実施例1では、電化列車が変電所から電力の供給を受けて軌道を走行する場合に、電化列車と変電所の持つ時刻情報の補正時間を求める方法を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る電化鉄道の構成を示す構成図である。電化列車3は、変電所2から架線4と集電装置5を介して電力を受け、軌道6を走行する。ここで架線4を構成する装置は、軌道6に沿って設置された第三軌条でも良い。また集電装置5は、パンタグラフ、トロリーポール、ビューゲル、集電靴などの集電手段でも良い。また軌道6は、鉄軌条、モノレールの桁軌道、新交通システムのガイドウェイなどで良い。
図2に、変電所2と電化列車3が保持する時計の時刻について補正時間を求める時刻同期装置1を含めたハード構成を示す。
変電所2は、演算部221、インタフェース部222、時計部224、電圧測定部225、情報伝送部226を備えている。変電所2において、電圧測定部225は、架線4の電圧を一定時間周期で順次測定し、測定した電圧を、インタフェース部222を介して電圧情報として演算部221に送る。演算部221は、時計部224より時刻情報を受け、この時刻情報とインタフェース部222から入力した電圧情報との対応づけを実行し、対応づけされた時刻情報と電圧情報を、インタフェース部222を介して情報伝送部226に送る。情報伝送部226は、入力した時刻情報と電圧情報を時刻同期装置1に送信する。
電化列車3は、演算部321、インタフェース部322、時計部324、電圧測定部325、情報伝送部326を備えている。電化列車3において、電圧測定部325は、架線4の電圧を集電装置5を介して一定時間周期で順次測定し、測定した電圧を、インタフェース部322を介して電圧情報として演算部321に送る。演算部321は、時計部324より時刻情報を受け、この時刻情報とインタフェース部322から入力した電圧情報との対応づけを実行し、対応づけされた時刻情報と電圧情報をインタフェース部322を介して情報伝送部326に送る。情報伝送部326は、入力した時刻情報と電圧情報を時刻同期装置1に送信する。
時刻同期装置1は、演算部121、インタフェース部122、情報記憶部123、情報伝送部126、表示部127を備え、変電所2と電化列車3をそれぞれ管理対象として管理する。時刻同期装置1において、情報伝送部126は、変電所2から、情報伝送部226の送信による時刻情報と電圧情報を受信し、電化列車3から、情報伝送部326の送信による時刻情報と電圧情報を受信し、各受信した時刻情報と電圧情報をインタフェース部122に伝送する。この際、情報伝送部326は、架線4(電源線)の電圧を含む電気信号を、変電所2と電化列車3において一定時間周期で順次測定したときの各時刻に関する時刻情報と各時刻における電気信号に関する電気情報、例えば、電圧情報を入力する情報入力手段を構成する。
インタフェース部122は、各受信した時刻情報と電圧情報を演算部121に送る。演算部121は、各受信した時刻情報と電圧情報を情報記憶部123に保持する。そして演算部121は、情報記憶部123に保持する各時刻情報と各電圧情報を用いて、変電所2が持つ時計部224の時刻と、電化列車3が持つ時計部324の時刻との間の補正時間を計算する。演算部121は、計算結果をインタフェース部122を介して表示部127に出力する。
ここで、演算部121、221、321は、例えば、マイクロプロセッサを適用して良い。インタフェース部122、222、322は、例えば、USB(Universal Serial Bus)コネクタを適用して良い。情報記憶部123は、例えば、記憶媒体として、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)、メモリを適用して良い。時計部224、324は、例えば、パソコンが内蔵する時計機能(水晶発振器による時計機能)を適用して良い。電圧測定部225、325は、例えば、トランスとA/D(Analog/Digital)コンバータを用いた電圧測定回路を適用して良い。情報伝送部126、226、326は、例えば、無線LAN(Local Area Network)やLCX(漏洩同軸ケーブル)を用いた伝送装置を適して良いし、一部について有線LANや光ファイバケーブルを用いても良い。表示部127は、例えば、液晶ディスプレイを適用して良い。
また変電所2の演算部221が行う処理と、電化列車3の演算部321が行う処理と、時刻同期装置1の演算部121が行う処理は、共に一定時間間隔で処理を繰り返し開始する周期処理である。周期処理は、本実施例では図示していない周期時間情報と、時刻情報を用いて、処理周期時間の経過毎に定められた処理を実行する方法である。
図3に、時刻同期装置1と変電所2と列車3の行う処理構成(ソフトウェア)の関係を示す。変電所2は、送電電圧測定機能11、送電情報送信機能13、時計機能16を備えている。変電所2において、送電情報送信機能13は、時計機能16の時刻情報を基に送電電圧測定機能11を用いて架線4の電圧を測定し、測定して得られた電圧情報と時計機能16の時刻情報とを対応付けて、時刻同期装置1に送る。
送電情報送信機能13の処理手順を図4に示す。送電情報送信機能13は、処理2001より開始し、処理2002で時計機能16より現在の時刻情報を受け取る。次に、送電情報送信機能13は、処理2003で電圧測定時刻か否かを判定する。すなわち、現在の時刻が電圧測定周期、例えば、1秒に合致するかを判定する。現在時刻が電圧測定周期に合致する場合、送電情報送信機能13は、処理2004を行う。また合致しない場合、送電情報送信機能13は、処理2006で、このルーチンでの処理を終了する。
処理2003で現在時刻が電圧測定周期に合致する場合、送電情報送信機能13は、処理2004で送電電圧測定機能11より架線4の電圧情報を取得する。次に、送電情報送信機能13は、処理2005では、処理2002で取得した現在の時刻情報と、処理2004で取得した電圧情報(架線4の電圧情報)を、時刻同期装置1に送信し、その後、処理2006で、このルーチンでの処理を終了する。
このようにして、送電情報送信機能13は、変電所2の時計機能16が持つ時刻情報に従い、現在時刻と電圧情報(架線4の電圧情報)を時刻同期装置1に送る。
電化列車3は、図3に示すように、受電電圧測定機能12、受電情報送信機能17、時計機能19を備えている。電化列車3において、受電情報送信機能17は、時計機能19の時刻情報を基に受電電圧測定機能12を用いて架線4の電圧を測定し、測定して得られて電圧情報と時計機能19の時刻情報とを対応付けて、時刻同期装置1に送る。
受電情報送信機能17の処理手順を図5に示す。受電情報送信機能17は、処理3001より開始し、処理3002で時計機能19より現在の時刻情報を受け取る。次に、受電情報送信機能17は、処理3003で電圧測定時刻か否かを判定する。すなわち、現在の時刻が電圧測定周期、例えば、1秒に合致するか否かを判定する。現在時刻が電圧測定周期に合致する場合、受電情報送信機能17は、処理3004を行う。また合致しない場合、受電情報送信機能17は、処理3006で、このルーチンでの処理を終了する。
処理3003で現在時刻が電圧測定周期に合致する場合、受電情報送信機能17は、処理3004で受電電圧測定機能12より架線4の電圧情報を取得する。次に、受電情報送信機能17は、処理3005では、処理3002で取得した現在の時刻情報と、処理3004で取得した電圧情報(架線4の電圧情報)を、時刻同期装置1に送信し、その後、処理3006で、このルーチンでの処理を終了する。
このようにして、受電情報送信機能17は、電化列車3の時計機能19が持つ時刻情報に従い、現在時刻と電圧情報(架線4の電圧情報)を時刻同期装置1に送信する。
時刻同期装置1は、図3に示すように、情報受信機能14、時刻同期機能15、結果表示機能18を備えている。時刻同期装置1において、情報受信機能14は、変電所2が送信した時刻情報(現在時刻)と電圧情報を受信すると共に、電化列車3が送信した時刻情報(現在時刻)と電圧情報を受信し、各受信した時刻情報(現在時刻)と電圧情報を時刻同期機能15に送る。時刻同期機能15は、各時刻情報(現在時刻)と各電圧情報を基に架線4の電圧情報の相関係数を計算し、計算結果を結果表示機能18に送る。結果表示機能18は、時刻同期機能15の計算結果を表示する。
ここでは、変電所2の時計機能16と電化列車3の時計機能19が持つ時刻情報が互いに調整されておらず、変電所2の時計機能16が持つ時刻情報Tssに対して、電化列車3の時計機能19が持つ時刻情報Ttrnが3秒遅れている場合について説明する。この場合、時刻同期機能15が受け取る変電所2と電化列車3の時刻情報(現在時刻)と電圧情報は、図6に示すように、時刻電圧情報400として時刻同期機能15で管理される。
時刻電圧情報400は、変電所2を識別する名称401と、電化列車3を識別する名称402を備える。名称401は、変電所2で測定した現在時刻(測定時刻)を示す時刻Tss403と、変電所2で測定した電圧を示す電圧Vss404から構成され、名称402は、電化列車3で測定した現在時刻(測定時刻)を示す時刻Ttrn405と、電化列車3で測定した電圧を示す電圧Vtrn406から構成される。
例えば、時刻Tss403には、変電所2で測定した現在時刻(測定時刻)として「12:00:00」〜「12:00:09」が記録され、電圧Vss404には、変電所2で測定した電圧として、「1500〜1500」が記録され、時刻Ttrn405には、電化列車3で測定した現在時刻として、「12:00:00」〜「12:00:09」が記録され、電圧Vtrn406には、電化列車3で測定した電圧情報(電圧)として、「1400〜1402」が記録される。
時刻同期機能15は、図6に示す時刻と電圧の関係について、片方の時刻に補正時間を加えた際の電圧の相関係数を計算し、相関係数が最大となる補正時間を加えた時刻値を、変電所2が持つ時計機能16と電化列車3が持つ時計機能19との間で時刻同期した状態と判定し、補正時間を結果表示機能18に送って表示する。
時刻同期機能15の処理手順を図7に示す。
時刻同期機能15は、処理1001より開始し、処理1002で変電所2及び電化列車3からの情報受信を行う。次に、時刻同期機能15は、処理1003では処理1002で受信した情報に対して、新しい受信情報ありか否かを判定する。時刻同期機能15は、処理1003で新しい受信情報ありと判定した場合、処理1004を行い、新たしい受信情報なしと判定した場合、処理1011で、このルーチンでの処理を終了する。
時刻同期機能15は、処理1003で新しい受信情報ありと判定した場合、処理1004で新しい受信情報を前回までに受けた受信情報に追加する。例えば、変電所2及び電化列車3から新しい受信情報として、式(1)及び式(2)に示す情報を受けた場合について説明する。
変電所2の時刻=12:00:09、電圧=1500 ・・・式(1)
電化列車3の時刻=12:00:09、電圧=1402 ・・・式(2)
これらが新しい受信情報として追加された時刻電圧情報400は、図6に示す内容となる。すなわち、時刻=12:00:00〜時刻=12:00:08までに受信した電圧(変電所2の電圧=1500〜1500、電化列車3の電圧=1400〜1400)が前回までに受けた受信情報であり、これらの受信情報に、式(1)及び式(2)の受信情報が追加される。
次に、時刻同期機能15は、処理1005で、受信情報の電圧の相関係数を計算(補正時間=0)し、最大の相関係数として保持する。ここでは、時刻情報は受信情報と同じ、つまり補正時間が0秒の場合に対する相関係数となる。
電圧の相関係数を計算するに際しては、例えば、図6に示す変電所2の電圧Vss404に属する電圧と電化列車3の電圧Vtrn406に属する電圧を、時刻tの引数で表したデータ列(電圧データ列)Vss(t)とデータ列(電圧データ列)Vtr(t)の相関係数として、式(3)で計算することができる。
相関係数=Σ{(Vss(t)−Vss平均)×(Vtr(t)−Vtr平均)}/{
Σ{(Vss(t)−Vss平均)}^2×Σ{(Vtr(t)−Vtr平均)}^2
}^0.5 ・・・式(3)
式(3)と図6の時刻電圧情報400に記録された値(電圧)より、処理1005では補正時間0秒の相関係数を、次の式(4)で計算する。
相関係数(補正時間=0秒)
={(1500−1499.1)×(1400−1399.2)+・・・}/{{(1500−1499.1)+・・・}^2×{(1400−1399.2)+・・・}^2
}^0.5=−0.07561 ・・・式(4)
Vss平均=(1500+1490+・・・+1500)/10=1499.1・・・式(5)
Vtr平均=(1400+1400+・・・+1402))/10=1399.2・・・式(6)
時刻同期機能15は、処理1005では、補正時間=0秒の相関係数=−0.07561を、最大の相関係数として保持する。
次に、時刻同期機能15は、処理1006では、補正時間の仮値を設定し、設定した仮値を電化列車3の時刻に加えて電圧の相関係数を計算する。ここでは図示していない補正時間の仮値の設定幅条件を式(7)とする。
補正時間の仮値:−4〜+4秒、1秒刻み ・・・式(7)
まず、時刻同期機能15は、補正時間の仮値=−4秒について計算する。補正時間の仮値=−4秒を図6の値に反映した場合の時刻と電圧の関係が記録された時刻電圧情報500を、図8に示す。
時刻電圧情報500は、変電所2を識別する名称501と、電化列車3を識別する名称502を備えている。名称501は、変電所2で測定した現在時刻(測定時刻)を示す時刻Tss503と、変電所2で測定した電圧を示す電圧Vss504から構成され、名称502は、電化列車3で測定した現在時刻(測定時刻)を補正した現在時刻を示す時刻Ttrn(補正時間−4秒)505と、電化列車3で測定した電圧を示す電圧Vtrn506から構成される。
例えば、時刻Tss503には、変電所2で測定した現在時刻として「12:00:00」〜「12:00:05」が記録され、電圧Vss504には、変電所2で測定した電圧として、「1500〜1500」が記録され、時刻Ttrn(補正時間−4秒)505には、電化列車3における現在時刻を「−4秒」補正した時刻として、「12:00:00」〜「12:00:05」が記録され、電圧Vtrn506には、補正された時刻における電圧として、「1390〜1402」が記録される。すなわち、図6の時刻電圧情報400に記録された電化列車3の情報が「−4秒」ずらされ、図6における時刻「12:00:04」の電圧が、図8では時刻「12:00:00」の電圧として記録され、図6における時刻「12:00:09」の電圧が、図8では時刻「12:00:05」の電圧として記録される。
図8の電圧について、式(3)を用いて相関係数を計算した結果は、式(8)となる。
相関係数(補正時間=−4秒)=−0.15119 ・・・式(8)
次に、時刻同期機能15は、処理1007では、計算した相関係数が最大であるか否かを判定する。時刻同期機能15は、処理1007で、計算した相関係数が最大であると判定した場合、処理1008を行い、一方、計算した相関係数が最大でないと判定した場合、処理1009を行う。ここでは、処理1005にて最大の相関係数として補正時間0秒と相関係数=−0.07561が設定されており、これと処理1006で計算した式(8)の値を比較すると、最大の相関係数である処理1005で作成した補正時間0秒の相関係数=−0.07561の方が大きいことが分かる。このため、次に処理1009を行う。
次に、時刻同期機能15は、処理1008では、計算した相関係数と補正時間の仮値を最大値として保持する。「仮値=−4」の場合、補正時間の仮値の最大値を「−4」として保持し、相関係数の最大値として、相関係数=−0.07561を保持する。
次に、時刻同期機能15は、処理1009では、全ての補正時間の仮値は計算済であるかを判定する。時刻同期機能15は、処理1009で計算済みと判定した場合、処理1010を行い、計算済みでないと判定した場合、処理1006に戻る。ここで、式(7)の仮値の範囲について、「仮値=−4」の場合のみ計算を終えている場合、処理1006に戻り、他の仮値(−3、−2、・・・+4)について計算を行う。
例えば、「仮値=−3」の場合について、相関係数を計算する。処理1005で計算した最大の相関係数が補正時間0秒の相関係数=−0.07561、処理1006で計算した式(8)の値が、補正時間=−3秒と相関係数=+0.99578の場合、時刻同期機能15は、処理1008で、最大の相関係数として相関係数=+0.99578を保持し、補正時間の仮値として補正時間=−3秒を保持する。
時刻同期機能15は、処理1006で全ての仮値について計算を終えると、処理1009から処理1010を実行する。処理1006で式(7)に示す補正時間の仮値について、式(3)を計算した結果が記録された管理テーブル600を図9に示す。
管理テーブル600は、時刻補正仮値601と、相関係数602を備える。例えば、時刻補正仮値601には、「−4」〜「+4」の数字が、時刻補正の仮値を示す情報として記録され、相関係数602には、「−0.15119」〜「+0.20000」の数字が、各仮値に対応した相関係数を示す情報として記録される。
図9に示す相関係数の計算結果について、時刻同期機能15が処理1007で最大値を求めると、補正時間=−3秒の相関係数=+0.99578が最大となる。このため、図7の処理1010を実行する段階での相関係数の最大値は、式(9)となる。
補正時間=−3秒を適用した相関係数の最大値=+0.99578 ・・・式(9)
時刻同期機能15は、処理1010では、時刻補正値として、式(9)で計算した相関係数の最大値を、結果表示機能18に出力し、次の処理1011で、このルーチンでの処理を終了する。結果表示機能18を見ることで、相関係数最大となる補正時間は−3秒であることが分かる。
以上説明した手順により、時刻同期装置1は、変電所2が持つ時計機能16と電化列車3が持つ時計機能19との間について、補正時間=−3秒つまり電化列車3の時計機能19の時刻値Ttrnに−3秒を加算した時刻が、変電所2の時計機能16が持つ時刻Tssと合致することが分かる。つまり変電所2が持つ時計機能16と電化列車3が持つ時計機能19が互いに調整されていなくても、架線4の電圧情報の相関係数を求めることで、一方の時刻と他方の時刻の差分を取得することが可能となる。これにより変電所相互及び変電所2と電化列車3との間で動作や測定の正確な時刻関係を得ることが可能となる。
以上の説明は、ひとつの変電所2とひとつの電化列車3について行ったが、同じ手順を変電所2と図示していない変電所2Aについて行っても良いし、異なる電化列車3と図示していない電化列車3Aについて行っても良い。ひとつの変電所2とひとつの電化列車3について行い、次に同じ手順を変電所2と変電所2Aについて行うことにより、変電所2Aと電化列車3の間で時刻値を同期することが可能となる。同様の計算を全ての変電所と全ての電化列車について行うことで、全ての変電所と全ての電化列車の時刻値を同期することが可能となる。
変電所2及び電化列車3から時刻同期装置1に送る情報は電圧測定時刻を含んでいるため、例えば当該情報が測定時間毎に伝送されず10秒毎に10個の測定時刻と電圧値をまとめて伝送しても、更にはまとめて伝送する時間間隔が毎回異なっても、上記処理は変わらない。このため伝送装置は指定時間毎に確実伝送を行う高性能かつ高コストである装置でなく、低性能かつ低コストである装置で良い。また全ての制御周期のうち、変電所2が電力の送出を開始した一定時間範囲、電化列車3が架線4より受電を開始した一定時間範囲について上記処理を行い、それ以降は一旦作成した補正時間値を適用しても良い。これにより、管理対象とする電化列車3を特定しやすくなる。
なお、此処までの説明は時刻同期装置1と変電所2と電化列車3が独立した装置である場合について行ったが、時刻同期装置1は変電所2のひとつに含まれても良いし、電化列車3に含まれても良い。また時刻や電化列車3の位置や数に応じて、ふたつ以上の変電所2と電化列車3のひとつが時刻同期装置1の処理を受け持つ状態を入れ替えても良い。
以上の手順で作成した補正時間値が図示していない指定値から外れた場合、例えば、補正時間が指定値よりも大きい場合、変電所2の持つ時計機能16あるいは電化列車3の持つ時計機能19の補正を行うよう結果表示機能18に、注意を促す情報として、メッセージを表示しても良い。メッセージは、例えば次の式(10)の内容である。
「注意:変電所2と電化列車3の時刻差が指定値を超過 現在の時刻差=(計算した補正時間値)」 ・・・式(10)
結果表示機能18と式(10)のメッセージに代えて、図示していないランプの点灯や点滅、式(10)のメッセージを図示していない音声作成装置とスピーカを介して出力することでも良い。
この際、注意を促す情報を管理する情報管理手段として、例えば、注意を促す情報をメッセージで画面上に表示する表示手段、注意を促す情報をランプ点灯で表示する点灯手段、或いは、注意を促す情報を警告音で出力する警告手段のうち少なくとも一つを用いることになる。
本実施例において、情報伝送部126は、架線4(電源線)で接続された複数の管理対象(変電所2、電化列車3)から、各管理対象で電源線(架線4)の電圧を含む電気信号を一定時間周期で順次測定したときの各時刻に関する時刻情報と各時刻における電気信号に関する電気情報を入力する情報入力手段として構成される。
また、演算部121は、情報伝送部127(情報入力手段)で入力した各管理対象の時刻情報と電気情報に属する電圧情報とから、複数の管理対象のうち一方の管理対象(変電所2)で各時刻に測定した電源線の電圧と、他方の管理対象(電化列車3)で各時刻に測定した電源線(架線4)の電圧とを対応づけて記録した時刻電圧情報を生成する時刻電圧情報生成手段と、時刻電圧情報生成手段の生成による時刻電圧情報を基に一方の管理対象(変電所2)で各時刻に測定した電源線の電圧と、他方の管理対象(電化列車3)で各時刻に測定した電源線(架線4)の電圧のうち、各時刻に複数の補正時間(−4〜+4)を加えた補正後の各時刻における電源線の電圧との複数の組み合わせを示す複数の電圧データ列を生成する電圧データ列生成手段と、電圧データ列生成手段の生成による複数の電圧データ列の各々について相関係数を算出する相関係数算出手段と、相関係数算出手段の算出による各電圧データ列の相関係数のうち最大となる相関係数が属する電圧データ列の生成に用いた補正時間を、一方の管理対象(変電所2)で管理する一方の時刻情報と他方の管理対象(電化列車3)で管理する他方の時刻情報の補正時間として、一方の時刻情報と他方の時刻情報とを同期させる時刻情報同期手段として構成される。
本実施例によれば、変電所2と電化列車3(管理対象)から得られた電気情報を基に変電所2と電化列車3間の時刻を同期させることができる。結果として、高コストな装置の追加を行わずに、且つGPS信号を用いずに、変電所2と電化列車3間の時刻を同期させることができる。また、GPS情報を受信できない環境においても、複数管理対象の間で差分時刻の正確な補正値を得ることが可能となるので、地下鉄などの変電所相互及び変電所2と電化車両3との間で動作や測定の正確な時刻関係を得る環境を実現することができる。
実施例2は、変電所2と電化列車3は直流電化である場合について、実施例1で求めた時刻の補正値を用いて、電化列車3と変電所2との間で直流電力エネルギーの授受関係を計算し、授受関係に不整合がある場合には、変電所2あるいは電化列車3あるいは架線4に障害があることを判定する方法を説明する。
実施例2の処理は、実施例1で求めた変電所2の時刻情報Tssと電化列車3の時刻情報Ttrnを時刻の補正値を用いて同期した状態において、変電所2の送出電力と電化列車3の消費電力を比較することで実施する。
図10に変電所2と電化列車3が保持する時計の時刻について補正時間を求める時刻同期装置1と、電力不整合判定装置7を含めたハード構成を示す。
変電所2は、演算部221、インタフェース部222、時計部224、情報伝送部226、電圧電流測定部228を備える。変電所2において、電圧電流測定部228は、架線4に送出した電流と電圧を測定し、測定した電流と電圧を、インタフェース部222を介して、電流電圧情報として演算部221に送る。演算部221は、時計部224より時刻情報を受け、時刻情報とインタフェース部222から受信した電流電圧情報との対応づけを行い、対応づけられた時刻情報と電流電圧情報を、インタフェース部222を介して情報伝送部226に送る。情報伝送部226は、受信した時刻情報と電流電圧情報を時刻同期装置1に送信する。
電化列車3は、演算部321、インタフェース部322、時計部324、情報伝送部326、電圧電流測定部328を備えている。電化列車3において、電圧電流測定部328は、架線4から受けた電流と電圧を測定し、測定した電流と電圧を、インタフェース部322を介して、電流電圧情報(電気情報)として演算部321に送る。演算部321は、時計部324より時刻情報を受け、時刻情報とインタフェース部322から受信した電流電圧情報との対応づけを行い、対応づけられた時刻情報と電流電圧情報を、インタフェース部322を介して情報伝送部326に送る。情報伝送部326は、受信した時刻情報と電流電圧情報を時刻同期装置1に送信する。
時刻同期装置1は、演算部121、インタフェース部122、情報記憶部123、情報伝送部126を備えている。時刻同期装置1において、情報伝送部126は、変電所2から、変電所2の電流電圧情報と時刻情報を受信し、電化列車3から、電化列車3の電流電圧情報と時刻情報を受信し、各受信した情報をインタフェース部122に送る。
インタフェース部122は、受け取った各電流電圧情報と各時刻情報を演算部121に送る。演算部121は各電流電圧情報と各時刻情報を情報記憶部123に保持する。そして演算部121は、情報記憶部123に保持する各電流電圧情報と各時刻情報を用いて、変電所2が持つ時計部224の時刻と、電化列車3が持つ時計部324の時刻との間の補正時間を計算する。補正時間の計算手順は実施例1と同じであるため、説明は省略する。そして、演算部121は、補正時間の計算結果を、インタフェース部122を介して電力不整合判定装置7に送る。
電力不整合判定装置7は、演算部721、インタフェース部722、情報記憶部723、表示部727を備えている。電力不整合判定装置7において、インタフェース部722は、時刻同期装置1が計算した補正時間と、変電所2の電流電圧情報と時刻情報と、電化列車3の電流電圧情報と時刻情報を時刻同期装置1から受け取る。インタフェース部722は受けた各情報を演算部721に送る。演算部721は、受けた各情報を情報記憶部723に保持し、併せて電力不整合判定を行い、判定結果をインタフェース部722を介して表示部727に表示する。
また電力不整合判定装置7の演算部721が行う処理は、一定時間間隔で処理を繰り返し開始する周期処理である。
図11に時刻同期装置1と変電所2と列車3と電力不整合判定装置7の行う処理構成(ソフトウェア)の関係を示す。
変電所2は、送電情報送信機能13、時計機能16、送電電流電圧測定機能22を備えている。変電所2において、送電情報送信機能13は、時計機能16の時刻情報を基に送電電流電圧測定機能22を用いて架線4に送出した電流電圧を測定し、時計機能16の時刻情報と測定した電流電圧を示す電流電圧情報とを対応付けて、時刻同期装置1に送信する。送電情報送信機能13の行う処理手順は、図4に示す内容について電圧を電流と電圧に変更したものとなる。これ以外の手順は実施例1と同じであるため、説明は省略する。
電化列車3は、受電情報送信機能17、時計機能19、受電電流電圧測定機能23を備えている。電化列車3において、受電情報送信機能17は、時計機能19の時刻情報を基に受電電流電圧測定機能23を用いて架線4から受けた電流と電圧を測定し、時計機能19の時刻情報と測定した電流電圧を示す電流電圧情報とを対応付けて、時刻同期装置1に送信する。受電情報送信機能17の行う処理手順は、図5に示す内容について電圧を電流と電圧に変更したものとなる。これ以外の手順は実施例1と同じであるため、説明は省略する。
時刻同期装置1は、情報受信機能14、時刻同期機能15を備えている。時刻同期装置1において、情報受信機能14は、変電所2が送信した時刻情報(現在時刻)と電流電圧情報と、電化列車3が送信した時刻情報(現在時刻)と電流電圧情報を受信し、受信した各情報を時刻同期機能15に送る。
時刻同期機能15の処理手順は実施例1と同じであるため、説明は省略する。時刻同期機能15の処理結果と、変電所2が送信した時刻情報(現在時刻)と電流電圧情報と、電化列車3が送信した時刻情報(現在時刻)と電流電圧情報は、時刻同期機能15により、電力不整合判定装置7の電力不整合判定機能20に送られる。
電力不整合判定装置7は、電力不整合判定機能20、判定結果表示機能21を備えている。電力不整合判定装置7において、電力不整合判定機能20は、時刻同期装置1より時刻の補正結果(補正値)と、変電所2及び電化列車3の各時刻の電流電圧情報(時刻情報と電流電圧情報)を受信し、受信した情報を基に、電力不整合の判定を実行し、判定結果を判定結果表示機能21に表示させる。
電力不整合判定機能20の行う処理手順を図12に示す。電力不整合判定機能20は、処理4001より開始し、次の処理4002で時刻同期装置1より時刻の補正結果と変電所2と電化列車3の各時刻の電流電圧情報の受信を行う。次に、電力不整合判定機能20は、処理4003で受信した情報が新しい受信情報ありか否かを判定し、処理4003で、新しい受信情報ありと判定した場合、処理4004を行い、新しい受信情報なしと判定した場合、処理4008で、このルーチンでの処理を終了とする。
受信した情報が新しい受信情報である場合は、電力不整合判定機能20は、処理4004で、新しい受信情報の時刻情報(時刻値)に受信した補正値を加算し、前回までの受信情報に追加する。ここで、時刻同期装置1の情報受信機能14が受けた変電所2と電化列車3の各時刻の電流電圧である時刻電流電圧情報800を図13に示す。電力不整合判定装置7は、図13に示す時刻電流電圧情報800に加えて、時刻同期装置1が計算した時刻の補正値=−3秒の情報を受け取る。
時刻電流電圧情報800は、変電所2を識別する名称801と、電化列車3を識別する名称802を備えている。名称801は、変電所2で測定した現在時刻を示す時刻Tss803と、変電所2で測定した電流を示す電流Iss804と、変電所2で測定した電圧を示す電圧Vss805から構成され、名称802は、電化列車3で測定した現在時刻を示す時刻Ttrn806と、電化列車3で測定した電流を示す電流Itrn807と、電化列車3で測定した電圧を示す電圧Vtrn808から構成される。
例えば、時刻Tss803には、変電所2で測定した現在時刻として「12:00:00」〜「12:00:09」が記録され、電流Iss804には、変電所2で測定した電流として、「100」〜「1100」が記録され、電圧Vss805には、変電所2で測定した電圧として、「1500〜1500」が記録され、時刻Ttrn806には、電化列車3で測定した現在時刻として、「12:00:00」〜「12:00:09」が記録され、電流Itrn807には、電化列車3で測定した電流として、「50」〜「900」が記録され、電圧Vtrn808には、電化列車3で測定した電圧として、「1400〜1402」が記録される。
新しい受信情報が、図13に示す時刻電流電圧情報800のうち、時刻12:00:09における変電所2と電化列車3の電流電圧情報と補正時間=−3秒であって、前回までの受信情報が、図13に示す時刻電流電圧情報800のうち、時刻12:00:08以前の変電所2と電化列車3の各時刻の電流電圧情報とすると、処理4004で前回までの受信情報に保持する内容は、図14に示す時刻電流電圧情報900となる。すなわち、図13の時刻電流電圧情報800に記録された電化列車3の情報が「−3秒」ずらされ、図13における時刻「12:00:03」の電流と電圧が、図14では時刻「12:00:00」の電流と電圧として記録され、図13における時刻「12:00:09」の電流と電圧が、図14では時刻「12:00:06」の電流と電圧として記録される。
時刻電流電圧情報900は、時刻901と、変電所2を識別する名称902と、電化列車3を識別する名称903を備えている。名称902は、変電所2で測定した電流を示す電流Iss904と、変電所2で測定した電圧を示す電圧Vss905から構成され、名称902は、電化列車3で測定した電流を示す電流Itrn906と、電化列車3で測定した電圧を示す電圧Vtrn907から構成される。
時刻901には、例えば、「12:00:00」〜「12:00:09」が記録され、電流Iss904には、変電所2で測定した電流として、「100」〜「1100」が記録され、電圧Vss905には、変電所2で測定した電圧として、「1500〜1500」が記録され、電流Itrn906には、電化列車3で測定した電流として、「50」〜「900」が記録され、電圧Vtrn808には、電化列車3で測定した電圧として、「1400〜1402」が記録される。
新しい受信情報の時刻「12:00:09」と時刻の補正値=−3秒より、変電所2の新しい受信情報の時刻は「12:00:09」に、電化列車3の新しい受信情報の時刻は「12:00:06」となる。
次に、電力不整合判定機能20は、処理4005で、変電所2が送出した電力Pss2と、電化列車3が消費した電力Ptrn3を計算する。ここで処理4003より変電所2の新しい受信情報の時刻は「12:00:09」に、電化列車3の新しい受信情報の時刻は「12:00:06」となるので、計算は時刻「12:00:06」について行う。変電所2と電化列車3は直流電化であるため、夫々の電力は次の式(20)と式(21)となる。
Pss2=電圧×電流=1501×1400=210.14kW ・・・式(20)
Ptrn3=電圧×電流=1402×900=126.18kW ・・・式(21)
次に、電力不整合判定機能20は、処理4006で、処理4005で求めた電力の比率Ptrn3/Pss2が指定値より小さいか否かを判定する。電力不整合判定機能20は、電力の比率が指定値より小さいと判定した場合、処理4007を行い、電力の比率が指定値より小さくないと判定した場合、処理4008でこのルーチンでの処理を終了とする。ここでは、図示していない指定値は、式(22)となり、また電力の比率は式(20)(21)より式(23)となる。
指定値=75.0% ・・・式(22)
Ptrn3/Pss2=126.18/210.14=60.0% ・・・式(23)
ここでは、式(22)と式(23)より、処理4006の判定は条件成立となる。よって次に行う処理は4007となる。
次に、電力不整合判定機能20は、処理4007では、電力不整合発生を判定結果表示機能21に送る。すなわち、処理4007では、電力の比率Ptrn3/Pss2が指定値より小さい場合、つまり変電所2が送出した電力に対して、変電所2あるいは架線4あるいは電化車両3のひとつ以上に閾値を超える電力の漏洩が発生している可能性があるので、判定結果表示機能21に電力不整合発生可能性のメッセージを表示する。表示する情報は、例えば式(24)のテキストである。
「注意:変電所2、架線4、電化列車3に故障の可能性。電力比=60%」 ・・・式(24)
以上の手順を行うことにより、直流電化の場合に変電所2と電化列車3の間で時刻情報を互いに調整していない場合においても、それぞれの時刻情報を同期させる補正値を計算して、電力の不整合が発生していること検知することが可能となる。
なお、此処までの説明は時刻同期装置1と電力不整合判定装置7が独立した装置である場合について行ったが、時刻同期装置1と電力不整合判定装置7は片方の装置に他方が入っても良い。また電力不整合判定装置7は変電所2や電化列車3のひとつに含まれても良い。電力不整合判定装置7は時刻や電化列車3の位置や数に応じて、ふたつ以上の変電所2と電化列車3のひとつが時刻同期装置1の処理を受け持つ状態を入れ替えても良い。
また、変電所2及び電化列車3が送信する電流電圧情報に代わり、電力情報を用いても良い。また、判定結果表示機能21と式(24)のメッセージに代えて、図示していないランプの点灯や点滅、式(24)のメッセージを図示していない音声作成装置とスピーカを介して出力することでも良い。
本実施例において、演算部721は、時刻情報同期手段(時刻同期装置1)により一方の時刻情報(変電所2の時刻情報)と他方の時刻情報(電化列車3の時刻情報)とが同期した時刻情報に属する時刻における電気情報のうち直流の電源線(架線4)の電流・電圧を示す電流電圧情報から一方の管理対象(変電所2)で送出した一方の直流電力と他方の管理対象(電化列車3)で消費した他方の直流電力を算出する直流電力算出手段と、直流電力算出手段の算出による他方の直流電力と一方の直流電力とを比較し、他方の直流電力と一方の直流電力との比率が指定値より小さい場合に、電力不整合と判定する直流電力不整合判定手段を構成する。
本実施例によれば、直流の電源線(架線4)に接続された電化列車3と変電所2との間で直流電力エネルギーの授受関係を計算し、授受関係に不整合がある場合には、変電所2あるいは電化列車3あるいは架線4に障害があることを判定することができる。また、本実施例における時刻同期装置1と電力不整合判定装置7を用いて地絡検知装置を構成することで、地絡の発生時間を正確に把握することができる。
実施例3は、変電所2と電化列車3は交流電化である場合について、実施例1で求めた時刻の補正値を用いて、電化列車3と変電所2の間で交流電力エネルギーの授受関係を計算し、授受関係に不整合がある場合には、変電所2あるいは電化列車3あるいは架線4に障害があることを判定する方法を説明する。
交流電化の場合では、電流と電圧の間の位相θを考慮して有効電力を計算すれば良い。
実施例3の装置構成、処理構成、時刻同期装置1の行う処理内容は、実施例2と同じで良いため、説明を省略する。
まず、変電所2において、送電電流電圧測定機能22は、架線4の電流と電圧を測定すると共に電流と電圧の位相θss2を測定する。送電情報送信機能13は、各時刻の電流電圧と位相θss2に関する情報を電気情報(電流電圧情報と位相情報)として時刻同期装置1に送る。同様に、電化列車3において、受電電流電圧測定機能23は、架線4の電流と電圧を測定すると共に電流と電圧の位相θtrn3を測定する。受電情報送信機能17は、各時刻の電流電圧と位相θtrn3に関する情報を電気情報(電流電圧情報と位相情報)として時刻同期装置1に送る。
変電所2と電化列車3が位相θss2と位相θtrn3に関する情報を時刻同期装置1に送ることから、時刻同期装置1が受け取る時刻電流電圧情報は、図13の時刻電流電圧情報800の内容に、位相θss2と位相θtrn3に関する情報を加えた情報となる。
時刻同期装置1は、実施例1に示した手順に従い、時刻と電圧の情報を用いて時刻の補正結果(補正時間)を作成する。ここで、変電所2と電化列車3でそれぞれ測定された電流と電圧の位相は、例えば、式(30)とする。
位相θss2=位相θtrn3=60度 ・・・式(30)
電力不整合判定装置7は、時刻同期装置1が作成した時刻の補正結果と、図13に示す時刻電流電圧情報800と、変電所2と電化列車3でそれぞれ測定された位相θss2と位相θtrn3に関する情報を受ける。電力不整合判定装置7は、受け取った情報を基に、図12に示す処理を行い、処理4005にて変電所2が送出した電力Pss2と、電化列車3が消費した電力Ptrn3を計算する際に、交流における電力を計算する。図14に示す時刻電流電圧情報900のうち、時刻12:00:06の電流と電圧について電力を計算する場合、変電所2と電化列車3は交流電化であるため、変電所2と電化列車3の夫々の電力は、式(30)を用いて、次の式(31)と式(32)となる。
Pss2=電圧×電流×COS(θss2)
=1501×1400×0.5=105.07kW ・・・式(31)
Ptrn3=電圧×電流×COS(θtrn3)
=1402×900×0.5=66.09kW ・・・式(32)
この後、電力不整合判定装置7は、Ptrn3/Pss2が指定値よりも小さいか否かを判定する。
指定値=75.0% ・・・式(22)
Ptrn3/Pss2=66.09/105.07=62.9% ・・・式(33)
ここでは式(22)と式(33)より、処理4006の判定は条件成立となる。
よって、電力不整合判定装置7は、処理4007では、電力不整合発生を判定結果表示機能21に送る。すなわち、処理4007では、電力の比率Ptrn3/Pss2が指定値より小さい場合、つまり変電所2が送出した電力に対して、変電所2あるいは架線4あるいは電化車両3のひとつ以上に閾値を超える電力の漏洩が発生している可能性があるので、判定結果表示機能21に電力不整合発生可能性のメッセージを表示する。上記以外の処理は、実施例2と同じで良いため、説明を省略する。
この処理を行うことにより、交流電化の場合についても、電力の不整合が発生していること検知することが可能となる。
本実施例において、演算部721は、時刻情報同期手段(時刻同期装置1)により一方の時刻情報(変電所2の時刻情報)と他方の時刻情報(電化列車3の時刻情報)とが同期した時刻情報に属する時刻における電気情報のうち交流の電源線の電流・電圧を示す電流電圧情報と、交流の電源線(架線4)の電流と電圧の位相を示す位相情報とから一方の管理対象(変電所2)で送出した一方の交流電力と他方の管理対象(電化列車3)で消費した他方の交流電力を算出する交流電力算出手段と、交流電力算出手段の算出による他方の交流電力と一方の交流電力とを比較し、他方の交流電力と一方の交流電力との比率が指定値より小さい場合に、電力不整合と判定する交流電力不整合判定手段を構成する。
本実施例によれば、交流の電源線に接続された電化列車3と変電所2との間で交流電力エネルギーの授受関係を計算し、授受関係に不整合がある場合には、変電所2あるいは電化列車3あるいは架線4に障害があることを判定することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、時刻同期装置1と電力不整合判定装置7とを一体化し、時刻同期装置1に電力不整合判定装置7の機能を付加した時刻同期装置を構成することができる。また、情報入力手段は、直流又は交流の電源線で接続された複数の管理対象から、各管理対象で電源線の電圧又は電流の少なくとも一方を含む電気信号を一定時間周期で順次測定したときの各時刻に関する時刻情報と各時刻における電気信号に関する電気情報を入力する情報入力手段として構成することができる。また、データ列の相関係数を計算するに際して、時刻補正値の一時的な変動を除くローパスフィルタ処理をデータ列Vss(t)とデータ列Vtr(t)に適用することができる。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。