次に、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の実施形態としての冷凍機10の構成の概略を示す構成図である。なお、以下の説明において、「上」および「下」は、図1の「上」および「下」を意味し、実際に冷凍機10が図1の向きに配置されるとは限らない。
図1に示すように、実施形態の冷凍機10は、スターリング冷凍機として構成されており、作動流体(例えばヘリウムガス)を用いて寒冷を発生させる第1,第2寒冷発生部20,40と、第1,第2寒冷発生部20,40間で作動流体を流通させる相互流通部60と、第1,第2寒冷発生部20,40を駆動する駆動部70と、冷却水により第1、第2寒冷発生部20,40や駆動部70を冷却する放熱装置80と、第1,第2寒冷発生部20,40の寒冷(冷凍出力)を用いて冷却対象95を冷却する冷却装置85と、冷凍機全体をコントロールする制御装置90と、を備える。
第1,第2寒冷発生部20,40は、それぞれ、圧縮シリンダ22,42と、圧縮シリンダ22,42内で往復動する圧縮ピストン24,44と、膨張シリンダ26,46と、膨張シリンダ26,46内で往復動する膨張ピストン28,48と、膨張ピストン28,48に内蔵された蓄冷器30,50と、圧縮シリンダ22,42内の圧縮空間Sc1,Sc2(後述)と膨張シリンダ26,46内の膨張空間Se1,Se2(後述)に蓄冷器30,50を介して連通する空間Sa1,Sa2(後述)とを接続する作動流体流路32,52と、作動流体流路32,52に設けられた熱交換器(放熱器)34,54と、を備える。
圧縮シリンダ22,42は、有底円筒状に形成されており、駆動部70のクランクケース74に固定されている。圧縮ピストン24,44は、円柱状に形成されており、圧縮シリンダ22,42内に配置されている。圧縮ピストン24,44の外周には、ピストンリング24a,44aが取り付けられており、圧縮空間Sc1,Sc2とバッファ空間Sbとの間で作動流体が流通するのを抑制する。圧縮空間Sc1,Sc2は、圧縮シリンダ22,42の内底面(上側壁部の内面)および内周面(側壁部の内面)と圧縮ピストン24,44の上端面および外周面とピストンリング24a,44aの上端面とにより形成される。バッファ空間Sbは、圧縮シリンダ22,42の内周面と圧縮ピストン24,44の下端面および外周面とピストンリング24a,44aの下端面と膨張シリンダ26,46の内周面と膨張ピストン28,48の下端面および外周面とピストンリング28d,48d(後述)の下端面とクランクケース74の外壁部および区画用壁部74c(後述)とにより形成される。
圧縮ピストン24,44には、圧縮空間Sc1,Sc2とバッファ空間Sbとを連通する連通孔24b,44bが形成されており、この連通孔24b,44bには、弁体および弁体を連通孔24b,44を塞ぐ側に付勢するスプリングを有する逆止弁24c,44cが配置されている。逆止弁24c,44cは、圧縮空間Sc1,Sc2の圧力と逆止弁24c,44cのスプリングの弾性力との和がバッファ空間Sbの圧力以上のときには閉弁し、圧縮空間Sc1,Sc2の圧力と逆止弁24c,44cのスプリングの弾性力との和がバッファ空間Sbの圧力未満のときには開弁する。この逆止弁24c,44cは、バッファ空間Sbから圧縮空間Sc1,Sc2への作動流体の流通を許容すると共に圧縮空間Sc1,Sc2からバッファ空間Sbへの作動流体の流通を規制する。
膨張シリンダ26,46は、有底円筒状に形成されており、駆動部70のクランクケース74に固定されている。膨張ピストン28,48は、中空の円柱状に形成されており、膨張シリンダ26,46内に配置されている。膨張ピストン28,48には、膨張ピストン28,48内(蓄冷器30,50)と膨張空間Se1,Se2とを連通する連通孔28a,48aと、膨張ピストン28,48内(蓄冷器30,50)と作動流体流路32,52に連通する空間Sa1,Sa2とを連通する連通孔28b,48bと、が形成されている。膨張ピストン28,48の外周には、ピストンリング28c,28d,48c,48dが取り付けられている。膨張空間Se1,Se2は、膨張シリンダ26,46の内底面(上側壁部の内面)および内周面(側壁部の内面)と膨張ピストン28,48の上端面および外周面とピストンリング28c,48cの上端面とにより形成される。空間Sa1,Sa2は、膨張シリンダ26,46の内周面と膨張ピストン28,48の外周面とピストンリング28c,48cの下端面とピストンリング28d,48dの上端面とにより形成される。ピストンリング28c,48cは、膨張ピストン28,48内(蓄冷器30,50)を介さずに膨張空間Se1,Se2と空間Sa1,Sa2(作動流体流路32,52)との間で作動流体が流通するのを抑制する。ピストンリング28d,48dは、バッファ空間Sbと空間Sa1,Sa2(作動流体流路32,52)との間で作動流体が流通するのを抑制する。膨張シリンダ26,46の上端部(膨張空間Se1,Se2周辺)の外周には、ヒータ27,47が取り付けられている。
蓄冷器30,50は、複数の金網の蓄冷材等により構成されている。熱交換器34,54は、作動流体流路32,52内の作動流体と放熱装置80の冷却水との熱交換により、圧縮空間Sc1,Sc2からの作動流体を冷却する。
以下、第1,第2寒冷発生部20,40において、圧縮空間Sc1,Sc2から作動流体流路32,52、空間Sa1,Sa2、連通孔28b,48b、蓄冷器30,50、連通孔28a,48aを介して膨張空間Se1,Se2までの空間を、作動流体空間S1,S2という。
相互流通部60は、第1,第2寒冷発生部20,40の作動流体空間S1,S2における蓄冷器30,50よりも圧縮空間Sc1,Sc2側(具体的には、作動流体流路32,52)を互いに接続する作動流体流路61と、作動流体流路61に設けられた圧力振幅調節バルブ62と、を備える。
駆動部70は、モータ71と、モータ71の出力軸に一端側が固定されたクランクシャフト72と、クランクシャフト72の他端側に固定されたオイルポンプ73と、モータ71やクランクシャフト72などを収容するクランクケース74と、を備える。
モータ71は、例えば同期モータや誘導モータとして構成されており、図示しない駆動回路により駆動制御される。駆動回路は、交流電源からの電力を直流電力に変換するコンバータや、コンバータからの直流電力を三相交流電力に変換してモータ71に供給するインバータを備える。クランクシャフト72のクランクピン72a,72b,72c,72dは、それぞれ、圧縮ピストン24、膨張ピストン28、圧縮ピストン44、膨張ピストン48に連結されたピストンロッド25,29,45,49をクランクピン72a,72b,72c,72d周りに揺動自在に支持している。クランクピン72a,72b,72c,72dは、モータ71の出力軸に対して偏心しており、モータ71の回転方向に対して、クランクピン72aとクランクピン72cとは互いに180度異なり、クランクピン72bとクランクピン72dとも互いに180度異なっており、クランクピン72a,72cとクランクピン72b,72dとは互いに例えば後者が前者よりも進角側で90度異なっている。図1では、クランクピン72aが下死点、クランクピン72bが上昇側の中間点、クランクピン72cが上死点、クランクピン72dが下降側の中間点となっている。したがって、圧縮ピストン24と圧縮ピストン44とは互いに逆位相で動作し、膨張ピストン28と膨張ピストン48とは互いに逆位相で動作する。オイルポンプ73は、クランクシャフト72の回転により駆動され、クランクケース74のシャフト収容部74bの底部に貯留されている潤滑油を吸引してクランクシャフト72に供給する。
クランクケース74は、モータ71を収容するモータ収容部74aと、クランクシャフト72を収容すると共に底部に潤滑油を貯留するシャフト収容部74bと、シャフト収容部74bと上述のバッファ空間Sbとを区画する区画用壁部74cと、を備える。モータ収容部74aとシャフト収容部74bとは連通しており、モータ収容部74aとバッファ空間Sbとは、作動流体流路75を介して連通しており、作動流体流路75には、モータ収容部74aからバッファ空間Sbに潤滑油が流通するのを規制するフィルタ76が設けられている。区画用壁部74cは、シャフト収容部74bとバッファ空間Sbとの圧力差に応じて変形するダイヤフラム74dを有する。したがって、モータ収容部74aとシャフト収容部74bとバッファ空間Sbとは、互いの作動流体の流通や区画用壁部74cのダイヤフラム74dの変形により、作動流体の圧力が互いに略同一で且つ略一定となっている。
放熱装置80は、冷却水を流通させるための冷却水流路81と、冷却水流路81内の冷却水を圧送する圧送ポンプ82と、を備える。冷却水流路81は、冷却水を、モータ71周辺とシャフト収容部74bの底部とに流通させた後に、熱交換器34と圧縮シリンダ22周辺と圧縮シリンダ42周辺と熱交換器54とに流通させると共にこれらと並列に膨張シリンダ26周辺と膨張シリンダ46周辺とに流通させて、その後に両者を合流させるための流路である。これにより、モータ71や、シャフト収容部74bに貯留されている潤滑油、熱交換器34,54を通過する作動流体、圧縮シリンダ22,42、膨張シリンダ26,46を冷却する。
冷却装置85は、冷媒(例えば液体窒素)を循環させるための冷媒流路86と、冷媒流路86内の冷媒を圧送する圧送ポンプ87と、を備える。冷媒流路86は、冷媒を、膨張シリンダ26の膨張空間Se1側の端部(いわゆる第1冷却ステージ)、膨張シリンダ46の膨張空間Se2側の端部(いわゆる第2冷却ステージ)、冷却対象95に循環させるための流路である。
制御装置90は、CPUやROM、RAMなどを備えるマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置90には、冷凍機10を運転するのに必要な各種センサからの信号、例えば、冷媒流路86における膨張シリンダ46の上端部周辺(第2冷却ステージ)の直ぐ下流側に取り付けられた温度センサ88からの冷媒の温度Tw1などが入力されている。制御装置90からは、第1,第2寒冷発生部20,40のヒータ27,47への駆動制御信号や、相互流通部60の圧力振幅調節バルブ62への駆動制御信号、駆動部70のモータ71(インバータ)への駆動制御信号、放熱装置80の圧送ポンプ82への駆動制御信号、冷却装置85の圧送ポンプ87への駆動制御信号などが出力されている。
次に、こうして構成された冷凍機10の動作について説明する。制御装置90は、クランクシャフト72の回転数が目標回転数(例えば数百rpm)となるようにモータ71を駆動制御すると共に、冷却水流路81を冷却水が流通するように圧送ポンプ82を駆動制御し、冷媒流路86内で冷媒が循環するように圧送ポンプ87を駆動制御する。以下、第1寒冷発生部20の動作について説明する。第2寒冷発生部40は、第1寒冷発生部20と同様に動作する。
第1寒冷発生部20において、圧縮ピストン24が上側に移動する際には、圧縮空間Sc1の作動流体が、圧縮ピストン24により圧縮されて作動流体流路32に流出し、作動流体流路32に設けられた熱交換器34により放熱され、空間Sa1および連通孔28bを経由し、蓄冷器30により冷却され、連通孔28aを経由して、膨張空間Se1に流通する。膨張ピストン28が下側に移動する際には、膨張空間Se1の作動流体が膨張する。これにより、膨張シリンダ26の膨張空間Se1側の端部(第1冷却ステージ)に寒冷を発生させる。この寒冷は、作動流体空間S1(圧縮空間Sc1から膨張空間Se1までの空間)の作動流体の圧力振幅が大きいほど第1冷却ステージの温度が低くなる(冷凍出力が大きくなる)ように発生する。なお、この寒冷の程度は、膨張空間Se1の容積変化量(クランクピン72bが下死点のときの容積と上死点のときの容積との差分)や、膨張空間Se1の作動流体の圧力変動と容積変動との位相差などの仕様(設計事項)にも依存する。膨張ピストン28が上側に移動する際には、膨張空間Se1の作動流体が、連通孔28aを経由し、蓄冷器30を冷却し、連通孔28bおよび空間Sa1および作動流体流路32を経由して、圧縮空間Sc1に流通する。このようにして、第1寒冷発生部20で、第1冷却ステージに周期的に(膨張空間Se1の作動流体を膨張させる周期で)寒冷を発生させる。同様に、第2寒冷発生部40でも、第2冷却ステージに周期的に(膨張空間Se2の作動流体を膨張させる周期で)寒冷を発生させる。そして、第1,第2冷却ステージで発生した寒冷(冷凍出力)と冷媒流路86の冷媒との熱交換により冷媒を冷却し、この冷媒により冷却対象95を冷却する。上述したように、圧縮ピストン24と圧縮ピストン44とは互いに逆位相で動作し、膨張ピストン28と膨張ピストン48とは互いに逆位相で動作するから、バッファ空間Sbの圧力振幅や冷凍機10の振動を十分に低減することができる。
この冷凍機10では、制御装置90は、温度センサ88から冷却装置85の冷媒流路86の冷媒(例えば液体窒素)の温度Tw1を取得し、冷媒の温度Tw1が目標温度Tw1*(例えば65K〜70K程度)付近となるように、圧力振幅調節バルブ62を駆動制御する。圧力振幅調節バルブ62の開度が大きいほど、作動流体流路32(作動流体空間S1)と作動流体流路52(作動流体空間S2)との間で流通する作動流体の量が多くなる。具体的には、圧力振幅調節バルブ62の開度が大きいほど、圧縮ピストン24が上側に移動すると共に圧縮ピストン44が下側に移動する際には、圧縮空間Sc1から作動流体流路32に流出した作動流体のうち作動流体流路61を介して作動流体流路52(作動流体空間S2)に流通する作動流体の量が多くなり、圧縮ピストン44が上側に移動すると共に圧縮ピストン24が下側に移動する際には、圧縮空間Sc2から作動流体流路52に流出した作動流体のうち作動流体流路61を介して作動流体流路32(作動流体空間S1)に流通する作動流体の量が多くなる。このため、圧力振幅調節バルブ62の開度が大きいほど、作動流体空間S1,S2の圧力振幅が小さくなり、第1,第2冷却テージで発生する寒冷の程度(冷凍出力)が小さくなる。圧力振幅調節バルブ62を全開にしたときには、第1,第2寒冷発生部20,40の各部における作動流体の流通抵抗を無視できるとすれば、作動流体空間S1,S2の圧力振幅が略値0となる(冷凍出力が略値0となる)。これらを考慮して、実施形態では、冷媒流路86の冷媒の温度Tw1から目標温度Tw*を減じた値(Tw1−Tw1*)が小さいほど圧力振幅調節バルブ62の開度が大きくなるように圧力振幅調節バルブ62を駆動制御するものとした。これにより、第1,第2冷却ステージの温度を余分に低くする(冷凍出力が必要な程度を超えて大きい)のを抑制する、即ち、余分なエネルギ消費を抑制することができる。また、第1,第2冷却ステージの温度を目標温度よりも低くしつつヒータ27,47により第1,第2冷却ステージを加熱するものに比して、ヒータ27,47の余分なエネルギ消費(電力消費)を抑制することができる。さらに、冷媒の温度Tw1が目標温度Tw1*付近のときには、圧力振幅調節バルブ62の開度が大きくなり、作動流体空間S1,S2の圧力振幅が小さくなる。作動流体空間S1,S2の圧力振幅を小さくすることは、圧縮ピストン24,44や膨張ピストン28,48の駆動に要するエネルギ(モータ71を回転数制御する際のモータ71のトルク)が小さくなることを意味するから、モータ71の消費エネルギ(消費電力)を小さくすることができる。これらの結果、エネルギ効率の向上を図ることができる。また、モータ71のトルクを小さくすることにより、モータ71の回転変動を抑制することができると共にスターリング冷凍機20の各部の機械寿命を長くすることができる。さらに、モータ71を回転制御することにより、クランクシャフト72の潤滑を十分に行なうことができる。
以上説明した本実施形態の冷凍機10では、第1,第2寒冷発生部20,40の作動流体空間S1,S2における蓄冷器30,50よりも圧縮空間Sc1,Sc2側(作動流体流路32,52)を互いに接続する作動流体流路61と、作動流体流路62に設けられた圧力振幅調節バルブ62とを備え、冷却装置85の冷媒流路86の冷媒(例えば液体窒素)の温度Tw1が目標温度Tw1*(例えば65K〜70K程度)付近となるように圧力振幅調節バルブ62の開度を調節する。これにより、エネルギ効率の向上を図ることができる。
実施形態の冷凍機10では、冷却装置85の冷媒流路86における膨張シリンダ46の膨張空間Se2側の端部(第2冷却ステージ)の直ぐ下流側に温度センサ88を取り付けるものとした。しかし、図2の冷凍機110に示すように、冷却対象95に温度センサ188を取り付けるものとしてもよい。この場合、温度センサ188からの冷却対象95の温度Tw2が目標温度Tw2*(例えば、目標温度Tw1*と同一の温度)付近となるように、冷却対象95の温度Tw2から目標温度Tw2*を減じた値(Tw2−Tw2*)が小さいほど圧力振幅調節バルブ62の開度を大きくすればよい。これにより、冷凍機10と同様の効果を奏することができる。
実施形態の冷凍機10では、特に説明していないが、冷却装置85の冷媒流路86の冷媒の温度Tw1が目標温度Tw1*よりも低くなったときには、ヒータ27,47により膨張シリンダ26,46の上端部を一時的(過渡的)に加熱するものとしてもよい。こうすれば、冷媒の温度Tw1を迅速に目標温度Tw1*付近まで上昇させることができる。また、この場合でも、ヒータ27,47を定常的に駆動するものに比して、エネルギ効率の向上を図ることができる。
実施形態の冷凍機10では、作動流体流路61と圧力振幅調節バルブ62とを有する相互流通部60を備えるものとした。しかし、相互流通部60に代えて、図3の冷凍機210に示すように、流通部160,165を備えるものとしてもよい。流通部160,165は、それぞれ、第1,第2寒冷発生部20,40の作動流体空間S1,S2における蓄冷器30,50よりも圧縮空間Sc1,Sc2側(具体的には、作動流体流路32,52)とバッファ空間Sbとを接続する作動流体流路161,166と、作動流体流路166,167に設けられた圧力振幅調節バルブ162,167と、を備える。この冷凍機210では、圧力振幅調節バルブ162,167の開度が大きいほど、作動流体流路32,52とバッファ空間Sbとの間で流通する量が多くなる。基本的に、作動流体空間S1,S2の作動流体の圧力はバッファ空間Sbの作動流体の圧力よりも高いから、圧力振幅調節バルブ162,167の開度に応じて、作動流体空間S1,S2からバッファ空間Sbに作動流体が流通する。具体的には、それぞれ、圧力振幅調節バルブ162,167の開度が大きいほど、圧縮ピストン24,44が上側に移動する際に、圧縮空間Sc1,Sc2から作動流体流路32,52に流出した作動流体のうち作動流体流路161,166を介してバッファ空間Sbに流通する作動流体の量が多くなる。このため、圧力振幅調節バルブ162,167の開度が大きいほど、作動流体空間S1,S2の圧力振幅が小さくなり、第1,第2冷却テージで発生する寒冷の程度(冷凍出力)が小さくなる。圧力振幅調節バルブ162,167を全開にしたときには、第1,第2寒冷発生部20,40の各部における作動流体の流通抵抗を無視できるとすれば、作動流体空間S1,S2の圧力振幅が略値0となる(冷凍出力が略値0となる)。これらを考慮して、この実施形態では、冷媒流路86の冷媒の温度Tw1から目標温度Tw1*を減じた値(Tw1−Tw1*)が小さいほど圧力振幅調節バルブ162,167の開度が大きくなるように圧力振幅調節バルブ62を駆動制御するものとした。これにより、冷凍機10と同様の効果を奏することができる。
この冷凍機210では、冷却装置85の冷媒流路86における膨張シリンダ46の膨張空間Se2側の端部(第2冷却ステージ)の直ぐ下流側に温度センサ88を取り付けるものとした。しかし、図4の冷凍機310に示すように、第1,第2寒冷発生部20,40の膨張シリンダ26,46の膨張空間Se1,Se2側の端部に温度センサ288,289を取り付けるものとしてもよい。この場合、温度センサ288,289からの膨張シリンダ26,46の膨張空間Se1,Se2側の端部の温度Tw3,Tw4が目標温度Tw3*,Tw4*(例えば、目標温度Tw1*と同一またはそれよりも若干低い温度)付近となるように、温度Tw3,Tw4から目標温度Tw3*,Tw4*を減じた値(Tw3−Tw3*),(Tw4−Tw4*)が小さいほど圧力振幅調節バルブ162,167の開度を大きくすればよい。こうすれば、第1,第2寒冷発生部20,40の寒冷の程度(冷凍出力)を個別に調節することができる。
この冷凍機310のハード構成に加えて、図5の冷凍機410に示すように、第1,第2寒冷発生部20,40の第1,第2作動流体空間S1,S2に圧力センサ491,492を取り付けると共に、膨張シリンダ26,46のうちバッファ空間Sbの一部を形成する部分に圧力センサ493,494を取り付けるものとしてもよい。この場合、温度センサ288,289からの膨張シリンダ26,46の膨張空間Se1,Se2側の端部の温度Tw3,Tw4に加えて、圧力センサ491,492からの第1,第2作動流体空間S1,S2の圧力PH1,PH2と圧力センサ493,494からのバッファ空間Sbのうち膨張シリンダ26,46内の部分の圧力PL1,PL2とも用いて、温度Tw3,Tw4が目標温度Tw3*,Tw4*付近となるように圧力振幅調節バルブ162,167の開度を調節するものとしてもよい。こうすれば、作動流体空間S1,S2の圧力振幅(圧力(PH1−PL1),(PH2−PL2)の変動の振幅)を検知しながら圧力振幅調節バルブ162,167の開度を調節できるから、第1,第2寒冷発生部20,40の寒冷の程度(冷凍出力)をより適切なものとすることができる。なお、圧力PL1,PL2は略等しいと考えられるから、圧力センサ493,494のうちの一方を省略するものとしてもよい。
実施形態の冷凍機10では、蓄冷器30,50が圧縮ピストン24,44に内蔵されるものとしたが、圧縮ピストン24,44外に配置されるものとしてもよい。
実施形態の冷凍機10では、冷却装置85を備え、第1,第2冷却ステージで発生した寒冷と冷媒流路86の冷媒との熱交換により冷媒を冷却し、この冷媒により冷却対象95を冷却するものとした。しかし、第1,第2冷却ステージに冷却対象95を直接配置するものとしてもよい。
実施形態の冷凍機10では、ヒータ27,47を備えるものとしたが、ヒータ27,47を備えないものとしてもよい。
実施形態の冷凍機10では、第1,第2寒冷発生部20,40を備えるものとしたが、寒冷発生部の数は2つに限定されるものではなく、偶数であれば、4つや6つなどとしてもよい。これらの場合でも、2つずつ互いに逆位相となるように動作させれば、実施形態と同様に、バッファ空間の圧力振幅やスターリング冷凍機の振動を十分に低減することができる。
図3の冷凍機210では、寒冷発生部の数は、偶数に限られるものではなく、1つや3つなどの奇数としてもよい。
実施形態の冷凍機10では、1段のスターリング冷凍機として構成されるものとしたが、2段などの複数段のスターリング冷凍機として構成されるものとしてもよい。
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、圧縮シリンダ22,42が「圧縮シリンダ」に相当し、圧縮ピストン24,44が「圧縮ピストン」に相当し、膨張シリンダ26,46が「膨張シリンダ」に相当し、膨張ピストン28,48が「膨張ピストン」に相当し、第1,第2寒冷発生部20,40が「寒冷発生部」に相当し、駆動部70が「駆動部」に相当し、相互流通部60(作動流体流路61およびと圧力振幅調節バルブ62)と制御装置90とが「圧力振幅調節部」に相当する。
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。