,70%)=618nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=3nmであった。波長λH(0°,50%)=644nm、波長λH(40°,50%)=640nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=4nmであった。波長λH(0°,20%)=676nm、波長λH(40°,20%)=663nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=13nmであった。
<実施例3>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1及び2に記載の近赤外線反射膜R1及びR2とは異なる近赤外線反射膜R3を蒸着法により形成した。このようにして、実施例3に係る第一積層体を作製した。実施例3に係る第一積層体の近赤外線反射膜R3の厚みは、6μmであった。また、実施例3に係る第一積層体の近赤外線反射膜R3は、20層のSiO2膜と20層のTiO2膜を含んでいた。実施例3に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図14に示す。
実施例3に係る第一積層体において、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。実施例3に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表1に示す。また、実施例3に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表1に示す。
(第二積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、フェニルホスホン酸銅微粒子を含むコーティング液b1を塗布し、塗膜を乾燥及び硬化させて吸収膜B1(第二吸収膜)を形成した。
コーティング液b1は以下のようにして調製した。酢酸銅一水和物1.1gとテトラヒドロフラン(THF)60gとを混合して3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、プライサーフA208F(第一工業製薬社製)を2.3g加えて30分間撹拌し、b11液を得た。また、フェニルホスホン酸(東京化成工業株式会社製)0.6gにTHF10gを加えて30分撹拌し、b12液を得た。次に、b11液を撹拌しながらb11液にb12液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン45gを加えた後、室温で1分間撹拌し、b13液を得た。このb13液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、25分間脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、120℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の溶液を取り出した。取り出した溶液に、シリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)を4.4g添加し、室温で30分間撹拌し、コーティング液b1を得た。
得られたコーティング液b1を、透明ガラス基板の一方の主面に、ダイコーティングによって塗布し、次に、コーティング液b1の未乾燥の塗膜を有する透明ガラス基板をオーブンに入れて、85℃で3時間、次に125℃で3時間、次に150℃で1時間、次に170℃で3時間の条件で塗膜に対して加熱処理を行い、塗膜を硬化させ吸収膜B1(第二吸収膜)を形成した。第二吸収膜である吸収膜B1の厚みは50μmであった。次に、第二吸収膜である吸収膜B1の上に、実施例2で使用したコーティング液a2をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A2(第一吸収膜)を形成した。吸収膜A2の厚みは3μmであった。このようにして、実施例3に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例3に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが50μmの吸収膜B1(第二吸収膜)及び厚みが3μmの吸収膜A2(第一吸収膜)を含んでいた。
実施例3に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例3に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図14に示す。図14に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例3に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例3に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約700〜約770nmの範囲に及ぶ幅広な吸収ピークを有していた。また実施例3に係る第二積層体は、波長約410nmにおいて吸収ピークを有していた。
実施例3に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例3に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表1に示す。実施例3に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長727nm(=λH R(0°,70%))、波長738nm(=λH R(0°,50%))、波長766nm(=λH R(0°,20%))、波長672nm(=λH R(40°,70%))、波長685nm(=λH R(40°,50%))、波長717nm(=λH R(40°,20%))、波長406nm(=λL R(0°,70%))、波長405nm(=λL R(0°,50%))、波長402nm(=λL R(0°,20%))、波長389nm(=λL R(40°,70%))、波長387nm(=λL R(40°,50%))、及び波長385nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表1に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例3に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A2(第一吸収膜)及び吸収膜B1(第二吸収膜)からなる吸収膜を形成した。実施例3に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図15に示す。
表4に示す通り、実施例3に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=612nm、波長λH(40°,70%)=607nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=5nmであった。波長λH(0°,50%)=635nm、波長λH(40°,50%)=632nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=3nmであった。波長λH(0°,20%)=669nm、波長λH(40°,20%)=661nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=8nmであった。
<実施例4>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面にSiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例2に係る近赤外線反射膜と同一の近赤外線反射膜R2を蒸着法により形成した。このようにして、実施例4に係る第一積層体を作製した。実施例4に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図16に示す。実施例4に係る第一積層体に関する透過率スペクトルは実施例2に係る第一積層体に関する透過率スペクトルと同一であった。
(第二積層体)
波長700〜750nmに吸収ピークを持ち、可視域の吸収が少なく、MEK(メチルエチルケトン)に可溶な有機色素であり、実施例2の吸収膜に含まれる有機色素の組合せと同一の有機色素の組合せからなる吸収性物質と、可視域の吸収が少なく、MEK(メチルエチルケトン)に可溶なベンゾフェノン系紫外線吸収性物質からなる紫外線吸収性物質と、を組合せ、溶媒としてMEKを用い、固形分比で99重量%のPVBを添加し、調合後2時間撹拌してコーティング液a3を得た。コーティング液a3の調製のために用いたベンゾフェノン系紫外線吸収性物質は、それのみをポリビニルブチラールに内包させて作製した紫外線吸収膜の分光透過率が、波長350〜450nmの範囲において、10%以下から70%以上に増加する特性を備えていた。その紫外線吸収膜の透過率スペクトルを図56に示す。
コーティング液a3における有機色素及びベンゾフェノン系紫外線吸収性物質の含有量及び配合比は、塗膜化して分光特性を測定した際に図16の第二積層体の分光スペクトル特性が得られるように決めた。このコーティング液a3を、0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、スピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A3を形成した。このようにして、実施例4に係る第二積層体を作製した。吸収膜A3の厚みは3μmであった
実施例4に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例4に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図16に示す。図16に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例4に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例4に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約710nmに吸収ピークを有していた。実施例4に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長350〜450nmの範囲において分光透過率が70%から10%以下に低下する特性を有していた。
実施例4に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例4に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表1に示す。実施例4に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長715nm(=λH R(0°,70%))、波長720nm(=λH R(0°,50%))、波長731nm(=λH R(0°,20%))、波長658nm(=λH R(40°,70%))、波長670nm(=λH R(40°,50%))、波長684nm(=λH R(40°,20%))、波長406nm(=λL R(0°,70%))、波長405nm(=λL R(0°,50%))、波長402nm(=λL R(0°,20%))、波長389nm(=λL R(40°,70%))、波長387nm(=λL R(40°,50%))、及び波長385nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表1に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例4に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R2が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A3を形成し、実施例4に係る赤外線カットフィルタを得た。実施例4に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図17に示す。
表4に示す通り、実施例4に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=621nm、波長λH(40°,70%)=620nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=1nmであった。波長λH(0°,50%)=643nm、波長λH(40°,50%)=642nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=1nmであった。波長λH(0°,20%)=676nm、波長λH(40°,20%)=663nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=13nmであった。赤外線カットフィルタへの入射角がW°のときに得られた透過率スペクトルにおいて波長350〜450nmの範囲において透過率がZ%である波長をλL(W°,Z%)と定義した。表4に示す通り、波長λL(0°,70%)=426nm、波長λL(40°,70%)=433nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλL(70%)|とすると、|ΔλL(70%)|=7nmであった。波長λL(0°,50%)=409nm、波長λL(40°,50%)=408nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλL(50%)|とすると、|ΔλL(50%)|=1nmであった。波長λL(0°,20%)=404nm、波長λL(40°,20%)=398nmであり、それらの差の絶対値を|ΔλL(20%)|とすると、|ΔλL(20%)|=6nmであった。
<実施例5>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1〜4に記載の近赤外線反射膜R1〜R3とは異なる近赤外線反射膜R4を蒸着法により形成した。このようにして、実施例5に係る第一積層体を作製した。実施例5に係る第一積層体の近赤外線反射膜の厚みは、6μmであった。また、実施例5に係る第一積層体の近赤外線反射膜R4は、20層のSiO2膜と20層のTiO2膜を含んでいた。実施例5に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図18に示す。
実施例5に係る第一積層体に関する透過率スペクトルにおいて、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。実施例5に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表2に示す。また、実施例5に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表2に示す。
(第二積層体)
実施例3で使用したコーティング液b1を、0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、ダイコーティングによって塗布して塗膜を形成した。この塗膜を85℃で3時間、次に125℃で3時間、次に150℃で1時間、次に170℃で3時間の条件で塗膜に対して加熱処理を行い、実施例3と同様に吸収膜B1を形成した。吸収膜B1の厚みは50μmであった。このようにして、実施例5に係る第二積層体の第二吸収膜である吸収膜B1を作製した。次に、吸収膜B1の上に、実施例4で使用したコーティング液a3をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ、実施例4と同様に吸収膜A3を形成した。このようにして、実施例5に係る第二積層体の第一吸収膜である吸収膜A3を作製した。吸収膜A3の厚みは3μmであった。このようにして、実施例5に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例5に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが50μmの吸収膜B1(第二吸収膜)及び厚みが3μmの吸収膜A3(第一吸収膜)を含んでいた。
実施例5に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例5に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図18に示す。図18に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例5に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例5に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約700nm〜約770nmの範囲に及ぶ幅広な吸収ピークを有していた。実施例5に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長350〜450nmの範囲において分光透過率が10%以下から70%以上に増加する特性を有していた。
実施例5に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例5に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表2に示す。実施例5に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長727nm(=λH R(0°,70%))、波長738nm(=λH R(0°,50%))、波長766nm(=λH R(0°,20%))、波長672nm(=λH R(40°,70%))、波長685nm(=λH R(40°,50%))、波長717nm(=λH R(40°,20%))、波長406nm(=λL R(0°,70%))、波長405nm(=λL R(0°,50%))、波長402nm(=λL R(0°,20%))、波長389nm(=λL R(40°,70%))、波長387nm(=λL R(40°,50%))、及び波長385nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表2に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例5に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R4が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A3(第一吸収膜)および吸収膜B1(第二吸収膜)からなる吸収膜を形成した。実施例5に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図19に示す。
表5に示す通り、実施例5に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=611nm、波長λH(40°,70%)=606nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=5nmであった。波長λH(0°,50%)=634nm、波長λH(40°,50%)=632nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=2nmであった。波長λH(0°,20%)=669nm、波長λH(40°,20%)=661nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=8nmであった。また、表5に示す通り、実施例5に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λL(0°,70%)=427nm、波長λL(40°,70%)=436nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(70%)|=9nmであった。波長λL(0°,50%)=409nm、波長λL(40°,50%)=409nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(50%)|=0nmであった。波長λL(0°,20%)=404nm、波長λL(40°,20%)=398nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(20%)|=6nmであった。
<実施例6>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1〜5に記載の近赤外線反射膜R1〜R4とは異なる近赤外線反射膜R5を蒸着法により形成した。このようにして、実施例6に係る第一積層体を作製した。実施例6に係る第一積層体の近赤外線反射膜R5の厚みは5.5μmであった。また、実施例6に係る第一積層体の近赤外線反射膜は、18層のSiO2膜と18層のTiO2膜を含んでいた。実施例6に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図20に示す。
実施例6に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。入射角が30°のときの実施例6に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約422nmに分光透過率が約71%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから15ポイント以上低下した分光透過率を有し、約14nmの半値全幅を有していた。さらに入射角が40°のときの実施例6に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約415nmに分光透過率が約55%である極小値を有していた。同様に、この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから30ポイント以上低下した分光透過率を有し、約16nmの半値全幅を有していた。
実施例6に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表2に示す。また、実施例6に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表2に示す。
(第二積層体)
実施例3で使用したコーティング液b1を、0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、ダイコーティングによって塗布して塗膜を形成した。この塗膜を85℃で3時間、次に125℃で3時間、次に150℃で1時間、次に170℃で3時間の条件で塗膜に対して加熱処理を行い、実施例3と同様に吸収膜B1を形成した。吸収膜B1の厚みは50μmであった。このようにして、実施例6に係る第二積層体の第二吸収膜である吸収膜B1を作製した。次に、吸収膜B1の上に、実施例2で使用したコーティング液a2をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ、実施例4と同様に吸収膜A2を形成した。このようにして、実施例6に係る第二積層体の第一吸収膜である吸収膜A2を作製した。吸収膜A2の厚みは3μmであった。このようにして、実施例6に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例6に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが50μmの吸収膜B1(第二吸収膜)及び厚みが3μmの吸収膜A3(第一吸収膜)を含み、実施例3に係る第二積層体の吸収膜と同一であった。
実施例6に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例6に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られ、実施例3に係る第二積層体と同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図20に示す。図20に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例6に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例6に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約700〜約770nmの範囲に及ぶ幅広な吸収ピークを有していた。実施例6に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約410nmにおいて吸収ピークを有していた。実施例6に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例6に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表2に示す。実施例6に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長714nm(=λH R(0°,70%))、波長720nm(=λH R(0°,50%))、波長730nm(=λH R(0°,20%))、波長659nm(=λH R(40°,70%))、波長668nm(=λH R(40°,50%))、波長685nm(=λH R(40°,20%))、波長411nm(=λL R(0°,70%))、波長410nm(=λL R(0°,50%))、波長406nm(=λL R(0°,20%))、波長394nm(=λL R(40°,70%))、波長392m(=λL R(40°,50%))、及び波長388nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表2に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例6に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R5が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A2(第一吸収膜)および吸収膜B1(第二吸収膜)とからなる吸収膜を形成した。このようにして、実施例6に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例6に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様にして測定した。得られた透過率スペクトルを図21に示す。
表5に示す通り、実施例6に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=621nm、波長λH(40°,70%)=617nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=4nmであった。波長λH(0°,50%)=643nm、波長λH(40°,50%)=637nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=6nmであった。波長λH(0°,20%)=675nm、波長λH(40°,20%)=663nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=12nmであった。実施例6に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λL(0°,70%)=413nm、波長λL(40°,70%)=397nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(70%)|=16nmであった。波長λL(0°,50%)=411nm、波長λL(40°,50%)=394nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(50%)|=17nmであった。波長λL(0°,20%)=407nm、波長λL(40°,20%)=389nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(20%)|=18nmであった。
<実施例7>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1〜6に記載の近赤外線反射膜R1〜R5とは異なる近赤外線反射膜R6を蒸着法により形成した。このようにして、実施例7に係る第一積層体を作製した。実施例7に係る第一積層体の近赤外線反射膜R6の厚みは5.5μmであった。また、実施例7に係る第一積層体の近赤外線反射膜R6は、18層のSiO2膜と18層のTiO2膜を含んでいた。実施例7に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図22に示す。
実施例7に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。入射角が30°のときの実施例7に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約425nmに分光透過率が約75%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから15ポイント以上低下した分光透過率を有し、約12nmの半値全幅を有していた。さらに入射角が40°のときの実施例7に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約415nmに分光透過率が約58%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、同様に、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから30ポイント以上低下した分光透過率を有し、約14nmの半値全幅を有していた。
実施例7に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表2に示す。また、実施例7に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表2に示す。
(第二積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、実施例4で使用したコーティング液a3をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A3を形成した。このようにして、実施例7に係る第二積層体の吸収膜A3を作製した。吸収膜A3の厚みは3μmであった。
実施例7に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例7に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られ、実施例4に係る第二積層体に関する透過率スペクトルと同一であった。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図22に示す。図22に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例7に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例7に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約710nmに吸収ピークを有していた。実施例7に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長350〜450nmの範囲において分光透過率が10%以下から70%以上に増加する特性を有していた。
実施例7に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例7に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表2に示す。実施例7に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長715nm(=λH R(0°,70%))、波長720nm(=λH R(0°,50%))、波長731nm(=λH R(0°,20%))、波長659nm(=λH R(40°,70%))、波長667nm(=λH R(40°,50%))、波長684nm(=λH R(40°,20%))、波長411nm(=λL R(0°,70%))、波長409nm(=λL R(0°,50%))、波長406nm(=λL R(0°,20%))、波長394nm(=λL R(40°,70%))、波長391m(=λL R(40°,50%))、及び波長388nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表2に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例7に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R6が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A3を形成した。このようにして、実施例7に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例7に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様にして測定した。得られた透過率スペクトルを図23に示す。
表5に示す通り、実施例7に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=620nm、波長λH(40°,70%)=618nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=2nmであった。波長λH(0°,50%)=642nm、波長λH(40°,50%)=636nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=6nmであった。波長λH(0°,20%)=675nm、波長λH(40°,20%)=663nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=12nmであった。実施例7に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λL(0°,70%)=428nm、波長λL(40°,70%)=429nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(70%)|=1nmであった。波長λL(0°,50%)=412nm、波長λL(40°,50%)=420nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(50%)|=8nmであった。波長λL(0°,20%)=408nm、波長λL(40°,20%)=398nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(20%)|=10nmであった。
<実施例8>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された実施例1〜7に記載の近赤外線反射膜R1〜R6とは異なる近赤外線反射膜R7を蒸着法により形成した。このようにして、実施例8に係る第一積層体を作製した。実施例8に係る第一積層体の近赤外線反射膜R7の厚みは6μmであった。また、実施例8に係る第一積層体の近赤外線反射膜R7は、19層のSiO2膜と19層のTiO2膜を含んでいた。実施例8に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図24に示す。
実施例8に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。入射角が30°のときの実施例8に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約420nmの範囲に分光透過率が約76%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから10ポイント以上低下した分光透過率を有し、約14nmの半値全幅を有していた。さらに入射角が40°のときの実施例8に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約429nmに分光透過率が約55%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、同様に、分光透過率が93%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから30ポイント以上低下した分光透過率を有し、約16nmの半値全幅を有していた。
実施例8に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表2に示す。また、実施例8に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表2に示す。
(第二積層体)
実施例3で使用したコーティング液b1を、0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、ダイコーティングによって塗布して塗膜を形成した。この塗膜を85℃で3時間、次に125℃で3時間、次に150℃で1時間、次に170℃で3時間の条件で塗膜に対して加熱処理を行い、実施例3と同様に吸収膜B1を形成した。吸収膜B1の厚みは50μmであった。このようにして、実施例8に係る第二積層体の第二吸収膜である吸収膜B1を作製した。次に、吸収膜B1の上に、実施例4で使用したコーティング液a3をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ、実施例4と同様に吸収膜A3を形成した。このようにして、実施例8に係る第二積層体の第一吸収膜である吸収膜A3を作製した。吸収膜A3の厚みは3μmであった。このようにして、実施例8に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例8に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが50μmの吸収膜B1(第二吸収膜)及び厚みが3μmの吸収膜A3(第一吸収膜)を含み、実施例5に係る第二積層体の吸収膜と同一な構成であった。
実施例8に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例8に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られ、実施例5に係る第二積層体と同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図24に示す。図24に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例8に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例8に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約700〜約770nmの範囲に及ぶ幅広な吸収ピークを有していた。実施例8に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長350〜450nmの範囲において分光透過率が10%以下から70%以上に増加する特性を有していた。
実施例8に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例8に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表2に示す。実施例8に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長743nm(=λH R(0°,70%))、波長749nm(=λH R(0°,50%))、波長761nm(=λH R(0°,20%))、波長683nm(=λH R(40°,70%))、波長697nm(=λH R(40°,50%))、波長712nm(=λH R(40°,20%))、波長414nm(=λL R(0°,70%))、波長410nm(=λL R(0°,50%))、波長408nm(=λL R(0°,20%))、波長396nm(=λL R(40°,70%))、波長394m(=λL R(40°,50%))、及び波長390nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表2に示す。
(赤外線カットフィルタ)
実施例8に係る第一積層体の透明ガラス基板の近赤外線反射膜R7が形成されていない主面に、第二積層体と同様にして吸収膜A3(第一吸収膜)及び吸収膜B1(第二吸収膜)とからなる吸収膜を形成した。このようにして、実施例8に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例8に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様にして測定した。得られた透過率スペクトルを図25に示す。
表5に示す通り、実施例8に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=610nm、波長λH(40°,70%)=607nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=3nmであった。波長λH(0°,50%)=634nm、波長λH(40°,50%)=630nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(50%)|=4nmであった。波長λH(0°,20%)=668nm、波長λH(40°,20%)=662nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=6nmであった。実施例8に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λL(0°,70%)=435nm、波長λL(40°,70%)=440nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(70%)|=5nmであった。波長λL(0°,50%)=414nm、波長λL(40°,50%)=412nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(50%)|=2nmであった。波長λL(0°,20%)=409nm、波長λL(40°,20%)=399nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(20%)|=10nm
であった。
<実施例9>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、実施例8と同様にして、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された近赤外線反射膜R7を蒸着法により形成した。このようにして、実施例9に係る第一積層体を作製した。実施例9に係る第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図26に示す。実施例9に係る第一積層体に関する透過率スペクトルは実施例8に係る第一積層体に関する透過率スペクトルと同一であった。
(第二積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、バインダとしてのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)の含有量を4.4gから2倍の8.8gに変更した以外はコーティング液b1と同様にして作製したコーティング液b2を塗布し、吸収膜B2(第二吸収膜)を形成した。第二吸収膜である吸収膜B2の厚みは100μmであった。次に、第二吸収膜である吸収膜B2の上に、蒸着法によりSiO2膜を形成した。SiO2膜の厚みは3μmであった。さらにSiO2膜の上に、実施例4で使用したコーティング液a3をスピンコーティングにより塗布して塗膜を形成した。この塗膜を140℃の環境に0.5時間曝して、塗膜を乾燥及び硬化させ吸収膜A3(第一吸収膜)を形成した。このようにして実施例9に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例9に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが100μmの吸収膜B2(第二吸収膜)、厚みが3μmのSiO2膜、及び厚みが3μmの吸収膜A3(第一吸収膜)を含んでいた。実施例9に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例9に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られ、実施例8に係る第二積層体と実質的に同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図26に示す。
(赤外線カットフィルタ)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、第二積層体と同様に吸収膜B2(第二吸収膜)を形成した。吸収膜B2(第二吸収膜)の厚みは100μmであった。吸収膜B2(第二吸収膜)の上に、第一積層体の近赤外線反射膜と同一の近赤外線反射膜R7を形成した。次に、吸収膜B2(第二吸収膜)を透明ガラス基板より剥離した、このようにして吸収膜B2(第二吸収膜)上に近赤外線反射膜R7が形成されたフィルムを得た。このフィルムは近赤外線反射膜R7側が凸面となるように反った状態となった。さらに、近赤外線反射膜R7が形成されていない吸収膜B2(第二吸収膜)のもう一方の面に、蒸着法によりSiO2膜を形成した。SiO2膜の厚みは3μmであった。これによりフィルムの反りが緩和された。続いて、SiO2膜の上に、第二積層体の吸収膜A3(第一吸収膜)と同一の吸収膜A3を形成した。吸収膜A3の厚みは同様に3μmであった。このようにして、実施例9に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例9に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図27に示す。実施例9に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルは、実施例8に係る赤外線カットフィルタとほぼ同一であることが確認された。透明ガラス基板と第二積層体の屈折率差が少ないため、赤外線カットフィルタにおける透明ガラス基板の有無は赤外線カットフィルタの分光透過率に対して実質的に影響しないと考えられる。
<実施例10>
(第一積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された近赤外線反射膜R81(第一反射膜)を蒸着法により形成した。第一反射膜である近赤外線反射膜R81は、後述の反射膜R82との組合せにより、所望の近赤外線反射膜の機能を備えるものである。第一反射膜R81の厚みは、4μmであり、16層のSiO2膜と16層のTiO2膜を含んでいた。透明ガラス基板と近赤外線反射膜R81(第一反射膜)との積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を入射角0°で実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図28に示す。
透明ガラス基板の、第一反射膜R81が形成されていないもう一方の主面に、SiO2膜とTiO2膜とが交互に積層された反射膜R82(第二反射膜)を蒸着法により形成した。反射膜R82の厚みは、4μmであった。また、反射膜R82は、16層のSiO2膜と16層のTiO2膜を含んでいた。反射膜R82の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定するために、第二反射膜である反射膜R82を作製するときと同一のバッチに、両面に何も形成されていない0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)を投入して、透明ガラス基板の一方の面に反射膜R82が形成された積層体を得て、分光透過率を入射角0°で測定した。得られた透過率スペクトルを図28に示す。
このようにして、実施例10に係る第一積層体を作製した。すなわち、実施例10に係る第一積層体は、ガラス基板の両方の主面上に第一反射膜である近赤外線反射膜R81及び第二反射膜である近赤外線反射膜R82がそれぞれ形成されている積層体であった。この第一積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図29に示す。図29に示す通り、第一積層体の透過域(例えば、0°の入射角の場合は波長約420〜690nmの範囲)における分光透過率は、他の実施例の第一積層体とは異なり100%に近かった。これは、第一反射膜である近赤外線反射膜R81及び第二反射膜である反射膜R82が透過域における反射防止機能を備えるように設計されていたためであり、この結果、実施例10に係る第一積層体の空気との界面における反射損失が抑制されたことに留意する。
実施例10に係る第一積層体に40°の入射角で入射する光の透過率スペクトルにおいて、波長約500nm付近にリップルが生じているものの、光の入射角がいずれの場合にも、450〜600nmの波長範囲における分光透過率の平均値は80%を超えていた。入射角が30°のときの実施例10に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約425nmに分光透過率が約80%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、分光透過率が99%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから約20ポイント低下した分光透過率を有し、約15nmの半値全幅を有していた。さらに入射角が40°のときの実施例10に係る第一積層体の透過率スペクトルにおいて、波長約415nmに分光透過率が約55%である極小値を有していた。この透過率スペクトルにおいて、同様に、分光透過率が99%のラインをベースラインと仮定した場合、この極小値を含み下に凸となった部分は、ベースラインから40ポイント以上低下した分光透過率を有し、約19nmの半値全幅を有していた。
実施例10に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長並びにΔλH R(70%)、ΔλH R(50%)及びΔλH R(20%)を表3に示す。また、実施例10に係る第一積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長並びにΔλL R(70%)、ΔλL R(50%)、及びΔλL R(20%)を表3に示す。
(第二積層体)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、第二吸収膜である吸収膜B2、SiO2膜、及び第一吸収膜である吸収膜A3からなる実施例9の第二積層体と同一構成の吸収膜を形成した。このようにして実施例10に係る第二積層体を作製した。すなわち、実施例10に係る第二積層体の吸収膜は、厚みが100μmの第二吸収膜である吸収膜B2、厚みが3μmのSiO2膜、及び厚みが3μmの第一吸収膜である吸収膜A3を含んでいた。
実施例10に係る第二積層体の波長350〜1100nmにおける分光透過率を、実施例1と同様にして測定した。この測定において、実施例10に係る第二積層体には、0°、30°、及び40°の入射角で光を入射させたが、いずれの入射角でも実質的に同一の透過率スペクトルが得られ、実施例10に係る第二積層体と同一の透過率スペクトルが得られた。入射角が0°のときに得られた透過率スペクトルを図29に示す。図29に示す通り、450〜600nmの波長範囲における実施例10に係る第二積層体の分光透過率の平均値は75%を超えていた。実施例10に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長約700〜約770nmの範囲に及ぶ幅広な吸収ピークを有していた。実施例10に係る第二積層体の透過率スペクトルは、波長350〜450nmの範囲において分光透過率が10%以下から70%以上に増加する特性を有していた。
実施例10に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長600〜800nmの範囲の各特定波長及び実施例10に係る第二積層体の透過率スペクトルにおける波長350〜450nmの範囲の各特定波長を表3に示す。実施例10に係る第二積層体の透過率スペクトルの、波長715nm(=λH R(0°,70%))、波長719nm(=λH R(0°,50%))、波長727nm(=λH R(0°,20%))、波長659nm(=λH R(40°,70%))、波長676nm(=λH R(40°,50%))、波長684nm(=λH R(40°,20%))、波長411nm(=λL R(0°,70%))、波長410nm(=λL R(0°,50%))、波長409nm(=λL R(0°,20%))、波長389nm(=λL R(40°,70%))、波長386m(=λL R(40°,50%))、及び波長383nm(=λL R(40°,20%))における透過率を表3に示す。
(赤外線カットフィルタ)
0.21mmの厚みを有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263)の一方の主面に、第二積層体の第二吸収膜と同一の吸収膜B2を形成した。第二吸収膜である吸収膜B2の厚みは100μmであった。第二吸収膜である吸収膜B2の上に、第一積層体の第一反射膜と同一の近赤外線反射膜R81を形成した。次に、第二吸収膜である吸収膜B2を透明ガラス基板より剥離した。このようにして第二吸収膜である吸収膜B2上に第一反射膜である近赤外線反射膜R81が形成されたフィルムを得た。このフィルムは近赤外線反射膜R81側が凸面となるように反った状態となった。さらに、近赤外線反射膜R81が形成されていない第一吸収膜のもう一方の面に、蒸着法によりSiO2膜を形成した。SiO2膜の厚みは3μmであった。これによりフィルムの反りが緩和された。続いて、SiO2膜の上に、第二積層体の第一吸収膜と同一の吸収膜A3を形成した。第一吸収膜である吸収膜A3の厚みは同様に3μmであった。さらに、第一吸収膜である吸収膜A3の上に、第一積層体の第二反射膜と同一の反射膜R82を形成した。このようにして、実施例10に係る赤外線カットフィルタを作製した。実施例10に係る赤外線カットフィルタの波長350〜1100nmにおける分光透過率を実施例1と同様に測定した。得られた透過率スペクトルを図30に示す。
表6に示す通り、実施例10に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λH(0°,70%)=615nm、波長λH(40°,70%)=611nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(70%)|=4nmであった。波長λH(0°,50%)=637nm、波長λH(40°,50%)=633nmであり、それらの差の絶対値
|ΔλH(50%)|=4nmであった。波長λH(0°,20%)=669nm、波長λH(40°,20%)=659nmであり、それらの差の絶対値|ΔλH(20%)|=10nmであった。実施例10に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルにおいて、波長λL(0°,70%)=423nm、波長λL(40°,70%)=430nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(70%)|=7nmであった。波長λL(0°,50%)=411nm、波長λL(40°,50%)=421nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(50%)|=10nmであった。波長λL(0°,20%)=410nm、波長λL(40°,20%)=399nmであり、それらの差の絶対値|ΔλL(20%)|=11nmであった。
<評価1>
実施例7に係る赤外線カットフィルタを所定の感度特性を有する撮像素子と組み合わせたときの分光感度について評価した。この評価には、図31に示す分光感度を有する撮像素子を用いた。撮像素子自体には色の識別能力はないので、RGBカラーフィルタにより色分解された光が撮像素子に導かれた結果、図31に示す分光感度が得られた。実施例7に係る赤外線カットフィルタに0°及び40°の入射角で光を入射させたときの分光透過率と、図31に示す分光感度とを合成した結果を図32に示す。図32において、最も短波長側にピークを有するスペクトルはBフィルタ(青色フィルタ)を透過した光に関する。また、最も長波長側にピークを有するスペクトルはRフィルタ(赤色フィルタ)を通過した光に関する。さらに、それらのピークの中間にピークを有するスペクトルはGフィルタ(緑色フィルタ)を通過した光に関する。図32に示す通り、入射角が40°のときの合成された分光感度は、入射角が0°のときの合成された分光感度と異なっていた。
撮像装置で得られる画像における色味の違いを評価する指標として、B/G比がある。実施例7に係る赤外線カットフィルタに入射する光の入射角を0°から40°まで段階的に変化させて各入射角について350〜1100nmの波長範囲における透過率スペクトルを得た。そのうえで、実施例7に係る赤外線カットフィルタを図31に示す分光感度を有する撮像素子と組み合わせたときのB/G比が、実施例7に係る赤外線カットフィルタに入射する光の入射角を0°から40°まで段階的に変化させたときにどのように変化するかを評価した。ここで、B/G比は、赤外線カットフィルタ及びGフィルタを透過した光の撮像素子における分光感度に対する、赤外線カットフィルタ及びBフィルタを透過した光の撮像素子における分光感度の比である。実施例7に係る赤外線カットフィルタに入射する光の入射角が0°であるときのB/G比の値を1.0としたときの相対値として、各入射角におけるB/G比を求めたところ、図33に示す結果が得られた。特に入射角が40°のときのB/G比は1.02であった。また同様に実施例、1〜10に係る赤外線カットフィルタについて得られた結果を表4〜表6の最下段に示す。これらからわかるように、全ての実施例について、B/G比が1.03以下となった。一般的にはB/G比は
0.97以上、かつ1.03以下の範囲にあることで、色再現性のよい品質の高い画質が得られるとされており、全ての実施例に係る赤外線カットフィルタは、実施例に係る赤外線カットフィルタに入射する光の入射角を0°から40°まで増加させても、B/G比の相対値はそれほど変化せず、実施例に係る赤外線カットフィルタは、入射角が大きく変化しても色再現性の高い画像を得るのに有利であることが示唆された。
実施例1、6、7、8、9、及び10に係る第一積層体の入射角が40°の透過率スペクトルは、波長400〜450nmの範囲に、入射角が40°の際に生じるリップルを有していた。また、実施例4、5、7、8、9、及び10に係る第二積層体は紫外線吸収性物質を有していた。そこで、これらの実施例を含めた全ての実施例に係る第二積層体及び赤外線カットフィルタの波長350〜450nmにおける透過率スペクトルに注目した。実施例1〜10の波長350〜450nmの第一積層体の透過率スペクトルを図34〜図43に、実施例1〜10の波長350〜450nmの赤外線カットフィルタの透過率スペクトルを図44〜図53に示す。図34〜図43に示す通り、実施例1〜10に係る第一積層体に40°の入射角で光が入射するときの透過率スペクトルの透過帯域と紫外線反射帯域との間の遷移帯域は、実施例1〜10に係る第一積層体に垂直に光が入射するときに比べて短波長側にシフトしていた。このため、実施例1に係る第一積層体において、入射角が0°であるときに透過率スペクトルのその遷移帯域で透過率が50%である波長λL R(0°,50%)は約411nmであったのに対し、入射角が40°であるときに透過率スペクトルのその遷移帯域で透過率が50%である波長λL R(40°,50%)は393nmであった。実施例2においては、λL R(0°,50%)は405nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は387nmであった。実施例3においては、λL R(0°,50%)は405nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は約387nmであった。実施例4においては、λL R(0°,50%)は405nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は387nmであった。実施例5においては、λL R(0°,50%)は405nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は387nmであった。実施例6においては、λL R(0°,50%)は410nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は392nmであった。実施例7においては、λL R(0°,50%)は410nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は392nmであった。実施例8においては、λL R(0°,50%)は410nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は394nmであった。実施例9においては、λL R(0°,50%)は410nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は394nmであった。実施例10においては、λL R(0°,50%)は410nmであるのに対し、λL R(40°,50%)は386nmであった。これにより、全ての実施例に係る赤外線カットフィルタを透過する短波長側の光の光量が入射角の増加に伴い増加しやすいことが示唆された。なお、Bフィルタを透過可能な光の実効的な波長範囲(透過率が20%以上である波長の範囲)は、例えば約380〜550nmである。このため、入射角の増加に伴う短波長側の光の光量の増加は撮像素子における受光量にも影響を及ぼし、得られる画像における色再現性及び色味の均一性を低下させる可能性がある。
図34、図39〜図43に示す通り、実施例1、6、7、8、9、及び10に係る第一積層体に40°の入射角で光が入射するときの透過率スペクトルは、波長400〜450nmの範囲で、ベースラインとの差が15ポイント以上である極小値を有し、かつ、半値全幅が10nm以上であり、半値全幅をΔλCとすると(400−ΔλC/2)〜(450−ΔλC/2)nmに極大値が存在するスペクトル(リップル)を有していた。これに伴い、図44、図49〜図53に示す通り、実施例1、6、7、8、9、及び10に係る赤外線カットフィルタに40°の入射角で光が入射するときの透過率スペクトルにそのリップルが反映されていた。このため、実施例1、6、7、8、9、及び10に係る赤外線カットフィルタでは、入射角の増加に伴って遷移帯域が短波長側に増加することによる短波長側の光の光量の増加を相殺でき、表4〜表6に示す通り、撮像素子として重要な指標であるB/G比を所定の範囲内に抑制できることが示唆された。また、図37、図38、図40〜図43に示す通り、実施例4、5、7、8、9、及び10に係る第二積層体に光が入射するときの透過率スペクトルにおいて、波長λL R(0°,50%)における分光透過率が55%以下であり、かつ、第二積層体の分光透過率が波長350〜450nmの範囲で70%から20%以下に低下していた。これに伴い、図47、図48、図50〜図53に示す通り、実施例4、5、7、8、9、及び10に係る赤外線カットフィルタに0°及び40°の入射角で光が入射する時の透過率スペクトルにおいて、入射角が0°であるときの分光透過率が50%である波長λL(0°,50%)と入射角が40°であるときの分光透過率が50%である波長λL(40°,50%)との差の絶対値|ΔλL(50%)|は、10nm以内であった。このため、実施例4、5、7、8、9、及び10に係る赤外線カットフィルタでは、入射角の増加に伴って遷移帯域が短波長側にシフトすることによる短波長側の光の光量の増加を相殺でき、表4〜表6に示す通り、撮像素子として重要な指標であるB/G比を所定の範囲内に抑制できることが示唆された。
<評価2>
全ての実施例を代表して実施例1及び実施例8に係る赤外線カットフィルタの透過率スペクトルとTL84光源の輝線スペクトルとの関係について評価した。図54及び図55に示す通り、TL84光源の光強度スペクトルは、波長440nm付近、波長550nm付近、及び波長610nm付近に輝線スペクトルを有していた。これらの輝線スペクトルに重なる比較的大きいリップル(例えば、ベースラインと極値との差が4ポイント以上であり、かつ、半値幅が15nm以上であるスペクトル)が赤外線カットフィルタの透過率スペクトルに現れていると、その赤外線カットフィルタを備えた撮像装置から良好な色再現性を有する画像が得られない可能性がある。しかし、図54、図55、さらには、図10〜図30等に示す通り、実施例1〜10に係る赤外線カットフィルタのいずれの入射角における透過率スペクトルにも、TL84光源の波長440nm付近、波長550nm付近、及び波長610nm付近に現れる輝線スペクトルと重なる比較的大きいリップルは現れなかった。このため、実施例1〜10に係る赤外線カットフィルタを撮像装置に用いると、TL84光源の下でも良好な色再現性を有する画像が得られやすいことが示唆された。