JP6953131B2 - 筋強直性ジストロフィーの処置 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、筋強直性ジストロフィーの処置のための組成物及び方法に関する。
発明の背景
成人における最も一般的な神経筋疾患の1つである筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)に位置する不安定なCTG増大によって引き起こされる遺伝性の常染色体優性遺伝疾患である(Brook et al. 1992)。CTGの数は、罹患患者においては50個から数千個の反復配列までばらつきがあるが、一方、罹患していない個体は38個未満の反復配列を有し、全体的にCTG反復配列のサイズと、疾患の重度と、発症年齢(逆相関)との間には相関性がある(Hunter et al. 1992; Tsilfidis et al. 1992)。DM1の臨床特徴は様々であるが、一般的には、筋強直症、進行性筋力低下、及び萎縮症、並びに心伝導障害が含まれるが、しかしまた、筋肉以外の症状、例えば認知障害、白内障、性腺機能低下症及び内分泌腺不全症も含まれる(Harper 2001)。
病原性のCTG配列が転写され、DM1型の病気発生における有毒なRNAの機能獲得型機序に関与している、DMPK転写物の3’UTRに位置する増加したCUG反復配列(CUGexp−RNA)を含有しているRNAを生じる(Klein et al. 2011)。明確に異なる凝集物又は病巣として核内に保持されているCUGexp−RNAは、MBNL及びCELFファミリーのRNAスプライシング因子メンバーの機能を変化させ、その結果、DM1罹患組織において特定の群の転写物の選択的スプライシングの誤調節が起こる(Taneja et al. 1995; Ranum and Cooper 2006)。スプライシング事象の異常調節により主に、成人のDM1の組織において致命的なスプライシングパターンの再発現が起こり、CLC−1、INSR及びBIN1のプレmRNAに影響を及ぼすミススプライシング事象はそれぞれ、筋強直症、インスリン抵抗性、及び筋力低下に関連している(Savkur et al. 2001; Charlet et al. 2002; Mankodi et al. 2002; Fugier et al. 2011)。50人のDM1患者の集団に対して実施された近年の研究は、罹患した骨格筋において42個のスプライシングの異常を確認し、これらのスプライシング変化は、他の筋疾患と比較してDM1に特異的であり、主に、MBNL1の機能欠失に起因することを示した(Nakamori et al. 2013)。
MBNL1は、MBNL1、−2及び−3をはじめとする、muscleblind-likeRNA結合タンパク質ファミリーの一員であり(Pascual et al. 2006)、成人骨格筋に発現されている主要なMBNLタンパク質である(Kanadia et al. 2003; Holt et al. 2009)。MBNL1は、他のMBNLタンパク質パラログのように、高い親和性で増大したCUG反復配列に結合し、DM1の筋肉細胞におけるCUGexp−RNAの核内フォーカスと同じ場所に局在する(Miller et al. 2000; Fardaei et al. 2001)。突然変異体RNAにおける多数のCUG反復配列に起因するこれらのリボ核タンパク質複合体へのMBNL1の捕捉により、その機能は欠失し、その結果、MBNL1それ自体を含むいくつかの標的プレmRNAの選択的スプライシングの誤調節が起こる。この仮説と一致して、Mbnl1ノックアウトマウスは、CUGexp−RNAを発現しているDM1患者又はDM1マウスモデルの筋肉試料に観察される大半の調節解除されたスプライシング事象を再現する(Mankodi et al. 2000; Kanadia et al. 2003; Lin et al. 2006; Du et al. 2010)。さらに、DM1マウスの骨格筋における機能的かつ完全長のMBNL1(アイソフォーム40又は41)の過剰発現は、スプライシングの異常を修正し、DM1疾患の特徴である筋強直症を消失させるのに十分である(Kanadia et al. 2006; Chamberlain and Ranum 2012)。さらに、国際公開公報第2010/044894号では、MBNLタンパク質又はその機能的変異体、すなわち、MBNLタンパク質の生物学的活性を保持した変異体を、標的化部分とコンジュゲートさせたキメラポリペプチドの剤形で投与することが提案されている。この文献は、DM1の処置のための非機能的なMBNLポリペプチドの使用を開示していない。さらに、脳内で顕著に発現されているMBNL2の破壊は、ヒトDM1の脳においても同じように誤調節されているマウスの特定のスプライシング事象を調節解除し、このことは、ヒト疾患の病的変化におけるMBNL2の機能欠失の顕著な役割を支持している(Charizanis et al. 2012)。要するに、これらの結果は、DM1において増大したCUG反復配列によって誘発されるRNA毒性に関与している重要な機序としてのMBNLの機能欠失を支持する。
DM1マウスモデルにおけるスプライシングの誤調節及び筋強直症を元に戻すための、CUGexp−RNAと干渉して病巣からMBNL1を放出させる改変されたオリゴヌクレオチドアンチセンスアプローチはすでに提案されている。しかしながら、スプライシングの誤調節を元に戻し、筋強直性ジストロフィーにおける筋強直症などの臨床症状を打ち消すための代替的かつ効果的な手段は依然として必要とされている。
発明の要約
本発明の目的は、筋強直性ジストロフィーの処置のための新規なツール及び方法を提供することである。本発明は、特にウイルスベクターの使用を通して異所的に発現されている改変されたMBNLポリペプチドが、インビトロ及びインビボの両方においてCUGexp−RNAの毒性を打ち消すのに効果的であるという本明細書に提供されたエビデンスに基づく。
本発明の1つの態様は、改変されたMBNLポリペプチドに関する。以下に提供されているように、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、完全長のMBNLタンパク質のスプライシング活性と比較した場合に、減少したスプライシング活性、特に、少なくとも50%、特に少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、又は少なくとも90%、又はさらには少なくとも95%減少したスプライシング活性を有するが、そのYGCY結合特性を維持している。特に、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、病的なCUG反復配列に結合することができる。さらに、本明細書において使用される改変されたMBNLポリペプチドは、MBNL1及びMBNL2などの捕捉された内因性MBNLをCUGexp−RNA凝集物から放出することによって、これらの内因性MBNLタンパク質の機能を回復させることによって、CUGexp−RNAの毒性を打ち消すことができる。
本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、筋強直性ジストロフィーの処置に使用される。別の態様は、有効量の本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドをそれを必要とする被験者に投与する工程を含む、筋強直性ジストロフィーの処置法に関する。本発明のさらなる態様は、筋強力性ジストロフィーの処置に使用する医薬品の製造のための、本明細書に記載のような改変されたMBNLポリペプチドの使用である。
本明細書において開示された別の態様は、それを必要とする細胞又は生物内のCUG反復配列に由来する、内因性MBNL1又はMBNL2などの内因性MBNLタンパク質を置換し、これにより、CUGexp−RNA発現によって誘発された調節解除されたスプライシング事象を元に戻すための、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドの使用である。特定の実施態様では、改変されたMBNLポリペプチドは、ウイルスベクターを使用して細胞又は生物に提供される。
ヒトMBNL1遺伝子のゲノムDNA構成。エキソンの順番及び名称、並びに、各エキソンのヌクレオチド長が示されている。透き通った灰色のボックスはUTRを示す。色の付いたボックスはカセットエキソンを示す。白抜きのボックスは構成性エキソンを示す。MBNL1選択的カセットの選択的スプライシングにより、MBNL143又はMBNL140をはじめとする10個を超えるアイソフォームが生じる。アミノ酸長(aa)が示され、濃い灰色のボックスはCジンクフィンガーモチーフを示す。2つはMBNL1エキソン2に位置し、他の2つはMBNL1エキソン4に位置する。改変されたMBNL1ポリペプチド(本明細書ではΔCT3と称される)は、4番目のCジンクフィンガーモチーフの後のC末端ドメインを欠失している、切断短縮されたMBNL1構築物である。 ΔCT3は、インビトロで核内CUGexp−RNA凝集物と同じ場所に局在する。GFP、GFP−ΔCT3、又はGFP−MBNL140構築物を、Hela細胞に960個のCTG反復配列と共に同時トランスフェクトした。CUGexp−RNA病巣を、Cy3−CAG7プローブを使用してFISHによって可視化した。 様々なMBNL1アイソフォーム並びにΔCT3構築物の発現は、DM1で調節解除されたタウのエキソン2/3のミニ遺伝子のスプライシングを回復させる。タウのエキソン2/3のミニ遺伝子は、psvIRBスプライシングレポーターミニ遺伝子において2つの選択的カセット2及び3の挿入断片を含む(Tran et al. 2011)。MBNL135又は38又は41又は43アイソフォーム(パネルA)又はGFP−ΔCT3(パネルB)を、以前に記載されているように(Tran et al. 2011)、Hela細胞においてタウのエキソン2/3のミニ遺伝子、及び、960個の断続性のCTG反復配列を含有しているプラスミドと共に同時発現させた。タウE2の包含率を計算し、タウのエキソン2及びエキソン3の周辺のプライマーを使用したRT−PCR後に確立した。 ΔCT3の核内局在は、スプライシング事象を調節するために必要とされる。A)核外移行シグナル(NES)を含有している又は含有していないGFP−ΔCT3構築物を、Hela細胞内で960個のCTG反復配列と共に同時発現させたか又は同時発現させなかった。B)cTNTエキソン5又はIRエキソン11の包含を、Hela細胞におけるMBNL又はGFP構築物と、cTNTエキソン5又はIRエキソン11のミニ遺伝子との同時トランスフェクション後にRT−PCRによって評価した。C)タウのエキソン2の包含を、タウのエキソン2/3のミニ遺伝子、960個のCTG反復配列、及びMBNL又はGFP構築物と共に同時トランスフェクトされたHela細胞において分析した。 ΔCT3は、インビトロでCUG反復配列に由来するMBNL1を置換することができる。組換えMBNL140(又はΔCT3)タンパク質を、漸増濃度の組換えΔCT3(MBNL140)タンパク質の非存在下又は存在下で95個のCUG反復配列を含有しているインビトロで転写された32P RNAに架橋した。 ΔCT3は、ヒトDM1筋肉細胞において核内CUGexp−RNAと同じ場所に局在する。一次DM1筋肉細胞に、GFP−ΔCT3をコードしているcDNAを含有しているレンチウイルスベクターを形質導入した。CUGexp−RNA病巣を、Cy3−CAGプローブを使用してFISHによって可視化した。 ΔCT3は、分化したヒトDM1筋肉細胞におけるミススプライシング事象を標準化する。一次ヒトDM1筋肉細胞及び非DM1筋肉細胞に、GFP−ΔCT3又はGFPのみを発現しているレンチウイルスベクターを形質導入したか又は形質導入しなかった。BIN1エキソン11、LDB3エキソン7、及びDMDエキソン78転写物のスプライシングプロファイルをRT−PCRによって分析した。 ΔCT3は、分化したヒトDM1筋肉細胞におけるミススプライシング事象を標準化する。一次ヒトDM1筋肉細胞及び非DM1筋肉細胞に、GFP−ΔCT3又はGFPのみを発現しているレンチウイルスベクターを形質導入したか又は形質導入しなかった。BIN1エキソン11、LDB3エキソン7、及びDMDエキソン78転写物のスプライシングプロファイルをRT−PCRによって分析した。 分化した筋肉細胞(対照、DM1、又はCを発現しているDM1)を、C末端エキソン9に対して指向されるMBNL1siRNA(MBNL1に存在するが、ΔCT3配列には存在しない)を用いてトランスフェクトしたか又はトランスフェクトしなかった。DMDエキソン78転写物のスプライシングプロファイルをRT−PCRによって分析した。 GFP−ΔCT3をコードしているcDNAを含有している血清型9のアデノ随伴ウイルス(AAV9)の筋肉内注射は、DM1マウスにおいてスプライシングの誤調節を標準化する。HSA−LRマウスの腓腹筋にAAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)を注射し、6週間後に分析した。反対側の筋肉に食塩水を注射した。Sercalエキソン22、Mbnl1エキソン7、及びClcn1エキソン7aのスプライシングプロファイルをRT−PCRによって分析した。 GFP−ΔCT3をコードしているcDNAを含有している血清型9のアデノ随伴ウイルス(AAV9)の筋肉内注射は、DM1マウスにおいてスプライシングの誤調節を標準化する。HSA−LRマウスの腓腹筋にAAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)を注射し、6週間後に分析した。反対側の筋肉に食塩水を注射した。Sercalエキソン22、Mbnl1エキソン7、及びClcn1エキソン7aのスプライシングプロファイルをRT−PCRによって分析した。 GFP−ΔCT3は、インビボで核内CUGexp−RNA病巣と同じ場所に局在する。FISH−IFを実施して、AAV9 GFP−ΔCT3を注射されたHSA−LRマウスの筋肉切片上でCUGexp−RNA病巣及びGFP−ΔCT3を検出した。 GFP−ΔCT3は、インビボで核内のCUGexp−RNA病巣に由来するMbnl1を置換する。FISH−IFを実施して、AAV9 GFP−ΔCT3又は食塩水を注射されたHSA−LRマウスの筋肉切片上でCUGexp−RNA病巣、内因性Mbnl1及びGFP−ΔCT3を検出した。各成分のピーク強度を、核内に観察された病巣を横切る任意のレーンに沿って測定した。 GFP−ΔCT3は、インビボで核内のCUGexp−RNA病巣に由来するMbnl1を置換する。FISH−IFを実施して、AAV9 GFP−ΔCT3又は食塩水を注射されたHSA−LRマウスの筋肉切片上でCUGexp−RNA病巣、内因性Mbnl1及びGFP−ΔCT3を検出した。各成分のピーク強度を、核内に観察された病巣を横切る任意のレーンに沿って測定した。 AAV9 GFP−ΔCT3の筋肉内注射は、DM1マウスの筋強直症を消失させる。AAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)又は食塩水(反対側の筋肉)を注射されたHSA−LR腓腹筋の力の弛緩を注射から6週間後に測定した。FVB野生型マウスの腓腹筋でも力の弛緩を測定した。 AAV9 GFP−ΔCT3を発現しているFVB野生型マウスにおける筋肉変性の兆候は全くない。FVB野生型マウスの前脛骨筋に、AAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)を注射し、3、4又は6週間後にIFによって分析した。反対側の筋肉に、空のAAV9 MCSを注射した。胚性MyHC抗体及びラミニン抗体を使用して再生線維及び筋線維をそれぞれ検出した。核をDAPIで染色した。 AAV9 GFP−ΔCT3のみの発現は、野生型マウスにおいて選択的スプライシングを調節解除しなかった。FVB野生型マウスの前脛骨筋に、AAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)を注射し、Clcn1エキソン7a又はSercalエキソン11のスプライシングプロファイルを、形質導入から3、4又は6週間後に分析した。反対側の筋肉に空のAAV MCSを注射した。 AAV9 GFP−ΔCT3の筋肉内注射は、DM1マウスにおけるスプライシング誤調節を標準化する。HSA−LRマウスの前脛骨筋にAAV9 GFP−ΔCT3(1×1011vg;n=6)を注射し、6週間後に分析した。反対側の筋肉にAAV9 MCSを注射した。Clcn1エキソン7a、Sercalエキソン11、LDB3エキソン11のスプライシングプロファイルをRT−PCRによって決定した。 AAV9−V5−ΔCT構築物の筋肉内注射。NLS−V5−ΔCT及びV5−ΔCT3構築物は、エキソン3を欠失しているV5−ΔCT(−3)とは対照的に、DM1マウスのスプライシング誤調節を標準化する。HSA−LRマウスの前脛骨筋にAAV9−V5−ΔCT構築物(5×1010vg;n=3)を注射し、6週間後に分析した。反対側の筋肉にPBSを注射した。Clcn1エキソン7a及びSecalエキソン11のスプライシングプロファイルをRT−PCRによって決定した。 ΔCT3は、MBNL2スプライシング依存性事象を回復させる。MBNL構築物(MBNL1、パネルA;MBNL2、パネルB;ΔCT3、パネルC)を、(Carpentier et al., 2014)に記載のように、T98G細胞内でヒトタウのエキソン2のミニ遺伝子及び960個のCTG反復配列と同時に発現させた。タウE2の包含をRT−PCRによって分析した。グラフは、タウのエキソン2の包含率を示す(少なくとも3回の独立した実験についての平均値±標準誤差)。有意差がアステリスクによって示されている:、p<0.05;**、p<0.01、***、p<0.001。18S転写物を内部対照として使用して、RNAの量を確認した。DT960トランスフェクションの効率を、ヒトDMPK遺伝子の3’UTRのRT−PCRによって確認した。パネルDは、突然変異MBNL構築物において突然変異していた突然変異MBNL1部位(太文字の灰色)を示す。
発明の詳細な説明
本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、MBNL YGCY RNAモチーフに結合することができ、「Y」はピリミジン(ウリジン又はシトシン)を示す。特に、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、病原性のDM1において増大したCUG反復配列の構築ブロックである、UGCUモチーフに結合することができる。特定の実施態様では、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、MBNL1mRNAのエキソン3に対応するアミノ酸(アクセッション番号NM_021038)を含むか又は含まない。さらなる実施態様では、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、MBNL1mRNAのエキソン5〜10に相当する配列番号1
Figure 0006953131

のアミノ酸を欠失している。
本明細書において使用される「MBNL」という用語は、muscleblind-likeRNA結合タンパク質ファミリーの全てのパラログメンバーを示し、特にMBNL1、−2、及び−3を含む。特定の実施態様では、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドは、ヒトMBNL1タンパク質配列に由来する。1つの実施態様では、改変されたMBNLポリペプチドは、エキソン3によりコードされる配列を有するが、MBNL1遺伝子のエキソン5〜10によってコードされるアミノ酸配列は欠失している、MBNL1タンパク質である。具体的な実施態様では、改変されたMBNL1由来ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
Figure 0006953131

を有するΔCT3と称される。
1つの実施態様では、改変されたMBNLポリペプチドは、エキソン3によりコードされる配列と、MBNL1遺伝子のエキソン5〜10によってコードされる配列の両方を欠失している、MBNL1タンパク質である。具体的な実施態様では、非機能的なMBNL1由来ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
Figure 0006953131

を有するΔCTと称される。
別の実施態様では、改変されたMBNLポリペプチドは、MBNL2タンパク質のエキソン2〜5のアミノ酸配列によってコードされるMBNL2タンパク質である。具体的な実施態様では、改変されたMBNL2由来ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
Figure 0006953131

を有するMBNL2−ΔCT3と称される。
本明細書において使用される本発明の改変されたMBNLポリペプチドの「変異体」は、YGCYモチーフに対して、特にCUG反復配列に対して、それが由来する野生型MBNLタンパク質(特にMBNL1、2、又は3)、又は、上記に示されているような配列番号2、配列番号3又は配列番号4の改変されたMBNLタンパク質と同一又は類似の結合特性を有するタンパク質であり、該変異体は、野生型MBNLタンパク質と比較して減少したスプライシング活性を有する。換言すれば、本発明に使用される改変されたMBNLポリペプチドは、野生型の親MBNLタンパク質と比較して低いスプライシング活性を有しているか又はさらには全くスプライシング活性を有していない、非機能的なMBNLポリペプチドである。筋強直性ジストロフィーの処置のための、そのスプライシング活性に関してこのような非機能的であるMBNLポリペプチドの使用は、先行技術においては報告されたことは全くなかった。なぜなら、全ての以前の治療的試みは、機能的MBNLタンパク質、すなわち、YGCYモチーフへのその結合能及びそのスプライシング活性をはじめとする野生型タンパク質の全ての特徴を有するタンパク質を使用して行なわれたからである。実際に、以前の試みは、病的反復配列上に捕捉されている遊離しかつ機能的に利用可能な内因性MBNLタンパク質の減少を補うであろう、処置された細胞によるMBNLタンパク質の過剰発現を提供することを目指していた。本開示に適用された戦略には、関連性がない。機能的MBNLタンパク質の過剰発現を提供する代わりに、本発明者らは、改変されたMBNLタンパク質、すなわち、減少したスプライシング活性を有するか又はさらには全くスプライシング活性を有さない非機能的な変異MBNLタンパク質を、それを必要とする細胞に導入して、その上の内因性MBNLタンパク質(群)と競合する、置換する、及び交換して、その捕捉のネガティブな結果を回避することを提案する。本開示の実験の部分に提供されているように、本戦略を用いて得られた結果は極めて満足の行くものであった。
特定の実施態様では、本発明に記載の変異体は、野生型MBNLタンパク質(例えばMBNL1、2又は3)のエキソン1〜4に相当するアミノ酸配列、又は配列番号2、3若しくは4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、特に少なくとも60%、70%、80%、90%、より特定すると少なくとも95%又はさらには少なくとも99%同一である配列を有し得る。
本発明の特定の実施態様では、本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、MBNLポリペプチドと標的化部分とからなるキメラペプチドではない。
本発明は、ほぼ全くスプライシング活性を有していないか、又はさもなくば野生型MBNLタンパク質と比較して減少した活性を有する、改変されたMBNLポリペプチドを実施する。「ほぼ全く活性がない」又は「減少した活性」によって、本明細書では、野生型MBNLタンパク質のスプライシング活性と比較して少なくとも50%、特に少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、又はさらには少なくとも95%減少したスプライシング活性を説明することを意図する。このような活性は、ミニ遺伝子の使用などの当業者によって周知の方法に従って決定され、これにより、cTNTのエキソン5、IRのエキソン11、及びタウのエキソン2の選択的スプライシングを分析し得る(Tran et al., 2011)。
特定の実施態様では、本発明の改変されたMBNLタンパク質は、核局在化配列(NLS)又は核外移行シグナル(NES)などの局在化配列を含み得る。代表的なNLSは、配列番号5:PKKKRKVに示される配列を有する。代表的なNESは、配列番号6:LPPLERLTLDに示される配列を有する。本開示は、このような局在化配列、特にNLS又はNES、例えば上記に具体的に記載されたようなものと組み合わせられた、上記のような任意の改変されたMBNLポリペプチドを含む。
本発明はさらに、本発明の改変されたMBNLポリペプチド又はその変異体を含む、医薬組成物に関する。
本発明の別の態様は、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むか又はからなる核酸配列である。本発明はさらに、本明細書において定義されているようなヌクレオチド配列と、宿主細胞内で本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドの発現(例えば転写及び翻訳)を可能とする調節配列(例えば適切なプロモーター(群)、エンハンサー(群)、終結因子(群)など)とからなる又は含む、遺伝子構築物に関する。本発明の遺伝子構築物はDNAでもRNAでもよく、好ましくは二本鎖DNAである。本発明の遺伝子構築物はまた、目的の宿主細胞又は宿主生物の形質転換に適した形態、目的の宿主細胞のゲノムDNAへの組込みに適した形態、あるいは、目的とする宿主生物における独立した複製、維持及び/又は遺伝に適した形態であり得る。例えば、本発明の遺伝子構築物は、ベクター、例えばプラスミド、コスミド、YAC、ウイルスをコードするベクター、又はトランスポゾンなどの形態であり得る。特に、該ベクターは、発現ベクター、すなわち、インビトロ及び/又はインビボ(例えば適切な宿主細胞、宿主生物、及び/又は発現系において)における発現を提供し得るベクターであり得る。好ましいが非制限的な態様では、本発明の遺伝子構築物は、ii)1つ以上の調節配列、例えばプロモーター及び場合により適切な終結因子に;並びに場合によりまたiii)遺伝子構築物の1つ以上のさらなる配列、例えば3’−又は5’−UTR配列、リーダー配列、選択マーカー、発現マーカー/リポーター遺伝子、及び/又は、改変されたMBNLポリペプチドの形質転換若しくは組込み若しくは細胞下局在若しくは発現(の効率)を促進若しくは増加させ得る配列、例えば核局在化シグナル(NLS)若しくは核外移行シグナル(NES)に作動可能に連結された、i)本発明の少なくとも1つの核酸配列を含む。
特定の実施態様では、遺伝子構築物は、組換えウイルスベクターのゲノムに対応する。本発明を実施するのに使用される適切なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスが挙げられる。特に、本発明は、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドをコードしている核酸配列を含むレンチウイルスに関する。別の特定の実施態様では、本発明は、本発明に記載の改変されたMBNLタンパク質をコードしている核酸配列を含む、AAVベクター、特にAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、又はAAV11ベクター、特にAAV9ベクターに関する。AVVベクターは、シュードタイプ化ベクターでもよく、すなわち、そのゲノム及びそのキャプシドは、異なるAAV血清型に由来していてもよい。例えば、ゲノムは、AAV2ゲノムに由来していてもよく、そのキャプシドタンパク質は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、又はAAV11血清型であってもよい。
別の態様は、医薬品としての使用のための、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドに関する。
本発明の改変されたMBNLポリペプチドは、特に、MBNLタンパク質の捕捉に関連した、又は、MBNL1などのMBNLメンバー若しくは他のパラログメンバー(MBNL2及びMBNL3を含む)の調節解除された機能に関連した、疾病若しくは疾患の処置において有用な治療剤である。好ましい実施態様では、本発明の改変されたポリペプチドは、DM1及びDM2などの筋強直性ジストロフィー、又は、MBNL機能の低下(例えば捕捉、凝集、突然変異など)が本発明の改変されたMBNLポリペプチドの異所性送達によって救出され得るあらゆる疾病の処置のために使用される。
さらなる態様では、本発明は、筋強直性ジストロフィーの処置法に使用するための、上記のような改変されたMBNLポリペプチドに関する。
本明細書において使用される「処置」又は「療法」という用語は、治癒的及び/又は予防的処置を含む。より特定すると、治癒的処置は、症状の軽減、寛解、及び/又は除去、縮小、及び/又は安定化(例えば、より進行したステージへと進行できない)、並びに、特定の疾患の症状の進行の遅延のいずれかをいう。予防的処置は、発症の停止、発症の遅延、発生の減少、発生のリスクの減少、発症率の低下、重篤度の低下、並びに、所与の疾患に関する症状の発症までの時間の延長及び生存期間の延長をいう。
したがって、筋強直性ジストロフィーの処置を必要とする被験者における筋強直性ジストロフィーの処置法が記載され、該方法は、該患者に、本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチド、又は該MBNLポリペプチドをコードしている核酸配列を投与する工程を含む。
本発明の脈絡において、「被験者」又は「患者」は、その年齢又は性別に関係なく筋強直性ジストロフィーを患っている哺乳動物、特にヒトを意味する。この用語は具体的には、家畜及び一般的な実験用哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ラット、及びマウスを含む。好ましくは、処置すべき患者は、ヒト、例えば小児又は青年である。
本発明に記載の使用及び方法のために、改変されたMBNLポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、又はウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター又はAAVベクター)は、当技術分野において公知の方法によって製剤化され得る。さらに、任意の投与経路が考えられ得る。例えば、改変されたMBNLポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、及びウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター又はAAVベクター)を、経口、肺内、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、皮内、頬側、鼻腔内、舌下、眼内、直腸内、及び膣内を含むがこれらに限定されない、任意の慣用的な投与経路によって投与し得る。さらに、神経系への直接投与は、ポンプ装置を用いて若しくは用いずに、頭蓋内若しくは椎骨内用の針若しくはカテーテルを介しての送達による、脳内、脳室内、側脳室内、くも膜下腔内、大槽内、脊髄内、又は脊髄周辺の投与経路を含み得るがこれらに限定されない。本明細書に記載の治療効果をもたらす任意の用量又は投与頻度が、本発明への使用に適していることは当業者には容易に理解されるだろう。特定の実施態様では、被験者に、筋肉内経路によって本発明に記載の改変されたMBNLポリペプチドをコードしているウイルスベクターを投与する。この実施態様の具体的な変法では、ベクターは上記に定義されているようなAAVベクター、特にAAV9ベクターである。さらに具体的な態様では、被験者は1回のベクターの注射を受ける。
さらに、標準的な薬学的方法を使用して、作用の持続時間を調節することができる。これらは当技術分野において周知であり、かつ放出制御製剤を含み、かつ適切な巨大分子、例えばポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミンを含むことができる。
さらに、医薬組成物は、本発明の改変されたMBNLポリペプチドを含有しているナノ粒子を含み得る。
以下の実施例は本発明の範囲を制限することなく本発明を説明する。
実施例
材料及び方法
プラスミド及びウイルス産生
960個の断続性CTGを含むDMPKの3’UTRを含有しているプラスミドは、これもまたCMVプロモーターの制御下にあるミニ遺伝子ベクターであった(アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン市のベイラー医科大学のT. Cooperからの親切なる贈り物)。本研究に使用されるMBNL1の完全長の変異体構築物及び切断短縮されたΔCT3の配列は以前に記載されていた(Tran et al. 2011)。NESは、HIVのREVタンパク質に由来し(Fischer et al. 1995)、ΔCT構築物に融合させた。MBNL1、ΔCT3、及びΔCT3−NESのスプライシング活性を、以前に記載された3つのミニ遺伝子を使用して評価した:ヒトcTNT(hcTNT)のエキソン5を含有しているRTB300ミニ遺伝子;ヒトインシュリン受容体のエキソン11を含有しているINSRミニ遺伝子、並びにエキソン2及び3を含有しているpSVIRB/タウミニ遺伝子。全てのプラスミドDNAはGATC Biotech(フランス)で二本鎖がシークエンスされ、Nucleobond(登録商標)AXエンドトキシンフリーのキット(Macherey Nagel、ドイツ)を使用して精製された。GFP−ΔCT3をコードしている、又は両方のコザック共通配列を含有しているGFPタンパク質をコードしているcDNAを、SIN−cPPT−PGK−WHV又はpSMD2導入用ベクターにクローニングした。レンチウイルスベクター及びAAV9ベクターは以前に記載のように得られ(Caillierez et al. 2013; Francois et al. ; Fugier et al. 2011)、−80℃で凍結して保存した。組換えGST−MBNL1及びΔCT3タンパク質を産生し、UV架橋実験を前記のように実施した(Laurent et al. 2012, Tran et al. 2011)。ヒトタウミニ遺伝子及び突然変異MBNL構築物は(Carpentier et al., 2014)に記載されている。簡潔に言えば、ヒトタウE2ミニ遺伝子は、pEGFPN1真核生物発現ベクター(Clontech)に挿入されたヒトMAPT遺伝子のエキソン1、エキソン2、及びエキソン4の配列からなる。エキソン2の前に及び後に、それぞれヒトMAPT遺伝子のイントロン配列2及び3の878及び2100ヌクレオチドがある(Carpentier et al., 2014に詳述されている)。図15DのSeq250 E2 250 MBNL1突然変異部位は、MBNL結合部位が突然変異しているエキソン2の周辺のイントロン配列の250ヌクレオチドを示す(太文字の灰色の配列)。この突然変異体ミニ遺伝子は、MBNLスプライシング調節活性に対してもはや応答性ではない。これらのミニ遺伝子をGeneArt(登録商標)(Gene Synthesis company)によって作製し、プラスミド調製物の配列を、GATC(Biotech, Constance, Germany)によって二本鎖配列によって確認した。
細胞培養、トランスフェクション、及び感染
HeLa細胞を、37℃の加湿CO(5%)インキュベーター中、単層培養で、6ウェルプレート中の、10%ウシ胎児血清(FBS)の補充されたダルベッコ改変必須培地(DMEM)(Invitrogen)中で増殖させた。約70%コンフルエントになるまで増殖させた細胞を、3つ組で、ミニ遺伝子プラスミドDNA 1μg、CUG反復配列 1μg、及びMBNLプラスミドDNA 3μgを用いて、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics)を使用して製造業者の説明書に従って一過性に同時トランスフェクトした。
ヒト筋肉細胞を、倫理規定に関するフランスの法律に従って、記載(Furling et al, 2001)のように骨格筋生検材料から単離した。野生型(WT)及びDM1筋芽細胞を、20%FBS及び5μg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen)の補充されたHAMのF10培地中で5%CO及び37℃で増殖させた。100ngのP24/μlを使用して、2×10個のヒト筋肉細胞を形質導入した。ベクターの形質導入を、4μg/mlのポリブレン(Sigma)の存在下で一晩行なった。分化をトリガーするために、増殖用培地をサブコンフルエントの培養液から除去し、10μg/mLのインシュリン(Sigma)の補充されたDMEMと交換した。
インビボでの遺伝子導入及び実験
HSA−LRマウスはC. Thorntonから入手し、対照FVBマウスはJanvierから入手した。全てのマウス手順を、ピティエ・サルペトリエール動物施設の機能開発センターでの動物資源に対する倫理委員会によって承認された実験プロトコールに従って、生物学的封じ込めの下で行なわれた。成体マウスの腓腹筋又は前脛骨筋に、それぞれ、AAV9ベクターを含有しているか又は含有していない、生理溶液30〜100μlを注射した。各マウスについて、1つの筋肉にAAV GFP−ΔCT3を注射し、反対側の筋肉に、任意の導入遺伝子(MCS)又はGFP又はビヒクルのみ(PBS)を含有している対照AAVを注射した。注射から6週間後、筋肉の等尺性収縮を、以前に記載されているように(Mouisel et al. 2006)測定した。次いで、マウスを屠殺し、筋肉を回収し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で瞬間凍結させ、−80℃で保存した。
蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)及び免疫蛍光法
蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)を、Cy3で標識された2−O−メチルRNA(CAG)プローブを使用して記載の通りに行なった。組み合わせたFISH免疫蛍光(IF)実験を記載の通りに(Francois et al.)ポリクローナルMBNL1抗体(Everest Biotech.)又はGFP(Invitrogen)抗体、次いでそれぞれCy5−又はAlexa488−コンジュゲート抗二次体を使用して行なった。Leica共焦点顕微鏡及びソフトウェア(Leica microsytems)を使用して写真を撮影し、ImageJソフトウェアを使用して処理した。筋肉切片に対する免疫蛍光を、胚性MyHC抗体(Novocastra)及びラミニン抗体(Novocastra)を使用して記載の通りに行なった。
タンパク質抽出及びウェスタンブロット分析
ウェスタンブロットを、以前に記載されているように(Tran et al. 2011)、抗GFP抗体(Santa Cruz)又は抗GAPDH抗体(Tebu-Bio)を使用して標準的な方法を用いて行なった。
RNA抽出及び半定量分析
全RNAを、全RNA抽出キット(Nucleospin(登録商標)RNA IIキット、Macherey Nagel)又はトリゾール試薬(Invitrogen)を使用して製造業者のプロトコールに従って単離した。RNA濃度を、Nanodrop(Labtech)を使用することによって260nmでの吸光度を測定することによって測定した。RT−PCRを、全RNA 1μgを使用して、ランダムヘキサマー及びM−MLV逆転写酵素(Invitrogen)を使用して標準的なプロトコールに従って行なった。RT対照にはDNAの増幅は全く観察されなかった。PCRを以前に記載されているように行なった。5%又は8%ポリアクリルアミドゲルを使用した電気泳動によって反応産物を分離し、バンドをSYBR Gold(Invitrogen)で染色した。SYBR Gold発光強度を、フルオロイメージャースキャナー(Claravision)を使用して測定した。PCR実験を少なくとも3回繰り返した。
統計分析
統計分析を、Prism6ソフトウェア(GraphPad Software Inc.)の助けを借りて、両側のP値と対応のないt検定を使用して行なった。
結果
様々なMBNL1アイソフォームの結合親和性及びスプライシング活性に焦点を当てた以前の研究において、本発明者らは、C末端ドメインを欠失している切断短縮されたMBNL1構築物(ΔCT3、図1)が、YGCY結合特性と、完全長のMBNL1アイソフォームと比較して僅かにより低い親和性を維持しているが、エキソン5〜10によってコードされる配列がないことに因りそのスプライシング活性は劇的に減少していることを示した(Tran et al. 2011)。非機能的なポリペプチドであるΔCT3ポリペプチドが依然として病原性CUG反復配列に結合することができるかどうかを評価するために、Hela細胞に、増大したCUG反復配列と、MBNL1構築物又はGFPでタグ化されたΔCT3構築物とを同時にトランスフェクトした。図2に観察されているように、GFP−ΔCT3は、完全長のMBNL1に観察されているように、CUGexp−RNAの核内フォーカスと同じ場所に局在する。本発明者らは次に、GFP−ΔCT3又はMBNL1構築物を、増大したCUG反復配列と共に同時発現させることによってDM1において調節解除されたスプライシング事象に対するその効果を調べ、Hela細胞内でスプライシングレポーターミニ遺伝子を使用してタウのエキソン2/3のスプライシングを分析する(図3)。CUG反復配列の存在下においては、タウのエキソン2の包含は、DM1患者において観察されているように有意に減少し、類似したスプライシング活性を有する様々なMBNL1アイソフォームの過剰発現(Tran et al. 2011)は、タウのエキソン2の包含を部分的に回復させる(図3A)。しかしながら、MBNL1と比較してそのスプライシング活性が80%を超えて減少したGFP−ΔCT3構築物の過剰発現もまた、MBNL1と同程度だけ、タウのエキソン2/3のミニ遺伝子のスプライシング変化を修正する(図3B)。この結果は、GFP−ΔCT3がCUG反復配列と相互作用して、タウのエキソン2のスプライシングの調節に関与している機能的MBNL1を放出させることができることを示唆する。なぜなら、GFP−ΔCT3の残留スプライシング活性では、CUG反復配列の存在下でタウの正常なスプライシングを回復するのに十分ではないようであるからである。この仮説を確認するために、本発明者らは、HIVのREVタンパク質に由来する強力な核外移行シグナル(NES)と融合させたGFP−ΔCT3構築物を作製した(Fischer et al. 1995)。予想された通り、GFP−ΔCT3−NESは、核細胞質への局在化を示したGFP−ΔCT3と比較した場合に完全な細胞質内への局在化を示す(図4)。効果的な核外移行及び排他的な細胞質への局在化に因り、GFP−ΔCT3−NESは、hcTNTエキソン5及びIRエキソン11のミニ遺伝子を使用して示されているように、残留スプライシング活性をもはや有さない(図4B)。対照的に、GFP−ΔCT3−NESとCUG反復配列及びタウのエキソン2/3のスプライシングリポーターミニ遺伝子との同時発現は依然として、完全長のMBNL1及びGFP−ΔCT3を用いて以前に観察されているように、タウの正常なスプライシングを回復させることができる(図4C)。図4Aに示されているように、GFP−ΔCT3−NESは、CUGexp−RNA病巣と同じ場所に局在するが、遊離し残留している結合していないGFP−ΔCT3−NESは核外に効果的に排出され、それ故、選択的スプライシングの調節にはもはや利用できない。まとめると、本発明者らの結果は、ΔCT3が、CUG結合部位を飽和させ、十分量の機能的MBNL1をCUGexp−RNA病巣から放出させることによって、病原性CUG反復配列の存在下で調節解除されたスプライシング事象を元に戻すことを示す。
ΔCT3はCUG反復配列に結合することができ、MBNL1との結合に競合することができることを確認するために、組換えMBNL1タンパク質を、漸増濃度の組換えΔCT3タンパク質の非存在下又は存在下で95個のCUG反復配列を含有しているインビトロで転写された32P RNAに架橋した(又はその逆)(図5)。両方の条件において、漸増濃度の組換えΔCT3又はMBNL1はそれぞれ、組換えMBNL1又はΔCT3の量を減少させることができ、このことはΔCT3が、CUG反復配列に由来するMBNL1と競合することができ、かつCUG反復配列に由来するMBNL1を効果的に置換することができることを示す。
ΔCT3がDM1細胞内のCUGexp−RNAと相互作用することができ、選択的スプライシングの誤調節としてのDM1の分子特徴を調節することができるかどうかを評価するために、DM1患者及び非DM1患者のヒト一次筋肉細胞培養液に、GFP−ΔCT3又はGFPのいずれかを発現しているレンチウイルスベクターを形質導入したか又は形質導入しなかった。図6に示されているように、GFP−ΔCT3は、DM1筋肉細胞内の核内CUGexp−RNA病巣と同じ場所に局在する。本発明者らは次に、分化したDM1筋肉細胞において異常にスプライシングされている、DMD、BIN1、及びLDB3転写物のスプライシング誤調節に対する効果を調べた(図7A)(Francois et al. 2011)。GFP−ΔCT3の発現は、DM1細胞内のこれらの転写物のスプライシングプロファイルを有意に標準化し、一方、対照のDM1ではない細胞においてはそのスプライシングに影響を及ぼさなかった。これらの結果は、GFP−ΔCT3の発現が、DM1筋肉細胞内の有害なCUGexp−RNAによって誘発された分子変化を元に戻すことができることを確認する。さらに、それはまた、改変されたGFP−ΔCT3単独では、内因性標的のスプライシングを改変させないことを示す。改変されたGFP−ΔCT3の作用機序をさらに解読するために、本発明者らは、GFP−ΔCT3で処置された筋肉細胞においてsiRNAを使用してMBNL1をサイレンス状態とした。図7Bに示されているように、GFP−ΔCT3は、DM1筋肉細胞においてDMDのスプライシングプロファイルを完全に回復させるために、MBNL1活性を必要とした。対照の筋肉細胞におけるMBNL1の欠失は、DMDのスプライシングプロファイルを変化させることを注記する。この結果は、DM1細胞では、GFP−ΔCT3は、スプライシングに対して直接的な活性を示さないことを示す。したがって、ΔCT3は、DM1細胞内でのスプライシングの変化を修正するために、増大したCUG−RNAから機能的MBNL1を放出することを必要とする。
増大したCUG反復配列によって誘発されたRNA毒性をインビボで中和するΔCT3の能力を次に、ヒト骨格アクチン遺伝子の3’UTRにおいて220個のCTGを発現しているDM1マウスモデル(HSA−LR)において試験した(Mankodi et al. 2000)。これらのマウスは、その骨格筋線維の核内にCUGexp−RNAを蓄積させ、ミススプライシング事象並びに筋強直症を示す。HSA−LRマウスの腓腹筋(GAS)にAAV9−GFP−ΔCT3ベクターを筋肉内注射し、一方、反対側のGASに食塩水溶液を注射した。6週間後、これらの筋肉の収縮特性をインサイツで測定し、その後、マウスを屠殺し、筋肉を組織学的分析及び生化学的分析のために採取した。DM1患者に観察されたのと同じようなHSA−LRマウスにおけるスプライシング変化の中で、本発明者らは、Serca1、Mbnl1、及びClc−1のスプライシング誤調節を調べた。図8に示されているように、AAV9−GFP−ΔCT3の注射は、HSA−LRの反対側の筋肉と比較した場合にこれらの転写物のスプライシングパターンを修正し、FVB野生型マウスと比較した場合にほぼ完全に正常なスプライシングプロファイルを回復させる。顕著には、AAV9−GFP−ΔCT3は、FVB野生型マウスにおけるこれらの転写物の内因性スプライシングに対して全く影響を及ぼさず、したがってこのことは、ΔCT3構築物は、野生型MBNL1タンパク質と等価なインビボ及び(図13)又はインビトロ濃度でスプライシング調節活性をほぼ全く有さないことを確認した(Tran et al., 2011)。まとめると、本発明者らの結果は、ΔCT3が、増大したCUG反復配列への異常な結合に関して内因性MBNLと競合し、これにより、CUGexp−RNA凝集物から捕捉された機能的なMBNLが放出されることを示唆する。ΔCT3は十分に機能的なMbnl1をCUGexp−RNA病巣から放出させて、HSA−LRマウスにおける正常な選択的スプライシングプロファイルを回復させることを示す本発明者らのデータを支持するために、本発明者らは、筋肉切片に対するその核内局在をモニタリングした(図9)。予想された通り、ΔCT3は、AAV9−GFP−ΔCT3の注射されたHSA−LRマウスの筋核内においてCUGexp−RNA病巣と同じ場所に局在する。これとは対照的に、対照HSA−LRマウスにおいて重なるMbnl1:CUGexp−RNA病巣の共局在(ピーク強度によって示されるような)は、AAV9 GFP−ΔCT3の注射されたマウスにおいて大きく減少し(図10)、このことは、ΔCT3が、MBNL1を置換して病巣内へと入り、十分な内因性のMBNL1を置換して、DM1マウスにおける機能的なMBNL依存性スプライシング活性を回復させることを確認する。
生理学的レベルでは、このDM1マウスモデルにおいて観察された筋強直症は、筋肉特異的クロライドチャネルClc−1エキソン7aの異常なスプライシングから生じることが確立されている(Wheeler et al. 2007)。持続的な放電及び遅延した力の弛緩をもたらす、筋肉興奮性亢進によって特徴付けられる筋強直症。Clc−1エキソン7aのミススプライシングは、ΔCT3の発現によってほぼ完全に標準化されたので、筋肉の力の弛緩に対するその効果を、収縮が誘導された後に決定した(図11)。野生型FVBマウスと比較してHSA−LR筋肉において有意な力の弛緩の増加が測定され、これらのDM1マウスにおいて筋電図検査によって以前に確立された筋強直症が確認された。AAV9−GFP−ΔCT3を注射されたHSA−LRマウスのGAS筋肉において、異常な力の弛緩による筋強直症の顕現は、反対側の筋肉と比較した場合に消失し、一方、筋肉強度及び筋肉の組織学的検査において有意な変化は検出されなかった(データは示されていない)。さらに、野生型マウスの前脛骨筋(TA)にまた、AAV9−GFP−ΔCT3又は空のAAV9−MCSを注射し、3、4及び6週間後に屠殺した(図12)。これらの筋肉は、中心核、胚性ミオシン重鎖の再発現、並びに異常なサイズの筋線維がほぼ存在しない(1%未満)ことによって示されているように、毒性又は筋肉再生/変性の兆候を全く示さなかった。さらに、DM1において異常にスプライシングされている遺伝子のスプライシングプロファイルは、ΔCT3の発現又はAAV9の形質導入のいずれかによって野生型マウスにおいては攪乱されない(図13)。最後に、HSA−LRマウスのTA筋肉へのAAV9−GFP−ΔCT3の注射もまた、空のAAV9−MCSを注射された反対側の筋肉と比較した場合に、いくつかのDM1遺伝子のスプライシング誤調節を修正する(図14−1)。さらに、ΔCT3構築物への核局在化シグナル(NLS)の添加は、HSA−LRマウスのΔCT3効力を改変させない(図14−2)。これとは対照的に、ΔCT3構築物からのエキソン3の除去は、そのスプライシング修正活性を妨げる。
MBNL2はまた、増大したCUG反復配列に結合することができ、その結果、その捕捉をもたらすことができるので、本発明者らは、MBNL2の欠損症に関連したスプライシングの変化がΔCT3によって修正され得るかどうかを調べた。図15Aに示されているように、増大したCUG反復配列を有するヒトタウE2ミニ遺伝子と、MBNL構築物又はGFPでタグ化されたΔCT3構築物をT98G細胞に同時トランスフェクトすることによって、MBNL1の過剰発現は、タウのエキソン2の異常なスプライシングを修正することはできない。これとは対照的に、MBNL2の過剰発現は、増大したCUG反復配列の存在によって誘発されたこの調節解除されたスプライシング事象を元に戻し(図15B)、このことは、増大したCUG反復配列の存在によって誘発されたヒトタウE2ミニ遺伝子のミススプライシングが、MBNL1の欠損症ではなくむしろMBNL2の欠損症に起因することを示す。ΔCT3はまた、タウのエキソン2の異常なスプライシングを救出することができる(図15C)。MBNL2又はΔCT3の過剰発現のいずれかで観察された救出効果は、タウのエキソン2の周辺の突然変異したMBNL部位(図15D)を含むMBNL突然変異ミニ遺伝子(図15B及びC)を使用している間に消失し、このことは、救出が、MBNLから独立していないか、又は間接的な作用に起因することを実証する。それ故、ΔCT3は、増大したCUG反復配列からいくつかのMBNLパラログを放出させることによって、MBNL1及びMBNL2の両方の調節解除されたスプライシング事象を救出することができる。
考察
本研究において、本発明者らは、ほぼスプライシング活性を欠いている非機能的なMBNL(ΔCT3)が、インビトロ及びインビボの両方においてCUGexp−RNA毒性を打ち消すのに効果的であるというエビデンスを提供した。したがって、ΔCT3タンパク質を発現しているAAVベクターの筋肉内投与は、DM1マウスにおける選択的スプライシングの誤調節及び筋強直症の両方を修正する。MBNL1のRNA結合ドメインのみを発現しているΔCT3は、病原性CUG反復配列と相互作用し、捕捉されたMBNL1を核内のCUGexp−RNA病巣から放出させる。この機序は、DM1筋肉細胞内の内因性の機能的なMBNL1を回復させ、インビボにおいてDM1の関連した表現型を修正する。この知見は、DM1の代替的又は補完的な治療的アプローチとしての、改変された非機能的なMBNLΔ遺伝子療法アプローチの開発を支持する。
高い親和性で増大したCUG反復配列にMBNLが結合できる能力に基づいて、本発明者らは、病原性反復配列とポリ−CUG結合タンパク質の有害な相互作用を遮断するための餌として、MBNL1 RNA結合ドメインを使用することを提案する。この仮説を試験するために、本発明者らは、MBNL1 RNA結合ドメインのみを含有し、かつMBNL1スプライシング調節活性、MBNL核細胞質シャトル輸送、及び最も可能性が高いのはMBNLのオリゴマー形成に関与するエキソン5〜10によってコードされるC末端ドメインを欠失している、改変された非機能的なMBNL(ΔCT3)を作製した(Tran et al. 2011)。本発明者らの結果は、ΔCT3が、インビトロ及びインビボの両方において、筋肉細胞内のCUG反復配列に結合し、CUGexp−RNAと同じ場所に局在するその能力を維持することを確認する。インビトロでの架橋アッセイによって示されているように、ΔCT3は、増大したCUG配列に由来するMBNL1を置換し、このことは、病原性DM1反復配列へのΔCT3のインビボでの結合は、MBNL1並びに他の同定されていないポリ−CUG結合タンパク質の有害な相互作用を遮断するか、又は、核内CUGexp−RNA病巣から捕捉されたMBNL1を置換するかのいずれかを行なうことができることを示唆する。結果として、機能的なMBNL1の放出は、DM1で誤調節された事象を元に戻すだろう。
DM1筋肉細胞又はDM1マウスの骨格筋のいずれかにおけるΔCT3による選択的スプライシング誤調節の標準化は、病原性CUG反復配列を標的化して、内因性MBNL1への接近を遮断するΔCT3の能力を支持する。しかしながら、インビトロでのアッセイは、ΔCT3のYGCYへの結合特性が、MBNL1と同じか又は僅かにより低いことを示したので、本発明者らは、ΔCT3が、MBNL1により調節される事象を直接調節することができるかどうかを考えた。これはそうでないように思われる。なぜなら、MBNL1エキソン5〜10の欠失に起因するΔCT3のスプライシング活性は、インビトロでのミニ遺伝子アッセイを使用してMBNL1と比較した場合に劇的に減少し、その強力な核外移行シグナルに因りスプライシング活性を全く有さないΔCT3−NES構築物を用いても同じ結果が得られた。しかしとりわけ、ΔCT3を発現している野生型マウス又は対照ヒト細胞においてスプライシングの変化は全く検出されなかった。むしろ、本発明者らの結果は、機能的なMBNL1内因性活性を回復するΔCT3を発現している筋肉細胞における、核内CUG−exp−RNA病巣からの内因性MBNL1の放出に賛成して議論する。MBNL1は、対照HSA−LRマウスにおいてはCUGexp−RNA病巣内に捕捉され、CUGexp−RNA病巣と同じ場所に局在するが、その局在は、HSA−LRを注射されたマウスにおいてΔCT3と比べて核内フォーカスにはあまり結合していない。CUGexp−RNAによるΔCT3の捕捉は、これらの異常な構造に由来する内因性MBNL1を置換し、その結果、DM1マウスにおけるMBNL1の誤調節された事象が修正される。
本発明者らのAAV−ΔCT3戦略は、CUGexp−RNAを標的化して、有害なポリ−CUG結合タンパク質を阻害し、インビボでその毒性作用を修正する、最初の遺伝子療法アプローチである。現在までにMBNLタンパク質は、核内フォーカス内に捕捉されて見つかったDM1ヒト組織試料中のほぼ唯一のタンパク質であり、近年、DM1患者の罹患筋肉に存在するスプライシングの異常は主に、MBNL1の機能的欠失に関連していた(Nakamori et al. 2013)。CUGexp−RNAへのその異常な結合及びCUGexp−RNAによる捕捉に因る機能的なMBNLスプライシング因子の枯渇は、転写物の特定のサブセットの選択的スプライシングの誤調節をもたらし、最終的には、DM1組織の病的変化をもたらす。したがって、MBNL1により調節される事象はDM1骨格筋の異常に関連し、一方、MBNL2により調節される事象はDM1脳において誤調節された。さらに、AAVベクターを使用しての機能的MBNL1(アイソフォーム−40及び−41)の過剰発現は、二重トランスジェニックHSA−LR:MBNL1−OEマウスによって確認されるように、DM1マウスにおけるミススプライシング及び筋強直症を元に戻すのに十分である(Kanadia et al. 2006; Chamberlain and Ranum 2012)。機能的MBNL1の過剰発現のこの戦略は、機能的MBNL1のレベルを人工的に増加させることによって、DM1マウス細胞におけるMBNL1の減少を補う。したがって、MBNL1アイソフォーム−40及び−41は、筋肉内において成功裡に過剰発現されたが、様々な発現プロファイル及び組織特異的パターンを有する10個以下の様々なMBNL1アイソフォームが記載されていた。様々なアイソフォームの機能は、MBNL1アイソフォーム−43がSrcファミリーキナーゼと相互作用することができることを示す近年の報告によって示されているように、まだ完全には確立されていない(Wang et al. 2012; Botta et al. 2013)。さらに、選択的スプライシング事象を調節するMBNL1はまた、mRNAの崩壊及びmiRNAの生合成のような他のRNAプロセスにも関与している(Rau et al. 2011; Masuda et al. 2012)。CUGexp−RNAを標的化するΔCT3は、MBNL1のどのアイソフォームが過剰発現されるべきであるかという問題を回避するだろう。なぜなら、捕捉された内因性MBNL1タンパク質は、組織特異的に放出されるからである。さらに、DM1組織におけるMBNL1のアイソフォームの比を変化させるMBNL1それ自体のミススプライシングは、ΔCT3を発現しているDM1マウスの筋肉組織において修正される。その上、MBNL1の過剰発現が、MBNL2などの他のMBNLパラログの減少を回復又は補填することができるかどうかは不明である。本発明者らは、ΔCT3が、CUGexp−RNAから他のMBNLタンパク質も放出し、骨格筋以外の他の組織におけるMBNLのミススプライシングされた事象も修正すると推定することができる。本発明者らのインビトロでの結果は、ΔCT3が、DM1の状況でMBNL2の減少を補填することが十中八九できることを示す(図15)。事実、CUGexp−RNAの存在下におけるヒトタウE2ミニ遺伝子の異常なスプライシングは、MBNL2又はΔCT3のいずれかによって回復され得るが、MBNL1の過剰発現によっては回復することができず、このことは、ΔCT3が、DM1においてMBNL2により誤調節された事象も打ち消すことができることを示唆する。それ故、まとめると本発明者らの結果は、ΔCT3が、MBNL1、MBNL2、又はその両方によって調節される、CUGexp−RNAにより調節解除された標的の効果を均衡することができることを示す。CUGexp−RNA凝集物へのその捕捉に因る、遊離しかつ機能的に利用可能な内因性MBNL1の減少を補足する機能的なMBNL1の過剰発現戦略とは対照的に、非機能的なΔCT3は、増大したCUG反復配列に結合して、CUGexp−RNA凝集物から内因性MBNL1を放出させ、その細胞内局在及び機能を回復させるだろう。
DM1について現在開発下にある治療アプローチの中で、突然変異CUGexp−RNAを標的化する様々な改変されたオリゴヌクレオチド又は小分子化合物が、インビボにおいて有望で有益な効果を示した(Mulders et al. 2009; Warf et al. 2009; Wheeler et al. 2009; Garcia-Lopez et al. 2011; Sobczak et al. 2012; Wheeler et al. 2012; Leger et al. 2013)。DM1マウスの筋肉表現型を元に戻すこれらの中の大半の戦略は、共通した特徴を共有する:CUGexp−RNA病巣から捕捉されたMBNLパラログを放出することにより、その細胞内再分布/再局在化が起こり、機能的なMBNLパラログを回復させ、その結果、最終的にはDM1に関連した表現型が修正される。この機序は、CUGexp−RNAの分解又は増大したCUG反復配列の立体障害のいずれかを引き起こす戦略のために記載された。ここで、本発明者らは、DM1のための新規なAAV−ΔCT3遺伝子療法を提案する。AAV−ΔCT3の一回の注射は、DM1マウスにおけるRNA毒性を中和するのに効果的であった。反復処置を必要とする合成オリゴヌクレオチド又は小分子化合物とは対照的に、AAVベクターは、筋肉内に数年間持続することが示され(Rivera et al. 2005)、これにより、毒性のあるCUGexpRNAの持続的発現を打ち消し、長期に持続する効果をトリガーすることのできる、非機能的ΔCT3の持続的発現を可能とした。したがって、本発明者らは、DM1のための価値ある代替的又は補足的な治療アプローチとしてのこの新規な遺伝子療法アプローチを提案する。
参考文献
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Claims (13)

  1. YGCY結合特性を有し、かつ野生型MBNLタンパク質と比較して少なくとも60%減少したスプライシング活性を有する改変されたMBNLポリペプチドを含む、筋強直性ジストロフィー疾患又はMBNLの異常な捕捉によって引き起こされる疾患を処置するための医薬組成物であって、該改変されたMBNLポリペプチドが、MBNLポリペプチド及び標的化部分からなるキメラペプチドではな
    前記改変されたMBNLポリペプチドが、MBNL1タンパク質に由来し、かつ、MBNL1 mRNAのコードしているエキソン5〜10に相当するアミノ酸を欠失している、医薬組成物。
  2. 前記改変されたMBNLポリペプチドが、CUG反復配列に結合する、請求項1記載の医薬組成物。
  3. 改変されたMBNLポリペプチドが、特に配列番号2及び3に示された参照配列を有しているか、又はその非機能的なYGCY結合変異体である、請求項1又は2記載の医薬組成物。
  4. 前記改変されたMBNLポリペプチドが、野生型MBNLタンパク質と比較して少なくとも75%減少したスプライシング活性を有する、請求項1〜のいずれか一項記載の医薬組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に定義される改変されたMBNLポリペプチドをコードする核酸分子を含む、筋強直性ジストロフィー疾患又はMBNLタンパク質の異常な捕捉によって引き起こされる疾患を処置するための医薬組成物。
  6. 制御配列に作動可能に連結された請求項に定義される核酸分子を含む、遺伝子構築物、特に、ウイルスベクターゲノム。
  7. レンチウイルス又はAAV由来ゲノムである、請求項記載の遺伝子構築物。
  8. 請求項又は記載の遺伝子構築物を含むウイルスベクター。
  9. 血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11のAAVキャプシドを有するAAVベクターである、請求項記載のウイルスベクター。
  10. 血清型9のAAVキャプシドを有するAAVベクターである、請求項記載のウイルスベクター。
  11. 筋強直性ジストロフィー疾患を処置するための、特に筋強直性ジストロフィー1型若しくは筋強直性ジストロフィー2型、又はMBNLの異常な捕捉によって引き起こされる疾患を処置するための、請求項1〜のいずれか一項に定義される改変されたMBNLポリペプチド、請求項に定義される核酸分子、請求項若しくは記載の遺伝子構築物、又は請求項若しくは記載のウイルスベクター。
  12. 筋肉内に若しくは直接CNSに、又は任意の慣用的な経路によって投与される、AAVベクター、特にAAV9ベクターである、請求項11記載のウイルスベクター。
  13. 前記AAVベクターが、1回の注射として投与される、請求項12記載のウイルスベクター。
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