JP6945428B2 - 樹脂組成物、その製造方法及びその用途 - Google Patents

樹脂組成物、その製造方法及びその用途 Download PDF

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本発明は、ポリビニルアルコールを含む樹脂組成物及びその製造方法に関する。また本発明は、上記樹脂組成物の用途に関する。
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある)は従来、ビニル系単量体(例えば、塩化ビニル)の懸濁重合用分散安定剤、接着剤、紙塗工剤、偏光フィルム、水溶性フィルム、医薬、化粧品用途組成物など様々な製品や用途に用いられている。このとき、PVAの側鎖にエチレン性二重結合等の反応性基が存在すると各種性能が向上したり、特異な効果を奏したりすることが知られている。側鎖にエチレン性二重結合を有する変性PVAの製造方法として、例えば、特許文献1〜3に記載の方法が挙げられる。
特許文献1に記載の方法は、二重結合を有するモノアルデヒドを用いて、PVAの側鎖に二重結合を導入する方法である。この方法では、製造工程で酸を使用するため酸に耐性のある高額の設備が必要である、使用するモノアルデヒドには空気中で不安定なものや毒物指定のものがあり取り扱い性が悪い、という問題があった。さらに、PVAの合成後に追加の製造プロセスが必要であるため生産性及び経済性等が悪い等の問題があった。
特許文献2に記載の方法は、PVAを製造した後に、当該PVAと安価な不飽和カルボン酸化合物との混合物を熱処理することにより、PVAの側鎖に二重結合を導入して変性PVAを得る方法である。この方法はコスト面では優れているが、変性PVAの製造後に追加のプロセスが必要になるため生産性が低い等の問題があった。また、製造中にゲルが発生することがあり、得られる変性PVAの水溶性が不十分であった。
特許文献3に記載の方法は、エチレン性二重結合を2つ有する単量体とビニルエステルモノマーとを共重合させ、得られた共重合体をけん化することにより変性PVAを得る方法である。この方法は、変性PVAの製造後に追加のプロセスが不要であるため生産性及び経済性等に優れている。しかしながら、特許文献3に記載の方法では共重合反応の制御が困難であるため重合中にゲルが生じることがあった。そのため、重合槽を洗浄することなく繰り返して重合を行った場合にゲルが重合槽壁面に付着することがあり、水溶性の不十分な変性PVAが得られるおそれがあった。また、生成したゲルにより配管が詰まる等のおそれもあった。
国際公開2015/182567号 国際公開2007/119735号 国際公開2014/171502号
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、水溶性に優れた、ポリビニルアルコールを含む樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、ビニル化合物を懸濁重合するに際して、高い重合安定性を示すと共に、得られる重合体のフィッシュアイを抑制することができる懸濁重合用分散安定剤を提供することを目的とする。
上記課題は、エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルアルコール(A)及び多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルアルコール(B)を含む樹脂組成物(C)であって;ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の合計量に対してポリビニルアルコール(B)を25〜85質量%含有し、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)を構成する全単量体単位に対する、多官能モノマー(a)に由来する構造単位の含有量(X)が0.02〜1モル%であり、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)を構成する全単量体単位に対する、ポリビニルアルコール(A)の側鎖に含まれるエチレン性二重結合の含有量(Y)が0.01〜0.9モル%であり、かつ含有量(X)に対する含有量(Y)の比(Y/X)が0.5〜0.9である樹脂組成物(C)を提供することによって解決される。
このとき、前記側鎖が、アリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有することが好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の粘度平均重合度が200〜4000であり、けん化度が67〜99.9モル%であることも好ましい。
上記課題は、上記樹脂組成物(C)の製造方法であって;ビニルエステルモノマーを重合させて、多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)を得る第1重合工程と、ビニルエステルモノマーの重合率が15〜40%になった時点で多官能モノマー(a)を添加して、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させて、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)を得る第2重合工程と、ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)をけん化するけん化工程とを備える樹脂組成物(C)の製造方法を提供することによっても解決される。
上記樹脂組成物(C)を含有するビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤が本発明の好適な実施態様である。
本発明の樹脂組成物は、水への不溶解物が少なく水溶性にも優れる。また、ビニル化合物の懸濁重合に際して、本発明の樹脂組成物を含有する懸濁重合用分散安定剤を用いると、重合反応が安定し、粗大粒子の形成が少なくなる。また、得られる重合体のフィッシュアイを抑制することもできる。
本発明の樹脂組成物(C)は、エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルアルコール(A)及び多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルアルコール(B)を含む。以下の説明において、エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)を単に多官能モノマー(a)と、ポリビニルアルコール(A)を変性PVA(A)と、ポリビニルアルコール(B)をPVA(B)とそれぞれ略記することがある。
樹脂組成物(C)の製造方法は特に限定されず、(i)変性PVA(A)とPVA(B)とを別々に製造して、それらを混合して樹脂組成物(C)を得る方法、(ii)ビニルエステルモノマーの重合を開始して、当該ビニルエステルモノマーの重合率が所定の値となった時点で多官能モノマー(a)を添加して、得られたポリビニルエステルの混合物を同時にけん化する方法などが挙げられる。中でも、変性PVA(A)とPVA(B)とを混合する工程が不要となるため上記方法(ii)が好適に採用される。上記方法(ii)においては、まず多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)が生成し、多官能モノマー(a)を添加した後は、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)が生成する。そして、得られたポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)の混合物を同時にけん化することにより、変性PVA(A)とPVA(B)とを含む樹脂組成物(C)を得ることができる。上記方法(ii)については後に詳細に説明する。
(変性PVA(A))
本発明における変性PVA(A)は、エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルアルコールである。変性PVA(A)は、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させて、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)を得てから、当該ポリビニルエステル(A’)をけん化することにより得ることができる。多官能モノマー(a)を用いることにより、多官能モノマー(a)に由来するエチレン性二重結合を側鎖に含む変性PVA(A)を得ることができる。変性PVA(A)には、エチレン性二重結合を側鎖に含有するPVAのみならず、側鎖のエチレン性二重結合が消失したPVAも含まれる。
ビニルエステルモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
本発明で用いられる多官能モノマー(a)としては、エチレン性二重結合を2つ有するものであれば特に限定されないが、アリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有するモノマーが好適なものとして挙げられる。
アリルエーテル基を有するモノマーとしては、例えば、グリセリンジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等のジアリルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の点から、トリメチロールプロパンジアリルエーテルが好ましい。
ビニルエーテル基を有するモノマーとしては、例えば、エタンジオールジビニルエーテル、プロパンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の点から、ブタンジオールジビニルエーテルが好ましい。
これらの中でも、重合度や変性PVA(A)中の二重結合含有量の制御が容易である点から、多官能モノマー(a)としてジアリルエーテル化合物が好適に用いられる。
変性PVA(A)の側鎖が、アリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有することが好ましい。このような変性PVA(A)は、ビニルエステルモノマーと、上述したアリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有するモノマーとを共重合して得られたポリビニルエステル(A’)をけん化することにより得ることができる。変性PVA(A)の側鎖が、アリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有することで、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が向上したりフィッシュアイが低減できる。変性PVA(A)の側鎖が、アリルエーテル基を含有することがより好ましい。
ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させる重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の公知の方法が挙げられ、工業的観点から、溶液重合法、乳化重合法及び分散重合法が好ましい。重合操作にあたっては、回分法、半回分法及び連続法のいずれの方式も採用できる。
重合工程において、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば連鎖移動剤を用いて重合度の調整をしてもよい。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド等のアルデヒド類;2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、オクタンチオール、ドデカンチオール等のチオール類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化物等が挙げられる。
また、重合工程において、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルエステルモノマー及び多官能モノマー(a)以外の、他のモノマーを共重合してもよい。当該他のモノマーとしては例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。変性PVA(A)において、このような他のモノマーの含有量は、通常5モル%以下である。
けん化工程においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、又はp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、従来公知の加アルコール分解ないし加水分解反応でのけん化反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合せて用いることができる。中でも、メタノール又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便で好ましい。けん化工程の後、必要に応じて洗浄工程及び/又は乾燥工程を行ってもよい。
変性PVA(A)の粘度平均重合度(単に「重合度」と記載することがある)が200〜4000であることが好ましい。重合度が200未満の場合、けん化工程での工程通過性が低下するおそれがある。重合度は250以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましい。一方、粘度平均重合度が4000を超える場合、重合工程での粘度が高く、生産性が低下するおそれがある。重合度は3000以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましく、1600以下であることが特に好ましい。
粘度平均重合度はJIS K 6726(1994)に準じて測定して得られる値である。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
変性PVA(A)のけん化度が67〜99.9モル%であることが好ましい。けん化度が67モル%未満の場合、樹脂組成物(C)の水溶性が低下するおそれがある。けん化度は68モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。一方、けん化度が99.9モル%以上を超えるものは生産が困難となるおそれがある。けん化度は99モル%以下であることがより好ましく、98モル%以下であることがさらに好ましい。けん化度はJIS K 6726(1994)に準じて測定して得られる値である。
(PVA(B))
本発明におけるPVA(B)は、多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルアルコールである。PVA(B)は、ビニルエステルモノマーを重合させて多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)を得てから、当該ポリビニルエステル(B’)をけん化することによって得ることができる。PVA(B)において、変性PVA(A)と異なる点は、エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)で変性されていない点であり、それ以外の構成については、変性PVA(A)について前述したものと同様である。
(樹脂組成物(C))
本発明の樹脂組成物(C)は、変性PVA(A)及びPVA(B)を含む。本発明の樹脂組成物(C)は、変性PVA(A)とPVA(B)の合計量に対してPVA(B)を
25〜85質量%含有することが重要である。PVA(B)の含有量が上記範囲から外れる場合、樹脂組成物(C)の水溶性が低下する。PVA(B)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。一方、PVA(B)の含有量は、83質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。樹脂組成物(C)において、変性PVA(A)及びPVA(B)以外の他の成分が含まれていてもよい。当該他の成分としては、変性PVA(A)やPVA(B)にも該当しないPVAや、PVA以外のポリマー、さらには各種添加剤等が挙げられる。樹脂組成物(C)における他の成分の含有量は、通常、10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物(C)において、変性PVA(A)及びPVA(B)を構成する全単量体単位に対する、多官能モノマー(a)に由来する構造単位の含有量(X)が0.02〜1モル%であることが重要である。含有量(X)が0.02モル%未満の場合、樹脂組成物(C)を各種用途に使用するメリットがなくなる。例えば、樹脂組成物(C)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いても所望の性能を得ることができない。含有量(X)は0.05モル%以上であることが好ましい。一方、含有量(X)が1モル%を超える場合、水溶性の良好な樹脂組成物(C)を得ることができない。含有量(X)は0.9モル%以下であることが好ましく、0.8モル%以下があることがより好ましい。
ここで、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させた場合、当該多官能モノマー(a)単位を架橋点とする架橋反応が起こり多官能モノマー(a)に由来するエチレン性二重結合が消失することがある。含有量(X)には、多官能モノマー(a)に由来するエチレン性二重結合が残存している構造単位の含有量のみならず、エチレン性二重結合が架橋等により消失した多官能モノマー(a)に由来する構造単位の含有量も含まれる。
樹脂組成物(C)において、変性PVA(A)及びPVA(B)を構成する全単量体単位に対する、変性PVA(A)の側鎖に含まれるエチレン性二重結合の含有量(Y)が0.01〜0.9モル%である。含有量(Y)が0.01モル%未満の場合、樹脂組成物(C)を各種用途に使用するメリットがなくなる。例えば、樹脂組成物(C)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いても所望の性能を得ることができない。含有量(Y)は、0.02モル%以上であることが好ましく、0.05モル%以上であることがより好ましい。一方、含有量(Y)が0.9モル%を超える場合、水溶性の良好な樹脂組成物(C)を得ることができないおそれがある。含有量(Y)は、0.8モル%以下であることが好ましい。
本発明において、含有量(X)に対する含有量(Y)の比(Y/X)が0.5〜0.9であることが重要である。比(Y/X)が上記範囲から外れる場合、樹脂組成物(C)の水溶性が低下する。そして、このような樹脂組成物(C)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いると、得られるビニル系重合体の粒子径が大きくなるとともに、粗大粒子やフィッシュアイが増加する。比(Y/X)は0.55以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。一方、比(Y/X)は0.85以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
含有量(X)及び(Y)は、樹脂組成物(C)の重水又は重ジメチルスルホキシド溶媒中でのH−NMRスペクトル、又はけん化前のビニルエステル系重合体樹脂組成物の重クロロホルム溶媒中でのH−NMRスペクトルから求められる。
(樹脂組成物(C)の製造方法)
本発明の樹脂組成物(C)の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、ビニルエステルモノマーを重合させて、多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)を得る第1重合工程と、ビニルエステルモノマーの重合率が15〜40%になった時点で多官能モノマー(a)を添加して、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させて、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)を得る第2重合工程と、ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)をけん化するけん化工程とを備える方法である。
この製造方法は、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)との共重合反応の制御が容易であるため、重合中にゲルが生成することを抑制することができる。そのため、重合槽を洗浄することなく繰り返して重合を行った場合でもゲルが重合槽壁面へ付着することを防ぐことができ、水溶性に優れた樹脂組成物(C)を得ることができる。以下、この製造方法について詳細に説明する。
上記の製造方法において、重合槽に投入されるビニルエステルモノマー及び多官能モノマー(a)の量は特に限定されないが、初期に仕込んだビニルエステルモノマーに対する多官能モノマー(a)のモル比が0.05/100〜10/100であることが好ましい。
第1重合工程では、ビニルエステルモノマーを重合して、多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)を得る。そして、続く第2重合工程において、重合槽内のビニルエステルモノマーの重合率が所定の値となったときに、多官能モノマー(a)を添加して、未反応のビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させて、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)を得る。したがって、第2重合工程が終了した時点で重合槽にはポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)の混合物が生成している。そして、この混合物をけん化することにより、ポリビニルエステル(B’)はPVA(B)となり、ポリビニルエステル(A’)は変性PVA(A)となり、変性PVA(A)とPVA(B)とを含む樹脂組成物(C)を得ることができる。
ここで、ビニルエステルモノマーを重合させる場合、その重合の初期段階は、ビニルエステルモノマーの消費速度が大きく高重合度のビニルエステル重合体が生成する。この段階で多官能モノマー(a)が存在すると、高重合度のビニルエステル重合体同士が架橋し、得られる樹脂組成物(C)の水溶性が低下するおそれがある。一方、ビニルエステルモノマーの重合が進行し過ぎた段階で多官能モノマー(a)を添加する場合は所定量の二重結合を導入するため多官能モノマー(a)の添加量が多くなりすぎ、その結果、第2重合工程においてゲルが生成するおそれがある。したがって、重合槽に多官能モノマー(a)を添加するタイミングが重要となる。
樹脂組成物(C)の水溶性を低下させずに、変性PVA(A)の側鎖に必要量の二重結合を導入する観点から、ビニルエステルモノマーの重合率が15〜40%になった時点で多官能モノマー(a)を添加することが好ましい。以下の説明において、この重合率のことを添加開始重合率(p)と称すことがある。添加開始重合率(p)が上記範囲から外れる場合、第2重合工程においてゲルが生成するおそれがある。添加開始重合率(p)は35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
第2重合工程を終了させるタイミングは特に限定されないが、ビニルエステルモノマーの重合率が40%以上となった時点で当該工程を終了させることが好ましい。以下の説明において、この重合率のことを最終重合率(q)と称すことがある。最終重合率(q)は45%以上であることが好ましい。一方、最終重合率(q)の上限値は特に限定されず、通常、80%以下であり、75%以下であることが好ましい。
添加開始重合率(p)と最終重合率(q)との比(p/q)は、0.35〜0.75であることが好ましい。比(p/q)を上記の範囲とすることで、PVA(B)を25〜85質量%含む樹脂組成物(C)を得ることができる。
第2重合工程において、多官能モノマー(a)を添加した後はビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)との共重合反応が進行して共重合体が生成する。例えば、比(p/q)を0.75として、ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)の混合物を得て、これをけん化して樹脂組成物(C)を得た場合、樹脂組成物(C)におけるPVA(B)の含有量は約75質量%となる。一方、比(p/q)を0.35として、ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)の混合物を得て、これをけん化して樹脂組成物(C)を得た場合、樹脂組成物(C)におけるPVA(B)の含有量は約35質量%となる。ここで、多官能モノマー(a)を添加した後もビニルエステルモノマーの単独重合体も生成することが考えられるが、その単独重合体の量は少量であり、実質的に無視することができる。
第1及び第2重合工程における重合方法は特に限定されず公知の方法を採用することができる。工業的観点から、溶液重合法、乳化重合法及び分散重合法が好ましい。第2重合工程における多官能モノマー(a)の添加方法は特に限定されない。第2重合工程において必要量の多官能モノマー(a)を一括で仕込む方法や連続的に添加する方法等を挙げることができる。そして、続くけん化工程において、ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)をけん化することにより樹脂組成物(C)を得る。このときのけん化方法は特に限定されず公知のけん化方法を採用できる。メタノール又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便で好ましい。けん化工程の後、必要に応じて洗浄工程及び/又は乾燥工程を追加してもよい。
(用途)
本発明の樹脂組成物(C)は種々の用途に使用される。以下にその例を挙げるがこれに限定されない。
(1)塩化ビニル分散剤用途:塩化ビニル、塩化ビニリデンの懸濁重合用分散安定剤および分散助剤
(2)被覆剤用途:サイズ剤、繊維加工剤、皮革仕上剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤
(3)接着剤・バインダー用途:接着剤、粘着剤、再湿接着剤、各種バインダー、セメントやモルタル用添加剤
(4)分散安定剤用途:塗料や接着剤等の有機・無機顔料の分散安定剤、各種ビニル化合物の乳化重合用分散安定剤、ビチュメン等の後乳化剤
(5)紙加工用途:紙力増強剤、耐油・耐溶剤付与剤、平滑性向上剤、表面光沢改良助剤、目止剤、バリア剤、耐光性付与剤、耐水化剤、染料・顕色剤分散剤、接着力改良剤、バインダー
(6)農業用途:農薬用バインダー、農薬用展着剤、農業用被覆剤、土壌改良剤、エロージョン防止剤、農薬用分散剤
(7)医療・化粧品用途:造粒バインダー、コーティング剤、乳化剤、貼付剤、結合剤、フィルム製剤基材、皮膜形成剤
(8)粘度調整剤用途:増粘剤、レオロジー調整剤
(9)凝集剤用途:水中懸濁物および溶存物の凝集剤、金属凝集剤
(10)フィルム用途:水溶性フィルム、偏光フィルム、バリアフィルム、繊維製品包装用フィルム、種子養生シート、植生シート、シードテープ、吸湿性フィルム
(11)成形物用途:繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、ケミカルレース用水溶性繊維、スポンジ
(12)樹脂原料用途:ポリビニルブチラール用原料、感光性樹脂原料、グラフト重合体原料、各種ゲル原料
(13)後反応用途:低分子有機化合物、高分子有機化合物、無機化合物との後反応用途
(ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤)
中でも本発明の樹脂組成物(C)の好適な用途は、当該樹脂組成物(C)を含有するビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤である。本発明の樹脂組成物(C)は、水に溶解させた場合に不溶解物の生成が低減され水溶性に優れる。したがって、このような樹脂組成物(C)を、ビニル化合物の懸濁重合における分散安定剤として用いると、重合反応が安定し粗大粒子の形成が少なくなる。また、得られるビニル系重合体のフィッシュアイを抑制することができる。
上記懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、樹脂組成物(C)以外の各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、相溶化剤等が挙げられる。懸濁重合用分散安定剤における各種添加剤の含有量は、樹脂組成物(C)に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
(ビニル系重合体の製造方法)
本発明の好適な実施態様は、本発明の樹脂組成物(C)の存在下で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法である。
樹脂組成物(C)を含有する本発明の懸濁重合用分散安定剤の重合槽への仕込み方法としては、(i)本発明の懸濁重合用分散安定剤の水溶液を調製して重合槽に仕込む方法、(ii)本発明の懸濁重合用分散安定剤を粉末状態のまま仕込む方法等が挙げられるが特に限定されるものではない。重合槽内での均一性の点から、上記方法(i)の方法が好ましい。
ビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。中でも、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニルおよび塩化ビニルと共重合することが可能な単量体と共に懸濁重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニルの重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は1種を単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることもできる。
ビニル化合物の懸濁重合に際して、樹脂組成物(C)の他に、ビニル化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用される、変性PVA(A)及びPVA(B)以外のPVA;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用してもよい。その添加量については特に制限は無いが、ビニル化合物100質量部あたり0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」は質量部を示し、ppmは質量ppmを示す。
[PVAの粘度平均重合度]
PVAの粘度平均重合度はJIS K 6726(1994)に準じて測定した。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
[PVAのけん化度]
PVAのけん化度は、JIS K 6726(1994)に準じて求めた。
[含有量(X)及び(Y)]
含有量(X)及び(Y)は、H−NMRを用いて多官能モノマー(a)を示す特徴的なピークを解析することにより求めた。例えば、多官能モノマー(a)が、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(TMPDE)の場合、含有量(X)は0.8ppm〜1.0ppm付近に出現するピークを解析することにより求め、含有量(Y)は5.0ppm〜6.0ppm付近に出現するエチレン性二重結合に対応するピークを解析することにより求めた。
けん化前のゲル量(単位ppm/ビニルエステル系重合体)は、得られたビニルエステル系重合体のけん化前のメタノール溶液(L)gを200メッシュ金網でろ過後、金網上に残存したゲルを金網ごと105℃5時間乾燥させ、乾燥前と乾燥後の重量変化(M)gを求め、(M)と当該メタノール溶液の濃度(N)%から、下記式を用いて求めた。
1000000×(M)/((L)×(N)/100)
[樹脂組成物(C)の水溶性の評価(1回目)]
樹脂組成物(C)の5質量%水溶液を調製して沈殿物の有無を目視で観察することにより、樹脂組成物(C)の水溶性を評価した。沈殿物が確認された場合を「あり」とし、確認されなかった場合を「なし」として表1に示した。
[樹脂組成物(C)の水溶性の評価(5回目)]
樹脂組成物(C)の製造設備を洗浄せずに、樹脂組成物(C)の製造を繰り返し行った。そして、5回目の製造で得られた樹脂組成物(C)の5質量%水溶液を調製して沈殿物の有無を目視で観察した。沈殿物が確認された場合を「あり」とし、確認されなかった場合を「なし」として表1に示した。
実施例1
(樹脂組成物(C1)の製造)
酢酸ビニル(以下「VAc」と略す)1000部、メタノール1325部を重合槽に仕込み、窒素置換後加熱して60℃まで昇温させ、開始剤の存在下で重合を開始した。重合率が25%となった時点でトリメチロールプロパンジアリルエーテル(TMPDE)4.2部を添加した。このときの重合率を添加開始重合率(p)と称す。そして、重合を継続し、重合率が50%となったところで重合を完了した。このときの重合率を最終重合率(q)と称す。その後、減圧下残存するVAcをメタノールとともに系外に追い出す操作を、メタノールを添加しながら行い、ビニルエステル系重合体(以下「PVAc」と略す)のメタノール溶液(濃度50質量%)を得た。
次いで、メタノール、酢酸メチル混合溶媒中(酢酸メチル濃度はけん化系全体に対して10質量%)で、PVAcの濃度を30質量%に希釈し、温度40℃、けん化反応溶液の含水率1質量%となるように水を添加し、けん化触媒としてPVAcに対してモル比0.0072の割合で水酸化ナトリウムを用いて1時間けん化反応を行い、樹脂組成物(C1)を得た。製造条件を表1に示す。
得られた樹脂組成物(C1)を酢酸メチル/メタノールの組成比80/20(体積比)の洗浄液に浸漬し洗浄を行った。次いで溶媒を遠心分離で除去したのち乾燥を行った。得られた樹脂組成物(C1)は粘度平均重合度(以下、単に「重合度」と略すことがある)が790であり、けん化度が72モル%であり、含有量(X)が0.15モル%であり、含有量(Y)が0.11モル%であり、比(Y/X)が0.73であった。また、樹脂組成物(C1)の水溶性を評価した。結果を表1に示す。
実施例2〜、比較例1〜3、6
(樹脂組成物(C2)〜(C7)の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの使用量、使用する多官能モノマー(a)の種類及び使用量、添加開始重合率(p)、及び最終重合率(q)、けん化条件を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(C2)〜(C7)を製造した。製造条件及び得られた樹脂組成物(C)の評価結果を表1に示す。
比較例4
(樹脂組成物(C8)の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの使用量、使用する多官能モノマー(a)の種類及び使用量、添加開始重合率(p)、及び最終重合率(q)を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(C8)の製造を試みた。しかしながら、重合完了時、ゲルが大量に発生しており、けん化工程に進むことができなかった。
Figure 0006945428
実施例5
樹脂組成物(C1)を塩化ビニルの懸濁重合用分散安定剤として用いた。具体的には樹脂組成物(C1)を脱イオン水に溶解させて水溶液としてオートクレーブに100部仕込んだ。仕込んだ樹脂組成物(C1)の量は、塩化ビニルモノマーの仕込み量に対して800ppmである。次いで、脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を添加した。
次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70質量%トルエン溶液0.65部及びt−ブチルパーオキシネオデカノエートの70質量%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに添加し、オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入した。その後窒素のパージを行う操作を計5回行い、オートクレーブ内を十分に窒素置換して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を添加した。オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニルの重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合開始から約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去して、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
得られた塩化ビニル重合体粒子について、(1)平均粒子径、(2)粒度分布、及び(3)フィッシュアイの数を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
(1)平均粒子径
タイラー(Tyler)メッシュ基準の篩を使用して、JIS Z 8815:1994に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果をロジン・ラムラー(Rosin-Rammler)分布式にプロットして平均粒子径(dp50)を算出した。
(2)粒度分布
目開き355μmの篩(JIS標準篩のメッシュ換算では、42メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量(質量%)を下記評価基準で評価した。前記含有量は、篩上累積(%)を意味する。また、前記篩の目開きは、JIS Z 8801−1−2006の公称目開きWに準拠する。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
目開き355μmの篩を通過し、目開き250μmの篩(JIS標準篩のメッシュ換算では、60メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量(質量%)を下記評価基準で評価した。前記含有量は、篩上累積(%)を意味する。また、前記篩の目開きは、JIS Z 8801−1−2006の公称目開きWに準拠する。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
なお、目開き355μmの篩を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量及び目開き250μmの篩を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量は共に、値が小さいほど粗大粒子が少なく粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れることを示す。
(3)フィッシュアイ
得られた塩化ビニル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート50部、三塩基性硫酸鉛5部及びステアリン酸亜鉛1部を150℃で7分間ロール練りして0.1mm厚のシートを作製し1000cm当たりのフィッシュアイの数を測定した。
実施例6、比較例5
樹脂組成物(C)の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例5と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。そして、実施例5と同様にして塩化ビニル重合体粒子を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0006945428
以上の結果から示されるとおり、本発明の構成を満足する樹脂組成物(C)は水溶性に優れていた。また、この樹脂組成物(C)を懸濁重合用分散安定剤として用いビニル化合物を懸濁重合した場合、高い重合安定性を示すと共に、得られる重合体のフィッシュアイを抑制することができた。一方、本発明の構成を満足しない樹脂組成物(C)を懸濁重合用分散安定剤として用いると、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、フィッシュアイも多かった。

Claims (5)

  1. エチレン性二重結合を2つ有する多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルアルコール(A)及び多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルアルコール(B)を含む樹脂組成物(C)であって;
    ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のけん化度がいずれも67〜99.9モル%であり、
    ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の合計量に対してポリビニルアルコール(B)を25〜85質量%含有し、
    ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)を構成する全単量体単位に対する、多官能モノマー(a)に由来する構造単位の含有量(X)が0.02〜1モル%であり、
    ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)を構成する全単量体単位に対する、ポリビニルアルコール(A)の側鎖に含まれるエチレン性二重結合の含有量(Y)が0.01〜0.9モル%であり、かつ
    含有量(X)に対する含有量(Y)の比(Y/X)が0.6〜0.9である樹脂組成物(C)。
  2. 前記側鎖が、アリルエーテル基又はビニルエーテル基を含有する請求項1に記載の樹脂組成物(C)。
  3. ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の粘度平均重合度がいずれも200〜4000である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物(C)。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物(C)の製造方法であって;
    ビニルエステルモノマーを重合させ、多官能モノマー(a)で変性されていないポリビニルエステル(B’)を得る第1重合工程と、
    ビニルエステルモノマーの重合率が15〜40%になった時点で多官能モノマー(a)を添加して、ビニルエステルモノマーと多官能モノマー(a)とを共重合させて、多官能モノマー(a)で変性されたポリビニルエステル(A’)を得る第2重合工程と、
    ポリビニルエステル(A’)及びポリビニルエステル(B’)をけん化するけん化工程とを備える樹脂組成物(C)の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物(C)を含有する、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤。
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