以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明をビジネスバッグに適用した例である。図1(A)は、本実施例のビジネスバッグの通常使用時の外観斜視図,図1(B)は側面から被覆部材を取り外した状態を示す外観斜視図,図1(C-1)及び(C-2)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。これらの図に示すように、本実施例のビジネスバッグ10は、バッグ本体12と一対の持ち手28A,28Bにより構成されている。前記バッグ本体12は、4つの側面14,16,18,20と、底面22と上面24により形成されている。前記上面24には、収納物を出し入れするための開口部25が設けられており、ファスナなどの開閉具26A,26Bにより開閉可能となっている。
本実施例では、図1(B)に示すように、前記側面14は、ファスナなどの着脱具30により分離可能な被覆部材15により覆われている。前記側面14には、一対の肩ベルト32A,32Bが設けられており、通常使用時には、図1(A)に示すように、前記一対の肩ベルト32A,32Bは、被覆部材15により覆われている。前記肩ベルト32A,32Bは、津波などの緊急時に、前記被覆部材15を分離してから使用するものであり、浮力材によって形成されている。前記側面14が、使用者40が背中に背負ったときに背中に当接する面になり、本実施例では、側面14も浮力材によって形成されている。なお、本実施例では、前記側面14も浮力材により形成されているが、十分な浮力の確保ができるようでれば、一対の肩ベルト32A,32Bのみを浮力材で形成してもよい。また、本実施例では、被覆部材15も浮力材により形成されており、非常時には、ビート板として使用することが可能となっている。
次に、本実施例の作用を説明する。通常のビジネスバッグとして使用するときは、使用者40は、図1(A)に示す持ち手28A,28Bを持つ。そして、救命バッグとして使用するときは、図1(B)に示すように、着脱具30を開いて被覆部材15をバッグ本体12から分離し、側面14及び肩ベルト32A,32Bが現れるようにする。そして、通常のリュックサックのように、肩ベルト32A,32Bに両腕を通し、肩ベルト32A,32Bが両肩上に位置するようにして、バッグ本体12を背負う。
このようにすることで、津波等に巻き込まれても、浮力材で形成された肩ベルト32A,32B及び側面14により、図1(C-1)に示すように浮力を確保することができる。すなわち、図1(C-1)に示すように、流れFを浮力に利用する,すなわち、縦のモーメントMが働くため、激流ほど浮力が強くなる。また、このとき、被覆部材15も浮力材で形成されていれば、図1(C-2)に示すように、該被覆部材15をビート板として使用することで、更に浮力を確保しやすくなる。
このように、実施例1によれば、ビジネスバッグ10のバッグ本体12の一つの側面14に、一対の肩ベルト32A,32Bを設け、前記側面14と一対の肩ベルト32A,32Bを、前記側面14に対して着脱具30によって分離可能な被覆部材15で覆い、少なくとも前記一対の肩ベルト32A,32Bを浮力材で構成することとした。このため、津波などの水難事故に巻き込まれたときに容易に装着可能であって、良好に浮力を確保することができる。特に、前記一対の肩ベルト32A,32Bや側面14を浮力材で形成することで、ガスで膨らませる場合と比べて空気が抜けることがなく、安定して浮力を維持することができる。そして、浮力を安定して確保することができるため、緊急時でも冷静な判断をすることが可能となる。更に本実施例では、前記被覆部材15も浮力材で形成することとしたので、ビート板として使用することができ、一層浮力の確保が容易となる。
次に、図2を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。本実施例は、本発明をランドセルに適用した例である。図2(A)は通常のランドセル状態の外観斜視図,図2(B)は被覆部材を分離した状態を示す外観斜視図,図2(C-1)及び(C-2)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。これらの図に示すように、本実施例のランドセル50は、ランドセル本体52と、一対の肩ベルト68A,68Bにより構成されている。前記ランドセル本体52は、4つの側面54〜60と、底面62と、蓋64により構成されており、蓋64は、ランドセル本体52に対して開閉可能となっている。
本実施例では、前記側面54が背負い面となっており、該側面54に対して、ファスナなどの着脱具66により分離可能な被覆部材55が、前記側面54を覆っている。前記被覆部材55には、通常のランドセルとして使用するときの一対の肩ベルト70A,70Bが設けられている。そして、前記側面54には、非常時に救命バッグとして使用するときの肩ベルト68A,68Bが設けられており、通常使用時には、前記被覆部材55により覆われている。前記一対の肩ベルト70A,70Bは、浮力材により形成されており、これに加えて、必要に応じて、前記側面54や被覆部材55も浮力材により形成するようにしてもよい。
更に、本実施例では、前記一対の肩ベルト68A,68Bに、笛81を収納する収納スペース80が設けられているほか、前記一対の肩ベルト68A,68Bを胴体に固定するためのチェストベルト86A,86Bも設けられている。これらチェストベルト86A,86Bは、着脱具87により、着脱自在となっている。更に、前記側面54には、合羽やヤッケ等の低体温を防ぐためのグッズを収納するための収納スペース88が設けられている。このほか、ランドセル本体52の下側には(図示の例では、側面56の下側)には、カバンの内部に侵入した水を抜くための排水口82が設けられている。
また、本実施例では、使用者40を捜索ないし探索しやすくするための工夫として、肩ベルト68Aに、ICチップ84が設けられている。更に、前記側面54や肩ベルト68A,68Bを、水に浸かると発熱する素材で形成しており、水難事故に巻き込まれた使用者40を探索しやすくなっている。
次に、本実施例の作用を説明する。通常のランドセル50として使用するときは、使用者40は、図2(A)に示すように、被覆部材55の一対の肩ベルト70A,70Bに両腕を通してランドセル50を背負う。そして、緊急時に救命バッグとして使用するときは、図2(B)に示すように、着脱具66を開いて被覆部材55を、ランドセル本体52から分離し、側面14A及び一対の肩ベルト68A,68Bが現れるようにする。そして、通常のランドセルのように、肩ベルト68A,68Bに両腕を通し、肩ベルト68A,68Bが両肩上に位置するようにして、ランドセル本体52を背負う。このようにすることで、津波等に巻き込まれても、浮力材で形成された肩ベルト68A,68B及び側面54により、図2(C-1)及び(C-2)に示すように、浮力を確保することができる。また、このとき、ランドセル本体52から分離した被覆部材55をビート板として使用することで、更に浮力を確保しやすくなる。
なお、本実施例では、収納スペース80,88に、笛や、合羽・ヤッケ等を収納しているため、使用者40が笛で自分の存在を周囲に知らせたり、水難が去ったのちに、合羽やヤッケ等を着用して低体温になることを防止したりすることも可能である。また、ランドセル本体52に排水口82を設けているため、溜まった水も自動的に排出される。更に、肩ベルト68AにICチップ84を設けたり、側面54を水に浸かると発熱する素材により形成したりすることで、センサを使用することにより使用者40の捜索が容易になる。他の基本的な作用・効果は、上述した実施例1と同様である。
次に、図3及び図4を参照しながら本発明の実施例3を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。本実施例は、前記実施例のランドセルを救命システムに適用した例である。図3は、本実施例の救命システムの全体構成を示すブロック図である。図4(A)は、本実施例のランドセルの通常の状態を示す外観斜視図,図4(B)は被覆部材を分離した状態を示す外観斜視図,図4(C-1)及び(C-2)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。
本実施例の救命システム100は、図3に示すように、ランドセル50Aと、該ランドセル50Aに設けられたカードタグ110と、探索機130と、各種の通報先150により構成されている。図3及び図4に示すランドセル50Aは、基本的には、前記実施例2のランドセル50と同様の構成であるが、側面54には、一対の肩ベルトの代わりに、ベストタイプのつなぎ服72が設けられている。つなぎ服72は、腕を通す一対の背負い部72A,72Bとこれらを開閉ないし着脱するためのベルト74A〜74Cにより構成される。
前記カードタグ110は、電波を利用して人や物を認識する非接触型の自動認識技術(RFID)を利用したものであり、使用者の個人情報113を記憶したICチップ112と、無線通信を行うためのアンテナ114を含んでいる。また、本実施例では、使用者の位置情報取得手段として、GPS116が設けられている。
前記個人情報113は、前記カードタグ110の表面に記載された事項,すなわち、使用者の顔写真や連絡先等が記録されている。例えば、使用者の氏名,住所・本人連絡先,家族連絡先,病歴,服用中薬品情報,血液型,健康保険証番号・・・等が記録されている。このほか、必要な事項を記録してもよい。前記アンテナ114としては、例えば、長距離通信可能なUFHアンテナが用いられる。前記アンテナ114を介して、ICチップ112の個人情報113が、探索機130で読取可能となっている。また、本実施例では、GPS116により取得した位置情報も、前記個人情報113と併せて探索機130で読み取り可能となっている。なお、前記GPS116の代わりに、上述した実施例2に示すように、ランドセル本体52やつなぎ服72の素材を、水に浸かると発熱する素材により形成し、探索機130に熱を感知するセンサ(図示せず)を搭載することで、使用者40の位置を確認するようにしてもよい。
前記探索機130は、前記カードタグ110と同帯域で無線通信可能なアンテナ132と、前記個人情報113の読取・書込や、位置情報の取得盗を行うコントローラ134により構成されている。前記コントローラ134は、前記アンテナ132により、カードタグ110の存在を検知すると、そのICチップ112に記録された個人情報113や位置情報を読み取り、必要に応じて、医療機関152,救助者154,家族156などの所定の通報先150に使用者40の存在を知らせる。
例えば、医療機関152にあらかじめカードタグ110から読み取った情報を通知しておけば、迅速かつ的確な処理を施すことが可能となる。例えば、既往症や投薬禁忌の情報を本人が喋ることができない状況でも医療機関152等に示すことができる。また、救助者154や家族156に個人情報や位置情報を通知することにより、速やかに救助に駆け付け、適切な応急処置を施す等の対応が可能となる。なお、前記カードタグ110は、搬送先の医療機関152で改めて提示するようにしてもよい。例えば、使用者が倒壊した家屋やがれき等に挟まれており、捜索者の視界に入らない場合であっても、探索機130によりカードタグ110を検知することにより、使用者の存在を知ることができ、探索に好適である。また、探索機130と通信可能なサーバを利用することにより、取得した個人情報113をもとにして、被災者の安否情報の検索に活用するようにしてもよい。これにより、行方不明者を減らし、例え、最悪の状況になっても、身元の判明が容易となる。
このように、本実施例によれば、ランドセル50Aに設けられた無線通信可能なカードタグ110によって、使用者40の個人情報や位置情報を探索機130で読み取り、必要であれば、所定の通報先に150に通知することとしたので、迅速な救援や必要な処置等が可能となる。これにより、生存の可能性が向上する。
次に、図5を参照しながら本発明の実施例4を説明する。本実施例は、ランドセルの他の形態を示すものである。図5(A)は通常のランドセル状態を示す外観斜視図,図5(B)は被覆部材を分離した状態を示す外観斜視図,図5(C)は被覆部材を切り離した状態を示す外観斜視図,図5(D)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。図5に示すランドセル50Bは、基本的には、前記実施例2のランドセルと同様の構成であるが、本実施例では、図5(B)に示すように、被覆部材55と側面54を分離したときに、被覆部材55が紛失しないように、ロープ76により接続されている。なお、前記ロープ76は、図5(C)に示すように、側面54側に着脱具76Aを設け、前記ロープ76ごと被覆部材55を完全に切り離すようにしてもよい。このようなロープ76は、上述した実施例1〜3においても、当然に設けてよい。
また、本実施例のランドセル50Bでは、図5(D)に示すように、被覆部材55を完全に分離せず、側面54の底面側とは連結状態を保つように、着脱具66を開くようにしてもよい。このようにすると、使用者40の背中を側面54の浮力材で浮かせるのみならず、前記被覆部材55が使用者40の腰から下の部分にも接触するようになるので、使用者40は包み込まれた、あるいは、抱きかかえられているような安定感を得られる。そして、ランドセル本体52に設けられている排水口82は、水に浸かった状態では、バラスト(重し)としての海水をランドセル本体52に取り入れる給水口として作用し、ランドセル本体52を水中で安定させることができる。
更に、本実施例のランドセル50Bは、図5(B)〜(D)に示すように、側面54の下側に、開閉可能な収納スペース77を有しており、該収納スペース77には、図5(D)に示すように、使用者40の足を通すための足ベルト78が収納されている。なお、足ベルト78の構造は、使用者40の両足を通して固定できる構造であれば、図示の例に限定されない。
また、本実施例のランドセル50Bは、一対の肩ベルト68A,68Bに反射板69が設けられており、捜索がしやすくなっている。また、前記一対の肩ベルト68A,68Bの上方には、収納スペース94に収納された枕93が設けられている。空気の吹き込み口93Aから空気を吹き込んで膨張させることにより、前記枕93を使用することができる。前記枕93は、破れたとしても水中には位置しないため、浮力に影響を与えることはない。
次に、図6を参照しながら本発明の実施例5を説明する。図6(A)は、通常使用時の外観斜視図,(B)は被覆部材を取り外した状態を示す外観斜視図,(C)は救命バッグとして利用する状態を示す外観斜視図である。上述した実施例1〜4は、いずれも、肩ベルトや背負い部自体を浮力材で形成した例であるが、本実施例は、これらをガスの注入によって膨張する膨張式にした例である。図6に示すランドセル50Cは、基本的には、前記実施例2のランドセル50と同様の構成であるが、本実施例では、背負い面である側面54に設ける肩ベルト200A,200Bが、膨張式となっている点で異なる。
前記一対の肩ベルト200A,200Bは、図6(A)及び(B)に示すように、内側にガスを注入することで膨張可能な浮き袋であって、布等により形成されている。前記肩ベルト200A,200Bの下部には、該肩ベルト200A,200Bを膨らませるためのガス,例えば炭酸ガス(CO2ガス)を充填したガスカートリッジ202A,202Bが設けられている。これらガスカートリッジ202A,202Bは、レバー204A,204Bを引くことで、前記肩ベルト200A,200Bの内側にCO2ガスを放出するようになっている。また、本実施例では、側面54に設けられた収納スペース88に、予備のガスカートリッジ202C,202Dが収納されている。
本実施例のランドセル50Cを救命バッグとして使用するときには、図6(B)に示すように、被覆部材55を外し、レバー204A,204Bを引いて、肩ベルト200A,200Bを膨らませる。これにより、肩ベルト200A,200Bが浮力体として作用するため、上述した実施例と同様の効果が得られる。また、本実施例では、通常のランドセルとして利用するときには、肩ベルト200A,200Bを膨らませる必要がないため、ランドセル50C自体をコンパクトにすることができる。さらに、予備のガスカートリッジ202C,202Dを収納袋88に収納しておくことで、例えば、避難訓練などでガスカートリッジ202A,202Bを使い切ったとしても、交換が可能である。
次に、図7及び図8を参照しながら、本発明の実施例6を説明する。図7は、本実施例のランドセルを示す図であり、(A)は被覆部材を分離した状態を示す外観斜視図,(B)はU字型の背負い部を示す外観斜視図,(C)はベスト型の背負い部を示す外観斜視図である。図8(A)は背負い面に、膨張前の背負い部を装着した状態を示す平面図,図8(B)は背負い部にガスを放出して膨張させた状態を示す外観斜視図である。上述した実施例はいずれも、背負い部は、背負い面に固定された構造であったが、本実施例は、背負い部が、背負い面に対して着脱可能な構成となっている。
図8(A)に示すように、本実施例のランドセル50Dは、背負い面となる側面54の上部中央と、下部両端に、アタッチメント210,212,214を備えている。図7(A)に示すように、ランドセル本体52側には、ベルト210C,212C,214Cを介して、アタッチメントのメス部210A,212A,214Aが設けられている。一方、前記側面54に着脱可能に取り付けられる背負い部は、図7(B)及び(C)に示すように、U字型のタイプや、ベストタイプのものがある。
図7(B)に示すU字型の背負い部220について説明すると、該背負い部220は、ガスの注入により膨張可能な略U字状の浮き袋222と、該浮き袋222に、例えばCO2ガスを放出するガスカートリッジ226と、レバー228とにより構成されている。前記浮き袋222の中央部(ランドセルを背負ったときに使用者の頸部に当たる部分)には、アタッチメント210のオス部210Bが、ベルト224Aを介して取り付けられている。また、前記浮き袋222の両端は、他のベルト224Bで連結されており、該ベルト224Bの適宜位置に設けられたベルト224C,224Dを介して、アタッチメントのオス部212B,214Bが取り付けられている。前記ランドセル本体側のメス部210A,212A,214Aに、オス部210B,212B,214Bを嵌めることで、浮き袋222が着脱可能に取り付けられる。
また、背負い部220の一対の肩ベルトに相当する部分(U字形状の両腕部分)は、アタッチメント216により連結可能となっている。図示の例では、アタッチメントのメス部216Aは、浮き袋222の一方の肩ベルトの中央部にベルト216Cによって取り付けられ、アタッチメントのオス部216Bは、浮き袋222の他方の肩ベルトの中央部にベルト216Dによって取り付けられている。前記メス部216Aとオス部216Bの締結により、背負い部220が使用者40の身体からずれにくくなる。更に、前記浮き袋222には、反射板256A,256Bが設けられている。
更に、本実施例では、側面54に設けた収納部88に、予備のガスカートリッジ226A,226Bや、折り畳み式のヘルメット230等が収納されている。なお、収納部88に収納するものとしては、前記折り畳み式ヘルメット230のほか、ペンライト,ラジオ,手袋,簡易トイレ,寝袋などの他の防災グッズを収納してもよい。また、これらの防災グッズは、ランドセル本体52に収納してもよい。収納部88やランドセル本体52に収納しておくことにより、水に流されることがない。
また、前記側面54の上部には、使用者40の身元照会に必要な情報を有するカード242を収納する防水ポケット240が設けられている。前記カード242は、例えば、銀行カード,クレジットカード,各種会員カードのように、発行元に問い合わせることで指名等が分かるものであってもよいし、氏名と連絡先を記入した自作のものであってもよい。また、前記防水ポケット240に、上述した実施例3で示したカードタグ110を収納してもよい。更に、本実施例では、前記収納部88の下部に、開閉具252によって開閉可能な収納部250が設けられており、使用者の足を通す足ベルト254が収納されている。足ベルト254は、図8(B)に示すように、4本のバンド254A〜254Dにより構成されており、使用者40の両足を通すことが可能となっている。なお、図示の例では、前側のバンド254C,254Dは、図示しないアタッチメント等により、浮き袋222の両端に固定されている。
本実施例のランドセル50Dを救命バッグとして使用するときは、図8(A)に示すように、被覆部材55を外したのち、レバー228を引いてガスカートリッジ226から浮き袋222にCO2ガスを放出して、図8(B)に示すように膨らます。また、必要に応じて、収納部250から足ベルト254を取り出し、両足を通して固定する。
また、本実施例では、前記背負い部220を、ベスト型の背負い部260に交換することが可能となっている。図7(C)に示すように、背負い部260は、使用者の両腕を通すことが可能なベスト型の浮き袋となっており、下部には、前記カートリッジ226とレバー228が設けられている。前記ベストの背面側上部には、ベルト262を介して前記オス部210Bが設けられ、前記ベストの背面側下部両端には、ベルト264,266を介して前記オス部212B,214Bが設けられている。したがって、必要に応じて、前記U字型の背負い部220と、ベスト型の背負い部260を交換して使用することができる。なお、ここでは、背負い部220,260ともに、膨張式のものとしたが、一方又は両方を、浮力材で形成したものとしてもよい。
本実施例によれば、上述した実施例5の効果に加え、使用者の体格等に応じてU字型の背負い部220とベスト型の背負い部260を交換して使用することができる。また、U字型の背負い部220では、CO2ガスをいれて膨張させたときに、使用者40の頸部から頭部を受けるため、これらの部位の保護も可能である。更に、背負い部220,260に、反射板256A,256Bを設けたので、探索がしやすい。また、使用者40の身元確認のためのカード242を防水ポケット240に収納したため、身元情報が水で損なわれず、身元照会が容易となる。更に、収納部250に収納した足ベルト254を使用することにより、ランドセル50Dがよりいっそう使用者40の身体にしっかりと固定されるため、津波などで流されにくくなる。更に、前記収納部88に、折り畳みヘルメット230や、その他の防災グッズを収納しておくことにより津波等に流されることがないため、水難が去ったのちの避難生活等に使用することができる。
次に、図9を参照しながら本発明の実施例7を説明する。図9は、本実施例のビジネスバッグを示す図であり、(A)は被覆部材を分離した状態を示す外観斜視図,(B)はU字型の背負い部を示す外観斜視図,(C)はベスト型の背負い部を示す外観斜視図である。本実施例は、上述した実施例6の着脱式の背負い部を、ビジネスバッグに適用した例である。すなわち、ビジネスバッグ10Aは、側面14に、アタッチメント210,212,214のメス部210A,212A,214Aが設けられ、図9(B)に示すU字型の背負い部220及び図9(C)に示すベスト型の背負い部260に、オス部210B,212B,214Bが設けられている。これら背負い部220,260は、必要に応じて交換して使用してよい。他の基本な作用・効果は、上述した実施例6と同様である。
次に、図10を参照しながら本発明の実施例8を説明する。上述した実施例1〜7はいずれも、背負い面に設けた背負い手段が浮力を有する例であるが、本実施例は、使用者の胴部に固定される胴部ベルトを浮き袋にして浮力をつけることとした例である。図10(A)は、本実施例のランドセルに浮き袋を収納した状態を示す外観斜視図,図10(B)は浮き袋を膨張させてバッグ本体の外側へ出した状態を示す外観斜視図,図10(C)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。
本実施例のランドセル50Eは、背負い面となる側面54Aに、一対の肩ベルト70A,70Bが設けられている。前記肩ベルト70A,70Bには、使用者40の胸の前で連結可能なチェストベルト316A,316Bが設けられている。これらチェストベルト316A,316Bは、図10(A)に示すように、基部318A,318Bに回転可能に設けられており、使用時は図10(B)に示すように連結し、使用しないときには図10(A)に示すように連結を解除して収納可能となっている。本実施例では、上述した実施例と異なり、側面54Aは、被覆部材で覆われていない。前記側面54Aの内側には、内側にガスを注入することで膨張可能な浮き袋であって、布等により形成された胴部用の浮き袋300A,300Bが収納されている。前記浮き袋300A,300Bには、ベルト302A,302Bが設けられており、着脱具304によって着脱可能及び長さ調節可能となっている。また、前記浮き袋300A,300Bには、反射板314A,314Bが設けられている。前記側面54Aの内側には、使用者40の胴部に固定するための補助ベルト306A,306Bが収納されている。これら補助ベルト306A,306Bは、着脱具308により着脱可能かつ長さ調節可能となっている。
前記側面54Aの内側には、前記浮き袋300A,300Bを膨らませるためのガス,例えば炭酸ガス(CO2)を充填した図示しないガスカートリッジが設けられている。当該ガスカートリッジは、レバー320を引くことで、前記浮き袋300A,300Bの内側にCO2ガスを放出する。前記レバー320を引いて、浮き袋300A,300Bを膨張させると、これら浮き袋300A,300Bは、バッグ本体56の側面に設けられた出し入れ口310A,310Bから飛び出し、装着可能な状態となる。なお、図示の例では、前記出し入れ口310A,310Bに何も設けていないが、浮き袋300A,300Bの膨張によって、自動的に開くような開閉具(ファスナや面ファスナなど)を設けるようにしてもよい。
本実施例のランドセル50Eでは、側面54Aを被覆部材が覆っておらず、救命バッグとして使用する際には、前記レバー320を引くだけで、ガスが注入されて膨張した浮き袋300A,300Bがランドセル本体56の両側面からでてくる。このため、ランドセル50Eを装着したまま、浮き袋300A,300Bを装着することができる。他の基本的な作用・効果は上述した実施例2と同様である。なお、本実施例では、肩ベルト70A,70Bは浮力を有しない構造としたが、上述した実施例1〜7のように、浮力を有する肩ベルトやベスト、あるいは、U字型の浮き袋と、本実施例の腰用の浮き袋300A,300Bと併用するようにしてもよい。
次に、図11を参照しながら本発明の実施例9を説明する。本実施例は、上述した実施例8を、ビジネスバッグに適用した例である。図11(A)は、本実施例のビジネスバッグに浮き袋を収納した状態を示す外観斜視図,図11(B)は浮き袋を膨張させてバッグ本体の外側へ出した状態を示す外観斜視図,図11(C)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。
本実施例のビジネスバッグ10Bは、背負い面となる側面14に、一対の肩ベルト350A,350Bが設けられている。前記側面14の内側には、前記実施例8と同様の浮き袋300A,300Bと、それにガスを注入するための図示しないガスカートリッジと、補助ベルト306A,306Bが収納されている。前記浮き袋300A,300Bは、バッグ本体12の側面に設けられた出し入れ口352A,352Bから出し入れ可能となっている。また、上述した実施例8と同様に、レバー320を引いて浮き袋300A,300Bを膨張させると、前記出し入れ口352A,352Bから自動的に飛び出すようになっている。本実施例の作用・効果は、上述した実施例8と同様である。上述した実施例1〜7の浮力を有する肩ベルトやベスト、あるいは、U字型の浮き袋をと、本実施例の腰用の浮き袋300A,300Bと併用してよいことも同様である。
次に、図12を参照しながら、本発明の実施例12を説明する。本実施例は、上述した実施例11の変形例である。本実施例のビジネスバッグ10Cは、側面14が着脱可能な被覆部材15で覆われた構成となっており、着脱具30により着脱可能となっている。本実施例では、完全に分離した被覆部材15を浮力材で形成しておくことで、ビート板として使用するようにしてもよいし、側面14の下縁とのみ連結するようにして、使用者40の体を水中で支えるようにしてもよい。本実施例の基本的な作用・効果は、上述した実施例9と同様である。上述した実施例1〜7の浮力を有する肩ベルトやベスト,あるいは、U字型の浮き袋と、本実施例の腰用の浮き袋300A,300Bと併用してよいことも同様である。
次に、図13を参照しながら、本発明の実施例13を説明する。上述した実施例1〜10はいずれも、バッグ本体の外側に浮力を有する浮力体を設けることとしたが、本実施例は、バッグ本体内に浮力体を設けることとした例である。図13(A)は、本実施例のランドセルに浮き袋を収納した状態を示す外観斜視図,図13(B)は浮き袋を膨張させる様子を示す図,図13(C)は救命バッグとして使用中の様子を示す図である。図13(D)は、本実施例をビジネスバッグに適用して救命バッグとして使用中の様子を示す図である。
図13(A)に示すように、本実施例のランドセル50Fは、側面54Aに一対の肩ベルト70A,70Bを備えており、ランドセル本体52の内側に、ガスを注入することでビート板のような形状に膨張可能な浮き袋360が収納されている。前記側面54Aの内側には、前記浮き袋360を膨らませるためのガス,例えば炭酸ガス(CO2)を充填したガスカートリッジ362が設けられている。当該ガスカートリッジ362は、図13(B)に示すように、レバー364を引くことで、前記浮き袋360の内側にCO2ガスを放出する。前記レバー364を引いて、浮き袋360を膨張させると、この浮き袋360は、ビート板のような形状に膨張し、そのまま浮力材としてランドセル本体52内におさまる。
本実施例のランドセル50Fでは、側面54Aを被覆部材が覆っておらず、救命バッグとして使用する際には、前記レバー364を引くだけで、ガスが注入されて膨張したビート板状の浮き袋360がランドセル本体52におさまり、図13(C)に示すように、浮力材として作用する。このため、ランドセル50Fを装着したまま、レバー364を引くだけで救命バッグとして使用できる。他の基本的な作用・効果は上述した実施例2と同様である。
なお、本実施例では、肩ベルト70A,70Bは浮力を有しない構造としたが、上述した実施例1〜7のように、浮力を有する肩ベルトやベスト、あるいは、U字型の浮き袋と、実施例8〜10に示す腰用の浮き袋300A,300Bと併用したりしてもよい。むろん、本実施例は、ビジネスバッグにも適用可能であり、図13(D)に示すビジネスバッグ10Dに示すように、バッグ本体12内に、上述した浮き袋360と、ガスカートリッジ362を収納し、救命バッグとして使用するときにレバー364を引く構成としてもよい。
次に、図14を参照しながら、本発明の実施例12を説明する。本実施例は、浮力体をバッグ本体に対して着脱可能な構成とした例である。図14は、本実施例のランドセルを示す外観斜視図である。同図に示すように、本実施例のランドセル50Gは、背負い面となる側面54に一対の肩ベルト70A,70Bが設けられている。本実施例も、前記側面54は、被覆部材で覆われていない。バッグ本体52の側面56には、開口部372を備えた筒状体370が着脱可能に設けられている。前記筒状体370の内側には、内側にガスを注入することで膨張可能な浮き袋374が収納されている。該浮き袋374は、本実施例では、膨張させたときに長方形のビート板として使える形状となっている。また、前記浮き袋374の端部中央には連結ベルト380が設けられており、浮き袋374をランドセル50Gや使用者40の着衣などに連結可能となっている。
また、本実施例では、前記筒状体370の内側には、前記浮き袋374を膨らませるためのガス,例えば炭酸ガス(CO2)を充填したガスカートリッジ378が設けられている。当該ガスカートリッジ378は、レバー376を引くことで、前記浮き袋374の内側にCO2ガスを放出する。前記レバー376を引いて、浮き袋374を膨張させると、該浮き袋374は、バッグ本体の側面56に設けられた開口部372から飛び出す。また、レバー376と同時に、筒状体370自体がバッグ本体56から外れる構成としてもよい。なお、図示の例では、前記開口部372に何も設けていないが、浮き袋374の膨張によって、自動的に開くような開閉具(ファスナや面ファスナなど)を設けるようにしてもよい。また、本実施例では、肩ベルト70A,70Bは浮力を有しない構造としたが、上述した実施例1〜7のように、浮力を有する肩ベルトやベスト、あるいは、U字型の浮き袋と、本実施例のビート板状の浮き袋374を併用するようにしてもよい。
次に、図15を参照しながら、本発明の実施例13を説明する。本実施例は、上述した実施例12をビジネスバッグに応用した例である。本実施例のビジネスバッグ10Eは、背負い面となる側面14に、一対の肩ベルト32A,32Bが設けられている。本実施例では、肩ベルト32A,32Bは、浮力材により形成されている。前記ビジネスバッグ本体12の内側には、板状体402が収納されている。該板状体402の内側には、胴ベルト状の浮き袋408,410が収納されるとともに、これら浮き袋408,410にガスを注入するための図示しないガスカートリッジと、補助ベルト420,422が収納されている。前記浮き袋408,410は、前記板状体400の両端近傍に設けられた開口部404,406から出し入れ可能となっている。また上述した実施例12と同様に、レバー412,414を引いて浮き袋408,410を膨張させると、前記開口部404,406から自動的に飛び出すようになっている。そして、前記板状体400を背中に当て、浮き袋408,410を胴部に回して、補助ベルト420,422を連結具424,426で連結すると、救命胴衣400として使用することができる。本実施例の基本的な作用・効果は上述した実施例12と同様であるが、本実施例によれば、使用者40は浮力材で形成された肩ベルト32A,32Bを有するビジネスバッグ10Eを使用し、他の人に、救命胴衣を貸することもでき、1つのバッグで2名分の浮力確保をすることができる。むろん、本実施例と他の実施例を組み合わせて、他の実施例で2名分の浮力を確保するようにしてもよい。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。素材についても、同様の効果を発揮するものであれば、公知の各種の素材を用いてよい。
(2)前記実施例1では、バッグ本体12の被覆部材15には肩ベルトを設けないこととしたが、図16(A)に示すビジネスバッグ10Fのように、被覆部材15にも、一対の肩ベルト34A,34Bを設けることにより、2ウェイバッグとして使用するようにしてもよい。この場合も、救命バッグとしての使用方法は、上述した実施例1と同様である。
(3)前記実施例では、側面と被覆部材を分離可能にするための着脱具としてファスナを例に挙げたが、これも一例であり、同様の効果を奏する範囲で、公知の各種の着脱具を使用してよい。
(4)前記実施例では、救命バッグのいずれのかの部分を水に浸かると発熱する素材で形成し、熱を検知するセンサを用いて使用者40の位置を確認することとしたが、これも一例であり、救命バッグに、使用者の体温を検知する温度センサを設け、この検知結果を探索機に送信するようにしてもよい。
(5)前記実施例2は、収納スペース80,88や、排水口82,ICチップ84,チェストベルト86A,86Bを設けることとしたが、これらは必要に応じて設ければよい。また、他の救命グッズや避難グッズを設けることを妨げるものではない。図16(B-1)に示すように、図1(B)の一対の肩ベルト32A,32Bの肩ベルトの根元に、開閉具94によって開閉可能な収納部92を設け、該収納部92内に、引き出し可能な保護袋90を設けるようにしてもよい。該保護袋90に図示しない吹き込み口から空気を吹き込んで、図16(B-2)に示すように膨らませることにより、図16(C)に示すように、使用者40の頸部から頭部にかけて保護することができる。前記保護袋90は、枕としても使用できる。このほか、カバンの中に他の保温グッズを収納したり、反射板を設けたりするようにしてもよい。
(6)図16(D)に示すビジネスバッグ10Gのように、バッグ本体12から引き出し可能なハンドル95を設けるようにしてもよいし、底面22に着脱可能なキャスタ96が設けられたプレート98を設け、必要に応じて、プレート98ごとバッグ本体12に収納するようにしてもよい。
(7)前記実施例では、ビジネスバッグとランドセルを例に挙げて説明したが、本発明は、他の公知の各種のバッグ全般に適用可能である。