JP6951730B2 - 骨密度計測装置及び方法 - Google Patents
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Description
これに対して、近赤外光は生体内の情報を被破壊的に得る手段として、様々な医療分野で検討されている。
本発明者は、これまでに光学式の骨密度計測置として特許文献1,2を提案している。
本発明はさらに計測精度を向上させたものであり、特に骨の外側に存在する皮膚層の厚みや色等の生体組織の影響を抑えたものである。
またの準直進光は骨内にて減衰してはね返ってくるが、その強度分布は光の入射位置から半径方向に向かって減衰する。
この半径方向の減衰は骨密度が高い程、急激に減少することに着目したものである。
このようにすると、コンパクトな構造になり、ハンディタイプの計測装置となる。
このようにするとスリット板のスリット部からはね返ってくる準直線光を通過させつつ、スリット部以外の部分で皮膚層からはね返ってくる散乱光を除去することができる。
また、レンズは光検出部に向けて集光させるものであれば、各種レンズの組み合せが可能である。
これにて得られる光検出部にて検出された検出強度の変化は、例えば光が照射された位置から半径方向の減衰の傾きが骨密度の高低により変化するので、予め骨密度が分かっている各種サンプルの計測値の検量線を用いて被検体の骨密度を求めることができる。
また、例えば近赤外光と可視光等、波長の異なる複数の照射源を用いて、その光強度差から皮膚の厚み情報を検出することで、さらに骨密度の計測精度が向上する。
被検体1に向けて光を照射する光照射部13と、被検体から返ってくる光から散乱光によるノイズを除去するためのフィルター手段として第1スリット板11aと第2スリット板11bとを有し、第1スリット板11aのスリットを通過した光は平凸レンズからなる第1レンズ12aにて進路を略平行光に屈折させ、第2スリット板11bのスリットを通過した光を凸レンズからなる第2レンズにて光検出部に向けて集光させ、この光検出部で光の強度を検出する。
ここで、光照射部から入射させる光の強度を入射光強度I0、光検出部にて検出された光の強度を検出光強度Iとすると、吸光度Aは下記式(1)にて求められる。
被検体に入射された光は、Skin(皮膚組織)を透過してBone(骨)内まで通過し、返ってくる準直進光と皮膚組織層にて返ってくる散乱光を有する。
スリット板を設けることで図2(a)〜(c)に示すようにスリット板のスリットから準直進光を通過させ、スリット板のスリット以外の部分にて皮膚組織層からの散乱光を除去することができる。
そこで、図2(d)に示すようにスリット及びレンズの被検体からの距離Zを移動させると、光の入射位置から半径方向に減衰しながら返ってくる準直進光の強度分布を検出することができる。
ここで半径方向の減衰は骨密度が高い程、その傾きが大きいことから、その傾きの大きさを指標にして骨密度を計測することができる。
ガンタイプとしたハンディ型の筐体に光学ユニット10を組み込んだ計測装置20となっている。
光学ユニット10は光照射部13にレーザーダイオードを配置し、その先端側に第1レンズ12a及び第1スリット板11aを設け、このレーザーダイオードの後方に第2スリット板11bと第2レンズ12bを設け、集光された光がフォトダイオードからなる光検出部14にて強度計測される。
光学ユニット10は、アクチュエーター21に取り付けられ、ステップモーター22にて前進及び後退制御されている。
光検出部にて検出された信号の検出信号増幅器23とステップモーターの制御部24及びマイクロコンピューター25等が組み込まれている。
ハンディタイプのグリップ部下側には、バッテリー26が内蔵されている。
光学ユニットの移動距離データ、検出光強度データ等がパソコン27にシリアル通信により取り込まれる。
灰化ウシ海綿骨はウシ大腿骨から海綿骨を1辺、約4cmのブロック状に切り出し、骨髄を煮沸除去し、600℃で24時間灰化処理したものを用いた。
試験体としては、灰化ウシ海綿骨を塩酸で溶解し、密度253mg/cm3、178mg/cm3、151mg/cm3のものを用いた。
光照射部の光源としてEdmond Optics社製のレーザーダイオード(#57−101)を用いた。
これは出力波長655nm、最大出力3mWである。
吸光度Aの測定として、レンズの集点距離となる被検体からの位置をZ=0として被検体の深部方向を正方向として計測した。
図4(a)は密度258mg/cm3ファントムを用いて異なる位置9点の移動量Zと吸光度Aの計測グラフを示す。
各位置の吸光度分布は同様の変化を示した。
図4(b)は密度258mg/cm3、178mg/cm3、151mg/cm3それぞれの9点測定平均値の推移グラフを示す。
このうちZ=10mm以上の傾きに着目し、移動量Z=11〜18mnの吸光度の減衰直線を図5(a)に示す。
ファントムの密度と図5(a)に示した減衰直線の傾きの関係を図5(b)に示す。
これにより、吸光度の減衰の傾きを指標にして骨密度の計測が可能であることが分かる。
これは波長850nm、最大出力1mWである。
実施例1と同様に計測した移動量Zと吸光度の計測グラフを図6に示す。
実施例2では皮膚層の厚みの影響を調査すべく、その厚み0,0.2,0.5,1.0,2.0mmの被検体を用いた。
皮膚層としては、2%イントラリピッド液を2枚のカバーガラスの間に封入し、その厚みを調整した模擬皮膚を用いた。
なお、2%イントラリピッドは、ヒトの皮膚と光学特性が等しいと報告されている(Troy,S.,et al.,Journal of biomedical optics,vol.6,pp.167-176,2001)。
Z=18〜25mmの間の傾きを直線近似した傾きと骨密度の関係を図7に示す。
このグラフから皮膚組織が存在する場合に、その影響があることが推測された。
具体的には、二つの円形スリット(スリット径:10mm,スリット幅:2mm,厚さ5mm),二つの片凸レンズ(Edmund Optics, 48795, 及び48797),三つのレーザーダイオード[密度計測用(中央):Egismos, H838501D(850nm,1mW), 皮膚厚計測用:S638501D(850nm,1mW),H635151R(515nm,1mW)]、およびPD(Hamamatsu, C12703-01)を1つの光学ユニットとしてまとめ、それをステッピングモーター(Orientalmoter, PKP225)により駆動されるアクチュエーター(Misumi, LX2005P-MX-B1-T2028-150)でZ方向に移動できるようにした。
PDより得られた検出信号は2次のアンチエイリアジング・フィルター回路を介してADC素子(Microchip,MCP3208,12bit)によりADC変換した。
モータやレーザー等の制御は、シングルボードコンピューター(Raspberry Pi,RS Components,Raspberry Pi 2 Model B)で行い、検出結果はCSVテキストファイルで保存され、このデータに基づいて移動距離と吸光度の関係のグラフ、すなわち光強度分布がディスプレイ上に表示される。
また、実験に灰化ウシ海綿骨および灰化ウシ緻密骨、シリコーン(セメダイン株,シリコーンシーラント)を模擬皮膚として用いて実験を行った。
灰化ウシ海綿骨は、ウシ大腿骨から海綿骨を一辺4cmほどのブロック状に切り出し、それを煮沸することで骨髄を除去、その後、電気炉内において600℃で24時間灰化処理することで9つのサンプルを作製した。
灰化ウシ海綿骨は場所により生体特有の密度のばらつきが存在する。
そのため、μCT(Shimadzu,inspeXio SMX-90CT Plus)でスキャンし、各サンプルに対して異なる3つの位置で一辺1cmの立方体範囲を選択し、骨形態計測用ソフト(ラトックシステムエンジニアリング株,TRI/3D-BON-FCS64)を用いて同範囲の骨密度を算出した。
緻密骨部は、ウシ大腿骨の骨梁部分より軸方向と平行に厚さ0.3mmでスライスしたものを海綿骨と同様の方法で灰化処理を行ったものを用いた。
緻密骨厚さは、アメリカ国立医学図書館のデータベースであるVisible Human FTP Resourceの切片画像から橈骨遠位端の皮質骨厚さを読み取り、この値を参考に決定した。
また、皮膚の光学特性を模擬するために2%イントラリピッドの液体試料がよく用いられるが、本実験ではより扱い易い固体試料をシリコーンにより作製した。
なお、ホワイトとクリアを1:6で混ぜ合わせたシリコーンは2%イントラリピッドと同様の吸光度特性となることが確認されたことから、これを用い厚さ1〜2mmの異なる厚さを持つ模擬皮膚を作製した。
これらの模擬皮膚,緻密骨,海綿骨を順に並べ、実験試料とした。
850nmと515nmの二波長を図8のように配置し、前述の模擬試料を用いて実験を行った。
図12(a)は、850nmならびに515nmレーザーから得られる光強度分布のピークの位置を、Zを用いて表している。
なお、各プロットの値は15回の計測の平均を示している。
同図の値において、850nmから515nmの値を引いたもの、すなわちピーク間距離をδとし、それと皮膚厚との関係を示したものが図12(b)である。
δは皮膚厚に対し負の相関を示し、この関係は、各波長の皮膚層での到達深度と光散乱特性の違いから生じたものだと考えられる。
一般的に、850nmの光は515nmのものに比べ皮膚内の奥深くまで侵入するため、皮膚厚に対してピークのシフトが大きく、逆に515nmの光では、皮膚厚に対してあまり影響を受けない。
波長による皮膚厚の影響を図10,図11に示した。
そのため、各波長によるピークの差であるδが皮膚厚に対して変化したと考えられる。
δ,slope,およびBMDの関係を示す近似平面を求めると次式のようになる。
なお、近似平面は、Python(Python 3.5)のPyStanモジュールを用いてモンテカルロ法により求めた.
図13は、式(3)より算出された予測骨密度とμCTによる計測骨密度の関係を示している。
Slopeとδより予測された骨密度は、μCTで得られる骨密度とほぼ同様の値をとり、良好な正の相関(r2=0.72581)を示した。
このことから、異なる波長を用いてZ方向に移動させたその強度差から皮膚層の厚み情報を得ることで、さらに精度の高い骨密度を計測することができる。
10 光学ユニット
11a 第1スリット板
11b 第2スリット板
12a 第1レンズ
12b 第2レンズ
13 光照射部
14 光検出部
20 装置
21 アクチュエーター
Claims (2)
- 皮膚の下側に存在する骨密度の計測装置であって、
被検体に所定の強度の光を入射する骨密度計測用の1つの照射源からなる光照射部と、
骨部からはね返ってくる準直進光に対し前記被検体の皮膚から反射された散乱光を除去するフィルター手段と、前記散乱光が除去された反射光の集光手段と、当該集光手段にて集光された光の強度を計測する光検出部とを有し、
前記光照射部、光検出部、フィルター手段及び集光手段を組み込んだ光学ユニットに構成してあり、前記被検体から前記光学ユニットの距離を移動制御出来る移動制御手段と、前記光照射部と光検出部とから吸光度を演算する吸光度演算手段とを有し、
前記集光手段は前記被検体から返ってくる光を略平行に屈折させる第1レンズと当該第1レンズにて略平行に屈折された光を前記フィルター手段通過後に前記光検出部に向けて集光させる第2レンズとからなり、前記フィルター手段はスリット板であることを特徴とする骨密度計測装置。 - 請求項1に記載の骨密度計測装置を用いた骨密度計測方法であって、
前記光照射部と被検体からの距離を変化させ、前記光照射部から照射された入射光の入射強度に対する前記光検出部にて検出された検出強度から求められた光強度分布に基づいて骨密度を計測することを特徴とする骨密度計測方法。
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