JP6942871B2 - Ni基鍛造合金材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Ni(ニッケル)基鍛造合金の技術に係り、特に、高温での機械的特性に優れるNi基鍛造合金材の製造方法に関するものである。
航空機や火力発電プラントのタービン(ガスタービン、蒸気タービン)において、熱効率向上を目指した主流体温度の高温化は一つの技術トレンドになっており、タービン部材における高温の機械的特性の向上は、重要な技術課題である。最も過酷な環境に曝されるタービン高温部材(例えば、タービン翼(動翼、静翼)、タービンディスク、燃焼器部材、ボイラー部材)は、運転中の回転遠心力や振動や起動/停止に伴う熱応力を繰り返し受けることから、機械的特性(例えば、クリープ特性、引張特性、疲労特性)の向上は非常に重要である。
要求される種々の機械的特性を満たすため、タービン高温部材の材料として、析出強化Ni基合金材が広く利用されている。特に高温特性が重要になる場合は、母相となるγ(ガンマ)相中に析出させるγ’(ガンマ プライム)相(例えばNi3(Al,Ti,Ta)相)の比率を高めた強析出強化Ni基合金材(例えば、γ’相を30体積%以上析出させるNi基合金材)が使用される。
タービンの高効率化の実現は、上述した主流体温度の高温化だけでなく、タービン翼(動翼、静翼)の長尺化によるタービン環帯面積の拡大や、タービン翼の薄肉化による主流体の流れ損失の低減も有効である。そして、タービン翼の長尺化や薄肉化に対応するためには、タービン翼の材料に従来以上に高い引張特性および疲労特性が要求される。
タービン翼は、従来からクリープ特性が重要視されていたため、該クリープ特性の要求を満たすべく、精密鋳造法(特に、一方向凝固法、単結晶凝固法)によって製造されるNi基鋳造合金材が用いられることが多かった。これは、応力方向を横断するような結晶粒界が少ない方がクリープ特性において有利だからである。
一方、タービンディスクや燃焼器部材では、クリープ特性よりも引張特性や疲労特性の方が重要視されることが多いことから、熱間鍛造法によって製造されるNi基鍛造合金材がしばしば用いられてきた。これは、結晶粒径が小さい方が(結晶粒界密度が高い方が)引張特性や疲労特性において有利だからである。
ここで、タービン翼の長尺化や薄肉化への対応を考えた場合、一方向凝固や単結晶成長における長尺化や薄肉化は製造技術的なハードルが非常に高いことから、一方向凝固材や単結晶凝固材からなるタービン翼は、製造歩留まりの大幅な低下(すなわち製造コストの大幅な増大)が危惧される。言い換えると、鍛造合金材をベースにして、タービン翼に要求される高温特性(例えば、クリープ特性)を満たすものを開発した方が、製造コストの観点で有利と考えられる。
前述したように、析出強化Ni基合金材では、高温特性を高めるためにγ’相の体積率を高めることが一般的である。ただし、鍛造合金材おいてγ’相の体積率を高めようとすると、加工性・成形性が悪化して製造歩留まりが低下し易い(製造コストが増大し易い)という弱点がある。そのため、Ni基鍛造合金材の特性向上の研究と並行して、該Ni基鍛造合金材を安定して製造する技術の研究も種々行われてきた。
例えば、特許文献1(特開平9-302450)には、制御された結晶粒度を有するNi基超合金物品を鍛造用プリフォームから製造する方法であって、γ相とγ’相との混合物を含むミクロ組織、再結晶温度及びγ’ソルバス温度を有するNi基超合金プリフォームを準備し(ここで、γ’相はNi基超合金の少なくとも30容量%を占める)、約1600°F以上であるがγ’ソルバス温度よりは低い温度で、歪み速度を毎秒約0.03〜約10として前記超合金プリフォームを熱間金型鍛造し、得られた熱間金型鍛造超合金工作物を等温鍛造して加工済物品を形成し、こうして仕上げた物品をスーパーソルバス熱処理して略ASTM 6〜8の実質的に均一な粒子ミクロ組織を生成させ、物品をスーパーソルバス熱処理温度から冷却する、ことからなる方法が開示されている。
特開平9−302450号公報 特許第5869624号公報
特許文献1によると、γ’相の体積率が高いNi基合金材であっても、ひび割れさせることなく高い製造歩留まりで鍛造品を製造できるとされている。しかしながら、特許文献1の技術は、低ひずみ速度による超塑性変形の熱間鍛造工程およびその後に等温鍛造工程を行うことから、特殊な製造装置が必要であるとともに長いワークタイムを必要とする(すなわち、装置コストおよびプロセスコストが高い)という弱点がある。
また、工業製品に対しては、当然のことながら低コスト化の強い要求があり、製品を低コストで製造する技術の確立は、最重要課題のうちの一つである。
例えば、特許文献2(特許5869624)には、γ’相の固溶温度が1050℃以上であるNi基合金からなるNi基合金軟化材の製造方法であって、次の工程で軟化処理を実施するためのNi基合金素材を準備する素材準備工程と、前記Ni基合金素材を軟化させて加工性を向上させる軟化処理工程と、を含み、前記軟化処理工程は、前記γ’相の固溶温度未満の温度領域でなされる工程であり、前記Ni基合金素材を前記γ’相の固溶温度未満の温度で熱間鍛造する第1の工程と、前記γ’相の固溶温度未満の温度から100℃/h以下の冷却速度で徐冷をすることにより前記Ni基合金の母相であるγ相の結晶粒の粒界上に析出した非整合なγ’相の結晶粒の量を増加させて20体積%以上としたNi基合金軟化材を得る第2の工程と、を含むことを特徴とするNi基合金軟化材の製造方法、が開示されている。特許文献2で報告された技術は、強析出強化Ni基合金材を低コストで加工・成形できるという点で画期的な技術と思われる。
本発明者等は、特許文献2の技術を基にして更に研究を進めたところ、γ’相の体積率が50体積%以上のような超強析出強化Ni基合金材(例えば、γ’相を50〜70体積%析出させるNi基合金材)では、上記の第1の工程(γ’相の固溶温度未満の温度で熱間鍛造する工程)の制御が難しく、製造歩留まりが低下し易いことが判った。言い換えると、更なる技術革新が必要であると考えられた。
近年における省エネルギーおよび地球環境保護の観点から、タービンの熱効率向上を目指した主流体温度の高温化およびタービン翼の長尺化・薄肉化は、今後ますます進展するものと思われる。それは、タービン高温部材の使用環境が今後ますます厳しくなることを意味し、タービン高温部材には、更なる機械的特性の向上が要求される。一方、前述したように、工業製品の低コスト化は最重要課題のうちの一つである。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超強析出強化Ni基合金を用い、機械的特性(特に、引張特性、クリープ特性)が従来よりも高いレベルでバランスしたNi基鍛造合金材を、高い製造歩留まりでかつ簡易に(すなわち、できるだけ低コストで)製造できる方法を提供することにある。
(I)本発明の一態様は、Ni基鍛造合金材の製造方法であって、
前記Ni基鍛造合金材は、4.0質量%以上18質量%以下のCr(クロム)と、2.0質量%以上25質量%以下のCo(コバルト)と、14質量%以下のW(タングステン)と、8.0質量%以下のMo(モリブデン)と、2.0質量%以上7.0質量%以下のAlと、8.0質量%以下のTi(チタン)と、10質量%以下のTa(タンタル)と、3.0質量%以下のNb(ニオブ)と、3.0質量%以下のHf(ハフニウム)と、2.0質量%以下のRe(レニウム)と、2.0質量%以下のFe(鉄)と、0.1質量%以下のZr(ジルコニウム)と、0.001質量%以上0.15質量%以下のC(炭素)と、0.001質量%以上0.1質量%以下のB(ホウ素)とを含み、残部がNiおよび不可避不純物からなり、
式「P値=0.18×Al含有率+0.08×Ti含有率+0.03×Ta含有率」で表されるP値が1.0以上であり、
700℃の温度においてγ相の母相中に50体積%以上70体積%以下のγ’相が析出する化学組成を有し、
前記γ’相は、前記γ相の結晶粒の中に析出する時効析出γ’相粒と、前記γ相の結晶粒の間に析出しNiおよびAlの含有率が前記時効析出γ’相粒よりも高い共晶反応γ’相粒とからなり、
前記製造方法は、
原料を溶解して溶湯を用意し該溶湯を鋳造して、前記化学組成を有する合金鋳塊を形成する溶解・鋳造工程と、
前記合金鋳塊に対して所定温度に加熱した後に700℃まで空冷、ガス冷または水冷で冷却するソーキング処理を施して、前記共晶反応γ’相粒を1体積%以上15体積%以下の範囲で意図的に残存させた擬均質化合金鋳塊を用意する擬均質化熱処理工程と、
前記擬均質化合金鋳塊に対して鍛造加工を施して、所望形状を有すると共に前記共晶反応γ’相粒の平均粒径が2μm以上40μm以下となる鍛造加工成形材を形成する鍛造加工工程と、
前記鍛造加工成形材を他の所定温度に加熱して、前記共晶反応γ’相粒以外の析出相を溶体化すると共に前記γ相の結晶粒を再結晶粗大化して該γ相の平均粒径が15μm以上200μm以下となる再結晶粗大化材を用意する溶体化・結晶粗大化熱処理工程と、
前記再結晶粗大化材に対して時効熱処理を施して、前記γ相の結晶粒の中に前記時効析出γ’相粒を析出させる時効熱処理工程と、
を有することを特徴とするNi基鍛造合金材の製造方法を提供するものである。
本発明は、上記のNi基鍛造合金材の製造方法(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記擬均質化熱処理工程における前記所定温度が1140℃以上1260℃以下である。
(ii)前記鍛造加工工程は、前記時効析出γ’相粒の固溶温度以上で前記Ni基鍛造合金材の共晶温度未満の温度で熱間鍛造を行う。
(iii)前記溶体化・結晶粗大化熱処理工程における前記他の所定温度は、前記時効析出γ’相粒の固溶温度以上で前記共晶反応γ’相粒の固溶温度未満である。
(iv)前記Ni基鍛造合金材は、室温引張強さが1200 MPa以上であり、温度780℃で応力500 MPaのクリープ破断時間が100時間以上である。
本発明によれば、超強析出強化Ni基合金を用い、引張特性とクリープ特性とが従来よりも高いレベルでバランスしたNi基鍛造合金材を、特段のコスト増を伴わずに製造する方法を提供することができる。
本発明に係るNi基鍛造合金材を製造する方法の一例を示す工程図である。 本発明における擬均質化合金鋳塊の断面微細組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像である。 本発明に係るタービン高温部材としてのタービン動翼の一例を示す斜視模式図である。 本発明に係るタービン高温部材としての固定ピンの一例を示す斜視模式図である。 本発明に係るタービン高温部材としてのクーポンの一例を示す斜視模式図である。 本発明に係るNi基鍛造合金材の断面微細組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像である。 本発明の規定から外れるNi基鍛造合金材の断面微細組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像である。
[初期検討および本発明の基本思想]
前述したように、一方向凝固法や単結晶凝固法によって製造され結晶粒サイズの大きいNi基鋳造合金材は、クリープ特性に優れるが、引張特性や疲労特性に弱点を有する。これに対し、熱間鍛造法によって製造され結晶粒サイズの小さいNi基鍛造合金材は、引張特性や疲労特性に優れるが、クリープ特性に弱点を有する。すなわち、Ni基鋳造合金材とNi基鍛造合金材とは、一般的に作用効果が相反する関係にある。
一方、タービンの熱効率向上を目指した主流体温度の高温化およびタービン翼の長尺化・薄肉化に対応するためには、クリープ特性と引張特性とが従来よりも高いレベルでバランスした材料が必要である。
本発明者等は、Ni基合金材のクリープ特性が母相結晶粒界の滑り難さ(いわゆる粒界強度)に強く関連することに着目し、鍛造合金材において母相結晶粒のサイズ制御(再結晶粗大化)と母相結晶粒の粒界滑りをピン止めするための析出物の導入とを組み合わせることで、クリープ特性と引張特性とが高いレベルでバランスした鍛造合金材が得られるはずという指針を立てた。また、粒界滑りのピン止め析出物として、γ’相粒子を活用することを考えた。
本発明者等は、上記指針に基づいて初期検討として種々の実験を行った。母相結晶粒の粒界上にγ’相粒子を析出させる方法としては、特許文献2に記載の技術を利用した。最終成形加工後に、クリープ特性向上のために母相結晶粒のサイズを制御する(再結晶粗大化させる)熱処理を行ったところ、結晶粒が粗大化する一方で結晶粒界上のγ’相粒子が固溶していき粒界滑りのピン止め効果が大きく低下する(すなわち、期待したようにクリープ特性が向上しない)という問題が生じることが分かった。
初期検討結果の詳細な調査・考察を通して、特許文献2に記載の技術において熱間鍛造加工の温度領域で析出するγ’相は、時効熱処理で析出するγ’相と同様に、比較的低い温度で析出/晶出するγ’相であることに気が付いた。言い換えると、該γ’相の固溶温度がNi基合金の共晶温度よりも十分低い温度領域に存在すること、および母相結晶粒を再結晶粗大化させるのに適した熱処理温度が該γ’相の固溶温度と同程度以上であることから、粒界滑りのピン止め析出物を有効に残した状態での母相結晶粒の再結晶粗大化が困難であったと考えられた。
そこで、母相結晶粒を再結晶粗大化させるのに適した熱処理温度よりも高い温度領域に固溶温度を有する析出相を探すため、Ni基合金材の製造プロセスを熱力学的考察と共に詳細に再検討した。その中で、Ni基合金鋳塊を用意する鋳造/凝固過程において共晶反応に伴って晶出するγ’相(以下、該γ’相を「共晶反応γ’相」と略称する)に着目した。共晶反応γ’相は、共晶反応に伴って晶出することから、当然のごとく高い固溶温度を有する。なお、本発明においては、時効熱処理によってγ相結晶粒内に析出するγ’相を「時効析出γ’相」と称することにする。
共晶反応γ’相は、鋳塊中で比較的大きな粒子を形成し易く、後工程の鍛造加工における阻害粒子になり易いことから、通常、有害析出相と認識されている。そのため、従来技術においては、鋳塊に対する均質化熱処理(ソーキング)によって鍛造加工の前に消去していた析出相である。
本発明者等は、共晶反応γ’相の高い固溶温度に着目し、ソーキング処理において、鋳塊中の化学成分の望まない偏析を解消しつつ、共晶反応γ’相を意図的にある程度残存させることによって、該共晶反応γ’相を粒界滑りのピン止め析出物として活用することに課題解決の可能性を見出した。そして、合金化学組成、ソーキング処理条件、微細組織形態、および機械的特性の関係について鋭意調査検討し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらNi基鍛造合金材の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
[Ni基鍛造合金材の製造方法]
図1は、本発明に係るNi基鍛造合金材を製造する方法の一例を示す工程図である。図1に示したように、本発明のNi基鍛造合金材を製造する方法は、溶解・鋳造工程(S1)と擬均質化熱処理工程(S2)と鍛造加工工程(S3)と溶体化・結晶粗大化熱処理工程(S4)と時効熱処理工程(S5)とを有する。以下、各工程をより具体的に説明する。
(溶解・鋳造工程)
溶解・鋳造工程S1では、所望の合金組成となるように原料を溶解して溶湯を用意し、該溶湯を適当な鋳型に注湯して合金鋳塊10を形成する。原料の溶解方法および鋳造方法に特段の限定はなく、Ni基合金材に対する従前の方法を利用できる。
なお、合金中の不純物成分(例えば、P(リン)、S(硫黄)、O(酸素)、N(窒素))の含有率をより低減する(合金の清浄度を高める)ため、溶解・鋳造工程S1は、溶湯を形成した後に一旦凝固させて原料合金塊を形成する原料合金塊形成素工程(S1a)と、該原料合金塊を再溶解して清浄化溶湯を用意する再溶解素工程(S1b)とを含むことがより好ましい。合金の清浄度を高められる限り再溶解方法に特段の限定はないが、例えば、真空アーク再溶解(VAR)法を好ましく利用できる。
ここで、望ましい合金組成について説明する。
Cr成分:4.0質量%以上18質量%以下
Crは、γ相に固溶して高温における耐食性を向上させる作用効果のある成分である。該作用効果を得るためには、4.0質量%以上の含有率が好ましい。一方、Cr含有率が18質量%超になると、有害相(例えば、α-Cr相)が析出し易くなってクリープ特性が低下する。Cr含有率は、6.0質量%以上16質量%以下がより好ましく、8.0質量%以上14質量%以下が更に好ましい。
Co成分:2.0質量%以上25質量%以下
Coは、γ’相(共晶反応γ’相、時効析出γ’相)を固溶強化すると共に高温耐食性を向上させる作用効果のある成分である。該作用効果を得るためには、2.0質量%以上の含有率が好ましい。一方、Co含有率が25質量%超になると、γ’相の析出が抑制されて機械的特性が低下する。Co含有率は、5.0質量%以上20質量%以下がより好ましく、8.0質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
W成分:14質量%以下
Wは、γ相を固溶強化すると共に、γ’相の固溶温度を高めてクリープ特性を向上させる作用効果のある成分である。本発明においてW成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加することが好ましい。ただし、W含有率が14質量%超になると、望まない相(例えば、α-W相)が析出し易くなり、クリープ特性、高温耐食性および靭性が低下する。また、密度が大きな元素であるため、過剰に含有させるとタービン高温部材の質量が増加する(それによるデメリットが生じる)弱点がある。W含有率は、1.0質量%以上12質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
Mo成分:8.0質量%以下
Moは、Wと同様にγ相を固溶強化すると共に、γ’相の固溶温度を高めてクリープ特性を向上させる作用効果のある成分である。本発明においてMo成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加することが好ましい。ただし、Mo含有率が8.0質量%超になると、耐酸化性および高温耐食性が低下する。Mo含有率は、0.5質量%以上6質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下が更に好ましい。
Al成分:2.0質量%以上7.0質量%以下
Alは、析出強化相であるγ’相を形成させる必須の成分である。望ましい量のγ’相を形成させるためには、2.0質量%以上の含有率が好ましい。一方、Al含有率が7.0質量%超になると、望まない相(例えば、σ相、α-Cr相)が析出し易くなり、機械的特性および耐食性が低下する。Al含有率は、2.5質量%以上6.5質量%以下がより好ましく、3.0質量%以上6.0質量%以下が更に好ましい。
Ti成分:8.0質量%以下
Tiは、γ’相のAlサイトに固溶し、機械的特性の向上に寄与すると共に高温耐食性を向上させる作用効果のある成分である。本発明においてTi成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加することが好ましい。ただし、Ti含有率が8.0質量%超になると、耐酸化性が低下する。Ti含有率は、1.0質量%以上6.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下が更に好ましい。
Ta成分:10質量%以下
Taは、Tiと同様にγ’相のAlサイトに固溶し、機械的特性の向上に寄与する作用効果のある成分である。本発明においてTa成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加することが好ましい。ただし、Ta含有率が10質量%超になると、望まない相(例えば、σ相)が析出し易くなり、クリープ特性が低下する。Ta含有率は、2.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以上6.0質量%以下が更に好ましい。
Nb成分:3.0質量%以下
Nbは、Tiと同様にγ’相のAlサイトに固溶し、機械的特性の向上に寄与する作用効果のある成分である。本発明においてNb成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加してもよい。ただし、Nb含有率が3.0質量%超になると、望まない相(例えば、σ相、η相)が析出し易くなり、クリープ特性が低下する。Nb含有率は、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。
Hf成分:3.0質量%以下
Hfは、Ni基合金材の表面に形成される保護皮膜(例えば、Cr2O3、Al2O3)の密着性を向上させ、高温耐食性や耐酸化性を向上させる作用効果のある成分である。本発明においてHf成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加してもよい。ただし、Hf含有率が3.0質量%超になると、Ni基合金材の融点を低下させるため、クリープ特性が低下する。Hf含有率は、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
Re成分:2.0質量%以下
Reは、Wと同様にγ相を固溶強化すると共に、耐食性を向上させる作用効果のある成分である。本発明においてRe成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加してもよい。ただし、Re含有率が2.0質量%超になると、望まない相が析出し易くなり、機械的特性が低下する。また、Reは高価な元素であるため、添加量の増加は合金のコスト増加を伴う。Re含有率は、1.5質量%以下がより好ましい。
Fe成分:2.0質量%以下
Feは、Niに比して延性が高く熱間加工性を向上させる作用効果のある成分である。また、Feは他の元素に比して廉価であることから、材料コストの低減効果もある。本発明においてFe成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加してもよい。ただし、Fe含有率が2.0質量%超になると、γ’相の熱的安定性が低下しクリープ特性が低下する。Fe含有率は、1.0質量%以下がより好ましい。
Zr成分:0.1質量%以下
Zrは、γ相の結晶粒界に偏析して粒界強度を高める作用効果のある成分である。本発明においてZr成分は、必須成分ではないが、その作用効果から添加することが好ましい。ただし、Zr含有率が0.1質量%超になると、望まない相(例えば、Ni3Zr相)が析出し易くなり、延性が低下する。Zr含有率は、0.005質量%以上0.08質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下が更に好ましい。
C成分:0.001質量%以上0.15質量%以下
Cは、γ相の結晶粒界に偏析し炭化物粒子を形成して粒界強度を高める作用効果のある成分である。当該作用効果を得るためには、0.001質量%以上の含有率が好ましい。一方、C含有率が0.15質量%超になると、炭化物が過剰に形成され、クリープ特性、延性および耐食性が低下する。また、過剰の炭化物は、鋳造欠陥を招き易くなるデメリットもある。C含有率は、0.01質量%以上0.12質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
B成分:0.001質量%以上0.1質量%以下
Bは、γ相の結晶粒界に偏析しホウ化物粒子を形成して粒界強度を高める作用効果のある成分である。当該作用効果を得るためには、0.001質量%以上の含有率が好ましい。一方、B含有率が0.1質量%超になると、製造工程における溶体化処理の適用可能温度範囲が狭くなり、クリープ特性低下の要因になる。B含有率は、0.005質量%以上0.08質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.04質量%以下が更に好ましい。
残部成分:Ni成分および不可避不純物
Niは、主要成分の一つであり最大含有率の成分である。不可避不純物は、混入を避けることが極めて困難であるが含有率をできるだけ少なくしたい不純物を意味する成分であり、例えば、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P、S、O、Nが挙げられる。なお、0.01質量%以下のSi、0.02質量%以下のMn、0.01質量%以下のP、0.01質量%以下のS、0.005質量%以下のO、および0.005質量%以下のNは、混入許容の範囲である。
式「P値=0.18×Al含有率+0.08×Ti含有率+0.03×Ta含有率」:P値1.0以上
P値は、γ’相の析出量に影響を与えるパラメータである。700℃におけるγ’相の析出量を50体積%以上とするためには、P値が1.0以上となるように合金組成を制御することが好ましい。P値は、1.1以上がより好ましい。
なお、後工程の擬均質化熱処理工程および鍛造加工工程において、所望量の共晶反応γ’相を残存させるため、共晶反応γ’相は、1100℃以上の固溶温度を有することが好ましく、1180℃以上の固溶温度を有することがより好ましい。言い換えると、そのような固溶温度を有する共晶反応γ’相が析出するように、合金組成を制御することが好ましい。
(擬均質化熱処理工程)
擬均質化熱処理工程S2では、溶解・鋳造工程S1で用意した合金鋳塊10に対して、化学成分の望まない偏析を解消するためのソーキング処理を行う。ただし、本発明における擬均質化熱処理工程S2は、鋳塊10中に晶出した共晶反応γ’相を意図的にある程度残存させた擬均質化合金鋳塊20を用意するところに大きな特徴がある。
擬均質化合金鋳塊20中に残存させる共晶反応γ’相の量としては、1体積%以上15体積%以下の範囲で制御することが好ましく、1体積%以上8体積%以下がより好ましい。共晶反応γ’相の量が1体積%未満になると、最終的なNi基鍛造合金材において、γ相結晶粒の粒界滑りのピン止め作用効果が不十分になる。一方、共晶反応γ’相の量が15体積%超になると、最終的なNi基鍛造合金材において、時効析出γ’相の量が減少して析出強化の作用効果が不十分になる。
合金鋳塊10中の望まない偏析を解消しつつ共晶反応γ’相の残存量を制御するため、ソーキング処理条件としては、1140〜1260℃の熱処理が好ましい。また、熱処理後の冷却中にγ’相の析出量が変化するのをできるだけ抑制するため、γ’相が析出し易い温度領域(特に、1260〜700℃の温度領域)を速やかに通過させることが好ましい。冷却方法としては、例えば、空冷、ガス冷、水冷が好適である。
本工程S2の段階において、共晶反応γ’相の粒子の形態は溶解・鋳造工程S1に強く影響を受けるので、擬均質化合金鋳塊20中に存在する共晶反応γ’相の粒子は、通常、粒径1μm〜100μm程度の広範な分布を有する。
図2は、本発明における擬均質化合金鋳塊の断面微細組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像(SEM像)である。図2に示したように、母相となるγ相の結晶粒の間に、広範な粒径分布を有する共晶反応γ’相の粒子が析出している様子が分かる。
(鍛造加工工程)
鍛造加工工程S3では、擬均質化合金鋳塊20に対して鍛造加工を施し、所望形状を有する鍛造加工成形材30を形成する。鍛造加工方法に特段の限定はなく、従前の方法(例えば、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造)を利用できる。ただし、鍛造加工の温度としては、時効析出γ’相が析出し易い温度領域をできるだけ避けることが好ましい。
なお、本発明の鍛造加工は、型鍛造の他に、押出加工、圧延加工、据込加工、打抜加工、しごき加工、絞り加工などを含むものである。
前述したように、擬均質化合金鋳塊20は、主にγ相と共晶反応γ’相とからなり、共晶反応γ’相の粒子は、粒径1μm〜100μm程度の広範な分布を有している。そのような擬均質化合金鋳塊20に鍛造加工を施すと、加工の進展に伴って粒径の大きな共晶反応γ’相の粒子が破砕されて分散すると共に、共晶反応γ’相の粒子が塑性加工によって生じるγ相の結晶粒界の移動をピン止めする。その結果、鍛造加工成形材30は、共晶反応γ’相の粒子がγ相の結晶粒界上でγ相の結晶粒に食い込むように存在する微細組織となる。
鍛造加工成形材30中の共晶反応γ’相粒子の平均粒径は、2μm以上40μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、5μm以上25μm以下が更に好ましい。共晶反応γ’相粒子の平均粒径が2μm未満になると、最終的なNi基鍛造合金材において、γ相結晶粒の粒界滑りのピン止め効果が不十分になる。一方、共晶反応γ’相粒子の平均粒径が40μm超になると、最終的なNi基鍛造合金材において、共晶反応γ’相の粒子数が少なくなり過ぎてγ相結晶粒の粒界滑りのピン止め効果が不十分になる。
なお、本発明において、鍛造加工成形材30は、共晶反応γ’相以外の析出相(例えば、本工程S3中に析出した時効析出γ’相、η相、炭化物相、ホウ化物相)を含むことを否定するものではない。
(溶体化・結晶粗大化熱処理工程)
溶体化・結晶粗大化熱処理工程S4では、鍛造加工成形材30に対して比較的高温の熱処理を施し、共晶反応γ’相以外の析出相を溶体化すると共に、γ相の結晶粒を再結晶粗大化して再結晶粗大化材40を用意する。本工程S4の熱処理条件としては、時効析出γ’相の固溶温度以上で共晶反応γ’相の固溶温度未満(実質的に、当該Ni基合金材の共晶温度未満)が好ましい。
なお、前工程の鍛造加工工程S3において熱間鍛造を行い、鍛造加工成形材30が十分に再結晶粗大化している場合は、本工程S4を省略してもよい。その場合、鍛造加工成形材30をそのまま再結晶粗大化材40として扱う。一方、熱間鍛造による再結晶粗大化が不十分な場合や、温間鍛造または冷間鍛造を行った場合は、鍛造加工成形材30に対して本工程S4を行うことが好ましい。
本工程S4において、残存した共晶反応γ’相の粒子は、γ相の結晶粒が再結晶する際の粒界移動をピン止めする。言い換えると、共晶反応γ’相の粒子がγ相の結晶粒界上に残るようなかたちで、γ相の結晶粒が再結晶粗大化する。具体的には、共晶反応γ’相の析出量が比較的少ない場合、γ相の平均粒径が比較的大きくなる。共晶反応γ’相の析出量が比較的多い場合、γ相の平均粒径が比較的小さくなる。
より具体的には、γ相の平均粒径は、15μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上180μm以下がより好ましく、50μm以上150μm以下が更に好ましい。γ相の平均粒径が15μm未満になると、最終的なNi基鍛造合金材において、十分なクリープ特性を得ることが困難になる。一方、γ相の平均粒径が200μm超になると、最終的なNi基鍛造合金材において、十分な引張特性を得ることが困難になる。
(時効熱処理工程)
時効熱処理工程S5では、再結晶粗大化材40に対して時効熱処理を施し、γ相結晶粒の中に時効析出γ’相を析出させる。これにより、本発明のNi基鍛造合金材50が得られる。本工程S5の熱処理条件に特段の限定はなく、従前の条件(例えば、600〜1100℃)を適用できる。
以上説明したように、本発明のNi基鍛造合金材50は、その製造方法において、擬均質化鋳塊20を用意する擬均質化熱処理工程S2に大きな特徴を有するが、特殊な製造装置を必要としない。言い換えると、本発明は、従来のNi基鍛造合金材と同等の製造歩留まりで(すなわち特段のコスト増を伴わずに)、超強析出強化Ni基合金を用いたNi基鍛造合金材が得られるという利点がある。
[Ni基鍛造合金材を用いた製造物]
図3は、本発明に係るタービン高温部材としてのタービン動翼の一例を示す斜視模式図である。図3に示したように、タービン動翼100は、概略的に、翼部110とシャンク部120とルート部(ダブティル部とも言う)130とから構成される。シャンク部120は、プラットホーム121とラジアルフィン122とを備えている。なお、ガスタービンの場合、従来のタービン動翼の大きさ(図中縦方向の長さ)は10〜100 cm程度、重量は1〜10 kg程度である。
本発明のタービン動翼100は、母相となるγ相の結晶粒内に析出する時効析出γ’相粒に加えて、γ相の結晶粒間に共晶反応γ’相粒が存在する微細組織を有することから、引張特性とクリープ特性とが従来よりも高いレベルでバランスした機械的特性を有する。その結果、タービンの熱効率向上を目指した主流体温度の高温化およびタービン翼の長尺化・薄肉化に対応可能と言える。
図4は、本発明に係るタービン高温部材としての固定ピンの一例を示す斜視模式図である。図4に示した固定ピン200にネジ山を加工すれば、ボルトとしても適用できる。図5は、本発明に係るタービン高温部材としてのクーポンの一例を示す斜視模式図である。図5に示したクーポン300は、冷却孔310が形成されており、例えば、タービン静翼の前縁部のクーポンとして使用できる。
本発明の固定ピン200、ボルト、クーポン300は、前述のタービン動翼100と同様に、引張特性とクリープ特性とが従来よりも高いレベルでバランスした機械的特性を有することから、タービンの熱効率向上に貢献できる。
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
[実験1]
(合金鋳塊AI-1〜AI-8の作製)
前述した溶解・鋳造工程S1に沿って、表1に示す名目化学組成を有する合金鋳塊AI-1〜AI-8を作製した。なお、表1において、Ni成分の「Bal.」は不可避不純物を含むものとする。また、表中の「−」は意図的には添加しなかったことを示す。
Figure 0006942871
表1に示したように、合金鋳塊AI-1〜AI-7は、本発明の化学組成の規定を満たす合金鋳塊である。一方、合金鋳塊AI-8は、P値が本発明の規定から外れる合金鋳塊である。
[実験2]
(擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7および完全均質化合金鋳塊HI-8〜HI-11の用意)
前述した擬均質化熱処理工程S2に沿って、共晶反応γ’相を意図的に残存させた擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7を用意した。また、従来の均質化熱処理を施してγ’相を完全に溶体化した完全均質化合金鋳塊HI-8〜HI-11を用意した。
擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7および完全均質化合金鋳塊HI-8〜HI-11の諸元を表2に示す。なお、700℃におけるγ’相の平衡体積率は、材料物性値計算ソフトウェア(JMatPro、株式会社ユーイーエス・ソフトウェア・アジア)と熱力学データベースとを用いて算出したものである。また、共晶反応γ’相の体積率は、断面微細組織のSEM像(例えば、図2参照)に対して画像処理ソフトウェア(ImageJ、National Institutes of Health(NIH)開発のパブリックドメインソフトウェア)を用いた画像解析を行って算出したものである。
Figure 0006942871
表2に示したように、擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7は、P値が1.0以上であり700℃におけるγ’相の平衡体積率が50体積%以上となっていると共に、共晶反応γ’相が残存していることが分かる。なお、前述した図2は、擬均質化合金鋳塊HI-3の断面微細組織のSEM像である。他の擬均質化合金鋳塊も、図2と同様の断面微細組織を有していることを別途確認した。
一方、完全均質化合金鋳塊HI-8〜HI-10は、それぞれ合金鋳塊AI-2、AI-4、AI-5をベースにしていることから、P値が1.0以上であり700℃におけるγ’相の平衡体積率が50体積%以上となっているが、共晶反応γ’相が残存していないものである。また、完全均質化合金鋳塊HI-11は、P値が1.0未満であり700℃におけるγ’相の平衡体積率が50体積%未満となっていると共に、共晶反応γ’相も残存していないものである。
[実験3]
(Ni基鍛造合金材FA-1〜FA-11の作製)
実験2で用意した擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7および完全均質化合金鋳塊HI-8〜HI-11に対して、前述した鍛造加工工程S3〜時効熱処理工程S5に沿って、Ni基鍛造合金材FA-1〜FA-11を作製した。具体的には、鍛造加工工程S3としては、時効析出γ’相の固溶温度以上でNi基合金材の共晶温度未満の熱間鍛造(鍛錬比2以上)を行った。溶体化・結晶粗大化熱処理工程S4としては、熱間鍛造と同じ温度に保持する熱処理を行った。時効熱処理工程S5としては、800℃に保持する熱処理を行った。
[実験4]
(Ni基鍛造合金材FA-1〜FA-11の微細組織観察および機械的特性の測定)
微細組織観察は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて行った。得られたSEM像に対して画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いた画像解析を行って、γ相の平均粒径および共晶反応γ’相の平均粒径を算出した。γ相の平均粒径および共晶反応γ’相の平均粒径の結果は、後述する表3に示す。
図6は、擬均質化合金鋳塊HI-2を用いて作製したNi基鍛造合金材FA-2の断面微細組織の一例を示すSEM像である。図6に示したように、本発明に係るNi基鍛造合金材FA-2は、γ相の結晶粒間に共晶反応γ’相粒が析出しており、γ相の結晶粒内に時効析出γ’相粒が析出している微細組織を有する。他の擬均質化合金鋳塊を用いて作製したNi基鍛造合金材(FA-1、FA-3〜FA-7)においても、同様の微細組織を有することを別途確認した。
図7は、完全均質化合金鋳塊HI-8を用いて作製したNi基鍛造合金材FA-8の断面微細組織の一例を示すSEM像である。図7に示したように、Ni基鍛造合金材FA-8は、γ相の結晶粒内に時効析出γ’相粒が析出しているが、γ相の結晶粒間には共晶反応γ’相粒が析出していない微細組織(言い換えると、従来技術の微細組織)を有する。他の完全均質化合金鋳塊を用いて作製したNi基鍛造合金材(FA-9〜FA-11)においても、同様の微細組織を有することを別途確認した。
機械的特性の測定は、クリープ特性として、温度780℃で応力500 MPaの条件下でクリープ試験を行い、クリープ破断時間を測定した。本発明が対象とするタービン高温部材に対する要求特性から、クリープ破断時間が100時間以上を「合格」と判定し、100時間未満を「不合格」と判定する。合格となるクリープ特性は、応力500 MPaでクリープ破断時間が10万時間となる温度が650℃以上であることを意味する。このクリープ特性は、Ni基合金一方向凝固材と同等のクリープ特性と言える。結果を表3に併記する。
また、引張特性として、JIS Z 2241に準拠して室温引張試験を行い、引張強さを測定した。本発明が対象とするタービン高温部材に対する要求特性を勘案すると、引張強さは1200 MPa以上が必要とされる。そこで、1200 MPa以上の引張強さを「合格」と判定し、1200 MPa未満を「不合格」と判定する。結果を表3に併記する。
Figure 0006942871
表3に示したように、本発明のNi基鍛造合金材FA-1〜FA-7は、クリープ特性および引張特性が共に合格であることが確認される。一方、従来技術の微細組織を有するNi基鍛造合金材FA-8〜FA-10は、本発明のNi基鍛造合金材と同じ合金鋳塊をベースにしていてもクリープ特性が合格基準を満たしていないことが分かる。また、700℃におけるγ’相の平衡体積率が50体積%未満である合金鋳塊AI-8をベースにしたNi基鍛造合金材FA-11は、クリープ特性および引張特性が共に不合格であることが確認される。
実験4の結果から、γ相の結晶粒界上に共晶反応γ’相の粒子が析出している微細組織を有する本発明のNi基鍛造合金材は、クリープ特性と引張特性とが高いレベルでバランスしていることが確認される。
[実験5]
(γ相、時効析出γ’相および共晶反応γ’相の組成分析)
実験2で用意した擬均質化合金鋳塊HI-1〜HI-7に対して過時効処理を施して、時効析出γ’相の粒子を5μm程度の粒径に粗大化析出させた組成分析用試料を用意した。当該試料に対してSEM-EDXを用いてγ相、時効析出γ’相および共晶反応γ’相の組成分析を行った。
具体的には、各相に対して10箇所の点分析を行って、その平均を求めた。分析対象元素は、Ni、Cr、Co、W、Mo、Al、Ti、Taの8元素とし、該8元素の合計を100質量%として算出した。擬均質化合金鋳塊HI-2をベースにした組成分析用試料の結果を表4に示す。
Figure 0006942871
表4に示したように、時効析出γ’相および共晶反応γ’相は、母相のγ相に比して、Ni、Al、Ti、Taの比率が高いことが確認される。また、時効析出γ’相と共晶反応γ’相とを比較すると、共晶反応γ’相は、時効析出γ’相に比して、Ni、Al、Tiの比率が高く、Wの比率が低いことが判る。この差異は、γ相から析出する時効析出γ’相と液相から共晶析出する共晶反応γ’相との析出メカニズムの差異に起因するものと考えられる。そして、この組成の差異が、固溶温度の差異につながるものと考えられる。
他の擬均質化合金鋳塊(HI-1、HI-3〜HI-7)をベースにした組成分析用試料においても、同様の組成分析結果が得られることを別途確認した。なお、擬均質化合金鋳塊HI-3をベースにした試料では、もともとTi成分を含有しないことから、Ti成分に関して時効析出γ’相と共晶反応γ’相と間に特段の差異は生じない。
上述した実施形態や実験例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実験例の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
10…合金鋳塊、20…擬均質化合金鋳塊、30…鍛造加工成形材、40…再結晶粗大化材、50…Ni基鍛造合金材、100…タービン動翼、110…翼部、120…シャンク部、121…プラットホーム、122…ラジアルフィン、130…ルート部、200…固定ピン、300…クーポン、310…冷却孔。

Claims (4)

  1. Ni基鍛造合金材の製造方法であって、
    前記Ni基鍛造合金材は、4.0質量%以上18質量%以下のCrと、2.0質量%以上25質量%以下のCoと、14質量%以下のWと、8.0質量%以下のMoと、2.0質量%以上7.0質量%以下のAlと、8.0質量%以下のTiと、10質量%以下のTaと、3.0質量%以下のNbと、3.0質量%以下のHfと、2.0質量%以下のReと、2.0質量%以下のFeと、0.1質量%以下のZrと、0.001質量%以上0.15質量%以下のCと、0.001質量%以上0.1質量%以下のBとを含み、残部がNiおよび不可避不純物からなり、
    式「P値=0.18×Al含有率+0.08×Ti含有率+0.03×Ta含有率」で表されるP値が1.0以上であり、
    700℃の温度においてγ相の母相中に50体積%以上70体積%以下のγ’相が析出する化学組成を有し、
    前記γ’相は、前記γ相の結晶粒の中に析出する時効析出γ’相粒と、前記γ相の結晶粒の間に析出しNiおよびAlの含有率が前記時効析出γ’相粒よりも高い共晶反応γ’相粒とからなり、
    前記製造方法は、
    原料を溶解して溶湯を用意し該溶湯を鋳造して、前記化学組成を有する合金鋳塊を形成する溶解・鋳造工程と、
    前記合金鋳塊に対して1140℃以上1260℃以下に加熱した後に700℃まで空冷、ガス冷または水冷で冷却するソーキング処理を施して、前記共晶反応γ’相粒を1体積%以上15体積%以下の範囲で意図的に残存させた擬均質化合金鋳塊を用意する擬均質化熱処理工程と、
    前記擬均質化合金鋳塊に対して鍛造加工を施して、所望形状を有すると共に前記共晶反応γ’相粒の平均粒径が2μm以上40μm以下となる鍛造加工成形材を形成する鍛造加工工程と、
    前記鍛造加工成形材を他の所定温度に加熱して、前記共晶反応γ’相粒以外の析出相を溶体化すると共に前記γ相の結晶粒を再結晶粗大化して該γ相の平均粒径が15μm以上200μm以下となる再結晶粗大化材を用意する溶体化・結晶粗大化熱処理工程と、
    前記再結晶粗大化材に対して時効熱処理を施して、前記γ相の結晶粒の中に前記時効析出γ’相粒を析出させる時効熱処理工程と、
    を有することを特徴とするNi基鍛造合金材の製造方法。
  2. 請求項1に記載のNi基鍛造合金材の製造方法において、
    前記鍛造加工工程は、前記時効析出γ’相粒の固溶温度以上で前記Ni基鍛造合金材の共晶温度未満の温度で熱間鍛造を行うことを特徴とするNi基鍛造合金材の製造方法。
  3. 請求項1または請求項に記載のNi基鍛造合金材の製造方法において、
    前記溶体化・結晶粗大化熱処理工程における前記他の所定温度は、前記時効析出γ’相粒の固溶温度以上で前記共晶反応γ’相粒の固溶温度未満であることを特徴とするNi基鍛造合金材の製造方法。
  4. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載のNi基鍛造合金材の製造方法において、
    前記Ni基鍛造合金材は、室温引張強さが1200 MPa以上であり、温度780℃で応力500 MPaのクリープ破断時間が100時間以上であることを特徴とするNi基鍛造合金材の製造方法。
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