JP6947259B1 - アルカリ金属イオン電池用正極材料、正極及びアルカリ金属イオン電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来報告されたKNiPO4及びKCoPO4に比べ、高いエネルギー密度が得られるアルカリ金属イオン電池、及び該電池を得ることができるアルカリ金属イオン電池用正極材料及び正極を提供する。【解決手段】一般式KxAyDzPO4で表される化合物の粒子と、粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを有し、ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGに対する、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4の比IPO4/IGが0.03≦IPO4/IG≦0.3であるアルカリ金属イオン電池用正極材料。但し、AはCo、Ni等;DはMn、Fe、Al等であり、x、y、zは、0.9<x<1.1、0.65<y≦1.0、0≦z<0.35、0.9<y+z<1.1である。【選択図】なし

Description

本発明は、アルカリ金属イオン電池用正極材料、正極及びアルカリ金属イオン電池に関する。
電池のxEV搭載が進む中、電池のエネルギー密度の向上が望まれている。エネルギー密度改善のため、LiNiCoMnO、LiNiCoAlO等のリチウムを含有した酸化物系正極材料が広く用いられている。
LiNiCoMnO、LiNiCoAlO等のリチウムを含有した酸化物系正極材料を用いることで高いエネルギー密度の電池が得られるものの、リチウム資源は埋蔵量が乏しく、また資源偏在の問題があり、地政学上のリスクを抱えている。また、充放電中に発熱や酸素放出が生じ、過充電が行われた際に電池が故障するなどの問題がある。
上記資源問題の解決手段として、資源上の問題の大きいリチウムを資源上の問題の小さいカリウムに変更した正極材料が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2019−102247号公報
カリウム含有型正極材料KNiPO、KCoPOのようなリン酸塩は、酸素とリンと強い共有結合性を有することから、充放電時の酸素放出が少なく、過充電が行われても電池の故障を抑制し得ることが期待される。しかしながら、KNiPO及びKCoPOは電子伝導性に乏しく、従来報告されたKNiPO及びKCoPOではその電池特性を十分に発現することが困難である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、従来報告されたKNiPO及びKCoPOに比べ、高いエネルギー密度が得られるアルカリ金属イオン電池、及び該電池を得ることができるアルカリ金属イオン電池用正極材料及び正極を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、KNiPO、KCoPO等のリン酸カリウム化合物の粒子表面に導電性を有する炭素質被膜を被覆しつつ、所定のラマン特性備えることで、電子伝導性の低いKNiPO及びKCoPOであっても、電池作動可能な電子導電性を付与することができ、従来報告された炭素質未被膜の材料に比べ高い放電容量を発現することを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供する。
[1] 一般式KxAyDzPOで表される化合物の粒子と、前記粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを有し、
ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGに対する、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4の比IPO4/IGが0.03≦IPO4/IG≦0.3であるアルカリ金属イオン電池用正極材料。
但し、上記一般式において、AはCo、Mn、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種であり、DはMn、Fe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc及びYからなる群から選択される少なくとも1種であり、x、y、zは、0.9<x<1.1、0.65<y≦1.0、0≦z<0.35、0.9<y+z<1.1である。
[2] 比表面積が5m/g以上かつ30m/g以下である上記[1]に記載のアルカリ金属イオン電池用正極材料。
[3] 上記[1]又は[2]に記載のアルカリ金属イオン電池用正極材料を用いた正極。
[4] 上記[3]に記載の正極と、Liイオン、Naイオン、及びKイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む電解質とを有するアルカリ金属イオン電池。
本発明によれば、従来報告されたKNiPO及びKCoPOに比べ、高いエネルギー密度が得られるアルカリ金属イオン電池、及び該電池を得ることができるアルカリ金属イオン電池用正極材料及び正極を提供することができる。
<アルカリ金属イオン電池用正極材料>
本実施形態のアルカリ金属イオン電池用正極材料(カリウム含有型正極材料と称することがある)は、一般式KxAyDzPOで表される化合物の粒子と、前記粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを有し、ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGに対する、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4の比IPO4/IGが0.03≦IPO4/IG≦0.3である。
KNiPO、KCoPO等のリン酸カリウム化合物の粒子表面に導電性を有する炭素質被膜を被覆しつつ、所定のラマン特性備えることで、電子伝導性の低いKNiPO及びKCoPO等であっても、電池作動可能な電子導電性を付与することができ、従来報告された炭素質未被膜の材料に比べ高い放電容量を発現することができる。
本実施形態のカリウム含有型正極材料は、充放電可能な理論容量はリチウム含有酸化物材料に劣るものの、リチウム含有酸化物材料に比べ低い原料コストで製造することが可能である。また酸素とリンと強い共有結合性を有することから充放電時の酸素放出が少なく、過充電が行われても、電池の故障を抑制し得る。
〔ラマン特性〕
本実施形態のカリウム含有型正極材料は、ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGに対する、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4の比IPO4/IGが0.03≦IPO4/IG≦0.3である。
比IPO4/IGは、化合物の粒子表面への炭素被覆状態を表す指標である。化合物の粒子表面の炭素被覆率が高く、粒子表面が炭素でおおわれているほど化合物粒子由来のPO4バンドは小さくなり、一方で化合物の粒子表面の炭素被覆率が低く、粒子表面が露出しているほど化合物粒子由来のPO4バンドは大きくなる。
比IPO4/IGが0.03未満であると炭素の被覆状態が高くなりすぎた状態であり、アルカリ金属を含有する電解液と化合物の結晶表面の接触が阻害され、電池反応が阻害され十分な放電容量を得ることができない。一方で、0.3を超えると炭素の被覆状態が低くなりすぎた状態であり、化合物の粒子表面の電子伝導性が不十分となり、正極中の電子移動が阻害されるため、電池反応が阻害され十分な放電容量を得ることができない。
比IPO4/IGは、上記の観点から、0.035≦IPO4/IG≦0.29であることが好ましく、0.04≦IPO4/IG≦0.285であることがより好ましく、0.05≦IPO4/IG≦0.28であることが更に好ましい。
〔一般式KxAyDzPOで表される化合物〕
本実施形態のカリウム含有型正極材料は、一般式KxAyDzPOで表される化合物の粒子を含み、一般式KxAyDzPOで表される化合物は、正極活物質として機能する。
一般式において、AはCo、Mn、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種であり、DはMn、Fe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc及びYからなる群から選択される少なくとも1種であり、x、y、zは、0.9<x<1.1、0.65<y≦1.0、0≦z<0.35、0.9<y+z<1.1である。
一般式において、A及びDは、各々独立に、1種であってもよいし、2種以上であってもよく、例えば、KxAPOのような式で表されてもよい。このとき、yとyとの合計がyの範囲、すなわち0.65を超え1.0以下の範囲にあればよく、zとzとzとzとの合計がzの範囲、すなわち0以上0.35未満の範囲にあればよい。
一般式KxAyDzPOで表される化合物は、上記構成であれば、特に限定されない。
一般式KxAyDzPOにおいて、Aは、Co及びNiが好ましい。また、Dは、はMn、Fe、Mg、及びAlが好ましく、Alがより好ましい。化合物がこれらの元素を含むことで、高い放電電位、高い安全性を実現可能な正極合材層とすることができる。また、資源量が豊富であるため、選択する材料として好ましい。
本実施形態のリン酸塩系化合物の粒子は、一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を含むことが好ましい。
リン酸塩系化合物の一次粒子及び二次粒子を、総じて正極活物質粒子と称する。
〔炭素質被膜〕
本実施形態のカリウム含有型正極材料は、一般式KxAyDzPOで表される化合物の粒子(正極活物質粒子)の表面を被覆する炭素質被膜を有する。炭素質被膜を有する正極活物質粒子を炭素質被覆正極活物質粒子とも称する。
炭素質被膜は、厚さが0.5nm以上かつ5nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の膜厚が0.5nm以上であることで、炭素質被膜中の電子の移動抵抗の総和が高くなりにくく、アルカリ金属イオン電池の内部抵抗が上昇しにくく、高速充放電レートにおける電圧低下が生じにくい。炭素質被膜の膜厚が5nm以下であることで、リン酸カリウム化合物にとアルカリ金属を含有する電解液との接触が阻害されにくく、電池反応が進み易く、十分な放電容量を得ることができる。
炭素質被膜の膜厚は、0.6nm以上であることがより好ましく、4.5nm以上であることが更に好ましく、0.7nm以上であることがより更に好ましく、また、4nm以下であるよりことが好ましく、0.9nm以下であることが更に好ましく、3.5nm以下であることがより更に好ましい。
炭素質被膜の膜厚は、正極材料(より具体的には、炭素質被覆正極活物質粒子)上の20箇所の炭素質被膜の膜厚を、透過型電子顕微鏡を用いて測定し、平均値として算出した値である。
炭素質被膜は、該炭素質被膜の原料となる有機物を炭化することにより得られる熱分解炭素質被膜である。
有機物としては、正極活物質粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、フェノール、フェノール樹脂、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールには、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリンおよびグリセリン等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
〔比表面積〕
本実施形態におけるカリウム含有型正極材料(好ましくは、炭素質被覆正極活物質粒子)は、比表面積が5m/g以上かつ30m/g以下であることが好ましい。
カリウム含有型正極材料の比表面積が5m/g以上であることで、化合物の一次粒子の粒径が細かくなり、カリウムイオン及び電子の移動にかかる時間を短くして大電流での作動時及び低温での作動時の容量を増加することができる。
カリウム含有型正極材料の比表面積が30m/g以下であることで、金属溶出を抑制することができる。
エネルギー密度をより高める観点から、カリウム含有型正極材料の比表面積は、7m/g以上かつ24m/g以下であることがより好ましく、8m/g以上かつ20m/g以下であることが更に好ましい。
上記比表面積は、比表面積計(例えば、日本ベル社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて、窒素(N)吸着によるBET法により測定することができる。
(炭素量)
本実施形態におけるカリウム含有型正極材料(好ましくは、炭素質被覆正極活物質粒子)は、炭素量が1.0質量%以上かつ4.0質量%以下であることが好ましい。
カリウム含有型正極材料の炭素量が1.0質量%以上であることで、炭素間の距離が縮まり、導電パスが容易になり易いため、アルカリ金属イオン電池のサイクル特性を向上し易い。また、カリウム含有型正極材料の炭素量が4.0質量%以下であることで、オリビン型リン酸塩系化合物の一次粒子間の空隙が狭まりにくく、カリウム含有型正極材料の電解液保持量を高めることができ、入力特性を向上し易い。
エネルギー密度をより高くする観点から、カリウム含有型正極材料の炭素量は、1.2質量%以上かつ3.5質量%以下であることがより好ましく、1.4質量%以上かつ3.0質量%以下であることが更に好ましい。
なお、上記炭素含有量は、炭素分析計(例えば、堀場製作所社製、型番:EMIA−220V)を用いて測定することができる。
本実施形態におけるカリウム含有型正極材料(好ましくは、炭素質被覆正極活物質粒子)のタップ密度は、1.0〜1.6g/cmであることが好ましい。
カリウム含有型正極材料のタップ密度が1.0g/cm以上であることで、正極活物質と電解液との接触面積が大きくなり過ぎず、正極活物質からの金属溶出量を抑制することができる。カリウム含有型正極材料のタップ密度が1.6g/cm以下であることで、正極活物質と電解液との接触面積が大きくなり、正極活物質へのカリウムイオンの脱挿入がしやすくなり、容量を大きくすることができる。
上記観点から、カリウム含有型正極材料のタップ密度は、1.1〜1.5であることがより好ましく、1.2〜1.5であることが更に好ましい。
タップ密度は、JIS R 1628:1997 ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法に則った手法にて測定することができる。
炭素質被膜で被覆された正極活物質粒子(炭素質被覆正極活物質粒子)の一次粒子の平均粒子径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下、さらに好ましくは400nm以下である。一次粒子の平均粒子径が50nm以上であるとカリウム含有型正極材料の比表面積の増加に起因する炭素量の増加を抑制でき、これによりアルカリ金属イオン電池の充放電容量が低減することを抑制できる。一方、500nm以下であるとカリウム含有型正極材料内を移動するカリウムイオンの移動時間または電子の移動時間を短くすることができる。これにより、アルカリ金属イオン電池の内部抵抗の増加に起因する出力特性の悪化を抑制できる。
ここで、一次粒子の平均粒子径とは、個数平均粒子径のことである。上記一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の粒子の粒子径を個数平均することで求めることができる。
炭素質被覆正極活物質粒子の二次粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上であるとカリウム含有型正極材料と導電助剤とバインダー樹脂(結着剤)と溶剤とを混合してアルカリ金属イオン電池正極材料ペーストを調製する際、導電助剤及び結着剤が多量に必要となることを抑制できる。これによりアルカリ金属イオン電池の正極の正極合材層における単位質量あたりのアルカリ金属イオン電池の電池容量を高くすることができる。一方、20μm以下であるとアルカリ金属イオン電池の正極の正極合材層中の導電助剤や結着剤の分散性及び均一性を高くすることができる。その結果、アルカリ金属イオン電池の高速充放電における放電容量が高くなる。
ここで、二次粒子の平均粒子径とは、体積平均粒子径のことである。上記二次粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
正極活物質粒子に対する炭素質被膜の被覆率は60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。炭素質被膜の被覆率が60%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
なお、炭素質被膜の被覆率は、透過型電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray microanalyzer、EDX)等を用いて粒子を観察し、粒子表面を覆っている部分の割合を算出し、その平均値から求めることができる。
炭素質被膜を構成する炭素分によって計算される、炭素質被膜の密度は、好ましくは0.3g/cm以上、より好ましくは0.4g/cm以上であり、そして、好ましくは2.0g/cm以下、より好ましくは1.8g/cm以下である。炭素質被膜を構成する炭素分によって計算される、炭素質被膜の密度とは、炭素質被膜が炭素のみから構成されると想定した場合に、炭素質被膜の単位体積当たりの質量である。
炭素質被膜の密度が0.3g/cm以上であると、炭素質被膜が十分な電子伝導性を示すことができる。一方、2.0g/cm以下であると、炭素質被膜中に層状構造からなる黒鉛の微結晶が少量であるため、カリウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に黒鉛の微結晶による立体障害が生じない。これにより、カリウムイオン移動抵抗が高くなることがない。その結果、アルカリ金属イオン電池の内部抵抗が上昇することがなく、アルカリ金属イオン電池の高速充放電レートにおける電圧低下が生じない。
(アルカリ金属イオン電池正極材料の製造方法)
本実施形態のアルカリ金属イオン電池正極材料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、正極活物質粒子を得る工程(A)と、前記工程(A)で得られた正極活物質粒子に有機化合物を添加して混合物を調製する工程(B)と、混合物を焼成鞘に入れて焼成する工程(C)とを有する。
〔工程(A)〕
工程(A)において、上記正極活物質粒子を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、固相法、液相法、気相法等の従来の方法を用いることができる。このような方法で得られた粒子状のKxAyDzPOを以下、「KxAyDzPO粒子」と言う。
KxAyDzPO粒子は、例えば、K源と、A源と、P源と、水と、必要に応じてD源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成して前駆体となるKxAyDzPO・HOを得た後に、前駆体を加熱処理することで目的のKxAyDzPO粒子を得られる。水熱合成によれば、KxAyDzPO・HO前駆体は、水中に沈殿物として生成する。
この水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
水熱合成の反応条件としては、例えば、加熱温度は、好ましくは110℃以上300℃以下、より好ましくは115℃以上280℃以下、さらに好ましくは120℃以上270℃以下である。加熱温度を上記範囲内とすることで、正極活物質粒子の比表面積を上述の範囲内とすることができる。
また、反応時間は、好ましくは20分以上169時間以下、より好ましくは30分以上24時間以下、さらに好ましくは1時間以上10時間以下である。さらに、反応時の圧力は、好ましくは0.1MPa以上22MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上17MPa以下である。
K源、A源、D源及びP源のモル比(K:A:D:P)は、好ましくは2.5〜4.0:0.5〜1.0:0〜1.0:0.9〜1.15、より好ましくは2.8〜3.5:0.6〜1.0:0〜1.0:0.95〜1.1である。
ここで、K源としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)等の水酸化物;炭酸カリウム(KCO)、塩化カリウム(KCl)、硝酸カリウム(KNO)、リン酸カリウム(KPO)、リン酸水素二カリウム(KHPO)およびリン酸二水素カリウム(KHPO)等のカリウム無機酸塩;酢酸カリウム(KCHCOO)、蓚酸カリウム((COOK))等のカリウム有機酸塩;ならびに、これらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、リン酸カリウム(KPO)は、K源およびP源としても用いることができる。
A源としては、Co、Mn、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、KxAyDzPOにおけるAがNiである場合、Ni源としては、塩化ニッケル(NiCl)、硫酸ニッケル(NiSO)、及びこれらの水和物等;AがCoである場合、Co源としては、塩化コバルト(CoCl)、硫酸コバルト(CoSO)、及びこれらの水和物等が挙げられる。
D源としては、Mn、Fe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc及びYからなる群から選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、KxAyDzPOにおけるDがAlである場合、Al源としては、水酸化アルミニウム(Al(OH))、塩化アルミニウム(AlCl)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、硝酸アルミニウム(Al(NO)、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO))、及びこれらの水和物等が挙げられる。
P源としては、リン酸(HPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)等のリン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、P源としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウム及びリン酸水素二アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
〔工程(B)〕
工程(B)では、前記工程(A)で得られた正極活物質粒子(KxAyDzPO粒子)に有機化合物を添加して混合物を調製する。
まず、上記正極活物質粒子に有機化合物を添加し、次いで、溶媒を添加する。
正極活物質粒子に対する有機化合物の配合量は、炭素質被膜の膜厚を0.5nm以上かつ5nm以下とする観点から、有機化合物の全質量を炭素元素に換算したとき、正極活物質粒子100質量部に対して、好ましくは0.15質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上2質量部以下である。
また、正極活物質粒子に対する有機化合物の配合量が0.15質量部以上であると、この有機化合物を熱処理することにより生じる炭素質被膜の正極活物質粒子表面における被覆率を80%以上にすることができる。これにより、アルカリ金属イオン電池の高入力特性及びサイクル特性を向上することができる。一方、正極活物質粒子に対する有機化合物の配合量が3質量部以下であると、正極活物質粒子の嵩密度を小さくし、電極密度の低下を抑制し、単位体積あたりのアルカリ金属イオン電池の容量低下を抑制することができる。
正極活物質粒子に溶媒を添加する際、その固形分が好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは25〜50質量%となるように調整する。固形分を上記範囲内とすることで、得られるカリウム含有型正極材料のタップ密度を上述の範囲内とすることができる。
上記溶媒としては、たとえば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミドおよびN−メチルピロリドン等のアミド類;ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの溶媒の中で、好ましい溶媒は水である。
なお、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
正極活物質粒子と有機化合物とを、溶媒に分散させる方法としては、正極活物質粒子が均一に分散し、かつ有機化合物が溶解または分散する方法であれば、とくに限定されない。このような分散に使用する装置としては、たとえば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の媒体粒子を高速で撹拌する媒体撹拌型分散装置が挙げられる。
噴霧熱分解法を用いて、上記混合物を高温雰囲気中、たとえば、110℃以上200℃以下の大気中に噴霧し、乾燥して、混合物の造粒体を生成してもよい。
この噴霧熱分解法では、速やかに乾燥して略球状の造粒体を生成するためには、噴霧の際の液滴の粒子径は、0.01μm以上100μm以下であることが好ましい。
〔工程(C)〕
工程(C)では、前記工程(B)で得られた混合物を焼成鞘に入れて焼成する。
焼成鞘として、たとえば、カーボン等の熱伝導性に優れる物質からなる焼成鞘が好適に用いられる。
焼成温度は、好ましくは630℃以上790℃以下であり、より好ましくは680℃以上770℃以下ある。
焼成温度が630℃以上であると、有機化合物の分解及び反応が十分に進行し、有機化合物を十分に炭化させることができる。その結果、得られたカリウム含有型正極材料に低抵抗の炭素質被膜を形成することができる。一方、焼成温度が790℃以下であると、カリウム含有型正極材料の粒成長が進行せず十分に高い比表面積を保つことができる。その結果、アルカリ金属イオン電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が大きくなり、十分な充放電レート性能を実現することができる。
焼成時間は、有機化合物が十分に炭化する時間であればよく、とくに制限はないが、たとえば、0.1時間以上100時間以下である。
焼成雰囲気は、好ましくは窒素(N)およびアルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる不活性雰囲気または水素(H)等の還元性ガスを含む還元性雰囲気である。混合物の酸化をより抑えたい場合には、焼成雰囲気は還元性雰囲気であることがより好ましい。
工程(C)の焼成により、有機化合物は焼成により分解および反応して、炭素が生成する。そして、この炭素は正極活物質粒子の表面に付着して炭素質被膜となる。これにより、正極活物質粒子の表面は炭素質被膜により覆われる。
<アルカリ金属イオン電池>
本実施形態のアルカリ金属イオン電池は、本実施形態のアルカリ金属イオン電池用正極材料を用いた正極と、Liイオン、Naイオン、及びKイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む電解質とを有する。
〔正極〕
正極を作製するには、上記のカリウム含有型正極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、正極形成用塗料又は正極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
カリウム含有型正極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、カリウム含有型正極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜20質量部とする。
正極形成用塗料又は正極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次いで、正極形成用塗料又は正極形成用ペーストを、アルミニウム箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記のカリウム含有型正極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成されたアルミニウム箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、アルミニウム箔の一方の面に正極合材層を有する集電体(正極)を作製する。
このようにして、高入力特性及びサイクル特性に優れるアルカリ金属イオン電池を得ることができる正極を作製することができる。
〔負極〕
負極としては、例えば、金属Li、天然黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、Li合金及びLiTi12、Si(Li4.4Si)等の負極材料を含むものが挙げられる。
〔電解質〕
電解質は、Liイオン、Naイオン、及びKイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
電解質は非水電解質であることが好ましく、例えば、炭酸エチレンと、炭酸ジエチルとを、質量比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸金属塩(MPF)を、例えば、濃度1モル/dmとなるように溶解したものが挙げられる。ここで、MPFにおいて、Mは、Liイオン、Naイオン、又はKイオンを表す。MPFは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
〔セパレータ〕
本実施形態の正極と負極とは、セパレータを介して対向させることができる。セパレータとして、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
また、非水電解質とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本実施形態のアルカリ金属イオン電池は、正極が、本実施形態のアルカリ金属イオン電池正極材料を用いてなる正極合材層を有することから、電池構成部材のいずれの周囲においてもアルカリ金属イオン移動に優れ、高入力特性及びサイクル特性に優れる。そのため、電気自動車駆動用バッテリー、ハイブリッド自動車駆動用バッテリーなどに好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
〔アルカリ金属イオン電池用正極材料の製造〕
(実施例1)
以下のようにして、KNiPO化合物を製造した。
K源およびP源としてKPOを、Ni源としてNiSO水溶液を用い、これらをモル比でK:Ni:P=3:1:1となるように混合して、2.0Lの原料スラリーA1を調製した。
次いで、原料スラリーA1を耐圧容器に入れた。
その後、原料スラリーA1について、250℃にて48時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。このときの耐圧容器内の圧力は0.8MPaであった。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、前駆体となるKNiPO・HO粒子を得た。
このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱することにより、KNiPO粒子を得た。
得られたKNiPO粒子の96質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール4質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB1を乾燥し造粒した。その後、750℃にて4時間加熱することにより、KNiPO粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(実施例2)
以下のようにして、KCoPO化合物を製造した。
K源およびP源としてKPOを、Ni源としてCoSO水溶液を用い水溶液を用い、これらをモル比でK:Co:P=3:1:1となるように混合して、2.0Lの原料スラリーA2を調製した。
次いで、原料スラリーA2を耐圧容器に入れた。
その後、原料スラリーA2について、220℃にて48時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。このときの耐圧容器内の圧力は0.8MPaであった。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、前駆体となるKCoPO・HO粒子を得た。
このKCoPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱することにより、KCoPO粒子を得た。
得られたKCoPO粒子の96質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール4質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB2を乾燥し造粒した。その後、750℃にて4時間加熱することにより、KCoPO粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(実施例3)
以下のようにして、KNi0.9Co0.05Al0.05PO化合物を製造した。
K源およびP源としてKPOを、Ni源としてNiSO水溶液、Co源としてCoSO水溶液、Al源としてAl(SO水溶液を用い、これらをモル比でK:Ni:P=3:0.9:0.05:0.05:1となるように混合して、2.0Lの原料スラリーA3を調製した。
次いで、原料スラリーA3を耐圧容器に入れた。
その後、原料スラリーA3について、250℃にて48時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。このときの耐圧容器内の圧力は0.8MPaであった。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、前駆体となるKNi0.9Co0.05Al0.05PO・HO粒子を得た。
このKNi0.9Co0.05Al0.05PO・HO粒子を700℃にて2時間加熱することにより、KNi0.9Co0.05Al0.05PO粒子を得た。
得られたKNi0.9Co0.05Al0.05PO粒子の96質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール4質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB3を乾燥し、造粒した。その後、750℃にて4時間加熱することにより、KNi0.9Co0.05Al0.05PO粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(実施例4)
実施例1と同様にしてKNiPO・HO粒子を得て、このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNiPO粒子を得た。その後、得られたKCoPO粒子の97質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール3質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB4を乾燥し造粒し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(実施例5)
実施例1と同様にしてKNiPO・HO粒子を得て、このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNiPO粒子を得た。得られたKNiPO粒子の95質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール5質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB5を乾燥し造粒し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(比較例1)
実施例1と同様にしてKNiPO・HO粒子を得て、このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNiPO粒子を得た。得られたKNiPO粒子に炭素被覆を行わずにそのまま正極活物質粒子として用いた。
(比較例2)
実施例2と同様にしてKCoPO・HO粒子を得て、このKCoPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KCoPO粒子を得た。得られたKCoPO粒子に炭素被覆を行わずにそのまま正極活物質粒子として用いた。
(比較例3)
実施例3と同様にしてKNi0.9Co0.05Al0.05PO・HO粒子を得て、このKNi0.9Co0.05Al0.05PO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNi0.9Co0.05Al0.05PO粒子を得た。得られたKNi0.9Co0.05Al0.05PO粒子に炭素被覆を行わずにそのまま正極活物質粒子として用いた。
(比較例4)
実施例1と同様にしてKNiPO・HO粒子を得て、このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNiPO粒子を得た。得られたKNiPO粒子の98質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール2質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB6を乾燥し造粒し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
(比較例5)
実施例1と同様にしてKNiPO・HO粒子を得て、このKNiPO・HO粒子を700℃にて2時間加熱して、KNiPO粒子を得た。得られたKNiPO粒子の94質量%に対し、あらかじめ20質量%に調整したポリビニルアルコール6質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーB7乾燥し造粒し、炭素質被覆正極活物質粒子を得た。
実施例1〜5及び比較例4〜5の炭素質被膜を有する正極活物質粒子(炭素質被覆正極活物質粒子)、並びに比較例1〜3の炭素質被膜を有しない正極活物質粒子を、それぞれ、アルカリ金属二次電池用正極材料として用いた。
〔正極材料の評価〕
実施例及び比較例で得られた正極材料、及び該正極材料が含む成分について物性を評価した。評価方法は、以下の通りである。結果を表1に示す。
(1)炭素量
炭素分析計(堀場製作所社製、型番:EMIA−220V)を用いて、正極材料の炭素量を測定した。
(2)比表面積
比表面積計(日本ベル社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて、窒素(N)吸着によるBET法により、正極材料の比表面積を測定した。
(3)正極活物質粒子の平均径
正極活物質粒子の一次粒子平均径と二次粒子平均径を、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、商品名:SALD−1000)を用いて測定した。
(4)ラマン特性(IPO4/IG)
ラマン分光装置(堀場製作所社製、LabRab HR evolution UV−VIS−NIR)を用いて正極材料のラマン分光測定を行った。
ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGと、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4とを測定し、両者の比IPO4/IGを算出した。
〔カリウムイオン二次電池の作製と評価〕
(1)ラミネート型カリウムイオン二次電池の作製
実施例1〜5および比較例1〜5のアルカリ金属二次電池用正極材料90質量%、アセチレンブラック5質量%およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより正極を作製した。
天然黒鉛粉末90質量%、アセチレンブラック5質量%およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。
このスラリーを、厚さ15μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極を作製した。
得られた正極を2.8cm×2.6cmに;負極を3.0cm×2.8cmに;セパレータとして厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンフィルムを3.2cm×3.2cmに、それぞれ切断した。その後、正極と負極の塗布面の間にセパレータを配置し、これら電極とセパレータを2枚のアルミニウムラミネートフィルムで挟み、長辺の片側を除いた3辺を幅8mmで熱封止し、電解液を注入した。その後、残りの一辺を熱封止して、ラミネート型カリウムイオン二次電池を作製した。電解液としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに0.7MのKPF溶液を加えて溶解したものを用いた。
(2)カリウムイオン二次電池の評価
環境温度25℃にて正極の電圧が天然黒鉛負極電圧に対して5.6Vになるまで電流値0.1CAにて定電流充電を行い、目標電圧に到達した後、電流値が0.01CAになるまで定電圧充電を行った。
その後、1分間休止した後、環境温度25℃にて、正極の電圧が天然黒鉛負極電圧に対して2.0Vになるまで0.1CAの定電流放電を行い、0.1C放電容量を以下の基準で評価した。
○:0.1C放電容量が40mAh/g以上でありカリウムイオン電気放電特性に優れる。
×:0.1C放電容量が40mAh/g未満でありカリウムイオン電気放電特性に優れない。
結果を表1に示す。
Figure 0006947259
(結果のまとめ)
表1からわかるように、リン酸カリウム化合物の粒子表面に炭素被覆し、比IPO4/IGを0.03≦IPO4/IG≦0.3の範囲とすることで、カリウムイオン電池として高い放電特性が得られ高いエネルギー密度を得ることができる。
本発明のアルカリ金属イオン電池用正極材料は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の各種アルカリ金属イオン二次電池の正極として有用である。

Claims (4)

  1. 一般式KxAyDzPOで表される化合物の粒子と、前記粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを有し、
    ラマン分光測定で1550〜1650cm−1に観測されるGバンドの最大強度IGに対する、930〜1030cm−1に測定されるPO4バンドの最大強度IPO4の比IPO4/IGが0.03≦IPO4/IG≦0.3であるアルカリ金属イオン電池用正極材料。
    但し、上記一般式において、AはCo、Mn、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種であり、DはFe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc及びYからなる群から選択される少なくとも1種であり、x、y、zは、0.9<x<1.1、0.65<y≦1.0、0≦z<0.35、0.9<y+z<1.1である。
  2. 比表面積が5m/g以上かつ30m/g以下である請求項1に記載のアルカリ金属イオン電池用正極材料。
  3. 請求項1又は2に記載のアルカリ金属イオン電池用正極材料を用いた正極。
  4. 請求項3に記載の正極と、
    Liイオン、Naイオン、及びKイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む電解質と
    を有するアルカリ金属イオン電池。
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