以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などの乗り物に設置したセンサ部により、センサ部の周囲に存在する対象物に対するセンサ部からの方位角を測定する。センサ部は、検出波として例えば電波などの送信波を送信する。また、センサ部は、送信波のうち対象物によって反射された反射波を受信する。一実施形態に係る電子機器は、センサ部が送信する送信波及びセンサ部が受信する受信波に基づいて、センサ部からの対象物に対する方位角を測定する。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車などに限定されない。一実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、及び歩行者など、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自ら移動する移動体にも限定されない。一実施形態に係る電子機器は、センサ部及び対象物の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサ部からの対象物に対する方位角を測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ部及び対象物の双方が静止していても、センサ部からの対象物に対する方位角を測定することは当然できる。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係るセンサ部を自動車の車両に設置した例を示している。
図1に示す車両100及び車両200は、それぞれ一実施形態に係るセンサ部を設置してある。図1に示す車両100及び車両200は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、それぞれ任意のタイプの車両としてよい。図1において、車両100及び車両200は、矢印で示す進行方向に移動していてもよいし、移動せずに静止していてもよい。
図1に示すように、車両100及び車両200は、それぞれ、センサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dを設置してある。センサ部10Aは、車両100及び車両200のそれぞれ前方に設置してある。センサ部10Bは、車両100及び車両200のそれぞれ左側に設置してある。センサ部10Cは、車両100及び車両200のそれぞれ右側に設置してある。センサ部10Dは、車両100及び車両200のそれぞれ後方に設置してある。以下の説明において、センサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dのそれぞれを区別しない場合、単に「センサ部10」と総称する。なお、センサ部10が車両に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。
車両100及び車両200は、それぞれ、センサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dを設置することで、自車両の周囲360度において、所定の距離内に存在する対象物を検出することができる。例えば、車両100は、図1に示すように、いずれかのセンサ部10によって、車両200を対象物として検出することができる。具体的には、車両100に設置されたセンサ部10は、車両100の周囲に対象物である車両200が存在することを検出する。また、車両100に設置されたセンサ部10によって、自車両である車両100と、対象物である車両200との間の距離が測定される。さらに、車両100に設置されたセンサ部10によって、自車両である車両100から、対象物である車両200に対する方位角も測定される。また、車両100は、いずれかのセンサ部10によって、車両100の周囲に存在する歩行者及び障害物なども、対象物として検出することができる。
同様に、車両200は、図1に示すように、いずれかのセンサ部10によって、車両100を対象物として検出することができる。また、車両200は、いずれかのセンサ部10によって、車両200の周囲に存在する歩行者及び障害物なども、対象物として検出することができる。
図2は、一実施形態に係るセンサ部、及び当該センサ部が送信する送信波を示す図である。
図2は、車両100に設置されたセンサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dが、それぞれ送信波のビームを形成している様子を模式的に示している。センサ部10は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ部10は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ部10は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。また、一実施形態に係るセンサ部10は、例えば音波によるSONAR(Sound Navigation and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。センサ部10は、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。センサ部10の構成については、さらに後述する。
図2に示すように、車両100の前方に設置されたセンサ部10Aは、車両100の前方に送信波のビームBaを形成する。ビームBaの送信波の周波数は、例えばAとする。車両100の左側に設置されたセンサ部10Bは、車両100の左側に送信波のビームBbを形成する。ビームBbの送信波の周波数は、例えばBとする。車両100の右側に設置されたセンサ部10Cは、車両100の右側に送信波のビームBcを形成する。ビームBcの送信波の周波数は、例えばCとする。車両100の後方に設置されたセンサ部10Dは、車両100の後方に送信波のビームBdを形成する。ビームBdの送信波の周波数は、例えばDとする。
図2に示すように、センサ部10は、それぞれ、放射角が180度に近いビームを形成するように、送信波を送信してよい。このようなセンサ部10を4つ用いることで、図2に示すように、車両100の周囲全てが、センサ部10の送信波のビームによって囲まれる。一方、センサ部10の設置個所、及びセンサ部10の放射角は、図2に示すような態様に限定されない。例えば、放射角が180度よりも狭いセンサ部10を、車両100に設置してもよい。この場合、4つより多くのセンサ部10を車両100に設置することで、車両100の周囲全てがセンサ部10の送信波のビームによって囲まれるようにしてもよい。また、車両100の周囲の全てがセンサ部10の送信波のビームによって囲まれる必要がない場合、適宜、センサ部10によるビームの放射角を狭くしたり、センサ部10の設置数を少なくしたりしてもよい。
図3は、一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器の構成について説明する。
図3に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、少なくとも制御部3を備えている。上述したセンサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dは、それぞれ、制御部3に接続される。さらに、制御部3には、方位検出部5、報知部7、及び状況検出部9が接続される。
制御部3は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部3は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部3は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部3は、制御部3の動作に必要なメモリのような記憶部を適宜含んでもよい。この記憶部は、制御部3において実行されるプログラム、及び、制御部3において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、この記憶部は、制御部3のワークメモリとして機能してよい。一実施形態に係る制御部3の動作は、さらに後述する。
方位検出部5は、例えば電子機器1が搭載された車両の方位を検出する。方位検出部5は、地磁気を検出する電子コンパスなどとしてよい。また、方位検出部5は、GNSS(Global Navigation Satellite System)技術等に基づいて、電子機器1の位置情報を取得してもよい。GNSS技術は、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo、及び準天頂衛星(QZSS)等のいずれか衛星測位システムを含んでよい。例えば、方位検出部5は、GPSモジュールなどの位置情報所得デバイスを内蔵してよい。このような場合、方位検出部5は、電子機器1の位置情報を取得することにより、当該位置情報の時間変化に基づいて、電子機器1が搭載された車両の方位を検出してもよい。また、方位検出部5は、GPSモジュールなどの位置情報所得デバイスに代えて、又は当該デバイスとともに、ジャイロスコープのようなセンサを含んでもよい。また、例えば電子機器1が搭載された車両にカーナビゲーションシステムも搭載されている場合、このカーナビゲーションシステムから、車両の方位を検出してもよい。
一実施形態において、方位検出部5は、例えば電子機器1を搭載した車両100が東西南北いずれの方位に向いているか検出してよい。これにより、制御部3は、方位検出部5が検出した方位(の情報)を取得することができる。また、制御部3は、方位検出部5が検出した方位(の情報)に基づいて、所定の角度との方位角を測定することもできる。
報知部7は、電子機器1が距離の測定及び/又は方位角の測定を行った結果などを、電子機器1のユーザなどに報知する。報知部7は、ユーザに報知する情報に応じて、種々の構成を想定することができる。例えば、電子機器1が距離及び/又は方位角の測定を行った結果などを、文字及び/又は画像などの視覚的な情報によって報知する場合、報知部7は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等のような表示デバイスとしてよい。また、例えば、電子機器1が距離及び/又は方位角の測定を行った結果などを、より簡潔な視覚情報によって報知する場合、報知部7は、発光ダイオード(LED)等のような発光デバイスとしてよい。また、例えば、電子機器1が距離及び/又は方位角の測定を行った結果などを、音又は音声などの聴覚的な情報によって報知する場合、報知部7は、任意のスピーカ又はブザーなどとしてよい。報知部7は、上述したような機能部を少なくとも1つ含んで構成してよい。
一実施形態において、報知部7は、例えば車両100の周囲において、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度内に検出されたら、その旨を文字及び/又は画像などによって報知してもよい。また、報知部7は、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度内に検出されたら、車両100の運転者に注意喚起する表示などを行ってもよい。また、報知部7は、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度内に検出されたら、車両100の周囲において所定の対象物が検出された位置及び/又は角度を、文字及び/又は画像などによって報知してもよい。さらに、報知部7は、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度に検出されたら、所定の対象物と車両100との間の距離を、数値又はイメージ図などによって表示してもよい。
また、一実施形態において、報知部7は、例えば車両100の周囲において、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度内に検出されたら、所定の警告灯を点灯させるのみでもよい。さらに、一実施形態において、報知部7は、例えば車両100の周囲において、所定の対象物が所定の距離内及び/又は所定の角度内に検出されたら、所定の警告及び/又は各種情報を、音声情報によって報知してもよい。
状況検出部9は、例えば電子機器1が搭載された車両などの移動体の所定の状況を検出する。状況検出部9は、電子機器1が搭載される各種の移動体などに応じて、種々の構成を採用することができる。以下、一例として、電子機器1が移動体である自動車(例えば車両100)に搭載される場合について説明する。
電子機器1が自動車に搭載される場合、状況検出部9は、当該自動車の各種の状況を検出する。以下、状況検出部9が検出する移動体である自動車の各種の状況について、具体的に説明する。
例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の移動速度(走行速度)が所定以下であることを検出してよい。具体的には、状況検出部9は、移動体である自動車の走行速度が例えば時速8km以下のような比較的低速であることを検出してよい。この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は例えば自動車の速度計などを含むものとして、自動車の走行速度を検出してもよい。その他、状況検出部9は、例えばアクセルペダルの踏みこみ角度などを検出するセンサなどを含むものとして、自動車の走行速度を検出してもよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、例えば、当該電子制御に係る情報のうち速度情報を取得することにより、自動車の走行速度を検出してもよい。もちろん、状況検出部9が検出する自動車の移動速度(走行速度)の所定値は、時速8km以外の値でもよい。例えば、この所定値は、時速5km、時速10km、時速50km、時速100kmなど、その他の適宜な値でもよい。
また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の後方への移動(走行)を検出してよい。具体的には、状況検出部9は、移動体である自動車の走行が前方の進行方向とほぼ反対方向であることを検出してよい。また、状況検出部9は、自動車の走行が前方と逆方向から所定の角度以内の移動であることを検出してよい。この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は自動車のジャイロスコープ若しくは電子コンパスなどを含むものとして、自動車の後方への走行を検出してよい。その他、状況検出部9は、例えばシフトギアがリバースに切り替えられたこと又は切り替えられていることなどを検出するセンサを含むものとして、自動車の後方への走行を検出してよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、当該電子制御に係る情報のうち状態情報(ステータス)を取得することにより、当該自動車の後方への走行を検出してもよい。
また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の停止状態から移動(走行)状態への遷移を検出してよい。また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の移動(走行)状態から停止状態への遷移を検出してよい。この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は自動車のジャイロスコープなどを含むものとして、自動車の走行状態の遷移を検出してよい。その他、状況検出部9は、例えばアクセルペダルが踏みまれたことを検出するセンサ、又は例えばシフトギアがリバースに切り替えられたことを検出するセンサなどを含むものとして、自動車の走行状態の遷移を検出してもよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、当該電子制御に係る情報のうち状態情報(ステータス)を取得することにより、当該自動車の走行状態の遷移を検出してもよい。
また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の制動(ブレーキ)状態を検出してよい。具体的には、状況検出部9は、移動体である自動車の制動による減速度が所定以上の状態にあることを検出してもよい。この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は自動車のジャイロスコープなどを含むものとして、自動車の制動状態を検出してよい。その他、状況検出部9は、例えばブレーキペダルが踏みまれたこと又は踏み込み度合いを検出するセンサ、又は例えばエンジンブレーキの状態を検出するセンサなどを含むものとして、自動車の制動状態を検出してもよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、当該電子制御に係る情報のうち状態情報(ステータス)を取得することにより、当該自動車の制動状態を検出してもよい。
また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車のクリープを検出してよい。クリープにおいて、自動車は、アクセルペダルが踏まれておらずエンジンがアイドリングの状態で、低速で動いている。この場合、状況検出部9は、例えばアクセルペダルもブレーキペダルも踏まれていないことを検出するセンサ、及び例えば自動車が走行(例えば徐行)状態であることを検出するセンサなどを含むものとして、自動車のクリープを検出してもよい。また、この時、状況検出部9は、オートマチックトランスミッションがドライブモードになっていることを検出する検査を含むものとしてもよい。また、この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は自動車のジャイロスコープなどを含むものとして、自動車のクリープを検出してよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、当該電子制御に係る情報のうち状態情報(ステータス)を取得することにより、当該自動車のクリープを検出してもよい。
また、例えば、状況検出部9は、移動体である自動車の所定の角度以上の方向転換を検出してよい。具体的には、状況検出部9は、移動体である自動車の方向転換の角度が例えば30度以上のような比較的大きな方向転換の角度であることを検出してよい。この場合、状況検出部9は、例えばGPSシステムを含んだり、又は自動車のジャイロスコープ若しくは電子コンパスなどを含むものとして、自動車の所定の角度以上の方向転換を検出してよい。その他、状況検出部9は、例えばステアリングの切れ角を検出するセンサを含むものとして、自動車の所定の角度以上の方向転換を検出してよい。また、当該自動車が電子制御されている場合には、状況検出部9は、当該電子制御に係る情報のうち状態情報(ステータス)を取得することにより、当該自動車の所定の角度以上の方向転換を検出してもよい。
状況検出部9は、例えば以上のような所定の状況を検出すると、検出した所定の状況を制御部3に通知する。これにより、制御部3は、例えば電子機器1が搭載された車両などの移動体において、所定の状況が検出されたことを認識することができる。
状況検出部9が検出する所定の状況は、上述のものに限定されない。一実施形態において、状況検出部9は、電子機器1が搭載された車両などの移動体の比較的近くの周囲環境に運転者などが注意を払うべき種々の状況を検出するものとしてよい。
また、状況検出部9は、電子機器1が搭載された移動体などの一部としてもよいし、電子機器1が搭載された移動体などに取り付けられた各種のセンサとしてもよい。状況検出部9は、電子機器1が搭載された車両などの移動体の所定の状況を検出できるものであれば、任意の構成のものとすることができる。
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、制御部3のみを備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部3の他に、図3に示すような、少なくとも1つのセンサ部10、方位検出部5、報知部7、及び状況検出部9の少なくともいずれかを含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様とすることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が車両100に搭載される場合、制御部3、方位検出部5、報知部7、及び状況検出部9は、車両100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、制御部3、方位検出部5、報知部7、及び状況検出部9の少なくともいずれかは、車両100の外部に設置されてもよい。
次に、一実施形態に係るセンサ部10について説明する。以下、一実施形態に係るセンサ部10が、電波を送受信するレーダセンサである場合について説明する。
図4は、一実施形態に係るセンサ部10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。以下、図4を参照して、一実施形態に係るセンサ部10について説明する。図4においては、図1〜図3に示したセンサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dのうち、代表例として、1つのセンサ部10を示す。
図4に示すように、一実施形態に係るセンサ部10は、大まかに、送信部20及び受信部30を含んで構成される。一実施形態に係るセンサ部10の送信部20は、図4に示すように、4つの送信アンテナ26A、26B、26C、及び26Dを備えている。以下の説明において、送信アンテナ26A、送信アンテナ26B、送信アンテナ26C、送信アンテナ26Dを区別しない場合、単に「送信アンテナ26」と総称する。また、一実施形態に係るセンサ部10は、図4に示すように、4つの受信部30A、30B、30C、及び30Dを備えている。以下の説明において4つの受信部30A、受信部30B、受信部30C、及び受信部30Dのそれぞれを区別しない場合、単に「受信部30」と総称する。
図4は、送信部20の送信アンテナ26が送信波Tを送信する様子を模式的に示している。図4においては、送信波Tのうち、対象物50によって反射された波動を、反射波Rとして示してある。ここで、対象物50は、車両200のような、車両100以外の他の車両としてもよいし、歩行者又は障害物など、車両100以外の任意の物体としてもよい。また、図4は、受信部30の受信アンテナ31が反射波Rを受信する様子も模式的に示している。図4に示す記憶部12及びシンセサイザ14は、それぞれ、送信部20に含めてもよいし、受信部30に含めてもよいし、送信部20又は受信部30とは別に設けてもよい。
シンセサイザ14は、電子的な高周波合成を用いた発振回路であり、レーダの信号源となる。シンセサイザ14は、例えば周波数シンセサイザIC又は周波数シンセサイザ回路などで構成してよい。
記憶部12は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されてよい。記憶部12は、制御部3に接続されてよい。記憶部12は、各種情報及び制御部3で実行されるプログラム等を記憶してよい。記憶部12は、制御部3のワークメモリとして機能してよい。また、記憶部12は、制御部3に含まれてもよい。
送信部20及び受信部30は、記憶部12及びシンセサイザ14を含めて、既知のレーダセンサと同様の構成することができ、既知のレーダセンサと同様の機能部を採用することができる。したがって、以下、既知のレーダセンサと同様になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図4に示すように、送信部20は、例えば、クロック発生部21、信号生成部22、直交変調部23、ミキサ24、送信増幅器25、送信アンテナ26、及び切替部27を含んで構成することができる。
送信部20において、クロック発生部21は、制御部3の制御により、クロック信号CLKを発生する。クロック発生部21によって発生されたクロック信号は、信号生成部22に供給される。
信号生成部22は、クロック発生部21によって発生されたクロック信号、及び、記憶部12から読み出された送信信号列に基づいて、送信信号を生成する。信号生成部22が生成する信号は、例えば周波数変調連続波(FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave))方式のレーダ信号とすることができる。一方、信号生成部22が生成する信号はFM−CW方式の信号に限定されない。信号生成部22が生成する信号は、例えば、パルス方式、パルス圧縮方式(スペクトラム拡散方式)、又は周波CW(Continuous Wave)方式など、各種の方式の信号としてもよい。
また、信号生成部22は、送信信号を生成する際に、例えば制御部3の制御により、送信信号の周波数を割り当てる。一実施形態において、信号生成部22が送信信号の周波数を割り当てる際に使用する帯域は、以下のようにして決定する。
例えば、79GHz帯のミリ波レーダを使用する場合、77GHzから81GHzまでの帯域に割り当てられた4GHz帯域を使用することが規定されている。この場合、77GHzから81GHzまでの帯域に割り当てられた4GHz帯域を使用してもよい。また、この場合、77GHzから81GHzまでの帯域に割り当てられた4GHz帯域の一部として、例えば1GHz帯域を使用してもよい。信号生成部22によって生成された送信信号は、直交変調部23に供給される。
直交変調部23は、信号生成部22から供給された送信信号の直交変調を行う。直交変調部23によって直交変調された信号は、ミキサ24に供給される。
ミキサ24は、切替部27を介して、送信増幅器25A、送信増幅器25A’、送信増幅器25B、又は送信増幅器25B’に接続される。ミキサ24は、直交変調部23によって直交変調された信号を、シンセサイザ14から供給される信号と混合して周波数変換を行い、送信信号の周波数をミリ波の中心周波数まで上昇させる。ミキサ24によって周波数変換された送信信号は、送信増幅器25A、送信増幅器25A’、送信増幅器25B、又は送信増幅器25B’に供給される。
送信増幅器25Aは、送信アンテナ26Aに接続される。また、送信増幅器25A’は、送信アンテナ26A’に接続される。送信増幅器25Bは、送信アンテナ26Bに接続される。送信増幅器25B’は、送信アンテナ26B’に接続される。以下の説明において、送信増幅器25A、送信増幅器25A‘、送信増幅器25B、及び送信増幅器25B’を区別しない場合、単に「送信増幅器25」と総称する。送信増幅器25は、ミキサ24によって周波数変換された送信信号の送信電力を増大させる。送信増幅器25によって送信電力が増大した送信信号は、送信アンテナ26から送信波Tとして送信される。一実施形態において、送信波Tは、送信アンテナ26A、送信アンテナ26A’、送信増幅器25B、及び送信増幅器25B’の少なくともいずれかから送信される。
切替部27は、送信波Tが送信されるアンテナを、送信アンテナ26Aと、送信アンテナ26A’と、送信アンテナ26Bと、送信アンテナ26B’とで切り替える。切替部27は、例えば制御部3からの制御によって、送信波Tが送信される送信アンテナ26を切り替えてよい。
図4に示すように、送信アンテナ26から送信された送信波Tが届く範囲に対象物50が存在する場合、送信波Tの一部は、対象物50によって反射されて、反射波Rとなる。
図4は、受信アンテナ31Aを備える受信部30Aと、受信アンテナ31Bを備える受信部30Bと、受信アンテナ31Cを備える受信部30Cと、受信アンテナ31Dを備える受信部30Dとを、まとめて示している。以下、図4に示す受信部30A、受信部30B、受信部30C、及び受信部30Dのうち、代表例として、1つの受信部30について説明する。受信部30A、受信部30B、受信部30C、及び受信部30Dは、それぞれ同様の構成とすることができる。
図4に示すように、受信部30は、例えば、受信アンテナ31、受信増幅器32、ミキサ33、ミキサ34、AD変換部35、及びFFT処理部36を含んで構成することができる。
受信部30において、受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。より詳細には、一実施形態において、反射波Rは、受信アンテナ31A、受信アンテナ31B、受信アンテナ31C、及び受信アンテナ31Dの少なくともいずれかによって受信される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、受信増幅器32に供給される。受信増幅器32は、低雑音増幅器としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。受信増幅器32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
ミキサ33は、受信増幅器32から供給されるRF周波数の受信信号を、送信部20のミキサ24によって周波数変換された送信信号と掛け合わせることにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって生成されたビート信号は、ミキサ34に供給される。
ミキサ34は、ミキサ33によって生成されたビート信号を、シンセサイザ14から供給される信号と混合して周波数変換を行い、ビート信号の周波数をIF周波数まで低下させる。ミキサ34によって周波数変換されたビート信号は、AD変換部35に供給される。
AD変換部35は、任意のアナログ−デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35は、ミキサ34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、FFT処理部36に供給される。
FFT処理部36は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。FFT処理部36は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う。FFT処理部36によってFFT処理された結果は、制御部3に供給される。
FFT処理部36によってビート信号をFFT処理した結果として、周波数スペクトルが得られる。この周波数スペクトルから、制御部3は、センサ部10が発するビームの範囲内に所定の対象物50が存在するか否かを判定することができる。すなわち、制御部3は、FFT処理されたビート信号に基づいて、センサ部10が発するビームの範囲内に所定の対象物50が存在するか否かを判定することができる。また、制御部3は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の対象物50が存在する場合に、センサ部10と対象物50との距離を測定することもできる。さらに、制御部3は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の対象物50が存在する場合に、センサ部10と対象物50との位置関係も判定することもできる。このように、一実施形態において、送信波Tとして送信される信号、及び反射波Rとして受信される信号から得られるビート信号に基づいて、対象物50との間の距離を測定してよい。例えば79GHz帯などのミリ波レーダを利用して取得したビート信号に基づいて、距離を測定する測距技術そのものは公知であるため、より詳細な説明は省略する。
また、制御部3は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の対象物50が存在する場合に、センサ部10からの対象物50に対する方位角も判定することもできる。このように、一実施形態において、送信波Tとして送信される信号、及び反射波Rとして受信される信号から得られるビート信号に基づいて、対象物50に対する方位角を測定してよい。この場合、制御部3は、方位検出部5が検出する電子機器1の方位と対比することにより、対象物50に対する方位角を測定してもよい。また、電子機器1が測定するのは、対象物50に対する方位角に限定されない。一実施形態において、電子機器1が測定するのは、電子機器1のセンサ部10から対象物50に向く方向又は方角などとしてもよい。例えば79GHz帯などのミリ波レーダを利用して取得したビート信号に基づいて、所定の対象物に対する方位角などを測定する測角技術そのものも公知であるため、より詳細な説明は省略する。
次に、一実施形態に係るセンサ部10により構成される仮想アレイアンテナについて説明する。
一実施形態において、1つのセンサ部10は、複数のアンテナを有してよい。また、一実施形態において、1つのセンサ部10は、送信アンテナ26及び受信アンテナ31の少なくとも一方を複数備えることにより、これらのアンテナによって構成される仮想アレイアンテナとして機能させることができる。以下、このようなアンテナの構成について説明する。
図5は、一実施形態に係るセンサ部10により構成される仮想アレイアンテナを模式的に示す図である。図5は、図4に示したセンサ部10が備える4つの送信アンテナ26及び4つの受信アンテナ31により構成される、仮想アレイアンテナを示す図である。
図5に示すように、センサ部10は、4つの送信アンテナ26A、26B、26A’及び26B’、並びに、4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dを備えている。一実施形態において、これらのアンテナを所定の間隔で並べて配置することにより、最大で4×4=16本のアンテナとして機能する仮想アレイアンテナが構成される。
以上の例を一般化して、例えば、ミリ波レーダの電波を送受信するに際し、送信アンテナ26をM本、受信アンテナ31をN本配置する場合を想定する。ここで、図5に示すように、M本の第1送信アンテナ26(例えば2本の送信アンテナ26A及び26B)を、横方向(X軸方向)に(λ/2)×N=2λの間隔で配置する。このように設置したM本
の第1送信アンテナ26が複数ある場合、複数の第1送信アンテナ26から時間的に順番に送信波Tを送信する。
また、図5に示すように、第1送信アンテナ26の配列のほぼ延長線上に、N本の受信アンテナ31(例えば4本の受信アンテナ31A、32B、32C、及び32D)を、横方向(X軸方向)にλ/2の間隔で配置する。このように設置したN本の受信アンテナ31が複数ある場合、複数の受信アンテナ31から時間的に順番に反射波Rを受信する。このようにして受信した受信信号は、N×M本のアンテナを用いて送受信した場合の受信信号と見立てることができる。このように、一実施形態において、仮想アレイアンテナとして機能するアンテナの数は、送信波Tを送信するアンテナの数をMとして、反射波Rを受信するアンテナの数をNとする場合、M×Nとしてもよい。
例えば、図5に示すように、4つの受信アンテナ31がλ/2の間隔で配置された平行線上に、2λの間隔で2つの送信アンテナ26が配置されているとする。この場合、1つの送信アンテナ26から送信された信号の反射波は、4つの受信アンテナ31(0,λ/2,λ,3λ/2)で受信される。また、もう1つの送信アンテナ26から送信された反射波は、4つの受信アンテナ31によって、それぞれ2λだけずれて受信される(0+2λ,λ/2+2λ,λ+2λ,3λ/2+2λ)。したがって、この場合、合計で仮想8
本の受信アンテナ26によって、λ/2間隔で受信することになる(0,λ/2,λ,3
λ/2,0+2λ,λ/2+2λ,λ+2λ,3λ/2+2λ)。
さらに、一実施形態において、図5に示すように、上述の第1送信アンテナ26(例えば送信アンテナ26A及び26B)の配列とほぼ平行に、M本の第2送信アンテナ26’(例えば2本の送信アンテナ26A’及び26B’)を配置する。ここで、第2送信アンテナ26’の配列と、第1送信アンテナ26の配列とは、図5に示すように、縦方向(Y軸方向)に互いにλ/2の間隔で離間して配置する。すなわち、第1送信アンテナ26が配列された直線と、第2送信アンテナ26’が配列された直線との距離は、λ/2とする。また、M本の第2送信アンテナ26’が複数の場合、第1送信アンテナ26と同様に、横方向(X軸方向)にそれぞれ2λの間隔で配置する。
このようにして、N×M本の仮想アレイアンテナとして機能する第1送信アンテナ26及び第2送信アンテナ26’並びに受信アンテナ31によって送受信した信号から、既知のアルゴリズムを用いることにより、反射波Rの到来方向を推定することができる。到来方向を推定するアルゴリズムとしては、例えば、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、及びMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)などが知られている。一般的に、到来方向の推定において、送受信に用いるアンテナの数が増えるほど、角度分解能が向上し、同時に測角できる物体も増加する。
一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tの放射の方向を可変にして動作する。具体的には、電子機器1は、送信波Tが放射される方向を第1方向とする動作モード(以下、適宜「第1モード」と略記する)で動作することができる。また、電子機器1は、送信波Tが放射される方向を、第1方向とは異なる第2方向とする動作モード(以下、適宜「第2モード」と略記する)で動作することもできる。ここで、送信波Tの送信及び反射波Rの受信に用いるアンテナは、上述した仮想アレイアンテナとして機能するアンテナとしてもよいし、実際に設置されているアンテナとしてもよい。
図6は、第1モード及び第2モードにおいて送信波Tが放射される方向を説明する図である。図6は、図1及び図2に示した車両100の前方に設置されたセンサ部10Aから送信波が放射される様子を模式的に示す図である。図6(A)は、第1モードにおいて送信波Tが放射される方向を説明する図である。図6(B)は、第2モードにおいて送信波Tが放射される方向を説明する図である。
図6(A)に示すように、上述の第1モードとは、送信波Tの放射が第1方向D1を向く動作モードとしてよい。図6(A)に示すように、一実施形態において、第1方向D1は、図6(B)に示す第2方向D2よりも水平(Z軸方向)に近くしてよい。すなわち、第1方向D1は、図6(A)に示すように、車両100から見てほぼ水平方向(Z軸方向)としてよい。一実施形態において、第1方向D1は、車両100から見て厳密に水平方向(Z軸方向)でなくてもよい。図6(A)において、センサ部10Aは、車両100の前方に水平方向を向けて設置されている。ここで、電子機器1の制御部3は、第1モードにおいてセンサ部10Aが前方(図6に示すZ軸正方向)に直進する送信波を放射するように制御してよい。したがって、この場合、センサ部10Aは、車両100の前方で水平方向に送信波を放射する。
また、図6(B)に示すように、上述の第2モードとは、送信波Tの放射が第1方向D1よりも下に近い第2方向D2を向く動作モードとしてよい。ここで、「下」とは、鉛直方向又は垂直方向の下方としてよく、具体的には、図5および図6などに示すY軸の負方向としてよい。すなわち、第2方向D2は、図6(B)に示すように、車両100から見てほぼ水平方向(Z軸方向)よりも下方(Y軸負方向)を向く方向としてよい。一実施形態において、第2方向D2は、車両100から見て厳密に下方向又は垂直(Y軸負方向)でなくてもよい。ここで、電子機器1の制御部3は、第2モードにおいてセンサ部10Aが前方(図6に示すZ軸正方向)とは異なる方向に直進する送信波を放射するように制御してよい。そして、センサ部10Aが第2モードにおいて直進する送信波を放射する方向を、車両100から見て水平方向(Z軸方向)よりも下方(Y軸負方向)に向けてよい。したがって、この場合、センサ部10Aは、車両100の前方で水平方向よりも下向きの方向に送信波を放射する。
このように送信波の放射方向を可変にするために、一実施形態において、図4に示した構成を採用するとともに、送信波が放射される方向がそれぞれ異なる複数の送信アンテナ26を設置してもよい。すなわち、第1モードにおいて、送信波Tの放射が第1方向D1を向く送信アンテナ26を用いてもよい。ここで、送信波Tの放射が第1方向D1を向く送信アンテナ26とは、送信波Tの放射が第1方向D1を向くような指向性を有する送信アンテナとしてよい。このような送信アンテナとして、例えば第1送信アンテナ26(送信アンテナ26A及び26B)を採用してもよい。また、この場合、第2モードにおいて、送信波Tの放射が第2方向D2を向く送信アンテナ26を用いてもよい。ここで、送信波Tの放射が第2方向D2を向く送信アンテナ26とは、送信波Tの放射が第2方向D2を向くような指向性を有する(つまり指向性が下向きの)送信アンテナとしてよい。このような送信アンテナとして、例えば第2送信アンテナ26’(送信アンテナ26A’及び26B’)を採用してもよい。このように、一実施形態において、第1モードと、第2モードとにおいて、送信波Tが放射される送信アンテナ26が異なるようにしてもよい。
また、一実施形態において、送信波が放射される方向を変更するために、指向性が異なる複数の送信アンテナを切り替えて用いるのではなく、複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより、送信波が放射される方向を変更してもよい。
すなわち、一実施形態において、複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより、送信アンテナ26から送信される送信波が放射される方向を変更することができる。したがって、第1モードにおいて、縦方向(Y軸方向)に配置された複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより、送信波Tの放射が第1方向D1を向くようにしてもよい。また、この場合、2モードにおいて、縦方向(Y軸方向)に配置された複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより、送信波Tの放射が第2方向D2を向くようにしてもよい。この場合、複数の送信アンテナ26は、それぞれ通常の指向性を有するものとしてよい。
図7は、一実施形態に係るセンサ部10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。図7に示すセンサ部10は、複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより送信アンテナ26から送信される送信波が放射される方向を変更することができる。以下、図7において、図4と異なる点についてのみ説明する。
図7に示すセンサ部10においては、切替部27と送信増幅器25Aとの間に、位相機28Aが接続される。同様に、切替部27と送信増幅器25A’との間に、位相機28A’が接続される。同様に、切替部27と送信増幅器25Bとの間に、位相機28Bが接続される。同様に、切替部27と送信増幅器25B’との間に、位相機28B’が接続される。ここで、位相機28A、位相機28A’、位相機28B、及び位相機28B’は、それぞれ、送信信号の位相を制御することができる任意の位相制御回路などで構成してよい。また、図7に示すセンサ部10においては、位相機28A及び位相機28A’と、切替部27との接続点は、共通化されている。また、センサ部10においては、位相機28B及び位相機28B’と、切替部27との接続点も、共通化されている。したがって、図7に示すセンサ部10においては、ミキサ24によって周波数変換された送信信号は、切替部27を経て、送信増幅器25A及び送信増幅器25A’か、送信増幅器25B及び送信増幅器25B’かのいずれかに、選択的に供給される。その他の構成については、図4で説明したセンサ部10と同様である。
図7に示すような構成のセンサ部10を採用することで、送信アンテナ26の垂直方向の指向性を位相により制御することができる。例えば、図6に示すように、送信アンテナ26Aと送信アンテナ26A’との組合せで位相制御を行うことにより、垂直方向(Y軸方向)の指向性を制御することができる。このような送信アンテナ26の位相制御を行う場合、予めアンテナのシミュレーションを行うことにより、複数の送信アンテナ26の合成波がどの方向を向くか把握しておくようにしてもよい。また、例えば、実際に送信アンテナ26の位相を変更した際の放射パターンを測定することにより、送信波が所望の方向に向くかを確認した上で、位相を制御してもよい。
このように、一実施形態において、送信アンテナ26を垂直方向(Y軸方向)にλ/2の間隔で配置することにより、送信アンテナ26は、サイドローブを抑えて、所望に応じたビームを形成することができる。例えば、図5に示すような送信アンテナ26の配置によって、垂直方向(Y軸方向)に複数の異なる放射パターンを形成することができる。具体的には、一実施形態において、例えば複数の送信アンテナ26の位相を制御することにより、送信アンテナ26から送信される送信波が放射される方向を変更することができる。例えば、図5に示すような縦方向(Y軸方向)に配置された複数の送信アンテナ26の位相を制御することによって、縦方向(Y軸方向)に放射される送信波の方向を変更することができる。
さらに、一実施形態において、送信波Tを送信する電力が、第1モードと第2モードとで異なるようにしてもよい。例えば、図6(B)に示す第2モードにおいて、送信波Tを送信する電力を、図6(A)に示す第1モードに比べて弱めたとしても、大きな影響がない場合も想定される。したがって、例えば第2モードにおいては、第1モードにおけるよりも小さな電力を用いて、送信波Tを放射してもよい。このように、一実施形態において、第2モードにおいて送信波Tを送信する電力を、第1モードにおいて送信波Tを送信する電力よりも小さくしてもよい。このようにすれば、第2モードにおける動作は、第2モードにおける動作よりも、消費電慮を低減することができる。また、このようにすれば、第2モードにおける動作は、第2モードにおける動作よりも、干渉を低減することも期待できる。
図6においては、車両100の前方に設置されたセンサ部10Aのみから送信波が放射される様子について説明した。しかしながら、車両100に設置される他のセンサ部10においても、第1モード又は第2モードに応じて、送信波Tが送信される方向を変更してもよい。例えば、第1モードにおいて、図2に示した車両100に設置されたセンサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dの全て若しくはこれらのセンサ部のうちの少なくとも1つのセンサ部が、水平方向(ZX平面方向)に送信波Tを送信してもよい。この場合、第2モードにおいて、センサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dの全て若しくはこれらのセンサ部のうちの少なくとも1つのセンサ部が、水平方向(ZX平面方向)よりも下方(Y軸負方向)に送信波Tを送信してもよい。第2モードにおいて、センサ部10A、センサ部10B、センサ部10C、及びセンサ部10Dの少なくとも1つが、水平方向(ZX平面方向)よりも下方(Y軸負方向)に送信波Tを送信してもよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
上述のように、電子機器1は、送信波Tとして送信される信号と、送信波Tのうち対象物50によって反射された反射波Rとして受信される信号とに基づいて、対象物50に対する方位角を測定してよい。また、電子機器1は、上述の第1モードと、上述の第2モードとで、動作可能である。ここで、第1モードにおいて送信波Tを送信する方向は、第2モードにおいて送信波Tを送信する方向よりも水平に近い。また、第1モードにおいて送信波Tを送信する電力は、第2モードにおいて送信波Tを送信する電力よりも大きくしてよい。したがって、第1モードの測定は、測定に係る消費電力は比較的大きいものの、放射される送信波Tは比較的遠方まで届く。一方、第2モードにおいて送信波Tを送信する方向は、第1モードにおいて送信波Tを送信する方向よりも下方に向く。また、第2モードにおいて送信波Tを送信する電力は、第1モードにおいて送信波Tを送信する電力よりも小さくしてよい。したがって、第2モードの測定は、放射される送信波Tが届くのは比較的近距離となるものの、測定に係る消費電力は比較的小さい。そこで、一実施形態において、制御部3は、第1モードと、第2モードとを、切り替え可能に制御する。以下、一実施形態に係る電子機器1の動作について、さらに説明する。
図8は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図8に示す処理は、例えば電子機器1によって所定の対象物に対する方位角を測定する際に開始してよい。
図8に示す処理が開始すると、まず、制御部3は、電子機器1の動作モードを第1モードに設定するように制御する(ステップS1)。すなわち、ステップS1において、制御部3は、送信アンテナ10が例えば図6(A)に示す第1方向D1に向けて送信波Tを放射する動作モードに設定する。上述したように、第1モードの動作においては、送信波Tがほぼ水平方向(Z軸方向)に送信されるため、送信波Tは比較的遠方まで届き得る。したがって、電子機器1は、対象物に対する方位角を比較的遠方まで正確に測定することができる。
ステップS1において第1モードに設定されると、制御部3は、センサ部10から送信する送信信号を生成するように制御する(ステップS2)。ステップS2においては、主として、図4又は図7で説明した送信部20のクロック発生部21による動作から、送信増幅器25による動作までを行うことにより、送信信号を生成する。以下、図4又は図7においてすでに説明した内容については、さらなる説明を省略する。
ステップS2において送信信号が生成されると、制御部3は、送信アンテナ26から送信信号を電波で送信するように制御する(ステップS3)。ステップS3においては、主として、図4又は図7で説明した送信増幅器25による動作から、送信アンテナ26による動作までを行うことにより、電波を送信する。
電子機器1が複数のセンサ部10から信号を送信する場合、ステップS2及びステップS3において、制御部3は、複数のセンサ部10が信号を同時ではなく順次送信するように制御してよい。
ステップS3において電波が送信されると、制御部3は、受信アンテナ31から反射波を受信するように制御する(ステップS4)。ステップS4においては、主として、図4又は図7で説明した受信部30の受信アンテナ31による動作から、受信増幅器32による動作までを行うことにより、反射波を受信する。ここで、受信アンテナ31は、上述のように、送信アンテナ26から送信された送信波のうち、対象物50によって反射された反射波を受信する。
ステップS4において反射波が受信されたら、制御部3は、受信した反射波に基づく受信信号を処理するように制御する(ステップS5)。ステップS5においては、主として、図4又は図7で説明した受信増幅器32による動作から、FFT処理部36による動作までを行うことにより、受信信号を処理する。ステップS5における動作によって、制御部3は、センサ部10から所定の距離内において、所定の対象物50が存在するか否かを認識することができる。また、ステップS5における動作によって、制御部3は、センサ部10から所定の距離内に所定の対象物50が存在する場合に、センサ部10から所定の対象物50に対する方位角を認識(測定)することができる。ここで、制御部3は、電子機器1(又は電子機器1が搭載された車両100)の方位角に基づいて、電子機器1から所定の対象物50に向かう方位角を測定してもよい。さらに、ステップS5における動作によって、制御部3は、センサ部10から所定の距離内に所定の対象物50が存在する場合に、センサ部10から所定の対象物50までの距離を認識してもよい。ここで、所定の対象物50は、上述のように、周囲の車両(同じ車線の前後の車両又は対向車)、歩行者、及び障害物など、各種の物体としてよい。
ステップS5において受信信号が処理されたら、制御部3は、電子機器1が搭載された車両100などの移動体の所定の状況が検出されたか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、所定の状況は、上述したような種々の状況としてよい。例えば、電子機器1が搭載された移動体を車両100とする場合、所定の状況とは、車両100の移動速度(走行速度)が所定以下であること、又は、後方へ移動(走行)していることなどとしてよい。また、所定の状況とは、例えば、車両100が停止状態から移動(走行)状態に遷移したこと、又は、車両100が移動(走行)状態から停止状態に遷移したことなどとしてもよい。また、所定の状況とは、例えば、車両100の制動(ブレーキ)状態、車両100のクリープ、又は、所定の角度以上の方向転換などとしてもよい。このような所定の状況は、上述のように、状況検出部9が検出してよい。
ステップS6において所定の状況が検出されていないと判定された場合、制御部3は、ステップS1に戻って第1モードの動作(角度の測定)を続行する。一方、ステップS6において所定の状況が検出されたと判定された場合、制御部3は、電子機器1の動作を第2モードに設定するように制御する(ステップS7)。すなわち、ステップS7において、制御部3は、送信アンテナ10が例えば図6(B)に示す第2方向D2に向けて送信波Tを放射する動作モードに設定する。上述したように、第2モードの動作においては、送信波Tが水平方向(Z軸方向)よりも下方(Y軸負方向)に送信されるため、電子機器1が搭載された車両100などの移動体の近傍において、対象物に対する方位角を比較的正確に測定し得る。したがって、この場合、電子機器1は、電子機器1が搭載された車両100などの移動体の近傍における安全性を高めることができる。また、第2モードの動作においては、送信波Tの放射が比較的近距離となり得るが、測定に係る消費電力が比較的小さくなり得る。したがって、この場合、電子機器1は、測定に係る消費電力を抑制することができる。
ステップS7において第2モードに設定されると、制御部3は、ステップS2〜ステップS5の動作を行うことにより、送信信号を送信波として送信し、受信した反射波に基づく受信信号を処理する。これにより、電子機器1は、車両100などの移動体の近傍における方位角の測定を重点的に行うことができる。
このように、一実施形態において、制御部3は、第1モードと、第2モードとを、切り替え可能に制御する。また、制御部3は、第1モードにおいて、例えば車両100の低速走行など上述した所定の状況が検出されると、第2モードに切り替えるように制御する。
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば移動体の低速走行時などの所定の状況においては、送信波Tが下方(Y軸負方向)に送信される。このため、一実施形態に係る電子機器1によれば、電子機器1が搭載された移動体の近傍において、対象物に対する方位角を比較的正確に測定し得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、低速走行時などの移動体近傍の安全性を高めることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば移動体の低速走行時などの所定の状況においては、送信波を送信する電力を小さくする。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、消費電力を低減することができる。一方、一実施形態に係る電子機器1によれば、所定の状況が検出されていなければ、送信波Tがほぼ水平方向(Z軸方向)に送信される。このため、一実施形態に係る電子機器1によれば、所定の状況ではない通常の状況においては、対象物に対する方位角を比較的遠方まで正確に測定し得る。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、各種の状況に応じて、方位角測定を行う際の安全性を高めることができる。
特に、電子機器1が車両100などの移動体に搭載される場合、例えば車両100の低速走行時のような所定の状況においては、車両100の近傍の安全性を確保することが望ましい。一方、例えば車両100の低速走行時のような所定の状況においては、車両100から遠方の状況は、車両100の近傍の安全性ほどは重要でないことも想定される。また、車両100の低速走行時以外にも、例えば車両100の後進時、発車時、停車時、制動時、クリープ時、急旋回時などにおいても、同様の状況が生じ得る。一実施形態に係る電子機器1によれば、以上のような各種の状況において、適切かつ妥当に安全性に資することができる。
次に、図8のステップS5に関連して、対象物50が所定の距離内に検出されたか否かの判定について、さらに説明する。
一般的に、レーダ信号処理において目標の自動検出を行うための技法として、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理が知られている。また、受信信号が、目標信号と受信機雑音等の白色雑音とを含む場合においては、CA(Cell Averaging)CFAR処理が有効であることも知られている。
上述のように、一実施形態に係る電子機器1において、図4に示すミキサ33の処理の結果得られるビート信号に、FFT処理部36がFFT処理を施すと、周波数スペクトルが得られる。そこで、一実施形態において、制御部3は、このようにして取得された周波数スペクトルにおいて、ピークと平均電力との比が閾値を超える場合に、対象物50が所定の距離内に検出されたと判定してもよい。ここで、周波数スペクトルにおける平均電力は、時間に従って変動する。したがって、ピークと平均電力との比の閾値も、時間に従って変動する可変の閾値としてもよい。
このように、一実施形態において、制御部3は、ビート信号に基づいて得られる周波数スペクトルにおけるピークと、当該周波数スペクトルにおける平均の強度との比が、所定の閾値を超える場合、対象物50が所定の距離内に検出されたと判定してもよい。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
また、例えば、上述の実施形態において、電波の送受信に基づいて方位角を測定する例について説明した。しかしながら、上述のように、一実施形態において、光波の送受信に基づいて方位角を測定してもよいし、音波の送受信に基づいて方位角を測定してもよい。
[付記1]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の移動速度が所定以下であることが検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記2]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の後方への移動が検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記3]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の停止状態からの移動状態が検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記4]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の移動状態からの停止状態が検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記5]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の制動状態が検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記6]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体のクリープが検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。
[付記7]
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記所定の状況として、前記移動体の所定の方位角以上の方向転換が検出されると、前記第2モードに切り替えるように制御する、電子機器。