車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1回転電機11が「第1駆動源」に相当し、第2回転電機12が「第2駆動源」に相当し、第5ケース部35が「ケースが備える壁部」に相当し、軸方向第1側L1が「第1側」に相当し、軸方向第2側L2が「第2側」に相当する。また、本実施形態では、「第1伝達部材」は第1駆動部材21であり、第1駆動部材21が備える第1駆動ギヤ21aが「第1はすば歯車」に相当し、第13軸受B13が「第1支持軸受」に相当し、第14軸受B14が「第2支持軸受」に相当する。また、本実施形態では、「第2伝達部材」は第2駆動部材22であり、第2駆動部材22が備える第2駆動ギヤ22aが「第2はすば歯車」に相当し、第15軸受B15が「第3支持軸受」に相当し、第16軸受B16が「第4支持軸受」に相当する。そして、本実施形態では、「第1伝達部材及び第2伝達部材が配置される軸」は第1軸A1であり、第1径方向K1が、「第1伝達部材及び第2伝達部材が配置される軸を基準とする径方向」に相当する。
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。但し、差動歯車装置又は差動歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置又は当該差動歯車機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。例えば、「径方向視で重複する」とは、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が、周方向の少なくとも一部の領域に存在することを指す。なお、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
図1及び図3に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11と、第2回転電機12と、第1車輪W1に駆動連結される第1連結部7と、第2車輪W2に駆動連結される第2連結部8と、伝達装置2と、を備えている。第1車輪W1及び第2車輪W2は、互いに同軸に配置される左右一対の車輪である。また、図1に示すように、車両用駆動装置1は、伝達装置2を収容するケース3を備えている。ケース3には、第1回転電機11、第2回転電機12、第1駆動部材21、第2駆動部材22、第1連結部材51、及び第2連結部材52も収容される。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。例えば、図1に示すように、本実施形態では、第1連結部材51の全体がケース3に収容される(すなわち、ケース3の内部に配置される)が、第1連結部材51の一部のみがケース3に収容される構成とすることもできる。車両用駆動装置1は、更に、第1回転電機11と一体的に回転する第1駆動部材21と、第2回転電機12と一体的に回転する第2駆動部材22と、第1連結部7と一体的に回転する第1連結部材51と、第2連結部8と一体的に回転する第2連結部材52と、を備えている。
伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを少なくとも第1連結部7に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを少なくとも第2連結部8に伝達する装置である。伝達装置2は、第1駆動部材21、第2駆動部材22、第1連結部材51、第2連結部材52、第1入力部材71、第2入力部材72、第1出力部材81、及び第2出力部材82を含む、複数の伝達部材(動力伝達部材)を備えている。第1連結部7に伝達されたトルクにより第1車輪W1が回転駆動されると共に、第2連結部8に伝達されたトルクにより第2車輪W2が回転駆動されることで、車両(車両用駆動装置1が搭載された車両、以下同様。)が走行する。
図3に示すように、車両には、第1車輪W1と一体的に回転する第1軸部材53と、第2車輪W2と一体的に回転する第2軸部材54とが設けられている。第1連結部7は、車両用駆動装置1における第1軸部材53との連結部であり、第2連結部8は、車両用駆動装置1における第2軸部材54との連結部である。第1軸部材53は、第1車輪W1に連結されるドライブシャフトの少なくとも一部(第1車輪W1とは反対側の端部)を構成し、第2軸部材54は、第2車輪W2に連結されるドライブシャフトの少なくとも一部(第2車輪W2とは反対側の端部)を構成する。本実施形態では、第1連結部材51は、第1軸部材53と同軸に配置され、第2連結部材52は、第2軸部材54と同軸に配置されている。なお、第1車輪W1が第1軸部材53と同軸に配置される場合には、第1連結部材51は第1車輪W1と同軸に配置され、第2車輪W2が第2軸部材54と同軸に配置される場合には、第2連結部材52は第2車輪W2と同軸に配置される。そして、本実施形態では、第1連結部材51は、第1軸部材53を介して第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52は、第2軸部材54を介して第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。具体的には、第1連結部材51は、第1軸部材53が一体的に回転するように連結(ここでは、スプライン連結)される第1連結部7を備えており、第2連結部材52は、第2軸部材54が一体的に回転するように連結(ここでは、スプライン連結)される第2連結部8を備えている。
このように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、左右一対の車輪を駆動するように車両に設けられる。例えば、車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合には、車両用駆動装置1を、左右一対の前輪を駆動するように設け、或いは左右一対の後輪を駆動するように設けることができる。前者の場合、左右一対の前輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となり、後者の場合、左右一対の後輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となる。このように車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置1による駆動対象ではない左右一対の車輪が、別の駆動装置(車両用駆動装置1と同じ構成の駆動装置であっても良い。)により駆動される構成とすることもできる。
図1及び図3に示すように、第1回転電機11及び第2回転電機12は、第1軸A1上に配置され、第1連結部材51及び第2連結部材52は、第1軸A1に平行な第2軸A2上に配置されている。本実施形態では、伝達装置2(後述する差動歯車装置6)は、第1回転電機11及び第2回転電機12とは異なる軸上に配置されている。具体的には、伝達装置2が備える差動歯車装置6は、第1軸A1及び第2軸A2に平行な第3軸A3上に配置されている。これらの第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる軸(仮想軸)である。以下では、これらの各軸(第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3)に平行な方向(各軸の間で共通した軸方向)を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側(軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、軸方向Lにおける第1回転電機11に対して第2回転電機12が配置される側が、軸方向第1側L1である。また、以下では、第1軸A1を基準とする径方向を「第1径方向K1」とし、第2軸A2を基準とする径方向を「第2径方向K2」とする(図1参照)。
第1回転電機11は、ケース3等の非回転部材に固定される第1ステータ11aと、第1ステータ11aに対して回転自在に支持される第1ロータ11bと、を備えている。第1ロータ11bは、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結されている。第2回転電機12は、ケース3等の非回転部材に固定される第2ステータ12aと、第2ステータ12aに対して回転自在に支持される第2ロータ12bと、を備えている。第2ロータ12bは、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結されている。第2回転電機12は、第1回転電機11とは独立に回転可能な回転電機である。すなわち、第2ロータ軸12cは、第1ロータ軸11cと常に連動して回転する(例えば、一体的に回転する)ようには連結されておらず、第2ロータ軸12cは、第1ロータ軸11cとは独立に回転可能な軸部材である。第1回転電機11及び第2回転電機12のそれぞれは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置に電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
本実施形態では、第1回転電機11はインナロータ型の回転電機であり、第1ロータ11bは、第1ステータ11aよりも第1径方向K1の内側であって第1径方向K1視で第1ステータ11aと重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第2回転電機12はインナロータ型の回転電機であり、第2ロータ12bは、第2ステータ12aよりも第1径方向K1の内側であって第1径方向K1視で第2ステータ12aと重複する位置に配置されている。
図1に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11に駆動連結される第1駆動部材21と、第2回転電機12に駆動連結される第2駆動部材22と、を備えている。これらの第1駆動部材21及び第2駆動部材22は、第1軸A1上に配置されている。本実施形態では、第1駆動部材21は、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結されており、第2駆動部材22は、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結されている。よって、第1駆動部材21は、第1回転電機11と一体的に回転し、第2駆動部材22は、第2回転電機12と一体的に回転する。なお、本実施形態では、第1駆動部材21を第1ロータ軸11cとは別部材としているが、第1駆動部材21と第1ロータ軸11cとが共通の軸部材により構成されてもよい。同様に、第2駆動部材22と第2ロータ軸12cとが共通の軸部材により構成されてもよい。
図2及び図3に示すように、第1駆動部材21は、伝達装置2が備える第1入力ギヤ71aに噛み合う第1駆動ギヤ21aを備え、第2駆動部材22は、伝達装置2が備える第2入力ギヤ72aに噛み合う第2駆動ギヤ22aを備えている。本実施形態では、第1入力ギヤ71a、第2入力ギヤ72a、第1駆動ギヤ21a、及び第2駆動ギヤ22aは、はすば歯車である。はすば歯車は、歯すじが螺旋状の円筒歯車である。第1駆動ギヤ21aは、第1回転電機11に対して軸方向第1側L1に配置され、第2駆動ギヤ22aは、第2回転電機12に対して軸方向第2側L2に配置されている。第1回転電機11のトルクは、第1入力ギヤ71aと第1駆動ギヤ21aとの噛み合い部である第3噛み合い部93から伝達装置2が備える差動歯車装置6に入力され、第2回転電機12のトルクは、第2入力ギヤ72aと第2駆動ギヤ22aとの噛み合い部である第4噛み合い部94から伝達装置2が備える差動歯車装置6に入力される。第3噛み合い部93と第4噛み合い部94とは、軸方向Lの互いに異なる位置に配置されている。具体的には、第3噛み合い部93は、後述する第5ケース部35に対して軸方向第2側L2に配置され、第4噛み合い部94は、第5ケース部35に対して軸方向第1側L1に配置されている。伝達装置2は、第1入力部材71及び第2入力部材72を備えており、第1入力部材71が第1入力ギヤ71aを備え、第2入力部材72が第2入力ギヤ72aを備えている。このように、第1駆動部材21は、伝達装置2が備える他の伝達部材(第1入力部材71)に設けられたはすば歯車(第1入力ギヤ71a)に噛み合うはすば歯車(第1駆動ギヤ21a)を備え、第2駆動部材22は、伝達装置2が備える他の伝達部材(第2入力部材72)に設けられたはすば歯車(第2入力ギヤ72a)に噛み合うはすば歯車(第2駆動ギヤ22a)を備えている。
図1〜図3に示すように、第1連結部材51は、伝達装置2が備える第1出力ギヤ81aに噛み合う第1従動ギヤ51aを備え、第2連結部材52は、伝達装置2が備える第2出力ギヤ82aに噛み合う第2従動ギヤ52aを備えている。第1出力ギヤ81a、第2出力ギヤ82a、第1従動ギヤ51a、及び第2従動ギヤ52aは、はすば歯車である。第1車輪W1を回転駆動するためのトルクは、第1出力ギヤ81aと第1従動ギヤ51aとの噛み合い部である第1噛み合い部91から第1連結部材51に出力され、第2車輪W2を回転駆動するためのトルクは、第2出力ギヤ82aと第2従動ギヤ52aとの噛み合い部である第2噛み合い部92から第2連結部材52に出力される。第1噛み合い部91と第2噛み合い部92とは、軸方向Lの互いに異なる位置に配置されている。具体的には、第1噛み合い部91は、第5ケース部35に対して軸方向第2側L2に配置され、第2噛み合い部92は、第5ケース部35に対して軸方向第1側L1に配置されている。伝達装置2は、第1出力部材81及び第2出力部材82を備えており、第1出力部材81が第1出力ギヤ81aを備え、第2出力部材82が第2出力ギヤ82aを備えている。このように、第1連結部材51は、伝達装置2が備える他の伝達部材(第1出力部材81)に設けられたはすば歯車(第1出力ギヤ81a)に噛み合うはすば歯車(第1従動ギヤ51a)を備え、第2連結部材52は、伝達装置2が備える他の伝達部材(第2出力部材82)に設けられたはすば歯車(第2出力ギヤ82a)に噛み合うはすば歯車(第2従動ギヤ52a)を備えている。
本実施形態では、伝達装置2は、差動歯車装置6を備えている。ここで、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する歯車装置である。すなわち、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する差動歯車機構を用いて構成される。差動歯車装置は、例えば、遊星歯車式の差動歯車装置(すなわち、遊星歯車装置)とされ、この場合、差動歯車装置は、遊星歯車式の差動歯車機構(すなわち、遊星歯車機構)を用いて構成される。また、差動歯車装置は、例えば、傘歯車式の差動歯車装置とされ、この場合、差動歯車装置は、傘歯車式の差動歯車機構を用いて構成される。なお、差動歯車装置6が備える複数の回転要素の中に、ケース3等の非回転部材に固定される非回転要素が含まれる場合があるが、本明細書では、非回転要素も含めて「回転要素」という。
差動歯車装置6は、回転速度の順に、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4を有している(図4参照)。第1回転要素E1に第1入力部材71が連結され、第2回転要素E2に第1出力部材81が連結され、第3回転要素E3に第2出力部材82が連結され、第4回転要素E4に第2入力部材72が連結されている。これにより、第1回転要素E1に第1回転電機11が駆動連結され、第2回転要素E2に第1連結部材51(第1連結部7)が駆動連結され、第3回転要素E3に第2連結部材52(第2連結部8)が駆動連結され、第4回転要素E4に第2回転電機12が駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車装置6は、回転要素として、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4のみを有している。
本実施形態では、差動歯車装置6は、遊星歯車式の差動歯車装置(すなわち、遊星歯車装置60)である。図2及び図3に示すように、遊星歯車装置60は、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、及び第1リングギヤR1を有する第1遊星歯車機構61と、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、及び第2リングギヤR2を有する第2遊星歯車機構62と、を備えている。第1キャリヤC1は、第1ピニオン軸64aを介して第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持し、第2キャリヤC2は、第2ピニオン軸64bを介して第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持している。図5に各ギヤの歯すじを簡略化して示すように、本実施形態では、差動歯車装置6が備えるサンギヤ(ここでは、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)、ピニオンギヤ(ここでは、第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2)、及びリングギヤ(ここでは、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2)は、平歯車である。平歯車は、歯すじが直線状の円筒歯車である。第1遊星歯車機構61は、第2遊星歯車機構62に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に対して軸方向第1側L1に配置され、第2遊星歯車機構62は、第2回転電機12に対して軸方向第2側L2に配置されている。
遊星歯車装置60は、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結して構成されている。具体的には、本実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。そして、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが一体的に回転するように連結されていると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが一体的に回転するように連結されている。このように、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とは、それぞれが有する3つの回転要素のうちの2つずつが互いに連結されることで、全体として4つの回転要素を備えて一体的に差動動作を行うように構成されている。そして、図4に示すように、本実施形態では、第1回転要素E1は第1リングギヤR1であり、第2回転要素E2は一体的に回転する第1キャリヤC1と第2サンギヤS2であり、第3回転要素E3は一体的に回転する第1サンギヤS1と第2キャリヤC2であり、第4回転要素E4は第2リングギヤR2である。上述したように、回転速度の順は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4の順である。
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図、図4参照)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、図4において、縦軸の「0」は回転速度がゼロであることを示し、上側が正、下側が負となっている。
図4において、「Ti1」は、第1回転要素E1に第1回転電機11の側から入力されるトルク(第1入力トルクTi1)を表し、「Ti2」は、第4回転要素E4に第2回転電機12の側から入力されるトルク(第2入力トルクTi2)を表している。第1入力トルクTi1の大きさは、第1回転電機11の出力トルクの大きさと、第1回転電機11から第1回転要素E1までの変速比(第1変速比)とに応じて定まり、第2入力トルクTi2の大きさは、第2回転電機12の出力トルクの大きさと、第2回転電機12から第4回転要素E4までの変速比(第2変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1駆動ギヤ21aと第2駆動ギヤ22aとが互いに同径に形成されていると共に、第1入力ギヤ71aと第2入力ギヤ72aとが互いに同径に形成されており、第1変速比と第2変速比とは互いに等しい。ここでは、第1変速比及び第2変速比は1より大きく、第1回転電機11の回転は減速されて第1回転要素E1に伝達され、第2回転電機12の回転は減速されて第4回転要素E4に伝達される。
また、図4において、「To1」は、第2回転要素E2から第1車輪W1の側に出力されるトルク(第1出力トルクTo1)を表し、「To2」は、第3回転要素E3から第2車輪W2の側に出力されるトルク(第2出力トルクTo2)を表している。第1車輪W1の駆動力の大きさは、第1出力トルクTo1の大きさと、第2回転要素E2から第1車輪W1までの変速比(第3変速比)とに応じて定まり、第2車輪W2の駆動力の大きさは、第2出力トルクTo2の大きさと、第3回転要素E3から第2車輪W2までの変速比(第4変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1出力ギヤ81aと第2出力ギヤ82aとが互いに同径に形成されていると共に、第1従動ギヤ51aと第2従動ギヤ52aとが互いに同径に形成されており、第3変速比と第4変速比とは互いに等しい。ここでは、第3変速比及び第4変速比は1より大きく、第2回転要素E2の回転は減速されて第1車輪W1に伝達され、第3回転要素E3の回転は減速されて第2車輪W2に伝達される。
上記のように第3変速比と第4変速比とが互いに等しいため、車両の直進時には、第2回転要素E2の回転速度と第3回転要素E3の回転速度とが等しくなり、遊星歯車装置60の全ての回転要素が同速で回転する状態となる。一方、車両の旋回時には、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの外側の車輪(旋回中心から遠い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度が、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの内側の車輪(旋回中心に近い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度よりも高い状態となる。図4は、第1車輪W1が外側の車輪となる方向に車両が旋回している状態での遊星歯車装置60の各回転要素の状態を表している。なお、上述したように、本実施形態では、差動歯車装置6が備えるサンギヤ(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)、ピニオンギヤ(第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2)、及びリングギヤ(第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2)は、平歯車であるが、このように遊星歯車装置60が差動動作を行う場面は車両の旋回時に限定され、また、車両の旋回時における差動回転の大きさ(遊星歯車装置60の異なる回転要素の間の回転速度差)も、基本的にはそれほど大きくはならない。そのため、遊星歯車装置60が差動動作を行う際に発生し得るギヤノイズの影響を、小さく抑えることが可能となっている。
トルクの釣り合いから、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、以下の式(1),(2)に示すように、第1入力トルクTi1、第2入力トルクTi2、第1遊星歯車機構61のギヤ比(第1ギヤ比λ1)、及び第2遊星歯車機構62のギヤ比(第2ギヤ比λ2)に応じて定まる。ここで、第1ギヤ比λ1は、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比であり、第2ギヤ比λ2は、第2リングギヤR2の歯数に対する第2サンギヤS2の歯数の比である。
To1=(1+λ1)・Ti1−λ2・Ti2 ・・・(1)
To2=(1+λ2)・Ti2−λ1・Ti1 ・・・(2)
このように、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、第1入力トルクTi1及び第2入力トルクTi2の双方に応じて定まる。すなわち、本実施形態では、伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを第1連結部7及び第2連結部8の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部7及び第2連結部8の双方に伝達するように構成されている。言い換えれば、伝達装置2は、第1回転電機11及び第2回転電機12のトルクを、第1連結部7及び第2連結部8に分配して伝達するように構成されている。車両用駆動装置1をこのように構成することで、第1回転電機11と第1連結部7との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部8との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、第1車輪W1と第2車輪W2との間で駆動力に差を設ける際に、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保して、車両の旋回時の走行性能の向上を図ることが可能となっている。
補足説明すると、一例として、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とする場合を想定する。この場合、本実施形態に係る車両用駆動装置1とは異なりTo1=Ti1,To2=Ti2となる比較例の構成では、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは40[N・m]となる。よって、この比較例の場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和に等しい)は、240[N・m]となる。これに対して、本実施形態に係る車両用駆動装置1では、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは、第1ギヤ比λ1及び第2ギヤ比λ2の双方が“0.4”である場合には、上記の式(1),(2)より111[N・m]となる。よって、この場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和)は311[N・m]となり、上記の比較例の場合に比べて、71[N・m](=311[N・m]−240[N・m])のトルク差に相当する分、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保することができる。
次に、本実施形態の車両用駆動装置1におけるケース3の構成について説明する。ケース3は、シール部材4を介して接合される複数のケース部30を備えている。ケース部30のそれぞれは、ケース3の外面に露出する部分を有する。すなわち、ケース部30同士の接合部は、ケース3の外面に露出するように形成される。なお、ケース部30同士は、例えばボルトを用いて接合される。ケース3は、ケース部30に加えて、後述する支持部材40を更に備えている。
図1に示すように、複数のケース部30には、第1ケース部31と第2ケース部32とが含まれる。第1ケース部31は、第2ケース部32に対して軸方向第2側L2から接合されている。第1ケース部31は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第1周壁部31cを備えており、軸方向L視で第1周壁部31cにより囲まれた空間(第1収容空間H1)に、第1回転電機11、第1駆動部材21、第1連結部材51、及び伝達装置2の一部(具体的には、第1入力部材71、第1出力部材81、及び第1遊星歯車機構61)が配置されている。また、第2ケース部32は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第2周壁部32cを備えており、軸方向L視で第2周壁部32cにより囲まれた空間(第2収容空間H2)に、第2回転電機12、第2駆動部材22、第2連結部材52、及び伝達装置2の一部(具体的には、第2入力部材72、第2出力部材82、及び第2遊星歯車機構62)が配置されている。本実施形態では、第1収容空間H1と第2収容空間H2とは、後述する第5ケース部35によって軸方向Lに区画されている。すなわち、第1駆動部材21は、ケース3が備える壁部(ここでは、第5ケース部35)に対して軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置され、第2駆動部材22は、当該壁部に対して軸方向Lの他方側(ここでは、軸方向第1側L1)に、第1駆動部材21と同軸に配置されている。また、第1連結部材51は、ケース3が備える壁部(ここでは、第5ケース部35)に対して軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置され、第2連結部材52は、当該壁部に対して軸方向Lの他方側(ここでは、軸方向第1側L1)に、第1連結部材51と同軸に配置されている。
複数のケース部30には、更に、第3ケース部33と第4ケース部34とが含まれる。第1収容空間H1における第1回転電機11が配置される部分は、第1ケース部31によって軸方向第2側L2を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第3ケース部33が第1ケース部31に対して軸方向第2側L2から接合されている。また、第2収容空間H2における第2回転電機12が配置される部分は、第2ケース部32によって軸方向第1側L1を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第4ケース部34が第2ケース部32に対して軸方向第1側L1から接合されている。
複数のケース部30には、更に、第5ケース部35が含まれる。第5ケース部35は、ケース3の内部空間(第1回転電機11、第2回転電機12、第1連結部材51、第2連結部材52、及び伝達装置2を収容するための収容空間H)を軸方向Lに区画する中間壁として機能する。具体的には、第5ケース部35は、軸方向Lに直交する方向に延びる形状(例えば、板状)に形成されており、第1ケース部31と第2ケース部32との接合部36が形成される軸方向Lの位置に配置されている。そして、第5ケース部35は、第1ケース部31(第1周壁部31c)と第2ケース部32(第2周壁部32c)とにより軸方向Lの両側から挟まれた状態で、第1ケース部31及び第2ケース部32のそれぞれに接合されている。すなわち、本実施形態では、第1ケース部31と第2ケース部32とは、接合部36において、第5ケース部35を介して接合されている。よって、接合部36には、第1ケース部31と第5ケース部35との接合部と、第2ケース部32と第5ケース部35との接合部とが形成されている。
接合部36においては、第1ケース部31と第5ケース部35との接合面(第1接合面36a)にシール部材4が設けられていると共に、第2ケース部32と第5ケース部35との接合面(第2接合面36b)にシール部材4が設けられている。シール部材4は、ケース3内の油のケース3外への漏れを防止するための部材である。シール部材4として、例えば、液状ガスケットを用いることができる。なお、図1では、シール部材4を簡略化して太線で示している。
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1連結部材51及び第2連結部材52の支持構造について説明する。
図1に示すように、車両用駆動装置1は、ケース部30に固定される支持部材40を備えている。支持部材40は、ケース部30の内部に配置される。そのため、支持部材40とケース部30との固定部(本実施形態では、後述する第1固定部37a及び第2固定部37b)は、異なるケース部30同士の接合部とは異なり、ケース3の外面には露出しない。本実施形態では、車両用駆動装置1は、ケース部30の内部にそれぞれ配置された支持部材40である第1支持部材41及び第2支持部材42を備えている。第1支持部材41は、第5ケース部35に対して軸方向第2側L2に配置されて(すなわち、第1収容空間H1に配置されて)第1ケース部31に固定されており、第1収容空間H1に配置される部材を支持するために用いられる。すなわち、第1支持部材41は、複数のケース部30の1つである第1ケース部31の内部に固定されている。また、第2支持部材42は、第5ケース部35に対して軸方向第1側L1に配置されて(すなわち、第2収容空間H2に配置されて)第2ケース部32に固定されており、第2収容空間H2に配置される部材を支持するために用いられる。すなわち、第2支持部材42は、複数のケース部30の1つであって第1ケース部31とは異なる第2ケース部32の内部に固定されている。第1支持部材41や第2支持部材42は、例えばボルトを用いてケース3に固定される。
図1に示すように、第1連結部材51は、第1軸受B1と第2軸受B2とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第1軸受B1及び第2軸受B2のそれぞれは、第1連結部材51を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第1連結部材51は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。また、第2連結部材52は、第3軸受B3と第4軸受B4とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第3軸受B3及び第4軸受B4のそれぞれは、第2連結部材52を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第2連結部材52は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
本実施形態では、第1連結部材51は、第1ケース部31に形成された第1支持部31aと、第1支持部材41に形成された第5支持部41aとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第5支持部41aは、第1支持部31aよりも軸方向第1側L1に配置されている。上述したように、第1支持部31aとは異なる位置で第1連結部材51を回転自在に支持する第1支持部材41は、第1ケース部31の内部に固定されている。そのため、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重に起因して、第1ケース部31と他のケース部30(例えば、第5ケース部35)との接合部にこれら2つのケース部30を互いに離間させる方向の力が作用し難い構成とすることができ、この結果、第1ケース部31と他のケース部30との間のシール性能を適切に維持することが可能となっている。
第1連結部材51は、第1支持部31aにより第2径方向K2の外側から支持されている。具体的には、第1支持部31aの内周面と第1連結部材51の外周面との間に第1軸受B1(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1連結部材51は、第1軸受B1を介して第1支持部31aにより第2径方向K2の外側から支持されている。また、第1連結部材51は、第5支持部41aにより第2径方向K2の内側から支持されている。具体的には、第5支持部41aの外周面と第1連結部材51の内周面との間に第2軸受B2(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1連結部材51は、第2軸受B2を介して第5支持部41aにより第2径方向K2の内側から支持されている。第1従動ギヤ51aは、第1連結部材51における、第2軸受B2よりも第2径方向K2の外側であって第2径方向K2視で第2軸受B2と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第2軸受B2は、第2径方向K2視で第1従動ギヤ51aと重複するように配置されている。
本実施形態では、第2連結部材52は、第2ケース部32に形成された第2支持部32aと、第2支持部材42に形成された第6支持部42aとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第6支持部42aは、第2支持部32aよりも軸方向第2側L2に配置されている。上述したように、第2支持部32aとは異なる位置で第2連結部材52を回転自在に支持する第2支持部材42は、第2ケース部32の内部に固定されている。そのため、第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重に起因して、第2ケース部32と他のケース部30(例えば、第5ケース部35)との接合部にこれら2つのケース部30を互いに離間させる方向の力が作用し難い構成とすることができ、この結果、第2ケース部32と他のケース部30との間のシール性能を適切に維持することが可能となっている。
第2連結部材52は、第2支持部32aにより第2径方向K2の外側から支持されている。具体的には、第2支持部32aの内周面と第2連結部材52の外周面との間に第4軸受B4(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2連結部材52は、第4軸受B4を介して第2支持部32aにより第2径方向K2の外側から支持されている。また、第2連結部材52は、第6支持部42aにより第2径方向K2の内側から支持されている。具体的には、第6支持部42aの外周面と第2連結部材52の内周面との間に第3軸受B3(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2連結部材52は、第3軸受B3を介して第6支持部42aにより第2径方向K2の内側から支持されている。第2従動ギヤ52aは、第2連結部材52における、第3軸受B3よりも第2径方向K2の外側であって第2径方向K2視で第3軸受B3と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第3軸受B3は、第2径方向K2視で第2従動ギヤ52aと重複するように配置されている。
上述したように、第1出力ギヤ81a、第2出力ギヤ82a、第1従動ギヤ51a、及び第2従動ギヤ52aは、はすば歯車である。そのため、第1噛み合い部91において第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)には、ラジアル荷重だけでなくスラスト荷重が含まれる。また、第2噛み合い部92において第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重には、ラジアル荷重だけでなくスラスト荷重が含まれる。よって、伝達装置2がトルクを伝達している状態では、第1従動ギヤ51aを備える第1連結部材51や第2従動ギヤ52aを備える第2連結部材52にはスラスト荷重が発生する。本実施形態の車両用駆動装置1では、以下に述べる構成を備えることで、第1連結部材51及び第2連結部材52をケース3によって適切に支持しつつ、装置全体の小型化を図ることを可能している。
図5に各ギヤの歯すじを簡略化して示すように、この車両用駆動装置1では、第1従動ギヤ51aの歯のねじれ方向と、第2従動ギヤ52aの歯のねじれ方向とを、逆向きとしている。そのため、図5に各ギヤが受けるスラスト荷重の向きを矢印で示すように、伝達装置2がトルクを伝達している状態では、第1噛み合い部91において第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受けるスラスト荷重の向き(すなわち、第1連結部材51に発生するスラスト荷重の向き)と、第2噛み合い部92において第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受けるスラスト荷重の向き(すなわち、第2連結部材52に発生するスラスト荷重の向き)とが、互いに逆向きとなる。なお、図5では、車両の前進力行時において各ギヤが受けるスラスト荷重の向きを矢印で示しており、車両の前進回生時や後進力行時には、図5で示す向きとは逆向きのスラスト荷重が各ギヤに作用する。本実施形態では、第1連結部材51と第2連結部材52とが、第5ケース部35に対して間接的に支持されるため、このように、同軸上に配置される第1連結部材51と第2連結部材52とのそれぞれに発生するスラスト荷重の向きを互いに逆向きとすることで、第1連結部材51や第2連結部材52に発生するスラスト荷重によって第5ケース部35に対して作用し得る軸方向Lの一方側への偏った荷重を小さく抑えることができる。この結果、第1連結部材51と第2連結部材52とのそれぞれに発生するスラスト荷重の向きが互いに同じ向きとなる場合に比べて、第5ケース部35に必要となる強度を低く抑えて、装置全体の小型化を図ることが可能となっている。なお、本実施形態では、第1従動ギヤ51aの歯のねじれ角と、第2従動ギヤ52aの歯のねじれ角とを、互いに同じ大きさとしている。
本実施形態では、更に、図1に示すように、第1従動ギヤ51aは、第1軸受B1と第2軸受B2との間の軸方向Lの中央位置よりも、車両の前進力行時に第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である軸方向第1側L1に寄せて配置されている。なお、ギヤを軸方向Lの特定位置(ここでは、第1軸受B1と第2軸受B2との間の軸方向Lの中央位置)に対して軸方向Lの一方側に寄せて配置するとは、ギヤの軸方向Lの中央位置を、当該特定位置に対して軸方向Lの当該一方側に配置することを意味する。ここでは、第1軸受B1及び第2軸受B2のうちの軸方向第1側L1に配置される軸受である第2軸受B2が、第2径方向K2視で第1従動ギヤ51aと重複するように配置されている。また、第2従動ギヤ52aは、第3軸受B3と第4軸受B4との間の軸方向Lの中央位置よりも、軸方向第1側L1とは反対側である軸方向第2側L2(すなわち、車両の前進力行時に第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側)に寄せて配置されている。ここでは、第3軸受B3及び第4軸受B4のうちの軸方向第2側L2に配置される軸受である第3軸受B3が、第2径方向K2視で第2従動ギヤ52aと重複するように配置されている。
このように第1従動ギヤ51aを配置することで、車両の前進力行時において、第1従動ギヤ51aが受けるスラスト荷重を、主に第1軸受B1によって受け、第1従動ギヤ51aが受けるラジアル荷重を、主に第2軸受B2によって受けることができる。すなわち、第1従動ギヤ51aが受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第1軸受B1と第2軸受B2とに適切に分担させることができ、これらのスラスト荷重及びラジアル荷重が2つの軸受(B1,B2)の一方に集中して作用することを回避して、2つの軸受(B1,B2)をバランスよく小型化することが可能となっている。同様に、第2従動ギヤ52aが受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第3軸受B3と第4軸受B4とに適切に分担させることができ、これらのスラスト荷重及びラジアル荷重が2つの軸受(B3,B4)の一方に集中して作用することを回避して、2つの軸受(B3,B4)をバランスよく小型化することが可能となっている。このように各軸受(B1〜B4)をバランス良く小型化することができる結果、装置全体の小型化を図ることもできる。
なお、本実施形態では、第1連結部材51が第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52が第2車輪W2と一体的に回転するように連結される。そのため、第1連結部材51が、第1車輪W1の駆動トルクと同等の比較的大きなトルク(減速された後の回転電機(11,12)のトルク)の伝達を担い、第2連結部材52が、第2車輪W2の駆動トルクと同等の比較的大きなトルク(減速された後の回転電機(11,12)のトルク)の伝達を担う構成となり、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受けるスラスト荷重や第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受けるスラスト荷重が大きくなりやすい。この点に関して、上記のように、この車両用駆動装置1では、第1連結部材51や第2連結部材52に発生するスラスト荷重によって第5ケース部35に対して作用し得る軸方向Lの一方側への偏った荷重を小さく抑えることができる。そのため、第1連結部材51が第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52が第2車輪W2と一体的に回転するように連結される構成においても、第1連結部材51や第2連結部材52をケース3によって適切に支持しつつ、装置全体の小型化を図ることが可能となっている。
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1出力部材81及び第2出力部材82の支持構造について説明する。なお、以下の第1出力部材81及び第2出力部材82の支持構造の説明における径方向は、特に明記している場合を除き、第3軸A3を基準とする径方向である。
図1に示すように、第1出力部材81は、第5軸受B5と第6軸受B6とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第5軸受B5及び第6軸受B6のそれぞれは、第1出力部材81を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第1出力部材81は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。また、第2出力部材82は、第7軸受B7と第8軸受B8とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第7軸受B7及び第8軸受B8のそれぞれは、第2出力部材82を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第2出力部材82は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
図1に示すように、本実施形態では、第1出力部材81は、第1ケース部31に形成された第3支持部31bと、第1支持部材41に形成された第7支持部41bとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第7支持部41bは、第3支持部31bよりも軸方向第1側L1に配置されている。また、本実施形態では、第2出力部材82は、第2ケース部32に形成された第4支持部32bと、第2支持部材42に形成された第8支持部42bとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第8支持部42bは、第4支持部32bよりも軸方向第2側L2に配置されている。
第1出力部材81は、第3支持部31bにより径方向外側から支持されている。具体的には、第3支持部31bの内周面と第1出力部材81の外周面との間に第5軸受B5(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第1出力部材81は、第5軸受B5を介して第3支持部31bにより径方向外側から支持されている。また、第1出力部材81は、第7支持部41bにより径方向外側から支持されている。具体的には、第7支持部41bの内周面と第1出力部材81の外周面との間に第6軸受B6(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第1出力部材81は、第6軸受B6を介して第7支持部41bにより径方向外側から支持されている。第1出力ギヤ81aは、第1出力部材81における、軸方向Lにおける第5軸受B5と第6軸受B6との間に配置される部分の外周面に形成されている。
第2出力部材82は、第4支持部32bにより径方向外側から支持されている。具体的には、第4支持部32bの内周面と第2出力部材82の外周面との間に第8軸受B8(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第2出力部材82は、第8軸受B8を介して第4支持部32bにより径方向外側から支持されている。また、第2出力部材82は、第8支持部42bにより径方向外側から支持されている。具体的には、第8支持部42bの内周面と第2出力部材82の外周面との間に第7軸受B7(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第2出力部材82は、第7軸受B7を介して第8支持部42bにより径方向外側から支持されている。第2出力ギヤ82aは、第2出力部材82における、軸方向Lにおける第7軸受B7と第8軸受B8との間に配置される部分の外周面に形成されている。
本実施形態では、第1出力部材81は、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動可能に連結され、第2出力部材82は、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動可能に連結されている。そのため、第1出力部材81と第1キャリヤC1とが軸方向Lに相対移動不能な場合に比べて、第1出力部材81と第1キャリヤC1との連結部(第3連結部66a、図2参照)における荷重の伝達を低減することができると共に、第2出力部材82と第2キャリヤC2とが軸方向Lに相対移動不能な場合に比べて、第2出力部材82と第2キャリヤC2との連結部(第4連結部66b、図2参照)における荷重の伝達を低減することができる。この結果、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aから受けるスラスト荷重に起因して第1出力部材81から第1キャリヤC1に伝達される荷重の低減や、第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aから受けるスラスト荷重に起因して第2出力部材82から第2キャリヤC2に伝達される荷重の低減を図ることが可能となっている。
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1入力部材71及び第2入力部材72の支持構造について説明する。なお、以下の第1入力部材71及び第2入力部材72の支持構造の説明における径方向は、特に明記している場合を除き、第3軸A3を基準とする径方向である。
図2に示すように、第1入力部材71は、第9軸受B9と第10軸受B10とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第9軸受B9及び第10軸受B10のそれぞれは、第1入力部材71を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第1入力部材71は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。また、第2入力部材72は、第11軸受B11と第12軸受B12とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第11軸受B11及び第12軸受B12のそれぞれは、第2入力部材72を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第2入力部材72は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
図2に示すように、本実施形態では、第1入力部材71は、第5ケース部35に形成された第13支持部35aと、第1支持部材41に形成された第9支持部41cとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第9支持部41cは、第13支持部35aよりも軸方向第2側L2に配置されている。また、本実施形態では、第2入力部材72は、第5ケース部35に形成された第14支持部35bと、第2支持部材42に形成された第10支持部42cとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第10支持部42cは、第14支持部35bよりも軸方向第1側L1に配置されている。
第1入力部材71は、第13支持部35aにより径方向外側から支持されている。具体的には、第13支持部35aの内周面と第1入力部材71の外周面との間に第10軸受B10(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1入力部材71は、第10軸受B10を介して第13支持部35aにより径方向外側から支持されている。本実施形態では、第1入力部材71は、第1リングギヤR1を備えている。そして、第1リングギヤR1は、第1入力部材71における、第10軸受B10よりも径方向内側であって径方向視で第10軸受B10と重複するように配置される部分の内周面に形成されている。すなわち、第10軸受B10は、径方向視で第1リングギヤR1と重複するように配置されている。また、第1入力部材71は、第9支持部41cにより径方向内側から支持されている。具体的には、第9支持部41cの外周面と第1入力部材71の内周面との間に第9軸受B9(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1入力部材71は、第9軸受B9を介して第9支持部41cにより径方向内側から支持されている。第1入力ギヤ71aは、第1入力部材71における、第9軸受B9よりも径方向外側であって径方向視で第9軸受B9と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第9軸受B9は、径方向視で第1入力ギヤ71aと重複するように配置されている。また、第9軸受B9は、径方向視で第6軸受B6と重複するように配置されている。
第2入力部材72は、第14支持部35bにより径方向外側から支持されている。具体的には、第14支持部35bの内周面と第2入力部材72の外周面との間に第11軸受B11(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2入力部材72は、第11軸受B11を介して第14支持部35bにより径方向外側から支持されている。本実施形態では、第2入力部材72は、第2リングギヤR2を備えている。そして、第2リングギヤR2は、第2入力部材72における、第11軸受B11よりも径方向内側であって径方向視で第11軸受B11と重複するように配置される部分の内周面に形成されている。すなわち、第11軸受B11は、径方向視で第2リングギヤR2と重複するように配置されている。また、第2入力部材72は、第10支持部42cにより径方向内側から支持されている。具体的には、第10支持部42cの外周面と第2入力部材72の内周面との間に第12軸受B12(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2入力部材72は、第12軸受B12を介して第10支持部42cにより径方向内側から支持されている。第2入力ギヤ72aは、第2入力部材72における、第12軸受B12よりも径方向外側であって径方向視で第12軸受B12と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第12軸受B12は、径方向視で第2入力ギヤ72aと重複するように配置されている。また、第12軸受B12は、径方向視で第7軸受B7と重複するように配置されている。
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1駆動部材21及び第2駆動部材22の支持構造について説明する。
図1及び図2に示すように、第1駆動部材21は、第13軸受B13と第14軸受B14とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第13軸受B13及び第14軸受B14のそれぞれは、第1駆動部材21を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第1駆動部材21は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。また、第2駆動部材22は、第15軸受B15と第16軸受B16とにより軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第15軸受B15及び第16軸受B16のそれぞれは、第2駆動部材22を、ケース3に対して回転自在に支持している。すなわち、第2駆動部材22は、ケース3により軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、第1駆動部材21は、第5ケース部35に形成された第15支持部35cと、第1支持部材41に形成された第11支持部41dとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第11支持部41dは、第15支持部35cよりも軸方向第2側L2に配置されている。また、本実施形態では、第2駆動部材22は、第5ケース部35に形成された第16支持部35dと、第2支持部材42に形成された第12支持部42dとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第12支持部42dは、第16支持部35dよりも軸方向第1側L1に配置されている。このように、第1駆動部材21は、第14軸受B14を介して第5ケース部35に直接的に支持され、第2駆動部材22は、第15軸受B15を介して第5ケース部35に直接的に支持されている。なお、第1駆動部材21と第2駆動部材22とを同一の壁部(ここでは、第5ケース部35)により回転自在に支持することで、第1駆動部材21と第2駆動部材22との間の心出し精度(芯出し精度)を高めることが可能となっている。
第1駆動部材21は、第15支持部35cにより第1径方向K1の外側から支持されている。具体的には、第15支持部35cの内周面と第1駆動部材21の外周面との間に第14軸受B14(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1駆動部材21は、第14軸受B14を介して第15支持部35cにより第1径方向K1の外側から支持されている。第14軸受B14は、第3軸A3を基準とする径方向視で第10軸受B10と重複するように配置されている。また、第1駆動部材21は、第11支持部41dにより第1径方向K1の外側から支持されている。具体的には、第11支持部41dの内周面と第1駆動部材21の外周面との間に第13軸受B13(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1駆動部材21は、第13軸受B13を介して第11支持部41dにより第1径方向K1の外側から支持されている。第13軸受B13は、第2軸A2を基準とする径方向視(すなわち、第2径方向K2視)で第2軸受B2と重複するように配置されている。第1駆動ギヤ21aは、第1駆動部材21における、軸方向Lにおける第13軸受B13と第14軸受B14との間に配置される部分の外周面に形成されている。
第2駆動部材22は、第16支持部35dにより第1径方向K1の外側から支持されている。具体的には、第16支持部35dの内周面と第2駆動部材22の外周面との間に第15軸受B15(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2駆動部材22は、第15軸受B15を介して第16支持部35dにより第1径方向K1の外側から支持されている。第15軸受B15は、第3軸A3を基準とする径方向視で第11軸受B11と重複するように配置されている。また、第2駆動部材22は、第12支持部42dにより第1径方向K1の外側から支持されている。具体的には、第12支持部42dの内周面と第2駆動部材22の外周面との間に第16軸受B16(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2駆動部材22は、第16軸受B16を介して第12支持部42dにより第1径方向K1の外側から支持されている。第16軸受B16は、第2軸A2を基準とする径方向視(すなわち、第2径方向K2視)で第3軸受B3と重複するように配置されている。第2駆動ギヤ22aは、第2駆動部材22における、軸方向Lにおける第15軸受B15と第16軸受B16との間に配置される部分の外周面に形成されている。
上述したように、本実施形態では、第1入力ギヤ71a、第2入力ギヤ72a、第1駆動ギヤ21a、及び第2駆動ギヤ22aは、はすば歯車である。そして、図5に示すように、この車両用駆動装置1では、第1駆動ギヤ21aの歯のねじれ方向と、第2駆動ギヤ22aの歯のねじれ方向とを、逆向きとしている。そのため、伝達装置2がトルクを伝達している状態では、第3噛み合い部93において第1駆動ギヤ21aが第1入力ギヤ71aから受けるスラスト荷重の向き(すなわち、第1駆動部材21に発生するスラスト荷重の向き)と、第4噛み合い部94において第2駆動ギヤ22aが第2入力ギヤ72aから受けるスラスト荷重の向き(すなわち、第2駆動部材22に発生するスラスト荷重の向き)とが、互いに逆向きとなる。本実施形態では、第1駆動部材21と第2駆動部材22とが、第5ケース部35に対して直接的に支持されるため、このように、同軸上に配置される第1駆動部材21と第2駆動部材22とのそれぞれに発生するスラスト荷重の向きを互いに逆向きとすることで、第1駆動部材21や第2駆動部材22に発生するスラスト荷重によって第5ケース部35に対して作用し得る軸方向Lの一方側への偏った荷重を小さく抑えることができる。なお、本実施形態では、第1駆動ギヤ21aの歯のねじれ角と、第2駆動ギヤ22aの歯のねじれ角とを、互いに同じ大きさとしている。
なお、第1駆動ギヤ21aの歯のねじれ方向と第2駆動ギヤ22aの歯のねじれ方向とが逆向きであるため、第1入力ギヤ71aの歯のねじれ方向と第2入力ギヤ72aの歯のねじれ方向とが逆向きとなる。そのため、本実施形態では、第1入力部材71と第2入力部材72とが、第5ケース部35に対して直接的に支持されるが、同軸上に配置される第1入力部材71と第2入力部材72とのそれぞれに発生するスラスト荷重の向きは互いに逆向きとなる。この点からも、第5ケース部35に対して作用し得る軸方向Lの一方側への偏った荷重を小さく抑えることが可能となっている。
本実施形態では、更に、図2及び図5に示すように、第1駆動ギヤ21aは、第13軸受B13と第14軸受B14との間の軸方向Lの中央位置よりも、車両の前進力行時に第1駆動ギヤ21aが第1入力ギヤ71aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である軸方向第1側L1に寄せて配置されている。また、第2駆動ギヤ22aは、第15軸受B15と第16軸受B16との間の軸方向Lの中央位置よりも、車両の前進力行時に第2駆動ギヤ22aが第2入力ギヤ72aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である軸方向第2側L2に寄せて配置されている。また、本実施形態では、第1入力ギヤ71aは、第9軸受B9と第10軸受B10との間の軸方向Lの中央位置よりも、車両の前進力行時に第1入力ギヤ71aが第1駆動ギヤ21aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である軸方向第2側L2に寄せて配置されている。また、第2入力ギヤ72aは、第11軸受B11と第12軸受B12との間の軸方向Lの中央位置よりも、車両の前進力行時に第2入力ギヤ72aが第2駆動ギヤ22aから受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である軸方向第1側L1に寄せて配置されている。
以上のように、この車両用駆動装置1では、第1従動ギヤ51aの歯のねじれ方向と、第2従動ギヤ52aの歯のねじれ方向とを、逆向きとすることで、第2軸A2上において第5ケース部35に対して軸方向Lの両側に分かれて配置される第1連結部材51と第2連結部材52とに、互いに逆向きのスラスト荷重が発生する構成としている。また、本実施形態では、第1駆動ギヤ21aの歯のねじれ方向と、第2駆動ギヤ22aの歯のねじれ方向とを、逆向きとすることで、第1軸A1上において第5ケース部35に対して軸方向Lの両側に分かれて配置される第1駆動部材21と第2駆動部材22とに、互いに逆向きのスラスト荷重が発生する構成としている。そして、このような構成とする結果、第3軸A3上において第5ケース部35に対して軸方向Lの両側に分かれて配置される第1出力部材81と第2出力部材82とに、互いに逆向きのスラスト荷重が発生すると共に、第3軸A3上において第5ケース部35に対して軸方向Lの両側に分かれて配置される第1入力部材71と第2入力部材72とに、互いに逆向きのスラスト荷重が発生する構成となっている。
すなわち、本実施形態の車両用駆動装置1は、各軸上(本実施形態では、第1軸A1上、第2軸A2上、及び第3軸A3上)において、対応する一対の回転部材に、互いに逆向きのスラスト荷重が発生するように構成されている。なお、本実施形態では、第1連結部材51及び第2連結部材52、第1駆動部材21及び第2駆動部材22、第1出力部材81及び第2出力部材82、及び、第1入力部材71及び第2入力部材72のそれぞれが、対応する一対の回転部材である。これにより、ケース3における対応する一対の回転部材に発生するスラスト荷重の双方が伝達される部分(本実施形態では、第5ケース部35)に対して作用し得る軸方向Lの一方側への偏った荷重を小さく抑えることを、各軸において行うことが可能となっている。
更には、本実施形態では、軸方向Lに直交する面(本実施形態では、第5ケース部35が配置される軸方向Lの位置で軸方向Lに直交する面)を対称面として、対応する一対の回転部材は、互いに鏡像対称となる形状に形成されていると共に、互いに鏡像対称となる位置に配置されている。上記のように対応する一対の回転部材に互いに逆向きのスラスト荷重が発生する構成に加えてこのような構成とすることで、対応する一対の軸受として互いに同一の仕様の軸受を用いることができ、この点からも、装置全体の小型化を図りやすくなっている。なお、本実施形態では、第1軸受B1及び第4軸受B4、第2軸受B2及び第3軸受B3、第5軸受B5及び第8軸受B8、第6軸受B6及び第7軸受B7、第9軸受B9及び第12軸受B12、第10軸受B10及び第11軸受B11、第13軸受B13及び第16軸受B16、及び、第14軸受B14及び第15軸受B15のそれぞれが、対応する一対の軸受である。
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、第1従動ギヤ51aが、第1軸受B1と第2軸受B2との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1に寄せて配置され、第2従動ギヤ52aが、第3軸受B3と第4軸受B4との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2に寄せて配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1従動ギヤ51a(第1従動ギヤ51aの軸方向Lの中央位置)が、第1軸受B1と第2軸受B2との間の軸方向Lの中央位置に配置される構成や、第1従動ギヤ51aが、第1軸受B1と第2軸受B2との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2に寄せて配置される構成とすることもできる。この場合、上記実施形態の構成に比べて第1軸受B1に対してより大きな荷重が作用し得ることを考慮して、第1軸受B1の容量を上記実施形態の構成に比べて大きく確保すると好適である。また、第2従動ギヤ52a(第2従動ギヤ52aの軸方向Lの中央位置)が、第3軸受B3と第4軸受B4との間の軸方向Lの中央位置に配置される構成や、第2従動ギヤ52aが、第3軸受B3と第4軸受B4との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1に寄せて配置される構成とすることもできる。この場合、上記実施形態の構成に比べて第4軸受B4に対してより大きな荷重が作用し得ることを考慮して、第4軸受B4の容量を上記実施形態の構成に比べて大きく確保すると好適である。
(2)上記の実施形態では、第1軸受B1及び第2軸受B2のうちの軸方向第1側L1に配置される軸受である第2軸受B2が、第2径方向K2視で第1従動ギヤ51aと重複するように配置され、第3軸受B3及び第4軸受B4のうちの軸方向第2側L2に配置される軸受である第3軸受B3が、第2径方向K2視で第2従動ギヤ52aと重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2軸受B2が第2径方向K2視で第1従動ギヤ51aと重複しないように、第1従動ギヤ51aとは軸方向Lの異なる位置に配置される構成とすることもできる。この場合に、第1連結部材51が、第2軸受B2を介して第2径方向K2の外側から支持される構成としてもよい。また、第3軸受B3が第2径方向K2視で第2従動ギヤ52aと重複しないように、第2従動ギヤ52aとは軸方向Lの異なる位置に配置される構成とすることもできる。この場合に、第2連結部材52が、第3軸受B3を介して第2径方向K2の外側から支持される構成としてもよい。
(3)上記の実施形態では、第1駆動ギヤ21aが、第13軸受B13と第14軸受B14との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1に寄せて配置され、第2駆動ギヤ22aが、第15軸受B15と第16軸受B16との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2に寄せて配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動ギヤ21a(第1駆動ギヤ21aの軸方向Lの中央位置)が、第13軸受B13と第14軸受B14との間の軸方向Lの中央位置に配置される構成や、第1駆動ギヤ21aが、第13軸受B13と第14軸受B14との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第2側L2に寄せて配置される構成とすることもできる。また、第2駆動ギヤ22a(第2駆動ギヤ22aの軸方向Lの中央位置)が、第15軸受B15と第16軸受B16との間の軸方向Lの中央位置に配置される構成や、第2駆動ギヤ22aが、第15軸受B15と第16軸受B16との間の軸方向Lの中央位置よりも軸方向第1側L1に寄せて配置される構成とすることもできる。
(4)上記の実施形態では、第13軸受B13及び第14軸受B14のうちの軸方向第1側L1に配置される軸受である第14軸受B14が、第1径方向K1視で第1駆動ギヤ21aと重複しないように、第1駆動ギヤ21aとは軸方向Lの異なる位置に配置され、第15軸受B15及び第16軸受B16のうちの軸方向第2側L2に配置される軸受である第15軸受B15が、第1径方向K1視で第2駆動ギヤ22aと重複しないように、第2駆動ギヤ22aとは軸方向Lの異なる位置に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動部材21が第14軸受B14を介して第1径方向K1の内側から支持される構成とし、第14軸受B14が第1径方向K1視で第1駆動ギヤ21aと重複するように配置される構成とすることもできる。また、第2駆動部材22が第15軸受B15を介して第1径方向K1の内側から支持される構成とし、第15軸受B15が第1径方向K1視で第2駆動ギヤ22aと重複するように配置される構成とすることもできる。
(5)上記の実施形態では、差動歯車装置6が備えるサンギヤ(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)、ピニオンギヤ(第1ピニオンギヤP1及び第2ピニオンギヤP2)、及びリングギヤ(第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2)が、平歯車である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車装置6が備えるサンギヤ、ピニオンギヤ、及びリングギヤが、はすば歯車である構成とすることもできる。
(6)上記の実施形態では、第1連結部材51と第2連結部材52とが、第5ケース部35に対して間接的に支持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1連結部材51と第2連結部材52とが、第5ケース部35に対して直接的に支持される構成とすることもできる。すなわち、図6に示す例のように、第1連結部材51が、第2軸受B2を介して第5ケース部35に直接的に支持され、第2連結部材52が、第3軸受B3を介して第5ケース部35に直接的に支持される構成とすることができる。この場合、「第1伝達部材」は第1連結部材51であり、第1連結部材51が備える第1従動ギヤ51aが「第1はすば歯車」に相当し、第1軸受B1が「第1支持軸受」に相当し、第2軸受B2が「第2支持軸受」に相当する。また、この場合、「第2伝達部材」は第2連結部材52であり、第2連結部材52が備える第2従動ギヤ52aが「第2はすば歯車」に相当し、第3軸受B3が「第3支持軸受」に相当し、第4軸受B4が「第4支持軸受」に相当する。そして、この場合、「第1伝達部材及び第2伝達部材が配置される軸」は第2軸A2であり、第2径方向K2が、「第1伝達部材及び第2伝達部材が配置される軸を基準とする径方向」に相当する。なお、この図6に示す例では、上記実施形態と同様に、第1駆動部材21と第2駆動部材22とが、第5ケース部35に対して直接的に支持されている。よって、図5に示す例では、第1駆動部材21及び第2駆動部材22が、同軸に配置される「第1伝達部材」及び「第2伝達部材」に相当すると共に、第1連結部材51及び第2連結部材52が、同軸に配置される「第1伝達部材」及び「第2伝達部材」に相当する。なお、上記の実施形態とは異なり、第1駆動部材21と第2駆動部材22とが、間接的に(すなわち、ケース部30に固定される支持部材40を介して)第5ケース部35に支持される構成とすることもできる。
(7)上記の実施形態では、第5ケース部35が「ケースが備える壁部」に相当する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース部30に固定される支持部材40が「ケースが備える壁部」に相当する構成とすることもできる。例えば、第5ケース部35と同様の回転部材の支持機能を有する支持部材40が、第5ケース部35に代えて設けられ、当該支持部材40が「ケースが備える壁部」に相当する構成とすることができる。
(8)上記の実施形態では、軸方向第1側L1が「第1側」に相当し、軸方向第2側L2が「第2側」に相当する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸方向第2側L2が「第1側」に相当し、軸方向第1側L1が「第2側」に相当する構成とすることもできる。この場合、車両の前進力行時に各ギヤが受けるスラスト荷重の向きは、図5で示す向きとは逆向きとなる。
(9)上記の実施形態では、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが連結されると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることもできる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
(10)上記の実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である構成とすることもできる。この場合、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることができる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
(11)上記の実施形態では、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部7及び第2連結部8の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部7及び第2連結部8の双方に伝達する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部7及び第2連結部8のうちの第1連結部7のみに伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部7及び第2連結部8のうちの第2連結部8のみに伝達する構成とすることもできる。すなわち、第1回転電機11と第1連結部7との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部8との間の動力伝達経路とが分離された構成とすることもできる。
例えば、上記の実施形態のように第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結せずに、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが互いに独立に差動動作を行う構成とすることで、第1回転電機11と第1連結部7との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部8との間の動力伝達経路とが分離された構成を実現することができる。この場合、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1と、第1連結部7に駆動連結される第2回転要素E2と、第5回転要素と、を備え、第2遊星歯車機構62は、第2連結部8に駆動連結される第3回転要素E3と、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4と、第6回転要素と、を備える。すなわち、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)は、全体として6つの回転要素を有する。この場合、例えば、第5回転要素が非回転部材に固定され、第6回転要素が非回転部材に固定される構成とすることができる。
また、上記実施形態のように伝達装置2が差動歯車装置6を備える構成ではなく、伝達装置2が差動歯車装置6を備えない構成とすることで、第1回転電機11と第1連結部7との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部8との間の動力伝達経路とが分離された構成を実現してもよい。すなわち、上記の実施形態とは異なり、伝達装置2が差動歯車装置6を備えない構成とすることもできる。例えば、伝達装置2が、第1駆動ギヤ21aと第1従動ギヤ51aとを連結するギヤ又はギヤ機構(カウンタギヤ機構等の複数のギヤを有する機構、以下同様。)と、第2駆動ギヤ22aと第2従動ギヤ52aとを連結するギヤ又はギヤ機構と、を備える構成とすることができる。また、図6に一例を示すように、第1駆動ギヤ21aと第1従動ギヤ51aとが噛み合い、第2駆動ギヤ22aと第2従動ギヤ52aとが噛み合う構成とすることもできる。
(12)上記の実施形態では、第1駆動ギヤ21aが第1入力ギヤ71aに噛み合い、第2駆動ギヤ22aが第2入力ギヤ72aに噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動ギヤ21aと第1入力ギヤ71aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結され、第2駆動ギヤ22aと第2入力ギヤ72aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結される構成とすることもできる。
(13)上記の実施形態では、第1回転電機11が第1駆動源として用いられ、第2回転電機12が第2駆動源として用いられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動源及び第2駆動源の一方又は双方として、回転電機以外の駆動源を用いることもできる。回転電機に代えて用いる駆動源として、例えば、内燃機関を例示することができる。なお、内燃機関とは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。
(14)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
車両用駆動装置(1)は、第1駆動源(11)と、前記第1駆動源(11)とは独立に回転可能な第2駆動源(12)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1連結部(7)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2連結部(8)と、前記第1駆動源(11)のトルクを少なくとも前記第1連結部(7)に伝達すると共に、前記第2駆動源(12)のトルクを少なくとも前記第2連結部(8)に伝達する伝達装置(2)と、前記伝達装置(2)を収容するケース(3)と、を備え、前記伝達装置(2)は、前記ケース(3)が備える壁部(35)に対して軸方向(L)の一方側に配置される第1伝達部材(21,51)と、前記壁部(35)に対して前記軸方向(L)の他方側に、前記第1伝達部材(21,51)と同軸に配置される第2伝達部材(22,52)と、を備え、前記第1伝達部材(21,51)は、前記伝達装置(2)が備える他の伝達部材に設けられたはすば歯車に噛み合う第1はすば歯車(21a,51a)を備えると共に、軸受を介して前記壁部(35)に直接的に支持され、前記第2伝達部材(22,52)は、前記伝達装置(2)が備える他の伝達部材に設けられたはすば歯車に噛み合う第2はすば歯車(22a,52a)を備えると共に、軸受を介して前記壁部(35)に直接的に支持され、前記第1はすば歯車(21a,51a)の歯のねじれ方向と、前記第2はすば歯車(22a,52a)の歯のねじれ方向とが、逆向きである。
この構成によれば、第1伝達部材(21,51)が備える第1はすば歯車(21a,51a)の歯のねじれ方向と、第2伝達部材(22,52)が備える第2はすば歯車(22a,52a)の歯のねじれ方向とが、逆向きとされる。そのため、伝達装置(2)がトルクを伝達している状態で、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重の向きと、第2はすば歯車(22a,52a)が受けるスラスト荷重の向きとを、互いに逆向きとすることができる。すなわち、ケース(3)が備える壁部(35)に対して軸方向(L)の両側に分かれて同軸上に配置される第1伝達部材(21,51)と第2伝達部材(22,52)とのそれぞれに発生するスラスト荷重の向きを、互いに逆向きとすることができるため、当該壁部(35)に対して作用し得る軸方向(L)の一方側への偏った荷重を小さく抑えることが可能となる。この結果、第1はすば歯車(21a,51a)の歯のねじれ方向と第2はすば歯車(22a,52a)の歯のねじれ方向とが互いに同じ向きとなる場合に比べて、当該壁部(35)に必要となる強度を小さく抑えることが可能となり、その分、装置全体の小型化を図ることができる。
以上のように、上記の構成によれば、ケース(3)が備える壁部(35)に対して軸方向(L)の両側に分かれて同軸に配置される第1伝達部材(21,51)及び第2伝達部材(22,52)のそれぞれが、はすば歯車を備えると共に軸受を介して当該壁部(35)に直接的に支持される場合に、装置全体の小型化を図ることが可能な車両用駆動装置(1)を実現することができる。
ここで、前記第1伝達部材(21,51)は、前記第1駆動源(11)と一体的に回転する第1駆動部材(21)であり、前記第2伝達部材(22,52)は、前記第2駆動源(12)と一体的に回転する第2駆動部材(22)であると好適である。
この構成によれば、第1駆動部材(21)と第2駆動部材(22)とが、ケース(3)が備える壁部(35)に対して軸方向(L)の両側に分かれて同軸に配置されると共に、第1駆動部材(21)及び第2駆動部材(22)のそれぞれが、はすば歯車を備えると共に軸受を介して当該壁部(35)に直接的に支持される場合に、装置全体の小型化を図ることが可能な車両用駆動装置(1)を実現することができる。
また、前記第1伝達部材(21,51)は、前記第1連結部(7)と一体的に回転する第1連結部材(51)であり、前記第2伝達部材(22,52)は、前記第2連結部(8)と一体的に回転する第2連結部材(52)であると好適である。
この構成によれば、第1連結部材(51)と第2連結部材(52)とが、ケース(3)が備える壁部(35)に対して軸方向(L)の両側に分かれて同軸に配置されると共に、第1連結部材(51)及び第2連結部材(52)のそれぞれが、はすば歯車を備えると共に軸受を介して当該壁部(35)に直接的に支持される場合に、装置全体の小型化を図ることが可能な車両用駆動装置(1)を実現することができる。
また、前記第1伝達部材(21,51)は、第1支持軸受(B13,B1)と第2支持軸受(B14,B2)とにより前記軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持され、前記第2伝達部材(22,52)は、第3支持軸受(B15,B3)と第4支持軸受(B16,B4)とにより前記軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持され、前記第1はすば歯車(21a,51a)は、前記第1支持軸受(B13,B1)と前記第2支持軸受(B14,B2)との間の前記軸方向(L)の中央位置よりも、車両の前進力行時に前記第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である第1側(L1)に寄せて配置され、前記第2はすば歯車(22a,52a)は、前記第3支持軸受(B15,B3)と前記第4支持軸受(B16,B4)との間の前記軸方向(L)の中央位置よりも、前記第1側(L1)とは反対側である第2側(L2)に寄せて配置されていると好適である。
この構成によれば、第1はすば歯車(21a,51a)が、第1支持軸受(B13,B1)と第2支持軸受(B14,B2)との間の軸方向(L)の中央位置よりも、車両の前進力行時に第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重が向く側とは反対側である第1側(L1)に寄せて配置されるため、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるラジアル荷重が、第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)のうちの、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重が大きく作用する軸受とは異なる軸受に作用する構成とすることができる。よって、車両の前進力行時において、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第1支持軸受(B13,B1)と第2支持軸受(B14,B2)とに適切に分担させることができ、これらのスラスト荷重及びラジアル荷重が第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)の一方に集中して作用することを回避して、第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)をバランスよく小型化することが可能となる。
また、上記の構成によれば、第2はすば歯車(22a,52a)が、第3支持軸受(B15,B3)と第4支持軸受(B16,B4)との間の前記軸方向(L)の中央位置よりも、第2側(L2)に寄せて配置される。上述したように、第1はすば歯車(21a,51a)の歯のねじれ方向と第2はすば歯車(22a,52a)の歯のねじれ方向とは逆向きであるため、第2側(L2)は、車両の前進力行時に第2はすば歯車(22a,52a)が受けるスラスト荷重が向く側とは軸方向(L)で反対側となる。よって、車両の前進力行時において、第2はすば歯車(22a,52a)が受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第3支持軸受(B15,B3)と第4支持軸受(B16,B4)とに適切に分担させることができ、これらのスラスト荷重及びラジアル荷重が第3支持軸受(B15,B3)及び第4支持軸受(B16,B4)の一方に集中して作用することを回避して、第3支持軸受(B15,B3)及び第4支持軸受(B16,B4)をバランスよく小型化することが可能となる。
なお、車両の前進回生時や後進力行時には、第1はすば歯車(21a,51a)や第2はすば歯車(22a,52a)が受けるスラスト荷重の向きが、車両の前進力行時とは逆向きとなるが、前進回生や後進力行を行う頻度は前進力行を行う頻度よりも一般に低く、車両の前進回生時や後進力行時に伝達装置(2)が伝達するトルクの大きさも、車両の前進力行時に伝達装置(2)が伝達するトルクの大きさよりも一般に小さい。そのため、車両の前進回生時や後進力行時にスラスト荷重の向きが車両の前進力行時とは逆向きとなることが、第1伝達部材(21,51)を支持する第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)や、第2伝達部材(22,52)を支持する第3支持軸受(B15,B3)及び第4支持軸受(B16,B4)に必要となる容量(支持可能な荷重の大きさ)に与える影響は相対的に小さい。
上記のように、前記第1はすば歯車(21a,51a)が、前記第1支持軸受(B13,B1)と前記第2支持軸受(B14,B2)との間の前記軸方向(L)の中央位置よりも前記第1側(L1)に配置され、前記第2はすば歯車(22a,52a)が、前記第3支持軸受(B15,B3)と前記第4支持軸受(B16,B4)との間の前記軸方向(L)の中央位置よりも前記第2側(L2)に配置される構成において、前記第1支持軸受(B13,B1)及び前記第2支持軸受(B14,B2)のうちの前記第1側(L1)に配置される軸受が、前記第1伝達部材(21,51)及び前記第2伝達部材(22,52)が配置される軸(A1,A2)を基準とする径方向(K1,K2)視で前記第1はすば歯車(21a,51a)と重複するように配置され、前記第3支持軸受(B15,B3)及び前記第4支持軸受(B16,B4)のうちの前記第2側(L2)に配置される軸受が、前記径方向(K1,K2)視で前記第2はすば歯車(22a,52a)と重複するように配置されていると好適である。
この構成によれば、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるラジアル荷重の大部分が、第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)のうちの、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重が大きく作用する軸受とは異なる軸受に作用する構成とすることができる。よって、車両の前進力行時において、第1はすば歯車(21a,51a)が受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第1支持軸受(B13,B1)と第2支持軸受(B14,B2)とに、より適切に分担させることができる。同様に、車両の前進力行時において、第2はすば歯車(22a,52a)が受けるスラスト荷重及びラジアル荷重の支持を、第3支持軸受(B15,B3)と第4支持軸受(B16,B4)とに、より適切に分担させることができる。
また、上記の構成によれば、第1支持軸受(B13,B1)及び第2支持軸受(B14,B2)の一方が径方向(K1,K2)視で第1はすば歯車(21a,51a)と重複するように配置されると共に、第3支持軸受(B15,B3)及び第4支持軸受(B16,B4)の一方が径方向(K1,K2)視で第2はすば歯車(22a,52a)と重複するように配置されるため、その分、装置全体を軸方向(L)に小型化することができるという利点もある。
上記の各構成の車両用駆動装置(1)において、前記伝達装置(2)は、遊星歯車式の差動歯車装置(6)を備え、前記差動歯車装置(6)が備えるサンギヤ(S1,S2)、ピニオンギヤ(P1,P2)、及びリングギヤ(R1,R2)は、平歯車であると好適である。
この構成によれば、差動歯車装置(6)が備えるサンギヤ(S1,S2)、ピニオンギヤ(P1,P2)、及びリングギヤ(R1,R2)が受ける荷重を、主にラジアル荷重とすることができる。よって、差動歯車装置(6)の各ギヤを軸方向(L)に支持するための構成を簡略化して、装置全体の小型化や車両用駆動装置(1)の製造コストの低減を図ることができる。
なお、この構成では、差動歯車装置(6)が備えるサンギヤ(S1,S2)、ピニオンギヤ(P1,P2)、及びリングギヤ(R1,R2)がはすば歯車である場合に比べて、差動歯車装置(6)が差動動作を行う際のギヤノイズが大きくなり得るが、車両の直進時に差動歯車装置(6)が差動動作を行わない構成(すなわち、車両の直進時に差動歯車装置(6)の各回転要素が同速で回転する構成)とすることで、差動歯車装置(6)が差動動作を行う場面を車両の旋回時に限定して、ギヤノイズの影響を小さく抑えることができる。
また、前記伝達装置(2)は、回転速度の順に、第1回転要素(E1)、第2回転要素(E2)、第3回転要素(E3)、及び第4回転要素(E4)を有する差動歯車装置(6)を備え、前記第1回転要素(E1)に前記第1駆動源(11)が駆動連結され、前記第2回転要素(E2)に前記第1連結部(7)が駆動連結され、前記第3回転要素(E3)に前記第2連結部(8)が駆動連結され、前記第4回転要素(E4)に前記第2駆動源(12)が駆動連結されていると好適である。
この構成によれば、第1駆動源(11)及び第2駆動源(12)のトルクを、伝達装置(2)により第1連結部(7)及び第2連結部(8)に分配して伝達することができるため、第1駆動源(11)と第1連結部(7)との間の動力伝達経路と第2駆動源(12)と第2連結部(8)との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、車両の旋回時の走行性能の向上を図ることができる。
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。